2017-02-12 00:04:14 更新

概要

ごく僅かですが、ちょっと付け足しておきました。今日から2月分書いていきますよ。


前書き

何も言うことはありません
読者様が考えたことに、とやかく言う気も資格もありません。



謹賀新年





提督「新年、明けまして…」



一同

『おめでとうございます』



提督「今年もどうぞよろしく。」



艦娘一同『よろしくお願いします』



卯月「とまあ、堅苦しい挨拶はこのへんにしておいて、宴会始めるピョン!!」



艦娘一同『さんせーい!!』




新年を迎えたということで、ここ名も無い鎮守府では、去年忘年会をやらなかった代わりに新年会が執り行われていた。




提督「俺、絶対いらなかったよな…」



扶桑「まあまあ、新年の挨拶はしっかりしておかないといけませんし…ね、山城?」



山城「大体の子達は早く宴会始めたくてうずうずしてましたけどね。」



提督「だから遠慮したのに…」



叢雲「でも扶桑の言う通りよ、いつも顔合わせてるし、ここが規律ゆるいからって、挨拶くらいきちんとしないと。」



提督「まあ、それもそうか・・・というか、叢雲は寝てなくていいのか?まだ点滴外れてないだろ。」



叢雲「無理のない範囲ならもう食べたりしていいらしいわ・・・それに、正月くらい家族で一緒にいたいじゃない。」



提督「辛かったら言えよ、お前にはできるだけ早く復帰してもらわないといけないからな。」



叢雲「気遣いはありがたいけど、少しは言葉を選びなさいよね。」



提督「辛いんだよな、悪い。俺もまだまだだって事でそこは許してくれ。」



叢雲「もう、調子いいんだから。」



不知火「叢雲、肩掛け持ってきたのでこれ使ってください。」



叢雲「あら、ありがとう。気が効くわね、不知火。」



提督「不知火お前いつのまに…!というかお前ももう大丈夫なのか?かなり派手にやられたって聞いたんだが…」



不知火「ご心配には及びません、幸い大事には至りませんでしたから。ある程度の傷は残ってしまうそうですが、日常生活に支障はきたさないということです。




提督「そうか、それは何よりだ。あの時は叢雲より重症だったからな、正直助からないかと思ってた。」



山城「ねえ提督、その子が去年新しく配属されたって子?」



提督「ああ、先月初めて会ったんだ。」



不知火「不知火です、御二方のことは兼ねてから耳にしていました。」



提督「あれ、そう言えば俺報告してたか?」



叢雲「気付いたらいつの間にか広まってたわよ。別に隠すことじゃないからいいけど、どこから漏れたのかしらね?」



不知火「私は叢雲から聞きましたが。」



叢雲「え、嘘!?私そんなこと言った

!?」



不知火「聞いている側が恥ずかしくなるほどの惚気話を延々…」



叢雲「わー!違うの、あれは違うの!だから止めてそれ以上はダメ!」



扶桑「あら、まあまあ」



山城「へえ、何て言ってたの?」



不知火「司令官は一見さえないし、そこまで用兵が上手いわけでもない、でもいつも・・・」



叢雲「ホントにダメったら!!止めないと本気でしばくわよ!?」



ポーラ「ほうほう、これが日本のオニヨメですか〜♪」



叢雲「誰が司令官を尻に敷いてるって何言わせるのよ!」



ポーラ「あははは〜これが日本の伝統、ノリツッコミ〜面白〜い♪」



叢雲「えっと、誰…?」



ポーラ「あ、初めまして〜ポーラで〜す♪」



扶桑「海外からいらした方なの、とっても愉快で素敵な人よ。」



叢雲「海外艦…そう、まあよろしく・・・って、あなた何引きずってるの?」



ポーラ「あ、テイトクのことですか〜?さっき少しだけ借りてたので、返しに来ました〜♪」



叢雲「いつの間に!?ていうか、まさか飲ませたんじゃないでしょうね!?」



ポーラ「はい〜♪テイトクのお酒嫌いを克服してもらおうと思って〜♪」



叢雲「完っ全に酔いつぶれてるじゃないの!!いったい何杯飲ませたのよ!?」



ポーラ「いや〜、テイトクって意外と飲めるんですね〜、つい沢山飲ませてしまいました〜♪」



叢雲「司令官のアルコール耐性の低さ知らないの!?アル中で死ぬわよ!?」



山城「姉様大変!早くお医者様に連れて行かないと!」



扶桑「そうね、どこかに担架でもないかしら…」



卯月「司令官のピンチにすかさず参上!うーちゃんが来たからにはもう安心ピョン!」



叢雲「なんであんたも酔ってるのよ!」



卯月「さあ司令官、思いっきり吐き出せー!!」



叢雲「吐かすなー!!」



新年早々死に目にあった提督、これから始まる一年は彼にとって前途多難なものとなるのは間違いないだろう。





ーーーーーーーー




願い事は何ですか?





提督「うへぇ、初詣って案外混むもんだな。」



卯月「司令官は人が多いところは苦手ピョン?」



提督「そういうわけじゃないんだが…こう、THE人混みみたいなの見るとやるせなくなる。」



水無月「あ、わかるなその気持ち。人が多いのは賑やかでいいけど、多過ぎると落ち着かないよね。」



提督「そうそう、このパーソナルスペース侵されまくりってのがちょっといただけないというか。」



叢雲「さっきから私のパーソナルスペース侵すどころか、ずっと背中に密着しているのはどうなのかしらね?」



提督「こうでもしてないとはぐれるだろ、叢雲は目立つ髪の色してるとは言え、背はそんな高くないんだから。」



叢雲「後ろからずっと抱きつかれたままだと歩きづらいのよ!」



提督「手を繋ぐにしても、両脇は既に卯月と水無月とで埋まってるからな。必然的にこうなるわけだ。」



水無月「あ、それなら水無月が代わってあげようか?ちょうど寒くなってきちゃったんだ〜。」



叢雲「え、あ…うん、別に構わないけど・・・」



水無月「ありがとう!じゃあ失礼して…」

もぞもぞ



提督「おっと、人の足踏まないようにな。」



水無月「大丈夫、はぁ〜むららんのおかげですごくポカポカ。」



提督「そうなんだよ、叢雲抱いてるとあったかくてな。俺一押しの即席カイロだ。」



叢雲「ちょ…!人をカイロ扱いしないでちょうだい!それに、あなたまでむららんなんて呼んだりして!」



水無月「あれ、金剛さんがそう呼んでたんだけど…もしかしてこれがあっちでの通り名じゃなかったの?」



叢雲「当たり前じゃない!そんな変な呼び方するのは金剛だけよ!」



卯月「えー?うーちゃんは可愛くていいと思うピョン。」



提督「だってよ、あだ名候補にしておくか?むららん。」



叢雲「あんたまで…恥ずかしいからやめて!」



提督「はは、そう睨むなよ割と怒り顔怖いんだから。」



叢雲「誰のせいよ!誰の!」



水無月「まあまあ、夫婦漫才はそこら辺にしてここ入りなよ。水無月はもう十分あったまったから。」



叢雲「いいわよ、私のことは別に。」



卯月「え〜?じゃあうーちゃんが代わりに入っちゃおうかな〜?」



提督「俺はどっちでもいいぞ、その代わり狭いからどっちかは入ってくれ。」



叢雲「入りたいなら、入ればいいじゃない。」



卯月「そお?じゃあうーちゃんもおじゃましまーす。」



提督「痛っ、足踏むなって。」



卯月「ごめんピョン、足場が少なかったからつい…」



提督「気をつけろよ。で、どんな塩梅だ?」



卯月「あ〜、水無月ちゃんとむららんと司令官の熱でぬっくぬくピョン〜。」



水無月「ね〜、本当にあったかいよね。こんなにあったくて居心地いいのに、なんでむららんは嫌なのかな?」



卯月「さあ〜、うーちゃんにもちょっと理解できないピョン。」



叢雲「あーもう、うるさいわね!わかった、わかったからそこどきなさい!」



提督「はは、相変わらず素直じゃないやつ。」



叢雲「もう、あまりからかわないでよ…」

ムス



提督「はいはい、悪かったよ。撫でてやるから許してくれ。」



叢雲「あっ、ちょ!やめなさいよ恥ずかしいったら!」



水無月「あはは、むららん嬉しそうだね。」



卯月「司令官といる時のむららんが1番楽しそうピョン。」



その後、賽銭箱の前に来るまでずっと膨れ面をしていた叢雲を伴って、ようやく行列の先頭にたどり着いた。初めてのことで戸惑ってる提督に見かねた叢雲が手順を軽く教えてくれた。なんだかんだと、面倒見はすこぶる良い所が彼女の美点だ。



提督 (しまった…何願い事するか考えてなかったな・・・まあいいや、今年も誰かが欠けることなく鎮守府を引っ張っていけますよう。)



卯月「司令官、早くしないと置いてっちゃうピョン。」



提督「うおっ、いつのまに…!」



少し遅すぎたようだ。後ろの人に軽く謝って、すぐさま卯月達を追いかける。



提督「いやはや、あんまり慣れないことはするもんじゃないな。」



叢雲「もう、そんなに叶えてほしい願いが沢山あったの?」



提督「いや、叢雲いじるのに夢中で願い事何にするか考えてなかった…」



叢雲「もう、私のせいにしないでよ。」



提督「あはは…まあそんなことより、みんなは何をお願いしたんだ?」



水無月「ええ〜司令官、乙女にそれ聞いちゃうの〜?」



提督「男ってのはな、そういうのが純粋に気になるもんなんだよ。」



水無月「へぇ〜じゃあ司令官は何てお願いしたの?」



卯月「あ、うーちゃんそれわかっちゃうピョン!」



提督「まさか、うそだろ…って言うとフラグになるよな。」



卯月「どうせ司令官のことだから、『誰も欠けることなく鎮守府の運営ができますように』って感じピョン?」



提督「惜しいというか、かなり要点抑えられてるところがお前の恐ろしいところだよな。」



水無月「すごいね!本当に当てちゃった!」



卯月「まあ、司令官のバディならこのくらい余裕ピョン。」



提督「お見それしたよ…で、思いっきり当ててくれたお前は何て願い事したんだ?」



卯月「えーと、まあ今年もみんな仲良くできますようにって感じピョン。」



水無月「あ、水無月もおんなじかな。司令官について行きたいってのも付け足しといたけどね。」



提督「水無月、お前泣かせてくるな…」



卯月「うーん、男の涙ってあまり絵にならないピョン。」



提督「そこはほっとけ…で、叢雲は?」



叢雲「え、私?」



提督「2人は話してくれたんだから、順番的にそうだろ?」



叢雲「べ、別に大した事願ったわけじゃないわよ。ただ、あんたが早く戻って来るようにって、それだけ。」



提督「それだけ?」



叢雲「何よ!これ以上何を望むっていうのよ!」



提督「いや、もう少し俺への苦情があるもんだと思ってたから。」



叢雲「私を何だと思ってるのよ、流石に神社に来てまでそんなこと言うような女じゃないわよ。」



提督「そうか、ならまあ良かった。」



叢雲「良かったって、何がよ?」



提督「叢雲から直接苦情が聞けるってことが。」



叢雲「バカ、苦情言われたいなんてあなた変態なんじゃないの?」



提督「いつものお前が好きだってことだ、側で叱ってくれのなんてお前か山城くらいしかいない。」



叢雲「そんなことばかり言っていたくないこっちの身にもなって欲しいものね。」



提督「山城もだけど、叢雲の場合偶にデレがあるからな、そのギャップがたまらない。」



叢雲「もう、いいように言ってくれるんだから…まったく、私を初期艦に選ばなかったら今頃どうなってたのかしら。」



提督「さあな、俺には想像もつかない。」



水無月「司令官!見てみて、屋台やってるよ!」



提督「お、じゃあ少し寄ってくか。」



叢雲「あ、ちょっと!・・・もう、すぐそうやって。」



叢雲 (こっちは、あんたともう少し一緒にいたいのよ。)





ーーーーーーーーーーーーーーーーーー






せいさい





金剛「HEY!テイトクゥー!I'm Home!」

バン!



提督「おう、おかえり・・・って、お前の家はここじゃないだろ。」



金剛「テイトクのいるところ全てが私のHOMEデース!」



提督「そう言ってくれるのは嬉しいんだけどな…いいのか?ここ最近毎日通ってるけど、あっちでやることないのか?」



金剛「ムラランがまだ戻りませんからネー、Paperworkも霧島がやって、くれてるデース。」



提督「もしかして、邪魔だとか言われたのか?」



金剛「テイトク、何故それを…」



提督「いや、なんとなく」



金剛「うぅ、テイトク聞いてくだサーイ!霧島ったら私が役に立たないから勝手にどっか行って遊んでろってー!」



提督「あらら、図星というか妹にそこまで言われてしまったか…」



提督「それで毎日ここに通ってるわけだ。」



金剛「私だって、その気になればできるデース・・・」



提督「まあ金剛は机に向かってるより、海の上の方が似合うからな。」



金剛「そう言ってくれるのは嬉しいけど…やっぱり役立たずは嫌デース。」



提督「ふむ、そうさなぁ・・・じゃあ少し勉強してみるか?」



金剛「Study…デスか?」



提督「俺は今手が離せないけど、いい先生になってくれるやつを知ってるし、丁度前々から教えようかと思ってたやつもいるんだ。」



提督「どうだ?ある程度できるようになれば、俺があっちに戻った時に秘書艦を頼めるようにもなる。」



金剛「秘書艦…!やりマス!やらせてくだサーイ!」



提督「決まりか、じゃあ昼過ぎから始めよう。もうすぐ遠征から帰ってくる頃合いだからな。」



金剛「遠征・・・?」



提督「そう、遠征・・・さて、今日は間宮さんの所行くって約束してたんだ。ついて来るか?」



金剛「久しぶりにテイトクのLunchが食べたかったケド・・・でもデートみたいだからOKデース!」



提督「勝手知れた場所でデートって言われてもな…まあ、いいか。」



2人は知らない、この時ドアの向こうから非常に濃密なドス黒いオーラが放たれていたことを。





ーーーーーーーー





卯月「そこ、数え漏れしてるピョン。一枚でも見落せば後ですっごく面倒くさくなるから、常に気を緩めないこと。」



金剛「うう、Sorry…Ms.卯月。」



睦月「卯月せんせ〜い、この書類どっちに分類すればいいかな…」



卯月「だから、そうじゃなくてうーちゃん先生ピョン。100歩譲ってミス付けは許すけど、次から気をつけてほしいピョン。」



ヒトサンマルマル

執務室ではうーちゃん先生こと、筆頭補佐艦の卯月がスパルタ(?)な書類仕事の実技講習中だ。受講生は先程勉強したいと言った金剛と、こう言ったことに自信がないという睦月だ。睦月に関しては、別に手伝わせていて不便を感じたことはないが、彼女なりに姉としての矜持があるらしい。まあ不便していないと言っておいてなんだが、若干2名を除いて睦月の事務処理能力はワーストであり、そのことで如月に笑われてしまうのが気にくわないのだとか。(提督は、如月が睦月のことを笑うのは、けっして馬鹿にしているからではなくて、微笑ましくて仕方ないからだということを知っている)



睦月「痛っ」



金剛「睦月、Are you OK?」



睦月「うん、でも指切っちゃった…」



卯月「大変、司令官バンソーコー!」



提督「指切ったって?わかった、ちょっと待ってろ。」



金剛「Wate、それなら私が持ってマース・・・はい、これで大丈夫デース。」



睦月「ありがとう金剛さん!」



卯月「でも消毒とかは?」



提督「紙で皮切ったくらいなら大丈夫だろ、出血とかはないな?」



睦月「うん、血は出なかったよ。」



提督「なら大丈夫。にしても、絆創膏持ってるなんて女子力高いな。」



金剛「テイトクがケガした時にいつでも使えるようにしておいただけデース。」

テレテレ



卯月「ますます女子力高いピョン…」





ーーーーーーーー





一方、ドアの向こう




山城「あの女…」

メラメラ



扶桑「覗き見はダメよ・・・と言いたいところだけど、これは流石に捨て置けないわね…」





ーーーーーーーー





戻って執務室



提督「う、なんか寒気してきた…」



卯月「大丈夫ピョン?まさか風邪ひいちゃったピョン?」



提督「さあ、でもここにいたらいけない気がする…今日の分は明日に回そう、俺は部屋行って休んでくるな。」



金剛「1人で大丈夫デスか?よければ私もついていきマース。」



提督「まだ授業だろ?俺のことは心配しなくていい。卯月、あとは頼んだ。」



卯月「了解ピョン。」



睦月「司令官お大事に〜。」



提督「ああ、2人とも頑張れよ。」

ガチャ



バタン




提督『ギャアアアアアアアアアア!!』




卯月「司令官!?」




その日、提督の姿を見たものは誰1人としていなかったという。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーー




咎人




ギィィィィィ……



?? キョロキョロ



提督 スヤァ…( ˘ω˘ )



キィィバタン…



?? コソコソ…



ギシっ



提督「んにゃ…」

ゴロン



?? ビクッ



提督 スヤァ…( ˘ω˘ )




ギシ……ギシ……




提督 スヤァ…( ˘ω˘ )



??「よい、しょ…」

ノシ



提督「ん、んん……」



??「……ごめんなさい、司令官…」

ギラリ



ドスッ!



提督「ぐあっ・・・!!」



ズボッ…



??「はぁ…はぁ…はぁ…」



??「また、殺しちゃった……」




提督「……誰を殺したんだ?」



?? ビクッ!



提督「おっと、逃すかよ!」

ドスン



??「きゃあ!!」



パチン



如月「うっ……!」



提督「やっと正体見せてくれたな、如月。」



如月「どうして…!」



提督「3つの意味に対して答えてやろう、まず何でお前の正体を知っていたか。お前だけは経歴が真っ当だったからな、何をやらかしたわけでもなくここに来た。だから調べてもらったんだよ、やたら個人情報持ってるやつに、地下暮らし始めるずっと前にな。」



提督「次に、なんで来るとわかってたか。ここ最近、お前は積極的に俺にアプローチしてきた。」



如月「それだけで日付も割り出すなんて…」



提督「いや、ここ最近俺は毎日扶桑と山城を代わり番こに部屋に呼んだ。ご丁寧にキッチンのカレンダーに印を付けてな。そして今日はどちらもいない日だ、俺だったらガードが薄い上に連日の相手で疲れてるこの日を狙う。」



如月「そう、バレバレだったんだ…」



提督「お前が頭良かったら、とっくの昔に命なんて諦めてた。」



如月「・・・」



提督「最後に、何で死ななかったか。中に防弾チョッキ作るような布で簡単に作ったエプロン着て、その外側にタオルを巻いてるんだ。ペンライトの一つでも持ってくれば出血してるかしてないかすぐにわかったのにな。」



如月「もういいわ、許してもらえると思ってないから。縛るなり、殺すなり、司令官の好きにして…」



提督「何もしない、その代わり話してもらおうか。なんでお前が今まで何人も司令官達を殺してきたのか。」



如月「・・・」



如月から手にしていたペーパーナイフをもらい、拘束を解く。少し力強く握り過ぎてしまったようで、彼女の手首は少し赤くなってしまった。



如月「・・・みんな、大切なひとだったから。」



提督「大切…?」



如月「最初の司令官にね、約束を破られちゃったの。絶対にここで待ってるから、必ず帰ってこいって言ったのに・・・」



如月「なのに、その人は崖から飛び降りて死んじゃった・・・好きだった人が病気で亡くなったんですって…でもだからって、私との約束破ることないのに…」



如月「それから、私は他の人の所に行くことになって…そこの司令官も、すごく優しくて素敵な人だったの。」



如月「でも、あの人と同じこと言うものだから、怖くなっちゃって…そしたら、殺すしかないと思っちゃって・・・」



提督「殺したのか…?」



如月 コクン…



如月「そのあと、私はその鎮守府を抜け出して、また新しい人に拾ってもらったわ…でも、そこでも怖くなっちゃって・・・」



数年前から、各地の鎮守府で数ヶ月おきにそこの提督が何者かに刺殺されるという事件が何度も起きていた。依然として犯人の行方も正体もわからないまま月日が流れ、いつしか提督仲間の間では、13日の金曜日には必ずどこかの提督が殺されるという都市伝説が出来上がっていた。



如月「そのうち、会う人みんな殺したくなっちゃって…殺せば、ずっと心の中で一緒にいられると思うようになって・・・」



如月「ごめんなさい!謝っても許されないのはわかってるけど、もう私怖くて仕方がないの…!」



提督「・・・如月。」



如月「お願い司令官!私のこと殺して!じゃないとまた司令官のこと殺そうとしちゃう!」



提督「如月!!」



如月 ビクッ!



提督「・・・これ返すから、持ってろ。」



如月の手に、先ほど預かった包丁を手渡す。そして、上に着ていたものを全て脱ぎ捨てた。



如月「司令官、何してるの…?」



提督「それで、俺のことを刺せ。俺がお前といつまでも一緒にいてやる。」



如月「え、なんで…なんでそんなことするの?」



提督「いなくなるのが怖いんだろ?じゃあ俺は死んでいつまでもお前の側についててやる。その代わり、もうこんなことは止めろ。」



如月「え…待ってそんな、できない……」



提督「他の奴らには悪いが、今1番嫌なのは不安で仕方ないお前に何もしてやれないことだ。」



如月「いいの、もう…私はもういいから……」



提督「どうした?なんなら手伝ってやるぞ。」



如月「もういいの、いいから……きゃっ離して!!」



提督「離さない、お前を救ってやりたい。」



如月「だめ!なんでそんなこと…!いやっ離して!!」



如月のナイフを持っている方の手を掴んだ提督は、抵抗する如月を物ともせず、そのまま刃先を自分の胸元にあてがった。



提督「うぐっ……」



如月「いや、やめて!血が、血が……」



提督「はぁ…はぁ……やれよ、あと少し刺せば終わりだ・・・」




如月「いやぁ!!殺したくない!もう殺したくないの!!」

ばっ!



提督「……!?」



カランカラン…



如月「もういいの、お願いだからやめて…大好きな司令官をもう失くしたくないの…!」

ギュッ



提督「……なら、最初からそうしておけよ。なんで守らなきゃいけない相手の血で、自分から手を汚さないといけないんだ。」



如月「ごめんなさい…」



提督「俺はいい、ちゃんと本音を話して、俺のこと生かしてくれたからな……でも、今までお前から守らないといけない人を奪われた奴は大勢いるんだ。」



如月「ごめんなさい…ごめんなさい…!」



提督「謝るのは、俺にじゃないだろ?厳しい言い方だけど、俺に謝ったって今まで犯してきた罪は誰も許しちゃくれない。」



如月「でも、私どうすればいいのか、わかんない…!」



提督「明日、お前を憲兵に引き渡す。お前がしてきたことを考えれば、相当苦しい思いをすることになるだろうな…」



如月「・・・」



提督「でも、絶対に解体だけはさせない。俺もできる限り擁護する、だから罪を償ってこい。無事出られるようになったら、必ず迎えに来る。」



如月「本当に…?」



提督「不安だろ、また破られるかもしれないから。確かに、無期懲役とかになったら約束を守れないな。それか俺が不運の事故で明日死ぬかもしれない。不治の病ってのにかかって迎えに行けなくなることも考えられる。あとはそうだな、あの3人の内1人を俺のせいで死なせてしまったら、お前との約束忘れて自殺するかもしれない。さらに…」



如月「やめて、司令官のこと信じたいのにそれ以上言われたら……」



提督「悪い、でもそこはやっぱり覚悟してもらわないとな……でも、俺が生きてるうちは、何十年だって待っててやる。もうヨボヨボになって、ベッドから起きれなくたって、周りに無理言ってお前のこと迎えに行く。」



如月「……うん。如月のこと、忘れないでね。」




翌日、通報を受けてやってきた憲兵に、如月は連行されて行った。彼女の姉妹、特に睦月は大粒の涙を流して別れを悲しんだ。自分もついて行くとまで言われてしまったのにはかなり参ったが、最終的には自分の部屋に引き篭もるという形で受け入れた。提督は、睦月が自分に恨まれることを覚悟した。否、如月を匿うという選択をしなかった自分を責める者全員から怨嗟が詰まった石を投げられることを覚悟した。



後日、如月が査問会にかけられたと言う話を聞いたが、まだどのような刑罰となるかは未定とのことだった。彼女の罪を少しでも軽くするために何度も大本営に足を運んだが、果たしてそれがどこまで功を奏してくれるのかは誰にもわからない。




ーーーーーー




早霜「はぁ…」



早霜 (また、ですか…)



防犯カメラの映像には、憲兵によって連行されようとしている少女…如月の姿が映っていた。



早霜 (ここでは何もしてくれるなというのは…やはり無理な望みでしたか…)



早霜 (そしてやはり、また貴方が障害になるのですね…司令官……)



早霜「少し…焦った方がいいかしら…?」





後書き

挨拶が遅れました、どうも影乃です。


今回のラストに書いた話は、割と早い段階で書こうと決めていたことですが、実際に書くとかなり辛いものがありました。無駄に高い妄想力のせいで泣きそうになったのは…秘密じゃなくてもいいか。


拙い文章のせいで僕が何を思って書いたかは伝わらないことでしょう。ですが構いません、かの有名な漫画家の尾田先生は、作品を読んでいるうちは自分のことを忘れて欲しいとおしゃっていました。偶に自分を登場させてしまう僕が言うのも矛盾が生じますが、それが僕が目指す作品の形なのです。下手くそな文章を書くくせして、やたら偉そうなこと言ってますが、それでも読んでくださる読者様が僕は大好きです。


ネタバレになるおそれもありますが、この場をお借りして如月愛に溢れる読者様には、心からお詫び申し上げます。こちらの勝手なシナリオによるところとなってしまいますが、こんな作者のいいようにされた彼女が、いつか幸せになることを願ってやってください。


さて、このSSも残すところは如月の章と、弥生の章だけとなりました。なんか気が早い気もしますが、ここまで続けられたのは、少ないながらも見てくださった方々のおかげであります。最後の最後、全力で書かせていただきますので、どうぞお楽しみに。


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