2018-03-22 03:37:54 更新

概要

8章です。※2/19の更新は後書きに次章のサブタイトルを追加しただけです。


前書き

注意事項
【勢い】
・ぷらずまさんと称しているだけのクソガキな電ちゃんの形をしたなにか。

・わるさめちゃんと称しているだけの春雨駆逐棲姫の形をしたノリとテンションの女の子。

・明石さんの弟子をしているアッシーという短気で無礼気味な明石君。明石表記が明石君でお馴染みのほうが明石さん表記です。

※海の傷痕は設定として
【2次元3次元、特に艦隊これくしょんを愛する皆様の想いを傷つける最悪な言動】
をすると思います。相変わらずの作者の勢いやりたい放題力量不足を許せる海のように深く広い心をお持ちの方に限り、お進みください。

もう矛盾あっても直せない恐れあり。チート、にわか知識、オリ設定、独自解釈、日本語崩壊、キャラ崩壊、戦闘描写お粗末、魔改造、スマホ書きスマホ投稿etc.

ダメな方はすぐにブラウザバックお願いします。


【1ワ●:結局『●ワ●ナノデス♪』 】

 

1

 

提督「ようやく、落ち着けましたか」

 

 

電「……司令官さん、良かったのですか?」


 

提督「なにがですか」

 

 

電「あの場では司令官さんが最も適切な質疑応答ではなかったと思いますし、個人的な感情が混じっていたと思うのです」

 

 

電「海の傷痕は恐らくやろうと思えば想の供給を止めて妖精すら消せる。妖精がいなくなり、深海棲艦の核である艤装すら弄れるとなると、中枢棲姫勢力と手を組んでも足元にすら届かないのです。それに加えて」

 


電「想自体があやふや。海の傷痕の想の能力は予測しづらい上に応用が利きすぎて、本当に底が知れない上に、私が数秒で大破撃沈の無様を晒す程の戦力差です」

 

 

電「兵士の数ではなく、質がモノをいいます」



電「聞き出すべきことが山ほどあったなか、殲滅:メンテナンスはハズレです。私を直す方法など予想であればいい。戦争終結において後回しにすべきことなのです」

 

 

提督「それでもクリア可能に調整されているんです。その上、海の傷痕はキスカで軽巡と睦月型の計4名にやられている」

 

 

提督「仮につけ込む隙はなくても、こじ開けます。勝てない理由はないです。心配ご無用」

 

 

電「言い訳みたいです。らしくない」

 

 

提督「このゲームがクリア可能にしてあるのは、此方のほうが原因だと思ってる。当局は負けたくない。此方も負けたくないが、勝ちよりも優先するなにかがあると見ました」

 

 

提督「此方のほうは面白いですね。まるで人間になろうとしている人間の出来損ないだ。それは詰まるところ人間のようなものですね」

 


提督「……、……」

 

 

提督「………、………」

 

 

提督「…………、…………」

 

 

電「それに、やってしまいましたね」

 

 

提督「……」


 

電「あの場では海の傷痕を倒す。それが私の幸せといいましたが、それをするにおいて」 

 

 

電「失礼するのです」

 

 

提督「膝の上に座るのはいいですけど、こっちを向いてまたがらないでください。見られたら変に誤解されるので……」

 

 

電「……」スリスリ

 

 

提督「なんなんですかこのぷらずまさんは……違和感がすごすぎる……」

 

 

電「私はあなた以外の指示には従えない。信用するどころか聞く気にすらならない。嫌なのはもちろん」

 

 

電「もう、無理です」

 


電「……今度は兵士としての欠陥を抱えてしまったのです」

 

 

提督「なにを今更。ぷらずまさんはもともと兵士としての欠陥ありまくりだし」



電「……そうですね。今更、あの頃の電に戻るのは不可能ですし、そもそもあの鎮守府(闇)の統制を取るには」

 

 

電「……」

 

 

●ワ●

 

 

ぷらずま「これでいいですね?」

 

 

提督「でもあなたはきっと変わらないだろうから、無理にそちらの仮面を被る必要ももうないですよ」

 


ぷらずま「なら今までと同じでいいのです」

 

 

提督「あー……ぷらずまさん、すごく身勝手なお願いなのですが、なんとか瑞鶴さんの改二甲の設計図、集められません?」

 

 

ぷらずま「まあ、そのくらいなんとかなりますよ。ちょうど色々な人が集まっていますし、貸し借りもある輩がいるので、用意自体は可能です」

 

 

ぷらずま「けどあの瑞鶴は正直、平凡以下です。正規空母ながら龍驤さんと瑞鳳さんにすら劣ります」

 

 

ぷらずま「それにあいつ、意外とキレたら怖いタイプですしね。ホロレアの瑞鶴艤装の適性者の提督爆撃などあいつに限った話でもなく」



ぷらずま「あいつの場合は帰投後に司令官を素手で半殺しにしているので、さすがにアウト判定されましたね」

 

 

提督「加賀さんが止めてくれたみたいですけど、止めてくれなかったらどうなっていたか分かりませんね……」

 

 

ぷらずま「おまけにお調子者です」

 

 

提督「……あの瑞鶴さんはかなり長い目で見るつもりで早期に引き込んだんです」

 

 

提督「改造しなかったのは、あの子は解体される前のデータからして、どうも力頼りで技術が拙いからです。大きい力を大きく振るうようにしか扱わない。龍驤さんや瑞鳳さんのような技術や基本が薄い。空母としてどうかと」

 

 

ぷらずま「確かに……艦載機が切れたら殴ればいい、の奴なのです。それであの性能のまま、しばらく置いていたのですか……」

 

 

提督「そろそろいいでしょう。龍驤さんや瑞鳳さん、鹿島さんからの報告でも基礎の部分はかなり上達しています。あの子は改二甲になり素質に合わせて、そうですね、今だと明石君に頼んで艤装を少しあの子の素質に馴染ませてもらえば」

 

 

提督「現行1航戦にも勝てます」

 

 

ぷらずま「ま、司令官さんがそういうのなら、あの瑞鶴さんを改二甲にできる練度まであげておくのです」

 

 

提督「それと今の自分は、きっと司令官として形が出来上がりました。それは今までの戦争終結のためだけでなく、皆の心も踏まえて自分の執る明確な指揮が定まったということです」

 

 

ぷらずま「それはなによりなのです。貴方は皆のことを考えて、あっちに行ったりこっちに行ったりしていましたからね」

 

 

提督「その全てを伝えた上で、自分の指揮下に入るかどうかを改めて問いたいです。うちの兵士の何名かは自分よりも生かせる指揮を執れる司令官がいますので」

 


提督「特に龍驤さん阿武隈さんの『全員生還』については自分の意見を申し上げておき、話し合う必要があります」

 

 

提督「後で書面にまとめます」

 

 

ぷらずま「了解です。それでは設計図を入手しに行ってきます」

 


提督「……あの、ぷらずまさん」

 

 

提督「あなたも仲間を頼ることを覚えてくださいね。きっと、あなたはそれがもう出来るはずですから」

 

 

提督「なまくらになれ、といっているわけではありません。成長してください。もう迷いはないのでしょう?」

 

 

ぷらずま「心配は御無用なのです。でも海の傷痕のいった通り、過去はどんな希望でも打ち消せませんから、良くも悪くも素直になることができる程度だと思って欲しいのです」

 

 

ぷらずま「その素直が電だと思ってもらっては困りますが……」ニタニタ



提督「それではそろそろ手を離しますね。頼んだこと、よろしくお願いします」



電「あっ、い、嫌っ!」



――――ぎゅっ。



提督「」



電「あ、ごめんなさい……」



提督「さすがにこのままでは……」



電「な、なのです……頬を叩いて気合いを入れ直すのです」



パシン!



電「なのです!」



提督「あなたは本当に今まで見たことない顔をしています。きっと歴代最高の電です」

 

 

電「……照れるので止めて欲しいのです」

 

 

電・提督「……」

 

 

電「な、なんか違うのです!」

 

 

提督「ですね……正面切ってのぷらずまさんの素直なデレは違和感が強烈過ぎます」

 

 

電「それはそれでなんか腹が立ちますけど!」

 

 

ぷらずま「司令官さんから褒めてもらうより、私が司令官さんを褒めてやる関係のほうが似合っているのです」

 

 

提督「お恥ずかしい話、その通りで……」

 

 

ぷらずま「●ワ●」ナノデス♪

 

 

ぷらずま「それでは一旦、失礼するのです」



【2ワ●:シリアスの嵐は過ぎて】

 

 

大淀「お久し振りです」

 

 

提督「……大淀さん」

 

 

大淀「顔を合わせるのはお久し振りですね。明石君と秋月さんの1件、わるさめさんを受け入れてくれたこと、改めて衷心よりお礼申し上げます」

 

 

提督「親御さんをゆする時は腹くくりましたね……」

 

 

大淀「ゆすったんですか……」

 

 

大淀「まあ、とりあえず、今回のあなたの処罰です。龍驤さんにも頼まれまして私なりに色々な人への貸し借りを使ってゆすってみたのですが……」


 

提督「ゆすったんですか……」

 

 

提督「でも自分も今の鎮守府(闇)に着任するために力を貸してもらいましたし、自分のほうが大淀さんに頼りすぎていますね。情けなく」

 

 

大淀「いえいえ、電さんやわるさめさんはもちろん私的には龍驤さんの手綱を握れているのもすごいと思います。あの人、自分よりなにか優れていないと判断したら電さん並に扱いづらくなりますから。将校と肩を並べて育ってきたので兵士としても司令官としても高水準、それなりに我も強いです」

 

 

大淀「丙少将のように生還の指揮を好いて、乙中将のように砕けたところもあって、甲大将のようにプライドもあり、元帥さんのように人を見ますから」

 

 

提督「言われてみれば……」

 

 

提督「まあ、龍驤さんにはお世話になりっぱなしですね……」

 

 

大淀「この場だからいいますが、海の傷痕に救われましたね。貴方は当初の予定では提督や司令官の立場から外され、電さんのみの指揮を執れる補佐官に戻される予定でした」

 

 

提督「……」

 

 

大淀「海の傷痕の発言からして貴方を外せば、どう出るか分からないので。将校には感謝してください。今回は甲大将ですね。あの人が頭を下げるのは、効果がありまくりです。あなたは陰ながら支えてもらっている人達がいることをお忘れなきよう」

 

 

提督「……肝に命じておきます」

 

 

大淀「甲大将はそういう人なんですけどね。単純にかっこいいんです。マジで怒らせてはダメですけどね」

 

 

提督「……そうですね。人間としても、高いところにいます。女性としてもあの男らしさは、正しく良い女が持ち得るモノだと思います。いや、まあ、自分は経歴からして女性のことは語れませんけども」

 

 

大淀「……それで青山中佐、先程の海の傷痕の会話ですが、2つほど気になった点がありまして」

 

 

大淀「キスカと1/5作戦です」

 

 

大淀「1/5作戦では足跡を消すため、徹底的に丁准将の鎮守府を破壊したといいましたが」

 

 

大淀「キスカでは阿武隈さんと卯月さんを見逃したうえ、事後の操作結果で明らかに違和感を残すような戦いをしてますよね?」

 

 

提督「キスカでは足跡を消すよりも、中枢棲姫勢力のような知能覚醒のバグを消すことを優先しただけかと」

 

 

大淀「……なるほど」

 

 

提督「ただ1/5作戦は気になります。足跡を消すために鎮守府を徹底的に破壊する必要があった。仕事時間における海の傷痕からしてその手を取ったのは効率的機械的な手段なのでしょう」

 

 

提督「そして丁准将が瑞穂を使ってしていた実験については具体的なことを喋らなかった。恐らく丁准将がしていた実験は、海の傷痕にとって」

 

 

提督「かなり都合の悪い実験だと思われます」

 

 

大淀「どうせ予想はついているんですよね?」

 

 

提督「いえ、全く。しかしご迷惑をおかけたした身です。自分でよければ考えましょう」

 

 

大淀「……では」

 

 

提督「大淀さん、この情報はあなたが艤装を身に付ければ海の傷痕に漏れる危険があることをお忘れなきよう。こちらの兵士はバグを除いてスパイのようなものです」

 

 

大淀「……ええ」

 

 

提督「自分はあの鎮守府で補佐官をしていましたから、あの鎮守府のことはよく知っています。時期的に自分がいた時に瑞穂:バグはいたのです。ですが、自分は全く記憶にありません。あの鎮守府にいた武蔵さんやその他の人もそうですよね」

 

 

提督「聞きますが、うちの鎮守府のように秘密の部屋等々の形跡はありました?」

 

 

大淀「……いえ、形跡はありませんでしたね。そもそも本当に徹底的に壊されていたので、断定はできません」

 

 

提督「あれこれ後ろめたいことを隠れて何年もやるのはふとした拍子にバレたり誰かに勘づかれたりするもんです。そこら辺、自分は特に敏感です」

 

 

大淀「中佐は刑事のほうも向いていそうですよね」

 

 

提督「そういえば、全く同じことを丁准将からもいわれた気がしますね……」

 

 

提督「フレデリカ大佐の隠蔽はキスカまではお見事としかいいようがないですけどね。鎮守府は多くの人がいますし、丁准将のところには憲兵もいた。そして秘書官は大和です。丙少将の優しさそのままで、少しおっちゃこちょいな人柄の彼女が、そのような実験の隠蔽に協力するとは思えません」

 

 

提督「たまたまバレなかっただけ、という線を消して考えるのなら」

 

 

提督「可能性が高いのは絶対に誰にも見つからない場所でやっていた」

 

 

提督「例えば、ロスト空間、とか」

 

 

大淀「バグを利用してロスト空間に?」

 

 

提督「さあ。ですが、人体はロスト空間には行けるのはお分かりだと思います。無論、ロスト空間というのは、どうなんでしょうね。どんなものかも分かりません」


 

大淀「まあ、トランス現象を人間がどうのこうの出来るなら海の傷痕に勝てるでしょうしね。あれはもうアンタッチャブルな災害でしょう」

 

 

提督「ですね。あるとすればロスト空間にヒントがあるかな、と。しかし人間地雷探知機みたいな真似が必要です。だからこそバグであり人として死んでいる瑞穂で人体実験をしていたのなら、とは。そして海の傷痕は深海妖精をいまだに消さない時点で、知られては困るけど致命打にはならないか、もしくはそこを我々に対してのギミックとして設定しているとか。ああ、頭が痛くなってきました」

 

 

提督「ここらで勘弁してください」

 

 

大淀「……青山中佐は本当に奇妙な頭をしてますね。知的好奇心ゆえ、あなたとお話していると楽しいです」

 

 

提督「聞いておきたいのですが、深海妖精を使っての兵士の量産には踏み切りそうですか。海の傷痕はそれをしても倒しておかなければならない存在だと自分は思いますが」

 

 

大淀「確かに。わるさめさんが解体出来たのなら、安全性は格段にあがりますね。でも、精神影響の面でこれまたそう簡単には行きませんよ。わるさめさんだって、春雨さんの適性が70%から2%に下がるほど人格に影響しますから」

 

 

大淀「まあ、実験と称して人格変わりかねない真似してる研究とか普通にあるんですけどね。対深海棲艦海軍はそこらにおいて軍規が厳しいので」

 

 

大淀「……海の傷痕は『Rank:Worst-Ever』です」

 

 

大淀「タイプトランスになると、怪我や病気に対して、現在の最新鋭科学治療を越える効果があるとは知っていますか?」

 

 

提督「いいえ。でも通常の建造でもありますよね。適性者の中で医療目的の建造もある話だったかと」

 

 

大淀「タイプトランスは癌の進行止まります」

 

 

提督「まさかとは思いますが、電さんやわるさんに意図的に癌細胞を?」

 

 

大淀「違いますよ。通常の兵士も手足もげても生きていられます。まあ、頭や心臓を吹き飛ばされたら死にますけど」

 

 

大淀「電さんやわるさめさんの場合は再生能力ゆえに、手術の幅が広がるため通常では除去できない部分の癌を取り除けたり、そもそもの深海棲艦の生命力の恩恵で、回復力自体も人間離れしますので」

 


大淀「海の傷痕のデンジャー度合いならトランスタイプの戦力は喉から手が出るほどですが、言い訳を駆使しても公の行動として兵士を強化するのは時間が足りませんし、恐らくバグを大量発生させてしまう違法行為は海の傷痕が新たなシステムを組むために消失してしまう恐れがあります」

 

 

提督「……、……」

 

 

提督「……そう、ですね。せっかく海の傷痕自ら決着をつけようと行ってくれているわけですし」

 

 

大淀「その為、深海妖精に関する協定も各国には1週間後には決まります」

 

 

大淀「その中で、海の傷痕はこの国の現在保有戦力のみと正々堂々戦うとのこと。我々は指定され、戦うことになりましたので、この対深海棲艦日本海軍に置いては一部融通を利かせるべき、と話が進んでおりまして」

 

 

大淀「損得考えれば、海の傷痕に負けるよりも勝って海を取り戻したほうがプラスなので。そこらの建前を考えるのは政治家の仕事ですが」

 

 

提督「それでどういう風に融通を利かせていただけると」

 

 

大淀「とりあえず、初霜さんに頼んでわるさめさんの解体は試して頂いて、その後にもしも本人の希望があれば、あなたの立ち会いのもと」

 

 

大淀「……という形は即決で」

 

 

提督「相当、混乱してますね」



大淀「それはそうですよ……。海の傷痕の力は海にこそ限定されていますが、やろうと思えば、津波、隕石、感染、落雷、地震、その手の災害どころか、我々の頭の想像を全て実現してしまう、マジもんの神様です」

  

 

大淀「中枢棲姫勢力に対しては今後のためにも情報を収集するという手を使えましたが、海の傷痕は例えその生命情報が文明に貢献するとしても『抹殺第一』とすぐに決まりましたから」

 

 

大淀「見なかったことにしたい悪夢だ、という人もちらほら」

 

 

大淀「どこかの国が海の傷痕に接触を試みる可能性は大いにありますけどね。それだけの価値はあります。あの力さえ解明して手に入れたのなら海など要りませんし、世界征服も夢じゃないです。なのでそれが本当に怖いです」

 

 

提督「……海の傷痕はなんと?」

 

 

大淀「時間になるまで自由に闊歩するが見張りをつけてくれていい、と。そちらから語りかければ殺すので、そこらも考慮しろ、とのこと」

 

 

提督「それならば海の傷痕がヘマさえしなければ大丈夫、かな。此方は本当に人間らしいですね」

 

 

大淀「複雑過ぎます。私には理解できません。あのように情報をペラペラと、与えすぎでは、と」

 

 

大淀「こちらとしてはありがたいのですが、そもそも本当かどうか分からないところもありますし」

 

 

提督「自分は本人が説明した通り、だと思います。当局はあくまで製作者の管理運営を担当する生物で、個性は此方のほう。人間と同じです」

 


提督「『当局はゲーム会社の社員としての仕事の顔』であり、『此方はその会社員の個人的な顔』です」

 


提督「そして『当局はこの戦争ゲームを運営管理する役割(本能)』があり、『此方がその役割に意思疏通をし、この戦争をこの形に仕上げた』のだと」

 

 

提督「それが『艦隊これくしょん』の製作秘話です」

 

 

提督「なので、この戦争は『此方の目的に沿って作られたモノ』ですね」

 

 

提督「此方は女で、友を愛したといった。女でもないのに、女であることを求めようとした。それが艤装適性者に女性を選ぶという機械的かつ効率的な部分にかなりの融通を利かした個性」

 

 

提督「電さんを見て、『いい女になった。殺すのが惜しい』といったのほぼ完全に此方の感情に沿ったものかと」

 

 

提督「……ここから先は恐らく此方の想いが深く関係してくるので」



提督「女性にしか分からないのかもしれませんね」

 

 

提督「……、……」

 

 

提督「大淀さん、どんな気持ちなんですか。女として誰かを愛するというのは」

 

 

大淀「まさかあなたの口からそんな言葉が出るだなんて私は驚いて眼鏡が割れてしまいそうです」


 

大淀「まあ、私には分かりませんね。恋人も出来たことないですし。艦娘の皆さんは全員男性経験ないんじゃないかとすら、はい。思います」

 

 

提督「すみません、この話は止めましょうか……」

 

 

大淀「……ですね、ここから先は私の愚痴の洪水が止まらなく」

 

 

大淀「これはあなただからこそいっておくことです。こちらとしてもできる限りのフォローはしますが、なにかをするつもりなら今度は全てが終わった後に断頭台に立つ覚悟のご用意を」


 

大淀「フレデリカ大佐と同じく人間の都合により死の運命に囚われる、と」

 

 

提督「皆は現場で命を賭けて戦うんです。そこに要らない汚れは自分が引き受けて、指揮を執ります。こちらの都合で迷わせはしません」



大淀「……」

 

 

大淀「かっこよくなりましたね」

 


大淀「事件は会議室で起きているわけじゃない。現場で、みたいな」

 

 

提督「あれ、青島ですよね。青山は卒業した学校名のほうですよね……」


 

大淀「あれ? そうでしたっけ」

 

 

大淀「しかし、ええ、とても提督らしいお顔をなされてます。そのほうがきっと皆さんもあなたを信じて助けてくれると思います」


 

大淀「そういえば、明石君のことも謎ですよね」

 

 

提督「……そうですね。中枢棲姫勢力やぷらずまさん達とは明らかにケースが違います。あの子の場合はシンプルに、なぜ男が、ですからね」

 

 

提督「ここは本当に分かりません。あの場でまだチャンスがあったのなら、明石君について、でしたね」

 

 

大淀「それはとりあえず置いておきまして」

 

 

大淀「元帥と甲大将と丙少将の意気投合により、3週間後に演習が組まれました。海の傷痕と同じく対艤装タイプ:トランスに対しての経験、そして現重要戦力の把握も踏まえまして」

 

 

大淀「丙甲連合艦隊vs鎮守府(闇)」

 

 

提督「……12名ですか?」

 

 

大淀「そうなりますね。これは前々から予定されていたことではあったんですよ。甲大将が強く希望していまして」

 


大淀「こちらがその演習の期日、目的やルールです」


 

提督「このルールは海の傷痕を意識していますね……」

 

 

提督「参考的な意味合いで勝敗は差して関係ないが、敗北し、司令官の指揮が適切ではないと判断したら作戦のために艦隊を異動させる可能性が大きく出てくる、ですか」

 

 

提督「そして、このルールは」

 

 

提督「……、……」

 

 

大淀「丙少将のところも分かりますよね。わるさめさん、丙少将に危害を加えてますから。日向さんと伊勢さん、かなり怒っています」



提督「……」



大淀「丙少将から伝言です。『この戦いで俺とお前の因縁にケリをつけておこう。こてんぱんにしてやるから全力で来いよな』だそうです」



提督「……こなす必要のある演習ですね」



提督「大淀さん、今から少し自分の鎮守府のメンバーと連絡を取りたいのですけども」

 

 

提督「内密にしてもらっても大丈夫ですか」

 

 

大淀「すでに鎮守府(闇)には通達されていますよ」

 

 

提督「極秘でお仕事をお願いしたく、それを隠しておきたいんです」

 

 

大淀「分かりました。そのくらいなら私でも。正し、またここに連行されるような真似ではないと誓えますか」

 

 

提督「誓います」

 

 

大淀「しばらくこちらの都合で拘束させてもらいます。色々と顔を出して欲しいところがあります」

 

 

大淀「ああ、世間ではありません。深海妖精論について、研究部の人や著名人があなたと言葉を交わしたい、と。あなたは今や時の人です」

 


大淀「それとあなたは深海妖精が見えるので軍の研究に協力していただきます」


 

大淀「最後にあの場で録音された映像と音声ですね。あなたの口からまさかの愛の囁きが出たことですけどね……」

 

 

提督「忘れてください」

 

 

大淀「『今からいうのは自分人生初の愛の言葉です。恋愛とも家族愛でも友愛でもなく、単なる深愛に該当するかと思います(ドヤッ』」

 

 

提督「止めてくださいよ。あの子は見た目小学6年生ですよ。これが世にバレたら自分は絶対にからかわれます。苦情が来そうで」

 

 

大淀「あなたはまだ誤解されているところもありまして、内情処理を円滑に進めるため、まこと勝手ながら、武蔵さん達にお配りしました」

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

お前がナンバーワンの鬼畜艦だよ。



【3ワ●:でも、これは不思議な女の子の、不思議なお話】

 

 

乙中将「失礼しまーす。あ、大淀さんもいたんだ」

 

 

大淀「ええ、外しましょうか?」

 

 

乙中将「構わないよ。大淀さんは知っていることだからね。青ちゃん、ちょっといい?」

 


提督「……」

 

 

乙中将「いやいや、海の傷痕の話じゃないんだ。少し気になって聞きたいことがあってね」

 

 

乙中将「初霜さんはどう? 元気?」

 

 

提督「変わりませんけど」

 

 

乙中将「そっか。そっちには支援施設の設備もあるし、羽を伸ばしていてくれているかな?」

 

 

提督「……?」

 

 

提督「どういう、ことです?」

 

 

提督「海の傷痕がそういえば初霜さんを特別優秀賞に名を挙げましたね。あれは分からないことの一つです」

 

 

乙中将「だよねえ。僕も驚いた。海の傷痕から見て、『Rank:Worst-Ever』だもんね……」

 

 

乙中将「最もぶっ殺したいって子が初霜さんだもんね。やっぱりそこ気になるだろうと思ってさ、初霜さんのことの話に来たんだ」

 

 

提督「……」

 

 

乙中将「最も特殊な事情があるにはあるけど、それでもどうして初霜さんがってなると思う」

 

 

提督「……初霜さんもなにか抱えているのですか。自分は全く気付きませんでしたし、彼女は確かごくごく普通の家庭で産まれていたはずです、よね」

 

 

乙中将「気づかないよねえ。あの子は別段目立った欠陥あるわけじゃないし、真面目でがんばり屋さんにしか見えないからね。それに別にどこかネジが飛んでいるわけでもないよ。青ちゃんのイメージ通りの女の子だよ」

 

 

提督「普通だから異常とかいう話でもありませんよね……」

 

 

乙中将「そだね」



提督「駆逐は特に事情が複雑な子供達が多いですよね。その手の話ですか」


 

乙中将「うーん、客観的に見れば不幸なお話ではあるんだけど、本人はむしろ幸せな時間だったっていっているんだよねー……」

 

 

大淀「不思議に不思議が重なって単純に理解に苦しむお話ですね……」

 

 

乙中将「そうだなー。青ちゃんの戦争終結の執念はさ、理解されやすいものだと思うんだ。戦争ってやっぱりいいイメージじゃないし」

 

 

乙中将「その執念をただの純粋無垢にして、方向性を変えた感じ。おどろおどろしい、ね」



乙中将「でも、これは不思議な女の子の」

 

 

乙中将「不思議なお話」


 

【4ワ●:初霜さんの怖いほどの不思議な欠陥】


 

乙中将「とある成長障害で歩行器を使っている5歳の女の子がいました」

 

 

乙中将「その女の子は見知らぬ老夫婦に誘拐されました」

 

 

乙中将「そしてとある人里から離れた小屋に飾られるかのように放り込まれました」

 

 

乙中将「その部屋には鍵もかかっておらず、手足を拘束されてもおらず、望めばその老夫婦が何でも持ってきてくれたそうな」

 

 

乙中将「お姫様のように手厚くもてなされました」

 

 

乙中将「女の子は誘拐されたことを知っていましたが、逃げ出さず、助けを求めることもせず、そこの離れから出ることもしませんでした」

 

 

乙中将「そこの部屋の窓から見える海を、ただただ見つめていました」

 

 

乙中将「海を見つめる日々がただただ流れて」

 

 

乙中将「4年が経過しました」

 

 

乙中将「そしてある日、老夫婦が女の子に手紙を渡しました。ここの峠から見える朝の海は綺麗だという内容でした」

 

 

乙中将「そこでようやく女の子は外に出ました」

 

 

乙中将「歩行器を使って歩きます。峠へと続く霜道を裸足で歩きます」

 

 

乙中将「峠で女の子はまたぼうっと海を見つめて、いつの間にか日が沈みかけました。その時に、太陽が緑色になりました」

 

 

乙中将「女の子はただただじーっと海を見つめていました」

 

 

乙中将「通りがかりのトラッカーさんが、薄着で裸足の女の子を見て不思議に思って、声をかけました」

 


乙中将「声をかけたけど、女の子は『あ』とか『う』とかそんな言葉しか喋りません」

 

 

乙中将「トラッカーさんは警察に通報しました。女の子は保護されました」

 

 

乙中将「以上が初霜さんの、不思議なお話」

 

 

2

 

 

提督「理解ができない……」



乙中将「だよね。表に出している経歴は変えているんだよ。あの子、5歳の頃に誘拐されて9歳まで行方不明者だった」

 

 

提督「事件として詳しく教えて頂いても?」

 

 

乙中将「詳細を知ると余計に謎が」

 

 

乙中将「まずその老夫婦と初霜さんの家は全く接点がなく、初霜さん自体も初霜さんの親御さんも全く知らない人だったみたい」

 

 

乙中将「その老夫婦も子供に恵まれなかったわけでもなく、妙な宗教にはまっていたわけでもなく、犯罪組織にいたわけでもない。絵に描いたような仲睦まじい老夫婦だよ。調べても調べても、おかしな点が全くなかった」

 

 

提督「突発的な犯行にしてもおかしいですね。何のために誘拐したのか分かりません。後になって警察に自首するわけもなく、その場からいつでも逃げ出せるようにしていたわけでしょう?」

 

 

乙中将「だね。加えていえば初霜さんの家庭も初霜さんを虐待してたーとか一切ない。ここまで犯行動機や初霜さんがそこに留まり続けた理由に霧がかかるのは初めてだって、担当した刑事の人がいってた。初霜さんはそういう変な子で、夫婦はボケてた。そこと偶然が噛み合ってこんな珍妙な事件が成立したんじゃね、とか」

 

 

乙中将「警察は最初、目撃証言からやり口からして組織的な犯行の線で考えていたみたい。最近の子供の誘拐組織って、男女一組で行動するらしい。知らない大人だと、女性のほうが子供は安心するんだってさ。特にお婆ちゃん」

 

 

乙中将「世の中には理解の及ばない連中がいるよ。僕だって、家のこといまだにそうだし。自然と対話とかあほかよって思うし」

 

 

乙中将「わざわざ余所様の子供さらって、ただただ4年も置いておくことに何の意味があるというのか」

 


乙中将「いつでも逃げ出させるようにもしていた。だけど、初霜さんは、逃げようとしたり助けを求めようとはしなかった」

 

 

乙中将「初霜さんも相当だけどね。生理現象は処理していたみたいだけど、誘拐されて4年もぼうっと海を見つめていたとか」

 

 

乙中将「さらった老夫婦も、そこにいた初霜さんも不思議の塊過ぎて。海の傷痕も多分、初霜さんのこういうところが理解できないっていうことだと思うけど」

 

 

提督「まあ、突発的な拳銃自殺の太陽が眩しいからって理由のような」



提督「ただただ不思議、ですね」

 

 

提督「ご両親はご健在で?」

 

 

乙中将「うん。ただもう初霜さんのことがきっかけで離婚していてさ、それぞれ新たに家庭を持って子供もいる。事情があって受け入れられないみたい。初霜さんもご両親のことあまり覚えていなくて、金銭面だけ補助してもらって孤児院になる予定だったんだけど」

 

 

乙中将「本人が兵士になりたいって」

 

 

提督「……」

 

 

乙中将「初霜さんは別に心に傷を負っているわけでもないよ。あの日々は安らかだったし、苦ではなかったって、いってる」

 

 

提督「なぜそこに4年もいたか聞きました?」

 

 

乙中将「初めて見た海が綺麗でしばらく見とれていたら4年経ってたとか、老夫婦からの手紙で、もっと海が綺麗に見える場所を教えてもらったから、そこに行ってみました、だとさ」

 

 

提督「誘拐だと気付いておきながら、4年もただ景色を眺め続ける。親がいなくなるだけで泣くような5歳の子供が、信じられません……」

 

 

乙中将「あの子、真面目でしょ。なにか為になる話だとメモ取ったりしない?」

 

 

提督「……」

 

 

提督「確か自分が間宮亭で皆にユーモアや女心をご教授してもらっている時、メモ取っていたかな?」

 

 

乙中将「5歳から9歳の頃に空白なのは、大きいよ。本で読み書きは覚えたけど、言葉は拙かったみたい」

 

 

乙中将「でも3年で今の普通になったんだよ。真面目でがんばり屋さんの女の子だ」


 

乙中将「そこがあの子のすごいところなんだけどね。青ちゃんも、ある意味で一途だからさ、初霜さんとは気が合うと思うね。初霜さんは青ちゃんみたいになにかにひたむきな人が好きだと思う。理由は初霜さんに聞いてみてもいいかもね」

 

 

乙中将「でも、あの子は4年もぼけっとしていた時間で、周りから置いていかれたことに気付いて焦ってたみたいでさ」

 

 

乙中将「身体も知識も取り戻すために、普通になるためにがんばる。ま、不思議属性つきの純粋無垢で真面目な女の子なんだ」

 

 

提督「……覚えておきますね。それが海の傷痕が名を挙げた理由、なんですかね。あの子の想は確かに面白そうではありますが……」

 

 

乙中将「海の傷痕はその不思議が数値として出ているっていってたよね。初霜さんの兵士としての素質はね、特異なんだ」

 


乙中将「これ、ちょっとすぐに用意してもらった初霜さんの適性のデータ」ピラ

 

 

乙中将「僕がいずれ第1艦隊の旗艦にしようとしていた理由の1つと、青ちゃんの鎮守府に置いておこうと思った理由」


 

提督「……、……」

 

 

提督「?」

 

 

提督「何の冗談です、これ……?」

 

 

乙中将「分かるよー。普通と違って面白い。そのまま乙の旗の意味になるしね」

 


提督「複数の適性率が出るというのは聞いたことがあります」

 


提督「しかし、それでも複数適性者は空母や戦艦、駆逐、その同カテゴリの中で複数です……」

 

 

提督「現存する全ての艤装に適性が70%以上あるって」

 

 

乙中将「そうだねえ。何者にもなれるのならば、どの艤装の適性率も出る。理論的にはあり得るけど、赤ん坊でも個性が出るから、人間に当てはめると、てんでダメ」



提督「海色の適性……」



提督「適性の出る理由は精神面、大雑把にいえば性格に大きく左右されるはずです。軍学校でもらう適性100%の参考データがありますし、どことなくそれに似ているはずでしょう?」

 

 

提督「いうなればあの子は艤装の数だけ性格があるってことですよ。あり得るのですか……?」

 


提督「不思議な素質、です……」

 


乙中将「ま、あの子は初霜艤装が似合ってるよ。器用貧乏とかいわれる艤装だけど、どこにでも手が延びるあの子に似合っていて」

 

 

提督「ここには最初は初霜艤装じゃなかったとありますが、乙中将が解体して後で変えたんですよね?」

 

 

提督「初霜改二にはオプションで鉢巻き作られますし……」

 

 

乙中将「……(メソラシ」

 

 

大淀「一応の理屈は当時の初霜さんは『何者にもなれる精神的素質がある』とのことです。まるで真っ白、いや、空っぽ、ですかね……」

 

 

大淀「海のこと以外は」



提督「影響を受けやすい、ということですか?」



乙中将「というより、環境への適応力が高い」



大淀「あの子は海の傷痕にとっても理解できない異常、バグみたいなものなのかもしれません」



乙中将「ちな、その資料は軍に入る前の適性検査のやつね。今はもう初霜さんは、性格の基盤が出来上がってその適性率も大分制限されちゃってる。まだまだ他の艤装の適性も持ってるけど」

 

 

提督「これはかなり面白いことができそうですね」

 

 

乙中将「あの子はもう大丈夫だと思っているから話してなかっただけ。実際、いい子でしょ。海の傷痕から初霜さんの名前が出たからさ。もしもなにかあったら教えてねって話」

 

 

提督「了解しました」

 

 

乙中将「面倒になるから手は出しちゃダメだよ。痴情でどれだけ対深海棲艦海軍の評判が地に堕ちたことか。電ちゃんどんな指示でも聞きそうな感じだったし、初霜さんは初霜さんでちょろいから。駆逐は特にアウト。僕としては人の心は尊重したいからご自由に、だけどさ、お幸せになったのなら街へどうぞ、だからね?」

 

 

提督「分かっています。その真似がどれほど不利益をもたらすかは把握しています。お任せを」キリッ

 

 

乙中将「ここにおいての青ちゃんは信用しかできない」

 

 

大淀「ですね……」

 

 

提督「その事件の資料って、確保できますかね?」



乙中将「大淀さん、なんとかなるかな?」



大淀「了解しました。今の事情なら大丈夫だと思います」



提督「ありがとうございます」



提督「それと自分はしばらく鎮守府を留守にするので龍驤さんに伝えても構いませんか?」

 

 

乙中将「そうだね。お願い。龍驤さんに広めないようにいっといてね」

 

 

乙中将「それだけ。演習がんばってねー。丙さんも甲さんもマジだから、青ちゃんとことやるのは、嫌な予感しかしないけど」

 

 

乙中将「それじゃーね」

 

 

……………

 

……………

 

……………

 

 

提督「大淀さん知ってたんですよね?」

 

 

大淀「ええ、初霜さんのケースは初めてではありますが、明るい経緯でここにいる子は少数派ですよ」

 

 

大淀「卯月さんのような『家の宣伝任せたぜ愛娘、了解びしっ』みたいなユーモラスなご家庭もありますけど、やっぱり事情がある子も多いですからね」

 

 

大淀「というか中佐がスカウトしている人は大体そこらの問題がクリアできる人達ですよね……」

 

 

提督「……まあ。面倒事はなるべく省きたいので」

 

 

大淀「それに初霜さんだけではありません。重課金で間宮さんだって名前が挙げられていましたよね」

 

 

大淀「彼女も初霜さんと同じく気付きにくいタイプだと思います」

 

 

提督「あの人はどこか間の抜けた一面があるのは知っていますが、よくよく考えると」

 

 

提督「例の女提督の時からずっとあそこにいるますしね……」

 


提督「そういえばゴーヤさんが入った辺りに、電さんのことで後悔しているみたいな話を自分にしたような気がしますね……そこの辺りかな?」


 

大淀「……使う予定のない艤装で、初霜さんに適性のあるものを送りましょうか。明石さんも、そちらのお弟子さんのために近々向かうかと」

 

 

提督「……お願いできるのなら。明石さんのことは伺っております」

 

 

大淀「その代わり、本当に皆のことよろしくお願いしますよ。お若い方に妙な思想を植え付けないでください」

 

 

提督「心外です……」

 

 

提督「でも今の初霜さんはなんともないようですし、なにかあれば自分でもお力になれることはあるでしょう。あの子とは良好な関係が築けていますしね」

 

 

大淀「この戦争が終結した暁には兵士達の社会復帰は軍が、いえ、国が全力で支援しますからご心配なく」

 

 

提督「あ、そうです。ケッコンカッコカリのやつってあれ天引きでしたっけ。うちの人数分、用意してもらえたりとかは」



大淀「……加工しますよね?」



提督「お願いします」



大淀「ネックレスとブレスレット、まあ、お安いブレスレットのほうにしておきます。すぐに出来ると思うので中佐に届けますね」



提督「ありがとうございます」



大淀「では、そういうことで」ビシッ

 

 

大淀「あ、そうです。こちらの都合であなたは明後日から丁准将です。でなければ甲大将に面倒事を押し付ける羽目になると思います」

 

 

提督「その席に座った先代も先々代も、ろくな死に方していないんですけど……」


 

 

ガチャ

 

 

 

 

 

秋月「おにいさ――――ん!!」

 


提督「!?」



【5ワ●:こいつ本当に鎮守府(闇)の司令?】

 

 

提督「ちょっとタイムです。明石君成分補給途切れて何時間経過しました」

 

 

秋月「10時間くらいだと思います!」

 

 

提督「なら2時間くらいの猶予しかないじゃないですか……」

 

 

陽炎・不知火「失礼します」

 

 

提督「お二人まで。一体なにをしに来たのです?」

 

 

秋月「電さんには遅れましたが、お兄さんの身の危険と知って大慌てで来たんです。まだ間に合いますよね。ともに逃げましょう!」

 

 

陽炎「丙さんとこては色々と連絡取り合っているからね。加賀さん……いや、天城さんが口を滑らせたというべきかしら。提督の現状を」

 

 

秋月「お二人とは同じ部屋ですから、私も知ることが出来ました!」

 

 

不知火「ここの部屋のことは、丙さんに会えたので教えてもらえました。全く、心配しましたよ」

 

 

提督「心配、ですか」

 

 

提督「……ありがとう」

 

 

提督「そしてすみません。後、もうその件は解決しました。しばらく拘束はされますが近い内に帰りますので」

 


陽炎・不知火「……」

 

 

不知火「大淀さん、この人は本当に鎮守府(闇)の司令ですか……?」

 

 

大淀「そうですけど……」

 

 

提督「自分になにか……」

 

 

陽炎「いや、司令なら最初に謝るか、外出許可証やらの規則のことをいうと思っていたんだけど、まずお礼を言ったことになんか違和感……」

 


秋月「なにかありました?」

 

 

大淀「そんなところから……皆さん青山中佐のことをよく観察していますね」

 

 

提督「……、……」

 

 

不知火「少し雰囲気も」

 

 

陽炎「そうねえ。前みたいに生気は薄いままだけど、なんかその少ない生気が活発的というか……」

 

 

秋月「確かに……記憶の中のお兄さんとは微妙に違うような気も。バージョンアップしましたか?」


 

提督「といわれましても……」

 

 

大淀「……」ポチ

 

 

 

《え、手を握って……》



《なん、なのです。らしく、ない……》


 

大淀「少し飛ばしまして」

 

 

《きっと貴女と利用し利用されるだけの形でしかなく、まだ始まってもいなかった。自分は貴女が求めていたことを知らなかったんだから》


 

大淀「更に少し飛ばしまして」



《……照れるものですね》



《今からいうのは自分人生初の愛の言葉です。恋愛とも家族愛でも友愛でもなく、単なる深愛に該当するかと思います》

 


陽炎・不知火・秋月「!!?」

 

 

陽炎「この司令が電のやつに告ったの!? 信じられないわよ!?」

 

 

不知火「こ、これはまさか、その、まさか、電さんの手を握り締め、愛を囁いて、その後二人は……」

 


秋月「強引に手をつかんで『貴女が求めていたことを知らなかった』からの愛の囁き、これは、これは……」

 


秋月「そんなあ……」

 

  

提督「大淀さんマジでいい加減にして。誤解させるためにわざと一部を飛ばしましたよね」

 


大淀「はい♪」


 

不知火「……冷静になって考えれば録音されている時点でなにかおかしいですね」

 

 

陽炎「いや、でも本当になにこれ。いくつか司令にインストされてるとは思えない言葉があるんだけど」

 


秋月「というよりはお兄さんが部下相手に口にするとは思えない言葉ですね。でも、なにか真に迫る感じがあります」

 

 

提督「秋月さん。あなたはまず今から残りの時間で明石君とどうにか連絡を取ってきてください」

 

 

提督「そしてその辺りの内容は気軽に話せる部分ではないのでいいません」

 

 

陽炎「……ま、いいか」

 

 

秋月「お酒を飲ませればペラペラお話してくれると瑞鶴さんから聞いたことがあります!」

 

 

提督「しばらくお酒は自重します」

 

 

不知火「電さんも変わりました?」

 

 

大淀「ええ、かなり。この時の電さんはうつむきながら頬を赤らめて、中佐の手をぎゅっと握り返して、それはもう見た目相応の女の子で」

 

 

大淀「とっても可愛くらしくて目の保養になりました♪」

 

 

陽炎「ほんとなにがあった」

 

 

提督「……とりあえず龍驤さんに伝えることが多すぎるので連絡を取らなければ。秋月さんも早く」



【6ワ●:提督のいない鎮守府(闇)】

 

 

1:鎮守府(闇)にて


 

初霜「それで提督不在の今、スケジュール通りでよろしいのでしょうか……」

 

 

龍驤「あー、その辺りはすごく細かく教えてもらっとるよ。各個人に今月のスケジュール表を渡すために、早起きしてお仕事してる」カキカキ

 


ガチャ

 

 

わるさめ「はっつーん!」ガシッ

 

 

初霜「は、はい、はっつんです」

 

 

わるさめ「深海妖精見えるんだよね!」

 

 

初霜「ええ、まあ」

 

 

わるさめ「オープンザドア君が探してもいねーから今からわるさめちゃんの解体を頼んで!」

 

 

初霜「え、えっと……」

 

 

龍驤「ええでー。わるさめは解体許可降りとるから」

 

 

初霜「戻れるの、ですかね」

 

 

わるさめ「あの提督が戻れるっていってたし、きっと大丈夫!」

 

 

わるさめ「水槽にとうっ!」ドボン

 

 

初霜「で、では、深海棲妖精さん」

 

 

初霜「ガンバって意思疏通、します」

 

 

2

 

 

初霜「――――、――――」

 

 

カーンカーンカーンカーンカーンカーン!

 

ザパッ

 

 

??「く、苦しいです。ぷはっ」

 

 

龍驤「……わるさめを解体したら、水槽のなかで」

 

 

初霜「沈んでるのは大量の深海棲艦の装備と、春雨艤装、ですかね」

 

 

龍驤「無事に解体できたんかな?」

 

 

初霜「……意外と簡単に出来るものなんですね」

 

 

春雨「え、えっと!」

 

 

春雨「ありがとうございます!」

 

 

春雨「やった、やったあ!」

 

 

春雨「私、普通の女の子に戻れて……」

 

 

龍驤「これは春雨ちゃん」

 

 

初霜「春雨さん、ですね」

 

 

春雨「ふ、ふええええん……」グスグス

 

 

春雨「人間に、戻れました。これでやっと、お母さんのお墓に」

 

 

春雨「行ってあげられます……」

 

 

春雨「龍驤さん、私はお母さんに会ってきますっ」

 

 

龍驤「服を来ていかんと。それと手持ちなしで行ける距離なん?」

 

 

春雨「あ、電車賃、いる……ここからだとけっこう、かかります」

 

 

龍驤「そのくらい用意したるから」クルッ

 

 

初霜「私は服を取ってきますね」クルッ

 

 

わるさめ「寒みーから早くしろ☆」

 

 

龍驤「あれ、今わるさめちゃんおらんかった?」クルッ

 

 

初霜「…………」クルッ

 

 

春雨「え、え、なんです、か?」

 

 

龍驤「気のせいか」クルッ

 

 

初霜「………」クルッ

 

 

わるさめ「早く行けって」

 

 

龍驤「えっ? やっぱりわるさめちゃんいるよね?」クルッ

 

 

春雨「?」キョトン

 

 

春雨「確かに変な声が」

 

 

春雨「その水槽、から?」

 

 

龍驤「なるほどな。この艤装のほうがわるさめの本体……」

 

 

龍驤「そんなわけないやろ! お前、春雨のふりしたわるさめやろ!?」

 

 

龍驤「この機会にキャラ変えてこ、みたいなノリで春雨ちゃんぶってたやろ!」

 

 

わるさめ「イタタタタ! 頬を引っ張ってんじゃねーゾ!」

 

 

わるさめ「龍驤もなんかノッてきてたじゃん!」

 

 

龍驤「お前のフリでうちのお笑い魂がくすぐられただけや」

 

 

わるさめ「でも、わるさめ時代の性格が残っているだけで、もうただの女の子なのはマジだっつの!」

 

 

わるさめ「トランスできないし!」

 

 

わるさめ「なんかいざ解体されちゃうと、呆気ないもんだね! あの司令官さんに出会えたこと神に感謝する!!」

 

 

明石「お前らこんな朝っぱらからうるせえぞコラ!」

 

 

初霜「……あ」

 

 

明石「……」

 

 

龍驤「わるさめ全裸やでー」

 

 

わるさめ「うおおおおい明石クーン! わるさめちゃんの裸は信仰対象の域だぞ資本を現金っつう形で供えな!」

 

 

明石「朝からイラつかせんな……」

 

 

明石「そもそもこんなとこで裸になってるほうが悪いし、見たくもねえもん見せられてなんで対価を出さなきゃなんねえんだ。そんなスタイルいいわけでもないしよ」

 

 

明石「鹿島さんみたいな美女ならともかく」

 

 

わるさめ「……」

 

 

明石「初霜なんかは秘書官やっててもしょせんは見た目通りのガキだな。秘書官の座をアッキーにゆずっちまえ」

 

 

初霜「……」

 

 

明石「分かったらぎゃあぎゃあ騒ぐなよ。この駆逐艦どもが」

 

 

龍驤「……」


 

※5分後から明石君はこの三人に対してさん付けをするようになりました。

 

 

2

 

 

龍驤「新入り、茶」

 

 

明石「了解っす。軽空母龍驤さん」

 

 

初霜「私はコーヒーを。ブラックで」

 

 

明石「大人っすね、初霜さんは」

 


わるさめ「うーん、美女って?」

 

 

明石「わるさめさんの代名詞かと」


 

わるさめ「よろしい。それじゃわるさめちゃん里帰りに行ってくるね!」

 

 

初霜「あ、私もついていきます。中枢棲姫勢力決戦前にわるさめさんが解体した後、故郷に帰る事があれば同行して欲しいと頼まれてますから」

 

 

わるさめ「うん? まー、旅のともは道連れ的にOKだけど」

 

 

龍驤「そんなこと頼まれとったんか。なら、まあ、いいか。行ってらっしゃい」

 

 

初霜「はい、夜には帰ってくる、と思います。連絡は入れますので」

 

 

3

 

 

ガチャ。

 

 

鹿島「おはようございます」

 

 

明石「あ、鹿島、さん。お、お……おはようございます」

 

 

龍驤「分っかりやすいなあ……」


 

鹿島「?」

 

 

明石「つーか、聞き損ねていたけど、兄さんどこだよ。なんで軽空母龍驤さんがその服を着てデスクワークしてんだ?」

 

 

龍驤「みんな昨日は大変やったと思うし、丙ちゃんところが哨戒してくれて休みだからって、起きるの遅いなー」

 

 

龍驤「もう昼やで」

 

 

龍驤「ま、ある意味都合はええけどな」

 

  

龍驤「あー、悪いけど今から館内放送を入れて皆に集まってもらうかな。今なら全員いるし、まとめて報告したほうが効率的やからな」


 

龍驤「……ん、通信?」

 

 

龍驤「これ、極秘回線か……?」

 

 

4

 

 

秋月「生きてますかアッシ――――!!」

 


明石「アッキー!? お前どこにいるんだよ!」

 

 

秋月「大本営です! お兄さんの危機を察して陽炎さんと不知火さんも!アッシーは生きてますか!」

 

 

明石「こっちの台詞だ馬鹿! 迷惑になるような真似してんじゃねえよ!」

 

 

秋月「お兄さんの一大事だったので気が付けば抜錨していました!」

 

 

明石「そんで兄さんは無事か? 用が済んだのなら引っ込んでくれ」

 


提督「明石君ですか。少し極秘任務があるので今から少し……そうですね、鹿島さんとお二人で遂行してもらいたい任務がありまして」

 

 

明石「ちょうど鹿島さんもいるけど」

 

 

提督「なら良かった。お二人以外はこの通信を聞かせたくないので、席を外してもらえるようお願いできますか。こちらも秋月さん達には席を外してもらいます」

 

 

明石「……おっけ。おーい、そういう訳だから出てってくれ」

 

 

 

明石「皆が出てった。一応、鹿島さんが扉の前で見張ってくれてる。それでその極秘任務とは?」

 

 

提督「今からいう時間に指定する場所へと、お二人で行ってもらいたいんです。そこのどこかに」

 

 

提督「中枢棲姫勢力幹部がいます」

 

 

明石「待て待て待て……いつそんなコンタクトを取ったんだよ。これ、新たな火種だろ。兄さん大丈夫なのか?」

 

 

提督「ご心配ありません。中枢棲姫勢力も馬鹿ではありません。それに、まず間違いなく彼等は今後において必要な存在です。しかし」

 

 

明石「わかってる。極秘回線な時点である程度は察している。任せろ。俺はそういうところ融通きくぜ。軍規だのと、どうこういわねえ」


 

明石「今がその時ってことだろ」

 

 

提督「助かります。万が一ですが、街なのでこちら側に艤装はありません。なのでなにかあれば鹿島さんをお守りして頂きたい。そこのところも含めて男の明石君にお願いしたいと」

 

 

明石「だな。男の俺が適任だ。あの人と他の子を出掛けさせると、妙なやつに声かけられかねないし」

 

 

提督「後、この任務に限ってのことではありませんが、明石君もお気をつけてください。中枢棲姫勢力とぷらずまさん達の身体についての謎はほぼ解けましたが」

 

 

提督「あなたに適性が出た謎はいまだ謎のままです。あなたはなにか重要な役割がある、と見ますが、見当皆目もつかずです」

 

 

明石「了解」

 

 

提督「では鹿島さんに代わってください」

 

 

明石「あいよ。ちょっと待ってくれ」

 

 

鹿島「……はい、鹿島です」

 

 

提督「明石君とともに極秘任務を遂行してもらいたい。中枢棲姫勢力幹部との接触です」

 

 

鹿島「へ?」

 

 

提督「そういうことです。自分は極秘回線使ってこんな冗談はいいません」

 

 

提督「頭脳の中枢棲姫は万が一を考えて出てきません。分かりますよね」

 

 

鹿島「レ級、ネ級、水母棲姫……」

 

 

提督「ええ。鹿島艦隊の悲劇。あの時の深海棲艦との接触となります」

 

 

鹿島「……わるさめさんではダメなのですか?」

 

 

提督「隠密の任務なので、あの子には向いていませんし、正直あの子は中枢棲姫勢力と会わせればどんな方向にこじれるか分からないので」

 

 

提督「鹿島さん、あなたに任せたのは理由があります。あの時、あなたは『深海棲艦は、私達以上の被害者なのに私達は容赦なく彼等の尊き命を奪っていたと、いうことでしょうか』といった」



提督「あなたの悲劇の物語はまだ先の結末があるはずです。幸か不幸か自分がお力になれることかと思いまして。しかし、中枢棲姫勢力は我々が暁の水平線の到達と同時に」

 

 

提督「全滅します」

 

 

提督「恐らくこの場が最後のチャンスであり、それも今回は戦場でなく話し合いの場です。ぜひあなたに、と。明石君にも同行してもらいますけど」



提督「どうしますか?」


 

鹿島「……、……」

 

 

鹿島「引き受けます」

 

 

提督「ありがとうございます」

 

 

提督「なにかあれば任務を放り出して逃げてください」

 


鹿島「いいの、ですか?」

 

 

提督「この場であなたを死なせるわけには行かない。なに、ご心配なく」

 

 

提督「自分が必ずや、その穴埋めをしますから。しかし、あなたの代わりはなにをしても用意できません」

 

 

鹿島「……!」

 

 

鹿島「い、いえ、お任せください!」

 

 

提督「よろしくお願いします。それでは任務である交渉内容を伝えます。メモは取ってもいいですが、絶対に漏洩させないようにお願いします」


 

鹿島「大丈夫です」

 

 

提督「――――、――――」

 

 

鹿島「……了解しました」

 

 

提督「なにもいわないのですね」

 

 

鹿島「ええ」

 

 

鹿島「提督からの任ですから。ここからは私も決死の覚悟を決めて動きます」

 


提督「あはは、自分が死ぬ時は鹿島さんを道連れにするかもしれませんね」

 

 

鹿島「そ、そうならないように、提督も頑張ってくださいね……?」

 

 

提督「もちろん。最後にいいますが、極秘任務でありながらも、恐らくうちの子達、特に金剛さん卯月さん瑞鶴さん龍驤さん辺りがあなたと明石君の仲を邪推してちょっかいかけてくると思います」

 

 

提督「内容は漏らさないように。特にわるさめさんには。あの子は中枢棲姫勢力と絡ませれば本当に事態がどう転がるか分かりません。中枢棲姫さんのほうもそれを怖れていると思いますが、向こうの面子は限定されています。こちらから気を配るべき点です」

 

 

鹿島「……了解しました」

 

 

提督「はい。それでは龍驤さんに。これもまた二人にして頂きたいです」

 

 

鹿島「はい。少しお待ちくださいね」

 

 

……………

 

……………

 

……………

 

 

提督「こちらのことは以上です」

 

 

龍驤「龍驤さん、開いた口が塞がらんよ。まさか海の傷痕が大本営に来て電をボコした挙げ句、ペラペラ情報喋って。そっちは大混乱してそうやなあ」

 

 

提督「しばらく自分も混乱してますので、丙少将甲大将との演習についてのことよろしくお願いします。特に瑞鶴さんはマジで改二甲までなんとか」

 

 

龍驤「了解やで」

 

 

提督「それと、これは後で電さんがそちらに戻った時に書面で渡しますが、『全員生還の指揮』について」

 

 

提督「交えて結論を出しておきたい。生きて帰る、この意味、自分の中で定義が出来ましたので」

 

 

龍驤「……了解。他にはない?」

 


提督「後日の演習の艦隊編成は決めあぐねてまして。策は大体あるんですがそちらに帰ってから伝えます。でも」

 


提督「今回、実質的に2体1で、丙少将と甲大将は別々に動きます。申し訳ないのですが、その対応の際に、自分が第1第2の指揮を取るのは難しくなるので」

 

 

提督「龍驤さん、今回は司令官でお願いできます?」

 

 

龍驤「ええで。公式でここの司令官やってみたかったから。ここの鎮守府の皆の指揮を執ってみるのも面白そうやし」

 

 

龍驤「合同演習時の汚名をそそぐで」

 

 

提督「よろしくお願いします。第2艦隊の指揮は航空戦は自分が、その後は龍驤さん、お願いします」 



龍驤「了解」

 

 

提督「それと初霜さんのことですが」

 

 

龍驤「はっつん?」


 

提督「まだあの子は甘いところが抜けきれてないだけ……違いますね。理解が及ばないだけです。まだ実年齢は15歳とお若いですし、それに」

 

 

提督「彼女の過去のデータを調べて見れば分かります。才能の片鱗はあります」

 

 

提督「秘書官として側において観察してましたが、すでに仕事においては自分より手際が良い始末です」

 

 

龍驤「マジか。はっつんのポテンシャルは見誤ってたわ」

 

 

提督「子供の吸収力故ですかね。スポンジみたいなところがあります」

 

 

提督「そして伝えておきたいことです。先程、乙中将からこっそり教えてもらったのですが」

 

 

提督「あの子も欠陥あるみたいです。欠陥というか、ただの不思議属性というか迷いますが」

 

 

提督「とにかく理解が及びません」

 

  

龍驤「キミがそこまでいうとは。はっつんも過去になにかあったの。そんな風には見えないけど」

 

 

提督「自分も全く気付きませんでした。そういうの割と気付くこと自体は得意なんですけどね……」

 

 

提督「一応のために伝えておきますね。あの子の兵士の志望動機は艦娘の入渠システムを利用して『身体を作るため』みたいです」

 

 

龍驤「医療目的の建造はたまに聞く話やな」

 

 

提督「成長障害があって、足が悪かったみたいです」

 

 

龍驤「あー、妖精さんのミラクルパワーでそういうの治す……というか、機能させるようにするからなあ」

 

 

提督「そして、あの子は5歳から9歳まで行方不明者として捜索届が出されていた模様です」

 

 

龍驤「待ち。それかなりヤバイ話やないの?」

 

 

提督「色々な意味で。そこのところは置いておきますね。あの子が真面目でがんばり屋なのは」

 

 

提督「皆に追い付くため、普通になるためです」

 

 

龍驤「……なるほどな、気付かん訳やわ。うちらにとっての『普通』やね」

 

 

龍驤「ええわ。察したし、分かった。はっつんに何か妙な変化あったらキミに報告する。いつも通りに接するし、この件は誰にも喋らへん」

 

 

提督「……はい。それと海色の適性って知っていますか。初霜さんの素質なのですが」



龍驤「確か名前に白のイメージがつく艤装の適性者にたまにある複数適性。真白の適性。その究極系やろ。確か清霜のやつが戦艦になれる手段! とか鼻息荒くしていたような……」



龍驤「知ってはいるけど……マジ?」



提督「みたいです。今はもう大分適性も削れていますが、まだまだ。初霜さんのポテンシャルを生かすためには魔改造不可避ですね。二日後に明石さんが着任しますので、彼女に任せます」



提督「明石さんは解体したわけではないので、明石君とシフト組んでもらえますかね。しばらく明石艤装は24時間フル可動で」



龍驤「そっか。明石艤装には適性者二人いれば、その手があるなあ」

 

 

提督「あ、演習メンバーはまた後で考えます。ごたごたしていて作戦の詳細もまだ……」



提督「ですが、入れたいと思っているメンバーは3名ほどいます。甲丙連合艦隊との演習で、一皮むけてもらいたい人達です。これは伝えなくて結構です。まだ完全に入れるとしたわけではないので」



龍驤「誰なん?」



提督「暁さん、秋津洲さん」



提督「それと間宮さんです」

 

 

龍驤「」

 

 

提督「間宮さんには、必ず出すとよろしくお伝えください。嫌がるでしょうが、間宮さんなので。夜戦装備つけてもいいか聞いといてください」

 

 

龍驤「間宮さん抵抗すると思うよ……人数足りないわけでもないのにって」



提督「そこをなんとか。それと自分は内情により昇級しまして、『丁の将校』になりました」

 

 

龍驤「! キミが丁准将の位を授かったの!?」

 

 

提督「海の傷痕のせいで色々と事情が当初と変わったみたいです。自分が中佐階級に留まり続けるままだと、色々と火種になるみたいで。戦時昇進の理屈を適用させるみたいです」

 

 

龍驤「大きな功績はあるし、理由は用意出来るからなあ。しっかし、うちらが将校艦隊かあ……」

 

 

提督「ぶっちゃけると対深海棲艦海軍の丁丙乙の将の位なんて、陸軍と比べて扱いが下の下で、特に旨味もありませんし……」

 

 

龍驤「でも、断らんかったんやろ?」

 

 

提督「大淀さんいわく、甲大将から『私にまた面倒押し付けんのか、ん?』との伝言があるらしく、座る以外の選択肢がなかったんです」

 


龍驤「それはもう強制やね……」


 

提督「丁准将の席って絶対に呪われていますよ。皆さんろくな死に方をしてませんし。死神でもついていそうな闇の席です」

 


龍驤「せやね……でも、そこも踏まえてキミは相応しいと思うよ」

 

 

提督「まあ、きっと自分はろくな死に方をしないとは思いますね……」

 


龍驤「あはは、あの席はキミみたいな純思考型の席やしな。前任の丁准将もキミみたいなタイプやったはずやで」

 

 

提督「ぶっちゃけると対深海棲艦海軍の将の位……いや、提督自体が陸軍と比べて扱いが下の下で旨味より責任があるだけですし、大佐辺りが理想だったのですが」

 

 

提督「致し方ありませんね」

 

 

提督「まあ、丁の旗は意識しなくていいです。うちにはうちの特色がありますから」

 


龍驤「そうやなあ……」

 

 

提督「演習に敗け、自分の指揮能力が疑われた場合、鎮守府(闇)の皆さんが異動になるかもしれない点だけはよろしくお伝えください」

 

 

龍驤「あいあいさ」

 

 

提督「それではそろそろ切りますね。帰る日にちはまた後程に連絡しますので、鎮守府のことよろしくお願いします」

 

 

龍驤「分かった。任せときー」



5

 


伊58「そんなあ!」


 

阿武隈「提督が、軍法会議にかけられ……?」

 

 

卯月「あー、笑い話にもならないつまらない展開が来たぴょん」

 

 

瑞鶴「とうとう目をつけられてしまったか……」

 

 

間宮「合同演習時から日の当たる場所でも無茶苦茶やってましたものね……」

 

 

秋津洲「え? え? 提督いい人なのに罰を受けるの?」

 

 

榛名「今回ばかりは榛名も大丈夫ではありません!」

 

 

金剛「龍驤、結果を教えてくだサーイ!!」

 

 

龍驤「とりあえず連絡来てな、色々と発表するから静かにしとってな」

 

 

龍驤「ちなみに秋月と陽炎不知火は察知して提督んとこに向かったみたいやね。電も向こうにおる」

 

 

一同「……」

 

 

龍驤「暁、響、陽炎、不知火は丙少将の鎮守府に異動」

 

 

暁「……え」

 

 

響「なんてことだ」

 

 

龍驤「どした?」

 

 

暁「電と雷とまた離れ離れに……なっちゃう……それにぃ」

 

 

響「苺みるくさんのお世話ができなくなってしまう」

 

 

響「私達が無理いってここに置いてもらったのは、世話を見ること。それが司令官との約束なんだ」

 

 

龍驤「残るみんなで面倒見るからええよ。異動は仕方のないことやから、暁も響も自分の使命を忘れんようにな。また暇が出来れば可愛がりに来てもええんやでー」

 

 

暁「……」

 

 

響「暁、こればかりは仕方ないよ。電と雷にお願いしてこよう」

 

 

響「司令にも帰ってきたら、謝らなくてはならないね。こういうこと考えずに生き物を飼いたいだなんて浅慮だった」

 

 

暁「苺みるくさんにもごめんなさい、いわなきゃ……」

 

 

響「そうだね。暁型5番艦苺みるくだからね。もう立派な第6駆の仲間だ」

 

 

龍驤「戦争に交わっても黄ばまないこの白さをわるさめのやつにも見せてやりたいわ」

 

 

龍驤「それで初霜、金剛、榛名、瑞鳳は乙中将のとこに逆戻り」

 

 

金剛「……了解、デース」

 

 

瑞鳳(第6駆が受け入れた以上、大人組はごねられないよね……)

 

 

龍驤「瑞鳳どした?」

 

 

瑞鳳「第6駆に首を縦に振らせてから大人組に話を振るその龍驤さんやり方が、ここの提督っぽいなあ、と」

 

 

龍驤「たまたまやて……でも、すまんなあ。瑞鳳にはあっちこっち行ってるもんな。腰据えたいわな……」

 

 

瑞鳳「いえ、それは構わないんですけど、どうせなら最後までこの鎮守府が良かったなって」

 

 

榛名「そう、ですね。榛名も瑞鳳さんと同じ意見です」

 

 

秋津洲「私は?」

 

 

龍驤「秋津洲と雷はこのまま」

 

 

秋津洲「引き続きがんばるかも!」

 


暁「雷、電と苺みるくさんのことお願いしていい?」

 

 

響「秋津洲さんにもお願いしたいな。苺みるくさんは秋津洲さんになついているみたいだ」

 

 

雷「まっかせなさい!」

 


秋津洲「もちろん!」

 

 

金剛「戦艦がいなくなりマスね……」

 

 

龍驤「異動予定組の異動が正式に決まるのは、2週間後に甲大将と丙少将の連合艦隊と演習やった後な」

 

 

龍驤「タイプトランスとの戦闘経験みたく、こっちの参加メンバーはもう提督から連絡が来てる」

 

 

間宮「丙少将と甲大将の連合艦隊ですか。手強いというレベルではありませんね……」

 

 

間宮「皆さんガンバってくださいね」

 

 

龍驤「間宮さん、他人事みたいやなー」

 

 

間宮「えっ」

 

 

龍驤「選抜されとるで」

 

 

龍驤「少将大将連合艦隊との演習メンバーに」

 

 

間宮「え、私が? ぱーどぅん?」

 

 

龍驤「間宮さん」

 

 

間宮「か、からの~?」


 

龍驤「間宮さん」

 

 

間宮「」

 


間宮「」

 

 

 

 

 

間宮「」

 

 

龍驤「とてもお見せできない顔しとる……」

 


金剛「30cm刃渡連装砲の出番デース!」

 

 

間宮「丙少将と甲大将ですよ! あんな一発芸はもう通用しないですって!」

 

 

龍驤「夜戦装備つける?」



間宮「アンラックとダンスはしません。合同演習時前にもいわれましたっけ……そのネタ懐かしいですね。ほんと勘弁してください」



龍驤「そんなこといわれとったんか……」



龍驤「ちなみに勝てば異動は白紙になるかも、とか」

 

 

一同「!」

 

 

間宮「……まあ、私でお力になれるのなら。鎮守府(仮)の頃でもないのに、私を選ぶのは納得が行きませんけど」

 

 

間宮「12名の演習なら経過時間によっては確かに疲労面で私の給糧艦としての役割は意味も出て来ますが、あの提督さんがそんな単純な役割で出すかといわれると、疑問ですし」



間宮「なにかキテレツな作戦を企んで……」

 

 

龍驤「かもね……」

 

 

瑞鶴「遠征とか止めて、ここの面子で来る日まで演習しよう」


 

伊58「そうだねー」

 

 

阿武隈「賛成です!」


 

卯月「龍驤、それだけ?」

 

 

龍驤「吉報あるよ。うちらの提督な」

 

 

龍驤「『丁准将』になったで!」

 

 

一同「!!!」

 

 

阿武隈「す、すごいです、はい」

 

 

卯月「うーちゃん達は将の艦隊になったかー」

 

 

伊58「秋津洲、前の鎮守府では厄介者だったゴーヤ達が、し、将艦隊でち」

 

 

秋津洲「信じられないかも。て、提督、そんなにすごい人だったんだ。でも、確かにこの鎮守府(闇)は快進撃、を続けているかも」

 

 

瑞鳳「ここの鎮守府の功績を改めて考えてみたら、あり得ないことでも、ない、かな?」

 

 

瑞鶴「そうね。乙中将にも勝ったんだしね。でも『丁の旗』って柄ではないわよね」

 

 

龍驤「ま、丁の旗を掲げる必要はないやろ。将校艦隊だろうと、今更もうここのあり方は変えられんと思うし」

 


卯月「そういえば、はっつんとわるさめのやつはどこぴょん?」

 

 

龍驤「わるさめははっつんと一緒。ここらのことはあんまり喋れんけど、別に心配するようなことではないから安心してな」

 


龍驤「鹿島と明石君は提督から指示された極秘任務中」

 

 

龍驤「二人で出かけよったよ?」

 

 

金剛「ラヴの気配がするデース!」

 

 

暁「仲良くていいじゃない」

 

 

榛名「全くです」

 

 

響「……」

 

 

雷「え、惚れた腫れたなの?」

 

 

阿武隈「見ない組合わせなだけに少し気になりますね、はい」

 

 

瑞鶴「明石のやつ、見た目通りにチャラいのか。手を出すの早いわね」

 

 

伊58「うーん、そんな風には見えなかったけど……」


 

瑞鳳「気にはなるよねー。提督と艦娘、上司と部下の色恋沙汰はたまに聞くけど、同僚とは明石君がいるここならではだし……」

 

 

間宮「うーん、だとしてもお二人は知り合ってからまだあまり時間が経過してませんし、一緒にいるところも私は見たことありません、けど……」 

 

 

雷「あれを見て」


 

『同性異性間問わず職場恋愛禁止 by●ワ●』


 

金剛「恋は始まれば最後。規則で抑圧できるものではないのデース」

 

 

龍驤「大丈夫やて。でも、ちょっと気になるから鹿島のやつに連絡かけたろ」

 

 

阿武隈「規則ですからね。仕方ないです、はい!」


 

金剛「今かけるデース!」

 

 

龍驤「了解やで」

 

 

卯月「皆に聞こえるようにするぴょん」


 

瑞鶴「ゆえに皆のもの、静かになされよ」

 

 

秋津洲「野次馬根性……」



6

 

 

鹿島「鹿島ですが、龍驤さん? どうかなされましたか?」

 

 

龍驤「明石君とおるん?」


 

鹿島「明石君ですか。一緒にいますよ」


 

一同「!」


 

龍驤「すまんのやけど、2週間後に他鎮守府との演習あるから、明日から鹿島にもそのために訓練出てもらうことになってなあ。早い内に伝えておこうと」

 

 

鹿島「了解です。わざわざありがとうございます」

 


龍驤「あの明石君といるんやろ?」


 

鹿島「ええ、明石君とお出掛けしていますよ」


 

一同「!!」

 

 

龍驤「明石君と仲良いの?」

 

 

鹿島「…………?」

 

 

鹿島「あ、違いますっ! そういうんじゃありません!」

 

 

鹿島「今朝に提督さんから頼みごとをされまして、それに明石君に同行してもらっているんです」

 

 

鹿島「任務上一人では危ないですし、街なので、男の子の明石君が適任と考えたらしくて。これ以上はすみません」


 

龍驤「あの提督のことやし、知らされてない以上は聞かんでおくわー」

 

 

鹿島「申し訳ありません。提督さんから内密に、と頼まれていますし……」

 


龍驤「ごめん、明石君に変わってもらえん?」


 

鹿島「はい、分かりました」

 

 

明石「もしもーし、軽空母龍驤さん?」

 

 

龍驤「デート?」

 

 

明石「野次馬かよ。そーいうの俺にはマジで理解できねえよ。遊びじゃねえんだぞー」

 

 

明石「まあ、余裕持って出すぎたせいでどこかで時間潰す予定ではあるけども」

 

 

龍驤「ごめんなあ。映画でも観に行くの?」

 

 

明石「……兄さんとこは職場恋愛禁止ですし、破るつもりはねえんで。それに、そんなことしていられるほど平和な状況じゃねえ」

 

 

明石「ボディガードに近い」

 

 

明石「鹿島さん少し俺から離れると、スカウトとかナンパもんに声かけられてる……」

 

 

龍驤「マジか。うちが歩いてもそんなんならんのやけど、男の明石からしてどういうことやと思う?」

 

 

明石「オーラでしょ。鹿島さんが女神だとすれば、龍驤さんは関西の面白いねえちゃんってところ。人によっては中学生に見えるでしょうし」

 

 

龍驤「邪魔したね。がんばってなー」

 

 

龍驤「覚えとれやーぼけー……」

 

 

明石「正直者が馬鹿をみる世の中、どーにかならねーかなー……」

 

 

ツーツーツー……

 

 

伊58「ま、忠誠心だけは買うでち」

 

 

阿武隈「まあ、予想通りですかね」

 

 

瑞鶴「明石のやつもがっつくタイプじゃないのかー」

 


卯月「正直、身内でそんなのは扱いが面倒臭いから、なくていいし。恋は成就する前にからかうのが最も美味しい食べ方だぴょん」

 

 

榛名「卯月さんは順調に悪童の道を歩いていますね……」

 

 

卯月「素直に生きてるだけぴょん」

 

 

阿武隈「卯月ちゃんは根は悪い子じゃないです、はい……」

 

 

龍驤「うちは執務がたまっとるから仕事するけど、皆はそれぞれ渡したスケジュールをこなしてな」

 

 

龍驤「あの提督にいて欲しい、自分等がここにいたいのなら少しでも練度はあげとくべき」

 

 

龍驤「異動予定組も参加メンバーしごいたってーなー」

 

 

龍驤「そんで瑞鶴には話があるから残って」

 

 

瑞鶴「?」

 

 

7

 

 

瑞鶴「なによ?」

 

 

龍驤「改装設計図と、カタパルト用意するから、練度数値を90まであげてくれ、やとさ」

 

 

瑞鶴「改二甲にするってこと……?」

 

 

龍驤「うん」

 

 

瑞鶴「まだ改ですらないんだけど!?」

 

 

龍驤「練度数値は50やろ。改造してないだけでできるレベルにはなってるやん」

 

 

龍驤「うちもさ、もう少しあげて改二にならなきゃあかんし……」

 

 

龍驤「最近ずっと訓練してるって鹿島から聞いたんやけど、艦載機の扱いと砲撃は上手くなったん?」

 

 

瑞鶴「もっちろん。瑞鳳さんに付き合ってもらってるんだけど、艦載機の撃ち合いでは互角程度まで」

 

 

瑞鶴「砲撃のほうはかなり。アブーと比べても負けない気がする」

 

 

龍驤「すごい右肩上がりやん」


 

瑞鶴「まだまだもっと上に行けるって鹿島さんはいってくれてるわね」

 

 

瑞鶴「ま、そろそろ私もいいとこ見せてあの提督に報いてあげなきゃね」

 

 

龍驤「空母3人、しかも正規空母は瑞鶴だけやしな。電のやつはとりあえず置いておいてもさ」

 

 

龍驤「甲大将のところはグラーフとサラトガおるし、丙少将のところには天城と加賀、大鳳もおるからな」

 

 

龍驤「うちと瑞鶴で相手するつもりでいかんと。制空権完全に奪われるのは負けに直結する要素やから、気合い入れんと。まあ、電が航空戦に加わればこっちのが強いとは思うけど」

 

 

瑞鶴「向こうの面子って決まってるのかな?」

 

 

龍驤「当日にならんと分からんけど、第1艦隊で来るなら丙少将のところは」

 

 

龍驤「日向、伊勢、雪風、天城、加賀、大鳳」

 

 

龍驤「甲大将のところは」

 

 

龍驤「木曾、江風、北上、大井、グラーフ、サラトガやね」

 

 

瑞鶴「甲大将のところ戦艦はいないんだ」

 

 

龍驤「夜戦力は乙中将のところを優に越えてるし、木曾と江風は卯月みたいに素質的な能力が高いから単艦で戦艦ボコボコに出来るみたい」

 

 

龍驤「演習とはいえ、この鎮守府バラされるかどうかがかかってるから、今までの演習で一番勝たなきゃならん勝負やな」

 

 

瑞鶴「……そうね」

 

 

龍驤「瑞鶴、ちなみに加賀やんとはどんな感じだったん?」

 

 

瑞鶴「うーん、最近まで加賀さんが丙少将のところに異動したの知らなかったしなー。別にそこまで仲が良いわけじゃないかな。ケンカはたまにしてたけど、仲が悪いってほどでもない」

 

 

瑞鶴「普通よ普通」

 

 

瑞鶴「でも確か赤城さん並みに強かった気がする。負けたくない、かな」

 

 

龍驤「加賀やんとグラーフも相当やけど、サラトガ……天城がなあ……」

 

 

龍驤「妖精可視の才持ち正規空母。あの二人が出てきてからはうちもランク下がったし、今もキツいな」

 

 

瑞鶴「まあ、なんとかするしかないでしょ。やれることをやればいいのよ」

 

 

龍驤「頼もしいこというなあ」

 

 

瑞鶴「後、気になってたけどわるさめって解体したの? わるさめのやつはメンバーに名前出さなかったのも気になってたし」

 

 

龍驤「うん。わるさめは本人の希望通りに解体したよ。はっつんはわるさめの里帰りに同行」

 

 

瑞鶴「あー、そうなんだ。確かに普通の身体に戻りたいっていってたし、叶ってなによりね」

 

 

龍驤「これから、あいつどうするんかな……」

 

 

瑞鶴「あいつならどこ行ってもそれなりに元気でやるしょ。中枢棲姫勢力に2年くらいもいたようなやつだしさ」

 

 

龍驤「まーな。けどわるさめのやつ帰るとこあるのかなーって思って」

 

 

瑞鶴「……提督はなんて?」

 

 

龍驤「そこらのこと、決戦前に提督が色々とやってくれてたみたい。秘書官のはっつんが頼まれてるらしいから同行してもらったよ」

 

 

龍驤「夜には帰ってくるって(メソラシ」

 

 

瑞鶴「……あっ(察し」

 


【●ω●:わるさめちゃんお里ぶらり旅 with初霜さん&電さん】

 

 

1

 

 

わるさめ「うええええん!」


 

わるさめ「おかあさああああん!」

 

 

初霜「………」ヨシヨシ

 

 

わるさめ「死に目に会えない親不孝娘でごめんなさああああい!!!」

 

 

初霜「これ、水を置いておきますね。わるさめさんがお墓に抱きつくから、鼻水と涙、お掃除して差し上げないと……」

 

 

わるさめ「はっつん」

 

 

わるさめ「お母さん、リンパ腺にガンがあって入退院を繰り返してたんだあ……早期に発見できたけど、手術で除去できないから、科学治療を受けてて」

 

 

初霜「……はい」

 

 

わるさめ「免疫力がないから、バイ菌もらわないように、私が掃除とかお料理とかやるっていってるのに、やろうとする人で、我慢する人で」

 

 

わるさめ「母子家庭で親族とかも全滅してて、治療費なんとかするために、春雨になって稼いでたんだあ……」

 

 

初霜「初耳です。そんな事情があったのですか……」


 

わるさめ「だって親子二人だもん。保険とか色々使ってもお母さんの治療費お金たくさんかかるもんよお……」


 

わるさめ「それに、私が活躍すればヒーローになってお母さんの自慢の娘になれるんじゃないかって……」

 

 

わるさめ「当時の私は中学生で、そんな私に負担をかけるから、だろうね。家のことをやろうとしたのは……」


 

わるさめ「だけど、私は猛烈に後悔、してる……だって」

 

 

わるさめ「私がいない間、ずっとあの狭くてボロボロのアパートのちゃぶ台で」

 

 

わるさめ「一人でご飯食べてたんだもん……」

 

 

わるさめ「うわあああああん!」


 

2


 

わるさめ「……ぐすっ」

 

 

初霜「落ち着きましたか」

 

 

わるさめ「……少し」

 

 

初霜「先の出撃前に提督からわるさめさんのことで重要な話を聞いておりますし、わるさめさんが無事に普通に戻れた場合に話すよう指示されているんです。聞いていただけますか?」

 

 

わるさめ「……なに」

 

 

初霜「わるさめさんのお母様の遺品を保管している人がいるみたいで」

 

 

初霜「遺書も、あるそうです」

 

 

初霜「事情が複雑でわるさめさんの存在が秘匿されていたこともあり、提督ではそこまで気を利かすことができなかったらしく、わるさめさん本人でないと受け取ることはできないみたいで」

 

 

初霜「わるさめさんの存在証明はすでに提督が軍に頼んで完了していまして」

 

 

初霜「なのでわるさめさんが直接出向けば確認の後、すぐにでも引き取ることができます」

 


わるさめ「なら行く! お母さんの遺品も遺書も全部もらいに行く!」

 

 

2

 

 

わるさめ「アパートも、なくなっちまって、代わりにでかいビルが建ってら……」


 

わるさめ「正面にあった幽霊屋敷も駄菓子屋さんもなくなって、面影がないし……」


 

わるさめ「でも、この緑地公園だけは変わってなくて泣ける。変わらない景色の優しさが身に染みる……」

 

ギーコギーコ

 

わるさめ「ブランコ……あんまり楽しくなくなっちゃったな……」


ギーコギーコギーコギーコ

 

 

初霜「見てください! 昔は怖くて出来ませんでしたが、今はどれだけ振り幅を大きくしても怖くありません!」

 

 

わるさめ「これが若さか……遺書を読むから静かにしてね」


 

初霜「すみません。静かにしています」

 

 

わるさめ「……………」

 

 

わるさめ「……………」ポロ

 

 

わるさめ「……………」ポロポロ

 

 

初霜「……」

 

 

わるさめ「はっつーん!!」ガバッ

 

 

初霜「きゃっ、急に抱きついて……びっくりするじゃないですか」

 

 

わるさめ「……お母さん」

 

 

わるさめ「心配ばかりしてたみたい……」

 

 

わるさめ「あなたは私に似ておっちょこちょいだから、いじめられてないか心配とか」

 

 

わるさめ「ちゃんと食べてて、元気かな、とか」

 

 

わるさめ「そんで、立派にお国のために、がんばれているかって」

 

 

わるさめ「幸せになって欲しいって」

 

 

わるさめ「あなたはあなたが思うように、生きて欲しいって……」


 

わるさめ「応援してくれてた」

 

 

初霜「すごくいいお母さんだってことは、分かります」

 

 

わるさめ「…………」

 

 

わるさめ「戻らなきゃ」

 

 

初霜「それでいいのですか?」

 

 

わるさめ「まだ、終わってない」

 

 

わるさめ「お母さんに誓って輸送を約束した平和はまだ達成されてない」

 

 

わるさめ「お母さんに軍に入ることを認めてもらうためについた嘘だったけど」

 

 

わるさめ「お母さん、信じてたから」

 

 

わるさめ「私は、成し遂げたい」

 

 

初霜「……ええ、それなら」

 

 

初霜「これからもよろしくお願いしますね!」

 

 

わるさめ「ところで気になったんだけど、はっつんも家庭環境悪いの?」

 

 

初霜「私の家庭環境ですか? 悪くはないですけど」

 

 

初霜「知りたいですか?」

 

 

わるさめ「……少し」

 

 

初霜「私はごくごく普通の家庭で産まれたみたいでしたね」

 

 

わるさめ(……みたい、でしたね?)

 

 

初霜「5歳のクリスマスの日に……」

 

 

わるさめ「……」

 

 

わるさめ「やっぱり、いいや。はっつん顔も声もいつもと同じだけど、なんとなく辛そう。止めとく」

 

 

初霜「ですね。ごくごく普通の家庭なのに、11の歳で兵士に志願するだなんて、幸せな理由ではないですから……」


 


 

 

 

電「初霜さん、と、わるさめさん?」



3

 

 

初霜「!?」

 

 

わるさめ「なんでお前がいるし!」

 

 

電「驚いたのは私のほうなのです」

 

 

電「せっかく外に出られたので、この機会に乗じて育った里を見て回っていました。お忍びですけどね……」

 

 

電「もしかしてわるさめさんのお里もこの辺りなのです?」

 

 

わるさめ「そうだけど……」

 

 

電「私はもう少し先に歩いたところですが、まさかの同郷でしたか。それにこの奇跡的なタイミング。あなたとは色々な縁があるみたいなのです」

 

 

電「それに外に出ているということは、解体、出来たのですね」

 

 

電「海から解放されたこと、おめでとうございます。本当に良かった。私も自分のことのように嬉しいのです」

 

 

わるさめ「お前、待て。なんだその優しい顔と声は……まるで電みたいだ」

 

 

わるさめ「なにかあったの?」

 

 

電「この身体が解体可能であることを司令官さんが証明してくれました」

 

 

初霜・わるさめ「!!」

 

 

わるさめ「――――っ」ポロポロ

 

 

電「しかし、私は解体可能である、という事実だけで構いません。私は決死の覚悟でこれからの戦いを生き抜きます」

 

 

電「この身体の力は必要なのです。戦争で芽生えた美しさは全て胸に秘めておきます。私の哲学は変わらない」

 

 

わるさめ「……お前らしい、ね」

 

 

わるさめ「でも、1つの選択なのかもね。解体して戻っても私達が化物だった頃の精神影響は白紙に戻らないみたいだから。爪痕としてずっと残るんだろうね」


 

電「……なのです。きっと時でも癒せない傷なのでしょうね」

 

 

電「『海の傷痕』については」

 

 

わるさめ「……知らない」

 


電「この戦いを始めた海の想いの神様です。大本営に現れ、自分を見つけた司令官さんと今の将校と会話をしに現れたと思われます」

 

 

電「フレデリカの姿をしていました」

 

 

わるさめ「……そいつ、趣味悪いんだね」


 

電「その海の傷痕を倒せば全ての想は消え去り、妖精も、深海棲艦も全滅して残るのは今を生きる人間のみ」

 

 

わるさめ「すごすぎて言葉が出ねえ……」

 

 

初霜「……」

 

 

電「私は海の傷痕にオールトランスにて交戦し、数秒で大破撃沈の無様をさらしました」

 

 

初霜・わるさめ「!?」

 

 

わるさめ「信じ、たくないなー」

 

 

電「その正体が人の想いだなんて、滑稽で残酷なオチ、ですね」

 

 

電「海の傷痕は」

 

 

電「『Rank:Worst-Ever』」

 

 

電「歴史最悪の神様」

 

 

電「一部の人間しか海の傷痕の情報は知らされず、会話で得た情報から海の傷痕を葬る方法をすぐに各国と協定を結び、戦闘海域になるであろうこの国へと拠点を設置し、対策します」

 

 

電「……わるさめさん、これはあまり気が進まない発言なのですが」

 

 

わるさめ「皆までいうな。任せろ。わるさめちゃん鎮守府に帰るぜ」

 

 

わるさめ「とりあえず強引に春雨に建造してからかな。春雨の適性ないに等しいから、春雨ちゃんのままだと恐らく砲撃もままならない、か」

 

 

わるさめ「はっつん今度は深海妖精に建造を頼もうか」

 

 

初霜「え、ええ!? でも、それって人体実験で私が勝手にやっていいことではない違法行為ですよね!?」

 

 

わるさめ「はっつん」

 

 

わるさめ「海の傷痕の力は聞いたよね。勝たなきゃならなくて、その為に手段を選んでいられないわけよ」

 

 

初霜「し、しかし」

 

 

わるさめ「深海妖精のことはすぐに分かる。その海の傷痕は聞いている限り、倒すために最初期みたいな無茶をしなくちゃならないと思う」

 

 

わるさめ「私は被害者でこの通り、精神影響ももう戻らないけどさー、だからこそわるさめちゃんが適任じゃないかな。それに解体できたし」

 

 

初霜「……、……」

 

 

電「バレなきゃ戦犯じゃねーのですよ」

 

 

わるさめ「うちがどういう鎮守府かは知ってるよね。あの司令官の秘書官だもんね。司令官のやり方は分かるよね」

 

 

初霜「お、脅しです……」

 

  

初霜「目眩が……」グルグル

 

 

わるさめ「大丈夫。万が一の場合は司令官が責任取ってくれるって」

 

 

初霜「電さん、提督はなんと……?」

 

 

電「負ければ丙と乙かから送りつけられたメンバーは異動になり、最悪、私だけしか残らないかもしれません」

 

 

初霜「……そんな」

 

 

初霜「提督のため鎮守府のためお国のためわるさめさんのため世界のため私がやらなければ人民の多くの命が失われて」グルグル

 

 

電「まあ」

 


電「わるさめさんについては許可が降りているのです。司令官さんと大淀さんからその詳細も聞いてきていますし、建造は司令官さんの立ち会いのもとなのです」

 

 

初霜「それを早くいってくださいよっ!」


 

4

 

 

わるさめ「それでこれからどうするの。わるさめちゃんはこれからもう少しこの町を散歩してご飯食べて買い物しようかなって思ってるけど」

 

 

わるさめ「ぷらずまも来る?」

 

 

電「そう、ですね。そのくらいならご一緒します。それに少し服が欲しいので」

 

 

わるさめ「なんで?」

 

 

電「私服に着替えようとした時に気が付いたのですが、あまり服がなくて、それに折角なので女の子らしい格好もしてみてもいいかな、と」

 

 

電「司令官さん、どんな服だと褒めてくれるのかな……」

 

 

電「とか考える余裕は持てたのです。あの人に頼れば、少しくらい、は」

 


初霜「大本営で一体なにが……」

 

 

わるさめ「わるさめちゃんも初めてみる。この状態なら仲良くやれそうたけど、信じられねっス……大本営でほんとマジどんなことあったし」

 

 

電「素直になってみようと思っただけなのです。どうせ私の素顔は電寄りだと見抜かれていますし」

 

 

電「鎮守府に戻ればお友達の皆さんの兜の尾を締めるために、またぷらずまの仮面を被らなければなりませんし、恐らく海の傷痕を倒すまでは忙しいのです」

 

 

電「街に出られるのは今日ぐらい、かな」

 


電「街に出ても、湿っぽい気分になるだけですね。この街での私の想い出は、あまり優しくないのです」

 

 

わるさめ「……そう、だね。私達は時代から取り残されているみたい」

 

 

わるさめ「私達がセンチメンタルにならずに面白おかしく馬鹿やれるのは海や鎮守府だけなのかもね……」

 

 

電「なのです。ここはあの司令官さんと初めて出会えた場所なので良い想い出でもあるのですが、それでも胸にぽっかり穴が開いた気分になるのです」

 

 

わるさめ「そうだね。始発で来たけどさ、なんだか電車に乗り遅れた人と自分が重なった……」

 

 

初霜「あ、そういえば。提督が、この辺りのことを……」ガサゴソ

 

 

初霜「これです。わるさめさんがこの街にいた頃から変わらずにあるお店を調べてくださっています」

 

 

初霜「どこか想い出の場所はありますか?」

 

 

わるさめ「あの人は良いやつだなあ……」

 

 

電「お前、あの司令官さんを殺そうとしたこと忘れるな、なのです」

 

 

わるさめ「あ、このお店に行ってみたい」

 

 

電「やっぱりお前嫌いなのです……」

 

 

4

 


電(あぶら臭い……)

 

 

わるさめ「……変わってない」

 

 

わるさめ「相変わらずガラガラで閑古鳥鳴いてるー!」

 

 

店主(なんか失礼な客が来た)

 

 

電「……うん? あの写真……」

 

 

店主「らっしゃい……ん?」

 

 

店主「……、……」

 

 

店主「こ、小春ちゃん……?」

 

 

わるさめ「おう、私の真名じゃないか! 歳を取ったなおっちゃん!」

 

 

店主「いや、人違いか。小春ちゃん、人見知りで俺にもおどおどしてて、春さん以外になついていなかった。そんな馴れ馴れしい性格じゃなかったし」

 

 

初霜「確かわるさめさんの名前は小春でしたし、正真正銘の小春さんかと(メソラシ」

 

 

わるさめ「『お、お母さん、そろそろ閉店時間だし、起きて帰らないと』」

 

 

わるさめ「『寝かしとけ。別にいられても困らねえし』」

 

 

わるさめ「『ひうっ、そ、そうですか。お母さんがごめんなさい』」

 

 

店主「うおお、小春ちゃんだ! 生きてたのか! そうかそうか! まあ俺は生きていると思っていたけどさあ!」

 

 

電「飾ってあるのは、わる……春雨さんの艤装を着けた時の写真、なのです?」

 

 

店主「そりゃそうだ。この町内の誇りよ。海を守る兵士になってお国のために命を賭けてくれてんだからよお」

 

 

わるさめ「おっちゃーん! あっりがとおおお!」

 

 

店主「……春さんには会ってきたか?」

 

 

わるさめ「当たり前だろ。そのために来たんだよ。お母さん抱きしめまくってから来たんだよ」

 

 

店主「そっか。それならいいんだ。春さんは死ぬまでさ、いつものこのカウンターの席に座って小春ちゃんの心配ばっかしてたよ」

 

 

わるさめ「――――っ」ポロポロ

 

 

店主「あ、悪い。泣かせるつもりじゃなくてさ、春さんが報われて良かったって思ったんだ。俺が逝った時に伝えておくぜ。長生きするもんだ」

 

 

わるさめ「おっちゃああん……」

 

 

店主「まあ、なんか食ってけ。そっちの子は……ええと初春型の初霜ちゃんと暁型の電ちゃん、か?」

 


初霜「そうです。詳しいのですね」

 


店主「小春ちゃんが戦争に行くことになってからどうしてもなあ……」

 

 

店主「電ちゃんは、あのよ、妙な実験されてたって聞いたけど、大丈夫なのか……?」

 

 

電「ご心配なく。今はこの通り回復して元気なのです♪」

 

 

店主「そっか。良かった」

 

 

店主「最近だと騒ぎになったのは深海妖精と、中枢棲姫勢力とかいうむちゃくちゃ手強い敵が出てきたんだっけ」

 

 

店主「この春雨はどうだ? おどおどしてて引っ込み思案なとこがあったが、役に立ってたか?」

 

 

わるさめ「……」ジーッ

 

 

初霜(……い、いえない。電さん)チラッ

 

 

電(途中からそのRank:SSSの深海棲艦勢力に属してお国に反逆していたなんていえる空気じゃねーのです……)

 

 

電「はい、春雨さんにはいつも助けてもらっていたのです」


 

わるさめ「そうそう。同じ不幸を抱えてんのに、いっつもめそめそと一人で抱え込むんだよ。電のやつは本当に私がいないとダメな泣き虫でさー」

 

 

電(……ビンタしたい)

 

 

初霜「わる、春雨さん、念のために言っておきますが、話していいことと悪いことがありますからね」

 

 

わるさめ「大丈夫。おっちゃんなんか適当に作って。電にはっつん、あんまり美味しくないけど勘弁してあげてね」

 

 

店主「うるせーよ……」

 

 

……………

 

……………

 

……………

 

 

モグモグ

 

 

初霜「ちょっと待ってください。この中華料理、は」

 

 

電「間宮さん、いや、マーミヤン越えに美味しいのです!?」

 

 

わるさめ「嘘だろ……正直、この店のらーめんはラオウのカップ麺のが美味かったレベルのはずなのに」ズズズ

 

 

店主「美味しさ剛掌波だろ」

 

 

わるさめ「これ食ったら人生に一片の悔いなしだよ!」


 

わるさめ「でかくなったなジジイ!」

 

 

店主「マジで小春ちゃん、性格変わったよな……」

 

 

店主「まあ、春さんに娘が戻ってきた時にこの味で出したらこの店を幽霊物件にするって脅されたわ」

 

 

店主「俺はどうせ女房に逃げられて天涯孤独だし、趣味もなかったから改めて、と」

 

 

店主「一念発起っつうのかな。頑張ってみたんだよ。ま、美味いのなら春さんも勘弁してくれるだろ」

 

 

電「いや、でもこの味でどうしてここまで寂れているのか謎なのです」

 

 

店主「今日はたまたまだ。ここは地域型だからよ、そこらに住んでいる連中の溜まり場みたいなもんよ」

 

 

店主「おっさんとおばちゃんしか来ねえな。若いのはこんなところに来ねえよ。賑やかな都のほうに行く」

 

 

初霜「確かに中華料理店にしては、居酒屋メニューが豊富ですね……」

 

 

店主「つー訳でがんばれよ。海を取り戻して、新鮮な天然の魚を仕入れられるようにしてくれ。市場じゃやっぱり値が張るんだよな」

 

 

わるさめ「任せろ任せろ任せろ任せろこの小春ちゃんが必ず輸送してやるよ!」

 

 

初霜「必ずやお届けします!」

 

 

電「……なのです」

 

 

店主「おう。最後にさ、せっかくだから頼みたいことがある。後生だ」

 

 

店主「電ちゃん」

 

 

電「?」


 

店主「みたいな娘が欲しかったから、なんかリップサービスしてくれ」

 

 

電「」

 


わるさめ「電たん、サービスしてやって?」

 

 

電「……、……く」

 

 

電「『お父さん、ごちそうさまなのです♪』」ニコッ

 

 

電「……」ゴバッ

 

 

店主「パパでお願いしてもいいかな」キリッ

 

 

電「トラン、」

 

 

初霜「はいストップです! 電さん一旦休憩入ります!」


 

わるさめ「はっはっは、おっちゃん次に来るときは全てが終わった時だ」

 

 

店主「小春ちゃん、負けたり嫌になったり逃げ出したくなったり。そんな時は、ここに来ればいいぞ」

 

 

店主「春さんも俺もずっと」

 

 

店主「この町にいるから」

 

 

わるさめ「――――」

 


わるさめ「……」


 

わるさめ「……うん」

 

 

わるさめ「ありがとう、ございます」

 

 

店主「……急にあの頃みたいになりやがって」

 

 

店主「泣かすんじゃねえよ。ったく」

 

 

【●ω●:わるさめちゃんお里ぶらり旅の道連れ、お二人追加だーい!】

 

 

1

 

 

わるさめ「少し乗る電車間違えたね」

 

 

初霜「そうですね……東京のほうに」

 

 

電「帰りは遠いですね。もう電車、飽きました。3つ先の駅でまた乗り換えなのです」

 

 

初霜「帰り道がてら、どこに行きますか?」

 

 

わるさめ「そういえば電が買い物したいとか。わるさめちゃんもしたいな。ずいずいとか司令官とデートしてたし、羨ましかった。外歩けるのこの機会くらいだしさー」

 

 

電「なのです」

 

 

わるさめ「龍驤が太っ腹でさ、たんまり小遣いくれたし」

 

 

わるさめ「あ、ぷらずま、お前のお里ってもう少し先だったろ。行かなくて良かったの」

 

 

電「なんかもういいのです。どうせ帰れば司令官さんもお友だちもいますし」

 

 

わるさめ「……そっか、って待て」

 

 

わるさめ「今、車窓から見えたけど北上と大井のポスター看板があった。なにあれ?」

 

 

初霜「ああ……そう言えば私達のコラボ企画がありましたね。ちょうど寄り道として、可能な範囲にあったはずです」

 


初霜「三越デパート」

 

 

初霜「ちょっと待ってくださいね……確か地図に……」ガサゴソ

 

 

初霜「あ、次の駅で乗り換えて、もう少し行った先にあります」

 

 

わるさめ「じゃ、そこにしようか」

 


初霜「あ、ここで降ります!」

 

 

2

 

 

電「自らの足で歩くのは疲れますね。筋肉痛にはなりませんが、人も多いのはうざいのです。海をすいすい行くほうが楽です」

 

 

初霜「私も色々と新鮮です。田舎の出で、東京って何気に初めてでして、ここまで人が多いなんて」

 

 

わるさめ「そうだねえ。切なくなるぜ。ある意味で艦娘は落伍者みたいなもんだからなあ……」

 

 

わるさめ「つうか春雨ちゃんのポスターはねーのかな。うわ、あの海風すっごく可愛い!」

 

 

電「……え? あれは」

 

 

 

 

 

――――このポスター。明石の姉さんのこんな顔を見たことないんすけど。

 

 

――――そうなんですか? 明石さんってこんな顔をしている印象ですよ?

 

 

――――外面ですね、間違いない。

 

 

 

電「この私がお友達を見間違えるはずがないのです……」

 

 

初霜「え、あのお二人は……」

 

 

電「追います」

 

 

電「二人ともあのようなお洒落な服で、のんきにデートとは鎮守府(闇)のお友達として捨て置けず」

 

 

電「鉄の掟、職場恋愛禁止」

 

 

電「を、破るとは」

 

 

電「鹿島さん&明石君!?」

 

 

電「はわわ、ケジメ案件なのです!」

 

タタタ

 

わるさめ「うん? どったの?」

 

 

初霜「わるさめさんも早くついてきてください! 追いますよ! 電さん、トランスは絶対にダメですからねっ!」

 

 

……………

 

……………

 

……………

 

 

明石「……ん?」クルッ

 

 

明石「おいおいおいおいいい!」

 

 

明石「あの3人のガキはマジかよどんな偶然だ俺の不幸体質のせいかよ夢なら覚めてくれ」

 


明石「鹿島さんお手を借ります、すみません!」

 

 

鹿島「え、どうしたんですか? あ、手の力が強くて少し痛いですっ」

 

 

明石「ほんとすみません! ですが、どちらかでも捕まれば一巻の終わりなんでこの手を離すわけには行きません!」

 

 

電「はわ、はわわ!」

 

 

電「鹿島さんの手を握る!? 現場を押さえましたよ!?」

 

 

電「鹿島さんも握り返しましたね!?」



電「電は男の子とそこまでするのに27年以上もかかりましたよ!?」

 

 

電「知り合ってそんなに経ってないですよね!? 簡単に身体を許し過ぎでは!?」



電「はわわ、あなたという練巡は隣の明石君に一体なにを教えるつもりなのです!?」

 

 

電「加えて逃走するなんて、電は確信したのです!?」

 

 

電「テメーらもう鎮守府(闇)の敷居をまたぐつもりはないということですね!?」

 

 

電「電の司令官さんを裏切りましたね!?」

 

 

鹿島「電さん……? あれ、どうしてトランスタイプのあの子がこんなところに……」

 

 

明石「私服で髪型も違うんで確信はないですけど、後ろの二人は多分アダルティーな初霜さんと美女代名詞のわるさめさんです! つーか初霜さん、私服でも鉢巻きを腕に巻いて……」



鹿島「わ、わるさめさんは不味いですっ。なんとか逃げなきゃ……」

 

 

明石「あ、ちょうど次に乗るはずの電車が来てる! 不幸中の幸いだこれ!」

 


明石「少し歩きます。駆け込み乗車になるんで。大丈夫、まだ距離は」

 

 

明石「駅員さんすみません、乗ります!」

 

 

電「逃がさないのです! 電も乗るのです!」タタタ



鹿島「お願い、早く閉まって……!」

 

プシュー、パタン

 

電「なのです!? なのです!? 開けろ開けろ開けろ開けろよオ!」ドンドン

 


明石「怖すぎる!」

 

 

電「開けゴマ! オープンザドアなのです!」

 

 

駅員「君、危ないから下がって!」

 


電「っ! はい。すみ、ません」

 

 

わるさめ「おーい裏切り者のアッシーくーん! アッキーに報告してやるからなー! 公然の面前で鹿島っちとキスしてたって、お前の兄貴は女を取って妹を捨てて逃げたって報告してやるからなー!」

 

 

明石「勘弁してください!」

 

 

………………

 

………………

 

………………

 

 

ペタリ

 

 

電「あまりの光景に、膝の力が抜けました」

 

 

電「許し、ません」



電「悲しい。お友達に裏切られるなんて。司令官さんにあのダボどものことをなんて報告すればいいのです……」

 

 

初霜「とりあえず危ないので電さんはもう少し下がってください」グイグイ

 

 

わるさめ「えー、悲しみはー、裏切りと別れの悲しみはー、黄色線の内側にお下がりください」

 

 

初霜「変なこといってないでわるさめさんも手伝ってくださいよ!」

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――ネッちゃん! このポスター見てよギャハハ!

 

 

 

――――センキ婆がとってもお洒落です……!