2016-09-27 01:06:03 更新

概要

提督と艦娘たちが鎮守府でなんやかやしてるだけのお話です

注意書き
誤字脱字があったらごめんなさい
基本艦娘たちの好感度は高めです
アニメとかなんかのネタとかパロディとか
二次創作にありがちな色々
長い


前書き

34回目になりました
楽しんでいただければ幸いです お目汚しになったらごめんなさい
ネタかぶってたら目も当てられませんね

以下、ちょっとしたプロフィール。長いので、興味ない人は飛ばしちゃって下さい

提督
練度:神頼み 主兵装:刀
「えぇ…。やだよ、めんどくさい」
長髪で黒髪、何時も気だるげな表情をしてる
一応、白い制服を着けてはいるが、上から羽織っている浴衣が全てを台無しにしている、不良軍人
そもそも、軍人どころか人ですら無い、元土地神様
覚えている人もいなくなり、ようやく開放されたと思えば、深海棲艦が湧いてきて…
3食昼寝付きの謳い文句も手伝って、提督業を始めだした
性格は、ほとんど子供。自分でやらないでいい事はまずやらない、明日できることはやらないで良い事
悪戯好きで、スカートめくりが好きなお年ごろ
また、結構な怖がりで、軽度は人見知りから始まり、敵は全て殲滅する主義

皐月ー愛称:さつきちゃん・さっちゃん・さっきー
練度:棲姫級 主兵装:12・7cm連装砲(後期型 好感度:★MAX
「え、司令官かい?そりゃ…好き、だよ?なんてな、えへへへ♪」
初期艦で秘書艦の提督LOVE勢。提督とは一番付き合いの長い娘
その戦闘力は、睦月型どころか一般的な駆逐艦の枠から外れている程…改2になってもっと強くなったよ
「ボクが一番司令官の事を分かってるんだから」とは思いつつも
まだまだ照れが抜けないせいか、ラブコメ時には割とヘタレである

睦月ー愛称:むつきちゃん・むっつー・むっつん
練度:褒めてっ 主兵装:12・7cm連装砲(後期型 好感度:★MAX
「提督っ、褒めてっ!」
わかりやすい提督LIKE勢、「ほめて、ほめて~」と、纏わりつく姿は子犬のそれである
たとえその結果、髪の毛をくしゃくしゃにされようとも、撫でて貰えるのならそれもよしっ
好感度は突っ切っているが、ラブコメをするにはまだ早いご様子

如月ー愛称:きさらぎちゃん・きさら
練度:おませさん 主兵装:12・7cm連装砲(後期型 好感度:★9
「司令官?ふふ…好きよ?」
やらかした提督LOVE勢。一昔前、司令官と仲良くなろうと色々頑張ったが
振り返ってみると、かなりアレだったことに気付き、思い出す度に悶絶する毎日
しかし、一度派手なことをやった手前引くに引けず、ラブコメをする度に黒歴史が増えていく毎日

弥生ー愛称:やよいちゃん・やよやよ・やーよ
練度:固い 主兵装:3式爆雷 好感度:★7
「司令官?好きだよ、普通に」
感情の読めない提督LIKE勢。瑞鳳に卯月が取られて、手が空いた反動か結構好き勝手やりはじめた
最近は ゆーにあることないこと吹き込むのがお気に入り
「もちろん、いい娘に育てるよ?」私のようにねっ
ラブコメはするより見るのが好き…て、思ってたんだけどなぁ

卯月ー愛称:うーちゃん・バカうさぎ
練度:ぴょんぴょん 主兵装:超10cm高角砲★MAX 好感度:★7
「司令官?そんなの大好きに決まってるぴょんっ」
ぴょんぴょんする提督LIKE勢。毎日ぴょんぴょんと、あちこちで悪戯しては怒られる毎日
主な対象は瑞鳳、「だって、からかうとおもしろいだもん」なんのかんので構ってくれる瑞鳳が好き
ラブコメというより、騒がしい妹

文月ー愛称:ふみ、ふーみん
練度:ほんわか 主兵装:12・7cm連装砲(後期型 好感度:★8
「しれいかん?えへへー…なーいしょっ♪」
ふんわりとした提督LOVE勢。空気を読んでいたつもりが空気に飲まれたここ最近
司令官を見てドキドキするのは、きっと姉や妹の影響だ、きっとそう
そうなってくると、いつものスキンシップでさえ気恥ずかしい上に
弥生お姉ちゃんが、変な道に突き進んでいるのを止めたりと、最近は忙しい

長月ー愛称:なつき、なっつん、なっつ
練度:頼りになる 主兵装:5連装酸素魚雷 好感度:★8
「司令官…いや、まあ…いいだろ別にっ」
おでこの広い提督LOVE勢。司令官に ちゅーしてこの方
自分の感情を見ない振りも出来なくなり、最近は割りと素直に好意を見せてくれたりもする
自分の感情に振り回されるくらいにはラブコメ初心者。あと、シスコン(菊月)

菊月ー愛称:菊→菊ちゃん→お菊さん→きっくー→くっきー
練度:威張れるものじゃない 主兵装:12・7cm連装砲B型改2★MAX 好感度:★7
「司令官か?好きだが?」
箱入り提督LIKE勢。おもに長月に過保護にされてるせいでラブコメ関連はさっぱり
しかし、偶に見せる仕草はヘタなラブコメより攻撃力は高い。やっぱり如月の妹である
大艦巨砲主義者、主兵装は夕張に駄々を捏ねて作らせた。それとシスコン(長月)

三日月ー愛称:みつき・みっきー
練度:負けず嫌い 主兵装:12・7cm連装砲(後期型 好感度:★9
「し、しれいかん…そ、その…好きですっ!」
おませな提督LOVE勢。どこで仕入れたのか変な知識は一杯持ってる
そして、変な妄想も結構してる。すぐ赤くなる、可愛い
提督と望月に、からかわれ続けたせいで、たくましくなってきたここ最近
ラブコメモードは基本に忠実

望月ー愛称:もっちー、もっち
練度:適当 主兵装:12・7cm連装砲(後期型  好感度:★MAX
「司令官?あー、好きだよ、好き好き」
適当な提督LOVE勢。とか言いつつ、好感度は振り切ってる
だいたい司令官と一緒に居られれば満足だし、司令官になんかあれば不言実行したりもする
ラブコメには耐性があるが、やるとなれば結構大胆

球磨ー愛称:ヒグマ
練度:強靭・無敵・最強 主兵装:46cm…20.3cm(3号 好感度:★MAX
「提督?愚問だクマ」
突き抜けてる提督LOVE勢。気分は子グマの後ろに控えている母グマ
鎮守府と提督になんか有ろうものなら、のっそりと顔を出してくる、こわい
積極的にラブコメをすることもないが、昔は提督と唇を奪い合った事もある
大艦巨砲主義者。最近、私製46cm単装砲の命中率があがった、やったクマ

多摩ー愛称:たまちゃん・たまにゃん
練度:丸くなる 主兵装:15・2cm連装砲 好感度:★6
「提督?別にどーとも思わないにゃ?」
気分は同居ネコ。とか言いつつ、なんのかんの助けてくれる、要は気分次第
絡まれれば相手もするし、面倒くさそうにもするし、要は気分次第
特に嫌ってるわけでもないし、いっしょに昼寝もしたりする、要は気分次第
ラブコメ?何メルヘンなこと言ってるにゃ

北上ー愛称:北上様・北上さん
練度:Fat付き 主兵装:Fat付き酸素魚雷 好感度:★7
「提督?愛してるよん、なんちって」
奥手な提督LOVE勢。気分は幼なじみだろうか
このままゆるゆると、こんな関係が続くならそれで良いかなって思ってる
最近の趣味はFat付きをばら撒いて海域を制圧すること

大井ー愛称:大井さん・大井っち
練度:北上さん 主兵装:北上…53cm艦首(酸素)魚雷 好感度:★8
「提督?愛してますよ?」
分かりにくい提督LOVE勢。そうは思っていても口にはしない、絶対調子に乗るから
足と両手が埋まったなら、胸…艦首に付ければいいじゃない、おっぱいミサイルとか言わない

木曾ー愛称:きっそー、木曾さん
練度:悪くない 主兵装:甲標的 好感度:★7
「提督?まあ、アリなんじゃないか?」
カッコイイ提督LOVE勢。提督に赤くさせられたり、提督を赤くしたりと、まっとうなラブコメ組
そういうのも悪くはないが、本人はまだまだ強くなりたい模様
インファイター思考だけど、甲標的を使わせたほうが強いジレンマ

金剛ー愛称:こう・こうちゃん・こんご
練度:Burning Love 主兵装:Burning…46cm3連装砲 好感度:★9
「提督?もちろん、好きですっ、大好きですっ、愛してますっ、Burning Loveデスっ」
分かりやすい提督LOVE勢。提督の為ならたとえ火の中水の中
クリスマス以降、ちょくちょく愛情表現されるようにはなったけど
自分の許容量の低さに、毎回パンクしそうになっている
球磨曰く「使いもんにならなくなるから、やめるクマ」

瑞鳳ー愛称:ずいほー・づほ姉ちゃん
練度:卵焼き 主兵装:99艦爆(江草 好感度:★6
「だれがお姉ちゃんよっ」
気分は数ヶ月早生まれな幼なじみ。ラブコメルートもあった気がしたけど、何処行ったかな
卯月にからかわれて、追っかけまわすのが日課
だからって、別に卯月を嫌ってるわけでもなく実際はその逆である

夕張ー愛称:ゆうばりん
練度:メロン 主兵装:軽巡に扱えるものなら何でも 好感度:★6
「ゆうばりんって…気に入ったのそれ?」
気分は一個上のお姉さん。卯月や菊月の駄々に付き合ったり
球磨や提督の無茶振りで、アレな兵装を作ったりと、信頼と安心の夕張さんである
特に決まった装備は無く、戦況次第でなんでも持ち出すびっくり箱、安心と実績の夕張さんである

大鳳ー愛称:大鳳さん
練度:いい風 主兵装:流星改 好感度:★9
「提督、愛してるわ」
素直な提督LOVE勢。金剛見たいにテンションを上げるでもなく、息を吐くように好意を伝えてくる方
ラブコメに悪戯にと我慢強い方だが、許容量を超えると…
その落ち着いた物腰からは、艦隊の保護者っぽくなっているが、内心は見た目通り歳相応だったりもする

U-511ー愛称;ゆー、ゆーちゃん
練度:ですって 主兵装:WG42 好感度:★5
「はい、Admiralの為にがんばりますって」
助けてもらったご恩返しに今日も頑張る ゆーちゃんです
主兵装は球磨の悪戯 「まさか本気にするとは思わなかったクマ」別に反省はしていない
最近は、弥生に色々と教えてもらって賢くなってきた、不安しかない
今日も順調に鎮守府に馴染んできています

ーそれでは、本編をはじめましょうー


↑前「瑞鳳?と提督?」

↑後「提督と水無月」




提督と台風



珍しく早起きした提督が、あてども無く港を歩いていると


「てーいーとーくーっ!Good!Morning!」


その声は、思わず足を止めてしまうほどには大声で

もしかしたら、今ので何人かは起きたんじゃないかと思うほどだった


提督「こう?」


珍しい、と思う

金剛が起きだすのは、日が昇ってからだったように記憶していたけど

ま、それはお互い様か。そんな日もあるんだろうさ


提督「こんな時間にどうしたの?」


呼ばれるままに振り返り「おはよ」と、返した後

とったかとったか駆け寄ってくる金剛に、素直に疑問符を浮かべてみせる


金剛「どうもこうもありません。提督(あなた)の隣に私がいますっ」


そうして「何処もおかしくはありませんっ」と簡潔に完結させた金剛さん


提督「…そういうの、ストーカーって言うんだよ?」

金剛「す、すとーかー…」


ガーンっと、分かりやすいくらいに肩を落としてみせる金剛

本当に、朝から元気な娘だった


提督「ふふ…冗談よ」


そう言って、軽くほくそ笑むと再び歩き出す提督


金剛「むぅ。また金剛の事からかって…」


わざとらしくむくれながらも

ささっと、提督の隣に並んで歩くと

しばらく、静かな海辺での散歩の時間と相成った




明け方。朝とも夜ともつかない曖昧な時間帯を歩く二人

おしゃべりに花を咲かせるかと思えばそうでもなく

波の音と、時折聞こえてくる小鳥の囀りに耳を傾けながら

ただ何となく歩いていた


提督「世界が止まったみたいだな…」


ふと、提督が呟く


暗いということはない

ただ、中途半端な明るさは、あっちとそっちの境を朧に歪ませ

更に、紺色で塗りつぶしてしまえば、そんな感想の出来上がりだった


金剛「それじゃ、ずぅっと二人っきりデスネっ!」


そんな中学生地味た感想に、笑顔で返してくる金剛

それもまた中学生地味た感想で、こそばゆくはあったけども

知らず、口元が緩む提督だった


金剛「あ…」


なんてことをやっていると

次第に差し込んでくる陽の光が、波間に反射してキラキラと たゆたい始める


金剛「綺麗、ですね…」


朝日に照らされる彼女の横顔

涼やかに吹き抜ける風が、その髪を優しく撫でていく


提督「そうね…」


素直に頷く提督だったが

それはそれで彼女には不満だったらしい


まだかな?まだかな?

そんな感じに、ちらちらと提督の方を盗み見る金剛さん


提督「…」


まさか、要求されるとは思わなかった

本気にしろ、冗談にしろ、言っておいて損は無い場面ではあったけど

要求されるまでは考えていなかったな


提督「はぁ…」


観念したように提督が一つ息を吐いて一言


「お前の方が綺麗だよ」


金剛「ですよねっ!」


知っている、分かっている、その言葉を待っていたと

ぱぁっと、笑顔を輝かせ

Yes!やったぜ!Happiness!と、ぐっと握り拳を作り

嬉しさを体中から滲ませる


そして、ぴょんっと提督の一歩前に進み出ると

両腕を開き、くるっと回って正面を向く


金剛「それでね、提督?」


そうして、本題はここからだと

腰の後ろで両手を組んで、覗きこむように、伺うように、提督を見つめた後


「もっと綺麗な金剛を見たくはありませんか?」


今年の夏も暑くなりそうだった




提督「別に…」

金剛「ご無体なっ!」




その後、紆余曲折…というよりも、さんざ金剛をからかった後

なんのかんの言いつつも、近くの百貨店まで引きずられる事になった提督


提督「うっわ…」


到着したのは水着売り場で、パステルカラーのそれらがお出迎えしてくれた


金剛「さぁ提督っ!どれが良いデスかっ!」


華やかな水着達を後光に変えて

「さぁっ、選んでっ」と、催促する金剛さん


提督「選べってもな…」


水着…これ、下着と変わらんやん、とか思わなくもないデザイン達

あられもない…じゃあ、かすみくらいで?って、どれも大差ないし

下着がダメで、水着が良いという理屈は…

まあ、見せるものと隠すものの差か…


そうやって、しばらく頭を悩ませた後

そっか、そうだなと、導き出される結論は


提督「卯月」

卯月「ぴょんっ!」


一言そう呼ぶと「まかせるぴょんっ!」と、片手を上げて

たたっと、水着売り場の中に飛び込んでいく卯月


金剛「むぅ…私はあなたに選んで欲しいのにぃぃ」


その不満は当然ではある

わざわざ嫌がる提督を水着売り場まで引っ張ってきたのだ

それを、卯月達に選ばされたのでは意味が無い


卯月「しれーかーんっ」

提督「お、きたきた。良いのあったか?」

卯月「うひひひひ…もちろんだぴょんっ」


にやりと、意地悪く微笑んで見せる卯月

その様子を見るに、首尾は上々と言った所か


そして、卯月が選んだ水着を受取ると

さっと、金剛の前に差し出す提督


提督「じゃ、取り敢えずこれから着てみようか?ん?」

金剛「ま、良いですけどーべつにー…」


ま、金剛だって お姉さんですからねっ

少しくらい遊びに付き合ってあげてもいいでしょうとも、ええ…


金剛「えぇ…こ、これは…」


恐る恐る手を伸ばし、その水着を受取る金剛

しかし、だがしかしだ、それは水着というか…


金剛「ひ、ひも…」


圧倒的な布面積の少なさ、それは紐というより他はなく

点在する三角の布地だって、隠せてるかどうかも怪しい代物だった


金剛「Waitウェイトうぇいと…あ、あなたこういうのは…」


そう、提督はこういうのは趣味じゃないと、どっかで聞いたような


提督「ものは試しって言うだろう?意外とクルかもしれんぞ?」


にまぁっと、いやらしく歪んでいく提督の表情


金剛「Non!こなくていいよっ!こ、こんな…ひもじゃないデスかっ!」


これだったら、場所こそ選びはすれ、裸の方がまだマシだ

時と場も選べないこんな水着なんて着れるわけがっ


弥生「…金剛さん?」

金剛「なにっ!今大事な話をっ」


不意に袖を引かれた金剛

視線を向けてみれば、弥生がいつもの無表情な顔して見上げていた


弥生「金剛さん、それは水着だよ?紐ではないよ?」

金剛「そんなこと分かってますよっ、けどねっ!」


更に言葉を重ねようとする金剛に

「まって」と、その小さな手の平を翳して口をふさぐ

そして、指先をそっと伸ばし、金剛の目の前でくるくると回し始めた


弥生「金剛さん、それは水着、水着なの、分かる?」


紐だと思うから紐に見えるの、いい?

ただの紐にこんな布地なんてついてないよね?


分かる?


それは水着、水着なの、いい?

ここは水着売り場だよ?此処に売っているの水着なんだよ?

分かる?


それは水着、水着なの

仮に紐だったとしても、それがどうだというの?

司令官に見てもらえるんだよ?司令官が喜んでくれるんだよ?司令官の視線を独り占め出来るかもしれないよ?


分かるよね?


それは水着、水着なの

海で水着を着るのは普通のことなんだよ?


弥生「だからね?金剛さん…」


「着替えてこよ?」


金剛「ぉ、ぉぅ…」


何のつもりかと、弥生の指先を見つめていた金剛


くるくる、くるくる、くるくると


繰り返される単調な動きを、しらずしらずに目で追っていく


くるくる、くるくる、くるくると


釣られるがままに目を回し続けていると、次第に自分が騒いでいた理由が遠のいていく


くるくる、くるくる、くるくると


そうして、入れ替わるように入ってくる弥生の言葉


くるくる、くるくる、くるくると


これは水着、これは水着、これは水着だと

淡々と続くその言葉に次第にそんな気がしてくる


確かに…弥生の言うとおりこれは、水着デス…

ええ、布地は少ないが水着は水着なのデス…

海で着ける分には何も…それに…提督が、提督に…


金剛「ちょ、ちょっと、待ってて…」


そうして、何かに取り憑かれたように、フラフラと試着室に入っていく金剛さんだった


提督「弥生…そういうの洗脳っていうのよ?」

弥生「ふふ…金剛さんは素直で良い娘」


弥生は好きだな…


提督「お前の姉ちゃんだろ…どうにかしろよ…」

卯月「司令官のお嫁さんでしょ…そっちがどうにかするぴょん…」


弥生の明日が心配になる二人だった




睦月「ねぇ如月ちゃん…どれも同じに見えるよ?」


所変わって、熱心に水着にを選ぶ如月と、それに付いて回る睦月


睦月「水着だったら、スクール水着があるし…」


とは言ったものの、右に左に水着だらけで

これといって興味のない睦月は既に飽き始めていた


そりゃ睦月にだって、海で遊ぶのなら水着が必要だってことくらいは分かるよ?

でもそれにしたって、スクール水着があるのだし、提督だってそれで喜んでくれるし?


如月「ダーメでーす」


睦月ちゃんがそういうとは思っていた

思っていたから、わざわざ引っ張ってきたのだ


如月「もう、せっかく可愛いんだから。もう少しお洒落を覚えても…っと」


喋りながらも、並びに並んだ水着の中から一つを摘み出す


如月「どうかしら?」


睦月に充てがわれたのは、ピンク色のワンピース

端々にはフリルが施され、可愛らしさで浮ついて見える


文月「んー…4点」


審査員・文月、意外と辛口だった

「あ、10点満点ね」と、一応は付け加えてはみるものの


睦月「でもひくいっ」

如月「やっぱり、ちょっと派手かしら?」

文月「だね」


まあ、人によってはそれでもいいけど、見せる相手は司令官

花束の中に花を一本挿した所で、花束としか見ない人にそれじゃダメだな


文月「むしろ逆効果かも?」


確かに水着自体は可愛いけど、そのせいで視線が水着にいっちゃって

睦月お姉ちゃんが見てもらえないのでは意味が無い


文月「ま、ビキニとかにするなら、だけど」


そうなると、吸い寄せられる視線の行き着く先はそうなるわけで

それならそれで、話はまた別になってくる


如月「ビキニは…」


試しにそれっぽいのを睦月に宛てがってみる如月


睦月「うっふーん♪」


くねっと、わざとらしく体をよじってみる睦月


文月「次にいこ」

如月「そうね」

睦月「なんとっ!」


いやだって、なんというか、背伸びしてる感が微笑ましくはあるのだけど…

色気がない…微笑ましすぎて、色気が残念なコトになっていた


文月「お…」


はたと、足を止める文月。目に止まったのは黒いビキニ

シンプルイズベストを形にしたような、ただそれだけの水着で

トップとアンダー共に、紐で止める様になっているのが せくしぃといえばそうだろう

金剛さんが着るには丁度いいだろうか、白い肌にきっとよく映えるはず

そして、はしゃぎ回った挙句に紐が解ける所まで想像した後


文月「そっか…えーっと」

如月「文月ちゃん?」


何かを思いついたように、とったかとったか水着売り場を右往左往する文月

そうして、一点二点と品を取り揃えた所で、睦月の手を掴んで試着室にGO


文月「はい、お姉ちゃんはこれに着替えようねー」

睦月「お、およよよ?」


二人で試着室に入った後

がさごそごそがさと、衣擦れの音を立てながら、しばらくして


文月「はい、如月ちゃん。判定はっ」


文月が顔をのぞかせた後、さっと開かれる試着室のカーテン


如月「あ…」


最初に目についたのは、大きな麦わら帽子だった

帽子の鍔が睦月の肩幅まで広がり、その下にすっぽりと収まる睦月は

どこか、小動物的な愛らしさを漂わせている


そうして、下へと視線を移していけば

今度は白のワンピース…じゃなくて、大きなTシャツだろうか

ただ、サイズの合わないTシャツの裾は

お尻を隠すくらいまで伸びていて、ちょっとしたミニスカートの様にさえ見えてくる


ではその下はと、目を凝らしてみれば

ちょくちょくと、黒いビキニのパンツが、揺れるミニスカートの隙間から覗いて見える


最後に余ったTシャツの布をちょっと締めて、三日月型のバッジで止めれば出来上がりだ


睦月「にゃははは…あんまり見られると、恥ずかしいし…」

如月「あ、ご、ごめん…」


睦月が気恥ずかしさに、身を捩る程度には如月の視線は固まっていたし

そんな如月が見惚れるくらいには、今の睦月は愛らしく見えた


大きめのTシャツで、小柄な少女を演出しつつ

さらに、大きな麦わら帽子で幼なさと、活発さも付随する


黒のビキニで、少女の背伸びをアピールしつつも、Tシャツの布で照れ隠し


そうして、ミニスカートみたいにしてみれば

動く度に、ちらちらと覗く黒いビキニが、何処か扇情的にも見えてくる


最後に、余分な布を纏めて、三日月型のバッジで留めるのも忘れずにっと


如月「…」


ああ、可愛い、睦月がちゃんが可愛い、私の姉がこんなに可愛い

いつにもまして可愛い、いや何時も可愛いけど、今日は特に可愛い


愛らしさの中に時折見える、大人の色気がたまらない


文月「ふふっ。見惚れるのはまだ早いよ、如月お姉ちゃん」

如月「べ、べつに見惚れてなんか…」


言い訳だ、そんなもん自分が一番分かっている

分かっているから、こうやって文月から顔をそむけているんだもの


「透けるんだよ…」


如月「へ…」


そっと、顔を背けた如月の耳に入ってくるそんな言葉


「水に、濡れるとさ…」


如月「…」


ごくり…そんな擬音が似合うほどに喉が鳴る


「水に濡れたTシャツが、肌に張り付いてさ…」


「睦月お姉ちゃんの肌がじんわりと浮かんでくるの…」


「そしてね?くろーい、水着が…」


如月「わーわーっ!ストップ、すとーっぷ!?」


最後まで言い終わる前に、慌てて文月の口を塞ぎに掛かる如月


睦月「どったの?如月ちゃん?」


赤面して、急に文月に飛びついた如月を、不思議そうに見つめる睦月


如月「あ、あなたね…い、いったい睦月ちゃんをどうしようとっ!」

文月「へんなお姉ちゃん。自分で言ったじゃん?」


お洒落をおぼえてもーって


如月「それは…」

文月「お洒落とは、見せることと、見つけたり」


文月、心の俳句

大事なのは、自分を、相手に、どう見せたいか、だと思う

そういう意味では、睦月お姉ちゃんにお洒落はまだ早いと思うし

更に言えば、隣で着替えている娘だって

文月さんからすれば、まだ甘いと思うわけさ




「あ、丁度良かったよ…」


睦月「およよ?金剛さん、お着替え終わったの?」


文月さん達が騒いでいた試着室のその隣

恐る恐るカーテンを開けた金剛が、そっとその騒ぎへと声を掛ける


金剛「はい…それで、ちょっと、ね?」


伺うようなその視線には多分に

提督に見せる前にちょっと見て欲しい、そんな意図が含まれていた


如月「…ふぅ」


しょうが無いと、息を吐く如月

掴んでいた文月さん から手を離すと

お互いに、こくりと頷き合い金剛のいる試着室の前へと移動する


そうして、1・2・3・はいっと、そのカーテンをめくった途端


如月「ちょっとっ!?あなた、なんて格好してっ」

文月「たいむたいむたいむっ!」

金剛「へ?」

如月「いいからっ、ちょっとっ!」


顔だけ出していた金剛を試着室に押し込める如月


睦月「およ?睦月にもー」


そういって、二人の隙間から金剛を見ようかと顔を覗かせる睦月だったが


如月「見ないでいいっ!」

文月「睦月お姉ちゃんは離れててーっ」


文月にその場から引き剥がされる睦月


金剛「だ、だって、提督がー」

如月「そんなの冗談に決まってるでしょっ!」


変な所で大胆になってっ、後で恥ずかしくなるの自分なのよっ!


金剛「でもでも、弥生だって…」

文月「おねーちゃーんっ!」


またかーっ、とかなんとか叫びたい

最近気づいた、騒ぎの渦中には大体卯月がいるけども

その源流には弥生が住み着いてる気がする、やばい

目に見える魚雷(卯月)より、そのへんに浮かんでる機雷(弥生)のが余程やばい


如月「いいからっ、落ち着いてっ、もう一度鏡見てっ!」


試着室の中で響く騒ぎと、ちょっとした物音

それから少し、静かになったと思えば


「ひっ…な、なんですとぉぉぉぉぉっ!?」


また一気に騒がしくなった


弥生「…まさか、本当に着替えるとは思わなかった」


着替えに行くまでは予想通りだったけど、着替えてる途中で気づくかなって?

その内、真っ赤になって飛び出してくるかなって?


そんな風に思っていたのに、金剛さんは侮れないな

まぁ、直接司令官に見せに行かなかっただけマシなのだろうか…

いや、それはそれで、見ものでは…っと


弥生「卯月…こっちの水着は?」


並びに並んだ水着の中から一つを摘み出す

それは、ピンク色のワンピース

端々にはフリルが広がり、下の方はスカート状の布がひらひらと揺れている

可愛い、それを形にしたようなそんな水着だった


確かに派手な水着だ、その点に関しては文月達にも同意できる

幼女が着るには良いけれど、少女が着るには難しいものだろう


だが、そこで諦める弥生さんじゃないんだよ?


Excellent…確かに、文月のコーディネートは素晴らしい

幼さの中に見える色気、睦月の無邪気さも相まってあれはいいものだ

じゃあ卯月もその路線でって?それではつまらない…だからね?


卯月「やーよー。これで良いぴょん?」


着替えの終わった卯月が、そっそと試着室から顔を覗かせる


弥生「うん、良い…じつに良い。これなら戦える…」


それを見た弥生が、満足気に2回3回と頷いた


卯月「弥生は一体何と戦う気なの?」

弥生「欲望…かな?」

卯月「ふぇ?」


意味がわからず首を傾げる卯月

それにつられて、彼女の桜色の髪の毛がふわふわと揺れている

そんな彼女のその格好、ピンク色したその水着


肩口や胸元を彩る鮮やかなフリル

幼女と言うにはもう遠く、大人と言うにはまだ早い

それでも、女の子特有の柔らかな曲線を

ピンク色した水着がなぞっていけば、ふわっと広がるスカートの布地


更に、そこから覗く白い肌

華奢な体に重なる、柔からな太ももと ふくらはぎ

そうして、小さなつま先まで綺麗な曲線を描いてすっと閉じられる


弥生作、桜色な彼女、とでも言えばいいか

可愛いに可愛いを重ねて可愛いで押し通す、そんなデザインだった

要はゴリ押しであり、一点突破だった


卯月「ねっ、やーよっ、似合ってるぴょんっ?」


そういって、卯月がその場でくるりと回ってみせると

つられて、桜色の髪と、水着のスカートがふわりと広がる


弥生「うん、とっても可愛い」


思い通りの結果と、予想以上の可愛さに

今日一日分の満足を手にいれた弥生さんでした




「どうして着てる途中で気づかないのっ!」

「だってっ、いけると思ったんですよっ!」

「思っちゃダメだよっ!」





ガタガタと、次第に強まっていく雨風が工廠の窓を叩く

立て付けの悪さに裏打ちされた不協和音は、次第に耳障りなほどになってきていた


夕張「荒れてきたわね…」


雨粒が張り付く窓に目をやりながら、ポツリと呟く夕張

曇天の空の元、いつもより早めに伸びてくる夜の足

それに踏んづけられたのか、外灯が一つまた一つとチカチカと灯りを灯し始める


夕張「ん?」


ふと、窓の隅に映る影。人影のようなその幻影

しかし、こんな嵐の日に外を歩く人なんて…

そもそも此処は鎮守府内で、一般人がおいそれと通る訳もなく

じゃあ、此処の娘か?あるいは妖精さんだろうか?


頭に浮かんだ疑問符に背中を押され、そっと窓に近づく夕張

だからと言って目に付くのは、揺れる街路樹に、頼りない外灯

時折窓に張り付く木の葉も、直ぐに雨粒に洗い流され落ちていく


気のせいか?


きぃ…と、軋みを押しのけて窓を少し開く

途端、押し入ってくる雨風に、髪を引かれて、頬を叩かれた

そうして出来た隙間から、外に顔を出してみた所で何もなし

いわば徒労で、骨折り損だった


夕張「はぁ…」


それはそうだ、こんな荒れ模様に誰かいる訳ないじゃない

考えなくても分かる事だと、開いた窓を締め直し、押し入ってきた雨風を再び閉め出した


水も滴るとはいかないが、少し濡れちゃったな

少し早いけど、とりあえずお風呂行こ


ひた…


その音に、動かそうとしていた足が止まる


ひた…


何?足音?


ひた…


それに気付いた時、それは明確な気配となり


ひた…


次第にこっちに近づいてくる


ひた…


一歩、二歩、そして三歩…


ひた・ひた・ひた…ぴた


止まったのは背後。振り向けば直ぐにそれが何か分かるだろう

だが、夕張がそれをするより早く

その首筋、薄く濡れたそこを乾かすように、生暖かい風が吹いた


夕張「ひぃっ!?」


全身が総毛立つ

生暖かい風が肌に纏わりつく、生乾きの肌が乾き切り、同時に寒気も連れてきた

ビクッと震える体を、驚いた猫見たいに飛び上がらせて、直ぐ様後ろに向き直ると


提督「あはははははっ。びっくりしたびっくりした」

夕張「…」


提督だった…まあ、そうだろうと、今にして思いはするけど、提督だった

となると、あの人影もそうだんだろうと、納得もいく


夕張「はぁ…脅かさないでよ…」


ほぅっと胸を撫で下ろし、体の力を抜く夕張


提督「いや…ついね」


せっかくの嵐なのだ、なにか悪戯の一つもしたくなるというものだ


夕張「それで?」


何かようなの?と

もし、脅かしに来ただけとか言ったら、ほっぺでも抓ってやろう


提督「君の顔が見たくなって?」

夕張「ばーか」


冗談交じりに笑みを浮かべて、そんなこと言われても白々しいって

そういうのは木曾さんとでもやってれば良いと思う


提督「ひどいなぁ。半分は本気だよ?」

夕張「…もう半分は?」


怪訝な顔を浮かべたままに、その先を促す夕張


「うん。ゆうばりんとホラー映画でも見ようと思ってさ?」




「おまえだぁぁぁっ!?」


薄暗い食堂に響く声

窓を叩く雨音と曇天の空

日も足早に落ち、カーテンを締め切れば、すっかり夜の世界になっている


机の上にはロウソクが灯され

それを中心に、適当に集まってみたり

話半分だったり、きゃーきゃー怖がってみたり、突っ伏して寝てたりと

好き勝手にくつろいでいた


木曾「どうよ。ちょっとはびっくりしたか?」


先ほどの声の主、今しがたの話の中心だった木曾さんが得意げな顔で周りを見渡す


菊月「…長月、痛いぞ…」

長月「ぁ、ぁぁ…いや、すまん」


知らず握りしめていたその手

気づけば、お互いの手が白くなるほどに、ガッチリと握ってしまっていた


望月「怖いなら向こう行ってりゃいいのに…」


机に突っ伏しながら、話半分に聞いていた望月がポツリと呟く


長月「誰が怖いなんて…」


虚勢だ。自分でも、いや自分だからこそ良く分かる

なんとか声の震えは抑えているが

こんな薄暗がりじゃなければ、その体が僅かに揺れているのに気づかれたかもしれない


菊月「…」


怖くない…。そうは言っているが…

こうもガッチリ手を握らていては、その震えは痛い程伝わってくる


何か言うべきか?


そんな風にも考えたが、結局何も言わないのも優しさかと、口をつぐむ菊月だった




そんな様子を見るに、木曾の目論見自体は、概ね成功してた様に思っていたが

ふと、見上げてくる ゆーの視線と目が合った


ゆー「ねぇ…おしまい?」


浮かんだ疑問符の重さに負けて、首を傾げるゆー


木曾「ん?怖くなかったか?」


「んーん」と、木曾の心配に首を横に振って返す


ゆー「びっくりはしました…」

木曾「…」


怖くはなかったんだな…


ゆー「それで…この後は?」


びっくりはした。そりゃいきなり大声を出されればびっくりもする

あの時捨てたはずの子が目の前に居れば、誰だってびっくりはする、けど…

そこでぶつ切りになってしまった話が気になってしょうがない


木曾「この後って…必要か?」

ゆー「はい」


しっかりと頷くゆー に困り顔の木曾


この後なんてある筈がない

こんな物は様式美だ。ほら、ビックリしただろ?って言ってお開きだ

その続きを求められても…困るんだが


ゆー(じー)


無言、ではあったが

居住まいを正し、じーっと見つめるその姿勢は、厳にその先を要求していた


ではどうする?そりゃでっち上げるしか無いが…

親子仲良く暮らしました?そんな展開ホラーじゃないし

となれば順当に…


木曾「呪い…、殺された?」


となる。月並みだが、そうなるのが無難なはず


ゆー「ふーん」


なんて口にはしているけれど、納得している風ではまるで無く

そう言えばと、続けて口を開いた


ゆー「この子、親が来なかったらどうするつもりだったの?」


当然といえば当然の疑問

幽霊とはいえ、置き去りにされた場所に延々と 佇むつもりだったのか?


あるいは、その内無差別に人を呪い始めるのが日本のホラーだったりするらしいけど…


木曾「どうって…。あーえー…会いに行ったんじゃないか?」


置き去りにされて数年、今更会いに行くなんて考えにくいが

そんな当たり前の事に気づく余裕は、取り繕う度に目減りしていく事になる


ゆー「どうやって?」

木曾「あ、あるいて?」

ゆー「とほなの?」

木曾「と、飛んだほうが良いか?」

ゆー「なにそれこわい…」

木曾「お化けだからな?」

ゆー「お化けは飛ぶもの?」

木曾「おうっ、すげー速いぞっ」

ゆー「どのくらい?」

木曾「烈風くらいだよっ」

ゆー「烈風はお化けだったの?」

木曾「ちげーよっ!」

ゆー「お化けが烈風?」

木曾「それもちがーうっ!」

ゆー「どうして怒ってるの?」

木曾「おこってなーいっ!」

ゆー「???」


ゆーの疑問符を取り除くどころか、増やし続ける木曾さん


北上「ふはっ…くふふふふふふっ…」


ついに、というべきが

その様子に耐え切れずに、吹き出した北上様が体を震わせ始める


木曾「笑ってんじゃねーよっ!」

北上「あはははははははっ!」


「あ、わざとだ」その場にいた全員がそう思うほどに

あっけらかんって笑い始める北上様


北上「いやいや、木曾っち。なかなか怖かったんよ?これでもさ?」


木曾の話が、というよりも、子供の質問攻めが、ではあるけど


木曾「だったら、次はお前がやれよっ!」

北上「んー?あたしかい?」


まあ、そうさね。そういう余興だし…そうね


北上「頼んだよ、大井っちっ!」


選手交代。そう言わんばかりに、大井の肩に ぽんっと手を置く北上様だった


大井「…いいけど」


はぁ…と、一つ息を吐き

「それじゃあ…」と、ぽつりぽつりと大井のホラー劇場が始まった




のろおんーザ・ファイナルー


夕張「…」


あ、これダメな奴だ

提督が差し出した円盤、そのタイトルを見て瞬時に悟った夕張さん

何が、ザ・よ、カッコつけちゃって


提督「あれ、見たことあるやつ?」

夕張「無いけど…これ、ダメな奴じゃん、絶対」


どうして、日本語のタイトルに英語でサブタイトルをつけるのか

しかもカタカナって、どういうセンスをしてるんだか


提督「あ、やっぱりそう思う?」

夕張「…」


じゃあ、どうして持ってきたって言いかけたが

さらに、出てきた円盤にそんな言葉も引っ込んだ


のろおんーおわりのはじまりー


提督「これ、前作なんだけどさ…」

夕張「いや、おかしい…」


おわりのはじまりって、中二病か

しかも前作って…前がこれで、どうして後がそうなるのか


提督「あ、やっぱりそう思う?」

夕張「どうして持ってきたのよ、こんなの…」

提督「予習…かなぁ?」


そう言いつつ、再生機に手を伸ばし

カチャカチャといじり始める提督


夕張「予習?」

提督「うん…なんか、◯子VS〇〇子って映画やるんだって」

夕張「…」


ホラーって何だっけ?

笑いと紙一重とは良く聞くけども…いや、笑える分にはまだいいんだけど


提督「ホイ、出来た」

夕張「見るっては言ってないんだけどなぁ」


ま、しょうが無いか

駄々をこねられるのも何だし、一応興味がなくもないし


提督「嫌だ嫌だと言っても、からだは…」

夕張「止めるわよ?」

提督「はい、ごめんなさい」


簡素な椅子を2つ並べ、二人でそこへ腰を下ろす

照明を落とし、再生を始めると、よく見る企業のロゴがズラズラと並び始めた


夕張「あ、そいえばさ?」


ぼーっとロゴを眺めていると、ふと思いついた疑問


夕張「皐月たちは?一緒に見なくてよかったの?」


こんな悪戯に使えそうな映画、執務室、ないしは食堂で流してそうなのに


提督「んー…一緒に見ようって言ったんだけどねぇ?」

夕張「?」


「絶対やだっ!」


提督「だってさ?」


振られちゃった と、わざとらしく拗ねてみせる提督だったが

まあ、皐月達の気持ちは分かる


夕張「自業自得でしょ?」

提督「だよねー」


自覚はあるみたいね

何をされるかわからない、気づけば本物が横にいるかもしれない

マジモンの呪いのビデオだったって可能性もありうる

もう去年か…一緒に脅かす側だったから良く分かる


のろおん…


そうこうしている内に浮かび上がるメインタイトル


つよい恨みを抱いて死んだモノの呪い。 それは…









廃墟探検だろうか?

古びた日本家屋に、大学生くらいの男女が4人足を踏み入れていた


当時の姿そのままに、時が止まったようなその場所

過ぎた年月の分だけ溜まった埃、何時の時代のものか良くわからないゴミ

誰かが見つけた日本人形に、キャーキャー言いながら怖がってみせたり

辛気臭い場所に似合わず、和気藹々と先へと進んでいく


前を歩く3人と、後ろからカメラで撮影しながら付いて歩くのが一人

居間・風呂場・トイレ・台所…

一通り見て回った一行は、今度は2階へと足を向ける


ぎぃぎぃと、嫌な音を上げる階段を上り切り

また同じように、部屋の中を1つ2つと覗いていく


何もない?


最後の部屋、家の最奥に足を踏み入れた所で探検は終了となった

此処で人が殺されただの、自殺した人が、などと嘘くさい噂もあったが

やはり噂は噂でしか無かったらしい


死体どころか、何の形跡もないことに 広がる安堵

怖いもの見たさではあったが、じっさい死体が見てみたかったわけではないのだ

ただ少し、そういう形跡があっても…そんな期待もゼロではなかったというだけで


「ほんとにお化けが出ちゃったりしてっ!」


なんて笑い合ったりもしたが、あいにくと心霊現象にも見舞われることもなく


ひっ…


悲鳴…にしては余りにも小さな

息を呑む、そういった感じの、叫ぶ前に口を塞がれたようなそんな声

小さくは合ったが、自分たち以外の音が聞こえない廃墟の中で

その声はやたらに耳に付いた


だれかの悪戯?


誰もがそう思う、しかし尋常ではない表情で固まっている女の子

それにつられて、皆がそこ見る


!!!!!!!


悲鳴が絶叫に変わる、誰のものかは分からない

だが、それを合図に皆が駆け出す

誰も彼もがなりふり構わずに、階段を駆け下り、その家から飛び出していった


そして…廃墟に静寂が戻る


残されたのは一つのカメラ

●RECの表示のままその場に置き去りにされたそれは

もはや、動くことは叶わず、たた一点を力尽きるまで撮り続ける


ズル…


ノイズ…変わらぬ廃墟の映像

しかし、何かを擦るような、引きずるような音が割り込んでくる


ズル…ズル…ズル…


それは一定の感覚で、段々と、段々と、カメラがある方へ近づいて着ている


ズル…ズル…ズル…


そして…動くはずのないカメラが、ガタリ、と揺れる

何かがカメラに触れている…何かがカメラに写り込んでいる


ああ、それは…白い、白い人の指であった




北上「はい、これがさっき大井っちが話してくれた呪いのビデオね」


原本だよ?オリジナルだよ?コイツはレアだねっ


テレビの映像が途切れると、北上様の声が取って代わる

しかし、めだった音はそれだけで、誰も彼もが息を飲んでいた


大井「それでね…皆、失くしたと、落としてきたとばかりにおもってたこのビデオ…」


しかし、話はまだ終らなかった


翌朝…一晩立ってみれば、何かの見間違いだったんだろうと

次第に、昨日の恐怖も日常に薄められていた


いつもの様に起床する彼、あるいは彼女ら

顔を洗い、歯を磨き、朝の支度をしながら、あるいは寝ぼけ眼でテレビを着けた


ズル…ズル…ズル…ズル…ズル…ズル…


テレビから聞こえるノイズのような音

テレビに映っているのはあの時の廃墟


失くしたはずの、忘れかけていた恐怖が追いかけてきていた


大井「それで、出来上がったのが一つの噂」


このビデオを見たものは呪われて…


「死ぬのよ…」


そう言って、話を締めくくる大井さん

そして、告げられた死の宣告に静まり返る会場


菊月「…長月、苦しい…」

長月「…ぁ、ああ…すまない…」


いつのまにか抱きついていたのだろう

菊月の首に回していた腕の力を何とか緩める長月


三日月「あの…長月?怖いなら向こうに?」


心配そうに長月の様子を伺う三日月


長月「怖くなんてっ」


心細いというか、ほんとに出てきたら嫌だなとか、そういうアレで

「ただちょっとびっくりしただけだし…」

なんて、後に続いた言葉は随分と頼りなかった


菊月「…」


怖いもの見たさか…

いや、ここまで聞いてしまうと、逆に一人のほうが怖いんだろう


さり気なく…本人はそのつもりだろうけど

さり気なく…菊月の方へ身を寄せている長月

それに気づかないふりをしながら、甘えるようにして長月の方へ体を預ける菊月


すると少しだけ、お互いに触れ合う面積が増える

そのお陰だろうか、伝わってくるお互いの温もりに

不安げに揺れていた長月の体が少し落ち着いたようだった


望月「…なぁ、皐月?」

皐月「ん?やっぱり、そう思うかい?」


自分だけならともかく、妹もそういうならそうなんだろう

で、あるなら。この疑問は解消し無くてはならない


皐月「ねぇ、北上様…そのビデオに映ってた指ってさ?」


司令官のでしょ?


北上「はっはーん。わかるかい?」

皐月「そりゃ…」


案の定であった


三日月「えっと…つまり…」


どうもこうもない、映ってたのが司令官の指だというなら


大井「死ぬわけないじゃない、こんなビデオで」


廃屋に入った学生たちを脅かした提督が

その落し物を使って追撃しただけ


種明かしをすれば、その程度の話では合った


「けどさ?」


しかしあれだと、言葉を続ける北上様


北上「誤算だったのは、みんながこれを呪いのビデオだって信じすぎたことかなって」


提督の言葉をそのままに伝える北上様


三日月「それっ、て…ど、ういう…」


分かっている、分かっている、分かっている

この展開はあれだ…病は気から、呪いは信心から…ということは…


北上「ほら、三日月の横にしろ~い、女が…」

三日月「じょ、じょうだんは、やめ…」


聞きたたくない、聞きたくない、見たくない、見たくない

それでも、いやでも、ダメなのに、ゆっくりと、ゆぅっくりと横を見てしまった


ゆー「なぁに?」


そして、白い少女と目が合った…


三日月「もうっ!?脅かさないでよっ!」

ゆー「ゆーは何もしてませんって…」

北上「あはははははっ、三日月は可愛いねぇ」




「きゃぁぁぁぁぁぁっ!!!」


女の絶叫が響き、そこで画面が暗転するとエンドロールが流れだす

テレビの灯りが朧に浮かぶ工廠の中、ちゃんちゃか鳴り響くEDテーマ


夕張「…」

提督「…」


夕張と提督、特に言葉はなくその字面だけを目で追っていた


提督「あっと、そうだった」


思い出した様に口を開く提督

そして「きゃーこわかったよー」とかなんとか、わざとらしく夕張に抱きついてみせた


夕張「白々しい…」


されるがままに提督に擦り寄られている夕張

しかし「怖いかった?」と聞かれても、さすがに厳しい内容かも

これが初めてのホラー映画ならそうだったかもしれないけども

流石に慣れすぎたな…純粋に怖がれないのは…

こうやって大人になっていくのね…


夕張「って!どこ触ってんのよっ!」


「お腹」と即答する声はそのまま「いたいっ」と、悲鳴に塗り替えられた


提督「睦月は喜ぶんだけどな、お腹撫でると」

夕張「一緒にすんなっ」


ガチ勢と比較されたら身がもたない


提督「そんなこと言って、何時も見せつけてくるじゃない?」

夕張「そういう制服なのっ!」


艤装とのシンクロ率とか、親和性とか、なんかあるのよっ

だいたい…


夕張「そんなこと言ったら、大鳳さんとかどうなるの!」


触るの?あれを?この作品、対象年齢うなぎ昇りよ?


提督「たくないといえば嘘になるなっ!」

夕張「…聞かなかったことにしておくわ…」


まあ、そうだろう。コレに限らずか…

恐らく、現存する提督の8割はそう考えるかも、一度くらいは


提督「時と場でいけないかな?」

夕張「口聞いてくれなくなっても知らないわよ?」


あの娘は多分そういうタイプ

怒って見せてる間にやめておいたほうが良いような

とは思うんだけど…切羽詰まると変なことやりだすし…心配だわ


提督「あ…終わった」


そうこうしてる内に途切れるエンドロール

そして、それじゃあと次の映画を取り出す提督


夕張「今度は?」

提督「◯子3D2Dver」

夕張「…」


どこから突っ込めばいい?


提督「4DXでも上映してたみたいよ?」

夕張「…」


つまり…◯子3D2D4DX?

なんかの型番だこれ




「いったぁぁぁっぁあいいぃぃっ…ぴょんっ!」

「取ってつけたようにぴょんとか言ってんじゃないわよっ!」


薄暗い食堂の中を切り裂く叫び声

それに、別の声が続くと、取っ組み合いでも始めたのか

にわかに騒がしくなり始める


大鳳「…何の騒ぎ?」


食堂の扉を開けてみればこれだった

百物語というか、そういう催しとは聞いていたが

結局いつものじゃれ合いに落ち着いたのだろうか


卯月「痛いぴょんっ、やめるぴょんっ、離すぴょんっ!」

瑞鳳「誰のっ何がっ無いってのっ!」

卯月「たーすーけーてーっ、ぬりかべに潰されるぴょーん」

瑞鳳「やかましいわっ!」

弥生「瑞鳳さん、安心していい。思ったよりはあるって司令官がいってた」

瑞鳳「あんのっ、ばかぁぁぁぁぁっ!?」


瑞鳳に頭を抱えられ、グイグイと締めあげられる卯月


卯月のホラー劇場

話としては良くある のっぺらぼうのそれだった

鎮守府の妖精さん達の顔がなくなり、怖くなって逃げ出した先に瑞鳳の後ろ姿を見つける

助けを求めようと、声をかけた所で瑞鳳が振り向くと…


「お顔が無いかと思ったら、お胸が無かったぴょーん、こーわーいーぴょーいった(以下略」


多摩「のっぺらぼう かと思えばぬりかべだったって話だにゃ」


飽きもせんとよく戯れる、とか言いたげに、あくび混じりに大鳳の疑問に答える多摩


大鳳「あぁ…」


なるほどと、だいたい察する大鳳さん


多摩「で、金剛は?」


そう言えばと、思い出したように口を開く多摩


大鳳「ふて寝、ですって」


一応来る前に、声は掛けてみたのだけど

「今、不貞腐れるのに忙しいのっ」との事だった

きっと今頃はほっぺを膨らませていることだろう


多摩「あぁ…」


なるほどと、だいたい察する多摩ちゃん

ホントなら、今日は皆で海に行こうかという話にもなっていた

しかし、外の天気はご覧の有様。てるてる坊主が首をつっても覆りそうに無いほど荒れている

昨日まで、「新しい水着の出番ダヨっ」て気合を入れまくってたから、その反動は、という所か


にしても、提督が水着を選ぶなんて…ついに性癖を晒すに気になったかにゃ


皐月「あ、大鳳さんいらっしゃい」

大鳳「こんばんは」


「こっちこっち」と、皐月達に手招きされて輪の中に加わる大鳳


望月「真打ち登場ってかね?」

大鳳「私?そんなに期待されても困るけど…そうね…」


案内された席に腰をおろし、さっと周りを見渡す

どうにも、卯月達が掻き乱したせいで怪談の雰囲気ではなくなっていた

それじゃあ…と、一呼吸置く


折角の催しだし、ちょっと怖がらせるくらいは良いわよね?

そして、ぽつり、ぽつりと話し始めた




「ぁぁぁぁぁぁぁぁ」


画面に映っているのは白い服を着た髪の長い女の霊

そういえば、と思う

何で日本の幽霊は白服で黒髪ロングなのか…

麦わら帽子でも被せたら喜ぶ人多いじゃないかな、とさえも思えてくる


「ぁぁぁぁぁぁぁぁ」


恨み言の様なうめき声を上げ、どんどんと画面に迫ってくる

なるほど、絵としてはなかなか怖いけど、やっぱり見慣れた構図でもある


「ぁぁぁ…ざっ


そろそろ、叫び声でも入るだろうかという所で映像が乱れ、ぶつ切りに途切れた

それとほぼ同時に、窓の外が光ったと思うと


雷鳴轟く轟音。お腹の中まで響くほどに空気が震える


夕張「うっ…」

提督「やられたな…」


鎮守府。とは言っても、建物自体は結構古い

こうなってしまえば、中々に脆いものだった


電気の途切れた工廠内。外灯も一緒にやられたのだろう

窓の外から差し込む光もなく、いきなり暗闇の只中に放り込まれた気分だった

ほっときゃ復旧するかと期待もしたが、その間に更にもう一度の閃光

今が嵐の最高潮とでも言うかのように、ぴかぴかぴかと目に耳にとやかましい


「しかたない」と、溜息を吐きつつ立ち上がる提督

確か予備の電源が合ったはず…


提督「ん?」


スイッチを探して暗闇の中に踏み出した所で

くっと服の裾を引かれて足が止まる


提督「なに?こわいの?」


何かと思えば、暗闇の中、次第に慣れてきた視界が、遠慮がちに服の裾をつまむ夕張を映し出す


夕張「こわくなんか…ただ、ちょっといきなり暗くなって…きゃっ!?」


言い訳が終わる前に、工廠内を光が切り裂き

後から続いた轟音に、夕張の小さな悲鳴が飲み込まれる


提督「そ?じゃ…」


本人が怖くないというなら良いんだろうと

指を振り払うように、わざとらしく勢いをつけて歩き出す提督


夕張「ちょっ、置いてかないでよっ」


服の裾が伸びきる、ちょっと先を摘まれてるだけだ

もう一歩も動けば、その繋がりはすぐに途切れるだろう


けど、そうはならなかった


慌てて立ち上がった夕張が、提督の後ろにそっと歩み寄る


提督「怖いんじゃん?」

夕張「なによっ、いいでしょっべつにっ」


追い詰められた者が取る行動は概ね2つ


一つは、逃げ出す

一つは、逆ギレする


前者は提督の得意分野ではあったが

どうやら夕張は後者だったらしい。その口調から、唇を尖らせているのが用意に想像出来た


提督「良いけど、べつに?」

夕張「むぅぅぅぅ」


わざとらしく口調を真似されて、むすっとしかめっ面を浮かべる夕張


だってしょうがないじゃない?

いきなりピカってきて、ドカンってこれば誰だってびっくりするじゃない?


夕張「だいたい怖いものって、貴方の方がっうっぅっ」


ゴロゴロゴロ…もう何度目かの雷鳴が再び夕張の口を塞ぐ


提督「ふふ…かわいい」

夕張「もうっ、うるさーいっ」


抗議の代わりに裾を鷲掴みにすると

ぐいっと、自分の方へ引っ張り上げる


提督「おっと…お?」


ごろごろごろ…稲光が工廠内を照らしだす

夕張に引っ張られ、たたらを踏んだ提督

その視界の隅に、奇妙なものが浮かび上がる


提督「なぁ、夕張…あれ?」


引き上げた雷鳴、残された暗闇

提督が指を指す先には、真っ暗闇が続いている


夕張「ちょ、また脅かそうとか…」

提督「いやいや…」


信用がない…いや、当然だが


だが、その無実を晴らしてくれそうなタイミングで、雷鳴が轟く

ぼぅっと浮かび上がる工廠内、ぼぅっと浮かび上がる人影


提督「な?」

夕張「…」


ごくり、と喉を鳴らし生唾を飲み込む夕張

見間違い、と思いたかった、あるいは提督がまた何かしているのかと


「ぅぅぅぅぅぅぅぅ…」


そんな中、暗闇の奥から聞こえてくる音…いや、声か

なにか、不満を形にしたような唸り声


夕張「ちょ、ちょっと提督…ふざけてるならいい加減に…」


掴んでいた服の裾を引き寄せ、提督の背中に隠れる夕張


提督「いや、私じゃないし…」


「ぅぅぅぅぅぅぅぅ…」


というか、この声…


ゴロゴロゴロ…雷鳴が響く、雷光が照らす

不満を撒き散らすかのような轟音。それと共に、ソレもまた不満を爆発させた


金剛「提督っ、執務室(へや)に居ないと思ったら、こんな所で何してるのっ!」


雷光に浮かび上がった白い人影。肩を怒らせ、不満気な視線をぶつけてくる


提督「なにって…」


映画…と、動きかけた口を止める

そして、その代わりに、後ろに隠れていた夕張を引きずり出すと、強引に肩を抱いた


夕張「え?ちょっと、提督?」

提督「夕張とイチャついてた」


「え?」二人の声が重なった


金剛「なんということでしょう…」

夕張「すとっぷっ、提督っ、貴方何言ってっ」


愕然とする金剛に、慌てふためく夕張

見ている提督はとても楽しそう


金剛「まさか…夕張が提督とそんなに仲良く…」


気づかなかったヨ、しらなかったヨ、およよよよっと、顔を伏せる金剛さん


夕張「ちっがーうっ!」


ピカッと、雷光と一緒に轟く夕張の叫び声


夕張「誰が、こんなのとっ!」


提督の腕を振りほどき、一歩距離を開けると、ビシっと指先を突きつける


金剛「こんなのって、こんなのってなんですかっ、こんなのってっ!」


提督をこんなの呼ばわりされて、むっと、口を尖らせる金剛


夕張「ああもうっ、めんどくさいっ」


そりゃ、提督をこんなの呼ばわりはどうかと思うけどっ

一緒に映画を見てただけなのっ、別に他意なんか無いんだからっ


提督「純愛ものの、泣ける映画をな…」


夕張の弁明に重なる提督の声


夕張「だーもーっ、貴方もめんどくさいわねっ!」


「ややこしくすんなー」と、開けていた距離をぐっと詰めて、提督の肩をガタガタ揺すり始める夕張


金剛「な、なんとフレンドリーな…」


いえ、良いのです。艦娘と仲良くするのも提督の大事な努め

提督と夕張が仲良くしているのはとても良いこと

けどだからって、隠すこと無いじゃない?

悪いことをしているわけじゃないのだし

それに、言ってくれれば配慮のしようだって、こうやって邪魔をすることも…


夕張「ちょっと、金剛さん?聞いてるの?」


神妙な顔をして、ブツブツとなにか呟いている金剛

夕張が、2度、3度と呼びかけてもまるで反応がない

かと思えば、ぱっと顔を上げて夕張の方へと、ぐいっと体を寄せてくる


夕張「な、なに?」

金剛「HEY、ゆうばりん♪」


にはっと、花が咲いたように輝く金剛の笑顔

傍目からは修羅場のように見える この光景においてはいっそ怖いくらい


そして、夕張の両手を取り、そっと自分の両手を重ねると


ー一緒に提督を護りましょうねっー


なんてキラキラした瞳。きっと夕張の人生の中で最大級の輝きにはいるだろう

その瞳に浮かぶのは、しいたけか、あるいはハートマークか


夕張「いや、ほんとに話を聞きなさい、オールドレディ」


いやもう、聞かなくて良いから口を閉じて欲しい


金剛「それで、なんの映画をみてたの?」


夕張の肩越しに、真っ暗なままの画面を覗きこむ金剛

そして、そのまま動きを固めた


「ぁぁぁぁぁぁぁぁ」


夕張「え、あ…」


ふと、明るくなる背中

同時に、窓の奥で外灯が光を取り戻す

再開されたその光景


金剛「ひっ…」


引きつったような金剛の声

ぐっと体中が強張り、夕張にしがみつく


ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?




なぁぁぁぁぁぁ…


大鳳「そうね、丁度こんなふうに猫の声が聞こえてきたの…」


しとしと、しとしとと降り積もる大鳳の声

真っ暗な食堂、燭台の薄明かりの中、溶けること無く降り積もっていく


空気が重い、震えることすらままならない

誰も彼もが、冗談をいう余裕もなく、話にオチが付くまで耐えていた


なぁぁぁぁぁぁ…


文月「大鳳さん、大鳳さん…」

大鳳「ん?」


話の途中、それを遮って、文月が大鳳の袖を引く

「ここからが良い所なんだけど…」とは思いながらも

文月の方へと視線を返した


文月「あっち、あっち…」

大鳳「?」


促されるままに、視線をそちらへと向けると


大鳳「あ、あー…」


そう、そうね…なんかやりすぎったぽい


菊月「な、なが…くる、くるし…」


菊月にしがみついていた長月

もう、力加減なんか忘れて必死だった


如月「ほら、長月。怖いならお姉ちゃんと向こうで…」

長月「こ、こわいとか、じゃなくて、べつに…」

如月「うふふ…ええ、そうね」


妹の見せた意味のない強がりに微笑みながらも、そっと長月の肩に手を置く如月

とりあえずは、菊月から引き剥がさないとそろそろ苦しそうだ


睦月「…」


そんな中、こそこそと動く睦月


なんだろう?どうしてだろう?


泣きそうな妹を見ている内に、むくむくと湧き上がってくるこの感情

その衝動が睦月を突き動かす、この胸の鼓動、この胸の高鳴りはきっと


そう、きっと…


まさしく、愛だしっ…にゃししし

誰かが聞いていれば、きっと違うと言っただろう

ただの嗜虐心だって、可愛く言ったって悪戯心だって

しかし、そんな言葉が胸の内で叫ばれている合間に

長月の背後にそっと、そぅっと忍び寄る睦月


1歩・2歩・3歩…


3・2・1…


睦月「わぁぁっ!」


突然、大声を上げて長月の背中をぽんっと叩く睦月

きっとこの後、泣きそうな長月にポカポカ叩かれながら文句を言われるだろう

その後ぎゅっと彼女を抱きしめて、ごめんねって言って仲直り


素晴らしきかな姉妹愛!


これが概ねの睦月のプランだった

まあ、よくある悪戯の範疇ではある…あったはずだった


長月「ひっ!?…う、うぅ、ぅ…ぅぁ…」


長月が振り返る。目には涙を溜めている

さぁこいっと、両手を広げる睦月

姉は本気で殴られるまでの覚悟はできているぞっ!


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁんっ」


睦月「へ…」


泣かれた、ガチで泣かれた


睦月「え、ちょっ、長月」


「ばぁぁかぁぁぁぁあっ!」


泣きじゃくり、両手で涙を拭い続ける長月

しかし、あふれる涙は留まることをしらず、服の裾さえも水浸しにしていく


如月「むーつーきーちゃーんっ」

睦月「ふぁっ!?」

如月「貴女、ちょっとこっち来なさい」

睦月「え、あ、如月ちゃん!?」


怒っている、誰もがそう認める声音で持って

睦月を引きずっていく如月

マジ泣きしている長月と、マジおこの如月との間で右往左往しながら

ジタバタと抵抗を試みるも、予想外の自体に体が上手く動かず

次第に、食堂の奥へと消えていくお姉ちゃん


望月「はぁ…電気、付けようぜ」

三日月「う、うんっ…」


お開きだな、こりゃと、口を開く望月

その言葉に背中を押されて、三日月が電源を操作するが


三日月「あれ…つか、ない?」


パチパチ…パチパチ…


2度と、3度と、繰り返すも部屋が明るくなることはなく

その代わりに、ゴロゴロと雷鳴が忍び寄ると、一気に


ドカーンっと、一発、閃光と轟音が食堂に叩きつけられた


「ひぅっ…もぅ、やぁ…し、しれ…かん…うぅぅっ…」


文月「し、しれーかーんっ、どこーっ!!」


珍しく慌てた文月が、司令官を探して食堂を飛び出す

司令官を探すだけなら、睦月をけしかけるのが手っ取り早いのに

こういう時に限って使えないんだからっ


皐月「あ、そうだっ、探照灯、だれか探照灯」


その手があったっと、皆して慌てて探照灯を用意していると


ぱっと明るくなる一点

暗闇の中にぼぅっと浮かび上がる光

ようやっと見つけた光に、皆ほっと胸を撫で下ろし、そちらの方に視線を移すと


球磨「ばぁ…」


白い服を着た、髪の長い女が立っていた


ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!




木曾「あほかっ、お前はぁぁぁっ!」


少女たちの叫びの裏側で

それらしく浮かび上がっていた球磨の頭が叩かれる


球磨「姉を阿呆呼ばわりとは、木曾も随分と大きく出たものだクマ」

大井「やかましいっ」

球磨「あいたっ」


そこへ、おだまりなさいと、追撃を掛ける大井さん


大井「空気よめっての、このスカタンっ」


これ以上は流石に収集が付かなくなる

泣いてるお姉ちゃんに、轟く雷、更にはバカ(球磨)にも脅かされて

次やったら三日月まで泣き出しそうだ


こうなってくると、提督を閉め出したのは失敗だったか

居たら居たで、手っ取り早く収集は付いていただろう

けども…居たら居たで、何かしらやらかしてはいただろうし…

まったく…必要なときに居ないんだから…


球磨「貴様ら…姉の頭をポカスカと…」


涙目で、恨みがましい視線を妹達に向ける球磨


木曾「うっせっ」

球磨「痛いクマっ!」

大井「口を閉じなさいっ」

球磨「やめるクマっ!」


しかし、口を開くたびに妹二人に頭を叩かれる姉


…あぁ…これ、アレだわ

ふと、大井の頭に浮かぶ光景、ゲームセンターの片隅にありそうな、そう…


クマクマパニック




大鳳「え、えーっと…」


死屍累々というか…いや、阿鼻叫喚というべきか

気づけば、あれよあれよと、大騒ぎになっている食堂内


「貴様らっ…これ以上バカになったらどうしてくれるクマっ!」

「あん?ならねーよ、そんなもん」

「手遅れって言葉しってるかしら?」

「くまっ」


「だ、だってね如月ちゃんっ」

「ふーん…」

「睦月はただっ」

「へー…」

「きいてよっ!」

「そー…」


「あ、あのっ、皆…落ち着いて…おちついて…くだ…ぅぅぅ…」


「皐月姉、どうにかしろよ?」

「ボ、ボク?」

「な、長月…あの、その…皐月?」

「そんな事いわれても…」


「こういう時はずいほーが何とかしてくれるぴょんっ」


ーそれだっー


「まってっ、まってまってってっ!」


「ねーねーやーよ…ゆーも怖がった方がいいの?」

「やめて…収集がつかなくなる」

「そっか」

「うん、そう」


別に大鳳が悪いというわけもないだろう

百物語の席で怖い話を披露しただけ、何も悪くはない、むしろ大正解ではあった




北上「意外と、加減効かんよね、大鳳さんって…」


ぽんっと、大鳳の肩に手を置く北上様

ま、気にすんなと、間が悪かっただけさと、そういう日もあると

それ自体は優しさに満ち溢れてはいたが


大鳳「ご、ごめんなさい…」


その優しさが重かった




金剛「海デースっ!」


翌日、すっかり晴れ渡った空

嵐の影響か、多少波が高いがその程度


そうと決まればやることは一つ

提督を海辺まで引き釣り出して、服を脱ぎ去り、おにゅーの水着で海に飛び込む金剛


皐月「あれ、司令官が選んだのかい?」


人一人分の水柱を上げて、波間に消えていく金剛さん

そんな彼女が身に纏っていた水着


赤のビキニ、言ってしまえばそれだけの水着ではあったけど

それが、白い肌の上で情熱的に輝いていた


提督「ま、偶にはね…」


黒…という手もあったけど

ま、少しくらい派手な方が、らしいといえばらしいだろう


「どうですか?」「似合ってます?」とかなんとか

嬉しそうに見せつけてくる彼女の姿を思い出す


目のやり場に困る、言ってしまえばそうだった

何処に目をやっても肌色が入ってくるその姿

照れ隠しに視線を逸らしてしまえば、自然と赤色の部分に吸い込まれる


大きい…感想を言えばそう

綺麗な、形の良い、張りがある…

普段、さらしで抑えられいるせいもあってか、こうしてみれば一段とそう見えた


赤い水着に白い肌、彼女の首筋、胸元

流れる汗が谷間に消えていく


その先を追うように、視線を下にずらしていく

なだらかな曲線、柔らかなお腹、細い腰つき、そして…


赤い水着


描かれる三角形、そこから伸びる白い足、太もも

右足、左足、その隙間、その奥、ふわりとした…


「ふーん。ああいうのが良いんだ…」


そんな声に意識を呼び戻される


提督「ん?」


ちょんちょんっと、意味ありげに提督をつっつく皐月


提督「なに?」

皐月「べっつにー」


そっぽを向いて「なんでもないよ?」とか言ってはいるが

次第に強くなっていく刺激が、そうは言っていなかった


望月「ボクのは選んでくれないのにー、だろ?」


皐月の声音を真似して、からかうように横槍を入れてくる望月


皐月「ちょっ、そんなこと言ってないじゃんかっ!」


勝手に人の心を代弁しないで欲しい

別にヤキモチとかそんなんじゃ


三日月「言ってないけど、思ってはいるんですよねっ!」


わかりますっ

なんて、ぐっと握り拳を作ってみせる三日月


普段のお返しとばかりに、姉をからかってみせる三日月

つまるところ、彼女が思わずそうしたくなるくらいには

姉の仕草が可愛らしく見えていた


皐月「ちょっとっ、三日月までっ!」


思ってない、思ってない、思ってない…

けど…期待しないでもなかった…




長月「はぁ…」


重い溜息

それとは裏腹に、きゃっきゃと騒いでる姉妹たちと司令官


「んじゃ、水着でも買いに行きますかー」

「えー」

「でも、姉さんたちとは行ったんですよね?」

「それは…」

「ボクらとは行けないってのかい?」

「ぁぁ…はいはい、いきますよ、いきますともさ…」


あの後、どうしたっけか…


あの人の顔をみて、泣きついて…それから…


「おはよ」


なんて、気付いたら朝で、執務室で、司令官と一緒で、二人きりで…


長月「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…」


肩を落とす、頭を抱える、溜息以上の重い何かがダバダバ溢れる


菊月「…ふむ」


分からんな。普段からもそうではあるが

ひっつきたいならそうすればいいのに、何をためらっているのだろう?


落ち込んでるような、照れているような

よく分からん顔をして、項垂れている姉を横目に小首を傾げる菊月


司令官に連れられた後、夜が明けてみればこれだ

きっと一緒に一晩過ごしたのだろうが…何かあったのか?


分からん…


だってそうだろう?

睦月なら、キラキラして帰ってくるだろうし

如月なら、ツヤツヤしてそうだ

金剛は…あぁ、きっと鬱陶しそうだな

うん、幸せを投げつけてくるな間違いなく、今だってそうだしな


ちらっと、金剛が消えた波間に視線を向ける菊月

まあ、それはいい。いつものことだ


しかし、この姉…長月の事が分からん…

恥ずかしがるだけならまだしも…何を落ち込んで…


三日月「あ、菊月達も行く?」


振り返った妹がそんな事を問うてくる

三日月…んー…あー…あぁ…なるほど


そういえば、一昔前の三日月もこうだったか…

なんというか、一人花びらを千切りながら、溜息でもついてそうな

色恋沙汰か…菊月はあまり得意ではないが…

と言うより、その手の話になると長月に邪魔をされるのは…一体

いや、いい…それよりも…そうなると、どうする?


「恋の病ねー」とは、金剛だったか

「放っときゃ治るよん」とは、北上の言だったか

「バカに付ける薬はないわ」とは、大井が言ってたか


治るのか?治らんのか?けっきょく…


三日月「菊月?」

菊月「ん?」


ふと、呼ばれて顔を上げると

「どうしたの?」と、心配そうに覗き込んでいる三日月と目が合った


菊月「いや、どうというか…」


何となく、長月の方に目がいってしまう

それに気付いたのか「あぁ」と、小さく頷く三日月


三日月「その内、落ち着くとは思うけど…」


困ったような笑みを浮かべて、曖昧な言葉を返す三日月


そのうち、か…そのうちな

では、何時?と聞いても答えはないんだろう…

まったく、誰も彼も…一応に…

まどろっこしい、紛らわしい…


ああ、なんかもう面倒くさいな


菊月「うん、そうだな」

三日月「へ?」


悩み顔から一転。ふと、表情から力が抜けたかと思えば

ガシっと、長月の手を引っ掴んで歩き出す菊月


長月「え?お、おい?菊月?」

菊月「行くぞ、長月」

長月「行くって、何処に…」


その間にも、長月を引きずるように歩いて行く菊月


菊月「水着だ、水着」


買いに行くんだろう?と、置き去りにした三日月に視線を投げる


三日月「え、あ、うん…それは」


吹っ切れた、とでも言えば良いのか

突然の歩き出した菊月の後に、戸惑いながらも遅れて付いて行く三日月


長月「いや、私は良いって…」

菊月「ん?そうか、では…」


途端、あっさりと手を放し、一人司令官の側に立つ菊月


菊月「司令官…私も行っていいだろうか?」

提督「ん?くっきーも?」

菊月「うむ」


司令官の問いかけに大きく頷いた菊月


長月「え?え?」


なんだ?まるで意味が分からんぞ?

菊月が?水着?興味が無いものとばかり…


いや、それよりも…

引きずられたかと思えば、突然突き放されたような…

意味が分からん…


望月「お前さんがはっきりしないからさ…」

長月「何を…」


ぽんっと、望月に肩を叩かれる

その横顔は呆れてるのか何なのか「困った娘だねぇ」とでも言いたげだ


長月「私はっ」

望月「はいはい…」


聞く気はねー、と手を振りながら背中を向ける望月


長月「むぅ…」


別にそんなんじゃ無いのに…いや、そうだとしても

あんな事した後に、どんな顔して…


ぐるぐる、ぐるぐると回り出す

今朝のことを思い出せば、思い出す程に

思考は渦を巻いて、螺旋のように落ちていく、落ちていく、落ちていく

泥沼の上を堂々巡って、どんどんと沈んでいく…


胸が締まる、窮屈で、息苦しい

それから逃れようと、大きく息を吸う…

そうして、出るのきっとまた溜息


三日月「それで、行くの?行かないの?」

長月「え?」


出かかった溜息が喉元で止まる


三日月「え、じゃなくて。水着?」


そっと、姉の肩に両手を置く三日月

そして、優しく、怖がりな姉の背中を押すように


妹の手が温かい

そっと背中を押してくれるのも分かる

「行く?」とか聞いておいて、これじゃまるで「行け」とか言われてるみたいだ

優しさだって、過ぎれば暴力じゃないのかと

捻くれたことも考えたくなる、が…


長月「…行く」

三日月「うん」


妹の優しさを素直に受取ると

自分で、一歩を歩き出す長月


菊月「まったく、手間のかかる」


「来るなら最初からそう言えばいい」と、長月を小突く菊月


長月「うるさい、バカ…」


今にして思えば、あれもあれで、菊月なりに気を使ってたのだろうと

理解はしても、なんか納得がいかずに、ついと悪態が口からでる


菊月「ふふっ。知っているか?」

長月「なんだよ…」


にやりと、したり顔で微笑む菊月に、怪訝な表情を浮かべる長月


「バカに付ける薬はないそうだ」


提督「なに、あれ?」


卯月みたいな顔して逃げ出す菊月と、それを追いかける長月

珍しい絵面、瑞鳳と卯月なら背景になるレベルなのに


三日月「うふふ。なんでしょうね?」

提督「ふーん…」


訳知り顔で微笑む三日月

ま、じゃれてるだけらしいというのは分かるし

それならそれで構わないかと、そんな二人の背中を眺める提督だった




北上「ば、か、だ、ねぇぇぇぇ」


憐れみと、親しみが混ざった素敵な声をかけながら

海中から金剛を引き上げる北上様


金剛「だ、だって…」


北上に引きづられて、よろよろと水から上がる金剛さん

その髪にはゴミが絡まってたり、肌にはクラゲが引っ付いてたりと

なにかの冗談のような光景だった


大鳳「台風の後に飛び込む?普通?」

金剛「だってぇぇぇ…提督にぃぃ、提督がぁぁ…」


めそめそと、すすり泣く金剛さん

泣き言を言ってる間に、彼女の体からクラゲを引剥し

面倒くさいからって、高速修復材で傷口を洗い流す大鳳さん

艦娘でよかったわね、ほんと…


北上「そんなに見せたきゃ、風呂場でもよかったじゃんよ?」


やれやれと、首を振る北上様


金剛「はっ!?どうしてそれを早く言わないっ!」

北上「不貞寝したのは君じゃん?」

金剛「起こしてよっ!」

北上「やーよ」

金剛「なにゆえっ!」

北上「めんどい」

金剛「Shit!」


面倒くさい、そう言われてしまえば お終いだ

それは全てに優先される魔法の言葉だ

ていうか、不貞腐れてる娘の相手など確かに面倒だというのも正論だ

ああそうですねっ、今日はセイロンティーにしましょうねっ!


大鳳「良いから着替えてきなさいな…」


結局、水遊びは来週に延期になりました


ーおしまいー




EX:雲龍さんの怖い話



雲龍「それはね、くらい、くらい夜だったわ」


あの時は夜戦の最中でね

夜戦時の空母なんて、置物どころか役立たずで足を引っ張るだけの…

ましてや雲龍型なんて…


天城「あ、あの…ねえさん?」

葛城「すとっぷ、すとーっぷ、言い過ぎ、言い過ぎだからっ」


つらづらと、たんたんと

夜戦における正規空母の無力さを語り出す雲龍

その言葉を遮って、妹達が慌てて止めに入る


言いたいことは分かる、大体あってもいる

が、そんなに挙げ連ねられると流石に滅入ってくる

正規空母の存在意義を疑いだしかねないほどに


雲龍「うふっ、冗談よ」


冗談、冗談と笑いながら、話の続きを始める雲龍

しかし何故だろう…


時津風「いやぁ…目がまじだったよーなー」


怪談の延長だったせいか、嫌に重みのある…


天津風「しっ、みないふりみないふりっ」


とは言え蒸し返しても特はない、黙って話を聞くに限る


雲龍「それでね、なんだったかしら…そうそう」


するとね。ふと、暗い海の向こうから白い影が浮かんできたの

深海棲艦?最初はそう思ったわ…

けどね、電探にはそんな反応はなかったし

むしろ、艦娘の反応だったのね


こんな所に単艦で?


疑問には思ったけれど、このまま進むと危ないし

この距離で分からないでもないと思うけど

一応ね、通信はいれてみたの


危ないよって、夜戦中だからって、ね?


けどね、返事はなくて

ただ無言のまま、すっと、すぅっとこっちに向かってくるの


流石に変に思ったわ。不気味にも感じたもの

もしかしたら、夜の闇のせいも合ったかもしれないけど

潜水艦ならまだしも、巡洋艦クラスが単艦で動いてるのもそうだし

なにより無反応っていうのが気味が悪かったのね


幽霊船?


バカバカしいと思ったわ

深海棲艦が蠢いているのに、私達だって似たようなものなのに


そんな事を考えているとね

艦影がハッキリ見え始めてきたの


雪風「ど…どんな娘だったんですか…」


ごくりと、息を呑む雪風


白い…そう、白い服を来た髪の長い女、だったわ


さすがに表情までは見えなかったけれど

こちらに一瞥するでもなく、戦闘海域に向かっていったの


何も言えなかったわ…


殺気、とは違うけど、なにかこう、異様な威圧感があってね

ただ夜の闇の中に、消えるみたいに溶けていく背中を見送ったのだけど…


その時ね…


雲龍「ばんっ!」

島風「おうっ!?」


大げさに手を叩く雲龍

それに驚いて、島風がビクっと肩を震わせた


雲龍「うふふ…」


その反応に満足そうに頷く雲龍


ここまで来たら誰でも分かる

さっきのがこの話の山、よくあるビックリ系の怖い話だと


しかし何でだろう?


なぜこの娘が話すだけで、こんなにも おっどろおどろしく なるのだろうか?

きっと長門が話したなら、ただの戦闘詳報になってそうだし

阿賀野が話せばきっとギャグだろう


それなのに…


耳に張り付く声、しっとりと、べったりと

心に響く声、決して大きくはないのに、細く、細いその声は

鼓膜に小さな穴でも開けたように、なんの抵抗もなく耳から心に入り込んでくる


酒匂「そ…それで…その後は…」


恐る恐る先を促す酒匂


矢矧「次の瞬間には、夜戦が終わっていたわ…」


だが、答えたのは雲龍ではなく

その先を見てきたかのように、矢矧が口を開いていた


酒匂「ぴゃ?どうして…矢矧ちゃん?」


その疑問はもっともで


矢矧「だって…それ、この間の話だもの…」


その答えももっともだった


長門「この間…確か…」


ここ最近の報告を思い出す長門

たしか、雲龍たちを連れての夜戦は…


能代「あぁ…髪の長い女って…そういう…」


白い制服で、茶髪のロングでアホ毛付き

思い浮かべただけで、クマクマ聞こえてきそうな


いつき「それで…その娘は結局、誰だったのでしょう?」


首を傾げたのは、白い服を着た男の子

まだ若いながらも、ここん家の司令官だった


阿賀野「…くまちゃんよ…」

いつき「…」

阿賀野「あんにゃろー、いきなり横槍いれてきて、一瞬で片付けよってからに…」


突然の一発、敵も味方も驚いている間に もう一発

隙を見せている間に今度は魚雷

阿賀野達が気付いた頃には、戦艦級が片手で持ち上げられて、その…


爆発したわ


いつき「…こわ…」


それは新人の司令官には当然感想で

それを目の当たりにした艦娘達も同様に頷いていた


雲龍「ね?怖い話でしょ?」


そうして、してやったりと微笑む雲龍さんでした


葛城「いやいや、怖いの意味が違うからっ!」



ーおしまいー



EX:星に願いを



ー大艇ちゃんがもっと活躍できますようにー


その短冊に書かれていたのは、そんなささやかなお願いごとだった


みつよ「ふーん…」


七夕の短冊飾り

こうして全員分集まってみれば、なかなか綺麗なものだと

それを満足そうに見上げていた 少女が一人


長い黒髪に、勝ち気な表情が似合う ちんちくりん

大日本帝国、大本営の大元帥、御代 みつよ


みつよ「大和っ」

大和「はい…」


いつもの様に名前を呼べば

我が意を得たりと、静かに動き始める大和


みつよ「さて、少し、忙しくなりそうね」


白い外套を翻し、長い黒髪を靡かせながら

短冊に背を向けるみつよ様だった



ー翌日ー


秋津洲「なっ…なっ…なぁぁぁぁぁっ!?」


工廠に着いた秋津洲

「今日も一日がんばるかもっ」と、気合を入れたのも束の間

その気合は一瞬で消し飛んでしまっていた


みつよ「おはようっ秋津洲っ」


そんなタイミングを見計らったかのように、開く工廠の扉

入り込む朝日を後光に変えて、御代みつよが立っていた


秋津洲「はいっ、お早うございます おひい様。それと、ばかじゃないのっ!」


その瞬間に全てを悟る秋津洲

ああ、コイツが犯人だと…


みつよ「随分ねっ、ちょっと傷つくわっ」


意気揚々と、語尾はきっかりと区切る みつよ様

その様子からは、とても傷ついているようには見えない


そんな朝の挨拶を交わし合い

カツカツと軍靴の音を響かせながら、工廠の奥へと進んでいく


秋津洲「大艇ちゃんになにしたのっ!」

みつよ「少し、ね?」


したり顔で微笑む みつよ様


秋津洲「少しっ!少しっ、これがっ!」


なんか細かい所は投げ捨てでも、これが少しな筈がない


秋津洲「ぷーろーぺーらーっ、かーえーしーてーっ!」


ジタバタと、子供みたいに地団駄を踏む秋津洲

彼女たちの前には、二式大艇…だったもの

秋津洲の言うとおり、プロペラが喪失しており

これ、飛べるの?と言って状態だった


みつよ「プロペラなんてただの飾りよっ。貴女にはそれがわからないのっ」

秋津洲「わかるかーっ!飛行艇っ、これ飛行艇っ、だからっ!」


さらにじたばたと地ならしを続ける秋津洲


みつよ「ふふふっ、甘いわね秋津洲っ。これからの時代は じぇっとよっ!」


ばばーんと、改造された二式大艇に「見なさいっ」と腕を広げるみつよ様


みつよ「試作段階のネ式エンジンを搭載してみたわっ」

秋津洲「ね、ネ式って…完成してたの…」


確かに聞き覚えはある

けど、素組はしてそれっきりってだけだったような…


みつよ「それも一つや二つじゃないわっ」


「四つよっ!」

しゃきーんと、小さな指を4本伸ばしてアピールするみつよ様


秋津洲「あほーっ、ばーかーっ!どうしてっそんなことするのっ!」


しーさーくーひーんっ、そんなのいきなり4つも付けないでーっ


みつよ「まったくっ、何がそんなに不満なのよっ」

秋津洲「不満しか無いかもっ!」

みつよ「マッハで飛ぶのに?(理屈の上では、だけど)」

秋津洲「とぶなーっ!」

みつよ「そぅ…」


と、ここに来て初めて みつよ様の表情が陰る


秋津洲「へ…」


不味い、と思った

一応でもこれ、家の提督だ、大元帥だ、超偉い人だった

バカバカアホアホ言ってたのは今更だけど、何か変なことをしてしまったのかと

一瞬、嫌な汗が頬を伝う


みつよ「だって…貴女が書いたのよ?」


ー大艇ちゃんがもっと活躍できますようにー


しゅんと、気を落とした声

それは見た目通り、歳相応の少女のものだった


秋津洲「へ…わたし、のため?」

みつよ「…」


肩を落としつつも、小さく頷いて見せる みつよ様


秋津洲「え、でも…えっと…」


どうしよう。あんな子供みたいなお願いを本気にするなんて…

いやでも、だからって、ネ式エンジンなんて…


結果はどうあれ、自分のために手間を掛けてくれたのに

流石に言い過ぎたかと…襲ってくる罪悪感に潰されそうになる


秋津洲「あ、そ、そうだっ、じゃあテストくらいしましょうかっ」


も、もしかしたら、飛ぶかもしれないマッハ出ないにしろ

上手く行ったら良い事ではあるし、ダメでもともと…


みつよ「当然よっ、伊達と酔狂だけでこんな事はしないわっ」


言った途端にこれである

意気揚々と、元気よく喋り出すみつよ様


秋津洲「…」


つっかれる~

それが、正直な所の感想だった

テンションの振れ幅が大きすぎて、本気と冗談の境が分からない


みつよ「それじゃ早速…あら?」


飛ばしてみましょうかといった所で、工廠の扉がバーンと開いた

自動ドア、なんてもんじゃない以上

そこには開けた本人がいるはずで、その本人に声をかけた


みつよ「おはようっ大淀っ」

大淀「はい、お早うございます、おひい様。それと、バカなんですか?」


朝の挨拶からの、第一声がこれだった


みつよ「ふふっ、随分な良いような大淀っ」

大淀「工廠の妖精たちから連絡がありました…ネ式エンジンが消えたと」


無言で、みつよ様に視線を投げる大淀

それは暗に「どこですか?」との問いかけであり

その視線が、その後ろの物へと移された


大淀「ああ、それですね…」

みつよ「ふふんっ、カッコイイでしょう?」


なんて無い胸を張ってみせる みつよ様


大淀「ハリボテにカッコイイも何も…」

秋津洲「は、はり、ぼて?」


その言葉に、きょとんとする秋津洲


大淀「ええ…。一応は動くとのことですが…」


その後に続いた大淀の言葉は

「花火が見たいなら良いかもしれませんね」なんて不吉なものだった


秋津洲「ちょっとぉぉぉぉぉっ!?」


「おひい様っ!どういうことなのっかもっ!」

がしっと、みつよ様の肩を掴んで揺さぶりまくる秋津洲

流石に空中分解しそうな物品を取り付けられたのでは、見過ごすわけにも


みつよ「秋津洲っ、貴女は一つ勘違いをしているわっ」


揺さぶられながらも、淀みの無い声が秋津洲の動きを止める


秋津洲「な、なにをっ」


そうして、一呼吸置き、大きく息を吸うと


「大艇ちゃん私達の心の中にいるのよっ!」


「大艇ちゃんを概念にしないで欲しいかもぉぉぉぉっ!?」


大潮「おおっ。アッゲアゲですねっ、おひい様っ」

龍鳳「ふふっ…今日も輝いてますわ…」

大和「はい。大和的にはちょーOKです」


大淀「…」


頭が痛い

取り敢えず、大和には見た目を考えて欲しいが…

それよりも、誰か止めろ…

いや…そう、そうなりますよね…

今更ではある…このガチ勢が止めるはずがない


秋津洲…強く生きて


そう願うより無かった




その後、秋津洲のもとに爆装と雷装がすごい数字になってる二式大艇が配備されることになった

なんか、金ピカだったり、銀ギラだったりしていたが…


「ま、冗談は置いといてと」なんては言っていたが

本当に何処までが冗談なのかが分からない



みつよ「さて、貴女が欲しかったのは、この金の大艇かしら、それとも…」

秋津洲「普通のっ!」

みつよ「被ってるわっ、最後まで言わせなさいっ」

秋津洲「やだかもっ!」

みつよ「今ならこの金の大艇ちゃんが2割引きで…」

秋津洲「安売りをするなぁぁぁっ!」


ーおしまいー


後書き

はい、というわけで最後まで読んでくれた方。本当にありがとうございました
貴重な時間が少しでも楽しい物になっていれば幸いです

それではこの番組は

卯月「うーちゃんのーっ」
弥生「一度やって見たかっただけのコーナー…」
卯月「いぇーいっ」
弥生「ぱちぱちぱち…それで?」
卯月「ぴょんっ♪こんかいはーっ」

ー溺れる者はわらわを掴むー

弥生「…いいけど。どうする気?」
卯月「こうするぴょんっ!」



初春「えぇいっ、やめんか、わらわを掴むでないっ、放さんかっそこな潜水艦っ」

ゆー「ふぅ…うーちゃん姉さん。これでいい?」
卯月「バッチリだぴょんっ!」

初春「のぅ…。わらわはこの為だけに呼ばれたのかえ?」
弥生「うん、そう」
初春「そうか…そうかぁぁぁ…」
弥生「良かったね。出番があって…」
初春「微妙じゃぁ…」

卯月「よしっ、満足したぴょんっ。帰ってお昼寝するぴょん」
ゆー「はいっ、お伴しますって」
弥生「それじゃあね」

ー諸々のメンバーでお送りしましたー


ー以下蛇足に付き


♪皐月ちゃんラジオ♪ 

皐月「…初春ファンの人たちごめんなさい」
提督「一度くらい考えない?ああ言うこと?」
皐月「いや、知らないよそんな事…」



提督「ちなみに北上様の「ば、か、だ、ねぇぇぇ」は
   骨◯したりさんの、真似っ子です…オ◯ノガレの時のヤツ」
皐月「うん、細かすぎて誰も伝わらないと思うから」

皐月「それで、今回は?」
提督「うん、夕張さんとイチャイチャしたかった、んだけど…」
皐月「なんか、金剛さんが持ってってない?」
提督「ねー。やっぱり夕張姉ちゃんって感じだな。甘さ控えめみたいな」
皐月「ていうか、水着なんて書くからじゃ…」
提督「夏だし、多少はね…。去年は手抜いたし…」
皐月「如月のスク水…」
提督「~♪」



提督「さて、コメント返しをしよう」
皐月「良いけど…」


・好感度

・北上様

・一から見てきてー



・好感度

皐月「先ず最初は…好感度のお話だね」
提督「★9は、一般的な好意の上限って感じかな
   一日も一緒にいれば如月だってどっかで気付いたと思うよ」

提督「他の娘たちは、気付いたらプロフが更新されてるかもね
   イベント挟むかどうかは気分次第…今回は金剛の常識が外れかかってたし、そのうちじゃない?」

皐月「でさ、★9がそうなら…MAXは?」
提督「言い換えようか。Love勢というかガチ勢だよ」
皐月「…恥ずかしいんだけど、その呼ばれ方…」
提督「分かりやすいからねぇ、こういう方が」
皐月「だけどさぁ…」
提督「ほら、みつよ様のとこの大和、あれなんか分かりやすいよね」
皐月「白でも黒にする娘だしね…」
提督「彩華の所の夕立も…「提督が喜ぶかどうかは問題じゃないのよ」ってな」
皐月「…気持ちは分かるけど…常識、常識は…」
提督「邪魔なだけ」
皐月「うん、だよね…」

提督「睦月なんか凄いぞ。その気になれば短針儀で私の事探しだすから」
皐月「…ボクだって、感で分かるもん」
提督「…球磨なんて呼んだらいるし。望月なんて言う前に動いてるからな」
皐月「ぼ、ボクなんかもっとすごくてっ」
提督「…なに、張り合ってんの?」
皐月「うっ…うっさいっ」

・北上様

北上「いや、ヤキモチとか、そういうんじゃ…いや、そうなんだけど…なんというか
   あーもー…やめやめ、あーはずかし、はずかし」

皐月「照れてる」
提督「可愛い」
北上「うっさいよっ、そこっ」

・一から見てきてー

提督「ここまでの ご愛読ありがとうございました」
皐月「そろそろ、ラノベ3冊分くらいの長さになってそうだけど」
提督「SS…」
皐月「た、短編集だからさ、ね?」

提督「本当なら、バックナンバーの整理をして設定や文体の調整をするべきなのでしょうが
   いかんせん、新作書いてるほうが楽しいので…なにか、昔と話が違っていたら
   そういうもんだと思って頂ければと思います
   句読点の使い方も怪しい作品ですが、楽しんで頂ければ幸いです」



皐月「さて、今回はここまでだね」
提督「今回もたくさんの閲覧、コメント、評価、応援と、誠にありがとうございます」

提督「さて、次回は…運営からも発表あったし、水無月かな…きっと」
皐月「きっと可愛い娘なんだろうねー…」
提督「そりゃ、皐月の妹だもん。可愛いでしょうな」
皐月「…ずるい言い方するんだ」
提督「そりゃね」

提督「さて、それでは。次に上げる頃には少しは涼しくなっていることに期待しつつ、今回はこの辺りで」
皐月「うん、良かったら また一緒に遊ぼうなっ」

二人「まったねー」


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2016-09-15 04:47:45

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1: SS好きの名無しさん 2016-08-09 14:32:05 ID: m40sKygM

怪談・水着話、楽しく読ませて頂きました。

夏の定番ですよね。
睦月に卯月、金剛の水着姿が鮮明に脳内されました(*^^*)
萌える…間違えた、燃えますね。
昨年は金剛さんがかわいそうなことになってましたから、今年は提督に選んでもらえて良かった良かった。

そして、怖がる夕張と添い寝してもらった長月が可愛いことに。
前回の瑞鳳もそうですが、何かきっかけがあれば好感度の変動があってもおかしくないですね。
それらも含め、次回作も楽しみにしています。

暑さがかなり厳しいことになっていますから、作者様も体調にはお気をつけて。

2: SS好きの名無しさん 2016-08-13 08:42:01 ID: 7K4lO2kG

いっつも楽しませてもらってます。ははは。可愛い。しか出てこない。パッとタイトル見たとき、提督と゛谷風゛に見えて、え?なんで?谷風さん?と思ったなのはここだけの話

3: SS好きの名無しさん 2016-08-14 03:24:33 ID: ZpSaRe9e

迫る水無月の実装による新キャラの加入が楽しみで仕方がありませんσ(>ω<σ)

うーやよの破壊力は安定で微笑ましいというか可愛すぎます!!

4: SS好きの名無しさん 2016-08-18 13:36:28 ID: IKLXbNX7

はぁー、今回も面白かったです!
文月コーディネートの睦月、弥生コーディネートの卯月を想像して悶えた。


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