2017-04-03 07:33:40 更新

概要

ついに鎮守府に一つの指輪が届いた。
だが、それをまだ誰にも知らせていない提督であった・・・。


前書き

『自業自得な提督』シリーズの最終回です。
物語は、自業自得な提督3から、しばらく経ったところから始まります。
出撃のシーンを今まで書いてこなかったことをお許しください。


   1


「たっだいまぁ、提督ぅ~」


 ある日の昼。外で遊んできた島風は、元気よくに執務室へ入ってきた。


「おかえり島風。おいおい、今日もこんなに服を汚してしまって」


「にっひひ~、今日も白いお姉ちゃんたちと遊んできたよ。今日は鬼ごっこしたんだ~。すごいよ。わたしなんて一度も捕まらなかったんだから!だって、速いもん!」


「それはすごいな島風。でも、あんまり服を汚すと、鳳翔さんに怒られるぞ」


「は~い」


 黒井は島風の頭をぐりぐりと撫でた。照れる島風に対し、子供のようにかわいがっていたことに黒井は少し恥ずかしくなっていた。


 だが、黒井の視線は遠くを見ていた。




(あれから、もうそんなに立つのか・・・)




 黒井がこの世界にやってきて、大分経った。なにせ、日付が分からず、どれほど経っているのか、分からないのだ。


 その間に、大規模作戦が行なわれ、黒井も参加していた。


 結果、無事作戦が成功した。


 そして、艦娘たちや国土が危険な目に遭うことはなくなった。


 作戦終了してしばらくしてから、友好関係を結ぼうとする者も現われ、以前のように敵対関係ではなくなっていっていた。




 今では艦娘たちは、各々が自由気ままに自由を味わっている。


 ある者は軍から引退したものがいたり、またある者は軍に残って生活をする者がいる。


 黒井の鎮守府に所属する艦娘たちは、鎮守府に残って生活をしていた。みんな、ここから出るのを嫌がっていたようである。


 提督としての黒井は、歓迎する気であるが、黒井自身ではすこし複雑であった。なにせ、黒井自身は元の世界に戻りたがっているからである。


 また、黒井には少々気にしていることがある。


 寺田提督の行方である。

 

 寺田は、先日の騒動以来、相変わらず行方不明の状態である。


 それともう一つ。こちらは頭を抱えるほどの問題点。


 黒井の机に置いてある一つの小さな箱。中に入ってあるのは、きらりと光り輝く指輪。


 そう、ケッコン指輪である。


 とうとう黒井にも春の知らせが来たのであるが、当の本人は乗り気がしなかった。


 そのため、黒井はケッコンの話は一切、艦娘たちに触れないでいた。当然、艦娘たちは鎮守府に指輪が届いていること自体知らない。


 なぜ、黒井が頭を抱えるかというと、必ず艦娘たちが何らかの騒動を起こすに違いないと思ったからである。


 それは、黒井に身の危機が迫りくるほどの恐怖感すら感じるほどであった。




 「提督、あの小さな箱は何なの?」


 島風が、ふと机の上に置いてある箱に目を向けた。


 箱の中身は、ケッコン指輪が入っている。


 それを見るや黒井は、そそくさと自分のポケットに仕舞い込んだ。


「別に大したモンじゃない。気にしなくていいよ」


「ふぅ~ん、分かった」


 そう言って、島風は執務室を後にしていった。






 穏やかな夜。


 黒井は早々に寝室で眠りについていた。 執務室から、ドアの開く音が聞こえずに。


 一人の影が執務室の中で動いていた。


「にひひ~気になるから、来ちゃった。気にするなと言われたら。気になるのは仕方ないよね~。一体、さっきの箱は何だったんだろう?」


 島風は、椅子に掛けてある提督の服のポケットをまさぐった。


 すると、そこから小さな箱が出てきた。


 開けてみると、そこには輝く指輪が現れた。


(そうか、提督が気にするなと言うのも無理はないよね。けど、これは私が戴いておこうっと!!みんなに気付かないうちに)


 島風はそっと執務室を出ていった。一方の黒井は、すっかり熟睡していた。




 島風は、夜の廊下を歩いていた。






「島風さん、こんな時間にどうしたのですか?」


 島風の前にいた者は、淀んだ瞳で島風をじっと睨んでいた。




   2


 朝、雨が降り注いでいた。




「はぁ・・・、せっかく早起きできたというのに・・・」


 雨の日の朝食前は、黒井の日課は大体決まって読書している。


 なにせ、艦隊を指揮する機会すらないからだ。


 今日は、執務室で読書に耽っていた。だが、どこか落ち着かない気分だった。


 いつも触れている本なのに、紙がしっとりと湿っている感じがしたのである。おそらく、よほど神経質になっているのであろう。そう感じる黒井であった。


 それに、鎮守府が静けさに支配されている感じがした。




 ・・・・・・。


 数分の時間経過でさえ、苦痛に感じてきた黒井は、読書に集中できなくなり、黒井は執務室を出た。


 誰かと話でもして、気を紛らわそうとした。そこで、龍驤の部屋に向かった。




「なんや、司令官かいな、お早うさん。今日はどないしたんや?」


「いや、話し相手にでもなってくれないだろうかと思って。なにせ、こんな天気だし」


「ああええよ。ええよ。入り」


 どうやらテレビを見て時間を過ごしていたらしく、朝から情報番組を見ていた。


「なんや、朝から顔がようないで。何かあったんかいな」

 

「いや、別に何でもないよ」


 龍驤が入れてくれたコーヒーを飲んでいた。時折、日常話をしながら、朝の退屈な時間を費やしていた。


 気が付けば、朝食の時間になっていた。


「ほな、ぼちぼち行こか」


 二人は食堂へ向かった。





「・・・・・・」


 食堂に着いた時から、黒井は居心地の悪さに鳥肌がたった。この世界に来た初日以来の、感覚に襲われ、黒井は足元が浮いてるようにまで感じた。


 黒井を見る艦娘たちの目が、いつもと違っていたのである。


 その目は、まるで獣のように目つきが鋭く、黒井に目を向けたままであった。


「な、なんやなんや皆。どないしたんや」


 龍驤も、みんなの様子の異常さに恐れている




「て、提督ぅ・・・、おはようございます」


 顔がパンパンに膨れた島風が黒井の前にやって来た。


「な、なんや島風。どないしたんや!」


「誰に襲われた」


「え・・・えっと」


「提督、気にする必要はありません」


 島風の言葉を制したのは、扶桑である。




「島風は、提督が私のために用意してくれた指輪であるにもかかわらず、盗んだのです」


「あら、いつ、あなたのために用意していたのでしょうか。私のために用意してくれたものなのに、なぜ話をすり替えるのでしょうか」


「て、提督・・・、あ、あのね」


「島風!!」


 島風が、これから何か言おうとしたときに、怒声が鳴った。


「ご、ごめんなさい!!!」


「島風、ちょっち保健室へ行こか。明石にでも見てもらわんとな」


龍驤は、島風を連れて保健室へ向かっていった。




 食堂にいる艦娘たち全員、黒井からまだ目をそらしていない。


「提督さん、今夜、予定が空いてるかしら?」


「ちょっと、私と今夜は一緒にご飯を食べる予定よ。邪魔しないで」


「司令官さんは、忙しいのです。無理をさせない方がいいのです」


「なんだよ、いったいどうしたんだっ・・・」




 その時、黒井の中に現実世界で見た夢が鮮明に表れた。




「提督、この箱の中には一体何が入っているんでしたっけ?」


 扶桑の言葉に、はっと我に返る。


 扶桑が懐から取り出した小さな箱であり、見たことのある箱。


「提督から答えられないのなら、代わって私が開けてみましょうか」


「や、やめろ!!」


「どうしてですか?」


「君たちには・・・、」


 そこからが言えない。


「関係ない話とでも言いたいのですよね。そうでしょ?」


 黒井の表情が曇った。


「となれば、ますます気になります。中を確認します」


「よ、よせ!!」


 提督が箱を取り返そうと扶桑へ駆ける。


 それを、数人の艦娘が取り押さえ、床に伏せさせる。


 艦娘たちが箱の中身を次々と見ていった。




 その瞬間、その場の空気が凍りつくような雰囲気が漂った。




「どうして、今まデ、私たちニダマッテイタノデスカ・・・?」


 艦娘たちが黒井をじっと見る。


 だが、その目には明るさが失われていた。




「どういうわけか説明してよ、提督」


「私達には、練度が最高限度まで達したものがいるのに」




 いつのまにか、艦娘たちに取り囲まれている黒井。


 あたりを見渡しても、どこか様子のおかしい艦娘たち。


 そして、身動きの取れない黒井。




「提督・・・どうしてこのことを黙っていたのですか!?」


「提督、答えて!!」


「司令官サン、話シテホシイノデス・・・」




 黒井は艦娘たちを振りほどき、食堂を急いで去っていった。




「早く選んでください!!」


「こうすればいいのデース!テイトク、全員と結婚すれば万事解決デス!!」


「なるほど。さすがお姉さま。いい考えです!!」

 

「ふざけるな!!僕は、君たち全員とは結びたくはない。そんなことして、いいわけがない。僕は、君たちの中から、一人しか選べない。けど、僕にそんなことできるわけがない。だから・・・、誰とも結べない・・・、いや、結びたくない!!」


「だったら、私たちで分からせるまでです」


「そうよ。提督に、私たちの本気を見せつけるだけよ」


「テイトク、Buring Love!!」


 黒井は、力の限り逃げたが、大勢の艦娘たちを前に逃げ切られなかった。


「捕まえたわよ。観念しなさい!」


 そして、艦娘たちの手が黒井に伸びている時、黒井は床にぐらりと倒れた。


 この後、艦娘たちが黒井にどんなことをしていたのか、見ることができなかった。








 次に意識を取り戻すときには、眩しく感じることと、アラーム音が聞こえていたのであった。




 目を覚ますと、寝室のベッドの上に横たわっていた。どうやら、カーテンが開いたままで、黒井の顔に日光が直射していた。


 黒井は、目覚まし時計のアラームを止めると、大きくあくびをした。


 気がづくと、いつもとは違う部屋にいた。どうやらここは、自分の部屋だ。


 どういうわけか、黒井は元の世界に戻ってこられた。


「帰って来たのか・・・。なんだか、今まで夢を見ていたような気分だ」


 黒井は、パソコンの画面を開いて、艦これの画面を開こうとした。だが、すでに退会済みであり、データは消滅していた。


「・・・・・・終わったのか」

 

 黒井は艦これをプレイすることはもうなかった。






   3


 それからしばらく、ある春のこと。


 黒井は、朝早く起きて、カーテンを開けた。朝日が差し込み、黒井は目をつむった。時計を見ると、午前七時を指していた。


「少し、外に出てみるか」


 ジャージ姿に着替えて、外に出る。仮想世界で日課になった散歩が、こっちでもするようになった。だが、前のコーストは違う。近くに海はないため、いつも周辺の川辺まで歩くことを日課としている。




「おはようございます」


 通勤途中のビジネスパーソンが歩いていく。


「あ、おはようございます・・・?」


 どこかで見覚えのある女性だった。




 散歩の目的地である、河川敷にやって来た。


 黒井は刈り込まれた草の上に座り、ぼうっと何気なくすごしていた。今日はたまたま河川敷で子供たちが鬼ごっこをしていた。


 そんな光景を見て、少し苦笑いしていた。


「僕が経験した鬼ごっこは、本当に怖かったよ・・・」


 以前の光景が頭の中をよぎる。


「それにしても、あれは夢だったのかなぁ・・・」


 だが、もやもやとしていた記憶がだんだんとはっきりしてきた。


「そういえば、島風が外で鬼ごっこして遊んで帰ってきたことあったよなぁ・・・」


 だんだんと現実と区別がつかなくなってきていた。




 その時、とん、と黒井に転がってきたボールが触れた。サッカーボールほどの大きさだ。


「すいませ~ん」


 子連れの母親が黒井に声をかける。どうやらこのボールは、親子のもののようである。


 黒井は、ボールを返した。


「ありがとうございます」


「いえいえ・・・」


 このときもまた、黒井には見覚えのある顔だった。




 この後も、どういうわけか見覚えのある顔がよく目にした。しかも、全員女性である。


 


 散歩から帰ると、一通の封筒が郵便受けに入っていた。


 お花見会のお知らせであった。


 中を開けてみると、達筆な文字で書かれていた。




『お花見会のお知らせ


 桜が咲き誇る中、いかがお過ごしでしょうか。


 明日、午後三時から、地区の人たちとお花見を開催したいと思い、連絡を申し上げました。


 場所は、近くの河川敷にある、桜の木々が並んだ場所で行う予定です。


 尚、飲食物は、こちらで用意致します。




 追伸


 みんな、提督に会えることを心から楽しみにしています。』




「提督って、どういうことだ・・・?」


 手紙を読んだとき、実は元の世界に戻ってこられていないのではという感覚に陥った。






 翌日、黒井は午後三時に河川敷の桜並木にやって来た。


 すでに何人かが集まっていたが、黒井以外は、みんな女性である。


 一人が黒井の姿に気付くと、手を振った。 


「こっちですよ、提督。いや、黒井さん!」 


「お待ちしておりました」


「司令官、はやくここに座って座って!」


「こら、いまは司令官ではなく、黒井さんでしょ!」




「どうしてここに・・・」


 黒井が言うと、ご自慢のカメラを肌身離さず持っている女性が言った。この顔にも、黒井は見覚えがある。


「司令官さんが心配で、来ちゃいました」


「ど、どうやって・・・?」


「それが、私たちにもよく分からないのです」


「それじゃ、みんながいた世界のほうはどうなるの?」


「さぁ・・・どうなるのでしょうかねぇ?」


「ひどく楽観的だな」


「提督がいない鎮守府は、とてもつまらないものでしたから」


「そうか・・・」


 黒井は、何か話をしようと考えていた時だった。




「ところでクロイサン!誰とケッコンするのデスか!」


 黒井が、突如暗い表情になる。


「・・・ナーンテ、ちょっとイジワルを言ってみたかっただけデス!!」


「びっくりした・・・」


「んもうお姉さま、ちょっとイジワルがキツイですよ!」


 周囲が少し笑いに包まれる。


「デモ、久しぶりに会えてよかったデス。これからも、よろしくおねがいシマ~ス」


「秘書艦のようにそばにいる機会は少ないと思いますが、なんなりと相談にはのりますからね」




 しばらくすると、参加者が全員集まった。


 こうして、お花見会が始まった。


「さぁ、素敵なお花見にしましょう!」


 こうしてお花見会が始まった。






 以降も、普段と変わらない日常を送り続けていったが、相も変わらずケッコン騒動になりかねない事態は起きていた。


 ひどいときは、家まで押しかけてくるときもあり、黒井はまた頭を抱えることになったとか・・・。




 こうして、黒井と彼女たちは、それぞれの道を歩みだしていった。だがそれは、また別のお話。






   X


 男は、浜辺に打ち上げられていた。


 目を覚ますと、空は雲一つない青空だった。


 周囲を見渡していくと、海の正反対には家々が建ち並んでいる。


 男はしばらく歩いた。


 


 しばらくして、男は自分の家にたどり着いた。


 どうやら、奇跡的に現実世界にたどり着いていたようである。


 自分の部屋に戻ると、一台のパソコンが置かれており、電源がついたままの状態でついていた。


 艦これのログイン画面だ。


 しかし、依然プレイしていた時とは違うかんじだった。


 気乗りはしないが、操作を進めているうちに分かった。


 データは初期化されており、秘書艦を選ぶところからであった。


 男は、前に選んだ時と同じ秘書艦を選んだ。




 


 男は、ポリシーを持って始めようと決めた。


 一つ目は、中波撤退を原則にして、出撃を繰り返すこと。


 二つ目は、所属する艦娘は、前にプレイしていた時と同じ艦娘を迎え入れるということ。

  



 男は、司令官の名前を、『寺田』と入力してプレイを始めた。




後書き

ここで、『自業自得な提督』シリーズは、いったん終わらせていただきます。最初は『1』で、バッドエンドにしようと考えていたのですが、これで終わるのもどうかと思い、続けて書いていくことにしました。書いている間は、どんな話にするのか人文で展開を考えるのがとても面白かったです。
最終回を書くにあたって、以前までとはかなり飛んだ内容になっていないのかどうか不安です・・・。
感想や意見をお待ちしております。

最後になりますが、
最初から読んで下さった方、途中からでも読んで下さった方、この回から読んで下さった方、コメントをいただいた方や評価していただいた方に、心からお礼を申し上げます。


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1件コメントされています

1: SS好きの名無しさん 2017-04-06 12:30:05 ID: UYSmT2mT

龍驤は癒し・・・


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