PM6：30頃　麻子宅にて

沙織（着信履歴、ついさっきだ。なんだろう？）

沙織「取りあえず電話してみよ」

ﾌﾟﾙﾙﾙﾙ

みほ『あ、もしもし沙織さん？』

沙織「ハロハロみぽりん、電話あったみたいだけど」

沙織「ごめんね、ちょうどシャワー浴びてて出られなかったよ～」

みほ『ううん、大丈夫』

沙織「それで、どうかしたの？」

みほ『うん、ちょっと相談したいことがあって』

沙織「お、相談？　なになに、もしかして恋愛関係かな！！」

沙織「もうなんでも聞いてよ～！！　この沙織さんに任せなさい！！」

沙織「なーんて、みぽりんから相談ってことは戦車道についてとか？」

みほ『え？　いや、えっと・・・恋愛のほう、です』

沙織「！？」

沙織（恋愛！？　好きな人ができたとか！？）

沙織「それで！？　相手はどんな人なの！？」

沙織「やっぱりクールな眼鏡男子！？　それともワイルド系なスポーツマン！？」

みほ『えぇっと・・・』

沙織（あれ？　なんか歯切れが悪い感じ・・・もしかして！！）

沙織「告白されたほうだね！？　まぁみぽりん可愛いもんね！！」

沙織「戦車乗ってるときとか、キリッとしてて。でも普段はぽわっとしてて、そのギャップが良いっていうか！！」

みほ『あの・・・告白されたのは、そうなんだけどね』

沙織「うんうん！！」

みほ『その・・・相手が女の子なんだ』

沙織（・・・あ～、なるほど・・・）

沙織（相談って言ってたもんね）

沙織「そうなんだ！！　確かに、同性からみてもカッコいいからね、みぽりん！！」

みほ『ん？　・・・あれ？　あの、沙織さん？』

沙織「なーに？」

みほ『うん、あのね、わたしも女で。それで・・・』

沙織「あぁ！！　同性ってこと？　でもうち女子高だし、そんなに珍しくないよ～」

みほ『え・・・ほんと？』

沙織「うん、ほんとー」

みほ『・・・』

沙織「あれ？　みぽりんあんま聞いたことない？」

みほ『・・・なにを？』

沙織「ほら、華とか桃ちゃん先輩とか、レオポンさんとこのホシノさんなんか」

沙織「結構モテるみたいだよ、特に下級生のコから」

みほ『・・・』

沙織「あれ、みぽりん？」

みほ『ご、ゴメン沙織さん、ちょっと落ち着かせて・・・』

沙織「う、うん・・・」

みほ『ふー、沙織さん、ゴメンね』

沙織「全然！！　大丈夫だよ」

沙織「それで、告白されたんだよね？」

みほ『うん』

沙織「ちなみに最初の相談っていうのは、告白の返事について？」

沙織「それとも、さっきの様子から察するに相手が女の子ってことについて？」

みほ『えっと、両方かな』

みほ『沙織さんの前にね、お姉ちゃんにも相談したんだ』

沙織（みぽりんのお姉ちゃんって・・・まほさんに！？）

沙織「そうなんだ・・・それでなんて言われたの？」

みほ『うん、お姉ちゃんは同性ってことにも驚いてて、それで経緯というかを話したらね』

みほ『相手の好意を同性だからって無碍にするのも、かといって付き合うかどうかは』

みほ『今まで意識してこなかった相手だし考えるのは難しい』

みほ『だからこれから少しずつ意識してみればいいんじゃないか？　って』

みほ『要約するとこんな感じかな』

沙織「う～ん・・・つまりお友達から始めましょう的な感じ？」

みほ『まぁ、ニュアンスとしては・・・』

沙織「むむむ・・・」

沙織「相手のコはどうなんだろ？」

みほ『えっ？』

沙織「相手のコ、女の子同士ってのは変だと思ってるのかな？」

みほ『変だと思ってるはず・・・たぶんだけど』

沙織「そうだよねぇ・・・」

沙織「そしたらお友達からってのは難しそう」

沙織「それどころか、これまで通りの関係も厳しいかな」

みほ『ど、どうして！？』

沙織「だってさ、相手のコからしたら、当然みぽりんも同じように」

沙織「女の子同士の恋愛は変だって思ってる、そう考えてるはずでしょ」

沙織「そうしたら」

沙織「自分は絶対変な子だと思われた」

沙織「気持ち悪いと思われた」

沙織「そんな風に考えちゃうんじゃないかな？」

みほ『・・・』

沙織「みぽりんは・・・」

みほ『・・・うん』

沙織「みぽりんは告白されて、どう思った？」

みほ『まず・・・女の子に告白されたってことにビックリした』

沙織「うん」

みほ『・・・』

沙織「みぽりん？」

みほ『違う、そうじゃないよね』

沙織「？」

みほ『わたしね、嫌だ、とか』

みほ『気持ち悪い、とか』

みほ『そんな風には思わなかったよ』

みほ『むしろ・・・少し嬉しかった』

沙織「そっか・・・」

沙織（良かった・・・）

沙織「じゃあ告白の返事はオッケーなの？」

みほ『そ、それは・・・まだわかんないというか』/////

みほ『優花・・・相手のコのこと、今までそういう風に意識したこともなかったし』/////

沙織「うんうん、わかるよその気持ち！！」

みほ『ふぇ？』

沙織「でもね、さっきも言った通り、ちゃんと告白の返事をしてあげなきゃ」

沙織「今まで通りの関係なんてもちろん難しいと思うし」

沙織「何より、相手のコがすごく、その、なんというか」

沙織「苦しい時間が長くなるっていうか・・・」

みほ『・・・沙織さん？』

沙織「みぽりん！！」

みほ『は、ハイ！！』

沙織「あたしはね、どんな結果になっても、二人のことが大好きだからね！！」

沙織「だから、ちゃんとゆかりんの気持ちと、あと自分の気持ちと向き合って」

沙織「後悔しない答えを出して！！」

みほ『！！』

みほ『わかった！！』

沙織「うん！！　いい返事！！」

沙織「あと、あんまり時間かけるのも良くないよ！！」

みほ『そう、だよね』

沙織「だからって焦るのも良くないけどさ」

みほ『うん、でもなるべく早く返事をしてあげたいと思ってる』

沙織「そうだね・・・」

みほ『ありがとう沙織さん』

みほ『なんだかいろいろ勇気がでてきた！！』

沙織「ちょっとでも助けになれたみたいで良かったよ」

みほ『本当にありがとう』

みほ『自分の気持ちともちゃんと向き合って、しっかり返事をしようと思う』

沙織「頑張って、みぽりん」

みほ『うん！！　それじゃあまたあした』

沙織「またあした、おやすみ」

みほ『おやすみなさい』

ﾋﾟｯ ﾌﾟｰ ﾌﾟｰ ﾌﾟｰ

沙織「ふぅ・・・」

沙織（それにしても・・・何度かゆかりんから相談されてたけど）

～～～回想～～～

沙織「みぽりんのことが？」

優花里「はい、お慕い申し上げております」

沙織「へ～、まぁみぽりんカッコいいもんね～」

優花里「あの・・・武部殿はどう思いますか？」

沙織「何が？」

優花里「その・・・女性同士での恋愛について・・・」

沙織「あたしはまぁ・・・」

沙織「うち女子高でそういう話も結構耳にするし」

優花里「そうでありますか」

優花里「わたしはあまり聞いたことないですね・・・」

沙織「確かに世間一般的な目線で言えば、物珍しいのかもしんないけどさ」

沙織「人が人を好きになる、そこに性別とかって関係ないと思うよ」

沙織「ゆかりんが好きになった人が、みぽりん、同じ女性だったってだけだよ」

優花里「っっ武部殿～！！」

優花里「そうですよね！！　好きになってしまったものはしょうがないでありますよね！！」

沙織「そうそう！！」

沙織「ところでゆかりん、告白とかはするの？」

優花里「うぐっ、それは・・・」

優花里「それは・・・たぶんないですね」

沙織「え？　あっ、別に今日明日とかそういう訳じゃないよ！！」

優花里「はい・・・それでもやっぱり、迷惑というかそういうのは、かけたくないですから」

沙織「え～！！　みぽりんは告白されても迷惑とか思わないよ！！」

沙織「恋愛も戦車と一緒、前進あるのみだよ！！」

優花里「確かに西住殿はお優しいですからそういう風には思わないかもしれません」

優花里「ですが、これからも一緒に戦車道をやっていくにあたって」

優花里「余計な私情というか、そういうのができてしまうと」

優花里「とてもやり難くなってしまうと思います」

優花里「そうしたら、西住殿だけでなく、チームのみんなにも迷惑をかけてしまうであります」

優花里「そんなことは・・・したくないです」

沙織「ゆかりん・・・」

沙織（っていうか、なんか断られる前提で考えちゃってるし・・・）

沙織（でもまぁ、一般的なことじゃないし、普通はそうかんがえちゃうよね）

沙織「その・・・ゴメンね、勝手なこと言っちゃって」

優花里「あぁ！！　お気になさらないで下さい！！」

優花里「むしろ独り言を聞かれてしまった流れとはいえ」

優花里「いろいろと気持ちを話せて助かりました！！」

優花里「このまま気持ちを抱えてたら、いつか言葉にしてしまいそうで怖かったんです」

沙織「ゆかりん・・・あたしなんかで良ければいつでも相談してね、なんなら愚痴みたいなのでもいいから！！」

優花里「武部殿っ！！　ありがとうございます！！」 ﾍﾟｺ

～～～回想終了～～～

沙織（・・・あの後、何度か相談を受けたけど）

沙織（さっきのみぽりんの様子から察するに、ゆかりんが意を決して告白したって感じじゃなかったな）

沙織（となると、流れというか不意に口をついたというか、そんな感じなのかな）

ｶﾞﾗ　ﾍﾟﾀﾍﾟﾀ

沙織「あ、おかえり麻子」

麻子「あづい～」

沙織「そうだね～、まだ残暑が厳しいね～」

麻子「それにしたって、もう白露も過ぎてるぞ～」

沙織「白露？　まぁお風呂上りだし。ほら扇風機」 ｶﾁｯ

麻子「あ゛～～～～～」

沙織「あははっ」

麻子「そういえば誰かと話してたみたいだが・・・電話か？」

沙織「みぽりんからちょっとね」

麻子「西住さんから・・・なんの話しだ？」

沙織「ん？　なに～、もしかして嫉妬～？」 ﾆﾔﾆﾔ

麻子「ち、違う」////

沙織「ふふっ　話しってのはゆかりんのこと」

麻子「秋山さんの・・・ってことは、なにか進展でもあったのか？」

沙織「う～んと、簡単にいうと、ゆかりんが告白しちゃったみたい」

麻子「おぉ～、ついに・・・」

麻子「だが、しちゃった、ということは」

沙織「うん、みぽりんの様子的に故意な告白って感じじゃないみたい」

麻子「そうか・・・」

麻子「あの２人ならきっと大丈夫だ」

沙織「そうだよね・・・」

麻子「私たちだって色々あったけど今はこうしてるだろ？」 ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ

沙織「んふふ、そうだね！！」

麻子「それに西住さんの答えは、きっと・・・」

沙織「うん！！」

沙織（頑張れ、みぽりん！！）