2016-10-17 05:54:22 更新

概要

稼働し始めた特殊演習施設と、その規模に合わない大きさに疑問を持って調査する提督。後をつけた曙と一緒にトラブルに巻き込まれ、関係が改善する。そして、謎の声。『姫』とは果たして?

みんな大好き、曙回です。


[第三話  うちの鎮守府、広過ぎ? ]




-某年12月後半、深夜。堅洲島鎮守府、特殊演習場内のどこか


曙「提督、本当にごめんなさい。わたしが後をつけたりしなければ、こんな事には・・・」ブルブル


提督「いや気にしなくていい。曙が悪いわけじゃない。それより大丈夫か?・・・かなり冷え込んできたが」


曙「寒い・・・」ブルブル


提督「まずいな。真っ暗だし迂闊に動けない。遠くで波の音はするが、反響でイマイチわからない」


提督(朝になったとしても、ここの開け方に気づく子がすぐに出てくるとは考えづらいな。何か考えなくては・・・)


-10時間前、特殊演習場


提督「とりあえず、ここ以外の外部施設の説明は終わりだね。では、いよいよお待ちかね、この鎮守府の目玉の一つ、特殊演習場に入るよ」


加古「でかいとは思ってたけどさぁ、近くで見るとほんとすごいね、これ」


提督「高さが10階建てのビルをちょっと超えるくらい。5分の一が陸地で、残りは広さの関係で海の上だ。幅は90m、全長は360メートル程度、だそうだ。海のあらゆる時間や気象条件、ある程度の深度を再現可能で、全ての艦種の訓練や演習に対応している。他の鎮守府の子たちのデータを一日に二度、更新し、正式な演習相手として戦うことが可能だよ」


加古「うおすっげえ!ぶっ飛ばしてガンガン練度上げれるねー!」


古鷹「提督、入り口はどこなんですか?」


提督「こっちこっち。地上には入り口が無くて、エレベーターで上がるんだよ」


叢雲「改めて見ても大きなエレベーターね。艤装を展開して乗る想定かしら?」


提督「恐らくそうだろうな。しかし、随分上がるんだな」


-特殊演習場


提督「よし、じゃあまず、習うより慣れろって事で。最初に、主端末に提督か秘書艦のカードを通して、と」


叢雲「演習可能艦隊が表示されたわね」


提督「こちらも演習艦隊を編成しよう。希望者いるー?」


加古「あたしあたし!さっそくぶっ飛ばして来るよー!」


古鷹「重巡洋艦のいいところ、やっと見せられますね」


朧「わたしも行きたい」


扶桑・山城「私たちも参加したいです」


提督「よし、じゃあちょうどいい。叢雲と漣は操作の手順をよく見てね。えーと、じゃあ今のメンバー、艤装なしで構わないので、そこのロッカーの靴とリストバンド、靴、ヘッドギアと、リュックみたいなやつを身に着けて、そこの光ってるゲート通って」


加古「ふっふーん、準備完了!通るね」プシューン・・・シュバッ!


加古「うわっ、艤装が展開した!」


漣「仮想訓練艤装って言うらしいですよ」


叢雲「全員ゲート通ったわね?じゃあ・・・」


提督「装備を決める前に、まずどっかの鎮守府から5チーム演習に登録しているから、相手を決めてから装備を決めよう」


叢雲「手始めにこれどう?」


提督「えーと、艦隊名『戦艦清霜』・・・は?そんな戦艦あったっけ?・・・編成は、駆逐艦清霜、練度98、単艦のみ。・・・突っ込んだら負けな気がしてきた。よし、これで行こう!」


加古「おっしゃあ!ぶっとばす!」


-数分後、S判定勝利


山城「うう・・・勝ったけど、駆逐艦の夜間雷撃で大破判定なんて、不幸だわ」


朧「当てたと思っても最小限の動きでかわされるね」


加古「うわー全部かわされちゃったよー。古鷹良く砲撃当てたよね」


古鷹「たまたま運が良かっただけだよー」ニコッ


提督「おー、いいね。やっぱり演習はいい。ちなみにこの施設、まだうちの鎮守府にしかなくてね。仲間同士でも演習可能だし、私も参加できるらしい」


加古「え?提督も参加できるの?」


提督「私も参加できるし、ある程度鎮守府の実績が評価されると、いずれ何かと引き換えで仮想の深海勢力とも戦えるんだそうだ。実は私も戦ってみたくてね、自分なりの艤装を設定すればいいらしいんだけど、折角だからデータを色々弄って参加しようかなと」


漣(ご主人様の目がゲームの発売日を心待ちにしている人のそれだわ・・・)


叢雲(最近やたら銃とかの3Dデータいじってたのは、これね・・・)


提督「ちなみに、演習はマルサンマルマルとヒトゴーマルマルに更新されるし、それぞれの時間に更新される艦隊ときっちり演習すると、少しだけ実績報酬が入ってくるそうだ。使わない手はないから、ガンガンやろう」


一同「おー!」


提督「あとは、ここの責任者だけど・・・」


叢雲「わたしがやってもいいわよ?わたしの艤装の、補助ユニットと相性のいい仕事だし」


提督「じゃあ、決まり。あとはひとまず今のメンバーで演習をこなしてしまうか。外の施設については説明ここまで。以降は昼食後、ヒトゴーマルマル以降の演習に、各自相談の上で全員一度は参加の上、ヒトハチマルマルまでに演習結果の報告書を提出。併せて同時刻までに3チーム近海警備を行い、完遂後はそれぞれ自由時間とする!」


一同「諒解いたしました!」


提督(それにしても、設計上必要な規模に対して、建物が大き過ぎる。これはまるで・・・)


-4時間前、提督の自室


提督(・・・だーめだ。全然気になって眠れやしない。特殊演習場の構造がおかしすぎる。どう考えてもあれは・・・。着替えて調べるか。上層部も想定しているだろう、どうせ)バサッ・・・ガチャッバン


-同時刻、2階廊下


曙(・・・ふぁ、トイレ行ってそろそろ寝よっと)カチャッ、カタン


曙(ふー、寝よっと。・・・あれ?こんな時間にエレベーターが動いてる?)サッ


曙(あれは、提督?どこに行くのかしら?)


-七駆の部屋


朧「曙どっかいくの?」ムニャ


曙「何でもないの、ちょっと浴場に忘れ物したから、取りに行ってくるね。おやすみ!(小声)」


朧・漣・潮「おやすみ~」zzz…


-鎮守府エントランス前


曙(特殊演習場に向かってる影が提督かな?特訓?誰かと会うとか?)タタッ


-特殊演習場、東3番外部非常階段


提督(防波堤が邪魔にならずに荷物の積み下ろしをするとして、ここからは平ドックになるな。・・・ん、良く見ると岸壁のコンクリートがだいぶ打ち足されている。どれどれ・・・)コンコン・・・ガリガリッ


提督(高強度コンクリートか。なら、あれもあるはずだが・・・)デントウパチッ、キョロキョロ


-数か所、規則正しく並んだ、一段と濃い灰色のコンクリートの四角い区画がある。


提督(やっぱり!おそらく大型ベースパックか。まだ未使用のこれがあるって事は、大型クレーンの設置が予定されているな。となると・・・)


-三階の非常階段踊り場のフェンスに、取り外し可能な場所を見つけた


提督(ふむ、そうするとこの壁面のどこかに・・・あった!塗装で塗りつぶされているが、制御盤みたいなものがあるな。どれ)パチン、ガチャッ


提督(無施錠か。『仮設防火・排煙・転用ドア。化学火災対応ハンドル式。外部密閉型』・・・なるほど。内側からは開けられない仕様か。配線は・・・ないな。セキュリティに引っかかるって事は無さそうだ。流木でもつっかえ棒にして、少し調べてみるか)


-近くの物陰


曙(提督、何か調べてるの?・・・えっ?あんなところ、開くんだ!)


-3階踊り場


提督(よし、この流木ならがっちりはまって抜けないな。どれ・・・)デントウパチッ、スマホパチッ


提督(なんて広さだよ!だだっ広くて光が届かない。本当に真っ暗だな。鉄製の仮設通路もギリギリの寸法で設計してある。訓練施設の機械やコンピューターなんかじゃ断じてない。何か作るための空間か?それとも、既にその何かが置いてあるのか?)ライトテラシー


提督(何かバカでかい構造物があるようだが、近寄る通路が見当たらないな・・・という事は、完成はしてる何かって事か?特にこの部分に触れた話題は大淀さんの話には出てこなかった。機密がらみではないと思いたいが、秘匿は厳重にされている。・・・意味が分からないな)


-通路は左右の壁際にどこまでも伸びている。空間の中心部に行く通路は見当たらない。


提督(とりあえず、準備して調べ直さないとダメか・・・ん?)


??「きゃっ!」カラン、バタッ!ギィィ・・・バタム


??「いった・・・」


提督「誰だ!?」ライトピカッ


曙「いったぁ・・・。あ!提督?」


提督「曙?大丈夫か?どうしたんだこんな時間に」


曙「ごめんなさい、提督がここに来たのが気になって・・・」


提督「こっそり後をつけてきた?」


曙「・・・・」


提督「おれも油断してたなぁ。怪我しなかったか?」


曙「大丈夫、ちょっと膝を擦りむいただけ」


提督「そうか、なら良かった。・・・良かったけど、もしかして曙って特務でおれを見張ってた?」


曙「えっ?何を言っているの?そんなんじゃないわ。・・・単純に、興味があっただけ。やり過ぎちゃったみたいだけど。ごめんなさい」


提督「・・・まあ、この場合悪いことをしているのはおれだから、別にいいんだけど。もし誰かに、都合悪いことがあったら提督を殺せって言われてたんなら、一思いに頼むね」


曙「そんな!殺すとか!・・・え?・・・提督、もしかしてわたしを疑ってるの?」


提督「・・・・」


曙「・・・え?ウソでしょ?・・・そんな」


提督「なぁーんて、うっそぴょーん!」


曙「えぇっ?」


提督「後をつけてきて出入り口で転んで、怪我しつつこっちにバレバレ、かつ、自分の逃げ道塞ぐエージェントなんて居るわけがない。まあ、曙が特務でおれの監視や殺害を課されていたら、おとなしく言うとおりにするよ」


曙「そんな調子の良い事ばかり言って!提督なら解体でも捨て艦でも何でもできるでしょ?」


提督「冗談でもそんな事言うなよ。おれが絶対にしたくない事だ、それらは」


曙「ごめんなさい」


提督「いいけどさ、どうして来たの?」


曙「・・・気になって」モジ・・・


提督「何が?」


曙「提督が、誰かとこっそり会うのかな?・・・とか。ふ、深い意味にとらないでよ?ちょっと気になってやり過ぎただけなんだから!胸を触られたお返しよ」


提督「あー、それを言われたらおれも何も言えないな。ごめんな」


曙「いいけど、私も、その、ごめん・・・」


提督「ただ問題は、出入り口が閉まって、こっちからは開かないって事なんだよな。別の出入り口を探さなきゃならないが、もしかするとまずい機密に触れてしまうかもしれない」


曙「もし、機密に触れて、それがばれたらどうなるの?最悪の場合だけど」


提督「そうだな・・・最悪の場合なら、おれは民間からの徴用だから何らかの懲罰と解雇だろうね。曙は解体にされるかもしれない」


曙「そんな・・・」


提督「なので、最重要な機密に触れてしまったと分かった時点で、おれの嫁が曙になってしまうって事さ」


曙「え?どういう事?からかってるの?」


提督「いや、真面目な話。どんな不祥事が発生しても、提督とケッコン関係だった艦娘は解体や轟沈等、命を失うような扱いが厳禁とされている。非常にまずいことになるから、らしいが」


曙「そうなの?知らなかった・・・」


提督「提督でも、知らない人がほとんどだよ。公式には公開されていない情報だから」


曙「提督は何でそれを知っているの?」


提督「むっちゃんの艤装爆発事故の時に、お偉いさんから色々聞いてさ」


曙「そうなんだ。・・・あっ、だから嫁って言ったの?」


提督「そう。もし本当に機密に触れてしまったら、の話だけどね。ただ、練度が一定以下のケッコン関係の認定は、実証が必要になる」


曙「実証って?」


提督「全ての秘書艦の証言と、他何名かの艦娘の証言による裏付け。あと、肉体関係の有無の医学的検査をパスすること。肉体年齢が一定以下の艦娘の場合は、ケッコン関係が最初から不成立とされてしまうらしい。暫定の内規によると、このラインは七駆がギリギリのラインで、六駆とかはアウトらしいね。ただ、前例がないのでわからない、との事だったが」


曙「ふーん・・・えっ!ちょっと待って、じゃあ、もしも最重要の機密に二人で触れてしまったら、最悪の場合、わたしと提督が、・・・その、・・・・する、って事?」


提督「最悪の場合で、解体処分が妥当とされそうな場合、だぞ?だって、婚姻関係に近い関係を実証するって事だもの。まあ、関係にも色々あるし、さっきの肉体年齢の話もあるから、血液検査でクリアすればいいんじゃないか?みたいな意見もあるらしい。要は、まだちゃんと決まってないし、対策はあるって事だよ」


曙「わかった。・・・けど、なんでそんな、落ち着いているの?」


提督「え?」


曙「わたしが提督にすごい迷惑かけてるし、もっとかけるって事だよね?わたしが後をつけて、躓いて出口が無くなっちゃったから、すごく危険な状態になりかけてるんだよね?」


提督「いや、断言できないぞ?可能性の話をしているだけで」


曙「でも、でもダメだったら嫌だよそんなの!」


提督「まあそうだよなぁ、解体との二択とはいえ・・・」


曙「違うそうじゃないの!漣とか、陸奥さんとか、扶桑さんたちとか、みんな提督の事が好きだし、提督だってみんなの事を大事にしてるの、すごくわかる。それをわたしが、わたしが全部壊しちゃうのなんて絶対に嫌!」ダッ!


提督(危ない!何でそこにフェンスがない?)ダッ!


提督「曙!」ガッ


曙「あっ!」ダンッ!ガッ!


提督「・・・ぐっ!」ゴンッ!・・・カンカン・・・パシャッ、パリーン・・・


曙「うそ・・・そんな!提督!だいじょうぶ?」


提督「うっく・・・大丈夫か?曙。いきなり走るやつがあるかよ、真っ暗なのに」


曙「わ、わたしは大丈夫。提督これ、わたしの下敷きになってるんじゃないの?」


提督「そうだな。ここは階段かな?背中と頭に触れてる冷たい鉄は痛いけど、胸と腕の中には、何やら随分触り心地のいいもんがあるな。・・・怪我しなかったか?」


曙「・・・・」グスッ


提督「なんだ?怪我してるのか?・・・いてて、ちょっとすぐには動けないか(背中と肩か?こめかみもいてぇ・・・)」


曙「・・・大丈夫・・・わたしはどこも怪我してない・・・」グスッ


提督「そうか。なら良かった。クソ提督とか言うなよ?ちょっと動けないんだ」


曙「・・・カ、じゃないの?」グスッ


提督「んー?何泣いてんだよ?」


曙「バカじゃないの?悪いの全部わたしだよ・・・何で怒んないの?」


提督「全部偶発的な事故だろ。そこまで曙が悪いわけじゃない。大元はおれが隙だらけでこんな場所に来たのが悪い。ついでに、今曙を抱っこしてる形になって、胸が当たってるのも偶発的な事故だからな?」


曙「そんなのいい。でもしばらく泣きたいよ・・・」グスッ


提督「胸が貸し切りだから、好きなだけ泣いとけ。泣いたらちょっと落ち着け」


-そして、現在


曙「提督、怪我は大丈夫?」


提督「ただの打撲だな。最初よりはだいぶいい。こめかみもちょっと切れたが、大したことはない。ただ、寒いな」


曙「年末の真夜中だもんね・・・すごく寒いよ」


提督「ちょっと手を貸してみて・・・つめたっ!」


曙「提督の手、あったかいね」


提督「心が冷たいからな。ふふ」


曙「そんなことないよ」クスッ


提督「普通の女の子なんだから、寒くないわけないよな。ちょっとこっちに寄って」


曙「こう・・かな?」


提督「セクハラのつもりはないからな?」ギュッ、ファサッ


曙「あっ!あったかい・・・」


提督「クソ提督って言わないのか?」


曙「今は言いたくない」


提督「そうか。とにかくこうして、明るくなるのを待つさ。予想が正しければ、脱出できるかもしれないからさ。いくら艦娘でも、寝ちゃだめだぞ?寒すぎるから」


曙「そういえば、スマホとか懐中電灯は?」


提督「さっきどちらも落っことした。音を思い出す限り、お亡くなりになっただろうな」


曙「・・・ごめんなさい」


提督「次謝ったらセクハラすんぞ?」


曙「ごめ『ムニュッ』んなっ!本当に触った!」


提督「はい、いただきました」


曙「なにすました感じで言ってるの?クソ提督!」


提督「そうそう、そんな感じでいなよ」


曙「提督、明るくなってここの事を色々知ったら、機密に抵触するかもしれないんでしょ?」


提督「もしかしたら、ね」


曙「最悪の場合、提督は何か罰と、クビで、わたしは解体かケッコンになっちゃうんだよね?」


提督「考えられる最悪の場合だけどな」


曙「詳しく聞いといてもいい?」


提督「いいよ。想定は大切だもの」


曙「寒いね」


提督「そうだな」


曙「提督は、そうなったらわたしでいいの?」


提督「いいよ?」


曙「何で即答できるの?」


提督「そうなったら、それが運命だろうし、別に不幸にはならんだろ。そうしなかったら曙は解体されちゃうし、そうなったらおれも一生幸せになる事はない。後悔のみで残りの人生を生きることになる。もっとも、曙は危機を脱してほとぼりが冷めたら、おれから離れて自由に生きるってのもありだろうけどさ」


曙「そんな事しないよ・・・」


提督「そっか、なら問題ないじゃないか」


曙「そうじゃなくて、漣とか、陸奥さんとか、扶桑さんは?」


提督「みんな分かってくれるよ。もしそれが必要な事ならね。伊達にみんな戦場に出てるわけじゃないんだしさ」


曙「でもそれじゃ「曙」」


提督「地上に、「幸せな人」なんて、どこにも居ないとおれは思ってるよ。「幸せに見える人」はいてもね。ある程度仕方のないことはあるさ。それでも、意外と人は落ち着くもんなんだ。「なるようにしかならないし、なるようになる」んだよ。運命に対して全力で戦うことは必要。ただ、その上での結果は受け入れることになるんだ」


曙「そう、だね。いつか暗い海に一人で沈んで死ぬのかな?なんて考える時があるけれど、少なくともそういう結末からすごく遠ざかるんだもんね」


提督「『何かがあれば、何かがない』のさ。覚えとくと少し楽だよ。・・・しかし冷えるな。大丈夫か?」


曙「うん。つっこんだ話を聞いてもいい?」


提督「ああ、寝るよりいいからな」


曙「提督って、この鎮守府で誰か好きな子はいるの?」


提督「いきなりすごいのが来たな」


曙「ごめ「ムニュッ」んっ!」


提督「ごめんいただきました!」


曙「クソ提督・・・」


提督(あれ?反応がおとなしい)


曙「答えて?」


提督「気にかけてるのはむっちゃん、いつも助けてくれるのは叢雲、いつも気を楽にしてくれるのは漣、素敵だなと思うのは扶桑さん、話したら意外と楽しそうなのは山城、かな。これが正直な感想」


曙「そうなんだ、わたしは?」


提督「意外と可愛いやつ」


曙「ありがと」


提督「納得した?」


曙「うん」


提督「大丈夫か?元気ないな」


曙「薄着だったから、寒くて・・・」カチカチ


提督「ちょっと待ってろ」モゾモゾ・・・ヌギッ・・・ファサ


曙「ありがとう。提督は大丈夫?」


提督「うん、くっついててくれ。寒いからさ」


曙「なんだか漣に悪いなぁ・・・」


提督「今はそんな事言ってる場合じゃない。自分の事を第一に考えて」


曙「じゃあ、もう一つ聞くね?」


提督「なんでしょう?」


曙「提督って、扶桑さんとか山城さんが好きそうでしょ?あと、陸奥さんとか大人の女性が好きだと思うの」


提督「話しやすいってのはあるかな」


曙「それもあるけど、スタイルとか・・・その・・・」


提督「あ、大人な意味の方で好みか?って事?」


曙「・・・うん」カァァ


提督「そりゃ、あんな感じの女性たちが嫌いな男はあまり多くないだろうな」


曙「それも分かるんだけど、そうじゃなくて・・・さっきの話だと、わたしになるわけでしょ?」


提督「あー、相手が曙でいいのかって事?」


曙「・・・うん」カァァ


提督「ああ、全然問題ないぞ?・・・あ、普段からそんな目で見てるってわけではないぞ?」


曙「うん、わかってるよ。提督の漣を見る目、いっつも優しいもん。漣は少しだけ不満そうだけど」


提督「それは知らなかった。ふふ。というか、この話題になってから曙があったかいな」


曙「きっ、気のせいよ!」


提督「まあでも、機密ついでに突っ込んだ話をしておくと、ケッコン関係の医学的検査のクリアってやつ、あれは血液検査だけでもクリアすれば良いって抜け道もあるわけで、必ずしも行為が必要な訳ではないんだよな。血中の特定のホルモンの濃度の上昇が認められれば良いわけで、こっそりその薬を入手して使用できれば、何もなくても検査が通る可能性はある」


曙「そんな事も可能なんだ」


提督「ただ、噂では血液検査は裏付けに過ぎず、最近は何か別の方法で艦娘の状態を把握することが出来るらしい、とも」


曙「どっちなの?」


提督「詳しいことはわからない。なので、大事を取るのがベストだろうな。その薬自体も、処方してもらうと足がつく部類のものだし」


曙「という事は、やっぱりする事はしなきゃならないのね」


提督「ところがそう簡単でもない。当たり前のリスクが発生するから」


曙「どういうこと?」


提督「妊娠のリスクだよ」


曙「あー、そっか・・・そうだね」


提督「でも、艦娘とケッコンして引退した提督の話はしばしば聞くのに、子供が生まれたって話は聞かない。ほんと、謎ばかりだ。秘匿されているだけだとは思うんだけどね」


曙「そうなのね・・・」


提督「ただ、人間の歴史はこういう方面でも長いから、そういうリスクを避ける方法というか、快楽を別方向から突き詰めるというか・・・そういう方法も普通にあるんだけどね」


曙「そうなの?」


提督「こういうのは人間の脳の発達と密接にかかわっているらしいから、そうなんだろうね」


曙「よく分からないんだけど、そういう事を知っていると、選択の幅が広がるの?」


提督「んー、広がると言えば、広がるけど・・・」


曙「教えてもらってもいい?」ブルッ


提督「いや、あまり気が進まないな。曙の純粋さに良くない影響が出るみたいで。・・・寒いな」


曙「寒いね。もうこうなったら大丈夫だよ。わたしの責任だもの。・・・解体と二択になる前に凍え死ぬかもだけど」


提督「曙は悪くないっての。でもわかった、じゃあ小声で。例えばよくある・・・・・・・・(小声)・・・・・・・・っていう方法と、もう一つは、普通と違って・・・・・・・・(小声)・・・・・・・・っていうのがある」


曙「・・・・・・・・・・・・・」ボッ


提督(またすごく温かくなったな・・・)


曙「・・・なるほど、ね・・・。最初のは本とかでちょっとだけ知ってるから、わかる。もう一つのは、ごめんちょっとビックリした。でも、理屈には合ってるわね・・・」カァァ


提督「うん、まああまり深く考えるなよ?何の機密にも触れてない可能性もあるんだから」


曙「うん、わかってる。提督もさ、普段きちっとしてるけど、好きな子が居たらそういう、いろんな事をしたいの?」


提督「おれは独占欲が強い方だから、特定の好きな相手が居たら、特にいろいろしたがるほう」


曙「そうなんだ、意外(じゃあもしかすると、いつかわたしや漣がそうなる可能性もあるんだ・・・)」カァァ


提督「でも今は、そういう気持ちは遥か心の奥深くだな。全員無事に戦いを終わらせなくてはならないからね。・・・なんとなく漣は、おれのそういう気持ちをわかってて接してくれている気がするくらい絶妙なんだよね」


曙「良い子だもんね、漣」


提督「昨日ほら、君ら七駆がメイドの恰好して飲み会に来てたでしょ?ああいう時間だけで十分に元気が出るんだよね」


曙「それだったらわたしの胸とか触んなくていいはずだけど」


提督「ごめんちょっと嘘ついた。でも、みんな大切なのは本当」


曙「わかってるよ、クソ提督」クスッ


-三時間後


提督「そ、そろそろ明け方のはずなんだが、冬のせいか一向に明るくならないな」ブルブル


曙「・・・提督、寒いし、なんかすごく・・・眠い」ウトウト


提督「曙、寝ちゃだめだ!身体が冷えすぎてる」


曙「・・・提督、わたしね、提督のいう事をよく聞かなくちゃ!って思う気持ちと一緒に、絶対に信用しすぎちゃダメだ!っていう気持ちも同時にわいてきて、うまく話せない時があるの。それでいつも嫌な感じにしちゃう。ごめんね・・・」ウトウト


提督「おいおい!なに弱気な事を言ってるんだよ、曙らしくない!」


曙「・・・艤装無い時は、普通の女の子だよ、みんな。・・・眠いなぁ」ウトウト


提督「おい!寝ちゃダメだってば!」ユサユサ


曙「・・・暗い海に沈むとか、嫌われて解体されると思ってたのに、思ってたよりずっと、いいなあ」メヲトジ


提督「・・・曙?おい、曙ってば!・・・まずい!機密とか言ってる場合じゃない!・・・誰か!誰かいませんか?すいません、誰か!」


??「・・・いますよ?どうしましたか?」キーン


提督「・・・えっ?誰ですか?(スピーカーを経由した声だが、聞き覚えはないな。誰だ?)」


??「ごめんなさい、閉じ込められていたんですね。二人は恋人か何かで、こっそり逢瀬でも重ねていたかと思っていたの。邪魔しちゃ悪いかなって」


提督「申し訳ない。私が勝手に忍び込んだのです。機密に該当するなら、厳罰も受ける覚悟です。ただ、低温でこの子が危険な状態にあります。まず、出口を教えていただければ助かります。逃走はいたしません。何卒!」


??「・・・あなたはもしかして、ここの鎮守府の提督さん?」


提督「はい、そうであります」


??「それなら、何も問題はないわ。ここについて、まだ何も知らされてはいないのね?」


提督「はい。知らされておりません」


??「遅かれ早かれ、いずれここもあなたの指揮のもとに解放されます。まだその時期ではないだけです。・・・では、最寄りの扉を開けますから、お大事にしてくださいね」ヴーン、ガコッ、ガシャン


提督「こんな近くに別の扉が!ありがとうございます」


??「この件は上層部の説明不足による、偶発的な事故として、鎮守府内での処理にとどまります。つまり、あなたの権限までで止まる話です。事実上の不問ですね」


提督「わかりました」


??「でも、恩義に感じてくれているなら、一つだけお願いがあります」


提督「なんでしょうか?」


??「あなたが提督として、この世で最も強い船を預かり、その命名権を得ていたとしたら、どんな名前を付けるか?・・・次に会ったら答えを楽しみにしていますね」


提督「わかりました。あの、あなたは?」


??「残念ながら機密なのです。では、急いで」


提督「わかりました、ありがとうございます。それでは!・・・曙、ちょっとの辛抱だぞ!」ダキッ、ダッ!


-医務室


提督「むっちゃん、朝早くからゴメン、開けてくれ!」ブザー


陸奥「・・・ふぁいはーい、どうしたの?」ガラッ


提督「うわっ!なんて恰好してるんだよ!パンツにブラ無し白衣って・・・」


陸奥「もー、いいでしょ。寝起きは弱いのよ。あまり何か言ったら胸ギュッするわよ?・・・あら?怪我してるじゃない!その子どうしたの?真っ青だわ」


提督「実は・・・(事情説明)というわけで・・・」


陸奥「命がけで楽しい時間を過ごしてきたわけね。待ってて。この子は温めれば大丈夫。あなたも何か飲んだらいいわ。コーヒーでも淹れるわね」


提督「ありがとう。何か手伝うよ」


陸奥「じゃあ、この子をこちらのベッドに運んで」


-30分後


陸奥「うん、顔色も戻ってきたわね。あとは疲労が回復すれば目覚めるわ」


提督「そうか、それなら良かった。ちょっとだけシャワー浴びてくるよ」


陸奥「できれば湯舟にも入って、ゆっくり温まってから来て。あなたの怪我も見てみないと」


提督「サンキュ。寝ちゃってたら、マルハチマルマルに誰かをよこしてくれれば助かるよ」


陸奥「わかったわ。危なかったわね。お疲れ様」


-提督の自室


提督「とりあえずこれ飲んで、風呂入るか・・・」トクトク、グビッ


提督(今日の出来事は、事故ではない。おそらくあの声との出会い・・・かな)


-マルハチマルマル


漣「ご主人様、お風呂で寝てます?迎えに来ましたよ?」


提督「んあっ?」ザボッ!


漣「怪我とか大丈夫ですか?」


提督「あー悪い。いつの間にか寝ちゃってたな。ちょっと待ってて、すぐ出て着替える」


漣「じゃあ、出て着替えたら声かけて下さいね?ご飯とか包帯とか持ってきますから」


提督「ありがとう」ザバッ、フキフキ、シュッ、サッサッ


提督「・・・OKだぞ?」


漣「はやっ!」ガチャッ


提督「おはよう、漣。なんかホッとするなぁ」


漣「あ、やっぱりご主人様、怪我してますね。聞きましたよ?ぼのが迷惑かけたんだよね?」


提督「いや違うぞ?おれが変な場所に入ってしまっただけだよ」


朧「提督、朝ごはん」ガチャッ


提督「あ、いいね焼きシャケ。持ってきてくれたんだ?」


朧「うん、和食がいいかなって。食べてね」


提督「ありがとう。早速いただくよ」


朧「提督も絆創膏貼ったら、朧とおそろいだよ?」ニコッ


提督「はは、それもいいかもな。・・・うん、うまいねー!」モッシャモッシャ


潮「ほ、包帯と湿布とか、持ってきたの・・・」ガチャッ


提督「あ、潮もおはよう。ありがとう」


潮「提督、大丈夫、ですか?・・・陸奥さんから色々貰って来たので・・・後で痛いところの手当てを、しますね・・・」


漣「ご主人様、ぼのといっぱい話した?」


提督「いっぱい話したよー。寒くて眠りそうだったから。曙が何か言ってたの?」


漣「んー、何だかぼの、ちょっとツン成分が少なくなってる気がするんですヨ。少ししおらしくなって帰ってきた感じ。元気がないとかじゃなくて」


提督「そうなの?まあいろんな話をしたからなぁ」


漣「まさかご主人様、最近のたまりにたまったうっぷんを、ぼのの発育途上の身体で・・・!」


提督「あほう、なんもないわ」ポスッ


漣「てへっ!もしそんな時はそこの、胸部が戦艦クラスの子に声かけて下さいね」


潮「漣・・・なに言ってるの」カアッ


朧「でもなんでぼの、提督のあとなんてつけたんだろ?」


漣「お話ししたかったんだと思うなぁ。とっかかりを間違えただけで」


提督「うん、おれもそう感じたよ。他意は無いんだよ、あの子は。自分で言ってたな。時々、良く分からない気持ちがせめぎ合って言いたい事と違うことを言ってしまうって」


漣「もう、そこまでわかってればチョロイですぜ?」


提督「何がだよ。そんな事ばかり言ってると、漣がもっと触れ的な事を言っていたっての、実行に移すぞ?」


漣「調子に乗り過ぎました、サーセン」


潮「ふふ・・・漣が」


漣「あっ!笑われた!」


朧「提督、ご飯済んだなら、食器下げてくるね」


提督「ありがとう。もうごちそうさまです」


朧「うん」カチャッ、スタスタスタ、バタン


漣「あまりしゃべらないけど、一番早く起きて、『今日もこれ着よう』と言ってメイド服着ていた朧さんでした」


提督「そうなの?」


潮「なんだか気に入った、みたい。潮もですけど・・・」


提督「じゃあもう七駆はそれで良くないか?かわいいし」


漣「ほいさっさー」


-医務室


陸奥「すごいわね、大怪我した人みたいよ?」フフッ


潮「あの、うまくできなくて、ごめんなさい・・・」オロオロ


漣「だーいじょうぶだお。包帯巻く時のうしおっぱい押しつけ攻撃で、ご主人様はもう怪我の痛みとか吹っ飛んでるってば。まさに高速修復。ね、ご主人様」


提督「どうしてそうリアクションに困る話を振るかね?潮が顔真っ赤だよ?」


漣「それが面白いからです」キリッ


提督「よし、触ろう」


漣「スイマセン、調子に乗りました」


提督「むっちゃん、曙は?」


陸奥「むっちゃんて呼ばないでって言ってるのに。一度起きたんだけど、またすぐ寝ちゃったわ。でももう、通常の睡眠のはずよ」


曙「・・・あ、えっ?」ガバッ


陸奥「もう大丈夫。よく眠れたかしら?」


曙「提督・・・うそ、ひどい怪我!」


潮・提督(しまった・・・)


提督「これは何というか、ちょっと大事をとった感じの包帯なんで大丈夫。それより、もう寒くないか?痛いところは?・・・それと、とりあえずあの場所は機密ではないから、その・・・大丈夫だったぞ」


曙「そうなんだ・・・良かった・・・」グスッ


曙「本当に・・・うわぁぁぁん、良かったよぉ!」ヒック、グス


提督「もう大丈夫だってば、ごめんね。今日はゆっくり休んで」ポンポン


漣(あっ、頭ポンポンしてる!ぼのも嫌がってない!何かあったけど、いい方向に行ったんだね)


陸奥(あら、少し理解し合えたのね。良かったわ)


-同じ頃、本土のある施設


??「大淀君。『姫』が彼と偶然接触したらしい。話してみてくれたまえ」


大淀「なんですって?あの提督がもう?運なのか才能なのか、本当にわかりかねる人ですね。・・・わかりました。早速『姫』と会話を試みてみます」


-同施設、特殊帯通信室


大淀「こちら大淀、堅洲島の『姫』聞こえますか?」


??「・・・何かしら?あなたには用は無いのだけれど」


大淀(!応えてくれた。やっぱり機嫌が良いのね。なら・・・)


大淀「答えて下さるんですね。何か素敵な出会いでもありましたか?」


??「小さな、可愛い光と、優しく悲しい光を見たわ。あれが私の『提督』かしら?」


大淀「おそらく、そうなります。あなたが会話を返してくれること自体、どんな提督でもあり得なかった事ですよね?」


??「そうね。今日はあなたにさえ話したい気分だわ。私ね、ここのドアを開けて、あの人と小さな光を外に返してあげたのよ」


大淀「なんですって!」


??「何を驚くの?当たり前のことよ?私は希望を持ってここにいる。あなたたちに呆れこそすれ、敵対してはいないつもりよ?むしろ待ち人が来た以上、感謝さえするわね。・・・ただ一つ心配なのは・・・」


大淀「何でしょうか?」


??「頭が良いだけで盲目に近いあなたが、つまらないことをしでかさないかが心配ね。その時まだ私がいるなら、あなたをどこからでも塵にしてみせるのだけれど」


大淀「!!・・・『姫』あなたはどこまで知っているの?」


姫「全てに決まっているじゃない。あなたたちはその為に私を創ったのだから。あなたたちが私にアクセスしているんじゃないわ。わたしがあなたたちの茶番を眺めているのよ」


大淀「では、『姫』。私たちが次にすれば良いことは何ですか?」


姫「一度しか言わないわよ?1.かつての私の兵装の計画を、あの人に練り直してもらうこと。2.前提として、あなたたちの管理している情報をレベル4まであの人に解放する事。3.練り直された兵装への換装を、実際にあの島で行うこと。4.あの鎮守府の建造サルベーションに私が介入できる回路を作る事。5.あの島の試験運用予定の防御兵器に私がアクセスできるようにすること。・・・以上だわ。私は他の鎮守府の作戦海域を少しだけ操作し、あの鎮守府の子たちの成長が少し早まるようにするつもりよ」


大淀「ありがとうございます。わかりました。すぐそのように手配いたします」




第三話、艦


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1: SS好きの名無しさん 2016-06-22 06:21:56 ID: tXCix4tQ

曙可愛い!

2: SS好きの名無しさん 2016-06-23 06:10:48 ID: lMqOVV82

胸熱展開になってきた
姫が誰なんだか、凄い気になる


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