2017-02-07 19:05:11 更新

まず言っておく、歴戦提督は提督ではない。彼は妖精が見えるわけでも艦娘を指揮した試しもない、しかし彼はそう呼べれてこの呉鎮守府で親しまれている。今日もショタ提督は歴戦提督に出されたお題を海図の上に船の模型を浮かべ艦隊に見立てて行う兵棋演習をもって回答する。




歴戦提督「・・・これでは問題解決は難しいかと思われます、もう一度よくお確かめください」




歴戦提督は正しい構図をもう一度取って見せた。だがそれは難解だ。普通の作戦指揮を執る将校や参謀でなければわからないものを、この齢十にもいかない子供には伝わりはしなかった。




ショタ提督「う~ん、ごめんなさい。やっぱりわかりません」




歴戦提督「そうですか、ではもう覚える必要はありません、もっと基礎的なところから始めましょう」




ショタ提督「はい、よろしくお願いします。でもすごいですね歴戦提督さんは、どうやって覚えてきたんですか?」




歴戦提督「艦船に乗ればいずれとわかってくるものです」




歴戦提督は提督ではなかった、昔、深海棲艦との開戦直後、海軍の軍人であった。あの海戦で艦隊が壊滅するあの日までは。




歴戦提督(私はいつまで生き恥をさらし続けるのだろうか?)






~20XX年海戦直後の東京海軍病院~




艦隊参謀長「長官!目を覚ましましたか!」




熟練艦隊司令長官「うう・・・ここは一体?あれ?!なぜ私は死ねていないのだ!」




艦隊参謀長「何をおっしゃいますか長官、あの時に、連合艦隊殲滅したときに引き揚げられたのを覚えていらっしゃらないのですか?その際に連合艦隊司令長官は敵にやられて・・・」




熟練艦隊司令長官「ふざけるな!何で生かしたんだ!殺せー!殺せー!」ジタバタ




艦隊参謀長「暴れないでください長官!看護!早く来んかー!」




看護兵「すぐに拘束を!」カチャカチャ




熟練艦隊司令長官「なぜ生かした、こんな失態をしてなおも生き恥をさらせというのか~!?」









~呉鎮守府~




歴戦提督(結局あれから自決できぬように拘束され病棟も移された、退院するころには抜け殻のような老体と軍籍のみを残して何もない)トコトコ




歴戦提督(既存の艦隊が意味がないと知ると大本営は新たに艦娘による換装艦隊とその指揮官の選別をはじめ、私のような老兵は役職を辞任、軍政に回るか家庭教師のまねごとをしている)トコトコ




雪風「あっ!司令官さんこんにちは!」ピシッ




歴戦提督(それにしても彼女たちは何で戦っているのだろう?国のため?民のため?戦うため?いや、生活のためかもしれないな)ピッ






雪風「司令官さんは今暇ですか?」




歴戦提督「暇だな、あと私は司令官ではない」




雪風「それなら雪風と遊んでください!あの堤防で釣りをしましょう!」




ザザーッツ




雪風「今日はとても暖かくって気持ちがいいですね!」




歴戦提督「ああ」




雪風「司令はいつも休みの日は何をしているんですか?」




歴戦提督「遺書を書いてる」




雪風「え」




歴戦提督「・・・冗談だ、これと言って何もやってない。ただテレビを見るか体を動かすだけだ」




雪風「あ、あははは、そうですよね!そうやって過ごしますよね!冗談が悪趣味すぎますよ~!」




ザザーッツ




雪風「今日はボウズかぁ、でも!また来れば釣れますよね!」




歴戦提督「ああ、そうだろうな」




雪風「もうそろそろ行かなきゃ・・・また遊んでくださいね!」




歴戦提督「ああ」







歴戦提督「そういえば飾緒はどこへしまったのだろうか?昔のように使うことはないから忘れてしまった」トコトコ




長門「む、誰かと思えば」




歴戦提督「おお、どうかしたのか?」




長門「先ほどからショタ提督が呼んでいたぞ、なんでも作戦参謀の代役がいるとか何とか、参謀なんて久しく聞いてなかったぞ?お前が吹き込んだな?」




歴戦提督「ははは、作戦の流れを説明する際に言ったかもしれないな」




長門「お前が昔の経験を教えても無駄だ、今の艦隊が出来る前の光景と今の光景では作戦室も会議の時間も全く違うものなんだからそういった事は提督に教えないでくれ」




歴戦提督「ん、心得た」






長門「なんだ、やけに今日はもの物分かりがいいな、前の時のようにこの長門が取っ組み合いをしてやってもいいんだぞ?」




歴戦提督「海軍軍人は陸さんと違って一度覚えた失態は忘れないものだ」




長門「つまらん、腰抜けとどう違うんだ?」




歴戦提督「生き残った連中に英雄などいるものか、あの艦隊決戦と呼ばれた海戦を言いたいんだろう?なんなら聞かせてやって良いんだぞ?」




長門「う、その・・・悪気はなかったんだ」タジ




歴戦提督「ふん、どうせ私は死にぞこないだ、散って逝った同期や部下の血を吸って生きるヒルみたいなものさ」トコトコ




長門「お、おい待てどこへ行く?まさか変な気を起こしたんじゃ」




歴戦提督「厠だ厠!ついて来ようとするな!」スタスタ




長門「・・・なんだあのバカは、この長門に気を使わせるとはとんでもない奴だ」






ショタ提督「あ!歴戦提督さん来てくれたんですね!秘書艦の長門に呼んでくるようように頼んでおいたんですけどご存じありませんか?」




歴戦提督「存じ上げません閣下、それよりも今回はどうなさいましたか?」




ショタ提督「はい、現在の作戦指揮の人員が貴方が教えてくれた人数よりもかなり少ないのです、その補充を・・・」




歴戦提督「必要ないでしょう、恐らくは閣下と秘書官である長門に任せることで十二分に指揮系統が維持できるようになって言るのでしょうから」




ショタ提督「で、でもそれではあなたの教えが」




歴戦提督「私はただ艦隊指揮に関する指南をしたまでです、個人で話した昔話は忘れていただいて結構ですよ?」




ショタ提督「あう、そうですか、わかりましたではこの作戦の分析をよろしくお願いします」




歴戦提督「承りました」ジロジロ




ショタ提督「あ、あの歴戦提督さん」モジモジ




歴戦提督「いかがなさいました?」ジロジロ




ショタ提督「ここに来る前は・・・第何艦隊に在籍されていたのですか?」モジモジ




歴戦提督「」ピタ




ショタ提督「あ!ご、ごめんなさい。僕としたことが言えないですよね」




歴戦提督「いいえ、構いませんよ?第二艦隊の艦隊司令長官を任されていました20XX~20XXの間だけですけど」




ショタ提督「それではかの名高い第二水雷戦隊も!最新式のイージス艦の【やまと】も!」




歴戦提督「はい、艦は変わっても70年前から艦隊と艦名だけは変わらず帝国時代の名前が残っておりました、ごもっとも、私が全部沈めてしまいしたが」ジロジロ




ショタ提督(やっぱり聞くんじゃなかった…)




歴戦提督「ふふ、思い出した。確かあの時乗っていた艦「やまと」は空母棲姫に作戦指揮室丸ごと破壊させられたんだったな、通りで病院までの記憶がないわけだ」




ショタ提督「ご、ごめんなさない」プルプル




歴戦提督「いえいえ、思い出せてよかった。それが気がかりだったものですから」ニタァ




ショタ提督「ヒッ」







金剛「というわけでマイダーリンが泣きやまないんデス、知らないデスカ~?」パキパキ




歴戦提督「し゛ら゛な゛い゛」ボロ




金剛「oh,your strong! なかなかはきませんネ~、こうなったらnextはもっとキツイやつを」




比叡「ひえ、おお姉様、もうそれぐらいでよろしいのでは?このままでは死んでしまいます!」




榛名「そうですよお姉様!本当に知らないだけかもしれないじゃないですか」




金剛「ンム~、仕方ないデスネ、今日はこれぐらいにしておきマス、でも次提督を泣かせたら~」




歴戦提督「ああ、わかったわかった、以後気を付けるよ」




金剛「気を付けるデース」




歴戦提督「ああ、痛い目に合った」トボトボ




榛名「あ、あの」




歴戦提督「ん?」




榛名「傷の手当て、榛名でよろしければ行いましょうか?」







榛名「待っていてください、今救急箱を用意しますから」




歴戦提督「あ、ああ」




歴戦提督(なぜかわからないが彼女の手当てを受けることになった、生娘の部屋に入るなど久しく経験がないから一歩も動くことが出来ん)




榛名「それじゃあ始めますね」テキパキ




歴戦提督「ああ、すまないな」




榛名「いいえ、榛名は大丈夫です。それに一度貴方とはお話がしたかったことがありましたし」テキパキ




歴戦提督「話?」




榛名「貴方はとても冷めた目をしている、それも二度と潤わない目をしていらっしゃるようですね、自分を責めているんじゃないですか?」テキパキ




歴戦提督「いや、これと言って言ってる意味が分からないのだが」




榛名「生き残ってしまった自分をです」テキパキ




歴戦提督「え」ドキ




榛名「榛名も同じ境遇でしたからわかります、あの戦いで一人だけ生き残っているのはとても寂しくて辛いですよね」テキパキ




歴戦提督「・・・」




榛名「でも、榛名は最近気づいたんです。生き残った者には、死んでいった者の遺志を伝えなければならないと」テキパキ




歴戦提督「遺志?」




榛名「はい、前の大戦の際は、多くの艦長も司令長官も、皆艦と共に死んでしまったこと、どの艦娘も気にかけているんです、そんなことを望む艦娘は誰もいない、死ぬなら自分だけでいいと誰もが思っていた」テキパキ




歴戦提督「そうか、君たちは・・・」




榛名「榛名がこんなことを言うのはおこがましいかもしれませんが、どうか生きてください。艦の元へと行こうなんて、きっとその方も望んではいないと思います」キュ




歴戦提督「榛名・・・」




榛名「傷の手当てが終わりました、そうだ!榛名は最近お菓子作りに励んでいるのですがもしよろしければ今度味見をしてはいただけませんか?」




歴戦提督「ああ、まぁ暇なら」




榛名「嬉しいです!約束ですよ?破るような勝手は榛名が許しません!」






~自室




歴戦提督「そうか、生き残った者は私以外にもいるんだな」




歴戦提督「案外、そういった者たちの話を聞けば、心の安寧を保つこともできるかもしれん」ゴソゴソ・・・zzz




歴戦提督「自分を許すことも・・・そう難しくないのかも」…zzzzz





~夢の中




亡霊艦長「総員上甲板!繰り返す!総員上甲板!」




ヴー!ヴー!ヴー!




歴戦提督「な?!どこだここは?!ゴッホゴッホ!煙が!」




亡霊艦長「ん!?長官!長官大丈夫ですか!?」ユサユサ




熟練艦隊司令長官「」気絶




歴戦提督「な、私が、なんと情けない、おい!起きろ!」




ヴー!ヴー!ヴー!




亡霊特務少尉(機関長)「艦長!無線障害のため直接報告します!機関室の浸水著しく部下の退去を願います!って、なんだこのありさまは?!」




亡霊艦長「ここにいるのは私と長官のみだ、後は先の攻撃で死んだ。お前、長官が目を覚まさないようにして退艦せよ!これは命令だ!」




亡霊特務少尉「ええ?!しかし艦長!」




亡霊艦長「長官は気負いやすいお方だ、艦隊の惨状を知れば自決するやもしれん、お前は長官を抱えて艦を出ろ、その際に総員退艦と叫んで出るんだぞ」




ヴー!ヴー!ヴー!




亡霊特務少尉「それでは艦長も!」




亡霊艦長「私はこの艦と共になる義務がある、国民より与えられたこの艦を捨ててどこに逃げれようか、いいから貴様だけ即時退艦せよ!」




亡霊特務少尉「は、ハイ!」ピシ




亡霊艦長「」ピシ




ヴーヴーヴ!




亡霊特務少尉「ふうふう」チャプチャプ




亡霊特務少尉「この木箱に長官を・・・」チャプチャプ




亡霊特務少尉「よし!上げてくれ!」チャプチャプ




救助艦船員「わかった!お前はどうする?」




亡霊特務少尉「俺はあの艦の機関室に戻り部下が残ってないか確認したらもう一度来る!それまで待っていてくれ!」チャプチャプ




救助艦船員「よし、早く来いよ!」




15分後




救助艦船員「まだこねぇなあいつ、このままじゃ・・・」




ドガーン!




救助艦操舵長「おい!大変だ!機関部のタービンが爆発したようだぞ!?」




救助艦艦長「このままでは爆発の飛来物に我が艦が当たる危険性がある、これ以上の並列接近での救助は不可能だ!すぐに離れろ!微速前進!」




歴戦提督「こ、こんなことって、艦隊が、私の艦隊が!いや、あの少尉だって」




歴戦提督「そうだったのか、これがあの時起きていた出来事だったのか・・・」





~現実、自室




歴戦提督「くそ、私だけこんな目に・・・こんなつらい思いをするならいっそあの時に」




お~い、お~い。




歴戦提督「誰だ?!そこにいるのは誰だ?!」




まだこないのか~?もういいだろ~?




歴戦提督「誰か?まさか部下たちか」




お前はなぜこない~、こっちへ来い~、もう十分苦しんだだろ~?




歴戦提督「そうだ、艦を失い、部下を死なせ、国民よりもらい受けた艦隊を沈めてしまった」ガタガタガチャ




こっちにこい~、もう休め~




歴戦提督「これで最後だ、もう苦しむ必要もない」カチャ




歴戦提督(ああ、後は口に銃口を)




〈また遊んでくださいね!〉




歴戦提督(すまない雪風、私にはその約束を果たせそうにない)




〈腰抜けとどう違うんだ?〉




歴戦提督(お前ならわかるだろう?名誉の死も遂げられない、謝罪も許されないこの環境を〉




〈勝手は榛名が許しません!〉




歴戦提督(初めから許されようと関係ない、私はもういいんだ〉カチ




「やめろぉ!」ドアバーン!




歴戦提督「長門!?どうしてここに?!」




長門「ふんぬ!」バキ




歴戦提督「銃が!」




長門「何故だ!?貴様なぜこのようなことをした!?」ガシ




歴戦提督「ぐう」ミシ




長門「せっかく生きて帰ったのだろう!?なぜそのような命を粗末にするようなまねをするんだ!?」




歴戦提督「もう十分なんだ!私は充分生きた!これ以上はいらない!」




長門「それが生きるものの言うことか!生き残った限りは務めを果たせ!それが死んでいったものへの礼儀というものだろう!」




歴戦提督「長門・・・」




長門「貴様の言い分はわからないこともない、私だってあの時は華々しく散りたかったさ、それが戦いに生きるものというものだ、だがな、それでもこうして生きている私ならば言える、どんなかっこ悪くたって、地べたを這いずって生きていればそれを生涯と呼ぶんだ!それが生きざまと呼ぶんだ!」




歴戦提督「ぐ」ドサ




長門「今日のことはショタ提督には不問にしておく、しばらく頭を冷やしていろ!」バン!




歴戦提督「く、くううう」ポロポロ




長門(昼のことを改めて謝ろうとしていたら時間がかかったが、ある意味よかったのかもしれない)テクテク




長門(問題は次は防げるかどうか、私がいつまでも付きっ切りでいるわけにもいかないからな、ここはほかの艦娘にも伝えるべきか)テクテク





歴戦提督「ふ、生き残ったやつの務め、か」




歴戦提督(やはりただでは死ねないというわけだ、私には、何かほかにやるべきことがあるのか?〉




歴戦提督「生きた私が出来ること・・・、それは一体」




雪風「司令?起きてますか?」コンコン




歴戦提督「あ、ああ雪風、今日はもう遅いから釣りは・・・」ガチャ




雪風「司令ー!」ギュ




歴戦提督「うわ!」




雪風「しなないでくださいしれー!」ポロポロ




歴戦提督「死なない死なない、一体どうした?」ナデナデ




雪風「だって、長門さんが司令が自決未遂をしたって・・・」グス




歴戦提督「うわ・・・そうきたか」




雪風「司令、つらいなら雪風に話してっ!力になれないかもしれないですけどそれぐらいのことはできますからっ!」




歴戦提督「ははは、そうか、雪風は聞いてくれるのかよし、実は~」




雪風「雪風も生き残りですよ?」




歴戦提督「なんと、雪風は大戦の生き残りだったのか」




雪風「雪風は司令みたいに死にたいなんて思ったことはありません、それでも生きて、みんなの分を笑ってやるって決めていたんですっ!」ニパー




歴戦提督「人の身体を持つといよいよ笑って生きれるな」




雪風「司令ももっと笑ったらどうでしょうっ!難しい顔なんて似合いませんっ!」




歴戦提督「そうか、その通りだな。生き残った理由を知るためにもこれも秘訣かもしれん」




雪風「ふあああ、司令が元気になって良かった、でも少し眠いです」ゴシゴシ




歴戦提督「おいおい、ここで寝るなよ?それなら私の布団で寝てろ、その調子じゃあ帰りにでも寝てしまいそうだしな」




雪風「すみません司令、あれ、入り口に人影・・・」




榛名「・・・」ゴゴゴゴ




歴戦提督「お、おお榛名、こんな夜遅くに「とぼけないでください」」




榛名「榛名、今すごく怒っています」ゴゴゴゴ





歴戦提督「あ、ああそのようダナ」





榛名「榛名との約束はどうしたんですか?そんなに榛名の菓子は食べたくないと?」ゴゴゴゴ





歴戦提督「いや、すまない、正直気が動転してこのようなことをしてしまったんだ。もうこんなことはしない」





榛名「気が動転したら何でそんなことが出来るんですか!思いっきり根を詰めている証拠です!」





歴戦提督「いや、寝ぼけていたのか皆の声が・・・・、ともかくもうしない、約束するよ」






榛名「そんな言葉は信じられません、今日は榛名が一緒に居ます」イソイソ






歴戦提督「は?」





榛名「何 か 疑 問 で も ?」ギロ





歴戦提督「いや、ない」





榛名「では榛名は明日の出撃があるので先に寝かせてもらいます」ゴソゴソ





歴戦提督(それだと私の寝る布団のスペースが・・・・)





榛名「ちょっとでも変な気を起こせば榛名も起きますから」・・・zzzzzz





歴戦提督「あ、ああ(私はどこで寝ろと?)」





歴戦提督「仕方ない、今日はソファーで寝よう」・・・・zzzz





榛名「・・・」ムク・・・テクテク、ポスン





歴戦提督「」zzzz





榛名「」ギュ、zzzzz






チュンチュン







歴戦提督「昨日は布団もなかったのに妙に温かかったな」テクテク





歴戦提督「さて、今日は艦娘が出撃中で暇だな、私にはあの羅針盤を利用した戦いはさっぱりわからんし、提督の近くにいても役立たんだろう」テクテク





歴戦提督「そういえば参謀長は今どうしているだろうか?一度会いに行くのもいいかもしれん」テクテク



ウー!ウー!ウー!



歴戦提督「なんだ?非常警報か?」





「「歴戦提督!すぐさま指揮所に来い!」」





歴戦提督「おお、長門の声が、これはただ事ではなさそうだ!」ッダ







~指令所



歴戦提督「どうした?」




長門「どうやら作戦が裏目に出ているらしい、現在我が艦隊は撤退中だが戦闘海域に雪風が追撃部隊に釘付けになって孤立し撤退できない状態だ」





歴戦提督「ショタ提督、撤退の指示を!」





ショタ提督「あばばっば、このままじゃ雪風が」アタフタアタフタ





無線機「ザザ・・・応答願います!こちら雪風!指令所応答願います!」





長門「ショタ提督!すぐさま指示を!」





ショタ提督「無理だよ・・・どう回避行動をとっても包囲される、逃げきれない!」フラフラ





歴戦提督「しかしここで艦隊の指揮権を持っているのはショタ提督だけです!たとえ仲間を失う選択を取ったとしても指揮を続けなければ二次被害が出ます!」





ショタ提督「そんなこと・・・僕には無理だ!」






無線機「指令所!ザザ応答ねがザザ・・・」




長門「提督!そんなことを」ス・・・


歴戦提督(仕方ない、提督といえどもまだ齢十をいかない子供にそんな非情は持ち合わせていないだろう)ボソボソ






長門「しかしそんなことを言っている場合では!」


歴戦提督「わかってる、ショタ提督。これは私が教えた指揮の方法とはいささか違いますが、仕方ありますまい、今回の作戦での私への全権委任を要求します!」






長門「な、妖精も見えないお前に指揮など、羅針盤を扱うことが出来るのか?そもそも戦法すら今までとは全然違うのだぞ?!」


ショタ提督「わかったよ・・・歴戦提督に全権委任する」フラフラ








歴戦提督「この海域の海図と鉛筆を・・・、情報が少なすぎる!これだけでなぜ戦えるんだ?!聞こえるか雪風」ガサゴソ





無線機「!しれザザ・・・聞こえます!」






歴戦提督「現在の座標並びに状況、敵勢力の具体的な情報を教えてくれ」






無線機「座標・・・・、敵影は・・の方向、イ級が3、他は見えず!ザザ自艦は中破!」






歴戦提督「ログがない以上進路は予想で書くほかあるまい、敵の兵装は?」カキカキ






無線機「敵は中破!故にザザ・・・魚雷の可能性あり、囲まれてる!」






歴戦提督「おそらく状況はこんな感じか、ふふ、なんだかボードゲームをしている気分だ。敵との距離は?よし、まずは並列しようとするイ級から潰せ!奴らの連携がなっていない今がチャンスだ!」カキカキ





無線機「ザザ解!命中轟沈です!・・・敵!魚雷二時の方向!」





歴戦提督「艦首を二時に向けろ!艦首波(艦の先頭で作る波)で避ける!」






長門「そんな無茶な!」






歴戦提督「過去の実例がある、艦なら根性出してみろ!帝国海軍だろ?!」






無線機「了解・・ザザ雪風は沈みませんっ!ザザ魚雷避けました!ザザ敵反転で逃走!近接攻撃に入ります!」






歴戦提督「駄目だ!すぐに海域から離れろ!それよりも三隻目はどこだ?」カキカキ






無線機「ザザ、敵!至近より魚雷!五時の方向!距離0.8海里!」






歴戦提督「な!?」鉛筆ポロ





歴戦提督(くそ!完全に見失っていた、そこから来ていたのか?!情報が少なくて予想で書くのが仇になった、こんな時に妖精か羅針盤たるものが扱えたら、畜生!これを抜ければ逃げられるのに!)ダラダラ








歴戦提督(また、失うのか?私の指揮で再び艦を、部下を失うというのか?)ダラダラ








長門「おい!指示を早くだせ!」






歴戦提督(いやだ!今度はそんなことを起こすもんか!)






歴戦提督「前進一杯!」






無線機「ザザ了解!ザザ____」プツン







長門「最後になんて言ったんだ?前進一杯?それでは最悪機関が止まってしまうだろう?!」







歴戦提督「仕方ないだろう!?あの距離で魚雷を避けるにはそれ以外思いつかなかったんだ!これで全力を出さずしていつ出せというんだ!?」







長門「無線が壊れた以上、後は雪風が無事に逃げ切れたことを願うほかない、だが、私はお前の指示が正しかったなどとは思わないからな」







歴戦提督「私は帰還する艦隊を記録する、すぐに行かなくては!」ダッ







ワイワイキャキャ






歴戦提督(あれから多くの艦娘が帰投した、雪風のおかげかこれといった被害はなく、彼女たちが去っていくと共に彼女の帰りが遅くなる)






歴戦提督「頼む、帰ってきてくれ」






ホーホー



歴戦提督「夜になっても帰ってこない・・・駄目だったか?」






榛名「大丈夫ですよ、きっと雪風さんは帰ってきます」





歴戦提督「そうだといいんだが、それより榛名は大丈夫なのか?」





榛名「はい、榛名は丈夫ですから」





歴戦提督「そうか、ん?あれは」双眼鏡クイー





榛名「ん?何か見えますか?」メホソメ






雪風「しれえー!」中破!






歴戦提督「おお!雪風!生きてくれていたか!」






雪風「当たり前です!雪風は沈みませんからっ!」中破!






歴戦提督「その割にはひどい痛手だな、でも生きててくれてよかった、又仲間を失ったかと思ったよ」ナデナデ






雪風「ふふ、司令、雪風はえらいですか~?」






歴戦提督「ああ、えらいえらい、時代が時代なら勲章をやりたいんだが・・・そうだ!入渠したら私の部屋に来なさい、いいものを上げよう」






雪風「ええ!いいんですか?わかりました!」タッタッタ






榛名「良かったですね」






歴戦提督「ああ、本当に良かった」






榛名「あの、ほかの艦娘には何か上げないんですか?例えば近しい仲の艦娘に・・・」






歴戦提督「ああ、提督が果敢賞と称して皆に間宮券やら用意しているらしい、後でもらいに行ったらどうだ?」







榛名「・・・そういうことじゃないのに」







歴戦提督「?」








~歴戦提督の自室



雪風「司令!それでいいものって何ですか?」





歴戦提督「ああ、これだよ」カチャ





雪風「なんですかこの金色の紐は?」





歴戦提督「それは私が艦隊司令長官であった頃に着けていた将官飾緒だ、浮彫の錨は海軍の証で私の一番の宝物であり、唯一残った功績の証でもある。これを君に上げよう」





雪風「ええ!そんな大切なものをもらっていいんですか?」





歴戦提督「ああ、どうせ使うことなんてありはしないからな、それよりも君との友好の証にぜひ受け取ってもらいたい、要るかな?」





雪風「はい!ずうっと大切にします!」ギュー






歴戦提督「ちなみにそれは金糸でできているから売ると高いぞ?」






雪風「売りませんよ!?」






歴戦提督「嫌冗談で言っただけだ、はははは!」






雪風「相変わらず司令は冗談が悪趣味です・・・」






ああ、この娘といると気分が落ち着く、これからも長く入れればいいのだが・・・。これもいつまで続くのかわかったものではない。だからこのわずかなときを全力で感じよう!この娘の前では笑っていよう!
















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