2016-12-26 22:48:14 更新

概要


1度は野球を諦めた。
もう二度としないと思っていた。
しかし、河川敷で出会った1人の女の子に希望をもらい、また野球をやる決意を見出す。
個性豊かで一癖ある愉快な部員達と甲子園を目指す物語。

アテンションプリーズ!

※このssを見て、気分を害される、また、腹が立ったとしても、こちらは一切責任を負いません。

※駄文です。

※設定ガバガバです。

※ブックマークされなくても続きは載せますが、ブックマークされた方が早く載せます。

それでも良い方のみお進みください。


前書き

実に6~7ヵ月は放置していた気が…。
どうも、うp主です。
もうほとんどあの頃に見ていた人も「誰だコイツ?」状態でしょうね。
まあ見てくれる人や応援してくれる人なんて居ないんですけどね…(泣)


この物語はパワフル高校野球部日誌〜GWは何をしようか…編 後編〜の続きです。



紙の無駄使い




in部活中


パワプロ「ふぃー。ランニングしゅーりょー。」


はるか「お疲れ様です、パワプロさん。はい。タオルです。」スッ


パワプロ「あ、ありがとう七瀬さん。」受け取る


うーん、いい香りがするなーこのタオル。


パワプロ「ところでもうマネージャーとしての仕事は慣れた?」


はるか「はい!まだまだ未熟な面もありますけど、先輩方が教えてくれて助かってます!」


とても元気いっぱいだ。良かった、嫌がらせとかなくて。


パワプロ「良かった。先輩達も仕事してくれて。」


ほっと胸をなでおろした瞬間。彼女は俺に現実を叩き込んできた。


はるか「ところでパワプロさん。テスト勉強は進んでいますか?」


パワプロ「…。」



パワポケ9「おし、全員集合!」


ザッ


監督は一呼吸入れてから話し始めた。


パワポケ9「今日の練習はここまで!明日からテスト期間に入るからしっかり勉強しろよ!」


ベンキョウカーイヤデヤンスーオレプロイクカラベンキョウナンテシナクテイイモン


はい、どうもみなさんこんにちは。パワプロです。


今は6月の終わり、期末テストがやって参りました。


このパワフル高校は中間テストがないので、いきなり期末テストです。


パワポケ9「因みに平均点取れなかった奴は地獄の練習メニューが待ってるぞ?」


全員「えっ。」


ほぼ全員の顔の色が変わっていった。


矢部「ま、マジでやんすか?」


汗をダラダラ流すやつもいれば、


田中「へ、平均点だって?」


思い切り驚くやつもいれば、


パワプロ「かっ、監督!赤点の間違いでは…。」


聞き間違いだと願うやつもいる。


パワポケ9「いいや、平均点だ。」


しかし、現実は非情であった。


「終わった…。」


「さらば…我が友よ…。」


「もうダメだァ、おしまいだァ…。」


パワポケ9「俺のモットーは文武両道だからな。勉強も出来なきゃ将来困るぞ。では解散!」


ザワザワザワザワ


「お、俺、スポーツ推薦で入ったから勉強しなくていいと思ってたのに…。」


「平均点とか最後にとったの何時だろ…。」


みんなが絶望しているのを他所に、明らかに頭の良さそうなアイツが声をかけてきた。


友沢「パワプロは大丈夫なのか?」


パワプロ「」


友沢「返事がない。ただのしかばねのようだ。」


あおい「え!パワプロ君ヤバイの!?」ガバッ


どこから来たんだあおい氏。


パワプロ「テストなんて紙の無駄遣いだろ…ガチで何のためにやるんだよ…。」


矢部「オイラもでやんす。ガンダーロボのアニメみたいでやんす…。」


奥井「寝たいぜー。」


友沢「まあ2週間くらいの辛抱だ。どうせならみんなで勉強するか!」


2週間って長いんだぞ?


あおい「あ、それいいねー!勉強合宿みたいな?」


パワプロ「んな事言ったって、誰ん家に泊まるんだよ。」


友沢「…。」ジーーッ


あおい「…。」ジーーッ


矢部「…。」ジーーッ


田中「…。」ジーーッ


奥井「…。」ジーーッ


田中山「じゃあここは僕の家でぐふっ」


はるか「もちろんパワプロさんの家です!」グッ


あ、田中山が潰れた。可哀想に。ってか何で潰されたんだよ。遠いからか?


パワプロ「って何がもちろんだよ!俺ん家団地で一人暮らしなんだぞ!そこまで広くねえよ!」


友沢「俺の家には兄弟がいるし。」


奥井「オイラの家もだぜー。」


矢部「オイラの家は足の踏み場がないでやんすし。」


はるか「私の家も結構遠いですし…。」


田中「俺ん家なんて電車通いだぞ。」


あおい「ぼ、ボクの家は自転車通いだし…。」


みんなの家それぞれに事情がありそうだけど、明らかにおかしいのがあったよな。


パワプロ「こうなったら、田中と奥井と友沢以外でジャンケンだ!」


矢部「絶対に負けられないでやんす!」



そして…



あおい「やった!」


矢部「やったでやんす!」


はるか「良かったです〜。」


パワプロ「」


友沢「1人負けって、お前天才かよ。」


奥井「相当運が悪いなー。」


田中山「僕の家でも良かったのに。」


矢部「じゃあ早速荷物をまとめてからパワプロくんの家に集合でやんす!」


奥井「ちょっと待ったー。オイラ、パワプロの家知らないぜー。」


パワプロ「住所教えてやるからGoo〇leマップだのなんだの使って来い。」スッスッ


奥井「お、サンキューだぜー。」


はるか「わ、私もよろしくお願いします!」


田中「俺も!」


田中山「僕もー。」


パワプロ「じゃあ俺は家の片付けでもしとこうかな…。」


友沢「見られちゃいけないものとかな。」


パワプロ「んなもんねぇよ!」


矢部「パワプロ君。高校生でそれはそれで問題でやんす。」


はるか「…?どういうことですか?」


パワプロ「知らない方が身のためだよ…。」



ピンポーン!


パワプロ「はーい。入ってー。」


友沢「お邪魔します。」


あおい「おじゃましまーす!」


はるか「おじゃましまーす。」


まずはじめに3人か…。他はまだかな。


パワプロ「じゃあ適当に机用意しといたからやっちゃって。」


4人はリビングにある机で勉強を始めた。


友沢「さて、じゃあパワプロ。田中。お前らのニガテ科目はなんだ。」


パワプロ「古文と日本史が…。あと物理も。」


田中「俺全部…。」


友沢は呆れた様子で、


友沢「じゃあ俺はパワプロに日本史を教える。早川は何かできるか?」


と言った。


あおい「うん!物理結構得意だよ!」


早川は物理が得意なようだ。そりゃそうだな。授業中あんなに元気なの物理と数学だけだもんな。思いっきり理系やん。


友沢「じゃあパワプロ。歴史のどのあたりが分からないのか教えてくれ。」


パワプロ「えーっと…邪馬台国とかのとこが…。」


あおい「田中君!物理、何が分からないの?」


田中「何が分からないのかすら分かりません…。」


こんな調子で勉強合宿は始まりましたとさ。



2時間後…


矢部「飯はどうするんでやんすか?」カリカリ…


パワプロ「みんなで作るんだろ。ローテーションかなんかで。」


俺、友沢、奥井、早川、田中、矢部君、七瀬さん、田中山。8人いるしね。


パワプロ「じゃあ1人で作れるやつは固めないようにしよう。一人で作れるのは?俺は作れるけど。」


友沢「俺も1人でも作れる。」


矢部「オイラもでやんす!」


え?


田中「矢部、見栄はらなくていいぞ。」


矢部「見栄なんて張ってないでやんす!」


あおい「ぼ、ボク一人で作れないから…パワプロ君…お願い!」パン!


女の子が手を合わせてお願いしてくるとこなんて男なら萌えるだろ。


パワプロ「全然いいよ。」


田中山「僕も作れないから友沢君お願いー。」


友沢「いいぞ。」


あとは七瀬さんと田中と奥井と矢部君か…。


田中「ほ、本当に矢部一人で作れるのか?」


矢部「オイラを舐めないで欲しいでやんす!」


田中「じゃあはるかちゃん。作れる?」


はるか「い、いえ…自信が無いです…。」


奥井「じゃあオイラが田中と組むから矢部ははるかちゃんと組みなよー。」


矢部「いいんでやんすか!?」


はるか「は、はい。私はいいですよ?」


矢部(ここははるかちゃんにオイラのカッコいいところを見せるチャンスでやんす!)


とか考えてんだろうなー…。


パワプロ「で、組分けがこうなったと…。」


俺と早川、友沢と田中山、矢部君と七瀬さん、奥井と田中と…。


矢部「じゃあ今日は誰が担当するんでやんすか?」


矢部君…そんなに作りたいのか…すっごいウズウズしてるぞ…。


パワプロ「じゃあ矢部君とはるかちゃん作ってみてよ。」


矢部「ガッテンでやんす!買い物行ってくるでやんす!」ガチャッ


はるか「あ、待ってください!矢部さん!」テッテッ


パワプロ「矢部君待った!金持ってけ!」ガチャッ


矢部君が作ることに少々疑問を持っている人達。


友沢「矢部…何を作るつもりなんだ…。」


田中「不安だ…不安すぎる…。」


田中山「胃腸薬を買ってこよー。」


奥井「失礼極まりないぜー。」


友沢「ま、俺らは勉強してるか。パワプロ。いい加減文化圏の形成の祭りものの北九州=銅鉾、銅戈の祭祀、瀬戸内=平形銅剣の祭祀、畿内=銅鐸の祭祀くらい覚えてくれ。」


パワプロ「書けないし読めない。」



矢部「ただいまーでやんす!」


はるか「ただいまですー!」


パワプロ「お、帰ってきた…ってん?」


その瞬間、俺は自分の目を疑った。


矢部君はとても一人で持ちきれる量とは思えないほどの食材を一人で買ってきた。


矢部「さぁ!早速作るでやんす!キッチン借りるでやんす!」


田中山「凄い量だー。」


奥井「何が出来るんだぜー?」


友沢「食えるものが出てくると信じよう…。」


まあ8人分だしね。カレーかなんかかな?



矢部「さあ!始めていくでやんすよ!」


はるか「はい!ところで何を作るんですか?」


矢部「無難に豚肉の生姜焼きと春雨サラダとご飯と茄子の味噌汁でやんす!」


はるか「思ってたより普通ですね…。」


矢部「何を期待してたでやんすか?」


はるか「物凄い創作料理でも作るのかと…。」


矢部「オイラも作ろうと思ったでやんすが、下手に失敗はできんでやんすからね。」


はるか(作れるんですか…。)


矢部「じゃあまずは野菜を洗うでやんす!胡瓜、キャベツ、茄子、玉ねぎを洗うでやんす。」ジャー


はるか「次は?」


矢部「米を洗っておくでやんす!しばらく水に付けておくでやんすよ。」


はるか「はい!」ジャージャカジャカ


矢部「オイラはその間に野菜を切っておくでやんす。」トントントン


はるか「て、手際いいですね…。」ジャカジャカ


矢部「オイラの家はよく親がいないってことがあったんでやんす。その時に身についたんでやんすかね。」トントントン


矢部「よし、玉ねぎも皮を剥いて切るでやんす!」ビリビリットントン…


矢部「目にしみるでやんす…。」


はるか「どこかで目にしみないようにしておく方法とかあったはずなんですが…。」


矢部「切り方なら分からないでやんすが、お湯につけておくとかのパターンは玉ねぎの香りが落ちるから極力やらないでやんす。よし、切り終えたでやんす!」


矢部「次に春雨を茹でておくでやんす。」カチッ


矢部「袋に入っていた春雨を入れて…。」トポッ


矢部「ふやけるまで待つでやんす。そろそろ米を炊いてくれでやんす。」


はるか「はい!」ピッ


矢部「次に卵を焼いて切るでやんす!」小さめのフライパンドン!


矢部「油を引いておくでやんす。」ツツー


はるか「それを使うんですか?」


矢部「小さめでも十分でやんすからね。」コンコンパカッボールニポン


はるか「片手で割るんですか…。」


矢部「これくらい余裕でやんす。」チャカチャカジュワーッ


矢部「卵はすぐに焼けるから焦げないように注意でやんす!」サッサッ


矢部「卵は千切りにして置いとくでやんす。」


矢部「胡瓜と切ったハムと卵とオリーブオイル少しとお酢と塩コショウをボウルに入れるでやんす!」ドパー


はるか「生姜焼きはまだですか?」


矢部「あと少しでやんすよ。ここに茹でておいた春雨を締めてから入れて混ぜるでやんす。」


矢部「春雨サラダ完成でやんす!」テーレッテレー


はるか「おおーー。」パチパチ


矢部「春雨サラダは置いといて、豚肉の生姜焼きを作るでやんす!」


矢部「豚肉を焼く前に、タレを作っておくでやんす。生姜と醤油と砂糖と塩を混ぜ合わせるでやんす。塩はほとんどお好みで状態でやんすね。」


はるか「砂糖も少なめですよね!」


矢部「分かってるでやんすね!生姜の香りを殺さないように気を配って混ぜていくでやんす。」チャカチャカ


矢部「タレは完成でやんす!次に肉を焼くでやんす!」


矢部「フライパンに油を引いて、先に玉ねぎを炒めるでやんす。」サッサッジュワーッ


はるか「はねて痛いですー。」


矢部「慣れればそんな事はないでやんす。菜箸に刺さるくらいになったら肉を入れて焼くでやんす。片面焼けたらひっくり返してからタレを入れるのがコツでやんす!」ジューササッ


矢部「また片面焼けたらまたひっくり返して少し焼いてから皿に盛るでやんす。キャベツを皿に盛ってから肉と玉ねぎを盛って完成でやんす!はるかちゃん、みんなに机の上のものを退けておくように言っておいてくれでやんす!」


はるか「分かりました!」テッテッ


矢部「さて、こっちは最後の味噌汁を作るでやんす。鍋に水を入れてダシを入れてから沸騰させないようにしつつ茄子を入れるでやんす。」


矢部「ある程度出来たら味噌を入れて完成でやんす。」


ピーッピーッピーッ


矢部「米も丁度良く炊けたでやんす。」


矢部「みんなー!運ぶのを手伝って欲しいでやんすー!」


ゾロゾロ…


パワプロ「さて、どんなものが…。」


友沢「こ、これは…。」


矢部「あれ?何か間違ってたでやんすか?」


田中「いやスゲェよ。お前天才じゃん。」


田中山「これはすごいー。」


奥井「全くだぜー。」


あおい「矢部君こんなこともできたんだ…。」


はるか「良かったですね!矢部さん!」


矢部「へっへん!当然でやんす!」


矢部君の作った料理はとても美味しいよりも、暖かみがあるっていう表現の方が合ってたね。


その後、早川がブラックホールを生み出した事と矢部君と田中が女子の風呂を覗こうとしたこと以外には特に事件はなく、順調に勉強していった。



1週間後…


友沢「うーーーん…。」


パワプロ「うーーーん…。」


あおい「うぬぬぬぬ…。」


はるか「むーーー…。」


奥井「ぐむむ…。」


矢部「うむむむ…。」


田中「………。」


田中山「分からないー。」


みんなの体が動かしたいと暴走を始めようとしていた。


田中「あああもう!体動かしてぇよぉ!!」


矢部「ここまで野球が恋しくなる日がくるとは思ってなかったでやんす!」


友沢「……よし!ちょっと野球しにいくか!」


全員「オオーーーーー!!」



in公園


パワプロ「はーー。落ち着くーー。」パシッヒュッ


友沢「かなり体が辛かったな…。」パシッヒュッ


奥井「全くだぜー。」パシッヒュッ


田中山「勉強が嫌いだー。」パシッヒュッ


田中「全くだ。」パシッヒュッ


矢部「はるかちゃんは体鈍ったりしないんでやんすか?」パシッヒュッ


はるか「は、はい。普段から家の中の生活が主流でしたので…。」


パワプロ「いいなぁ。」


「お、そのユニフォーム姿は!もしかせんでも、パワプロか?」


パワプロ「…!その声は…!」


パワプロ「阿畑先輩!?」


阿畑「おー!ホンマにパワプロやー!どや?最近の調子は?」


パワプロ「今テスト期間なんですよ…。」


阿畑「あちゃー。テストなんてやらんくっても死にゃあせんて!野球選手は野球せな死んでまうから野球やりぃや!」


あおい「パワプロ君、この人は?」


パワプロ「ああ、阿畑やすし先輩だよ。」


阿畑「ご紹介に預かりましたー阿畑や!ワイも野球やっとってんて!ピッチャーやで!アバタボール投げてたで!あ、因みにアバタボールはワイのオリジナル変化球でナックル変化するんやで!いやー懐かしいなー。高校野球と言ったら青春の塊やからなー!」


友沢「なかなか五月蝿い人だな。」ボソッ


阿畑「おーおまいさんは帝王行くとか言っとった友沢やないか!なんでまたパワフルに行こーとか思ったんや?」


友沢「あ、え、えと、それは…まあちょっとありまして。」


パワプロ「それよりも阿畑先輩。大学野球はどうですか?」


阿畑「へ?」


パワプロ「ほら、阿畑先輩大学3年でしょう?今年はどうなのかなーって─」


ここまで言って俺は阿畑先輩の異変に気付いた。


阿畑「………。」


パワプロ「あ、阿畑先輩?」


阿畑「………いやーっはっはっは!パワプロには伝えとらんかったんか!いやー参った参った!」


阿畑「ワイ、肘壊してん。アバタボール投げすぎてぇな。」


パワプロ「………え?ちょ、ちょっと阿畑先輩!それってどういう…。」


阿畑「ほら、昔パワプロがまだ中学の頃に捕らせてくれー言うてやってきたことあったやん?」


パワプロ「………あ、あの時か…。」



それは今から4年前の秋…パワプロ中学1年、阿畑高校3年…


パワプロ「阿畑先パーイ!」テッテッ


阿畑「お、パワプロやないか!どないしたんや?」


パワプロ「阿畑先輩はもう大学決まってるんですか!?」


阿畑「おう!パワフル学園大学に推薦決まっとるで!」



パワフル学園大学

元々は余り有名な大学ではなかったが、近年、野球で好成績を収めてきている。

同地区の壱流大学と六面大学と神宮大会をかけて優勝争いを繰り広げるようになった。

一昨年、凄いスプリンターと捕手と天才とまで騒がれたショートが入部し、去年には神宮大会へ出場している。



パワプロ「じゃあ今は暇ですね?」


阿畑「まあ暇やな。なんかするんか?」


パワプロ「俺、もっと捕球能力を上げたいんです!なので、アバタボールを捕らせて下さい!」


阿畑「お、そういうのアツいなー!よっしゃ!力になったるで!早速肩作ろか!」


パワプロ「はい!」



阿畑「あん時にな、アバタボールの投げすぎで肘壊してしまってん。始めは何も感じとらんかったんけどな、徐々に痛みでてきてな。もう腕を振ることはできへんのや。」


パワプロ「………。」


阿畑「………別にワイはパワプロのことを責めとらん。むしろ嬉しかったわ。こんなにワイの力を必要としてくれる後輩持ってな。」


阿畑「せや。一つ、ワイの肘を壊した代償に約束をしてくれへんか。」


パワプロ「………はい…。」


阿畑「絶対に甲子園で優勝してや。あの真紅の優勝旗をこの町に持ってきてくれや。約束やで。」


パワプロ「はい……はい………。」


あおい「………阿畑さん。」


阿畑「ん、なんや?」


あおい「腕を振ることが出来ないなら、練習を見てくれる事は出来ますか?」


阿畑「どないしたんや?別に構わへんけど。」


ガバッ


早川は何を思ったか、いきなり土下座した。


あおい「お願いです!ボクにオリジナル変化球を教えて下さい!」


阿畑「オリジナル変化球をか?」


あおい「はい!ボクもピッチャーなんですけど、三振が取れなくて…だから、オリジナル変化球を使えば三振が取れると思うんです!」


阿畑「うーん、これは困ったなー。」


あおい「え?」


阿畑「まだワイは男で身体も丈夫やったからまだ持った方なんやけど、お前さん、見る限り女やろ?投げれへんことは無いとは思うけど、身体にくる疲労はワイの比にならんで?それでもか?」


あおい「はい!」


阿畑「…よっしゃ!教えたる!今はもう部活もやっとらんから、ほぼ暇やで!ここに練習したい時は連絡くれや!」ピッピツ


あおい「あ、ありがとうございます!」ピロン


阿畑「じゃあワイはこのへんで。パワプロ、男と男の約束やぞ!」


パワプロ「はい!」


そして阿畑先輩は去っていった。去っていく先輩の背中はどこか明るいオーラが出ていた気がする。


パワプロ「…よし!甲子園行くぞ!」


全員「「オオーーーーー!!」」


友沢「今回は絶望のどん底にたたき落とされたりしなかったな。」


パワプロ「俺だって成長するさ。それに約束したんだ。落ち込んでる暇なんてないよ!」


田中「そうだ!俺達がいるぜ!」


矢部「困った時は力になるでやんす!」


田中山「頑張るぞー。」


はるか「私も頑張ります!」


あおい「ボクもオリジナル変化球を頑張って取得してみせるよ!」


奥井(オイラも…そろそろ答えを出さないとな…。)


パワプロ「よし!帰って勉強の続きやるか!」タッタッ


友沢「よし!」タッタッ


奥井「やってやるぜー。」タッタッ


矢部「平均点なんてチョチョイのチョイでやんす!」タッタッ


田中「俺だってやれば出来るんだ!」タッタッ


田中山「うおーー。」タッタッ


あおい「みんな速いね。」


はるか「そうですね…。あおいも変化球、頑張って下さいね!」


あおい「うん!ボク、頑張るよ!」


…阿畑先輩。いい仲間を持ったのは先輩だけじゃないですよ。他人の約束を共に叶えようとしてくれる。そんな仲間が俺にはいますよ。


新たに決意を固めたパワプロ達。自然と勉強効率も上がり、準備は万端でテストに望んだ。



パワポケ9「おし!平均点行かなかった奴を発表するぞ!」


全員「「………。」」ゴクリ


パワポケ9「………1年…なし!」


全員「「オオーーーーー。」」


1年「「いよっしゃぁぁぁぁぁ!!!」」


パワプロ「やった!やったぞ!!」


友沢「ふー。危なかった。」


田中「母ちゃん!俺やったよ!」


田中山「やったー。」


奥井「良かったぜー。」


矢部「これでまたアニメを見られるでやんす!」


あおい「良かったよぉ~…。」


はるか「皆さん!お疲れ様です!」


みんなが平均点を超えることができたテスト。しかもテスト期間中にみんなで目標を改めて設定できた。さて、いよいよ本番だ。


パワプロ「やってやるぜー!!地区大会優勝!!そして甲子園だァァァァァ!!!」



蛇の目vs聖なる主将



パワポケ9「おし、全員集合!」


ザッ


はいどうもみなさんこんにちは、最近寝つきがいいパワプロです。


いよいよ地区大会の季節ですよ。


え?現実では甲子園終わったって?


…現実ってなんですか?(哲学)


パワポケ9「いよいよ地区大会が始まる。うちの地区はかなりの激戦区だが、逆に考えれば甲子園には地区大会程の学校はあまりないということになる。気合入れていけよ!じゃあ主将。初戦の対戦相手の発表を。」


監督に呼ばれて出てきたのは我らがキャプテンだ。打撃成績も申し分なく、エラーもほぼない頼れるサードだ。かなり背が高く、相手にとって威圧にもなっている。


主将「はい!我々パワフル高校は大会3日目の第二試合、相手はすぐ近くのパワフル第二高校だ!」


パワプロ「パワフル第二って強いのかな?」


田中「いや、かなり弱い方だ。バス停前までは行かないが。」


パワプロ「ほーん。」


主将「因みに前日には勝ち進めば準々決勝で当たる予定の帝王実業が聖タチバナ学園と試合をする。この試合は誰か偵察に行ってくれ。」


ザワッ!


「て、帝王実業だとよ!?」


「聖タチバナ?聞いたことねぇなぁ。」


「今年出来たんだとよ。」


「聖タチバナの奴らも可哀想だな。」


「ってか、準々決まで勝てるか?」


パワプロ「主将。2回戦以降に当たる予定の相手はどこですか?」


主将「ああ。2回戦は極亜久商業対ラズベリー工業高校の勝者。3回戦は多分壱流大附属高校、で、準々決勝が帝王実業、準決であかつき大附属、決勝はまだ分からない。」


「初戦はいいとこだけどその後がなー…。」


「壱流大附属ってあの1年スーパースラッガーって噂の雷轟がいるところか!?」


「帝王ってお前…。」


「終わったな…。」


諦めムード入るのはやっ!


パワプロ「先輩達!なんでもう諦めムードなんですか!」


矢部「そうでやんすよ!きっと勝てるでやんす!」


田中「力を合わせて頑張りましょうよ!」


主将「そうだぞお前ら!1年に言われてどうするんだ!」


「で、でも………。」


あかん。これはあかん。まるでお通夜みたいに静かな雰囲気になっちまった。


パワポケ9「おいおい、こんなんで甲子園に行く気あるのかよ。」


「か、監督……。」


パワポケ9「言っておくが、俺は最後の大会だろうと、本気で勝つ、勝てるようにメンバーを組む。勝つ気のない奴がいても迷惑なだけだ。そんなクソみてぇな考え持ってるやつは今すぐにこのグラウンドから出ていってくれ。」


シーーーーン……


こんなんで大丈夫かなぁ。


パワポケ9「じゃあメンバー発表するぞ。」


パワポケ9「1番、センター佐藤!」


佐藤「はい!」


パワポケ9「2番、ファースト松坂!」


松坂「うっす。」


選手達は一人ひとり、噛み締めるように返事をした。この夏が最後になる。その思いとともに、悲しみ、高陽、それらをぶつけるために彼等は選ばれた。この野球部の思いを背負って。そのことを今彼等はひしひしと思い出していた。


パワポケ9「5番、ピッチャー神高!」


神高「はい。」


神高先輩も、バス停前の時のような軽い返事ではなくなった。顔が本気だ。


その時、友沢が緊張を破るようにして声をあげた。


友沢「か、神高先輩!!」


神高「…大丈夫だよ。友沢。」


神高先輩は少し俯きながら続けた。


神高「僕は天才だからね。神様も僕が勝つように信じているはずさ。」


神高先輩の紫の髪が目までかかってよく見えなかったが、神高先輩の目は恐怖と高陽、二つの感情を放っているような気がした。まるでここですべてが終わるような…。


友沢「…神高先輩……。」


パワポケ9「………。続けるぞ。6番、ライト鈴山!」


鈴山「はい。」


その後、スタメンの発表が続き…


パワポケ9「9番キャッチャー新倉。以上がスタメンだ。」


パワポケ9「次にベンチの発表だ。」


俺らにとってはここからが本番だ。ベンチ入ができれば試合に出る可能性だってある。スタンドから応援するよりもグラウンドでヒーローになりたいからな。


パワポケ9「松本!」


松本「は、はい!」


パワポケ9「羽柴!」


羽柴「はいっス!」


パワポケ9「友沢!」


友沢「っ!はい!!」


 パワプロ「と、友沢がベンチ入!?」


あおい「やったね!友沢君!」


田中「くそっ!」


その後、ベンチの発表が進むも、他の1年の名前は呼ばれず…


パワポケ9「以上だ。聖タチバナと帝王の試合は応援組から行ってくれ。」


パワプロ「はい!俺が行きます!」


あおい「あ、ぼ、ボクも行きます!」


田中「俺も!」


奥井「オイラも!」


矢部「でやんす!」


田中山「ぼくもー。」


パワポケ9「じゃあ1年。頼んだぞ。」


1年「はい!」


水木コーチ「あ、そうだ。お前ら、帝王の先発の能力を優先的に誰か見ておいてくれ。」


奥井「分かったぜー。」



パワフル高校


1番センター佐藤 3年

2番ファースト松坂 3年

3番セカンド島本 2年

4番サード主将 3年

5番ピッチャー神高 3年

6番ライト鈴山 2年

7番レフト矢野 2年

8番ショート天野 3年

9番キャッチャー新倉 3年


ベンチ

キャッチャー、松本 2年

ファースト、セカンド、羽柴 2年

ショート、セカンド、友沢 1年

外野、長野 3年

外野、サード、三溝2年

ピッチャー三村 3年

ピッチャー原 3年



そして大会前日、聖タチバナ学園対帝王実業…


パワプロ「いやあ、極亜久商業、強かったなー。特にあの5番。長打力が半端じゃない。」


田中「あとあの2番もバント上手かったなー。にしても、実力差おかしくね?ラズベリー相手とはいえど、5回コールドだもんなー。」


あおい「そういえばなんでラズベリーの先発背番号1じゃなかったんだろ。」


矢部「そういえばベンチにもいなかったでやんすね。」


パワプロ「はっはっは。そんな事はどうでもいいだろ。それよりも、偵察がんばろーぜ!」


あおい「うん、がんばろ!」


田中「そんなに気張って偵察ってするもんか?」


矢部「分からんでやんす。」


田中山「……嫌な予感がするなー。」ボソッ


ん?今田中山なんか言ったか?


パワプロ「田中山、今なんか言ったか?」


田中山「独り言だよー。」


なんかすっごい大事な事聞き逃したような。


『ただいまより、地区大会2日目、第三試合、聖タチバナ学園高校対帝王実業高校の試合を開始致します。』


田中山「あ、始まるよー。」


田中「さて、お手並み拝見と行きますか。」


誰も田中に上から目線だなとツッコミは入れなかった。


帝王実業高校


1番ショート中島2年

2番キャッチャー養老3年

3番セカンド蛇島1年

4番ライト矢後3年

5番サード佐々木2年

6番ファースト田野3年

7番ピッチャー山口1年

8番センター渡部2年

9番レフト彼島3年



聖タチバナ学園高校


1番ファースト加藤1年

2番ライト吉田1年

3番センター本村1年

4番ショート橘主将1年

5番サード本田1年

6番レフト丸1年

7番セカンド田原1年

8番ピッチャー太鼓3年

9番キャッチャー有賀1年




『一回の表、帝王実業の攻撃は1番、ショート、中島君。』


パワプロ「ショートの中島。瞬足で塁に出したら引っ掻き回されるらしいが、どの程度なのか…。」


スパーン!


審判「ボール!」


パワプロ「初球ストレートを外角に外す…セオリーだな。」


あおい「まあまあ。試合も始まったばっかりなんだし。」


田中「2球目、どうするのか…。」


コツっ


パワプロ「バントした!でも当たり弱いぞ!あれじゃサードに刺されて…んなっ!!」


その時、俺は自分の目を疑った。明らかにサードがボールを拾った時にはベース間の五分の三も走っていなかった。しかし、後半いきなり加速し、ボールがファーストの手元に来る頃には1m近く進んでいる悠々のセーフ。


矢部「な、なんでやんすかアイツは!」


田中「ありえない加速したぜ!」


あおい「あの人の時にはバントシフト引いておいた方がいいかな…。」


パワプロ「いや、まだ分からないよ。」


そう。無闇にバントシフトを引いたらバスター、ヒッティングだってあるかもしれない。下手なところに落ちたらアイツの足ならシングルヒットがツーベースにもなりかねん。


『2番、キャッチャー、養老君。』


あおい「わ、なにあの人!」


田中「とても高校生とは思えない顔つきをしてるな…。」


外見はここからでは少し分かりづらいがとても高校生の顔ではない。30代と言われても納得できるようだ。しかしガタイが半端ない。身長も俺より全然大きそうだ。あんなのにゲッツー崩しされたら次から恐ろしくて投げられなくなりそうだ。


パワプロ「パッと見だとパワーヒッター臭いだろ?でも高校通算20本打ってないんだぜ?」


田中山「そうなのかー?」


パワプロ「ああ。それならアベレージヒッターなのかとも思うけど打率.226で出塁率も3割前半だからな。」


矢部「とても2番に置いておく選手じゃないでやんすね。」


スパーン!


審判「ストーライーク!!」


パワプロ「お、初球入れたか。淡よくばゲッツー欲しいだろうな。」


あおい「あの1番なら初球盗塁しそうなのによく入れたね。」


パワプロ「実はあの1番、本人が分かっているのかは分からないけど初球盗塁はほとんどないんだよ。」


田中「へー…なんでなんだ?」


パワプロ「何か特別な理由があるなら別だけど多分塁に出てそこから集中し直してから盗塁したいとかそんな感じじゃないかな。」


矢部「オイラは初球からもガンガン行くでやんすよ!」


奥井「成功しなきゃ意味無いぜー。」


矢部「うるさいでやんす!オイラだってできるんでやんす!」


パワプロ「お、2球目なげる…走った!!」


スパーン!!


審判「ストーライー!」


パワプロ「ウエストか!!」


田中「これは刺したろ!」


有賀「セカンっ!!」ビシュッ!


パワプロ「判定は!?」


キャッチャーの送球もほぼ完璧。しかもウエスト。しかしランナーも超瞬足。まさに韋駄天。この勝負に軍配が上がったのは…。


審判「…………セーーフ!セーフセーーーフ!!」バッ


ランナー、中島君だった。


田中「うわぁぁぁ!!おっっっしぃぃぃぃ!!」


奥井「まさに韋駄天だぜー。」


その盗塁は審判も一瞬悩ませる程に際どいものだった。


パワプロ「アウトと言われてもおかしくなかったな。」


あの送球にウエスト。だが僅かにセカンドのタッチ技術が甘かったかな。


カキーーン


あおい「あ、打ったよ!」


その当たりはサード前、しかし絶妙な位置に転がった。言ってしまうなら、これ以上ない程に精密に針の穴に糸を通すような感覚だ。


審判「フェア!」


本田「クソっ!」シュッ!


本田の送球もなかなかノビのある球だ。しかし捕球から少し時間がかかったような…。


パワプロ「………。」


田中山「どうしたのー?パワプロー。」


パワプロ「少し妙な感覚がしてさ。」


あのサード、少し球を捕ってから敢えて時間を使った感じがする。まるで、わざとヒットにさせたような…。








『3番、セカンド、蛇島君。』


パワプロ「さあ、本日のメインイベントの一つ。帝王で1年でクリーンナップの一角を打つ男。どれくらいのものなのか。」


この蛇島とかいう男。なんでも中学時代の友沢の肘の怪我に関与しているらしい。確信はないがもし本当のことだったら…。


パワプロ「……許せないな…。」


矢部「ん?どうかしたでやんすか?パワプロくん。」


パワプロ「あ、いや、何でもないよ。」


蛇島(くっくっく…お前ら、いいお膳立てをありがとうよ。ここで俺が点を取れば俺はヒーロー…プロにまた1歩近付くんだ…。)ニタァ


蛇島(サインは…んなっ!送りバントだと!?3番の俺が!?舐めてんじゃねぇぞ!!)


橘主将「おし、みんな!アレ行くぞ!」


タチバナの選手「おお!!!」


パワプロ「ん?今、アレ行くって言ってたけど…。」


矢部「なんでやんすかね…。」


聖タチバナ学園はピッチャーを除き全員が1年生。連携プレーなら多少は動けるんだろうが…何をするつもりなんだ…。


橘主将「太鼓先輩!お願いしますよ!」


太鼓「分かっている!そう焦らすな!!」


ん?今、あのサード…。


田中「どうした?パワプロ。」


パワプロ「あ、いや、あのサードちょっと守備位置変えたなって…。」


あおい「何かのシフトかな?」


パワプロ「でもサードだけってのも不自然だよな…。」


そう。本来守備シフトというのは相手にこの方向に打たせて捕りやすくする。バントをするかもしれないから少し前に出るなど、数人や全体で行うものが殆どだ。しかしこのタチバナ学園が引いたシフトはサードの位置変更のみ。


太鼓「行くぞ!蛇島!!」ザッ


蛇島「フッ、少し落ち着いた方がいいんじゃありませんか?」


太鼓「っあ!!」ビシュッ


蛇島(来た!真ん中低め!俺の一番得意なコース!)


パワプロ「あ、甘いぞ!!」


あおい「危ない!」


蛇島(よし、サードの位置も悪い!三塁線抜けるあたりに。)キィィン


蛇島「おし!!」


パワプロ「あっ!サード方向に強いライナー!!」


矢部「でもこれは抜けるでやんす…なっ!」


本田「狙いどぉりぃ!!」バシッ!!


あおい「横っ飛びで捕ったぁ!?」


かなり強めのライナーが三遊間、サードよりに飛び、しかも地面スレスレ。本田はその打球をワンバンさせながらもしっかりとつかんだ。


明らかに三遊間を抜いたと思われた打球。しかし、サード本田によってストップ。しかし悲劇はここから。


本田「これでセカンドランナーアウト!」ザッ


ライナー性の打球だったため、セカンド、ファーストランナーが進塁しようとせず、塁上で待機していた。


本田「橘ァ!!」ビュッ!


橘「任せろ!!加藤!!」バシッ!!ビシュッ!!


加藤「おらっ!」バシィ!


審判「あ、アウトアウト!スリーアウトチェンジ!!」


審判の判定を聞いた瞬間俺は全身に鳥肌が立った。

6-6-5-3のトリプルプレーである。


矢部「す、凄いでやんす!トリプルプレーでやんす!!」


田中「初めて生で見たぜ!」


田中山「凄いなー。」


あおい「しゅ、守備力と連携プレーが良かったね…。」


パワプロ「………。」


凄いのは守備だけじゃない。あのサード、打球が来る前に位置取りをもう一度変更していた…。しかもさっきよりも少しショート寄り。変更していなかったら無理だったろう…。しかも一瞬だがセカンド側にショートも移動した。誘導したのか…打球を…。


パワプロ「……蛇島は比較的チャンスでの初球打ち率が高い。読み負けたな。」


一方ベンチでは…


蛇島「クソックソックソックソックソッ!!!」


帝王監督「…蛇島。何故バントをしなかった。」


蛇島「…サインを見間違えました。すみません。皆さん。」


佐々木「………。」


渡部「………。」


養老「まあまあ!試合はまだ始まったばかりだ、切り替えていこう!」パンパン!


全員「…………。」


蛇島(チッ、余計なお世話だよ。養老。)


一方聖タチバナ側ベンチでは…


太鼓「や、やりましたね!!」


橘主将「はい!!太鼓先輩のボールのおかげです!!」


加藤「俺、少しだけ半信半疑だったんだよ。打球を意図したところに飛ばさせるなんて…。全国探してもお前くらいだよ。そんな作戦思いつくの。」


橘主将「はっはっは。褒め言葉として受け取っておくよ。」


聖タチバナ学園は狙っていた。

あのトリプルプレーを。

そのために、ノーアウトランナー一二塁という極めてピンチの状況を意図的に作らなければいけなかった。

一打で先制。しかも相手はあの帝王。

一筋縄でどうにかできる相手ではない。しかし、それでもこの作戦を決行したのには、大きな理由があった。


数週間前の聖タチバナ学園高校…


有賀「精神的に崩す!?」


橘主将「ああ。精神的に崩す。」


加藤「んなことどうやって…。」


橘主将「うちのエースの太鼓先輩はちょっと高速回転のボールを投げられる。これを応用すればほんの少しだが打球方向を変えることが出来る。」


太鼓「しかし…方向を変えたところでその先は…。」


橘主将「みんなが打席に立って1番メンタルの崩れる事ってなんだと思う?」


本田「さ、さあ…。」


橘主将「正解はトリプルプレーだ。」


これが聖タチバナ学園の生み出した精神破壊野球である。


橘主将「ふっふっふ…野球ってのはメンタル崩れたらそこまでなんだよ。」


1番はどうでも良かったが、問題だったのは2番の養老である。

養老が中途半端に内野ゴロではダメだし、長打なら中島が帰ってきてしまう。

しかし養老に長打力はないため、比較的楽になおかつ自然にランナー一二塁にはできた。

そして3番の蛇島。

橘主将は偵察に偵察を重ね、蛇島はチャンスの際、露骨に嫌な顔をしたらバントではないという癖を見つけた。

今回もそれが顔に表れ、サードの本田が守備位置を少しずらして三遊間に飛ばしやすくし、更に太鼓のハイスピンボールで更に三遊間に飛ばしやすくしてトリプルプレーを狙ったのだ。



アナウンス「一回の裏、聖タチバナ学園高校の攻撃は、1番、ファースト、加藤君。」


加藤「お願いしまーす!!」


加藤は元気に返事をして右打席に入った。


パワプロ「いやはや、結果論だが帝王の奴らにとっては大きなダメージになっただろうな。」


奥井「そうだなー。自分のミスでチャンスを潰す。しかもトリプルプレーで。」


あおい「さあ、聖タチバナの攻撃だよ!」


さっきの狙いすましたかのような三重殺を見て、俺は次は何をしてくるのだろうとかなりのワクワクを覚えていた。それと同時に、こいつらと対戦してみたかったという悔しさも残った。


まあ試合はまだ始まったばかりだ。水木コーチが言っていたあのピッチャーを観察しないといけない。


養老「よし、山口!こい!」


帝王のキャッチャー、養老は帝王で1年ながら先発の山口に声をかけた。


養老「お前の球は誰にも打たれない!自信もって投げてこい!」


ピッチャーの山口は養老とまさに正反対の雰囲気を出していた。そう、例えるなら白と黒、養老から優しい、暖かいオーラな出ているとしたら山口からはどこまで深いのか分からない闇のような冷たいオーラが出ていた。


加藤「っ!!」


それは打者の加藤にも伝わり、明らかにへっぴり腰に…。


加藤「そんなんに負けるかよ!絶対に打つ!!」


っ!マジかよ…。並の打者なら恐ろしくて逃げ出したくなるようなオーラに打ち勝った!?やっぱり今年の聖タチバナには何かあるぞ…!


加藤(確か橘はこういってたよな…。)



橘主将「さて、精神破壊野球の攻撃時の立ち回りだが…。」


橘主将は大雑把に精神破壊野球の概要を説明してから攻撃時の立ち回りについて説明を始めた。


橘主将「先発の山口はなかなかのスタミナとコントロール、そこそこのストレートに太ももくらいから膝元くらいまで一瞬で落ちるフォークを持っていた。偵察でそれも確認済みだ。」


と、ここまで相手投手の良いところを並べた。そして、


橘主将「更にこいつの一番怖いところは威圧感だ。」


と続けた。


橘主将「こいつは帽子をかなり深く被って目元を見せないようにしているんだが、その僅かな隙間からとても人からとは思えないような眼光を出してくるらしい。」


ここまで説明して、これまでの内容を聞くととても打てるような選手でないと思っているのが他の選手達の表情に現れていた。


橘主将「まあそう慌てるな。別に策がないわけじゃない。」


丸「んな事言ったって…。そんな奴のどこに弱点が…。」


丸の言ったことをしっかりと聞き入れてから、橘主将は口を開いた。


橘主将「よく考えてみろ。ストレートとフォーク…これだけで数多くのアウトを取れると思うか?俺は思わない。俺がピッチャーならな。」


丸は少し考えてから質問した。


丸「じゃあまだ他に変化球があるって言うのか?」


橘主将「その通り。こいつはまだ他にカーブが投げられるんだが、ストレートとフォークよりかは打てるはずだ。」


橘主将「まだあるぞ。向こうはどんなにキレの凄いフォークを投げてこようと、バカっ速いストレートを投げてこようと、向こうは人間だ。限界がある。そこを叩くんだ。」


丸「どうやるんだ?」


橘主将「一巡目、ストレートとフォークとカーブのタイミングを見極めて、カーブが来たら空振れ。」


吉田「空振るのか!?打ち頃の球を!?」


橘主将「ああ。向こうにカーブが効いていると思わせるんだ。そうすればカーブを連投してくる可能性が高くなる。本気で打ちに行くのは二巡目からだ。」



加藤「よし…1番打者らしく、しっかり仕事しないとな。」


山口「………。」


ザッ


あおい「振りかぶったよ!」


山口の投球フォームは他と比べてかなりオリジナリティがあった。普通なら足は膝が90°、腰も90°くらいまで上げるものだが、山口は違う。膝をあまり曲げずに大きく足を振り上げる、いわゆるマサカリ投法だ。


ビシュッ!!


加藤「っ!」


スパーン!


審判「ストーライーク!!」


パワプロ「初球インローのストレート。これは全くビビってないな。流石山口だ。」


田中「あの威圧感は半端じゃねぇよ。」


そんな話しをしている間に既に山口は2球目を投げていた。


ブルンッ!


スパーン


審判「ストライクツー!!」


田中「2球目インハイカーブ。ストレートのタイミングで振っちまったな。」


別にどうということもない普通のカーブだが、加藤は橘の言いつけ通りしっかりと空振りをした。この行動が功を奏するかは二巡目まで分からないが、多少ばかり騙せたとは思っている。


加藤(おし、あとはフォーク投げるのを待つだけだ…。)


ストレートを投げるよりはるかに握力を使うフォーク。あまり投げたくはないだろうが、この目でフォークを見るまで粘ってやる。それが1番である俺の仕事だ!


田中山「第3球は…。」


ビシュッ!!


加藤(真ん中低めボールゾーンのストレート…見送ろう。)


スパーン!


審判「ボール!」


加藤「おし、次で決めてくるかな…。」


養老「じゃあそうさせてもらおうかな。」


加藤(あ、やっべ。声だしちった。まあ次で決めてくれるらしいし、多分フォークだろ。)


パワプロ「これで1ボール2ストライク。次かその次で決めるだろうな。」


あおい「そうだね…フォーク投げるかなー。」


田中「どれだけ落ちるんだろうな…。」


山口のフォークはキレもそうだが落差も半端ではない。その辺のプロと同等かそれ以上のレベルである。そんなのを高校で投げられたらたまったものではない。


矢部「オイラ、ストレートと間違えて振ってしまいそうでやんす…。」


ザッ


見るものを引き付けるフォーム、マサカリ投法。足を大きく振り上げて放たれた山口の第4球は…。


ビシュッ!


加藤(アウトローのストレート!?やばっ、タイミングが…。)


スパーン!!


審判「ストライィク!バッターアウッ!!」


加藤の予想を裏切る球だった。


パワプロ「おお、いい球。」


コースも球速もほぼ完璧。この球を打ち返すのはかなり難しいだろう。流石は帝王といったところだ。


田中「流石に決め球は取っておきなのか。」


あおい「ここぞっていうところに使うのかなー。」


まあ一番効果のあるところで見たこともない球が来たら無理だよな。ターニングポイントとか。


アナウンス「2番、ライト、吉田君。」


吉田「しゃっす。」


矢部「むむっ!面白いフォームでやんすね!」


吉田のフォームはパッと見だと普通のクローズドだが、違う部分がある。それはバットの角度である。一般的にはバットを真上に上げて真っ直ぐ立つというものが手本となっているが、彼はバットを前に20°程傾け、足の幅を広げて立っている。


吉田「さあ、こい!」ザッ


山口は何も言わず、セットポジションに入った。そして、吉田のバットを1度も振らせることなく…。


ズパーーン!


審判「ストォォラィィ!!バッターアウッ!」


3球三振で仕留めた。


吉田「マジかよ…。こんなの打てっこねーよぉ…。」


その後、山口は3番本村をセカンドゴロで仕留め、三者凡退で1回の裏の守備を終えた。


あおい「うむむむ…。」


奥井「ぐぬぬぬ…。」


丁度山口がベンチに帰った時、ピッチャー陣がうなき声を挙げた。


あおい「あのコントロール…。」


奥井「あの球速…。」


あおい/奥井「「羨ましい/ぜ〜〜〜!!!」」


山口の投球を見て、刺激されたようだ。まあ無理もない。彼の投球からは気迫は感じないが、威圧感を感じる。まるで、静かに獲物を狙う蛇のようだ。


その後、聖タチバナ、帝王共にヒットは出るもののあと1打に欠き8回の表にまで試合は進んだ。


橘主将「よし、これでもう全員3回は打席に入ったな。出来れば前の回でケリをつけたかったが、出来なかったものはしょうがないよな。」


聖タチバナは4回に山口のフォアボールから流れをつかみ始め、それ以降毎回ランナーは出していたもののここまで無得点で来ていた。さすがの山口も体力に限界が見え始め、7回途中から少しポーカーフェイスが崩れ始めていた。


橘主将「恐らくこの回の途中か次の回で向こうは山口を下ろすだろう。そうなる前になんとしてもアイツを打ち崩すんだ!!」


聖タチバナ全員「「おう!!!」」


聖タチバナの投手、太鼓もかなりの疲れが見えていた。正直このままでは1点や2点では逆転を喰らうと味方にさえも思わせる程に。そのためか、選手達の目には一層火が点った。


アナウンス「1番、ファースト、加藤君。」


加藤「お願いします。」


この回は1番加藤からの好打順。まさに決めるならここだと言わんばかりの展開だ。


加藤(ここまで3回打席に入って分かった。ここのキャッチャー、絶対に初球にフォークを要求してこない!!)


この加藤の考えは正解だった。現にここまで、帝王のキャッチャー養老は1度も初球フォークを要求していなかった。そうなれば、球種はストレートかカーブ。ストレートはカーブよりも当てているから、使うとしたらカウント調整。となれば、狙い球はカーブと定まる。


養老「狙い球は決まったかな?」


打席に入り、少し集中していた加藤に養老が声を掛けた。


加藤「まあな。この回で決めさせてもらうぜ。」


養老「ははは。そうか。」


顔にあった低めの笑い声で養老は加藤の挑発を返した。そして養老は1度座り直し、山口を見つめた。彼は疲労している。余り球数は使えない。その中で養老が選択したものは…。


スパーン!!


審判「ストライィク!!」


ど真ん中ストレートだった。


パワプロ「うひょー!あの場面でど真ん中かよ!勇気あるリードだなー…。」


矢部「パワプロ君はそんな要求しないんでやんすか?」


パワプロ「時と場合によるけど、殆どしないかなー…。」


この球に驚かされたのはパワプロ達だけではなかった。


加藤「…マジかよ。」


初球カーブ待ちで待っていた加藤には、疲れから球速が落ちているとはいえ、ストレートには反応出来ず、ただ見送るしかなかった。


養老「やっぱりカーブ待ちだったかな?」


加藤「っ!!」


いきなり話しかけられた事と読み球を当てられた事で加藤は動揺した。まさか全て分かっていたのか、俺たちがカーブを良さげだと思わせていた事、そこからカーブを連投させていた事、すべて見抜かれたのかと、余計な心配までしてしまった。


養老「その反応を見ると、強ち間違いではなさそうだね。」


全身が熱くなっていくのが分かった。やばい。どうする。何を待つ。フォークは捨てたとして、ストレートかカーブ。ストレートを待ってカーブが来るよりも、カーブ待ちの方がまだ打てるかもしれない。加藤はそう考え、あくまでもカーブ待ちを崩さなかった。


第2球、ストレートを高めに外し、第3球はストレートと思い振ったらフォーク。これでカウント1-2。完璧に追い込まれた。向こうにはまだ遊び球が2つある。こっちはそれにつられないようにしないといけない。加藤の頭はフル回転していた。次に何が来るか。何を待てばいいか。


加藤「…タイムお願いします。」


加藤は1度打席を離れ、4回素振りをした。1度心を落ち着かせようとしている。しかし、なかなか落ち着くものではない。その時、ベンチから声が聞こえた。


橘主将「太鼓先輩のためにも、思い切っきり振り切れよぉぉ!!加藤!!」


丸「そうだそうだー!!先輩に悔い残させんじゃねぇぞぉ!!!」


加藤はこの言葉を聞いて、ようやく落ち着きを取り戻した。そうだ。太鼓先輩のためにも。


加藤「……おし。」


加藤は少し待ってから、左打席に入った。


パワプロ「なっ!アイツ、スイッチヒッターだったのか!?」


田中「にしても、何でこのタイミングで左打席に…?」


養老「……何を考えているか分からんが、この1球で終わりにしてやるよ。」


加藤「一体なーにを考えてらっしゃるんでしょぉーねー。」


加藤は第一打席の時と同じような明るい表情に戻った。


養老(なんだ…こいつ…?アイツさっき、向こうのキャプテンに思いっきり振れとか言われてたな…左だと長打力があるとかか?ツーベースにされると不味いな。こいつの足だと下手したらスリーベースだ。それだけは避けたい。)


養老は加藤の長距離を警戒し、全体のポジションを後退させた。


加藤「……。」


そして第4球、山口の放ったストレートは…。



サード前、三塁線上に転がった。


佐々木「なっ!マジかよ!!」


帝王のサード佐々木は、長距離ヒッターの5番だが、守備に難ありな選手だった。そこまで考えてかは分からないが加藤は綺麗にボールを転がした。佐々木が捕球する頃にはもう既に3分の2を走っていたため、送球ミスを恐れた佐々木は送球しなかった。


橘主将「おーし!加藤ーー!!ナイバンーー!!」


加藤「おう!!」


加藤は拳を天高く掲げた。


アナウンス「2番、ライト、吉田君。」


吉田「しゃっす。」


吉田の顔には緊張はなかった。ポーカーフェイスからなのか、もしくは本当に何も考えていないのか分からなかった。目に光が入っていないようにも見えた。その初球。内角ボールゾーンに入ったストレートが。


ゴスッ


審判「デッドボール!」


養老「なっ!審判!今のは避けられたでしょう!!」


腕に当たり、ランナー1、2塁とチャンスを広げた。ただ、吉田のデッドボールは敢えて当たった。当たりに行ったように見えた。避ける素振りもなくただ当たったという具合だったからだ。そこまでしてまでもここは塁に出たかったのだと分かる。黙々と一塁に歩いていく姿は、全てを賭けて闘う兵士のようだった。


アナウンス「3番、センター、本村君。」


本村「お願いします。」


ここで今日3打数1安打の本村。ガタイはそこまでガッシリとはしていないが、心が通っているスイングをする選手だ。体幹は恐らくこのチームトップだろう。


本村(ここは最悪でもライナーかフライで終われば主将に回る。絶対にゲッスリーだけは免れないとな。)ススッ


本村は少しバットを長めに握った。なんとか外野に飛ばせば問題もないのでそれを狙いつつ、淡よくば1人返したいといったところだろう。


山口の目には1回の時のような威圧感は感じられなくなってきていた。疲労が周囲にも分かりつつあるあたりだった。肩で息をしつつ、サインに首を振る。


山口「…….。」


ノーアウト一二塁。良くて二三塁フォースアウトのゲッツーが欲しいだろう。最悪でも内野ゴロで切り抜けたいところ。山口の本村への初球。


ぱすっ


審判「ボール!」


力の入っていないカーブ。右打席の本村の胸の前を通過した。


養老「すみません。」


少し危ない位置への球だったからか、養老が謝ってきた。


本村「いえ、大丈夫です。」


本村は真顔でまるで気にしていないかのように、何かあったのかというような表情で返事をした。


本村は聖タチバナの貴重な野球経験者でもあった。相手が戦術のために顔の近くに投げてくることも少なくなかった。そのため、いちいち動揺していては頭の回転が止まってしまうという事で反射神経に関して鍛えた結果、大体のものには反応できるようになった。


2球目は比較的速いテンポで投げてきた。そのボールは真ん中低めに行き…。


本村(きた!失投だ!!これならセンター方向に!)


本村はシャープに振った。しかし、本村のバットに残った感触は鈍かった。ストレートかと思い振った球はフォークだった。当たった瞬間にその違和感に気付くことが出来、一塁に向かって全力で走ることが出来た。。サード方向へ強めのゴロ。佐々木は先ほどのことがあったにも関わらず、積極的に取りに行き、見事捕球に成功。三塁ベースを踏み、二塁ランナー加藤フォースアウト、セカンドへ送球し一塁ランナー吉田フォースアウト。さらに一塁へ送球。


本村(頼む!間に合ってくれぇぇぇぇ!!!)


本村の決死のヘッドスライディング。

セカンド蛇島からの矢のような送球。軍配が上がったのは。



審判「セーーフ!」


本村の方だった。というのも、蛇島の送球が少しズレていたおかげでの間一髪セーフだった。本村は蛇島を見た。なぜ自分がこんなミスをといった表情をしている。


パワプロ「うわぁぁぁ!!超絶ギリやんけ!!」


矢部「危うくトリプルプレーでやんすよ!」


スタンドはどよめいていた。かの有名な蛇島がミスをした事に対してである。蛇島は高校野球界でも有名な存在であった。中学の頃からその類まれなる才能を発揮し、現在1年生にして帝王実業の不動のセカンドとして君臨している。守備面でも打撃面でも、非の打ち所が無いような選手だけに、このような場面でのミスは周囲にもおかしいと思わせるような人間であったからである。


田中「ゲッスリーは免れたものの、2アウトランナー一塁。流石に終わったんじゃないか?」


早川「そうだねー…。流れは傾いてるもんねー…。ここで長打でランナー一三塁ならまだ可能性はあるかもしれないけど、そろそろ投手も変えるだろうしね…。」


アナウンス「帝王実業、ピッチャーの交代をお知らせします。」


噂をすればなんとやら。流石に帝王のお偉いさんも耐えられなくなったんだろうね。まああのまま投げて1発喰らったらそれこそもう傾きかけた流れをまとめて持っていかれるからね。


アナウンス「ピッチャー、山口君に変わりまして、坂口君。」


田中山「坂口ってどんなやつなんだー?」


パワプロ「坂口は140中盤のストレートに変化量のあるスライダー、緩急のあるチェンジアップを武器に投げてくる投手だよ。内角よりも外角に投げる方がコントロールが乱れるっていう不思議な投手だよ。スタミナがあるから今日みたいに戦力温存の試合で先発の場合が多かったんだけど…。今日はリリーフらしいね。」


矢部「よく知ってるでやんすね…。」


パワプロ「中学の時に対戦した事があるからね。試合前に相手の情報は頭に入れとかないと。」


奥井「オイラ、キャッチャーにならなくて良かったぜー…。そんな事覚えてらんねーよ…。」


そんな話をしている間に投球練習が終わり、聖タチバナの4番の橘主将が打席に入った。


橘主将「ふっふっふ…こんな場面で回るなんて、まるで漫画やアニメの世界のようだな。創作物語だと、こういう場面でホームラン打つんだよなー。あ、でもあれは9回裏2アウトだからノーカンか。」


養老「何をそんなにニヤニヤしながらブツブツ言ってるんですか。そんなドラマ演出、要りませんよ。」


橘主将「いやなに、ここで打ったらヒーローだなーと思ってさ。」


笑っているが目は笑っていないとはまさにこの事だろうと、養老はこの時感じた。この男、橘主将はここで初めて只者ではないということに気がついたのだ。というのも、今日ここまで橘主将は3打数ノーヒット。傍から見ればダメな選手だろう。


人はここで主に2つの考えに辿り着くだろう。一つは今日こいつは打ててないから次もダメだろう。もう一つは今日こいつは打ててないから次は打ってくるかもしれないという考えである。後者をしておくに越したことはないが、緊迫した場面では人はついつい楽な道を選びたがる。養老も少しは考えたがその可能性は捨ててしまった。


そこから坂口のキレのあるスライダーとストレートを見送り、早くもノーツー。

坂口「なんだ。こいつキャプテンとはいえど、そこまでじゃん。さっさと終わらせようぜ。養老。」


そこから坂口は2度首を振った。2つともボール球だったので、早く終わらせたかった坂口はあくまでストライクを取りに行くつもりだったのだ。


しかし、その考えは裏目に出た。


コツっ


パワプロ「よ、4番でセーフティ!?」


田中「ありえないぜ!!スリーバントでセーフティなんか!!」


橘主将「ふっふっふ!狙い通り!!」


養老はここまで考えることは出来なかった。まさか4番で。まさかツーストライクからセーフティはないと考えていた。

いや、セーフティの可能性さえも考えていなかった。まあ無理もないだろう。セオリーにはないものだから。


橘主将「おっしゃあ!!繋いだぞ本田ァ!!」


本田「おうともよ!!任せときゃがれ!!」


早川「これは完全に流れが変わったね。」


矢部「普通考えないでやんすよ…。ターニングポイントで2アウトからセーフティなんて考えないでやんす…。」


アナウンス「5番、サード、本田君。」


本田「行くぞ本村ァ!橘ァ!!お前らは歩いて帰らさせてやるからなァ!!」


本田も聖タチバナの野球経験者である。中学時代は豪快なスイングと強いメンタリティで多くのチャンスをものにしてきた。そのことは養老も知っているだろう。しかし、今の養老の精神状態は決して良いものとは言えない状態にある。頭が回ればいいのだが。


養老(ふぅ…。4番がバントは想定外だったな…。となると、今度もなにか仕掛けてくる気じゃないのだろうか…。いや、次は普通に打ってくるのでは…。)


…これはもうダメだね。養老はもうまともに考えることが出来なくなってるね。


8回裏、2アウトランナー一二塁、相手はチャンスに強い男。ヒットエンドランか、センター返しか、長打か単打か。内角か外角か。色々な警戒が養老の頭の中を回っていた。その結果…。




ガコォォォォン!!




見事に初球真ん中低めストレートをスタンドに運ばれた。




加藤「い…。」


本村「い…。」


橘主将「本田ァァァァ!!!」


本田「いよっしゃァァァァァ!!!」


太鼓「本田くぅぅぅぅん!!!」


田原「キタァァァァ!!」


有賀「勝てる!勝てるぞ!!帝王に!!!」


橘主将「この3点は絶対にやらせねぇぞォ!!お前らァァ!!!」


聖タチバナの選手「オオオ!!!!」


聖タチバナの選手たちの喜び方とは反面に、帝王ベンチはまるでお通夜のような雰囲気を漂わせていた。


帝王監督「お前ら何を下向いてんだ!!まだ試合は終わってねぇだろうがよ!!」


帝王の選手たち「………。」


帝王監督「………チッ。」


その後、聖タチバナは6番丸、7番田原が繋ぐも8番太鼓のファーストライナーで8回裏の攻撃を終えた。9回表、帝王の最後のチャンス、打順はこちらも1番から。しかし意気消沈してしまった帝王打線はあまりにもろく、太鼓は僅か5球で3人を片付けた。


 123 456 789 R H E

帝000 000 000 0 9 1

聖000 000 03✕ 3 5 0



パワプロ「………はぁ〜〜〜。終わった。」


奥井「めっちゃ時間長く感じたぜー。」


矢部「本当でやんす。」


その後パワプロ一行は勝利に喜ぶ聖タチバナベンチと落胆に沈む帝王ベンチを片目に電車を乗り継ぎパワフル高校へと帰っていった。


パワプロ「………先輩達でアイツらに勝てるのかな…?」


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