2016-06-25 11:36:23 更新

前書き

血迷い続ける。





あれほど乱れる彼女を、はじめて目にした。


彼女と彼の夜を、いままで何度も見てきたけれど

今日――彼女の戦没日である今日の日の夜は、それらとは比べものにならないほど、激しかった。



膝を抱いて座りながら、二人の声をじっと聞く。

扉の向こうに二人がいる。他に誰も居ない。

二人だけの世界が、扉一枚を隔てた向こう側に満ちている。


「…………鍵くらいは……しておこうよ。……提督」


ほんのわずかに開いた扉を、そっと指先で押して閉める。

扉がしまる、かちゃり、という音にも、たぶん二人は気付かない。



……何に嫌悪しているのだろう。


すっかり重たくなった心を抱えた体を、どうにか立ち上がらせる。

これ以上ここにいて何になる。僕がいたところで、二人は、もう何も変わらない。


かすかに感じた眠気が、僕を救ってくれるものだと信じ込み、僕は、何もかもを忘れられるように、その場を後にした。



自分の部屋の布団の暖かさだけが、僕を僕自身から救ってくれた。










「……………………」


……とは、言ったものの。


明朝。朝の陽ざしが差し込む本庁の廊下を歩く。

目指す場所は入渠ドック。昨夜の出来事をたった一晩で忘れられるはずもなかった僕は、

たぶんストレスから来たものであろう頭痛を抱えながら、朝風呂に入ろうとふらふらと歩いていた。


普段は三つ編みを左肩から流しているが、今日に限っては髪を整える気分すら起きなかった。

頭頂にある耳っぽいくせ毛はそのままに、ゆらゆらとセミロングの黒髪を揺らし、早朝の海を窓から眺めて歩く。


……僕はつまり、よそ見をしながら歩いていたわけで。


「時雨?おはよう」


「…………おはぅぇえっ!!?」


目の前で僕に挨拶をした彼女の姿に心底驚いたのは、そのせいだ。

片腕で書類を抱き、いつもと変わらない表情でそこにいる。……提督のものと同じ、白い軍服がいやに似合っていた。


「どうしたの時雨。いつになく激しい驚き方だけど」


いつになく激しかったのは君の方だろう。

……一瞬だけ浮かんだそんな思考を押しのけて、いそいそと髪を整えながら彼女に答える。


「あ、あー。いやいや。なんでもない。なんでもないんだ、夕立……」


「髪だって縛ってないし……散髪でもするつもりっぽい?あ、さては失恋でもした?」


「そ、そんなわけないじゃないか!ははは……」

(当たらずとも遠からずだよこの馬鹿立ッ……!!!)


ころころと笑う彼女に合わせ、必死の作り笑いを見せる。

……いつだってそうだ。

僕が見る世界の景色と、彼女が見る世界の景色には、決定的な食い違いがある。


彼女の笑顔はなんだって幸せにしてくれる。彼女の笑顔を見るためならなんだってできる。

けど僕は、その幸せを否定したい。与えられるだけの幸福なんて無碍にして、彼女に何かを与えたい。

……そう願うのは、提督も同じなんだろう。

そうして僕は、提督に先を越されたんだ。


互いに笑い合いながら、いつもの雑談を終えて、じゃあ、またあとでと歩き出す。

いっそ何もかも投げ捨てて、彼女を押し倒せればいいのに。いつものように鈴のような声で笑う彼女の口をふさげたらいいのに。

形にできない嫌悪感のようなものが渦を巻いて、僕の中にとどまり続ける。吐き出す方法すらどこにもない。


足を止めて、ふと振り返る。

執務室の扉を開ける、軍服姿の彼女が目に入る。

彼女は僕のことなんて気にせず、ただ、中にいる彼と顔を合わせて笑った。





…………ねえ。


僕らの制服はどうしたんだい。


僕らが姉妹であることの象徴であるそれすら脱ぎ捨てて、君は彼に染まるのかい。




ぱたん、と執務室の扉が閉じた。

……直後に、かちり、と鍵が閉まる音がした。




僕は、何も考えないようにすることにした。











慣れないデスクワークを終えて、ようやく一息ついた。

両腕を引っ張り上げて、ぐいーっと伸ばす。

同時に、ほわあーっとあくびも出た。


……秘書艦に加えて提督代理の任もつとめるようになって、しばらく経ったけれど

やっぱり、机と向き合うのには慣れないっぽい。


「はーぁ……深海棲艦をぶっ倒す、デスクワークもやる、あといろいろ。……全部やらなきゃいけないのが、代理のつらいとこっぽい」


……仕事もつらいが。それよりもなによりも。


「…………――っで!!この!!ふく!!!!」


むぎぃぃいいっ、と唸りながら、白い軍服をめちゃくちゃに引っ張る。

頑丈な繊維はそれくらいでは破けはしないが、ぎちぎちと音は立てた。


「なんっで制服まで変えないといけないっぽい!?提督代理だからって提督がいるのに提督の恰好する必要なくない!!?あーっ、もーーっ!!!」


……確かに自分は、提督のことが好きだ。

身も心も彼のものになると決めた……けれども。


「……。だからって自分の制服は脱ぎたくなかったっぽい…………」


ぐでっ、と書類だらけの机に寝そべって、しかめ面で愚痴をこぼす。

ため息をいくらついたところで、上の……提督の決定には逆らえないのだが。


「……いいや、もう。さっさと脱いで寝ちゃお……続きは、明日…………ぽい…………」


軍服をぽいと脱ぎ捨てて、寝間着も着ずにシャツ一枚で布団に寝そべる。

……慣れない仕事で固まった体が柔らかくなっていくのがわかる。


そのまま、導かれるように瞼を閉じて、くうと深く深く寝入った。










偶然……と言えば、そうだ。


たまたま、状況がうまくかみ合った……というか。

クサい言い回しをすれば、運命の歯車がかみ合った……だとか。

たまたま。たまたま、そんな状況になった。


……提督に、夕立の些細な忘れ物を届けるよう言われて。

自分で届ければいいじゃないかと言ったら、女の子の私室に上がり込むのは気が引ける、なんて言い出して。

仕方ないから僕が届けに行くことになって……

……夕立の部屋なんて、今まで何回も上がったことがあったから……抵抗なんて一切感じずに入り込めて。



「夕立?忘れ物のボールペン、ここに置いておくよ…… って」


「……………………」



そうして、いくつもの、当たり前の、起こりうる偶然が重なって。

シャツ一枚で、布団もかぶらないで、ぐっすり寝てる彼女を目にした。


「…………」


…………なんだか、肩にとりついていたものが、すとんと落ちたような感じがした。

同時に、心臓の奥で一瞬だけ火が灯るような感覚を覚えた。

……熱が満ちるような、引くような。


一切の足音を響かせなくなった僕は、この部屋に唯一響く音である、彼女の寝息をしっかりと聞いた。

……あれだけ夜を激しく暴れまわる彼女。立ちふさがるものを誰一人許すことなく、蹂躙する彼女。



その彼女が……無防備に、眠っている。





「……ゆう…………だち」


呼吸が荒くなって、心臓が跳ねているのがわかる。

まるで思春期の男の子じゃないか。……眠っている女の子に興奮するなんて。


ああ、けど、仕方ない。

だって彼女は……彼女だ。



「……だめじゃないか。……ちゃんと……服、着なきゃ……風邪……ひくよ?」


いったい誰に向けた言葉なのか、自分に聞きたくなる。

……わかってる。自分を正当化するために、自分で自分に言い訳を聞かせてるんだ。

……だから仕方ない。って。

服を、着せなきゃならないから。彼女が……風邪を、ひいちゃうから。

……だから仕方ない。

彼女の肌に触れたって、仕方ない。



「…………」


ぺた、と触れる彼女の頬は、すごく。暖かい。


柔らかい。……彼女はどんな洗顔剤を使ってたっけ。

いや、それともこの柔らかさは……彼女の生来のものなんだろうか。


かえって、頭が冷静になっていく。

けど、心は収まらない。


そのまま、自分の指先が彼女の首をつたう。

……どこに触れても、暖かい。



「………………ぁ」



「……~~~~っっ!!?」



一瞬、漏れた彼女の声に驚いて、思わず脊髄が手を動かした。

……心臓が口から飛び出そうなくらいに跳ねている。……海上でもここまで緊張しないのに。


「………………」


………………じっと待って、彼女の様子を見る。

……大丈夫?…………大丈夫。……ぐっすり寝てる。

声ぐらい……出すさ。うん……それが普通だ。



「…………。」


ごく、と唾を飲み込んで、また指先を彼女の体に這わせる。

あれだけのハードワークを、彼女は毎日こなしているんだ。

だから、身体中に疲れが溜まっているに違いない。



「……だから、僕が………………」


……解き、ほぐさなきゃ。

彼女の、体…… ……やわらかくて、綺麗で、すごく、すごく、劣情が湧いてくる。




「…………ぁぅ」


…………もう、驚かないよ。

首筋を這う指先が、だんだんと降下して……

……やがて、胸元にたどり着く。


「……っっ」


シャツ一枚しか隔たりを持たないそれは、すごくすごく暖かくて……

すこし指で圧するだけで、ふにゅうと沈む。

……けれど、指先から押し返してくる感触もあって。

……姉妹の中でも、かなりサイズの大きいそれは、

僕の手のひらには収まらない。


「………は……っ…………はぁ、はぁっ…………」


体が、爆発しそうなくらいに火照ってる。

……柔らかい。ただ柔らかい。


ぎゅっ……と力強く揉んでも、それでも彼女は起きない。

本当に……今僕は、彼女の体を好きにできてしまうんだと実感して、

右手だけじゃ足らなくて、両手で彼女の両胸をわし掴んだ。


むにゅうっ…………

きゅっ、むにっ……………もにゅ

…………。


頭が、どうかなってしまいそうだ。

やわらかくて、あたたかくて、

それ以上の言葉が見つからなくて。

両手は、止まらなくて……揉むたびに形を変える、彼女のおっぱいに欲情が重なっていく。

………………見たい。

さかりのついた犬みたいに、唾液を飲み込むこともろくにせず、

僕はただ、目の前のそれだけを見つめ続けた。

……シャツ一枚の先に、夕立の、生のおっぱいがある。

それさえ越えてしまえば、

じかに触れる、弄れる、しゃぶりつける。


したい。

もっと、彼女のおっぱいを、堪能したい。



変に力強くまくりあげて、

起こしてしまっては元も子もない。

……机の上から、物音をたてないように、慎重に鋏を持ってきて

彼女のシャツの裾にあてがった。


……しゃき…………しゃきん。


シャツが切り裂かれて、左右に広がってく。

その様を見ていると、僕は、本当に悪いことをしているんだという気持ちに支配されて、

何も知らないまま、ぐっすりと眠る彼女に対する

いろんな情が、音をたてて燃え盛るような感覚を覚える。

……僕は、片手でシャツを切りながら、

身震いしながらもう片方の手で、無意識に自分の股ぐらを愛撫していた。


…………やがて、刃先が彼女の喉元までたどりつき

冷えた刃先が彼女の肌に触れないよう、

慎重に、襟を切り裂いて……僕は、鋏を手放した。



「…………ぅ、わ………………」


自分を慰める手を休ませることもせずに、

僕は、目の前の彼女の姿に釘付けになる。


……シャツが、大きく開かれて……お腹と、胸の谷間がそこに晒されている。

ただ。……ただ、両胸の先端は、まだ隠れていた。

すこし……ほんの少しめくれば、もう。



「……~~っ♡♡……ふっ……ふうぅっ………♡」


……さっきからどうも、興奮しすぎて小さな絶頂を

幾度となく迎えている。

腰は砕けても手は動くから、かまわず弄る。

僕の愛液で彼女の寝床が汚れるのも、それはそれで昂るものがある。

じっ……と顔を近づけて、シャツをそっと掴み……

……………ゆっ、くりと……横へ、ずらす。


……ぷるっ



つんと上をむいた、桜色の突起が見えた、瞬間。

なにかを考える間もなく、僕はそれにかぶりついていた。



……………吸って。舐めて、踊らせて。

揉んで……搾って…………躍る。


本当に、子宮が爆発したんじゃないかと思った。

頭がちりちりと焼けて、それでも体は止まらない。

貪欲に、正直に……僕は、夕立のおっぱいにしゃぶりついている。

常に愛液で満たされ続けている、

自身の秘所をかき回しながら。


……気持ち、いい。

ああ、これは、駄目だ。

…………こんな快感、忘れられるはずが無い。



「ん、ちゅぅっ……じゅる……… ……ぷは……

 ………はぁぁあっ………♡♡♡

 ……ゆう、らち……………ゆぅ、らひっ…………♡♡♡」


「……ぁっ…………………ぁう」


無我夢中になって彼女の名前を呼びながら、

彼女の乳首を貪り続ける。

それに反応して、深く深く眠っているはずの彼女の口からも

甘ったるい吐息が漏れ始めている。

……ああ。



そういえば、君……胸ばかり弄られて、

焦らされ続けてたんだっけ…………。



「……ん、はふっ……♡♡らいじょうぶ、だよ、夕立」


唾液でてらてらと光るおっぱいを愛しく思いながら、

自分を慰めている手を、今度は夕立のショーツの中に潜り込ませる。

どろどろに濡れていたのは、

僕の手なのか、彼女の股間なのか、

区別なんてつかなかった。


「僕はっ……ぁはっ……♡♡遠慮、なんてっ………しないから……♡♡♡♡」


二、三度彼女のぴっちりと閉じた割れ目を撫でて、

それから一気にずるりと指を侵入させていく。

当たり前だけど、自分のものとはまったく違う感覚に

この上ない興奮を覚えながら、

ひたすらに自分の穴と彼女の穴をかき乱し続ける。

どちらの穴からもどぷどぷと愛液が漏れて、

より深く、より乱暴な愛撫も受け入れられるようになっていく。


「あっ♡♡あっっ♡♡♡あーーーーっっ♡♡あーーーーっっ♡♡♡♡」


弱点を押し上げる度、壊れたおもちゃのように

あえぎ声をあげる夕立が面白くて可愛くて愛しくて、

何十回と絶頂したのにも関わらず、僕のお腹は足りないといわんばかりにきゅうきゅうと

自分の指を締め上げてくる。

夕立もそれは同じなようで、

もっと大きな、もっと長いものがほしいと、

もっと深くまで犯してほしいと言うように

僕の左の指を思いきり締め上げる。


彼女の乳首にむしゃぶりつきながら、

自分の正気が失われていくのを待っていた……時。


……なぜか、ぴたりと彼女のあえぎ声が止んだ。



……おかしいな。

あれだけよがっていたのに、どうしたんだろう。

そう思い、ふと顔をあげた瞬間。




「………………時、雨」



夕立と。目が、合った。



「…………………何、してる……の」




「わからない?」


口の回りの唾液をぬぐうこともせず、

かといって両手の動きを休ませることもなく、

僕は夕立の顔を見て、にこりと笑った。


「レイプ、してるんだよ、君を」


たとえ起きたとしても。

君が僕の指を物欲しそうに締め付けてくるのは

よくわかるから。

欲しがるものは、あげなくちゃ。


寝ているときとは一転して、

歯を食いしばって耐えている夕立に顔を近づけ

僕は、そのまま、唾液まみれの口で

彼女の口をふさいでやった。


「んむっ……!!?むぅっ!?むーーっ、むぅうううっっ!!!」

「ん、っふ……♡じゅる……じゅぅぅうううっ♡♡……はふっ……♡」


そのまま、彼女の口から彼女の唾液を吸い上げる。

寝起きの口は雑菌でいっぱいなんだっけ。

もう、それすら愛しいや。



夕立の悶え方が、どんどん激しくなっていく。

僕を押し退けようとする力もどんどん抜けていってる。

ああ、かわいいなぁ。

本当に。本当に。本当に。かわいい。

大好きだよ。だから忘れないでね、この感覚。

この快感。僕も絶対に忘れないから。

寸止めなんてさせてあげない。

イきたいって言わせることも許さない。

止まっちゃダメだよ夕立。さ。ほら、

爆発しちゃえ。僕みたいに。


口から口を離して。

目を見開いて涙を流す彼女の瞳をみつめて。




「ほら――――――――ばぁんっ……♡♡♡♡♡」




僕は、彼女と自分の陰核を思いきり捻りあげた。


悲鳴と嬌声が入り交じった大声が一瞬聞こえて。

それから、僕の意識は真っ白になった。










「時雨、頼んでたの、終わった?」


「ああ。待たせて悪かったね夕立、ほら」


時雨が机の引き出しから取り出した書類を手に取って、

ぺらぺらぺらーっと流し読み

よし、大丈夫だね……と受け取る。

仕事はいつもしっかりやってくれるから、

チェックはそれだけで十分っぽい。


「にしても、ここ最近はずいぶんとデスクワークが増えたね。

 これ全部君一人でやるつもりだったんだろう?

 無茶にもほどがあるよ、まったく」


「ひ、ひとりじゃないっぽい!!提督さんが……

 やってくれる、はず、だったんだけど……」


「その提督も出張じゃないか……まったく。

 万が一を考えて、常に備えをしておくべきだろう?

 頼れる艦娘なんて、僕以外にもいるだろう」


「頼れて、仕事もできる子って言ったら時雨くらいしかいないっぽい。

 ありがとね、でも」


「うん。かまわないよ」


 

……私の感謝に答える彼女の笑顔は、すごく綺麗なものだった。

思わずこっちの頬も緩むような。

……いつだったか見た、蠱惑的すぎる笑顔よりも

ずっとずっと清らかなものに思える。


あれ以来、身の回りで特に変わったことは起きてない。

鎮守府はいつも通りだし、

私が着ているのも相変わらず白い軍服。

制服を着られるのは、出撃のときに限るっぽい。


あれは、きっと悪い夢だったんだと思うことにした。

そう考えなきゃ、どうしたらいいのかわからない。

私は提督のことが好きなんだから、

他の誰とも関係を持つわけにはいかないし、

その想いに応えることもできない。

こればっかりは、ぽいで片付けられることでもない。



「秘書艦。おはようございます」


「おはよう、矢矧。変わりない?」



「あら、夕立秘書艦。おはようございます」


「ん、おはよ陸奥。今日もでっかいねー」



「秘書艦。おはようございます

 ほら、あなたたちー。ご挨拶、ご挨拶。」

「「「「おはようございますっ」」」」


「おはよう。いい敬礼だね、もう立派なレディっぽい。

 龍田の教えがしっかりしてるのかな?」




提督が不在の今、代理の私が提督の業務のすべてを引き継いでいる。

仕事の合間を見て鎮守府を見て回るのも立派な仕事、

こうやって挨拶をして回る時間が、

私の何よりも好きな時間。


ただ……

この業務だけは、いつも提督と一緒にやっていた。

…………から。


「……どーしても、さみしーっぽぃぃ……

 はぁ……はやく帰って来ないかなー………」



外に出て、日差しを浴びたあたりのとこで、

私は、ぶはーっと大きくため息をついた。











「昨日は、ちょっと危なかったな」


「けど、あれくらいなら起きないってわかったし」


「もうちょっと」


「踏み込んでも、いいのかな」



「……けど、さすがに今日は疲れちゃったな……

 姉の僕よりずっと頑張ってるじゃないか。

 ……僕もさっさと追い付けるようにしないと」




「ふあああ…… ……。

 ダメだ、ちょっと寝ちゃおう…………」









「時雨ー?どこまで進…………ありゃ」


様子を見に顔をのぞかせたら、

時雨が背もたれにもたれかかったまま

くうと寝入っていた。


「……机に伏せるならわかるけど

 その寝方は……どうなんだろ、危なくないかな

 しーぐれー、寝るならお布団…………」


無防備に眠る姿。

警戒心の欠片もない、前をむいたままの睡眠。


「…………時雨?」



近づいて声をかけても、反応は無い。

…………。

眠ってる。心臓の鼓動がだんだん早くなる。

少しずつ息が荒くなるのを感じる。


…………無防備な彼女を見た、だけで。

なんでか、いろいろなものが湧いてくる。



「………………………………時雨?」





私には何故か。

彼女のその寝顔が、何よりも蠱惑的な物に思えた。


後書き

トラック泊地シリーズをすすめろ。


このSSへの評価

4件評価されています


SS好きの名無しさんから
2016-07-08 11:30:04

SS好きの名無しさんから
2016-06-29 16:07:42

SS好きの名無しさんから
2016-06-26 00:51:48

アクアさんから
2016-06-23 10:55:42

このSSへの応援

3件応援されています


SS好きの名無しさんから
2016-06-29 16:07:49

SS好きの名無しさんから
2016-06-26 00:51:49

アクアさんから
2016-06-23 10:55:43

このSSへのコメント

2件コメントされています

1: SS好きの名無しさん 2016-06-26 00:51:35 ID: SCHu0Ety

思春期の中学生のような時雨にぐっときました
時雨が終始地の文というか思考だだもれだったので感情移入もとてもしやすかったです。起きるまでは慎重にしてたのに起きてから大胆になるのもまた時雨っぽくて
そして最後!最後ですよ!逆パターン……
夕立は……どうしてしまうのか……
続き楽しみにしていますね?

2: 佑来 2016-06-26 01:32:14 ID: QbBhQwSx

ありがとうございます。まいどまいど。

つづきませんよ。


……つづきませんよ。


このSSへのオススメ

2件オススメされています

1: アクア 2016-06-23 10:55:54 ID: VFcGaRix

ゆうしぐいいゾ~^

2: SS好きの名無しさん 2016-06-26 00:52:08 ID: SCHu0Ety

時雨の思考にひきづられると楽しいです


オススメ度を★で指定してください