2017-02-19 18:37:11 更新

概要

陸軍から異動してきた提督が戦ったり恋愛したりほのぼのしたりするお話。


前書き

提督「大佐、こちら提督。これよりミッションを開始する。」

大佐「遊んでないで早く行け。」

提督「(*´・ω・)ウィッス」








提督「はぁ………。」トボトボ



俺は何が悲しくてこんないい天気の下を一人ぼっちで歩いているのか。


俺は今、この島の鎮守府に向かっている。



今日をもって着任予定の新任提督である。



だが、俺は元々陸軍の兵士だ。


なんでこんな事になっているのか、少し時間を遡る。



ーーーーーーーーーーーーーーー



ある日



大佐「よう、提督。」



提督「あ、大佐。こんにちは。」



この人は知り合いの大佐で、色々とよくして貰っている。仲間や上層からの信頼も厚い、優秀な士官だ。



大佐「お前に頼みがある。」



提督「またコンビニにお使いですか?あれバレるとめっちゃ怒られるんですよ?」



大佐「いや、そうじゃない。お前、海軍に異動になった。」



提督「………は?」



このハゲは何を言ってるんだ?


同人誌で滑ってコケて頭でも打ったんじゃあないのか?



提督「なんですかそれ。意味不明なんですが。」



大佐「言葉の通りだ。今期の任務をもってお前は海軍に異動になった。」



提督「俺を売ったんですか?」



大佐「な訳あるか。それに異動っつってもただ向こうの兵士になる訳じゃない。」



大佐「艦娘、鎮守府、深海棲艦。ここら辺の話は聞いたことがあるだろ?」



艦娘。噂は聞いたことがある。女の子の姿をしているのに桁外れの戦闘力を持っていて、人類を脅かす敵と戦ってるとかなんとか。




提督「まさか………。」



大佐「そのまさかだ。お前には新しく提督として着任してもらう。」



提督「あ、そっちか。」



大佐「なんだと思ったんだ?」



提督「いや、てっきり俺も一緒に戦わされるのかと。」



正直そっちの方が気楽なのだが。



大佐「まぁ、とりあえず話はこの通りだ。頑張れ。」



いやいやいや。このまま引き下がれるか。



提督「へぇ〜………。いいんですか?大佐。」



提督「俺を飛ばしたらコレクションはもう二度と拝めないんですよ?」



このコレクションと言うのは、有名な同人誌の事だ。入手方法は企業秘密で。


ちなみに、この大佐は重度のロリコンである。



YESロリータGOタッチ!



大佐「なっ!き、貴様、卑怯な!」



提督「いやいやいや!勝手に決めといて何言ってるんですか!」



大佐「聞け。お前を推薦したのは俺じゃない。准将だ。軍議中に適任者が決まらず頭を悩ませていた時に、彼が言ったんだ。」



提督「あの野郎………。」



准将はこの基地の中でもかなりトップの方の存在で、買収済みである。



その為、俺達はこの基地の中でも色々と自由がきく。



ちなみに准将はおねショタ専門家である。



提督「どうにかならないんですかそれ………。」



大佐「無理だな。」



提督「orz………。」



大佐「拒否権が無い事は言うまでもないな。それにいつまでもそうしてる暇はないぞ。准将がお前を推薦した意味をよく考えろ。」



提督「………。」



大佐「それとこれ、今後の予定だ。」ピラッ



提督「なんですかこれ、研修?」



大佐「ああ。いきなり着任って訳にはいかないそうだ。まずは二、三ヶ月研修期間を経て、着任するように、との事だ。」



提督「うわぁ………。」



大佐「俺がこんなことを言うのもなんだが、相当つまらないだろうな。既に知ってる知識が殆どだろうし、周りの連中も士官学校出身のお坊ちゃんばかりだ。」



提督「うわぁ素敵。」



大佐「ま、お前なら大丈夫だろう。」



提督「そんな他人事みたいに………。」



大佐「今日の夜にでも飲むか。俺からの餞別だ。」



ーーーー ーーーー ーーーー



その日の夜は、大佐としばらく飲んで話をした。





次の日。



提督「やれやれ、いよいよか………。」



大佐「ま、終わったらまたここに戻ってくるんだから気楽に行ってこい。」



提督「うっす。」



ーーーーーーーーーーーーーーー



1ヶ月半後



提督「ただいまっす。」



大佐「おう。早かったな。」



提督「ええ、まあ。」



大佐「話は聞いた。災難だったな。」



提督「………怒らないんですか?」



大佐「俺がか?確かに喧しい奴らはいたが、俺は怒ってなんかいないぞ。」



大佐「むしろお前がした事を誇らしく思ってる。」



提督「………ありがとうございます。」



何があったか説明すると、最初の1ヶ月くらいは学校で座学中心の研修をしていた。


それは順調に終わったのだが、次の研修が実際に鎮守府で提督業を手伝うというものだったのだ。


そして俺の行った先の鎮守府の提督は、絵に書いたようなクソ野郎だったのだ。


艦娘をモノ扱いし、犠牲など全く厭わず、不正も色々しているようだった。


俺は行ったその日に決断し、こっそり証拠を集めて上層部に叩きつけ、そいつとそいつの周りにくっついていた奴らをぶん殴った。


結局研修は1ヶ月半で終了し、今に至る。



我ながらやり過ぎたかも知れない。


が、あれを見過ごすことなど出来なかった。



自分を壊してまで組織に従うことは俺には出来なかった。



大佐「それで、これが通達だ。」ピラッ




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通達



第二支部東基地〇〇中尉



貴殿ノ着任ス鎮守府ガ決定シタ



明日、モシクハ明後日マデニ着任ヲ命ズル



尚、研修中ノ件ニツイテハ貴殿ノ勇気アル行動ヲ賞賛スルト共ニ大本営カラモ礼ヲ言ウ



鎮守府ニハ既ニ一定量ノ資材ト秘書艦ヲ待機サセテイル。早急ニ向カウベシ。




大本営




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



提督「………ちっ、相変わらず腹立つ文面だな。」



大佐「見ての通り、特にお咎めもなしだ。良かったな。」



提督「はい。」



大佐「必要な物はまとめてある。お前は早く自分の持ち場へ行け。」



提督「………はい。」



大佐「迎えももうすぐ来るだろう。それじゃあな。」



提督「………。」



大佐「おい、提督。」



大佐「頑張れよ。」



提督「………長きに渡りご指導ご鞭撻、本当にありがとうございました。」



提督「行ってきます!」



大佐「おう。」





そうして俺は大佐の用意してくれたタクシーに乗り込んだ。


なんでタクシーなのかは知らんが。




さて、このまま行けば俺は順調に鎮守府に着いたはずだ。



そう、着く筈だったのだ。



あれさえなければ。





走り始めてから二時間ほどして、急に現れた暴走族に煽られ、俺達はブチ切れ、そこらじゅうを追いかけ回した。



挙句、道に迷い、ようやく元の道に出たかと思ったら料金メーターはとんでもない金額を表示していた。



これ以上は払えないということで、俺は途中で降ろされた。







ーーーーーーーーーーーーーーー






そうして、今に至る訳だ。




まったく………。





提督「………ん?」




ようやく視界にそれらしい建物が入った。



提督「や、やっと見えた………。」



俺は悲鳴をあげる足に鞭打って歩いていった。



ーーーーーーーーーーーーーーー



提督「鍵は………開いてるか。」ガチャリ



そういえば既に秘書艦がいるとかなんとか書いてあったな。



未知の敵と戦う女軍人など、どんなゴリラ野郎なのか………。


この世に教官より恐ろしい女など居ないと思っていたが、間違いかも知れない………。



提督「てか広いな、ここ………。」テクテク



見た目もかな立派な建物だ。基地ほどではないが、かなりの広さでなかなか目的の部屋に辿り着かない。


なにやら執務室なる場所に行けと書いてあったが………。



執務ってなんだ?



提督「お?あそこか。」



しばらく歩くと執務室と書いてある部屋を見つけた。



提督「すー、はー………。」



深呼吸し、落ち着く。


どんなゴリラが待ち構えているのか、かなり怖い。



提督「第二支部東基地の〇〇中尉、ただいま到着した。入ってもいいだろうか?」



???「はっ、はい!どうぞ!」



返事はとても綺麗だった。


軍人にしては珍しい。


そして何やら慌てているようだが、どうかしたのだろうか。



とりあえず入るか。



提督「失礼す……る………?」ガチャリ



五月雨「は、はじめまして!白露型駆逐艦六番艦の、五月雨って言います!よろしくお願いします!」



提督「………。」(゜д゜)



提督「………。」(;つд⊂)ゴシゴシ



提督「………。」(゜д゜)






拝啓、教官殿



安心してください。


やはり貴女より恐ろしい女性などいません。







そこに立っていたのは、青髪の綺麗な少女だった。



大佐が喜びそうな子だな………。



じゃなくて。



五月雨「あ、あの………提督?」



提督「あ、ああ。済まない、すこしボーッとした。ええと、君が通達にあった秘書艦、でいいのか?」



五月雨「はい!一生懸命頑張ります!」



提督「お、おう。じゃあ、よろしく頼む。」



五月雨「はい!」




艦娘って可愛いのか………。



これはもしかしたら、とんでもない役得な仕事に就いたかも………。



………ん?



提督「………。」(;つд⊂)ゴシゴシ



提督「………。」(´・ω・`)?




何やら五月雨の肩に小人の様なものが座っている。



疲れすぎてとうとう幻覚でも見ているのか俺は。



提督「な、なあ、五月雨君?」



五月雨「はい!あの、提督、五月雨でいいですよ?」(* ॑꒳ ॑*  )



提督「ッ………。」



な、なんだこの生物は!

持って帰りたい!



いや、これからはここが帰る場所か。



じゃなくて!



提督「ああ。その、変な事を言うかもしれないが、五月雨の肩にいるのは………?」



五月雨「………え?」



提督「あ、ああ、済まない忘れてくれ。ちょっと疲れているみたいだ。」



やはり幻覚か………。やばいな………。




五月雨「あ、待ってください!この、カチューシャを付けた制服の女の子の事ですか!?」



提督「あ、ああ、そうだが。五月雨も見えてるのか?」



五月雨「はい!むしろ、なんで提督が見えるんですか?普通の人には見えない筈なんですが………。」



提督「な、何で俺に………。ていうかその子は一体………?」



五月雨「この子は妖精さんの一人で、私の装備の機銃の取り扱いを手伝ってくれるんです。」



提督「よ、妖精………?」



五月雨「妖精さんって言うのは、私達艦娘の戦闘や修理等を手伝ってくれる子達の事です。特別な存在で本当は私たちにしか見えない筈なんですが………。」



提督「なんで俺に見えるんだろうな………。」



五月雨「さぁ………?」



提督「まあ、何はともあれ、この子も戦友なんだよな。よろしく頼むよ。」



妖精「」(`・ω・´)ゞビシッ!!



提督「はは、良い敬礼だ。」ナデナデ



妖精「」(*´﹃`*)



五月雨「あ、ずるい!私も!」



提督「え?」



五月雨「私も撫でてください!」



提督「お、おう………。」ナデナデ



五月雨「ふわぁ………。」( ⸝⸝⸝• ̫ • ⸝⸝⸝ )



妖精「」(*´﹃`*)







なんだこの状況。



ま、まあなんとかなるか。




ーーーーーーーーーーーーーーー



提督「ぐおお………重い。」



五月雨「よいしょ、よいしょ。」



提督「悪いな、五月雨にも手伝って貰って。」



五月雨「いえ、これも秘書艦としての務めですから!」




俺達は今、大本営から送られてきた書類やら荷物やらの整理に追われていた。



くそ、基地にいた時はこういう事は全部賭けで負けた奴 (九割が大佐) がやってたからな………。



提督「ふう、こんなもんか。」



五月雨「お疲れ様です!あ、提督、もう一つダンボールがありますよ?ええと、大佐さんからですね。」



提督「え?」



五月雨「これも開けt」



提督「ストオオオップ!」



五月雨「きゃあ!ど、どうしましたか!?」



提督「い、いや、これは俺が開けるから!大丈夫だ!な!?」



五月雨「は、はい………。」




あの野郎、また余計な事を………!


一体何を送り付けてきやがったんだ!?



もしコレクションとかだったらやばい………!



恐る恐る開ける。



提督「………お?」



そこには、基地の仲間の写真や彼らが詰め込んだであろう色々な物が入っていた。



提督「ごめん五月雨、大丈夫だ。見ていいぞ。」



五月雨「」(゚ω゚艸)



五月雨「わあ、これって………。」



提督「ああ、俺がいたとこの連中だ。」



五月雨「みんな笑顔だ………!優しそうな、いい人たちに見えます!」



提督「ああ、バカばっかりやる様な連中だが、民衆が思ってるような奴は居ないさ。」



提督「ああ、またみんなで飲みてぇなぁ………。」



考えると少しだけ寂しさを感じる。



なんだかんだでずっと一緒にいた奴らなのだ。



五月雨「………あの、提督?」



提督「ん?どうした?」



五月雨「提督は、ここで、提督としてお仕事をするのは、嫌ですか………?」



先程までの明るい様子とは打って変わって、寂しそうな顔をしていた。



我ながらデリカシーのない発言だったかもしれない。



提督「そうだな。その質問に答えるのはまだ難しい、かな。」



提督「でも俺は、これから沢山の仕事をして、沢山の仲間と出会って、沢山笑って………。」



提督「誰にでも誇れる、ここに来てよかったって思える鎮守府にしたいと思ってる。」



提督「もちろん、五月雨とも一緒に、な。」



思ってる事を、そのまま言葉にした。


少なくとも俺は、基地の仲間達は誰にでも誇れる最高の友だと思ってる。


だから、ここもそんな場所に、したい。



五月雨「………提督!」



提督「ん?」



五月雨「私、頑張ります!提督が、みんなにこの場所を自慢出来るように、この鎮守府をいい場所に出来るように!」



提督「………おう、よろしく頼む。」




さて、ここで終われば( / _ ; )イイハナシダナーで終わるのだが、そうは問屋が下ろさなかった。



あのハゲ野郎がこのままで終わる筈が無いということを、愚かにも俺は忘れていた。



提督「よし、じゃあそのダンボールも空にしてたたんでくれ。」



五月雨「分かりました!………え。」



提督「ん、どうかしたか?」



五月雨「て、て、て………。」



五月雨「提督のえっち!!!!」バチーン!



提督「ブベラッ!」




とんでもない衝撃を受け、徐々に薄くなっていく視界になんとか入ったのは、大佐が選りすぐったコレクション (18禁) だった。



そりゃこうなるわ………。



あのハゲ、次にあったら性癖暴露してやる………。





戦意も虚しく、俺は冷たい執務室の床に受け止められて意識を失った。




ーーーーーーーーーーーーーーー




提督「………む。」



ふと目を覚ますと、見覚えのない天井が目に入った。



夕張「あ、提督。おはようございます〜。」



隣にはうたた寝をする五月雨と、見知らぬ少女がいた。



俺は、確か五月雨にビンタを喰らって………。



あのハゲ、次にあったらただじゃ済まさん………。




じゃなくて。



提督「ええと、君は?」



夕張「ああ、自己紹介がまだね。兵装実験軽巡、夕張よ。よろしくね。」



提督「よ、よろしく。で、なんでここに?」



夕張「あれ?着任の書類、届いてませんでした?」



提督「ああー、まだ確認してない……。」



夕張「あはは、事情は聞いたよ。災難だったね。ビックリしたよ?」



夕張「執務室に来たら提督は倒れてて五月雨ちゃんはわんわん泣いてるし。」



提督「ははは……面目ない。」



なるほど、なんとなく事情が飲み込めてきた。



夕張「ところでさ……提督って、こういうの好み?」



夕張の懐からコレクションが出てきて、冷や汗が溢れてきた。



提督「い、いや!違うんだ!五月雨の時は説明する間もなくぶっ叩かれたんであって!」



提督「なんつーかそれは仲間のジョークなんだよ!」



夕張「へぇー。でもさ、提督?」



急に夕張が身を乗り出してくる。



夕張「私、提督がご希望なさるのならこういう事、してもいいですよ?」



提督「えっ。」ボフッ



夕張にベッドに押し倒された。



いかんせん女性との触れ合いなど皆無だった為か、肝心な所で理性は役に立たない。



提督「い、いや、夕張………?」



夕張「いいから、じっとしてて………。」




段々と、夕張の顔が近付いてくる。


ええい、ままよ。



目をつぶった。



しかし、しばらくしても何も起こらない。


俺はそっと目を開けた。



提督「夕張……?」



夕張「ねぇ、提督………?」ギュッ



夕張が寂しげに抱きついてきた。



押し倒されているのも相まってなんか色々やばかった。



夕張「どうして私がこんな事するのか、分かりますか?」



提督「………?」



夕張「私、前は提督が研修にきた鎮守府に居たんです。本当に、毎日がただただ辛かった………。」



夕張「でもある日、提督が研修に来た日に、駆逐艦の子が凄く嬉しそうに、でも泣きながら部屋から出てきて………。」



夕張「みんなで話を聞いたら、提督が、自分の話を真剣に聞いてくれた。涙を流して抱きしめてくれた。心から怒ってくれた、って。」



夕張「私はその時は話はしなかったけど、提督なら、何かを起こしてくれるんじゃないかって、みんな思ってたんです。」



夕張「それが今、期待通りにこうなってる。もうあの元提督はいないし、みんなもそれぞれ幸せに暮らしてる。」



夕張「私は………私は、提督への感謝がしてもしきれない。だから、貴方の力になりたくてここに来たんです。」



夕張「だから、あなたになら、何をされても構わない………そう思うんです。」



あの日。


研修に行った初日。


自分の部屋に行く途中、たまたま廊下で泣き伏せていた電という駆逐艦の子に会った。



そのまま俺の部屋に連れて行き、話を聞いた。



前提督の事を聞いたのはそこでの事だ。



思わず電を抱きしめ、絶対に助けると誓った。



だから、あの様な行動をした。



確かに、彼女らからすれば俺は感謝の対象になるのかも知れない。



だが、俺はだからといってこのまま夕張の言う通りにする訳にはいかなかった。



夕張「だから、ね?提督………。どうか、私の気持ちを………。」



提督「ダメだ。」グイッ



夕張「え?」



絶対にダメだ。



夕張がそういう事をしていいと思っているのは、俺だから、じゃない。



俺が只の恩人だからだ。



確かに、彼女らからすればあの出来事は本当に救われたことかもしれない。



だが、それは俺じゃなくても出来ることだ。



仮にあの騒動を起こし、夕張達を助けたのが俺じゃない他の人間だとしても、夕張はきっと恩を感じてこの様な行動を取るのだろう。



それじゃ、ダメなんだ。



提督「夕張、お前がそういう風に思うのは、俺が恩人だからだ。」



提督「だが、あの件は俺じゃなくても出来ることなんだ。だから、こういう返し方はして欲しくない。」



提督「もっと、自分を大切にしてくれ。君たちも女の子なんだ。」



提督「だが、自惚れかもしれないけどもしも俺じゃなきゃダメだって言うなら、その時は俺もちゃんと応える。」



提督「ええと、長くなっちまったけど何が言いたいかって言うと、そんなに気を使わなくていいよ。」



夕張「………。」ポロッポロッ



提督「ゆ、夕張?大丈夫か?」



夕張「………うるさいぃ……バカ。」ギュウゥッ



夕張 (分かってるよ、そんな事……。そういう事を言ってくれる、提督だから、私は………。)



五月雨「う、ん?」



提督「あ、五月雨おはよう。」



五月雨「………。」



提督&夕張「「あ。」」



五月雨「………。」パタリ



提督「五月雨ええええええ!」



夕張「五月雨ちゃん!誤解だよおおお!」




そこから誤解を解くのにしばらくかかったのはまた別の話。






ーーーーーーーーーーーーーーー



次の日。



提督「くあぁ………ふう。」




マルナナマルマル、いつも通りの時刻だ。



さて、トレーニングしに行くか。




……………。




トレーニングルームなんかないよな、ここ。



とりあえず、走り込みくらいやるか………。







ーーーー ーーーー ーーーー



鎮守府の周りから海沿いをしばらく走る。



提督「はっ………はっ……ふう。」




海からの風が火照った体を通り抜ける。



これからは、この海を守るのか………。



ま、なんとかなるだろう。



グゥ〜。



提督「ぬ。」



いい感じに腹も減ってきたし、そろそろ帰ろうか、と思ったその時だった。



提督「………ん?」



何か、海に浮かんでいる。



人、か………?



いや、違う?



いや人だ!



まずい、すぐに助けねぇと!



提督「ッ!」ザブン



急いで服を脱ぎ散らかし、海に飛び込んだ。



間に合え、間に合え!



ただその一心で必死に泳いだ。



ーーーーーーーーーーーーーーー



マルハチマルマル、鎮守府にて



提督「ゲホッ、はぁ、はぁ、五月雨!夕張!」



提督「頼む、来てくれ!」



五月雨「は、はい!どうしましたか?」



夕張「提督、どこいってたんですか、って、どうしたの!?」



提督「入渠ドックに、こいつを、早く!」



今は一刻を争う。



助けた女性の体温はかなり低かった。



この一秒が生死を分けるのだ。



夕張「わ、分かりました!五月雨ちゃん、提督も、手伝って!こっち!」




三人がかりで必死に運ぶ。



提督「くそ、間に合え!」






夕張「ここです!」



入渠ドック、と書かれた部屋に着いた。



夕張「この湯船の中に!服は、とりあえず来たままでいいですから!」



提督「よし、そっとな、よ、いしょ。」



急いで、だがそっと、衝撃を加えないように湯船に寝かせる。



夕張「あ、提督!そのお湯に触っちゃ」



提督「えっいだだだだだだ!」



その湯船に張られていたお湯に少し手が入ると、途端に痺れるような激痛に襲われた。



提督「いったぁ!なんだこれ!」



夕張「これ、入渠用のお湯は人には有害なんですよ!触っちゃダメです!」



提督「ああ、分かった。いてて。」



五月雨「提督、大丈夫ですか?」



提督「おう、平気だ。にしても………。」



全く起きる気配がない。



これだけ近くで騒いでも目覚めないのだから、相当ダメージが酷いのだろう。



夕張「提督、そろそろ事情を聞いてもいいですか?」



提督「ああ。とりあえず、着替えてもいいか?」





濡れた服を洗濯カゴにぶち込み、着替えてから執務室で事情を説明した。



夕張「そうですか………。」



夕張「とりあえず!提督、私達に何も言わずに出ていかないでください!」



提督「え?」



夕張「凄く心配したんですよ?五月雨ちゃんまた泣きそうになるし………。」



五月雨「な、泣いてないですよ!」



提督「あはは、悪いな。次からはちゃんと声をかけるよ。」




俺の事なんかを心配してくれるとは、嬉しい限りだ。




なんにせよ、まずは彼女が目覚めるのを待たなければならなかった。



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ヒトフタマルマル




提督「なあ、夕張。あの様子だと完治するまでにどのくらいかかりそうだ?」



夕張「そう………ですね。顔が髪に隠れて見えなかったので確証はないですけど、多分彼女は戦艦です。それがあそこまで重傷だと、六、七時間はかかるかと………。」



提督「そんなに………。」



夕張「バケツがあればいいんですが………。」



提督「とりあえずもう昼だし、飯でも食いに行くか。」


ーーーー ーーーー ーーーー


ヒトヨンマルマル



五月雨「あれ、提督?そういえば、たしか資材と一緒に開発資材とバケツもたくさん届いてませんでした?」



提督「え、そうだっけ?」



夕張「何でそれを先に言わないんですか!じゃあ、使ってきますよ?」



提督「おう、俺も行く。傷が治ったら空いてる部屋に運ぼう。五月雨も来てくれ。」




傷が治っても意識が戻るとは限らない。



ずっと昏睡状態のままの奴も見てきた。



今はとにかく、そうならない事を願って早足で歩いた。



ーーーー ーーーー ーーーー



夕張「それじゃ、入れますね。」



湯船に緑の液体が注がれていく。



すると、彼女の傷があっという間に治っていった。



提督「信じられないな………。」



僅か数秒で、あれだけの重傷が治ってしまった。



提督「よし、運ぼう。」



ーーーー ーーーー ーーーー



とりあえず、執務室に近い空き部屋に運び、ベッドに寝かせた。



提督「………くそ。」



まだ目は覚まさない。



嫌な記憶が頭をよぎる。



提督「夕張、悪いが、しばらくこの人に付いていてやってくれないか。」



夕張「はい、分かりました!目が覚めたら、呼びに行きますね。」



提督「頼む。」



流石にその日一日付きっきりになる訳にもいかなかった。



執務室に戻り、五月雨から任務等の説明を受け、執務を始めた。



提督「………。」カリカリ



五月雨「………。」カリカリ



提督「………。」



五月雨「………?」カリカリ



提督「………。」



五月雨「………提督?」



提督「………。」



五月雨「………提督!」



提督「あ、ああ、悪い。どうした?」



五月雨「………気になるんですよね?」



提督「………ああ。」



正直、彼女が心配で執務どころではなかった。



すると五月雨がひょいっと席を立った。



五月雨「行きましょう?」



提督「………ありがとう。」



五月雨「いえ、そこが提督の良いところですから。」




ーーーー ーーーー ーーーー


ヒトハチマルマル



いてもたってもいられず、結局部屋に行った。



提督「夕張、どうだ?」



夕張「あ、提督!少しまずいです。さっきまで普通に寝てたんですが、段々と呼吸が弱くなってきていて。」



提督「ッ……!」




傷は治っている。



それは間違いない。



提督「くそ、一体何が………!」ギュッ



力強く、手を握りしめた。



提督「頼む、帰ってきてくれ………!」



夕張「提督………。」



五月雨「提督………。」



提督「まだ一言も喋ってないじゃんか!そんな簡単に、居なくならないでくれ………!」



提督「ここには、お前が必要なんだ………!」











ドクン







ドクン










昏睡状態に陥っていて、医者が望みがないと言っても、奇跡的に意識を取り戻すことは、ある。




科学的には説明出来なくとも、何処かにあるその人の心が、生きたいと、強く願えば。





心臓が、熱く鼓動を刻めば。








???「」ムクリ



提督「………!」



???「あなた、なのね。私を呼んだのは。」



提督「え、え?」



???「ありがとう………。」ギュッ




目の前の状況にあまり頭がついて行っていない。



それは二人も同じのようだ。



提督「と、とりあえず、名前を聞いてもいいか?」



扶桑「扶桑型超弩級戦艦、姉の方、扶桑です。ありがとう、提督、私を呼んでくれて………。」



提督「よ、呼んだって言うのは?」



扶桑「暗い暗い海の底で、ずっと陽の光を待っていた………。」



扶桑「ある日、ようやく助けが来たと思ったら、その艦隊の提督は私を必要とはしなかった。」



扶桑「せっかく海に出られたのに、何も出来なくて、悔しくて、辛くて、寂しくて………。」



扶桑「燃料が尽きて、意識も体もまた深い深い海の底に沈んでいった。」



扶桑「もう、疲れたなぁって。ここで終わってもいいんじゃって思ったの。」



扶桑「でも、上の方から、小さな光が見えた。」



扶桑「それは、見てるとどんどん大きく、力強くなっていって………。」



扶桑「私に、優しい言葉を、強い言葉を、沢山与えてくれた。あの光はきっと、いえ、間違いなく…………。」



扶桑「提督、あなたのものだった。」



提督「そう、か………。」



提督「何より、無事に戻ってこられて、良かった………。」ギュッ



提督「ふぅ………。」





一日中心配だったせいか、眠気がすごい。



提督「とりあえず、扶桑もまだ休んでくれ。二人も、今日は上がってくれ。いろいろありがとな。」



五月雨「わ、分かりました。」



夕張「提督も、ちゃんと休んでね。」



提督「おう、わかってる。」



軽く手を振って二人を見送る。



提督「さて、俺もそろそろ……。」



扶桑「………。」ギュッ



服のはしを掴まれた。



提督「ど、どうした?扶桑。」



扶桑「あっ、す、すみません………。な、なんでも、ないです。」



提督「………。」



寂しいのだろうか。



それもそうかも知れない。



ようやく来た助けだと思ったら、いきなりそれに裏切られたのだ。



提督「………ふっ。」



今日くらいは一緒にいてもいいかも知れないと思った時。



提督「………ん?」フラッ



扶桑「え、提督?」



提督「あ〜………やべ。」バタリ



体の自由が効かず、床に倒れてしまった。



意識もどんどん遠くなる。



無理をし過ぎたようだ。



不覚………。



提督「扶桑………俺は、ここに、いる………から………。」




その一言が、ちゃんと言えたのかどうかは、分からなかった。





ーーーーーーーーーーーーーーー



次の日。



マルナナマルマル



提督「うっ………。」



暖かい………。



あれ?たしか俺は昨日、倒れちまって………。



五感が周りの状況を知覚し始める。



柔らかい………なんだこれ。



扶桑「スー………スー………。」



提督「………。」




え?




アイエエエエ!?




フソウ!?フソウナンデ!?



なんで一緒に寝てるんだ!?



いやまあ確かに一緒にいるとは言ったかもしれんが!



こ、これは流石にまずいんじゃ………。




そっと、扶桑の顔を見てみる。



扶桑「えへへ………。」



提督「………。」



満ち足りた様な顔でスヤスヤ寝ている。





これは、起こせないなぁ………。



でもやべぇなぁ。



たしかマルハチマルマルにはあれが届くはずなんだよな。




もう少しして起きなかったら、起こすか。



ーーーー ーーーー ーーーー



マルナナヨンマル



提督「扶桑………?扶桑………。」ユサユサ



結局、あの後とりあえずベッドから出ようとしたが、扶桑が起きない限り出られそうになかった。



扶桑「ん………。」



提督「おはよう、扶桑。」



扶桑「おはようございます……。」ギュウゥッ



提督「おおお、おはよう。だ、大丈夫か?」




ヤバイヤバイヤバイ。



扶桑って体つきが大人だからなんかもうヤバイ。




扶桑「ふわぁ、何がですか?」



提督「体調とか、何かおかしなところはないか?」



扶桑「私はバッチリです。それよりも、提督の方こそ大丈夫ですか?急に倒れて、本当に焦ったんだから。」



提督「ああ、その節に関しては本当に申し訳ない………。」



扶桑「ふふ、まあいいですけどね。そのお陰でこうして一緒に眠れたわけですし。」



提督「お、おお。とりあえず、もう起きないとな。朝飯も食わなきゃだし。」



扶桑「はーい。」




ーーーーーーーーーーーーーーー



マルハチマルマル



鎮守府正面玄関にて



提督「………。」



少尉「あ、中尉ー!」



提督「お、来たか。わざわざ済まなかったな。」



少尉「ほんとですよ!中尉が海軍の連中は信用ならんなんて言うから。」



少尉「俺だってあいつらから荷物受け取るのめっちゃ気まずかったんですよ?」



提督「ははは、悪い悪い。今度飲みにでも行こうぜ。奢るからよ。」



少尉「あ、まじっすか!?楽しみにしてます!じゃ、これ受け取りの書類と、品物です。」



提督「おう、さんきゅ。」



少尉「じゃ、俺はこれで!」



提督「またな。」



海軍の連中に届けてもらう気にはならなかった。



少なからず俺を目の敵にしてる奴もいる。



ちなみに、あいつはレイ○系専門家だ。



大人しそうな顔でけっこうヤバイ。



マジで。



ーーーーーーーーーーーーーーー




マルキューマルマル



執務室にて



提督「じゃあ、本当にいいんだな?」



扶桑「はい。提督が許していただけるのなら、私はここで戦います。」



提督「ありがとう。戦艦扶桑、心より歓迎する。」



五月雨&夕張「「」」パチパチ〜



提督「よし、それじゃ、この書類にサイン頼む。」



扶桑「分かりました。………あの、提督?」



提督「ん?」



扶桑「本当に、私の着任で御迷惑がかかったりしませんか?」



提督「だから大丈夫だって。上の連中なんかどうだっていい。」



提督「もう二度と欠陥戦艦なんて呼ばせないからな。」



扶桑「提督………ありがとうございます!」



提督「そうそう、あとこれ。俺からの着任祝い。」




朝、少尉が届けてくれた小包を渡す。



扶桑「開けてもいいですか?」



提督「おう、いいぞ。」




ガサガサ



扶桑「あ、これって………。」



扶桑の手には、彼女の為の髪飾りがあった。



扶桑「私の髪飾り………。」



提督「流されてる時に取れちまったのかと思ってな。上に頼んで取り寄せておいた。」



扶桑「嬉しい………提督、本当にありがとう!」



提督「おう。」(ヤバイめっちゃ可愛い)



夕張「もー、提督?こういう時は普通提督が付けてあげるんでしょ?」



提督「え、そういうもんか?」



五月雨「そういうものですよ!」



提督「分かったから………扶桑、ちょっと失礼するぞ。」





提督「………よし、出来た。」



扶桑「ありがとうございます!」



夕張「わあ、可愛い!」



五月雨「よく似合ってます!」



扶桑「そ、そうかしら。提督、どうですか?」



提督「ああ、よく似合ってるぞ。凄く綺麗だ。」



扶桑「あ、ありがとうございます……///。」プシュー



提督「まあ、そんな感じで、これからよろしく頼むよ。扶桑。」



扶桑「はい!よろしくお願いします!」



提督「よし。それじゃ、出撃もそろそろ始めようと思う。そこでだ。俺から言うことがある。」



提督「絶対に生きて帰ってこい。犠牲が出る事は絶対に許さん。そんな状況は訓練に訓練を重ねて補え。」



提督「とにかく、失敗してもいいから、誰も欠けずに戻ってこい。」



扶桑&夕張&五月雨「「「はい!」」」



提督「よし!」




いよいよ、明日に初出撃の予定だ。



きっと大丈夫だ。



そう信じている。




ーーーーーーーーーーーーーーー



ヒトヒトマルマル



提督「鎮守府正面海域………これか。」



明日の初出撃に向けて、情報収集をしていた。



島からも一番近い海域だし、偵察艦かはぐれ艦程度しか索敵にかかった報告はないが、余念は欠かさない。



基地にいた時からの教えだ。



提督「敵にも艦艇分類があるのか………。」



情報によると、この海域の主戦力には軽巡洋艦もいるらしい。



幸い、扶桑も五月雨も夕張も練度はそれなりに高い。



扶桑はまだ改装前だが、十分戦えるはずだ。



扶桑「提督、艤装の確認、完了しました。」



提督「おう、助かる。五月雨と夕張は?」



扶桑「ああ、五月雨ちゃんがオイルの缶を被っちゃって。今は二人でお風呂に。」



提督「はは、五月雨らしいな。」



提督「じゃ、二人が戻ってきたら昼食にするか。」



扶桑「そうですね。」



ちなみに、ここにはまだ間宮さんは着任していない為、昼食は街に出て食べるか、誰かが作るかのどちらかだ。



扶桑「あ、もし良かったら、私が作りましょうか?カレーくらいなら、私も作れますよ。」



提督「お、扶桑特製のカレーか。いいな。そうしよう。」



扶桑「食材は自由に使っていいですか?」



提督「おう、いいぞ。出来たら呼んでくれ。二人も連れてくよ。」



扶桑「分かりました。それじゃあ楽しみにしててください♪」




機嫌良さげに厨房に向かう扶桑を見送る。



どうしても、明日の事が心配になってしまう。



三人の練度と海域の攻略難度から考えれば余裕で攻略出来る筈なのだが、それでも、だ。



自分が戦うよりよっぽどこたえる。




教官、あなたがあんだけ強いのに胃薬を常備してた理由がよく分かります………。



そう考えると、大佐あの野郎平気な顔してやがったな………。



五月雨「提督ー!お風呂、上がりましたー!」



提督「おかえり。俺は艤装の点検を頼んだんだが?」



五月雨「ご、ごめんなさい!オイルをこぼしちゃって、それで、ええと………。」



提督「はは、冗談だ。事情は扶桑から聞いたよ。怪我はないか?」



五月雨「はい、大丈夫です!」



提督「ん?夕張は?」



五月雨「あ、夕張さんはもう少し艤装を見ておくって。」



提督「そうか。今は扶桑が昼飯にカレー作ってくれてるから、完成したら行こう。」



五月雨「えっ、じゃあ私もお手伝いしてきます!」



提督「えっ。」



五月雨「大丈夫です!行ってきます!」ガチャリ




行っちまった………。



なんかすげぇ心配だ………。



まあ、扶桑もいるし大丈夫か………。




ーーーー ーーーー ーーーー




少しして



夕張「提督、装備点検終わりましたー。」



提督「おう、ごくろーさん。状態は?」



夕張「バッチリです!明日の出撃も万全の状態で出来ますよ!」



提督「そうか………。」



夕張「………やっぱり、心配ですか?」



提督「ああ。自分が戦うより全然きつい。既に胃が痛いよ。」



夕張「もう、もう少し私達を信用してくださいよ!」



提督「ああ、分かってる。」



テートクーデキマシタヨー!



遠くから五月雨のものであろう声が聞こえた。



提督「お、昼飯も出来たみたいだな。行こうぜ、夕張。」



夕張「五月雨ちゃんが作ってくれてるんですか?」



提督「いや、五月雨はアシスタント。扶桑がカレー作ってくれてる。」



夕張「じゃあ大丈夫ですね。」



提督「だな。」



ーーーーーーーーーーーーーーー



ヒトフタマルマル



食堂にて



提督「よし、それじゃ。」



「「「「いただきまーす。」」」」



提督「」パクッ



提督「」( ˙༥˙ )モグモグ



提督「うん、美味い!」



夕張「美味しい!」



扶桑「良かった、上手に出来て………。」



五月雨「おいしい〜!」



ーーーーーーーーーーーーーーー



ヒトヨンマルマル



提督「ふぅ………こんなもんか。」



大体の準備は出来た。



あとは、明日を待つだけだ。



扶桑「お疲れ様です。緑茶を持ってきましたが、お飲みになりますか?」



提督「お、ありがとう………うん、美味い。」



緑茶の丁度いい苦味と温かさが染みる。



ピンポーン



提督「ん?」



鎮守府のインターホンだ。



扶桑「誰か来客でしょうか?」



提督「いや、そんなの聞いてないが………。」



とりあえず玄関まで行ってみる。



ーーーー ーーーー ーーーー



配達員「あ、こんにちは。これ、本営からの書類です。」



提督「ああ、ありがとう。ご苦労様。」



配達員「それでは。」



提督「………大本営から?」



扶桑「な、何でしょうか………まさか、私のせいで………?」



提督「いや、今更文句は言ってこないと思うんだが………。とりあえず、執務室に戻って見てみよう。」




ーーーー ーーーー ーーーー



提督「よし、開けるぞ。」



ビリビリ



ガサガサ



提督「………ん?」



扶桑「これは………。」



提督「着任許可願?こんなにたくさん?」



封筒の中には十枚近くの着任許可願が入っていた。



無論、艦娘からのものである。



しかしなんで俺のところに?



普通はもっと強くて有名な鎮守府に届くはずなのだが。



提督「もしかしてこれ、届け先間違ってるんじゃないか?」



扶桑「いえ、届け先はちゃんと合ってるみたいですが………。」



夕張「なになにー?どうしたんですかー?」



提督「お、夕張。なんか着任許可願ってのがめっちゃ届いたんだけど。これ宛先間違ってないか?」



夕張「どれどれ………?」



夕張「………あ。」



提督「ん?」



夕張「提督、これ、宛先はここで間違いないです。」



夕張「だってこれ、私の元同僚からですもん。」



提督「って言うと、あの鎮守府にいた………?」



夕張「はい。そうです。」



提督「………まさか俺のせいで居場所が無くなって………?」



もしそうだとしたら、俺は自分のエゴで取り返しのつかない事をしてしまったという事になる。



夕張「………はぁ。」



夕張「そんな訳ないじゃないですか。」



夕張「私もみんなも、提督の元で戦いたくてそれを出したんですよ。」



夕張「提督があいつを追っ払ってくれた時点で、戦いたくなければ私たちは自由になる事も出来たんです。」



夕張「それでも、あなたに感謝したい。あなたの力になりたい。あなたと一緒にいたい。そうして、私も、みんなも、ここに来たいって思ったんです。」



提督「そう、なのか……。」




夕張の言葉が本当なら、これほど嬉しいことはない………。



少なからず、余計な事をしてしまったんじゃないかと恐れていた。



だが、大丈夫だったようだ。



そして、彼女達がそう思っているのなら。



提督「よし、じゃあ、全員受け入れよう。」



当然、全員受け入れる。



夕張「あー………あの、提督ならそう言ってくれると思ったんですけど。」



夕張「規則があって、一つの鎮守府には艦娘は八人までしか着任出来ないんですよ。」



夕張「一つの鎮守府に戦力が固まりすぎてほかが手薄になったり、深海棲艦に集中的に狙われるのを避ける為です。」



提督「うーん………そうか………。」



そう言われると納得せざるを得ない。



提督「だったら、どうすれば………。」



夕張「あの、提督。」



夕張「私だけ先に来ておいて勝手かも知れないんですが、提案があります。」



夕張「一つの艦隊は六人までしか編成出来ませんし、先のことも考えると、このタイミングで八人まで埋めるのは得策じゃないと思うんです。」



夕張「だから、三人、その中からランダムで選んではどうですか?」



提督「ランダムか………。」




理にかなっている。



確かに、いきなりマックスまで着任させるのは、いざと言う時に対応出来ない可能性がある。



提督「よし、分かった。」



ーーーー ーーーー ーーーー



そうして、俺はあるものを用意した。



提督「これだ。」



扶桑「ダーツ、ですか?」



提督「ああ。着任許可願は全部で何枚だ?」



五月雨「ええと、九枚ですね。」



提督「じゃあ、それぞれに番号をふってくれ。」



提督「俺が三回投げて、当たった番号の三人にする。誰が当たっても恨みっこなしだ。」



扶桑「準備出来ました。」



提督「よし、回してくれ。」




カラカラカラ




ヒュッ




タン




提督「何番だ?」



扶桑「三番です。」



五月雨「三番………電ちゃんです。」



提督「電………そうか………。」



駆逐艦、電。



俺があの鎮守府で一番最初に話した艦娘。



助けると誓った艦娘。



彼女に最初に当たったのは、必然だったのかもしれない。



提督「よし、次だ。」



カラカラカラ



ヒュッ



タン



扶桑「二番です。」



夕張「二番は………げ、足柄さんだ。」



提督「なんだ、げ、って。」



夕張「いえ、あの人も着任許可願出してたんだって。足柄さん、みんなの為に唯一前提督に正面から意見してたんです。」



夕張「だからてっきり、もう自由にして貰ってたのかと………。」



提督「………なるほど。」



提督「よし、最後、回してくれ。」




カラカラカラ



ヒュッ



タン



扶桑「七番です。」



五月雨「七番………ええと………これ、なんて読むんだろう………?」



なにやら五月雨が頭を悩ませ唸っている。



提督「ん?どれどれ。」



提督「………わ、分からん。」



アルファベット表記ではあるのだが、発音するとなるとよく分からない。



夕張「もう、しょうがないなぁ。えーっと………?ああ、これはグラーフ・ツェッペリンって読むのよ。」



提督「グラーフ?」



扶桑「海外艦………でしょうか?」



夕張「うん。グラーフさんは、ドイツの正規空母ね。」



提督「ドイツ艦、か………。」



まあ、電も含めて会ってみないことには始まらない。



提督「よし、じゃあこの三人で決定だ。夕張、本営に連絡しておいてくれ。」



夕張「はーい。」



提督「二人も、準備は済んだな。じゃあ、今日はもう自由にしてていいぞ。」



扶桑「分かりました。」



五月雨「分かりました!」



五月雨「扶桑さん!良かったら夕張さんも連れて街のケーキ屋さんに行きませんか?」



扶桑「ええ、私はいいわよ。あ、もし良かったら、提督も行きませんか?」



提督「いや、俺は甘い物はあんまりな。」



五月雨「えー………提督、来てくれないんですか?」



提督「悪いな。また別の機会にでも行くよ。」



五月雨「ちぇっ。じゃあ、また今度遊びましょうね?」



提督「おう。」



五月雨「それじゃ、行ってきます!」



扶桑「行ってきます。」



提督「いってらー。」



楽しそうに歩いていく二人を見送る。



ちなみに、甘い物が苦手というのは嘘だ。



俺はかなりの甘党だが、正直美女三人とケーキ屋など、恥ずかしくてとても行けない。



提督「………チキンだな、俺。」



なんてボヤいたりしながら、次の日を待つのだった。




ーーーーーーーーーーーーーーー



そして、次の日。



マルキューマルマル



提督「よし。時間だ。各員、出撃ブースへ移動、準備を完了しろ。」



扶桑「了解。」



夕張「オッケーです。」



五月雨「準備出来ました。」



提督「それじゃ、さっき言った通りだ。主力も軽巡クラスしか見つかってないし、お前らの練度なら問題無いだろう。」



提督「だが、くれぐれも油断はするな。戦闘海域に入ったら索敵、警戒を忘れずにな。」



提督「とにかく、無事に戻ってきてくれ。」



夕張「よーし、行きますか!」



五月雨「頑張ります!」



提督「扶桑、頼むぞ。」



扶桑「任せてください。必ず、あなたに勝利を。」




正面海域程度で大袈裟かも知れない。



だが、戦争は何があるか分からない。



ついさっきまで会話していた奴が突然死ぬ、なんて珍しくもない。



だからこそ、どんな小さな作戦でも万全の体制で臨む。



俺の決めたルールだ。



提督「よし。出撃開始!」



ーーーーーーーーーーーーーーー



ヒトヒトマルマル



提督「………。」カリカリ



三人が出撃してから2時間ほど経った。



天候や風向きに問題なければ、そろそろ作戦海域に到着するだろう。



………クソ。



自分が戦えない事がこんなにも辛い事だとは知らなかった。



書類仕事などとても手につかづ、仕事も思うように進まない。



そんな時だった。



ピンポーン



提督「ん?」



鎮守府のインターホンだ。



だが、来客の予定もない。



また本営からの書類だろうか。



とりあえず玄関に向かう。



提督「ご苦労さま。今回は何の書類………?」ガチャリ



提督「え?」



そこに立っていたのは、配達員でも少尉でもない、銀髪の綺麗な女性だった。



???「その服装………そしてその顔。」



???「間違いないようだな。」



提督「えっと、どちら様で?」



グラーフ「自己紹介が遅れたな。Guten Morgen。私が航空母艦、Graf Zeppelin だ。よろしく頼むぞ、admiral。」



提督「グラーフ………そうか、よろしく頼む。提督の〇〇中尉だ。」



提督「とりあえず、立ち話もなんだ。中へ入ってくれ。」



ーーーー ーーーー ーーーー



向かい合う形で、ソファに座る。



提督「ずいぶん早いんだな。許可願を受理したのは昨日のはずだが。」



グラーフ「ああ。昨日本営から受理されたと連絡を受けて、すぐにこっちに向かって来たからな。」



グラーフ「ここには他に艦娘は?」



提督「三人いる。今は出撃中だ。戦艦扶桑、軽巡夕張、駆逐艦五月雨だ。仲良くしてやってくれ。」



グラーフ「ふっ、了解だ。うちの同僚達が、夕張ばかり抜けがけしたと騒ぎ立てていたが、本当だったようだな。」



提督「ああ。なんせ俺が着任したその日にもう来たからな。ま、悪いやつじゃないのは分かってるさ。」



提督「ところでグラーフ。一つ聞いてもいいか?」



グラーフ「ああ。何でも聞いてくれ。」



提督「何故、ここに来る気になったんだ?」



グラーフ「………。」



これだけは聞かなければならない。



ここは譲れなかった。



本当ならみな、もう戦いたくなどないはずなのだ。



グラーフ「そう、だな………。」



グラーフ「そこの所は、私もよくわからないな。」



グラーフ「正直、あの前提督がいなくなった直後は艦娘など御免だと思っていたんだがな。」



グラーフ「同僚達がadmiralの鎮守府に行きたいだ何だと騒いでいるのを耳にした途端………。」



グラーフ「なんだかいてもたっても居られなくなって、すぐに着任許可願を出した。」



グラーフ「だから、そんなに重い理由はない、かな。」



グラーフ「強いて言うなら、admiralの傍にいたい、と言ったところか。」



提督「そ、そうか。」



な、なんか照れるな。



提督「まあ、よろしく頼む。グラーフ。」



グラーフ「こちらこそ。admiral。」




新しい仲間がいい奴だったおかげか、少し心が落ち着いてきたのだった。




ーーーーーーーーーーーーーーー



ヒトフタマルマル



グラーフ「admiral。」



提督「………。」



そろそろ、戦闘が始まってから一時間近く経過しているはずだ。



予定通りなら、偵察艦を撃沈して主力の潜む海域に向かっているはずだ。



………大丈夫だろうか。



グラーフ「admiral!」



提督「あ、ああ、悪い。どうした?」



グラーフ「………大丈夫か?少しボーッとしていたようだが。」



提督「大丈夫だ。すまない。」



グラーフ「………仲間が心配なのか?」



提督「………分かるか、やっぱり。」



グラーフ「admiral………心配なのは分かる。」



グラーフ「だが、もう少し彼女達を、私達を信じてくれ。」



グラーフ「それに、今出撃しているのは夕張達だろう?あいつがそう簡単にくたばったりしないと思わないか?」



提督「………そう、だな。」



グラーフ「だから、信じて待とう。きっと、大丈夫だ。」



提督「………すまない、ありがとう。」




そうだ。



彼女達はきっと今も命懸けで戦っている。



各々の戦う理由を抱いて。



俺が縮こまってちゃ始まらないじゃないか。



信じて待つ。



それが俺の仕事だ。



グラーフ「………もう大丈夫そうだな。」



提督「ああ。」



グラーフ「もう昼過ぎだ。admiral、昼食はどうする?」



提督「ああ、俺が作るよ。何か食べたいものはあるか?」



グラーフ「何でもいいぞ。admiralの得意なものを作ってくれ。」



提督「分かった。出来たら呼ぶよ。」




昼食には魚の煮付けなどの和食を作った。



グラーフは味噌汁がお気に召したようだった。



ーーーーーーーーーーーーーーー



ヒトゴーマルマル



鎮守府出撃ブースにて



提督「よし、ハッチを開け。」



ゴウンゴウン



ガチャン



バシュゥゥゥゥ




提督「………おかえり、みんな。」



五月雨「提督ー!」ダキッ



提督「ぬお。苦しい。怪我はないか?」



五月雨「はい!バッチリです!」



夕張「ただいまですー!提督ー!」ダキッ



提督「おう、お疲れ様。」



夕張「提督の作戦、完璧だったよー!敵の配置も編成も予想通りだった!」



提督「そりゃ良かった。で、そろそろ離してもらってもいいか?」



五月雨「えー………。」



提督「また別の機会にでもしてやるから。」



夕張「ちぇっ。」



提督「扶桑も、お疲れ様。」



扶桑「はい。提督の作戦のおかげです。」



提督「いや、そんなもん些細なもんさ。お前らのおかけだ。ありがとな。」



扶桑「提督………。」ギュゥッ



提督「んむ。」



扶桑「少し、こうしててもいいですか?」



提督「おう、いいぞ。」



扶桑「暖かい………。」



グラーフ「………。」ムッスー



夕張「あれ、グラーフさん。早いね。」



グラーフ「お前に言われたくはない………。すっかり馴染みおって。足柄が来たら怒られるぞ。」



夕張「うわ、やだわそれ。」



提督「よし、じゃあとりあえず執務室へ行くか。」




ーーーー ーーーー ーーーー



提督「じゃ、報告を頼む。」



扶桑「はい。出撃から二時間、戦闘海域に入ったらまず駆逐ロ級一隻に遭遇、撃沈。」



扶桑「そこから四十三分後、敵主力艦隊の軽巡ホ級、駆逐イ級二体と遭遇、昼戦で撃沈。完全勝利です。」



提督「さすがだな。よし、怪我はないにしても、それなりに疲れてるだろう。ゆっくり休んでくれ。」



五月雨&夕張「「はーい。」」



提督「あ、ちょいまち。その前に、グラーフ、自己紹介でもしてくれ。」



グラーフ「ああ、分かった。航空母艦、グラーフ・ツェッペリンだ。よろしく頼む。」



提督「よし、じゃあ、解散!お疲れさん!」




おー!




かなり心配だったが、何事も無く終わって良かった。



やっぱり、待っているだけは性に合わない。



何かしら打開策はないだろうか………。




とりあえず、今日は休むか。







その後は、みんなで夕食を食べ、ゆったりと過ごした。




ーーーーーーーーーーーーーーー




次の日。



マルナナマルマル



提督「」ムクリ



提督「」フワァ



提督「」キョロキョロ



グラーフ「スー………スー………。」



提督「」( ・д・ )



提督「」(つд⊂)ゴシゴシ



提督「」( ・д・ )



な、なんでグラーフが俺の布団で寝てるんだ?



昨日は確かに別々に寝たはずだが。



夜這いでもされたのか?



とりあえず起きてもらわないとトレーニングに行けない。



提督「おい、グラーフ。起きろ。朝だぞ?」



グラーフ「む………おはよう、admiral。」



提督「おう、おはよう。なんでここにいるんだ?」



グラーフ「admiralが悪いのだ。」



提督「え?」



グラーフ「昨日散々私のことを放ったらかすから寂しくなってしまったのだ。」



提督「………。」



い、意外と可愛いところがあるんだな。



見た目とのギャップでちょっとくる。



提督「あ、ああ、悪かったな。」



グラーフ「私にも少しは構ってくれよ?」



提督「おお、分かった。」





ーーーー ーーーー ーーーー



ヒトヨンマルマル



拝啓〜この手紙〜読んでいる貴方は〜



どこで〜何をして〜いるのだろう〜



提督「〜♪」



扶桑「提督、失礼します。誰か来たようですが。」



提督「あ、悪い。インターホン聞こえなかった。誰だ?」



扶桑「あ、すみません、まだ確認はしてないのですが。」



提督「そっか、いいよ。行こう。」



ーーー ーーー ーーー



玄関にて



提督「はいよ、お待ちどうさま。どちらさんで?」



電「あ、司令官さん!こんにちは、電なのです!」



提督「お、電じゃんか!久しぶり!元気してたか?」



そこにいたのは、前の鎮守府で出会った電という少女と一人の女性だった。



電「はいなのです!司令官さんのところに来るのが待ち遠しかったのです!」



提督「そっか、ありがとな。」ナデナデ



電「えへへー!」



???「おほん、そろそろ自己紹介してもいいかしら?」



提督「あ、ああ。どうぞ。」



足柄「足柄よ!砲雷撃戦が得意なの!よろしくね!」



提督「ああ、君が足柄か。………なんか、予想と違ったな。」



足柄「何よやぶからぼうに。いきなり失礼じゃない?」



提督「いや、悪い意味じゃないんだ。夕張がビビってたからどんないかつい奴かと思ったら、普通に綺麗な女だったからな。」



足柄「えっ、い、いきなり口説かないでよ!」



提督「え、別にそんなつもりは」



夕張「げっ、足柄さん!」



足柄「あ、夕張!あんた、よくも抜けがけしたわねぇー!待ちなさーい!」ドドドドド



夕張「イヤアアアアアアアアア!!!!!!!!」



提督「………とりあえず入るか。」



電「なのです。」




主要な手続きも終えて、よく馴染めているようで何よりだった。




ーーーーーーーーーーーーーーー




二日後




南西諸島沖




完全勝利





ーーーーーーーーーーーーーーー






そこから五日後





製油所地帯沿岸





夕張がかすり傷





S勝利






ーーーーーーーーーーーーーーー






そこから六日




南西諸島防衛線




五月雨が小破



S勝利





ーーーーーーーーーーーーーーー




俺達は着々と戦果を積んでいった。





が、未だに納得出来ていない事があった。





ーーーーーーーーーーーーーーー




南西諸島防衛線での勝利から三日後の朝。




マルキューマルマル




提督「ふぅ………。」



執務はあらかた済んだ。



夕張達は遠征に行ったし、非番のグラーフと足柄はまだ起きてこない。



提督「本当に済まないな、扶桑。せっかくの休みを潰しちまって。」



扶桑「いえ。提督のお願いならば、私は全然構いませんよ。」



提督「ありがとな。今度何かしら埋め合わせするから。」



扶桑「ふふ、それは楽しみです♪」




俺は今から扶桑を連れて大本営に向かう。



上層部の連中に話をつける為だ。



書類のやり取りじゃ埒が明かない。



提督「よし、行くか。じゃ、二人が起きてきたら説明頼むな。」



妖精「」ビシッ!



提督「はは。行ってくる。」



ーーーー ーーーー ーーーー



鎮守府の前には、迎えの車が既に待機していた。



提督「よう。度々悪いな。」



少尉「いえいえ、大丈夫ですよ。今日あいつらと話すのは中尉なんですよね?」



提督「おう、そうだ。」



少尉「なら全然………所で、隣の美人さんはどちら様ですか?」



少尉は不思議そうな目で扶桑を眺めている。



提督「ん、俺の今の仲間の扶桑だ。艦娘のな。」



少尉「ほぇ〜………。本当に普通の人と変わらないんですね。本営の奴らよりよっぽど人間らしいや。」



提督「人間らしいも何も、俺は普通の人間だと思ってるんだがな。そこら辺はよく分からん。」



少尉「さて、じゃそろそろ行きますか。」



提督「おう、頼む。」



扶桑「よろしくお願いします。」




バタン





ガロロロロロロ






なんだか車に乗るのは久々だな。



ーーーーーーーーーーーーーーー




扶桑「あの、少尉さん?」



少尉「はい、どうしました?」



ふと、扶桑が口を開いた。



扶桑「提督って、前はどんな感じだったんですか?」



提督「」Σ(・ω・ノ)ノ



少尉「ああ〜、基地にいる時の事ですね?あはは、懐かしいなぁ。」



扶桑「ぜひ聞きたいです。」



少尉「いいですよ。………ははは、今考えると本当にバカばっかりやってましたね、俺ら。」



提督「まあ否定はしない。」



少尉「大佐のお使いでこっそりコンビニ行って教官にクッソ怒られたり。」



提督「一日中走らされたなぁ………ありゃキツかった。」



少尉「雑用係の大富豪で大佐が連敗記録打ち立てたり。」



提督「あの人ほんと弱かったな……。」



少尉「前支えのトレーニング中に軍曹が屁こいてやり直し食らったり。」



提督「あれ以来芋類は食わせてないな。」



少尉「オレンジマスタードレモネード緑茶作ったり。」



提督「あの時お前らが俺を嵌めたのまだ根に持ってるからな?」



少尉「闇鍋やってる途中に一人づつ教官に連れ去られていったり。」



提督「今までで一番怖い経験だなあれ………。」



扶桑「ふふ、ふふふ。」



提督「ん、どした?」



扶桑「いえ、お二人とも、とても楽しそうに話しているので。素敵だなぁって思って。」(*´ω`)



提督&少尉「「………。」」



少尉「あの、中尉。」



提督「なんだ。」



少尉「扶桑さんをぜひお嫁さんに」



提督「やらん。扶桑は俺のもんだ。」



扶桑「えっ///」



少尉「いいなぁ………中尉ったら提督業なんてめっちゃ役得じゃないですか。」



提督「今回みたいな事がなけりゃ否定しないんだけどな。ほれ、着いたぞ。」




喋っているうちに、本営に到着した。



さーて、座ってるだけしか脳がない老人共を説得しに行くか………。



提督「じゃ、行ってくるわ。」



少尉「うっす。ご武運を。」



扶桑「ありがとうございました。とても楽しかったです。」(^^)



少尉「はい!またいつでも!」



ーーーーーーーーーーーーーーー



コツコツ



本営の中を元帥がいる部屋まで歩く。




ヒソヒソ




クスクス




憲兵や役員の話し声が鬱陶しい。




提督「………チッ。」



扶桑「大丈夫です提督。気にせず行きましょう。」



提督「ああ。」




憲兵「ここです。元帥は中に。どうぞ。」



提督「ありがとう。」



提督「失礼します。東鎮守府、〇〇中尉です。」ガチャリ



元帥「おお、来たか。まあ、二人とも座りたまえ。」



提督「いえ、すぐに済むので結構です。」



中将「元帥が座れと仰っているのだ。さっさと座れ!」



提督「………はぁ。」



また面倒臭い奴が………。



正直な話、元帥はそこまで悪い人間ではない。



が、こういう奴ら、上層部の連中が圧力をかけているせいで元帥自身の力は半減している。



だからこいつもここにいるのだろう。



そして。



提督「お前に話はねえよ。黙って見てろ。」ギロッ



俺はこういう奴が心底嫌いだ。



中将「何だと!?陸軍風情が好き勝手しおって!」



提督「あ?」



扶桑「あ、あの、提督………。」



元帥「二人ともやめないか!」



提督「すみません。」



中将「………チッ。」



元帥「中尉、何も言い争いをする為に来たわけでは無いだろう。中将も、同席しているからと言って好き勝手な行動は慎みなさい。」



中将「………申し訳ありません。」



元帥「座らなくても良い。中尉、話というのはなんだね?」



提督「回りくどいのは嫌いなので簡潔に言います。」



提督「俺の鎮守府の艦娘の着任人数制限を無くしてください。」



中将「何!?」



提督「規則自体の改変でも、俺だけが例外でもそこは構いません。とにかく俺の鎮守府の人数制限を無くしてもらいたい。」



元帥「それは簡単な事ではないぞ。」



元帥「戦力の偏りなど様々な問題が生じる。」



提督「何も艦娘全員を集めようなんて思ってないです。ただ、着任許可願を拒否するのは俺の理念に反する。」



提督「それに、ドロップ艦娘を見捨てるなんて俺は絶対に出来ない。」



提督「だから制限をなくしてほしい。」



中将「本当に貴様は我が儘ばかりだな。そもそも、ドロップ艦娘など噂はされているが実際はいないだろう?」



提督「ここにいる扶桑がそうだ。滅多な事口にすんじゃねえよ。」



中将「へえ、こいつが?」



中将「さっきも言ったが、貴様の我が儘をそう簡単に許す訳にはいかないんだよ!」



提督「許す許さないはてめぇが決める事じゃねえだろ。」



中将「ふん、何も艦娘の役割は戦闘だけじゃない。」



嫌な笑みを浮かべながら近づいてくる。



中将「男を満足させる女の役割もあるんだよ。こんな風にな!」



中将は急に扶桑の胸を強く揉み始める。



扶桑「い、嫌っ!やめてください!」



提督「おい!!」グイッ



腕を掴み引き剥がす。



中将「………離せ。」



提督「………チッ。」



中将「ふっ、そんなにムキになるなよ。冗談だ。」



ニヤニヤと、嫌味を言ってくる。



扶桑「て、提督………。」キュッ



扶桑が不安そうな顔で服の裾を握ってくる。



提督「大丈夫だ。もう少し待っていてくれ。」



スタスタ



中将に歩み寄り、奴の帽子を奪う。



中将「貴様、何をする。」



提督「こうすんだよ。」



俺は奴の帽子をゴミ箱に叩き入れた。