2017-11-15 05:26:08 更新

前書き

前提として、勇者のように一般的な人間が魔王城に徒歩でたどり着くには、どのルートを使ったところで、半日ほど森の中を歩かなければならない。
この森には魔物を代表する有毒魔物や、凶悪で残忍な魔物が所狭しとひしめきあっており、そこはもはや地獄すらも生ぬるいーー。
・・・なんて話は一部の人間が語っているだけである。
確かに城の魔物が時おり森に出向くことはあるが、それはあくまで森林浴や食材の調達でしかない。
暇をもてあました魔物たちにより適度に手入れをされた森は、あるいみ大自然をそのまま贅沢に使った食料庫の役目も担っていた。
とはいえ魔王城へ攻め入ろうとする狼藉者たちを分断させ、撹乱、捕縛するのに一役買っているのは間違いない。
平和な今となっては、魔王の首を狙う者などほとんどいないが、それでも名誉や正義感、金の欲を持つ人間が来ないわけではない。

まぁ愚かな人間達は森に入るよりも遥か前の段階で、ジャンケンに勝った魔物に退治させられる訳だけれど。


・物語は「勇者の旅立ち その4」その後となります。本作品だけだと人物間の関係がわからないので、先に「勇者の旅立ち その1・その2・その3・その4」をお読み下さい。

・書き方や投稿の仕方が間違っているかもしれません。

・公開した状態で物語を更新するたびに「新作SS」に上がっているかもしれません。悪意や閲覧数を稼ぐためでは決してありませんので悪しからず。

・誤字脱字は大目にみてやって下さると助かります。校正はしているつもりです。

・矛盾などがあったらごめんなさい。

・他にも注意事項はありますが、言っているときりが無いので、寛大な心で閲覧して下さい。

・恐らく今後にえっち表現ありです。

・物語に変更が入りました。




・・・。

・・。

・。




万全を期していても例外は生まれるもの。

世の中に絶対なんて言葉はないし、絶対に大丈夫と身構えたときこそ、絶対は絶対でなくなるもの。

ここ魔王城においても、城の警備は完璧と言われている。

理由の一つ目は、辺り数十キロに魔王をしたう魔物たちの住処が散らばっているからだろう。

仮に人間が魔王城へ向かおうものなら、エリアに踏み入っただけで警戒が強められる。

理由の二つ目は、生息している魔物たちは魔物たちで、生半可な強さではないからだ。

城内の凶事達は例外だとしても、魔王城エリアには上級以下の魔物は生息していない。

人型の上級魔物を初め、上級魔物のスライムや大型種のドラゴンなども住み着いている。

見晴らしも良く、開け広げた草原も続いているこのエリアを突破するのは容易でないだろう。

極めつけの理由が森である。

運に運を重ねなんとか森に辿り着いたところで、そこはもはや魔王の膝下だ。

暇つぶしにふらついている魔物がおり、暇つぶしに鍛錬をする魔物がおり、暇つぶしにおさんぽしてる魔物がいて、かつ健康のために適度な運動を求める化け物がいるのだ。

数多の魔物がひしめきあう魔王城を前にすれば、どんな人間でも蛇に捕食されるのを待つネズミと変わらないだろう。

だがーー。


リッチ「ふぁあ眠い・・・。立ってるだけなのも退屈だねぇ」


魔王「ちょっと寝ないでちょうだいよ」


リッチ「第一どうして僕らが門番をやるのさ。夜型の子がいくらでもいるじゃないか。ワーシープ種の子が、夜中に羊を数えても眠れないってぼやいていたよ」


魔王「同じことを妖狐様の前でも言える?そもそも魔王が城の奥深くで待ち構えているだけなんて、発想が古いのよ。ただの引きこもりじゃない」


リッチ「僕は守ってもらえるなら守ってもらいたいけれどね。もちろん勇者くん限定で。・・・え?もしかして妖狐様も門番をやったの?」


魔王「えぇそのまさかよ。半年に一度なら構わないって」


リッチ「どうしてラスボスの前に裏ボスが出るのさ。糞ゲーにも程があるだろ」


魔王「一応止めたのよ。あの人が門番の時に人間が来たら血のカーペットが出来るじゃない。と言うか、みんなを守るためにもしゃんとなさい」


リッチ「ここの化け物どもが怪我を?するハズないだろう。過小評価は逆に失礼だと思うね僕」


魔王「文句ばっかり言わないの。あんたが我がままを言うから、私が日にちをずらしてあげたんでしょう?」


リッチ「まぁそうだけれどー。退屈だようアイスぅ。えっちしようよ〜」


魔王「あんたほんっとに雰囲気づくり下手ね・・・。私あんたのコイン入れてゴーみたいなノリ大嫌いなのよ。口説くならしっかり口説きなさい」


などと退屈そうに会話を紡ぐ魔物たちだったが、二人の瞳には全てを吸い込むほど闇のように黒い灯りと、全てを凍てつくさんとする青い灯り。

気楽な会話とは裏腹に、瞳は森へと向けられており、通常よりも開かれた瞳孔が敵の一投足をとらえようとする。

さて、はるばる森まで侵入してきた人間はどう動く?

投擲か?それとも魔法?果ては身の程知らずの突撃。

門兵の魔物たちが身がまえる最中、木々を抜けて姿を現したのは一人の人間だった。


?「はぁ・・・はぁ・・・!」


武装とはほど遠い身なりの女。冒険者というよりは町娘に近い服だろう。

剣もなければ杖もない。鎧もなければ盾もない地味な服装だ。


?「や、やっと。つい、たーー」


両膝に手を置いたままぜぇぜぇと肩で息をする女。

遠目に見て年齢は二十歳前後といったところだろう。背負うリュックは一般的な旅用のものらしいが、彼女自身がやや小柄なためか、不恰好さが際立っている。


リッチ「ぼくここにいるから行ってらっしゃい」


魔王「いやいや・・・。逆に行ってきてよ。私に格好いいところを見せてちょうだい」


リッチ「なにさまさ?」


魔王「ちょ、ちょっとうそでしょ?もしかして私がどこの誰さまなのかをご存知でない?大丈夫?説明いる?」


リッチ「妖狐様のセフレ?魔王城のマスコットとか?あとはー・・・うん、思い当たらないや」


魔王「その喧嘩きちんと買ってやるから有り難く思いなさい。だからアレをどうにかしてきて」


リッチ「うへぇ本気?殺されたら化けて出てやるからね」


壁に立てかけられていた杖を手にとり、あくまで気だるげに歩き出したリッチが警戒心もゼロで旅人へと近寄ってゆく。

しかし「く」の字になったまま息を整える少女は、歩み寄るリッチに気付かない。

少女がようやくリッチに気づいたのは、リッチに見下ろされてからだった。


町娘「え・・・あ、あれ?あ、えっとこんばんは。私は、町娘です」


リッチ「やぁこんばんは町娘くん」


町娘「はー・・・」


満身創痍にもかかわらず、リッチを見上げたまま惚ける町娘。

月明かりに照らされる人間の型を模した人外は、相も変わらず魂を吸い込むような灯りをしたがえている。

夜風で髪をなびかせる聖職者の有様に、町娘は息を吐くのを忘れさせられた。


町娘「すごい・・・」


感情をそのまま絞り出すようなセリフを前に、リッチは「うん?」と聞き返したが、別に彼女の言葉が聞こえなかったわけではない。

ただ少女が何をもって凄いと言ったのかが分からなかっただけだ。


町娘「あ、その。ごめんなさい」


リッチ「構わないさ。ところで君はただの旅人かな?それとも魔王城まで来た人間なのかい?」


町娘「え、とーー」


まだ混乱が収まりきらない有様で考えながら辺りを見渡す町娘。

周りを見わたす途中で魔王に会釈をしながら、視線はリッチへと戻される。


町娘「魔王城、です。魔王城はここですか?」


リッチ「おや魔王城なんだ。だったら殺さないと」


町娘「あぇ・・・。わ、私、食べられちゃうんですか?」


リッチ「残念だけれどーー」


ニィといやらしい笑みを浮かべたリッチが、青ざめ震える少女の首に鼻先をつける。

初めはワザとらしくクンクンと匂いをかいでいたリッチだが、しばらく匂いを堪能したあとゴクリと喉を鳴らす。

次いで優しく少女を正面から抱きしめたリッチが少女の首に舌を這わせると、目を開ききった少女の歯が鳴り出した。


リッチ「くんくん・・・。お酒は嗜む程度で、薬物の摂取はしていない感じかな。程よく贅肉も混ざった良いお肉だね。いただきまーー」


大口を開けてかぶり付こうとするリッチだったが、頭にパコンと小気味よい音を受けて食事を止める。


リッチ「う?」


頭上を見上げれば、呆れた様子の魔王から降り下ろされた剣の鞘があった。


魔王「魔王城の住人は敵意がない人間を殺さないのよ。覚えておきなさい新入り」


リッチ「おや怒られてしまった。もったいないけれど、ルールなら見逃してあげようかな」


いたずら表情のまま、リッチが抱きしめていた少女を解放する。

すると、目に溢れんばかりの涙を浮かべた少女がペタンと座り込んでしまった。


魔王「うちの魔物が迷惑をかけたわね。よほどバカな真似をしなければ食べられたりしないわ。安心してちょうだい」


少女「あいえ。はい・・・。こ、こちこそ。本当はこんな可能性も考えていたのにーー」


魔王「口ぶりからするに、近隣の街から来たのかしら?観光にしてはつまらない場所を選ぶのね」


戦火はようやく下火になったにしても、ココはいわゆる最終防衛ラインである。

歴史を見ても城内まで攻め込まれたことなど指折り数えるほどしかないが、城外ですら人間が気楽に足を踏み入れるべき場所ではない。

それでも来るヤツがいるならそいつは余程の命知らずか、狂人か、今の魔王城はさほど怖くないと知っているヤツだろう。


町娘「蓮根の街から来ました」


リッチ「・・・どこだっけ?」


魔王「昔からあるじゃない。飛べば1日でつく所よ」


リッチ「ふーん近場から来たんだね。途中で僕たち以外の魔物には会わなかったのかい?もしかして身隠れの魔法でも使えるのかな?」


町娘「それはーー」


ここにきて視線を外したまま言いよどむ町娘。

聞くだけ聞いてはみたものの、実際彼女から魔力らしい魔力は感じられはしない。

ならばどうやって近隣の魔物を退けた?

謎を消化しきれない二人をよそに、町娘は言いにくそうに答えを教えてくれた。


町娘「何度か呼び止められはしたんですけれど、みなさん私が魔王城に向かっている理由をはなしたら行くだけ行ってこいと・・・」


魔王「へ、へぇ。そう」


答えは驚くほど簡単で、訝しんだのがバカバカしくなるほど単純明快だった。

防犯意識とはなんなのか。ザル警備にも程がある。

いや本当にザルなのかと聞かれると、実際はそんなこともない。

魔王討伐隊を退けたといった事後報告は何百と聞かされたし、旅人を装った暗殺者なんかも星の数ほど捕縛されている。

つまるところ、総合的に彼女は敵とみなされなかったのだろう。


魔王「理由は分かったけれど、端的に来た理由を教えてちょうだい」


町娘「あの・・・どうにか魔王さんにとりついで頂けませんか?」


震え声でうつむく少女とは裏腹に、呑気な魔王はリッチと顔を見合わせる。

特段、手振り身振りをする事もなく視線だけを交わす二人の魔物。

ときおり目を細めたり首をかしげさせる各々だが視線を町娘に戻す。


リッチ「キミは魔王様を何と勘違いしているんだろう。アイドルかな?」


町娘「そ、そんな!」


リッチ「人間の王が庶民に呼び出しされて会ってくれるかな?バカにされてるのかとすら思うよ僕」


町娘「はい・・・」


リッチ「魔王様は近くにいるだけでも震えが止まらなくなるような威光を持っているんだ」


喋りながら魔王をチラ見するリッチ。

残念なことに威も光も兼ねていない魔王は、リッチの呆れたような視線に気づかない。


リッチ「あと、ただ歩いているだけで平伏していまいたくなるようなカリスマをも兼ねたお方でねーー」


町娘「はい・・・」


ここで魔王がようやく「ん?」とリッチの視線に気付く。

リッチの瞳にうつる魔王の格好は、上から紺色のフーディ、ボーイフレンドデニム、茶のキャバリエブーツ。

平伏はおろか色気すらも皆無な魔王様の格好に、今度は悲しみ溢れた視線とため息が投げつけられる。


魔王「黙れ」


リッチ「まだなにも言ってないじゃないか」


魔王「なんなのよ文句ある?」


リッチ「こほん。つまり僕の記憶が合っているなら、僕らの魔王様とはそういったお方なのさ。会いたい、会えない、会いたかった・・・陳腐な恋愛歌のように会えるお方じゃないんだ」


町娘「わかってます・・・。わかって、いるんです!でも!でもーー!」


彼女が一般的な人間ならば、たった一人でこんな所まで来るのは想像を絶するほどの勇気が必要だったろう。

魔物の中には人間とのありかたを考える者もいはするが、大半の魔物は人間の尊厳など考えるはずがないのだから。


魔王「ここは人間がいて良いところではないのよ。今回だけは見逃してあげる。さっさと帰りなさい」


町娘「・・・ぃーー」


魔王「・・・」


町娘「帰れ・・・ないーー」


魔王「・・・」


町娘「帰れません・・・。絶対に!絶対に帰れません!」


殺気が放たれたわけではない。

なんてことはなく、女は目に涙を浮かべて叫んだ他はない。

しかし、たかが人間の一挙が魔王とリッチの足を一歩下がらせた。


町娘「みんな殺されてしまうもの!お父さんもお母さんもみんな・・・!きっと・・・殺されちゃうから・・・」


リッチ「まずいこれ面倒なタイプだ」


魔王「心底同意しかないわ」


ただの人間ならば、腕の二、三本へし折ってやれば命乞いを奏でながら消え失せる。

しかし意志を持った者は簡単に退かない。

中でも特に宗教的な思想を持った奴らが厄介だ。神の御心とか、世界平和とか言い出すヤツほど武力が通じにくくできている。

ではこんな者の心を根本からへし折るのはどの策が有効か。

サキュバス部隊でも連れて来れば、快楽の海にでも沈めてくれるのかもしれないが、悪意のない人間を廃人にするほどお母さんは非道になれない。


魔王「だったら話ぐらいは私が聞いてあげるわ。まず落ち着きなさい」


町娘「ほ、本当ですか?」


魔王「ただし魔王様に会えるとは思わないでちょうだい。判断するのは私達が話を聞いてからよ」


リッチ「ちょちょちょちょーい!ちょっと待ちなさいアイス!こっちに来るんだ!」


仕方なしに話を聞こうとする魔王と町娘の間に入ったリッチは、急いでアイスの腕を引いて町娘から距離を取る。

水を差されて「なによ?」と呆れた魔王に「なによじゃないだろう」とリッチ。


リッチ「きみどちらかと言うと、吸血鬼くんと同じ脳筋タイプだよね?キミは絶対に話なんて聞いたら駄目だから。むしろキミだからあの子の話を聞くべきじゃないよね」


魔王「ダメもないでしょうに。リッチは私が人間なんかに動かされると思うのね。失礼しちゃうわ」


ふふと余裕しゃくしゃくな魔王だが、魔王のうぬぼれた自己評価はリッチにぶったぎられてしまう。


リッチ「あぁ思うさ。思わなかったら言わないよ。仮にここにいるのがサキュバスくんなら止めたりもしないさ。なぜかって?だってきみはバカだもん。バカだから妖狐様とやりあったんだろう?」


魔王「・・・待ちなさいよ。歯に衣着せぬバカの猛攻は傷付くわ」


リッチ「やかましい。いや今さらそんな話は良いんだ。きみさ・・・人型のくせに感情直結で動くその性格、どうにかならないのかい?」


魔王「でもたった一人でこんな所まで来たのだから、話ぐらい聞いてあげたってーー」


リッチ「それ。それだよね僕が懸念しているのね?それがおかしいんだってば魔王様。お願い気付こうか魔王様?魔王様はいち個人の人間なんぞ相手にしないんだ。いいね?イエスと言え」


魔王「ノーよ!おばあちゃんあまり興奮すると血圧が上がるわ」


リッチ「だまらっしゃい誰がババアか小娘が!だまれアイス。黙らないと毎朝寝起きのキスをする!」


魔王「・・・」


リッチ「たまには僕の言うことも聞くんだ。キミは亜成体の頃から、いつしかアイスブルーと呼ばれている。今でこそ愛称として定着しているけれど、どうして皆がアイスブルーと呼び出したのかを知っているかい?」


魔王「理由なんかあったのね。てっきり蒼眼の種族が珍しいからだと思っていたわ」


リッチ「それはそれで正解なんだけれど、ちょっとしか正解じゃない。きみの冷徹さと冷酷さ、それに冷血さが加わってアイスブルーと呼ばれていたんだ。なのに今のきみはどうだ。ホットブルーさ」


魔王「話が長いわリッチ。つまりあんたは今の私が嫌いなの?」


リッチ「や・・・!そ、その質問は卑怯だろう」


魔王「どっちなのよ。つまりあんたは冷徹で冷酷で冷血な私の方が好きで、今の私よりも当時の私が好きなのね?」


リッチ「そんなこと・・・ないよ。表情のコロコロ変わるキミも好きさ・・・。むしろ今の方が好きだけれど、そうじゃなくってさ・・・僕の助言を聞いてーー」


魔王「ならば話は以上よ。どきなさいリッチ」


面倒臭そうにリッチを押しのけ町娘の元へと向かう魔王様。

見事に感情だけで推されたリッチは、その場で四つん這いになるなり「あんまりだ!」と叫ぶ。


魔王「遅くなったわね」


町娘「い、いえその・・・大丈夫ですか?」


魔王「持病の癪でも起きたんでしょう。それであなたはどうして魔王様に会おうとしているのかしら」


ようやく小言のうるさい友人を退けたにもかかわらず、当の町娘は切り出し方に思い悩む。


町娘「・・・信じてもらえないかもしれませんけれど、私は魔王さんあての手紙を持っているんです」


言いながらリュックを下ろし、中から手紙を取り出す町娘。

意図がわからずに困惑する魔王をよそに、鞄から手紙を取り出した町娘は、それをまるでガラス細工でもあつかうように胸に抱く。


町娘「私は子供の頃、大けがをして瀕死の旅人に会ったことがあります」


震える声で、震える手でゆっくりと魔王に手渡される手紙。


町娘「急いで家に戻ってから、旅人を助けるために両親の手を引いて彼の所へと戻りました」


安っぽい紙質の古ぼけた手紙。

宛名もない、黄ばんだ手紙。


町娘「この手紙は一命を取り留めた彼が再びたつ日の朝、私に託してくれた手紙なんです」


裏返せば青い封蝋が施されている。

差出人の名はーー。


町娘「彼は私だけにこっそりと教えてくれました。俺、実は魔王様の恋人なんだぜって。なんだか少し誇らしそうに」


ぽろぽろとこぼれてしまう涙が止められるわけもなく、意図せず流れ出てしまうものは仕方がない。

涙を拭おうとするのに、右手も左手も手紙からは離れてくれなかった。


魔王「・・・。旅人は他になんだって?」


町娘「・・・魔王・・・さんーー」


魔王「ねぇお願い・・・。私にその旅人の話を聞かせて。あなたの覚えている限りで構わないから」


いつの間にか簡単に立場を逆転されてしまう魔王だったが、みっともなく泣き出した魔物の懇願を受けた町娘は「分かりました」と魔王を見据える。


町娘「えっと・・・お兄さんは彼女と付き合った記念日に、ネックレスをプレゼントしたそうです。でも彼女に投げ返されたと言っていました」


魔王「えぇ・・・そうね・・・。そうだったわ」


町娘「照れ隠しをしているあいつも可愛いんだ、って言ってましたけれどーー」


魔王「どうして見ず知らずの人に、そう言うことバラすのかしらね。大体そこまで分かっていたなら、わたしの枕元に置いておくこともできたじゃない」


人間から語られる物語は、十余年が過ぎた今でもまだ忘れられない後悔の記憶。

前勇者からのアプローチを受けて、仕方なしに彼と付き合った二年目最初の物語だった。

彼と恋仲に落ち一年の記念として渡されたネックレスを、あろうことか魔王は照れ隠しのため投げ返してしまった。

突き返されてしまったネックレスは結婚した後も、子が産まれてからも手元に戻ってくることはない。

記憶は思い返されるたびに、魔王の心をチクリと刺激する。


町娘「その手紙はお兄さんから魔王さんに宛てて書かれて、私に託されたものなんです」


アイス「・・・」


町娘「どうぞ開けてください」


アイス「でも私ーー」


町娘「お兄さんからは理不尽な絶望が訪れた時、魔王さんに渡しなさいと言われていました」


アイス「あんまりよ・・・。自分は勝手にいなくなったくせに、残された私を楽しませようとする。あんまりにも身勝手じゃない」


町娘「どうぞ手紙を開けてください。一度街のことは忘れていただいて結構です」


魔王「綺麗事なんかうんざりよ。きらきら輝いて私をくつがえしてしまう人間なんて一人いれば十分」


町娘「・・・世界で人と魔物の争いが減っている理由が分かった気がします。こんなことなら、もっと早く手紙を持って来れば良かった。私はあなたが前勇者さんを殺した噂に耳を貸して恐れたんです。許してください」


魔王「何も違わないわよ。私が前勇者を受け入れなければ彼は死ななかった。私に会わなければ彼はーー」


リッチ「やめろアイス。勇者くんまで否定するつもりか。許さないぞ」


魔王「っーー。ごめん・・・なさい。二度と言わないわ。見た目がいくら若くても歳はとりたく無いわね・・・あはは」


誤魔化すようにはにかんで笑う魔王は手紙の封を切る。

ひどく劣化した手紙は、雑に扱えば簡単に千切れてしまいそうで、魔王は恐る恐る二つに折りの手紙を開いた。

手紙を滑り落ちるのは月夜を浴びた銀色のネックレス。

三日月をモチーフにサファイアの埋め込まれたネックレスが、長い時を得て再び恋人の元へと贈られる。


魔王「っーー!」


たったこれだけの、陳腐でキザな演出で魔王の涙腺が緩む。

ずるい。

本当に死人はずるい。

好き勝手やるだけなのだから。

もう文句の一つも言えないのだから。


町娘「綺麗なネックレスですね」


魔王「えぇ本当。本当に、本当は嬉しかったの」


ネックレスを握ったまま手紙を開く魔王。

年甲斐もなく高鳴る心臓の音。

どんな言葉が書かれているのかと、ときめいてしまうのは仕方がないだろう。

全てをもらい、全てをゆだねた愛しい人からの手紙である。

微笑みの一つも浮かべずに平然としているほうが無理な話だ。


魔王「・・・」


しかしいざ手紙を開けてみると中に書かれているのは「次はいつになったら会える?」の文章。

文脈などお構いなしに「もっと高価なほうが良かったか?」と問いかけるような言葉が続いていた。


「最近、やっと笑うようになった」

「可愛いやつめ」

「サキュバスの誘惑にやられそうになった」

「この前吸血鬼に噛まれた」

「夜這いの時に殴られた奥歯がまだ痛い」


とても手紙に託すようなものではない、メモにも似たなにかだが、魔王はそこに描かれた物語の一文一文を彼の声と重ねて指でなぞってゆく。


「俺のせいでお前はこれから危ない目に合うかもしれない」

「つーかこの手紙がお前のところに届かないことを願うよ。この手紙を持ってきているってことは、俺が死んでいるからなんだろう?まさか離婚とかしてないよな?なぁ?」

「お前はいま幸せでいるか?俺はお前と幸せに暮らしていたか?」


脈略のない文章も佳境に入り、結局最初から最後まできちんとした文章の構成はなされない。


「これ万が一、俺が生きている状態でお前に読まれたら恥ずかしさで死ねるな」

「・・・いや、俺が生きているなら俺が回収しているはずだしな」

「ここにも書いとくわ。ありがとうな」

「生まれ変わってもお前と一緒にいたい」

「あまりおいたはするなよ。叱りに行くからな」

「またな」


全てを読み終え、微笑みをたずさえる魔王。

いつの間にやってきていたのか、手紙を覗き見していたリッチは恍惚としている魔王を見るなり「ダメだこりゃ」と両手を上げる。

宝物と化したネックレスと手紙を胸に抱き「うん」と一言。

魔王は町娘に頭を下げた。


魔王「素敵な手紙をありがとう。さぁ人間よ。お礼は何が良いかしら。改めて願い事を言ってみなさい」


それらしい雰囲気を従えて、またが町娘へと手をのべる。

しかし伸ばされた手は、リッチによってパチンと叩き落とされてされてしまった。


リッチ「おバカ!」


魔王「誰がおバカか」


けっこう痛かった叩き落としに、右手をプラプラと降る魔王。しかしリッチは間髪入れずに魔王を叱る。


リッチ「なに格好つけているんだよ!キミは自分の立場を理解しているのかい!?」


魔王「しているわよ?私が魔王であの子は人間。そしてあなたは蝋人形。一番偉いのが私よ」


リッチ「せめて『実は魔王だけれど名乗らないからアウトに近いセーフ』ぐらいの発想を持つべきじゃないかな。ポンコツなのかいきみは?」


魔王「どうしたのよリッチ。さっきから様子が変でーー」


リッチ「その聞き分け悪い子供を諭すみたいな空気をやめろ。僕は間違っていない」


魔王「面倒ねまったく・・・。城のことは帰ってきたサキュバスと吸血鬼に任せれば良いでしょう?とりあえず妖狐様の事は考えない方が良いわね」


リッチ「あまりふざけてると僕だって本気で怒るからね。キミは魔王としての自覚が相当足りていないんじゃないかな」


しまいには眉間にシワを寄せて、感情をあらわすリッチの慣れ果て。

魔王とて極まったバカではない。

言い訳が思いつかないため誤魔化し続けたが、リッチの言い分はごもっともでしかないのだからそりゃ怒るだろう。


リッチ「ボクがどんな気持ちで・・・どんな気持ちでキミが魔王になるのをーー」


妖狐に壊されるほど抱かれても側を離れなかった片割れの元側近。

女としての尊厳を踏みにじられようと、性具として雑に扱われようと、末の窒息で命を散らされようとーー。

誰よりも妖狐を慕い、誰よりも妖狐を愛し、誰よりも妖狐と共にあろうとした、もう一人の元側近。


魔王「・・・」


リッチ「答えろよアイス」


普段の安穏とした姿からは程遠い、リッチの怒り。

己から居場所全を奪った相手が、魔王にあるまじき行いをしているのだから。


魔王「・・・」


リッチ「アイス!」


魔王「リッチ」


呆れたような声で。

仕方がないやつと諭すような声で、リッチに向かって歩み始める魔王。


リッチ「・・・。イヤだよ・・・。絶対に嫌だからね」


魔王「まだ何も言ってないじゃない」


リッチ「イヤだからね!?この雰囲気で、どうして僕がキミと一緒に行くと思うんだい!?」


魔王「・・・」


リッチ「それ以上ぼくに近づくな。動くと撃つぞ」


魔王「やってみなさいよ木偶が。この距離で私に勝てると思うな」


リッチ「自惚れも大概にしろよ!」


怒り露わのリッチが杖を突き出せば、生まれた火球が大型花火のように炸裂を見せた。

瞬く間に数百に分かれた小粒の火球は、瞬きをする間もなく光の矢となり、アイスを貫ぬかんと襲いかかる。

頭、目、首、心臓、腹と、致命傷になるだろう部位には多めに矢。

しかし残りの矢が適当に放たれたというわけではない。

一本一本の光全てが、魔王を絶命させようと襲いかかる。


魔王「ふっ!」


上下左右、全方位から襲いかかった矢が、等しく同じタイミングで魔王を貫く・・・。

かに見えたが、それは町娘の視点だ。

矢は全てが満遍なく魔王に当たりはしたものの、一筋たりとも魔王を貫くことなく消させられていた。


魔王「下らないお遊びね。まるで児戯じゃない。この程度の攻撃で私を堕とすつもり?」


リッチ「ははは。バカも休み休みにしてほしいね。筋肉で魔法を消し飛ばすバカなんか君ぐらいだよ」


魔王「面白いわよ聖職者。次はなぁに?」


リッチ「必ず食ってやるからなーー」


歪んだ笑みを浮かべて魔王から引くリッチ。

魔法型のリッチからすれば、超至近距離にいる魔王に踏み込まれるのは分が悪い。逆に、距離を取られたら分が悪くなる魔王が逃げるリッチを許すはずがなかった。


魔王「逃がすか!」


ドンと一つの音が鳴り、地面を蹴り上げた魔王がリッチの腹に拳を叩き込む。


リッチ「ぁーー」


叩き込まれた拳は簡単にリッチの腹を貫き、魔王の手首や肘を鮮血に染め上げた。

常人ならば人間だろうが魔物だろうがコレでお終い。

しかし相手は元側近。

ましてや不死の存在に、終末など訪れない。


リッチ「はは・・・アハぁ。アイスぅ。あいずーー」


腹から腕を引き抜いた魔王が、再び拳を撃ち出す。

次は絶命させるために心臓を狙った。

だがーー。


リッチ「ギミは、いつまで経っでも、ちから、オシだ」


魔王「まどろっこしいのは嫌いよ」


リッチ「コんなのハどうだい?」


不意に違和感を覚えたアイスが、振りかぶっていた拳を止める。

血染めの腕に走る激痛を前に、次は魔王が後退させられた。


魔王「おのれ貴様ーー!」


リッチ「ひひ。固まる。固まっちゃうよ魔王サマ?」


いつしかリッチの腹にあけられた風穴は、肉色のスライムのようなものが修復を終わらせる。

対して魔王の腕にまとわりついていた赤は、次第に赤から黒へと色を変えていた。

ピシッと音が鳴るたびに、魔王の腕は激痛を与えられ感覚を失う。痛みが引く頃には、右腕の先半分が石になってしまった。


魔王「私こんな魔法知らない」


ゴトンと音が鳴り、腕が落ちた。


リッチ「僕が勤勉だって知らないのかい?ただでさえ泣き叫ぶキミの声を聞きながら自慰をしてやろうと思っていたんだ。突撃バカの対策をしないハズがないだろう」


魔王「きちんと治してちょうだい。このままでは勇者の抱っこができないわ」


リッチ「僕の大事な場所を舌だけで綺麗にできたら考えてやるよ」


動き出したリッチを前に、戦いた魔王が距離をとる。

何も変わらない。いつもの通り悠々と魔王に歩み寄ったリッチは、石化された右腕を拾うと、呟きとともに腕を生肉へと戻す。


リッチ「んっーー」


とろけた顔でアイスの手のひらを舐めまわし、全ての指の間を舌で舐めまわしてゆくリッチ。


魔王「んな・・・!あ、洗って返しなさいよ!?」


リッチ「んっ。んむ・・・おいふぃ」


魔王「聞いてんのか!」


リッチ「アイスおいふぃ」


挙げ句の果てに、ローブを開け広げて見せつけるリッチ。

満ちた月夜に狂ったリッチは、色白のその胸も、その腹も、その下腹部をも自慢げにさらけ出す。

白雪のようなリッチの肌に赤みが差す頃、リッチの内腿を透明な粘液が滴り落ちた。

興奮しきったリッチが、まだ温かい肉と化した魔王の指を自身のソコに差し入れる。


魔王「冗談でしょう!?」


リッチ「アイスぅ。アイスが僕の中に入ってくるよう」


魔王「っ・・・死ねぇ!」


再度、音を超えた魔王の足裏がリッチの顔面に叩きつけられた。

頭を吹き飛ばすが如く、力任せに叩き込まれた一撃。

しかし重心を崩した蹴りはリッチを吹っ飛ばすのみで、殺すほどの威力を持たない。


リッチ「あはははは!どうしようアイス!?どうしてほしいアイス!?も、もう我慢できなくなってきちゃった!」


城門に叩きつけられようとしていたリッチが笑う。

到底まともではないイかれた魔物を前にして、魔王はいよいよ全力で奴を殺す算段をつけ始めた。


リッチ「あははは!覚悟してねアイス!ぐちゃぐちゃに犯し・・・はぇ?」


リッチの高笑いは止められたのではない。やめさせられたのが正解である。

吹っ飛ばされた先にある門がギィと遠慮がちに開けられると、そこにはーー。


妖狐「クソどもが・・・!」


リッチ「ぁひぃ妖狐様!?」


妖狐「夜中にドンドコドンドコ、高笑いと・・・楽しそうにしているじゃない」


リッチ「い・・・いやだ殺される!助けてアイス!たすけてー!」


妖狐「お祭りかしらねぇ?神輿かつぎなら、飛び入り参加も厭わないんでしょう?」


「ぬん!」と一撃。

飛んできたリッチに超強力な妖狐キックが炸裂した。

魔法まで込められた渾身の妖狐キックが炸裂した矢先、蹴られた衝撃でリッチ死ぬ。

が、瞬く間に蘇生し、また死ぬ。

しかし再三復活したリッチは、空気抵抗でさらに死んだ。

ここまででワンアンクション・スリーデッドのリッチだが、悪夢は終わらない。

最後は岩のように硬い魔王に叩きつけられて累計四回死ぬ羽目となる。

そしていくら硬いとは言えリッチが死ぬほどの速度で叩きつけられた魔王は、リッチと共に吹き飛ばされて森の木をなぎ倒すハメとなった。


妖狐「次さわいだらタダじゃおかないわよ!」


バンと怒り任せに城門が閉められ、傍観せざるをえなかった町娘が我にかえる。

町娘は急いで地面に転がっていた魔王の腕を拾うと、なぎ倒された木々の中を進んで行った。


魔王「うぅ・・・」


リッチ「きゅ〜・・・」


町娘「だ・・・大丈夫ですか魔王さん?」


魔王「ギリギリ、ねーー」


仰向けの魔王に覆いかぶさるリッチは、間髪入れぬ連続蘇生で目を回していた。


魔王「こ、こいつが起きるから早く手をーー」


と、魔王から町娘に伸ばされる手。

町娘は手中の腕を置くと、両手でしっかりと魔王を掴む。


町娘「引っ張ります」


魔王「悪いわね」


だが、いざ町娘が魔王を引き、もう少しで救出を終えようとした頃ーー。


リッチ「・・・うふ」


魔王「しつこいわねもう!」


蘇生を終わらせたリッチが、魔王の腕を掴んで地面に叩きつけた。

苦痛に顔を歪ませた魔王を尻目に、ゆらりと起き上がったリッチが楽しそうに笑いだす。


リッチ「うふふ。つーかまーえたっ」


魔王「キャラが変わってるじゃない!」


リッチ「ほらぁ。騒ぐとまた妖狐様がきちゃうよぉ?」


魔王「いっーー!いたた痛い!折れる!折れちゃう!」


たび重なる被虐と、魔王の匂いにすっかり出来上がってしまうリッチ。

パカと開けられた口の端からは、粘度のあるよだれが滴り落ち魔王の頬を濡らす。

「いただきます」モードのリッチを前に、流石の魔王も表情から余裕がなくなった。


魔王「ひぃ!?」


しまいには怯え出した魔王が藁にもすがる思いで町娘へと視線を向けるが、当然町娘がどうにかできるものではない。


魔王「待って!待って下さい!」


リッチ「あー?」


魔王「煽ってごめんなさい!謝ります!」


リッチ「うーん。だめ」


魔王「だ・・・だめ?」


リッチ「性奴隷になってくれる?」


魔王「い、いやそれはちょっとお母さん的に・・・ね?今度からは少し疲れていても相手をしてあげるから勘弁してちょうだい」


だめと言いながらも口を閉じ、呆れたようなため息を吐くリッチ。

小刻みだった呼吸もしばらくすれば落ち着きをみせ、最後に一度だけ大きく深呼吸を終えたリッチは「まったくもう」と、呆れた様子。


リッチ「きみ僕のことを舐めすぎだよ」


ふぅ、とようやく落ち着いたリッチが人差し指を魔王の鼻先につけた。そのままぐいと押し込まれれば、ややブタ鼻になる魔王。


リッチ「命乞いをしろメスブタめ」


魔王「ぶひぃ。どうか命だけは」


リッチ「初手から全力で来ないから負けるのさ。この僕を片手間で倒せるハズがないだろう」


魔王「逆に全力でこられると思わないでしょう。空気読みなさいよ」


リッチ「昔妖狐様から初手で決めろって言われたじゃないか。ちゃんと覚えておきなよ」


やや疲れ気味にため息を吐いたリッチが町娘に視線を動かす。

特に会話があるわけでもなく、一べつ貰った町娘がリッチに魔王の腕を渡した。


リッチ「ほら治すよ」


魔王「いだだ!いぁ、あはは!」


リッチ「我慢しなよ魔王だろう」


魔王「魔王だって痛いものは痛いー!」


リッチ「昔はこんなのモノともしなかったじゃないか。ベソベソ言わない」


切り口同士をぐりぐりと力任せに押し付け、リッチが詠唱をはじめる。

悲鳴を心地よさげに受けながら腕の接合を終わらせれば、涙目の魔王が抗議のこもった目でリッチを睨みつけていた。


リッチ「ほら治った」


魔王「うぅ・・・覚えてなさい」


リッチ「返しが三流だね。きちんと一流なりの返しを」


魔王「もし私の味方になれば世界の半分を貴様にやろう。どうじゃ?私の味方になるか?」


リッチ「それ僕に聞く台詞じゃないだろう。勇者くんに聞いてあげなよ」


先に起き上がったリッチが呆れた様子のまま魔王に手を伸べる。

さんざん嬲られ血を失った魔王は「ゔぁー」と声にならない声を出しながら手を引かれて起き上がった。


魔王「泥だらけじゃない。どうしてくれんのよ」


リッチ「ぼくもお風呂にいきたい・・・」


魔王「流暢にしている余裕なんかなさそうよ?」


リッチ「はぁ・・・。だから僕は行かないってば」


魔王「正気なの?聖職者のくせに酷いじゃない」


リッチ「『元』ね。あいにく神がいるなら、僕はここにいないんだ」


魔王「でも神がいるから、私たちは出会ったのかも?少しは信用してみたらどうかしら」


リッチ「いたとしても人間嫌いは伊達じゃないのさ。やめておくよ」


話はおしまいと打ち切るように背を向けるリッチだが、城門へと歩き出した矢先、後ろから僅かな抵抗を感じる。

「ん?」と振り返れば、そこには相変わらず地面に座ったままの魔王がいて、ローブの裾を引っ張っているではないか。


リッチ「あのね・・・僕より吸血鬼くんやサキュバスくんを連れて行けば良いじゃないか。君のためなら死んでくれるだろう?」


魔王「勇者と遊びに行ってるわ。それに二人はリッチ以上の人間嫌いだもの」


リッチ「そういえばそうだったね。・・・ところで相手は誰なんだい町娘くん。魔物なんだろう?」


急に話かけられ、傍観に徹していた町娘が肩をすくめる。

「あ・・・え・・・」と、返答に困っていた町娘は、最終的にこくりと頷いた。


町娘「街の人たちが螺旋龍と言っていました・・・」


リッチ「螺旋龍・・・」


魔王「螺旋龍?」


リッチは魔王に裾を持たれたまま、魔王はリッチの裾を持ったまま互いを見る。

誰だ?と二人で目を見合わせること数秒。ハッと気付いたリッチが裾をつかんでいる魔王の手を振り払う。

だが振り払われた矢先には、反対の手がリッチのローブを捕まえていた。


リッチ「ばっーー!バカバカ!なおさら絶対に行かないよ僕!」


アイス「相手にとっての不足はないわ」


強がり混じりに笑う魔王だが、やや怒りすら覚えたリッチは魔王の頬を摘んで引っ張る。

遠慮なしに頬をつねられ涙目になる魔王。しかしリッチはつねるのをやめない。


リッチ「町娘くんさ!きみ遠慮って言葉を知らないのかい!?」


町娘「そ、そんなーー」


リッチ「世の中には敵に回しても良い魔物と、敵に回しちゃいけない魔物がいるんだ。螺旋龍は敵にしちゃいけない魔物!」


町娘「でも私たちは本当に彼女に危害を加えていないんです!なのにーー」


リッチ「人間っていっつもそう!誤解だなんだって、いつも最後は僕らに罪を押し付ける!」


んもう!と怒り露わに地団駄を踏みはじめるリッチ。

うるさかったので、魔王はリッチの手を引いて地面に座らせてやる。

それでもなお、抗議を続けようとするリッチの口は後ろからふさいだ。


魔王「螺旋龍は穏やかで、大らかな奴だと聞いているわ。何かしら螺旋龍の琴線に触れる出来事があったはずよ」


町娘「で、です・・・からぁ・・・!ひぐ・・・ま、街の人はなんにも・・・。なのに、せ、攻め入るって・・・っぐーー」


リッチ「っぷぁ!十字軍は?言葉が通じるヤツだ。こんな時こそ十字軍が間を取り持つべきだろう?」


町娘「ずっと応援は要請しています・・・。でも、螺旋龍と拮抗させるほどの戦力なんか用意できないってーー」


リッチ「まぁ・・・だろうね」


町娘「もう、もう時間がないんです!お願いします魔王さん!どうか、どうか私たちを助けて下さい!」


昔は私だって人間に疎まれ、呪詛を吐かれ、命を狙われてきた。

挙げ句にようやく手に入れた幸せまで横どりされ、取られた人は帰らない。

それはすべて人間がやったこと。

私からすべてを奪ったのは、人間。


魔王「・・・」


けれど与えてくれたのも人間。

めげず、懲りず、私に恋を教えてくれて、愛を教えてくれたのも人間だった。


アイス「そうよねあなた」


誰かに問うわけでもなく、アイスの手に握り締められたネックレス。

世界で一つだけの『あなた』の手作り。


リッチ「螺旋龍だよ?やめた方がいいって!君一人の問題じゃなくなるかもしれないんだぞ!?」


魔王「たまには良いことをしないと、神様に怒られちゃうもの」


リッチ「屁理屈ばっかりこのーー!いっそ彼女の街が滅ぼさせるまで、手足をもぎ取ってやろうか!」


魔王「なにも殴り合いをしに行くわけじゃないわ。話を聞きに行くだけよ」


リッチ「どうせ拳で語るんだ。物理型なんていつもそうじゃないか」


魔王「場合によっては舌戦よりも早いのよ?私たちだってほら、もう仲直りしたわ」


リッチ「あーいえばこう言って!」


もはや悪びれることなく飄々とした態度を前に、リッチからため息が吐き出される。

魔王はリッチから伸ばされた手を引いて立ち上がると、頭にハテナを浮かべていた。


リッチ「勝手に行けばいいさ!悪い奴に城を乗っ取られても知らないからねぼくは!」


いー!と並びの良い歯を見せて魔王城へと帰ってしまうリッチ。

頭から湯気でもでそうなほど怒っているリッチを見送っている途中「あ」と気付いた魔王が大きめの声を放った。


魔王「起きているビー達がいたらで構わないから、混毒の針を貰ってきてくれる?」


リッチ「キミなんかに言われなくても、そんなの分かってるさ。万一追いつく前に殺されたりしたら、勇者くんの記憶からキミを消して僕だけのものにしてやる」


魔王「大好きよ」


リッチ「知ってるよ」




・・・。

・・。

・。




それはまるで水面に石を投げた時のように広がる波紋。

鐘の音を聞いた家からは武装した男たちが飛び出し、宿屋や酒場からは冒険者達が武器を手に外へ出る。

戦いの空気を目の当たりにした町人たちは、ただ優雅に飛ぶ人型魔物を呆然と見上げるだけ。

けれども経験値のある冒険者たちは、いつでも人型魔物に攻撃を行えるようにと、武器を構えて空をあおぐ。

しかし数え切れないほどの殺意と敵意を向けられたところで、魔王はどこ吹く風の様子。むしろ人々に恐れられるこの状況は、なんだか懐かしくて薄ら笑いすら浮かべてしまいそうだ。


魔王「きちんと掴まってなさい。舌が飛ぶわよ」


おぶる少女に声をかけてやれば、魔王に抱きつく力が強められた。

合図とばかりに頃合いを見はかり、体を捻らせた魔王は、羽を大きく広げたまま中央広場へと足を下ろす。


魔王「なかなか熱烈な歓迎ね」


一人の人型を相手に、否、人型だからこそとも言うべきなのか。街のど真ん中に降りた人型は冒険者たちに囲まれる。

数え切れないほどのパーティと、数え切れないほどの職業の人間。

剣士や魔法使に囲まれるのはもちろんのことだが、おそらく見えないところには隠密を得意とする職業の人間も潜んでいるだろう。


魔王「あら?あれって・・・あの子、もしかしてアルケミストじゃない?珍しいわね」


珍しい職業の旅人を見つけては、意気揚々と歩み寄る魔王。

だが目を付けられた人間はたまったものではない。アルケミストは驚いた顔を見せると、急いで引き連れていた小型カートを漁りだす。


アルケミ「くっーー」


鋭い目つきで両手にありったけの試験管やビーカーを構えるアルケミストと、物珍しい職業をみつけてルンルンな魔王。

まるでお買い物でもするかのような魔王と対峙し、アルケミストが動揺しはじめる。


魔王「ねぇ貴女アルケミストでしょう?」


アルケミ「それがなに?やろうって言うなら受けて立つよ」


魔王「儲かりまっか?」


アルケミ「・・・は?」


魔王「あら?儲かりまっか?違う?」


アルケミ「その・・・。ぼ、ボチボチでんなー」


魔王「うふふ。本当に定型句になっているのね。一度言ってみたかったのよ」


アルケミ「いやこれマーチャントやブラックスミスに会った時の挨拶だし」


魔王「あらそうなの・・・。それじゃもう使えないわね。ところで貴女のお店にヒートドリンクは置いてあるのかしら?」


アルケミ「・・・へ?」


魔王「ヒートドリンクは扱っている?寒くてかなわないのよ」


アルケミ「あるけれど・・・味は?」


魔王「紅茶があれば。なければ何があるか教えてもらえないかしら?」


腑に落ちない様子のアルケミストがカートに薬剤の武器を戻し、再びカートの中を漁りだした。


アルケミ「紅茶・・・ある、ね」


魔王「おいくら?」


アルケミ「一つで250。二つなら450で良いよ」


魔王「町娘あなたも飲む?空は乾燥していたし、喉も乾いたでしょう?」


町娘「へ?あ、そ、それでしたらお金は私がーー」


魔王「飲むのね?紅茶を二つ頂戴」


アルケミ「ちなみに入れ物は一本50で買い取るよ」


魔王「気前いいわね。はい500」


アルケミ「まいど。・・・はいおつり。最近ガラスの相場が上がっているから、どこのアルケミもこれぐらいで買い取ってるんじゃない?砂糖とミルクはどうする?」


魔王「あら嬉しい。サービスしてくれるのかしら?」


アルケミ「今後も贔屓してくれるならね。今日だけの付き合いなら10ずつ払って」


魔王「味しだいね」


町娘を背中から降ろし、金を払わずに砂糖とミルクをフラスコに入れる魔王。

まるで信じられないような物を見る町人たちの視線が降り注ぐ中、町娘はいたたまれない気持ちで魔王からフラスコを受け取った。


魔王「〜♪」


ハナ歌を歌いながらフラスコに砂糖とミルクを入れてガラス蓋をする魔王。指で蓋を押さえたままシャカシャカ振ること二度、三度。

名前の通り温まった紅茶をふーふーしながら町娘と飲んでみた。


魔王「・・・」


アルケミ「・・・」


町娘「あっ。美味しい」


魔王「えぇ本当・・・。やるわね人間。砂糖とミルクの代金は払わないでおくわ」


アルケミ「また買いに来てね。こなかったらギルドのみんなを引き連れて請求しにいくよ」


魔王「もし来るのなら美味しい紅茶とお菓子を用意して待ってるわ。容器は返すわね」


アルケミ「はい50の買い取りね。あとこれを持って。ほら」


お金を受け取るときに、なぜか再び魔王に返される空のフラスコ。

自然に渡されたせいで受け取ってしまった魔王が頭に?を浮かべる間、アルケミが胸ポケットからペンを取り出し魔王にわたす。


魔王「これはなんのサービスかしら?」


アルケミ「いいからこのフラスコに貴女のサインを書いて」


魔王「サイン?え?私の?」


アルケミ「はやく」


魔王「え?」


アルケミ「早くして」


魔王「え?え?」


アルケミ「はぁ・・・。あのさぁ私だって暇じゃないんだからね?」


魔王「え、えぇ。ごめんなさい」


よくわからないままフラスコにサインを書いて、再びアルケミに返してやる魔王。

「まったくもう」と呆れた感じで魔王からフラスコを受け取るアルケミに戸惑っている時、後ろから町娘に声をかけられた。


町娘「こんな事を言うと失礼かもですけれど・・・魔王さん、アルケミさんの勢いに踊らされていますよ」


魔王「・・・そうよね?やっぱりそうよね?サインに何の意味があるのよ!?」


アルケミ「あなた達のサインは凄く希少なの。とんでもないお金になるんだ」


魔王「売るために書かせたの!?」


アルケミ「人型魔物のファンは多いからね。頭のイカれた金持ち連中に売ったら凄い金額になるよ?」


魔王「ふざっーー!返しなさいよ!どうしてあなたの私腹を肥やすために私が利用されないとーー!」


アルケミ「100万」


魔王「いけ・・・え?」


アルケミ「今なら特別に大特価。100万で『売』ってあげる。買う?」


魔王「い、いらないわよ自分のサインなんて!」


アルケミ「そ。私なら店を質に入れても買うけれどね。勿体ない」


魔王「あなたも大概イカれてるじゃない。世界中の誰に聞いたって、魔物のサインを欲しがる奴なんて・・・え?冗談なのよね?いないでしょう町娘?」


サインはサインである。

ペンが文字の消えないマジックアイテムだったとしても、ビンに書かれたモノはただの文字だ。

魔王からしてみれば、ビンに書かれた文字なんか落書きと同じでしかない。

落書きは落書きでしかなく、価値があるはずもないのだがーー。


町娘「あはは・・・。私も噂に聞いたことがあるぐらいですね・・・」


町娘から苦笑いを返されて現実を知る魔王。

芸術品は見るものが見てこその価値だと誰かが言っていた。

どうやら魔物のサインも同等の意味があるらしい。


魔王「ただのサインが100万ーー?文字を書けばいくらでも美味しいものが食べられる?どうかしてるわよ人間は」


アルケミ「体液のついたビンとサインを人型から直接もらった事実は、商人からしてみれば快挙に等しいんだよね。まぁこの後逆上したあなたに殺されなければなんだけど・・・」


魔王「不安ならヘタな勝負に出なければいいじゃない。あなたね・・・私の知り合いにこんな事をやったら、足二本以上もぎ取られるわよ」


アルケミ「こちとら元々マーチャントだから人を見る目はあるつもり。あなたなら・・・たぶん殺されないと思う・・・どう?」


魔王「・・・分かったわよ。別に構いやしないわ持っていきなさいよ。契約書にサインしたわけでもあるまいし」


アルケミ「ほんと・・・?や、やった。やった。やった!あなたみたいな人型がいることは、きちんとギルドにも宣伝しておくよ!」


魔王「きちんと高値で売りなさいよ?私を安売りしたら許さないんだから」


アルケミ「もちろん。あなたが無名の人型でも、商人の意地にかけて高値をーー」


ほっとした様子で喋りながらサインに目を落とすアルケミスト。

サインを見たアルケミストの目が大きく見開かれ、顔はもう一度魔王へと戻される。

サインを見て、魔王を見て、再びサインを見てーー。


魔王「水飲み鳥みたいな動きね・・・。どうかした?」


アルケミ「この名前・・・冗談だよね?虚偽のサインなんて勝手に書いたら、あなただってただじゃ済まないんだよ?やる意味がわからない」


魔王「失礼なヤツねほんと・・・。逆に気にいるわよあんたみたいなやつ。第一そのルールを作ったのは私なんだから、虚偽する意味がないでしょうに」


アルケミ「だ、だってこれーー」


ハッと気付いたアルケミストが魔王の後ろに隠れている町娘に目をやる。

周囲からさんざん浴びせられる視線に加え、穴が空くほどアルケミストに見られた町娘は、視線から逃げるように魔王の背中に身を隠す。


アルケミ「街を飛び出した女の子が魔王城まで直訴しにいった、って噂には聞いてたけど・・・まさか本当にアイスブルーを連れてきちゃう?」


いたって普通の会話のように聞こえていて、アルケミストと魔王の会話を聞いていた人々がざわめきだす。

しかしざわめきはすぐに声色をあげてゆき、瞬く間に「はぁ!?」「魔王?魔王って言ったぞ」「アレがアイスブルー!?」といった驚きの声に変わりゆく。


魔王「この街が滅ぼされたら、うちの城に悪評がたつわ。だから螺旋龍の話を聞きに来たのよ。もし彼女に正当な理由があるのなら、私は止めないわよ」


アルケミ「魔王・・・アイスブルー・・・」


魔王「ええそうよ。畏れおののきなさい?」


喉をうるおし終えてコホンとひと息。


魔王「よく聞け人間ども!」


背負うマントをひるがえし、灯されるのは青い瞳。

背後に隠れている少女を自身の前に立たせた魔王は、町人、旅人、冒険者たちに声を張る。


魔王「私が噂の魔王よ。ちまたではアイスだの、アイスブルーと言われているわ。そしてこの子は町娘。たった一人で魔王に救いを求めた女の子。最高でしょう?今日は仲裁の手助けをするために来たわ」


町娘「魔王さん!?ま、魔王さんやだ!恥ずか、みんなが見てますからーー!」


魔王「けれどそもそも螺旋龍は温厚な性格だとも聞いている。そんな彼女が街を滅ぼすと言っているのならば、恐らく相応の理由があるはずなのよ」


町娘「うぅ、どうしてこんな事に・・・」


魔王「あまり時間が無いらしいわね。私も早速作戦に混ぜてちょうだい。今回の戦いで指揮を任されている者は誰なのかしら?」


白兵戦にはいくつかのパターンが存在する。

城下兵を中心にした部隊が冒険者と町人に指揮をとるパターンがあるが、この街には城が無い。

次いで城下兵のかわりに十字軍が隊列をまとめて指揮を取るパターン

次いで名のある冒険者が十字軍の変わりに指揮を取るパターン。

何にせよ相手が相手である以上、こちらもまとまらなければ蹂躙されるだけだろう。

最悪なのは指揮のいないパターンだがーー。


剣士「俺はいくつかのパーティから指揮を任されている」


ハンター「僕もだ」


名乗りと共に魔王の元へと集まる冒険者たち。


アルケミ「一応言っておくけれど私もだから」


最終的に集まる数は3人。加えて町人は町人で指揮を取る人間がいるらしく、指揮者だけで4人になる。

有り合わせの総戦力にしては、指揮を取るものの数が少ないように感じられた。


魔王「指揮者はこれだけ?冒険者はよく指揮を3人にまでまとめたわね」


アルケミ「私たちこう見えて、結構有名なんだよね」


魔王「知り合い同士なの?」


剣士「いいや。互いがこの街で会ったのが初めてだ。お前ら魔物は人間に興味などないだろうがーー」


と剣士が喋っている途中で、魔王が剣士の頬を指で挟む。

そのまま魔王が指の力を少し入れれば、会話を止められた剣士はまるでタコのように唇を突き出すハメにあった。


魔王「そういうのはやめなさい。どうしても聞いてほしけりゃ、終わってからにして」


剣士「・・・」


魔王「私は今ここにいる冒険者が、螺旋龍と対峙してもなお街を守ろうとしているだけで、賞賛に値すると思うわ」


剣士「・・・」


魔王「確かに私はあなた達三人を知らない。でも勇気ある冒険者たちに指揮を頼まれた事を知っている。覚悟を決めて皆の思いを背負っている以上、貴方を選んだ仲間を失望させる発言はやめなさい」


剣士「そう、だな。すまない」


魔王に非礼をわびた剣士が改めて魔王を見据える。

意思を改め決意を誓った剣士の瞳は、悪寒がするほど真っ直ぐな瞳をしていた。

その目はどこか、前勇者を思い出させる懐かしさもあったほどだ。


魔王「ハンターはどう?」


ハンター「僕は故郷を守りたいだけさ。なんだってするよ」


魔王「この街に家族が?」


ハンター「病気がちな母と、10歳になったばかりの妹が西に住んでいる」


魔王「螺旋龍がどうしても止まらない場合、街は差し出して人の命は奪わないように交渉するつもりよ。先に謝っておくわね」


ハンター「当然さ。逆に魔王、あなたはどの程度僕らに力をかしてくれるんだ?」


問われて魔王は考える。

現状ですらこの一戦は螺旋龍を含め、近隣魔物たちとの火種を生むだろう。

昔ならば「私が気に入らないからみんな半殺し」で済んだのかもしれないが、果たして今でもそんなワガママが許されるのか。


魔王「どの程度・・・」


行動を違えれば城から仲間たちを要請しなければいけなくなる。きっと魔王軍が加担してしまえば、螺旋龍はこの世に骨一つの存在も残されないだろう。

さらに恐ろしいのは、螺旋龍を慕い、手を貸している魔物がいた場合だ。

魔王軍は魔王に攻撃した連中を必ず全て見つけ、私の知らないところで何事も無くなぶり殺しにするだろう。

中でも側近の二人の耳に入るのだけは避けたい。


魔王「私は極力戦闘を避ける事しかできないわ」


ハンター「そうなるよね・・・。仮に螺旋龍が町人を差し出せと言ってきた場合はどうなる。あなたが敵に回るのは笑えないが」


魔王「ならないわ」


ハンター「根拠が欲しい」


魔王「私が螺旋龍を倒すからよ。ついでに螺旋龍の支配下は今後うちが管理する。これでどう?」


ハンター「なるほど。こんなに心強いものはないね」


後書き

続きます。


このSSへの評価

12件評価されています


SS好きの名無しさんから
2017-10-25 06:02:31

SS好きの名無しさんから
2017-06-04 23:14:37

SS好きの名無しさんから
2017-04-25 05:28:03

SS好きの名無しさんから
2017-03-19 00:29:19

SS好きの名無しさんから
2016-09-07 07:41:26

SS好きの名無しさんから
2016-07-06 12:40:31

SS好きの名無しさんから
2016-07-05 20:12:54

SS好きの名無しさんから
2016-06-17 19:59:07

SS好きの名無しさんから
2016-06-11 10:56:01

SS好きの名無しさんから
2016-06-09 13:30:13

SS好きの名無しさんから
2016-06-06 12:54:55

SS好きの名無しさんから
2016-06-05 20:43:33

このSSへの応援

16件応援されています


SS好きの名無しさんから
2017-10-25 06:02:33

SS好きの名無しさんから
2017-06-04 23:14:37

SS好きの名無しさんから
2017-04-25 05:28:06

SS好きの名無しさんから
2017-03-19 00:29:21

SS好きの名無しさんから
2016-09-07 07:41:28

SS好きの名無しさんから
2016-08-15 04:48:17

SS好きの名無しさんから
2016-07-06 12:40:34

SS好きの名無しさんから
2016-07-05 20:12:59

SS好きの名無しさんから
2016-06-30 08:26:39

SS好きの名無しさんから
2016-06-17 19:59:08

SS好きの名無しさんから
2016-06-12 11:52:36

SS好きの名無しさんから
2016-06-11 10:55:54

SS好きの名無しさんから
2016-06-09 13:30:17

SS好きの名無しさんから
2016-06-06 12:54:58

SS好きの名無しさんから
2016-06-05 20:43:29

SS好きの名無しさんから
2016-05-30 12:30:04

このSSへのコメント

7件コメントされています

1: SS好きの名無しさん 2016-06-05 20:43:47 ID: XuaXdbV5

きたか!!

2: りゅっこ 2016-06-05 22:33:33 ID: Wvobv56_

戻りやした╭( ・ㅂ・)و ̑̑ グッ !

3: SS好きの名無しさん 2016-06-14 13:54:07 ID: F32mRWpz

はよし

4: りゅっこ 2016-06-14 21:26:26 ID: jEBQwCjm

今ほらリッチさんが頑張ってるので、リッチさんに伝えておきますえぇ

5: SS好きの名無しさん 2016-07-06 12:41:22 ID: WbufcoGE

続きは?

6: SS好きの名無しさん 2016-07-27 17:34:55 ID: yWGE-rP-

首を長くして更新待ってます。
作者さん、頑張れ!

7: りゅっこ 2016-07-30 09:46:12 ID: UN9g6sAw

コメントありがとうございます╭( ・ㅂ・)و ̑̑ グッ !
し、失踪はしていないんですよ?


このSSへのオススメ

1件オススメされています

1: SS好きの名無しさん 2016-06-14 12:21:54 ID: U3vJV0l7

面白くて全部読んだ


オススメ度を★で指定してください