2018-02-21 22:40:01 更新

概要

陸軍から異動してきた提督が戦ったり恋愛したりほのぼのしたりするお話。


前書き

提督「大佐、こちら提督。これよりミッションを開始する。」

大佐「遊んでないで早く行け。」

提督「(*´・ω・)ウィッス」




「はあ……」


セミも文句を言いそうなほどの暑さの中、俺はとぼとぼ歩いていた。


目的地であるこの半島の鎮守府はまだまだ先のようで、考えるだけでさらに暑くなってくる。


訓練での暑さならば大したことはないが、今回ばかりは事情が違う。


もともと俺は陸軍の兵士なのだ。


だが、諸事情により本日付でこの半島の鎮守府に提督として着任することになった。


なんでそんなキテレツなことになっているのか、説明するのならば少し時間を遡る。



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ある日の訓練終わり。


「よう、提督」


「大佐、お疲れさまです」


同じ基地に所属している大佐が俺に声をかけてきた。


この人は基地の中でもかなりの古株で、昔から世話になっている。仲間や上層からの信頼も厚い、優秀な士官だ。


そんな彼からの頼みとすれば、心当たりはひとつ。


「お前に特別任務だ」


「またコンビニにお使いですか? 教官にばれて俺らがどうなったか知ってますよね?」


ダッシュ30キロに腕立て腹筋スクワット1000回。本当に死ぬかと思った。


「いや、そうじゃない。お前な、海軍に異動することになった」


「……は?」


このハゲは何をいってやがるんだ?


同人誌で滑ってコケて頭でも打ったんじゃないのか?


「なんですかそれ、意味不明なんですが」


「そのままの意味だ。今期の任務を持ってお前は海軍に異動になる」


「俺を売ったんですか?」


「な訳あるか。それに異動とはいってもただ向こうの兵士になるって訳じゃない」


じゃあ何になるってんだ。士官なんかは絶対にごめんだが。


「艦娘、鎮守府、深海棲艦。ここら辺の話は聞いたことあるだろ?」


「……」


艦娘。聞いたことはある。女の子の姿をしていて、一人一人が軍艦一隻レベルの戦闘力を持ち、人類を脅かす敵と戦っているとかなんとか。


「まさか……」


「そのまさかだ。お前には新しく提督として着任してもらう」


「あ、そっちか」


「なんだと思ったんだ?」


「いや、てっきり俺も一緒に戦わされるのかと」


正直そっちの方が気楽ではある。艦娘とかいうのがどんなのかは知らないが、自分の能力でどうにかなるのならやりようはある。


「まあそんなところだ。せいぜい頑張れ」


いやいやいや、このまま引き下がれるわけがない。


あらゆる手を使って大佐を揺さぶらねば。


「へえ~、いいんですか? 大佐、俺を飛ばしたらもう二度とコレクションを拝むことはできないんですよ?」


ちなみにここで言うコレクションとは大人気サークルの書いている同人誌のことである。入手方法は企業秘密。


付け加えるとこの大佐は重度のロリコン野郎である。


「な、貴様、それは卑怯だぞ!」


「いや俺がいないところで勝手に決めといて何言ってるんですか!」


「まあ聞け。早まるな。軍義中にお前を推薦したのは准将だ。オレジャナイ」


「あの野郎……」


准将はこの基地の基地指令も同時にこなしていて、当然ながら買収済みである。そのため、俺たちは基地のなかでもある程度自由が利く。


追記、准将はおねショタ専門家である。


「どうにかならないんですかそれ……」


「無理だな」


「なんてこった……」


ここ以外の場所で、このメンバー以外の連中と一緒に戦うことなんて考えても見なかった。とてつもなく憂鬱になる。


「ま、准将がお前を推薦したのにも理由はある。それをよく考えてやるべきことをやれ」


「……」


「それとこれ、今後の予定だ」


大佐から受け取った紙には、いくつかの今後の行事が書かれていた。


「なんですかこれ、研修?」


「ああ。いきなり着任って訳にはいかないらしい。まずは二、三ヵ月の研修を経てから着任しろとのことだ」


「めんどくせ」


何が研修だ。戦いもしない上のやつらが作ったマニュアルなんて役立たずに決まっているではないか。


「俺が言うのもなんだが、まあつまらないだろうな。既知の知識ばかりだろうし、周りは士官学校卒のお坊っちゃんばかりだ」


「うわあ素敵」


「ま、寝てりゃ終わるだろ。今日の夜にでも飲むぞ。俺からの餞別だ」



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その日は、大佐としばらく酒を飲んで話をしてから就寝した。


次の日。


「やれやれ、いよいよか……」


「ま、気楽にやってこい。そんなに気負うようなことでもないだろう」


「うっす」



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一ヶ月半後。


「ただいま戻りました」


「おう、早かったな」


予定よりも遥かに早い帰還。それを出迎える大佐の顔はいつも通りだった。


「話は聞いた。災難だったな」


「……怒らないんですか?」


「俺がか? 確かに喧しいやつらはいたが、俺は怒ってなんかいないぞ。むしろおまえのやったことは誇らしく思っている」


「……ありがとうございます」


何があったか説明しようか。


最初の一ヶ月ほどの期間は、研修学校で座学を中心とした研修を行っていた。


それは予定通りに終わったのだが、次の研修が実際に鎮守府で提督の業務を手伝うという内容だったのである。


そして幸か不幸か、俺の研修先の鎮守府の提督は絵に書いたようなクソ野郎だったのである。艦娘をまるでモノのように扱い、進撃時の犠牲も厭わない、挙げ句の果てに軍法会議モノの不正も数多く働いているようだったのだ。


その事実を知った俺はその日のうちに決断し、不正の証拠を集めた後にそれを上層部に叩きつけ、その提督と取り巻きの連中をぶん殴った。


結局、予定では3ヶ月ほどだった研修は1ヶ月半で終了し、今に至る。


思い返せば、我ながらやりすぎたかもしれない。もっと他の方法もあったのかもしれない。


だが、あの鎮守府の状況を目の当たりにして見過ごすことなど俺にはできなかった。


自分を殺してまで研修を続ける利益なんてない。そう思った。


少なくとも、海軍の内部がこれほどまでに腐っているうちは。


「で、これが大本営からの通達だ」


大佐から渡された通達書には、こう書いてあった。


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通達


第二支部東基地所属〇〇中尉


貴殿ノ着任ス鎮守府決定ノ旨ヲ伝エル


明日、モシクハ明後日マデニ着任スベシ


尚、研修中ノ貴殿ノ行動二関シテハ称賛ノ意ヲ表スルモノトスル


鎮守府ニハ既二一定量ノ資材及ビ秘書艦ヲ待機サセテイル。早急二向カワレタシ


大本営


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相変わらず機械的な文面に苛立ちを覚えつつ、俺は小さくため息をついた。


「見ての通り、特にペナルティもなしだ。よかったな」


「そうですね」


「必要な物の手配は済ませてある。お前は早く自分の持ち場へ行け」


「……はい」


「迎えの車もそのうち来る。それじゃあな」


「……」


大佐はいつもと変わらない様子で、用件だけ告げるとさっさと歩きだした。


そんなもんか、と半分飽きれ、半分苦笑いしながら俺も歩きだす。すると、少ししてからまた大佐の声が聞こえた。


「おい、提督」


「……?」


「頑張れよ」


大佐のくれたその一言が、俺にはものすごく大きくて、大切なものに感じた。


「……長きにわたりご指導ご鞭撻、本当にありがとうございました。行ってきます!」


「おう」



そうして、俺は大佐の用意してくれたタクシーに乗り込んだ。なんでタクシーなのかは知らんが。


さて、このままいけば俺は今ごろ目的地の鎮守府に着いていたはずだ。


そう、着いていたはずだったのだ。


あれさえなければ。


基地を出発してから二時間ほど経った頃だろうか、突如として俺の乗ったタクシーの前方に暴走族たちが現れた。


まあまあ時代遅れなそいつらはなぜかタクシーの前で煽り運転。運転手は激怒し、おいかけっこ開始。


挙げ句にガソリンは底をつき立ち往生。


さすがに申し訳ないと運転手は言ってきたが、俺は一刻も早くこの運転手から離れたかった。


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そうして、今に至るというわけだ。


まったく、運がないというかなんというか……。


「ん、あれか……?」


項垂れながら歩く俺の視界に、ようやくそれらしき建物が目に入った。


「や、やっと見えてきた……」


俺は悲鳴をあげる足に鞭打ってさらに歩いた。



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「鍵は……開いてるか」


静まり返った鎮守府の扉を開き、中に入る。


そういえば既に秘書艦を待機させてるとか言ってたな。未知の敵と戦う女軍人など、どんなゴリラ女なのか……。


この世に教官より恐ろしい女などいないと思っていたが、間違いかもしれない……。


「それにしても広いな、ここ……」


見た目通りのかなり立派な建物だ。基地ほどではないにしても、かなりの広さでなかなか目的の部屋が見つからない。


何やら執務室なる場所へ行けと通達にはあったが、そもそも執務ってなんだ?


「お、あそこか?」


しばらく歩いていると、ようやく執務室と書かれたプレートのある部屋を見つけた。


通達通りなら、既に秘書艦が待機しているはず。


「すー、はー……」


軽く深呼吸。


果たして、一体どんなゴリラ女が待ち構えているのだろうか。


「第二支部東基地の○○中尉、ただいま到着した。入ってもいいだろうか?」


ドアをノックしながら言う。


「は、はい! どうぞ!」


返事をした声はとても綺麗だった。軍人にしては珍しい。


そして何やら慌てているような様子だが、どうしたのだろうか。



「失礼す、る……?」


とりあえず入ろう、と思いドアを開けた俺は、目の前の光景に愕然とした。


「は、はじめまして! 白露型駆逐艦六番艦の五月雨っていいます! よろしくお願いします!」


俺はてっきり幻覚でも見てるんじゃないかと、何度か目を擦った。



拝啓、教官殿。


どうか安心して欲しい。やはりあなたより恐ろしい女性などこの世には存在しません。



そこに立っていたのは、五月雨と名乗る青髪の綺麗な少女だった。


大佐が喜びそうな子だな……。


じゃなくて。


「あ、あの……提督?」


「あ、ああ、済まない。ええと、君が通達にあった秘書艦、でいいのか?」


「はい! 一生懸命頑張ります!」


「お、おう。じゃあ、これからよろしく頼む」


「はい!」


艦娘って可愛いのか……。


これはもしかしたら、とんでもなく役得な仕事に就いたのかもな……。


……ん?


疲れているのだろうか、何やら五月雨の肩に小人のようなものが乗っている。


今度こそ幻覚なのだろうか。


「な、なあ、五月雨くん?」


「はい、何でしょうか? あの、提督、五月雨でいいですよ?」


五月雨は笑顔でそう言った。


な、なんだこの可愛い生物は! 持って帰りたい!


いや、これからはここが帰る場所なのか。


じゃなくて!


「ああ、変な事言うが、五月雨の肩に乗ってるのは……?」


「……え?」


五月雨は驚いたような顔をした。


やはり幻覚のようだ、やばい……。


「すまん、忘れてくれ。ちょっと疲れてるみたいだ」


「あ、待ってください! この、カチューシャをつけた制服の女の子の事ですか!?」


「ああ、そうだ。やっぱり五月雨にも見えてるのか?」


「はい! むしろ、なんで提督に見えるのでしょうか? 普通の人たちにはこの子達は見えないはずなのですが……」


「な、何で俺に……? というか、その子は一体……?」


五月雨の肩にちょこんと座る子人は、不思議そうに俺の顔をマジマジと見つめている。


「この子は私の出撃のお手伝いをしてくれる妖精さんの1人で、機銃の取り扱いを手伝ってくれる子です」


「よ、妖精……?」


リアリズムの塊である軍隊の中での、突然のファンタジー。


俺でなくても混乱するだろう。


「妖精さんっていうのは、私たち艦娘の戦闘や修理を手伝ってくれる特別な小人さんたちのことです。本来は私たち艦娘にしか見えないはずなのですが……」


「なんで俺に見えるんだろうな……」


「うーん、全然分かりません……」


五月雨も難しい顔をした。話してくれたとおり、俺が妖精さんを見ることが出来るのは極めて特異的なことらしい。


それにも何かしらの意味があるはずなのだが……。


「まあ、何はともあれこの子も戦友なんだよな。よろしく頼むよ」


五月雨の肩に乗る妖精さんにそう語りかけると、妖精さんは自信に満ちた顔でビシッと敬礼をした。


「はは、いい敬礼だ」


軽く笑いながら人差し指で妖精さんの頭を撫でる。妖精さんは満足気だ。


視覚できるのと同じく、触れることもできた。


すると、五月雨が異論の声を上げた。


「あ、ずるい、私も!」


「え?」


「私も撫でてください!」


「お、おう……」


謎の勢いに押し切られ、五月雨の頭もぐりぐりと撫でる。


艶々とした青髪はとても触り心地が良く、何やらいい匂いまでしやがる。


女性慣れしていない俺のOSは既にオーバーヒート寸前だ。


「なんだこの状況……」


軍人らしからぬ、ゆったりとした雰囲気に苦笑いしつつも、何とかなりそうだと俺は思った。



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「ぐおお、重い……!」


「よいしょ、よいしょ」


「悪いな、力仕事なのに手伝わせて」


「いえ、これも秘書艦の務めです!」


俺と五月雨は今、大本営から送られてきた鎮守府運営のための書類やら何やらの整理に追われていた。


鎮守府稼働初期と考えれば仕方の無いことだが、如何せん量が多い。


クソ、基地にいた時はこういう雑務は賭けに負けた奴(9割が大佐)がやってたからな……。


すぐに使いそうな書類はデスクへ、そうでないものはファイリングして棚へ。備品は押入れや倉庫へ。


暫くの間二人がかりで作業していると、ようやく一段落することが出来た。


「ふう、こんなもんか」


「お疲れ様です!」


「ああ、五月雨もありがとな」


椅子に腰掛けながら軽く礼を言う。


可憐な見た目もさることながら、五月雨は本当にいい子だ。


秘書艦だから、と本人は言うが、文句のひとつも言わずに小さな体でせっせと作業を手伝ってくれた。これは絶対に大佐には言えない。


すると、五月雨が再び声をかけてきた。


「あ、提督、もうひとつ開けてないダンボールがありますよ? 送り主は……提督のいた基地?」


「え?」


基地からのダンボール?


「これも開けt」


「ストオオオオオップ!」


「きゃあ! ど、どうしたんですか!?」


五月雨の手元から強引にダンボールを奪い取った。


ダメ、ゼッタイ。あいつら碌でもないもの入れたに決まってる。


薄い本とかだったら初日に俺の提督生命が終わる。


「い、いや、これは俺が開けるから! な!?」


「は、はい……」


恐る恐る、ダンボールを開けてみた。


すると。


「あ……すまん五月雨、大丈夫だ。見ていいぞ」


「わあ、これって……」


ダンボールの中には、基地の仲間たちが入れたであろう彼らと俺の写った写真や、思い出の詰まった物が沢山入っていた。


「ああ、俺がいたとこの連中だ」


「みんな楽しそう……! すごくいい人達に見えます!」


「ああ。バカなことばっかやる連中だが、一般的なイメージみたいに悪い奴らはいないさ」


アホ面で笑う仲間たちを見ると、少しだけ寂しく感じる。


もう会えない訳でもないが、なんだかんだで大佐に拾われてからアイツらとはずっと一緒にいたのだ。


「またみんなで飲みてぇなぁ……」


ポツリと呟くと、五月雨が不安そうな顔でこう言ってきた。


「あの、提督……」


「どうした?」


「提督は、ここでお仕事をするのは嫌ですか……?」


五月雨の顔は、先程までの明るい顔とは打って変わって、寂しそうになっていた。


我ながらデリカシーに欠けた発言だったかもしれない。


「まあ正直、いきなり異動って言われた時はふざけんなと思ったけどな。でも俺は、これからたくさんの仲間と出会って、たくさん笑って……」


大佐は、ここに来る前にそうなった意味をよく考えろと言っていた。


そんなもの俺に分かるわけがない。


使えない頭を使おうとしてもしょうがない。だったら、俺は俺に出来ることをする。


基地のみんなが俺にしてくれたみたいに。


「誰にでも胸張って最高だって言える鎮守府にしたいと思ってる。もちろん、五月雨も一緒に」


俺は、基地の仲間たちは誰にでも誇れる最高の友だと思ってる。


だから、ここもそんな場所にしたい。


「……提督!」


「ん?」


「私、頑張ります! 提督がこの場所を皆さんに自慢出来るように! この鎮守府を、最高の場所に出来るように!」


五月雨は、もう暗い顔はしていなかった。


「……ああ、よろしく頼む」




さて、ここで終われば( ;∀;)イイハナシダナ-で終わるんだろうが、そうは問屋が卸さなかった。


あのハゲがこのままで終わるはずが無いということを、愚かにも俺は忘れていた。


「よし、じゃあそのダンボールも空にして畳んでくれ」


「分かりました! え、これ……」


「ん、どうかしたか?」


「て、て、て……」


「て?」


「提督のえっち!!!」


「ブヘァッ!!!」


右頬にとてつもない衝撃を受け、徐々に薄くなっていく視界に写ったのは、大佐が直々に選りすぐったコレクション(18禁)だった。


そ、そりゃこうなるわ……。あのハゲ、いつか性癖暴露してやる……。



決意虚しく、俺は冷たい執務室の床に受け止められながら意識を失った。



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「む……」


目を覚ました俺の視界には、見覚えの無い天井が映った。


「あ、提督。気分はどうですか?」


声のする方を向くと、そこにはうたた寝をする五月雨と、その五月雨に膝枕をしている少女がいた。


確か俺は、五月雨にビンタ食らって……。


あのハゲ、次にあったらタダじゃ済まさんぞ……。


じゃなくて。


「えーと、君は?」


「ああ、自己紹介がまだでしたね。兵装実験軽巡、夕張です。よろしくね」


「兵装実験……プロパガンダみたいなやつか?」


「あー、そうかも。でも実験データは機密扱いだから、ちょっと違うかな?」


ちなみに、プロパガンダってのは宣伝とか広告とか、見た目的な意味合いになる。


「なるほど……で、なんでここに?」


「あれ、着任の書類見てませんか?」


「書類……纏めたぞ、ちゃんと」


中はまだ見てない。だって量多すぎるんだもん。


「あはは、災難でしたね。五月雨ちゃんから事情は聞きましたよ」


「はは、面目ない……あ、それと夕張、でいいか?」


「はい、何でしょう?」


「敬語なんて使わなくていいぞ。俺的にはあんまり上下関係とかも作りたくないし、リラックスしていこうぜ」


「提督……分かりました、じゃあ、これからよろしくね」


ニコッと笑ったその顔は、とても綺麗だった。まだ二人目だが、やっぱり艦娘って可愛い。


「ところでさ、提督ってこういうの好みなの?」


夕張は若干悪そうな笑みを浮かべて、懐からコレクションを取り出した。


それと同時に俺の体から汗が噴き出す。


「い、いや、違うんだ。五月雨には説明する間もなくぶっ叩かれたけど、それは俺のじゃなくて基地の仲間のおふざけなんだ」


本当は俺のだけど!


「へぇ〜。でもさ、提督」


コレクションを近くの机に置き、五月雨の頭をそっと椅子に下ろすと、夕張は俺のいるベッドに身を乗り出してきた。


「私、提督がしたいって言うんならこういうコト、してもいいんだよ?」


なすがままに上を取られ、そのままベッドに押し倒される。


如何せん女性との関わりなど皆無だったため、俺のOSは全く役に立たない。


教官は別。アレは人間じゃない。こんなこと言ったら殺されるが。


「い、いや、夕張……?」


「いいから、じっとしてて……」


夕張は目を閉じ、どんどん顔を近づけてくる。


綺麗な髪や整った顔立ちがますますハッキリと視認できる。丹念に手入れされたであろう髪からいい匂いまでする。


押し倒されているためか、体中が柔らかな感触に包まれていて、俺の理性を飛ばそうと躍起になっている。


だが、ここで勢いに任せる訳にはいかない。


「なあ、夕張、ちょっと待ってくれ。な、何でこんなことするんだ?」


なるべく優しく肩を掴み、少し体を離す。


クソ、肩まで触り心地良いとかヤバすぎるだろ!


「理由……か。確かに、提督は分かんないかもね」


夕張は改めて座り直し、話してくれた。


「私ね、ここに来る前は、提督が研修しに来てたあの鎮守府にいたの。本当に毎日が辛かった」


あの鎮守府。俺が研修に行き、そこにいた提督をぶん殴ってクビにしたあの鎮守府。


「でもある日、提督が研修しに来た日に、駆逐艦の子が泣きながら、でも凄く嬉しそうに皆に提督の話をしてたの。自分の話を真剣に聞いてくれた。泣いてた自分を抱き締めてくれた。心から怒ってくれたって」


泣いていた駆逐艦。名前は、電。廊下で泣いてるのを見つけて、色々と事情を聞いた。


「あの時は私は提督と口を交わすことは無かったけど、提督ならきっと私達を救ってくれるって皆が思ってたの。それが今、期待通りになってる。もうあの元提督はいないし、皆それぞれ自由になった」


確かに、思い返せばあの時は艦娘とはあまり言葉を交わさなかったな。と言うよりは俺が避けてたんだが。


「私は……私は、提督に感謝したくてもしきれない。だから、ここに来たの。貴方の力になりたくて。提督になら、何をされても平気」


夕張はまた俺に近付き、俺の首元に腕を絡めてきた。目元にはうっすらと涙が浮かび、顔は少し赤くなっている。


だが。


確かに、彼女たちからすれば俺は感謝の対象になるかもしれない。


だが、だからって俺はこのまま夕張の言う通りにするわけにはいかなかった。


「ダメだ」


俺はさっきよりも少し強めに、夕張を引き離した。


「え……?」


絶対にダメだ。


夕張がそういう事をしてもいい、されてもいいと思うのは、俺だから、じゃない。


俺が恩人だからだ。


あの出来事が、結果として彼女たちを救う結果になったとしても、それは俺じゃなくても出来ることだ。


仮にあの騒動を起こして、艦娘たちを救ったのが俺じゃなかったとしても、夕張はきっと恩を感じてこのような行動をするのだろう。


それじゃダメなんだ。


いや、キッカケに関しては誤解だが。


「夕張、聞いてくれ。お前がそういう風に思うのは、きっと俺が恩人だからだ。けど、あれは俺じゃなくてもできる。だからこういう返し方はして欲しくない」


夕張は真面目な顔で聞いていた。


これだけは伝えなければならない。


「もっと自分を大切にするんだ。夕張だって女の子なんだから」


俺は夕張の気持ちを受け取れるほど立派な人間じゃない。


「えーと、長くなっちまったけど何が言いたいかっていうと、そんなに気を遣わなくていいんだ」


また涙目になる夕張の頭を軽く撫でる。サラサラとした髪はやっぱり触り心地が良い。


すると、夕張は啜り泣きながら俺の体に抱きついてきた。


「夕張、大丈夫か?」


「うるさい、バカ……」


(分かってるよそんなこと……そう言ってくれる提督だから、私は……)


「……ありがとな」


腕の中で震える夕張を軽く抱きしめる。やっぱり女の子なんだな、と思った。


この子たちが深海棲艦どもに対抗するための兵器だとしても、俺はそんなことは思わないし、この子たちだって人間と一緒だ。


だから、俺が守らなきゃいけない。


もう二度と、あの鎮守府みたいな場所を作らないためにも。


「う、ん……」


すると、俺と夕張の横で五月雨が目を覚ました。


「お、五月雨起きたか」


「……」


五月雨は半分ほど体を起こした状態で静止し、驚いたような顔をしている。


俺も夕張もそれを見て静止。そして自分たちの状況を確認。


「「あっ」」


五月雨が再びパタリと倒れた。


「五月雨ぇぇぇぇええ!」


「五月雨ちゃん! 誤解だよぉぉおお!」



そこから誤解を解くのに数時間以上かかったのはまた別のお話。



ーーーーーーーーーーーーーーーー



次の日。


「くあぁ……ふう」


起床時刻はマルナナマルマル。いつも通りの時間だ。


さて、トレーニングしに行くか。


つっても、トレーニングルームなんかないよなここ……。



ーーー ーーー ーーー ーーー



「はっ、はっ……」


俺は海岸沿いを走っていた。


散歩する市民と挨拶を交わしつつ、少し足を止めた。


「ふう、これからはこの海を守るんだな……」


海からの風が火照った体を通り過ぎてゆく。


これから、鎮守府で提督としてやっていくことに関して、自信はあまりなかった。


戦線で小隊を率いたりする経験はあるが、仲間たち全員に常に気を配ったり、上とコミュニケーションを取ったりするのは大佐たちの役割だった。


だが、今は違う。


五月雨や夕張は、俺が守らなければならない。


この海軍の現状から。


「やるしかない、よな……」


改めて覚悟をしていると、空気を読まずに腹の虫が鳴いた。


時刻はマルナナサンマル、帰路の時間も考えれば、そろそろ引き返すのが妥当だろう。


そう思ったその時だった。


「ん……?」


ふと目をやった海面に、何かが浮かんでいる。


人、か……?


いや、そんなわけ……。


いや人だ!


「クソッ!」


上着を脱ぎ捨て、俺は一目散に海に飛び込んだ。


意識があるようには見えなかった。


漂流者か何なのか分からないが、溺れているのだとしたら一刻を争う。


頼む、間に合ってくれ、と必死に泳いだ。



ーーー ーーー ーーー ーーー



マルハチマルマル、鎮守府にて。


俺は海に浮かんでいた女性を背負い、息も整わないまま五月雨たちに助けを求めた。


「ゲホッ、五月雨、夕張! 頼む、来てくれ!」


「は、はい! どうしたんですか!?」


「提督、どこ行って……どうしたの!?」


二人とも、ビショ濡れになった俺と女性を見て困惑した。


だが、今は一刻を争う。


「この人を、医務室に早く! 水は吐かせた、から……!」


急いでいたこともあってか、俺自身、なかなか呼吸が落ち着かない。


しかし、夕張が女性を運ぼうとする俺と五月雨を止めた。


「ちょっと待って、提督……この人、やっぱり……」


「な、なんだ、何か知ってるのか?」


「提督、この人は艦娘だよ。間違いない。だから、医務室じゃなくて入渠ドックに運んで! こっち!」


思わぬ事実に驚きながらも、俺たちは急いだ。


助けた女性の体温はかなり低かったのだ。


まさに、この1秒が生死を分ける。


「くそ、間に合え!」



ーーー ーーー ーーー ーーー



「ここだよ、入渠ドック!」


入渠ドック、と書かれたプレートのある部屋に辿り着いた。


「この湯船の中に! 服は着たままでいいから!」


「よし、そっとな。よい、しょ」


迅速に、体に与える負担を最小限に抑えて湯船に女性を寝かせる。


すると。


「あ、提督、そのお湯に触っちゃ」


「えっいでででででで!」


湯船に張られていたお湯にしか見えない液体に俺の手が触れた途端、ビリビリと痺れるような痛みに襲われた。


俺は驚いて咄嗟に手を引っ込めた。


「いってぇ! なんだこれ!?」


「これ、艦娘の入渠用のお湯は人体に有害なんだよ! 手、大丈夫?」


「ああ、大丈夫そうだ……気を付けるよ」


「本当に? 溶けたりしてない?」


「溶ける? 怖っ……大丈夫そうだが……」


「なら良かった……」


俺は目線を手から女性に移した。


これだけ近くで騒いでも、全く起きる気配がない。


見た目以上に傷は深そうだった。


「このまま待ってればいいのか?」


「はい、そうです」


「提督、そろそろ事情聞いてもいい?」


「ああ、急に悪かったな。着替えてくるから執務室で少し待っててくれ」



濡れた服を洗濯カゴに入れ、執務室で事情を説明した。



「そうだったんだ……」


「ああ、俺が見つけられて良かったよ……」


「とりあえず! 提督、勝手に出ていかないこと!」


「え?」


「居なくなってて、すごく心配したんだから。五月雨ちゃんまた泣きそうになっちゃうし」


「な、泣いてないですよ!」


「はは、悪いな、次からはちゃんと声をかけるよ」


俺なんかのことを心配してくれるとは、嬉しい限りだ。


何にせよ、まずは女性が目を覚ますのを待つしかなかった。



ーーー ーーー ーーー ーーー



「なあ夕張、あの様子だと完治までどのくらいかかりそうか分かるか?」


「そう、だな……」


夕張は手元の資料をパラパラとめくり、電卓を慣れた手つきで扱う。


「顔が髪に隠れて見えなかったから確証は持てないんだけど、たぶんあの人は戦艦。それがあそこまで重傷だと、六、七時間はかかるかな……」


「長いな……」


「高速修復材があれば話は別なんだけど……」


俺と夕張が現状に頭を悩ませていると、五月雨が思わぬ一言を発した。


「あれ? 提督、確か資材と一緒に開発資材と高速修復材もたくさん届いてませんでした?」


「え、そうだっけ?」


鋼材やらボーキサイトやらは山のように送られてきて今は倉庫の中だが、高速修復材はどれかよく分からなかった。


「高速修復材って、緑色のバケツみたいなやつだよ?」


「え、ああ、あれか。オイルか何かだと思ってたが」


「良かった、備蓄はあるんだね。じゃあ使ってくるよ」


思わぬ幸運に感謝しつつ、俺も席を立った。


「俺も行くよ。傷が治ったら空いている部屋に運ぼう。五月雨も来てくれ」


「は、はい!」


廊下を歩きながら、俺は不安を胸に募らせていた。


傷が治っても意識が戻るとは限らない。


ずっと昏睡状態のままの奴も見てきた。


今はただ、そうならない事を祈るしかなかった。



ーーー ーーー ーーー ーーー



「よいしょっと。じゃあ入れるね」


湯船の中に緑色の液体が注がれていく。まるでメロンソーダみたいだ。


「おお、すごいな……」


あっという間に傷が治っていく。切り傷も火傷跡も、綺麗に無くなった。


「よし、これで完治したはず」


「医務室まで運ぼう。せーのっ」



ーーー ーーー ーーー ーーー



鎮守府の構造上は、おおよそ学校に近しいものがある。


食堂や医務室、執務室など、業務に関わる部屋は多くが一階に集まっている。


そしてその上の階には、主に艦娘達の部屋がある。今は空き部屋も多く一人一部屋を利用しているが、鎮守府に艦娘が八人しか着任できない制度ができる前は、艦種ごとに階が分かれていたり、相部屋があったりしたそうだ。


ちなみに、俺の自室は執務室の隣にあって、普通の部屋よりは狭めに作ってある。もともと置く物もないから何ら問題は無い。


今は、入渠ドックと医務室が近い事をありがたく思う。


一番手前のベッドに、女性の体をそっと横たえた。


「……くそッ」


まだ目は覚まさない。


嫌な記憶が頭をよぎる。


「……夕張、悪いがしばらくこの人に付いていてくれないか」


「うん、分かった。任せて」


夕張は快く了承してくれた。


いくら女性の容態が気になるとはいえ、鎮守府はもう稼働している。報告書も書かなければならない。


その日1日、付きっきりになることは出来なかった。


俺は執務室に戻り、五月雨を秘書艦として執務をこなしていった。



ーーー ーーー ーーー ーーー



「ふう、こんなもんか……」


業務日誌に資材計算、作戦通告書類と、なかなかにボリュームのある仕事だった。


今までは体を動かすようなことしかしてこなかった分、この先ずっとこんな感じだと思うと少なからず気が重くなる。


「お疲れ様です、提督」


「ああ、五月雨もありがとな。助かったよ」


「えへへ〜!」


五月雨の手際はかなりのものだった。他のことに関してはドジっ子属性が目立つのだが、重要な仕事に関してはミスがないようにインプットされている、と書類にはあった。


その言い回しが気に入らず、その紙を破り捨てたのは言うまでもない。


すると。


「提督! ちょっと来て!」


夕張が焦りを露わにして執務室に駆け込んできた。


「何だ、どうした?」


「助けた女の人、段々呼吸が弱くなってきてて……このままじゃ……!」


「ッ……!」


ゾッと、得体の知れない悪寒が体を伝う。


俺たちは医務室へと走った。



ーーー ーーー ーーー ーーー



「クソ、何でだ……!」


傷は治っている。それは間違いない。


俺は力強く手を握った。


「頼む、そんな簡単に居なくならないでくれ! 俺から離れていかないでくれ……!」


「提督……」


何故かは分からないが、無性に胸が痛くなる。


誰かが目の前から居なくなってしまうことが、初めてではないかのように。


「目を覚ましてくれ……!」








ドクン












ドクン














昏睡状態に陥っていて、目覚める兆しが無いと言われていても、意識を取り戻すことはある。




科学的、医学的に説明が出来ないとしても、何処かにあるその人の心が、生きたいと、強く願えば。




心臓は、熱く鼓動を刻み始める。




「……」



俺が手を握ったまま、女性は目を開き、起き上がった。


俺も夕張も五月雨も、静止してしまった。


女性は柔らかい目で俺を見つめている。


「あなた、なのね。私を呼んでくれたのは」


「呼んだ……?」


「ありがとう……」


彼女はとても嬉しそうに、俺の手をギュッと握り返してきた。その手はしっかりと暖かかった。


だが、俺はその時、目の前の状況に頭の整理がついていかなかった。


それは後ろの二人も同じようだった。


「とりあえず、名前を聞かせてくれないか?」


「扶桑型超弩級戦艦、姉の方、扶桑です。提督、私を呼んでくれてありがとう」


「呼んだっていうのは……?」


俺は扶桑の名前を知らなかった。


それは確かだ。


扶桑は握った俺の手を見ながら話してくれた。


「暗い暗い海の底で、ずっと助けを待っていた。けれど、ようやく助けに来てくれたその艦隊の指揮官は、私を必要としなかった」


通常、出撃後の戦況判断や撤退指示は旗艦に一任されている。だが、扶桑の言い方だと、鎮守府の提督が見捨てろと指示を出したことになる。


別段不思議なことでもない。トランシーバーひとつ持たせておけばできることだ。


通信することだけなら。


「やっと陽の光を見られたのに、何も出来なくて、悔しくて、寂しくて、辛くて……燃料も尽きて、意識も体も、また海の底に沈んでいった」


全身がザワつくのを感じた。


戦場ならば、たとえどんなに気に食わない部隊がいたとしても助け合うのが常識だ。ミスをすれば死ぬのだから。


助けを乞う艦娘を見捨てるなんて、俺は絶対に許せない。


「もう、疲れたなぁって。ここで終わってもいいんじゃないかって思った」


傷が治っても目が覚めなかったのは、そういうことか……。


「けれど、上の方から、小さな光が私を照らしてきた。それは、どんどん大きく、力強くなって……私に優しい言葉を、力強い言葉を、沢山くれた。あの光はきっと、いえ、間違いなく……」


扶桑は再び俺の方に向き直って、言った。


「提督、あなたのものだった」


「そう、か……」


届いていた。


俺の声は、ちゃんと。


今度こそ……。


ん、今度こそって何だ……?


「とにかく、目を覚ましてくれて良かった……何処か体に不調とかはないか?」


「大丈夫です。少し気だるいくらいで」


「そうか……まだ体調も心配だし、ゆっくり休んでくれ。細かいことは明日でいい」


俺自身、相当疲れが溜まっているのが分かる。


トレーニングそのものはいつも通りだったとしても、そこから全力で海を泳ぎ、人ひとりを背負って走り、慣れない執務をこなした。


既にかなりの眠気が襲いかかってきている。


「夕張と五月雨も、今日は上がってくれ。色々ありがとな。助かった」


「わ、分かりました。お疲れ様です」


「提督も、ちゃんと休んでよ?」


「おう。おやすみ」


軽く手を振って、医務室を出ていく二人を見送る。


「さて、俺もそろそろ……」


二人に続いて医務室を出ようと立ち上がると、扶桑が俺の手を名残惜しげに握り直した。


「ど、どうした? 扶桑」


「あっ、す、すみません。何でもないです……」


無意識の事だったのか、扶桑は恥ずかしそうに手を離した。


「……」


俺は大佐ほど空気が読めないわけじゃない。


1人は寂しいのかもしれない。


目の前で見捨てられたトラウマなんて、そう簡単に消えるものじゃない。


今日くらいは、本人が良いと言うのなら一緒にいてあげてもいいかもしれない。


「なあ、扶桑。今日は俺もここで寝ていいか?」


「えっ……?」


「1人は寂しいもんな。それくらい、俺にも分かるから」


「提督……もちろんです」


着替えと支度をするために、俺は一旦医務室を離れた。


そして、その間にスマホでやるべき事をやっておいた。


ーーー ーーー ーーー


「よし、じゃあ寝るか」


「は、はい……」


もちろん、ベッドは別々だ。


扶桑の要望でくっ付けてはいるが。


「おやすみ」


「おやすみなさい……」


あ〜、本当に一瞬で眠れそうだ……。


ウトウトとしていると、左手に柔らかい感触を感じた。


「扶桑……?」


隣を見ると、扶桑が口元まで布団をかぶってこちらを見ていた。


「ごめんなさい、あの、眠るまででいいので、こうしていてもいいですか……?」


見た目に似合わず幼げなその要望に、俺は思わず微笑してしまった。


「ああ、もちろん」


そう応え、扶桑の手を握り返したのを最後に、俺の意識はどんどん遠のいていった。



ーーー ーーー ーーー ーーー



次の日。


時刻はマルナナマルマル。


普段の起床時刻と比べると幾分か遅いが、おおかた夕張と五月雨が気を遣ってくれたのだろう。


「ぬぅ……」


暖かい……。


あれ、俺は確か昨日……。


五感が周りの状況を知覚し始める。


何となく寝返りをうつと、ふにゅん、と柔らかいモノが俺の顔にあたった。


「ん、何だこれ……」


目も半開きのまま、顔に当たった何かを手で退かそうとする。


モニモニ。フニフニ。ぽよん。


なんとも言えない柔らかさ。


マジでなんだこれ。


「んぅ、提督、そんなに触っては……」


すぐ側から恥ずかしそうな声が聞こえてくる。


そして段々と俺の血の気が引いていく。


「……」


「お、おはようございます、提督」


アカーン!!!!!!!


これはアカーン!!!!!!!


あ、あの柔らかいモノはおおおおお、おっ……!


俺はすぐさまベッドから飛び退き、鮮やかに土下座をした。


「本当にすみませんでした。どうか一思いにやってください」


一度、夏の水泳訓練中に教官の胸に触れてしまった同僚がいた。


不慮の事故なのは誰の目にも明らかだったのだが、次の日、彼は1週間分の記憶と眉毛を失って戻ってきた。


それ以来、俺たち東基地の中では女性(胸部)への接触をタブーとしている。


「あの、提督、よく見てください……」


申し訳なさそうな扶桑の声に、ベッドの方に目を向けてみた。


「その、提督ではなくて私が、提督のベッドに入ってしまって……」


言う通り、扶桑は俺が昨日眠ったベッドの上にいた。


つまり、俺は全く気付いていなかったが、ほぼひとつのベッドで添い寝していたらしい。


「……」


「……」


二人して顔が真っ赤になった。


「……ぷっ」


「ふふふ」


「あははは」


なんだか可笑しくて、二人して笑ってしまった。


「いや、本当に済まなかった。何だったら殴ってくれていいぞ」


「もう、だからさっきのは私が悪いんですよ」


とりあえず、命があってよかった(俺の)。


扶桑の体調も大丈夫そうだ。


「起きられそうか?」


「はい、大丈夫……です」


手を貸しながら、扶桑が立ち上がるのを見守る。


立ち上がってから気付いたが、扶桑は中々に高身長だ。それでいて体はすんなりとしていて、肌も綺麗だ。


間違いなく美人の部類に入るだろう。


「……柔らかかったな」


扶桑には聞こえないように、俺はボソッと呟いた。


後書き

にゃんだふる「さてさて、リメイク版、スタートしましたね!」

提督「どんだけ待たせてんだよ、読者舐めてんのか?」

にゃんだふる「はい、いきなりガン飛ばさないで。泣きそうだから」

提督「ま、何はともあれようやく連載再開だ。少しずつ修正してくから、1度読んでくれた読者もまた楽しめるはずだぜ」

にゃんだふる「もちろんです! 出来るか分かりませんが追加のエピソードも考えてますし、以前よりもさらに面白くなりますよ!」

提督「出来るか分からないじゃなくてやれよ」

にゃんだふる「┐(´д`)┌ハイハイ」

提督「」スチャ__(⌒(_'ω')_┳━──

にゃんだふる「待って無言で撃たないで! あ、ちなみにSeason2が非公開になってると思うんですが、仕様です!」


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29件コメントされています

1: SS好きの名無しさん 2017-01-01 19:34:01 ID: HbRl2yas

陸軍提督、いいゾ~これ。
楽しみにしてるから続き書いてくれよな~、頼むよ~。

2: にゃんだふる 2017-01-01 20:21:31 ID: uebmDcmN

Re.1
コメントありがとうございます!
出来るだけ早く更新します!

3: うたや 2017-01-02 20:11:27 ID: lOti7luP

期待。
じゃんじゃん更新しちゃってぇ~←

4: 春雨麻婆豆腐 2017-01-02 21:22:20 ID: zB0LJcF-

即デレとは…この提督、出来る!
今後の展開に超期待。

5: にゃんだふる 2017-01-03 19:37:43 ID: HRvxO9Tj

Re・うたや様、春雨麻婆豆腐様

な、なんか超プレッシャーかけられた気が!w
頑張って書くので読んでいただけると嬉しいです!

6: brack 2017-01-04 19:15:44 ID: emUBInSb

続きが楽しみです!
更新待ってます!頑張ってください!

7: のびかけ尋 2017-01-05 13:00:55 ID: 7ALlNskl

こいつ、俺のなりたい提督像にほぼそっくりな提督を書いていらっしゃる
応援しています
頑張ってください
応援してる俺の図→ズイ(ง ˘ω˘ )วズイ

8: にゃんだふる 2017-01-05 16:21:05 ID: VIfOf2eL

Re・brack様、のびかけ尋様

応援ありがとうございます!
自己紹介にも書いてますが、コメント頂けると本当に発狂しそうなほど嬉しいです!ありがとうございます!

のびかけ尋様はコナン君の方も頑張ってください!

9: 春雨麻婆豆腐 2017-01-06 20:03:14 ID: nX50UUxR

提督の戦闘シーンはあるのかな?
あったら期待、無くても期待。頑張ってください!

10: SS好きの名無しさん 2017-01-06 23:21:43 ID: dgatr4FE

続きに超期待! 艦これssのなかでも一番好みのタイプのss これから(恐らく来週前後)寒くなってくると言うので御身体に気をつけて...応援してます!

11: にゃんだふる 2017-01-07 21:20:40 ID: W_saxIk0

Re・春雨麻婆豆腐様、10様

コメントありがとうございます!
戦闘シーンは考えてるのですが、如何せん文章力がないので………。
10番様、お互い風邪など引かぬよう、気を付けましょう!

12: SS好きの名無しさん 2017-01-10 01:35:26 ID: Hslz9cBO

五月雨かわいい妖精さんかわいい

個人的に8人縛りの設定はいらなかったなー
選ばれなかった子が可哀想ってのが先にきちゃうわ

13: にゃんだふる 2017-01-10 06:34:29 ID: 3cP4fXmU

Re・12様
やっぱりそう思いますよね!
でも大丈夫です!八人縛りの対応策は考えてあるので、楽しみにしててください!

14: SS好きの名無しさん 2017-01-16 03:33:33 ID: AJce77y0

陸軍いい人しかいねぇ!趣味があれだけど!
研修中の話を番外編として描いてくれないかなぁ(チラッ)
無理せず続き頑張ってください!

あ、全然関係ないけど中将の中将はチョッキンしちゃおうねー

15: のびかけ尋 2017-01-16 16:29:40 ID: 1MXXDRal

さーて、中将は撃っちゃおうねー
(`・ω-)▄︻┻┳═一

16: にゃんだふる 2017-01-16 22:25:37 ID: c-GKE4RP

Re・14様、のびかけ尋様

中将はいずれ目に物見せてあげるのでそのくらいでw
番外編の案はぜひやらせていただきます!
なるはやで書くのでお楽しみに!

17: masaマサ 2017-01-17 07:34:14 ID: CSYFkWje

よくも私の嫁を…
ゴミ(中将)は掃除だ

18: のびかけ尋 2017-01-17 21:24:11 ID: gX9WzPLt

ありがとうございます!(吹雪みたいに)

19: SS好きの名無しさん 2017-01-18 08:39:41 ID: ThcHwWCU

このSSの艦娘が好きです
このSSの提督も好きです
ただし轟沈だけはさせないように
ご注意ください

20: SS好きの名無しさん 2017-01-18 12:29:17 ID: OWeVGZfr

このSSの艦娘が好きです
このSSの提督も好きです
無理せず頑張ってください!

21: SS好きの名無しさん 2017-01-29 18:15:41 ID: DBVYxDUr

続き楽しみにしてます!

22: yazora 2017-01-29 19:06:52 ID: oe14fFfR

いいコンテンツだ(ス並感)

23: SS好きの名無しさん 2017-01-30 19:43:04 ID: hKQ_cP-O

お大事に・・・

24: SS好きの名無しさん 2017-01-31 23:20:43 ID: MSuPZw0R

はよよくなって更新してください
お大事に

楽しみにしてます

25: SS好きの名無しさん 2017-02-15 07:37:48 ID: 5RU7-go9

続きが気になりますね〜。

26: 金属製の餅 2017-02-16 23:28:03 ID: 68jJMf9j

続きが楽しみです!

27: SS好きの名無しさん 2017-05-22 21:22:52 ID: aioFKsif

面白いです。

28: SS好きの名無しさん 2018-02-08 20:25:22 ID: a4Ma8Dz3

すごく面白いです。

29: SS好きの名無しさん 2018-02-12 22:57:58 ID: N-u07-hO

待ってましたよ!?
待ちわびて…
待ちくたびれました!!
復活おめでとうございます!!


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1: SS好きの名無しさん 2018-02-08 20:24:10 ID: a4Ma8Dz3

早く続きをお願いします!!


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