2017-01-25 12:24:35 更新

概要

続きです。よろしくお願いします




――――――――



ことり「――…緊急ミッション?」


穂乃果「そうだよ。ガンツは今その準備中だね」


絵里「準備? 一体何を準備するっていうの?」



穂乃果「説明が必要だね…完了まで時間がかかるから順番に説明するね」




穂乃果「今、ガンツはガンツを製作した企業、マイエルバッハ社にあるメインサーバーにアクセスしてるんだよ」


にこ「メインサーバー?」


穂乃果「このガンツが日本中、世界中に存在している事は知ってるよね?」


希「うん、海外のミッションにも参加したことがからね」


穂乃果「ガンツには今まで死んだ大勢の人間がデータとして残されているけど、一定数を超えると古いデータから順番に削除されるんだ」


ことり「じゃあ、遥か昔に死んじゃった人は再生できないんだ……」



穂乃果「基本的には出来ないよ。――…でも例外がいるんだ」


海未「例外とは?」




穂乃果「100点を獲得した人間だよ」


穂乃果「一度でも100点を獲得したメンバーは各地にあるガンツからメインサーバーにデータが転送、そこで半永久的に保存されるの」


凛「なら、凛達も保存されてるって事?」


穂乃果「勿論全員されているよ。100点を取る度に本人データは更新されてるから今回取ったメンバーも新しく保存されたはずだよ」


絵里「データがあるって事は…知らない間に私達が再生されている可能性があるって事?」ゾワッ



穂乃果「……可能性はあるだろうね。確認する手段が無いからどうしようもないけど」





にこ「ちょっと待って、どうしてそんなデータが保存されているサーバーと今通信しているわけ?」


穂乃果「――…ここからがミッションの内容だよ」


海未「……まさか」




穂乃果「緊急ミッションで戦う相手は、これまでに100点を取った人間とメモリーに保存されているその人間と相性がいいメンバー……簡単に言えばスーツ組との本気の殺し合いって事になるのかな」




ことり「ウソ…でしょ……」


真姫「………」クルクル


絵里「穂乃果は二回経験したって言ってたわよね?」



穂乃果「みんなが死んでから半年くらいに一回やったよ。確か……“クロノ”と“カトウ”、あと“カゼ”っていう男性三人組だったかな?」


にこ「男三人を穂乃果一人で倒したっての…」


希「じゃあ、二回目はどんな人と戦ったん?」




花陽「!?」ピクッ


穂乃果「え? いや、それはその……」アセアセ


にこ「ん? どうして動揺してるのよ? 変な質問じゃ無いでしょ」


穂乃果「う、うん…確かにそうだけどさ……」シラー



真姫「別に言ってもいいんじゃない? まあ、私は凛と花陽から聞いたときにドン引きしたけど」


凛「あはは…」



絵里「何よ、三人だけ知ってるのはズルいわ!」


ことり「うーん……私は何か思い出せそうなんだけど…」ムムム


海未「ことりもですか? 私もさっきから何か引っかかるんですよね……」ウーム



にこ「喋っちゃいなさい、穂乃果」





穂乃果「わ、分かったよ……二回目の相手は――」


にこ・希・絵里「「「相手は?」」」








穂乃果「――…“私”を含めたμ’sのメンバー…です」アハハ…



にこ「………は?」


絵里「ちょっと待って、え? つまり穂乃果は一人でこのメンバーと相手したの??」


希「ウソでしょ?」


真姫「ドン引きでしょ? あの海未だけでも相手にするのが恐ろしいのに、メンバー全員って……しかも自分自身すらも倒してるのよ、一人で」


花陽「知らなかったとは言え、穂乃果ちゃんに昔殺されていたのはショックでした…」


凛「凛も穂乃果ちゃんには勝てなかったんだよねぇ」




穂乃果「待って待って、確かに戦ったけど殺して無いよ!?」


ことり「どういう事?」




穂乃果「このミッションでは相手を殺す必要は無いの。スーツを無力化すればいいんだよ」


穂乃果「ただ、スーツを無力化してもお構いなしに襲ってくるから戦闘不能まで追い込まなきゃダメだけど……」


にこ「…つまり、穂乃果は私達に何をしたの?」





穂乃果「――…ええっと、スーツを壊した後、動けないようにする為に手足の骨を砕いたりXガンで撃たせて頂きました」エヘヘ



8人「………」ジトッ



にこ「あー…ことりを躊躇わないで撃てたのも納得だわ」ヤレヤレ




穂乃果「だ、だって仕方ないじゃん! ガンツが必ず襲ってくるようにみんなを設定されてるんだもん……私だってやりたくは無かったよ!!?」



希「なるほど、例え知り合いでも絶対に戦闘は避けられないようになっているんやね」


にこ「スーツを壊すだけでいいっていうのが救いね」


花陽「知らない人とはいえ、命を奪うのは嫌です……」


凛「でも相手は100点取るくらいの実力なんでしょ? 大丈夫かなぁ」ムムム


真姫「そこは問題無いんじゃない? 穂乃果一人でも何とかなったわけだし、今回はこれだけ実力者が揃ってるから楽勝なはずよ」





希「あ、ガンツの画面が変わってるよー」


穂乃果「本当だ! 画面には今回のメインターゲットが表示されるんだけど………っ!?」






ガンツ『てめえ達は今から

この方をヤッつけてに行って下ちい

高海 千歌 特徴:つよい 好きなもの:みかん 曜 口くせ:曜ちゃん』






にこ「この子なの? 随分と幼いのね。中学生くらいじゃない」


花陽「あれ? この顔、どこかで見た覚えが……」


凛「あの子だよ! ほら、新宿のミッションで一緒だった静岡チームにいた中学生の!!」


真姫「そう言えばいたわね。あの後100点を取っていたってわけか」


希「中学生なのにようやったなぁ…」



ことり「穂乃果ちゃん……これって…」


穂乃果「うん、多分相手は前回一緒に戦った静岡チームだね。既存のデータだと中学生のままだから、千歌ちゃんはまだ100点を取っていないって事か」


海未「でもこの高海さんは中学生ですよ? なら中学時代の戦友がメンバーとなるのでは?」


穂乃果「その頃のデータはもう削除されているよ。それに“相性のいいメンバーと一緒になる”って言ったでしょ? 前回の星人の量からして100点を獲得したメンバーは多いはず。中学時代のデータとは言えその辺の記憶はガンツが調整してくると思う」


海未「なるほど、時代のギャップは問題無いのですね」



絵里「でも……年頃の女の子と戦うってのも気分が悪いわね」


花陽「もしかしたら、ルビィちゃんとも戦う事になるかもしれないんだよね…ファンだって言ってくれたのに」シュン


にこ「腹くくりなさい。やらなきゃ私達が殺されるのよ? 相手は“偽物”なんだから遠慮はいらないわ」



穂乃果「偽物か…それは違うんだよね」ボソッ


海未「? 何か言いましたか?」





穂乃果「何でもないよ。――…もうすぐ転送が始まる。もう一度言うけど、今回は殺す必要は無い。でも、危ないと思ったら躊躇しないでトドメを刺して! 相手は本気で来るからね!!」





――ジジジジジ







~~~~~~



~新宿 区役所前~




希「――…レーダーで見る限り、五か所に散らばっているね」


穂乃果「二人組が四つに単独行動が一つか…秋葉原の時と同じだね」



凛「なら、こっちも秋葉原と同じ組み合わせで行こうよ」


花陽「全員で一か所ずつ向かうのはダメなの?」


ことり「それぞれ距離があるし、制限時間もいつもの半分しかないから間に合わないと思うよ」




海未「なら、単独行動をしている方は私が向かいましょう。間違いなくあの人だと思いますから」



にこ「前回と同じなら希とね。サクッと終わらせましょ?」


希「任せてな!」



真姫「私はビルの屋上とかから狙撃するから、相手お願いねー」クルクル


凛「凛に丸投げ!?」



絵里「花陽、準備はいい?」


花陽「大丈夫です! 早速向かいましょう」



ことり「私もいつでも行けるよ」


穂乃果「そうだね。じゃあ行こうか」






~~~~~~



~のぞにこ 花園神社前~



にこ「一番近いところに来たけど…だれがいるのかしら?」


希「………にこっち、目の前」カチャ


にこ「…分かってるわ」カチャ




「お、おねぇちゃん!! にこさんに希さんだよ!!? ミューズの!」パアァ


「おおお落ち着きなさい!! 相手がだだ誰だろうとへへへへ平常心でででですわ!!」ワナワナ




希「………(真顔)」


にこ「思ってたのと…なんか違うなぁ」ジトー




にこ「――…希、お願い」


希「はいよ」ギョーン!





希は、はしゃぐ二人に躊躇無くZガンを撃ち込んだ

隙だらけの二人はあっという間にぺちゃんこになる

……はずだった





「――…その銃、わたくし知っていますわよ?」ダッ





希「んな!?」


にこ「なんで!? あの子はこのZガンを見た事が無いはずなのに!?」




「記憶を共有してるんですよ。おねぇちゃんは初見でもルビィや鞠莉さんは知っていますから」ニコ



「それにしても……いきなり撃つなんて、ひどいじゃありませんか?」




希「当たり前やん? 開始の合図があると思ったんか?」



「いいえ、むしろ嬉しいですよ。私達に遠慮も手加減も無しで戦って頂けるようなので」フフフ





にこ「……希、こりゃ楽に終わりそうに無いわね」


希「そうやね…気合入れていかな」パシンッ



にこ「――…行くわよ、黒澤姉妹!!!!」ダッ







~~~~~~



~まきりん 大型電機 屋上~



「あら? 一人で来たの??」



凛「それはこっちのセリフにゃ。さっきまで二人組で行動していたよね?」


「確かにそうね♪ でも、私のスタイル的に遠距離でサポートしてもらった方がいいかなって」


凛「そう言えばあの時も格闘メインで戦っていたっけ」


「一度殴り合いの死闘ってやってみたかったのよねぇ! ここに来たのが貴方でラッキーね♪」


凛「金髪で巨乳……戦う理由としては十分にゃ…!!」ゴゴゴ



鞠莉「戦うか……“殺し合い”の間違いでしょ」ニヤッ


凛「どうでもいいよ。凛はあなたを戦闘不能にすればいいだけにゃ」




鞠莉「あら、意外と優しいのね。まあ、こっちは殺す気満々だけどね♪」ニコニコ


凛「――…覚悟するにゃ!!!」ダッ





――――――



真姫「――…さて、凛のサポートの為に別のビル屋上に来たわけだけど」


「えへへ、先客がいるずら」ニコ



真姫「そうね。確かあなたとは一度も会った事は無いわね?」


「私の名前は国木田 花丸ずら! よろしくお願い致します、西木野さん♪」



真姫「私の名前は知ってるのね。…んで、どうするの?」


花丸「マルはここから鞠莉ちゃんの援護を頼まれているずら」


真姫「奇遇ね、私も同じ理由でここに来たわ」クルクル



花丸「……じゃあ、陣取り合戦だね」カチャ


真姫「ええ、あなたにはここで眠ってもらうわ」カチャ





――ギョーン! ギョーン!







~~~~~~



~えりぱな 西武新宿駅前~



絵里と花陽が辿り着くと

そこには二人の少女が待ち構えていた


無論、どちらも覚えのある人物であった





花陽「――…あの子は、前に部屋に居たよね?」


絵里「ええ、まさか静岡チームにいるとはね……梨子さん」




梨子「ふふ、覚えていてくれたのですね? 何年も前のことなのに」


絵里「厄介ね、私の記憶が正しければ…この子強くなかった?」


花陽「うん、海未ちゃんも認めていたくらいだったよ」



梨子「まあ、あの時よりは弱くなっていますけどね。ブランクってやつです」


花陽「隣にいるのは善子ちゃんだね」


善子「へぇー、意外。よく覚えていたものね」




絵里「さて、一応訊くけど……自らスーツを無力化する気は無いかしら?」


善子「――…あるわけ無いじゃない?」ニタァ



梨子「手加減なんて、しないでくださいね――」カチャ






~~~~~~



~うみ 百貨店 屋上~



海未「――…やっぱり、あなたでしたか」フフフ


「ん? あぁ、海未さんか…参ったなぁ」


海未「一度、手合わせしたいと思っていましたよ…果南」




果南「あはは、そりゃどうも」


海未「同じスーツ組と戦う機会なんて無いと思っていましたよ」


果南「…分かっているの? これからやるのは“試合”なんかじゃない、“殺し合い”だよ。どっちかが死ぬまで戦わなくちゃいけない」


海未「そうですね…だからこそ、果南の本当の実力が分かります」


果南「私の評価、結構高いんだね。喜んだ方がいいのかな?」




海未「――…ええ、μ’sのメンバー以外で二人目ですよ。私が認めた実力者は」シュッ


果南「それは光栄だね」ニヤッ






~~~~~~



~ほのこと 東宝ビル前~




「――…良かった、二人が来てくれて」



ことり「ここにはもう一人いるはずだよね? 曜ちゃん」


曜「そうですよ、千歌ちゃんがこのビルの屋上にいます」


穂乃果「上に行くにはあなたを倒してから、って事でいいの?」ジッ



曜「いいえ、穂乃果さんは行ってください。千歌ちゃんは一対一で戦いたいそうなので」


穂乃果「なら、もしここに私以外が来たらどうするつもりだったの?」




曜「その時は私が相手をするだけです。何人来ようが、誰が相手だろうか屋上には行かせません」


穂乃果「なるほど、じゃあ私が二人で曜ちゃんを倒してから行くって言ったらどうする?」


曜「……穂乃果さんはそんな事はしない、千歌ちゃんはそう言っていました」




曜「ただ、穂乃果さんがその気なら…千歌ちゃんには悪いけどここで倒します!」ギロッ



ことり「大丈夫。曜ちゃんは私が相手をするから、穂乃果ちゃんは上に行って」ニコ


穂乃果「うん、気を付けてね――」






~~~~~~



にこと希はZガンを連射する

試した事は無いがこの武器の威力ならば一撃でスーツを無力化出来る

二人はそう判断したのだ


しかし、相手もそう簡単には当たらない

にこの弾幕も

希の偏差射撃も

全て見極められかわされる


神社周辺の道路はZガンにより穴だらけになっていた





にこ「ウソでしょ!? 何で避けられるのよ!!?」ギョーン!ギョーン!


希「取り敢えずこのまま逃げ場を無くそう!!」ギョーン!ギョーン!




足場の悪い場所にしてしまえば避けるのは困難だ

しかし、ダイヤもそんな作戦は分かり切っている

一気に距離を詰めた




ダイヤ「させると思いますか!!!」ダッ!


希「しまっ………!!」




希の懐に潜り込んだダイヤによる掌底が胸の中心に炸裂

鋭く重い一撃が身体の内部に響き、ダメージを与える

呼吸困難に陥り、動きが鈍った希にダイヤは確実にXガンを撃ち込む


にこがすぐさまフォローに入るが

ダイヤは再び後退して距離を取った





にこ「希! 大丈夫なの!?」


希「ゴホッゴホッ……だ、大丈夫や。助かったよ」



にこ「このまま闇雲に撃ち続けても無駄みたいね…隙を作る必要がある」


希「そうやね……どうしたものか」





ルビィ「――…おねぇちゃん、もういいんじゃない? 早く花陽ちゃんに会いたいよ」


ダイヤ「そうですわね、早く決着をつけてしまいましょうか」



にこ「はい?」イラッ


希「随分と舐めてくれるやん?」ピキピキ





苛立つ二人

そんな事はお構いなしに会話を続ける黒澤姉妹





ダイヤ「ルビィ、“アレ”を使いなさい」


ルビィ「…分かった」ピピッ





ダイヤに何かを許可されたルビィは手首のコントローラーを操作した

そして、ルビィの身体に“何か”が転送され始めた


二人はこの装備が一体何かよく知っている……

100点装備の一種

Zガン獲得後、さらに100点を取り続けることで得られる装備

――ハードスーツがルビィに転送が完了された





希「――…ちょっと、冗談やろ!?」ゾワッ


にこ「あの子、穂乃果レベルに強いって事なの!!?」





ハードスーツを身に纏ったルビィは二人目がけて突っ込んできた

このスーツで殴られれば一撃で壊されかねない

二人は攻撃を中止

必死に攻撃を回避する





希「にこっち! 一旦引くで!! ステルスや!」スウゥゥ


にこ「分かった!!」スウゥゥ



ルビィ「ピギィ!? 逃げちゃった……」


ダイヤ「どうかしらね…警戒はしておきましょう」






――…にこと希は近くの建物の陰に身を隠した

ハードスーツを持ち出された今

圧倒的不利な状況に追い込まれてしまった





にこ「どうするのよ…あのスーツの耐久値ってとんでもなく高いんでしょ!?」


希「Zガンで壊せるかどうか…一番手っ取り早いのは同じハードスーツで戦う事だけど」


にこ「穂乃果以外持ってないでしょ? 今から呼ぶのは無理よ…」


希「だよね…二人で何とかするしか無いかぁ」ウーム



にこ「策はあるの?」


希「……一応ある」


にこ「…リスクが高い作戦なのね。取り敢えず話してみて?」


希「作戦はこうや――」







~~~~~~



凛「――…にゃああ!!」ブン


鞠莉「ふっ!!」バシッ!





凛と鞠莉は武器を一切使わない格闘戦を繰り広げていた

凛は型にはまらない、経験と直観に任せた戦法

鞠莉は巧みな足技を軸にした戦法

両者の実力は拮抗していた





凛(甘く見ていたわけじゃないけど、ここまで強いとは思わなかったにゃ!?)



鞠莉「ふっ!!!」グルン!


凛「んにゃ!!?」バキッ!





鞠莉の強烈な回し蹴りが凛のこめかみにヒット

地面に叩きつけられる


頭部へ追い打ち攻撃をするが

凛は身体を転がしギリギリで回避する





凛「ふぅ…危ない危ない」


鞠莉「完璧に決まったと思ったんだけどなぁ。でも、いいダメージは入ったかな?」


凛「厄介な足技だにゃ…」


鞠莉「うふふ、凄いでしょー」ニコニコ




凛(真姫ちゃんは何してるの……援護があれば楽に倒せるのに)


鞠莉「――…そろそろかしらん?」ニヤリ


凛「……?」





鞠莉の意味深な発言

その瞬間、凛の周辺の地面が連続して爆発し始めた


間違いない、凛に対するXガンによる攻撃だった

精度は高くない

しかし、間違いなく何発か被弾している





鞠莉「こっちの援護射撃ね。これでまた追い詰めた!!」ダッ


凛「そんな!! 真姫ちゃん!?」






~~~~~~



真姫「――…ったく、嫌な戦法ね」





真姫は物陰に隠れている

一刻も早く花丸を無力化し

凛の援護に向かいたい


そんな真姫に花丸が取った作戦は至極単純

二丁のXショットガンを構え

片方を真姫

もう片方を凛に向けて連射するだけ


逃げ場の少ない屋上ですぐに物陰に隠れてしまったのが悪手だった

ひたすら連射され、完全に身動きが取れない





真姫(さて…どうしたものかしら? 何発受けられるか分からない以上、被弾覚悟で突っ込むのはリスクが高いわね)


花丸「隠れてるだけじゃ倒せないずら! 早くしないと仲間が死んじゃうよー」ギョーン!ギョーン!ギョーン!


真姫(……仕方ない、やってみるか)ガシャン



花丸「……あれ? まさか!?」タッタッタッ





異変に気が付いた花丸は凛への攻撃を中止

急いで真姫の隠れる場所に向かった


そこにはすでに真姫の姿は無かった





花丸「やっぱりビルから飛び降りたずら。爆発音に合わせて行けば気が付かなかったのに…まあ、この場からいなくなったのは好都合だね。これで正確に凛さんを狙える」





真姫が居なくなった事を確認した花丸は再び狙撃ポイントに戻ろうと踵を返す





――ギョーン!ギョーン!ギョーン!ギョーン!ギョーン!





花丸「――…ずら?」キュウゥゥゥゥン



真姫「なるほど、五発当てれば無力化出来るのね」バチバチ


花丸「す…ステルスモードっ!?」


真姫「私がそんな間抜けな事するわけ無いでしょ? 簡単な罠に引っかかるとは詰めが甘いわね!」ドスッ!


花丸「ごッ!!」





真姫の拳がみぞおちに深々とめり込む

花丸の余りの激痛にそのまま意識を失った





真姫「後で結束バンドでも見つけて縛っておけば大丈夫そうね。早く凛の援護に向かわないと――」






~~~~~~



絵里「ほらほら、よ~く狙いなさいよ!」


善子「ちょこまかと鬱陶しいわね!! いい加減当たりなさいよ!!」ギョーン!ギョーン!





善子のXガンによる攻撃が、ことごとくかわされる

全く当たらない攻撃に善子は焦りを感じ始めた





善子「だったら、直接叩くまで!」ダッ!


絵里「あら? わざわざ近づいてくるなんて優しいのね」ヒョイッ


善子「んな!?」スカッ





あっさりかわされる善子

体勢が崩れたところにXショットガンを撃ち込む絵里

慌てて避けようとする善子だが

そのまま地面に抑え込まれ身動きが取れなくなってしまう





絵里「今更逃げられると思った? 近づいた時点であなたの負けだったのよ」グググ


善子「このっ! なんで…私だって弱くは無いはずなのに!?」



絵里「そうね、射撃の腕も動き方も100点を取っただけの実力はあると感じたわ。ただ……」


善子「?」キュウゥゥゥゥン




絵里「――…ただ相手が私だった。それがあなたの敗因よ」ゴキッ!


善子「がああああぁぁぁぁ!!!!!」ジタバタ




身体を抑え込んだ力により

スーツに過負荷がかかり善子のスーツは機能を停止

絵里はそのまま肘の関節を外した





絵里「ええっと、穂乃果は手足の骨を砕いたんだったかしら?」


善子「ひぃ!」ゾワッ


絵里「冗談よ。骨は砕かないし、命までは奪わないわ」



絵里「関節を外すだけで勘弁してあげる。安心して、大人しくしていれば痛くないと思うから♪」ニコ







~~~~~~



「ぎゃあああああぁぁぁ!!!」





花陽「!? 凄い悲鳴…絵里ちゃんの声では……無い??」


梨子「よっちゃん……負けちゃったか」


花陽「まあ、相手が絵里ちゃんだからね。穂乃果ちゃんと海未ちゃんがずば抜けているから目立っていないけど」


梨子「……よっちゃんは本当に不運な子ね」ハァ



花陽「そろそろ私達も勝負を決めよっか?」


梨子「……ええ、二体一だと勝ち目が無いし」カチャ





お互いガンツソードをメインに戦う

まだスーツへのダメージはどちらも無い


睨み合い続けた両者が今、激突する――







~~~~~~




にこと希が身を隠してから少し経った

警戒をし続ける姉妹だが二人に動きは全くない

ルビィは次第に苛立ちを募らせる





ルビィ「ねえ、もう次に行ってもいいんじゃないかな。このスーツにびっくりして逃げたんだよ」


ダイヤ「そうね…もう行きましょうか」






希「――…にこっち!! 頼んだで! ここはウチが食い止めるから穂乃果ちゃんを!!!」


にこ「任せなさい! すぐに戻ってくるわ!!」





近くのビルから希とにこが飛び出した

希の手にはZガンは無かった





ルビィ「正気? 武器も持たずにこのスーツを渡り合えると思っているの?」


希「当たらないなら、あんなにデカい銃は邪魔なだけやん? それに今回は勝つ必要は無いし」


ダイヤ「時間稼ぎですか…何分持つんでしょうねぇ!!」





先に飛び出したのはルビィ

その巨大な両腕で希の身体に殴りかかる


一撃たりとも受けるわけにはいかない

ルビィの連撃をギリギリで捌く

そのたびにじりじりとスーツにダメージが蓄積されている





ルビィ「ほらほらぁ!! このままじゃ、なぶり殺しにしちゃうよぉ!!!」


希「くっ…そのスーツ相手はしんどいなぁ!!」





突如、ルビィの肘辺りからジェット噴射が作動し拳が加速される

ハードスーツの機能をよく知らない希にとってこれは大きな誤算




――ドゴッ!!




回避もガードも間に合わず

拳は希の腹部に深々とめり込み後方の壁に吹き飛ばされた





希「がはぁぁ!!?」


ルビィ「あれ? 今ので壊れないんだ。意外と丈夫なんだね」


希「ハァー…フゥ、そのスーツにそんな機能があったなんてね…無知って怖いわぁ」



ダイヤ「もういいわ。ルビィ、止めを刺しなさい」


ルビィ「うん。出来るだけ楽に逝かせてあげるから、抵抗しないでね?」





ルビィは一歩ずつ希の元へ近づいて行く

希は先ほどのダメージがまだ残っているため動けない




希「ヤバイなぁ…このままじゃ本当にお陀仏やん」


ルビィ「……やけに余裕だね。これから死ぬんだよ、怖くないの?」



希「ウチが死ぬって? それはありえへんな。この勝負はウチらの勝利で終わる。これは決定事項やで」


ルビィ「………」


ダイヤ「……殺しなさい」




希「――…ウチは死なない、仲間が必ず助けてくれる。……頼んだで、にこっち!!」






――ズドドドン!!!





Zガン特有の弾丸がルビィを上から押し潰す

ハードスーツはまだ壊れないが地面に押し付けられ身動きが取れない


間髪入れずに何度も何度も発射されるZガン

いくら耐久値が圧倒的に高いとは言え

これ以上当たり続けるわけにはいかない

ルビィは焦る





ルビィ(ヤバイよ……でも、あの銃は連射するほど威力と範囲が落ちる! 最低出力のタイミングなら脱出出来る!――)









にこ「――って考えているでしょうね。だとしたら甘いわ」ギョーン!ギョーン!




にこはZガンの射程距離ギリギリの物陰から連射していた

その両手にはZガンが二丁握られていた

にこ自身の物と希が託した物である


最低出力になる前に切り替え

常に一定の威力でダメージを与えていく






ルビィ「どうして!? 威力が全く落ちないよ!!!?」



ダイヤ「ルビィ!!! あの女ぁ…逃げたんじゃ無かったのかああ!!!!」


希「――…おー怖いなぁ。それがあなたの本性なん?」ニヤ





希は にこ による援護射撃を確認すると同時に

ダイヤの背後へと回り込んだ

ルビィに気を取られていた彼女に対し希は……





ダイヤ「んな、いつの間にっ!? ……ピ、ピギャアアアアアァァァ!!!!」


希「どうや! この技はスーツ越しでもダメージが入るのは身をもって体験済みやで!!!」ギチギチギチ





にこはその様子を見ながら希とダイヤの方に近づいてきた

勿論、ルビィにZガンを連射し続けながら



にこ「希……この局面でコブラツイストを選ぶのね」ヤレヤレ


希「当たり前やん。これなら完全に拘束出来るし、今度凛ちゃんに仕返しする練習にもなるからねぇ」ギチギチギチ



ダイヤ「痛い痛い痛い!! ギブギブううう!!!!」


にこ「……ハードスーツの方はもう大丈夫みたいね。壊れて中身の本体が見えているわ。多分死んでない…と思う」


希「そう? ならこの子のスーツも無力化して。早くしないとウチのスーツが壊れてしまうんよ」ギチギチ



にこ「分かったわ。そのまま抑えていてよー」





にこはホルスターからXガンを取り出し

ダイヤのスーツが壊れるまで撃ち続けた


スーツが壊れた瞬間

今までの痛みとは比べ物にならない激痛に襲われ

叫ぶ暇も無く意識を失った




希「あちゃー…加減を間違ってしもうた。この子、大丈夫かな?」キュウゥゥゥゥン


にこ「どうでもいいわよ。それよりもあんたのスーツが壊れた事の方が問題よ」


希「あらら、ほんまや。壊れちゃった」



にこ「じゃあこれからは……ん?」ピピピ


希「連絡やん。ウチのはさっきの戦闘で壊れてもうたからな。誰からなん?」


にこ「ホント、この通信機の耐久性は何とかならないのかしら……ええっと、全体通信ね。発信者は……真姫だわ」







~~~~~~



凛「――…ヤバイヤバイヤバイ!!」





凛は止むことの無いXガンによる狙撃を避け続けていた

この屋上には遮蔽物が全く無い


鞠莉に近づけば誤射を恐れて狙撃は止む事は予想できる

しかし鞠莉も狙撃手もそんな事は分かり切っている

鞠莉は常に一定の距離を取りながらXガンを構えてけん制している

射程圏内に入れば数発の被弾は免れない

最初の狙撃で何発被弾したか分からない以上、一発たりとも当たるわけにはいかなかった





鞠莉「頑張れ~。動き続けなきゃ当たっちゃうよ!」ニヤニヤ


凛「このっ! 真姫ちゃんだったら動いていても当てちゃうのに、そっちの相方は

へたっぴだね!!」ハァハァ


鞠莉「煽ってるつもり? 当たればベストだけど、あなたの体力が削ることが目的だから問題ないわ~♪」



凛「ぐぅぅ…」ハァハァ


鞠莉「まあ、その真姫ちゃんって子が援護してくれるはずだったんでしょ? それが無いって事は……」ニタァ



凛「………っ!?」キュウゥゥゥゥン





凛のスーツが壊れた

逃げる事をやめた凛はその場に立ち尽くす

狙撃は少し前から止んでいた




鞠莉「あは♪ 遂に壊れたわね! これでチェックメイトよ!!」ダッ!




勝機とみた鞠莉はトドメを刺すべく距離を詰める

――そんな状況で凛は笑みを浮かべていた





凛「――チェックメイトか…それって自分の事を言ってるのかにゃ?」ニヤァ


鞠莉「……は?」キュウゥゥゥゥン





今度は鞠莉のスーツが壊れた

自身に何が起こっているのか理解出来なかった


凛はその隙を見逃さない

すぐさま距離を詰め、Xガンを弾き飛ばす

ギョッとした鞠莉に対し凛は自分の頭を彼女の腕の下に入れ、正面から相手の腕を抱え込むように腰に手を回し、そのまま後ろに投げつけた





鞠莉「なっ!!? スーツのアシスト無しで!?」


凛「あなたとは鍛え方が違うんだにゃああああぁぁぁ!!!」グオンッ!





――ドゴッ!!!





「ノーザンライト・スープレックス」と呼ばれるこの技が見事決まり

鞠莉の意識を刈り取った





凛「はぁ…はぁ……結構危なかったにゃ。スーツが壊れた時はもうダメかと思ったよ」





――ピピピ




凛の手首に付いている腕輪が鳴り出した

腕輪のディスプレイを確認すると“真姫”と表示されていた






――――――――



東京チームは全員、腕輪型の通信機を装備している

真姫により考案、穂乃果の知り合いの技術者により開発されたこの通信機は

一定の範囲内にある同一機と音声もしくは文字による通信が可能である

呼び出し音や音声は指向性なので隠密行動時でも音漏れすることは無い

ただ、精密機械なので耐久性はそれ程高くないので戦闘中に強い衝撃が加わると

すぐに故障してしまう欠点がある



Xショットガンで鞠莉のスーツを無力化

凛がトドメを刺したのを確認した真姫はこの通信機で凛を呼び出す





凛『真姫ちゃん!? 援護が遅くないかにゃ!!? あと少しで殺されるところだったんだよ…』


真姫「狙撃準備が出来た事は通信機で伝えたはずよ。だからスーツが壊れたのに立ち止まったんでしょ?」


凛『そーだけど…壊れる前に何とかして欲しかったなぁ』


真姫「こっちだって色々あったのよ。間に合ったんだからいいじゃない」


凛『ぶぅぅ……それで、これからどうするの?』


真姫「取り敢えず合流しましょう。私がそっちに行くから待ってて」


凛『了解にゃ~』


真姫「じゃあ、通信を――」





スコープを覗きながら通信をしていた真姫

通信を切ろうとしたまさにその瞬間

凛の背後から何者かが近づいて来るのが見えた

その手には刀のような武器が握られている





真姫「っ!!? 凛後ろおおお!!!!!!」





――ザシュ!!





真姫の叫びも空しく背後から斬り倒される凛

すぐさま狙撃態勢に入るが“襲撃者”はステルスモードを起動

姿を見失ってしまった

真姫は急いで通信機で呼びかける





真姫「凛!! 応答しなさい!!」


凛『……ま…き……ちゃん…』


真姫「今すぐ行くから、意識をしっかり保ちなさい!!」


凛『………』



真姫「凛? りいいいいん!!!!」





――Part3へ続く


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