2016-12-03 08:50:00 更新

概要

「あんこう小隊」、「特車二課」に配属!そしてついに、暴走レイバー出現の報が…!!

「ガールズ&パンツァー 劇場版」と「機動警察パトレイバー」のコラボSSです。


前書き

祝!「ガールズ&パンツァー 最終章」製作決定&「機動警察パトレイバーREBOOT」発売記念

・「ガールズ&パンツァー 劇場版」と「機動警察パトレイバー」のコラボSSです。

・詳しくは前作に当たるあんこう小隊 誕生までの経緯を記した前作、
【ガルパン】特車二課 あんこう小隊シリーズ【パトレイバー】をお読み下さい。

・約40000字(空白が多いため、実質 約21000字)予定。長編が苦手な方にはお勧め出来ません。

・元ネタ先の時系列、設定のご都合独自設定あり。

・パトレイバー漫画版 第一巻の再構成となります。

以上となります。
何卒よろしくお願い致します。



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〈 第6章. Enter Enter MISSION! です! 〉



~十日目



特車二課棟 訓練場(棟前広場急拵)



チュイイーンッ


バシュムッ


ウィーンッ…



優花里 「五十鈴殿ー!…どうでした?今回の装備構成は」


華 「ふうっ。…前よりも受け身時に動作がスムーズになりました。何より、両腕に楯を装備する事で、左右バランスはむしろ良くなっています」


優花里 「それは良かったです!」


シゲ 「受け流しと受け身と防御に特化した、あんこう二号機ならではの秋山ちゃんプランがハマったね?ついでに、楯の角は丸くして引っ掛からないようにしておいたよ」


優花里 「自分で提案しておいて何なのですが、怖いのは、重量増加に伴う両腕への負担と稼働時間への影響です」


シゲ 「元々、五十鈴ちゃんの高い集中力で無駄な動きがないからね、二号は。データ上では大した影響は無かったと思うよ」


優花里 「それじゃあ装備変更については…」


華 「はい。今後は、今の新型デザインの楯と、左右の両楯装備で行きます」


シゲ 「了解。それと、楯裏のスタンスティック(電磁警棒)は左右一本ずつで二本あるけど、一本はあんこう小隊としての予備として考えて?」


優花里 「いざとなれば、冷泉殿に渡す事も可能って事ですね?分かりました」




後藤 「…ふむ」



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--特車二課棟 ハンガー内



ドリュリュッ…


ガガガッ…



麻子 「…」


榊 「どしたい嬢ちゃん?一号見上げて…」


麻子 「…右膝の違和感が無くなってた」


榊 「やっぱ気がついたか。シリンダーが微妙に歪んでたんで、センター出しといたんだ」


麻子 「ありがとう…ついでに良い?おじい 」クイクイ…


榊 「いいぜ、言ってみな?」 …ンー?アア



麻子 「…ドーファンのカタログスペックと違う。今のままじゃフル稼働で30分保たない」 グラグラ


榊 「お前さんの動かし方でスペックがどうのこうの言われてもなあ…。今現在、実際に体感する稼働時間は?」 グシャグシャ


麻子 「フル稼働で20分。通常稼働で40分。使用しない部分の電気をカットしながらで50分。警戒待機モードで60分」フンス!マンゾク


榊 「…ああ、そりゃ外れのバッテリー積んじまったか、電装系のチェック洩れだな。分かった、すぐ交換すっから後で様子を見てくれや」


麻子 「うん」


榊 「カタログ程じゃ無いにせよ、フル稼働で25分。通常稼働で45分。使用しない部分の電気をカットしながらで60分。警戒待機モードで90分…こいつを目安としてくれや」


麻子 「分かった」




後藤 「…ふむ」



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--特車二課棟 旧社員寮(宿直室・食堂)内



グツグツグツ…


トントントンッ



ゴモヨ 「今日の収穫物と…」


パゾミ 「頼まれてた食材持ってきたー」


沙織 「ありがと!そこ置いといてもらえるかな?」



ドサッ



そど子 「ふうっ。…武部さん、私達も手伝うわ」


沙織 「ありがとう!助かる」



ゴモヨ 「…ちなみに今日の献立は…」


パゾ美 「炊き込みご飯に田舎汁、漬物の添え合わせ?」



沙織 「…今日は整備班員の皆がいつ晩ご飯取れるか分からないらしいから、少ない品目で栄養がまんべんなく手軽に取れる物にしてみたの」


ゴモヨ 「手軽って言うのは?」


沙織 「後でハンガーの脇に置いておいて、とろ火で温めながらお碗にすぐよそえるようにしておこうかと思って。炊き込みご飯は大きめのオニギリにしたいから、それをお願いできるかな?」


そど子 「分かったわ。茶碗二杯によそって合わせたものを、ラップで巻いとけば良いのよね?」


沙織 「うん!ちなみに田舎汁に炊き込みご飯を入れれば、おじや風に掻き込んでもらう事も出来るんだ。…ちょっと下品かもしれないけど、男の人ってそういうの好きかなって」


パゾ美 「何それ美味しそう。私も後で試してみよ」



淵山 「…おうお前ら。アネサンの足、引っ張るんじゃねえぞ?」


そど子 「明らかに態度が違い過ぎない?アンタらの手のひら返しっぷりには呆れて怒りを通り越すわ」


淵山 「戦いと立場は臨機応変。俺達ぁ実績をかうんだよ!頭と対応は常に柔らかくしないとな」


そど子 「バンカラ風情がこしゃくな感じ」



淵山 「…ん何ぃ~っ?」


そど子 「…ん何よう?!」



沙織 「はいはい!時間無いんだから早くやっちゃおう?」


淵山 「ウスッ!」


そど子 「ちょっ!…調子狂うわね~っ…」




後藤 「…ふむ」



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--特車二課棟内 2階 隊長室



みほ 「…今日午前中までの訓練記録、報告書終わり、っと。…五味岡さん、お茶いかがですか?」


五味岡 「お疲れさん。ありがたい、頂こうかな?」


みほ 「はーい!…~♪」ヤッテヤルヤッテヤルゼ~♪



後藤 「…ふむ」ニヤニヤ



みほ 「?どうしたんですか?ニコニコして」オチャデス


後藤 「ん~?…こんな年のオジサン捕まえてニコニコも無いだろ。こういうのはね?イヤらしい、ニヤニヤした笑い方って言うの」アリガト



みほ 「…別にイヤらしくは見えませんけど…嬉しそうには見えました」


後藤 「いや、な?ようやく皆が落ち着けるここまで辿り着けたな、と思ってね…ん?」



プルルッ,プルルッ,プル…


カチャ



後藤 「はい、こちら上海亭…」



松井 『…もしもし後藤さん?下手な冗談は止めてくれないか』


後藤 「おう松井さん。また何か動きがあった?」


松井 『それよりも佐久間から聞いたぜ後藤さん。黙ってるなんて水臭いじゃないか』


後藤 「何の話?」


松井 『大洗 戦車道チームのメンバーを第二小隊がわりに入隊させたんだって?これが今回のアンタの「超法規的措置」って訳だ』


後藤 「人聞きの悪い事を。ちゃんと真っ当な筋を通して『お願い』したの。第一、メディアにあれだけ告知してたのに知らなかったそっちが悪いよ」


松井 『こちとら肩書きだけは立派だが、やってる事は裏家業だからね。世間一般の情報には疎い所も出てくるんだよ』



後藤 「で?用件は何よ」


松井 『急ぎの要件じゃない。ちと耳に入れておこうと思っただけなんだが…』


後藤 「…どうした?」


松井 『…情報への正当な見返りを要求する』


後藤 「…はぁ?」


松井 『今アンタん所来てるの、あの優勝校の隊長さんだろ?その人柄から他校からの受けも良いという情報もある。そこで、だ…ドゥーチェのサイン、もらってきて貰えないかな?』


後藤 「アンツィオ主将のサインだあ?!…公私混同も甚だしいな。俺はね?そういうのはしない主義なの」



みほ 「…嘘つきさんだ…(でも隊長、楽しそう。男の子みたい…)」クスクス



松井 『…とまあ冗談はさておき、こっからが本題だ。先々日、つまり一昨日の夜になるが、仙台港に運び込まれた暴力団関係の密輸品の中の「一部」が、何者等からの手によって強奪された』


後藤 「…そのブツの「中身」とは?」



松井 『篠原重工製 97式 TFV-EX。通称「クラブマン・ハイレッグ」。

国内規準なんてヌルイ代物なんかじゃない…海外輸出用の強力な「レイバー」だ』


後藤 「クラブマン・ハイレッグ…ああ。『タカアシガニ』の事か」


五味岡 「…!」


松井 『タカアシガニ?何だいそりゃ』


みほ 「!…クラブマン・ハイレッグ…タカアシガニさん?」カチカチカチッ


後藤 「ウチのが以前相手にした時に付けたアダ名さ。人型とは程遠い、縦長のカニみたいな形で、巨大な爪形の四本脚でシャカシャカ動き回るだろ?」ユビワキワキ


みほ 「…これだ…クラブマン・ハイレッグ…『タカアシガニ』さん…」ケンサクシュウリョウ


後藤 「それにしても検証に随分と時間がかかったじゃない?」


松井 『そう言うなよ。正規ルート品じゃ無いから被害届が出る訳じゃない。元はといえば、この件の責任の落とし前をどうするかでのイザコザから芋づる式に発覚した事だから、確証を得るまでに時間がかかったんだ』


後藤 「レイバー程の大物を何日も人目に付かないようにするのは、物理的にも規制的にも『陸』では難しいだろうな…という事は『水場』から、か。それでも引っ張って5日持てば良い方か…」


五味岡 「…」ギシッ


松井 『典型的な過激派環境保護団体「海の家」のやり口さ。足のつかない形で「状況」を用意し、それを知らない「シンパ(同志)」一人に現行犯を押し付ける…。昔ながらのいつものやり方だ。ま、ツメが甘いけどな?』


後藤 「こういう場合、足が付きにくいものか、付いても後腐れの無いものと相場は決まってる。今回の場合は後者…つまり、早々に実戦投入を想定しての事だろうから三日持てば良い方か…松井さん?何が急ぎじゃ無いだよ。今日当りヤバいじゃないの」



みほ 「!?」



松井 『…あと、こういう情報もある』


後藤 「まだあるの?」



五味岡 「…」



松井 『そりゃそうさ。「海の家」と同時タイミングで「状況」を起こすのが、今回の作戦の肝な訳なんだから…過激派環境保護団体「地球防衛軍」にとってはね?』


後藤 「どちらも、自分が主役で、相手の方が誘い水の脇役って考えてるだろうけどな」


松井 『「海の家」に比べ、SNS等の新しい派手なやり方で有志を募る「地球防衛軍」の方が動きは読みやすいんだ。ただし…』


後藤 「『地球防衛軍』シンパの中には便乗派や愉快犯も多いから、実際の「状況」下においては被害が拡大…「炎上」する危険性を常に秘めている」


松井 『そういう事。んで、そのシンパのメンバー構成と所属先から、ある程度の関連レイバーを割り出してみたんだが…』


後藤 「一般層が多い『地球防衛軍』シンパなら、あくまでも規制範囲内のレイバーでしょ?なら『参戦体数』以外は、そんなに気にしなくても…」


松井 『一人「大型特機」免許取得者がいる。この日本だと、メーカー特注のワンオフ機か…』


後藤 「日本唯一の一般販売『大型特機』モデル、菱井インダストリー製『タイラント2000』か…こいつ単体は大した事は無いんだが、弱点の背部を何者かにフォローされると急にやっかいになる。その大きさから来るパワーを真正面から相手取るのは愚の骨頂だからな」


みほ 「…タイラント2000…」カチカチカチッ


五味岡 「…」



後藤 「体数の方は予測つかない?」


松井 『流石にそこまではね。ただ末端の規模は大きくても、中央指揮系統が「海の家」に比べて脆弱な上、基本根性無しな連中だから、多くても二機が限界なんじゃないかな?何しろ連中と来たら…』


後藤 「金が無い上にケチだからな」


松井 『…とまあ、少ない時間と予算・人材を遣り繰りして、これだけの情報をまとめあげるのに、この俺もどれだけ苦労している事か…』


後藤 「そんな情報までは聞いちゃいないよ。でもま、貴重な情報をありがと。この借りは…」


松井 『ドゥーチェと大洗主将のサインで。…だからこそアンツィオの事は他人事に思えなくてねー?特に主将には同情にも似た親近感を覚えるんだよ』


後藤 「増えてるじゃないの。いずれ精神的にお返しすっから。はい。そんじゃ、また」



カチャンッ



後藤 「ったく…」


みほ 「あ、あの…わ、私のサインで良ければ、その…」


後藤 「あー、気にしなくて良いよ。あんなのに対応してたらキリ無いって」


みほ 「は、はあ…」



後藤 「さあて、と…いよいよだ。二人とも、話は聞いてたね?」


五味岡 「ええ」


みほ 「…はいっ!」



後藤 「条件が整ってきた。恐らく今日の夜辺りが山となる。各メンバーにはそのつもりで対応するよう心がけを…」



キューイ!キューイ!キューイ!キューイ…



五味岡 「!!」…ガタンッ


みほ 「?!」 ビクッ!



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--特車二課棟内 2階 資料電算機室(冷蔵庫)



優花里 「…『運用情報統合システム』内の、建物も含めた地図データが立体で登録されているのであれば、レイバー運用時に反映させて、自動で建物や障害に当たらないようにすれば、乗り手の負担を下げる事になりませんか?」


シゲ 「次世代レイバー機能の一つとして検討中の『N.N.S.(ニューロンネットワークシステム)』ってのがそれに当たるんだけど、個人的には余りお薦め出来ないかな」


優花里 「何故でありますか?」


シゲ 「まずレイバー犯罪の温床が、バビロンプロジェクト推進による建築ラッシュから来るものだってのを忘れちゃいけないよ。日夜変化する建築途中の建物や周辺関係のデータ更新がまず現実的じゃ無い。今は個人データの扱いすら敏感に成らざるを得ないのにさ」


優花里 「他にも理由があるんですね?」


シゲ 「こっちの方が問題かもよ?建物を盾にされて、人質ならぬ『物質』扱いされちゃったら、一瞬でもこちらは動けなくなっちゃう。やっぱり現場の咄嗟の判断が必要だと思うわけ」


優花里 「あー…分かりますそれ。よく冷泉殿が練習合間に休もうとその手を使って来るのですが、流れが止まっちゃうんですよね…」



キューイ!キューイ!キューイ!キューイ…



優花里 「?!これって…」


シゲ 「!こうしちゃいられない…秋山ちゃん?コイツぁ『出動要請』だよっ!」



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--特車二課棟 ハンガー内 あんこう小隊 レイバー駐機エリア



淵山 「…確かにウチには、他にもライアットガンとか、特殊砲弾とかも有るけどさ?非力なドーファン改じゃどれも手に余る代物だ」


華 「ふむふむ…」メモメモ


淵山 「でもよ?一般レイバー相手なら、通常のリボルバーカノンにホローポイント弾で充分お釣りが来る…要は当てる事よ。片目つぶって、よーく狙う。コレよ!」


華 「なるほどー…?」



キューイ!キューイ!キューイ!キューイ…



華 「これって…」


淵山 「回せーっ!…五十鈴さんは出動準備をして自機前に待機っ!!」


華 「…はいっ!」



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--特車二課棟 ハンガー内 あんこう小隊 車輌定機エリア



榊 「よっ、と…嬢ちゃん、八番スパナ」ガチガチ


麻子 「うん。…はい」カチャ


榊 「おう、悪ぃな…ん?」



キューイ!キューイ!キューイ!キューイ…



榊 「…ここまでだな。嬢ちゃん?」


麻子 「ん。自機前に待機する」コクリ


榊 「上出来だ…第一小隊の機体から幌ぉ外せぇっ!第二小隊の機体はキャリアに載っけろ!モタモタしてる奴ぁブッ倒すぞっ!!」



整備班員共 「「「ウスッ!!!」」」



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--特車二課棟 ハンガー内 脇



キューイ!キューイ!キューイ!キューイ…



そど子 「?!武部さんっ!!」


沙織 「分かってる。先に自機前に待機してて?指示だけしたら私もすぐ向かうからっ!」


そど子 「分かったわ。ゴモヨ、パゾ美、行くわよっ!!」


タダダダッ!


ゴモヨ 「…特殊車輌系はアイドリング状態で待機…!」


パゾ美 「武部さんの分もシステムも立ち上げておかないとっ…!」



沙織 「…私の分はいらないから、他の第一、あんこう小隊みんなの分のおにぎりと密閉容器に入れた田舎汁を渡して上げて?道中で食べれるようにね?!皆も時間見つけてちゃんと食べるのよ!!」


整備班員共 「分かりましたっ!」


整備班員共 「アネサンも、頑張って下さいっ!」


沙織 「うん、ありがと!じゃあ後はよろしくね?」


タタタッ…



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--特車二課棟内 2階 隊長室



キューイ!キューイ!キューイ!キューイ…


ガコッ…ピー『渋谷区神南にて201発生、特車二課に出動要請…』ガピー




みほ 「201…『街中での未確認レイバーによる暴走状況』!?」


五味岡 「…おいでなすったか」


後藤 「さて、まずはどちらが先か…。二者択一、選択をお願いしますって訳だ…」ニヤリ




キューイ!キューイ!キューイ!キューイ…


ガコッ…『渋谷区神南にて201発生。目標は土木作業用レイバー「タイラント2000」「ブルドッグ」の二機と判明。特車二課に出動要請。繰り返す…!』



後藤 「…現時点では『地球防衛軍』の方が先にお出ましと言う訳か…」



五味岡 「…西住さん?どうする?いけそうかい?」


みほ 「え?あ、あ…ご、五味岡さん?一体何を…」


五味岡 「いけそうかい?と聞いてるんだけど」


みほ 「あ、は、はい。命令とあれば…」



五味岡 「自発的じゃないんだね?…ま、そりゃそうか。所詮はたかだか一週間の体験入隊だもんな?」


みほ 「ご、五味岡さん?一体どうしたと…」


五味岡 「…命令だからで割りきれる内は良いけど、悪いがこの仕事は、戦車道とは違って命懸けだよ?君にその覚悟なんか無いだろう?」


みほ 「そ!そんな事はっ…」


五味岡 「…『目標』に『勝つ』自信も、そのつもりすら無いのなら、相手は全て第一小隊で請け負うよ」


みほ 「そ、それは無茶です!…私たちも参加します」


五味丘 「ハッ!いくら戦車道の優勝者だからといって…ま、お手並み拝見、と行こうか?」


後藤 「…」



みほ 「…五味丘さん…」



後藤 「…西住?」


みほ 「は、はい…」


後藤 「仮に、だ…この普通の二機体を相手にするのと、強力な一機体を相手にするの。どちらかを選んでも良いと言われたら…お前さん、どちらを選ぶ?」


五味丘 「な?!…いくら後藤隊長でも、我々を差し置いてそんな権利はっ…!」


後藤 「まあ、待ってください…どうだ、西住?」



みほ 「…ならば私は、今の警報には対応しません。五味丘隊長率いる第一小隊にお願いします」


五味丘 「自信が無いと言うのなら、この目標は我が第一小隊で請け負うよ。無理はしない方が良い…」


みほ 「はい。その通りです」



五味丘 「…何だって?」



みほ 「…本来、警察では勝った、負けたを競う物では無いと思いますが…『目標をより短時間で拘束し、被害を最小限に食い止めるか?』というのが『勝ち』というのであれば、『両方』共に勝たなければ意味がありません。ならば『どちらも勝つ』方を選ぶのは当然です」


五味丘 「…な…?」


みほ 「第一小隊は一つの能力に特化せざるを得なかった私たちとは違い、個々に状況の幅に対応できるだけのスキルと経験を兼ね備えています。ですから相手が二体でも対応可能なはず」



五味丘 「…」



みほ 「…ですが、私たちは違います。だからこそ、多少個体が強力でも、数の有利さをしっかり保って対処したいんです。

…私の言っている事に何か間違いがあれば仰って下さい。出来る限りの対応をするつもりですから」



五味丘 「…いや、驚いた。緊急時の君は実にクレバーだ。普段の物腰の柔らかさとは全く違うんだな…いや、失礼した」


みほ 「いえ。五味丘警備部長のお話はもっともです。心構えの良い参考となります」


後藤 「そこまで。…二人とも、意地の悪い聞き方をしてすまなかったな?全ては俺の不徳とする所。どうか許してほしい」


五味丘 「いえ!後藤隊長は何も…私の方こそ大人気なく、申し訳ありませんでした!」



みほ 「あ、こ…こちらこそ、若輩者の立場で何を言ってしまったのかと…」 オロオロ


五味丘 「おいおい…さっきの勢いはどうしたんだい?」 フッ



後藤 …(ようやく目覚めたか?…だが、これが西住流と言うには、まだ甘すぎるな…)



五味丘 「…もっとも、始めから選択肢は無いんだけどね?この案件、実は俺たちが行くしか無いんだよ」


みほ 「…え?それはどういう…」


後藤 「…前にも話した通り、体裁上お前さん方はあくまでも『一日署長』の拡大版…『ゲスト』として呼ばれてる訳だ。言い訳の筋書きとしては『特車二課に正規の残存メンバー無。故に仕方なく』という大義名分がいるって訳」



みほ 「…あっ!?最初から五味丘さんと組んで『煽って』らしたんですね?」



五味丘 「はははっ…いや、済まなかったね?本気になった西住流って奴を、ぜひ一度この目で見ておきたくてね。『この件に関しては』全て僕のせいだ。いや、悪かったね?」


後藤 「…そういう言い方をされると、普段の悪巧みは全て俺のせいになっちゃうじゃないの…五味丘隊長代行、改めてお願いできますか?」


五味丘 「…無論!五味丘隊長代行、要請により出動します!」 カッ


みほ 「五味岡さんっ…」


五味丘 「西住さん、さっきの件では本当に済まなかったね。さっきとは違う意味で…『お手並み拝見といこうか』?」


みほ 「…はいっ!『受けて立ちます』!!…五味丘さんも頑張って下さい」 ニコッ


五味丘 「ああ!あんこう小隊の皆にはそのまま待機と伝えておくよ。…第一小隊、出るぞっ!!」



・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・



みほ 「ふう…もう、隊長?相変わらずお人が悪いですよ…」 ムゥ…


後藤 「すまなかったな?…第一小隊は元々、機体性能の低さから来る不満を以前から抱えていてな?」


みほ 「そうは見えませんでしたが…」


後藤 「AVシリーズがあれば、第二小隊なぞよりよっぽど上手く働ける…そういう自負さ」


みほ 「じゃあ五味岡さんの、私たちに対する見方は、あながち嘘でも無かったんじゃ…」


後藤 「いや。あれは第二小隊への見方だな。同じAVシリーズとはいえ、非力なドーファンを使っているお前さん達には、俺からの無茶ぶりも含め、まあ同情の方が上回るだろうよ」


みほ 「そうですかね…?」


後藤 「まあ、ギリギリを戦う職業警官だ。プライドの高さは決して悪いことじゃないんだが…エリート故、自由気質な特車二課から浮いてしまってるのが前から気になっていてね?」


みほ 「ひどい。私たちはショック療法の材料じゃないんですよ?」


後藤 「まあぽっと出の可愛い女の子をチヤホヤしてたら、普通は腹立つよなあ…真面目に命かけてる立場からしたら。後でちゃんと謝っておこう…おい、西住?」


みほ 「そ…そんな…可愛い女の子だなんて…」 テレテレ


後藤 「…おい…あくまでも冗談だからな?」


みほ 「…はい」 シュン


後藤 「ゼクシィ武部かお前さんは。…でもな?これも前に言ったはずだ。お前さん達が任務を遂行できると信じて、俺はお前さん達を見い出したんだって事」


みほ 「…」 ニコニコ


後藤 「…そしてもちろん、第二小隊もだ。この俺が吟味に吟味を重ねて選び抜いたライトスタッフだもん。アイツ等は決して愚連隊なんかじゃない…」


みほ 「ふふっ…あの時と同じ。私たちを口説いてくれた時と」


後藤 「…口説くという言い方は誤解を招くな。せめておだてられたにしておいてくれない?」


みほ 「…はい。おだてられておきます♪…でも、本当に次の目標がタカアシガニさんかどうかは…」


後藤 「こればかりはバクチだな?だが松井さ…とある筋からのたれ込みで、『奴ら』の狙いが『同時に』という事は既に判明している。なあに、30分もしないうちに答えは出るさ」


みほ 「…はい」


後藤 「その間に…『タカアシガニ』が想定目標とした場合の、お前さんの基本戦略って奴を先に聞かせてくれるか?」


みほ 「…私のいる戦車道では、戦略上、機体スペックがシビアに反映される世界です。砲の威力が装甲を上回っていれば、どんな小技を駆使しても貫通されてしまう事に変わりは無い。…つまり『柔よく剛を制す』はまず有り得ないんです」


後藤 「…ふむ」


みほ 「ドーファンがタカアシガニさんに勝るのは、運動性能だけ。しかも、脚下に装備された車輪移動による最高速度は、ドーファンの遥か上を行きます。仮に上手く接触・近接戦闘に持ち込めたとしても、非力さ故に決定打を与える事は極めて難しいと考えます」


後藤 「…(さっきの検索だけで、ここまで情報を集めたのか?)」


みほ 「過酷な環境下での動作を想定し、装甲が厚く外部干渉をトコトンまで制御する機体構成…電磁警棒が充てに成らない事も予想されます」


後藤 「…ちょい待ち。さっきの検索だけでそこまで分からないだろ?いつ調べてたんだ」


みほ 「?…ああ。さっきのは形状の最終確認のために検索しただけで、大まかなレイバーの仕様は大体覚えてきてますから」


後藤 「おい。全レイバーがどれだけの種類あると思ってるんだ?」


みほ 「?必要な情報を事前に調べておくのは当然ですから。それに戦車に比べればまだ歴史の経っていない分野でもありますし、総ざらいは比較的楽でしたよ?」


後藤 「…(怖えよ、西住流…)」


みほ 「話の結論として…今回の作戦における決定打、最後の鍵は、華さんのあんこう二号機による射撃のみと言う事になります。戦術の基本は、あんこう二号の射撃を確実に決められるよう作戦を立てていく訳ですが…」


後藤 「続けて?」


みほ 「まずはタカアシガニさんの『速い脚を止める』事。あんこう二号の高い射撃能力で、車輪移動能力を完全排除します。これでようやく『対等以下』」


みほ 「次に、あんこう一号とキャリアによる補佐という『型』により、数の面でスペック不足を補い、目標の体力及び戦意低下を促しつつ、逃亡経路と意思を完全に絶ちます。これでようやく『対等』」


みほ 「…最後に、先ほどお話した『射撃による完全機能停止』。当初のあんこう二号が合流・挟撃する事で『対等以上』となり…勝負を決める事が出来ます」


後藤 「…(おいおい…こりゃ数でひたすら押す王道の『西住流』とは程遠い。搦め手じゃないか。さしずめ『大洗 みほ流』と言ったところか?)」



みほ 「この三段階の作戦展開をより確実な物にするため、周辺の地形や建物分布などの周辺環境を充分に考慮し、こちらが有利となる場所…即ち『ポイント』に随時導いていく流れを取ります」


後藤 「分かった。後は奴が出てきた場所の近辺に、その条件に見あった環境を見出だし、俺はその周辺配置を行えば良い訳だ」


みほ 「はい。作戦時には各『ポイント』毎に…

『速い脚を止める』場所に『ポイント1』。

『体力と気力を奪う』場所に『ポイント2』。

最終防衛ラインとなる『挟撃』場所を『ポイント3』と名付け、呼称するつもりです」


後藤 「タカアシガニに対して最も注意すべき点は?」


みほ 「…最も恐れるべきなのは、タフさと共に兼ね備えた長稼働時間です。ドーファンの約1.5~2倍の稼働時間を誇るタカアシガニさんに対し、ポイント2と3で一号二号交代での再充電を行う隙を狙います」


後藤 「フォワード二人に対しては?」


みほ 「タカアシガニさんは、構成上、胸部を腰から回転させることで死角を無くせます。弱点である腰は深く、中々決定打撃を打ち込めないと思います。麻子さん華さん共々、『例の型』によって『タカアシガニ』さんへの煽りと消耗を狙ってもらい、最終的にはタフなタカアシガニさんの捕獲に期待します」


後藤 「…ちゃんと『型』を使ってくれてるんだな?」 ニヤリ


みほ 「当然です。後藤隊長と佐久間教官から教えて頂いた、大切な指標ですから」 ニコッ



・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・



後藤 「…ちなみにさ、今回の作戦って、何か名前とか付けてるの?」


みほ 「そうですね…。ではタカアシガニさんに因んで『さるかに作戦』というのはどうでしょう?」


後藤 「…あんま上手くないね?」


みほ 「え…?そうですかぁ?」ガーン



ヒューイ!ヒューイ!ヒューイ!ヒューイ…!


『…第七管区より通報。隅田川 永代橋にて201発生。目標は篠原重工 97式TFV-EXと判明。現在、隅田川を北上し台東区駒形方面に向け水上を踈行中。特車二課、全機出動せよ。繰り返す…』ガピー



…カッ!



後藤 「…決まりだな!」



みほ 「はいっ!」



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--特車二課棟~ハンガー内 連絡通路



カツ,カツ,カツ,カツ,カツ…!



後藤 「皆をガレージ内、総合指揮車の前に集めておいてくれ」



みほ 「了解しました!」



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--特車二課棟 ハンガー内



リー,リー,リー,リー……



ガンガンガンッ


…チュイインッ


コッチハアトスコシッ!


ヨウシ,テノアイタモノヲマワスッ…!



カツッ!


みほ 「…みんな!」


沙織 「遅いよ、みぽりん?」


みほ 「ふふっ、ごめんね?」


優花里 「いよいよ本番でありますか…」


ゴモヨ 「き、緊張してきた…」


華 「お弁当が楽しみです」


パゾ美 「何というマイペースぶり…」


麻子 「…緊張が長すぎて眠くなってきた」


そど子 「ちょっと冷泉さん?こっからが本番じゃないの!」



後藤 「…よし。皆、集まっているな?」


みほ 「敬礼!」


あんこう小隊 「「…!」 」ザッ!



整備班員共 「「「…」」」ザシャ-ッ!



麻子 「…何で整備班まで並ぶんだ」ヒソヒソ


優花里 「…何か整備班員の方々、出入り前のヤ○ザみたいですう」ヒソヒソ


華 「…タマァ獲ったるでえ!みたいな感じですね」ヒソヒソ


沙織 「あんた達、少し静かにして?!」ヒソヒソ



後藤 「…この短期間にレイバー戦をモノにしてくれた諸君らに、俺から言う事は何も無い。全てはこの時のために準備していた事だ。西住隊長代理の命に従って、思う存分暴れてこい!」



あんこう小隊 「「はいっ!」」



後藤 「西住、号令」


みほ 「はい!…って、え、ええっ?そういうのは普通隊長の…第一、号令って何を言えば…」オロオロ…


後藤 「…隊長代理はアンタでしょうが。それにね?こういう時こそ、何時も通りに振る舞う事が大事なの。マスコミの目も無いし、細かい事は気にしないで良いから」


みほ 「何時も通り、って…」


後藤 「うん。『何時もの』奴、やって?」



みほ 「ん、んんっ…それでは皆さん。『目標』タカアシガニさんに向かって『パンツァー・フォー』!!」



ザワアッ!



ウ゛オ゛オ゛オ゛オ゛ー゛ー゛ッ゛!!



整備班員共 「こ…これはっ…?!」


整備班員共 「軍神 西住のパンツァー・フォー…ついに、キタ━(゚∀゚)━!」


整備班員共 「コレで勝てるっ!」



ニッシズミッ!ニッシズミッ!ニッシズミッ!…


チョッ?!ミ,ミナサンッ,ハズカシイカラヤメテ,ヤメテクダサイッ…!


アッンッコウッ!アッンッコウッ!アッンッコウッ!…


オッ,オドリマセンカラネッ?!



後藤 「…やっぱ良いねえ…」ニヤニヤ


みほ 「もうっ隊長ったら///…ぜっ、全員搭乗!」カァッ



ダダダッ…!



ガコンッ…『…~♪』ガピー



優花里 「…ハッ?!どこからともかくガレージ内の安物のモノラルスピーカーから、間延びしたテープのような音質で聞こえてくる何時ものあのメロディがっ…さ、さ、サイッコーだぜぇえっ!!」


シゲ 「頑張れよ秋山ちゃん?!後で俺らも現場で合流すっからね!」


優花里 「心強いです!では不肖、秋山 優花里。現場に向かいますっ!!」ビシッ



麻子 「…おじい。ちょっと行ってくる」


榊 「おう、俺も後から向かうわ。怪我だけはしねえように、な?」グシャグシャ


麻子 「…うん//」グラグラ



淵山 「五十鈴さんよ?ビシッと弾丸(タマ)、当ててこいやぁっ!!」


華 「ご期待に沿えるよう、全力を尽くします。では、行ってきますね?」



整備班員共 「アネサァーンっ!」


整備班員共 「弁当、旨かったすよーっ?!」


整備班員共 「応援してまさあ!無事なお帰りをお待ちしておりますぜ?」


沙織 「やだもー♪それじゃあ皆、留守はよろしくねー?!」



淵山 「おらぁっ!内輪差見誤って、ホイールぶつけんじゃねーぞ?」


整備班員共 「3.8m以下の橋桁下、潜ろうとすんなよなっ?!」


そど子 「ちょっとーっ?!アンタ等はー…」


ゴモヨ 「明らかに私たちだけ…」


パゾ美 「扱い、違わなくない?」



後藤 「…そいじゃボチボチ行きますか、っと…東京、詳しくないでしょ?しっかり着いてきてねー?」


みほ 「はいっ!…それでは皆さん、出動しましょう」



ブロロロローッ…



優花里 「あのう…後藤隊長。警察の出動とは、いつもこういう物なんでしょうか?」


後藤 「そんな訳ないじゃない」


優花里 「…ですよねー?」


後藤 「こんなバカなの、ウチ(特車二課)くらいな物だよ?」


みほ 「…あ、あはは…」



ファン,ファン,ファン,ファン,ファン…



-----------------



--特車二課あんこう小隊~各車、隅田川 東京台東区駒形方面に移動中



ファン,ファン,ファン,ファン,ファン…



優花里 『…我々は「猿」ですかあ?』ザザッ


麻子 『最後、猿は蟹に負けるんだぞ?』ザザッ


みほ 『ああっ?皆にも作戦名が不評だなんて…』ザザッ


華 『モグモグ…まあまあ。最初は猿は蟹に勝ってる(?)んですから…モグモグ』ザザッ


沙織 『華?お弁当食べながら話さない』ザザッ


そど子 『この際、作戦名なんてどうでも良いわ。それより…』ザザッ


みほ 『どうでも良い?』ガーン


ゴモヨ 『まあまあ西住隊長、落ちこまないで』ザザッ


パゾ美 『うん。早く作戦展開場所を決めてほしいかな?』ザザッ



後藤 『…で、どうだ西住、秋山?候補は決まったか?』ザザッ



ピピッ…ツーッ



みほ 『…私は東京のこの辺りの土地勘が全く無いのですが、この辺りで「最終防衛ライン」に設定できそうな「広場」は、ざっと見たところ「上野公園」辺りしか思い付きません…』


優花里 『私も西住殿と同じ意見です』


後藤 『浅草・上野と隅田川を隔てた向かい側にある押上に「東京スカイツリー」が出来てから、この辺り一体は軒並地域開発が進んだからな。昔は手頃な空地が山程あったんだが…』


みほ 『では「最終防衛ライン」…「ポイント3」は、目標の現在地からかなり離れますが「上野公園」という事で良いですか?』


後藤 『…西住。一般市民の財産を守るという観点から市街戦を避けるのは分かるが…あそこはあそこで、貴重な建物や文化財が山程あるぞ?戦車道と違い、保証する先は無い。そこはどう考える?』


みほ 『…』


後藤 『…(見落としてたかな?)』


みほ 『…大丈夫です。傷は一切つけさせません』


後藤 『おいおい。そりゃどういう理屈で…』


みほ 『この時点で挟撃が完成していればキャリアは二台体制となっています。園さんと後藤さんには、常に「目標」と「建物」の間に壁を作るよう配慮して行動してもらうだけです』


そど子 『「目標」の動きを牽制しながら、「建物」も守らなきゃならない訳?』ハァ…


ゴモヨ 『相変わらず西住隊長は無理無茶難題を…』ハァ…


みほ 『皆さんを「信頼」してますから。よろしくお願いしますね?』ニコッ


そど子 『はいはい。全くしょうがないわね…』ヤレヤレ


ゴモヨ 『やるしか無いですもんね…』ヤレヤレ


後藤 『…ふっ(…これだ。やはり伊達に修羅場をくぐってきていない。この割り切りと覚悟は、プロと言えど中々持てるもんじゃ無いからな)』


みほ 『後藤隊長…』


後藤 『…分かった。早速本庁に連絡して、隅田川沿いから上野公園周辺にかけて交通規制をかける。その間にお前さん達は、ポイント1と2の選定を行ってくれ』


優花里 『了解です。では「ポイント3」を「上野公園」として、五十鈴殿の射撃による「足止め」を行う「ポイント1」を先に決めておきたいのですが…』


みほ 『候補は?』


優花里 『「言問通り」上です。道幅が広く、高低差も少なく、かなり先まで見通しが効きます。「タカアシガニさん」の「脚部・車輪部」を狙い撃つには格好の環境で、尚且つスムーズに上野公園へと導けます』


みほ 『…という事は、最悪撃ちミスを考慮して、後ろの空間が広く奥まった方が良いから…』


優花里 『「鶯谷駅前」に「ポイント1」を設置。入谷交差点方面に向け、「言問通り」を進行してくる「タカアシガニさん」を正面から狙い撃つ。という感じでいかがですか?』


みほ 『…うん、私もそれで良いと思う。そうなると「ポイント2」は自然と決まってくるね?』


優花里 『はい。「言問通り」から「上野公園」に引きずり込むために、その出入口にあたる「浄名院前」になりますね』


後藤 『上野公園一帯、抑えたぞ。確認するが、

速い脚を止める「ポイント1」…これが「鶯谷駅前」。

体力と気力を奪う「ポイント2」…これが「浄名院前」。

そして決着場所であり最終防衛ラインとなる挟撃場所の「ポイント3」…これが「上野公園」。

…これで間違いは無いな?』


みほ 『はい』


後藤 『分かった。…特車二課 後藤から哨戒任務中の「桜吹雪12」へ。「目標」の状況と現在位置を報告されたし』ザザッ



-----------------



--警視庁哨戒用ヘリ「桜吹雪12」~東京台東区駒形周辺を飛行中



バタバタバタバタ…



『…桜吹雪12より現場急行中の特車二課 後藤隊長へ。目標は柳橋で警備中だった交通管制用レイバーと接触。格闘後「目標の上陸阻止に成功」した。目標は更に隅田川を北上。現在、蔵前橋に接近中』ザザッ



-----------------



--特車二課あんこう小隊~各車、東京台東区上野公園方面に行先変更し尚移動中



後藤 『了解。引き続き警戒に当たられたし…(…隅田川か神田川辺りに引きずり込まれたってのが本当の所なんじゃないの?)』


沙織 『くうっ…上野や浅草は観光や遊びに来たかった所なのにぃ…っ』


麻子 『気持ちは分かるが、今はそれどこじゃないだろ…っと』



キキイッ…


パパーッ,パパッ…


ザワザワ…



そど子 『渋滞…』


後藤 『冷泉、今のうちに武部と運転を代わってやってくれ』


麻子 『やれやれ…』


沙織 『え?え?』


ガチャッ


後藤 『武部。キャリアの「運用情報統合システム」を使って、西住から作戦概要データを受領後、安全面のチェックを十分で終わらせろ。優先順位の高い順からまとめて、まとめきれなかったらメモで構わないから俺に回せ!』


沙織 『はっ、ハイッ!』


みほ 『…はい沙織さん?データ、転送したよ!』



ピピーッ,ピピーッ…



交通整理員 「…首都高は江戸橋で事故がありましてお話になりません!」


後藤 「昭和通りの車を開けさせてくれ」



-----------------



--警視庁哨戒用ヘリ「桜吹雪12」~東京台東区駒形周辺を飛行中



バタバタバタバタ…



『…桜吹雪12より現場急行中の特車二課 後藤隊長へ。目標は蔵前橋を通過し駒形橋に接近中。江戸通り、馬道通り、浅草通り、封鎖完了』ザザッ



-----------------



--特車二課あんこう小隊~各車、東京台東区上野公園に移動中



…パシッ!


沙織 『…ふうっ!隊長?チェック終了しました。今そちらに転送します!』ザザッ


カチャチャッ


後藤 『おう…確認した。良いまとめ方だ、お疲れさん!』ザザッ



ブロロッ…



沙織 「はぁ~っ…」グッタリ…


そど子 「お疲れ様?武部さん」ポンポン


後藤 『…いいか西住?上野公園に到着後、そのままあんこう一号チームを「ポイント2」、あんこう二号チームを「ポイント1」に連れて行ったら、俺はそのまま戻らんからな?」ザザッ


みほ 『はい。皆に上野公園までの道のりと距離を逆送して伝えるためですね?」ザザッ


後藤 『そうだ。お前さんはそのまま「ポイント3」に残り、あんこう小隊の指揮に回れ。以降、俺の小隊に関する権限は、隊長代理のお前さんに全て委ねる』


みほ 『…了解です。隊長は、周辺の交通規制指示や封鎖指示ですね?』


後藤 『ああ。だがそれだけじゃない。お前さん達への安全策やら何やら、ま、色々な?』


みほ 『安全策、ですか?』


後藤 『ああ。前に話さなかったっけ?今回の案件の許可をお前さん達の生徒会長に取り付ける際、とにかく安全面に気を配るよう幾つかの条件を提示したって』


みほ 『会長が…』


後藤 『その一つが、お前さん達の自動車部にお願いした特殊カーボンによる装甲化だったわけだが…実は後二つ程仕込みをしてある』


みほ 『二つ?』


後藤 『ただなあ?残り二つはきちんと発動するか甚だ疑問…つまり当てに出来んのよ。だから期待はするな。全てお前さん達の実力でもってのみ「目標」の驚異を排除しろ』


みほ 『元よりそのつもりです。了解しました!』


後藤 『うん。さて、そろそろ到着だな…』




-----------------



--【ポイント3】上野公園



リー,リー,リー,リー…



ピピーッ,ピピーッ…


ドルルル…



みほ 「…『ポイント1』では、どれだけタカアシガニさんの車輪移動を止められるかがカギとなります。華さんは停止射撃により一脚、出来れば二脚車輪を破壊し、高速移動が出来ないようにして下さい」


華 「…はい!」


みほ 「『ポイント2』では、麻子さんは『例の型』で相手を翻弄。タカアシガニさんを少しでも多く疲れさせて下さい」


麻子 「…分かった」


みほ 「『ポイント3』で合流したら、華さんも『例の型』でタカアシガニさんの攻撃をやり過ごし、時間を稼いで相手の体力と気力を削ってチャンスを呼んで下さい。ここではキャリア組も、私の指示で『例の型』で対応します。園さん、後藤さん、よろしくお願いします」


そど子 「うん、分かってる」


ゴモヨ 「後は周りの建物も守りながら…だね」



みほ 「…今のが作戦の概要となります。皆さんの健闘を祈ります。では、各ポイントへ後藤隊長の後に従って移動して下さい。それでは皆さん…パンツァー・フォー」



あんこう小隊 「「おーっ!」」



ダダダッ…


ブロロッ…!



・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 


ドッドッドッ…


沙織 「…あのさ、みぽりん。前も言ったけど、指揮途中は危ないから、出来るだけ車内に入るようにしなよ?」


みほ 「ごめんなさい。つい癖と指揮のしやすさから体を出しちゃうんだよね。…確かに戦車道とは違うから、これからは気を付けるようにするね?」


沙織 「うん。…それじゃ私も『ポイント2』に向かうね?」



ブロロッ…



パゾ美 「…みんな、行っちゃいましたね…」


みほ 「みんなで無事に任務を終える事が出来ますように…。さ?私たちも気合を入れてかからないと!ね?」



-----------------



--警視庁哨戒用ヘリ「桜吹雪12」~東京台東区駒形周辺を飛行中



バタバタバタバタ…



『…桜吹雪12より特車二課 西住隊長代理へ。目標は駒形橋を通過し吾妻橋の浅草側に上陸。この後、国際通り、言問通りを経由し、上野公園に誘き寄せる…』ザザッ



-----------------



--【ポイント1】鶯谷駅前



ブロロ…キキイッ


…ピーッ,ピーッ,ピーッ…ピピーッ


優花里 「…オーラーイ、オーラーイ…ストーップ。…起動時、電線を切らない位置にっと…」


ゴモヨ 「レイバーキャリア、固定しまーす」



グイーンッ…ズシンッ



優花里 『二号機チーム、ポイント1に到着。あんこう二号機は直ちに起動。出動準備を始めてください!』



カチカチパチッ!


華 「了解。L.O.S.立上…あんこう二号、起動します」


キュイイーン…コココッ

システム ノーマル.タイプ ドーファン,ステンバーイ


優花里 「基本管制システム、オールグリーン。荷台、起こして下さい」


ゴモヨ 「了解。キャリア、ジャッキアップ」


ガコンッ…グォングォン…

ピーッ,ピーッ,ピーッ…


華 「動きますよ…いつもこの瞬間は緊張しますねー」


グォングォン…ガゴッ…

ピロロッ


優花里 「運用情報統合システムのリンク、OK。ロック解除許可、出ました」


コココッ

ヂュイーン…


華 「…各種センサー同調、確認終了」


ゴモヨ 「了解。ジャッキアップ終了、ロック解除します」


バシュバシュッ

ゴグンッ

チュイイーン…!


優花里 「五十鈴殿?…あんこう二号機、ドーファン改。出動して下さい!」


華 「了解です。五十鈴 華…行きます!!」


チュイイーン…ズシュム!


ズシュンッ,ズシュンッ…


優花里 『あんこう二号の出動確認。キャリアは当初の予定通り、ジャッキアップまま既定位置までの移動願います』


ゴモヨ 『了解。既定位置まで移動後、バリケード状態を維持・待機します』



ピーッ,ピーッ,ピーッ…

グロロ…



・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・



ズシュン,ズシュンッ



華 『優花里さん。何か注意事項はありますか?』ガピー


優花里 「目標…タカアシガニさんの機体構成は四本脚…前脚・後脚各々二本ずつに分かれて配置されています。五十鈴殿は目標の右前脚…向かって左側の前脚の車輪から狙撃してもらえますか?」


華 『はい!…あ、そういう事なら…モード2を選択っと…』



バシャカッ,ギュウンッ,ガッキッ,ジャカッ!

ズシュウンッ…ズシンッ

ガッキ…ッ!



優花里 「?!…五十鈴殿?着座片膝立ちでの射撃スタイルでは、確かに射線安定性は増しますが、とっさの回避行動に向いていません!危ないですよっ?」



キシュウンッ



華 『…この「ポイント1」での私の指命は、確実に一脚車輪を撃ち抜く事。これが成功しなければ、作戦その物が成立しなくなります。ですから、少しでもその可能性の高くなる選択を行い、静止状態での確実な射撃で結果をもぎ取ります!』


優花里 「…分かりました。照準時や発砲直後など、目標の動きには特に注意してください!」


華 『了解です!他に何かありますか?』


優花里 「後はいつもの練習通り、服務規程に則った手順を経て発砲許可を出します。それまで五十鈴殿は、照準合わせに徹して下さい!」


華 『分かりました…あ、こちらのカメラでは既に目標を捉えました!』ガピー



優花里 「了解です!…そろそろ双眼鏡でも見えてくる頃合いですかね…喧騒が近ずいて来てますし…」ゴクッ…



・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・



(回想ーー【ポイント3】上野公園 )



優花里 「…出動前にそんな事が…」


沙織 「あの温厚な五味岡さんが…ちょっとショック…」


みほ 「あはは…私を煽るための冗談だった訳だし、私たちに対しては同情心が勝ってるって隊長が言っていたから、大丈夫だよ?(…多分)」


沙織 「…うん。その言葉、信じるよ!」フンス!


みほ 「…でも、この一件で改めて思ったの。私たちみたいな『普通の』女子高生が、レイバーで捕物の真似事をしている事自体が『当事者』にとっては『腹ただしい事』なんだ、って…」


優花里 「つまり『目標』…犯人と言う『当事者』にとっては尚の事ですよね?」


みほ 「そうなの。だから私たちも、服務規程にある『目標への口頭呼び掛け』は、きっちり率先して行っていくようにしましょう」


優花里 「『目標』の冷静さを失わせ、逆上を煽るって事ですね?分かりました!」


沙織 「でもでも!…むしろ変に相手を煽る事になっちゃわないかな?変質者みたいにむしろ嬉々として襲ってきちゃいそうな気が…」


みほ 「…この際はむしろその方が良いの。私たちの目標の一つは『目標(犯人)を取り逃がさない』事。もちろんそれ以上に『人命優先』っていうのもあるけれど、そこは相手の狙いさえ絞れれば、対処方法は幾らでもあるから」


沙織 「…うん分かった。でもみぽりん?ちゃんと緊張せずに服務規程通りに相手に呼び掛けられる?」


みほ 「…ああっ!そうかそうなるよね?私、大丈夫かな…」オロオロ…


優花里 「西住殿はいざと言う時はきっちりしてますから大丈夫ですよう?」



アハハッ…



(回想終わり)


・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・



…ガーッ…

バキンッ…ギャギイィッ!



カチャ…



優花里 「…目標を確認!パトライト点灯!」…グッ!


華 「…はいっ!」



キュウンッ…


…ファンファンファンファン…!



優花里 『あーあー…こちらは特車二課あんこう小隊ですっ。前方のレイバーの乗員はただちに機から降りて下さいっ!自分が何をしているか、分かっているのでありますかっ?!抵抗を止めて、ただちに機から降りなさいっ!!』ガピー



…ガーッ!


タカアシガニ 『!…』



優花里 「…やはり停まらないっ…4…3…2…五十鈴殿?!発砲許可、出しますっ!!」



華『はいっ!』



ジャカッ…チイイイッ…



優花里 「?…相手の動きが思ったよりも鈍い…もっと左右に散らしてくるかと思ったのに…こちらからしたらラッキーですが…何かを、狙い、定めている?」



ギャアーッ!


ゴグ,ンッ



優花里 「ん?本体胸部左右が開いて見慣れぬ筒状の物体が…ランチャー?いや、あれは…射出型の銛?!五十鈴殿っ!!」


ギャーッ…!


チイイイッ…


華 「まだ…もっともっと、引き付けて…っ」


優花里 「早くっ!目標も五十鈴殿を『狙って』いますっ!!」


ギャーッ!


チュインッ


ジャコッ


優花里 「い…五十鈴殿ーっ?!」


華 「…一撃、必殺!」グッ!


タカアシガニ 「!!」ギラリッ



ズ・ドンッ…!!


ドキュン…ッ!!シュルシュルシュル…ッ…



バキャアッン!!


ズガガガガガーッ!



優花里 『う、うわあああーっ?!』


華 『ぐ…ぅ、っ…?!』ガツン…ッ…


タカアシガニ 『?!』



グワシャアッ!…ガ、ガ、ガ…ッ…


バラパラ…バラッ…



ゴモヨ 『キャアッ?!…五十鈴さんっ?秋山さんっ?返事を、返事をしてーっ?!』



-----------------



ーー【ポイント3】上野公園



パゾ美 「…ーっ?!」


みほ 「華さんっ?優花里さんっ?状況を、今の状況をっ!!」



-----------------



ーー【ポイント2】浄名院前



そど子 「な…何が起きたの…?」


沙織 「華っ?!ゆかりんっ?!」


麻子 「…あ…ああっ…」



-----------------



ーー【ポイント1】鶯谷駅前



ブロロッ…ガチャッ



シゲ 「…うわ…っ…」


榊 「こ…こいつぁ…ひでえっ…」



ギ、ギ、ギ、ギー…ッ…



みほ 『…華さんっ?優花里さんっ?…後藤さんっ、状況を、今の状況をっ!』ガピー


ゴモヨ 『んっ…秋山さん、通信機持とうか?』ガピー


優花里 『…痛っ…大丈夫ですっ…も…『目標』は、胸部左右に撃ちっ放し式の射出銛を内蔵。その内一発を、五十鈴殿の発砲と同時に射出し、あんこう二号の『左腕』を吹き飛ばしました…』ガピー


みほ 『優花里さんっ?良かった、大丈夫なのっ?!』



ザッ…ザッ…ザッ…



優花里 『わ、私は衝撃と破片だけでしたから大丈夫です。それよりもあんこう二号が…『目標』が『右前脚車輪』を『撃ち抜かれた』直後にバランスを崩し、そのまま二号に接触…現在、二体とも転倒状態のままです。…五十鈴殿?五十鈴殿ーっ?!』


ゴモヨ 『五十鈴さーんっ!!』



ザザッ…



華 『う…ううんっ…ゆ、優花里、さん?それに、後藤さんも…』ガピー


ゴモヨ 『い、五十鈴さんっ?良かった…怪我は…って?え?』ガピー


優花里 『い、五十鈴殿?口からち、血が…っ…』


華 『え?…あ、あ~…これはちょ~っと、口の中を切っただけで~…』ボーッ…


ゴモヨ 『五十鈴さん…頭でも打った?』


優花里 『五十鈴殿?五十鈴殿っ?他は大丈夫でありますかっ?!』


華 『…大丈夫ですよ~?あら~、髪の毛喰わえると…ウフフッ、幽霊さ~ん…』ボーッ…


優花里 『大丈夫じゃないじゃないですかあ?お願いですから戻ってきて下さいよう~…』フェェンッ


華 『…ハッ!ゆ、優花里さんっ?!今のっ、今のタカアシガニさんの状態はっ!?…は、あらら~…っ?』



グラアッ…ズシュウンッ!



タッタッタッ…



榊 「うおい!今、お前さんのあんこう二号はな?左腕がごっそり喰われちまってる状態なんだよ!まあ篠原製オートバランサーだから、片足でもヤジロベーみてえにシャンと動くけどな?」


優花里 「…榊さん、シゲさん!」


シゲ 「秋山ちゃんも五十鈴ちゃんも大丈夫だったかい?端から見ててヒヤッとしたよ~…っとー?」



ギ、ギ、ギ、ギー…ッ…



優花里 『!目標が起き上がろうとしていますっ…後藤殿、ありがとうございました。後はキャリアに戻って、当初の予定通り、逆走しないようバリケードを維持して下さい!』


ゴモヨ 「うん、分かった!」


タタタッ…


優花里 「…でも、当初の最低限の目標は達成しました!五十鈴殿とあんこう二号は取り合えず簡易検査を…って、五十鈴殿っ?」


華 「…モード4…強制リセットで直立戻し…」


ピコッ…ギュンムウッ…

チュイイインッ…ギイッ!



華 『…優花里さんは優しいですね?ありがとうございます、気を使って頂いて。でも私のあんこう二号は片腕を失い、戦力ダウンは否めません』クチモトノチ,ゴシゴシ


優花里 「…五十鈴殿?無理はなさらないで下さい。私は頭へのダメージが心配で…」


華 『ふふっ、大丈夫ですよ?…ここは今後の事を考え、もう一脚分の車輪を破壊しておく所。…何か、何か片手撃ちに使えそうなモードは…っ』


カチャカチャ…


ピコッ!…ピッピッピッ…


華 「?…データ202…モード5?こんなの今までありませんでしたのに…(この状況で立ち上がったという事は…メインコンピュータが必要と判断して…?)」


優花里 『…?五十鈴殿、どうしましたか?』


華 『あ、いいえ?…タカアシガニさんに今一度射撃を試みます!皆さんも一旦安全な場所に引いてくださいっ!』



ギュインッ!



華 「…『モード5』、行っちゃいます!ええいっ!」


ピコッ!



…ギンッ!

グウンッ…バキインッ!



優花里 「どうわあっ?!」


榊 「なんだ、どうしたっ?!」


華 「きゃあっ?!…え、ええ?自分の右膝アーマーをパンチで『弾き飛ばし』ちゃいましたっ?!」



グワランッ…クワンッ…クワンッ…


パラバラッ…



シゲ 「うわおっ?!」


優花里 『…い、五十鈴殿ーっ?!一体何を…』


ギッシュウンッ…ガキッ!

チュイイーンッ…


華 『わ、分かりませんっ!片手撃ちの方法を探して、新モードが立ち上がったから試してみたら…「片膝座りに、片膝上に肘を固定した状態での片手撃ちを強要」されましたっ!』


榊 「ちっ!この状況で『あのバカ』の『荒っぽい』所が『発動』しちまったか!」


シゲ 「何とまあ、ガラの悪い…五十鈴ちゃん?構わないからそのまま咬ましちまいな!後で修理してやっからさ!!」



華 『はっ、はいっ!』


チュイイーンッ…



タカアシガニ 『…~っ!』ギンッ!


ギ、ギ、ギ、ギー…ッ…ギシイッ!



優花里 「目標…直立状態に復帰中…!」


華 「…でも確かにこれなら、片手でも膝上に固定したまま、置いた肘を支点に照準を狙えます…『やんちゃな子』ですねー。でもこの荒々しさ、嫌いじゃありませんよ?」 フフッ



チュインッ

チュイイーンッ!



華 『当てますよ…?一撃、必殺っ!!』


ヴォンッ…チイイッ


ドンッ!

バキャアンッ!


タカアシガニ 『?!』


ガクンっ…ギッチョンッ、ギッチョンッ,ギッチョンッ…



華 『やりました!…良く出来ましたね?あんこう二号』ナデナデ


優花里 『お見事っ!…あんこう小隊各員へ。現在、目標は二車輪を失い、通常歩行移動により「ポイント2」に向かいました。後藤隊員のキャリアは当初の予定通り、目標の後退を防ぐべくバリケード状態にしたまま後を追います。…では後藤殿?よろしくお願いします!』


ゴモヨ 『はい。このまま「ポイント2」に向かいます!』


ピーッ,ピーッ,ピーッ…

ブロロッ…



・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・



ドカカッ…コン,コン…



榊 「緊急開放レバー回すぞ?よっ、と…」



バシュウムッ…ガパッ…グウゥンッ…



華 「ふうっ…榊さん?優花里さんも…ご心配をおかけしました」


榊 「…おう。無事みてえだな?」ニヤリ


優花里 「本当にヒヤッとしましたよ~…でもそのおかげで、タカアシガニさんの早足を止める事が出来ました。さ、簡易検査を…」


華 「…いえ。私は大丈夫ですから、急いでこの子の応急処置をお願いします。今は無いはずの左腕が異常に電力を消費していて…」


榊 「む。そいつぁまずいな…シゲ?一旦電力を完全オフだ。電装系のチェック!」


シゲ 「はい、もうやってます!」


榊 「再立ち上げに最低十分はかかる…今日はもう止めにしておいた方が良いんじゃねぇか?さっきの『あのバカ』の片手撃ちは、混戦状態じゃ使用は無理だろうに…」


華 「それでもっ!…要素さえ集まれば、必ずそれを活かしきるのがみほさんなんです。みほさんなら、私を…この子を、必ず活かしてくれるはずっ!だから…っ」


優花里 「五十鈴殿…。榊さん?私からもお願いします。もともとあんこう小隊は一機のみで戦えるスキルを、まだ持っていないんです。私たちがここで頑張らないと…っ!」


榊 「へっ…お前らならそう言うと思ってたよ?年長者としては、若ぇ奴に『逃げる』って選択肢も一応提示はしてみたが…やっぱ俺ぁ浪花節の方が好きだしな?」


華 「…ありがとうございます!」


榊 「おいシゲ?バッテリーも今のうちに充電した物に差し替えとけ!…今から十五分、嬢ちゃんに保たせるよう伝えといてくれや…」


優花里 「…はい、分かりましたっ!」



-----------------



ーー【ポイント3】上野公園~総合指揮車内



パゾ美 「…五十鈴さんも秋山さんも、無事で良かった~…」フゥッ…


みほ 「…うん…うん…分かった。くれぐれも華さんには無理しないように伝えておいてね?あと今のうちに少しでも身体を休めておくように。…じゃあ移動時間も合わせて、今から二十分後に、ここで」カチッ…


パゾ美 「…どうでしたか?」


みほ 「うん、二人とも特に問題は無さそう。状況を少し整理したいから、システム使うね?」


パゾ美 「分かりました。何か動きがあったらお伝えします」


みほ 「うん。…ふうっ…」ギシッ…


みほ 「…(タカアシガニさんが中東やアフリカ戦線で軍事用にも使われているとは知っていたけど…榊さんの話を聞くまで、まさか昔の民間漁業用の射出型銛をレイバーに搭載してくるなんて夢にも思わなかった…私の油断だ…ごめんね?華さん、優花里さん、後藤さん)」


カチャカチャ…


みほ 「…(華さんの接触事故による小隊の戦力ダウンは約25%…利き腕とリボルバーカノンが無事だったのは不幸中の幸いだけど、両手撃ち前提だった命中率の高さは、片手撃ちで維持するのはほぼ不可能…)」


タンッ…


みほ 「…今はとにかく、二号の修理が終わって合流するまで確実に時間を稼ぎ、ある程度のダメージを蓄積しておかなくちゃ。そのためには…沙織さん?麻子さん!…』カチャッ…



-----------------



ーー【ポイント2】浄名院前



ピピピーッ


バタバタバタッ…


クルゾーッ!



沙織 『…了解、みぽりん。麻子ぉ?話、聞いてたよねーっ!』ガピー


キシュンッ


麻子 『おうよ』ガピー


チュインッ


沙織 『…大丈夫、麻子?さっき真っ青だったの…あの時の事思い出しちゃったから?』


麻子 『…そんな事無い。だが、かなり機嫌が悪くなったのは事実だ』ムッ…


そど子 『あのタカアシガニとかいう奴、許す訳にはいかないわねー?』ガピー


麻子 『…見ててくれ五十鈴さん。仇は必ず取ってやるぞ』グッ!


優花里『…あのー…五十鈴殿、まだちゃんと生きてますし、ピンピンしてるんですが?』ガピー


華 『三人とも私を居なくなった事にしないで下さいね!?』ガーン


沙織 『華もゆかりんも、無事で良かったよー…二人とも一番槍お疲れ様』


麻子 『西住さんから色々聞いた。後は二人が来るまで頑張る』


華 『…はい!ありがとうございます』


そど子 『ゴモヨもこっちに目標を追い詰めてるのよね?』


優花里 『はい!後藤殿も間もなく追い付くはずです。二十分、何卒よろしくお願いします!』



…ヂュインッ…ヂュインッ…



そど子 『あ…来たみたいね?』


麻子 『当たり前の話だが…双眼鏡での視認より、レイバーのセンサーカメラの方が感度は良いからな?』


そど子 『分かってるわよ、気分よ気分…後ろ、バリケード張って待機してるから』トンッ


ピーッ,ピーッ,ピーッ…

ブロロッ…



…ギッチョン,ギッチョン,ギッチョン!



沙織 『んんっ…(嫌だなあ…目があっちゃったよ…)…こっ、こちらは特車二課あんこう小隊っ!見ての通り貴方に逃げ場はありませんっ!抵抗を止めて、ただちに…?!』…ハッ!



ゴグ,ンッ



タカアシガニ 「!!」ギラリッ



バシュッ!シュルルー~…ッ!!



ギュインッ!


麻子 『…おっと』


バシィッ!…ガランガランッ



タカアシガニ 『!! 』



沙織 『び、ビックリしたぁ~…いきなり何よう…あ。麻子、ありがとね?庇ってくれて』ドキドキ


チュイイーンッ…


麻子 『ああ。後は任せろ』


ヂュインッ!


タカアシガニ 『?! ?!』オロオロ


麻子 『最後の槍だった?…聞いてたもん。喰らうわけないだろ…』


ズシュンッ!


ギュインッ!


タカアシガニ 『!! 』…カッ!


麻子 「沙織まで危ない目に…許さないからな」グッ!



ガシャ,ガシャ,ガシャ,ガシャッ…!



麻子 『来てくれた方が、こちらとしてもやりやすい…電磁警棒。』


ヴォンッ…パリィッ…


麻子 『…リミッター、解除。』キッ!


ギン…ッ!

ヂュインッ…ヂュイイイイッ!



タカアシガニ 『?!』


麻子 『…遅い』



ズシュンッ!…ズシュズシュズシュッ…


ガキィッ!ギギギギィ…ッ



タカアシガニ 『!!』


ギチ,ギチ,ギチ,ギチッ…



麻子 『…まずは五十鈴さんが手をつけた右前脚を頂く。カニの脚を食べるには、まず根元に突き刺して…っ』セーノッ


ゴ・ギンッ


タカアシガニ 『?!』


ギシッ,ギチ,ギチ,ギッチョンッ


麻子 『…警棒をテコの要領で、傾けてやればっ…!』ヨッコイ,ショッ!


ギ・ギ・ギ・ギシッ…

バチバチバチッ…パシィンッ!


ボギッ、ンッ…!

ズズンッ


ガラン,ガランッ…



タカアシガニ 『?!』ギリイッ


麻子 『ああ…しまった。両方とも、折れちゃった』



-----------------



ーー【ポイント3】上野公園



…ズシュンッ,ズシュンッ,ズシュンッ



沙織 『…あ、おーい?こっちこっちー!』



ズシュンッ!


キキーッ!



優花里 『武部殿、お待たせしましたっ!』


沙織 『榊さん達の乗ってきたトレーラーがあるのに、わざわざレイバーを走らせてきたの?』


チュインッ


華 『…何でも片手時の運用データを少しでも蓄積した方が良いらしくて、そのために走ってきたんですよ?』


優花里 『その分、榊さんとシゲさん達整備班が頑張ってくれたので、タイムラグはほとんど無いはずです!』


シゲ 「…この片手時の運用データは、後で忘れずに削除しとかないと、通常使用時にバグに為りかねないんだけどね…っと」


優花里 『…で、現在の状況はどうなっておりますか?!』


沙織 『…それがね…?』



・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・



…ギョインッ,ギョインッ,ギョインッ,ギョインッ!



タカアシガニ 『?!』



ズザーッ!



パゾ美 『このっ…ふんばれ、ふんばれ、ふんばれーっ?!』


ギュインッ!…ブロロッ…


みほ 『…キャリア組は、全速後退の「点」では無く、ドリフトによる扇形の動きで、タカアシガニさんを「面」で制圧してください!その方が相手もこちらを捕捉し辛くなります!』



ギャギーッ!



そど子 『…せっかく全速後退での操縦に慣れてきたってのにっ!』


ゴモヨ 『結局またこれ?私たち不良になったみたいっ!』



タカアシガニ 『…!』


…ギョインッ,ギョインッ…



・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・



沙織 『…ゴモヨさんがそど子さんと合流した段階で、みぽりん自らキャリア組とあんこう一号の陣頭指揮に立っちゃって…私じゃ、あそこには入れないから…』



チュイイーンッ!


みほ 『今です麻子さんっ!』


麻子 『…うおおーっ!』



ブウンッ…グワアンッ!



タカアシガニ 『?!?!』グラァッ…



華 『…麻子さん、タカアシガニさんを一体何で殴り付けてるんですか?』


沙織 『…そのタカアシガニさんの「右前脚」。折った時に警棒も一緒にダメにしちゃって』



ギャギギギ…ギイッ!



優花里 『確かにこの混戦の中でベストポジションを維持しながら指揮するのは、西住殿でないと無理…いや、無茶ですね』


華 『…パゾ美さんもまあ、よくみほさんの指示に食らい付いて、あの扱いの難しい総合指揮車を振り回してますよね?』


沙織 『そうなの!もう私が入るとメチャクチャになりそうで…だから私は、二号チームの合流を少しでも早く知らせるために出入り口で待ってたの。…みぽりんっ?二号チーム来たよっ!?』ガピーッ



キキィーッ…!



みほ 『了解!…キャリア組は引き続き電磁警棒の受け渡し時間確保のため、タカアシガニさんへの制圧行動をお願いします!ただし、出入口へのルートは防ぎつつ、尚且つ周辺建物へ被害が及ばないよう考慮しながら!』ガピーッ



ズガガガ…ッ!



そど子 『ちょっと西住隊長?要求が二つから三つにアップしてるじゃないのっ!』


ゴモヨ 『相変わらずの無茶ぶり…やりますけれどもっ!!』



ギャギギギーッ…!



みほ 『よろしくお願いします!…麻子さん?今のうちに一息入れて、華さんから電磁警棒を受け取って下さいっ!』



麻子 『おうっ…』ハァッ,ハァッ,ハァ…ッ…



ヂュイ-ンッ…



みほ 「…(二号の修理による20分のタイムロスは、麻子さんの『リミッター解除』とキャリア組の『例の型』で何とか補ったけど…一号の駆動時間は約25分と極端に短くなるはず。挟撃に持ち込めても、戦力ダウンから交代でのバッテリー交換はほぼ不可能…残り時間の約5分で何が出来る?考えなきゃ…!)』



・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・



…ズシュンッ,ズシュンッ,ズシュンッ!



華 『…麻子さんっ?お待たせしましたっ、これをっ…』


ジャコッンッ…!


麻子 『?あ、ああ…電磁警棒か…助かる…これ、重いんだ…』ハァッ…ハァッ…


ガランッ!…ガラガラ…ッ


…ジャカッ!ブンッ…パシィッ!


麻子 『…うん。やっぱ、持ち慣れた得物の方が、馴染む…』ハァッ…ハァッ…


華 『麻子さん?息が…』


麻子 『…五十鈴さん。一号の銃のラックの鍵は開けておくから…何かあったら、使ってくれ…』ハァッ…ハァッ…


キシュウンッ…


華 『麻子さんっ?!』


ガクンッ!


榊 『…こりゃいかん!バッテリーのテンションが駄々落ちてやがる』


シゲ 『警棒を支えにして、辛うじて立っているようなあんな状態で…本当に戦えるんすか?』


榊 『かといって、この混戦状態じゃバッテリー交換もままならんわな…』


ギ,ギ,ギィッ…


麻子 『ははっ…見ての通り…とてもじゃないが、私もコイツも、最後までは保ちそうに無い…』ハァッ…ハァッ…


華 『…ダメです』


麻子 『え?』ハァッ…ハァッ…


華 『まだその子は…あんこう二号は、膝を地面に屈していません!』


麻子 『…』ハァッ…ハァッ…


華 『最後までやり抜くんです。でなければ、私たちの勝ちにはなりません…』


麻子 『…そういえば…左腕はともかく…その右膝アーマーは、どうしたんだ?』

ハァッ…


華 『ふふっ…この子やんちゃで、片手撃ちに邪魔だからって「勝手に外しちゃった」んですよ?』


麻子 『…二号…「発動」したのか…?』ハァッ…ハァッ…


華 『…はい。きっとその子も同じですよ?まだ戦う力を残しているはずです。だから…最後まで麻子さんも一緒に!』


麻子 『ふうっ…全く。あんこうチームの皆は、誰もかれも、無茶を言う…』ハァ-ッ…キッ!



…キシュウンッ!



麻子 『…了解。行こうか』


華 『…はいっ!』



ズシュンッ…!



・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・



ギョインッ,ギョインッ,ギョインッ!



タカアシガニ 『…!』 イラッ…



みほ 「…(機体越しに、乗り手の心の動きが伝わってくる。人や動物の姿を模している分、戦車よりもレイバーの方がより明確に…。タカアシガニさんの乗り手はレイバー操縦のプロ…ただし戦いのプロじゃ無い!だから、一番注意すべきなのは戦意喪失により全力で逃走される事…それを防ぐには…!)」



ズシュンッ,ズシュンッ,ズシュンッ!



華 『みほさんっ?お待たせしましたっ!』


麻子 『…すまなかったな?そど子』ハァッ…ハァッ…


…ギャギーッ!


そど子 『ちょっと冷泉さん?あなた本当に大丈夫なのっ?!』


麻子 『…本気で心配してくれるのは、そど子だけだな?』ハァッ…ハァッ…


そど子 『んなっ?き、急に変な事言わないでよっ///』



カチャッ!



みほ 『…フォワードのお二人にお願いがあります。一分だけで構いません。タカアシガニさんが、周りを見る余裕が無くなる位に翻弄して欲しいんです」



ヂュインッ…



華 『今度は私たちが、ですね?』


麻子 『やれやれ…一息つく暇も無いのか…』ハァッ…ハァッ…


みほ 『優花里さんは、次の手を仕込んでいる一分間、フォワード二人への指揮をお願いします』


優花里 『了解しました!』



みほ 『…そして「カモさんチーム」の皆さん。皆さんが、これからの作戦の肝となります。今からその作戦を伝えますので、その後一分以内での迅速な配置をお願いします』


ゴモヨ 『わ、私たちが、作戦の肝?!』


そど子 『へえ…面白そうじゃない』


パゾ美 「…に、西住隊長?わ、私と…この総合指揮車も、ですか?」


みほ 「はい。…私たちは言わば、タカアシガニさんを釣り上げるための、言わば『餌』です」


パゾ美 「餌…ですか?」


沙織 『ちょっと…みぽりん、何をする気なの?まさかまた危ない真似をする気じゃ…』


みほ 『…沙織さんは、あんこう一号のバッテリー残量%を随時読み上げて下さい。ちなみに、今は?』


沙織 『へ?え、えとえと…な…7%?!』


みほ 『…皆さん、聞いての通りです。私たちに残された時間は、あと5分くらいしかありません。皆が揃った今が最後のチャンス。「あんこう小隊」全力での…短期集中決戦です!』


ジャコッ…バシィッ!


麻子 『…了解!』ハァッ…ハァッ…


…バシャッ…ガッキッ!


華 『…行きますっ!』



みほ 『全員のより一層の奮闘に期待します!それでは、パンツァー・フォー!!』



・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・



タカアシガニ 『…!!』イラァッ…!!


ギョインッ,ギョインッ,ギョインッ…!



ジュインッ!


ズシュンッ,ズシュンッ,ズシュンッ!


華 『前衛は私が務めます!麻子さんはタカアシガニさんの隙を見つけてフォローを!!』


麻子 『バカ!…片手なんだぞ?倒れたら、起き上がるのに時間がかかる。その隙にやられたら…っ』ハァッ…ハァッ…


ギャギーッ!


優花里 『いえ!もともと五十鈴殿のドーファン改には、両手に攻撃をいなすための『盾』が装備されています。片手だけでも「捌く」だけなら充分に役割を果たせるはずです!』


麻子 『…遠慮は無用、という訳だな?』ハァッ…ハァッ…


華 『…ええ。頼りになさって下さい』フッ…


優花里 『五十鈴殿が攻撃を捌いて相手の隙を誘い、その隙を縦横無尽な角度から冷泉殿が突く!…基本は何時もの「型」その物です。遠慮なくやっちゃって下さいっ!』



ギュインッ…!



・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・



ジュインッ!…ガキャアッ!


ズズ…ンッ!



沙織 『…バッテリー残量、残り5%…こんなに消費速度が早いなんて…』


ゴモヨ 「西住隊長?!両キャリアの配置、済みました!!」


みほ 「…金春さん?私は、タカアシガニさんとの距離のみを伝えますから、後は捕まりそうで捕まらない速度と距離感での、目標位置までの移動をお願いしますね?」


ゴモヨ 「分かりました。でも、西住隊長自らが体を晒すことは無いのでは?やはり危険ですよ…」


みほ 「支え棒があるから大丈夫だよ。…沙織さんには後で叱られちゃいそうだけど…それじゃ始めるね?」



カツンッ…ザンッ!


ガコッ…ピーッ…



ギッチョンッ?!


タカアシガニ 『?!』



みほ 『…そこの所属不明のレイバー、聞こえますか?私は特車二課、あんこう小隊隊長代理、西住みほです!』ガピーッ


沙織 『み、みぽりんっ!な、何でそんな指揮車の上で「軍神立ち」なんかしてるのっ!?危ないってば!!』


みほ 『既に上野公園周辺は、完全なる包囲網が敷かれており、貴方の逃げ場は既にありません。今すぐ無駄な抵抗を止め、投降して下さいっ!!』ガピーッ



ギチョンッ…!


タカアシガニ 「…!!」…ニヤリッ


ギチョンッ,ギチョンッ,ギチョンッ,ギチョンッ…!



みほ 「よしっ、食い付いたっ!金春さん急速後退っ!!…キャリア組とのタイミングはお任せしますっ!!」


パゾ美 『は…はいっ!』



ギャギギギ…ギャギーッ!


ブロローッ…!



みほ 『…フォワード組は、そのままタカアシガニさんを追って下さい!上野公園の出入口でワンチャンスを作りますから、それを絶対に逃さないでっ?!』


チュインッ


麻子 『西住さんっ?一体何を…』ハァッ…ハァッ…


華 『分かりません。が…!』


優花里 『追いましょう!』



ギャキーッ…!


ズシュウンッ,ズシュンッ,ズシュンッ,ズシュンッ!



タカアシガニ 「…!…!」…ハッ!…ハッ!


ギチョンッ,ギチョンッ,ギチョンッ,ギチョンッ…!



そど子 「まだよー?まだまだー…」


ゴモヨ 「ううっ…緊張するっ…!」



ガーッ!


みほ 「…上野公園、出入口間近ッ!金春さん?!」



パゾ美 「はいっ!…行くよっ、そど子、ゴモヨ?!」


ゴモヨ 「分かったわパゾ美!」


そど子 「指揮車、出入口…通過っ!」


パゾ美 「…~っ、今よ!そど子、ゴモヨ?!」


ガーッ!

ギチョンッ,ギチョンッ…!


ゴモヨ 『せーのっ!』


そど子 『スーパー風紀アタック!!』



タカアシガニ 『?!?!』…ハッ?!


バッカーンッ!



優花里 「…上手い!出入口から出てきた所を、二台のキャリアで挟み打ちっ!!」


そど子 「へっへーんだ!照明を消して、闇に紛れて待ち伏せしてたのよっ!」



ギ、ギ、ギ、ギィ~ッ…


タカアシガニ 『…~ッ?!』グラグラ



…ギャキィッ!


みほ 「…!(非力なドーファンで本当にタカアシガニさんを抑えられる?他の手も同時に考えなきゃっ…!)」



ズシュンッズシュンッズシュンッ…


華 『確かに…チャンスですねっ!』


麻子 「もう、ちょっとだけ、頼む…あんこう、一号」 ハァッ…ハァッ…


チュインッ


麻子 「走ってっ…飛び付いてっ…抱えてっ…」 ハッ,ハッ,ハッ…


ズシュンッズシュンッズシュンッ…


チュイイーンッ…!


麻子 「乗っかってっ…抑え…え…?」 ハッ…?


ヴォンッ…ギンッ!

ヂュイイイイーンッ!


麻子 「い…一号?わ、わわ…」?!


ズシュンッ…ガキイッ!!



タカアシガニ 『!!?』


麻子 「!??」



ズザザザザーッ!


ギ,ギ,ギ,ギチョッ…ンッ…!



優花里 「あれは…!飛び付きながらの『脇固め』ですね?!初めて見ましたっ!」


榊 「へへっ!…『嬢ちゃん』のは『良い方向』に『発動』したか」ニヤッ



ギ,ギ,ギ,ギ…


ヂュインッ、ヂュイイイインッ…



麻子 「い、一号…お前…(こ…これが本当の『発動』…?)」


みほ 『!麻子さんっ、チャンスです!非力なドーファンでもそのままなら抑え込めますっ!頑張って?!』ガピーッ


麻子 『!わ、わかった…ぐうっ』フンヌウッ!


ギ,ギ,ギ,ギッ!


沙織 『…残り4%っ!』



みほ 『華さんっ?!』


華 『はいっ!』


ズシュンッズシュンッズシュンッ



麻子 「い、ち、号っ…頑張れ~…っ…」ハッ、ハッ、ハッ…


チュインッ、ヂュイイイインッ!



タカアシガニ 『!!!』カアッ!


ギチョギチョギチョンッ!



優花里 『くっ!こんなに動かれては片手での照準は無理です!』


沙織 『3%…2%!もう持たないよっ?華、早く!』


みほ 『…華さんっ?関節の間に銃口をネジ込んでの零距離射撃っ!!』


華 『はいっ!』


沙織 『残りい…1%!ま、麻子~っ?!』



ギ、ギ、ギ、ギィッ



麻子 『…ぐうっ!』


華 『行きますっ!』



ザシャアッ!



優花里 『スライディングからの…?!』



ガッキ!


タカアシガニ 『?!』ギリッ…


ギチョンッ!ギチョギチョ…



沙織 『ダメッ…0%…華~っ!!』



華 『この距離なら…外しませんっ!連っ!撃っ!必っ!殺っ!』


ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!


チンッ,チンッ,チンッ,チンッ…



タカアシガニ 『……』


華 『……』



ゴギンッ!…ズズ・ン…ッ…


ピー…ッ…



華 『……』…ハアッ…ハアッ…ハアーッ…


タカアシガニ 『……』



みほ『…左前肢を完全に破壊…』


優花里 『…目標、沈黙!』



キュウウンッ…ズシュウムッ…ン…


ガクンッ



沙織 「ぜ…全機能停止…ま、麻子~っ…」 ハアーッ…


麻子 「は、はは…」…ハ~ッ…



優花里 「や…やりました、五十鈴殿っ、冷泉殿っ!!」




みほ 「…ま…間に合ったあ…」…フ~ッ…



-----------------



ーー【ポイント3】上野公園 出入口



タカアシガニ 『…』


チュインッ…


華 『…』…ハアッ…ハーッ…


ズシュウッ…


優花里 『…五十鈴殿、どうかしましたか?』


華 『…何か…』


優花里 『…え?』


華 『何かが、引っ掛かるんです…』


優花里 『何か、って…何なんです?』


チイイッ…


華 『タカアシガニさんの事…何か、重要な事を見過ごしているような…』


優花里 『タカアシガニさん…クラブマン・ハイレッグが?』


華 『はい…』


タカアシガニ 『…』


優花里 『…海外輸出用で、日本国内の規格外を遥かに越えるタフなレイバーで、篠原重工製。中東やアフリカ等では軍用としても使用されている…』


華 『海外…違う。規格外…これも違う。篠原重工…ううん。軍用…そこまでは行かない…』


優花里 『篠原重工…篠原製だって事に、何か引っ掛かりませんでしたか?』


チュイイーンッ…


華 『篠原製…何だろう…重工が外れただけで何でこんなに…(…バランサー…)?!』


優花里 『?!五十鈴殿っ!!』


ギュイィンッ!


華 『…みほさんっ!早くその場から離れてっ?!タカアシガニさんは「篠原製」!ここのオートバランサーは「一脚でもヤジロベーみたいに」立つんですっ!!』


優花里 「!!そうだ…まだ『二脚』残ってますっ、西住殿ーっ?!」



みほ 「…えっ?」



タカアシガニ 『…!!』ギンッ!!


ギュァァアーーッ!!



ガシャアンッ!


麻子 「ぐうっ?!」


ガシャシャンッ…!



沙織 『ま、麻子ぉーっ?!』


みほ 『!後藤さんっ、公園に向かってっ?早くっ!!』


ゴモヨ 『は、あ…え?ええーっ?!』


ガゴッンッ…ギュ,ギュ,ギュァア~ッ!



ギシュウンッ…ガツッ!



華 『させませんっ!…ぐうっ、か、片手だけじゃ、止めきれずに引き摺られる…っ…!』


ガリガリガリイ…ッ


ギチョンッギチョンッギチョンッギチョンッ!



…ピーッ…


ガチャ,ガチャ,ガチャ!


麻子 「起きろ一号っ!このままじゃ西住さんがっ…」



ドルルッ…!ブロォ…ッ!


そど子 『な、何でこんなにキャリアってのは…っ!』


ゴモヨ 『初動がこんなに重いのーっ?!』



ガガガガガーッ !


華 『と、止まりなさ…い~っ!』


沙織 「ダメぇっ?!これじゃみぽりんが身を隠すの間に合わないっ!!」



グワァーッ!!



…ズシュンッ…


みほ 「…!!(…手負いになった人が最後何をしでかすか分からない事を、あれほど戦車道で見てきたはずなのにっ…ごめんね皆?ごめんなさいっ…隊長っ!」


…ズシュンッ,ズシュンッ,


優花里 「にっ、西住殿ーっ!!…えっ?」


ズシュンッ!



?? 『…こぉんのぉ~っ!!』



タカアシガニ 『…?!』ハッ!



ドガアーッ!!



タカアシガニ 『!!』



…ズガガガーッ!…



みほ 「…え?」


優花里 「あ、あれは…冷泉殿でも無ければ、第一小隊の物でももちろん無い。ど…『どうしてここにいる』んですかぁっ?!」



…ギャキィーッ!…ガチャッ



後藤 「…西住っ!無事かっ?!」


みほ 「ご…後藤隊長っ?!」



後藤 「ふうっ。何とか間に合ったみたいだな…」


みほ 「あ、あの…隊長…『あれ』は?」


後藤 「…ああ。『あれ』が俺の用意した、

『あまり当てにならない』第二の『安全策』って奴さ」


みほ 「第二の、安全策…」



・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・



ガキョッ,ガキョッ,ガキョッ!



タカアシガニ 『…~っ!!』



ギチョンッギチョンッギチョンッ!



?? 『こいつっ?往生際の悪い…ならば…こうっ!』



グイッ!…スウッ…グワッギンッ…ガキィッ!



タカアシガニ 『?!』



ギ、ギ、ギーッ…



麻子 「!…脇固め…これ、さっきのあんこう一号と同じ動きだ…」


沙織 「スゴい…私から見ても動きの違いが分かる…なんて無駄の無い綺麗な動きなんだろう…」


優花里 「…重心を常に微妙にずらして、相手の力を分散させ、崩しを決して許しません…!」



クルルッ…カチャンッ,グイッ


…バシュウムッ!



麻子 「?!…レイバーが小手先を駆使してコクピットの強制開放?あんな事まで出来るのか…」


みほ 「…上手い。強制開放レバーを回してしまえば、レイバーは強制電源オフ状態になる!」



ギシュウンッ…


バシャカッ,ギシュウンッ,ガッ…キッ!



華 「!?相手を拘束しながらの、銃抜き構えの流れが尋常じゃ無く速いです!」


…ジャカッ!


?? 『…勝負あった!ジタバタすんなっ!!』ガピーッ



…ザシャアッ!



?? 『公務執行妨害!並びに傷害の実行犯その他諸々で…逮捕するっ!!』



ファン,ファン,ファン,ファン,ファン…



ゴモヨ 「…特車二課に、そもそも逮捕権なんかあったっけ…」


そど子 「その場のノリでしょ?何とも特車二課らしい…」



・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・



バタバタバタ…



リー…リー…リー…



沙織 「…あ?目標から犯人が拘束されたみたい」


華 「これで終わりなんでしょうかね…?」



ギギギィッ…ズシュウッ…



優花里 「目標からレイバーが離れました…」



ジュインッ…ジュインッ…



みほ 「…あ…あれ?こっちに来るみたいだけど…」



ズシュンッ!


チュイイーンッ…ギンッ!



?? 『…コラアッ!あんこう小隊のみんなーっ?!』ガピーッ!



みほ 「?!ひゃ、ひゃいっ!」



?? 『目標を完全に確保するまでは、警戒体勢を解いちゃダメでしょーっ?!』ブンブンッ!



優花里 「わわっ?!もっ、申し訳ございませんっ!!」ペコペコ


麻子 「…器用なものだな?レイバーで説教のモーションまでするとは…」カンシン



?? 『全くもうっ…レイバーは扱う人によっては、スッゴく危ないんだからねっ?!』プンスコ



華 「全く、面目次第もこざいません…」フカブカ


そど子 「…レイバーでガチに叱られてる私たちって…」ヘイシンテイトウ



沙織 「…あれ?ちょっと待って。この声って…」


ゴモヨ 「最初は、男の子の声かと思ってたけど…」


パゾ美 「これ…女の人の声だ…」



優花里 「…篠原重工のフラッグシップレイバー『98式AV』を手足のように使いこなし、最凶と呼ばれる『黒いレイバー』に唯一対抗して見せた特車二課 第二小隊の実質的エースは…実は女性パイロットなんです!」



後藤 「おーう。東京に着くなり一(ひと)仕事させて悪かったな?…後は現場に任せようや、泉!」



チュインッ!



??『了解っ!…ふふっ。でもね?』



チュイイーンッ…ズシュムッ



みほ 「あっ…」



バシュウムッ…!



野明 「…女の子が、この子たち(レイバー)を上手く扱ってくれて、お姉さん何だか嬉しくなっちゃったよっ?! 」…ニカッ!



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ーー【ポイント3】上野公園



ファン,ファン,ファン,ファン,ファン…






トクシャニカダイニショウタイ,トウチャクシマシタ!

オウ,クマガミ.オマエラモキテクレタノカ?

タイチョーガヨヒダシタンジャナイデスカ!

マッタク,ヌケダシテクルノタイヘンデシタヨ…

ナグモサンヒトリニオシツケチャッテ

コッチモヨキシナカッタハヤサノウゴキデナ?ワルカッタヨ

デモマニアッテヨカッタヨ!

ナンダモウオワリカ?オレニモジュウヲウタセロ!






沙織 「あれが…第二小隊の人たちかあ…」


優花里 「やっぱり、その道の人たちは雰囲気がありますね~」


みほ 「うん…(後藤隊長、第二小隊の皆さんの前だと、あんな笑顔になるんだ…少し、羨ましいな…)」




・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・



榊 「いよお。二人とも怪我は無かったか?」


麻子 「…おじい」


華 「榊さんっ!」


榊 「良いから座ってな。…で?ずいぶんと派手にやらかしたじゃないか…」


華 「はい。…この子を壊してしまって、すいません…」


麻子 「ごめん…」


榊 「はは。お前さん達が無事だったのが一番だよ…コイツらは、きちんと役目を果たしてくれたって訳だな?」


麻子 「うん。…ありがとう、あんこう一号」 ナデナデ


華 「ええ。頑張ってくれました…少しやんちゃですけど、この二号は。…この子達、無事に元に戻りますよね?」


榊 「…へっ!何のために予備の三号機があると思ってんだ。コイツらはこっちで責任持ってきっちり直してやるからよ、安心しな?」ワシャワシャ


麻子 「…うん///」グラグラ


華 「ふふっ…ありがとうございますっ」



・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・



…グオォォ…ンッ…



シゲ 「…キャリア・トレーラーに、レイバーやら破片やらパーツやら、その他もろとも積み込み完了したよー。皆、そろそろ撤収の準備をしといてね?」


優花里 「…はい!シゲ殿も度重なる緊急処置や応援、貴重なアドバイスをありがとうございました!」



…グオォォ…ンッ…



シゲ 「へへっ!良いって事よ…って、さっきからえらく低空で周回してんなあ?何だってんだい…って、ありゃまさか陸上自衛隊のC-4輸送機か?!」


優花里 「…陸自のC-4輸送機と言えば、あの空挺部隊にしか配備されていない、空挺レイバー専用機じゃないですか?!何でそんな機体がこんな東京のド真ん中に…」


そど子 「あんな事する陸自関係者なんて、私たちの中じゃ一人しかいないじゃない」


優花里 「ああ!なるほど~…指揮車のサーチライトで合図してみますね?」



カチ,カチ,カチ…


パッ…パッ…パッ…!



…グオォォ…ンッ…!


パッ…パッ…パッ!



シゲ 「…ありゃ、本当に合図返してるよ。アンタ等、陸自にも知り合いがいるんだな?流石、戦車道だわ…」



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ーー上野公園 上空



グオォォ…ッンッ…



蝶野 「…目標。白旗、降伏。よって、特車二課 第二小隊の勝利。か…」


不破 「ハァ~っ…ほんっと、泉さんが間に合って良かった…っ…」


蝶野 「…あら残念。西住さん達がピンチになったら、私自ら『ARL-99(ヘルダイバー)』で現場までダイブするつもりだったのに!」


不破 「だからですよ?!昔っから無茶苦茶しますよね、蝶野先輩はっ!」


蝶野 「…戦車道の未来を担い、将来の国防を担う事になるかもしれない逸材達なのよ?角谷ちゃんにお願いされるまでも無く、こんな面白…いや!大切な任務を、人任せなんかに出来るもんですかっ!」


不破 「…ハァ…これだもの…」


蝶野 「それと…不破二尉?先輩呼びは止めなさい。私がスゴく歳とったみたいに聞こえるでしょ?」


不破 「…はいはい、とにかく気は済みましたね?蝶野一尉。…では、撤収します!」



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ーー【ポイント3】上野公園



…グオォォ…ンッ…!



華 「…翼を振って、帰っていきますね…」


麻子 「いつも通りの暴走っぷりだな?蝶野教官は」



沙織 「…蝶野教官。私、多分戦車道始めて、初めてモテるようになりました…」ナムナム


優花里 「…拝まないで下さい?沙織殿」



後藤 「…そしてあれが、お前さん達の生徒会長が用意していた『当てにならない第三の安全策』だ」


みほ 「後藤隊長!…あれが、会長の安全策?」



後藤 「…それにしても、あの狸娘…いや、狐か?どちらでも構わないが…大したタマだよ全く…」ハァ…






・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・



(回想ーー特車二課棟内 2階 会議室 )



杏 「…ん~!そちらが最大限努力してくれてるのは分かるんだけど、どうもどの『安全策』にも『ノリ切れない』んだよね~?」


後藤 「…正確に言えば、お前さん自身が『信頼』する『何か』を噛まさないと『納得出来ない』んだろ。違うか?」


杏 「…何しろ公(おおやけ)の立場の『大人』に、土壇場で約束事を引っくり返されたからね…」


後藤 「例の『文科省担当官』って奴の事か…。まあその気持ちも分かるよ。そもそも信頼関係が築ける程、俺たちに付き合いは無いからな」


杏 「…」


後藤 「…(あんだけ快活な子が、自分の学校を守るために、あんな辛そうな顔をね…。まあ、直接言わない程度には『信用』してもらえてはいるようだし…)」


杏 「…どうかな?」


後藤 「(至仕方無し、か…)…ああ、そういえば!戦車道の皆さんは、何やら陸上自衛隊の方々との繋がりが強いらしいですなあ!訓練やら審判やら、何かと面倒を見て頂いているとかいないとか…」


杏 「…ああ、蝶野教官の事?よく調べてあるんだね。それがどうかした?」


後藤 「そういうの『今回は止め』にして頂きます?何しろ国防と言う点で、警察と自衛隊は何かとプライドをぶつけあう間柄で、何かと問題があるんですわ」


杏 「…ほうほう?」


後藤 「特に『陸自の空挺部隊』は、我が特車二課の所有する『98式AVの兄弟機を武装』して使用していましてね?これが部隊の特性上、『どんな場所にも降りる事が出来る』ときてる」


杏 「…それでそれで?」


後藤 「『黒いレイバー』事件の際にも何かと出場ってこようとしましてね?『あんな物が出てこられた日には、ウチなんか良い面の皮』なんですわ」


杏 「…成る程っ!とても『納得の出来るお話』ですねっ!?」


後藤 「そうでしょう、そうでしょう。それでは『商談成立』と言う事で」


杏 「…出来る限り呼ばないように努力しますね~?『極力』!」アクシュ


後藤 「…こちらも彼女達の安全には一層注力しますよ~?『極力』!」アクシュ



「「アハハハハハーッ!」」ブンブンッ



後藤 「…いやぁ!これで暴走レイバー捕獲とも成れば、より世間で大洗戦車道復活の気運も高まると言うものですなあ?」ハッハッハッ


杏 「…いえいえ!我々あんこうチームはあくまで『ゲスト』。手柄は全て、特車二課 第二小隊の物となるに決まってるじゃないですか~?」ホッホッホッ



「「ハッハッハッハーッ!」」



(回想終わり)



・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・



後藤 「…目的遂行のためには手段を選ばず、か…嫌いじゃないぜ?そういうの…」ニヤリッ


みほ 「蝶野教官まで引っ張り出すだなんて…何か、ウチの会長がすいません…」ショボン


後藤 「…お前さん達が大事にされてる証拠さ。良い事じゃないか…あ。まさか忍さんも、帰ってきてる訳じゃないよな?」キョロキョロ


みほ 「…それにしても、第二小隊の皆さんが戻ってこられるなんて…それなら、私たちで無くても良かったのでは?」


後藤 「…いや。今回は『コッチ』の都合じゃ無いんだな…」


みほ 「?」


後藤 「…急遽奴等を呼び戻さざるを得ない『事態』が発生しつつあった。『今回の件』も含め、今週の何時にどちらが起こるかは最後になってみるまで分からなかった…」


みほ 「…『事態』?」


後藤 「じきに分かるよ。…最悪『お前さん等』も『アイツ等』も『どちらもいない』状況も有り得たんだ。今回は幸いどちらも『間に合った』が…こんな事で気をやむのは俺だけで充分だ。だから明言できなかった…済まなかったな?」


みほ 「そ、そんな事…気にしてませんから」


後藤 「うん。それよりも、だ…」



ぱこんっ



みほ 「あいたっ?!」アタマオサエ


後藤 「…大切な身心だ。命を担保にするんじゃないよ?」


みほ 「…ご、ごめんなさい…」 シュン…


後藤 「でも、ま…」 クシャクシャッ



みほ 「え…?」 グラグラッ



後藤 「…よくやってくれたな。西住」クシャッ…



みほ 「…は、ハイッ!」…パアッ!



後藤 「…各トレーラー、撤収準備。さっさと帰って一(ひと)っ風呂でも浴びようや?」



みほ 「…~♪(…結局これが、私たちあんこう小隊の最初で最後の出動となりました。会長から大洗への緊急招集がかかったからです。

歓迎会は送迎会に変わり、撤収・準備に追われ、私たちがようやく落ち着いたのは、翌日早朝の移動直前の事でした…)」



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後書き

長文乱文、お読み頂き、誠にありがとうございました。

以下、
【ガルパン】西住みほ「特車二課 あんこう小隊、です!」【パトレイバー】 ~第七章(完結編)へと続きます。


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