2017-02-02 07:33:35 更新

概要

オタク系女子とボーイッシュ系女子、ゆるふわ系女子のなんの変哲もない日常


前書き

女の子3人…つまり百合を期待!!

いや、よく見て、ラブコメじゃないから


プロローグ


自分を肯定することは自分にはできない


だから、彼らは徒党を組む。


空気という実態や感情を持たないものを崇拝し


何かに縛られ、


何かにレッテルを貼ることで 自らを肯定する。


だとするならば、


それを半ばあるいは強制的に 強いる『仲間』


というものほど強大で恐ろしいものは無い 。


だがしかし、


その『仲間』というカテゴリーに入ることは


ハイリスクハイリターンなのである。


カーストの中でトップでは無かったとしても


中の上、中の下くらいまでならば


楽しく、比較的安全に過ごせるだろう。


しかし、


リスキーなのはカーストの下になった場合だ。


いじる、冷やかす等はカーストトップにのみ


許される崇高な遊びでしかなく


その生贄となるのは下の身分のものだけ。


いわばあれだ。


目立ってる人気者が


根暗なメガネ君を冷やかしたりしてるのは


貴族が娯楽のために奴隷を殺すみたいなのと一緒だ。


「オタクって中身無いのに難しい言葉使ってるような小説好きだよな」


呆れ顔で首を降っているのは春吉杏子。


肩ぐらいまでのショートヘアに綺麗な二重


ボーイッシュな雰囲気の彼女はそこはかとなく


魅力的で、実際ファンクラブなるものが有るらしい


「難しい言葉よくわかんな~い~」


そしてこの方、おさげが特徴的な


いかにもお嬢様って感じの


天然ふわふわ系美少女ちゃんは三雲詩織ちゃん。


つーか、杏子×詩織の同人誌とか売ってないですか


全力Bダッシュで買いに行くんですけど


カップリングまじで神か。


「変なこと言ってる時間があったら手を動かせよ」


杏ちゃんの言う通りではあるのだが、


最近ずっと雨続きでアンニョイな気分。


今日は晴れてるけど。


「ふーい」


はーいと言ったつもりだが、


なんとまあ気の抜けた返事になってしまった。


もうすぐ、文化祭が始まる。


私達のクラスは脱出ゲームをすることになっている。


カップルが困難を乗り切って生還!


吊り橋効果…みたいな?


それはお化け屋敷だよね。


うん、わかってる 。


ただ、それは全力でご遠慮願いたい。


私、そういうの怖いの。


私が言っても可愛くねえわ 。


「あ、もうそろそろ下校の時間かも~」


おっと、急がなくては。


私達は、脱出ゲームのための壁というか仕切りを作っている。


とは言っても、


ダンボールにペンキで色を塗る単純作業だ 。


吊り橋効果で仲良くなったカップルを見て


色々と妄想する予定だったのだが、


教師の連中から危ないことは駄目だと


クラスの連中が出した案はほぼ却下された。


手錠とか縄とか提案したの誰ですか、私だよ。


ということで、私達ができることは


黒い壁と薄暗い部屋だけという


なんとも味気ないものになってしまった訳である。


でもまあ、


準備していくとこんな味気ないものでも


凄く上出来な感じがしてくる。


「ほら、ダンボール持っていくよ」


杏ちゃんはそういうと凄い数のダンボールを一気に持ち抱えた。


「杏ちゃん、力持ち~」


確かに、詩織の言う通りだ。


あんたはあれか、ハルクか。 緑の巨人か


「たしか明日授業午前中までだったよね!」


午前までしか授業が無いってホームルームで


先生が言った時は先生が神様かと思ったよ。


「…って菜月、文化祭終わった2週間後にはもうテストだぜ?わかってんの?」


そして、マイ天使、杏子様の有難いお言葉を頂きました。


っていうか、なんで毎度毎度、


都合の悪いタイミングでテストをぶっこんでくるかなぁ…


ゲームのイベントとかも大体テストと被るんだよ


これは国家の陰謀ではなかろうか


などと考えながらダンボールを片付けに向かう。


「これどこまで持っていけばいいの?」


いくらダンボールが軽いとはいっても


あまり長時間持ってると腕が疲れてくる。


「えっとね~たしか3階の使ってない空き教室だよ~」


「それどこよ……」


「ここだ。」


ノックも失礼しますも言わずにドアを開く杏様。


優等生キャラが早くもぶれてきてるよ


その後、何事も無く片付けを済ませた私達は


それぞれ帰路についた。


第1章


六月上旬。梅雨の訪れを全く感じない、


晴れた日の午前六時前


学校に行かなくてはと


重い足取りで洗面所へ向かう。


今日は文化祭の前日。


昨日から授業は短縮になっており、


午後から最後の準備に取り掛からなければならない。


コツコツやってきたが、


正直完成させられるかはわからない。


私は、そんなことを五秒くらい考えた後、


つい先日買いためた同人誌の山を


誇らしげに眺めながら制服に袖を通した。


待っててね。


文化祭が終わったら絶対読むからね


可愛い娘達!!


愛しい愛娘達との別れを惜しみながら


自転車の鍵を取って自転車小屋に向かった。


「うぃーっす。おはよー遅い」


「杏ちゃん。おはよう!」


実は杏ちゃんとは、昔からの長い付き合いで


親同士も仲が良い。


腐れ縁と彼女は言うけれど


実際、


友達の少ない私にとっては唯一無二の存在だ。


「なに?気持ち悪い顔して」


朝から毒が体に染み渡ります……。


「ほら、さっさと行くよ」


自転車を運転する。


晴れた日の早朝は清々しい気分になる


先ほど浴びた毒が


キアリーも顔負けの勢いで消えていった。


すげえな太陽


でも、昼間になるとちょっと暑いな。


やっぱりあんた駄目だわ


「杏ちゃんは当日の担当は何?」


「呼び込みだなプラカード持ち歩いて宣伝。」


ちょっと待て。何か楽しそう


私なんか、脱出ゲームの出口で人数数える係だよ。


「楽しそう……」


「そうでもないだろ お前の方が楽そうでいい」


いや、もうなんかくたばれ


あー、信号に捕まってしまった。


絶対に捕まる信号ってあるよね


何なんだろうね、


道路交通省に恨みでもかってるのかな私。


「冗談だって!そんなあからさまに落ち込まれると気が狂うだろー」


そういいながら杏ちゃんは肩を叩く


割と痛いんですが、これ


信号が青になった。自転車のペダルを踏む。


無駄話が多かったせいで遅刻すれすれじゃん!


あ、私が家を出るの遅かったからか


学校に着くと杏ちゃんは


職員室に用事があると言って行ってしまった。


しょうがないので一人で自分のクラスに入ると


クラスメイト四、五人が


それぞれの時間を過ごしていた。


そういえば四時間目に英単語テストがあったんだっけ


私は単語帳を開く。


だが、範囲がわからない


クラスメイトは確かに居るが、


こういう時に限って普段話さない人達ばかりだ。


……多分、ここの範囲でいいでしょ


「疲れましたわ~」


うわ、最悪だ。


私はあからさまに不機嫌な顔になる。


私は、基本的にいつもの二人以外に


友達はいないし作ろうとも思わないが、


心から嫌ってるやつはいない。


でもあいつだけは例外だ。坂上メイ。


彼女はスクールカーストの頂点に君臨する女王


常に背後には親衛隊のような人達がついている


容姿端麗。頭脳明晰。文武両道。


彼女は完璧だとみんなが口を揃えて言う。


いやいや、


あんなわがまま姫のどこが完璧なんだ。


関わるとめんどくさいことになりそうなので


私は単語の勉強を中断し寝たフリをする


「早野さん、おはよう」


寝たフリを決め込んだのにわざわざ話しかけてくる。


そこまで大事な用事でもあるのだろうか、いやないだろう。


昨日習ったばかりの古典の反語を


さっそく使える私、天才か。


「おはよう。坂上さん 何か用?」


私はできるだけ


苦手意識が伝わらないように返事をした。


「脱出ゲーム用の仕切りは完成したのかしら?」


「まだ終わってないけど、でもあと少しだよ」


「そう。それは結構なことね それで、別件なんだけど…」


そう言って、坂上メイは少し間を置いて


「杏子さ…いえ、春吉さんはどこ?」


なにか今言いかけた?


まぁ、今はこの話を終わらせることが最優先か。


「職員室に行ったよ。なんか、用事があるみたい」


「そ。」


そして、彼女はツカツカと


教室を出て廊下を歩いて行った。


もちろん、親衛隊も一緒に。


そして、ガラガラと音を立てて


扉が開かれしーちゃんが出てきた。


「おはよ~」


「おはようございますであります。」


しーちゃん今日も可愛いよぅーっっ


どれくらい可愛いかって?


この私が敬語で挨拶してしまうくらい可愛い。


「なんで敬語~?」


新しい遊び~?と笑いながら


カバンから教科書を出して机の中に入れる。


「そういえば、今日は一人一個ずつクイズのネタを考えてくるんだったよね~」


あぁ、すっかり忘れてた。


クイズかーなんかいいの無いかな………。


「なっちゃんは当然面白いの考えてきてるよね~」


ニコニコした顔から発せられた言葉は


裏の意味があるような気がしてならない。


天使が一気に悪魔に見えてきた。


堕天使か、かっこいいな


「あ、当たり前じゃん!例えばね……」


失敗は許されない。


これが一球入魂、


私の全身全霊をかけたクイズだっっ!!!


「入れたのに出したことになるものってなーんだ?」


あれ、私今なんて言った…?


「………。」


しーちゃんがポカンとしてる。


いや、待て今のは誤解だ。断じて違う。


誰かが私をのっとったのだ。


「ということは無意識にそんなことを言ってしまえるわけだな…」


そう言って扉の前に杏ちゃんが立っている。


いつからそこに?!


「わかんない~難しい~」


しーちゃんは真剣に考えていたようだ。


よし、バカだ。ピュアバカだ


「答えは~??」


「答えは手紙でしたー」


しーちゃんはおぉっ!と感嘆の声をあげている。

「そういえば、坂上さんが杏ちゃんのこと探してたよ」


「え?そうなの?」


どうやら、坂上さんは出会えなかったらしい。


行き違いになってしまったのか、可哀想に。


そうこうしてるうちに


クラスの半分くらいは席についていた。


帰宅ラッシュならぬ、登校ラッシュね


まだ、六月とはいえ昨日までの雨でジメジメする。


ゆるま湯にずっと浸かってるような、


水圧で身体が動きにくい感覚。


気だるげが伝染して


街の中が大きな露天風呂になってる。


今日も暑い……。


もうすぐ、朝のホームルームが始まる


ーーーーーーーー


「死ぬかと思ったよーっ」


私は安堵のため息をつく。


今日、英単語テストがあることを


すっかり忘れてしまっていたのだ。


それもこれも坂上のせいだ。


と無理やり自分を


正当化していく私のスタイル クソだな。


まあ、そこで急遽、


杏子にヤマを張ってもらった


それがなんと、全て的中。杏子様々である。


「いや、まさか私も全部当たるとは…」


いやいや、謙遜すんなって。


ふと、教室を見回すと


しーちゃんが頭を抱えている


「詩織、何点だった?」


「……0。」


おっと、聞き間違いか?


あんなに真面目なしーちゃんが0……?


「お前が0なんて珍しいな」


あからさまに斜め下を見る詩織。やや沈黙が流れる


杏子選手。地雷を踏んだかーッッ!


「ごめん。流石に失礼だったな…」


おぉ、さすがの杏子選手も謝ったか。


いや、この子は根はいい子なんだようんうん。


「いや、違うの~ただ、テストの範囲を間違えて~」


「まあ、そういう時もあるよな」


杏ちゃんはそう言って伸びをした。


確かに授業は短縮だが疲れはいつもと変わらない


「くっそあの数学のヤローいつもわざとらしく私を当てやがってええ」


「まあまあ~しょうがないよ~」


詩織さん?何がしょうがないのか


原稿用紙30枚くらいのレポートを提出願いたいね


「くだらないこと言ってないで。弁当食べたら、私達はダンボールの塗装。」


「了解~」


淡々と午後の予定について話していく2人は


やり手の会社員さながらだ。


いや、本物の会社員なんて知らないけど


あれ、今私、置いてけぼり?


「そういえば、隣のクラスはカフェするんだって?」


「かっこいいねえ~」


「あ、だったら杏ちゃんとしーちゃんメイド服になってよ!そうすればっ……ぐふぅ」


杏子様の豪快な右ストレートが


菜月の腹にクリティカルヒット。


あ、やばい。吐き気が…


朝のご飯が胃の中から下界へと解き放たれてしまう。


まだ、時期が来てないからね封印は解かないけど


その時期は2度と来ないと思うが。


きっと、多分、メイビー 。


「脱出ゲームにメイドがいるか馬鹿!」


ごもっともでございます。


机をくっつけて私達は弁当を広げる。


「いつも思ってるんだけど杏ちゃんのお弁当美味しそうだよね~」


「ありがとう。私もいつも思ってるんだけど詩織の弁当は量が多いな」


詩織さんや。


そんな眩しい笑顔で重箱を出さないでおくれ


見てるだけで胃がもたれそうなんだけど……。


「杏は確か手作り弁当だったよね」


「手作り!?」


バンッと机を叩き詩織が立ち上がる


その顔はいつもの詩織様スマイルではなかった。

「あんずちゃんの手作りお弁当…」


下を向き、肩をわなわな震わせている。


「もしかして、私の弁当食べたいのか?」


「っ…!!頂きますっ!!!」


半ば強引に杏の弁当を取り上げ一瞬で平らげてしまった。


「最高……♡」


目がとろーんとなって恍惚の表情を浮かべ満足している。


なんだかすごい卑猥だよ詩織ちゃん。


そして、杏は苦笑い。


まさか自分の弁当を全て食べられてしまうとは


思っていなかったのだろう。


「の、残りの弁当はどうするんだ?」


「あっ、そうだね食べなきゃ~」


そういって重箱の蓋を開けてもりもり食べ始めた。


もうお気づきだとは思うが、


詩織ちゃんは底無しの大食いである。


華奢な身体のどこにあの量が入っていくのかわからない。


「むしろ本人よりも弁当の方が体積大きいだろ…」


……おっしゃる通りです。


結局私は見ているだけでお腹いっぱいになり


あまり食べられなかった。


このことが後に大変な出来事を巻き起こすとは


誰も知る由がなかった


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1件コメントされています

1: 中野 唯 2017-02-02 17:46:27 ID: azjW5zTl

中野唯です。
こちらの不手際でアカウントが消滅致しました。
なので、新しく作り直しました
御手数ですが、今後は新しい方で活動していきます。


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