2017-07-25 23:41:19 更新

概要

ブラック鎮守府。人類の敵である深海棲艦を倒しうる唯一の戦力である艦娘を使い潰す非道な輩。その非道な輩を倒すのが彼女らの仕事である。


前書き

地の文多いです。どうぞ、コーヒーでも片手にゆっくりとお読み下さい。

登場人物
東海道 武州 とうかいどう たけす
銀髪 三つ編み 眼鏡 巨乳(over高雄型) 階級 中将 
大本営の特殊機関所属であり軍令部総長の直属の部下 
艦娘の適正が有った為艦娘になった生き別れになっている姉を探している。

叢雲
東海道との腐れ縁。 隻眼。 艦娘の初期ロットタイプでの生き残り
古強者
正式名称 吹雪型5番艦 叢雲 初期型 イ号3番
得物は他の同名艦と違い大太刀を使う。


第1 章新任提督着任



けだるい暑さの中、二台の車が赤レンガの建物の前に横付けされる。


ここはリンガ泊地、フィリピンの要衝であり、東南アジア諸国においても重要な拠点であった。


そして、止まった車の後ろの車から二人の人物が現れる。




提督「車内禁煙とは思わなかったわ。」




そういうと彼女は懐から葉巻を一本取り出し慣れた手付きでカッターで端を切り落とし吸い口を作る。




叢雲「まったくよ。」




同じように懐から煙草を取り出しジッポで同じように火を付ける。




提督「あぁ、この一口が美味わねぇ。」


叢雲「同感だわ。」




カーキ色の陸軍服の男性を二人伴い彼女らは建物内へと進む。


提督と初めに言われた女性の見た目は陽によく焼けた褐色の肌であり銀髪を三つ編みにして腰までの長さがある。


そして、それを肩から前の方向にたらしている。


また、その体形は鍛えているのであろう、実に良く引き締まっているのが軍服の上からでも分かる。


二人は葉巻、煙草をそれぞれ口に咥えたまま建物内を歩く。


目指すは提督執務室。




提督「にしても、報告書で読んだ以上にくそね。」


叢雲「本当。」




建物内を歩いている途中ですれ違う艦娘達は皆、生気を失っている状態。


それだけでも、この鎮守府の状況を察して余りあるというものだ。




前提督「君達は何者だね。」


提督  「何者だと思う?」


前提督「見たところ同じ海軍の者の様だが今日の来訪者の予定など聞いてない。

     

     長門!お客さんだ!しっかりともてなして差し上げろ。

     

     あぁ、但し、相手は二人とも女性のようだからな、後は分かるな。」




下卑た笑いを浮かべつつ自身の秘書艦を呼ぶ目の前の男。


見れば軍人にあるまじき見た目でその顔は酒と肉等でたるみきった状態である。


そう命令を告げた後、目の前の男に控えていた女性が動いた。




長門「・・・・。すまない。提督の命令は絶対なのでな。」


叢雲「鈍いわね!」




命令を受け近づいてきた長門を叢雲が手刀の一撃で沈める。




提督「さて、私が何者かだったわね。まずは教えてやる前に十数えなさい。」


前提督「はっ?・・・、おぼう」




口に咥えていた葉巻を吐き捨て火を消す。


そして、彼女は目の前の男を拳骨で殴り飛ばす。




前提督「貴様、私を誰だ・・・」


提督  「よく喋る豚ねぇ。」




二の句を告げる前にから殴られた勢いで床に仰向けに倒れこんだ男の上にマウントポジションでのしかかる。




提督「あなたが好んで艦娘達にさせていた騎上位というやつでしょう?」




ニヤリと笑うと彼女は無言で殴り続ける。


ゴッ。ゴッ。ゴッ。ベキ。ポキャ。ゴリ。


暫くすると辺りには肉片の様なものと黄色く変色した歯らしきものが散乱し


そして、大きな血溜りが出来ていた。




提督「さてと、着任の挨拶はこれぐらいにしておこうかしら。」


叢雲「あら、ずいぶんとおやさしいことですこと。」


提督「そうかしら?これ以上服を汚すと洗濯が大変になるのよ、血は洗濯しても落ちにくいのよ? 」




彼女が殴っている間ずっと煙草を吸うだけで何をするでなく佇んでいた叢雲が


終わったのを見届けると持っていた書類鞄から一枚の紙を取り出し彼女へと渡す。




提督「これはあなたへの異動指令書よ。但し、移動先はヨモツヒラサカ。意味は分かるわね?

    

    あぁ、そうそう、異動祝いを差し上げるのを忘れていた。」




そういうと懐からシガーカッターを取り出し男のズボンを脱がす。




提督「異動先では使うことも無いでしょうから、まぁ、不要でしょ?」


前提督「ひゃっ、ひゃめふぇ・・・。」




前提督の必死の懇願もむなしく、彼女はシガーカッターにて彼のパイプを切り落としたのだった。


その瞬間に鎮重府内には形容のしがたい絶叫が聞こえたのだった。




提督「憲兵、待たせたわね。着任の挨拶は終わったわ。連れていってくれてかまわないわよ。」




彼女が声を発すると執務室のドアの外で待っていた憲兵が入ってきてその肉塊を引き取っていったのだった。




叢雲「もったい無いことしたわね。」


提督「えぇ、そうね。確かに勿体無いことしたわ。シガーカッターを新しく買わないと。それと、この後の掃除をどうしたものかしら。」


叢雲「そこに寝転んでいる元秘書艦とやらにやらせればいいんじゃない?


    駆逐艦の私に簡単にやられるなんてビッグセブンの名も落ちたものね。」


提督「酷いいいようねぇ。まぁ、ここの現状なら仕方ないとも思うし。私達がここにきた以上はそれも変わってくると思うわ?」


提督「それに、あなた戦艦の適性持ちで無理やり駆逐艦に体力落としてるでしょ。」


提督「あなた自分がチートに足を突っ込んでいることを意識するべきだわ?」




先程まで元提督を殴っていた悪鬼羅刹の様な顔とうって変わって花が咲くと形容したくなるような笑顔を浮かべ


彼女は叢雲が新たに吸い始めていた煙草を奪いとりその香を満喫していた。




第2章 既存艦娘達への着任挨拶



全員が集まれる場所が食堂しかないとの事なので全員を食堂へ集合するように放送を掛ける。


全員が集まるまでの間に食堂を見回すが至る所で手入れが行届いていないことが見た目に分かる程に薄汚れていた。




提督「これで全員かしら?」


叢雲「そうよ、アンタが掃除を言いつけた長門を除いてね。」


提督「あら?随分ねぇ、すまないけれど彼女も呼んできてくれないかしら?

    

   掃除は一旦後回しでもかまわないと伝えてきて頂戴。

    

   貴方達が戻って来るまで話をするのはまっているわ。」




提督がそういうと叢雲は、はぃはぃといった様子で執務室へと向かっていったのだった。





提督「本日付でこの鎮守府の提督として着任した東海道よ。

    

   貴方達の有様は実に酷い物ね。前任の提督は職務怠慢が理由で更迭されたわ。

   

   貴方達の生活環境の改善については私から約束させて貰うわ。

   

   また、異動を願い出るものについては力の限り善処する。

    

   転属希望か残ってここでの任務を継続するかは貴方達の自由意志にまかせるわ。

    

   それから、私の横に立っているのがこれからこの鎮守府で秘書艦として働いてくれる叢雲よ。

    

   今の説明で分からないことがあれば彼女に聞いて頂戴。私は同じことを何度も説明することが嫌いなの。」




挨拶を終えると執務室の方へと彼女は去っていった。後に残るのは秘書艦として紹介されていた叢雲のみ。


電は考える。目の前に立っていた美しい女性は新しい提督だという。そして、昨日まで居た提督は処分をされたという。


そして、自分の状況を考え直す。前の提督が小児性愛者という理由で有った為、解体されることも無く戦闘で沈むことさえ叶わず


絶望という池に唯々身を任せるしかなかった状況から一転して光が見えたような気がした。




電「あ・・・。あの、質問してもいいのでしょうかなのです・・・。」


叢雲「なに?私も暇じゃないんだけど?」


電「ひっ。あっ、あの、提督さんは自由にしろと言われたのですが。」


叢雲「文字通りの意味よ。去るもの追わず、来るもの拒まず。唯ね、一つ付け加えるなら私達が何なのかというのを良く考えることね?」


電「あっ、あの、言われることの意味が電には良く分からないなのですが・・。」


叢雲「もう一度言うけど、私達は何?」




叢雲が電の目線の位置まで身を屈める。


そして、叢雲の残っている右目が怒気を持っているのが分かる。




電「かっ、艦娘なのです。」


叢雲「そう、だからなのよ。私達は艦娘。解体されるか轟沈するか、

    

   そのどちらかの運命を迎えるまでは終戦まで戦い続けることを運命付けられた存在。

    

   私の司令官は業とも言ってるけどね。とにかく、そうなのであれば戦う場所くらい自分で選らんでもいいじゃない?

   

   あいつはね私達をきちんと人として扱ってくれるわ。兵器としてではなく感情を持った人間として。」


電「・・・なのですか?」


叢雲「そうよ?あいつ曰く私達は今居る人間を超越した進化した人類って言ってたわ。面白い解釈でしょ?

   

    あたしは面白いからあいつの秘書艦なんてのをやってる。どうせ闘うことを運命付けられているなら面白おかしくやれる所がいいじゃない。」




そう言った叢雲の目は先程までの怒気が無くなっており、これからの生活に楽しい物が待っていることを確信している目だった。




電「あの、電もついていってもいいのですか?」


叢雲「ふふふ。あなた可愛いわね。そして、今まで良く頑張ったわね。安心するといいわ。」





叢雲にそう言われると電はあふれる感情を抑えきれず思わず叢雲に抱きつき泣きじゃくっていたのだった。


そして、叢雲は泣き止むまでずっと電を抱きしめ頭をなでていた。




第3章 福利厚生の向上とこれから




「続きましてのリクエストは Daniel IndartのLos Parranderosです。」




DJの曲紹介に続きラジオからラテン音楽の軽快なリズムが響いてくる。




叢雲「こないだの“あれ”が人質として捕らえてた娘達は残ってくれるって。」


提督「分かったわ。正直駆逐艦の娘達だけだと戦術が立てにくいから助かるわ。」


叢雲「この選局はあんたの趣味?」


提督「えぇ、ここの雰囲気に合うでしょう。」


叢雲「私は中島みゆきとか尾崎紀世彦とかが好きかなぁ。」


提督「・・・・。話を戻すけれど姉妹艦が人質にされていた娘達は軽巡以上は何人いたかしら?」


叢雲「何か反応しなさいよまったく、そっちは電にまとめてもらっているわ。」





先日の着任挨拶から一週間、出撃等は行わずに異動希望ではなく残ることを選択した艦娘達には休暇ということにして自由にさせていた。


その間に彼女らは自分達の仕事と合わせて前任が残した負の遺産である書類の山も片付けていた。。


ただ、彼ら二人が書類仕事以外なにもしていなかったのかというとそうでもなく


鎮守府内の現状把握の後に改善の為への関係各所への手配といったことを合わせて行っており


冒頭の使用主の居る全ての部屋に娯楽用のテレビの設置、上等なベッドや寝具その他、


今まで最低限というのもおこがましい状況であった福利厚生を彼女らが以前居た鎮守府レベルまで引き上げることを行っていたのだ。




提督「入院中の娘も含めて全員の心のケア。後、食事状況の改善が急務ね。」


叢雲「そう言うと思って大本営の大淀さんにいつもどおりお願い済みよ、明日には給糧艦の間宮さん達が着任してくれるわ。」


提督「・・・。流石は私の秘書艦殿ですこと。」


叢雲「後、大本営の忍者から処理は全て済んだと連絡あったわよ。」


提督「いつもどおりね。」


電 「はわわ。ものすごく煙たいのです。」


提督「あら、電ちゃん。どうしたの?叢雲が恋しくなったのかしら?」




先日の着任挨拶の際に何かあったのかその日以降、電は姉妹達と過ごして居るとき以外は常に叢雲について回っている。


今日もこの執務室に来たのも秘書艦の秘書をするという名目で叢雲にじゃれつきにきたのだろう。




叢雲「めったなことを言うんじゃないわよ。電、どうしたの?」




慌てた様子で叢雲が咥えていた煙草を灰皿に押し付け立ち上がる。




電 「あっ!そうなのです。頼まれていたリストの整理が終わったのです!」


叢雲「あら。偉いわね。よしよし、おねぇさんがご褒美あげちゃおう!」




目線を電の位置にまでしゃがみ電の頭をなでながら書類を受け取りポケットから取り出した飴玉を与える叢雲。




提督「すっかりおねぇさんしているのね。ふふふ。」


叢雲「あんた、酸素魚雷喰らわすわよ!?いいわ、後の仕事はあんたが全部すればいいのよ。電、遊びに行くわよ!」


電 「いいのですか?」


叢雲「私がいいといえばいいのよ!」




照れ隠ししている様が普段の姿からは想像もつかないために笑いを堪えるのに必死になってしまう。


すっかりおねぇさんしているなぁと生暖かい目で叢雲を見送り彼女は電から手渡されたリストに視線を落とす。


それにはリンガ泊地における現在の艦娘の艦種、艦名、練度が記載されていた。




提督「これで演習が行える。くふふふ。教導の鬼、久しぶりの銀髪鬼を見れるかしら。面白くなりそうね。」




彼女は昔を思い出すように笑うと机の引き出しから新しい葉巻を取り出しいつもの様に火をつけ口の中で煙の香を楽しんだのだった。




叢雲「♪たーての糸はあなた よーこの糸はわーたーしー おーりなす布はいつか誰かを 暖めうるかもしれない」


電 「なんだか、暖かい気持ちになる曲なのです。」




二人は港を散歩しながら風を楽しんでいた。そして、叢雲は意を決したように電の方に向き直る。




叢雲「ねぇ、電。司令からおねぇちゃんが教練を担当することになるんだけど、どんなに大変でもおねぇちゃんのこと嫌いにならないで居てくれる?」


電 「 ? 電は約束するのです!おねぇちゃんをこのまま好きでいるなのです!」




そういわれ叢雲は屈み嬉しそうに電に抱きつく。




叢雲「よし!じゃ、お昼食べに帰るわよ!」


電「なのです!」




どちらが先に食堂に着くか勝負ということで二人は散歩をしていた港から駆け出す。


その姿は正しく実の姉と妹のようであった。




第4章  教練と演習と




駆逐艦s「全員集合しました(のです!)(ぽい!)」


潜水艦s「同じく全員集合しました(なの)(でち)!」


叢雲「みんな、お早う。今日から演習を行います。演習の予定の入っていない子達には近海の哨戒任務や輸送船団の護衛を行って貰っています。

   

    提督の今朝の朝礼からも分かっていると思うけどこれからあなた達の不足している錬度を徹底的に上げていきます。

    

    それぞれ得手、不得手は有ると思うけどそれをまずは把握したいと思うの。では、今から双方分かれて日没まで、実弾にて演習を行って貰うわ。

  

    途中で負傷した子は入渠して貰ってその他はその間も演習を行って貰うわ。

 

    そして、潜水艦の娘達は私を相手に動く標的に当てる訓練をしてもらうわ。以上簡単にだけど分かったかしら?」


全員「はい!(のです!)(ぽい!)(なの)(でち!)」




全員の威勢のいい返事に満足した叢雲は自分の持つ用箋挟みに早速書き込みを始めていたのだった。




提督「よし。全員そろったな。まずは手元の資料を見てくれ。」




鎮守府会議室には入院しているものを除く駆逐艦種以外の娘が全員集められていた。


面子としては戦艦組が長門、陸奥、榛名の4名、金剛は現在入院中。


空母組は正規空母が翔鶴、瑞鶴、大鳳の3名、加賀が現在入院中。軽空母が龍驤の1名。


重巡組が那智、足柄、羽黒の3名で妙高が入院中。軽巡組は多摩、北上、大井、木曽、の4名で球磨が入院中。


今この場に居ない子達は姉妹や仲間達に手出しをさせないという約束の為にその体が壊れるまで前提督の顧客の相手をしていた。


長門と陸奥の二名は前提督に約束を守らせる役割を担っていたため塗炭の苦しみを味わいながらも秘書艦業務を交代で行っていたのだ。


東海道は着任挨拶の後に長門達と共に彼女らを救い出し必要な措置を講じている。


そして、そんな目に会っていたにも関わらず彼女らは自分達を救い出してくれたからと進んで協力を申し出てくれた。


東海道はそんな艦娘達に本当によいのかと問いかけ改めて考える時間を与えたのだがそれでも彼女達はつき従いますと宣言してくれたのだった。


そして、有給休暇と称しての1週間が過ぎた日に会議室に集合を掛けた。


これからの演習方針を連絡するとして。現在、会議室奥の机近くに提督が着任時のときと同じ顔をして座っている。


その顔からはここ数日の間に見せていたやわらかさを感じる表情は消えている。


そして、彼女達が座る机の上には結構な量の紙束とノートが置かれていた。




長門「これは?」


提督「簡単に言えば、砲撃戦に措けるイロハよ。諸君らが担う艦隊砲撃戦はまず命中率は恐ろしく低いということを認識してもらえるかしら。

   

    その幾つかの理由としては陣形の絡みや海上で行うが故の砲撃の不安定性等の要因が挙げられるわね。」


霧島「その、私達は砲撃を行う際は良く狙って撃てば当たると教わってきたのですが。」


提督「陸上で動かない深海棲艦とのタイマン張れるのならそれでもいいわ。

    

    だが、航空機も使う現代における艦隊砲雷撃戦となるとかなり話が変わってくるのよ。遠距離ほど重力に地球の丸みも考えないといけないわ?

   

    これはそれらを理解する為の資料なの。これより、講義を行ので、諸君、心して聞くように。」




そう宣言すると、航空機動部隊システムの運用説明、日本海戦を初めとした艦隊砲撃戦の歴史の講義、


各陣形のメリット、デメリットの説明が怒涛のごとく行われ終わるころには日が傾いていた。




瑞鶴「翔鶴姉ぇ、理解出来た?」


翔鶴「あら、分からないところがあったの?じゃぁ、部屋で復習しましょうね。」


瑞鶴「ゴメンナサイ、リカイデキマシタ。」


龍驤「あかん、うちの頭が大破してもた。」


提督「以上で、本日の講義を終了する。これからは毎日、午前中は座学、午後は艦隊運用における航空戦力の重要性、

   

   そして、どうやって艦隊砲撃戦に持ち込むかを実践で覚えて行ってもらうわ。


   また、予めでいっておくけど艦隊砲撃戦なんてのはお互いの被害が尋常でないから戦闘狂でもない限りやることはお勧めしない。」


榛名「それは、私達は不要ということでしょうか?」


那智「あぁ、それは私も気になった。」


提督「いいえ、貴方達は空母の娘達が十分に相手に絶望を与えた後に動けなくなっている相手に対し、

   

   最後の慈悲を与える役割を持っているということを言っているのよ。」




懐から新しい葉巻をとりだし吸い口を作り火をつけ一息吸い込んだあとに提督はいう。


戦艦の砲撃は敵の息の根を確実に止め、海に還すためのものだと。




第5章 明石が創る新装備



各艦娘達が演習を始めて1ヶ月程たったある日の執務室。




提督「叢雲、報告をはじめてちょうだい。」


叢雲「深海棲艦の出現頻度が最近増えてきてるわ。大本営で分析されている出現パターンから見てもここへの大規模侵攻があると見て問題ないわ。」


提督「何時位の時期とみる?」


叢雲「早くて後、4ヵ月後。もしかしたらまだ、早くなるかも。」


提督「冬の季節になるわね。」


叢雲「えぇ、日照時間が短くなるわね。赤道に近いこの地域でも例外ではないわ。本国ほどではないけどね。」


提督「今日以降は空母の演習に薄暮、薄明、追加で夜間演習の時間延長、潜水艦は変わりなく精度の上昇を、


   戦艦は散布界における最適砲撃距離を夜間でも取れるようにする演習及び蛇行航行時における艦砲射撃の散布界の把握の精度上昇、


   巡洋艦種は駆逐艦の娘達との合同演習の段階へ移行。全体の進捗状況により再度演習内容を追加する。」


叢雲「駆逐艦の娘達の近接戦闘の演習はどうするの?」


提督「白露型の夕立、時雨の戦闘センスはなかなかのね。


    足の踏ん張りを利かせにくい海上での相手の殴りかたという奴をしっかりと教えてあげて頂戴。


    それ以外の子達については身長の低さを生かした戦闘方法、デストロイヤという艦種の意味をしっかりと理解させなさい。


    唯の水雷艇掃除の延長などではないとね。そして、島風については他の子達とまったく別のメニューとする、足の速さを徹底的に利用する。


    それから、これが一番大事だけどローテーションでの休暇の取得徹底、食事を一日三食しっかり食べるように全員へ通達。以上よ。」


叢雲「相変わらず、要旨だけしか言わないわね。みんな理解できるかしら。」


提督「理解できないことは無いと思うけれど食堂に説明の紙でも置きましょうかしら。」


叢雲「そうね、それがいいと思うわ。」


提督「入院している娘達の見舞いに行くから今日の午前は巡洋艦、駆逐艦種の演習には戦艦、空母の娘達を参加させた模擬戦を行って頂戴。


   勝利したチームにはいつもどうり、間宮謹製レンガ羊羹を与えること。後、開発の状況については病院に向かう前に直接明石に聞いておくわ。


   では、時間が迫っているから後をよろしくお願いするわね。」




今後の演習内容の方針についての変更と確認。演習を始めての二人での毎日の日課である。




叢雲「ところで、こないだ哨戒任務でのカスダメで入渠しにいった際に工廠の横をとおったのだけど明石がすごく楽しそうに仕事してたわよ。」


提督「そう、それは重畳ね。」


叢雲「あんた、何を頼んだの?」


提督「ここの鎮守府は出撃等をせず任務は前提督の顧客が料金代わりに肩代わり。


    潜水艦の娘たちにオリョクル行かせて資源を極限まで溜め込んだ後に横流ししていたことは知っているでしょう?


    私達がここに来たときは横流しの為に資源を限界まで溜めていた状態だった。これを見逃すのは惜しいと思わない?。


    だから明石に好きにしなさいといって預けてきたの。」


叢雲「あの量全部?!」


提督「工廠妖精達の士気をあげる為にも必要なことよ。それに、艦戦、艦攻、艦爆、偵察機これらは幾らあっても足りない。あればあるだけ欲しい。」


叢雲「だから、あんなに生き生きとしてたのね。」




工作艦明石。各鎮守府の縁の下の力もちで有り工廠を切り盛りする頼もしい仲間。


しかし、彼女が提督として着任する以前は最低限の仕事しか与えられず開発は禁じられ、


たまに命じられる建造で出来た娘は提督が気に入らなければ即解体という状態だったため


東海道が工廠の状態を確認に来た際に初めて彼女の存在に気付いたくらいの有様だったのだ。


むしろ、この状況の鎮守府に居たのかと驚いたものである。




提督「明石。開発の報告いいかしら?」


明石「あっ!提督!ちょっと、来てください。なんと、烈風改が出たんですよ!しかも名付きですよ!!」


提督「あら。それは素晴らしいことね、でも明石、オシブチと服に刺繍されている戦闘機妖精さんは聞いたことがないのだけど?」


明石「だからすごいんです!新種です!間違いありません!」


提督「こちらの妖精はサカイと読めるわ。しかも隊長機ではない感じでオーラが紫色、初めて見る色のオーラね。」


明石「間違いなくレアな機体です。」




ドヤァと音が聞こえそうな顔で鼻息荒く答える。


戦闘機、艦攻、艦爆といった機体にはレア隊長機としてネームド、所謂名付き機体があるのは大本営のデータで確認されては居るのだが……


目の前の機体はまったく聞いたことのないものだった。




提督「明石、レア機ということだけれど貰っていってもかまわないかしら。」


明石「はい!また、すごいの出来たら持っていきますね!それと、追加資材の手配ありがとうございました!」


提督「くふふ、別に問題なくてよ?開発ばかりで大変とは思うけど、あなただからこそ出来るとも信じているのよ?今後ともよろしくね。」


明石「はい!」




開発結果の報告を聞き工廠の外へ出ると明石がまだ一緒に話しをしたかったのか


名残惜しそうに此方の方を鎮守府の門を出るまで見送ってくれていた。




 第6章 加賀と五航戦と提督と



艦娘達は戦闘での怪我は入渠施設にて治るがそれ以外についてはやはり病院ということになる。


そして、前提督を排除した際に姉妹や同じ艦種仲間の安全を確保するために自らが身代わりとなり傷を負った者達は


治療の為、病院に入院をさせられていた。




提督「加賀、調子はどうかしら。」


加賀「提督。御迷惑をおかけしております。」


提督「いいえ、こちらこそ謝らなければいけないわ。私と叢雲は大本営の特殊機関所属なのは話をしたと思うわ。

   

   主な職務としては腐敗している鎮守府の建て直しね。それで、ここの鎮守府の内偵自体は以前からしていたのだけど証拠が少なかったの。


   その所為であなたの大事な想い人・・・、赤城を守ってあげることは出来なかったわ。本当にすまないと思っているわ。」


加賀「ですが、他の娘達は守ってくださいました。」


提督「いいえ、たまたま間に合っていただけ。それだけに過ぎないわ。他の娘達にも謝って回らないといけないわね。」


加賀「・・・・提督、この病室の窓の外にある木はなにか分かりますか?」


提督「・・・・・。ソメイヨシノかしら?」


加賀「えぇ、そうです。赤城さんが好きだったんですよ。花言葉が優れた美人で私の様だって言ってくれていて。

    

   そして、彼女が教えてくれたのですが海外でも桜は植えられていて海外での花言葉にはまた別の意味があるそうなんです。」


提督「博識ね。なんて意味なの?」


加賀「私を忘れないで、だそうです。ですから、私は忘れません。私が忘れない限りは赤城さんは死んでいないから。私の中で生き続けるから。」


提督「そうね。そうしてあげると彼女もきっと喜ぶと思うわ。いつか、ここが落ち着いたら来年にでも花見に鎮守府の皆と行きたいわね。」


加賀「・・・・はい。」




二人が話を終わるのを待っていたのか話が終わったと同時に五航戦の娘達が加賀の病室に花を生けた花瓶を持って入ってきた。




瑞鶴「加賀さん、体調どう?」


翔鶴「瑞鶴がお見舞いに行こうって誘ってきたので来たのですが提督がお越しになられるとは知りませんでした。」


加賀「あなた達表情が出るようになったわね。入院中もずっと気になってたの。ちゃんと御飯を食べてるようね、大分顔色も良くなって。

   

    提督の指示は良く聞くのよ?後、夜にお菓子を食べすぎたりしちゃ駄目よ?夜更かしもほどほどにしなさいね?」


瑞鶴「ちゃんと食べてるわよ。提督が全てしてくれてるから心配しなくても大丈夫だよ。お母さんじゃないんだからそんなに言わなくても大丈夫よ。」


加賀「そう、翔鶴。ちゃんと妹の世話してあげなさいね?可愛がるだけじゃだめよ?」




まるで手のかかる娘を心配する母親の様だなと思う。


加賀という艦娘は多くの鎮守府では五航戦の二人と仲が悪いと思われがちだが実際には逆だ、


母性が強すぎてそれを上手く伝えられない表現下手。


それが普段のつっけんどんな態度に出てしまっているのが仲が悪いと思われる原因。


本当は誰よりも後輩の娘達の心配をする慈愛深き女性なのだ。目の前の加賀の状態を見ればそれが良く分かる。


五航戦の二人を見る目は正しく母の目だった。


だからこそ、今から伝えなければならないことは心苦しい部分がある。




提督「加賀。実に言い難いことなのだけど医者からの連絡であなたの艦娘の能力としての一部、水上を滑走する能力は失われてしまったそうなの。」


瑞鶴「うそ。」


翔鶴「提督、本当ですか?」


加賀「・・・・。予感はしていました。申し訳ありません。」


提督「何を謝っているの?再度いうけれど謝るのは私の方だわ。あなたがこうなる前に救い出してあげることが出来なかった。


    戦えなくなるという辛さも分かるわ。だから、あなたが希望するならば大本営でも軍令部でも好きなところに席は用意するわ。


    人としての人生を歩むのに不自由をさせることは無いと約束するわ。でも・・・・。」


加賀「でも・・・・?」


提督「私には空母の娘達の中で一番多くの実戦経験があるあなたの力が必要なの。


    そして、予想される敵の大規模侵攻作戦から泊地を防衛するためにはあなたの経験と力が必要なの。その力、貸してくれるわね?」




力強く、そして、やさしさを湛えた瞳、提督の顔を見て加賀は思う。


水上に浮かぶことが出来なくなった自分をそれでも必要だと言ってくれるならば言うべき言葉は・・・。




加賀「よろしくお願いします。」


提督「ありがとう。」




提督が手を差し出す。握手をした彼女の手は女性らしからぬ堅さを持った手だった。




提督「ところで瑞鶴。今日ね明石の工廠で面白いものを貰ったの。先日のMVPのご褒美にこれをあげるわ。」


瑞鶴「わーい。提督ありがとう!ってこれ何ですか?」


提督「戦闘機だけど明石曰くレアだそうよ?ネームド烈風改イワモト。零戦53型から機種転換でもしたのかしら?」


瑞鶴「溢れでるオーラが禍々しい・・・。」


翔鶴「瑞鶴?提督が下さったものに文句を言うのはいけませんよ?提督、妹にこんな素敵なものをありがとうございます。」


提督「いいえ、約束をしていたというのも有るけれど・・・。」


翔鶴 瑞鶴 「?」




これからの想定されている敵の侵攻作戦、それからの防衛を考えると彼女達を黄泉路へと送り出すことになってしまいかねない。


それを考えるとこの程度、安いもの。本当にそう思える。




加賀「提督、どうされました?」


提督「いえ、御免なさいね。他の娘達の所にも見舞いに行ってくるわ。

    

    翔鶴、瑞鶴、二人は加賀が無理しないようにきちんと面倒みてあげてちょうだいね?」


翔鶴、瑞鶴「はい!」


加賀「さすがに頭に来ました。」




照れた顔と怒った顔の加賀を見やり逃げるように病室を出る。


今日一日で入院中の娘達に改めて戦力としての助力を願い出るため彼女は次の病室を目指したのだった。




第7章 叢雲と実戦訓練



入院していた娘達も退院して演習に加わり、二週間が経過。全体演習も行われている中で一部の娘達には特別指導が行われている。




時雨と夕立は思う。目の前に立っているあれは正しく“鬼”なのだと。鬼らしく頭の横に二本の角があるじゃないかと。


先程から好きに殴り掛かって来なさいと言われ挑んでいるがまったく当たらず自分達との強さの差は窺い知ることができない。




叢雲「休憩は終わりかしら?そろそろこっちも煙草が燃え尽きるから攻撃に移るわよ?」


時雨 夕立「!(ぽい!)」




それまで、その場でたったまま煙草を吹かし時雨と夕立の動きを交していた叢雲が宣言する。その刹那。


ぐっと伸びた手が時雨の服の襟をつかみ顔を蹴り飛ばす、そしてその勢いのまま夕立を叢雲の蹴りが襲い二人はあっという間に青空を見ていた。




叢雲「あなた達の戦闘センスは司令官が認めるほど確かなものよ?演習開始と同時に私の目の無いほう、


    左半身へ攻撃集中させたことは正解。でも、結果はこれ。原因はなんだと思う?」


時雨「ちからの差でしょうか・・・。」


夕立「・・・ぽっ・・ぽい?」


叢雲「夕立が半分正解。相手の弱点を攻めるのはいいのだけど今回のようにあからさまな弱点を攻撃したら次の行動を相手に予測させるようなものよ?


    あなた達は戦闘センスがいいから私は開始時は左の攻撃に気をつけていただけ。そしてもう一つ、格闘しようにもここは海上よね?


    だから殴る、蹴るの動作をする際には踏ん張りが効き難いわ、だから自分の艦重を確実に乗せた格闘戦は難しい。」


時雨「だから服を掴み僕を支点とした体重移動により攻撃をしたのですね。」


夕立「ぽっぽい!」


叢雲「二人とも大正解。夕立は更にいいことに気付いたわね。近接格闘で深海棲艦を倒すつもりなら艤装の火力によるブーストもアリよ。


   戦闘で重要なのは予測と誘導。あなた達は他の娘達と比べて戦闘センスは非凡だから出来るようになると信じてるわ。


   そして、深海棲艦の人型連中は構造が普通の人間とほぼ同じ。だから、鍛えても固く出来ない腹と頭が弱点ということを頭の中に入れとくといいわ。


   じゃ、今のアドバイスを生かして再度訓練するわよ!」


時雨 夕立 「はい!(ぽい!)」




一方その頃 暁型四姉妹も叢雲から言われた訓練内容に改めて厳しさを噛み締めていた。




暁「レディには筋力も必要って言われたのだけど本当なのかしら?」


響「ウオッカがあれば問題ない。アラックは飲み飽きた。」


雷「提督が私達でないと出来ないって頼ってくれているんだからやるしかないんじゃない?!」


電「叢雲おねぇちゃんのトレーニングメニューに間違いはないのです!」




四人が行っているのは四人しか持っていない特殊艤装の錨をロープで体に括り付けての水上走りこみ。


艦娘が人間であるからこそ身体能力の向上は性能の向上に繋がるという理屈から駆逐艦の娘達は特に重点的に筋トレ等を行わされている。


駆逐艦の強みは足が速いということ、装甲は薄いが当たらなければどうということはないのだ。




球磨「ソナーに感!爆雷をどんどん落とすクマー!」


多摩「今日こそは勝たないとレポートの提出量が大変なことになるにゃ。」


木曽「北上姉さんと、大井姉さん達は別メニューかあ。いいなぁ。」




伊58「今日も勝って羊羹をもらうでち。」


伊168「今日はカステラの気分なの!」


伊8「私達の勝利は揺るぎません。」


伊401「さぁー、性能の戦い、始めるよ!」




潜水艦と軽巡洋艦達の合同演習。


始めのころこそは爆雷を落とされての回避を出来ずに大破判定を貰っていた潜水艦勢だったが


演習が進んだ今は魚雷を囮に任意の方向へ軽巡達を回避させ回避したところに予め待機していた別働隊が雷撃するといった


さながら追い込み漁的な戦法を実践し最近では負けなしの状態になっている。そして、今日の結果も・・・。




球磨「クマーーーーー!」


多摩「にゃーーーーー!」


木曽「姉さん達よ、安らかに眠ってくれ。」




木曽以外大破。結果、戦術的敗北という結果になったのだった。


そして戦場の花形、空母と戦艦、重巡の機動艦隊同士でのチーム戦はお互いに白熱の戦いを繰り広げていた。




龍驤「おー、うちの艦爆さん達が長門達を上手いこと爆撃出来てるみたいやで。」


瑞鶴「翔鶴姉ぇには悪いけど今日のおやつは私達がもらうんだから!」


龍驤「せやせや。そのいきやで。足柄ねぇさん方もごめんなー、うち足遅いからなー。」


足柄「そんなことはないわよ。私の最大は33、龍驤は29だからそんなに差はないわ!」


龍驤「せやかてそこの正規空母よりうち遅いからなほんま凹むで。」(瑞鶴は最大船速34ノット)


足柄「凹むのは胸だけにしといたらどうかしら?余りしゃべっていると随伴で来てくれている駆逐艦の娘達にあきれられるわよ?」


龍驤「うちの心は今、大破してもうたわ・・・・。」


瑞鶴「漫才はいいから早いとこ移動するわよ。艦載機の飛来方向からこっちの位置を割り出されるのも時間の問題だし。」


金剛「瑞鶴のいうとおりデース。龍驤の胸がthinなのは覆らないのデスから今は敵の攻撃に備えて移動するべきなのデース。」


龍驤「あかん、うち轟沈寸前や・・・・。」


羽黒「皆さん酷いと思います。思っていても言うべきでは無いと思うんです。薄いとか無いとかまな板とか絶壁だなんて・・・。あんまりです!」


北上「あー、羽黒ちゃんが一番酷いこと言ってると思うよー?龍驤―?大丈夫?」




龍驤 再起不能判定




陸奥「駆逐艦の娘に曳航してもらって移動しないと姉さん達がすぐに来るから急ぎましょう。」


皐月「まかされた。」


文月「適当に引っ張っていいの?」


皐月「首に紐かけよう。」


文月「西部劇で同じ用なの見たことある。」


龍驤、駆逐艦に曳航され移動





長門チーム側


長門「うむ、どうにか龍驤達の艦載機をしのげたな。」


翔鶴「瑞鶴のもってるイワモト機が鬼人の様に強くて・・・。直掩機が大分落とされてしまいました。」


大鳳「でも、艦攻はこちらも負けてません。ノナカ隊いきます!」


彗星一二甲ノナカ「ヤロウドモデイリダー!ツヅケー!」


大鳳「いってらっしゃーーーい!」


榛名「提督からいただいたレア艦攻機、調子いいようですね。」


妙高「提督がわざわざ運がよくなるお守りだって言ってくれたんですって?」


大鳳「えへへっへ///それだけじゃ無いんですよ、お嬢さんが神社で働いてるとかで伏見稲荷の吉祥お守りまでいただいちゃいましたし。

   

   提督は独身なのでしょうか///」


翔鶴「大鳳さんだけじゃありません!私も戴きました!烈風改オシブチです!」(ドヤァ)


那智「あぁ、対空戦は見ていて凄かったぞ。流石はレア機体だな。」


妙高「では、一気に距離を詰めて勝ちに行きますよ。敵の飛来方向から考えて恐らく別方向へと移動しているでしょうから。

    

    こちらに移動すれば私達の出番であるノーガードでの殴り合いが出来ます。」


大井「北上さんはこっちです!私のレーダーが反応しています。」


長門「うぅむ。恐ろしいレーダーだ・・・。」


長月「恐るべしクレイジーサイコレズ」


菊月「聞こえたら大変だよ?」




結果この日の演習は艦隊決戦での決着となりレア艦攻の働きにより僅差で長門チームが勝利したのだった。




第8章 鉄と脂と硝煙と




演習を実施し続け各艦娘達の錬度も十分にあがった頃に彼女ら、敵、深海棲艦は侵攻を開始してきた。


敵の強行偵察部隊と思われる駆逐イ級4隻は暁達第六駆逐艦隊の娘達により始末されている。




提督「流石にめんどくさい地域ね。強行偵察部隊にも関わらずエリートがいたそうよ?」


叢雲「どうでもいいわ。私がいくさばでやることはいつも同じ。」


提督「変わらないわね・・・。」


叢雲「いつもどうりよ。あなたが指揮して私が戦う。いつもいってるじゃない。戦いは始まったときには終わってるって。

  

    彩雲を大量に飛ばしたり電探を島の各地に大量に配置しているのは情報戦での優位性をとるためでしょ?」


提督「貴方にはかなわないわね。」


叢雲「あなたとどれだけ長いこと一緒に居ると思ってるの?なんなら今日の昼に何を食べたがっているか教えてあげようかしら。」


提督「・・・・。こいつを貴方に貸してあげるわ。無銘だけれど古刀の大業物の戦場刀。敵を始末して返しに戻って来なさい。」


叢雲「めずらしく弱気ね。いいわ、貰っておいてあげるわ。」


提督「地の利はこっちにあるが、数の劣勢はいかんともならないのよ。建造で新たな艦娘を出したところで袋にされるだけだからね。

   

   それなら装備の方に突っ込んで今居る子達の錬度を極限にまで上げた方が賢いと思う。」


叢雲「確かにね。夕立と時雨なんかは陸上での格闘戦では長門や陸奥に遅れをとらなくなってるわ。」


提督「頼もしいわね。」


叢雲「で、いつ来ると読んでるの?」


提督「今日よ、昼には此方の第一防御ラインの内側に入ってくるはずよ。」


叢雲「どうせ、わざとに招きいれてるんでしょ?」


提督「ふっ。本当に貴方には敵わないわね。・・・、全員集合させて貰えるかしら?」


叢雲「分かったわ。」




同日 食堂にて朝礼




提督「諸君、耳にしている者もいるかと思うけれど敵深海棲艦が我々の庭先に出現したわ。


    これは敵の本体の偵察部隊であると考えられる。

    

    そして、重要なことだけど敵の本隊に寄る侵攻作戦は今日にでも行われると予測される。」


長門「提督、我々を信じてくれきっと勝利してみせよう。」


提督「当たり前よ、私が直接指揮をとるの、勝たない訳が無いわ。今から言う編成で艦隊を作る。しっかりと心して聞いて頂戴。」


一同「はい!」


提督「まず第一艦隊 戦艦 長門 榛名 空母 翔鶴 大鳳 重巡 妙高 重雷 大井 駆逐艦皐月、文月、長月の以上9人で旗艦 長門。


    第二艦隊 戦艦 陸奥 金剛 空母 瑞鶴 龍驤 重巡 足柄 重雷 北上 以上で旗艦 金剛。


    続いて第一遊撃部隊 重巡 那智 羽黒 駆逐 叢雲 夕立 時雨 以上で旗艦 叢雲。 


    同じく第二遊撃隊 軽巡 球磨 多摩 木曽 駆逐 暁 響 雷 電 以上で旗艦は球磨。 


    第三遊撃隊 この部隊は海上の仲間への物資の補給を行ってもらうからちょっと大変だと思うが覚悟して頂戴。


    駆逐から島風、天津風、菊月 以上。潜水艦は全員で一艦隊。状況に応じて組みなおすが編成としては以上よ。


    私は諸君らの錬度であれば数の上での劣勢などまったくもって問題にはならないと確信している。


    また、諸君らの位置は上空からの彩雲と電探によりつねに把握しており戦況に応じて此方から指示を出していく。


    諸君!我々は勝利する。暁の水平線に勝利を刻むのは私達よ!」


一同「はい!(ぽい!)(なの!)(なのです!)(でち!)」




食堂に集められた彼女達はその後提督の指示により身支度を整えていく。


整え終わった彼女達の姿は同型艦の子達は見た目には髪の色くらいでしか分からないように良く似せられていた。


なぜこのようなことをするのかと長門は指示を貰ったときに確認をした。


すると提督は優しく微笑み見分けをつけなくするためだと言い放ったのだった。




長門「確かに我々は姉妹であれば艤装は同じ設計だから髪形等を似せてしまえば遠目での区別がほぼつかなくなるな。」


陸奥「さすがに空母の子達は似ていない娘も居るけどやはり姉妹で有る以上は背格好がある程度似るものね。」


金剛「提督もよくこんなこと思いつくデース。」


榛名「お姉さま髪はこんな感じでまとめればよろしいですか?」


翔鶴「瑞鶴は髪を下ろすともっと可愛いわね。」


瑞鶴「翔鶴姉ぇ、ちょっと恥ずかしい。」




めいめいがお互いの格好を見比べながら髪形等を似せていく。


東海道の狙いが何か?


艦隊を動かしていく際にそれぞれの姉妹をわざと分けることにより別々に行動していたとしても


敵である深海棲艦達につねに同じ相手と戦っていると錯覚させるという奇策をとるつもりなのだ。


敵の位置を常に把握することにより攻撃されたと思って逃げた先にも同じ相手がいるという心理的動揺、これらを狙う為の布石なのだ。


そして、駆逐艦の一部の娘達の制服は黒を基調としたものに変更をされている。


昼用の服は全員青を基調とした迷彩柄、そして夜戦用は黒服へと駆逐艦の子達は2着渡されている。


提督「正直な話、駆逐艦の娘達と潜水艦の娘達の仕事が勝利への貢献にでかいわ。


    後、加賀が今回の作戦のキーマン。いいえ、女性だからキーウーマンかしら?」


叢雲「適当なこといってないでさっさと行くわよ?」


加賀「提督、準備が出来ました。」


提督「あぁ、ん。なかなか様になってるわね。流石誇り高き一航戦かしら・・・。」


加賀「・・・・。すみません、余りほめられるのに慣れておりませんので。」


叢雲「加賀、あんたの役割は今回の防衛戦で大きな役割を占めてるわ。その航空支援頼んだわよ?!」


加賀「提督からいただいた新装備で深海棲艦等、鎧袖一触です。」


提督「えぇ、お願いするわね。」


叢雲「じゃ、いきますか!出撃するわよ!」




二人の勇ましい姿に安心感を覚えつつ、新しい葉巻を取り出し一息つく。




提督「さてと、私も仕事を遣らねばなね。家を守らないと。」




出撃する艦娘達をみやり東海道は鎮守府内に新たに作り出した艦隊作戦司令室へと向かったのだった。




第9章 空の目、地上の目



東海道は鎮守府内に設けた艦隊作戦司令室へと入る。


室内の大きな机には周辺の海図が置かれその海図は細かく四角形に区分けされている。


また、その海図上には敵と味方を表す駒が所狭しと並べられていた。


そして、部屋の中では大量の妖精達が彩雲や電探から送られてくる敵の刻々と変わる位置情報をその駒へ反映させていく。


部屋にある無線のスイッチをオンにする。




ヒトゴーマルマル




提督「諸君、先程の出陣の挨拶でも言ったが私が指揮を執る以上負けることはない。また、誰一人として失うつもりもない。


   現在の把握している敵の数は駆逐イ、ロ級計25、軽巡ホ、ヘ級計10重巡リ級8 戦艦タ、レ級8隻他に空母ヲ級6、


   戦艦棲姫に南方棲姫も確認されている。潜水艦は確認できていないが居る物として対応するわよ。


   第一艦隊の空母の娘達は艦載機全機発艦後は敵が輪形陣で進軍中のため外側の駆逐艦のみを撃沈させることに集中して頂戴。


   陣形内側の空母共は後回しでかまわないわ。そっちは長門達の仕事、奪わないようにね?」


翔鶴 大鳳「「はい!」」


提督「第二艦隊の皆、聞こえてるかしら?」


第二艦隊一同「はい!」


提督「敵を二つに分ける。片方は第一に受け持たせるがお前さん達は待機。

    

    第二遊撃隊の娘達に敵の引付を遣らせるからそれを追っかけてきた連中を沈めなさい。」


第二艦隊全員「はい!」


提督「第二遊撃隊、聞こえたわね?貴方達は速さを生かして動きなさい。それから適当でいいから爆雷を投下しながら敵を引き連れて来て頂戴。

    

    ソナーに潜水艦が居るいないに関わらず爆雷を海中投機すること。いいわね?」


第二遊撃隊「了解クマ!」


提督「いい返事ね。叢雲?」


叢雲「何よ?」


提督「分かってるわね。」


叢雲「・・・・、司令官は 誰に 何を 聞いているのかしら?」


提督「ふっ、任せたぞ。好きに動きなさい。第三遊撃隊貴方達へは彩雲から随時味方との合流ポイントを連絡する。


   燃料、弾薬の輸送が主な仕事だが貴方達の動きがこの作戦の肝よ。


   補給の後方支援のない敵を倒すには弾薬、燃料の補給が陸地から近い為容易であるという地の利を徹底的に生かす必要が有る。


   貴方達第三遊撃隊の動きに期待しているわ。以上よ!」


第三遊撃隊一同「了解!」




潜水艦の娘達は水中に居る間は無線封鎖しておいたほうが良いとの考えから予めの待機ポイントのみ伝えてある。




提督「さぁて、妖精諸君。パーティの始まりよ!」


妖精一同「Yes,Sir!」


提督「敵の動きは全て彩雲と電探のおかげで丸裸。勝てないわけがない。」


妖精A「マンシンハキンモツデス。」


提督「はは。確かにね。忠告ありがとう。で、敵艦隊の位置は全てこのとおりなのね?」


妖精B「サイウントデンタンノジョウホウハズイジハンエイシテイマス」


提督「加賀!準備はいいかしら?!」


加賀「鎧袖一触にしてみせます。」


提督「頼りにしているわよ。」


加賀「そのご期待にそえるよう最善を尽くします。」




全員に指示の確認を行い無線のスイッチを一旦切ったところで部屋に間宮が入ってくる。




間宮「提督、食事の準備が出来ました。ですが・・・。」


提督「こんな時に食事?といいたそうね。こんなときだからよ。常に冷静に判断を下さねばならないから。

    

    一手一手がお互いに致命傷よ。読み筋を間違えれば咽笛に食いつかれる。敵を侮るわけには行かんのよ。」


妖精A「ダイイチケイカイモウナイニテキガシンニュウシテキマシタ!」


提督「花火を派手に上げてもらおうかしらね・・・。」




リンガ泊地湾外海上




戦艦レ級「静カナモノダナ・・・。」


戦艦タ級「我々ニ恐レヲナシタノカモシレナイ。」


空母ヲ級A「喋ッテナイデイクゾ、クジホウコウニオキャクサンダ。」


偵察機を回収しながらヲ級が戦艦達に告げる。


そして、ヲ級が述べた方向の水平線に辛うじて見えるかという位置には第ニ遊撃隊がいた。




球磨「わー、見つかったクマー(棒読み)」


多摩「逃げなきゃいけないにゃー(棒読み)」


木曽「凄くわざとらしい・・・。」


暁「レディの見せ場到来ね!」


響「この戦いが終わったらウオッカ呑みたいな。」


雷「私達の見せ場なんじゃない?!」


電「爆雷どんどん投下なのです!」




わざとに引き付けるように爆雷投下をしながら球磨達がゆらゆらと逃げていく。




南方棲姫「私、アッチノコタチト遊ンデキテモイイカシラ?」


戦艦棲姫「イイワ、好キニシナサイ。」


南方棲姫「今ノ爆雷デ、先行シテイタカワイイ潜水艦チャン達ガヤラレチャッタ。チョット仕返シニイッテクルワ。

       

       ソレジャア、適当ニ部隊ワケルワヨ?」




作戦司令室




妖精A「テキガフタテニワカレマシタ」


提督「ふん。予定通りよ。翔鶴達の艦載機との接触まで10分程度。そこからが長くなるわね。


   妖精さん達も間宮さんに甘物作って貰っているから食べて頂戴。接敵してからは食べ物を取る間もなくなるから。


   ただ、駒の移動はしっかりして頂戴ね?」


妖精一同「Sir,Yes Sir」



自身はコーヒーを片手に寛いだ様子で作戦司令室内の妖精たちに甘物を進める。


しかし、その眼光は鋭く海図上の敵の駒の動きを注視していた。


既に敵の艦隊はリンガ泊地前の海上に侵攻をしてきており目論見通りに二手に分散させることに成功。


だが、それぞれの敵艦隊における数的優位は変わらず相手に有るのだ。




翔鶴 大鳳「全機、発艦!」


妙高「なかなか勇壮ですね。あれだけの数ともなると。」


北上「まぁー、提督が持てるだけもっていけーって言うくらいだからねー。」


長門「すまんな、私ののスピードにあわせて貰って。」


榛名「いいえ、榛名は大丈夫です。」


長門「それにしても、たった6隻の艦隊で有るにも関わらず負ける気がしないというのもなかなかあれだな。」


翔鶴「提督があれだけ自信を持って言われるのであれば間違いはありません。」


長門「あぁ、あの提督の言葉だと不思議とそう思えるからな。」


妙高「さっ、私達は仕事をしっかりとするだけですよ。」


皐月「じゃぁ、私達は翔鶴さん達と先行して敵の艦隊を攻撃に行ってきます。」




ヒトゴーサンマル




皐月達が空母の翔鶴、大鳳を護衛する形での輪形陣を取って海上を進む。


空母の二人の甲板から飛び立った艦載機達が彩雲により捕捉されていた敵第一艦隊郡に接触。


航空戦の火蓋が切って落されたのだった。


空母ヲ級2隻、戦艦棲姫、戦艦タ、レ級を内側にした輪形陣にて外側を駆逐イ級、ロ級10隻、軽巡ヘ級ホ級5隻、重巡リ級5隻が守る形で侵攻。


そこに翔鶴達の艦載機が襲い掛かる。




オシブチ「テキヲガンガンオトセ!グンカンドモハアイテニスルナ、セントウキドモヲオトセ!ヒャッハー!」




空母ヲ級2隻から発艦した艦載機とくんずほぐれつのドッグファイトを始める戦闘機妖精達。


そして、その隙間を縫うようにして艦攻機ノナカ隊が敵駆逐艦の電探に引っかからない水面ギリギリを飛んでくる。




ノナカ「ヤロウドモ、カチコミデーィ!タイホウノアネサンニオトコヲミセロ!」




艦攻妖精「オゥ!ヤッテヤラー」


戦艦レ級A「クソ、敵ノヒコウキドモガウルサイ!ヲ級、サッサト黙ラセロ!」


空母ヲ級A「今ヤッテイル、一時的ナ航空優位ハトラレルガスグニ取リ戻ス!」












加賀「と、思っているのでしょうね。」




リランカ泊地近くジャングル内にて加賀は背中に背負った矢筒から提督が第一艦隊の空母達に発艦指示を出したときから既に大量の矢を放っていた。


放たれた矢は戦闘機、あるいは艦攻、艦爆となり彩雲と電探により把握されている敵第一艦隊郡の位置へ正確に飛んでいく。




加賀「何も陸上から発艦させることが出来るのはあなた達だけじゃないというところかしら?」


明石「ちゃおー。追加の艦載機のお届けだよー。後、艦載機妖精さん達に渡す甘物と艦載機の補給用燃料に追加のボーキ。判子、ここやで?」


加賀「物資の運搬ありがとうございます。ですが、工廠を離れて宜しいのですか?」


明石「ちっ、ふざけがいのない。提督が忙しくなるのは後になるから今のうちに加賀さんのとこに追加で必要になるであろう物を届けとけって。


    後、このトラックも好きに使って。私は後ろに積んであるバイクで帰るから。」


加賀「ありがとうございます。」


明石「いいよ。礼は全て終わってから。いや、提督にかな?」


加賀「・・・・・。そうですね。」




そういうと加賀はクスリと笑う。普段余り表情を出さない彼女の顔に思わずドキリとす。


だが、明石は自身の仕事に戻る為バイクを後ろの荷台から引っ張り出しそそくさと帰っていったのだった。




加賀「さて。これだけの艦載機の数を敵は凌ぎ切れるかしら?」




提督は海上を動けない加賀をさながら敵の飛行場棲姫の様に陸での航空基地として利用することにしたのだ。


しかも、艦載機の補給は陸上である為、海上での補給が効き難い空母の娘達と違い加賀への補給は容易い。


敵からしてみれば沸き続ける艦載機の恐怖を味わうこととなる。


提督「そして、もうひとつの優位性。


    着陸できる所が増えるってのは海戦での航空戦を行った場合での艦載機の喪失原因の一つで有り撃墜の次に多い未帰還を減らせるってことよ。


    空母はつねに移動し続ける為に艦載機達が帰りの家を見失うことが多いわ?それを減らせるって事は単純にいえば継戦能力の向上に繋がる。」


妖精B「ダイイチカンタイノカンサイキタチガテキノクチクカンノソウジニセイコウシマシタ!」


提督「くっくっく、まずは、目ね。」




彩雲からの連絡を受けた妖精が敵第一艦隊群の陣形外側駆逐艦を沈めた報告する。


その報告に満足そうに不敵な笑みを浮かべ葉巻へとゆっくりと火をつけるのだった。




第10章鉄火場




ヒトロクゴーマル




長門「加賀の航空支援も加わったおかげで敵の外側が崩れたな。そして、燃料補給の為に翔鶴と大鳳の艦載機は一旦離れると。」


榛名「提督の読みどおりですね、敵の外側の駆逐艦を潰すだけでここまで簡単に接近できるなんて。


    艦載機の飽和攻撃により敵電探の処理能力を一時的にパンクさせてその後に二次攻撃機による外側の陣形の破壊。


    そして、間髪をおかずに私達が接近しての艦隊砲撃戦での殲滅。」


妙高「電探持ちの駆逐艦が多いと厄介ですからね。さ、私達のお仕事の番ですよ。」


長門「だな、火力は我々だ。」


翔鶴「では、私達は後退しますね。」


大鳳「鉄火場の花形の出番ですね!」


皐月「長門さーんこっちこっちー!」(手フリフリ)


文月「やっと会えたね!」


長月「それ、他人の台詞・・・。」




単縦陣で遅れて来ていた火力陣営が空母の娘達を後ろに控えさせた複縦陣へと陣形を変える。


そして、その火力陣営が敵の軽巡、戦艦レ級、タ級、空母ヲ級、戦艦棲姫に近づいていく。


通常であれば敵をその目に捉えるまでの間に深海棲艦の駆逐艦の電探に自分達の艦影を捕らえられる。


その為に空母からの艦載機による対策を捉えられてしまう。


しかし、先に早期警戒網の目である駆逐艦や軽巡達を潰してしまえばその能力は格段に落ちてしまう。


さらに艦載機をありったけ飛ばしたことによる敵電探の処理能力のパンク。


付け加えて今回は敵の艦載機もそうそうにかなりの数をすり潰している。




長門「敵ははっきりと見えないが彩雲からの位置情報を把握。で、あれば角度はこれで問題ないな。間接射撃の座学の知識が役立つな。」




長門の艤装の砲門が火を噴いた。




戦艦レ級A「敵ガココマデ近ヅクノヲ許シテシマウトハ・・・。」


戦艦レ級B「姫ヲ守ル為全員輪形陣ヲ再度形ヅクレ!」


戦艦タ級B「大丈夫ダ、奴ラノ砲門ハ我々ノ上空を向イテイルデハナイカ。」


戦艦タ級A「アァ、何処ヲ狙ッテオルノダ?」(クスクス)


空母ヲ級A「今艦載機ヲ収容シ終ワレバ中デ修理ガ可能ダ。」


空母ヲ級B「ソレマデ砲撃ハ暫シ待ッテクレ。」




残った軽巡が陣形の外側を守り戦艦棲姫を守る形で輪陣形を再度組みなおす。


その深海棲艦達をあざ笑うかのように艦載機が着艦体勢に入っている上空で長門の砲弾が炸裂した。




空母ヲ級A「クソ!艦載機ネライカ!アラレ弾ダト!!」


空母ヲ級B「我々ノ艦載機ガ全テヤラレテシマウ?!」




大井「戦艦タ級達が砲撃したら艦載機を巻き込むかもしれない収容中に狙うとは流石ですね。」


長門「いや、提督の指示だ。三式弾を広くばら撒くために敵の頭上にプレゼントしてやれというのもな。」


榛名「もう少し近づいたら徹鋼弾での水平射撃戦になりますね。」


妙高「私達の持てる力全てぶつけましょう。敵の航空援護はありません。」


大井「その前に私の出番よ!」


翔鶴「私達の艦攻妖精さん達は大丈夫です!すでに再発艦は済んでます。砲撃戦開始と同時に反対側から雷撃に入ります!」


大鳳「同じくです!」




ヒトナナマルニー




彩雲妖精「ダイイチカンタイガコウセンジョウタイニハイリマシタ!」


叢雲「分かったわ、さ、皆、いくさばに出陣よ!特に重巡のお二人の火力には期待してるわよ!」


夕立「ぽい!」


時雨「やっと僕達の出番だね、待ちくたびれたよ。」


那智「あぁ、やっと我々の出番か。」


羽黒「いっ、一生懸命頑張ります。」




彩雲からの連絡を受け第一艦隊の交戦場所へと第一遊撃隊が移動を開始したのだった。




大井「魚雷のプレゼント!」




大井の放った先制の魚雷が敵の陣形外側軽巡を沈める。




長門「全員徹鋼弾をくれてやれ!敵に航空援護はない!散布界の範囲内に砲身が焼ききれるまで弾を集中させろ!」


榛名「はい!榛名いきます!」


妙高「ふふ、楽しいわね。」




長門、榛名、妙高の3名の後ろに翔鶴と大鳳が隠れ前後を皐月、文月、長月が守る複縦陣形での反抗戦。


大して敵は戦艦棲姫を中心とした輪陣形。そして、空母の艦載機は無い。


その為、長門達と対峙している面と反対側からは翔鶴、大鳳らの艦攻、艦爆機。


そして、その護衛機の艦戦機が直援機の居ない軽巡達を次々と海底に沈めていっていた。




ノナカ「ヤロウドモ!タイホウノアネサンニショウリヲササゲルゾ!」


艦攻妖精s「オオオーーーー!」




戦艦レ級A「クソ!陣形の反対側ガ次々ニ沈メラレテイル!」


戦艦タ級A「敵ハ戦艦ガタッタノ2隻ト重巡1隻ダゾ!」


戦艦レ級B「ヤツラ正確ニタマヲアツメヤガル!」


戦艦タ級B「コノママデハ我等モ持タヌ戦艦棲姫様!ココハ撤退サレテクダサイ!」


戦艦棲姫「シカシ、オ前達ヲオイテ逃ゲルワケニハ。」


空母ヲ級A「艦載機ノ無イ我等ハ水上ニ浮カブ唯ノ鉄箱。」


空母ヲ級B「我等ガ盾ニナリマシテ姫ハ撤退サセテミセマショウ!」


戦艦、空母一同「「サア、先程反抗戦デスレ違ッタ敵ガ反転シテ戻ッテ来ヌウチニ!」」


戦艦棲姫「スマヌ。ココハ撤退スル・・・。」




戦闘海域を長門達と、すれ違った反対方向へ離れようとしている戦艦棲姫の前に立ちふさがる者達が姿を現した。




叢雲「なかなか武士道精神が厚いんじゃない?」


夕立「ぽい!」


時雨「僕もそう思うよ。」


那智「やれやれ、深海棲艦が大和魂とはを語るとはな。」


羽黒「やっと、追いつきました・・・。」




長門達の全力の砲撃を辛うじて生き残った深海棲艦の前に絶望が形を成して現れる。




叢雲「あんた達の覚悟は聴いた。その死に水、この私が取ってあげるわ。駆逐艦吹雪型5番艦叢雲イ号3番 いざ!押してまいる!」


夕立「ぽっぽっぽい!」


時雨「同じく駆逐艦白露型2番艦時雨、いくよ!」


那智「重巡洋艦妙高型2番艦那智、いざ!」


羽黒「おっお姉さんと同じ重巡洋艦妙高型4番艦羽黒です。」




もともと、艦載機達による攻撃で小破していた上に長門達の大火力砲撃を辛うじて生き残ったに過ぎない状態でしかない。


勝負は一瞬で決まった。叢雲の袈裟斬りで戦艦レ級Aが切り捨てられる。


時雨の腹部を狙った突きは艤装での火力ブーストも有った為戦艦タ級Bの腹を貫通。


夕立に至ってはブーストパンチで戦艦タ級Aの顔を文字どおりに吹き飛ばしていた。


そして、残る戦艦レ級Aは重巡二人の火力をもろに食らいもはや人の形を保っておらず水面に足のみが立っている状態。




空母ヲ級A「クソ!コウナレバセメテ姫ガ逃ゲキルマデノ盾ニ!」


空母ヲ級B「我等ハスデニ艦載機ガ無イ、共ニヨミジヘマイロウゾ!」




空母達は戦艦達があっさりと殺られるのを見て自爆をするつもりなのか一気に間合いを詰めて来る。




叢雲「お断りよ。あんた達みたいな醜女と黄泉路なんて。」


夕立「ぽい。」


時雨「酷いね、でも、同感だよ。」




駆逐艦の3人と重巡の2人の砲門が空母達の方へ向けられ無慈悲にその威力を発揮し敵第一敵艦隊郡の戦力は消え去ったのだった。


辺りの海面は深海棲艦の血とも油ともつかぬもので海面が真っ赤に染まっている。




那智「叢雲よ、我々が敵の戦艦棲姫を追わなくてもいいのか?」




ビュホウと大きく風斬り音を立てながら刀についた脂を落とした後に懐の煙草を取り出し一服をしていた叢雲に那智がもっともな疑問を浴びせる。




叢雲「平気よ。長門達が始めにぶつかった際にとっていたのは反抗戦だから。」








長門「そういうことだ。」


榛名「提督の読みどおりでしたね。」


妙高「ここまで型に嵌っていると恐ろしいですが・・・・。」


翔鶴「私達の艦攻機も艦爆機もまだ爆弾とか余裕ありますよ!」


大鳳「同じくです。」


大井「魚雷は使いきっちゃったけど弾はあるわ。」





反抗戦ですれ違ったまま長門達は引き返すことなく敵、戦艦棲姫が逃げてくるで有ろうことを予測してその場所へと移動していたのだった。





戦艦棲姫「クソ!クソ!何デコンナトコロニイルノ!」





戦艦、重巡、雷巡の砲門が戦艦棲姫の方向にいっせいに向き照準を合わせる。



長門「お前さんの疑問に答えるのはやぶさかではないが」


榛名「私達がどうしてここに居るかですか?」


妙高「そうですね、どうしてかお分かりにならないようですね?」


翔鶴「まぁ、貴方には同情するところも無きにしも非ずです。」


大鳳「味方は貴方を逃がす為に全滅したみたいですし。」


大井「結局無駄になったみたいだけど。」


皐月「まぁ、今のあんたに言葉を送るなら」


文月「今回においては戦う」


長月「相手が-----」












提督「悪かった。だな。」




長門達の第一艦隊が戦艦棲姫を撃沈した報告を無線で受ける。


東海道は口に咥えていた葉巻を海図の上に置いてあった戦艦棲姫を表す駒に押し当て火を消した。




提督「さて、残りの一仕事、待ちわびた夜がやってくる。」




時刻はヒトハチサンマル。


まもなく、日没である。リンガ泊地での防衛線はまだまだ前哨戦が始まったばかりであった。




第11章  チャンスとは待つ物ではなく作りだすものである




南方棲姫は焦っていた。分けた部隊、それも自分と同格の戦艦棲姫が率いる艦隊が全滅したと空母ヲ級の偵察機からの連絡で知ったからだ。




南方棲姫「ドウヤラ我々ハ敵ヘノ認識ヲ改メネバナラヌヨウダナ・・・。」




現在彼女が率いる第二艦隊郡は敵である球磨達第二遊撃隊の徹底的な逃げの作戦により泊地近くの湾内にまで侵入してきている状態である。




南方棲姫「我々ガ数デ勝ッテイルノハ間違イナイノダガ、イカンセン敵ノ動キガ前回ノ時ト違ウ。何カ意図メイタモノヲ感ジル。」


戦艦タ級C「確カニ前回戯レニ侵攻シタ際ニハココマデ組織ダッタ動キハミラレマセンデシタ・・・。」


戦艦レ級C「敵ノ出方ヲ伺イマスカ?マモナク日没デスシ・・・。」


空母ヲ級C「薄暮攻撃ガアル可能性ガアリマス。」


空母ヲ級D「マサシク、コノ時間ニ攻撃ヲウケルヨウナコトニナルノハ避ケルベキカト。」


空母ヲ級E「シカシ、ソレニシテモ先程カラウロウロシテイル敵ノ雑魚ドモガ鬱陶シイ。」


空母ヲ級F「艦載機全機デ沈メテヤリマショウ。」


南方棲姫「イヤ、ソレヨリモヤツラヲ護衛シテイル直掩機ガドコカラ飛来シテイルカガキニナル。ドウモ陸上ノホウカラノ気ガスルノダガ。」


戦艦タ級D「先程カラ周リヲチョロチョロシテイル軽巡ドモデスカ。」


南方棲姫「アァ、ヤツラノ編成ニ空母ハイナイ。デアレバ空母ガ近クニ居ルハズ。

       

       ダガ、ヤツラニハ飛行場棲姫ノヨウナ奴ハ居ナイハズダ。ヤハリ空母ガ近クニ居ルト考エルベキデアロウ。」









龍驤「そろそろ、うちらの存在が怪しまれてるやろなー。」


瑞鶴「まぁ、球磨達に直援機を張り付かせてるしねー。」


龍驤「ちゅうても、加賀のことは想像しても確信はできへんやろな。」


瑞鶴「まさかねー、飛行場棲姫みたいなのが居るとは想像してもねー。」


陸奥「あらあら、後は球磨ちゃん達が更におびき寄せれるかですけどね。うふふ。」








球磨「今、背中に寒気を感じたクマ・・・。」


多摩「島風から爆雷貰って投下して、投下したら全力で逃げて・・・。敵がそれなりに奥まで入ってきたにゃ。」


木曽「足が速いのが僕らの強みだからね。それに、上空は瑞鶴達の援護があるし。」


球磨「もう少ししたら瑞鶴達の艦載機が全力突入になるクマ。」


多摩「翔鶴達もこっちに向かってるそうにゃ。」


木曽「今しばらく引き付けなきゃだね。」






球磨達が再度、敵艦隊から見て水平線のギリギリの位置を保ちながら敵を再度おちょくる。




空母ヲ級D「エェイ、ウットウシイ、姫、我ラガ数的優位ナノハ変ワラヌ状態カト。

       

        戦艦棲姫様ハ残念デハアリマスガ弔イノ為ニモマズハアノ軽巡共ヲ血祭リニスルコトヲオ許シ下サレ!」


南方棲姫「フム、ソウダナ相手ノ出方モ見タイシ、イイゾ許可シヨウ。駆逐、軽巡、戦艦達ヲイクラカ連レテ行クガイイ。」




挑発についに耐え切れなくなったのか南方棲姫は自軍をさらに分ける選択をしてしまったのだった。


それが、自分達が敵の思惑に嵌ってしまったとも思わずに。




提督「クク、クックック、クハハハハハ!莫迦め!部隊を分けたわ。これで、勝利は揺ぎ無いわ!龍驤、瑞鶴聞こえる?!」




龍驤「聞こえとるで、さっきの下卑た笑いからな。」


瑞鶴「球磨達のお守りはもういいのかしら?」


提督「加賀も聞こえていると思うが今から南方棲姫達の居るほうの第ニ敵艦隊郡の方に薄暮攻撃をかけて貰う。


    金剛、陸奥、足柄、お前さん達は瑞鶴達を庇いながら所定のポイントへおびき出して頂戴。


    この攻撃で敵を沈める必要はないわ。今から行うのは敵への恐怖の植え付けが目的よ。


    暁、響、雷、電の4名は囮の役目を終了して金剛達に合流して頂戴。できるわね?」


暁「レディイの私に愚問ね。」


響「ウオッカ飲みたい。」


雷「提督も頼り方ってものが分かってきたんじゃない?」


電「はいなのです!。」


提督「いいか、日没までの僅かな時間が今からの勝負だ、日没までの間に出来る限りのダメージを与えてやれ!」




提督が薄暮攻撃の指示を出す。


自軍が優勢な状況であれば通常は機影が分かりにくくなり同士討ちの起こりやすくなる薄暮攻撃を行うことは御法度だ。


しかし、深海棲艦達の艦載機と艦娘の艦載機とではその機影は大きく違う。となれば、薄暮攻撃についてはメリットしか残らない。


攻撃側有利というメリットのみが。


無線からの指示を受け一斉に艦載機達が南方棲姫達の居る艦隊郡へと襲い掛かる。


加賀や翔鶴、大鳳からの艦載機達も合わさり数の上だけでなら深海側と拮抗なのだが。




提督「錬度の差は深海側は覆えせんだろな。」




普段は攻める側の深海棲艦達が合えて薄暮攻撃などを今まで取ることなどあろうことも無い。


対して、それに備えて演習を繰り返してきた艦娘側の艦載機達と比べれば動きに圧倒的な差が出来ていた。


結果、深海棲艦側の艦載機は大きく数を減らした。




そして、第ニ艦隊達の下へと彼女らが補給物資を持ってやってくる。




島風「お届け物だよー。」


島風が空母の二人に艦載機の弓と式神の補給を持ってくる。


瑞鶴「ありがとー。」


龍驤「おおきにな。島風は今回は輸送任務なんやなー。」


島風「うん!司令からあなた以外適任がいない!補給を疎かにした部隊はその時点で敗北だから、お願いするわね!って言われたの!」


龍驤「せやな、偵察機からの情報でコロコロ位置変えるうちらに追いつける足があるんは島風ぐらいやもんな。きばっていこな!」


島風「うん!じゃ、工廠に戻って翔鶴達のとこへの配達に行ってくるね!」




戦争において補給をおろそかにした軍隊が勝ったためしは無い。


始めの勢いこそ良くても補給線が維持できない軍隊は長い歴史上多くが悲惨な負けとなっている。


だからこそ、島風の足の速さを徹底的に生かして補給を洋上の空母を初めとした艦娘達に行っている。


そして、無線の連絡が待機していた戦艦達に入る。





金剛「私達の出番デース。」


陸奥「あらあら、このまま出番無いかと思ってました。」


足柄「ほんとにね、やっと、出番が巡ってきたというところかしら。」


瑞鶴「火力の皆さんには提督も期待してましたよ!」


龍驤「ほんならうちらはゆっくり姉さんがたの後ろに隠れよかー。もうすぐしたらうちらの艦載機も戻ってくるけー。」




深海棲艦達との交戦を済ませた龍驤達の艦載機が戻ってくるのが見えるくらいに敵の姿も水平線の向こう側に見えてきた。




金剛「反抗戦になるデース。」


陸奥「そして、そのまま反転せずにすれ違ってスルーでしたわね。」


足柄「こういうのもなんですけどついてくるのでしょうか?」


瑞鶴「でも、言われたとうりにするしかないし・・・。」


龍驤「信頼できる提督やろ?ならうちらは従うだけや。いらん疑念は捨てとき。」


足柄「それもそうね。」


金剛「適当にやりあって全力でEscapeするデース!」




薄暮攻撃の後の艦隊砲雷撃戦。ここまでは先程の戦艦棲姫達と変わりは無い。


そして、戦艦棲姫達がやられた状況に関しては深海棲艦側も把握していたので彼らは艦載機を失う可能性も恐れずに反撃をしてきたのだ。





南方棲姫「ヤツラヲ追イカケル全軍反転!生キ残リタケレバ全軍デ敵ヲ滅ボスゾ!」


南方棲姫が深海棲艦達の生き残りに声をかける。流石にこちらの方が先に滅ぼした第一艦隊群より多く残っている。




提督「生き残りの為に全力で持って敵に当たる。実に正しい。ただね、もう少し早く決断するべきだったわね。」




反転の為に速力を緩め完全に深海棲艦の艦隊が後ろを向いた時だった。


無数の魚雷の航跡が後ろから襲い掛かったのだった。


そして、南方棲姫の率いる艦隊の凡そ半分が沈む結果となった。




伊19「やったなの!」


伊58「一瞬の隙をのがさないでち。」


伊8「ウルフパック作戦をやるって言われた時はどうなるかと。」


伊401「頭の上を敵が通過したときはひやひやしたよー。」




一度きりのチャンス、それも、日没寸前にこの一撃を与える意味を知り尽くした上でのウルフパック作戦。




提督「潜水艦の一番恐ろしいところは専用の装備が無ければまず倒すことが不可能という点。


    そして、この攻撃まで使わなかったことにより潜水艦が居るかもしれないという意識をさせないこと。


    それがこのウルフパック作戦の成功の要因ね。だが、一番恐ろしいことは日没を迎えるということよ。


    夜の潜水艦はまず見つけられないわ?敵からは攻撃し放題で自分達は認識できない。


    こちらが対潜装備もちの駆逐や軽巡を重点的に潰しているからね。くっくっく、夜の恐怖をしっかりと味わってもらおうかしら。」





見えない敵からの一方的な攻撃が来るかもしれないという恐怖。


戦場において恐怖を抱くようなことがあれば隊伍が崩れる。


そうなれば、あとは個別掃討戦を行えばいいだけなのだ。




提督「さて、これで、敵の大将の器が見れるかしら?くふふふ。」



実に楽しそうに笑うとまた新たに葉巻に火をつけ加えるのであった。この戦闘指揮中、彼女は葉巻を吸うのを止めるつもりは無いようである。





まだまだ夜戦は続きそうである。




第12章 リランカは燃えてるか



※艦これ内での爆雷サイズなのですが350ml缶程度のサイズのようです。では実際的なサイズというとドラム缶程度程のサイズ。

 

 輸送用ドラム缶は普通のドラム缶サイズでの描写。魚雷は艦娘それぞれによってサイズまちまち。


 ということもあるので申し訳ないのですが物語り進行上の都合で爆雷とドラム缶は同程度のサイズとさせていただいております。






南方棲姫達の生き残った者達は先に別れた者達と合流すべく移動している。残存勢力の再結成により撤退戦を行うつもりのようである。



提督「もう少し早く決断しておくべきだったかな?行きはよいよい帰りは怖い。」


間宮「とうりゃんせですか?」


提督「えぇ、私は敵を帰らせるつもりは微塵も無いわ。」




日没を迎えたこともあり夜の長丁場を前に夕食を運んできた間宮さんが提督の独り言に返事を返す。




提督「球磨!お前さん達を追っかけていった戦艦達の群れに南方棲姫達の残存兵力が合流するわ!


    金剛達の作戦は成功したから第三段階に移行するわ!派手に花火を挙げなさい!」


球磨「了解クマ!」




無線の指示を確認する球磨。日没前から引き連れまわしていた戦艦達の姿は日が暮れた今肉眼では確認できない。


彩雲から位置の連絡でどうにか自分達を追っかけてきていることが分かるくらいである。




木曽「ねぇさん、敵の位置は分かるの?」


球磨「大丈夫クマ、でも、その前に荷物の受け取りがあるクマ。」


多摩「そうにゃ。」




球磨、多摩がそういったと同じくらいに闇の中から島風がニュッと顔を出す。




島風「今回は荷物が多いからみんなでもってきたよ!」


天津風「やっと台詞が言えたわ。」


菊月「うむ。あまり台詞がないというのもな・・・。」


文月「全員で持ってこないと持って来れませんでした~。」


球磨「ありがとうクマ。これでバッチリ花火をあげれるクマ。」


多摩「大量だにゃ。」


木曽「流石にすごい量だね。」




提督「島風達きこえてるかしら?」(無線)


島風「聞こえてるよ~!」


提督「貴方達も球磨達といっしょに花火大会やって来なさい。火傷には気をつけるのよ?」(無線)


天津風「あら?いいのかしら?」


提督「貴方達を計算に入れてのその量よ、よろしくお願いするわ?」(無線)




荷物の引渡しを終え、球磨達と島風達輸送特別部隊が合流する。




提督「陸奥、聞こえるか?」


陸奥「えぇ、聞こえているわぁ。」


提督「敵の位置は大まかには彩雲妖精から聞いてるとは思うけれど凡その位置に移動を開始してもらえるかしら?」


陸奥「それはかまわないのだけどここまで闇の状態ですと何も出来ないのだけど・・・。」


北上「探照灯もってきてないからねー。」


提督「それについては心配不要よ。じきに花火が上がる。貴方達はそこにありったけの砲弾を北上は魚雷をぶっぱなして頂戴。」


金剛「オッケーネー、提督がそういうなら任せるネ!」


提督「まかせたわよ、空母の連中は可能なら艦載機を出してもかまわないけれど砲撃に巻き込まれるのが関の山よ。


   出すなら砲撃戦の後の残党狩りくらいにしておいて頂戴。」


瑞鶴「了解!」


龍驤「了解やー!」




提督「さてと、闇夜の烏は何処で鳴くのかしら。」




戦艦タ級「南方棲姫様カラ此方ニ合流スルトノ連絡ガ有ッタ。」


戦艦レ級「我々ハ敵ノ力ヲ見誤ッテイタヨウダ・・・。」


球磨「今更遅いクマ。」




闇の中から姿を現した球磨達



戦艦タ級「クソ、ココマデノ接近ヲ許ストハ!」


戦艦レ級「ダガ連中ハ軽巡ダ我々ノ砲撃ヲ耐エラレルハズハナイ!」


球磨「誰が相手するって言ったクマ?」


多摩「そうにゃ。」


島風「これをどんどん投下していけばいいんだよねー。」


天津風「はいはいっと。」


菊月「爆雷?ではないのだよな。」


文月「とりあえず、投下しとけって提督いってたよ。」




背中を見せて全力で逃げる球磨達、先程までの深海棲艦達なら間違いなく追いかけていたであろう。


しかし、彼らは今は自分達の味方との合流待ちである。しかも、球磨達が投げ捨てて行ったのは今までと同じ爆雷。


攻撃手段としては自分達洋上艦には一切意味の無い物なのである。



戦艦タ級「アイツラ爆雷好キダナ。」


戦艦レ級「ソレシカ積ンデナイノダロウ。」




思い込み。度重なる爆雷投射作業が今回の投射された物も爆雷であると深海棲艦達に判断させるには十分であった。




球磨「まさしく莫迦めクマ。」


木曽「ここから一直線で魚雷を放てば花火が上がるね。」


多摩「一番最後に捨てたドラム缶が見えるにゃ。」




そう、球磨や島風達が海上に投射したものは形状こそ爆雷そっくりではあるもののその実は燃料がたっぷりと詰まったドラム缶なのである。


そのドラム缶に向けて魚雷を発射すれば当然大爆発が起きる。




陸奥「あらあら、本当に花火が上がったわ。」


金剛「Oh、探照灯も照明弾も確かに必要ないデース。」




深海棲艦達の周りはドラム缶が次々と誘爆し昼間の様な明るさとなっている。


海上での火災の恐ろしいところは油が水に溶けない為横に広がり続けるということである。


つまり、深海棲艦達の居る一体は火が広がり続ける状態となり逃げようと動けばより一層に延焼範囲を広げることとなるまさに地獄絵図なのである。


加えて戦艦達による砲撃。当たらずに海上に着弾した物は火と油を撒き散らすこととなる。


更には火を避ける為止まろうものならたちまちのうちに魚雷の餌食。


逃げ出すためには火の中を突っ切るしかない。少しでも躊躇えば砲撃か魚雷の餌食になるだけなのだ。




提督「まぁ、その手しか選択肢はないわな。」




砲撃されている方向とは反対側に向け海上を脱出し始めたとの連絡を受けつぶやく。


深海棲艦と陸奥達の間には当然今上がっている炎の壁が有る。


自軍の犠牲を気にしないでというよりそうするしかないのだが炎から脱っすることが出来ればその炎が深海棲艦を守る盾となる。




提督「とはいえ、ここまで用意をして居る相手がみすみす逃がすとでも思うのかしら。」


妖精A「ショウシ!」


提督「まったくよ。」




炎を抜けた先には当然のように球磨達第ニ遊撃隊が待っており敵を残らず殲滅。


炎の中から出てこようとしていた敵深海棲艦達に無慈悲な砲撃を浴びせたのだった。


そして、ここに深海棲艦達は水底に皆沈んでいく結果となったのだった。




提督「さぁ、後半戦よ!諸君!敵に朝日は拝ません!今しばらく引き締めていくわよ!」


残りの深海棲艦は南方棲姫の残る部隊のみ。


全員に最後の仕上だと声をかける。まだ、日の出までには時間があるがそれまでの間に勝負を決めると。



第13章 読み違い



残る残存勢力は南方棲姫達のいる勢力のみ。


夜間での索敵能力の低下があるとはいえ、凡その位置は把握している。


なれば、此方の艦隊戦力の全投入に寄る殲滅。これが正しいと思われる。しかして、敵の合流ポイントでは大火災が上がっている。


当然のことながらそこへは南方棲姫達が向かうのは無意味といえ最適解があるとすれば味方の救出を諦め現場海域からの全力の離脱である。


そして、東海道自身もそうあるだろうと予測し艦娘達の部隊については夜間攻撃力の落ちる空母達へは


装甲値の高い大鳳のみ残し他には帰還を命じていた。


空母の夜間発艦能力については深海側もほぼ同じな為地上からの加賀と大鳳の航空支援とで足りるとの計算が働いた結果なのである。


だが、この判断が思わぬ事態を引き起こすこととなってしまったのであった。


そして、同士討ちを避けるため潜水艦の娘達も引き上げさせていたこともこの事態に追い討ちを掛けることとなった。




南方棲姫「コノママオメオメト撤退スルノハ何トイウ恥。」


戦艦タ級「シカシ我等デ残ッテオルモノハ装甲ガ厚イオカゲデ先程ノ雷撃ヲ耐エタモノガ僅カバカリ・・・。」


南方棲姫「敵ノ指揮官ガ見事デ合ッタト言ウヨリ他有ルマイ、ダガ、コノ命果テル前ニ一太刀浴ビセテクレヨウデハナイカ。」




南方棲姫は残存部隊を更に分ける。


そして、自身と随伴に戦艦レ級を一人のみとして東海道の指揮を執る鎮守府への特攻を決定した。


他の深海棲艦達は撤退。恐らく全滅の為に敵が動いてくることを予測した上での全力での囮としての役割を持たせる為に。




瑞鶴「はー、長かったー。翔鶴ねぇ、帰ったら御飯食べようね!」


翔鶴「そうですね、お腹がすきましたね。」


加賀「そういうと思って提督が間宮さんに指示して御飯を用意してくださっているそうよ。」(無線)




五航戦姉妹の会話に加賀が無線で割り込む。




瑞鶴「本当?!わーい!加賀ねぇ、御飯いっしょに食べようね!」




先の一件もあり瑞鶴は加賀をもう一人の姉のように慕っている。




加賀「えぇ、翔鶴も一緒に食べましょうね。」(無線)




加賀は翔鶴にも声を掛ける。二人は加賀にとって妹の様なものだから。




龍驤「うちだけ蚊帳のそとやなぁ。」


龍驤「まぁええか、帰るでー。」


龍驤「あぁ、せや、瑞鶴。一応周囲警戒用に艦載機飛ばしといてなー。


    うちのはもう式神使いきってしもてなー。内緒やけど今のうちは置物状態なんやねん。」


瑞鶴「だったら以前に提督からもらったネームドを発艦させるね。妖精さん曰く『昼間でも星が見える』くらい目がいいんだって。」



鎮守府へと帰投する空母陣。


艦載機の喪失はそれぞれの艦娘にとって思うところは有るだろうがそれを口に出すものは居ない。


そして、防衛戦がつめの段階に入っていることも理解している。


帰投までに自分達の安全確保のための警戒を怠るつもりはなかったようではある。


鎮守府への真っ直ぐの帰還では無くあえて加賀が居る別方向の浜辺に上陸を目指しているのも万一の事を考えてだった。


空母の娘達が会話を楽しんでいる時を同じくして長門達に先行して特Ⅲ型駆逐艦の娘達が敵の艦隊へと軽量、高速を生かした襲撃を仕掛けていた。


夜間での攻撃は前述のとおり本来ならすべきでは無い作戦。


しかし、数の劣勢を跳ね返すという為には奇策でも採らざるを得ないのが実際である。




暁「レディなら、ワルツの一つ位は踊れなくっちゃね!」


響「ロシアの偉大なる作曲家ストラビィンスキーの代表曲は白鳥の湖なんだよ。」


雷「とりあえず、私達の出番なんじゃない?!」


電「今こそ訓練の成果を見せるときなのです!」




闇の中から暁達が迫るが砲撃をするでなく一気にすれ違う。


駆逐艦種類の快速を生かし一気に離脱する。その行為には全くの意味はなさそうなのだが・・・。


その瞬間だった。


戦艦タ級達の足をとるものがあったのだった。


何か?


そう、彼女達艦娘の持っている碇である。


夜間の海面に錨を沈めそれを彼女達が鎖で一気に引っ張る錨はその形もあり敵深海棲艦達の足を引っ掛けるには充分であった。


そして、あえて発砲を行なわないことにより発砲炎による位置がばれる事を防いだこともギリギリまで近づくことには必要だったのだ。


訓練において体力作りも兼ねて行なわれてきた錨の曳航。その訓練の成果が今、此処に実を結ぶ。


深海棲艦達は引っ掛けられ一気に体勢を崩す。そして、為す術も無く海面に横倒しになる。


横倒しになった所に北上達雷巡の魚雷が炸裂する。


元々魚雷は海上に立っている状態であると点に対して狙う形になるため当たり難い。


ましてや現代のように魚雷がソナーで追っかけていくなんていう機能の無い第二次大戦準拠であれば直線の軌道を描くのが当然。


それが暁達の錨に足をとられ海面に横たわった状態であれば?


放射角内での当たる面積が多くなるため当然の様に命中率は上がる。




北上「いいねぇ、いいねぇ、痺れるねぇ。」


大井「手ごたえは有りましたね。」




重雷巡の彼女達の放った魚雷の爆発に深海棲艦達の艤装に残っていた燃料に引火。


結果先程までとは行かないまでも小さく炎があがり長門達戦艦が弾着観測射撃を行なうには充分な灯りではあった。




叢雲「これで、全て片付いたかしら。」




胸元から煙草を取り出し火をつけ、満足そうに一服。




夕立「ぽい!」


時雨「そうだね、分かれていた敵の部隊は全部だと思うよ。」


長門「以外にあっけなかった気がするな。」


陸奥「提督へ無線連絡を入れておくわね?」


大鳳「・・・、その。宜しいですか?」




おずおずと大鳳が声を出す。




叢雲「何かしら?」


大鳳「南方棲姫が見当たらないのですが・・・。」




一瞬の沈黙の後




叢雲「しまったぁ!!」




今までに見せなかった焦燥を浮かべ叢雲が吼える。


煙草のフィルターを食いちぎる勢いで叢雲が焦る。




叢雲「島風!天津風!あんた達は全速で鎮守府へ戻って!敵の特攻部隊が向かっているに違いないわ!先に帰投させた空母の娘達が危ないわ!」




島風や天津風が幾ら速いといっても空母達に追いつくまでには時間がやはりかかる。




叢雲「長門。いえ、戦艦や重巡の皆にお願いしたいのだけどいいかしら?」




今は一刻も早く鎮守府へ強襲を掛けようとする敵へ向かうべきところに叢雲が皆に向かい改まったように願い事を述べる。




叢雲「足の速い駆逐の娘達で何とか敵の足止めをするわ。


   そして、成功したら照準を付けやすくしてから現場を離れるからそこにありったけの火力を叩き込んでもらいたいの。」




敵の中でも装甲の厚さを誇る敵レ級。


そして、姫級達の中では薄いと言えどもやはり其処はボス級の南方。


全力で行かなければ倒すことは適わないだろう。




長門「無論だ。」


叢雲「お願いね?」




念を押すように返答すると駆逐艦の娘達は先行して鎮守府へと帰っていった。


空母の娘達が用心の為に鎮守府の方向とは別方向へ向かっていたことを叢雲達は知らない。


いや、冷静であったなら加賀と陸で合流をするだろうという考えに至っていたかも知れない。


だが、ここに至って敵の最大戦力を狩り逃すという事態にその考えはなかったようだ。




イワモト「敵2隻接近中!!」




暗闇の中、星の明かりさえない新月の漆黒の中でさえその化け物の目は狼が迫っていることを見落とすことは無かった。


しかし、その声は自分達の仕事は終わったと、今回も生き残れたと安堵したいた彼女達空母勢には悪夢のようにも聞こえる。


すでに艦載機はすり減らし爆装させるだけの弾薬も残っていない。発艦こそ出来るものの敵を迎撃できるような状況ではなかったのだ。




南方「フム。ヤハリ一旦別方向ヘ移動シテ拠点ニ戻ルカ。良ク躾が出来テイル猟犬ダナ。」




暗闇からレ級を従え現れる絶望。




レ級「空母ダケカ。フフン。少シハ楽シマセテクレルヨネ?」




目の前の姫級より凶悪な戦艦、いや、戦艦の規格に当て嵌めるのもおこがましい敵。そのレ級の規格外の火力が今彼女達に向けられた。


その敵の攻撃に一番最初に反応したのは軽空母の彼女だった。




龍驤「あー、やっぱ、紙装甲のうちじゃどうもならんなぁ。」




レ級の一撃を全身に受ける。その状況は明らかに大破。




翔鶴「龍驤さん!」



龍驤「うちはな空母としてみんなの姉みたいなもんや、加賀や赤城らもな妹みたいなもんや。


    ここ一番で命張らんでいつ張るんや。翔鶴、瑞鶴、あんたら逃げぇ!


    艦載機がなくてもなぁ、まだまだ出来ることはあるんやで!?」


龍驤「それにな、あの提督のことやうちらの位置を把握してすぐに応援をよこしてくれるわ!今は後ろを振り向かんと前の浜辺へ全力で逃げるんや!」




龍驤が叫ぶ。彼女達は既に本来の揚陸地点であった浜辺には着いていたのだった。




南方「ソレハ困ルナ。オ前達ノ拠点ノ正確ナ位置ヲ教エテ貰ワナケレバナラナイカラナ。」




南方がそういうなり龍驤に自身の砲搭を向けたときだった。


龍驤の横を掠めて敵に体当たりをした艦載機があった。




イワモト「ヤッタゼ!」




闇夜にパラシュートの真っ白い華が咲く。自身の乗っていた艦戦を南方にぶつけたようだった。


その一瞬に南方の気が逸れる。そして、彼女がそこに間に合うだけの時間にを作るには充分だった。




カン。



カッ。



カッ。カッ。カッ。




南方棲姫の艤装に矢が幾本も突き刺さる。南方が矢の飛んできた方向へ視線を移せば其処に加賀が立っていた。




加賀「二度と、仲間を。家族を。やらせはしません!」




加賀は海上へ走る。作戦前に受けた提督から受けた忠告を完全に無視して。


その忠告とは作戦開始の一週間程前に遡る。




提督「いえね、艦娘全員基本改ニになろうと思えばなれるのよ。」


加賀「はぁ。」


提督「ははは。貴方にしては気の無い返事ね。改、改ニっていうのはね内緒の話なんだけれど艤装の制御システムの話でしかないの。」


加賀「制御システム?」


提督「えぇそうよ。あなた達の使用する艤装の出力を落す或いは制御する為のシステム。改ニは出力をより最適化してあげているだけかしらね。」


加賀「では私も改ニになれると言うことですか?」


提督「聞いた話ではね。でもね、今言ったように『 制御システム 』なのよ。


    あなたの様に艤装の解析が進んでいない初期型の娘が改ニを自分の意思で開放なんてことになれば100%艤装が暴走するわ。」


加賀「暴走ですか?」


提督「えぇ。普段は制御されることにより敵からのダメージが身に着けている衣服、まぁ艤装の一部ね。


    それに分散されることにより本体、つまり肉体へのダメージは抑えられているわ。


    ただ、システムが暴走すると肉体へ直接すべてのダメージが流れる。


    しかもそれだけじゃないわ、普段肉体へ流れないようになっている艤装からのエネルギーがダイレクトに流れるの。


    結果として生身が耐え切れず早い話が寿命の低下に繋がってしまうわ。」


加賀「艤装の話は初耳ですが・・・。」


提督「そうでしょうね。改ニとかのシステム関連は機密指定だからね。


    ただ、貴方は仲間の為なら無茶をしそうだからね。今度の作戦で無理して死なれたら目覚めが悪いじゃない?


    だから釘を刺す意味でも教えておこうと思ったの。」




提督は更に続ける。




提督「特に初期の娘達ほど艤装の解析は進んで居ないのよ。最初から有るのにね。


    コピーで作られてきた翔鶴や瑞鶴といった娘達の方が貴方達の艤装からブラックボックス部分を切り捨てて作られているから


    システムを組み易いのでしょうね。だから、貴方は絶対に力を意識しては駄目よ?


    一時的には今機能を失っている海上航行能力は戻るかもしれない。


    でもね、寿命と引き換えに得るとしては分の悪い物だとは思わない?」




だから力の解放を心に願うな。


彼女はそう言っていた。




加賀「思えば振りという奴だったのかもしれませんね。もっとも確認をとることが叶うかどうか分かりませんが。」




弦を引き矢を番え放つ。




加賀「今、この時に仲間を助けられずして何の力ぞ!加賀、改ニ、解放!」




自身の寿命と引き換えに彼女は力の解放を選択した。


それは鬼のようであり仏の様な、恐れと慈愛、その両方を感じさせる背中だったと後に龍驤は語る。


そう、仏敵を狩る、明王のようであったと。



次回へ続く!


後書き

1年ぶりの更新

やる気なしだなぁ(棒読)

最近、他のも更新とまり気味で申し訳ありません。

これも次回更新がいつになるやら、物語自体はクライマックスへと動いているのですがいかんせん

やる気の問題です、はい。

では、では、ここまでお読みいただきありがとうございました!


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魅兎さんから
2016-04-10 22:46:51

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このSSへのコメント

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1: ポテ神 2016-04-06 18:23:07 ID: nv6cx-Oz

セリフとセリフの間に一行あけたりすると読みやすいかもですよ?

これから頑張ってくださいね応援していますよ!ファイト!

女性提督はあまりないので楽しみですよ

2: T蔵 2016-04-06 23:39:51 ID: RKfwvLiw

ポテ神様
人気SS作者様に読んでいただいた上に
アドバイスまでいただけるとは恐縮です。
ハードボイルドな女性ってかっこいいなぁと思っている駄目人間
ではございますが宜しければ今後ともよろしくお願いいたします。

3: SS好きの名無しさん 2017-07-26 01:27:53 ID: QXto0PBQ

リスク有りのパワーアップはかっこいい

4: T蔵 2017-07-29 09:59:20 ID: pIY_yT5S

3番様

コメントありがとうございます

パワーアップは味方のピンチ時にリスク有りで!は王道ですよね

ゆっくりで申し訳ないですがなるだけ早めに更新頑張ります


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