2016-09-11 20:11:05 更新

概要

大学生3年生の八幡がある日、久しぶりに後輩に再会することから物語は始まります


前書き

今回はほのぼのじゃないです…
ドロッドロのシリアスって訳でもないですが
ちょっと暗い話になる時があります
注意をお願いします






店長「比企谷くん。そろそろあがっていいよ」


八幡「ああ、はい。わかりました。じゃあ着替えてきます」







八幡「ふぅ…疲れた…」






高校卒業した俺は、晴れて大学に入学した


早いもんで今はもう大学3年生になる


昔の俺はびっくりするだろうがバイトも始めた

小さな居酒屋さんだ


アパートから近いからってことでここでバイトをすることにした


なんだかんだ…ちゃんと働いてると思う

最初はオーダー取るのとか緊張で死んでしまうかと思ったけど

今ではだいぶ慣れてきた


頑張ったよ…本当…


マジで働きたくねえけどな。仕方ない。家賃もあるしな



もうわかると思うが今、俺は一人暮らしをしている

今の大学が家から遠いこともあり、これを機にってことで

人生の勉強だとか言って親父が提案してきた


まあおかげで今のアパートからなら大学はすごく近くて助かってるよ






八幡「よし…」




八幡「店長、お疲れ様でした。お先に失礼します」


店長「ああ、うん。お疲れ様」


店長「………うーん。どうしたものか…」


八幡「…どうかしたんですか?」


店長「いや、この子…寝ちゃったみたいでな」


八幡「……」




今日はひたすら料理作ってたから気づかなかったな

女性みたいだが…完全に潰れてるな

かなり飲んだみたいだ




八幡「まあ起こして帰すしかないんじゃないですか。ほら、もう夜も遅いですし」


店長「それがなかなか起きなくてな。それで困ってるんだよ」


八幡「なるほど…」


八幡「ちょっと俺、起こしてみますよ」


店長「すまん。頼むよ」




八幡「あの…すみません…」ユサユサ




??「んん〜」モゾモゾ




八幡「あれ…?」



??「もう飲めないれす〜…むにゃ…」



八幡「うげ…マジか…」


店長「どうかしたか?」


八幡「いえ、なんでも。起きないですね。もうほっときましょう。そうしましょう」


店長「い、いやいやほっとくのはマズイだろう!」




いろは「むにゃ…うへへ…」




八幡「……」


店長「もしかして…知ってる人?」


八幡「…俺の高校の時の後輩ですね…」


店長「おお、そうなのか。なら丁度いい」


八幡「……何が丁度いいんでしょうか」


店長「送ってあげなよ」


八幡「…そうなりますか」


店長「なに、喧嘩でもしてるの?」


八幡「いやそんなことはないですけど会うのは久しぶりなもんで」


店長「ならいいじゃないか。久しぶりに話しでもしなよ」


八幡「酔い潰れてますけどね」


店長「とにかく!しっかりこの子を家に連れて帰るように。これは店長命令だ!」


八幡「ええ…」

















八幡「おいっ…しょ…」


八幡「………?」


八幡「(なんか…思ったより軽いなこいつ…)」


八幡「(よく見たら…昔よりちょっと痩せてるような…?)」


八幡「おい、一色」


いろは「んん〜」


八幡「こいつマジでどんだけ飲んだんだよ…」


八幡「家どこなんだ?教えろ」


いろは「……………あっち」


八幡「あっちか」





返事はしてくれるがこれほとんど意識ないよな

いくらなんでも危なくねえかこれは

無防備すぎんだろ


もし飲んでたのがこいつ1人ではなく

こいつがこの状態になったとして

俺ではなく、そのへんの下心持った男が家に送ってたとしたら…


大学ってそういうことあるみたいだしな…



いやでも確かこいつって女子大に入ったんだったかな




いろは「すぅ…すぅ…ん〜」




てかなんでこんなになるまで飲んだんだ…





八幡「っと………ここか…」





わりと店から近かったな


マンションか…こいつも実家出てたんだな



八幡「何号室だ?」


いろは「……70…3」
















八幡「カギ出せ。カギ」


いろは「ん〜」ゴソゴソ





八幡「開けるぞ」ガチャ




八幡「ほら着いたぞ」


八幡「電気、電気…っと…」パチ








八幡「………え?」





八幡「おいおい…」




俺は電気を点けた瞬間、開いた口が塞がらなかった



八幡「汚すぎだろ…」



ものすごく散らかっていた

足場がないくらいだ

特に服だ

いたるところに投げてある

泥棒でも入ったんじゃないかってほどの散らかりようだ



女子の一人暮らしってこういうもんなのだろうか…


男が見てないとこでは女子はけっこう雑って聞くしな


いやでも一色がっていうのはあんまり想像できないけどなあ





八幡「マジ…っで、こいつ、どこで寝てんだ」


八幡「布団は…あった。これか」


八幡「よいしょっ…と」


ボト


俺は床から目をそらしながらどうにか散らかった服をどけてスペースを作り、布団を敷いて一色を寝かせる


なんで目をそらしているのかというと…

服だけじゃないんだよな…散らかってるの



こいつけっこう派手なの着けてるんだな…



って違う違う。見るな見るな!




八幡「ふぅ…まあこんなもんか」






なんとか一色を布団に寝かせた俺は一息つく


ちゃんと送ったしとっとと帰ろう

ここは目のやり場に困る




八幡「帰ってアニメでも見るか…」


八幡「おい、一色。帰るからな。カギ閉めろよ」


いろは「んぅ〜」


八幡「大丈夫かよこれ…。おいってば」ユサユサ


いろは「いやぁん…」ゴロ


八幡「変な声出すなよ。って…ちょ…」


八幡「(寝返りで服がはだけて…)」


八幡「……無防備すぎだバカ…」




俺は目のやり場に困り、はだけた服をどうにか戻そうとする

だがふとあることに気づき手が止まった





八幡「……っ!?」


八幡「なんだこれ………アザ?」




一色の服がはだけた時にお腹を露出していたのだが

よく見ると肌の一部に青く変色した所があった

これはどうみてもアザだろう

しかもけっこう大きい




八幡「……」




なんでこんなものが…

なんというか…これはまるで誰かに…





いろは「ん、んん〜…ふわぁ…ありぇ…?」


八幡「……!……あ、おっ…起きたか」


いろは「ん〜」ゴシゴシ


八幡「一色、鍵かけとけよ」


いろは「鍵……うん…かけとく…」フラフラ


八幡「ま、待て待て。俺がまだ出てない」


いろは「………」フラフラ
















八幡「…結局ちゃんと挨拶もしてないな…てか俺だってわかってたのかすら怪しいが…。まあいいか。酔ってたし。忘れてるだろどうせ」




八幡「あいつちゃんと鍵閉めたかな…」
















〜 次の日 朝 〜






八幡「うーん……やっぱり一色の家で落としたのか…」





朝、気づいたんだが携帯がなくなっていた

昨日の夜の時点で気づけよ…

まあ電話でもこない限り基本的に携帯とかいじらないからなあ…


バイト先で帰り着替えてた時は確かあったし

一色の家がやっぱり怪しい


仕方ない。もう一度あいつの家に行ってみるか











八幡「…ってことで来てみたんだが」







ギィ…








八幡「開いてるじゃねえか…。あのバカ鍵閉めなかったな…」





やっぱりちゃんと閉めたかどうか外から確認してから帰ればよかった


ずっと鍵開けっぱでその上、インターホン鳴らしても反応がないってことはまだ寝てるなあいつ

無用心すぎるぞ…






八幡「悪いが勝手に入るぞ〜」


八幡「本当に汚ねえなこの部屋…」


いろは「…すぅ…すぅ…」


八幡「やっぱり寝てたか…」


八幡「携帯は……」


八幡「お、あった」




意外にすんなり見つかった

ここで一色の布団を準備していた時に落としたみたいだな




いろは「ん〜〜…ふわぁ…」


八幡「うえ…」




なんてタイミングで起きるんだこいつ





いろは「………」


いろは「………」


いろは「………」


いろは「……………」





いろは「……えっ?」ビクッ





すごい長い沈黙の後、どうやらやっと俺の存在に気づいたみたいだ

てかそんな身体ビクつかせなくても…いやそりゃあ驚くだろうけど

こんな状況だし。てかこれって普通に俺、不法侵入だよな…

一応知り合いとはいえ…ちゃんと説明しないとマズイなこれは








八幡「…久しぶりだな」



会うのは本当に久しぶりだ

……こいつ俺のこと覚えてるよな?覚えてますよね?

忘れられてたら八幡ちょっと泣いちゃうかも




八幡「いっし…




いろは「………ぃや…」




八幡「ん?」


いろは「…いや……いや……」ブルブル


八幡「お、おい。なんだよ」




なぜか一色はこちらを見た瞬間、目を大きく見開き

尋常じゃないほど身体を震わせていた

顔も真っ青だ


明らかに普通じゃない


わかりやすいほどまでの感情の見え方


これは





『恐怖』…?






いろは「いやぁあ!いやぁあああああああああああああああ!な、なんで男の人が!いやぁああああああああああああああああああああああああああああ!!」


八幡「ちょっ…」




一色は突然叫びだした

かなりの震え声だ

逃げるように部屋の隅に行き

頭を抱え、うずくまる


怯えている…?男の人…?どういうことだ?





八幡「いっし、お、一色!おいっ。どうしたんだ!」




いろは「来ないで!来ないで!いや!いや!!ごめんなさい!ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい…」



八幡「……一色…………」




え、俺ってこいつにこんなに嫌われてたの?八幡傷ついちゃう


なんてバカ言ってる場合じゃないなこれは

ただ事ではないことはすぐにわかった


理由はわからないが一色は俺を怖がっている


というかこいつ、さっきから本当に目の前にいるのが俺だとわかってるのか?


とにかくどうにか落ち着かせないと





八幡「一色!落ち着け!俺だ!よく見ろ!」


いろは「いやぁ!いやぁ!ごめんなさいごめんなさいもうやめてもうやめてください許してください!!」




八幡「一色ッ!!!!」




少し無理矢理だったが一色の顔を強引にこちらに向けさせる

表情は明らかに怯えていた

こんな顔した一色なんて初めてみたぞ…




八幡「よく見ろ!俺だ!比企谷だ!比企谷八幡だ!お前の先輩の!!」




いろは「い…や…ぁあ…あ……………」



いろは「……あ………え………」


いろは「……せん…ぱい?…」




八幡「ああ、先輩だ」


いろは「せ………んぱい…」




震えは…止まった…のか?


ふぅ…なんとか落ち着いてくれたか…





いろは「………」





さて…これは…


さすがに、じゃあ帰るわ!ってことにはなれねえな…

















八幡「冷蔵庫、勝手に開けて悪い。お茶があったから飲め」


いろは「……ありがとうございます」


八幡「………えっと…落ち着い…たよな?」


いろは「…はい。すみません。取り乱してしまって」


八幡「いや…」


いろは「あと、ありがとございます。先輩が昨日酔った私を家まで運んでくれたんですよね」


八幡「ああ…まあな」


いろは「今日はどうしたんですか?」


八幡「携帯をお前の家で落としたみたいでな。さっきちょうど見つかったよ。それよりお前鍵閉めてなかったけどやっぱり話聞いてなかったんだな昨日」


いろは「ああ…すみません。正直、全然覚えてません」


八幡「まったく…飲みすぎだろ」


いろは「えへへ…」


八幡「……」


いろは「……」




酔った私に何かしたんじゃないでしょうね〜…とか

まあ先輩はそんな度胸ないと思いますけどね〜…とか


こいつのことだから何かしらからかってくるとちょっと思ってたんだがな…

まあ本当にそんな度胸ねえけど


寝起きはテンション低いのか?こいつは




いろは「……お久しぶり…ですね。先輩」


八幡「え、あ、そうだな」


いろは「元気してましたか?」


八幡「ん………まあな」


八幡「(少なくとも今のお前よりかは元気だ…)」


いろは「そうですか…それはなによりです」


八幡「一色…」


いろは「…なんですか」


八幡「……その、なんていうか…」


八幡「(…聞いてもいいのだろうか…)」


八幡「…」


いろは「先輩?」


八幡「あ、いや……」


八幡「えっと、そう、そうだ。冷蔵庫」


いろは「冷蔵庫…?がどうかしたんですか」


八幡「なんだよあれ。スッカラカンじゃねえか。ちゃんと食ってんのかよお前」


いろは「…食べてますよ」


八幡「なにを」


いろは「…コンビニの…お弁当とか…カップラーメンとか…?」


八幡「おいおい…そんなんじゃ栄養バランス悪いだろ」


いろは「最近のコンビニ弁当を甘く見ちゃダメですよ。栄養だって上手くとれます」


八幡「ゴミ箱…カップ麺の容器ばっかじゃねえか。そっちの方が多く食べてんだろ」


いろは「……」


八幡「…お前…ちょっと痩せたよな」


いろは「…そうですかね。あはは、ダイエット成功ですね」


八幡「……ちゃんと食べろよ」


いろは「…食べてますって」


八幡「……」


八幡「はぁ…ちょっと台所借りるぞ」


いろは「え?」


八幡「朝ごはん作ってやるよ。スッカラカンとは言え少しは食えそうなもんあったしな」


いろは「そんな…悪いですよ」


八幡「お前の健康が悪すぎる。黙って座っとけ」


いろは「……」
















いろは「おいしい…です」


八幡「ん、そりゃあよかった」


いろは「特にお味噌汁がおいしいです。……うちにお味噌あったんですね…」


八幡「おいおい…」


いろは「先輩、料理できたんですね」


八幡「バイトで作ることが多いからな。自然に慣れたんだよ」


いろは「すごいですね…」


八幡「…すごいですねって……だいたいお前だって料理できるだろ?得意だろ確か」


いろは「料理…ですか。めんどくさくてずいぶんやってなかったですね」


八幡「め、めんどくさい……?」


八幡「(ますます一色らしくないな…)」


八幡「この部屋の散らかりようも片付けめんどくさいからってことか?」


いろは「……ああ…そういえば…いつの間に…。そろそろ掃除しないとですね…」


八幡「……」


いろは「ごちそうさまでした。片付けは私がやりますんで」


八幡「おう、お粗末さま。いやいいよ、片付けも俺が…」


いろは「痛っ…いつつ…」


八幡「お、おい、どうしたんだ」


いろは「いえ…なんでも…」


八幡「(お腹をおさえて…まさか…)」


八幡「あのアザか…」


いろは「え?」


八幡「あっ」


いろは「……見たんですか」


八幡「いやそれは!…………悪い。お前が昨日酔ってる時に服が少しはだけて……チラっとな。見るつもりはなかったんだが…」


いろは「……そうですか。すみません。気持ち悪かったですよね」


八幡「そんなことは…それよりなんでそんな大きな…」


いろは「……」


いろは「片付けは私がやるので座っててください」


八幡「あ、ああ…」
















いろは「コーヒー…飲みますか?」コト


八幡「ああ、ありがとう」


いろは「ふふふ…コーヒー作ったのなんて久しぶりだなあ…」


八幡「……」


八幡「一色……」


いろは「なんですか?」


八幡「……その…だな…」





いろは「………」





いろは「どうしちまったんだよ……ですか?」





八幡「……」


八幡「……正直、今すげえ動揺してる。お前は…今のお前は…」


八幡「俺の知ってる一色いろはじゃない…」


いろは「……でしょうね」




あの高校時代の

眩しいほどの明るさも

騒がしいほどの元気さも

何もなかった

今の一色には


だいたいなんて目してんだ

まるで…生きることに疲れたかのような…

光のない目


俺の腐ってると言われる目より何倍もひどいぞ



八幡「聞いて…いいか?」


いろは「……」


八幡「なにがあったんだ?朝起きた時…なんであんなに…」


いろは「…あはは…さすがに気になりますよね…」


八幡「そりゃあそうだろ…」


八幡「(あんなの見せられちゃな…)」


いろは「なにがあったか…ですか…」


八幡「その…男の人…とか言ってたよな?」




いろは「……ふぅ…」


いろは「実は…私、今ちょっと…男性恐怖症…みたいなんです」




八幡「なっ…。お前が…?」


いろは「…はい。男の人を見ると身体が震えだして…酷い時はさっきみたいに取り乱すというか発狂ですよねもう…」


八幡「え、えっと…す、すまん。それって、よくわらんが…俺も男だし…もしかして今も実は…辛いのか?帰った方がよかったか?」


いろは「ああ…いえ。大丈夫です。さっきのは不意打ちみたいな感じでしたので…」


八幡「まあ…男性恐怖症なのに寝てて起きたら男が目の前にいたなんてたまったもんじゃないよな…」


八幡「でも…本当に大丈夫なのか?」


いろは「はい、大丈夫です。先輩は」


八幡「俺は…?」


いろは「なんでか…わかんないですけど…」


いろは「ほら、手も震えてないでしょう?他の男の人がこんなに近くにいたら今の私だと震えちゃうはずなんですけどね」


八幡「そう…みたいだな。なら…うん。よかった」


いろは「はい」


八幡「…そうか…男性恐怖症か…」


八幡「…………」



いろは「なんでそうなったか…知りたい…ですよね」


八幡「……いや…言いたくなかったらいいんだぞ?いい話ではないだろ?絶対」


いろは「そうですね…聞いてて気持ちのいい話ではないですね。絶対」


八幡「……」


いろは「やめときましょうか。嫌ですよね。先輩だってそんな重たそうな話聞くの」


八幡「……」


八幡「いや…聞かせほしい」


いろは「え?」


八幡「聞かせてくれ。なにがあったのか」



たぶん今から聞こうとしている話は気軽に聞いていい話じゃない

覚悟するべきことだろう

「へー、辛い話だな。んじゃ帰るわ」

とはならないだろうな…


そんなめんどくさそうな話…なんていつもなら思うんだろうが


なぜかわからないが…


このままで帰りたくはなかった







いろは「いいんですか?」


八幡「ああ…。あ、いやお前が辛かったら本当にいいんだぞ言わなくて」


いろは「そうですか…。いえ、大丈夫です」


八幡「……」


いろは「……」




いろは「と言っても…そんな複雑な話でもないですけどね」





八幡「…」


いろは「先輩、覚えてますか?私の彼氏」


八幡「え………。ああっ、そうだ。そうだよな。お前彼氏いたよな」


いろは「はい、私が大学1年の時から付き合い始めた人です」


八幡「俺は会ったことねえけど…電話でお前が自慢してきたんだよな。すげえ嬉しそうに」


いろは「はい。すごく嬉しかったですから」


八幡「確か相手は社会人の人だったよな?26歳くらいの」


八幡「若いけどすげえエリートでしかもイケメンで。バカみたいに優しい人だって言ってたっけか」


八幡「そうだよ。彼氏はどうしたんだよお前。確か一緒に暮らしてんだろ?俺なんかよりまず彼氏に相談を…てか彼氏どこ行ったんだよ」


いろは「……」


八幡「……一色?」





いろは「優しい人です。…優しい人でした」





いろは「優しい人だと………思ってました」





八幡「………どういうことだ?」




八幡「…………っ!!」




いろは「相変わらずさすがですね先輩。もうわかっちゃいましたか?勘がいいですね」


八幡「まさか……」





あの大きなアザ……………


それに最近なったという男性恐怖症…………






いろは「あはは…ツイてないですよね。私って」




いろは「DV男だったんです。私の彼氏は」





八幡「……そんな…」


いろは「最初は本当に優しい人でした。いつも私を愛しているって言ってくれて、私もあの人を愛してました。…結婚まで考えてました」


いろは「でも1年前…からですかね。あの人は突然別人みたいになったんです。…いえ、たぶんそっちが本当のあの人だったのかもしれません」


いろは「ある日、急に暴力を振ってくるようになりました」


いろは「少しでもあの人を怒らせるようなことがあれば私は殴られ蹴られました」


いろは「私は怖くて…怖くて…でもどうにかあの人の機嫌を損ねないように過ごしてきました」



八幡「(なんで別れないんだ……いや…別れ話なんてもち出したらそれこそその男に…って可能性があるか…)」


いろは「私は…かなりのバカだったみたいです。…いつか…諦めなければいつかきっと昔の…優しいあの人に戻ってくれるんじゃないかって……そう思ってたんです。思いたかったんです」


八幡「……」


いろは「でも…暴力の頻度は日に日に増えていきました…」


いろは「一緒に貯めていたはずのお金もいつの間にか急激に減っていて…あの人が夜に……その…遊びに行くために使われていたことを後から知りました」


いろは「私が…私たちが…いつかは結婚を……と思って貯めていたお金でした…」


いろは「私はなんとかバイトを掛け持ちしてなくなったお金を稼ぎ戻しながらあの人にもう一度やり直そう。もうこんなことはやめてほしいと頼み込みました」



いろは「…結果…まあ見ての通り。ダメでした」ハハハ…



いろは「私は、毎日毎日、暴力を振るわれ続け、最後にはもう私に飽きたのか…ついこの前にあの人はこの家から去って行きました」



いろは「私が…貯めたお金を全部持っていって……私の前からいなくなっちゃいました…」



いろは「あの人のためにバカみたいに耐えて頑張って…結局捨てられちゃって…」


いろは「なんかもうですね…どうでもよくなっちゃいましたよ。それからというもの何するにしてもやる気なくなっちゃいまして」


八幡「(この部屋の散らかりようと食生活はそういうことか…)」



いろは「もう男なんて信じない。そんなことを思いながら過ごすことにしました」


いろは「そんな時、外に出て気づいたんです。いつの間にか私は…男の人を信じる信じない以前に恐怖の対象としか見れなくなっていたことに」


いろは「男の人を見ただけで思い出すんです…あの人の…顔を…。痛みを…」ギュ…






いろは「そんなこんなで、もう人生どうでもよくなってお酒に溺れる一色いろはの今に至ります」


いろは「めでたしめでたし……なんてね」




八幡「………」


八幡「なんだよ…それ…」


八幡「なんだよそれ…」ギリ


いろは「……」




一色はさっき男が豹変したのは1年前…と言った

つまり1年、1年もの間、その男の暴力に耐え続けたってことか?




八幡「なんで…なんで誰にも言わなかったんだっ」


いろは「……あの人は、家以外ではとても『いい人』でした。こんな話をしても信じてくれる人はいないほどに」


いろは「両親にも相談することは一度考えましたが……。やっぱり迷惑をかけたくない…と思ってしまいました。それに実家から出ること事態、あの人と暮らすためにだいぶ親にわがまま言っちゃいましたしね…」




いろは「それになにより彼氏がDVなんて…そんなこと誰かに相談していることがあの人にバレでもしたら…と思うと…」ブル




八幡「悪い…お前の気持ちも考えずに…」


いろは「いえ…」


いろは「ということで、この話をするのは先輩が初めてですよ」





八幡「……」





いろは「………すみません。やっぱり聞きたくなかったですよね。こんな話」


いろは「今日はありがとうございます。朝ごはんおいしかったです」


八幡「一色…あのな…」


いろは「聞かせといてアレですが。忘れてください。今日の話は。それと…」




いろは「もう忘れてください。私のことも…」




八幡「…は?」


いろは「私はもう…先輩の知ってる一色いろはじゃありませんから…」


八幡「一色…」


いろは「だいたいもうこんな…ダサい女に会っても先輩も見てて嫌になるだけでしょう?」


八幡「おい…」


いろは「私のことは気にしないでいいですから」


八幡「おいっ…」


いろは「だからもう…」


八幡「一色ッ!!」


いろは「…私の…ことなんて…」


八幡「……泣くぐらいならもう言うな」


いろは「…あ、あれ…わだ、わたし…いつの間に…」


いろは「なんで……ぐすっ」




八幡「……」



八幡「……」スッ




八幡「…」ダキ


いろは「せん、ぱ…な、なにしてるんですか…なんで抱きついて…」


八幡「…」


いろは「せんぱい…せんぱいってば…離して…」


いろは「離してくださいよう…ぐすっ…うう…ぅう…」


八幡「…」ギュウ


いろは「……うぅ…な、んで…」


いろは「なんで…わたしが…」


いろは「なんでですか!わだ、わだしが、なにしたって…いうんですかぁ!うぅ…うう…え…」


いろは「うぇ、うえええんっ…うわぁああああぁあああぁああ!せん、ぱ…せんぱぁい!わぁあああぁああ……!!」














いろは「もう…大丈夫です」


八幡「…」ギュウ


いろは「先輩ってば」


八幡「あ、ああ…」スッ



いろは「先輩…その……えっと…///」


八幡「いい、言うな。…俺もなんでこんなことしたのかよくわからん…」





八幡「ふぅ……一色」




いろは「は、はい」


八幡「お前はダサい女なんかじゃない。2度とバカなこと口にするな」


いろは「…」


八幡「今の話を忘れる気はない。だいたい俺から聞かせてくれって言ったんだしな。そしてお前のことももちろん忘れようなんて思わん」


いろは「先輩…」



八幡「なあ……俺は…本当に大丈夫なんだよな?その…男性恐怖症は…」


いろは「それは…はい。そうみたいですね…」


八幡「そうか…」





八幡「よしっ」





八幡「一色、そういえば今日大学は?」



いろは「…え?や、休みですけど…」


八幡「そうか。俺もだし丁度いい。んじゃあまず掃除からだな。まず生活を改善することからだ」


いろは「え?」


八幡「後は食いもんだな。もうふざけた食生活させないからな。買い出し行って冷蔵庫パンパンにするぞ」


八幡「お前が作るのめんどいって言うなら俺が作って無理矢理でも食わせてやる。痩せすぎだからな」


いろは「ちょ、ちょっと。待ってください。どういうことですか」




本当にどういうことですかねこれは

俺はさっきから何を言ってるんだ

何をしようとしてるんだ


何を考えてるんだ



ああ、ダメだ

止まらない





八幡「一色いろは復活作戦だ!」






いろは「は…はい?と、突然なんですかそれ」


八幡「今日からお前には俺が知ってる一色いろはに戻ってもらう」


いろは「なっ…」


八幡「1番の問題は…男性恐怖症だよな。よし直すぞ」


いろは「直すぞってそんな簡単に…」


八幡「理由はわからないが俺は大丈夫なんだろう?1人でも大丈夫な人がいるならまだ希望はあるだろ」


いろは「そ、それは…そうかもですが…でも先輩はたぶん特別というか…」ボソ


八幡「ん?」


いろは「い、いえ。というか復活なんてそんなの頼んでな…」


八幡「うるせえ!やるったらやるんだよ!」


いろは「ええ!?…なんですかこの積極的な先輩…先輩こそ私の知る先輩じゃないんですけど…」


八幡「とにかくまずは掃除だ!汚すぎだしなこの部屋。気持ちも暗くなるわ。まったく下着まで投げ散らかしてからに」ヒョイ


いろは「ちょ、ひ、拾わないでくださいよ///」


八幡「なんかここにあるのはただの布切れにしか見えねえわ。汚ねえし」


いろは「酷くないですか!?」


八幡「一色」


いろは「な、なんですか」


八幡「お前の今までの痛みを…苦しみを全部理解するなんてことは…俺にはできない」


いろは「…」


八幡「でも…その…安心してくれ」


いろは「…え?」


八幡「今は…俺がいる」


いろは「…っ」






八幡「お前はもう1人じゃない」






いろは「……せんぱ…い…」




いろは「先輩…」プルプル


八幡「おう」





いろは「人のパンツ持ちながら言わないでください!!!この変態!!」





バチンッ!




八幡「ごふぅ!!!!」






こうして一色いろはと比企谷八幡の奇妙な関係が始まった









………………………


………………


…………


………









「また君は僕を困らせるのか」



違う…そんなつもりじゃ…



「僕をバカにしてるのか!!」



ごめんなさい

ごめんなさい

やめて…もう叩かないで…!

痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い…

怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い…!




誰か…助けて…!誰か……!




だれ………か………






「お前はもう1人じゃない」









八幡「おい一色、起きろって」


いろは「……っ…」


いろは「…あ……先輩…」


八幡「いつの間に寝たんだお前は…」


いろは「どうかしたんですか…?」


八幡「ああ、シチューできたから。ちょっと味見してみてくれ」


いろは「わかりました」




八幡「どうだ?」


いろは「…美味しいです」


八幡「そうか。じゃあ飯にするか」


いろは「お皿出しますね」


八幡「おう、いやその前にそこに投げてある服は何だ」


いろは「あっ…」


八幡「脱いだものはちゃんと洗濯機に入れろ」


いろは「は、はい」タタタ


八幡「ふぅ…」














一色の話を聞いてから1週間が経った

俺はあの日から毎日のように一色の家に来ては主に夕食を作っている



いろは「ありがとうございます。今日も作っていただいて…」


八幡「気にすんな」



いろは「……」モグモグ


いろは「…先輩」


八幡「ん?おかわりか?」


いろは「いえそうではなく」


いろは「いつまでこんなことを…」


八幡「…嫌か?」


いろは「嫌と言いますか…」


いろは「言ったじゃないですか私のことは忘れ


八幡「その話はもういい」


いろは「むぅ…」


八幡「そんなに言うならせめてもっとちゃんとした生活ができるようになるんだな」


いろは「それは…」




今、俺はご飯だけではなくたまに部屋の掃除もやったりしている

なぜそんなことまでしているのか


今の一色は…本当に何もやろうとしないのだ

やる気というか…気力がないんだろうな…


ろくに外にも出ていないみたいだ


大学には一応少しは行ってるみたいだが

休みが多そうだ




やっぱり…男性恐怖症が原因か…




いろは「でもやっぱりダメですよ…こんなの」


八幡「まだ言うか」


いろは「だって彼女さんにも迷惑ですし…」


八幡「……は?」


いろは「ですから彼女さんに…」


八幡「いやいねえけど。彼女」


いろは「…え?い、いないんですか?」


八幡「なんでそんな驚いてんだ。いるわけないだろ」


いろは「わ、私はてっきり雪ノ下先輩か結衣先輩と付き合ってるんじゃないかと…!」


八幡「な、なんであいつらが出てくるんだよ///」


いろは「だって…いやいや、本当にですか?本当の本当に?」


八幡「本当だ。俺は誰とも付き合ってねえよ」


いろは「びっくりです…」


八幡「……」


八幡「俺にとってあいつらは…そういうじゃないんだよ」


いろは「…」


八幡「もういいだろ。食べたか?食べたなら片付けるぞ」


いろは「ま、待ってください。おかわり欲しいです」


八幡「お、食うようになってきたな。ちょっと待ってろ。入れてくるから」





いろは「…」


いろは「そっか…いないのか…彼女…」

















八幡「よく見たら…干した洗濯物まったくたたんでねえじゃねえか」


いろは「ああ…忘れてました」


八幡「まったく…よし、たたむか」


いろは「わ、わ、待ってくださいよ」


八幡「なんだよ」


いろは「そんな平然と…し、下着もあるんですよ!」


八幡「小町のよくたたんでたし。別に平気だぞ」


いろは「私が平気じゃないですよ!」


八幡「だってお前俺がやらねえと溜めるだろ洗濯物」


いろは「わ、わかりました。ちゃんとやります。やりますから洗濯物には手を出さないでください!」




いろは「まったく先輩は!…私のことちゃんと女の子としてみてくれてるのかな…」ボソボソ





八幡「……」





こうやって少しずつでも…

自分でやろうとしてくれればいいんだがな…

















八幡「なあ、一色」


いろは「はい?」


八幡「その……明日は街に行ってみないか」


いろは「……」


八幡「…俺がついてるから。少しだけでも行ってみないか…?」


いろは「…わかりました」


八幡「ほ、ほんとか?大丈夫か?」


いろは「はい」


八幡「よしっ」


八幡「ちゃんとオシャレしろよ。今のお前めんどくさがってパジャマで来そうだからな」


いろは「さ、さすがにそんなことしませんよ…」


八幡「明日、迎えに来るから準備しといてくれ」


いろは「わかりました」





八幡「じゃあ、俺帰るからな」





いろは「…っ」


いろは「あ…」



いろは「……はい……。おやすみなさいです…」



八幡「………」




またこの顔だ



一色は無意識だろうが…

俺が帰る時はいつもだ




なんなんだよ

やめてくれ

そんな…寂しそうな顔をすんのは…















八幡「……はぁ〜あ」


八幡「なにやってんのかな…俺…」





俺はなんで今こんなことをやっているんだろう

最近、毎日このことを考えてる


俺らしくは…ないよな。絶対


なんで一色を…



同情……したからなのか?



あいつが可哀想だからこんなことを?

確かに一色の話を聞いて思うことがなかったわけじゃない


でもだからって…






八幡「……わからん」
















〜 次の日 〜






ー 街 ー






八幡「……………」


八幡「おい」


いろは「は、はい」


八幡「歩きにくいんだが…」


いろは「す、すみません…」


八幡「そうしてないとダメなのか?」


いろは「……」


八幡「はぁ…いやいいよ。それで安心できるなら」


いろは「…ありがとうございます」ギュ




街に来てからというもの…

一色は歩く時には常に俺の服の裾を掴み

少し後ろに下がって俺についてくる


その手は…かすかだが震えてる…みたいだな


男とすれ違うと裾を掴む力が強くなる

マジでダメなんだな今のこいつにとって男は





……本当になんで俺は大丈夫だったのだろうか



まあ考えてても仕方ないか






八幡「行くか」


いろは「はい」

















いろは「どこに行くか決めてるんですか?」


八幡「いや何も」


いろは「な、何もですか?」


八幡「ああ、歩くだけだ」


いろは「そ、そうですか…」






八幡「……」テクテク


いろは「……」テクテク





「ギャハハハハッ!!!」

「お前それはないだろ〜wwwww」





いろは「…っ」ビクッ


いろは「……」ギュウ



八幡「…怖いか?」


いろは「…正直言いますと」


八幡「もうやめとくか?」


いろは「いえ…もう少し歩きましょう」


八幡「……そうか」




いろは「あ、これ可愛い…」


八幡「UFOキャッチャーの景品か」


八幡「…」


八幡「ゲーセン…行ってみるか?」


いろは「ゲームセンターですか…」



いろは「…はい。行ってみたいです」


八幡「んじゃ行くか」


ちょっと早すぎるか?こんな人が多いところ

いやでも一色もここまで歩いてこれたし、本人も大丈夫そうだし

早く治すためにも行ってみてもいいかもな
















ー ゲームセンター ー






ワイワイ…ガヤガヤ…





八幡「大丈夫か?」


いろは「は、はい」


八幡「UFOキャッチャーやるか」










八幡「お、おおっ」


いろは「あ、取れそう…取れそうです!」


八幡「ああ!」





ボトッ





いろは「ああ〜!惜しい〜!」


八幡「くっそ…アームもうちょい頑張れよ…」


いろは「もう一回!もう一回やりましょう!」


八幡「お、おう」






いろは「あとちょっと…ちょっと…」


八幡「ここか…?」ピッ


いろは「あ、いい感じです!」




ウィーン…



ボトッ





八幡「しゃっ!」


いろは「やったー!やりましたね先輩!ハイ!」


八幡「え、なに?」


いろは「ハイタッチです!」


八幡「あ、ああ…ほい」




パンッ!





いろは「えへへ…」ニコ


八幡「……」


いろは「先輩!次なにやりますか?」


八幡「じゃあ次は……」





















いろは「UFOキャッチャーにエアーホッケー、太鼓の達人、銃のゲーム…こんなにゲームセンターで遊んだのは初めてかもです!」


八幡「ずいぶんはっちゃけてたな」


いろは「楽しかったですから」ニコ


八幡「……」




なんだ…案外、思ったよりいい感じじゃないか

こうやって外に出て行けば


けっこう早くに男性恐怖症も克服しそ…





肩 ドンッ





いろは「きゃっ…」



「あ、すんません」



いろは「……っ」ビクッ


いろは「あっ…あっ………」ブル…




「あの、大丈夫すか?」




八幡「お、おい…」


いろは「ぃや……ぁ…あ…」


八幡「ま、待て、落ちつけいっし…」


いろは「…っ」ダッ


八幡「一色っ!!」


















いろは「……」


八幡「やっと見つけたぞ…」


いろは「先輩……」


八幡「…」


いろは「…」プル…プル…


八幡「(震えてる…)」


八幡「今日はもう帰ろう」


いろは「……はい」














ー いろはの部屋 ー







いろは「さっきはすみません。急に走っていっちゃって」


八幡「いや、そんなことよりも」


八幡「………悪かった」


いろは「え?」


八幡「俺はたぶんどこかでお前の男性恐怖症をまだ軽くみていた」


八幡「偉そうに治すぞとか言ってこのザマだ…。また怖い思いをさせてしまっただけだ」



八幡「本当に……悪かった」



いろは「……謝らないでください。先輩は悪くありません」


八幡「でも…」


いろは「今日…ゲームセンターは本当にすっごく楽しかったですけど…やっぱり…怖かったです」


八幡「…」


いろは「でも今日外に出て思いました」


八幡「?」


いろは「私はやっぱりできることなら…治したいです。この男性恐怖症を」


いろは「やっぱり嫌です…こんな外に怯える生活は…」


八幡「一色…」




不安なことが1つあった


それは一色自身が男性恐怖症を治したいと思っているのかということ


いくら俺が治すぞとか言ったところで肝心の本人がやる気がなければ難しいことだろうと思っていた




いろは「すごく怖いですけど…頑張りたいです。普通の生活に戻りたいです」



八幡「…」



男性恐怖症を克服したいと、自分を変えたいと思えたその勇気だけでもすごいことだ

一色にとっては大きな進歩だろう




八幡「今回は焦りすぎた。次からは無理せずゆっくりやっていこう。そうすれば必ず治せるはずだ。いや治る」


いろは「…」


いろは「先輩…」


いろは「先輩はなんで…」




いろは「なんでそこまで…」





八幡「……」


八幡「そういえば昼まだだったな。なんか作ってやるよ」



いろは「……」










……………


…………


………


……







あの人が私の元から去ってから

人生はどうでもよくなり

男性恐怖症のせいでただただ怯える毎日


大学などの知り合いで私を心配してくれる人もいた

でもそれも嫌だった

同情されたくなかった

ほっといてほしかった



私はもう…1人でよかった



そんな中で先輩と久しぶりに再会した



私はなんであの時、先輩に話をしたのだろうか


…いやわかってる




私は嫌な女だ



本当に先輩に迷惑をかけたくないのなら

あの時先輩に話さなければよかっただけだ



なのに…


どうでもよくなったとか言っときながら

私は心のどこかで誰かに助けを求めていた



だから利用したんだ

先輩を

先輩の優しさを


なんとなくわかっていたんだ

先輩なら私を見捨てない

きっと私を助けてくれるって


他の誰にもそんなことは思わなかったのに

先輩だけは…違った

先輩にだけは


同情されたかった

優しくされたかった

甘えたかった



なんでだろうか

なんでそんなことを先輩に思ったのか

なんで…先輩だけは男として怖くないのか



先輩はやっぱり私にとって特別な存在なんだろうか

まあそうだよね

なんてたって





昔、私が初めて本物の恋をした相手なんだから






……………


…………


………


……








近所のおばちゃん「あら、一色さん。こんにちわ」


いろは「あ、こんにちわ」


近所のおばちゃん「うふふ…」


いろは「……?……なんですか?」


近所のおばちゃん「いやね。最近は元気そうで安心したわ。前はずっと体調が悪そうで心配していたのよ」


いろは「それは…ご心配おかしてすみません」


近所のおばちゃん「やっぱり最近よく来る新しい彼氏さんのおかげかしら?」


いろは「か、彼氏ではないですよ」


近所のおばちゃん「隠さなくてもいいのよ!前の彼氏さんはもうずいぶんと見てないし別れちゃったんでしょう?」


いろは「………ええ、まあ」


近所のおばちゃん「幸せそうだったのにね〜」


いろは「………」


近所のおばちゃん「もう前の人は忘れちゃいなさい!次よ!次!女は恋してなんぼよ!私の若い頃なんか……」ペラペラ


いろは「あはは…」







あれから1ヶ月




私の日常は大きく変わった




とはいえ……






いろは「………いい匂い」







ドア ガチャ







八幡「おう、おかえり」パタパタ


いろは「た、ただいまです…」


いろは「……」


八幡「ん、なんだよ」




まさか家に帰ると

スリッパをパタパタ言わせながらこちらに来るエプロン姿の先輩に「おかえり」と言われるのが日常になるとは思わなかったよ…





いろは「いえ…なにも」


八幡「そうか。ほれ、バックと上着」


いろは「あ、は、はい。ありがとうございます」


八幡「今日もちゃんと大学に行ってきたみたいだな。よくやった。大丈夫だったか?変わりないか?」


いろは「はい」




最近ではあまり行けてなかった大学にも積極的に行けるようになった


大学は女子大だからいいとして行き帰りの道中がやっぱり少しまだ怖い時はあるけど…


1人でこれだけ外に出れるようになったのは大きな進歩だと思う



八幡「本当か?なにかあったら連絡しろよ。迎えに行くから」


いろは「あ、ありがとうございます。でも本当に大丈夫ですよ」





最初はずいぶんと先輩に心配されたよ

自分の大学をほったらかしてまで送り迎えしようか?って言ってくる始末


私の男性恐怖症が原因だろうけど…

少し心配性すぎる時がある


それと…




八幡「悪いがご飯はもう少し待ってくれ。風呂にするか?」


いろは「お風呂にします。汗かいちゃったんで」


八幡「もう湯は溜めてあるからな。ゆっくり入ってこい」


いろは「…ありがとうございます」




先輩がまさかここまで世話焼きな人だったとは思わなかった…
















いろは「ふぅ…」


八幡「あがったか?ご飯もうちょいだからテレビでも見てろ」


いろは「……」


いろは「あの先輩」


八幡「なんだ?」


いろは「手伝います」


八幡「え?」


いろは「ご飯作るの…手伝います」


八幡「…一色……」


いろは「いつまでもやる気が出ない…とか言ってちゃダメですしね…。だから手伝わせてください」


八幡「…そうか。少しでもやる気が出たならよかったよ」


八幡「んじゃ、キャベツ切ってくれるか?」


いろは「はい。任せてください」


いろは「よし…」スッ


八幡「……」


いろは「…なんですか?そんなに見て」


八幡「いやお前…包丁持つのいつぶりだ?大丈夫か?」


いろは「バカにしないでください。これぐらいできますよ」


八幡「ならいいけど…」


八幡「…」


いろは「よし…」スッ


八幡「ひ、左手は猫の手だからな」


いろは「わかってますってば。もう心配しすぎです」


八幡「わ、悪い…」















いただきまーす!





いろは「美味しい…」


八幡「そうか」




悔しいけど先輩は料理がすごく上手い

高校の頃は包丁すらろくに持ったこともなさそうだったのに…


正直、今じゃ絶対私が作るより美味しいものが作れる




八幡「料理もちゃんとできるようになるまで復活したら、俺が作る必要もなくなるな」


いろは「……」


八幡「どうした?」


いろは「いえ……そうですね」


八幡「そうだ。一色。明日は大学休みだよな?」


いろは「はい」


八幡「じゃあ、明日は外出しよう」


いろは「どこ行くんですか?」


八幡「……お前に会わせたい人がいる」


いろは「えっ、なんですかその親に紹介する時みたいな言い方。まさか彼女さんですか。お母さん許しませんよ」


八幡「バカッ。違うわ。だれがお母さんだ」


いろは「冗談ですよ」


八幡「はぁ………ふふっ」


いろは「急に何笑ってるんですか…キモいですよ」


八幡「いや久しぶりにお前からそういう冗談が聞けてな…その…嬉しかったわ」


いろは「……」


八幡「悪い。ちょっと訂正すると会わせたい『人達』がいるんだ」


いろは「会わせたい…人達ですか」


八幡「ああ」


いろは「…それは、その人達は…男性…ですか?」


八幡「……」


八幡「大丈夫だ。俺がそばにいるから」


いろは「…そ、そうですか///」



たまに恥ずかしげなくこういうこと言ってくる先輩は本当にズルいと思います




八幡「でもあいつらはまあ……良い奴らだから。あんま気を張らんでもいいぞ。てか知ってる奴らだし。お前が忘れてなければ」


いろは「誰なんですか?」


八幡「それは明日のお楽しみってことで」


いろは「……わかりました」

















八幡「じゃあ俺は帰るぞ」


いろは「…あっ…」



もう…そんな時間か…



八幡「…」


八幡「じゃあな。おやみす」


いろは「…おやすみです」





ドア バタン






いろは「…」




やっぱり私はこの別れ際が嫌いだ

どうせ明日会うんだけどね


もっと先輩に甘えたい……なんて思っちゃってるんだろうか


迷惑かけたくないなんてよく言えたもんだね…



明日は…また先輩が何か考えてくれたのかな


私もこの男性恐怖症を早く克服したい

もう怖がってばかりの生活なんて嫌だ!




…こんなことを思えるようになったのも



先輩のおかげなんだろうな





いろは「明日は頑張ろうっ」






……………


…………


………


……








〜 次の日 〜






いろは「公園ですか。ここにその会わせたい人達がいるんですか?」


八幡「ああ……えっと……」



八幡「あ、いたいた」





材木座「おーう!八幡よ!よくぞ来た!!」


八幡「あーはいはい」


戸塚「天気が良くてよかったね。八幡!」


八幡「そうだな戸塚ァ!!今日も可愛いな戸塚ァ!!」


材木座「あれ!!扱い違いすぎない!?」



いろは「あ、えっと…お二人は…確か…」




材木座「おお、久しぶりであるな!いっし…」



いろは「ひっ」バッ←八幡の後ろに隠れる


八幡「おっと、とと…おい材木座」



戸塚「ダメだよ材木座くん!そんな勢いよく行っちゃ。八幡に言われてたでしょ!」ボソボソ


材木座「む、むぅ…すまぬ…」



いろは「……」ビクビク


八幡「……」


八幡「……」




八幡「…」ギロ




材木座「ご、ごめん。そんなに本気で睨まないでくれ八幡よ…」


戸塚「は、八幡。怖いよ…。そんなに怒らないで。僕からも謝るから」


八幡「えっ……」


八幡「あ、い、いやそこまで怒ったつもりじゃなかったんだが…」


材木座「いや殺されるかと思ったぞ…」


八幡「……」















八幡「改めて、戸塚と材木座だ。覚えてるか一色?」


いろは「はい。戸塚さんと太ってる人ですよね」


材木座「本当に覚えてる!?」


八幡「そうだ。天使とデブだ」


材木座「!?」


八幡「2人には…その…勝手にで悪いが、一色のことについて事前に説明している。男性恐怖症になったことだけだから安心しろ。なんでそうなったかとかは言ってない」ボソボソ


いろは「そうですか…」


八幡「昔から見知ってる男なら…とかちょっと思ってみたが…やっぱダメだよな」


八幡「(さっきからずっと俺の後ろに隠れて、俺の腕にしがみついてるし。戸塚たちと会話する時は頭しか出さないし)」


いろは「…すみません」


八幡「(材木座はともかく…戸塚なら…冗談でもなんでもなくマジで『誰から見ても女にしか見えない男』である戸塚なら…と期待したがダメだったか…)」


いろは「戸塚さん、ざいも…なんたらさんも、すみません。今の私…失礼ですよね」


材木座「ねえ、絶対我のこと覚えてないよね」


戸塚「あはは…僕達は大丈夫だよ」


材木座「うむ。気にするな。後、我は材木座だ」


八幡「今日はこの4人で食事に行こうと思うんだ」


戸塚「僕たちは一色さんを怖がらせに来たわけじゃないから。十分に気をつけるよ。だから一色さんはいつも通りにしていてよ」


材木座「先程はすまなかった。我も戸塚殿と同じ気持ちだ」


八幡「…大丈夫か?」


いろは「…私も…行きたいです」



八幡「そうか」ホッ


いろは「あの、ありがとうございます。戸塚さん。ざい…ざいもんさん」


材木座「ざいもん!?……あ、いやニックネームみたいでなんかいいかも…」


八幡「早く行くぞ。うざいもん」


材木座「『う』をつけないで!」


いろは「ふふふっ…」ニコ


八幡「……」


八幡「……」フッ


材木座「っ!」


いろは「ん?なんですか?こっち見て笑って」


八幡「いや、別に」


戸塚「じゃあ行こっか!」






材木座「……はち…まん?」


















〜 数時間後 〜





戸塚「おいしかったね〜。一色さん」


いろは「はい。ケーキが特に」


戸塚「あ、僕もケーキが1番よかったかも!イチゴがよかったね」


いろは「私はチョコですかね」


戸塚「あ〜チョコもよかったね〜」


八幡「なあ材木座」


材木座「なんじゃらほい」


八幡「一色の奴…楽しめたかな?」


材木座「…ふむ。最初よりは慣れてきたようだがまだ少し距離を感じる。彼女自身は歩み寄ろうとする意思があるが無意識に我と戸塚殿にまだ恐れを感じているようだ」


材木座「八幡がそばにいなければたぶんダメだったろうな」


八幡「…」



材木座「そう落ち込むでない」


八幡「い、いや俺は別に」


材木座「とはいえそう悪くはなかったように見えるぞ」


材木座「後半は八幡の後ろに隠れることもなくなったしな。今もあーやって戸塚殿と話しておるし」


八幡「…そうか。そうだな」



八幡「…よかった」フッ


材木座「……」


材木座「八幡よ…お主、もしや彼女のことを…」


八幡「?」


材木座「いや…なんでもない」


八幡「なんだよ」


いろは「せーんぱい!せんぱいってば!」


八幡「え、あ、なんだ?」


いろは「戸塚さんがもう帰らなきゃいけないって言ってますよ」


八幡「ああ、そうだったな」


戸塚「一色さん。今日はありがとね」


いろは「私も今日は楽しかったです。ありがとうございます」


八幡「本当にありがとな。戸塚。あと一応、材木座も」


戸塚「うん!」


材木座「むふん!我も一応役に立ったようでなにより!」


戸塚「何事もなくてよかったよ…」


戸塚「一色さん…僕達じゃできることは少ないけど何かあればいつでも言ってね。助けになれるよう頑張るから」


材木座「うむ。我も頑張ろう」


いろは「……戸塚さん…ざいもんさん…ありがとうございます」


材木座「あ、もう、ざいもん固定なのね」


八幡「さすが戸塚…天使だわぁ…」


戸塚「も、もう、天使はやめてってば///」


八幡「まあ安心しろ。一色」


いろは「え?」


八幡「なにがあっても」




八幡「俺がお前を守るから」




いろは「…なっ……///」


戸塚「は、八幡…」


材木座「………」


いろは「お、お二人の前で…な、なに言ってんるんですか///」


八幡「……っ……あ、あれ?俺、今なんか言ったか?」


戸塚「今のはかっこよかったよ!八幡」


八幡「んん〜?」


いろは「……///」










八幡「じゃあ、またな」


戸塚「うん。一色さんもまた遊ぼうね!」


いろは「はい!」




戸塚「2人とも行っちゃったね」


材木座「……」


戸塚「材木座くん?どうかしたの?さっきから黙っちゃって」


材木座「独占欲…支配欲…あの八幡がな…」


材木座「もっと自信を持っていいものだがな…」


材木座「それにしても…お前がたびたび見せる笑顔は…全て彼女の……彼女の喜びがそんなにも嬉しいか…」




材木座「………巡り会ったのだな…」




戸塚「…?」
















八幡「さて、次だ」


いろは「え?次?」


八幡「まだ終わりじゃないぞ」


いろは「そうだったんですか」


八幡「次は夕食だ」


いろは「また誰かと食べるんですか?」


八幡「ああ…。次は戸塚たちよりもお前にとって関わりが深かった奴らだ」


いろは「…誰でしょう…」


八幡「夕食まではまだまだ時間あるし。適当にぶらつくか」


いろは「あ、はい」


八幡「ほれ」


いろは「え…?」


八幡「その…腕…掴まってろ。怖くないように…」


いろは「先輩…」



いろは「はい…///」



















〜 またまた数時間後 〜







八幡「ったく…遅れてるじゃないかあいつ…」


いろは「あの、先輩。一体誰が」



「久しぶりだね。いろは」




いろは「……っ……」



いろは「……葉山………先輩…」



八幡「なにが久しぶりだ。遅いだろうがお前」


葉山「悪い悪い。ちょっと道に迷ってね」



「いやいやマジでいい人すぎっしょ隼人くぅ〜ん。俺が遅れただけなのに助けてくれるとかさ〜」



葉山「せ、せっかくごまかしたのに自分でバラしてどうするんだ…」


八幡「結局お前かよ、戸部」


戸部「ごめんちゃい!許してよハッチ〜」


八幡「誰がハッチーだ。やめろその呼び方」




いろは「と、戸部先輩まで…」



戸部「おお、久しぶりじゃん!いろはす〜」ズイ


いろはす「…っ」ビクッ


戸部「…とと。そうだったそうだった」


葉山「…正直…少し信じれなかったんだが…実際見ると…受け止めるしかないようだね」


八幡「…ああ、悪いが2人にも。そのへんちゃんとわかっててほしい。特に戸部」


戸部「大丈夫大丈夫!わかってるよん!……俺だってもうガキじゃないからさ」


葉山「ああ。なあ、いろは」


いろは「は、はい」


葉山「もし俺たちで嫌な思いをするようならすぐに言ってくれ」


いろは「…」


戸部「もし大丈夫ってんなら久しぶりに会ったんだし。ゆっくり思い出話でもしよーぜ。いろはす!」


葉山「俺もそうしたいと思ってるよ」


いろは「…葉山先輩…戸部先輩…」





いろは「…ありがとうございます…」

















〜 またまたまた数時間後 〜






八幡「葉山」


葉山「ん?」


八幡「その……ぁ…ぁりがと…な。今日は」


葉山「おお、君にお礼言われるのは新鮮でいいね」


八幡「うるせえ。二度と言わんからな」


八幡「…」


八幡「なあ、葉山。お前から見て一色は…楽しんでくれたように見えたか?」



葉山「……」


葉山「比企谷。もっと自信を持っていいと思うぞ」


八幡「…俺の質問聞いてたか?」


葉山「不安なんだろ。自分がやってることが正しいのか。今やってることがいろはにとって本当に良いことなのか」


八幡「…」


八幡「……はぁ…やっぱ嫌いだわお前」


葉山「ふっ。悪かったな」


八幡「…」


八幡「あいつが今、幸せなのか俺にはわからない」


八幡「笑わせてやりたい。もう怖い思いをさせたくない」


八幡「俺は…少しはあいつの役に立ってるのか…?俺はあいつを…幸せに…」



葉山「比企谷…そこまで……まさかいろはのこと…」



八幡「ん?」


葉山「はぁ…そうか…それならもう俺が心配することはなにもないな…」


八幡「なんだよ突然。気持ち悪いな」


葉山「大丈夫だよ。自分が思うように、いろはのことを想って行動すればいい」


八幡「なんかムカつくんだけど。今のお前。いやいつもだけど」


葉山「いろはも言ってたよ」


八幡「は?」






〜〜〜




戸部「ハッチ〜。そっちのくれよ〜」


八幡「ダメに決まってんだろ。これは俺の唐揚げだ。あとハッチーやめろ」





いろは「ふふっ…子供みたい…」


葉山「よかったよ。君が元気そうで」


いろは「葉山先輩…」


葉山「なあ、正直に言ってくれ。今、君は、俺のことが怖いか?」


いろは「……」


いろは「…ごめんなさい。怖い…です」


いろは「本当にごめんなさい…」


葉山「謝らないでいいさ。そうなってしまったのは君のせいではないんだろう?」


いろは「…」


葉山「でもこうやって少しでも近くで話せるということは少しずつだけど変わってきてるんだな」


いろは「はい。全部、先輩のおかげです」ニコ


葉山「いろは…」


いろは「先輩には感謝してもしきれないですよ」




いろは「先輩がいたから、いてくれたから私は変われたんです」







〜〜〜






八幡「〜っ///」


葉山「顔が赤いぞ」


八幡「き、気のせいだろ。夕日のせいだ」


葉山「もう夜だぞ」



八幡「…(一色…)」




戸部「隼人くぅ〜ん。そろそろ帰ろうぜいぜいぜいぜーい!」


葉山「ああ…そうだな。あれ、いろはは?」


戸部「んんっと、あそこに…ってあれ、なんであんなとこで突っ立ってんだろ」




葉山「おい…比企谷。様子おかしくないか?」



八幡「ああ…。2人とも今日はありがとう」ダッ


戸部「あ、俺も…」


葉山「待て」ガシ


戸部「隼人くん?」


葉山「後は彼に任せよう」
















八幡「一色。どうしたんだこんなとこ突っ立って…」


八幡「ってお前…顔真っ青じゃねえか!どうしたんだ!」



いろは「…あっ…あ…ぁあ、そこ…」プルプル


八幡「あそこ?」





「あはは〜!なにそれ〜!ウケる〜!」

「いやいや、本当だって」




八幡「…?……誰だ?」



いろは「宗佑(そうすけ)さん…」



八幡「…ッ!!」


八幡「そうか…アイツが…そうなのか…!」


いろは「うっ…うえっ…うぼっえ…おえ…」


八幡「お、おい。大丈夫か!」


いろは「いや、いやぁあ…ああああぁあああっ!」



八幡「っ!ダメだ!一色!!」ダキッ


いろは「ぁ…」ハアハア


八幡「帰ろう。家に帰ろう」


いろは「…ああ…ぁ…」







「ん?」

「どうかしたの?」

「いや…気のせいかな。行こうか」

「次どこの店行く〜?」






八幡「(なんとか…気づかれなかったみたいだな…」


















〜 家 〜







八幡「…」


いろは「…」


八幡「…一色、その…」


いろは「…」


八幡「(大丈夫か?なんて…大丈夫なわけないよな)」


八幡「(くそっ!…せっかく…せっかくうまくいってたのに…!)」


いろは「すみませんでした…」


八幡「え?」


いろは「先輩の前で…吐いちゃうなんて…私…ほんとどうしようもないですね」


八幡「…そんなこと…気にすんなよ」


いろは「忘れたかった…」


八幡「?」


いろは「先輩と過ごした日々…今日、久しぶりに会った人達…本当に…本当に楽しかった」


いろは「忘れられると思った…忘れたかった…」


いろは「なのに…あの人の…宗佑さんの顔を見ただけで全部…思い出しちゃった…」


いろは「忘れることなんて…やっぱりもう私は…変わることなんて…」


いろは「もう嫌だ。もう嫌だよ…こんなの…」



八幡「一色…」


八幡「一色、俺は…!」


八幡「…くっ……」


八幡「(俺に…なにができるんだ…なにもできないじゃないか…!)」


八幡「(あれだけ言っといて…結局…また…まただ!)」


八幡「(くそっ…くそっ!)」


いろは「先輩…すごい顔してますよ。怖いです」


八幡「…そ、そうか。悪い…」


八幡「なあ、俺に…俺にできることはないか?」


八幡「(俺じゃ…ダメなのか?)」


いろは「…」



いろは「…先輩は…本当に…先輩ですね…」ニコ


八幡「…え?」




いろは「先輩…1つワガママを言っていいですか?」


八幡「…なんだ?なんでも言ってくれ」







いろは「今日は帰らないでください」


八幡「え?」






いろは「今夜は…一緒にいてください///」






八幡「……え?」

















八幡「…」


いろは「…」





シーーーーーン






2つの布団を敷き

2人は布団の上で向かい合う




八幡「(いやなにこの状況…)」


いろは「…」


いろは「先輩」


八幡「ほへ?」


いろは「もうなに変な声出してるんですか」



いろは「緊張でも…してるんですか?」



八幡「うっ///」ドキ


八幡「(風呂上がりのせいか髪が少し濡れてて艶かしい……っていやいや、ここ最近よく見てただろこいつの風呂上がりの姿は!)」


八幡「し、してねえよ」


いろは「先輩」ズイ


八幡「ま、た、タンマタンマ。どうしたんだよお前。てか服はだけてるぞ直せよ」


いろは「わざとに決まってるじゃないですか」


八幡「わざっ…何言って…」


いろは「先輩…」


八幡「なん…




ダキッ…




八幡「ちょ、ええ…なんで抱きついて……っ……」




いろは「…」




八幡「一色…まさか…泣いてるのか?」


いろは「…めんなさい」


八幡「え?」


いろは「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい」


八幡「なんだよいきなり。なんで謝るんだ」


いろは「先輩を…巻き込んでしまったこと…先輩の…優しさを利用したこと…わかってたのに…わかってたのに…私は先輩に甘えて…甘えて…」


いろは「全部、全部ッ!ごめんなさい!」


八幡「一色…」


いろは「ごめんなさいごめんなさい…」


いろは「ありがとう…ございますっ」


いろは「私を助けようとしてくれて。私を守ろうとしてくれて。嬉しかった…本当に…嬉しかったです」


いろは「もうお前は1人じゃないって言ってくれて…先輩がいてくれるんだってわかって…もう私は1人じゃないんだってわかって…嬉しかったです…」


いろは「先輩…先輩…!」






いろは「好きです…あなたのことが好きですッ!」





八幡「……」


いろは「本当にズルくて…最低な女ですよね…私…」


八幡「はぁ…バカだなあ…お前は」


いろは「え?」




ドンッ





いろは「きゃっ」ドサ


八幡「ああ、ズルい女だな。お前は。こんな時にそんなこと言うなんて…さすがにこの状況…。俺だって男だぞ」


いろは「…先輩は理性の化け物じゃないんですか?」


八幡「限度があるわ」


いろは「…」


八幡「…」


八幡「……一色」スッ


いろは「ま、待ってください」


八幡「おい…さすがに酷いぞ。ここで拒否は。お前がその…誘ったんだろ」


いろは「はい…ただ最後に1つだけ言わないといけないことがあるんです」


八幡「なんだ…?」


いろは「私…もう汚れてるんです」


八幡「え?」


いろは「宗佑さんが酔って帰った時に…無理やり…」


八幡「…っ」


いろは「薬は飲んでたし、病院にも行って…その…妊娠はなかったみたいですが…」


いろは「私はもう…汚れてるんです」


いろは「汚れてるのはそれだけじゃありません」スル


八幡「…!!!?」



八幡「(胸…背中もか、いや至る所に…服を着ていては絶対わからない所にヤケドの跡や切り傷…)


八幡「(あの野郎…わざと…周りに違和感を持たせないように…わかってて目立たない所に…!)」



いろは「…気持ち悪かったら正直に言っていいんですよ」


いろは「ねえ、先輩」




いろは「こんな私を…先輩は抱けますか?」





八幡「…」


八幡「だからお前はバカだって言ってるんだ」ダキッ


いろは「せんぱ…」


八幡「お前がアイツのことを忘れられないって言うなら俺が忘れさせてやる。恐怖も…なにもかも忘れさせてやる。俺が塗り替えてやる」


八幡「俺のことをいちいち気にするのはやめろ!謝るな!それこそ迷惑だ。俺はお前のことを想ってお前のために、俺がやりたいからやってるんだ」




八幡「お前のことが好きだからやってるんだ」




八幡「今だけでもいい、俺のことだけを考えろ。それ以外なにも考えるな。俺だけを求めろ!」


いろは「…」


いろは「…ふふ…」


いろは「酷い…乱暴な告白ですね」




いろは「ああ…」


いろは「私は先輩に出会えて…本当によかったです」









八幡「いろは…いいな?」