2018-05-27 17:23:06 更新

概要

一章の続きです。


前書き

※ぷらずまさんのラブコメ抑止能力と、提督のラブコメ回避能力が高すぎるので色々な艦娘とイチャラブなんかできません


注意事項
【勢い】
・ぷらずまさんと称しているだけのクソガキな電ちゃんの形をしたなにか。ぷらずまさんみたいなキャラもう一人。もう矛盾あっても直せない恐れあり。チート、にわか知識、オリ設定、独自解釈、日本語崩壊、キャラ崩壊、戦闘描写お粗末。SS初投稿、魔改造、スマホ書きスマホ投稿etc.

ダメな方はすぐにブラウザバックお願いします。


【1ワ●;お前もう解体されるしか幸せになる道がねーのです】



1



瑞鶴「お待たせー。建造終了っ」

 

 

瑞鶴「正規空母5航戦瑞鶴となりましたっと。改めてよろー」テフリフリ

 

 

提督「よろしくお願いします。二つほどいいですか?」ジーッ

 

 

瑞鶴「どうしたの。あ、可愛いとかって褒めてくれる感じー?」

 

 

瑞鶴「少しは分かってるわねー?」ニシシ

 

 

提督「右足で左足ももをかくのはみっともないです。だらしのない女子大生が瑞鶴のコスプレしたのとは訳が違うんですから……」

 

 

瑞鶴「おっと、失礼。もー1つは?」

 

 

提督「なぜ短いスカート、なんでしょうかね」

 

 

提督「海の戦いに赴くのにスカートである必要性ってあるんですかね。波風にさらされ、激しい行動を取ることもありますし」

 

 

瑞鶴「仕様だから仕方ないじゃない。妖精さんの趣味じゃないの。というかそこ煮詰めてったらガチムチの男ばかりで華がないじゃん?」

 

 

提督「戦争に華など不要です」

 

 

伊58「でも服装のこといったらゴーヤは軍指定のスク水でち。ゴーヤからすれば対深海棲艦海軍のほうがヤバイよ」

 

 

伊58「それより、そのリストはなんでち?」

 

 

提督「解体されはしましたが、艤装がまだ残っている子達のリストです。この中から瑞鶴さんも見つけたんですよ」

 

 

伊58「でちかー。それを見ているってことはもしかしてまたスカウトするんでちか?」

 

 

瑞鶴「まー、龍驤が来てもまだ5人だし、後一人は欲しいよね。戦力的にには雷巡欲しいとこかな」



伊58「甲大将が球磨型独り占めしてるし、さすがにきついでち……」

 

 

提督「睦月型の駆逐艦を」

 

 

提督「お世辞にも資材の蓄えがあるとは言えないので低燃費の遠征要員が欲しいと思いまして」

 

 

伊58「まー、電ちゃんは表面上だけの駆逐艦だから、実質駆逐艦はいないも同然でち」

 

 

瑞鶴「おちびってば他鎮守府からは鬼逐艦って呼ばれてるみたいだしね……」

 

 

瑞鶴「で、どの子よ?」

 

 

提督「卯月さんです」


 

瑞鶴「おちびに引けをとらないクソガキじゃん……」

 

 

伊58「えー、潜水艦がいいでち」


 

提督「潜水艦はゴーヤさん一人いれば十分なんです」

 

 

伊58「ゴーヤはそんなに頼もしいでちかー。参ったなー」

 

 

伊58「仕方ないでち。今日はオリョクル50周ほどしてきてやるでち」

 

 

提督「ありがとうございます、といいたいところですが」


 

提督「ゴーヤさんは私服に着替えてください。自分と一緒に街に出掛けてもらいたいのです」

 

 

伊58「ま、まさかそれは……で、デート、のお誘いでち?」

 

 

瑞鶴「へぇー、ほーう」

 

 

提督「いえ……卯月さんの時間に都合がついたのが今日でして」

 

 

提督「こちらの艦娘さんともお話してみたいから連れてきてくれ、と」

 

 

瑞鶴「間宮さんでもいいじゃん? 資材足りないし、オリョクルしてもらったほうがいいでしょ」ニヤニヤ


 

提督「間宮さんには断られました。『あなたと二人きりでお出かけは――



無理だ



提督「と」



提督「『私がもしも――



深海棲艦



になることがあればその時にお誘いください』と」



瑞鶴「あれ、遠回しに○すっていわれてないかな。あの間宮さんにそんなこといわせたの提督さんが初めてじゃない?」



提督「間宮さんから嫌われてるみたいで。心当たりが多すぎるので、もうなんかいいです」



瑞鶴「さすがね……まあ、あまりダメージないようでなにより」



提督「ぷらずまさんという新種のディザスターは外には出しません。瑞鶴さんは演習場で特訓を優先してもらいたいですから」

 

 

提督「なので、ゴーヤさん」

 

 

伊58「まー、仕事の付き合いとはいえ、久し振りに街に出掛けるのも悪くないかなー」

 

 

伊58「支度してくるから30分待って欲しいでちー」

 

 

提督「その間、瑞鶴さんは今から私と演習場へ。艦載機の扱い……いえ、素質がどの程度か確認させてもらいます」

 


2

 


瑞鶴「んー、海上で潮風を身体で受けるこの感じ! 戻ってきたって感じね!」

 

 

ぷらずま「囀ずってないで早く発艦させやがれなのです。私も艦載機撃ち落とす練習するのですから」

 

 

瑞鶴「おしっ、おちびにはお灸を据えてやろうと思ってたのよねー」

 

 

瑞鶴「弓を構えてっと」

 

 

瑞鶴「艦載機、発艦!」

 

 

\パチャン/

 

 

瑞鶴「ん、矢が海に……ちょっと久し振りだからか失敗しちゃったわね。気を取り直してっと!」

 

 

瑞鶴「もいっちょ発艦!」

 

 

\ボチャン/

 

 

提督「」

 

 

ぷらずま「●ワ●;」


 

瑞鶴「おかしいわね」

 

 

\パチャン/


 

\ポチャン/


 

\バチャン/

 

 

瑞鶴「この瑞鶴艤装さー、壊れてない?」

 

 

提督「あり得ません」

 

 

瑞鶴「おかしいなあ。とりあえず矢がなくなっちゃったから、大至急工廠で妖精さんにいって造ってきてくんない?」


 

提督「瑞鶴さん、艦娘ではなく、軍艦の正規空母を想像してみてください」

 

 

瑞鶴「アドバイスはありがたく」


 

提督「あなたのその弓は飛行甲板の役割を果たしており、矢は戦闘機です」


 

瑞鶴「 (o´-ω-`o)フムフム」

 

 

提督「戦闘機は敵と戦うために空を舞います。それを操縦している妖精さんも気丈万炎の意気込みです」

 

 

瑞鶴「 ( ,,-` 。´-)ホウホウ」

 

 

提督「いざ戦おうと飛行甲板から離陸したはずが、海にストレートでドボンと落とされているのです」

 

 

提督「この鎮守府(闇)は色々な卑劣な手段で戦いましたが、仲間を海の藻屑とするのは瑞鶴さん、あなたが初めてです」

 

 

ぷらずま「お友達を海面に発射して溺死させるイカれた空母なのです。洒落になってねーのです」

 

 

瑞鶴「……はい」シュン


 

ぷらずま「司令官さん、せっかくつり上げてきたホロ鱗の魚ですが、リリースしましょう。この予想斜め下のスクラップは解体するしか幸せになる道がねーのです」

 

 

瑞鶴「初日からキツくない!?」

 

 

ぷらずま「お前もう解体されるしか幸せになる道ねーのです」



ぷらずま「とりあえずこの不良品の建造に使った資材は解体後の瑞鶴(仮)さんに金銭的に弁償してもらうとして」

 

 

ぷらずま「解体の日にちはいつにしますか。お互い時間の無駄なので早く、そして賢明な決断をお願いしたいのです」

 

 

提督「ええ、その通りですね」

 

 

瑞鶴「ちょっとお!?」

 

 

提督「スカウトした時にいったはずです」

 

 

瑞鶴「来るのなら歓迎してくれるっていったじゃん!」


 

提督「相応の覚悟を求める、ともいったはずです」

 

 

瑞鶴「覚悟ならあるわよ! 戦場に立つ覚悟は決めてきたわ!」

 

 

提督「どうやって戦うのです。いっておきますが、今のあなたを出す場合、囮や弾除け替わりに余裕で前線に置くこともあり得ますが、そのお願いに従ってくれるあなたではありませんし」

 

 

提督「決めてきた覚悟を見せる以前の問題なので……」

 

 

提督「1週間、猶予を差し上げます」

 

 

提督「戦えるようにならなければ、現瑞鶴は解体して瑞鶴艤装は軍の保存庫に返却します」

 

 

瑞鶴「あれじゃないかな。解体されてから少し背とか伸びたし、その影響じゃない?」

 

 

提督「鬼だと悪魔だといわれようが構いません。瑞鶴さん、そのつもりで」

  

 

瑞鶴「……っ」

 

 

提督「明日には龍驤さんが来ます。彼女は式神仕様ですが、アドバイスはできるお人なので指導してもらえるよう自分からお願いしておきます」

 

 

提督「それと姿勢が悪いです。弓道の基本は置いておきまして……同じ5航戦の翔鶴さんを思い出して、参考にしてみるといいと思います」

 

 

提督「映像で見た限りではありますが、以前のあなたは翔鶴さんと発艦時の姿勢がかなり似通っていました。その映像も渡しますので、参考に」

 

 

瑞鶴「…………」

 

 

瑞鶴「1週間に深海棲艦と戦えるようになればいいのよね?」


 

提督「ええ。がんばってください」

 


瑞鶴「4日でやってやるわ!」



提督「それは頼もしい。大丈夫ですか」



瑞鶴「あ、今のは悪い癖。根拠ない」



ぷらずま「はわわ、頭の悪さだけは歴代1の瑞鶴なのです」

 


提督「後、ぷらずまさんも」

 

 

ぷらずま「なんです」

 

 

提督「体のことは理解しておりますが、せめて近距離の精度は並み程度まではあげていただきたいです」

 

 

ぷらずま「それが簡単に出来たら苦労しねーのです」

 

 

提督「……では自分はこれにて」

 

 

ぷらずま「どこに行くのです」

 

 

提督「卯月さんと待ち合わせ出来ましたので」

 

 

ぷらずま「……卯月、ですか」

 

 

ぷらずま「またお友達になりたいのです」



提督「善処します」

 

 

ぷらずま「ぽんこつ空母はともかく、この私にも指図した以上、司令官さんも結果を持ち帰ってきやがれなのです」

 

 

ぷらずま「いいですね?」

 

 

提督「善処します。卯月さんは資料を見る限り、自分達と相性は悪くありません」

 

 

提督「それと近々、カ級、いや潜水艦タイプの深海棲艦の鹵獲に出撃してもらいます」

 

 

ぷらずま「●ワ●」



ぷらずま「ようやく始まりますか」

 

 

ぷらずま「了解なのです」

 


【2ワ●:2日で浮くぞ! ぷっぷくぷー!】





――――司令官、通信、切らない、で。



――――うーちゃん達、大破し、て



――――新しい敵、北方棲姫が。



――――卯月ちゃん! 気をしっかり持ってください!



――――皆さん、あたしの指示に従ってください!



――――今いった作戦を各自、遂行してください。大破しているのはあたしと卯月さん。あたしが卯月さんを連れて陸地に避難します。



――――皆さんは、



――――お願い、します。皆さん、あたし、の指示に。



――――全員生還の指示に、どうか。



――――大丈夫。

 

 

――――北方棲姫くらい引き付けられるよ。

 

 

――――必ず、助けに戻るから。

 

 

――――待っててね、卯月、阿武隈。



……………


……………



――――アブー、もう日がのぼって、霧が晴れて、あ、誰か、きたぴょん……



――――生きていてなにより、なのです。



――――み、皆は無事に帰投、しましたか!?



―――えっと、お二人とも、



――――電は、



――――キスカから誰も帰投しないから様子を見に来たのです。



1

 


提督「ま、車はこの有料駐車場に停めておきますか。それでは行きましょう」



伊58「提督さんは軍服でちか」

 

 

提督「ええ、なにせ街中は人が多いもので。目立ちますが、その方が卯月さんも見つけやすいと思いますし、特に問題はありません」

 

 

伊58「ゴーヤは久々の私服だよ。前の鎮守府の時からスク水ばかりで過ごしてて下着はかせてもらうのも久し振りでち」


 

ヒソヒソ キイタイマノ?

 

 

提督(目立つのが裏目に……)

 

 

ヒソヒソ ハッチャン○ッチャウヨ?


 

提督「……」コツコツ

 


2 街中緑地公園

 


提督「この公園ですね。15分後が約束の時間です」

 

 

伊58「ゴーヤ、散歩してきていい?」

 

 

提督「どうぞ。一応5分前には戻ってきていただけると。自分はそこのベンチでたむろしていますので」

 


~1時間後~



伊58「来ないでち……」


 

提督「一応連絡してみたんですが、応答してくれませんね」

 

 

提督「時間が許す限りは待とうと思います」



~三時間後~

 

 

伊58「……もう帰ろうよ?」

 

 

提督「も、もう少し」

 

 

~六時間後~

 

 

伊58「もうすぐ18:00時でち」

 

 

伊58「提督さん、ゴーヤにその卯月からのメール見せてー」

 

 

提督「どうぞ、これです」

 

 

伊58「……うん、時間と場所は間違ってないでち」


 

伊58「あ、電話が来たでち!」

 

 

伊58「もーしもし! いつまで待たせる気でち! 『この時間にここで待ち合わせしましょう。私は艦娘としてまだ戦いたいので、必ずお話しに行きます』って 確かに……」

 

 

卯月(仮)「な~んて、うっそぴょおぉぉぉぉ~ん」

 


ツーツーツー……

 


伊58「」

 

 

提督「……どうやら卯月さん、艦娘時代と変わっていないようですね」

 

 

伊58「…………」ブチッ

 

 

伊58「出るまでかけてやるでち!」

 

 

提督「帰りましょうか」

 

 

提督「付き合わせてすみません。お礼とお詫びを兼ねて奢りますからご飯でも食べていきませんか?」


 

伊58「…………仕方ない、提督さんに免じて家突は勘弁してやるでち」ッチ


 

伊58「アイスクリンがいいでち」

 

 

提督「……ところでなぜ今ごろかけてきたのでしょうか?」

 

 

伊58「良心の呵責? いつまでも待たせておくのも可哀想だと思ったとか?」

 

 

提督「いや、普通は8時間も待つとは思いませんよね。帰っていると考えるのが妥当では……」

 

 

伊58「念のためにとか」

 

 

提督「……先程の電話から性格も変わっていないようです。だとすると……」

 

 

提督「可能性としては、もしかして、何時までも帰らないから……」

 

 

伊58「……どこかで見てた?」

 

 

伊58「でも、8時間も待ちぼうけくらっているゴーヤ達を観察しているだなんて、何のために……」 


 

提督「その様を眺めているのが楽しい、とか、ですかね?」

  

 

伊58「性格悪すぎでち」

 

 

提督「まあ……失礼な邪推ですよね」

 

 

伊58「あ、ちょっと待つでち」ジーッ

 

 

伊58「ゴーヤは潜水艦娘だから夜目というか暗闇で目はきくほうでち」

 

 

提督「もしかしてそれらしき人を見つけました?」

 

 

伊58「……五十メートルほど左斜め後ろの植え込みに誰かいるでち。卯月って赤い髪のはずでち。確か艦娘は解体されても死んでいる部分は変化しないから、髪は赤いままだよね?」

 

 

提督「ですね。ですが、ほとんどの子は目立つ髪色を嫌って切ったり染めたりしていると聞いていますし、中学生ですから学校の規則で赤い髪はアウトかと。何より卯月さんは数年前に解体されたので」

 

 

伊58「……うーん、あ、なにか光ったでち」

 

 

提督「今、自分が卯月さんの番号にかけました。当たりかもしれません」

 

 

伊58「逃! が! さ――――んっ!」

 

 

提督「ちょっと待ってください。自分は足が遅いので、はぐれてしま……」

 

 

提督「行ってしまった……」

 


3

 


伊58「待つでち! このクソガキ!」

 

 

卯月(仮)「お前確か0距離雷撃の伊58だぴょん! お前だけには近寄って欲しくないぴょん!」

 

 

伊58「もう少し! でち!」

 

 

卯月(仮)「っていうかお前、足はやすぎだぴょん!?」ハアハア

 

 

伊58「ゴーヤが軍に嫁ぐ前にいた地元は娯楽に乏しいド田舎なあまり、海を泳ぎ、山を駆け回っていたのでち!」

 

 

卯月(仮)「っく、追い付かれてしまうぴょん。かくなる上は……」タタタッ

 

 

伊58「提督さん! 遅いよ!」

 

 

伊58「この複合娯楽施設に逃げ込んだでち!」タタタッ

 

 

提督「ゴーヤさん自分の番号教えておくんで、よく聞いてください。自分は、もう限界なので歩かせてもらいます……」

 


4 複合娯楽施設 3階にて

 

 

伊58「な、な、な」

 

 

伊58「スコアで負けた、でち……」


 

卯月(仮)「なんというかお前は狙いをつけるということ自体がへったくそっていうのが分かったぴょん」


 

卯月(仮)「だから魚雷も0距離でとかー? そんなの開き直っただけだぴょん」

 

 

提督「お二人ともなにを」

 

 

伊58「かけっこは店員さんに怒られたから、見ての通り、ダーツで勝負したでち。結果はゴーヤの惨敗だよ……」

 

 

卯月(仮)「うーちゃんの勝ちだから、約束通りお前ら諦めて帰れっぴょん」

 

 

伊58「提督さーん、ごめんでち……」

 

 

提督「……卯月さん、どうかお話だけでも聞いてはくれませんか」

 

 

卯月(仮)「今、噂になっている鎮守府(闇)は知ってるぴょん。演習では武蔵や赤城のいる格上相手に勝利を収めたって」

 

 

伊58「ふふん、ゴーヤ達が落ちこぼれじゃないことが証明されたのでち」ピース


 

卯月(仮)「不意打ち騙し討ちといった味方への敬意の一切ない卑劣戦法の数々を使ったとか聞いてるぴょん」


 

提督「……ええ」

 

 

伊58「まあ、好感は持てないのは当然でち……」

 

 

卯月(仮)「勘違いするなっぴょん」

 

 

卯月(仮)「うーちゃん、そういう相手の裏をかいたり騙したりするの大好きだぴょん!」



卯月(仮)「でも卯月艤装は明石が魔改造してるはずだぴょん。艤装が与える精神影響が大きくなって、その後遺症、解体されて15歳になった今も」



卯月(仮)「口から自然に、ぴょん、とか、ぷっぷくぷーとか出るぴょん」 

 


提督「あー……」


 

伊58「それのなにがいけないんでち?」



卯月(仮)「ゴーヤお前、艦娘の職業病だぴょん」



卯月(仮)「街の学校に来てでちでちいってたら、



2日で!



浮くぞ!!



ぷっぷくぷー!!!




伊58「!?」ビクッ



卯月(仮)「そして、壊れていないと妖精さんが認識して、新しい卯月艤装を建造してくれないぴょん」

 


卯月(仮)「あの卯月艤装、好きじゃないぴょん……」


 

卯月(仮)「それになにより解体を申請した理由、キスカでのことは……」

 

 

卯月(仮)「そこまで詳しく調べたぴょん?」

 

 

提督「そこらも含めてお話したいと」

 

 

卯月(仮)「だが断るぴょん」

 

 

卯月(仮)「正直、司令官が一番悪い噂が流れていて信用ならないぴょん」

 

 

提督「自分とも勝負しませんか?」

 

 

卯月(仮)「まだ問題が……」

 

 

??「卯月さん、帰りますようー」

 


5

 


提督「……あなたは確か」ジロジロ

 

 

阿武隈(仮)「なんかちょっと目が怖いです、はい……」

 

 

卯月(仮)「アブー、例の鎮守府の連中だぴょん」


 

阿武隈(仮)「え、卯月ちゃんその話は終わったって……」

 

 

卯月(仮)「クソガキゆえ、待ち惚け喰らわせたぴょん」

 

 

卯月(仮)「もう一度見に行ったらまだいたぴょん。それで追いかけ回されて、今ここにいるって流れだぴょん」

 

 

阿武隈(仮)「も、申し訳ありません。卯月ちゃん、ちょっと意地悪なところがあってえ………」

 

 

伊58「ちょっとじゃないでち……」

 

 

提督「阿武隈さんもリストに名前がありました。どうでしょう。もう一度、艦娘として」

 

 

阿武隈(仮)「無理です」キッパリ

 

 

提督「……強い意思を感じますね」

 

 

阿武隈(仮)「あたしは強い意思を持って海から去りましたから」

 

 

提督「憎しみの感情ですか?」

 

 

阿武隈(仮)「……性格が悪いですね」

 

 

提督「まあ、良いとはお世辞にも」

 

 

伊58「ゴーヤは嫌いじゃないでち。この提督さん、根っこは悪い人じゃないと思っているでち」

 

 

卯月(仮)・阿武隈(仮)「…………」

 

 

提督「自分と勝負しませんか?」

 

 

卯月(仮)「ほほう、ダーツに相当な自信があると見たぴょん」

 

 

阿武隈(仮)「お断りします。あたし達にメリットがありません」

 

 

提督「では、この鍵を」チャリン

 

 

提督「負ければ自分の唯一の財産である車を差し上げます」

 

 

卯月(仮)「面白いぴょん! やってやるぴょん!」

 

 

卯月(仮)「アブーはこの間、免許取ったぴょん! 帰りはハイウェイで帰るぴょん!」

 

 

阿武隈(仮)「……なるほど、相応の覚悟は持ってきたんですね」

 

 

提督「お二方の事情はお察ししておりますので、その上できましたから」


 

阿武隈(仮)「…………一度だけです」


 

提督「了解しました」

 

 

阿武隈(仮)「卯月ちゃん、あたしが相手するね」

 

 

卯月(仮)「ダーツはうーちゃんより上手いアブーに任せるぴょん!」



阿武隈「約束ですよ?」 



提督「ご安心を。二言はありません」

 

 

伊58「提督さんがかっこいいでち!」

 


6 駐車場にて

 


提督「…………」

 

 

卯月(仮)「……信じられないぴょん」


 

卯月(仮)「よっわ!」


 

阿武隈(仮)「あ、あの、この車、本当にもらっていいんですかぁ?」ブロロロロ

 

 

提督「も、ちろん、です………」

 

 

伊58「ゴーヤ以下の実力でなぜあんな虚勢を張ったんでち……」

 

 

提督「手ぶらで帰ればぷらずまさんになにをされるか……」

 

 

阿武隈(仮)「あ、あの、やっぱりお返しします」

 

 

提督「それは……」

 

 

阿武隈(仮)「あたしでは、い、維持していけませんし、なにより罪悪感がすごくて……」

 

 

阿武隈(仮)「だから、お返ししますう」

 

 

提督「……」

 

 

卯月(仮)「大の男が女子高校生に情けをかけられた気分はどうだぴょん?」プップクプー

 

 

伊58「電ちゃんと同じ匂いがするやつでち……」

 

 

卯月(仮)「そもそもうーちゃん達のような欠陥品をスカウトしようだなんてのが間違いだぴょん」

 

 

提督「いえ、お二人は優秀かと」

 

 

提督「正直、諦めきれません……」

 

 

卯月(仮)「めんど。アブー」

 

 

卯月(仮)「もう一勝負してやるぴょん」

 

 

阿武隈(仮)「え、ええ!?」

 

 

卯月(仮)「なーんか、諦め悪そうな気がするから先手を打つぴょん」

 

 

卯月(仮)「うーちゃん達が勝てば2度と目の前に現れないで欲しいぴょん」

 

 

卯月(仮)「アブーもキッパリ決着つけといたほうがいいぴょん」

 

 

阿武隈(仮)「それはそうだけどお……」

 

 

卯月(仮)「今日は遅いからもう帰るぴょん。後日に勝負の日時と内容を連絡するぴょん」

 

 

提督「願ってもない。誓約書でもなんでも書かせていただきます。ただ今日のような待ち惚けは勘弁してもらいたいです」

 

 

卯月(仮)「そこは約束してやるぴょん」

 

 

卯月(仮)「じゃー、うーちゃん達はここでー」



【3ワ●:キスカで司令官に見捨てられたのです】


 

1



伊58「もうあいつらから連絡きたでち。日時は明後日の16:00で……」

 

 

提督「明後日、ですか」

 

 

伊58「んーと、ガンダムの対戦ゲームみたいでち。ゴーヤと提督、向こうの二人で2on2の勝負だって」

 

 

伊58「提督さんこのゲーム、知ってる?」

 

 

提督「運転中なので画面を見せてこないでください……」

 

 

提督「自分も知らないので、調べてみてくれませんか」

 

 

伊58「……うーん、シューティングかな? 格闘、ゲームってやつなのかなあ?」

 

 

提督「家庭用が出ているか調べてみてください。出ていればアケコンごと買って特訓しましょう」

 

 

伊58「えっと…………出ているけど、前作? ぽいでち。でも基本的なことは一緒のように見えるよ?」

 

 

提督「では寄り道します」

 


2

 


伊58「ウィキとか動画とか色々見たけど、ゴーヤはこいつのパイロットになるでち」

 

 

提督「自分はこれで」

 

 

伊58「飲み物、夜食、全て完備」 


 

伊58「夜が明けるまで特訓するでち」

 

 

瑞鶴「て、提督さーん、入るよー」コンコン

 

 

瑞鶴「入渠させてもらうわー。ちゅ、中破ってこんな痛かったっけ」ボロ

 

 

提督「お疲れ様です。どうぞ使ってください」

 

 

瑞鶴「……なにしてんの?」

 

 

提督「見ての通りゲームですが」

 

 

提督「明日は丸一日この部屋に込もってやってますので、なにかあればこかに」

 

 

瑞鶴「……え、私がこんな夜中までボロボロになってがんばってんのに提督さんはゴーヤと自宅デート洒落こむわけ?」

 

 

瑞鶴「くそー………」

 

 

提督「デートではありませんが、この過程は必要なことです」

 

 

瑞鶴「……あ、もしかして卯月の?」


 

伊58「でち。このゲームで対決して勝てば卯月と阿武隈がこの鎮守府に来るよー」

 

 

瑞鶴「阿武隈も? マジ?」

 

 

瑞鶴「どこの鎮守府も欲しがる超優秀な軽巡がうちみたいなところに?」

 

 

提督「そう、なりますね。瑞鶴さんほどではありませんが、阿武隈の適性者も少ないですし、今は不在だったかと」

 

 

提督「この機会を逃せば、こんな機会には2度と恵まれないという気概で」

 

 

ぷらずま「●ワ●」

 

 

ぷらずま「なにやら面白い話をしているのです」


 

ぷらずま「阿武隈とやらは一番新しいやつのことですよね?」

 

 

提督「ええ」

 

 

ぷらずま「司令官さんから見て見込みはあるのです?」

 

 

ぷらずま「あの卯月さんと阿武隈さんは私をこの体にした時の司令官のもとにいました。まあ、かつてのお友達なのです」

 

 

ぷらずま「正直戻ってくるとは思えませんが……」

 

 

瑞鶴「なにか知っている風ね」

 

 

ぷらずま「軍艦阿武隈はキスカ島の救出作戦が有名、でしょうか」

 

 

ぷらずま「沈めるのではなく、助けたことによる英雄」

  

 

ぷらずま「あの阿武隈さんは、4年前に再びキスカに出撃しました。あの辺りに居着いた深海棲艦を撃沈させるために、です」

 

 

ぷらずま「あの日はあの時と同じように、深い濃霧に覆われていました」

 

 

ぷらずま「まあ、優秀な艦隊でしたから目的の深海棲艦は撃沈させました」

 

 

ぷらずま「が」

 

 

ぷらずま「ブラック提督の作戦は決死を持って撃沈させよ。任務は遂行したものの、味方は卯月さんと旗艦阿武隈さんが大破です」

 

 

ぷらずま「濃霧のせい、そして電探が不具合を起こしたそうで、忍び寄る新たな敵の発見が遅れたのです」

 

 

ぷらずま「向こうの支援艦隊の接近に。北方棲姫旗艦の機動部隊、みたいです」


 

伊58「……」

 

 

ぷらずま「艦隊は阿武隈さんと卯月さんとともに海域から離脱しようとしていましたが、旗艦の阿武隈さんは自分を置いていくように、と指示を出したのです」 

 

 

瑞鶴「ん? 阿武隈も卯月も生きているんだから逃げられたのよね。艦隊も逃がしたみたいだし、すごいじゃない」

 

 

ぷらずま「いえ、艦隊は阿武隈さんと卯月さんを除いて全滅したのです」

 

 

ぷらずま「あの北方棲姫はどこか妙で、阿武隈さんと卯月さんを無視して、逃げた連中を先に潰しにかかったようです」

 

 

ぷらずま「4隻が撃沈、残るは大破状態の阿武隈と卯月」


 

伊58「ひっ、絶体絶命でち……」

 

 

ぷらずま「阿武隈さんは司令官に指示を仰いだのですが、あの司令官は悟ったんでしょうね」

 

 

ぷらずま「ただ通信を切った」

 

 

瑞鶴「………最悪のクズ野郎ね」

 

 

ぷらずま「決死を持ってキスカのお友達を救い出した軍艦阿武隈の艦娘が」

 

 

ぷらずま「キスカでお友達に見捨てられた、というオチ」


 

伊58「……」ナミダメ

 

 

ぷらずま「後日、私が見に行ってきた時、大破状態の阿武隈さんと卯月さんを発見したのです」

 

 

ぷらずま「二人はなんとかキスカ島に上陸して身を隠していたようなのです。島に大きな凹凸が見られたのは砲撃されていたから、だったみたいなのです。北方棲姫含め、敵は霧が晴れる辺りに引いていったみたいですね」

 

 

ぷらずま「そして救助されて二ヶ月後、阿武隈さんは自ら解体を申請したのです。続いて卯月も」

 

 

ぷらずま「まあ、トラウマ、なのです。以前の阿武隈さんの見る影もないぽんこつと化しましたからね」

 

 

ぷらずま「卯月はともかく、阿武隈は深海棲艦を前にすると、狂乱するのです。水雷戦隊の指揮を取るどころか、砲撃一つもろくに出来ないパニック状態になりますから」

 

 

瑞鶴「そんな目に遭えば仕方ないのかもね……」

 

 

提督「む」

 

 

ぷらずま「私がリストアップした連中に阿武隈さんもいたはずなのです。この情報も資料に載せておいたはずです」

 

 

ぷらずま「確認してなかったのです?」

 

 

提督「いえ、見ましたけど、ちょっと間違えた解釈をしていただけです」

 

 

ぷらずま「?」



ぷらずま「まあ、いいです。司令官さんはその阿武隈さんがこの場所に再び戻ってくるかもしれないと」

 

 

ぷらずま「そう言うのですよね?」

 

 

提督「……そうですね」

 

 

ぷらずま「かなり難しいと思うのです」

 

 

瑞鶴「それもそうね。話を聞く限り囮撃沈は前科があるし、大破進軍も余裕で決行できる提督のもとに来るとは思えないわねえ……」

 

 

ぷらずま「阿武隈さんはトラウマ克服すればヘドが出るほど優秀なのです。うちの旗艦をやらせてあげてもいい程のお友達であるのは、この私が保障するのです」

 

 

ぷらずま「卯月も卯月艤装でタイマンならば戦艦に勝てる天才の素質持ち。まあ、性質の悪い童なのですが」

 

 

瑞鶴「おちびがいうな……悪童の分野であんたの右に出るものいないでしょーが……」 


 

提督「完全に同意です」



提督「さてゴーヤさん、特訓を始めましょう」

 

 

伊58「でちね。勝負のテーブルに復帰のコインを置く。なにかしら戻ってくる理由はありそうでち」

 

 

提督「まあ、今のここも周りからの評価はその例の鎮守府時代に劣らずヤバいんですけどね……」

 

 

瑞鶴「 (σ´- ω-`)σソレナ」

 


【4ワ●:ぷらずまの本気を龍驤さんと見るのです】

 


1


龍驤(仮)「あれ、迎えは間宮さん一人?」

 

 

間宮「ええ、提督さんはものすごく忙しいとのことで、龍驤さんのお出迎えを私が頼まれましたので……」

 

 

間宮「艤装は届いているので、建造に入っていただき、終わり次第執務室へ行ってもらうようにと」

 

 

龍驤(仮)「了解。そう言えば瑞鶴に艦載機のこと全て教えてあげてって連絡きたなー。あいつなにしてん?」

 

 

間宮「さあ。ここは自由ですからねー。あの提督さん、遠征どころか出撃もさせていません。まあ、支援施設の時みたいにみんなのびのびと」

 

 

龍驤(仮)「まあ、いる連中の事情が事情だけに分からんでもないけどさー……」

 

 

龍驤(仮)「ある程度は出撃やら遠征やらせんと大本営からの資材支給も見直しされてまうで」

 

 

間宮「あ、そこら辺はゴーヤさんが自発的にクルージングしてくれていますので大丈夫かと」

 

 

間宮「まあ、とりあえず工廠まで案内しますね」



2 執務室

 

 

龍驤「軽空母龍驤さんが来たでー」コンコン

 

 

龍驤「おらんのー?」

 

 

【↓この机にあるのが今日の分のお仕事です。なんとか片付けてください。お願いします】

 

 

龍驤「なんやねん! 提督の仕事を艦娘に丸投げしたらあかんやろ!」

 

 

龍驤「元司令官のうちには確かにある程度は出来るかもやけどさ!」プンスカ

 

 

【なにかあれば廊下突き当たりの自分の部屋までお越しください】

 

 

龍驤「歓迎会しろーとかいわんけどさー、出迎えくらいしろっちゅーねん」

 

 

龍驤「うん? なんやーこのリスト」パラパラ

 

 

龍驤「支援施設ん時の子の個人情報やないかー。この付箋は目えつけとる子かいな。へえー、ほーん……」

 

 

龍驤「面白いことやってるなー」

 

 

龍驤「うちも混ぜてもらおっと」

 

 

龍驤「そんでこの空の瓶なんやろ……」



龍驤「最近、独り言多なってきとるな……」



3

 


龍驤「キミ! 忙しいって聞いてたけど、ゲームしとる暇あるなら迎えに来てや!」



龍驤「うち、歓迎されてないかと思うやん!」


 

龍驤「甘えたろかぼけー!」



提督「自分とゴーヤさんは今……」 カチャカチャ

 

 

伊58「ゴーヤ達は、勝たなければいけない勝負に、向けて、忙しい……の、でち……」カチャカチャ

 

 

龍驤「二人とも目に隈あるし、声がかすれてるで! いつからゲームやっとんねん!」

 

 

伊58「不眠不休で半日を越えたのでち……」カチャカチャ

 

 

龍驤「半日でそれか。ゴーヤ集中し過ぎちゃうか……キミは、まあ、もともとそんな感じやったかな……」



提督「銅プレなら、まあまあ勝てるように……なってきたところです」

 

 

龍驤「……?」

 


カチャカチャカチャカチャ

ヅダハセンカンスラオトセルノダヨ

ニューガンダムハダテジャナイ

カチャカチャ

 

 

提督「…………」

 

 

伊58「…………あ」ドカーン


 

龍驤(ゲームでも自爆特攻しとる……)

 

 

龍驤「あのさ、見ていて大体システム分かってきたけど」

 

 

龍驤「ゴーヤちゃん、5堕ちさせたほうがええんちゃう。なんかゴーヤちゃん体力少なくなったら必ず自爆技で突っ込んでるやん。キミ、立ち回り上手いし、0堕ちでゴーヤちゃんのフォロー回ったほうがええんちゃうの?」

 

 

提督「……む、このゲーム経験が?」

 

 

龍驤「ごめんなあ。ないけど、うち差し出がましいねん」

 

 

伊58「ぬぬ! あの羽毛を撒き散らしているヴィジュアルロボ、ずっと浮いてる気がするでち。あいつのブースト量おかしくないでちか!」

 

 

伊58「ぴょんと跳ねるあの動き、卯月を思い出して腹が立つでち………」



ドカーン

 

 

伊58「ああ、ゴーヤの自爆が避けられてしまったでち……」

 

 

提督「確かに龍驤さんのいう通りかもしれませんね……」

 

 

提督「ゴーヤさん、そろそろ休憩しましょうか。自分、目がシパシパしてきまして」

 

 

伊58「そうだね。ゴーヤは少し仮眠を取るよー……起きたら間宮さんのところに行ってきて、ご飯を食べるでちー……」

 

 

提督「ええ、それではまた後程……」

 

 

龍驤「キミも仮眠取ったら?」

 

 

提督「自分は大丈夫です。低燃費仕様で3日は徹夜でいけます」

 

 

龍驤「まあ、執務はうちが出来る限りは代わりにやっといたるから、ゴーヤちゃんと寝とりー」

 

 

提督「ありがとうございます」

 

 

提督「しかし、それとは別に執務室に用事があるので……」コツコツ

 

 

4 執務室地下室にて

 

 

龍驤「一応事前にここのことは聞いとったけどさ、おっかない場所やな。拷問器具とか実物初めて見たわ。怖っ」

 

 

提督「無理してついてこずとも……あまり気持ちのよい場所ではありませんし」

 

 

龍驤「そこの本棚はどんな本なん?」

 

 

提督「主に深海棲艦の資料です。ぷらずまさんが色々と作製してくれまして。まあ、今回の目的は……あった。これです」

 

 

龍驤「北方棲姫?」

 

 

提督「キスカ島戦の記録です」

 

 

龍驤「……4年前の阿武隈の事件か?」

 

 

提督「ええ。ご存じで?」

 

 

龍驤「4人も沈んだからなあ。あれがきっかけでここの鎮守府、立場が危うくなったみたいやん。元帥ちゃんは憲兵からきな臭い報告受けてたらしく、まあ、その翌年の鹿島艦隊から5名の殉職者。今度は規則に沿って、ではなく、重い腰をあげて徹底的な調査に乗り出そうとしたところ」

 

 

龍驤「深海棲艦に潰されたみたいやん。そこで電、まあぷらずまちゃんを保護して、その特異な体が判明。それから支援施設として復興、電ちゃん運用するために鎮守府として再起、巡りめぐってキミがきた」

 

 

龍驤「……っと、話が逸れてるなあ。あの阿武隈、相当病んでたって聞いたで。海に戻ってくるとは思えんけど……」

 

 

提督「………」パラパラ


 

提督「あの阿武隈さんは甲大将から直々に勧誘されるほどに優秀だったみたいです」

 

 

提督「卯月さんも素質に天性のものがあり、睦月型とは思えないほどの戦果をあげていますし、なにより普通は良心が痛む戦いかたもしてくれる貴重な人材です」

 

 

提督「龍驤さんも来てくれましたし、さらにあの二人を加えることができれば間宮さんをはずして6隻編成がようやく可能となります」

 

 

龍驤「少しは阿武隈の気持ちも考えたってや……」

 

 

提督「このスカウトは自分なりに阿武隈さんのことを考えております。それに、あくまでも選択肢でして」

 

 

提督「彼女が決めることです」

 

 

龍驤「そっか。一応、いっておくけど、うち元帥ちゃんに見張りも頼まれてるからなー」

 

 

提督「まあ、そう簡単にクビは飛ばされない立場にあると自分は思っております。ぷらずまさんを戦場に出せるという意味は大きいです」



提督「自分が思っていたよりも、遥かに」



龍驤「………」



提督「軍の研究施設でぷらずまさんがその身体を調査されていた頃、ぷらずまさんのストレス解消と能力検証のために、深海棲艦と戦わせたことがあるみたいで」



提督「ぷらずまさんの本気の片鱗と思われる貴重な映像があります。正式にあの子の司令官として着任した、ということで大淀さんがくれました」



提督「特に空母のあなたにはトラウマになりかねない衝撃の映像ですが、観ますか?」



龍驤「見たい。うち見たい。あの子の本気はすごい見たい。ここまで軍に贔屓される存在そうそういないし、どれ程のものなんやろ」



龍驤「って、瑞鳳達とも話してたし!」



提督「この自分のスマホにデータが」



提督「それでは衝撃の映像をご覧ください」




《たかがヲ級改がこのぷらずまの前に立つと!!》


《この広く深い世界には、こんなオモシロイ屈辱があった!?》


《はわわ、はわわわわわわア!》


《ダボがダボがダボがダボがダボがダボがダボがダボが!!!》


《圧倒的な航空戦力というものをあのダボに見せてやらないとダメなのですゥ!!》



《右腕上部トランス! 空母棲姫艤装な!》


《右腕下部トランス! 北方棲姫艤装の!!》


《左腕トランス! リコリス棲姫艤装です!!!》



《タコヤキ艦載機ギャ! 発艦発艦発艦発艦ンヲンヲ発艦ンンん!》



《な!!》


《の!》


《Death!!!》



ガガガガガガガガ

 

ガガガガガガガガガガガガ

 

ガガガガガガガガガガガガガガガガ


ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!



龍驤「災害かな?」



提督「蝗害風景を思い出しますよね……」



提督「この一戦でこの周辺の海域を取り戻したとか」



龍驤「こ、こんなんやられてたらうちら、開幕でこ、殺されて……」ガクブル



提督「まあ、ぷらずまさんいわく演習とかいうお遊びでマジになるのは嫌だ、ということと、どうやら3つ以上の複数トランスを使うと、クールタイムが必要になってくるみたいで」



提督「軍の調べでは、空母棲姫、北方棲姫、リコリス棲姫、戦艦棲姫、潜水棲姫、駆逐古鬼、そして、深海海月姫。この7つが引き出し」



龍驤「ラスボスかな?」



提督「深海海月姫の海月艦載機ギミックによる馬鹿げた装甲と耐久はヤバいです……」



龍驤「まさか、そのギミック使いながら、他の深海棲艦艤装全て使える、とか」



龍驤「まさかまさか。まさかなー……アハハー……」



提督「それが本気、みたいです」



龍驤「……うち、うちな……」



龍驤「……聞かんほうがよかった」



龍驤「分かってもうたん……」



龍驤「キミの机に、あんなに空瓶あったわけに……」



提督「龍驤さん、精神安定剤は執務室にまだあります」



龍驤「少しもらうわ……」



龍驤「なにかあったらうちに相談してな! 早まった真似はあかんからな!」



提督「ええ、龍驤さんこそ海に出るときぷらずまさんと肩を並べることもあり得るんです。気を確かに持ってくださいね」



龍驤「二人でがんばろーな! 指切りしよ指切り!」



ユビキリゲンマーン



5


 

龍驤「よしっ、それじゃまず瑞鶴の面倒見てくるわ。その後に執務片付けるで。あの量なら大して時間かからんし」

 

 

提督「さすがですね。自分は半日かかります……」

 

 

龍驤「あの量でそんなにかかるってことは恐らくキミの要領が悪いんやないかな……」

 

 

提督「……すみません、精進します」

 

 

6

 

 

阿武隈(仮)「この……1/5作戦」

 

 

卯月(仮)「囮撃沈させるとか怖いぴょん……」

 

 

阿武隈(仮)「いえ、あの提督さんの指示にミスはありません。最も作戦を成功させる確率の高い指示です」

 

 

阿武隈(仮)「綺麗事がまかり通らない状況、しかも仕方なかったとはいえ、この大規模作戦が実質、初陣」

 

 

阿武隈(仮)「この作戦時の艦は合計20隻で、敵は100隻……」

 

 

卯月(仮)「大和でなければここまで角は立たなかったぴょん」

 

 

阿武隈(仮)「それでも、すごいよ」

 

 

阿武隈(仮)「救出対象者から死傷者はおろか怪我人すら出していないから」

 

 

阿武隈(仮)「まるで……」

 

 

卯月(仮)「奇跡ぴょん?」

 

 

阿武隈(仮)「奇跡は起きていないよ。淡々と確率の高い方へと事態が転がっていっただけだと思う。きっと読み通りだろうから、そういう意味ですごいと思ったんだ」

 

 

阿武隈(仮)「良い意味でも悪い意味でも実直な指示を出す司令官なんだね」

 


卯月「将校よりもいい?」



阿武隈(仮)「まあ、丙少将は小破撤退も珍しくない命を大事に、タイプ。艦娘から人気が出るね。あたし達の代でも丙さんが最も配属希望が多かったです」



阿武隈(仮)「乙中将は感覚を頼りに思考組み立てるタイプだね。鼻が効く、というのかな。持っている、人」



阿武隈(仮)「甲大将は誇りとか矜持を持って挑むタイプ。大将の地位が示す通り、いまだに将校のなかで最強だったはず」



阿武隈(仮)「あの人は、純粋な思考タイプかな。悪い可能性を減らすことだけを考えてる、感じ」



阿武隈(仮)「あの人が囮を使わずに全員生還の手段を取れば、もしかしたら運によっては、大和さんも沈まなかったかもしれないけど……」


 

阿武隈(仮)「それは本末転倒の賭博性が高過ぎて、司令官としてはミスといわざるを得ないかも」

 

 

阿武隈(仮)「……、……」

 

 

卯月「もしかして気に入ったぴょん?」

 

 

阿武隈(仮)「いえ、合同演習時の指示があまりにも悪逆非道すぎますし……」


 

卯月(仮)「……そうやって」

 

 

卯月(仮)「そうやって調べて考察する時点で海に未練あり過ぎだぴょん」

 

 

阿武隈(仮)「……ホントだよね」

 

 

阿武隈(仮)「……」


 

卯月(仮)「ま、安心するぴょん」

 

 

卯月(仮)「うーちゃんはアブーといるぴょん」

 

 

阿武隈(仮)「……ごめん、ね」

 

 

卯月(仮)「……ぷっぷくぷー」

 


【5ワ●:死にたくなかったから、敵を押し付けた】

 


1



伊58「付け焼き刃でも家庭用になかった新仕様は理解したでち」

 

 

提督「貸し切りでやれるだなんてサービスがあるとは驚きましたね……」


 

卯月(仮)「よく逃げずに来たぴょん!」

 

 

阿武隈(仮)「………こんにちは」

 

 

提督「はい。こんにちは」

 

 

提督「阿武隈さん、どうかしました?」

 

 

阿武隈(仮)「いえ、ただちょっと雨の日が嫌いで」

 

 

提督「救出された日は雨が降りましたね」

 

 

阿武隈(仮)「っ、デリカシーのない人ですね」キッ

 

 

提督「……これは失礼」

 

 

提督「そういえば、ですね」

 

 

提督「自分が負ければあなた達の前に現れないことを約束しますが」

 

 

提督「自分が勝った時は?」

 

 

卯月(仮)「鎮守府(闇)に行くぴょん」

 

 

提督「いえ、戦場に立つことを無理強いはできません。お二人の意思で来てもらわなければ……」

 

 

阿武隈(仮)「それが無理だという事情、さすがにご存じですよね」

 

 

伊58「あの作戦の惨状はブラック無能提督のせいでち。阿武隈と卯月はなーんにも悪くないでち!」

 

 

伊58「ゴーヤも無理強いをする気はないよ! というか卯月に負けっぱなしは悔しいから勝ちたいだけでち!」

 

 

提督「予約の時間まではまだ余裕がありますし、その間だけでもお話聞いてもらえませんか」

 

 

提督「その代わり、こちらが勝ってもなにも要求はしないので」

 

 

卯月(仮)「アブー、話聞いてやるぴょん」

 


提督「卯月さんもぜひ」

 

 

卯月(仮)「結論からいえばアブーが頷けばうーちゃんも頷くぴょん」

 

 

提督「……阿武隈さん、そこのベンチにでも」

 

 

阿武隈「……分かりました」

 


2

 


提督「どうぞ、お茶です」

 

 

阿武隈(仮)「ありがとう、ございます」ペコリ

 

 

提督「阿武隈さん、深海棲艦と向かい合うことが難しいというのは本当ですか?」

 

 

阿武隈(仮)「事情は知っているんですね。情けないですが、本当です。でも、仕方のないことだとは思いません?」

 

 

提督「……」



阿武隈(仮)「仲間が4人も撃沈して、私と卯月ちゃんも、あの提督さんに見捨てられて……」

 

 

提督「……実は」

 

 

提督「鎮守府に北方棲姫の資料が残っていまして、彼女に関する詳細情報が残っていました」

 

 

阿武隈(仮)「…………だから、なんですか。北方棲姫の話は止めてください」

 

 

提督「大破した自分と卯月さんを残して他4名を戦線から離脱させたとありますが、なぜです?」


 

阿武隈(仮)「全滅するより遥かにマシでしょう」

 

 

阿武隈(仮)「あなたもそういう考えに至り、大和さんを囮に利用したのではないのです、か?」

  

 

提督「……そうですね」

 

 

提督「阿武隈さんは他の4隻を逃がすため、といいましたね」

 

 

阿武隈(仮)「……深海棲艦は艦娘を見ると足を止めて殲滅にかかる傾向があるのは知っていますよね?」

 

 

提督「しかし、資料を見る限り、あなた方が相手をした北方棲姫はそうではないみたいです」

 

 

提督「探知範囲内で元気に動き回る相手から潰しにかかる傾向があります。公式の資料ではないですから認知度はあれですが……」

 

 

阿武隈(仮)「……っ」

 

 

提督「まあ、そのようです」

 

 

提督「そしてその傾向が記された資料の作成日付は阿武隈さんがキスカに出撃するよりも2ヶ月も前でした」 


 

提督「例の提督がその情報を伝えないメリットはありません。少なくとも旗艦の阿武隈さんには伝えておいているはずです」

 

 

阿武隈(仮)「……あたし、は」


 

提督「責めるつもりはありません」

 

 

提督「阿武隈さんはそれを知っていて、4隻を離脱に動かしましたね?」

 

 

阿武隈「っ!」

 

 

阿武隈(仮)「お手洗いにいってきます!」

 

 

提督「自分が助かりたいがためですか、ね。大破で連戦に突入はさすがに死を意識します。怖くて当然かと」

 

 

提督「阿武隈さん、離脱させた4隻に北方棲姫を押し付けましたね?」

 

 

阿武隈(仮)「違います!」タタタ

 

 

提督「あっ、待ってください」タタタ

 

 

阿武隈(仮)「平然と女子トイレに入ってこないでくださいぃぃ!?」

 


提督「失礼。でも、あそこで途切れると私が苛めているみたいです」

 

 

阿武隈(仮)「とりあえず出ましょうっ」

 

 

提督「はい」



3

 


阿武隈(仮)「確かに……知っていました」

 

 

阿武隈(仮)「あなたのいう通り、あたし自身が助かりたいという気持ちも確かに、ありました……」

 

 

阿武隈(仮)「だから離脱させた4名に北方棲姫を押し付けた、と、そのように考えられても間違いではありませんし、事実です」

 

 

提督「その罪の意識から解体を?」

 

 

阿武隈(仮)「はい。海で戦えなくなりましたから……」

 

 

阿武隈(仮)「あの時の恐怖と海から逃げた自己嫌悪と、他に最善手があったかもしれないって後悔と、4人を沈めた自念の責も、色々、です」


 

提督「あなたが取った指揮にはなに一つミスはないと、自分は思います」

 

 

阿武隈「下手な慰めは止めてください」キッ


 

提督「……いえ」

 

 

提督「あの場で全員生還の策となると、大破した阿武隈さんと卯月さんはただの的にも等しい足手まといですから、海域から離脱してゆく4隻に押し付ける。撤退戦となりますが、逃げ切れる可能性はあなた達を切り離したことで、現実的かと。その間にあなたと卯月さんはキスカ島へ上陸し、身を隠す。まあ、後日に救出されるでしょうね」

 

 

提督「上手く行けば全員生還、です」


 

阿武隈(仮)「結果は4名撃沈です!」

 

 

提督「……の、2隻生還です」

 

 

阿武隈(仮)「嫌味ですか……?」ウルッ

 

 

提督「褒めている、つもりです」


 

阿武隈(仮)「あたしはあなたみたいな酷い指揮なんて取りません」

 

 

阿武隈(仮)「大和さんだって、残りのメンバーで補助して戦えば、生還できたかも……」


 

提督「……」

 

 

阿武隈(仮)「っ、すみません」

 

 

提督「いえ、その通りではありますから」

 


阿武隈(仮)「あたしは最大の戦果を狙いにいきました。あなたはリスクを最小限にすることを選びました」

 

 

提督「ええ」


 

阿武隈(仮)「結果、あなたは100体相手にして20名中1名撃沈、私はキスカで12体の敵に対して、6名中4名が撃沈……結果論ですが、それが、答えです」

 


提督「12体……?」



阿武隈「なにか」


 

提督「いえ……」



提督「まあ、自分は白か黒かでいえば黒の司令官です」

 

 

阿武隈(仮)「知っています。演習のことも調べましたから」


 

提督「……ええ、だから自分にとってあなたが必要なのです」

 

 

阿武隈(仮)「?」


 

提督「理想高く全員生還の指揮を取ることは自分には難しいのです。先を見据えた時に、最善手でなくとも、そういう指示を出すことも必要になってくる可能性はあります」


 

提督「だから、自分はあなたのそういうところに魅力を感じています」


 

提督「あなたは結果で言えば自分の指揮は正しかった、といいましたよね」



阿武隈「はい」



提督「では、なぜ自分は黒の烙印が押されたのか。そこなんですよ。自分に持っていなくて、あなたが持っているのは」



提督「個人の疑問はさておいて、周囲からは自分よりもあなたのような全員生還の指揮のほうが歓迎されるということ、です」



阿武隈(仮)「っ、でも、あたしはもう深海棲艦と戦えなくて……」

 

 

提督「阿武隈さんは何のために海で戦うことにしたのですか?」

 

 

提督「少なくとも、その結果で終わることではないはずです」

 

 

阿武隈(仮)「まだ戦えないんです。海に出るのが怖くて」

 

 

阿武隈(仮)「何ヵ月、いや、何年もかかるかも、しれません」

 

 

阿武隈(仮)「でも、きっといつか」

 

 

阿武隈(仮)「時雨さんではないけど、止まない雨はないし、明けない夜も……」

 

 

提督「雨? 気象のことですか?」

 

 

阿武隈(仮)「違います! 気持ち的なことです!」

 

 

提督「それなら止まない雨も、明けない夜もあると思います」

 

 

提督「自分次第、ですから」

 

 

阿武隈(仮)「……自分、次第」

 

 

提督「まあ、時間が解決するという意味では待つのもありかもしれません」

 

 

提督「が、その時は恐らく阿武隈艤装は他の誰かの手に渡っていると思います」

 

 

阿武隈(仮)「……その時は、仕方ないです」

 

 

提督「止まない雨はない。雨上がりの後に虹はかかる。これは決して時間が解決してくれる。これだけを差す意味ではないと自分は」



提督「今のあなたに必要なのはきっと」


 

阿武隈(仮)「きっと……?」


 

提督「目的地に向かって雨の中を駆け抜けていく、そんながむしゃらな意志だと思います」


 

阿武隈(仮)「!」



提督「気持ち的なことでしょう? ならば雨雲自体も吹き飛ばせるかもしれませんよ?」



提督「その雨雲、なにで出来てます?」



提督「考えますよ、自分も」



阿武隈「……、……」



提督「分かりました。その雨雲」



阿武隈「なん、ですか?」



提督「海から出来ているのでは?」



阿武隈「…………ふふっ」



提督「まだ矢折れ尽きていなければ、力をお貸ししていただきたく」

 

 

提督「自分達が全力でフォローします」

 

 

提督「以上です」



【6ワ●:うっそぴょん♪】



1



卯月(仮)「…………アブー」ジーッ

 

 

阿武隈(仮)「う、卯月ちゃん、いつからそこに……?」


 

卯月(仮)「……今だぴょん」

 

 

阿武隈(仮)「そっか」

 

 

卯月(仮)「気を付けるぴょん。その男は勝つために手段を選ばないやつだぴょん」

 

 

卯月(仮)「クラッシュトークとは卑怯だぴょん」

 

 

提督「聞いていたんじゃないですか」

 

 

卯月(仮)「……はっ、誘導尋問とは卑怯な」

 

 

伊58「してないでち。自爆するとか間抜けでち」デチチチ

 

 

卯月(仮)「お前だけにはいわれたくないぴょん!」

 

 

伊58「ま、とにかく」

 

 

伊58「こてんぱんにしてやるでち!」

 

 

卯月(仮)「まー、このゲームは公平性を期すためにうーちゃん達も極めていないぴょん」

 

 

阿武隈(仮)「これ、難しいもんね」


 

伊58「提督さん、ゴーヤ達は徹夜の成果を見せるでち」

 

 

提督「ええ。やるからには勝ちますとも」

 

 

カード読み込み中……


 

アブー 元帥


うーちゃん 元帥

 

 

伊58・提督「」

 

 

……ゲーム中……

 


提督「強すぎです…………」

 

 

伊58「もう1度、でち!」

 


卯月(仮)「受けて立つぴょん」

 


提督「Eドラ……腹立ちますね……」



※この後むちゃくちゃマキオンした



2

 


阿武隈(仮)「そ、それではあたし達はこれで。お疲れ様でした」


 

伊58「……お疲れ様でち」←50連敗

 

 

卯月(仮)「うーちゃん達の完全勝利Sぴょん」

 

 

提督「ええ、約束は守ります。2度とあなた達にコンタクトは取りません」


 

提督「では、お疲れ様でした」


 

阿武隈(仮)「……あのぅ」

 

 

阿武隈(仮)「あたし、行きます」


 

阿武隈(仮)「もう1度、戦います」


 

提督「!」



卯月(仮)「…………」

 

 

提督「了解しました。阿武隈艤装のほうは上に連絡入れておきます」


 

阿武隈(仮)「卯月ちゃんは、どうする?」


 

卯月(仮)「やっぱりうーちゃんは行かないぴょん」

 

 

提督「それは、残念です」


 

卯月(仮)「アブー、本当に? この司令官、きっとダメなやつだぴょん。あのブラック司令官と勝るとも劣らないと思うぴょん」

 

 

卯月(仮)「また同じ目に遭えば今度は立ち直れるか分からないし、もっと自分を大事にしたほうがいいぴょん」

 

 

阿武隈(仮)「そう、かな。噂ほどの悪人には見えないよ。多分、聞いた感じ悪評のほとんどは」

 

 

阿武隈(仮)「例の電ちゃんのせいだと思います、はい(メソラシ」

 

 

卯月(仮)「あいつの司令官だからなおさらだぴょん。沈む覚悟はあるぴょん?」

 

 

阿武隈(仮)「誰も沈ませない覚悟なら」

 

 

阿武隈(仮)「きっと、戦えるから」ガッツポ

 

 

卯月(仮)(……ちょっと前のアブーに戻ったぴょん)

 

 

卯月(仮)「……うむ、くるしゅうないぴょん」

 

 

伊58「卯月はどうするんでち」

 

 

卯月(仮)「この司令官、イタズラしてもリアクションつまらないし」


 

卯月(仮)「まあ、アブーを立ち直らせたのは見事だし、そこは褒めてやるぴょん」


 

卯月(仮)「まあ、ゲームのなかではゴーヤをフォローした動きに終始徹していたし、前の司令官よりはマシかもって思う……」


 

卯月(仮)「うーちゃん、この司令官さん好きだぴょん」


 

阿武隈(仮)「卯月ちゃん!」パアア


 

卯月(仮)「なーんてうっそぴょおおーん」

 

 

阿武隈(仮)「……あー」

 

 

阿武隈(仮)「まあ、帰りましょうか」

 

 

卯月(仮)「……」



卯月(仮)「なーんて少しだけ」

 

 

卯月(仮)「うっそぴょーん♪」ボソッ



【7ワ●:海を跳ねるウサギ】

 

 

1

 

 

ぷらずま「●ワ●」

 

 

ぷらずま「お帰りなさい、なのです」

 

 

ぷらずま「おめおめとよくぞ」

 

 

阿武隈「……はい」

 

 

卯月「誰かと思ったぴょん……」

 

 

電「はわわ、お久しぶり、なのです」

 

 

阿武隈「知ってるのはそっち、です」

 

 

ぷらずま「とまあ、仮面つけてたわけです。最初は仮面でもなんでもなかったのですが」 

 


ぷらずま「あなた達が海を去ってから、あの鎮守府は破滅したのです。最も、あなた方はあの人のことをなにも知らなかったんでしょうが……」

 

 

阿武隈「聞いてはいますけどね。あの鎮守府にいた時のこと、憲兵の人達がわざわざこっちまで来ましたから」

 


卯月「合同演習も調べたから、ま、そっちの顔も知ってるぴょん」



阿武隈「いつから実験されて……?」


 

ぷらずま「あなた達がいた頃からですよ。キスカの惨劇よりも前。私としたことが夢見がちで優しい電の部分のせいで、やつの脅迫に屈していたので」

 


阿武隈「でも、あたし達を助けてくれたのは電さん、じゃないですか」

 


ぷらずま「あの頃の第1艦隊の卯月さん、そして旗艦の阿武隈さんの強さは知っていたので」


 

ぷらずま「亡くすには惜しい、と独断で捜索に。なので恩とかそういうのはいいのです。最も阿武隈さんのポンコツ化具合からして別に助ける必要もなかったですが」


 

阿武隈「……」

 

 

卯月「あのキスカの後、連絡のやり取りしていた望月のやつから聞いたぴょん」

 


卯月「鹿島旗艦の訓練艦隊も、あんなはぐれのハ級しか確認されていない場所で、なぜかレ級とネ級に遭遇して、5人が轟沈」

 


卯月「その後にあの鎮守府、深海棲艦に攻められて滅んだとか」

 


ぷらずま「●ワ●」

 

 

ぷらずま「そんなことより、卯月さん変わりましたね。髪も黒くて背も伸びてあの頃のクソガキの頃から垢抜けているのです」

 

 

阿武隈「露骨に話を逸らしましたね。まさか知っていることで軍に黙っていることとかないですよね……?」

 

 

ぷらずま「あるのです。最もなにをされても、ゲロりませんが」

 

 

ぷらずま「まあ、口を滑らすことはなきにしもあらず、なのです」

 

 

卯月「……まー、背も伸びたぴょん。アブーもだけど」

 

 

卯月「建造すると、あの時みたくまた髪の色になるのがあれだぴょん」

 

 

ぷらずま「まあ、あなたの場合は艤装のせいで色々と変わりますけどね。昔の卯月さんの素質に変化がないことを祈りつつ」

 

 

ぷらずま「質問を。何のためにまた海へ」

 

 

阿武隈「キスカの皆の敵討ち、そして深海棲艦殲滅です」

 

 

卯月「アブーのお守りー」

 


ぷらずま「●ワ●」 



ぷらずま「残念ながら海の景色はなにも変わっていないのです。でも」

 

 

ぷらずま「またお友達が増えて嬉しいのです」

 

 

ぷらずま「そしていらっしゃいなのです。鎮守府(闇)へ」

 

 

2

 

 

提督「ようこそ。まず最優先事項として伝えておくことは『ぷらずまさんという災害がいる鎮守府』ということです」

 

 

卯月「……っせーぴょん」

  

 

提督「建造お疲れ様でした」

 

 

卯月「だから、うっせーぴょん」

 

 

提督「艤装、魔改造されたままですが、あなたには使いこなせるはずです」

 

 

卯月「ε(≡д≡)ヘッ」

 

 

提督「そろそろ聞きますよ。なにかありました?」

 


提督「やさぐれ感すごいんですが……」

 

 

卯月「悪気はないぴょん。まあ、うーちゃん建造終わったばかりで艤装の影響があるだけぴょん」

 

 

提督「艤装の影響というと、夢を見たり、精神的影響で性格が変化するとかの? しかし、卯月さんってもっと元気ある感じが……」


 

卯月「艤装を魔改造で変に弄られたせいぴょん。まあ、うーちゃんあんまり元気してないうーちゃんなので」

 

 

卯月「ぴょんとかぷっぷくぷーとかびしっとかいうけど、6駆みたいな扱いはされてもウザいだけなんで、よろしくー……」

 

 

提督「あれ、身につけたの、あれ、望月艤装でしたっけ?」

 

 

卯月「まあ、今は色々と建造影響が大きく出ているだけ。すぐにもう少しくらい元気になるぴょん」

 

 

卯月「たまに純度100%うーちゃんにもなる時もあるし」


 

提督「今のあなたからは想像できませんね。音声映像オン。これが純度100%卯月さんです」

 


「しれいかぁ~ん、今日は1段とステキ~! なぁ~んてうっそぴょーん! あははは~!」

 

 

卯月「ω・)凸」

 

 

提督「ご存じだと思いますが、艤装適性率100%の卯月さんだとこうなります的なイメージ象です。ちなみに現存艦娘全てのデータを軍学校でもらいます。把握しなければならなくて」


 

提督「まあ、自分の卯月のイメージもこんな感じです。多少のブレはあれど」

 

 

卯月「しれいかぁ~ん、今日は1段とステキ~! なぁ~んてうっそぴょーん! あははは~!」ω・)凸

 


提督「そのよろしくない指は……」

 


卯月「前にもいったけど、来年高校生にもなるのに艤装のせいで、ぴょんやらぷっぷくぷーとか自然に口に出るうーちゃんの身にもなれぴょん……」



提督「マジすみませんでした」

 

 

卯月「それと服装のことだけど、戦闘のスタイルに不適切だから睦月型の制服で出撃は断るっぴょん。この今のうーちゃんの服の予備を妖精に造らせとけ、ぴょん」

 


提督「いいのですか? そんな街でするようなお洒落な服装は海では浮きますけど」

 

 

瑞鶴「しっつれー」ガチャ

 

 

瑞鶴「提督さん、阿武隈の建造始まった……って卯月、睦月型の卯月制服は」


 

卯月「あんな制服は総司令部に着払いのゆうパックで送り返したぴょん」

 

 

瑞鶴「はあ、私達の制服、一応意味……まあ、卯月は特にないか」

 

 

瑞鶴「やけにお洒落ねー。白兎のTシャツ可愛いじゃん。ズボンのお尻のそれなに。うさぎしっぽ?」

 


瑞鶴「なーんかどっかで見たことある服装なんだよねー……」

 

 

卯月「親のお店の白兎ファッション。建造影響で眼も赤くなったし、よりウサギへと」


 

瑞鶴「思い出した! BRR!ブリティッシュラフラビッツだ!」

 


提督「……?」

 

 

卯月「ご存じで」

 


提督「あ、そういえば卯月さんのお母様が経営していらっしゃるお店の名前がそれでしたね」

 

 

瑞鶴「提督さん、ブリティッシュラフラビッツというお店……いや、ファッションについては」

 


提督「すみません、さっぱり分からない分野です……」

 

 

瑞鶴「そんな気はしていた。でも真面目な話、そんなお洒落な格好して上から怒られないの?」

 

 

提督「この鎮守府、色々と融通が利くんですよね。支援施設としても機能させているので、ここにいる人達の扱いは特殊、なんですよ。鎮守府としてのノルマも他より低く、資金面も優遇されています」

 

 

提督「なんならアニマルセラピーの名目でペットオーケーなくらいです」

 


提督「瑞鶴さんこの施設に色々あるの知りませんか。空き部屋はいっぱい、漫画の図書館やシアターもありますよ……」



瑞鶴「漫画の図書館は御用達。シアターって、あのおちびの部屋の奥でしょ。行ったことないけど」

 

 

提督「まあ、格好も指定されてませんから、ゴーヤさんにも上に海兵服着させましたけど」

 

 

瑞鶴「そんな服装、自由に弄れるんだね……」

 


提督「ま、ゴーヤさんのあの水着は指定して妖精さんに作らせたものですからね。中には龍驤さんのように機能に影響するので弄るのはよろしくない服装もありますけど……」

 

 

提督「まあ、スク水で鎮守府をうろつくとか、自分的に勘弁してもらいたいです」


 

卯月「まー、毎日生きるか死ぬかだし、自分の好きな服くらい着させろっぴょん」

 

 

卯月「ちなみにうーちゃんの実家のファッションショップと同じデザインだからうーちゃんが活躍すると宣伝にもなるし」

 

 

卯月「今、テレビにバンバン出てる売れっ子アイドルの那珂のやつも、売りは元艦娘」


 

卯月「戦争は金儲けだから、うーちゃんもそれに乗っかるぴょん」

 

 

瑞鶴「睦月型の口から戦争はお金儲けとか聞きたくなかった……」

 

 

卯月「ま、深海棲艦を滅ぼせば安全な海域が増えてお国も儲かるし」

 

 

提督「それだけの働きをしなければなりませんけどね」

 

 

卯月「するぴょん。この持参してきたクウガのエアガン2丁で一芸を」

 

 

クルクルッ、ジャキッ

 

 

瑞鶴「手のひらで回してからのグリップ握り、だと。私はシャーペンでも出来ないのに……」


 

パンパン

 


瑞鶴「すご! 発射して天井で跳ね返ったBB弾にBB弾を当てる神業!」


 

提督「スタンド能力ですかね……」

 

 

卯月「これを艤装の装備、まあ、あの艤装と一緒に届いていた装備、あれも改修されたうーちゃん用の装備。まあ、それでなくても12.7cm連装砲B型改二でもやれてたぴょん」


 

提督「……はい?」


 

卯月「飛んでくる砲弾に砲弾を当てることができるということ」

 

 

卯月「まあ、これは確か丙少将のところにいた日向と伊勢も出来た、はず」

 

 

提督「」

 

 

卯月「ゲーセンでもガンマンで名を馳せたうーちゃんの実力。狙った交叉弾ならともかく、撃てば当てられるぴょん。もちろん砲撃が届く範囲の話だぴょん」

 

 

卯月「加えていえば魔改造卯月艤装の回避機能で被弾もまあ多少は。だけど、あれは燃料食うし、まあ、ぷっぷくぷー」

 

 

卯月「その3つの要素が、ここの滅ぼされた鎮守府で駆逐艦卯月が第1艦隊に入ってた理由なわけで」

 

 

提督「さすが単独で姫級を合計5体も撃沈させているだけはありますね……」

 


瑞鶴「ひ、姫を単独、5隻?」

 

 

卯月「しょせんは睦月型でしかも卯月艤装。過度な期待はしないで欲しいぴょん」

 


提督「ちなみに旗艦やってた時の阿武隈さんの砲撃成績はあなたと同じくS評価ですが……」

 

 

卯月「それ以上の評価ランクがないせい。アブーはもっと上だぴょん。アブーはおかしい。目をつむっててもけっこう当てる」

 

 

提督「ぷらずまさんとはまた違う方向でヤバいですね……」

 


卯月「砲撃精度の凄さはうーちゃんの更に上……だけど」

 


提督「……」


 

卯月「まあ、キスカの事件から深海棲艦を前にすると身体もぶるぶる震えて精度は……」


 

3

 

 

ぷらずま「●ワ●」

 

 

提督「いつの間に」

 

 

ぷらずま「速力を維持するために紙装甲を更に紙にする犠牲を払っていますが、対空と回避はもちろん、そして装備より素質が如実に現れる砲撃精度が突き抜けています」

 


提督「この艤装のおかしな回避力、そしてこの素質部分が影響しない低い装甲と、耐久値。明石さん、艤装の燃料庫と弾薬庫までいじって」

 

 

卯月「実際に出撃させるといーぴょん。紙面だとうーちゃんの運用方法を間違えるだろうし」

 

 

提督「……、……」

 

 

ぷらずま「卯月さん、演習場に行くのです。この卯月さんの強さと弱さを実際に確かめてみるといいのです」

 

 

提督「あ、龍驤さんにも相手してもらいましょう。艦攻と艦爆と砲撃装備で」

 

 

ぷらずま「了解なのです」


 

卯月「龍驤かー」

 

 

卯月「びしっ!」

 

 

4

 

 

龍驤「それじゃ行くでー」

 

 

龍驤「艦載機、発艦!」

 


ガガガガ

 

 

卯月「む」

 

 

ドンドンドン

 


龍驤「艦載機撃ち墜とすのに無駄なし。すごいやん」

 


龍驤「それじゃ、砲撃!」

 

 

ドオン!

 

 

卯月「ドン!」

 

 

ドオン!

 


龍驤「マジか。砲弾に砲弾ぶつけるとか日向と伊勢以外にも出来るやつが……」


 

卯月「そーいえばうーちゃん軽空母に負けたことないぴょん」

 

 

龍驤「ちょい待ち」



龍驤「キミキミ」

 


提督「なんでしょう?」

 

 

龍驤「いった通りに無駄がないね。素質がすごいのは確認できたよ。うちも爆撃機で卯月の相手してみていい?」

 

 

提督「あー、お願いします」

 

 

龍驤「卯月、うちには勝てそう?」

 

 

卯月「見た感じ、負ける要素がまるでないぴょん」

 

 

龍驤「いってくれるなー」

 

 

卯月「む?」

 

 

龍驤「うちに勝てたら、なんでも欲しいもの1つ買ーたるでー」

 

 

卯月「VR」

 

 

龍驤「ゲーム? まあ、ええわ。艦載機、発艦!」

 

 

5

 

 

龍驤(ん、動きながらでも精度は変わらんのか。1発も無駄にしとらんやん)

 

 

龍驤(それと、撃ち墜とす艦載機も考えとる。駆逐艦では秋月型適性者によくある才能やけど)

 


龍驤(あれほどの素質なら成績を出すほど、周りからは戦艦、せめて防空駆逐艦の適性があれば……)

 

 

龍驤(とかって、いわれてきたんやろーなー)

 

 

龍驤「よっしゃ、艦載機発艦!」

 

 

6

 

 

卯月「……む」

 

 

卯月「高度に綺麗に並列に飛行する艦攻が10機……一般人への見世物じゃあるまいし」

 

 

ジャキン

 

 

卯月「この2丁で」

 

 

卯月「撃ち墜とーす!」

 

 

ドンドンドンドンドンドンドン!

 

 

龍驤「見事やなー。1発のミスもなく撃ち墜とされたわ」

 

 

卯月「何のつもりだぴょん。空母のくせにのこのこと近付いて来るとか……」

 

 

卯月「……、……」

 


卯月「ん、空気を切る、プロペラの音」

 

 

卯月「!」クルッ

 


卯月「後ろから艦、爆……?」

 

 

卯月「まぶ、しっ! 太陽直視の軌道とか小癪だぴょん!」

 

 

ドオオン!ピョン!

 

 

龍驤「艦攻並ぶ空ばっか見上げてたからなー。見とれるくらい綺麗やったろー?」

 

 

龍驤「その間に仕込んだんやで!」

 


卯月「なんのこれしき」



龍驤「!?」

 

 

龍驤「なんでお前、跳んで……空にいるねん……まぶし……」

 

 

卯月「魔改造で増えたうさぎ要素でっす」ジャキン

 

 

卯月「そーして、この距離でうーちゃんが外すことはあり得ないぴょん!」

 

 

ドンドンドン!

 

 

龍驤「……痛っ!」

 

 

卯月「よーし、中破の艦載機発艦不可」



龍驤「保険は打っておいたで!」

 

 

卯月「!」

 

 

龍驤「上に飛んでる艦爆ちゃんに気付かんかったみたいやね! まあ、気付いても空中で身動き取れへんし!」

 

 

卯月「……せいっ」



ドオオン!

 


龍驤「ハアアアアア!?」



龍驤「なんで空中で体勢変えられるん!? おまけに落下中型でも艦爆ちゃん撃ち落とせるんか! お前もう卯月以前に艦娘ですらないやろ!」



卯月「詳しいことは明石のやつに聞けっぴょん」




――――艦載機



――――発艦、なのです




ぷらずま「●ワ●」



卯月「深海棲艦型艦載機…………」



卯月「48機」



卯月「高度限界はどの艦載機も同じだっけ、ならば届く距離だぴょん」



卯月「この威力と距離を犠牲に連射性能を高めた12.7cm連装機銃砲改修装備2丁で」



卯月「防空駆逐不在の穴埋めをしていた睦月型真のガンナーの力、お魅せしましょうびしっ!」




ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!


ドンドン!




ぷらずま「~~~~っ」ゾクゾクッ




ぷらずま「50発、ですかね。48機を48発」



ぷらずま「そのうち2発を私に」



ぷらずま「……」



ぷらずま「いいお友達なのです♪」



ぷらずま「●ワ●」



7

 

 

卯月「弾薬が……あの電は無理だぴょん……」

 

 

龍驤「ほんま素質すごいなー……」



卯月「それで種を教えて欲しいぴょん。最初の後方の艦爆はうーちゃんが空を見上げてた時に、ぐるり、と大きく背後に回らせてたのは分かる、けど」

 

 

卯月「2機目は……手品みたいに現れたし」

 

 

龍驤「うちな艤装はここのアクセサリのギミックで、飛行甲板が浮く」

 

 

飛行甲板「フワフワダコラア!」

 

 

龍驤「それと瑞鶴みたいに矢ではなくて、紙きれやから」

 

 

龍驤「それで範囲はあるけど、自由に動かせるから、近距離によった時にこうやって」

 


卯月「飛行甲板を、背中に隠して?」

 

 

龍驤「卯月が後ろ向いた時に」

 

 

龍驤「こう、指につけた式紙を飛行甲板滑らせて……艦載機変化準備完了」

 

 

龍驤「紙切れが風に乗ってひらひらと舞い上がる。お空高く舞い上がったところで艦載機に変化したから」

 


龍驤「手品みたいにみえたんちゃう。艦載機は紙や矢の時は電探にもひっかからんからな」

 


卯月「お前、龍驤何年目だぴょん?」

 

 

龍驤「7年と飛んで1日やなー」

 

 

卯月「ロリバ……こほん、先輩だぴょん」

 

 

卯月「っち、もう1回やれぴょん。次はアクセサリから撃ち抜けば……」

 

 

龍驤「飛行甲板さえ無事なら滑らすとこあれば発艦自体は可能やけどね……瑞鳳の1件……は知らんか」



卯月「なるほどっぴょん。龍驤の平らは機能とー」



龍驤「残念ながら素質やぼけ!」

 

 

8

 

 

瑞鶴「卯月と龍驤、強いね……」

 

 

提督「ええ……卯月さんは才能、ですね。撃てば艦載機や龍驤さんに当たってますし。なんですかあの神精度……いや、着弾地点予測も、かなりずば抜けてますね……」

 

 

提督「龍驤さんは艦載機の扱い……あのトリッキーさは深海棲艦より対人演習での不意打ちで効果を発揮しそう……」

 

 

提督「お二人とも素晴らしいです」

 


瑞鶴「あ、龍驤こっちきた」 

 

 

龍驤「そこから見とるだけやと分からんことやから伝えに来たでー」

 

 

提督「といいますと」

 

 

龍驤「卯月、今の艤装と装備のこと熟知しとるみたいやし、頭もええね。被弾する時、ここが壊れると、これが出来なくなるって、熟知したうえで動けてるから」

 

 

龍驤「艦攻の機銃が避けられない時、当てられたら不味い場所を狙う艦載機優先的に墜として、中破判定、耐久数値でいうと2やな。そこまでで済むようにダメコン試みてる」

 

 

龍驤「明石さんが、あの子の艤装いじって素質を持て余さないように手を加えた気持ちが分かるわ」

 


龍驤「あの子、ほんとすごいで。卯月艤装やなかったら、というのは無礼千万と思うくらい」

 


提督「……了解」

 

 

提督「装備はあの2丁と、タービンか電探つけてもらいましょうか」

 

 

卯月「だが、タービンは断るぴょん」スイイー

 

 

提督「電探で」

 

 

卯月「悪くないぴょん」

 

 

卯月「この魔改造卯月艤装は装甲耐久まるゆ並に落として、艤装を軽くしているっぴょん。それでほら、背中側の腰にある艤装噴出口を吹かす」

 

 

卯月「普通は倒れるほど背中を反らしても、倒れないという小技が」

 


提督「明石さん、さすが30年も工作艦やっているだけのことはありますね……」

 

 


卯月「うむ。この機能を応用すると」


 

クルッ

 

 

瑞鶴「バク転したw」

 


提督・龍驤「」

 

 

卯月「……まあ、最悪なのは制空権取られてたくさんの艦載機が待ってる時や不意打ち。処理範囲を越えたり、砲撃に気付けなかった時、被弾しない前提でいじくられているから、空から数撃たれたり砲撃に気付けなかった場合、ヤバいぴょん」

 

 

卯月「キスカの時は北方棲姫に、気付くのが遅れたせいで、泣かされてしまった、し……」



卯月「まー、欠陥艤装だぴょん」

 

 

卯月「ウサギみたいに跳ねられるところは気に入ってるぴょん」



ピョンピョン

 


卯月「あ、燃料も切れたぴょん」


 

提督「素質としては戦艦向きなのに、適性は卯月にしかなかった、ですか……」

 

 

卯月「軍学校の時からがんばればがんばるほど、戦艦、せめて防空駆逐の適性があれば、とはいわれてたぴょん」

 

 

卯月「うざー……」

 

 

瑞鶴「道理で卯月艤装あまってたわけかー。あんた以外に使えると思えないわね……」

 

 

卯月「ぶっちゃけこの卯月艤装は近代化回収の素材にでも回されてたと思ってたぴょん」

 

 

提督「あーまあ、それ、ぶち壊して通常卯月艤装に戻す選択肢もあります。新しく艤装作るのってかなり時間がかかりますが……」

 

 

卯月「司令官が決めていいでっす。どちらでもいいぴょん」

 

 

提督「あー……なら、その艤装使えていますし、それで。服装もそのままで行きましょうか」

 

 

卯月「跳ねて回るからスカートはちょっと。うーちゃん、乙女の恥じらい覚えましたびしっ!」

 

 

卯月「明石呼んどいて欲しいぴょん。時計うさぎのごとく、お洒落な懐中時計デザインの電探を首からぶら下げまっす」



提督「…………正確な日付はまだですが、希望は出してあります」

 

 

卯月「びしっ」

 

 

提督「それと龍驤さん、瑞鶴さんの調子はどうですか?」

 

 

龍驤「一応、出来ることはしとるんやけど、うちは龍驤適性しかないしら弓矢は扱ったことないから難しいんやて……」

 

 

瑞鶴「うーん、後ちょっとで行けそうな気はしてるんだけどね……」

 

 

龍驤「電ちゃんも砲撃精度あれやし、ゴーヤも魚雷まだ上手く当てられへんし」

 

 

龍驤「香取さん予約するか、練巡スカウトするのはどう? 確か鹿島艤装も余ってなかった?」

 

 

提督「考えておきます。これからしばらくスケジュールが詰まってますので……」

 

 

提督「瑞鶴さんには阿武隈さんと一緒に訓練を組んであります。自分の考えでは艦載機飛ばせるようになりますよ」

 

 

瑞鶴「お、提督さんが優しい」

 

 

提督「自分が身体を張るはめになるでしょうけどね……」

 

 

瑞鶴「?」

 

 

提督「今から全員、執務室に集合してください」

 


提督「任務です」



【8ワ●:深海棲艦鹵獲作戦&ポンコツ修理任務】



1



阿武隈「あ、提督さん、あたしも建造無事に済みました。問題なく阿武隈艤装を装着可能です」ビシッ

 

 

卯月「ちなみにアブーはかつてのここの鎮守府の旗艦で、甲大将から直々に声がかかるほどに強かったぴょん」

 


阿武隈「昔の話ですけどね、はい……」

 

 

阿武隈「き、北上さんと上手くやっていける自身がなくて……」

 

 

提督「まあ、建造お疲れ様でした。さて……」

 

 

2

 


ぷらずま・伊58・瑞鶴・龍驤・阿武隈・卯月「…………」

 

 

提督「6隻、そろいましたね」

 

 

提督「まず鎮守府内で特に大事なルールを再確認します」

 

 

提督「一つ、設備の損傷、無駄な入渠、そういった余計な出費を防ぐため、鎮守府内での艤装着用は基本的に禁止です。抜錨地点から艤装を身につけて出撃をしてください。帰りも艤装を外してから陸にお上がりください」

 

 

ぷらずま「ぷらずまには事情があるのです」

 

 

提督「ある程度は許可しますが、よく考えて行動してくだされば」

 

 

ぷらずま「了解なのです」


 

提督「二つ、皆さんそれぞれクセが強いため、仲間割れは仕方ありませんが、同志討ちだけは控えてください」

 

 

提督「特にぷらずまさん」

 

 

ぷらずま「そこまで浅慮じゃねーのです」

 

 

提督「三つ、ここから本格的に鎮守府として活動していくに辺り、『自分のお願い』を聞いていただけない場合、沈む危険性が大幅にあがるとお考えください」

 

 

提督「四つ、戦争終了までの対局を見据え、特に戦場では一時的な感情に流された言動はお控えください」

 

 

提督「以上ですね」

  

 

提督「瑞鶴さんと阿武隈さんは残ってください」

 

 

提督「ぷらずまさんを除いた他3隻はこれより深海棲艦カ級を連れてきてもらいます」

 

 

提督「まー、あくまで、お願い、ですので」

 

 

提督「出撃を拒否する人はこの場でどうぞ。無理強いはしません」

 

 

伊58・龍驤・卯月「…………」ビシッ

 

 

提督「……そろそろお願いも失礼、ですかね」



ぷらずま「●ワ●」



ぷらずま「本気なのです?」ジャキン



提督「とんでもない。大変失礼致しました」



提督「……では旗艦は龍驤さん、お願いできますか」

 

 

龍驤「任せときー」

 

 

龍驤「一つ教えて欲しいんやけど、なんでカ級捕まえるん?」

 

 

提督「深海を調べるためです。カ級に少し手を加えて海の底まで潜らせます。絞った地点はゴーヤさんだと水圧に耐えられなくなってくる危険がありますし、ぷらずまさんにはその際に他の役割があるので、深海棲艦を利用します」

 

 

龍驤「もしかして例の深海で妖精を見たとかいう?」

 

 

提督「ええ。そのための準備です」

 

 

龍驤「了解。ゴーヤちゃんも卯月ちゃんも、しっかりうちのいうこと聞くんやでー」

 

 

伊58「ゴーヤは従順なほうでち」

 

 

卯月「よほど間抜けな指示でなければ従うぴょん。多分」

 

 

龍驤「うちが指示するのは、司令官が現場の判断、重視した時とか他に優先することがある時だけやで」

 

 

提督「いえ、今回は指示を出しません。目的に沿って龍驤さんが指示してください。なにか障害が発生した場合は、連絡を」

 

 

龍驤「了解。それじゃおちびさん達、とっとといこかー」

 

 

卯月「ぷっぷくぷー」

 

 

卯月「お前もスタイルは全体的にうーちゃんとあんまり変わらないし」

 

 

卯月「あ、いや、今はうーちゃんのほうが大きいし」

 

 

龍驤「……」

 


卯月「……」


 

龍驤「うっそぴょん待ちやで」


 

卯月「あっ、ごめん。う、うそぴょん♪」

 

 

龍驤「泣きたいわ……」

 

 

3


 

提督「さて瑞鶴さん、阿武隈さん」

 

 

瑞鶴「いってなかったけど、一応、戦えるようになったわよ?」

 

 

提督「へえ。ま、それならそれで」


 

阿武隈「まず演習ですか? それとも簡単な遠征とか……」

 

 

提督「いえ、この2人で出撃です」

 

 

阿武隈「ええ!? あたし、練度数値は1ですよ!?」

 

 

提督「大丈夫です」

 

 

 

提督「こちらの指揮を自分が執ります。阿武隈さんのトラウマの具合も見ておきたいですし」

 

 

阿武隈「……了解しました」

 

 

瑞鶴「同じく」

 

 

提督「はぐれの弱い深海棲艦だと侮らないように。戦場では常に最悪のトラブルがつきまとうと、それを意識して行動してください」

 

 

提督「では、いってらっしゃい」

 

 

4

 

 

ぷらずま「……スパルタなのです」

 

 

提督「ええと」

 

 

ぷらずま「すっとぼけなくてもいいのです。この紙切れ」

 

 

ぷらずま「丙のやつが中枢棲姫勢力を追い詰め始めて、強い深海棲艦隊がこちらにも流れてくるかもしれない恐れ」

 

 

ぷらずま「この他鎮守府からの定期連で二人を向かわせた海域の少し離れたところで、妙に統率の取れた深海棲艦の水雷戦隊が確認されているのです」

 

 

ぷらずま「姫、鬼級と思われる深海棲艦がいる恐れがあるのです」

 

 

ぷらずま「最悪のトラブル、とはそういう意味ですね?」ニタニタ

 

 

提督「ぷらずまさんのお友達、では?」

 

 

ぷらずま「どういう意味です?」

 

 

提督「すっとぼけなくてもいいです。ここの前鎮守府に深海棲艦を焚き付けたのはぷらずまさんでしょう」


 

ぷらずま「さすがです。お気付きでしたか」

 

 

提督「冗談のつもりでした。あなたは自分を買いかぶりすぎですね……」

 

 

ぷらずま「……くっ」


 

ぷらずま「まあ、我慢の限界が来たので交友のあったとある深海棲艦勢力に情報を売り払ってやったのです」

 

 

ぷらずま「その攻めてきた用済みの深海棲艦を滅ぼしたら」

 

 

ぷらずま「軍から英雄扱いなのです」ニタニタ

 

 

提督「こちらと協力できる知能の深海棲艦がいるって相当な大事なんですが……」



ぷらずま「……」



提督「深海棲艦側に大きな動きがあるようで、近々、それなりの規模の戦いが起こるかもしれません」

 

 

提督「丙少将を総司令に据えた連合艦隊が敵勢力が集中し切る前に叩くようですが、もしかしたら自分達になにかしらの通達が来るかも、です」

 

 

提督「関わりたくないですが」

 

 

ぷらずま「必要もないのです。向こうに大した損害が出なければ、私を出汁にして理由でっちあげれば上は黙ります」

 

 

提督「ところでその知能の高い深海棲艦の情報は上に伝えても?」

 

 

ぷらずま「私が深海棲艦を手引きしたということは伏せておいてくださいね。あの防衛戦で比較的知能の高い深海棲艦から恨みを買った、とか適当な理由でごまかして欲しいのです」

 

 

提督「了解です」


 

提督「ではぷらずまさんは5分後にあの二人の後を追ってください」


 

ぷらずま「なるべく手は出さずにヤバそうな事態になればフォローして欲しい、ということです?」


 

提督「いえ、むしろ手を出してもらいたいのです。今から自分がいうことを実行してもらいたい」


 

ぷらずま「?」

 

 

5

 

 

ハ級「…………」


 

阿武隈「ひぃ…………し、深海っ」フラッ

 

 

瑞鶴「アブー、なにびびってんだって! こんなやつザコじゃん!」

 

 

阿武隈「瑞鶴、さん……指示を、出します」

 

 

瑞鶴「よしきた!」

 

 

阿武隈「あとは」ヨロッ

 

 

阿武隈「お願いしまぁす……」


 

バチャン

 

 

瑞鶴「これはひどい」

 

 

瑞鶴「阿武隈っ、肩を貸してあげるから、せめて立ちあがりなさいって!」

 

 

阿武隈「しゅ、しゅみませぇぇん……」


 

瑞鶴「んなことより、魚雷発射してきてるわ! 避けないとっ」

 

 

阿武隈「あ、それなら」ドォン


 

阿武隈「この通り浅い魚雷ならあたしが砲撃を当てて直撃前に無効化します」キリッ

 

 

阿武隈「深海棲艦さえ視界に映さなければ、あたしはしっかりと阿武隈できますっ」キリリッ

 

 

瑞鶴「……まあ、仕方ないか。出来ることをするしかないわね。あのはぐれは私がなんとか」

 

 

阿武隈「すみません。でも、正規空母瑞鶴さんならあの程度は余裕で沈められます、ね」

 

 

瑞鶴「そうね、海という名のリングに沈めてやる」スイィー

 

 

阿武隈「え、艦載機は、え?」

 

 

瑞鶴「弓と矢は持っててー」ポイッ

 

 

阿武隈「弓と矢がないと瑞鶴さんは艦載機が発艦できないんじゃ……」


 

瑞鶴「それは飾りよ。私は空母だけど、まだ砲撃しかできないし」スイィー

 

 

阿武隈「空母が主砲で? 砲撃でも、近寄る必要が、ええ?」

 

 

瑞鶴「あるのよねー」

 

 

ハ級「……」ジャキン


 

ドオオン

 

 

ハ級「……」バチャン

 

 

瑞鶴「右腕という主砲が」


 

阿武隈「」

 

 

阿武隈「……っあ」

 

 

阿武隈「瑞鶴さん!」 

 

 

阿武隈「て、撤退します!全力で!」

 

 

瑞鶴「強いやつ?」

 

 

阿武隈「潜水棲姫の反応です!」

 

 

阿武隈「なん、で、こんなところにっ!」

 

 

瑞鶴「パンチ当たるかな?」

  

 

阿武隈「パンチで倒せるなら苦労しないんですけど!? とにかく早くしないと、取り返しがつかない事態に!」

 

 

瑞鶴「まー、しゃーないかな」

 

 

阿武隈「のんきすぎますよう!」

 

 

阿武隈「早くしないと潜水棲姫の射程距離内にぃ!」

 

 

瑞鶴「アブー、戦いでは怖がるのも大事なことだと思うけど、そろそろ冷静になろうか」


 

瑞鶴「よーく状況を考えて指示を出してみなさいな」


 

阿武隈「…………」

 

 

阿武隈「追ってこられたら……あたし達の後ろは、鎮守府で……」


 

瑞鶴「そそ。うちの鎮守府は今、ほとんどの艦娘が出払っているじゃん?」



阿武隈「でも、電さん、が」

 


瑞鶴「アブー、うちでは敵前逃亡はね………」



瑞鶴「そのおちびに沈められる危険性が(震声」



阿武隈「」



瑞鶴「潜水棲姫とおちびの挟み撃ちは死ぬからね……」



阿武隈「……先行した龍驤さん達が戻ってくれば挟み撃ちに出来ますね」


 

瑞鶴「その発想はなかった。向こう次第ではここで時間稼ぎがいいかもね」

 

 

阿武隈「様子を見ながら下がります。つかず離れずで撤退しながら提督に指示を仰ぎます」

 

 

瑞鶴「うん了解」



6

 


卯月「完全勝利S!」ビシッ

 

 

龍驤「さすが。まあ、とりあえずあのカ級が海の底に沈む前にお持ち帰りするでー」

 

 

伊58「もう捕まえたー。重いでち」

 

 

龍驤「………あれ、ちょい待って」

 

 

龍驤「偵察機ちゃんがなんか発見……」

 


龍驤「他鎮守府の艦娘が4名、と」

 


龍驤「……嘘やん、駆逐棲姫?」


 

伊58「こんなところにそんなやつがいるとか今後一波乱起きそうでち。支援に向かう?」

 

 

龍驤「ゴーヤと卯月でカ級を持ち帰り。これがうちらの任務やからね」

 

 

龍驤「うちは提督に連絡取って支援に向かいたい、かなー」

 

 

龍驤「んー、キミ聞こえてるかー? 駆逐棲姫と交戦中の他鎮守府の子をとらえたんやけどさ」

 

 

龍驤「ゴーヤと卯月で倒したカ級連れて帰らせるから、うちは支援に行っていい?」

 

 

提督「どうぞ。多分、丙少将のところの陽炎さん達かと」


 

龍驤「え」

 

 

提督「ま、丙少将が中枢棲姫勢力とドンパチ予定です。こちらにその残存勢力が流れてくる恐れがあるので、作戦として少し哨戒範囲を拡げ、そちらに一時的に戦力を置いておく。補給は世話になる、と」

 

 

龍驤「電ちゃんおるやん。信用ないなー……」

 


提督「仕方ないですよ。元帥の前で味方すら殺すとかいっちゃってる問題児と、自分はそれの提督verみたいに思われていますし……」

 

 

龍驤「……まあ、とりあえず」

 

 

龍驤「うち無傷やし、行くわー」


 

提督「はい。またなにかありましたら」

 

 

龍驤「ゴーヤちゃん頼むで。卯月はゴーヤちゃんの護衛したってな。妙な敵に遭遇した場合、カ級置いてでも全力で逃げるんやで。いい?」

 

 

卯月「ブランクもあるし、奢りはせずに従うぴょん」

 

 

伊58「お先に帰投させてもらうでちー」


 

7


 

提督「1度、撤退しながら追ってくるか確認してください。絶対に鎮守府までは来させないように」

 

 

提督「追ってくるようなら迎撃を」


 

提督「阿武隈さんには爆雷を装備させてあるはずです」

 

 

瑞鶴「あー、提督さん? アブーは戦えないわよ。はぐれ前にして倒れるくらいだから姫級とか絶対に無理」


 

阿武隈「な、情けない話ですが」

 

 

提督「それではそれを踏まえて指示を出します」

 

 

提督「死んでも倒してください」


 

阿武隈「っ!?」

 

 

阿武隈「そ、それは」


 

提督「決死の覚悟を持って殲滅せよ、です」

 

 

提督「この鎮守府に被害が及べば解体処分するので、それが嫌なら死んでも倒してくださいね」

 

 

提督「攻撃を当ててください」

 

 

瑞鶴「提督さん……」


 

阿武隈「潜水棲姫、追ってきます!」

 

 

阿武隈「あ、あたしの練度数値は1、ですよ」


 

阿武隈「無理です無理ですぅ」

 

 

阿武隈「提督さん、お願い」

 

 

阿武隈「あたしを、み、見捨てないで」

 

 

提督「まあ、自分も鬼ではありません」

 

 

阿武隈「あ、ありがとうございます!」

 

 

提督「阿武隈さんが深海棲艦になれば自分が再度、沈めて差し上げるので、それでは」

 

 

8

 

 

阿武隈「ぅ……酷い……」ウルッ


 

阿武隈「信じて、たのに……」


 

瑞鶴「とーう!」バキッ


 

阿武隈「ぎゃん!」

 

 

瑞鶴「命のやり取りしているのよ。あんた自分より弱い相手だけには強気なタイプ?」

 

 

瑞鶴「性根の腐ったいじめっ子みたいね」

 

 

阿武隈「なんでそんな平然と! あ、あたし達、見捨てられて!」

 

 

瑞鶴「勝てるのよ。勝てる方法があるはずなのよ」

 

 

阿武隈「なんですかそれえ!」

 

 

瑞鶴「あの提督さんは黒めだけど、兵士を無駄死にさせるようなクズではないわね」

 

 

瑞鶴「1/5作戦は知ってる?」

 

 

阿武隈「……はい」

 

 

瑞鶴「無駄死にさせるようなやつではないと思うのよね。だから、きっとなにか倒せる方法はあるんじゃないかなー……」

 

 

瑞鶴「アブーが潜水棲姫に当ててくれれば話は早いんだけどね……」

 

 

瑞鶴「……うん? 潜水棲姫?」

 

 

阿武隈「……き、来ますううう!」

 

 

瑞鶴「とりあえず、そうだなー。私が引き付けとくからなんかひらめきなさいよ」

 


9

 


陽炎「なんでこんなところに駆逐棲姫なんかがいるのよ……」

 

 

不知火「陽炎、今は経緯など考えている場合ではありません。一刻も早くその生温い思考回路を切り替えてください」

 

 

陽炎「なによー、そもそも不知火があの悪魔提督に粗相をしなければ、この任務、私達がやらしてもらうようお願いしなかったわよー」

 

 

不知火「粗相をしたと思ってるのはこちらの勘違いだと、思いますが」

 

 

響「陽炎さん、早く指示を」

 

 

陽炎「うーん、駆逐棲姫か」

 

 

陽炎「じゃ、このまま単縦陣で近距離まで突っ込むわ。射程距離に入るより前に響は左から不知火は右から円で囲むように、後方に回り込む形を意識して移動して」

 

 

不知火「了解です」

 

 

陽炎「暁は私と一緒に駆逐棲姫の正面で不知火と響の邪魔をさせないように……」

 

 

暁「ええと陽炎さん、前方から艦載機が来てる! あの艦載機は味方、よね?」

 

 

天山君「やでー」ズドドドド

 

 

天山君2「行くでー」ズドドドド

 

 

陽炎「ありがたいわねー。そう言えば鎮守府(闇)には5航戦の妹のほうがいるんだっけ」


 

響「見えた限り発艦が式紙式だから、瑞鶴さんではないね。多分、龍驤さんだと思う」

 

 

陽炎「不知火、あんたが先制魚雷で狙われているみたいよ。数値で見たら甲さんところの木曾さんクラスだから、絶対に回避しなさいよー」


 

不知火「問題ありません」

 

 

陽炎「暁は周囲の敵影チェックを怠ったらダメよ」

 

 

暁「りょうかいっ」

 

 

駆逐棲姫「……」ギョライハッシャ

 

 

不知火「当たりません」ヌイッ

 

 

陽炎「しょせん単体よね、響には背中がら空きでしょ!」

 

 

響「分かってる」

 

 

ドオオオン


 

響「ん? 命中、したけどなにか……」


 

暁「龍驤さんは不知火のほうに向かってるわね」

 

 

龍驤「おーい! 陽炎!」

 

 

陽炎「すごい声量ねえ……」

 

 

不知火「陽炎、駆逐棲姫から目を反らすのは止めるべきです」


 

不知火「被弾時の煙に紛れて悟られないように砲撃準備を完了させています」

 

 

陽炎「……あ、あれ……やばっ」

 

 

龍驤「天山くーん!」

 

 

天山くん「すでに」ズドドドド

 

 

陽炎「ありがたい! 今がチャンス!」

 

 

駆逐棲姫「……」ジーッ

 

 

陽炎「?」

 

 

駆逐棲姫「………」


 

 










●ω●










 

 

陽炎「ッ!?」ゾクッ

 

 

陽炎(こ、この寒気は……)

 

 

陽炎(合同演習であの鬼畜艦を見たとき、と……)

 

 

陽炎「不知火、暁、響、これ旗艦命令ね。あいつに」

 

 

陽炎「これ以上、手を出したらダメ」

 


暁「い、今の感じって、なんだか」

 

 

響「……了解」

 

 

 

 

駆逐棲姫「……」クルッ、スイイー

 

 

 

 

不知火「撤退、していきました」

 

 

陽炎「……龍驤さんに借りが出来たわね」

 

 

陽炎「今のやつ、ただの駆逐棲姫じゃない気がするし……」

 

 

暁「響」

 

 

暁「私、なんでか電を、思い出しちゃった……」

 


暁「深海棲艦、なのに」

 


暁「電に、ごめんなさい、しないと。ふ、ふえええん……」グスグス

 

 

響「……」ヨシヨシ

 

 

10

 

 

龍驤「あんなのがいたことやし、家路に彩運飛ばしとこ」

 

 

不知火「ご助力感謝します」

 

 

龍驤「沈めんの?」


 

不知火「陽炎から深追い禁物命令が出ましたから」


 

龍驤「なんであっち?」

 

 

不知火「さあ。陽炎が、あいつはこのメンバーで深追いしてはダメなやつな気がする、とだけ」

 

 

龍驤「?」

 


不知火「まあ、陽炎がそういうのならその判断に従うまでです」

 

 

龍驤「なんであの駆逐棲姫はこんな敵の拠点近く、しかも単独でおるん?」


 

不知火「……さあ。しかし、最近この周辺海域に敵深海棲艦の勢力が集約しつつあるようです。そのなかの1隻だとは思うのですが、なぜ1隻でうろついていたのかまでは解りません」

 

 

陽炎「龍驤さんあんがとねー」

 

 

龍驤「お礼なんていいのよー」

 

 

不知火「声真似上手いです」

 

 

陽炎「重ねて迷惑かけるけど、そっちの鎮守府に行ってもいいかしら?」

 

 

陽炎「燃料と弾薬補給」

 

 

龍驤「せやね。今から行くって連絡しとくよ」

 

 

陽炎「……一応聞くけど、補給の見返りになにか酷いことされたりはしないかしら?」

 

 

龍驤「こっちの提督なんやと思ってんの」

 

 

陽炎「艦娘を駒として扱って、勝つために手段を選ばないパワハラブラ鎮提督」


 

響「……」


 

暁「……」ガクブル

 

 

龍驤「…………(メソラシ」

 

 

龍驤「まあ、陽炎達は丙さんのとこやし、うちのところは合わんとは思うよ……」

 

 

龍驤「人手が足りてないってのもあるけどさ」

 

 

不知火「不知火は、嫌いではありません。あの演習であなた相手に勝ったという事実がある限り、完全否定するべきではないかと」

 

 

不知火「実戦を想定する演習において、もがきあがいて格上に煮え湯を飲ませたのは痛快です」

 

 

陽炎「龍驤さんごめんね。この子に悪気はないんだけど、ちょっとねー」

 

 

不知火「?」

 

 

龍驤「ええよ。というか、あかん、うち急ぐわ」

 

 

陽炎「どうかしたの?」


 

龍驤「鎮守府の近くで潜水棲姫、とこっちの仲間が交戦しとるみたい」

 

 

陽炎「……私が対潜装備積んでるし、手伝うわよ。それで貸し借りなしってことで」

 

 

龍驤「ねえねえ、キミー」

 

 

龍驤「阿武隈と瑞鶴が潜水棲姫と交戦しとるんやけど、たまたま合流した陽炎達と助けに向かっていーい?」


 

提督「ダメです。手は出さないでください」


 

龍驤「………」

 

 

陽炎「そっちの提督さん、なんだって」

 

 

龍驤「手を出すな、やて」

 

 

陽炎「……マジ? 助けられるのにそうしないの?」


 

不知火「…………」

 

 

龍驤「二人とも練度低いし、瑞鶴は艦載機発艦できんし、阿武隈は深海棲艦を前にすると頭真っ白になるみたいやし」

 

 

陽炎「なにそれ! 助けに行くわよ!」

 

 

龍驤(…………あんなところに潜水棲姫が単独で現れてたまるかっちゅうねん)

 

 

龍驤(なんとなく予想ついたけど)


 

龍驤「うん、悪いなあ。念のために寄り道に付き合ってー」



11

 


阿武隈(どうしようどうしようどうしよう)

 

 

阿武隈「瑞鶴さん、とりあえず逃げてええ……」

 

 

瑞鶴「無理だって、なんかこいつ私を振り切って鎮守府のほうに行こうとしてるし!」


 

瑞鶴「私、もう結構キツイんだけど、阿武隈あんたいい加減に……」

 

 

潜水棲姫「……」


 

阿武隈「瑞鶴さん!」

 

 

瑞鶴「当た、らんっ!」

 

 

瑞鶴「あれ、アブー……」

 

 

瑞鶴(深海棲艦が視界に入るこっちをちゃんと向けてる)

 

 

潜水棲姫「キタワ、エモノガア……」

 

 

瑞鶴「右ストレート!」ドゴッ

 

 

瑞鶴「おちび、一芝居ご苦労様ね」

 

 

瑞鶴「潜水棲姫演じるなら、海面に顔出さないほうがいいと思うよ?」

 

 

潜水棲姫「……」


 

瑞鶴「あっ、敵だ敵。私はなにいってるんだろ。とにかくこの機会に遠慮なく殴らないと」


 

潜水棲姫「……」

 

 

ドオオオン

 

 

瑞鶴「……あ、れ?」ボロッ

 

 

瑞鶴「待避待避ぃ!」クルッ

 

 

阿武隈「ず、瑞鶴さん捕まってくださいい!」

 

 

瑞鶴「肩を借りるわー。やば、中破に……」


 

阿武隈「無茶し過ぎですから!今のだってギリギリで回避に移ったから良かったものの、まともに喰らってたら沈んでます!」

 

 

瑞鶴「早朝にゴーヤとおちびが哨戒はやっていたはず……こんな鎮守府の近くに潜水棲姫が単体でうろついているってあり得るの?」

 

 

阿武隈「あり得るかあり得ないかは目の前の現実が答えですよう!」


 

瑞鶴「いや、おちびのやつだと思ったのよねー。あいつのトランスの引き出しに潜水棲姫あるし」

 

 

瑞鶴「アブーのトラウマをこうやって無理矢理治そうとしていると思ってさ、こういうスパルタはいかにも提督さんとおちびがやりそうだから」


 

阿武隈「さっきの魚雷は確実に沈めに来てたんですけど! 提督さんが同士討ちは厳禁だと、特に電さんには念を押してたじゃないですかあ!」


 

瑞鶴「ちょっと提督さん」

 

 

提督「終わりましたか?」

 

 

瑞鶴「おちびじゃないの?」

 

 

ぷらずま「私はここにいますが」


 

瑞鶴「……なんでこんなとこに潜水棲姫が単体でいるわけ?」

 

 

提督「龍驤さんが同じく単体行動をしている駆逐棲姫と遭遇したようです。最近、ここより離れたところですが、深海棲艦の戦力が集まっている場所がありますし……」

 

 

瑞鶴「出撃前にいいなさいよ!」


 

提督「トラブルを想定しろ、と自分は伝えたはずですし、指示は出しました」


 

提督「ではがんばってください」

 

 

瑞鶴「アブー、あんた戦えるんだから本当、覚悟しなさいって。倒せ、とはいわないわ」

 

 

瑞鶴「龍驤さん達が帰投するにあたってここの海域を通過するはずだし、それまで耐えれば」

 

 

瑞鶴「さっき前は向けていたじゃん」

 

 

阿武隈「……っ」

 

 

阿武隈(瑞鶴さん、提督さんと喋ってから少し、震えてる……)


 

阿武隈(…………このままじゃ)

 

 

阿武隈(あの時の二の舞……?)

 

 

阿武隈(イヤイヤイヤイヤイヤ!)

 

 

――――大丈夫

 

 

――――北方棲姫くらい引き付けられるよ。

 

 

――――必ず、助けに戻るから

 

 

――――待っててね、卯月、阿武隈。

 

 

阿武隈「……っあ」

 

 

阿武隈(4人、撃沈して、あたしは、助かって……)


 

阿武隈(冷、静に。あの時と同じ轍を踏むために、戻ったわけじゃない)

 

 

阿武隈(終わらせなきゃ)

 

 

阿武隈(こんな、悲しいことは)

 

 

阿武隈(……でもあたしだけで潜水棲姫を倒すのは難しくて、支援艦隊が来るまでは持ちこたえられるか、怪しい)

 

 

阿武隈(後ろには鎮守府、これ以上さがれば被害が、出るかも……)

 

 

阿武隈「瑞鶴さん、お一人で立っていられますか」

 

 

瑞鶴「そのくらいなら」

 

 

瑞鶴「やっと、やる気になった?」

 

 

阿武隈「北方棲姫の時は戦えなかったですけど」

 

 

阿武隈「けど、今はまだ被弾してません。ここで、やらないと、また、後悔することに、なります」クルッ

 

 

潜水棲姫「……」

 

 

阿武隈「わざわざ海面に……」

 

 

阿武隈「ひ、膝が笑ってる……きっと、当たりも、しません」ガクガク

 

 

阿武隈「それでも!」キッ

 

 

阿武隈「撃ちますっ!」ジャキン

 

 

ドオオオン

 

 

阿武隈「ああっ、やっぱり外れ、て」

 


 

??「おーい!」

 

 

潜水棲姫「っ!?」ビクッ

 

 

12

 

 

瑞鶴「……声でか。えーと、おちびと似てる」

 

 

雷「まあ、姉妹艦だし眼と髪の色も同じだし」


 

雷「三番艦の雷」

 

 

瑞鶴「どーしてここに?」

 

 

雷「今日からこの鎮守府に異動することになったからに決まってるじゃない」

 

 

瑞鶴「聞いてないわね……」

 

 

雷「私が勝手に決めたことだし」

 

 

瑞鶴「また面倒そうなのが……」


 

雷「聞いたわ」

 

 

雷「この鎮守府には心と体に傷を負っている人達がたくさんいるって」シュン

 

 

雷「でも、安心して!」キラ

 

 

瑞鶴「なぜそんなに目を輝かせて……」

 

 

潜水棲姫「………」

 

 

雷「辛かったでしょ。今までよくがんばったわね」キラキラ


 

雷「私が、この雷様が来たからにはもう安心よ!」キラキラキラ

 

 

雷「これからは私を頼っていいんだからね!」キラキラキラキラ

 

 

阿武隈「そ、そういうのは今は」


 

雷「というか」クルッ

 

 

雷「電は、なにしているの?」

 

 

13

 

 

瑞鶴「え?」

 

 

雷「潜水棲姫の姿だけど、この私が電のことを見間違えるわけないじゃない。ずいぶん本格的だけど、演習?」

 

 

潜水棲姫「…………くっ」

 

 

瑞鶴「今、おちびの」

 

 

阿武隈「声がしました!?」

 

 

潜水棲姫「はあ。海に」トランスカイジョ

 

 

ぷらずま「トラブルは付き物、なのです」

 

 

瑞鶴「え、おちびは母港にいたんじゃ……」

 

 

ぷらずま「この辺りで深海棲艦の不穏な動きがあるとはいえ、さすがにこの鎮守府近海で姫が単独では私だと気づかれる可能性が高い、と」

 

 

ぷらずま「司令官さんのお願いで一人残され音声の収録させられたのです」

 

 

瑞鶴「あの野郎……」ブチッ

 

 

瑞鶴「全機爆装」

 

 

瑞鶴「準備出来次第発艦」

 

 

瑞鶴「目標、母港執務室の提督」

 

 

瑞鶴「ゴー」

 

 

流星「おk」

 

 

14

 

 

雷「電、久し振りね!」

 

 

ぷらずま「今はぷらずまですが、お久し振り、なのです」ビクビク

 

 

瑞鶴「おちびがびびっているだと……!?」



ぷらずま「●ワ●」



ぷらずま「電艤装が姉妹艦に好意的なせい、なのです。なんたる、屈辱……」


 

ぷらずま「というかさりげなくポンコツ空母が物凄い成長を見せた気が……」


 

阿武隈「確かに。なんか普通に艦載機を発艦させましたよね……」

 

 

瑞鶴「……なんか激情に任せたら普通に発艦できたわねー」

 

 

瑞鶴「感覚を取り戻した気がする」

 

 

瑞鶴「もいっちょ執務室に発艦!」

 

 

流星「ビューテフォー」

 

 

ぷらずま「ところで雷お姉ちゃんがここに異動してくるだなんて通達は来ていないのです」

 

 

雷「私は電と別れてからは所属鎮守府は決まってないからね。のらりくらりと色々な鎮守府を」

 

 

雷「私を必要としているところはたくさんあるし、仕方がないこと」

 

 

雷「今度はこの鎮守府(闇)」

 

 

ぷらずま(めんどくせーのが……)

 

 

雷「電、帰るわよ!」

 

 

ぷらずま「疲れたのでぷらずまはゆっくり行くのです……」

 

 

雷「仕方ないわねえ」ヨイショット

 

 

雷「お姉ちゃんが抱っこしてあげるわ!」フンスッ

 

 

ぷらずま「くっ、善意100%のこのウザさ……」

 

 

ぷらずま「はわわ、なのです……」



阿武隈「あっ、龍驤さんが……なにやらたくさん人を率いて来ました」

 

 

龍驤「あー、やっぱり電ちゃんか。心配して損したわ」

 

 

陽炎「あー……そういうこと……」

 

 

不知火「瑞鶴さんのことは知っていましたが、阿武隈さんもいたとは」

 

 

暁「電っ! と、雷!?」

 

 

響「雷は本当に久しぶりだね」

 

 

雷「久しぶりねえ。こうして第6駆逐隊がそろうのも」

 

 

龍驤「大所帯になったなあ」


 

龍驤「とりあえずさっさと帰投しよか。久々の実戦でうちも疲れたわ」

 

 

提督「瑞鶴さん、聞こえますか」

 

 

瑞鶴「帰ったら覚えときなさいよ」

 

 

提督「まだなにかするおつもりですか」

 

 

提督「流星は、人に向けて、撃ってはいけません」

 

 

提督「お願いします」

 

 

15

 

 

提督「……」ボロッ

 

 

提督「……お帰りなさい」


 

龍驤「キミが一番重症な件」

 

 

阿武隈「……提督さん」

 

 

提督「報告はいいです。ぷらずまさんから聞いているので」

 

 

提督「もう、撃てますね。ここまで来たのならきっともうすぐです。後は当てる練習をするだけですから」

 

 

阿武隈「……私のキスカでのことは知らないとはいわせません」

 

 

提督「知っておりますとも」

 

 

阿武隈「ぷらずまさんだったから、沈まないとしても」

 

 

阿武隈「あの時の提督と同じように」


 

阿武隈「あたしをっ、見捨てましたね……?」ナミダメ

 

 

提督「もっというのなら、出来る限りその時と同じ状況にしたかったので、ぷらずまさんには阿武隈さんと瑞鶴さんを沈める気で、といいましたね」


 

ぷらずま「●ワ●」

 

 

提督「あなたのためを思っての鞭で」

 

 

阿武隈「ていっ!」バキッ

 

 

ズザッゴロゴロ

 

 

提督「……まあ、甘んじて」ムクリ

 

 

阿武隈「どうもあたしのためのご指導ありがとうございました!」

 

 

提督「思わぬトラブルで早いネタばらしとなってしまいましたが……」

 

 

提督「雷さん」

 

 

雷「ああ……司令官、顔色が悪いわ。それになんだか全体的に生気が薄くって今にも虚空に消えてしまいそうね……」

 

 

雷「執務も看護も雷がやってあげるわ! 司令官さんはゆっくり休養しないとダメね!」

 

 

雷「やることがたくさんあるわ!」キラキラ

 

 

陽炎「この司令、なんだか思っていた感じと違うわね……うん、むしろ怖くない」

 

 

不知火「前と変わらないと不知火は思います。陽炎の人を見る目に落ち度があるだけです」

 

 

暁「そうね。今のこの人は怖くないわ」ホッ

 

 

響「鎮守府はどこも女所帯だからかな。丙さんが艦娘の尻に敷かれているところをよく見るよ」

 

 

提督「響さんは違うのですか?」

 

 

響「違うかな。ドライなほうだから、もしかしたらあなたとは気が合うかもしれないね」

 

 

提督「……さきほど連絡を受けましたよ。どうぞここで3日間ほどゆっくりしていってください」

 

 

瑞鶴「支援施設の名残で入渠とは別に大きなお風呂も娯楽もたくさんあるし、なにより間宮さんのお店があるからねー」

 

 

陽炎「ゆっくりできそうねえ。それじゃお世話になります。皆も行くわよー」


 

龍驤「ゴーヤと卯月は? 瑞鶴達の交戦には気付かんかったん?」

 

 

提督「ええ、自分の指示で瑞鶴さん達とは合流しないように帰投してもらいましたから。すでにカ級は運び込んでもらっています」

 

 

提督「ぷらずまさん」

 

 

ぷらずま「ある程度はバラしますが、地下に運び込んでおくのです」

 

 

提督「ありがとうございます。龍驤さんもお休みください」

 

 

提督「明日からはしばらくカンを取り戻しに阿武隈さん、瑞鶴さん、阿武隈さん、卯月さんの四人で遠征のスケジュールを組んであります」

 

 

龍驤「今回で練度あがったと思うで」

 

 

提督「まあ、解体されても艦娘時代の経験がなくなるわけではないですしね。龍驤さん、卯月さんのお二人は素体としても優秀ですから、練度はすぐに解体前に戻ると見ています」

 

 

提督「阿武隈さんも立ち直りさえすれば練度はメキメキとあがるかと」

 


提督「瑞鶴さんは、ここの唯一の正規空母です。大変でしょうが、ほんとがんばれ」


 

龍驤「まあ、うん。とりあえず付き添うからさ」

 

 

龍驤「キミは医務室いこかー」

 

 

雷「話は終わったわね。もちろん、私も看護のために付いていくわ!」

 

 

【9ワ●:長ったらしいファンタジーのお話】

 

 

1,5065

 

提督「…………」

 

 

龍驤「なんなんこの数字?」

 

 

龍驤「それとこのアタッシュケースも」ガチャリ

 

 

龍驤「金属みたいやけども……」

 

 

提督「まあ、なんとかなるでしょう」

 

 

龍驤「……まさかその数字」

 

 

龍驤「この謎の金属にいくら使ったん…………?」オソルオソル


 

提督「まあ、聞かないでください……」

 

 

龍驤「ちょっち待ち」

 

 

龍驤「ゲームですら仕事のために買うキミのことや。なにか仕事に使うんやろ。懐から出したん?」

 

 

提督「はい」

 

 

龍驤「もしかして深海調べるとかいう?」

 

 

提督「ええ。出来る限り最安値でパーツを揃えたつもりです」

 

 

提督「捕獲したカ級に少し手を加えて深海を撮影します」

 

 

龍驤「あー……沈んだ艦娘が深海棲艦になる話の真偽を確かめる気かいな」

 

 

龍驤「艤装はすでに軍が徹底的に調べて深海に沈むことでの特殊な反応が起きることは一切なかったはずやで。それが艤装身に付けた艦娘でも深海に沈むことで深海棲艦化に繋がる特殊な反応は起きないっちゅー話じゃなかったっけ?」

 

 

龍驤「深海のことなんて、そんなん軍の調査資料にあるやろ」

 

 

龍驤「まさか軍を疑ってる?」

 

 

提督「いいえ……」

 


2

 


ガチャ

 

 

ぷらずま「●ワ●」

 


ぷらずま「面白そうな話をしてるのでお邪魔するのです」

 

 

提督・龍驤「……」

 

 

提督「ちょうど良かったです。ぷらずまさん、今後に行う作戦、それにともないあなたに重要なお願いがあります」

 


ぷらずま「……お願いとは」

 

 

提督「深海棲艦の戦いではなく、実験で命を賭けてもらいたく」

 

 

ぷらずま「ほう。私が実験でどんな屈辱を受けたか承知のうえでのその発言……」

 

 

ぷらずま「結果が出なければ?」

 

 

提督「どうぞ首でも切り落としてください。この作戦における結果、自分の予想が外れていたら、自分があなたにいった深海棲艦との戦いを終わらせる、といった言葉が嘘になります」

 

 

ぷらずま「●ワ●」ホウ

 

 

ぷらずま「戦争を終わらせるために、協力してください。何回も聞いた言葉なのです」

 

 

ぷらずま「……まあ」

 

 

ぷらずま「聞いてやるから話してみろなのです」

 

 

ぷらずま「長話になりそうなので、この椅子は私が座ります。司令官さんは立ってて欲しいのです」

 

 

提督「了解」ビシッ

 

 

ぷらずま「龍驤さんは茶でも淹れろなのです」

 

 

龍驤「了解」ビシッ

 


3

 

 

提督「艦娘が深海棲艦へと変化する。これはぷらずまさんの身体の調査で、確定しました。沈んだ艦娘が深海棲艦に化ける、という説にかなりの信憑性も出てきました」

 

 

提督「しかし、艦娘が深海棲艦へと変わる過程が一切謎に包まれているのが現状です」

 

 

提督「軍の実験では意図的に艤装を撃沈時と同じく大破判定にして深海に沈め、撮影しています。深海棲艦化に繋がる手がかりを探すため、です」



提督「が、龍驤さんがいったようにスカです」



提督「この後、軍は救助活動に今まで以上に力を入れ始めました。その理由はもちろん命を助けるため、死体を遺族に引き渡すため、そして対深海棲艦海軍の人間が人体実験を行っていたというマイナスイメージの払拭効果を見込んだ。そして一番の理由は恐らく」



提督「艤装とともに撃沈した艦娘なら深海棲艦化に繋がる手がかりが得られるのではないか、という調査のためです」



提督「ですが、これもスカ。生きていようが死んでいようが深海棲艦化に繋がる手がかりは得られなかった」



提督「その次に軍が立てた仮説」



提督「『海へと沈み、我々が発見できなかった艦娘が深海棲艦化している』」



龍驤「……ロスト現象?」



龍驤「艦娘の生体反応と艤装反応が完全に消失するやつ……」



提督「そうです。海に沈んだ艦娘が、本当に消えるんですよ。この消失は多くの人が確認しています」



提督「このロスト現象に陥った艦娘が深海棲艦化しているのではないだろうか。これが仮説なのは、その現象に陥った艦娘の観測が不可能であるためです」



提督「『河水が海へと流れ、雲を風が運び、大地に雨を降らし、木々が河に水を流す。この戦争はそれと同じく神が仕組んだ摂理だ』」



提督「先代の元帥は、深海棲艦との戦争が終わることはあり得ない、と残して退きました」



提督「神とは、なんだろう。自分は中学生の時に、その言葉を聞いて、考えました」



龍驤「……話が逸れてきて、」



ドン!パリン!



龍驤「あぶな!? 窓割れたで!?」



ぷらずま「お静かに。珍しく言葉に熱があります。一人の人間が命を賭けている、ということを忘れて欲しくないのです」



龍驤「……了解」



ぷらずま「最もその論に矛盾があれば、次の弾丸は司令官さんに当たることになるのです」



ぷらずま「司令官さん、どうぞ」



提督「その元帥の言葉で当てはめるのならば神は自然です。そしてこの戦争で例えるのならば自然存在は」



提督「妖精」



提督「なので、ここからはファンタジーです」



提督「彼等はどこで産まれたのか、なぜ我々をも理解できない技術の数々を有しているのか。それを確かめる術はありませんが、ロスト現象を観測できる存在がいます」



提督「ロスト現象を確認してから作動する完全再生能力を有した女神妖精です」



提督「しかし、女神妖精を使ってのロスト現象観測は不可能。女神妖精、そして応急修理要因は、他の妖精とは違って、意志疎通が困難な妖精です」



提督「妖精との意志疎通分野で歴代最高成績者は現乙中将ですね。彼は開発分野で狙った装備を5回以内に確実に開発させるチート提督ですが、彼を持ってしても、女神妖精との意志疎通は出来なかった」



提督「妖精は役割に忠実です。建造解体妖精は建造解体を、操縦妖精は艦載機の操縦を、開発妖精は開発を、といった風に。まるでそのために存在しているといったように、自然のようで、機械的でもあります」



提督「ここで自分は、自分が見たその妖精の存在を信じて、仮説を立てます」



提督「深海ではありませんが、溺れた時、海底で妖精を見たということです」



ぷらずま「…………」



提督「その妖精はなぜ海にいるのか。そして、その妖精の役割はなにか」



提督「その役割を考えると、1つだけ辻褄の合ってくる役割が、見えてきました」



提督「建造です」



龍驤「そ……」



ぷらずま「● ●」ジーッ



ぷらずま「龍驤さん、最後の警告です。珍しく言葉に熱があります」



龍驤「あ、いや」お口チャック



ぷらずま「はあ、まったく……」



ぷらずま「では司令官さん、ちょっと待って欲しいのです」ガタッ



 

 

「なんでやねん!」



 

 

 

龍驤「うちに黙れいった電ちゃんがなんで普通に口挟むん!?」



ぷらずま「いいたいことは分かりましたので、質問させて欲しいのです」


 

龍驤「シカトすんなやー……くそー……」

 


ぷらずま「ロスト現象に陥った艦娘が深海棲艦化し、その妖精が艦娘を資材に深海棲艦を」



ぷらずま「『建造』している。いいたいことは、分かったのですが」



ぷらずま「ロストしている艦娘は別空間にいる。ま、軍がいうロスト空間なのです」

 

 

ぷらずま「ロスト現象内で深海棲艦化は起きている。ならばその妖精はそのロスト空間で建造を行っているはずです。その妖精が観測できるのはおかしいですよね……?」



提督「その通りです」



ぷらずま「……まさかその時、司令官さんがロストしていたとはいいませんよね?」ジャキン



提督「まあ、それなら自分は深海棲艦になってないとおかしいですからね……それに艤装なんてなかったですし」



提督「あなたのいう通りです。あの妖精の存在は自分の夢幻だった可能性が、あります。ぶっちゃけここが一番、ぷらずまさんに撃たれる危険が、高いところではあると……」



ぷらずま「なのに、あえて、ですか?」

 

 

提督「出来ればとりあえず最後まで聞いて欲しいです……」

 

 

ぷらずま「なるほど、最後まで聞いてみるとするのです」



提督「その妖精がいるとして、その妖精が海にいる理由、その役割を考えると、深海棲艦のデータにおいて色々と辻褄の合う部分がいくつか」



提督「『海へと沈み、我々が発見できなかった艦娘が深海棲艦化している』とのことで、『それがロスト現象内で起きている』ですが」



提督「これもまた学会では疑問が多いです」



龍驤「知ってるで! その仮説は発見できなかった殉職者よりも遥かに多い深海棲艦の数についての矛盾が解決できていない、やろ!」



龍驤「現状そこで行き詰まって、そこから先は数多の説の海や!」



ぷらずま「そこから模索していく、のですね?」



提督「はい。ここからは自分の説になりますけど……」



ぷらずま「ほとんどの司令官は私を『巨大』な戦力として見ているのですが『重要』の意味も理解していそうで、嬉しいのです」



提督「……一回、まとめますね」



提督「発見できなかった艦娘がロスト現象内で深海棲艦化している。では、どうやって深海棲艦化しているのか、その過程ですが、あの時に自分が見た未発見の妖精が関わっていると仮定。ここから深海棲艦のデータと照らし合わせると」



提督「通常とは反転した建造の工程である可能性が、極めて高いと自分は判断しています」



提督「なので、通常の建造に当てはめてみますと」



提督「艦娘は人間をベースに艤装を適応させますが」



提督「深海棲艦建造はその手順を反転させて」



提督「艤装に人間を適応させる」



提督「これで辻褄の合ってくる深海棲艦のデータは多いです」



龍驤「待って! おかしいそんなの絶対おかしいやん!」デスクバンバンバン



龍驤「キミ、それは艤装が手足を得て動き出しているってことやろ!」



龍驤「女神に命を吹き返す効果があるのは分かっとるけど、あくまで甦らす、や! キミの論だと物に命を与えてるってことやん!」



龍驤「いや、妖精さんのミラクルパワーなら出来んこともなさそうやけどさ! それいったら無限に仮説出まくるやろ!」



提督「艤装は恐らく妖精に近い存在。もともと生きている、のかと」



提督「あなた達、建造されたら」



提督「軍艦の想い、艤装の夢を見るのでしょう?」



龍驤「っ!」



提督「艤装も、そう。あなた達を見るのです。だから、ベースを逆にしたあなた達と反転する存在になる、といったのです」



提督「これを踏まえて」



提督「深海棲艦はなぜ艦娘に攻撃的なのか。あなた達を見て足を止める傾向が本能と呼ばれているのか。これはあなた達の強い心が艤装にも伝わっているから。例えば――――」

 


提督「生きたい。だから、戦う」

 


提督「許さない。だから、倒す」

 


提督「会いたい。だから、帰る」



提督「これら全てが深海棲艦の本能となっているのでしょう。これほどまでに単純化している理由は、この説から艤装の知能はほぼないに等しく、形のない想い出等の、まあ、妖精のようなものかと」



提督「反転したことによって、艤装がベースとされた深海棲艦は、あなた達から伝わった心の残滓と、持ち得る艤装の機能により、動く」

 

 

提督「それらが深海棲艦の生きる意味であり、存在意義であり、それは我々に本能と認定させた程に純粋無垢です」



提督「これらを踏まえて、その未知の妖精が、建造の役割を持つと考えます」



提督「まあ、未知妖精でも深海妖精でもとりあえず呼称して」



提督「もしも、存在が確認できれば」



提督「深海棲艦を倒すのではなく、彼等に建造をさせない。つまり深海棲艦を産み出さないことによって」



提督「単純に建造終了している残りの深海棲艦を倒すだけの引き算で、0に、なります」




ぷらずま「……、……」



提督「だから調査してみたいのです」




提督「いかがでしょうか……」



ぷらずま「…………」ガタッ



提督(ビクッ



ぷらずま「どうぞ。この椅子に座ることを認めるのです」



提督「ありがとうございます……」




コツコツ、

トポポ、

トンッ




ぷらずま「お茶もどうぞ、なのです」



提督「はい、どうも……」



ぷらずま「色々と思うところはありますが」クルッ



ぷらずま「妖精さん能力は解明出来ていなく、その主張は様々です。それを混ぜたら、まあ、予想染みてしまうのです」ニヤ



ぷらずま「ある程度の推測を踏まえて、賭けをする必要があるのです。真実を模索していく。その段階、ゆえに実験。そしてあなたのその仮説は…………」ニヤニヤ



ぷらずま「……まあ」ニヤニヤニヤニヤ



ぷらずま「褒めてやるのです」ニヤニヤニヤニヤニヤ



龍驤「今、背中向けてるのはキミに今の顔を見せたくないからやね」



ぷらずま「●ワ●」ハ?



龍驤「う、うっそぴょん」



ぷらずま「うわ、きっつ……いくら見た目ロリとはいえ実年齢考えて欲しいのです」



龍驤「肉体年齢は23歳な。うち泣くで?」



ぷらずま「●ワ●」



ぷらずま「手伝ってあげるのです♪」ジャキン



提督「はい、ストップ」



ぷらずま「了解なのです」



提督・龍驤「……」



提督「まあ、あくまで自分の予想、です。これからの作戦で確信を得られたらいいのですが……」



ぷらずま「この紙切れとマジックを借りるのです」



カキカキカキカキカキ


ペタリ



提督「……あの、それは?」



ぷらずま「『異性同性間問わず職場恋愛禁止by(●ワ●)』の張り紙なのです」



ぷらずま「今後の作戦のためにも、万が一にでもヘドが出るいざこざを避けるためです。私の目から見てこれは必要なことなのです」



ぷらずま「絶対に必要なことなのです」



提督「まあ、どうぞご自由に……」



ぷらずま「司令官さん、絶対にイチャラブしないと誓え、なのです」ジャキン



提督「り、了解。誓います」ビシッ



ぷらずま「では私はここらで失礼するのです」ガチャ



提督「待ってください」



提督「作戦内容と、それに関わるぷらずまさんの身体の謎についても一緒に説明したいので……」



ぷらずま「……!」



ぷらずま「聞いてやるのです」



提督「あなたのその特異な身体は、この妖精との意思疏通により、技術工程を『生きた艦娘に死んだ深海棲艦の艤装を適応させる』または『死んだ深海棲艦の艤装に、生きた艦娘を適応させる』の手順によって、説明できます」



提督「あなたの高い知能からして恐らく前者」



提督「恐らく失敗(ペンギン)現象にならず、あなたが産まれた。深海棲艦側でいう(壊)の現象と、似ているところがあるかな……」



提督「まあ、この神が仕組んだ輪廻戦の意表を突いた」



提督「駆逐艦電(壊)こそ、ぷらずまさん」



ぷらずま「~~~~っ!」ゾクゾクッ



提督「あなたをその身体にした提督は……」



提督「恐らく自分と同じくこの妖精を発見、そして出現経路を知り、活用する段階に至らせていた。悪魔に魂を売った天才です」



龍驤「……、……」



提督「深海妖精、と称しておきます。先程、深海妖精に建造をさせなければ、建造終了している深海棲艦を滅ぼせば、単純な引き算で0になる、といいましたが」



提督「ここで軍も試していないクエスチョン」



提督「『電(壊)は完全な深海棲艦へと変わるのか』」



提督「これがもしも、ノーであるいうのなら」



提督「あなたは、艦娘の強化、ではなく、戦争終結のため、に建造された兵器です」



ぷらずま「~~~~っ」ゾクゾクッ



ぷらずま「人でも深海棲艦でもない私の存在意義が、見つかると……」



ぷらずま「命を、賭けさせるだけは、あるのです」



提督「まあ、死んでくれ、とはいえる自分ですが、無駄死にはさせません」



提督「あなたをその身体にした提督は、ここらの真実を完全に解明していたのかもしれませんね」



提督「色々とここの過去を調べましたよ。それで気になることを1つ質問させて欲しいのですが」



ぷらずま「●ワ●」



ぷらずま「なんなのです?」



提督「あなたと卯月さん、阿武隈さんと同じ鎮守府に所属していた子について、です」



提督「白露型五番艦」



提督「春雨」



提督「について、隠していることおありですか」



ぷらずま「残念ながらねーのです」



提督「そうですか」



ぷらずま「疲れましたので、作戦のほうは書面で寄越しやがれなのです。それでは」ガチャリ



4



龍驤「よー考えるなキミ……」



提督「全て推論の域を出ません。そこらを確認したかったので、ぷらずまさんのいる鎮守府に着任したかったんです」



提督「でも、深海棲艦建造する妖精はいると思うんですよね。艤装をベースに肉体を適応させる、で種々な辻褄が合うのは間違いないですし……」



龍驤「うちもなんか真実っぽく聞こえたし、元帥ちゃんに報告したほうがええかな」



提督「結果報告はします。が、恐らく現段階で報告すれば組織としてこの実験は中止のスタンスに傾きます。あの子の覚悟を否定した道徳を振りかざすでしょうから……」



提督「きっと、こういうことをさせるために提督続けさせてくれたんですよ。『ぷらずまさんになつかれている以外にこれといった素質はない』と、いったでしょう」



提督「元帥からしたら、ぷらずまさんを使って色々やることしか利用価値がないということ。自分ほど『軍がやりたいけど、やれないことをしてくれる人材はいない』のです」



提督「だからあの時、元帥にこの作戦について知らせるのは控えました。知っていた、では元帥の立場が危うくなりますが、知らなかった、ならとかげの尻尾切りで済む範囲の処分に丸められる作戦が組み立てられますから」



提督「この戦争は終わらない、といった元帥の後にその座に就いた人です」



龍驤「キミ、頭回るなあ……なんで軍学校の時、成績悪かったん?」



提督「真面目にやっていたつもりです。ただ、どうしても深海棲艦についての論説ばかりが頭から離れなくて、物事覚えるの苦労しました。馬鹿です」



龍驤「不器用やねー」



龍驤「今回、やっぱり軍の協力は、無理、かなー。けっこう確信迫ってる感出てたんやけど……」



提督「そう聞こえたのなら、よかったです」



龍驤「キミ、その話術どこで習得したん。そういえばスカウトも成功率100%やね?」



提督「まさか……」



提督「自分は大和の1件で陸地の一般適性施設に異動したのですが、そこのお仕事は知っていますか」



龍驤「適性検査するんやろ?」



提督「常に兵士は欲しい。だから、子供だろうと適性さえあれば、あの手この手で戦争に参加させるために軍学校に押し込む仕事です」



龍驤「アブーと卯月すら口説き落とした会話テクはそこで鍛えたんか……」



提督「口説き落としたのではなく、あの子達が未来に進むために背中を押したんです」



龍驤「戦争へとな。酷い詐欺師や……」



提督「人聞きの悪い……」



提督「一番酷かったスカウトは、DV問題抱えていた子供達ですか、ね。それ解決してなんとか軍学校に入れてください、と畑違いの児童相談所の仕事を押し付けられました。完全なパワハラですよ……」



龍驤「」



提督「……」



提督「まあ、それ解決してあの子達を軍学校に入れたら、大淀さんがそのお礼に、と、前々から希望していたぷらずまさんのいるここへの着任を推薦してくれたんですけど……」



龍驤「恐ろしい女やで、大淀のやつ」



提督「しまった、愚痴こぼしていたらつい口が滑りました……」



龍驤「というかキミがここに来たことにそんな経緯が……家庭問題の解決に乗り出したキミもあれやけど……まあ、優しいって思わせてもらうな」



提督「話戻しましょうか」



提督「あの子のデータ、生命力、再生力、深海棲艦反応と艦娘反応、妖精可視の才、そして妖精は映像として記録できる。から、この作戦組み立ててます」



提督「あの子を意図的に沈めてその様子を途中まではゴーヤさんに観察してもらって、今のゴーヤさんが水圧により被害が予想される地点からはカメラつけたカ級を沈めます。目的ではありませんが、ロスト現象が起きた際の確認、映像として記録するためです。これはこれで軍もまだ撮影できていない貴重な映像なので」



龍驤「最悪、死ぬんやろ……」



提督「不確定要素の多い実験なので最悪、死亡するか、深海棲艦になります。だから、命を賭けて欲しい、とあの場で彼女に申し上げました」



提督「しゃべり疲れました……それと自分の読みでは発見されていない艦娘が深海棲艦に化けていても、ロスト状態で深海棲艦化が行われているのではないのだと思います」



提督「恐らくその深海妖精は、妖精可視の才があるもののなかでも、見える人は限られている。そして艤装と人体が丸々必要なわけではなく、例えば吹き飛ばされて分離した肉体や艤装からでも建造は可能。ここらがあの深海棲艦の数に関係しているのかな、と」



提督「そして、ぷらずまさんをあの身体にした提督は、調査資料から推測するに、あの違法建造をこの執務室の地下で行っていたはずです。つまり、その妖精は陸地へと誘える。だから、ロスト現象で、いや、ロスト現象空間内でだけ活動する妖精ではないか、未発見の妖精がまだいるのか……」


 

提督「ならばぷらずまさんに反応を示す可能性があります」



提督「そして、もしも、今のぷらずまさんが神の意思に反する存在ならば、彼女に何かしらの浄化作業をもたらすことも」

 

 

提督「システム的にいえば解体、という形で」

 


提督「……周りの海にもきな臭い深海棲艦勢力がいますし、この実験で、色々なにかつり上げられるかも、と。やるだけの価値はあると判断しています」



龍驤「確認してときたいんやけど、電ちゃんを死亡撃沈させてロスト現象起こすわけやないんやな」



提督「ええ、ロスト現象は起きる可能性がある、とだけ。そして起きたら死が過ります。なので、ロスト現象が起きない可能性の高い大破撃沈、撃沈(仮)を先に」



龍驤「…………くっろ」



提督「いいたいことは分かります。が、ここは黒の鎮守府ではなく、闇の鎮守府であることにご理解ご協力を……」

 

 

【9ワ●:校門と肛門をかけまして地獄へと糞を撒き散らしながらの門出をさせてやるゾ☆】


 

1

 

 

瑞鶴「6人そろったことだし、これからのことを考えて親睦を深めるべきだと思うのよ」

 

 

ぷらずま「馴れ合いは不要だとあれほどいったのです。そんなに深めたいのなら相手してやるから抜錨しやがれなのです」

 

 

瑞鶴「肉体言語じゃないわよ。私達さー、仲間だけどお互いのことよく知らないじゃん。歓迎会とかもないし」

 

 

卯月「うーちゃん、そういうのだるいからいいぴょん」

 

 

阿武隈「皆さん、あたしと卯月ちゃんの過去は知っているんですよね。でもあたし達は皆さんのことあまり知らない、です」


 

伊58「パース。あまり人に語りたい過去ではないでち」

 

 

陽炎「間宮さんなに。ここのみんなはギスギスしてんの?」

 

 

間宮「いえ、していないとは思いますが」

 

 

間宮「瑞鶴ちゃんはゴーヤちゃんとかぷらずまちゃんを引き連れてご飯食べに来てくれますけど、そのくらい?」

 

 

間宮「スカウトなんてしている提督さんは朝から深夜までどこでなにしてるか分かりませんし」

 

 

瑞鶴「電、ゴーヤ、瑞鶴、龍驤、阿武隈、卯月、なんというか特別仲のいいやつも悪いやつもいないこのラインナップよね」

 

 

ぷらずま「……はあ。ここは学校の仲良しクラブじゃねーのです」

 

 

ぷらずま「他鎮守府がセンソーなめ腐ってるゆえ生温いだけなのです。それに右ならえしろ、と?」


 

瑞鶴「そうとんがるなとんがるな。間宮さんおちびにジュースでもあげてー」

 

 

伊58「特別仲がいいわけでも悪いわけでもない。理想的だと思うでち」

 

 

伊58「あの提督さんに対してもそのくらいがいいんじゃないかな」

 

 

ぷらずま「その通りなのです。しょせん小娘の集まり。不必要な馴れ合いはいざという時、最善手の判断を鈍らせるのです」

 

 

阿武隈「司令官さんですか。そういえばあの人のことよく知らないなあ」


 

卯月「古株連中はあの司令官さんと仲いいぴょん?」

 

 

瑞鶴「いやー、趣味も好きな食べ物もなに一つ知らないわね」

 

 

間宮「昆虫とか?」

 

 

伊58「虫ー?」


 

暁「昆虫採集?」



間宮「食べるのお好きだとか……前にガンバって作って差し上げたところ、普通に食べてましたし……ウップ」

 

 

瑞鶴・伊58・阿武隈・卯月・暁「」

 

 

ぷらずま「それ、私のジョークなのです。信じていたのですか」

 

 

間宮「!?」

 

 

陽炎「司令官とのコミュは大事だと思うわよー。こっちは指示に命賭けるわけだから、信頼関係がないと迷いが出る」

 

 

陽炎「あれだ。金剛さんみたいなラブ勢になれとは言わないけど、あんた達もうちょっとお互い歩み寄ったほうがいいんじゃない?」

 

 

陽炎「うちの丙さんはすごいわよー。姫や鬼相手の苛烈な戦闘で大破出さずに連勝中だし」

 

 

ぷらずま「ダボが」

 

 

ぷらずま「戦術的勝利B、よくて勝利AばかりでS勝利は数えるほどしかなく、よく姫や鬼も逃すへっぽこ司令官なのです」

 

 

陽炎「犠牲を出さない勝利よ?」

 

 

ぷらずま「逃がしたせいで新たな火種となっているのです。丙は犠牲を出すのを恐れてるだけなのです」

 

 

ぷらずま「大和の件、こちらの司令官さんは最善手を取りました」

 

 

陽炎「…………」


 

ぷらずま「にも関わらず、あいつはあの司令官さんを殴りやがったのです。逆にあまっちょろいとは思わないのです?」

 

 

陽炎「人情があっていいじゃない」


 

ぷらずま「あの司令官さんは、情がない機械ではないのです。鈍くなっているか、押し殺しているだけ、です」

 

 

ぷらずま「最初に痛め付けて確認しましたから」

 

 

伊58「そんなことしたんでちか……」

 

 

ぷらずま「重要なことだったのです」

 

 

瑞鶴「なんかあの提督さんを感情的にさせたくなってきた」

 

 

阿武隈「確かにあの司令官の人間味のある反応は見てみたい、かも?」

 

 

卯月「悪戯と聞いて」

 


ぷらずま「今はダメなのです。大事な時期ですから」



2



提督「( 。´ω)y─」プカー


 

提督「夜の海は落ち着きます……」


 

提督「一人は素晴らしい」


 

不知火「どうぞ。間宮さんから頂いてまいりました日本酒です」

 

 

提督「……どうも」ペコリ

 

 

不知火「いえ、お世話になる身、ささやかな礼です。うちの旗艦の陽炎は無礼講が過ぎるので」

 

 

響「小舟に乗って海を眺めるのは楽しいかい?」

 

 

提督「楽しいです」

 

 

響「落ち着くのではなく?」

 

 

提督「2隻、あるので乗りますか」

 

 

……………

 

 

不知火「…………」コブネノウエデ

 

 

響「…………」ナミニユラレテ

 

 

提督「…………」ユラユラユラ

 

 

不知火「む、海に出るときは騒がしいのが常ですが、ただ舟のうえで寝転び、波に揺られるのも悪くないですね」

 

 

響「スパシーバ」

 

 

響「哲学的な娯楽性を感じる」

 

 

提督「そうですか。お若い駆逐艦の方々にはただ退屈なものだとも思ったのですが……」


 

不知火「いえ、このような趣も」

 

 

響「嫌いじゃない……」

 

 

提督「…………」

 

 

雷「司令官! とりあえず駆逐寮内の掃除は終わったわ!」

 

 

響「雷、声が大きいよ」

 

 

雷「ん、響達はなにしているの?」

 

 

響「ただ舟のうえでぼうっとうたた寝をね」

 

 

雷「おじいちゃんの日向ぼっこみたいな感じ? 年寄臭いわねえ」

 

 

雷「まあいいわ。ていっ!」ダイブ

 

 

提督「危ないです」

 

 

雷「このくらい大丈夫よ。ここで仮眠取るなら、膝を貸したげる」

 

 

雷「それともお話でもする?」

 

 

提督「そういえば雷さんはなぜここに。確か」

 

 

雷「そうね。電がここに来る前は軍の研究施設で電の側にいたわ。それからは元帥さんに許可をもらって色々な鎮守府をはしごしていたんだけど」

 

 

雷「やっぱり司令官なだけあってみんなしっかりしてるのよね」シュン

 

 

提督「なぜ落ち込むのです」

 

 

雷「あまり頼ってもらえなくて……」

 

 

雷「こここそ私が必要な鎮守府なのよ。合同演習を見た限り、司令官も艦娘もまだまだだからね」キラキラ

 

 

提督「合同演習……1ヶ月前ですか」

 

 

雷「1ヶ月で事前に色々と調べることがあったのよ。ここにいる皆のことも知っておかなきゃダメでしょ?」

 

 

雷「この鎮守府に来ることになった経緯から、解体されてからなにをしていたとか、趣味嗜好とか色々よ」

 

 

提督「雷さんにストーカー染みた1面が。雷艤装の適性率は60%くらい?」

 

 

雷「確かそのくらいね」

 

 

響「善意は100%だよ」

 

 

提督「ええ……この笑顔、そのようですね」

 

 

提督「雷さんは誰かの力になりたいのですか?」

 

 

雷「そうだけど、なにかおかしいかしら?」

 

 

提督「丙少将のところに出向くのはどうでしょう」

 

 

不知火「そういえば」

 

 

不知火「5日後に連合艦隊で中枢棲姫勢力を叩くのですが、確かに人手は欲しい」

 

 

不知火「さすがにこの訳あり鎮守府に前線に出てもらうほど切羽詰まってはいないのですが」

 

 

提督「勝てそうですか?」

 

 

不知火「当然です」



響「あなたは?」



提督「では、敗ける、で」



3

 

 

響「……?」

 

 

不知火「響、とりあえずこの人の話を聞いてみましょう。説明してくれますね?」

 

 

提督「ここ、支援施設になる前は鎮守府、それもかなり黒いことをしていたみたいです」

 

 

雷「……有名よ。その被害者が電なのよね……」

 

 

提督「彼女が受けた実験の目的は」


 

雷「深海棲艦の力を利用した艦娘の強化、だったっけ?」 


 

雷「ここの鎮守府から、その資料が差し押さえされてるもの。電の御世話をするに当たっていくつか読ませてもらったし」

 

 

提督「深海棲艦の力を利用した艦娘の人体実験……それが成功したとしてどうなるというのです」

 

 

提督「軍が人体実験をしてぷらずまさんみたいな兵士を増やそうとするわけがありません」

 

 

提督「本当に艦娘の強化のためだけならば、ただの馬鹿です」

 

 

響「そんな真似をする輩だし、馬鹿だったというオチもあり得ないかな」


 

提督「……情報の隠蔽具合からしてかなり頭の回る人だったと思われます」


 

提督「少なくともぷらずまさんに電の仮面をかぶせて、指示に従わせることができるレベルです」

 

 

不知火「電さんはあなたになんといったのです。強化目的ではない、と?」

 

 

提督「いえ、ぷらずまさんは『多分、強化目的』と」

 

 

提督(……まあ、そこらは自分のなかで答え出てますけど……)



提督「ぷらずまさんはですね、『眠らされて起きたらいきなりこんな風にされたので過程は知りませんし、目的も聞いても答えてくれませんでした。その話をすると、酷いこと、されます。脅しに屈して、司令官の指示に従っていくつか極秘任務を遂行しましたが、作成していた機密と思われる文書は文字から作り始めたとしか思えない暗号で、内容は分からなかった』だ、そうです」

 

 

不知火「……、……」

 

 

提督「合同演習時に丙少将や元帥とお話していて彼等が本当に」

 

 

提督「ぷらずまさんを『心に傷を負って運用しづらい重要かつ巨大な戦力』として認識しており、『なぜあの形で強化する必要があったのか』を気にしている風ではありませんでした」

 

 

響「あの形でしか強化は無理だった。そして戦争を終わらせるための強化じゃないのかい?」

 

 

提督(……この子、鋭い……)



不知火「いいえ、響さん。そのための強化ではおかしい。この司令がいった通り、人間に対してこんな倫理に反する強化が、軍に取り入れられるわけがありません」

 


提督「……加えていえばぷらずまさんは確かに恐ろしいほど強いですが、この戦争を終わらせるほどの戦闘能力はありません」

 

 

提督「自覚しているから、司令官やお友達を求めていたんでしょう」

 

 

提督「…………ま」

 

 

提督「恐らくぷらずまさんは色々と隠していますし、彼女が知らないこともあの鎮守府にはあったのだ、と……」

 

 

提督「彼女は被害者であり、矛盾の生じない主張を用意すればすんなりと通る立場です」

 

 

提督「大淀さんに頼って、自分なりにもここの鎮守府のことを調べました」

 

 

提督「ぷらずまさん、阿武隈さん、卯月さんのいた頃の鎮守府は、謎が多すぎましたから」

 

 

提督「そこに所属していた艦娘には、全員に事情聴取されていますね。誰もが電さんの身体に気づいていなかった」

 

 

提督「しかし、彼女達の証言でひっかかたところが」

 

 

提督「深海棲艦艤装を宿す。天使と名高い電さんがあの鬼畜艦ぷらずまさんになるほどに激しい精神影響を踏まえまして」

 

 

提督「『1度だけ、性格が二重人格みたいに急に変わったから、気になった子がいる』という証言がかなり気になりました」

 

 

不知火「それはまさか……」

 

 

提督「ぷらずまさんの前に、その強化を施されている被害者がいる可能性があります」

 

 

響「性格が急変したのは?」

 

 

提督「白露型五番艦春雨」 

 

 

提督「大人しくて、引っ込み思案で、純真、がんばり屋さんなイメージの彼女ですが」

 

 

響「確かに春雨さんはそんな感じだ」


 

提督「ですよね。そんな印象の彼女が、当時の天使仮面被っていた電(ぷらずま)さんに対して」

 







 


校門と肛門をかけまして地獄へと糞を撒き散らしながらの門出をさせてやるゾ☆





 

提督「と」

 

 

響「うん、間違いなさそうだね」

 

 

不知火「司令、そいつは春雨の形をしたなにかです。実験されておかしくなってしまったんです」

 

 

提督「ですが、彼女は鹿島艦隊の悲劇で轟沈しています。唯一の生存者である鹿島さんの証言と」

 

 

提督「艤装は失われないと、妖精さんが新しく作ってくれないシステム」

 

 

提督「春雨艤装は新しく妖精さんが作って軍に保管できたことから、鹿島さんの証言は真実であるとされ、春雨さんも他の4隻も殉職とされています」

 

 

提督「まあ……艦娘が深海棲艦に変わる根拠のひとつが示す通り」

 

 

提督「死体は見つかっていませんけどね……」

 

 

提督「………」

 

 

響「電に聞いた?」

 

 

提督「『残念ながら知らねーのです』と」

 

 

提督「喋り疲れたのでここらで……」

 

 

不知火「負ける、という点への繋がりは?」

 

 

提督「……」

 

 

提督「推測に推測を重ねているので、あまり真に受けないで欲しいのですが……」

 

 

提督「今、対峙している中枢棲姫勢力を調べてください。こいつらの勢力は、恐らく姫や鬼には理性があるとされているとしても、どちらかといえば深海棲艦ではなく、こちらと同じレベルで物を考えて動いている、かと」

 

 

不知火「確かに、丙さんはここまで頭の回る深海棲艦とは初めて対峙する、と」

 

 

提督「ですので、向こうが使う作戦として司令官の暗殺は、手段として多いにありです。特に丙少将のように、命を大事に、の司令官は艦娘から人気ありますから。丙少将暗殺のその効果の程はあなた達のほうが自分より明確に分かるはずです」

 


響「まさか、そこまで……」

 

 

提督「まあ、でも今更その方法を取るのなら恐らく……中枢棲姫勢力は……」

 

 

提督「……」

 

 

響「司令官の暗殺だなんて、過去に例はない、けど」

 

 

提督「あります」

 

 

提督「大和を殉職させてしまったあの撤退作戦です。准将が誰かに殺された時、まるで照らし合わせような、タイミング。軍の規則通りに補佐官していた自分が指揮を担いました」

 

 

提督「加えていえば、ギリギリまで大規模深海棲艦隊など、探知できなかったんですよ」

 

 

提督「本当に急に現れたとしか……」

 

 

提督「あの撤退作戦も謎が多いですが……」

 

 

提督「まあ、その時戦ったのは今向かい合っている中枢棲姫勢力とは別物ですね」

 

 

提督「この戦いにはまだ我々が知らないことがあるのは間違いないかと」

 

 

提督「軍もぷらずまさんを発見した時から動いているようですし」

 

 

不知火「不知火達の鎮守府は今、厳戒態勢です。任務で海に出る艦娘ならともかく、鎮守府に篭りきりの丙さんを闇討ちできるはずがない」

 

 

響「……いや、電なら、通すね。侵入自体は不可能ではない、かな」

 

 

響「例えば、春雨、とかね」

 

 

不知火「もしも、電さんのような存在がまだいたら。もしも、中枢棲姫勢力にいたら……?」

 

 

響「あくまで推測に推測。考えすぎな点もあるけど……」

 

 

提督「このお話をしたのは」


 

提督「想定外の事態になって、こちらの戦力が駆り出される恐れがあるからです。自分には別に遂行したい仕事があるので……」

 

 

提督「まあ、仮にぷらずまさんみたいな存在が向こうに組していても、不思議ではありません」

 

 

提督「なぜならば」

 

 

提督「我々が敗北しても」

 

 

提督「戦争は終わるのですから」

 

 

 

 

不知火・響「……!」

 

 

提督「まあ、忘れてください。自分の考えすぎです。悪い癖なんですよ。不愉快な思いをさせて申し訳ありません」

 

 

響「いや、それだ」

 

 

響「さっき、丙さんの鎮守府のほうに向かっていた妙な駆逐棲姫、しかも単体と出くわしてる。方向転換して中枢棲姫勢力のほうに行ったけど」

 


響「暁と私がどうしてか、電と似たものを感じたんだ」

 

 

提督「……幸運な出会いがあったようですね」


 

提督「丙少将に連絡しますね。自分の邪推でも、あなたの言葉ならお忙しいなかでも耳を傾けてくれそうです」

 

 

雷「ごめん! よく分からないわ!」

 

 

提督「雷さん、あなたの力を頼りにしている場所があります。丙少将のところです。お行きなさい」

 

 

雷「うん、分かった!」

 

 

雷「って流れを期待されているのが分かって正直、腹が立つわね」

 

 

雷「向こうは大丈夫だと思うわよ?」

 

 

提督「……?」

 

 

雷「私、ここに来る前は乙さんのところに世話になっていたんだけど、あの人、嫌な予感がするから丙さんのところに行くーって」

 

 

雷「あの人あんな小さいなりだけど、提督のなかで深海棲艦を最も多く沈めてる超エリートだし、第1鉢巻き艦隊の扶桑山城姉妹と2航戦コンビも連れていっているから」

 

 

雷「加えて丙少将の鎮守府。あの人達がいればなにも心配要らないわ」

 

 

雷「そうでしょう?」

 

 

提督「……」

 


雷「それよりあなたのほうが私を必要としていると見たわ。この雷様にもっと頼るべきね」キラキラ


 

雷「ダメダメだもの」キラキラ

 

 

提督「っく、天敵……」

 

 

【10ワ●:中枢棲姫勢力】

 

 

中枢棲姫「なかなかしつこいですね」

 

 

リコリス棲姫「こちらは別に倒そうだなんて思ってないのに」

 


水母棲姫「あいつを差し向けたんだし、大丈夫なんじゃないかしら」

 

 

中枢棲姫「……どうでしょうね。とりあえずやるべきことが他に出来たのは確かです」

 

 

リコリス棲姫「あの子にしか出来ないとはいえ、レッちゃん&ネッちゃん寄りだから、成功させてくれるかは微妙なところね……」

 

 

中枢棲姫「こちらはこちらでやりたいことがあります。丙少将のせいで貴重な時間をかなり浪費してしまいました」 

 

 

中枢棲姫「艦娘も提督も傷つけたくはないのですが、致し方ありません」

 

 

中枢棲姫「襲撃を指揮が取ることの出来ない怪我、で収めてくれるといいのですが」

 

 

リコリス棲姫「今まで大人しく活動していたのに。やはり深海棲艦である限り、避けられないことの1つではあるのよね……」

 

 

水母棲姫「そうねえ。ところで」

 

 

水母棲姫「あなた達はなにをしているのかしら」

 

 

レ級・ネ級「ガオー!」

 

 

レ級「ヤバイって! この図鑑のライオンって生き物めっちゃかっこいいぞ!」キラキラ

 

 

ネ級「百獣の、王……!」キラキラ

 

 

レ級・ネ級「ガオー!」

 

 

リコリス棲姫「あら、本当だわ。キュート、ストロング、エレガント。ペットにしたいわね」

 

 

レ級・ネ級・リコリス「ガオー!」

 

 

中枢棲姫「……あの子から連絡は」

 

 

レ級「あー、丙少将の鎮守府向かってるってさ」

 

 

レ級「あいつ陸でも深海棲艦ってばれないからいいよなー」

 

 

レ級「暗殺任務を終えたら、そのまま劇場版の艦これ観に行くってさ」

 

 

レ級「どうせ僕ら深海棲艦側が敗けるんだろ。観る価値ないよ」

 

 

ネ級「なにそのクソ映画……!」

 

 

レ級「あ、そういえばチューキさん。あの報告はどうするの?」

 

 

レ級「かなーり遠目だから分かんないけど、カ級? を捕まえてたやつらがいたとかいう」

 

 

中枢棲姫「そのせいで予定が狂ってしまいました。露骨にこちらがあの鎮守府に向かう、と知らせざるを得ない展開、です」



中枢棲姫「……潜水型深海棲艦、を鹵獲」

 

 

レ級「僕らと情報交換してた例の鎮守府のとこだよね。滅ぼしたけど、なんか最近また鎮守府として正式に復興したとか。これはセンキ婆から聞いたんだけど」

 

 

レ級「あのぷらずまのやつが認めた司令官がいるってことだなー」

 

 

中枢棲姫「あの電が、認めたのです」

 

 

中枢棲姫「…………やはり」

 

 

リコリス棲姫「電ちゃんかー。懐かしいわね。あの子に少し厳しい真実を教えちゃったから、落ち込んでいないか心配だわ」

 

 

リコリス棲姫「あの時、泣かせちゃったもの……」

 

 

中枢棲姫「…………」

 

 

中枢棲姫「ダメです。やはりどうしてもその提督が深海妖精の存在に行き着いた可能性が否めません」

 

 

リコリス棲姫「用心深いわねえ」

 

 

リコリス棲姫「どうするの。行き着けば私達と目的が同じになるでしょうから協力関係になり得るわ」

 

 

水母棲姫「そうね。向こうサイドとの協力は必須、ね。私達だけでは得られる情報があまりにも少なすぎるし」

 

 

中枢棲姫「現状、私達の得られる情報では難しいですからね……」

 

 

リコリス棲姫「私達、結局は深海棲艦」

 

 

リコリス棲姫「この世界に私達がいて赦される場所はないわ。人間が、この星を独占しているもの」

 

 

リコリス棲姫「ひどくて、ずるいわ。私達だってこの星で産まれた命なのに、存在することすら赦してはもらえないなんて」

 

 

水母棲姫「私達は共存の可能性も持ち得るけど、他の深海棲艦は皆殺しにされるわねー」

 

 

水母棲姫「目的を達成しても、中枢棲姫の読みでは私達は全滅するし。まあ、私は別にいいけど」

 

 

リコリス棲姫「ここは、私達の家族である深海棲艦みんなの命を守ってもいいのではないかしら」

 

 

リコリス棲姫「負けなければ生きていられる。だからこの時にしおりを挟むのよ。それもまた悪くはない判断だと思わない?」



レ級「なに、そいつ殺すの?」

 

 

ネ級「ぷらずまのやつ、敵に回っちゃう……!」

 

 

中枢棲姫「すでに丙少将襲撃後にその鎮守府の提督を殺せ、と伝えてあります。そもそもその報告がなければ丙少将の闇討ちはしなかったものの……」

 

 

中枢棲姫「厳戒態勢に入ってからの襲撃では、こちらの意図に感づかれる危険性が高くなります」



中枢棲姫「決戦開始前の襲撃は、効果的。そのように解釈してくれたら、助かるのですが……将校クラスとなると期待できませんね……」



リコリス棲姫「あの子、やり遂げられるかしらね」

 

 

中枢棲姫「いえ、あの子が電の現提督の暗殺に成功するかしないかは差して重要ではありません」

 

 

中枢棲姫「『あの子に私達を裏切らせる』」

 

 

中枢棲姫「それが出来れば、この戦いの真実を予想出来ていると判断します」

 

 

リコリス棲姫「そうね。あの子はあちら側にいたほうがいいわ。心はあちら側だもの」



水母棲姫「ああ……だからあの子に殺す前にお喋りに興じろ、と命令したのね……」



中枢棲姫「……なので、これでその提督が生き残れば、協力を考えます」


 

中枢棲姫「深海妖精を発見した場合、次に試みるのは私達への接触、です」

 

 

中枢棲姫「が、どの程度、利用できる提督であるか、を判断する時間を設けたいと思います」

 

 

中枢棲姫「この戦いはある程度の交戦後に撤退、そしてまたその鎮守府を誘い出せる位置に陣取ります」

 

 

中枢棲姫「その戦いでは壊の起きていない深海棲艦flagship以下が非攻撃対象とする電を使って、いち早く我々との交渉をはかると思われます」

 

 

中枢棲姫「…………戦艦棲姫(センキ)には申し訳ないですが……仕方、ありません」

 

 

中枢棲姫「ネっちゃんは戦艦棲姫に伝えてください。丙少将の布陣に隙が出来ればこの戦場を離れ、そちらの鎮守府のほうを攻めるようにと」

 

 

ネ級「うん。センキ婆のとこ、行ってくる……!」

 

 

【11ワ●: 丙少将鎮守府にて】

 

 

丙少将「……乙さんがわざわざ応援に駆けつけてくれたほどの嫌な予感とは、不知火達の報告のことですかね?」

 

 

乙中将「いやー、僕のはただの勘だから具体的にはよく分かんないけど、言われてみればその可能性もあるね。あるだけで、そういうの考えたらキリがないけど」

 

 

乙中将「要するにあの電ちゃんと同じような深海棲艦が中枢棲姫勢力にいるかもって彼は予想しているわけだ」

 

 

乙中将「用心したほうがいいんじゃないかな」

 

 

丙少将「艦娘として忍び込むとしても、所属鎮守府の違う艦娘がいようものなら報告が来るはずです」

 

 

丙少将「輸送船の荷物もチェックは信頼できる者が仲介して運びこんでおりますし厳戒態勢の今、業者が鎮守府内に入る時の厳重なチェックを潜り抜けてここまで辿り着くのは至難の技です」

 

 

乙中将「あ、じゃあさ、電ちゃんの逆ならどう?」


 

丙少将「深海棲艦が艦娘に化けると?」

 

 

乙中将「丙ちゃんとこの艦娘に化けるとか。深海棲艦サイドがそこら辺ボロが出ないようにしっかりやってくるなら面白いよね」

 

 

丙少将「……気を付けておきますが」

 

 

飛龍「……」トポトポ

 

 

乙中将「ところでこのお茶、美味しいね」

 

 

丙少将「うちの艦娘の子の親御さんからご厚意で贈ってくださったものです。これがなかなか」

 

 

飛龍「蒼龍、飲んでみて」

 

 

蒼龍「はい」ゴクリ

 

 

蒼龍「月見酒に合いそうです」

 

 

乙中将「もらうよ。あ、本当だ美味しいね」

 

 

丙少将「茶葉になにを注いたのです?」

 

 

飛龍「焼酎です。茶葉酒ですよ」

 

 

蒼龍「うん、早く夜になりませんかね」

 

 

乙中将「丙さん、追加の焼酎ある?」

 

 

丙少将「俺は今、大仕事の最中なんですが! そもそも乙さん達は応援に来たんじゃないんですかねえ!?」


 

飛龍「ちょっと」

 

 

蒼龍「なにをおっしゃっているのか」

  

 

乙中将「分からないよ」

 

 

乙中将「仕事前って気付けに一杯やるもんじゃないの?」

 

 

丙少将「あなた達は本当に……」

 

 

伊勢「丙さん、おられますか?」

 

 

丙少将「伊勢か。要件はなんだ」

 

 

伊勢「判断に困る事態になりまして」

 

 

伊勢「とりあえず頼まれた伝言と状況を伝えまして、ご指示を仰ごうかと」

 

 

丙少将「伝言? 誰からだ?」

 

 

伊勢「『駆逐棲姫』と名乗る方から」

 

 

丙少将「」

 

 

乙中将「あっはっは、ほら、やっぱり面白いことが起きたー」

 

 

乙中将「伊勢ちゃん、その子なんて?」

 

 

伊勢「『深海棲艦側の作戦により派遣されました駆逐棲姫と申します。丙少将を暗殺しに来たのですが、思ったより警備がすごくてくぐり抜けられません。なんとか中に入れてはもらえないでしょうか』」

 

 

丙少将「ポンコツかよ! そこは自分でなんとかしなきゃダメなところだろ! そいつ暗殺とか試みちゃダメなやつだろ!」

 

 

伊勢「『だるいので、早く帰りたいです』と」

 

 

丙少将「海の藻屑と帰してやれ!」

 

 

乙中将「まあ、落ち着いて」

 

 

乙中将「その子は今、どうなってるの?」

 

 

伊勢「日向と私で取り押さえ、身柄を拘束してあります」

 

 

伊勢「『駆逐棲姫』と名乗りましたが、私達の知る姿ではありません」

 

 

丙少将「どんな姿だ?」

 

 

伊勢「青みがかかった黒髪のサイドポニーで、可愛らしい少女、といった風です。取り押さえる時もただの少女のように非力でなされるがまま。艤装は見当たりません」

 

 

伊勢「そもそも深海棲艦に艤装の取り外しが出来ると聞いたことがないですし。それに、どちらかというと艦娘、のように見えますね」

 

 

伊勢「白露型の制服を来ていましたから」

 

 

伊勢「その、判断に困りまして、いかが致しましょうか?」

 

 

乙中将「行かないなら僕が行くけど」

 

 

丙少将「伊勢、その少女の一切の抵抗は出来なくしてあるのか?」

 

 

伊勢「しているつもりです。いかんせん相手が未知数、だから」

 

 

丙少将「……、……」

 

 

丙少将「出向こう。本当に深海棲艦だというのなら、意思疏通が可能ということだ。大きな意味がある」

 


伊勢「で、でも」


 

丙少将「電と同じであるというのなら入り込ませた時点で、指名された俺が出ていかなければこの鎮守府が吹き飛ぶまである」

 


丙少将「かといって、殺すには惜しすぎる……」



伊勢「……すみません」



丙少将「まあ、知能があるのならやりようはある」


 

伊勢「……了解しました」

 

 

乙中将「僕も一緒していいかな」

 

 

丙少将「構いませんが……」

 

 

乙中将「気を付けなよー。電ちゃんと同じなら爆発物だから」

 

 

乙中将「かなーり面白そうな匂いするから会いにいくのは、あえて止めないけどね」

 


乙中将「……このフォーク持ってこ」

 


2


 

丙少将「日向」

 

 

日向「腕と足は折ってある」

 

 

日向「この女が深海棲艦と想定すると性能は未知数だ。こちらの提督の身の保全が最優先事項」

 

 

??「痛いっスー……」

 

 

??「堪えられないほどではないけどー……」

 

 

丙少将「この子、は…………」

 

 

乙中将「へー……駆逐棲姫自体も似てるけど、この子はただの色違い。似すぎてる、ね」

 

 

乙中将「白露型五番艦の春雨ちゃんに」

 

 

丙少将「あの子は死んだはずだ。艤装も妖精が新たに建造し、保管されているはず……」

 

 

丙少将「深海棲艦なんだな?」

 

 

??「出てきてくれて正解だー。会ってくれなきゃ日向と伊勢は木端微塵にしてたゾ☆」

 

 

丙少将「……何者だ。電の同種か?」

 


??「電……あー、ぷらずまー…………」



??「吐き気催す名前出すなコラ。犬猿なんだよ、あの鬼畜艦(クソガキ)とは……」

 


??「しかーし!」



??「やっときたか待ってましたその言葉!よくぞ聞いてくれました褒めてやる!」

 

 

??「白露型五番艦春雨は過去の名……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

わるさめ「マジカル駆逐棲姫わるさめちゃんだゾ☆」キャピッ


 

【●ワ●二章終☆】


後書き

2章終わりです。
ここまで読んでくれてありがとう。


・3章のお話
【1ワ●:鎮守府の怖いうわさ!わるさめちゃんが来た!】

【2ワ●:中枢棲姫勢力VS乙丙連合艦隊】

【3ワ●:わるさめちゃんVS提督 戦艦棲姫空母棲姫連合艦隊VS龍驤初霜連合艦隊】

【4ワ●:跳躍する時代】

【●ω●:春雨ちゃんじゃ、濡れて行こう】

【●ω●:わるさめちゃんじゃ 濡れて行く!】

【5ワ●:解体不可能】

【6ワ●:甲の勲章? なにそれ美味しいの?】


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1: SS好きの名無しさん 2016-12-20 15:41:11 ID: lGxt7se8

あかん、面白い!!
続き楽しみにしてます!
作者さん応援してまっせ。

2: 西日の友人 2016-12-29 01:46:48 ID: VAB8xVLa

<1ありがとうございます。そのような真っ直ぐな応援……私の邪が浄化されていきます。ヒャッハー


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1: SS好きの名無しさん 2016-12-20 15:41:17 ID: lGxt7se8

直近の艦これSSでは最も完成されたシリーズになる予感。
艦これSSはこれを見ろ!!


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