2016-08-15 10:02:53 更新

概要

急死した提督の弟として、とある鎮守府に配属された男の話です。
〜完結編(仮)〜


前書き

前スレで終わらせるつもりだったのですが、バグか何かで更新できず、このスレに引き継ぐこととなりました。

前回分までを、読んでくださった方々は、ご存知かと思いますが、前回のラストの時系列は【2016/06/11】です。

学祭関係の準備もあり、更新が遅くなるかもしれませんが、必ず完結させようと考えています。

中盤に差し掛かったあたりから、グロテスク描写を取り入れていきます。ご了承ください

拙い文ではありますが、最後までよろしくお願いします。


前回までの『マイナスから始まる鎮守府』




僕は、急死した兄の後釜として、『田原鎮守府』の提督となった。



その鎮守府は、かなり荒れていたが、契約補佐官だった【大淀】や、成り行きで協力者となった【霧島】の助力もあり、見事、この惨事を解決していったのだった。



その後、上層部からの命令で、演習を行ったのだが、見事、先方の『豊橋鎮守府』を叩きのめしてしまい、かなりの問題となってしまった。しかし、【隼鷹】の計らいで、事実上の和解に成功するのであった。



だが、喜ぶ暇も与えられず、上層部からの使いである【長門】の口から、【比叡】の脱獄を知らされる。僕は【比叡】の件には、兄である【英治】が関わっていると睨み、無駄な警戒をしなければいけなくなった。



初めて、深海棲艦と遭遇・交戦した僕らに、先の演習相手であった『豊橋鎮守府』第一艦隊から救援要請があった。その後、保護【赤城】から、この件について、同じく保護した【加賀】が我を失った事が原因であると、伝えられた僕は『豊橋鎮守府』にその元凶があるのではと疑い、【加賀】【赤城】を連れて、『豊橋鎮守府』にへと向かったのだった。



案の定、元凶は『豊橋鎮守府』提督の【大雅】であり、その裏には【英治】が関わっているという情報を得た。僕は【大雅】から【赤城】【加賀】を正式に奪い取る事に成功し、見事、一航戦を『田原鎮守府』に引き込むことができた。



しかし、その事がきっかけだというのか、【英治】が関わっているだろうと思われる『宿毛鎮守府』から、演習の申し込みがあった。この演習に備え、僕は『愛知県支部長』である【大和】に親善試合を申し込んだのだった。



親善試合後、僕らと『愛知県支部』の艦娘たちで、何故か宴会を開いていたのだが、突如として【隼鷹】から緊急の連絡が着たのだった。


この連絡が、僕の人生を左右する事件だということも知らずに、いや、これも誰かによって、引き起こされたものだったのかもしれない…。






雷電



【2016/06/11】


雷じゃないのです!い・な・づ・ま!!電なのです!!



…。



今日は、梅雨の時期とは思えない程、神々しい太陽と澄んだ蒼い空が窓から見えている…、ポカポカして温かな快晴なのです!



司令官さんが、金剛さんたちを連れて『愛知県支部』へ出発してから、もう3時間くらい経ったのですか…。



電は何をしているか?ですか?



司令官さんからは、『3日間非番とする』と伝えられているので、雷ちゃんと一緒に、鎮守府周辺をお散歩しているのです!



え?海と雑木林しかない…ですか?



そんなことはないのです!



ここ、『田原鎮守府』は、元々フェリー乗り場のある港を、改築して作られた経歴があるみたいで、鎮守府周辺には、お菓子屋さんとかがあるのです!



お金の心配ですか?



ふふ、実は『多分暇になるだろうから、お菓子でも買ってくるといいですよ』と、司令官からお小遣いをもらったのです!500円玉が1枚2枚…、はわわ…(汗)で、電はそんな卑しい女性ではないのです!!



その証拠に、隼鷹さんからお洋服を貸してもらって、綺麗な大人の女性に近づいた気がするのです!






雷「電、どうかしたの?ぼーっとなんかしちゃって。それじゃあ大人の女性に程遠いわね!」



電「ん?あ、はわわっ…そんなにぼーっとしてたですか?」



雷「えぇ。なぁに?なにか考えごとでもしてるの?」



電「久しぶりのお出かけで、緊張してるのかもなのです。ここ最近は訓練や、遠征ばかりだったから…」



雷「そうよ、まったく!忙しいったらありゃしないわ!だから今日はウンっと遊びましょうね!」



電「はいなのです!それにしても、どこに行くのですか?」



雷「そうねぇ…あ、そうだ!プールにでも行かない?」



電「それはナイスアイデアなのです!」





『田原鎮守府』から徒歩10分位のところに、小さな民営プールがあるのです!


なんでも、経営者の方は、子供の頃から家にプールを作りたかったらしく、定年後にその夢を叶えるべく、空き地を買って、建設したそうなのです!



電たちは、小学生料金で入れるので、1人50円…。安いのです!





雷「じゃあ、早速行きましょ!」





空は果てしなく広いのです。海も想像がつかない程広くて深い。とても壮大で、神秘的な世界なのです。



望むなら、皆いっしょに、平和な海で遊びたいのです。



…でも、今は【深海棲艦】との戦争中なのです。私のお母さんも、【深海棲艦】に…、思い出したくないけど、逃げてばかりもいられない…のです。



もしかしたら、私も…いつかは…。




雷「おーい、電〜?また考え込んじゃって…大丈夫よ!私がいるじゃない!」



電「…ふふ、なんだかお姉ちゃんみたいなのです」



雷「私はお姉さんよ!」



電「ありがと!雷お姉ちゃん!」



雷「そうよ!もっと私を頼りなさい!!」




ホントに、頼りになるお姉ちゃんなのです!





おじさん「ん?電ちゃんと雷ちゃんじゃないか、久しぶりだねぇ…」



電「遊びに来たのです!」



おじさん「今ちょうど人も少ないし、何しても構わないよ」



雷「わーい!電早く行こう!!」



電「はいなのです!」




私たちは、早く遊びたくて、ロッカールームまで駆けたのです。



服を脱ぐ雷…。



雷「何してるのよ!早く着替えよっ!」



見たくなかった傷…。

思い出したくなかった光景。



服を脱ぎ去った、雷の幼い身体には無数の傷跡が残されていた。消したくても消えない…、拭い去れない永遠の呪縛。



着任したての私には何、もしてあげられなかった…。吊るされ、殴られ、鞭で打たれたあの日々…。戦争よりも悲惨で、屈辱的…。



雷、ごめんなさい…。



ごめんなさいごめんなさい…





雷「まったく…、声にでてるわよ」



電「はっ!ごめんなさいなのです!」



雷は、私をそっと抱き締め、囁くように、それでも強く訴えかけるように言った。



雷「もう!過去を引きずるのは、愚か者のすることなのよ!…とは言っても、忘れることができない嫌な事は、この先もたくさんあると思うわ。でもね、忘れる事はできなくても、反省して、それを活かして再発を防ぐことはできると思うの。そして、誰かを救う事もできるかもしれない。痛みを知っているからこそ、誰かに同じ様な痛みを体験してほしくない。そう想える。これって素敵だと思わない?だからね、私は大人になったら、誰かを救えるような女性になりたいの!だから電!私のサポートをしてちょうだい!」



電「…やっぱり、雷ちゃんは凄いのです。いつも前向きで、元気で華やかなで、私も雷ちゃんの様になりたい!絶対に雷ちゃんの力になるのです!」



雷「約束よ!じゃあ、早くいきましょ!」





時計の針【10:31】を指していた。






食堂




【16:43】

そろそろ夕飯の支度をしなきゃいけないわね。



空が段々と黄色に染まっていき、肌寒くなってきた。初夏とはいえ、まだまだってことみたいね。



私がここに配属されてから、まだ時間が浅いけれど、ここの艦娘たちとは、それなりのコミュニケーションを取れているつもり。もっと言ってしまえば、【英華】くんよりもコミュニケーションは取れているわ。まぁ、【英華】くんは奥手だから仕方がないわね。



それはそうと…


今日の献立は…




隼鷹「今日は、うどんだってばー。朝からずっと言ってたじゃん?」



間宮「あ!そうだったわ!あれ?あなたってエスパーさんなんですか?なんで私の考えていたことがわかったの?」



隼鷹「いやいや、あたしはそんなに大層なもんじゃないって!間宮ん、考えてることが口から漏れてんだよ」



間宮「あら…、私の口ってそんなに緩かったのかしら…注意しなきゃいけないわね!」



隼鷹「ほんっと、下の口もゆるいんじゃない?」



間宮「下はキツキツってよく言われますよ!昨日も言われましたし!」



隼鷹「ちょちょ、ちょっと待った!今サラッととんでもない事言ったよね?!誰とヤッたんだよ!!」



間宮「えーっと…、整備室にいる【高橋】さんよ?」



隼鷹「…間宮ん、つい1分前の事覚えてるかい?」



間宮「覚えてますよ?ハッキリと!」



隼鷹「覚えてないからね?!『注意しなきゃ』って言ってたじゃん!」



間宮「そうでした!あらら…忘れてたわぁ」



隼鷹「…勘弁してくれよぉ?」



間宮「絶対に言いませんからね!隼鷹さんが毎晩お酒を呑んでいることはっ!」



隼鷹「サラッと嘘つくのやめようか…。私の信用が損なわれるわ!」



間宮「すみませんでした★キラッ」



隼鷹 (イラッ)



…。



間宮「…そういえば、今日みたいな休日の日って、何しているんですか?私、今朝からずっと、鎮守府内を探検していたのですが、隼鷹さんに"だけ"会わなかったんですよ」



隼鷹「…んー?そりゃあ、部屋に籠もって映画を観てたぜ?良かったら、今度一緒に観るかい?エーリアン系なんだけどさぁ〜」



間宮「あら、それはご一緒させていただきますね!楽しみです★」



隼鷹「おう!どうせ明日と明後日も休みだしな!あ、そうだ!実は今日中に使っちゃいたい肉とかあるんだよねぇ…。今日は外でバーベキューでもどう?天気もいいしさぁ」



間宮「いいですね!なんなら、私が家から持ってきた花火で、みんなで遊びましょうよ!」



隼鷹「よっしゃー!決まりな!!とりあえず、あたしは放送室に行ってバーベキューの事を皆に伝える。間宮んは倉庫に行って、炭とか出してきて!後で手伝いに行くからさぁ」



間宮「了解しました☆じゃあ、ちゃちゃっと準備してきますね!」



隼鷹「おう!頼んだぜ!って…走って…そんなに慌てなくても…」




やりました!今日は久しぶりに大勢の人と遊べるのですね!!まぁ、大勢と言っても、主要メンバーと英華くんがいないんだけれどね…。ま、いっかな!花火楽しみだなぁ…、打ち上げやって、線香花火とかも良いわよね!!



倉庫につき、施錠を外した。



中はほこりっぽく、一体最後に開けたのはいつなんだろうかと、疑ってしまうほどに悲惨なものであった…。




ふと、腕につけている時計を見る。



【17:02】



大体、6時半頃に肉を焼き始めるとして…、まだ5時じゃない!時間が有り余っているじゃないの!少し、焦り過ぎたわね(汗)



…えーっと、炭は奥かしら?



って、あんな高いところに…



あら、いいところにはしごがあるじゃない!




「おーい、間宮ん!手伝いきたぞ!」



間宮「ありがとうございます…」










電「ただいまなのです!あれ?もしかして」



雷「もしかして、今日はバーベキューなのね!間宮さんが着任してから、ここもなかなか自由になってきたわね!」



整備員「おー、雷電ちゃんじゃないかー!どうだい?おじさんたちと肉食べようよー??それともグイッと一杯イッちゃいますかぁ〜?」



雄輔「っちょ!先輩ダメですって!相手は小学生ですよ?訴えられて即クビ、前科オプションも付いちゃいますよ!!」



整備士「おぉー?雄輔ぇ、言うようになったじゃないか!!くぅー、肉いねぇ!!わーはっははは」



雄輔「…駄目だこの人、完全に酔っ払ってしまっている…」



電「雄輔さん雄輔さん、急にバーベキューだなんて、なにかあったのですか?」



雄輔「ん?あぁ…、なんでも、隼鷹さんいわく、間宮さんが怪我をしてしまって料理を作れる状態じゃないんだそうだよ。…なんなら、間宮さんも一緒にバーベキューしたら良かったのにねー」



雷「確かに、間宮さん居ないわね…。そんなに重症なのかしら」



電「!?それは大変なのです!後でお見舞いに行きたいのです。雷も一緒にどうなのです?」



雷「当たり前じゃない!心配なのはみんな一緒よ!」



隼鷹「よぉ、おかえりー」



電「ただいまなのです!これから間宮さんのお見舞いに行こうと思ってるのです!どこの部屋なのですか?」



隼鷹「あぁ、今は医務室に寝かせてるよ。きっと過労だろーねぇ…。今はゆっくり寝かせておきたいから、絶対に行っちゃあダメだからな?」



雷「どうしてもダメ?」



隼鷹「そうだなぁ…。例えば、君たちが疲れて寝ているところに、うるさい子供がやってきやらどう思う?」



雷「そりゃあ、頭にくるわ!って!私たちは子供じゃないわよ」



隼鷹「どうしようもなく子供だってば!まぁ、ともかく、夕飯食ってさっさと遊ぼうぜぇ?間宮んが持参して来た花火があるんだってよ!」



電「花火なのですか!?楽しみなのです!」



雷「ちょっと、電〜?…ふぅ、まったく、仕方が無いわね!私も一緒に遊んであげるわ!」



隼鷹「さぁって、お前たちは那珂お姉ちゃんのところに行ってきな!歌を歌ってくれるらしいぜ?」



電「はいなのです!雷ちゃん早く!」



雷「ちょっと!電待ってよー!」



雄輔「…ふぅ、いやぁ、良いっすねぇ。子供というのは自由で、発想の自由つうか、悪く言ってしまえば『自由奔放』、ただ、それでも僕たちが失ってしまった世界を持っているんすから。羨ましいっすよ」



整備士「ハハッ、そりゃそうだよ。生きていけば汚れていくし、擦れていく…。物だってそうだ。使えば汚れるし、擦れていく。人間っちゅうのは消耗品なんだよなぁ〜。だからこそ、今日のような、メンテナンスの時間が必要なんだよ。わかったか?雄輔ぇ〜。お前が正式にウチに来る時はみっちりしごいてやるからな!」



隼鷹「そうだよねぇ〜。しかもこの御時世…、明日の命も危ういんだ。今日会えた人が、明日は会えないかもしれない。なぁ雄輔くん、あんたは、もっと素直になっていいんじゃないか?無理に大人ぶるなよ?子供っぽい大人は見苦しいが、だからこそ、子供のうちに子供であるべきなんだぜ?」



雄輔「…そうっすね…、僕も、那珂さんの歌を聴いてきます。僕の支えですから…」



隼鷹「おう、行ってこい。少年」



整備士「ハハハッ…。決断力があるのかないのか…、人に押されて初めて動く人間だなぁ、あいつ」



隼鷹「勝手にテキパキ動く奴よりは、可愛げがあっていいと思うけどねぇ〜。少なくとも、良い歳してサボりクセがある奴よりは…」



整備士「うッ…、そりゃあ誰のことだい?」



隼鷹「さぁって、誰だろうねぇ」



整備士「…」



隼鷹「なぁ、よく見ると、なかなか良い漢じゃないか?そうだねぇ…今なら誰も見ていないぜ?」



整備士「…ったく、あんた夫に殺されるぞ?そして誘うならもっと別の奴にすべきだ。俺にも妻子はいるからなぁ…」



隼鷹「大丈夫、大丈夫。向こうの影なら、誰もわからない。それとも、ここで私が脱げばいいのかい?」



整備士「…オイオイ、それ以上はやめろって…、お前…一体何考えてやがるんだ」



隼鷹「火照りが治まらないんだ…。な?行こうぜ?」



。。。



雄輔「…あれ?先輩と隼鷹さんがいない?さては、先輩が酔いつぶれたんだなぁ?まったく、良い歳して女性に介抱してもらうなんて…」



電「どうかしたのですか?」



雄輔「いや、なんでもないっすよ」




。。。




整備士「お前ッ?!くっそ!」



隼鷹「『鍵』はどこにある?」



整備士「誰がお前なんかに教えるか、教えるくらいなら死んでやるね」



隼鷹「6秒毎に指を1本折っていく…。1」



整備士「ッ!はん、こんな脅しが通用するかっちゅうの(隙を見て逃げ出せばいい…)」



隼鷹「5,6」べキィ



整備士「ン―ッッッッ!???」



隼鷹「おっと、暴れるな、そして声を出すなよ?バレちまうじゃねぇか…。それとも、今ここで死ぬか?…いや、そんな勇気お前にあるわけ無いか…。『あの時』も見て見ぬふりをしていたもんなぁ?臆病者が…」



整備士「(今だッ)お前が死ね!」



隼鷹「?!」



ボキキキッ



整備士「あッあッ…」



隼鷹「…あら〜、やっちまったぜ。まだ『鍵』のありかを聞いてないのに…。にしても、まさかナイフを常備してたなんてねぇ…。正直焦ったよ」



隼鷹「うーん、死体どうしよ…。海に捨てるか。よし、捨てるとして…。『鍵』はどこだ?これじゃあ合流できないじゃねぇか」



隼鷹「うーん、あの壁をぶっ壊すには…」






足りない香辛料




ここ、『田原鎮守府』には"眠れる森の美女"が存在している。



【比叡】の事件と同時に起きた【榛名】のクーデター。



だが、その【榛名】は、大した破壊活動もせず【霧島】によって鎮圧され、そのまま目を覚ますことなく、眠り続けている。しかし、これは事実ではない。



振り返ってみれば、『ここの鎮守府に配属された艦娘は、【金剛型】を除いて、全員(電を除いて)調教・洗脳されていた』という内容で『愛知県支部』に報告書を提出したのだ。



これは【比叡】と【金剛】が明言している。【霧島】に関しては、当時【金剛】によって隔離されていたため、詳しい鎮守府の状況はわからなかっただろう。



しかし、その報告書を作成した【大淀】と【英華】は、直接その現場を見ていたわけではない。…【大淀】に関しては、【電】の調教現場を見つけた張本人ではあるが、それでも、他では何が行われたのかは、知る由もないだろう。



だからこそ、"その現場にいた"あたしに言わせてもらえりゃ、あの報告書の内容には違和感を感じる。 



もっと言えば、【榛名】のクーデターの原因について、同報告書にて『当時【榛名】の思考力が皆無であると見られ、まともな判断が下せないような状況にいた。これは【英治】前司令官によって、洗脳、プログラムされていた犯行である可能性が高い。』と書かれている。



明らかに矛盾している。



『【金剛型】を除いて全員が調教・洗脳されている状況だった』

『【榛名】は前司令官による洗脳を受けていた』



【榛名】は【金剛型三番艦】である。



これについては【英華】と【大淀】の間でも、議論になったのではないかと考えられる。あの2人は馬鹿ではない。それ故に答えを導き出せず、仕方なく矛盾したまま提出したのだろう。



この事について、これ以上引き延ばそうだなんて考えていなので、これから答え・真実を語らせてもらう。



【榛名】は【英治】に洗脳されてなどいなかった。あのクーデターは【榛名】の意思によるものであり、決して思考力の欠如などなかったのだ。おそらく、『【榛名】は洗脳されている』と決めつけたのは、現場に遭遇していた【霧島】の思い込みだったのだろう。



では、何故【榛名】はクーデターを起こそうとしたのか…。【榛名】は【英治】から直接、仕事を与えられていた。その内容は『【霧島】に撃たれる』というものだ。



なぜ撃たれなければいけないのか?



当時、【榛名】の実力は、【比叡】に次いで高いものであった。イメージはしにくいが、たった一人で【深海棲艦】の群れを駆逐していく程度のものだ。



そんな【榛名】が【比叡】が逮捕された後に、艦隊のエースとして抜擢される事は目に見えている。【英治】はそれだけは防ぎたかった。優秀な部下をどうしても鎮守府の内部の状況を、随時、監視させておきたかったためだ。



監視するためには、起きていなければいけない。



つまり、【榛名】は昏睡などしていなかった。



これが答えだ。



かつて、【英治】がスパルタ訓練を強制し、作り上げた艦娘部隊。



それに足りない、欠けてしまったスパイス。





隼鷹「起きろ【榛名】。お仕事の時間だぜぇ?」



榛名「…少し遅すぎませんか?榛名…ずっと待ち続けていたんですよ?」



隼鷹「これから目一杯遊べるんだ。そう思えば短いもんじゃねぇか」



榛名「はぁ…、貴女って本当に、榛名の美学が理解できないんですね。まぁいいです。で、何をお望みなんですか?あの方は」



隼鷹「知っていると思うが、この鎮守府には、拿捕した【深海棲艦】が隔離されている。そいつを独房の中から開放してやってくれ」



榛名「なるほど…、またここを混沌に突き落とすおつもりなんですね?いやはや、榛名、感服しました」



隼鷹「これも【英華】が後継ぎとして相応しいか…、それを見極めるための試練だそうだぜ?」



榛名「フフ…。いやぁ…、ここの娘たちも災難ですねぇ」



隼鷹「それも運命…。って決められるほどできちゃあいないさ。【英治】もあたし達も…」



榛名「まぁ…いいです。榛名は榛名の仕事をまっとうするだけですから。なにかをするつもりなら、最低限私の仕事の邪魔にならない程度にお願いしますね?」



隼鷹「安心しなって、そんなことはしないさ。だって、私たちは彼に恩返しをするために動いているんだから…だろぉ?」



榛名「…解っているなら、いいんですよ」







万物がメッセージ




この世に存在するすべてのモノは、必ずなにかのメッセージを残している。例えば、特定の場所に『ガラス』というものが、存在しているのであれば、そこには、ガラスを生成できる技術レベルを有する人が住んでいた。という証拠にもなれば、核弾頭によって一帯が核エネルギーに晒され、その地帯の岩石が急激に溶け急激に冷えてできたガラスである。という見解にもつなげることもできる。



または、発信機のように、モノそのものが直接メッセージを伝えている場合もある。これについては私たちがよく知っているだろう。そう、私たちの身近なところにスマホという、モノそのものが直接メッセージを伝えている。という言葉を体現した存在があるじゃないか。



これらのように、やはりモノというものは、何かしらのメッセージを発しているものであるのだ。




それを踏まえ、今現在、『田原鎮守府』には重要なモノが2つある。



1つは、【隼鷹】が殺害した整備士の死体である。

これが第三者に発見されると、警察などの別組織の介入を許してしまう…。【隼鷹】は、それを未然に防ぐために、死体を海に捨てたのだが、彼女の思惑通りには事は運ばれず、作業着が浮き輪代わりとなって、死体が浮き上がってきてしまっているのだった。しかし、今はまだ、辺りは暗く、死体が発見される確率は低い。



2つ目は、拿捕した【戦艦型深海棲艦】である。

以前に行われた出撃において、【深海棲艦 艦載機】は【深海棲艦 空母】の命令を常に受け続けなければ、飛行能力を失ってしまうということが証明されたわけだが、見方を考えると、【深海棲艦】は【深海棲艦】同士で意思疎通ができるのではないか、その可能性を否定することはできない。【英華】はそれを恐れ、電波を通さない程に厚みのあるコンクリートに囲まれた牢獄に、【戦艦型深海棲艦】を投獄したわけだったのだが、【榛名】がその牢獄を破壊してしまった。



この2つのモノがそれぞれ原因となり、その後重大な事件を引き起こす事になってしまったのだ。






榛名「あら、【戦艦】さん…。眠っているのね?せっかく、ここから出してあげようと思ったのに…、このままだとまた牢獄行きですよ?それがご希望なら、そのままおねんねしていてくださいね」



ル級「…ダレ?」



榛名「あら?あなた話せたの?というか起きていたのね?」



ル級「…」



榛名「まぁいいです…私は忙しいの。さようなら」



ル級「マテェッッ!!!」



榛名「ッ!」




発砲。




【榛名】完全に油断しきっていた。なぜなら、【英華】によって【戦艦ル級】の艤装は、すべて引き剥がされていたからだ。【榛名】はその事実を知っていた。現に、牢獄を破壊した時点では、何一つ取り付けれていなかった。だが、【戦艦ル級】は発砲した。だが、この発砲による死傷者は誰一人としてでなかった。なぜなら、【戦艦ル級】は誰かを撃ったのではなく、天井に撃ち込んだからだ。




榛名「…へぇ、それも【深海棲艦】の特性なのですね?俗説で聞いたことはありますが、まさかそれが事実だったなんて、今初めて知りました!!榛名…感激です!」




さて、【榛名】が言った【深海棲艦】の特性とはなにか。



ある日、鎮守府近海を哨戒していた、とある艦隊から『【深海棲艦】が突如変異した』との報告が入ってきたそうだ。【深海棲艦】についての情報が乏しかった当時、その報告を聞いた、その艦隊の司令官は『見間違いではないのか?』と考えたが、一応と思い上層部へ報告書を提出した。もちろん、上層部もそんな情報を鵜呑みにするはずはなく、『ロマンある冗談』として流されてしまった。

しかし、【人型深海棲艦】の出現を期に、上層部も『【深海棲艦】の変異説』に対して、『ロマンある冗談』とは考えなくなり、本格的な研究が始まろうとしていた。これが、【榛名】が言っていた俗説と、その真相である。



榛名「(どういう理屈からは解らないけれど、恐らく"環境"によって身体を変化させられるようね…。まさか、腕そのものを砲身に変化させるなんて思っていなかったけれど、今まで、それができなかったのは、この『対艦娘障壁』の影響…?)…それにしても、なんで榛名を狙わず、天井を撃ったのでしょう?威嚇ですか?」



ル級「ニガサナイ…ニガサナイ…」



榛名「えっと…『逃がさない』?逃がして差し上げようとしたのは、榛名なんですけどねぇ…。やっぱりそこらへんの知性はないみたいですね。ただ…、でも、今はあなたと戦う予定は、榛名にはないんです。あなたには構っていられないので、これでも喰らってください!」



ル級「ウァ??!」



榛名「ちょっとキツめの催涙ガスです。ここは地下で狭い空間ですからねぇ…。多分、少し苦しいかもしれません」



ル級「マテッ」



榛名「嫌です。さようなら」




それにしても、早くここから立ち去らないと、榛名…見つかっちゃいますね。



まったく、せっかく音を最小限にまで抑えて、壁を爆破したというのに、わざわざ天井をぶっ放してくれちゃって…。目立ってしまう、…バレちゃうじゃないですか!



バレちゃう?




警備員『緊急事態!地下牢獄にて火災発生!原因は不明!天井の崩落も確認されているので、消火の際には細心の注意を払う事!』



榛名「やっぱり、気づかれてしまって…、あ!」



消火隊員a「ガスが充満しているそうだ!総員、ガスマスクを装着してくように!」



消火隊員b「放水準備整いました!」



消火隊員a「よし!行くぞ!!」



…。



榛名「…危なかったですね。一歩間違えれば見つかるところでした。それにしても、いま突入したら…」




「うわぁああぁあぁあああぁあああ」




榛名「まぁ、【深海棲艦】がいるんだから、そうなりますよねぇ。榛名は何も聞いてません、聞いてません」






警備員『消火部隊より報告!?鎮守府内にて【深海棲艦】が侵入!ただちに【艦娘】は出動するように!!』






電「え?どういうことなのです?!!」



雷「どうもこうも、敵が侵入してたのよ!行くわよ!」



整備士C「嘘だろう?!いまこの鎮守府に、艦娘なんて6人しかいないというのに?!!」



最上「裕太さん!ボクの艤装はどこに保管されてるの?」



整備士B「艤装は全て倉庫に保管してあります!」



最上「ありがとう!それにしても…」




現在、『田原鎮守府』には、ボクを含め艦娘が15人所属している。だけど、今日は主力艦隊の6人に、秘書の【大淀】さんが、名古屋に行ってしまってここにはいないし、報告したところで、すぐに戻ってこられる距離じゃない!それに加え、妊婦である【隼鷹】さんには戦わせられないし、【榛名】さんは昏睡状態に陥ってしまっている…。だから、動けるのは6人しかいない。



鎮守府内に【深海棲艦】がいたということは、まだ他にも潜んでいる可能性の高い…。なぜなら、【深海棲艦】は常に群れをなしているからだ。ボクたち6人で対処しきれるだろうか…。



それにしても、どうやって【深海棲艦】が侵入することができたのだろう…。




突然の事に、多くの艦娘と従業員の思考は混沌に極まっていた。ある者は自身の身を案じどこへ逃亡しようかと悩み、ある者はこれは夢だと信じず現実から目を逸らしていた。【最上】も例外ではなく、脚は倉庫の方へ向かっていたが、戦意は全くと言っていい程存在していなかった。【深海棲艦】という未知の生命体が突如、なんの前触れもなく、鎮守府内に発生したのだ。恐怖に感じない人間などいるものだろうか?そのため、こうなってしまうのも無理もないが、しかし、今考えるべきは『【深海棲艦】がどこから侵入したか』ではなく『【深海棲艦】による被害を如何に抑えるか』である。




劈くような爆音が響き渡り、コンクリートの塊とガラス、火の粉が鎮守府のから放たれた。




紅く染まった鎮守府…。




そこから出てきたのは、当たり前だが、【深海棲艦】である【戦艦 ル級】である。



この時、【最上】をふくめ大多数の艦娘は、敵がなんなのかを理解していなかった。いや、【電】を除く全ての艦娘が…だ。



【電】は【戦艦 ル級】がなぜ鎮守府にいるのか、それを嫌と言うほど理解できている。



拿捕し、鎮守府に【深海棲艦】招いたのは、紛れもなく、【電】を含めた第一艦隊だったのだから。




電「あ…あぁ、また…。また…なにも」




かつて、『田原鎮守府』についての情報を何一つ持ち合わせていなかった、それ以前に、11年の人生しか歩んでいなくて、艦娘となってから間もない、世の中に関して全く無知な【電】には、【英治】による洗脳・調教の実態に対して、何もできずにいたのは致し方ない。これは誰の目から見ても、そうだと思うだろう。『何もできなくとも仕方がない』状況にいた。だから致し方ない。これが【電】にとっての心の支えであった。



だが、今回は違う。



『田原鎮守府』に【深海棲艦】が存在していることは知っていた。なぜ鎮守府にいるのかという理由も知っていた。なぜなら、拿捕したのは自身を含めた第一艦隊なのだから。ここまでの情報を知っておいて、【電】は何もすることができなかった。もし、自身が何か行動をしていれば、たった今、目の前で瓦礫に押し潰された人も、なんの問題もなく平和に過ごせていたのだろう。



【電】は0.1秒というこの一瞬の時間を、永遠とも思える程長い時間を過ごしていた。懺悔、後悔、絶望、憤怒…様々な感情や思考を巡らせていたのだ。




最上「艦娘…?!違う…【人型】だ??!!」



雷「最上さん!倉庫の鍵が開いたわ!」



最上「わかった!」



雷「あれ、電は?」



最上「え…?確かに一緒に来たはず…」



雷「まさか…途中で?!探してくる!!」



最上「まって雷ちゃん!そのままじゃ危険だ!艤装をつけなきゃ!!」



雷「それじゃあダメよ!動きにくくなっちゃうわ!」




確かに、【雷】ちゃんの様な駆逐艦だと、艤装の総重量は60kgと、お世辞にも軽い代物とは言えない。例え、投薬により身体能力が著しく上昇しているボクたち艦娘といえど、やっぱりその艤装の重さ故に、動きに制限が出てしまい、陸上での運動には向いていない。



ただ、そうだとしても、【深海棲艦】…それも未知の【人型】が相手なのだから、それ相応の装備で挑まなければ、かすり傷程度でも致命傷を負いかねない。




最上「ダメだよ。もしもの事があったとしても、君までやられてしまっては意味がない…。電ちゃんを助ける意味でも、艤装はつけるべきだよ!」



雷「っ…。わ、わかったわ」



最上「うん!それじゃあ電ちゃんは頼んだよ!できるだけボクが【人型】を引きつけておくから、その間に、治療…避難させておいて!」



雷「わかったわ!!任せておいて!」




倉庫の構造は、縦に長く、1階には、広々とした空間が前方に広がっており、後方には整備した偽装や兵装、その他の備品が保管されている物品棚が縦4台横5台という配列で置かれている。




最上「よし、ボクのはあった!じゃあ…雷ちゃんの艤装は、ここにはないみたいだから…奥かな?」



雷「…」



最上「雷ちゃん…?」



雷「ま、間宮さん!!間宮さん起きて!間宮さん!!」



最上「え?!」




何がなんだかよくわからず、何も考えず、とりあえず、ボクは【雷】ちゃんの元へ足を運んだ。



そこは信じられない光景だった。【間宮】さんが腕から血を流し倒れていた。【雷】ちゃんに揺さぶられながらも、何も反応がないようだった。嫌な感じがした。ボクはすぐさま近寄った。幸い、息はあり、死んではいなかった。しかし、出血量が尋常じゃない…。服の一部を破り、すぐさま止血を行った。



一体いつからここに倒れていたのだろうか。そもそも、確か【隼鷹】さん曰く『体調不良で医務室で安静にしている』んじゃなかったっけ?まさか、医務室にも【深海棲艦】が現れ、【間宮】さんはそれから逃げてきたのでは…?いや、それは絶対にない。なぜなら、倉庫の鍵は外側から閉められていたのだから…。まさか、【隼鷹】さんが嘘を…?



雷「最上さん…」



最上「何がなんだか分からない…。と、とりあえずここから出ようっ…」




…おかしい。



何がおかしいって、この鎮守府でいま戦える艦娘は6人いるはずだというのに、未だボク達の他に、この倉庫に到着している艦娘がいないのだから。




最上「…まさか、みんなやられたわけじゃないよね?」



雷「…あ、千代田さん」



最上「良かった…良かった…」




ボクは安堵した。いや、安堵できる状況下にいるわけではないけれど、それでも自分たちの他にも艦娘が生き延びていた事に安堵するしかなかった。勝手に殺すなと言われそうだけど…。



彼女は【千代田】と呼ばれていて、つい最近、この鎮守府にやってきた艦娘だ。なんでも、ここの提督が『豊橋鎮守府』の提督に圧力をかけて、一航戦の人たちと一緒に連れてきたらしい…。らしいというのも、一航戦の人たちとは別の日に着任していたらしく、どうも遠征に出ていたボクと入れ違いで着任したらしい。通りでつい最近まで気付かなかったわけだ…。




雷「千代田さん!艦載機で電を探してほしいの!」



千代田「え、一緒じゃなかったの?」



雷「途中ではぐれちゃって…」



千代田「わかったわ!見つけ次第すぐに連絡するから、まずは一旦、ここから離れるべきだわ!」



最上「ボクは、間宮さんを背負って、近くの雑木林に逃げ込むから、千代田さんと雷ちゃんもボクについてきて!」



雷「雑木林…?」





建物は崩壊するかもしれない、そして火が迫ってくる。だからといって海に出ると、かっこうの的になってしまうので、出ることはできない。もはや、ここら一帯には逃げる場所など、存在していないのかもしれない。


そんな状況下で、ここにいる全員の身を守るためには、遠くに逃げるか、敵に見つかりにくい場所へ逃げるの2択のみだろう。ならば、なぜ【最上】は雑木林へ逃げ込むことを選択したのか。答えは至極簡単で、意識のない怪我人を連れて複数人で移動するとなると、目立つし、速度が遅い。ならば、それを隠すために、雑木林の中へ入ってしまえば、相手からは姿が見えなくなり、構造も複雑なので、追跡は困難を極めるだろう。




千代田「わかったわ、とりあえず、【深海棲艦】は海の方向へ誘導してみるわ!少しは時間稼ぎになるでしょう。できればそのまま帰ってくれればいいんだけど…。」



間宮「う…うぅ、あ…」



雷「間宮さん!?大丈夫?ねぇ!!間宮さん!!」



間宮「い、雷ちゃん…?」



雷「大丈夫?痛くない?ここから離脱するから、私に任せて!」



間宮「離脱…、み、みんな早く逃げて!?ここに【深海棲艦】が来て…??隼鷹さんがそれを引き寄せて??くるから???」



最上「…隼鷹」




やっぱり、【隼鷹】さんが今回の事件の発端だったのか?!でも、どうやって【深海棲艦】を、誰にも見られずに鎮守府に侵入させたのだろう…。まるで、元から鎮守府にいたかのよう…。いや!元から鎮守府に【深海棲艦】は存在していた!?そもそも、今回はどこから始まったんだっけ??そうだ、地下牢で起きた火災からこの事件が始まったんだ!!でも、なぜ??!



雷「隼鷹さん!?え、そんな…??」



最上「多分それだと思う…。それでも、まずここから出ることが先だよ!」



千代田「今です!行きましょう!」





それが責任だから



仕方がないじゃない、みんなとの思い出もあるけど、それでも彼への恩と比べたら雲泥の差なのよ。でも、恩と言っても…まさかここまで被害が大きくなってしまえば、彼女たちに対して何も思わないわけがない。



榛名「だ、なんて…。思っていませんよねー?隼鷹さん?」



隼鷹「ん?あたしが英治を裏切るとでも思ったわけ?そんなことがあるわけないことくらい、アンタだってわかってんだろ」



榛名「えぇ、嫌というほど知っていますよ?それでも、私達の中で、最も彼女たちと関わって暮らしてきた期間が長いあなたなら、ありえない話ではないのですよ」



隼鷹「おいおいー、信じてくれよ〜」



榛名「信じているからこそですよ。今この段階であなたに裏切られては、今までの計画が破綻しますからねぇ…。もしも裏切るようであればぶっ殺して差し上げます」



隼鷹「ちっとも信用されてねぇなぁ…」



榛名「…まぁいいです。私はそろそろ宿毛に向かいます。あなたも事が終わり次第帰還してくださいね」



隼鷹「わかったよ。じゃあな」




…なんてね。あたしは昔から予想外のことをしでかすって、お決まりのことじゃない。悪いねぇ…【榛名】、あんたの推測はかなり正しいよ。まぁ、残念だけど、知っていたところで、あんたにはどうすることもできないさ。



隼鷹「さて、あたしもそろそろ動こうかなー」



普段の田原鎮守府は、まるで誰一人としていないかと思ってしまうほど静かで、その中で時折聞こえる子供の声や鳥のさえずりによって、どこか幻想的な世界と思える、あたしにとってはとても過ごしやすい場所だった。



それも今じゃ、燃え盛り、肉塊が飛び散っている地獄と化したわけだが…。これ以上の惨劇にならないよう、【英華】が帰ってくるまで、現状維持しておこうだなんて思ってしまった。現段階でも十分にアウトなんだが、それでも全滅はしていない。生き残っている人だけでも救ってあげたいと、そう思ったんだ。



まずは、【英華】に報告しなきゃ…。



『おい!早く戻ってこいって!!鎮守府がヤバイんだって!』



ま、こんな感じだろうなぁ。



「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」



隼鷹「うーん?え、あぁ??!は?え、何してんのあの娘???!!」






ごめんなさい。電がちゃんとしていれば、報告していれば、こんなことにはならなかったのです。そう、電の責任。責任を負わなきゃいけないのは、どこの誰でもない電自身なのです。だからすぐに、いますぐに、責任を負わなくちゃ…。




ル級「ア?アァ知ッテルゾ?見タコトアルナト思エバ、オマエアノ時他奴ラト一緒ニイタ子供ジャナイカ…。ドウシタ?迷子カ?」



電「…」



隼鷹「おぉ?これは面白いもんが見れそうだなぁ」




その場にいた【電】と【隼鷹】は【ル級】の変化に気づき驚愕した。


【ル級】は拿捕された当初まで、もっと言えば、【榛名】によって脱獄した時まで、まるで語彙力が無かった。いや、語彙力が無いというよりかは、意志が無いかのように、殺意と怨念を込めたセリフを淡々と吐くだけのbotでしかなかった。


しかし、今は違う。【ル級】の話言語は、少し拙くも以前のように淡々としたものではなく、多様な感情を表現するかのように、まるで人間が扱うようなモノだった。



ここであたしは予想した。ある俗説を思い返してみよう。


『人型深海棲艦は人間を人柱として活用し造成されている』


まるで『レジスタンス』みたいな話だけれど、何も不可能な話ではない。なぜなら、人体を改造し強化するというシステムが今現在採用されているからだ。それこそ、あたし達【艦娘】がそれに当たる。


ただ、あたしはその俗説を信じようとはしなかった。それは何故か?実に簡単で、それほどまでに高度な技術を持つ知的生命体は、あたし達人類の他にいないと考えているからだ。【深海棲艦】といえど、生物の進化の過程で生まれた、新しい種でしかないと考えている。


そして、たった今、あたしの考えが最も答えに近いのではないかと、確信しつつあった。


だが同時に、不可解な点が増えた。


確信に至るにあたり、あたしは【ル級】の知能が急激に向上し、人間に近づいた。ではいつからそうなったか、それは鎮守府の人間を喰らった時からではないかと仮定し、考察した。そこで至った答えが、【深海棲艦】は摂取した生物のDNAを分析吸収し、新たな個体として変態していく生物である。よって【人型】は人間を人柱として造成されるものではなく、人間を捕食し変態していった個体なのだろう。


不明点は、今の説の逆説になるが、何故そんなにも早く変態することが可能なのかということ。適応スピードが早すぎる。【ル級】を見ればわかる通り、人間を捕食したからといって、たった十数分のうちに変化し始めた。


こんなに急激な変態が可能な生命体が、この地球に存在しているのだろうか?


実在はする。


例えば、ウイルスの変異がいい例だ。


ざっくりいうと、従来ならば効いていた抗生物質が、ウイルスが変異して抗生物質が効かなくなる。


では、どうやってウイルスは変異を遂げるのか、その要因はなにか。いくつか説があるが、そのうちの一つである『複数のウイルス混ぜ合わせによる変異』という説を上げよう。


例えば、2種類のウイルスA・Bが同一細胞に感染したとしよう。すると、それぞれのウイルスの遺伝情報が混ぜ合わさり、全く新しい別のウイルスCが発生することがある。こうして誕生したウイルスCは、ウイルスA・B両方の遺伝子を持つことになり、両方の特性を併せ持つウイルスとなる。


ウィルスAが『非常に凶暴な感染力で、人類の受容体に適合しないウイルス』だとして、


ウィルスBは『感染力は非常に弱いが、人類の受容体に適合するウイルス』だとすると、


ウイルスCは『非常に凶暴な感染力を持ち、人類の受容体に適合するウイルス』となる。



これこそ、【深海棲艦】の変態そのものである。人間を捕食し、人間の特性と深海棲艦の特性を併せ持った存在【人型】



もしも、本当に【深海棲艦】がウイルスと同じで、永遠に変異していく存在だとするならば、おそらく人間は【深海棲艦】の変異スピードについてこれず、敗北するかもしれない。




隼鷹「これは、英治に報告しなきゃいけないな…」




電「話せるの…?」



ル級「話ス…?アァ…ソウダナ。オマエラ程度ノ言語ナラ自在二扱エルゾ?」



電「いや、別に話せようが黙っていようが、どうでもいいのです。どうせここで死んじゃうんのですから…。ねぇ、電は責任を取らなきゃいけないのです。あまり抵抗しないでくださいね、時間がかかっちゃうのです。あぁ、恨まないでね。深海棲艦のあなたが悪いんです。あなたが皆を食べなければこんなことせずに済んだのです。自業自得です。あ、自業自得は電でした…。…じゃえ…死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ!!」



ル級「…マルデ狂気ノ沙汰ダナ」



隼鷹「ハハッ(ごもっともだよ深海棲艦。これじゃあまるで、電ちゃんが深海棲艦みたいだぜ)」



電「凶器はあなたなのです…ッ」



ル級「銃口ヲ向ケテイルオマエニハ言ワレタクナイ言葉ナンダガナァ…」



電「あぁッ!もうヤダッッッ!!」




爆音が鳴り響いた。それは、鎮守府だった瓦礫をつつむ業火の音にも勝るもので、近辺の者の耳に容易く入っていった。そして、誰もが気づくのだった。「戦闘が始まった」と…。もちろん、雑木林に隠れ込んだ4人にも伝わった。



最上「…でも、一体誰が?!まさかと思うけど、まさか…電ちゃんじゃないよね?」



雷「そ、それはありえないわよ!だって電はまだ、倉庫にすら着ていなかったじゃない!!」



間宮「…倉庫?確か…あの子は第一艦隊だったのよね…?第一艦隊の兵装は、私達がいた"第3"倉庫ではなく、"第5"倉庫に置かれているんじゃないの?」



最上「…?第5倉庫??それは…一体…?」



間宮「あ…、機密情報教えちゃった★あー、第5倉庫というのは、鎮守府館内にある普通の一室なんだけれど、ほら、英華くん…提督さんって勝手に兵装を改造するじゃない?だから、そのことが外部に漏れないように、開かずの扉として閉ざされていたのよ。それが第5倉庫」



最上「…」




何故あなたがそのことを知っているのですか?

そう聞こうとしたが、ボクは口を開くのを我慢した。今ここで聞くべき事ではないから。いや、そもそも今すべき課題は、【間宮】さんから問いただすことではない、現在【人型】と退治しているであろう【電】ちゃんを救い出すことだ。




最上「…たった一体で、ここまでの被害を引き起こす程の火力を持った【深海棲艦】だ。それを駆逐艦一人、それもまだ11才の子供が相手をしているのだから、勝てるはずがないよ。そもそも長く持つわけがない。大事に至る前に救い出してくる!」



雷「待って!最上さんッ!!私も行くわ!!」



最上「駄目だよ!雷ちゃん…残念だけれど君には荷が重過ぎる。できることなら、ここに潜むか、それかもっと遠くへ逃げてほしいんだ!」



雷「それじゃあダメなのよ!違うの!姉妹の私がいくしかないじゃない!!」



最上「…全然意味がわからないよッ?!姉妹だから何?普通に考えて!君がボクと一緒に行くよりも、間宮さんの看護をしていた方が絶対にいいじゃないか!それに、君の足の速さじゃ僕の足手まといになるだけだ!」



雷「…」



間宮「最上さん!…そこまで言わなくとも良かったじゃないの!」



最上「ごめんなさい、でもこれしか納得させる言葉が見当たらない…」



雷「良いわよ!私が一人で行けばいいじゃない!!」



最上「待って!!雷ちゃん?!!」



【雷】ちゃんは鎮守府の方へ向かって走り去ってしまった…。

どうして言うことを聞いてくれない…。君が行ったところで、状況は変わるはずないというのに…。



その時だった。

上空から辺りの草木を揺らし、耳に響くような騒音を響かせたヘリコプターの姿が見えたのは。





司令官の顔が見たい



赤く染まり、黒い煙を排出し続けている鎮守府を見て、最も万全であったはずの計画が、破綻していたことを確信した。


提督「クッ…なぜこんなことになった。外部からの侵入などありえない。内側からも破壊できない。そもそも【人型】の活動システムを抑制する成分を染み込ませた空間に入れておいたんだ…。自力で脱出できるはずがない。いや、まさか内部の犯行だというのか?いや、まさか…」



元帥「…『【人型深海棲艦】を拿捕した』と聞かされて、いざ蓋を開けてみるとこのザマか…」



提督「申し訳ございません」



元帥「謝罪はあとだ。まずはあの【深海棲艦】を無力化する」



大淀「て、提督!?あれはまさか…電ちゃんじゃないですよね?」



提督「それは本当ですか?」



大淀が指をさした方向に目を向けた。

僕は目を疑った。



提督「…元帥!ここで降ろさせていただきたい!」



元帥「なッ?!お前さん死ぬ気か!!」



提督「…ここで言うのはなんですが、この事態は想定の範囲内です。奴を無力化するすべはいくつかあります」



元帥「わかった、少し離れたところでロープを降ろす。それだけは守ってもらうぞ」



提督「ありがとうございます」



窓から【深海棲艦】を観察していると、ふと瓦礫の隅にいる誰かを目撃した。黒煙で視界が曇っていて特定までは至らなかったが、たしかにそこに誰かがいた。




元帥「いいぞ英華」



提督「…大淀さん、もしもの事があれば僕の全権はあなたに移譲する事になっています。その時はよろしくお願い致しますね?」



大淀「は?え、提督?!!待ってください!どういうことですか!提督!!」




僕は【大淀】の声を振り払い、地上へと降りた。



一見、【電】を見て焦ってヘリから降りたかのように思えるが、実際、さっきも言ったとおり、この程度のことは想定済みだ。どうせ、【英治】か【比叡】がシステムにハッキングして侵入し、【深海棲艦】を収監していた牢屋を爆破でもしたのだろう。



だが、そうなっても良いようにと、僕は【深海棲艦】の活動を抑制する薬品と兵器を開発しておいた。出撃中の【艦娘】たちならいざしれず、僕自身がこれらを使用すなんて、余程、最悪な状況下に置かれた場合でなければ、ないと思っていたけれど、まさか、その最悪な状況が待っていたとは、過去の僕は考えていただろうか…。しかし、ここでうだうだ言っていても仕方がない。今すぐに奴を止めるまでだ。




電「うぅ…」



ル級「ナンダ?モウ終ワリカ…?ウーン、マァ良イ。今楽ニシテヤロウッ…ウガァ?!!」




提督「なんですか?『まだセリフの途中だったのに、なんで邪魔をしたんだ、このクズ野郎』みたいな顔は?僕からしてみれば、『僕の鎮守府で何しれくれてんだクズ野郎』ですよ」



ル級「…ナッ何ヲシタァッ??!!」



提督「痛いでしょう?それはあなた達、深海棲艦の生体活動を、停止させる薬品を練りこませた銃弾ですよ。人型になってから皮膚が急激に柔らかくなりましたからねぇ。マグナム以下の威力でも容易に撃ち抜くことができる。まぁ耐久性は別ですが、それはさておき…。電ちゃん?ここで何をしているのですか?」



電「…ごめんなさい。電がちゃんとしていればこんなことには」



提督「いやいや、君のせいじゃないですよ。どう考えても、全責任は僕にあります。と言っても、真面目な電ちゃんには伝わらないと思いますが、今はそれでいいです。ですが、ここに滞在し続けるようなことはせずに、さっさと何処かへ避難していてください」



電「…邪魔?電は邪魔なのです?」



提督「えぇ、非常に邪魔です。幼女を背負ったまま時間稼ぎするには、どうしても僕には荷が重過ぎるのです」



電「…やだよ。ヤダヤダヤダヤダヤダヤダぁ!!またそうやって電を仲間外れにさせて!そしたらまた悪くなるもん!もうヤダッ!!!」



提督「………………」




この子は少し神経質なのかもしれない。こんな状態に陥った事が過去にもあった。僕がまだこの鎮守府に赴任してから間もなかった頃。軟禁されていたこの子を、【大淀】が救出・保護した、その時だ。その時と同じ状態…。まぁこんな状況下にいたら誰だってそうなるだろうけど。仕方がない。【金剛】たちが到着するまで、この場を抑えておこうと考えていたけれど、ここは【電】を連れて避難したほうが良さそうだな。な?




電「ヒィッ??!?」



隼鷹「電相手にも殺気を放ってどうするんだよ。まぁ、つまり言えば、あいつなりに焦っている状況なんだろうけどねぇ」



提督「電には、今から僕と共に戦線から離脱してもらいます。いいですね?まぁ拒否権はないんですけれど」



電「いやぁ!!」



提督「嫌じゃないですよ」



そう言って僕は腰についていた閃光手榴弾を【ル級】に向け放った。


一瞬で視界をホワイトアウトさせる程の光が、僕と【電】、【ル級】を含む周囲を包んだ。



ル級「アァァアアアァッァアアアアアアアッ目ガァアァア????!!!」



電「きゃぁぁああああああ!!??何??見えないよ??司令官??!???提督???どこ??見えないよぉおああ????」



提督「シッ!大丈夫です。僕は今電ちゃんを背負っています。安心して、冷静になって。なるべく声を出さないようにしてください」



電「ーーーッッ」



提督「いいですよ。その状態を保っていてください。もう少しの辛抱です」



辛抱か…。と言っても、もうこれ以上の辛抱をさせること自体酷な状況になってしまった。見上げれば夜空を覆う赤い黒煙。見渡せば業火と瓦礫、そして肉片。あの【人型深海棲艦】が派手に暴れていたということが、はっきり形として残されている。



さて、これからどうしようか…。距離はだいぶ稼げただろう。しかし、第一艦隊がここに戻ってくるまでに、まだ時間がかかるだろうから…。【電】を連れて逃げ回ると言っても、やはり彼女らが到着するまでに、どうにかして現状を維持するほかないな。





雷「電ーッ!どこなの?返事して!!!」



提督「…!雷?雷ちゃん?なぜ君がここに?」



雷「なッ?し、司令??!電は…無事なのよね?」



提督「えぇ、無事…ですよ。少し混乱しているようですが、"身体"に異常はありません」



雷「良かった…。いや、良くないのよ!!深海棲艦が!あっあっあれ!人型がッ?!鎮守府を襲って!それで、みんな!!」



提督「説明は不要ですよ。状況はすでに把握しました。僕はこれから奴を止めに行くので、雷ちゃんは電ちゃんの補助をお願いします」



雷「だめよ!司令じゃ何もできないわ!」



電「そうなのです…」



雷「電!!意識が戻ったのね?さぁ!一緒に逃げましょう?」



電「逃げる…?駄目なのです。電が責任を持って深海棲艦を殺さなきゃいけないのです」



雷「え?」



電「そもそも…司令官があれを招き入れなきゃ良かったのです!!人殺し!!人でなし!!司令官がいなければこんな事には????!!」



雷「何言ってんのよ電!!司令は私たちの恩人じゃない!!」



電「その恩人が、深海棲艦を鎮守府に連れ込んだのです!!電は反対だったのに」



雷「え?嘘…?」



提督「その話は本当ですよ。僕が人型を拿捕し、監禁していました」



雷「嘘…嘘でしょ?ははッそれは良いわね。気に入ったわそのジョーク!…嘘でしょう?」



提督「事実ですよ」



雷「…」



電「もう嫌だよ…嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だぁああ」



雷「電!!大丈夫よ!しっかりして…!!司令…もう。どこか見えないところに行ってくれないかしら…」



提督「えぇ、わかりました」



雷「…何も言わないの?謝罪か何かあるでしょう?待ちなさいよ!」



…なぜ僕がこいつに謝罪しなければいけないんだ?


なぜ謝罪しないんだ?僕は…。


謝罪する必要がないからだよ。




電「司令官…なんで笑ってるの?」



雷「電!もう放っておきましょう!!もう、二度と司令官の顔なんて見たくもない!」





痕跡



霧島「お姉様…これは、まさか」



金剛「えぇ、あなたが危惧していたことが、そのまま実現されたようデスネ」



霧島「クッ…!榛名は無事でしょうか。みなさん…どうかご無事で…」



『どうかご無事で』か。

この状況で誰かが生き残っていると思える【霧島】に、少しだけ嫉妬しちゃうネ。鎮守府を覆い尽くす炎の中じゃ…【榛名】も生きているわけないデショウ。そもそも死体も残ってるか怪しいのだけれど…。



…さて、この事態は、一体誰の手によって引き起こされたんだろうか。【英華】が予測していた、外部からの攻撃を受けて…というわけではないデショウネ…。だとすると、考えられるのは2つ。1つは『敵が自力で脱出した』というケース。もう1つは『内部の者による犯行』であるケース。しかし、前者に関しては、まずありえない。何故なら、【人型】を収監していた部屋には、深海棲艦然り艦娘の生体活動を抑制する薬品が充満しているのだから、自力で逃げ出すことはできない。となると、残るは『内部の者による犯行』のみだけど…。












後書き

にしてもですね、就職試験が近づいて、なかなか時間がありません。いやぁ、影分身でも使えたらな。SPIくそ

随時更新です。


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