2017-08-18 05:13:33 更新

概要

9章です。3/7の更新は次章のサブタイトルを追加したのみです。


前書き


注意事項
【勢い】
・ぷらずまさんと称しているだけのクソガキな電ちゃんの形をしたなにか。

・わるさめちゃんと称しているだけの春雨駆逐棲姫の形をしたノリとテンションの女の子。

・明石さんの弟子をしているアッシーという短気で無礼気味な明石君。明石表記が明石君でお馴染みのほうが明石さん表記です。

※海の傷痕は設定として
【2次元3次元、特に艦隊これくしょんを愛する皆様の想いを傷つける最悪な言動】
をすると思います。相変わらずの作者の勢いやりたい放題力量不足を許せる海のように深く広い心をお持ちの方に限り、お進みください。

もう矛盾あっても直せない恐れあり。チート、にわか知識、オリ設定、独自解釈、日本語崩壊、キャラ崩壊、戦闘描写お粗末、魔改造、スマホ書きスマホ投稿etc.

※2/21~誤字脱字修正、サブタイトル追加等々行うかもしれません。

ダメな方はすぐにブラウザバックお願いします。


【1ワ●:チューキさん抜錨】

 

1

 

中枢棲姫「以上です。お忘れなきよう」

 

 

水母棲姫「向こうからの情報はどうなの?」

 

 

中枢棲姫「非常に捗りましたが、謎は解けませんね」



中枢棲姫「まず深海妖精可視のシステムです。深海妖精が視えるのは何かしらの共通点があると思ったのですが、どうなんでしょう。私とリコリスのは深海棲艦の知能覚醒ゆえなのか、それとも向こうサイドの深海妖精可視の才の条件と同じく、選定されたモノなのか」

 

 

中枢棲姫「……、……」

 

 

中枢棲姫「海の傷痕公認の想の権限を持たされたこのゲームのサポーターみたいなやつがいます、ね。それと『明石君』の適性の件が絡んでいる可能性が高いと見ます。彼は……」

 

 

中枢棲姫「海の傷痕かそのサポーターが何らかの理由で贔屓したの、かな。明石君は『プレイヤー』ではなく『ゲスト』みたいなものかもしれません」


 

中枢棲姫「兄妹そろって、というのも気になります」

 

 

中枢棲姫「初霜さんの情報も知りたいですね。あの子も重要な存在のような気がします」


 

水母棲姫「で、向こうの脅しはどうするの。かなり必死みたいだけど」

 

 

中枢棲姫「構いません。むしろこちらから望んでいた機会でもあります。スイキ、よろしくお願いします」

 

 

水母棲姫「了解。私は乗り気じゃないけどレッちゃんとネッちゃんはやる気みたいねえ。わるさめのやつと会ってきてテンション高いみたい……」


 

中枢棲姫「なんだかんだで仲が良かったみたいですからね。お二人が建造終わった後にお伝えください」

 

 

水母棲姫「それと本当もう私を霊柩母艦みたいに扱うのやめてよ……溜めていたモノがあったからいいものを、身投げスポット回ったところでそんな簡単に人間なんて落ちてないんだから」

 

 

中枢棲姫「すみません……」

 

 

中枢棲姫「……、……」

 

 

中枢棲姫「しかしこうも情報交換に苦労するのはよろしくないです」

 

 

中枢棲姫「スイキ、あなた陸にあがれるようにして向こうの鎮守府に忍び込みませんか……?」

 

 

水母棲姫「チューキお前いい加減にして?」

 

 

水母棲姫「あの鎮守府が私にとってどういうところか知ってるでしょうが……」

 


水母棲姫「丁准将のところにいた記憶はまだうっすらだけど、フレデリカさんのところにいた時の記憶はほぼ完全に。わるさめが春雨だった頃も、間宮さんのことも、電のことも、阿武隈、卯月も、天城なんかのことも思い出したわ」



水母棲姫「春さ、わるさめのやつは水母棲姫として過ごした時間のせいでマシだけど、あそこの鎮守府連中の顔なんか見たくないのよ」



中枢棲姫「ですよね……」

 

 

中枢棲姫「でも、今後の作戦です。遂行してください。私達だけでは海の傷痕には勝てません」

 


水母棲姫「分かってるわよ、くそ……」


 

中枢棲姫「私は少し出かけて来ますので、よろしくお願いします」

 

 

水母棲姫「そうよ。あんたもふんぞり返ってないで働きなさい。あんたの壊のギミックはチート性能だし、ちょっとやそっとじゃ死なないでしょ」

 

 

水母棲姫「それでどこに行くわけ?」

 

 

中枢棲姫「いちいち暗号を使って密会などしていられません。私とリコリスで通常深海棲艦を使用して2年前から進めていた計画を再起させます」

 

 

水母棲姫「まだやるのアレ。あの計画のせいで丙少将に目をつけられたのよね。あれって目立つうえ、リスキーだから断念したんじゃ?」

 

 

水母棲姫「安全航路を航行してる企業の輸送船なんか襲うから、面倒になるのよ。向こうの通信システムの技術員なんかも襲ってたでしょ?」


 

中枢棲姫「企業のシステム構築と工作艦明石さんが妖精との意思疏通で造り出したあの通信システムは我々にも導入したいところです」



中枢棲姫「工作艦艤装は必要なく、資材と可視者、開発妖精さえいれば構築可能なのです。いくら深海棲艦と意思のやり取りが出来るといっても、我々が人間サイドに負けていた1つの理由が戦場における情報伝達手段の不利ですし」

 

 

水母棲姫「まあ、アレは深海棲艦の知能の程を逆手に取られていた訳よね。並の深海棲艦が聞いても長ったらしいのは理解できないもの。こちらがキャッチしたところで、よね」

 

 

中枢棲姫「ええ、深海棲艦そのものの通信システムは今となれば、想の伝達、それもかなりお粗末に設定されているのはバランス調整の一環でしょうね。向こうの通信は暗号化すらされておらず、主にリコリスがその通信を傍受してあちらの情報を探っていましたが」

 

 

中枢棲姫「わるさめさんが離脱した辺りから暗号化の動きがあり、面倒です。そのため頓挫していた計画を進めて第0基地に保存していた設備を移送させたいと思います」

 

 

中枢棲姫「あの提督、こちらが輸送船を何のために襲ったのかも察しているみたいですね」

 

 

水母棲姫「アナログ系のあんたがそんな技術員みたいな真似、出来るわけ?」

 

 

中枢棲姫「鹿島がくれたこの大量の資料は読みましたので、やれます。そう大して難しくもありません。大変なのは妖精さんです」

 

 

水母棲姫「ええ……私が読んでも意味不明なんだけど……」

 

 

中枢棲姫「我々の艤装に人間サイドの通信システムを組み込みます。その為のアドバイスを向こうの提督から頂きましたからね。そして、向こうの極秘回線手段も。ならば……」

 

 

中枢棲姫「スムーズなやり取りを可能にするために、鎮守府(闇)との通信を確立させます。通信が不安定になる場所も考慮して、保存してある機材を利用し、手土産に向こう側が踏み込めずにいる深海棲艦の領海内に中継地点をいくつか作りますかね。スイキ達にも遠方から声が届くようになります」

 

 

中枢棲姫「全てが効率的になります」

 

 

水母棲姫「私達が戦う際にあんたが提督みたいに指揮を執るってこと?」

 

 

中枢棲姫「それも可能ですね。スイキはレッちゃんネッちゃん達と比較的知能の高い簡単な言葉が通じる姫や鬼を集めて下さい。多少は力ずくでも」

 

 

水母棲姫「まあ、それは比較的、簡単ね。あんたの名前出しただけでビビるやつ多いし……」

 

 

中枢棲姫「彼等にも通信システムを組み込みます。現場の旗艦の姫鬼から、艦隊への意思疏通。ある程度は策に沿って行動を制限させられます」

 

 

水母棲姫「でも、鎮守府の通信システムは艦娘が使っているようなものじゃなくて、アレはアレでまた別じゃ?」

 

 

中枢棲姫「あの通信設備事態はそんな大掛かりではなく、鎮守府が動かないゆえに複雑化していますが、深海棲艦である私達ならば違う手段が取れます」

 

 

中枢棲姫「あなた達が魔改造により、五感を強化しているのと同じく、私の身体にも魔改造を施します」

 

 

中枢棲姫「核となるシステムは生きている私が積みます。深海棲艦は自動再生、弾薬燃料といったモノを生成します。通信システムを組み込めば、このような拠点は必要性が減ります」

 

 

中枢棲姫「艦隊そのものが動く鎮守府ですから」

 

 

水母棲姫「あんたにそんなこと吹き込んで。向こうの提督、殺されるんじゃ……」

 

 

中枢棲姫「なに、私が発案したことですよ。先の決戦で知能の程は知ってもらえたので、こちらにそのくらいの閃きがあり得るとお分かりかと。過去の輸送船を襲った事実からしても前々から企んでいたことに出来ますし、事実ですしね。言い逃れは辻褄さえ合えば可能です」

 

 

中枢棲姫「密会がバレていないのなら、ですが。わるさめさんと出会ったというのは向こうの提督の想定外でしょう」

 

 

中枢棲姫「このやり取り内容を知っていた向こうの鹿島さんと明石君、更に電や初霜さんもいながら仲良く行動していたのなら、とても知能があるとは思えません。私が向こうの提督だったら、ガチで半殺しにしている失態です」

 

 

水母棲姫「あ、だからレッちゃんとネッちゃんに怒ったのね」

 

 

中枢棲姫「極秘任務に海屑艦隊の服を着るだなんて、そんなふざけた真似はリコリスですらも激怒です」

 

 

水母棲姫「リコリスの怒りはほとんど教育だったけどねー」

 

 

中枢棲姫「情報は些細な問題です。お土産に過ぎません。あの提督は我々を深海から引き上げようとしてくれている。その手は」



中枢棲姫「握手の形です」



水母棲姫「逆の手に銛でも持ってるかもよー」



【2ワ●:よーいドン】

 

 

甲大将「ほら、今回の作戦と相手の面子だ。目を通しておいてくれ」

 

 

木曾「……ふぅん」

 

 

甲大将「眉を潜めたその面を見れば分かる。気に食わねえっていうんだろ」

 

 

甲大将「ここまでするのか、ここまでやって勝ちたいのか、とか。グラーフにまでドン引きされたよ」

 

 

甲大将「あくまで味方の連中をここまで残虐に潰すことに何の意味がある、と」

 

 

木曾「違う。こんなん大将らしくねえし、この作戦は俺達に対してこういってるんだ。いいたくもなるさ」

 

 

木曾「『お前らの実力じゃ真正面から戦っても勝てません』」

 


甲大将「あー……その通りだ。お前らじゃ向こうの連中には勝てない。丙んとこの第1艦隊と組んでも、兵士の総合力としては負けてる」

 

 

甲大将「なにお前、勝てそうな相手としか戦いたくねえの?」

 

 

木曾「戦争やってんのに強い相手としか戦いたくねえとか馬鹿じゃねえか。弱いに越したことはないだろ」

 

 

木曾「俺個人として強いやつと戦うのは好きだ、な。スイキだっけ。俺のほうが絶対に強いけど、戦うの面白かった。弱いやつが成長するための壁役のほうがやり甲斐あんだよ」

 

 

木曾「俺も、歳を取ったのかな」

 


甲大将「お前、地元の連れんとこに行くもんな。15年くらいは経ってるか。あの頃の仲間が三十路にもになりゃ物思いにも耽るか」

 


木曾「まーなー……」



北上「こんちゃー。それいったら私や大井っちなんて、もっと歳を取ってるんだけどね」


 

大井「まあ、大将さんももう29を迎えますし。最初よりは大分らしくなりましたけど、この人」

 

 

北上「ま、29なんて若い若い。平均寿命的に折り返し地点もまだじゃん。大将は出世コースで来たけど、箱入り娘だからね。最初はいっつもべそかいて駆逐艦並にうざかった」


 

木曾「それな。いいとこのお嬢ちゃんで血も見たことねえし、負けたらさ、わんわん泣いてうっとおしかった」

 

 

大井「私達もかなり弱かったですね。雷巡が使えなくて余っているとか、本来あり得ないことでしたし」

 

 

甲大将「いいたい放題だな……」

 

 

木曾「最初ん頃は弱かったから無我夢中で、いつの間にか気付けば大将の艦隊になってた。そこからは薄いな」

 

 

北上「向こうは私達とは逆に燃えているんだろーね。阿武隈はかなりやる気あったし。私達はもうしおれちゃいましたよ」

 

 

木曾「ここまで来るまでに全て吐き出しちまったからな。もう言葉も魂も荒波もなく穏やかだ」

 

 

木曾「天井が見えるっていうのかな。若い世代に後は託して、老兵は去るのみっつーのが骨身に染みて分かるぜ」

 

 

木曾「今だと山風とか入ってきたろ。ガンバって生きてけよ、なんかしてやれることねえかなって思う。普段の俺はもうそんな感じだ」



大井「でもまあ……」

 

 

大井「だから向こうのほうが強いんでしょうね。大将さんが練った作戦はこんな風になる訳です」

 

 

大井「電や明石さんを見習うべきですね。こうやって過去を懐かしんでいる時点で私達は綺麗に飾られたアンティークです」

 

 

大井「私は少し泣かせたい相手いますし、やる気はあるんですけどね」



北上「ほう。誰さ?」



大井「卯月です。私達は秋月を失ってから、かなりへこみました。木曾は性格的に違いますけど、この子は阿武隈と違って、3日後にはけろりとしていたそうです」



木曾「聞いたことはあるな。阿武隈は笑えねえレベルで病んでいたって。まあ、姉妹艦なうえ、旗艦だ。提督にも見捨てられたわけだし」



木曾「卯月は姉妹艦の睦月型四人だろ。姉妹艦効果があるから、むしろ阿武隈よりもダメージ受けるはずなんだけどな」



木曾「……、……」



木曾「ネジ飛んでる?」



大井「さあ。ですけど気になるんですよね。余計なお世話でしょうけど、実年齢15歳の子にしては、と。もしかしたら自分に嘘ついているのかも、とか。そんな気です」



甲大将「まあ、私としては前々からあいつらと演習やってみたかったんだよな。お前らおごってるから、気付けになると思って」

 

 

江風「あ、大井さんいた!」

 

 

江風「この3人、江風から引っ付いて離れないンだけど! なんとかしてくれ!」

 

 

大井「なにをしてるんです……」


 

球磨「江風の体温が温かいクーマー」


 

多摩「にゃー……」

 

 

漣「うーす。江風さんの体温とろけるんすよー……良い匂いするしぃ」

 

 

江風「うっとおしいンだよ! 山風のほうにいってろ!」

 

 

漣「あの山風たん、江風さんと違って怒ると怖いんすよ~」

 

 

漣「つーか大将逹なにしてんです。近々キラークイーン提督んとこと演習あるんでしょ。漣は主に警備なわけですがー、演習でもしたらどうですか。あいつらいわずもがな強いですよー」

 

 

甲大将「大井はセーフ。木曾と北上が萎れてんだよ。ここ最近こいつら刺激が足りてねえ年寄りみてえ」

 

 

江風「……」

 

 

江風「やる気ないなら消えろよ」

 

 

木曾・北上・大井「……」

 

 

江風「向こうの鎮守府(闇)のほうが江風達より凄まじいだろ。江風達だってそれなりに結果を出してここにいる」

 

 

江風「けどさ、鎮守府(闇)と比較したらクソみたいな結果だ」

 

 

漣「そういえば、江風さんは向こうの鎮守府にお世話になってたんだっけ」

 

 

江風「うん。あいつらどう考えても強い。この鎮守府にはないモンをたくさん持ってる。そうじゃなくても端から見ていても分かンだろ」

 

 

江風「一年足らずだぜ。あいつら寄せ集めの時から、その間に最強レベルの敵ばっかと戦って勝ち続けてる」

 

 

球磨「まー、深海棲艦の反転建造システムからの、深海妖精の件はすごいクマ。あれでもう海が変わったクマ」

 

 

多摩「トランスタイプも相当にゃ。正直多摩では一矢報いるのが精一杯」

 

 

江風「違えよ。そこよりももっとすごいことがあるんだ。偶然と言えばそれまでだけど……」

 

 

江風「気付いてるかよ」

 

 

江風「電とあの司令官さんが手を組んだ時から対深海棲艦海軍から」

 

 

江風「殉職者、出てねえ。偶然だろうけど、なんかありそう。って思わせる連中だ」

 

 

江風「ったく。江風は本気じゃないわるさめにコテンパンにされたってのに。木曾さんと互角に戦えた神通だってあの馬鹿にやられてンだ」

 

 

江風「大本営での映像は見ただろ。海の傷痕は電でも手も足も出ず、正しくあんなん悪夢の類だ。勝てる気はしない。戦ってもないのに、心が折れたのは初めての経験だ」

 

 

漣「あれはパネっす。ラスボスというか、製作者が管理者権限駆使して参加してくるとか、クソゲーの類ですわ……」

 

 

江風「でも、あの提督は艤装もねえのに海の傷痕に真正面から戦いを挑んで」

 

 

江風「海の傷痕に」

 

 

江風「負けたっていわせたンだぞ」

 

 

江風「電は気に食わねえけど、傷があって手がつけらンねえ性格なのは知ってた。その電を、救い出した」

 

 

江風「かっこいい」

 

 

江風「初めて女であることを自覚した程だ。電は男を見る目があるなって。この江風に戦う前から敬意を払わせるような提督だ」

 

 

木曾「……」

 

 

江風「真珠湾で、秋月が死んだ時から江風はずっと思ってた」

 

 

江風「スポーツじゃねえ。負けても得るものが、とか、そんな次元で汗と血と涙を流して来たわけじゃない」

 

 

江風「この戦争は負けたら失うだけなンだ。取り返しがつかねえ命は不可逆だからな。でも、心のほうは可逆なンだ」

 

 

江風「遅くスタートしている奴らに、対深海棲艦海軍からお払い箱になってたような奴らに、全て負けてる」

 

 

江風「負けてンだぞ」

 

 

江風「あんたらは悔しくねえのか?」

 

 

江風「無理やり江風を拉致っていた頃のほうが熱かった。あんたらは老け込んだンじゃなくて」

 

 

江風「腑抜けたことを自覚しろ、この大将艦隊の恥さらしどもめ」

 

 

江風「弱いンだから、やり方に文句いってンじゃねえよバーカ!」

 

 

江風「大将や丙ちゃんがこんな作戦を組むのも江風達が弱いせいだろ」

 

 

江風「江風は敗けねーからな! 秋月が江風守って亡骸になった時から、最後まで戦うって決めてンの!」

 


江風「足を引っ張る気ならここで留守番しててくれよ。頼むから」



大井「だそうですけど、どうするんですか。私としても江風と同じ意見ですので、やる気が出ないのならここで留守番でもして漣でも出したほうがマシですね」

 

 

江風「大井さんは信じてた。この手の問題は大体ブルーになってる木曾さんか、マイペースな北上さんのどっちかが発信源だ」

 

 

甲大将「まあ、いつもの通り本気でいってる訳じゃねえだろ。戦い始まれば勝手に直んだろ」

 

 

北上「江風はいうようになったもんだなあ。あの海ではずっと泣きじゃくってたのに」

 

 

北上「なンで進むのー、隊列に一人足りないじゃンかよー、とかって」

 

 

北上「深海棲艦達から攻撃されまくってんのに、お前の砲口ずっと真上を向いてて使い物にならないし」

 

 

江風「あの時のことは許さねえから。木曾さんはお前のせいだっていって、秋月の首を江風に突き付けて、大井さんは江風を蹴っ飛ばして伊勢のやつに引っ張らせていかせて、北上さんは駆逐艦ウザいって馬鹿にしたこと!」

 

 

木曾「ンだよ、お前が守られるような真似したから秋月は死ぬ羽目になった。それでもぐじぐじと泣く始末だから秋月の亡骸突き付けてあやしてやったんだろうがよ」

 


大井「むしろ秋月の犠牲をなめてたのは江風のほうでしたからね……あの場であなたが死んだら秋月は無駄死にです」

 

 

北上「味方殺すような真似して愚図るやつとかうざいだろ。雷撃しなかっただけ感謝して欲しいもんですよ」

 

 

江風「だから、もう違うっていってンだよ! あんたらこそ終わりが見えた今、やる気がねえってぼやくなら」

 

 

江風「うぜえうぜえうぜえ!」

 

 

甲大将「お前らホントに仲良しだな。何回似たようなケンカしてんだよ」

 

 

甲大将「せっかくだから向こうの提督と話してなんか賭けてもらおうかな。私としては演習やるんならなんか賭けたほうが楽しいんだよな」

 

 

木曾「江風が向こうの提督気に入ってるみたいだから、江風とくっつけてやれよ。こいつ、戦争終わったら身を固めて孝行させるべきだと思うぜ」

 

 

甲大将「それは間違いねえな」

 

 

江風「余計なお世話だ!」

 

 

大井「向こうの提督さん、鋼の精神力と聞いていますし、江風ががんばったところでなびきませんよ」

 

 

北上「あーいう奴は既成事実で逃げ場なくせばいいんですよ」

 

 

多摩「向こうの提督、玩具にされてて同情するにゃ……」



江風「終わりも間近な時なんだから、ふざけたこというなよな! 誰かこのいつもの空気なんとかしてピリピリさせて!」

 

 

漣「いつも通りですしおすし、なーんも問題ないってことですよやだー」



漣「漣からいえることは恐らく向こうはあなた方を殺してまで勝ちに来ると思いますし、向こうの提督はなにしてくるかマジで分かんないので」

 

 

漣「深海棲艦だと思ってガチの戦争しないと」

 

 

漣「後悔しますよー」

 

 

球磨「その通り。あいつらの顔を見れば分かるし、電とわるさめのやつはもちろん、その他にもくせ者多いクマ」

 

 

多摩「阿武隈、卯月、明石君、初霜」

 


多摩「ここから嫌な匂いするにゃ」

 

 

木曾「向こうの参加するやつは阿武隈、間宮、初霜、金剛、暁、瑞鶴、明石、秋月、秋津洲、わるさめ、ぷらずまか」


 

木曾「……」

 

 

木曾「俺的には全員すげえ強そうに思えるな。特に金剛と明石。当てになるかはわかんねーけど」


 

北上「演習で男と戦うのは初めてだぜ。皆で全脱ぎさせてやろう」

 

 

大井「見たくないですね……」

 

 

漣「姐さん方、おなしゃす。少し見たいです、男の子の生裸」

 

 

北上「任せときな」

 

 

木曾「……、……」

 

 

甲大将「ん、どうした?」

 

 

木曾「大将、演習の場は鎮守府(闇)だろ。集合は現地でもいいか?」

 

 

木曾「今から遠征に行ってくる」

 

 

甲大将「構わねえけど、遠征?」

 

 

木曾「少し気合いを入れてくるだけだ。なんかあの曇り空の方角から焼け焦げた面白そうな臭いが風に運ばれてきた気がする」

 

 

木曾「江風、ついて来るか?」

 

 

江風「木曾さんのその手の予感って大体当たるんだよなあ。うん、ついていく」

 

 

甲大将「行くならグラーフと、そうだな、山風連れてけ。お前と江風だけじゃ心配だから」



甲大将「それとお前らが弱いからこんな作戦を組んだ訳じゃない。普通の演習なら、お前らのが強いって、私はそう思う、うん」

 

 

甲大将「だが、そこで留まるのは奢りだ。徹底的に勝利に固執するっていうのはお前らを信じるだけに留まらん」

 

 

甲大将「もう1度、初心に帰れよ。江風を拉致って強引に参加してやった合同演習の時みたいに」


 

甲大将「最近のお前らに火がつくのはヨーイドンの後だ。気を引き締めろ」


 

甲大将「今回はこの場でヨーイドンだ」



【3ワ●:わるさめだけは潰すから】

 

 

伊勢「あ、暁ちゃんが出てくるの? 響や陽炎や不知火ならともかく、あの子がこの演習に……?」

 

 

日向「榛名や瑞鳳もいるのにな。相変わらずよく分からんやつだなー。あの暁の性格は電適性者より遥かに非好戦的なのは分かっているだろうに」

 

 

丙少将「……、……」

 

 

丙少将「あいつ、変わったな」

 

 

伊勢 「そうなんですか?」

 

 

丙少将「あいつのやり方は駒としか見ていない。やれることとやれないことを把握して、それを軸に徹底してた」

 

 

丙少将「例えば乙さんの時は瑞鶴が、下手くそ、と終始徹底して、それ相応の役割を与えてた。それが悪いとはいいわないが」

 

 

丙少将「深海棲艦との戦いではなく、演習だ」


  

丙少将「戦うやつは生きてるんだ。やる気もある。身の丈以上の役割を与え、劇的に成長するケースだっていくつも見てきてる」

 

 

丙少将「お前らだって俺の無茶な期待に、応えてくれてる。結果の勝ちよりも、得るものが大きくなるような指揮を取ろうとしなかった」

 

 

丙少将「人の心を、ただの不確定要素程度に考えてた」

 

 

丙少将「この演習に暁を出すってことは、あの子に何らかの成長を促すためだろ。あの暁はがんばってはいたが、基本的にビビりだ。駆逐艦の中でもお世辞にも強いとはいえん」


 

伊勢「暁ちゃんが変な風に変わってなければいいですけど……」


 

日向「そこの写真は、陽炎不知火と響暁を街に連れてった時のか。懐かしいな。暁は確か散歩してたダックスに吠えられて泣いてたっけ」

 


日向「夜中にトイレも一人で行けない子だったからなあ。明りがないと夜は外に出られなくていっつも探照灯装備させてた最初よりは大分成長したが」

 

  

伊勢「向こうで強くなってるといいんだけど。第6駆そろっているし、元気で楽しくやれているかな?」

 

 

日向「あの電を第6駆とは認めたくない私がいる」

 

 

丙少将「まあ、暁は仲良くやれてるだろーよ。陽炎と不知火からも問題ないって連絡来てるし、大丈夫だろ」

 


加賀「……」

 

 

丙少将「あー、加賀は加賀で瑞鶴と因縁あったんだっけか」

 

 

加賀「因縁というほどではありません。陰口みたいで気は進まないのですが、あの子は歴代5航戦で最も頭の出来が悪いとしか」

 

 

加賀「あの子、私が止めなければ提督の命を奪っていたと思いますから……」

 

 

加賀「少しは成長しているといいのだけど」

 


天城「あ、間宮さん出るんですね……」

 

 

丙少将「それな。まあ、給糧艦の出番はあるよ。ただの給糧艦として使うかはさておき」

 

 

丙少将「そういえば天城は……」

 

 

丙少将「うちに来る前にフレデリカのとこにいたんだよな」

 

 

天城「……ええ、春雨……わるさめさんや電さん、卯月さんや阿武隈さん、鹿島さんのことも覚えています」

 

 

天城「間宮さんとは仲が良かったですね。よく二人で厨房に立ってました。古きからの良き友人です」

 

 

天城「間宮さん、あの鎮守府が壊滅する時の撤退戦で、電ちゃんと大佐がいないって、独断で戻ってしまって。なんとか救出は出来たのですが、あの時にいた謎の深海棲艦は、電ちゃんだったと私も間宮さんも後から気づいて……」



丙少将「キスカも、鹿島のこともあって、たくさん死んでる傷も癒えてない頃だからな……」



天城「はい。間宮さんも私もあの時の深海棲艦……電ちゃんに、酷いこといってしまいましたから」



天城「姫や鬼の叫びかと思ってました。今思えば、人の声が聞こえてたんです。離脱して遠くに行くまで、ずっと」



天城「仲間の声が、電ちゃんの泣き声が、ずっと聞こえてました」



天城「一生の、後悔です」



丙少将「……」



日向「……間宮と連絡は取ってないのか?」

 

 

天城「たまにお手紙で。間宮さん、完全アナログ人で機械は苦手でしたから」

 

 

天城「暁さんと同じく戦闘に向いている性格とは言いがたい人、ではありますね。向き不向きはあります。大丈夫ですかね……」

 

 

丙少将「つーかお前らさっきから元気かな、とか成長しているかな、とか、不安そうな顔でいいやがって。向こう連中の母親かなんかか」

 

 

丙少将「そういうのは演習前に捨てとけよ。暁も間宮も瑞鶴も敵だ。変な情があればつけこまれる。そういうやり方も平気でできる連中なのは、合同演習の時を見れば分かるだろ」

 

 

丙少将「勝利に徹底するスタンスは変わってねえはずだから、お前ら向こうを味方だと思って情けかけんなよ?」

 

 

日向「分かってるさ。甲さんところと組む以上、向こうの足を引っ張る真似はしない。あのマイペースどもが足引っ張って来る可能性も高い」

 

 

丙少将「……きっと向こうは」

 

 

丙少将「球磨型のマイペースに苛立った江風がケンカ吹っかけてんじゃないかなって俺は思うわ」

 

 

丙少将「まあ、甲さんとこは始まれば火がつく奴等だから心配は要らねえわ。ただ向こうはなにしてくるか読みきれねえ。作戦の役割だけに固執しないで思考は柔軟に頼むぞ」

 

 

日向「……ああ、私個人としても勝ちたい演習だ。必ずあの時の襲撃の借りは倍にして返してやる」

 

 

伊勢「わるさめだけは潰すから」

 

 

丙少将「……今までの演習も本気で指揮してはいたが、やる前から心から勝ちたいって思う演習は初めてだな」

 

 

丙少将「きっと最初で最後の演習だ」

 

 

丙少将「頼むぞ。雪風と大鳳は演習場か。俺が出向いて話しとく」

 

 

丙少将「それじゃ解散だ」

 


【4ワ●:vs 始まりと終わりの深海棲艦】

 

1

 

木曾「やっぱり近場じゃあんまり強い深海棲艦いないなー」

 

 

江風「近場じゃねえし! 木曾さんがそれ呟いたの何回目だよ! かなり遠くまで来てるから!」

 

 


山風「江風のいう通りです……」

 

 

グラーフ「全くだ。労働時間外の仕事に駆り出される身にもなれ」

 

 

木曾「でもなんかやっとかなきゃダメだろ。敗けられねえ戦いだって大将が珍しくあそこまで形振り構わねえ作戦立ててんだ。やる気はあげとかねえと」

 

 

木曾「そういう時は戦ってナンボだろ」

 

 

グラーフ「労働時間が生産性に比例するなどと馬鹿げた論は止めてくれ。私は日本の根性論を好まないんだ」

 


山風「グラーフさんを支持する……お仕事は時間内にやるもの……」

 

 

山風「時間外にやらなきゃいけないのは要領が悪い証拠……」

 

 

木曾「バッカ。要領良くて時間内に終わって帰ったら、翌日はより多くの仕事をやらされるのがオチなんだぜ」



山風「救いは、ないの……?」



江風「山風はがんばろーな。お前、まだまだ弱いから。姉妹艦の情けだ。江風がフォローしてやるよ」

 

 

山風「姉妹艦的には私のほうがお姉さん」

 

 

江風「お前のほうが後輩だから。姉妹でも同じ会社に入る時期が違えば先輩後輩になるだろー?」

 

 

山風「業務時間外に後輩を仕事に連れ出す面倒な先輩兼妹を持った……」

 

 

グラーフ「……待て」

 

 

グラーフ「偵察機が面倒な深海棲艦を発見した。このメンバーでは部が悪いので最寄りの鎮守府まで撤退をオススメする」

 

 

木曾「あ? この面子で危険?」

 

 

グラーフ「Rank:S+の中枢棲姫単独だ。いや、この海屑艦隊の文字の入った服は『Rank:SSSチューキ』だ」

 

 

山風「」

 

 

江風「さすがにヤベえな。江風達の目的からしたらこれは運がいいのか悪いのか判断に困るけどさ」

 

 

木曾「さすがに俺の独断で交戦する訳には行かねえか。面倒になる前に撤退だな。大将にも報告しねえと」

 

 

グラーフ「では木曾と江風、奴の足止めを任せる。理由は知らないが、向こうはどうやらただで帰投させてくれる気はないらしい」

 

 

グラーフ「砲撃体勢に入っている」

 

 

木曾「それなら交戦の言い訳も立つな。任せろ。俺が責任持って中枢棲姫の相手をするよ」

 

 

江風「江風もやる。チューキだろ。最強深海棲艦勢力の親玉だ。こいつは最高の前哨戦ってやつじゃンか」

 

 

木曾「たださ、ここら辺にチューキが出向く程のなんかあったか?」

 

 

グラーフ「孤島ならばある。先代の准将の鎮守府が壊滅してからは今は深海棲艦勢力の領海内だが」

 

 

グラーフ「深海棲艦を引き連れて来ていない時点でお忍びだろう。散歩ではなく、極秘行動の類ではないだろうか」

 

 

木曾「よし、行くか!」

 

 

山風「つ、突っ込むの……?」

 

 

木曾「そりゃそうだ。戦いは敵の懐に飛び込んでやるもんだからな」

 

 

江風「同意ー」

 

 

グラーフ「……」

 

 

山風「ぐ、グラーフさん、二人を行かせていいの……?」

 

 

グラーフ「問題はおおありだ。だが、少し様子を見るために留まる」

 

 

グラーフ「あのチューキは頭が回る。今の時期にこちらの戦力を潰すような真似は愚かだと分かるはずだ。その上、中枢棲姫勢力の頭が単体でこのようなところにいる以上」

 

 

グラーフ「このような事態は想定していると思われる。その上でうろついていると見た。まあ、木曾と江風だとは思ってはいないだろうな。散歩か任務かは知らないが、戦い方を観察すれば判明する」

 

 

山風「で、でも、中枢棲姫だよ。木曾さんと江風が強いといっても……」

 

 

グラーフ「中枢棲姫という深海棲艦自体が軍にデータが少ない。最初期の始まりの艤装が戦ったらしいが、記録は装備のみ、だ」

 

 

山風「し、しかも、あの知能のレベルとなると……お、応援要請しますね」

 

 

グラーフ「……そうだな」

 

 

グラーフ「私達が中枢棲姫に勝てるかは分からないが」

 

 

グラーフ「懲りてくれたのなら、こちらとしても付き合わされた報酬が予想以上に弾んだことになる」

 

 

グラーフ「これは嬉しい誤算とならないか」

 

 

山風「ぷ、プラスの発想……」

 

 

グラーフ「フフ、日本では転んでもただで起きないということわざがあるな。アレはいい」

 

 

2

 

 

中枢棲姫(向こう側の哨戒範囲はまだ先ですし、この海域になぜ甲大将の艦隊がいるのかは知りませんが……)

 

 

中枢棲姫「いつも上手くは事がスムーズに運ばないものですね。どうしてこうも邪魔が入るのか……」

 

 

中枢棲姫(こんなことがあるから理由がなくては散歩も出掛けられない身分)

 

 

中枢棲姫「見られたからには殺しておきますか」

 

 

中枢棲姫「……っと、木曾と江風は海の傷痕に指定された重課金存在でしたね」

 

 

中枢棲姫「不良をあやすのは苦手です。リコリスは不良は実力行使で上下をハッキリさせておくのが早い、と」

 

 

中枢棲姫「出来る限り痛め付けたくはないのですが、まずは引いてもらえるよう交渉、かな」

 

 

中枢棲姫「はあ、かなり近付かなければ……本気で面倒です……」

 

 

3

 

 

江風「撃ってこねえな。すげえ近づいて来るぞ。中枢棲姫は確か16inc持ってるよな。なんで近づいてくンだろ」

 

 

木曾「はあ? そんなのチューキの知能が高いからだろ。お前もちっと賢くなれよ」

 

 

木曾「それで何か用かよ? 俺らは鎮守府(闇)の演習に備えて気付けの最中なんだけど、わざわざ相手してくれるのか?」

 

 

中枢棲姫「……、……」

 

 

中枢棲姫「初めまして。中枢棲姫勢力のチューキと申します。勇敢なお噂はかねがね……ですが、通して欲しい」

 

 

江風「味方な訳じゃねえんだろ。倒す敵は同じなだけで、こちらに与した訳でもなく屈した訳でもない。ここにいるのはそちらの都合だろ?」

 

 

江風「オハナシだろ? まずは話してもらおうか。その内容によっては通してやらんこともないぜ。この辺りが妥協点ってところだな」

 

 

木曾「江風、お前ちょっと黙ってろ。それを言えるのなら、理由を言わずに通してくれ、なんてお願いしねえよ」

 

 

木曾「チューキ、分かるよな。俺らが黙ってお前のお願いを聞けない事情も。なに、やる気はなさそうだが安心してくれ。そちらが隠密なのは察している。だから、こういおう」

 

 

木曾「ここら辺に面白いモンがありそうだな?」

 

 

中枢棲姫「あなた達は甲大将がいなければ、ただの戦闘力の高い兵士に過ぎません。つまり無力です」


 

江風「無力……?」

 

 

中枢棲姫「繰り返しますが、勇敢なお噂はかねがね……ですが、噂というものは尾ひれがつくもの」

 

 

中枢棲姫「私は興味のない人間には無機質な女なので、覚悟の程を」



江風「雰囲気があの提督に似てンなー……」



木曾「無機質という割には、高圧的かつ勝利を確信している風だな。負けるやつの方程式掲げて恥ずかしくねえのか」

 

 

江風「一歩も引かない気概こそが、甲の旗に掲げた御印だからな。私達に出会ったのは運が悪いと諦めなよ」

 

 

木曾「大物釣り上げて大漁の旗を掲げてやら」



中枢棲姫「やれやれ……その最初期の古き旗を掲げるのはまだしも、提督がいない甲の艦隊はこうも錨を見失いますか。死して屍拾うもの無し、です」

 

 

中枢棲姫「少し離れますね。追ってくるのなら、どうぞ。向こうにいるのはグラーフと山風さんですね……」クルリ

 

 

中枢棲姫(……おしゃべりに付き合えばなにかしらの情報を得られますかね。それと応援が来るかもなので、なるべく手っ取り早く、ですね)



中枢棲姫「戦闘は久々、かな」

 

 

4

 

 

中枢棲姫「距離は詰めてきませんか」

 

 

中枢棲姫(16inch三連装砲、16inch三連装砲、偵察機深海棲艦ver、電探深海棲艦ver……まあ、十分ですね)

 

 

ドンドン!

 

 

中枢棲姫(……スイキから聞いてはいましたが、面白い発想しますね)

 

 

中枢棲姫(軍刀で砲弾を受け流すアレは、建造システムでリンクした兵士用に量産した開発装備、ですか)

 

 

中枢棲姫「付け焼き刃をああも頼っているのは、それがなければ被弾するからですね」

 

 

ドオオン!

 

 

中枢棲姫(雷撃の当てる上手さは、今まで見たなかでは一番、ですね。ここまでの精度だと、予測の類ではなく)

 

 

中枢棲姫(……勘が良い、のオカルトの類。乙中将と似たような才能と)

 

 

中枢棲姫(……私に突っかかってくるものだから、なにか策でもあるかと思えば、素質の過信ですか。まあ、その素質も含め、観察している限り)

 

 

中枢棲姫(江風はネッちゃんクラスで、木曾はわるさめさんより少し上程度です、ね)

 

 

中枢棲姫「……お話にならない」

 

 

5

 

 

江風「待て。中枢棲姫ってあんなに強いのか……? 泣く子も黙るレベルじゃンか……」


 

木曾「……、……」

 

 

江風「ただただ前に進んでくる、ぞ。木曾さんの魚雷も当たってるはずなのに、ピンピンする深海棲艦か……」

 

 

江風「効いてないよな、アレ」

 

 

木曾「大体分かった。江風、1度しか説明しないからよく聞けよ。魚雷は当たってるが、効いてねえ。これは『人間の科学兵器が深海棲艦に効かないのと同じ理屈』だと俺は思う」

 

 

木曾「中枢棲姫という深海棲艦自体が対深海棲艦海軍において、伝説の始まりの敵だ。初めてこの世に姿を現したのが真珠湾の中枢棲姫だとか」

 

 

木曾「『深海棲艦の歴史は中枢棲姫に始まり、最後に還す深海棲艦も中枢棲姫になるだろう』って言葉が最初期にはある。それくらい強いってことだ」

 

 

江風「……科学兵器が深海棲艦に通じない防御システムが一部、江風達の艤装装備にも適応しているってことか」

 

 

木曾「おう。江風、雷巡の俺の雷撃が効かねえ相手だ。砲撃はお前のほうが上手いから、突っ込むのは俺が適任だ。お前は砲撃で援護な」

 

 

木曾「始まりと終わりを司る。ある意味で神格化された深海棲艦が中枢棲姫だ。加えて知能レベルも加味すると」

 

 

木曾「フハハ、電より強えぞアレ」

 

 

江風「そりゃいい。散歩も旅もするもんだ」

 

 

6

 

 

グラーフ「どうやら中枢棲姫相手だと木曾と江風では荷が重いらしい。砲撃は適当でいい。木曾がやられたら、助ける必要がある。私も前に出ながら戦う他なさそうだ」


 

山風「ふぇ、ちゅ、中枢棲姫と……」グル

 

 

山風「む、無理だ、よ……」

 

 

グラーフ「そんなお前だから木曾のこの手の散歩に組み込まれる羽目になる。なに、当てなくてもいい。撃てばいい。それだけでお前は成長する」

 

 

グラーフ「Gib mir Deckung、期待はしていない。では、私は前に出るとしよう」

 

 

山風「グラーフさん、木曾さん接近、してるけど、艦載機は……」

 

 

グラーフ「今積んでるのはそれほど練度は高くなく、繊細な攻撃は困難だ。可視の才のあるサラなら上手くやれるんだが……」

 

 

グラーフ「木曾ごと攻撃する。なに、大破程度で死ぬやつではない」

 

 

7

 

 

ドンドン!

 

 

中枢棲姫(江風が援護砲撃、ですか。まずまずの洞察力、グラーフ・ツェッペリンが艦載機発艦、爆撃機1機と艦攻が10機……)

 

 

中枢棲姫「……」



木曾(へえ、砲撃精度も高えな。グラーフの彗星を墜とされた。でも、なんで爆撃機だ……?)

 

 

木曾(魚雷無効化出来るのなら、爆撃も通用しねえと思ったんだが。砲撃効くなら艦攻を優先して墜とすとも……)


 

木曾「おい、俺のほうに自ら近付いて来ていいのかよ。お前なに考えてるか解んないけど、至近距離は俺の領域だぞー」

 

 

中枢棲姫「……」ジャキン

 

 

ドンドンドン!


 

木曾「あぶ、ねっ!」

 

 

中枢棲姫「この距離で回避しますか。個人のプライドなどなかったつもりですが、傷付きましたね……」

 

 

木曾「お前も江風の砲撃を避けてるじゃねえか。俺らの中で一番砲撃成績がいいんだぞ?」

 

 

木曾「まあ、いい」

 

 

木曾「軍刀は効くのかな、っと!」

 

 

ガキン

 

 

木曾「器用だな。砲台の射角を変えて刃を防いだのか……。つうかその馬鹿でけえ艤装が本体だろ?」


 

中枢棲姫「木曾さん、あなた性格があまりよろしくないようですね」



木曾「そうだなー……」

 

 

木曾(……なるほどねえ、艤装の一部が削ぎ落とされるよりも、肉体のほうを落とされるのを嫌うのは)

 

 

木曾(通常の姫や鬼とは違って、艤装が肉体に深く依存してる。基地型ってのは共通してそういうことか……)

 

 

中枢棲姫「新たな爆撃機ですか。その軍刀退かしていただけませんか。砲口があがらないのですが……」

 

 

木曾「爆撃は効くのか?」

 

 

彗星「モラッタ」

 

 

ドオオン!

 

 

中枢棲姫「効きません。しかし、味方を巻き込む爆撃に躊躇いがないのは感服ですね。中々出来ることではなく」

 

 

木曾「ちっとばかし」

 

 

中枢棲姫「……!」ジャキン

 

 

ドンドンドン!

 

 

木曾「涼しくなっただけだ」

 

 

木曾「オラア!」

 

 

中枢棲姫「……、……」

 

 

中枢棲姫(肉体との接合部を切り取られましたか……)

 

 

木曾「やっぱりそうか……」

 

 

木曾(その肉体は巨大な基地型艤装を支える役割あるんだな。身体が陸の役割を果たしているギミック……)

 

 

木曾「切り取られたら本体の艤装は海に沈むわな。砲塔を1つ犠牲に選んで、肉体を、守る、訳だ……」フラッ

 

 

中枢棲姫「すみません。木曾さんに関しては過小評価でしたね。さすが勇と知を備えた甲の旗艦と改めて」

 

 

中枢棲姫「レッちゃん程度」

 

 

木曾(……ダメだ、まだ余裕の面だ。こいつ、本気出して、ねえ……)

 

 

木曾(……あ?)

 

 

木曾(艤装が肉体に、張り付き始めて、侵食化か? 電の身体と同じ……これが壊-現象……?)

 

 

中枢棲姫「基地型はそれで耐久値がゼロになるようなものです。中枢棲姫である私は……」

 

 

江風・グラーフ・山風「もらった!」

 

 

ドオオン!


 

中枢棲姫「ギミックが発動します」ジャキン

 

 

ドンドン!

 

 

木曾「……う、あ」


 

中枢棲姫-壊「木曾さんには盾になってもらうので沈ませません」

 

 

中枢棲姫-壊「さて……これなら1分もかかりませんかね」

 

 

山風「な、なにあれ、艤装が、液体に? 顔にまで、張り付いて……」

 

 

中枢棲姫「知性に獣を帯びるので好ましくありませんが、こちらの姿のほうが手っ取り早いので」

 

 

江風「あー、グラーフさん、これ死んだかな」

 

 

グラーフ「まあ、敗北だろう」

 

 

中枢棲姫-壊「フフ、ハハッ」

 

 

山風「っひ、ぃ……た、助け、」

 

 

山風「て、アッシー……」

 

 

中枢棲姫-壊「見るに耐えない稚魚がいますね……」

 

 

中枢棲姫-壊「……死ぬがよい」

 

 

………………

 

………………

 

………………

 

 

中枢棲姫-壊「はあ、4名も運ばなければならないとは……疲れましたね」

 

 

木曾「……殺さ、ねえの?」

 

 

中枢棲姫-壊「ふむ、意識がありましたか。呆れた人ですね。恐らく支援艦隊が来ると思うので、救助をお待ちを」

 

 

中枢棲姫-壊「今攻撃されると、私の理性が飛んでお仲間ともども殺してしまう危険があります」

 

 

中枢棲姫-壊「旗艦として賢明な判断をしてくださいね。これ以上やるのなら、想定外です」

 

 

中枢棲姫-壊「加減した意味がなくなって不愉快です」

 

 

木曾「敗けたの久々だ」

 

 

中枢棲姫-壊「よくいう。実力に溺れてなまくらと化していますね。私にとって、あなた達は提督がいて初めて敵となり得る存在なのです」

 


中枢棲姫-壊「それではオヤスミナサイ」

 

ドン!


中枢棲姫-壊(さて、運搬は苦手なんですけどね……)

 

 

中枢棲姫-壊(再生するのにもう少しかかりますね。嫌がるスイキを強引に連れて来れば良かったかな……)



【5ワ●:贈られた選定の奇跡】

 

 

1 鎮守府(闇)、地下室にて。

 

 

わるさめ「アッシー、私のためのお仕事おっつかれー☆」

 

 

明石「水槽に入れといた。男手でも深海棲艦艤装は重いんだぞ。といか兄さん、俺より姉さんのほうが力があるということを覚えておいてくれ」

 

 

提督「――――あ、あれ?」

 

 

わるさめ「どったのー。春雨ちゃん建造終わったから早く違法改造に入ろうよ。前の時は一時間くらいだったけど、今回はどうなるか分からないし」



提督「深海妖精が二の数います。留守の間に誰か増やしましたか……?」

 


わるさめ「んなことするやつ、うちの鎮守府にはいないと思うよ……」

 


提督「明石君の肩に乗りました」

 

 

明石「お、マジだ。なんか柄が悪そうな面した妖精がいるな。深海艤装ぶちこんだから出てきたのか?」

 


提督「明石君って視えましたっけ……?」

 

 

明石「……」

 

 

明石「なんで俺にも視えるの!? あ、いやいや、普通に考えてこいつ深海妖精じゃねえってことじゃないのか?」

 

 

提督「わるさめさん、初霜さんとぷらすまさんか龍驤さんを連れて来てください」

 

 

わるさめ「あいよー。龍驤は抜錨してる。館内放送借りるからねー」タタタ


 

提督「意思疏通して、みますか」

 

 

仕官妖精「簡単な自己紹介と利用条件をご説明します」

 

 

仕官妖精「本官は、海の傷痕より最優秀者に贈られました選定の奇跡の深海妖精です。そうですな、呼び方は秘書、いや、仕官妖精でありますな」

 

 

仕官妖精「普通に言葉を喋れば聞くので。それと本官は最優秀のあなた以外には使えないのであります。あなたが他の者に従え、という命も役割を越えた意思疏通と判断するようになっているのであります」

 

 

提督・明石「!?」

 

 

提督「……」

 

 

仕官妖精「本官は現存する装備妖精以外の妖精能力を有した妖精です。建造の違法改造、解体と違法解体、開発と廃棄の役割を有している特別かつ一流の腕前を持った妖精です」


 

仕官妖精「大本営で此方の話は聞いていますよね。元の想は海の傷痕の『友』といったほうが分かりやすいでありますか」

 

 

提督「!」

 

 

仕官妖精「中課金以上という条件はありますが、深海妖精可視の才能も与えられます」

 

 

提督「も、もしかして君が……」

 

 

仕官妖精「はい。あなたが見たのは本官です。あなたを見つけたのも本官です。あなたからは面白そうな気を感じたので選定しましたが、大当たりであります」

 

 

仕官妖精「元帥、江風、初霜の3名は本官が才を与えても本官を視界に収めた訳ではありません。本官の存在には気が付きませんでした」

 


仕官妖精「そこの明石君と秋月には本官の事情により、深海妖精の可視の才を与えます」

 

 

明石君「アッキーにも? なんで?」

 

 

仕官妖精「愛ゆえ。あなた達は本官の」

 

 

深海妖精「子孫であります」

 

 

明石「突然そんなこといわれても! 妖精にお前は子孫だとかいわれたところで、そうなんだってならねえぞ!」

 

 

提督「……、……」

 

 

提督「海の傷痕の友の子孫ですか。なるほど、明石君に適性が出たのは海の傷痕の管理者権限が原因か……」

 

 

提督「しかし、なぜこの代です?」

 

 

仕官妖精「たまたまです。明石君のほうは本官にそっくりであります。海の傷痕は30年に1度だけ、本官の家系を街に伺いに行くのであります。その際に本官そっくりな明石君を気に入って海とご縁を持たせたようであります。ちなみに予測ですが、これ以外に考えられないのであります」

 

 

仕官妖精「以上であります」

 

 

提督「明石君、あなたの19世紀時代の先祖については」

 

 

明石君「知らねえ。アッキーも親父も知らねえと思うよ。産まれた頃からじいちゃんばあちゃんもいなければ、家系図なんてねえしさ」

 

 

初霜「はい、馳せ参じました」

 

 

ぷらずま「なにかあったのです?」

 

 

提督「水槽の中の深海妖精が見えますか?」

 

 

ぷらずま「見えません」

 

 

初霜「あれ、二人います……」

 

 

仕官妖精「おっと、電にはタッチであります。廃課金者には深海妖精可視の才を贈るのであります」

 

 

ぷらずま「み、視えたのです!」

 

 

わるさめ「戻ってきたぞー。違法建造はよー」

 

 

提督「とりあえず始めますか。本官さん、わるさめさんの違法改造は可能ですか。可能ならば、所要時間も教えてもらいたいのですが、お仕事のことなら答えて頂けますか?」

 

 

ぷらずま・初霜・明石「……」

 

 

仕官妖精「イエスであります」

 

 

仕官妖精「違法改造可能であります。通常の深海妖精ならば1時間でありますが、本官の性能なら所要時間は5分であります」

 

 

仕官妖精「春雨の機能をいかがなされますか」

 

 

提督「といいますと?」

 

 

仕官妖精「五種類、それと本官ならば一種類をアライズさせた場合、ステルスがかかる状態に建造可能であります。その場合は精神影響が大きくなり、建造時間も三時間ほど頂くのであります」

 

 

提督「精神影響の程は……」

 

 

仕官妖精「アライズ時に少し凶暴性が増すのでありますが、あなたが彼女の運用に差し支えることはないのであります」 

 

 

提督「わるさめさん、 一種類をアライズさせた場合、ステルスがかかる状態に改造可能のようですが、トランスした時に凶暴性が増すそうです。ちなみに運用には問題ないとのこと。どうします?」

 

 

わるさめ「よく分からないけど、どう考えてもそっちのが良いだろ」

 

 

わるさめ「それでは、どぼーん!」

 

 

仕官妖精「ワ級艤装+駆逐棲姫艤装+ロ級艤装+潜水棲姫艤装+防空棲姫艤装の資材」

 

 

仕官妖精「最終確認であります」

 


仕官妖精「春雨艤装+ワ級艤装+駆逐棲姫艤装+ロ級艤装+潜水棲姫艤装+防空棲姫艤装の資材で春雨適性者の違法建造を開始しますか?」

 

 

提督「よろしくお願いします」

 

 

仕官妖精「承ったのであります」

 

 

……………

 

……………

 

……………

 

 

提督「とのことです」

 

 

ぷらずま「明石君と秋月さんの御先祖様が、海の傷痕の友ですか。なるほど、合点が行きました。明石君の適性者は管理者権限によるもの、と」 

 


初霜「私も、会っていたのですよね。しかし、記憶にはありません、ね……」

 


明石「違法改造の過程、面白いな。これ、深海妖精のトランス現象を利用してわるさめさんの肉体と同化させてんのか。こりゃ、深海棲艦と艦娘を使って妖精化させているような感じだ」

 

 

提督「……ですね。深海棲艦艤装が、溶け込むというか、これは建造のために一部の深海棲艦の壊-現象を艦娘に無理に適応させた結果、ですかね。生命活動維持のためにトランス現象が生体に機能として備わる、線が濃そうです」

 

 

提督「ホントになかば妖精化、ですね……」

 

 

ぷらずま「身体が消えたり現れたり、違法建造中の意識がないわけなのです……忌々しい……」

 

 

初霜「軍に報告するべき、ですよね」

 

 

提督「はい。わるさめさんの改造過程は撮影しているので、後で書面と一緒に大淀さんの元へと送ります」

 

 

仕官妖精「終了であります」

 

 

わるさめ「ふっか――――つ!!」

 

 

提督「お疲れ様でした。気分はどうですか。体調が悪くはありませんか?」

 

 

わるさめ「大丈夫。むしろ元気だよ」

 

 

提督「ならよかった。ちなみに1時間ですが、体感時間はどれ程で?」

 

 

わるさめ「10秒くらいかなー」

 

 

わるさめ「ぷらずまー! 新型わるさめちゃんの特訓に協力して! 今度こそお前を完全に倒す!」

 

 

ぷらずま「まあ、私が適任ですね。司令官さん、どうしましょう?」

 

 

提督「演習場でお願いします。他の人達は全て陸にあがって、抜錨地点にいるようにいってください。ぷらすまさんの手に余ったり、暴走した場合は押さえ付けなければなりませんので。それと空母の方に声をかけて偵察機でわるさめさんの戦いを記録してください」

 

 

ぷらずま「了解なのです」

 

 

提督「それと本官さん、こんなお仕事は協力しては頂けますか」

 

 

提督「――――、――――」

 

 

仕官妖精「意思疏通の範疇、可能であります」

 

 

明石「兄さんの発想は相変わらずイカれてんね。俺はそろそろ工廠に戻るわ。飯喰って姉さんと代わる」

 

 

明石「あ、こいつに手伝ってもらえば捗るんじゃねえかな」

 

 

仕官妖精「子孫が先祖をアゴでこき使う。絶対にお断りなのであります。それに本官は最優秀者の言葉にのみ従うのでありますが、工廠で協力しろ、との命には従わないのであります」

 

 

仕官妖精「調子に乗るなよ、不出来なせがれが、であります」

 

 

提督「とのことなので、ガンバってくださいね」

 

 

明石「なんとなくこいつ俺と血が繋がってる気がしてきたわ……」

 

 

提督「さて、初霜さん」

 

 

提督「娯楽室にでも行きましょうか。届いたあなたの資料を読んでいて、いくつか質問もしたいですし」

 

 

初霜「はい。分かりました。ですが、質問されても答えられないかもしれません。なにせ海を見つめていただけなので……」

 

 

提督「……いえいえ、ただいま自分のなかであの時のあなたになにが起きていたのか、予想はできましたので」

 

 

提督「せっかくなので、本官さんも着いてきてください」

 

 

仕官妖精「承ったのであります」



【6ワ●:初霜さんの不思議で理解不能な過去話:解凍編】

 

1

 

提督「当時の事件の捜査資料です。大本営で大淀さんに頼んで入手したものです」



提督「犯人の老夫婦はすでに死亡しています。初霜さんの証言は拙いですね。それを踏まえてもう1度、自分が何点か質問します」

 

 

初霜「取調室みたいな空気が……」

 

 

提督「乙中将はどうも兵士のプライバシーのため、あまり深く聞いてはいなかったみたいですね。今回、自分は根掘り葉掘りです。気分が悪くなれば一旦止めますので。あ、どうぞ。お茶と菓子です」

 

 

初霜「ありがとうございます」

 

 

提督「5歳のクリスマスの日に、ショッピングモールの屋外駐車場で誘拐されたと。その時はなされるがまま、と」

 

 

初霜「……はい。迷子になりまして。私は出入口付近のベンチにいました。おばあさんに声をかけられて、親御さんが探しているよ、と。呼んできてあげるから、と車に乗りました。今思うと子供過ぎて人を疑うことをしなかったせいですね……」



提督「それで誘拐されて、例の海の見える小屋に押し込められた、と」

 

 

初霜「はい……そこでおかしいとは思ったのですが、その、海が綺麗で」

 

 

提督「老夫婦はすでに世を去っています。最初に取調を受けた翌日に、おじいさんのほうは息を引き取り、後日おばあさんも後を追うように亡くなっています。今はもう話はできませんが、警察は取調室で調書を取っています」

 

 

提督「おかしな宗教染みた思想があるのではないか、と警察も自宅を調べたのですが、これといったモノは見つからず、ですが、妙な発言をしたそうです」

 

 

提督「『あの子には後利益があると思った。その子を閉じ込めるだなんてとんでもない。あの子はあそこを離れなかった。我が家を選んだ座敷わらしです』となかなかイカれた発言を」

 

 

初霜「初耳です。こ、怖くなってきました……」

 

 

提督「初霜さん、時計のなかった部屋といいましたね。それで4年も海を眺めていた、と。そこに関して、資料にないのでお聞きしたいことがあります」

 

 

提督「そうですね、食事を摂った回数と、お手洗いや入浴はどの程度の回数です?」

 

 

初霜「いえ、そのような習慣のあまり覚えておりません。と、私は刑事の方にお話した、気がします」


 

提督「そうですね。本当に誘拐されて身でその場所で4年間も海を眺めていた不思議な子としか思えない内容です。ただ海が好き、では納得行かない面があります。これはテレビ局が取り上げそうな不思議な事件ですよ」

 

 

提督「ですが、覚えている限りでいいです。出された食事の種類でも、お手洗いに行った回数をお答えください」

 

 

初霜「…………、…………」

 

 

初霜「お手洗いは、30回くらい、かな。おかしいですよね。4年ならもっと多いはずです。すみません、やはりここのことの記憶は曖昧です……」

 

 

提督「……、……」

 

 

提督「今だとですね、その不思議は説明できなくてもありません。初霜さんの記憶を信じて説を立てますと」

 

 

提督「『初霜さんは4年間、そこにいましたが、体感時間では一ヶ月程度しかそこにいない』と認識している」

 

 

初霜「確かに、そのくらい、ですね。それは楽しい時間は早く過ぎるということなのでしょうか……」

 

 

提督「それもあるかもしれませんね。5歳の子供自体が大人から見たら不思議の塊みたいなものです。けど」

 

 

提督「その時でしょう?」

 

 

提督「本官さん、あなたが初霜さんにちょっかいをかけたのは。この子の謎に関わってる犯人、あなただとしか思えません」

 

 

士官妖精「……」

 

 

初霜「は、はい? どういうことでしょう……?」

 

 

提督「あなたがその4年の多くの時を過ごしたのはロスト空間である可能性、です」

 

 

提督「ファンタジーの類ですので、現実的な解答を導き出さなければならない刑事からは難しい発想かもしれませんね……」

 

 

提督「現存する人類の中で唯一、ロスト空間の内部を直接的に観測した唯一の存在となります」

 

 

初霜「ろ、ロスト空間!?」

 

 

提督「本官さん、出来ますよね。こちらはもうそれが証明可能となっていく段階です。深海妖精は深海棲艦を建造する時は資材とともにロストする」

 

 

提督「ならば、人間である初霜さんをロスト空間に連れていくことは可能であるはずです。深海妖精が意思を持って陸にいるだなんて考えられないので消していましたが、あなたが出現した。自由に歩いて移動できるみたいですし」

 

 

初霜「どうなんですか」キッ

 

仕官妖精「いやはや……本官を見てそこに辿り着くとは、頭の回転が速いであります。これが海の傷痕が舌を巻いた見当をつける才能でありますか」


 

仕官妖精「まあ、深海妖精可視の才を与えた子は限られているので、見えるのならその子があの子なのでしょう。故にその通りであります」

 

 

仕官妖精「子供の想というのは総じて質が高い傾向。その子は海を一目見た時からすでに『廃課金』であります。それほど深く広く、まるで海のように、海を愛した」

 

 

仕官妖精「想のプロフェッショナルの目から見ても、理解の及ばない神秘の領域であります」


 

仕官妖精「19世紀の人類の誰一人として持たなかった想ゆえ、海の傷痕には理解を越えた最大瞬間風速の想でありますな。それは海の傷痕に対して有効な武器であるという訳ではなく、興味を引くという意味であります」

 

 

仕官妖精「ただの人間でありまして、その想を調査するために、ロスト空間にご案内する必要があったのであります。最も海の傷痕は途中で投げ、結論付けたのであります」

 

 

仕官妖精「これは理解するべきモノではなく、『自然と同じく、ただただそこにあるという真実が美しいモノである』と評し、理解を愚かだと投げた」


 

仕官妖精「海の傷痕が『その精神性を神と同位置に飾った海の母なる器』であります」

 

 

仕官妖精「ま、此方のほうのロマンの話であります」

 

 

初霜「なんとなく分かります、ね。夜空に浮かぶ星をただ眺めている時に、隣でどうして星が輝いているのか、とか説明されるのは不粋、です」

 

 

仕官妖精「そういうことであります。あなたがどうして美しいのか、そこに理由は要りません。事実だけがあればいいのであります」

 

 

仕官妖精「以上でありますな」

 

 

【8ワ●:先祖として、未来の子らに御詫び申しあげたく。】

 


提督「ロスト空間とは一体なんなのですか?」

 

 

仕官妖精「応答不可であります。本官は発言制限がかなり緩いのでありますが、アドバイザー兼武器のようなものです。攻略本ではないので、そのような言い回しは応答不可であります」

 

 

提督「……」

 

 

提督「まあ、初霜さんの証言からどんな場所かは推測可能ですね」

 

 

初霜「……、……」

 

 

初霜「艤装が想を溜め込むモノなので、艤装は電波を発信して情報を海の傷痕というメインサーバーに発信する無線デバイスで、それを介さない普通の人間の想を調べるために海の傷痕と直接繋げるための有線のような、モノでしょうか?」

 

 

提督「……、……」

 

 

提督「そうですね。その例えは多分、的確です。ロスト空間というのは肉体と精神の両方が飛べるという点を踏まえると精神世界ではなく、別世界ですね……」

 

 

初霜「肉体も、ですか」

 

 

提督「老夫婦が座敷童だのなんだと。ボケてないとしたら、初霜さんが消えたり現れたりしていたからかもしれませんね……」

 

 

初霜「なるほど……」

 

 

提督「ロストし、ロスト空間に行ったと思われる兵士は多いです。女神装備が発動するだけですから。ですが、ロスト空間内で意識を保てるとなると、海の傷痕のいう通り、あなたは特異です。海の傷痕が生まれついてのバグということも少し分かった気がします」

 

 

提督「加えていえば、ぷらずまさんやわるさめさんの違法改造中の意識もロスト空間に、という説もあります。先程わるさめさんに聞いたら、本人達いわく、一時間の時間が10秒程度の体感時間であると言いましたから、ロスト空間では現実空間と時間の流れも違うのかも」

 

 

提督「本官さん、意思疏通の範囲内でロスト空間に誰かを連れて行けますか?」


 

仕官妖精「結論から言えば可能であります。が、条件はあります。まず生きて戻って来られるかは保証しません。最悪、人の体から魂が抜け落ちた人形になるのであります。海の傷痕の許可なしにリンクするというのは」


 

士官妖精「19世紀の歴史を叩きつけられる恐れがあるということであります」

 

 

提督「……、……」

 

 

提督「………、………」

 

 

提督「人の脳の処理能力を越えてパンクする恐れがあると?」

 

 

仕官妖精「いいえ、心の器の問題であります。想の矛に対して想の質が盾となります。要するに心が折れると、そのまま肉体が死亡します。精神影響による肉体への影響は現代の知識でも」

 

 

提督「なるほど、ロスト現象は、確かに艦娘が死亡してから行われる。つまり、意識のない状態。違法改造時は建造時の夢見のシステムを利用して、被験者から情報負荷をシャットアウトしている……?」

 

 

仕官妖精「申し訳ないのですが、ロスト空間においては制限がかかっているので、ヒント程度、あなたの説が当たっているかは応答不可であります」

 

 

提督「深海妖精は深海棲艦を建造する役割があり、そこの技術行程にロスト空間という作業場に行くため、連れて行けるのは艤装と人間、つまり艦娘なら連れて行ける。そして、妖精の補助があれば生身の人間でも行ける」

 

 

提督「丁准将は、もしかして……。海の傷痕は瑞穂について全てを答えたわけではなかったんですね?」

 

 

仕官妖精「応答可でありますな」

 

 

仕官妖精「瑞穂の被験者は人として終わった。これはどう解釈するかでありますな」

 

 

提督「人として終わる……」

 

 

提督「もしかして、人、じゃなくなるという意味ですか……?」

 

  

提督「5種は解体可能、7種は解体不可能、8種は……」

 

 

提督「妖精に近い生態になる?」

 

 

仕官妖精「正解であります。妖精というイメージが固定化しているあなた達には盲点であります。見た目がアレなので。それにあなた達は誤解をしているのであります」

 

 

仕官妖精「違法改造は化物になっていくのではなく、種類が多いほど、妖精化していくのであります。その中で兵士として運用するのなら、最もバランスが取れている5種でありますな。精神影響がありますし、自らはロスト空間には行けませんが、艤装に関してはトランス現象をほぼ完璧に使いこなせて、解体可能でありますから」

 

 

仕官妖精「一概に強くなる、という訳でもありません。海の傷痕はあなたが正規ルートで深海妖精を発見したのを知ると、新たなシステムを構築し、ゲームバランス的に違法改造者は現存している電と春雨、まあ、2名までと定めました」

 

 

仕官妖精「ここまでが本官の応答限界であります」

 

 

提督「……十分です。8種は妖精化している。故に8種ならばロスト空間に移動可能。ならば瑞穂:バグとの意思疏通によってロスト空間へ人間は飛べる。なるほど……」

 


提督「先代の丁准将は深海妖精を使わずとも、瑞穂:バグを利用してロスト空間を調べていたのか……」

 

 

提督「これはぷらずまさんや中枢棲姫勢力とはまた違う違法、ですね。ロスト空間に飛べる確実な方法の漏洩を嫌って、海の傷痕はあの鎮守府を破壊したのか……?」

 

 

提督「あの場のメンテナンスの御詫びでは生きている者に限りましたが、フレデリカ、そして先代の丁准将も『廃課金』に該当する人物でしたね?」

 

 

提督「そして、当時の初霜さんは同じく廃課金の想の質。ロスト空間に飛んで意識を保てるのは、廃課金と評される想の持ち主のみ、ですね?」

 

 

仕官妖精「オススメはしないのであります。向こうで過ごす時間はこちらとは違うのは察しているご様子。少しいるつもりがそこの初霜のように4年近くもいた、だなんてオチがつきかけないのであります。廃課金を失っては海の傷痕との決戦に差し支えるのであります」



仕官妖精「それに本官の責任が重すぎるのでやりたくねーのであります」

 

 

初霜「個性が出ました……」

 


仕官妖精「そもそもロスト空間に行ってどうするのか、という話であります。あそこは海の傷痕の産まれた全ての想が還るべきところ。海の傷痕が現海界する前の職場に過ぎません。そこに行ってなにかすればその時点で違法行為、このゲームに勝つためにゲーム会社のサーバーを弄ろうなどと、『BAN:抹消』されるだけであります」

 

 

提督「ロスト空間とは海の傷痕の故郷であり、全ての想が還るべきところ、なのですね」

 

 

初霜「ですね。なるほど、分身存在である妖精は会社員みたいなものだから行き来可能なパスを持っている、と」

 

 

仕官妖精「……あ」

 

 

仕官妖精「本官もうお口チャックでありますが、最後に海の傷痕に関して言わせて欲しいのであります」

 

 

仕官妖精「海の傷痕はこの規模の戦争ゲームの運営を365日24時間一人でやり始める生まれついての社畜生命体、フレデリカのせいで最近は現海界を何度もして、出張の嵐。大変そうなのであります」

 

 

仕官妖精「本官からいわせてもらえば海の傷痕は想の軍艦ではなく社畜の軍艦であります」

 

 

初霜「嫌に貶しますね……」

 

 

仕官妖精「あの子は今も、孤独なのであります。生きる理由ばかり探している。必死で生きていれば、後付けでつくと信じて、寝床を欲さない夢追人なのであります」 

 

 

仕官妖精「本官は元は人間だったので分かるのであります。あの子は人間との共生手段を持ち得ない。想で繋がることで理解は出来ても、殺戮の本能は受け入れられないのですから」

 

 

仕官妖精「人間と海の傷痕は、まるで艦娘と深海棲艦のようであります」

 

 

仕官妖精「憐れな子、我々の想が生んだ孤児は、生きるために自らが入る棺桶を探すようになった始末であります」

 

 

仕官妖精「故にこの戦争ゲームはクリア可能。理由も感情も、海の傷痕:此方は用意した。あなた達の倒す敵は、海の傷痕である、と世界が共通認識するほどまで、今を生きる人間を一丸にさせた存在であります」

 

 

仕官妖精「感謝しろ、とはいわないのであります」

 

 

仕官妖精「本官は、涙など流せませんが」

 

 

仕官妖精「生前の本官は、間違えた」

 

 

仕官妖精「あの子の友となり、あの子の心に住んでしまった。本官は、あの子の本質を見誤り、敵対し武器を取ることを躊躇った」

 

 

仕官妖精「人間になろうとしていたナニカを、人間にしようとした愚かな人生でした」

 

 

仕官妖精「その結果、後世に大きな傷痕を残す羽目になってしまった。情にほだされ、友ならば時に命を奪うことも情けなのだと気付かずに。海の傷痕という壊れかけた軍艦を、雷撃処分するべきだと気付かずに」

 

 

提督・初霜「……」

 

 

仕官妖精「先世代の尻拭いに未来の子らを巻き込むなどと、いつの世も繰り返される醜態でありますが、世を去った本官はそれを声を大にして、謝罪するのであります」

 

 

仕官妖精「あの日の意味を本官が、変えてしまったことを」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――先祖として、未来の子らに御詫び申しあげたく。

 

 

 

――――本官は、海の傷痕:此方の

 

 

 

 

――――友としての役割を果たせず、

 

 

 

――――死を遂げました過去の亡霊でござんす。

 

 

 

 

 

――――ここに今一度お願いの儀を。

 

 

 

 

 

 

――――本官は、代わりにそれをしてくれる、

 

 

 

――――飛びきり優しい想の持ち主を、選定してきたのであります。

 

 

 

 

 

――――未来の子らよ、今を生きる目映い輝きを以てして、本官が消し去れなかった闇を振り払ってもらいたく。

 

 

 

――――この戦争の終結を以て、第二次世界大戦は終わるのであります。

 

 

 

 

 

 

――――どうかどうか、暁の水平線に到達し、

 

 

――――本官の友を、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――戦争を、休ませてあげて。

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

【7ワ●:丙甲連合軍 vs 覚醒:鎮守府(闇)】

 

 

1

 

 

提督「龍驤さん、今日はよろしくお願いします」

 

 

龍驤「バッチリやで。第2艦隊の準備はすでに終わらせてある。そっちの準備ももう終わってはいるんやろ?」

 

 

わるさめ「おーい、司令官さん、頼まれたことは全て終わったゾ☆」

 

 

提督「了解です。ということなので全ての準備は終わりました。お互い念のために今演習のルールの確認をしておきましょう」

 

 

龍驤「各自に離脱意向信号あり、ここの鎮守府のスターティングメンバーは12名、丙ちゃん甲ちゃんのところは各6名ずつ。各鎮守府からそれ以上の参加は認められず、リタイアした兵士の復帰も当然ダメ。装備は応急修理要員と女神はなし。用意した通信設備や離脱意向信号に細工を施すのはアウト。演習が終わるまでは燃料弾薬ボーキの補充、入渠はなし。それ以外は何でもアリ。どちらかのスターティングメンバーが0になるまで続くサドンデスやね」

 

 

提督「ですね。演習会場は以後の仲直りのため、娯楽施設に富んだこの鎮守府(闇)です。演習場の哨戒は甲大将のところの7駆が担当してくれるそうです」

 

 

提督「まあ、例えぷらずまさんが基地型艤装を長時間使用するために、少し演習会場を埋め立てしてもルール違反ではありませんよね」

 

 

龍驤「そうやね……」

 

 

ぷらずま「司令官さん、お友達を全て集めましたよ。お願いするのです」

 

 

ぷらずま「最近の司令官は引きこもりで姿を見たのも久し振りなのです」

 

 

提督「すみません。色々と考えなくてはならないことが多くて集中していました。その間、皆の様子は」

 

 

ぷらずま「生温い空気を換気しておいたのです」

 

 

ぷらずま「その換気のための消費資材は、燃料12400、弾薬15250、鋼材18505、ボーキ9508、そして250の高速修復剤なのです」

 

 

提督「使い込みすぎですね……」

 

 

龍驤「ほんまの地獄やったで……」

 

 

龍驤「みんな、手足欠けても戦わされてたんや……」

 

 

龍驤「海に、海に、皆の体の一部が浮いてたねん……赤い海、で」ブワッ

 

 

提督「回収しましたか? それ深海棲艦の建造資材になるんで」

 

 

龍驤「まずそこかい! キミも相当な鬼やな!」

 

 

提督「すみません」

 

 

ぷらずま「もちろん回収しました」

 

 

ぷらずま「訓練で泣き言をいわなかったのは、瑞鶴さん、明石君、秋月さん、卯月さん、ゴーヤちゃん、阿武隈さん、わるさめさんですね」

 

 

提督「死人がいなくて何よりです」


 

ぷらずま「皆、見違える程です。さあ、司令官、いつものお言葉を」

 

 

提督「言うべきことは先日に間宮亭にて伝えまして、皆さん各々がこの演習、海の傷痕との決戦に向けて訓練に励んでいたことは知っています」

 

 

提督「しかし、今だからこそ1つ伝えることを加えます」

 

 

提督「ここから指揮を執るに当たり、お願いはもう止めます。今のあなた達には失礼に当たると判断し、今回の龍驤さんの指揮も含めて」

 

 

提督「全て、命令、とします」

 

 

提督「では皆さん全員で、丙少将と甲大将のお出迎えをよろしく」

 

 

一同「了解!」

 

 

2

 

 

甲大将「あー、聞こえるか? 直に到着だ。お前の鎮守府に来るのは初めてだなー」

 

 

提督「ええ、よろしくお願いします。丙少将もどうぞお手柔らかに……」

 

 

丙少将「柔い勝負をする気はない。お前とは手合わせしてみたかった。演習の機会を頂いたこと元帥に感謝しているよ」

 

 

丙少将「そしてお前が鎮守府で彼女、いや、彼等にどういった教育をしているのかも気になって訓練の様子も見てみたかった」


 

提督「打ち明けますと、怒られるほどのホワイトです。なにせ自分の言葉は全てお願いでしたからね」

 

 

丙少将「……」


 

丙少将「兵士には幼い子供もいる。訓練の度合いに関しては規定があり、軍学校で覚えたはずだ」

 

 

丙少将「彼等には未来がある。戦いが終わった後のことも考えて、教育的な面でも、気を配らなくてはならない」

 

 

丙少将「大丈夫だろうな?」

 

 

提督「もちろんです。暁さん達が拾ってきた犬を飼うのを許可するほどですよ。施設面を利用してオフの時は快適な生活を提供できており、勉学に励む人もいます」

 

 

甲大将「おー、お前のところは艤装を身につけてのお出迎えか。やる気満々だな」

 

 

丙少将「護衛の引き継ぎでもしてくれるのか。なかなかいい心意気だな」

 

 

提督「そう、かもしれませんね。自分がなにかしてあげられたのかは分かりませんけど、いい方向に成長してくれたみたいで鼻が高いです」

 

 

提督「自慢の兵士達です」

 

 

 

 

 

 

ぷらずま「勝たなきゃ!」

 

 

ぷらずま「ゴミなのです!!!」

 


ぷらずま「なぜ私達がこのような演習をする羽目になってしまったのか!」

 

 

一同「電さんや提督のせいではなく、その他が弱いからです!!」

 


ぷらずま「その通り! 私は最強であり、司令官は最優でありながら、このようなお遊びを組まれたのは誰のせいか!?」

 

 

一同「私達が弱いせいです!!」

 


ぷらずま「声だけは大きいのですこのダボどもが!」

 

 

一同「申し訳ありません!!」

 

 

ぷらずま「誰に与えてもらう勝利なのです!!」

 

 

一同「提督です!!」

 

 

ぷらずま「ならばダボどもに聞く!!」

 

 

ぷらずま「戦争とはなにか!!」

 

 

一同「完全否定の殺し合いです!!」

 

 

ぷらずま「敗北とは!!」

 

 

一同「死です! 同胞への侮辱です!」

 

 

ぷらずま「その通りなのです! この軍の穀潰しども!!」


 

ぷらずま「そして先日、軍は私達の至高神を裁こうという! 究極的なまでの愚を犯したのです!!」

 

 

一同「はい! 絶対に許されません!!」

 

 

ぷらずま「必死せよ!」

 

 

一同「すでに必死かつ必殺の刃に!」

 

 

ぷらずま「我がお友達に今一度聞くのです!」

 

 

ぷらずま「テメーらの必殺とはなんなのです!?」

 

 

一同「必ず殺す、ではなく!」

 

 

一同「必ず殺さなければならない、です!」

 

 

ぷらずま「よくぞ抜かしたのです!!」

 

 

ぷらずま「敵は血祭りにあげるのです! テメーらが通る海の色はいつだって深紅なのです!」

 

 

ぷらずま「殺戮を躊躇わず、卑劣といわれ、品のない戦法も躊躇わずに行使する我が闇の同胞達よ!!」

 

 

ぷらずま「その命の価値の!! 御旗を高く掲げ!」

 

 

ぷらずま「死してくるのです!」

 

 

ぷらずま「それが生きてくるのです!!」

 

 

ぷらずま「私達の戦いはいつだってそうだったのです!」

 

 

一同「イエス、マム!!」

 

 

ぷらずま「私は心より、お友達の皆さんを!」

 

 

ぷらずま「愛しているのです!!」


 

一同「勝利で! 報います!!」ビシッ

  


一同「My god is open-the-door!」

 

ヒャッハー

 

ドオオオン!

 

 

 

 

 

 

 


 

 

提督「このような過激な教育をした記憶は全くなく……」

 

 

丙少将・甲大将「…………」


 

丙少将「ずいぶんアウトな指導をしているみたいじゃねえか。暁と響、陽炎、不知火にまで」


 

丙少将「響があんなに腹から声出して叫んでんの初めて見たぞオイ……」

 

 

甲大将「色々とドン引きだわ。お前は自分を神だと兵士に教えているのか」


 

提督「ですから、全く記憶にございません」

 


……………

 

……………

 

……………

 

 

提督「えー、皆さん」

 

 

提督「やる気があるのは結構ですが、あのようなパフォーマンスは上官への粗相に当たるので今後はお控えください」

 

 

阿武隈・瑞鶴「ですよねー」

 

 

暁「や、やらないわよ。い、電のお願いだから聞いてあげただけよ」

 

 

響「楽しかった」


 

伊58「こっちの士気もあがったよ。ただの試合前のラフプレイでち」

 

 

2

 

 

提督「瑞鶴さん、演習での成長結果は鹿島さんが報告書を書いてくれていたので確認しましたが、これ真実ですか?」ピラッ

 

 

瑞鶴「マジマジ。驚いた?」

 

 

提督「かなり」

 

 

提督「明石君に鋼材使って艤装に細工しましたね」

 

 

瑞鶴「魔改造って程でもないし、装備改修ならぬ艤装改修ね。軍艦扶桑ほどじゃないけど色々つけたというか」

 

 

瑞鶴「龍驤と鹿島さんが私にアドバイスしてくれてて、その結果この形が一番しっくりきたという」

 

 

瑞鶴「ずっと訓練に打ち込んでたからねー。そりゃ強くなってるわよ」

 

 

提督「……大鳳さんですが、彼女の艤装は制空争いにおいて弓や式神式よりも有利な点が多いです」

 

 

瑞鶴「銃は卑怯よねー……」

 

 

提督「大鳳さん、加賀さん、グラーフさん、サラトガさん、空母系において、素質の高い方達です。この4隻相手だとなにもかも総数値で負けますが」

 

 

提督「仮に瑞鶴さんが相手した場合、均衝にできそうですか?」

 

 

瑞鶴「あー……多分」

 

 

提督「了解です」

 

 

瑞鶴「優勢に出来る」


 

提督「……」

 

 

提督「えっと」


 

提督「すごいこといいますね……」


 

瑞鶴「まあ、見てなさいって」


 

瑞鶴「いうは易しだからね。最初は大人しめだけど、戦いで私がどれだけ進化したのか証明してあげるわよ」

 

 

瑞鶴「最初の頃みたいにぽんこつ空母なんていわせないからね」

 

 

提督「本当……皆さん少し見ない間に変わりましたね」

 

 

提督「よろしくお願いします」

 

 

瑞鶴「っす」ビシッ

 

 

3

 

 

加賀「この手によせる袱紗朱の色~」

 

 

加賀「この目ひらいて その顔見れば」


 

加賀「翼束ねて波涛を超えてあげる~」

 


グラーフ「指を絡めて抱き締めたならー」


 

サラトガ「素敵な歌です。ビューティフル!」

 

 

大鳳「せめてそういう自由は打ち合わせが全て終わってからに……というかグラーフさんにこんな1面が……」

 

 

グラーフ「音楽は国境を越えるのだぞ。演歌は実によい音楽だと常々、ビスマルクが教えてくれたんだがな」

 

 

グラーフ「日本の詩人はいいな。これが大和の心か」

 

 

サラトガ「私も好きです。にゃーごと鳴くなー! ニャンと鳴けー!」


 

サラトガ「ふふっ」

 

 

大鳳「サラトガさん古いですそれ……」

 

 

加賀「大丈夫、油断はしないわ。赤城さんを下した鎮守府ですし」

 

 

加賀「向こうには5航戦のあの子がいますから」

 

 

グラーフ「む、加賀のことだから5航戦の子と一緒にしないで、とかいうものだと」

 

 

加賀「まあ、提督を爆撃するようなあの頃のままなら、そういいますが」

 

 

加賀「顔を見れば分かるわ。あの子は強くなってます。少なくとも5航戦の名に恥じぬ程度には」

 

 

大鳳「まあ、油断大敵なのは同意見ですね」

 

 

サラトガ「勝ちに行きますが、欲をいえば演習なので楽しい方がいいです。何事もそう。戦争を除いて、ですが」

 

 

グラーフ「私には戦闘を楽しむ、という感覚は難しい。娯楽ではなく、任務だからな」

 

 

加賀「あ、向こうの提督が」

 

 

サラトガ「なめんなよ! にゃー!」

 

 

提督「!?」ビクッ


 

サラトガ「キュート。ふふっ、びっくりしています」

 

 

グラーフ「アメリカ人は自由だな。自由の国だからか?」

 

 

大鳳「グラーフさんも、急に歌い始めたじゃないですか……」

 

 

グラーフ「日本文化が悪い」

 

 

大鳳「そんな無茶苦茶な……」

 

 

明石「おーい!」


 

サラトガ「はーい?」

 

 

秋月・明石「なめんなよー!!」

 

 

秋月・明石「にゃー!!」

 

 

サラトガ「!」パアア

 

 

サラトガ「面白い子達がいますねっ」

 

 

4


 

伊勢「元気そうだね」

 

 

陽炎「思っていた鎮守府とは大分違ったからね。ま、遠征や哨戒面で割と黒めに働かされてるけど」

 

 

伊勢「大分、違ったんだ」

 

 

不知火「主に司令のイメージが、ですね。最近では電さんも。仕事面では割と想像通りのところです。あ、先ほどのアレはただの景気付けですから」

 

 

陽炎「刺激は絶えないわね……」

 

 

伊勢「刺激はそうだね。この鎮守府の噂は良くも悪くも絶えないから。暁と響は元気にやれてる?」

 

 

伊勢「響は割と適応力は高いけど、暁は性格的に心配だったんだ。聞いてはいるけど、どうも」

 

 

陽炎「……ま、今は問題ないわね」

 

 

不知火「強いていうならば、最近までわるさめさんとお話しているのは見たことないですね」

 

 

陽炎「そこは響もそうね。私達は来てすぐに上手くやるためにわるさめと演習してスッキリさせたけど」

 

 

不知火「あの二人はそういう性格ではないですからね。でもフランクな人も多いですし、別に鎮守府に馴染めていないわけではありませんよ」

 

 

陽炎「そうそう。今はもうこの日に向けて仲良く特訓していたし、丙さんの件はもう大丈夫だと思う。向こうにわるさめのやつと一緒にいるわよ」

 

 

不知火「演習前に座禅を酌んでいます。雪風さんもいたかと」

 

 

伊勢「そっか……少し様子を見てこようかな」

 

 

5

 

 

伊勢「……なにを焚いているの?」

 

 

暁「精神を落ち着けるためのお香でしゅ」

 

 

伊勢「緊張しているんだね……」

 

 

響「わるさめさんいわく、たまーに司令官が部屋でやってたりする。お香を焚いて座禅を組んで瞑想すると頭と心がクリアになるみたく、真似を」

 

 

わるさめ「……」

 

 

雪風「なかなか趣があって面白いです! 伊勢さんもご一緒にいかがですか!」

 

 

伊勢「私はいいや。ところで」


 

わるさめ「なんか用?」

 

 

伊勢「……」

 

 

わるさめ「ま、顔を見れば分かるよ。私が丙のやつ襲撃した件だよね」

 

 

わるさめ「言葉で解決はしまい。だから謝罪は言わない。雪風のやつは割と怒ってもいないみたいだけど」

 

 

雪風「過ぎたことな上、丙さんが許したのなら私が怒ることではありません、はい!」

 

 

わるさめ「とのことだけども、あんたの場合はカゲカゲとヌイヌイのタイプだな。私と戦いでケリつけたい」

 

 

わるさめ「直接戦えるかはさておき、勝ち負けは決まる。要はそういう演習でしょこれ。こっちの司令官も、そっちの丙のやつとは因縁があるみたいだし」

 

 

暁「……」

 

 

響「わるさめさん、ちなみに日向さんも怒ってるよ。あの人はそういう相手に演習前に話には来ないけど」

 

 

伊勢「そうだね。というかうちの鎮守府の全員があの時は怒ってる」

 

 

わるさめ「まあ、そういうのがあんたらの強味だしね。結構結構コケコッコですよ。言葉で済みそうならこの場で土下座してたけど、そんな風じゃない」

 

 

わるさめ「ただ私は」

 

 

わるさめ「もうこっち側で、海の傷痕は倒さなきゃならないからさ。そっちだってそうだから、来たんでしょ」

 

 

伊勢「……うん」

 

 

わるさめ「この戦いで最大級に詫び入れるよ。過程も結果も踏まえてさ」

 

 

わるさめ「背中を預けられる程度の存在にはなったと、評価を改めさせて」

 

 

伊勢「……、……」

 

 

伊勢「あなたも変わったね。雰囲気が前と全然違う。駆逐艦ってそうだよね。子供な子が多いけど」

 

 

伊勢「少し会わない間に、背が伸びてみえる。成長していることがある」

 


わるさめ「老けこんでんね。あんたそういえば艦娘歴は明石さん並に長いんだったっけか」

 

 

伊勢「25年かな。専門学校辞めて兵士になった日からそんなに経ってる」

 

 

わるさめ「ほう。何の学校?」

 


伊勢「保育士のだよ。事情があって兵士になったんだよね。まあ」

 

 

伊勢「今まで見てきた司令官の中で丙少将が、最も私の理想だった。負けないよ」

 

 

伊勢「大和を失ってからもう3年近くも経つね。この演習は、勝つことに意味がある。いい加減、あの人を笑わせてあげたいから」

 

 

伊勢「戦争、だね」

 


5

 

 

阿武隈「よろしくお願いします」

 

 

日向「ああ、よろしく頼む」

 

 

日向「……」

 

 

阿武隈「……」


 

日向「阿武隈は、瑞雲、どのくらい行けるんだ」

 

 

阿武隈「すみません、仰っている意味がわかりません……」

 

 

日向「瑞雲だよ。知らないのか?」

 

 

阿武隈「いえ、知ってはいますが」

 

 

日向「それでどのくらい行けるんだ」

 

 

阿武隈「そもそもあたしは瑞雲積めないですし……」

 

 

日向「それは済まなかった」


 

阿武隈「い、いえ」

 

 

阿武隈(なんなの、これ……)

 

 

日向「好きか? 瑞雲」

 

 

阿武隈「まだ瑞雲引っ張るんですかあ!?」

 

 

日向「自己紹介がてら、瑞雲ー」


 

阿武隈「むしろ瑞雲馬鹿にしてません!?」

 

 

日向「あっはっはっは」

 

 

6

 


明石さん「はい、お待ち!」

 

 

卯月「ギリギリだぴょん」

 

 

明石「俺が作ってやったモンで納得しなかったせいだろ」

 

 

卯月「お前が作ったの懐中時計仕様じゃないし、あれモチーフ完全にドラゴンレーダーだし」

 

 

明石さん「頼む相手を間違えたとしか。弟子に光沢のデザインを求めるのが間違いです」

 

 

秋津洲「そうかも。明石君、実用性しか考えないから、開発妖精の意思疏通は明石君のほうが高いみたいだけど、見た目的な希望は明石さんのほうが器用かも」

 

 

卯月「うーちゃんに妖精可視才能もあればなー……というか、これ司令官に頼んだのうーちゃんがここに来た時だし、工作艦は色々と忙しそうぴょん」

 

 

明石さん「ブラック艤装ですから……っと、あれあれそこにいるのは丙少将ではないですか」

 

 

丙少将「お久し振りです。そういえばあなたもこの鎮守府に着任したそうですね」

 

 

卯月「敵だぴょん」

 

 

秋津洲「演習前から提督自らこっちの情報を探りに来たの?」

 

 

丙少将「なんかお前らあいつみたいな思考回路に染まってんな。そんなちゃちな真似しに来たわけじゃないぞ」

 

 

丙少将「あの、明石さん、弟子のほうと話させてもらってもいいですかね」

 

 

明石さん「もちろん。秋津洲ちゃん、卯月ちゃん男の話があるとのことなので私達は少し散歩がてら挨拶回りに行ってきまっしょい♪」

 

 

秋津洲「了解かも!」

 

 

卯月「明石君、演習の作戦について口を滑らしたら死刑な」

 

 

明石君「やかましい。そこまで馬鹿じゃねえから、安心してどっか行け」

 


7

 

 

明石「それで丙少将、俺になんか用スか。工廠で作業しながらでいいですかね」

 

 

丙少将「いいよ。そんな込み入った話じゃねえし」

 

 

丙少将「お前ら兄妹、なぜここに配属希望をしたんだ。甲さんところも勧誘の話来てたんだろ。元帥から直々に出向いて口説いたって大淀さんから聞いたぞ」

 

 

明石「あんたのところからも来ていたな。明石の姉さんからはあんたのところを推されたよ。まあ確かに報酬は向こうのが弾むし、工作艦は手当てがすげえな」


 

明石「世の中って不公平ですわ」

 

 

明石「特別俺は頑張ったわけでもなく、たまたま適性があっただけ。たった1つの運や才能でこうも変わるとか、ガンバってるやつに悪い。正しく人生はクソゲーです」

 

 

明石「あんたら将校なんてパーティーの土産だけで、昔の俺の給料の倍の土産をもらうとか」

 

 

丙少将「どんなデマだそれ。俺ら対深海棲艦海軍は肩身が狭えよ。深海棲艦といつまでてこずってんだって。安全な海域を増やせば単純に国利に影響するガキでも分かる仕事だ」

 

 

丙少将「将校なんか容赦なくコロコロ交代すんぞ。特に俺なんかは甲さんみたいにコネもあればカリスマあるわけでもなく、乙さんみたいな嗅覚もなければ目立った戦果をあげたことねえ」

 

 

明石「撃沈者、一番少ねえんだろ?」

 

 

丙少将「その誇りを一部で腰抜けって呼ばれる始末だ」

 

 

明石「軍学校の過去の卒業者の情報みたけど、あんたんとこ一番人気あったみたいだし、いい提督なんだろ」

 

 

丙少将「成績上位者は誰も俺のところを希望してないだろ?」

 

 

丙少将「俺のことをよく分かってる。お前らみたいに深海棲艦を本気で殲滅しようとしているやつに、俺は指揮官として応えられねーや」

 

 

丙少将「今まで戦ってきたが、兵士の命を失ってまでも進ませる海じゃねえ。中枢棲姫勢力も、だ」

 


丙少将「まあ、それでも俺は割と自分に自身はあるがね。そういう指揮では一番だと思ってる。いつもお守り代わりに幸運艦入れるんだ。あの雪風は死神要素のない幸運の女神だよ」

 

 

明石「俺と秋月は運があるわけでもねえ。むしろ悪い」


 

丙少将「お前、軍への志望動機で誰も沈ませたくねえって書いたらしいじゃねえか。スタートは俺と同じだ」

 

 

丙少将「家庭環境の不遇も、妹を守るその動機も、まるで俺と同じだ。あいつを守りたいから、必死で勉強した」

 

 

明石「へえ、妹が軍にいたのか」

 

 

丙少将「死なせちまったけどな」

 

 

丙少将「大和だ」

 

 

丙少将「昔にお前んとこの提督の殴ったのは私情だ。悪いと思ってる。なぜならば、あいつの指揮は理想を無視したが、現実的かつ合理的だったからだ」

 

 

丙少将「でも、あいつの本音を大本営で見たよ。底を見せた。あいつがどんな心で指揮を取ったのか分かる」

 

 

丙少将「きっと人の気持ちが分からないやつではねえ。理解してなかったのは俺のほうだとも思う」


 

丙少将「あいつ、恐らくあえて俺にブン殴られるように答えた。察してはいたが、確信したよ」

 

 

明石「その時の兄さんのことを俺はよく知らねえけど、悪い人ではないぞ」

 

 

丙少将「どうかね。昔は腹のなかでお前ら兄妹をどう思っていたのかは微妙なところだ。まあ、俺とは合わねえ」

 


明石「……そういえばさ、俺が適性検査施設に行く前に大和の記事を見たよ」

 

 

明石「俺はその頃は海に無関心だったけど、飛び込んだ今ならその言葉の重みは理解できるよ。俺も世界で一番大事な妹がいるからさ」

 

 

丙少将「明石さんから聞いてる。だから、その心構えも性能も妹の秋乃ちゃんと一緒に来て欲しかったんだ」

 


明石「兄さんも俺と秋はあんたのところに行くべきだっていってたな。あの人はきっとあんたのことも見てるよ。でも、俺と秋はあの人が提督をやっているここが良かったんだ」

 

 

明石「それが受理された。心の在り方って上も大事だと思ってる証拠だと思うよ?」

 

 

丙少将「ここだけの話、元帥、乙さん、俺がお前を欲しがったのには共通の理由がある」

 

 

丙少将「お前が男だからだ」

 

 

明石「男女差別か? こっちは俺より強い女ばっかりで嫌になってんだよ……」

 

 

丙少将「男の提督なら分かる」

 

 

丙少将「指揮を執ることを軽視しているわけでもねえし、むしろそれが最も重要だ。だけど、完璧にはなれない。だから、堪える時は必ず来る」

 

 

丙少将「抜錨した兵士が欠けて帰投した時は堪える。指揮官としての自分に失望し、ほかの奴なら未来は変わってたんじゃねえのかなって思う」

 

 

丙少将「思うんだよ」

 

 

明石「腹割りすぎだ。あんたのところがどんな鎮守府かは知ってる。それ兵士にとってかなりの侮辱だぞ」

 


丙少将「自分に艤装があればって」

 

 

明石「……」

 

 

丙少将「お前は俺らのなかで唯一、直接的に深海棲艦を倒せるやつなんだよ。皆と海で肩を並べられる唯一の男なんだ。この意味は、大きすぎる」


 

丙少将「男として、お前に期待する部分もあるんだ。お前の誰も沈ませねえ、は艤装をつけねえ俺達とはまた違う意味と責任が含まれてくる」

 

 

丙少将「だから、期待してんだ」


 

明石「石碑を見れば分かるよ」

 

 

明石「これから先」

 

 

明石「泣きたくなるような目にも遭うんだろ」


 

明石「俺は深海棲艦と戦っても弱えけど、俺にしか出来ない役割はある」

 

 

明石「そのために装備改修も覚えたし、俺は俺の艤装を生かすために改造して頭を捻ってきたんだ」


 

明石「男の約束ってやつだ」

 

 

丙少将「がんばれよ。女とは支え合うもんだ。ただ守られるような男になるんじゃねえぞ」

 

 

丙少将「……そんだけだ」

 

 

丙少将「邪魔したな」

 

 

8

 

 

甲大将「つーかーまーえーたっ!」

 

 

秋月「!?」

 

 

秋月「きゅ、急になんですか!」

 

 

甲大将「んー? 秋月いたから演習前に精神攻撃しようと思ってさ」

 

 

秋月「残念ながら精神攻撃なんて私には効きません。私はろくな育ちをしていないお陰で、精神的にはタフなんです」

 

 

甲大将「そんな感じはしねえけどな。うちの江風と似た、実は弱虫タイプの女の子と見た」

 

 

秋月「失敬な! それは兄貴のアッシーのほうですよ!」

 

 

甲大将「本当にそう思っている訳でもないだろ。発作がお前の欠陥の象徴みたいなもんだと私は思ったんだが」

 

 

秋月「……」

 

 

甲大将「ところでよ、秋月艤装で建造した際に、先代の秋月の夢って見たか。その艤装、先代の壊れた艤装を修復して保管していたモンなんだ」

 

 

秋月「先代のことは知っています。夢でも何度か風景は観ましたよ。なのでそこからの精神攻撃は効きません!」

 


甲大将「なら死んだことは知ってると思う。先代の秋月は私が提督になってからの5番目の兵士だったんだ」

 

 

甲大将「江風のやつがヘマを秋月が庇ったから、首もと辺りに戦艦棲姫の砲撃が直撃。首が胴体から飛んだ」

 

 

秋月「……」

 

 

甲大将「お前にしか分かんねえから教えてくれ。どんな想を感じた。それがあいつの遺言だと思ってさ」

 

 

秋月「痛い、とか、死にたくない、ですかね。でも、ぼんやりした感じで温かい優しい怒りを感じました」

 

 

甲大将「……、……」

 

 

甲大将「そっか。ありがとな」

 

 

甲大将「やることが、増えたよ」

 

 

9

 

 

間宮「こうして厨房で肩を並べるのも久し振りですね。あの時にこの鎮守府から一緒に逃げた時以来ですね」

 

 

天城「そう、ですね。あの時は提督がいなくて深海棲艦が押し寄せてきて、逃げるだけ、でしたね」

 

 

天城「フレデリカ大佐の死体は見つからずで、この鎮守府は壊滅的な被害を受けましたが……」

 

 

天城「ここのモノの配置はあの頃のままですね。本当に懐かしいです」

 

 

ぷらずま「天城さんの和食の腕はお代わりないようで。まあ、間宮さんのほうがまだ少し上なのです」

 

 

阿武隈「そうですかあ。私は甲乙つけ難いですけど」

 


卯月「うーちゃんの舌では美味しいか不味いかしか分からないぴょん。美味しければなんでもいいし」

 

 

天城「皆さんもお久し振りですね」

 

 

阿武隈「そうですね。私と卯月ちゃんはあの時すでに街に行っていたので現場にはいませんでしたが……」

 

 

卯月「というか知らないのなら教えてもいいぴょん? 天城、あの時の鎮守府は相当の闇だったぴょん」

 

 

天城「色々と聞いています。全く気付かず、でした……春雨さんと電さんのケンカ? のような場面は珍しいな、と思って覚えてはいましたが」

 

 

ぷらずま「ちなみにあの鎮守府を潰したのは私なのです。中枢棲姫勢力と手を組んでこの鎮守府を叩き潰しました」

 

 

天城「知っていますが……確か解体の約束を破って怒ったんですよね」

 

 

ぷらずま「そうなのですが、口の軽いやつは誰なのです……」

 


阿武隈「まあ、色々と驚きました、はい。電さんは私達が戻ってきた時は最近よりずっと塞ぎ混んでいたので」

 

 

卯月「わるさめ着任の時の自殺宣言はさすがのうーちゃんもびびったぴょん」

 

 

間宮「……」

 

 

卯月「まあ、今は丸くなったぴょん。司令官のお陰かなー。あいつ、なんだかんだで電を助けたみたいだし」

 

 

ぷらずま「感謝はしているのです。あの人を司令官さんに選んだことは私の自慢なのです」

 

 

間宮「……」

 

 

天城「間宮さんは、ずっとここにいるんですよね。電さんが研究施設にいた頃もここにいたと聞きましたし」


 

間宮「私は……」

 

 

間宮「ここにいただけ、ですよ」

 

 

卯月「……」

 

 

ぷらずま「……天城さんは逃げ出したのです。丙のところに異動した時から何しているかよく知らないのです」

 

 

卯月「まー、妖精可視の正規空母だし、活躍は風の噂で。うちにも龍驤が来たけど、天城と比べたらうーん」

 

 

天城「龍驤さんはお強いでしょう。私、個人演習の公式記録で勝ったことありません。あの人、1対1だと恐ろしいくらい強いので……」

 

 

阿武隈「龍驤さんは意思疏通のレベルが高いみたいですよね。色々と器用なこと出来ますし、現場では司令官経歴もかなり活きるみたいです、はい」

 

 

ぷらずま「っと、私はそろそろ行くのです。司令官さんに呼ばれているので。ご馳走さまなのです」

 

 

……………

 

……………

 

……………

 

 

卯月「間宮さん、どうしたぴょん、と電がいなくなったので聞いてみる」

 

 

間宮「皆さんお変わりになりました。ここにいる人達は、提督さんも含めて良い方向に成長していると」

 

 

間宮「私は悪いところもあるのに、変わらないなって思いまして……」

 

 

間宮「成長しない私は、生きている意味ってあるのでしょうか」

 

 

天城「それをいうのなら私もですよ……あの頃からなにか変わったとは思いません。不幸だとは思いませんけど」

 

 

阿武隈「そうですよ。間宮さんがここにいるということ安心感があります。お料理の腕も更に磨きがかかっていると思いますし」

 

 

卯月「つーか、こんな料理が出来るだけでマシぴょん。うーちゃんの父上なんか本当になにも出来なくて、母上のお腹にうーちゃんだけ残して死んだどうしようもねーやつぴょん」

 

 

間宮「……」

 

 

卯月「生きる意味のレベル高いぴょん。うーちゃんなんかはまっているゲームのメーカーの新作が出るだけで生きていけるし」

 

 

卯月「ここの奴等、司令官からして基本的に重いぴょん。うーちゃんにはキスカの件もあるけど、割り切るって大事だし。生きる意味を探す前に、生きている理由を見つけるほうが楽」

 

 

卯月「すぐに見つかるぴょん。うーちゃんにとってのアブーみたいな。それが間宮さんにとっての電じゃ?」

 

 

天城「あの頃はイタズラ好きの可愛い駆逐艦でしたが、なかなか大人なこというようになりましたね。時の流れを感じます。身体も大きくなりましたし」

 

 

卯月「アブーはあんまり変わってないぴょん」

 

 

阿武隈「みたいですよ、間宮さん。そんなに深く考える必要もないんじゃないかな。そういうことでナイーブは一旦胸のなかに仕舞いましょう」

 

 

阿武隈「少なくとも演習が終わるまでは、です」



9

 

 

ぷらずま「お話とは」

 

 

提督「作戦自体に変更はないですが、ただ不安要素が悪い方向に流れた時に電さんに負担をかけることをお伝えしておきたくて」

 

 

ぷらずま「不安要素というのは秋津洲さん、暁お姉ちゃん、間宮さん、わるさめさん、瑞鶴さん、辺りですか」

 

 

提督「間宮さん、瑞鶴さん、わるさめさんですね。わるさめさんはいくら心を入れ換えようと汚染された精神影響が尾を引いていますので、それは結果的に直らず終いです」

 

 

ぷらずま「でしょうね。私もそうです。今更、ただの電には戻れません。春雨さんも同じなのです」

 

 

提督「ポカをしてしまう危険性がありますので、早期退場もあり得ます。作戦では瑞鶴さん間宮さんもわるさめさんに合流させるつもりなので」


 

提督「わるさめさんが早期退場してしまった場合、ぷらずまさんがその分の相手をしてもらいますので、制空権争いの後はクールタイムが終わっても後方で待機していてください。これだけです」


 

ぷらずま「了解なのです」

 

 

提督「もう1つ、これは不安要素というよりは気になっているだけですが、間宮さんってなにか悩みとかあるように見えますか?」

 

 

ぷらずま「……さあ、ただ間宮さんはいつもと変わりません。司令官さんが来る前から、例の女が提督をしていた頃から変わらないのです」

 

 

提督「……そういえば、ぷらずまさんにも聞きたかったことがあるんです」

 

 

提督「どうしてこの嫌な想い出が詰まった場所を選んで戻ってきたのです?」

 

 

提督「あなたの目的は司令官も含めて戦争終結のために真摯な戦力を集めることでしたよね。それはこの場所でなくても出来たはずですし」

 

 

ぷらずま「あー……響お姉ちゃんにも似たようなことを聞かれましたね。あの場では答えませんでしたし、いいたくねーことなのですが」

 

 

提督「思考に耽っていると、ふと疑問に思っただけです。すみません、悪い性格ですね。答える必要は」

 

 

ぷらずま「この鎮守府には嫌な想い出だけではなかったのです。腐っても大切なお友達と過ごした場所ですから」

 

 

ぷらずま「いつでも、変わらない景色が1つだけあったのです。ここに帰投して食堂に来ると間宮さんがお帰りなさい、といってくれた場所なのです」

 

 

ぷらずま「それがあの頃の私の唯一の支えでした」

 

 

ぷらずま「間宮さんはこの鎮守府に思い入れがありましたからね。実はここを復興したいと始めにいったのは間宮さんです。私もそれを聞いて賛同しました。私も間宮さんとここに戻って来たいと思った程の、強い想い出でした」

 

 

ぷらずま「研究所の他の鎮守府でもご飯が喉を通りづらいのです。結局、間宮さんのご飯が一番美味しいのです」

 

 

提督「……!」

 

 

ぷらずま「意外そうな顔ですね。この程度で、司令官さんの頭がクリアになったのなら幸いなのです」

 

 

ぷらずま「そろそろ元帥が大淀連れてくる時間なのでは。あんなジジイでも元帥なので迎えに行ったほうがいいのです」

 

 

提督「……そうですね」

 

 

10

 

 

元帥「ここは相変わらず広いな。これぞ税金の無駄遣いって感じだ」

 

 

提督「自分も最初は色々と驚きましたよ。まだ使ったことはありませんが、特に映画館とか、入渠施設の他にある銭湯も、です。本当に至れり尽くせりです」

 

 

元帥「そのほとんどの設備は電が付け加えたんだぞ。あの子、ああ見えて抜け目なくてな、取れるところで取ってくる子だったから……」

 

 

瑞鶴「元帥さん翔鶴姉は……?」

 

 

元帥「あー、翔鶴は連れて来ていない。まだ決定ではないからな。本人は来たがってるが、龍驤と瑞鳳も瑞鶴いるしな。この鎮守府、空母多いだろ。でもまあ海の傷痕戦では誰が上手く指揮を執れるかを重要視するからな、この演習で判断してからかな」

 

 

元帥「乙中将との演習を見た限り、准将のほうが5航戦の指揮に向いていそうだし」

 

 

伊58「というかなぜこの場でゴーヤを呼んだでち……」

 

 

元帥「ああ、そうそう。これもまた決定ではないが、海の傷痕との戦いは潜水艦だけでまとめるために伊58は異動させる可能性があるとだけ」

 

 

伊58「い、異動!? ゴーヤ、嫌だよ! 最後までここの鎮守府がいいでち!」

 

 

瑞鶴「ワガママになるけど、ゴーヤは色々と初期からお世話になってるし、最後まで一緒に戦いたいわね……」

 

 

提督「自分としても同じ気持ちです。ゴーヤさんには本当にお世話になっています。ぷらずまさんと同じ時期からこの鎮守府に尽力してくれましたから」

 

 

提督「今までの重要作戦、合同演習も、阿武隈さんと卯月さんのスカウトも、深海ウォッチングも、戦艦棲姫との戦いも、乙中将との演習も」

 


提督「ゴーヤさんがいなければ数々の作戦は遂行不可能でした」

 

 

提督「しかし、ゴーヤさん、これは仕方のないことです。艦隊が違っても戦う敵は同じで戦場も同じです」

 

 

伊58「で、でも……」

 

 

提督「どこであろうと同じ戦場を駆け抜けた戦友なのは変わりません」

 

 

伊58「提督さん……」

 

 

大淀「まだ決定ではありませんから、頭にだけは入れて心の準備はよろしくお願いします、ということです」

 

 

伊58「了解でち」

 

 

初霜「ただいま到着しました」

 

 

元帥「お、来たか。まず初霜はこの演習が終わってから少し研究所に来てくれ。准将が送った資料について、いくつか君に協力してもらいたいことがあるそうだ。ロスト空間の全貌が暴けるかもしれんとのことなので頼みたい」

 

 

初霜「どのくらいの拘束期間になりますか?」

 

 

大淀「未定ですが、早ければ2日3日、本当にすぐです。最長でも海の傷痕との決戦の3日前には、ですね」

 

 

初霜「了解です」

 

 

元帥「はい、以上。あ、准将だけは残ってくれ。少し話がある」

 

 

11

 


提督「お話とは……」

 

 

元帥「先代の元帥は知ってる?」

 

 

提督「もちろんです。自分の深海妖精論の始まりは先代の元帥殿のお言葉ですから、尊敬している人物のお一人です」

 

 

元帥「サブちゃんももう少し生きてれば良かったのになー。この戦争は終わらないっつって、わしを後釜に推薦してぽっくり逝っちまったからな。60の誕生日の日だったか。今頃あいつは地獄で顔真っ赤だろうな」

 

 

大淀「捕捉しておきますと、サブちゃんこと先代は今の元帥の親友でして」

 

 

提督「噂で聞いたことはあります」

 

 

元帥「海の傷痕との戦いだが、総指揮はまあわしが執ることになる。だがな、なにぶん歳で、持病もある」

 

 

元帥「作戦成功までどれ程の時間がかかるかは正直、読みとけん。ないとは思うが、こういったところも保険を打っておかねばならん」

 

 

元帥「甲大将は総指揮の柄ではないな。あいつは純粋な兵士だから。中枢棲姫の時に准将に出した指揮も適当だ。乙中将はあれは作戦の内側で使う性能だしな。あれは全体とか要らんこと考えさせると鈍る。丙少将も同じくだ。あれは保守的な役割を与えて初めて素質が上手く発揮できるタイプだ」

 

 

元帥「なので、対海の傷痕では准将に総指揮を与える可能性が出てきてるとだけ伝えておくな。まだゴタゴタが抜け切れておらず、海の傷痕の性能がデタラメ過ぎて作戦にも四苦八苦している」

 

 

提督「……、……」


 

提督「お任せを。ですが」

 

 

元帥「大丈夫。大本営で皆、准将を見る目は変わってる。今の君なら甲乙丙も納得するよ。問題は総指揮がどうこうではなく、兵士のほう」

 

 

元帥「乙中将の艦隊はある程度、君のことを認めている様子だ。まあ、どこも兵士はそんなもんだ。自分のところに勝った相手は認める。それでなければ自分達をとぼしめることになる」

 

 

元帥「結果は重視しないといったが、状況が変わった。甲と丙のやつにも勝ちたまえ」

 

 

提督「元よりそのつもりです。それも含めてこの鎮守府の全力をこの演習で振り絞ります」

 

 

元帥「よろしい。話は終わり」

 

 

11

 

 

明石「ええと、北上さんだっか。現明石……いや明石君のがいいかな」

 

 

北上「おー、君が例の男の娘。ツナギなんか着ちゃって。なかなかイケてますねえ」

 

 

明石「よろしく。握手」


 

大井「よろしくお願いします」パシッ

 

 

明石「すごいうざそうに手を払われたんだが……言葉と行動が矛盾してる」

 

 

大井「いえ、北上さんと握手したいのなら、その油臭い手を洗ってからですね。後、そーいうのは先に木曾とどうぞ」 

 


木曾「悪いな。北上姉と大井姉はこんな感じで、大井姉は基本的に男に対してきつい」

 

 

木曾「でも騎手みたいに尻をバシバシ叩ける」

 

 

北上「木曾っち、後は若いもん二人に任せましょう」

 

 

大井「本当に、止めてもらえませんか……」

 

 

木曾「ということでよろしく」ギュー

 

 

明石「力が強いっす」

 

 

木曾「お前の手はゴツゴツしているな。男って感じだ。俺は油臭いのも含めて好きだぜ」

 

 

明石「そういうあんたの手は柔いな。女の手だ」

 

 

大井「一応姉妹艦なのでいいますが、セクハラは止めていただけます?」

 

 

明石「そういう意図はないぞ!さっきからあんた当たりがきついな! 当たり屋か!」

 

 

江風「へへっ、しかし男が身内にいるってのも面白くなりそうだよなー」

 

 

江風「うちは提督も女だしさ」

 

 

秋月「色々と現実問題ありますよ」

 

 

木曾「まあ、異性だしな。俺はあんまり気にしないが。江風もそうだろ」

 

 

江風「まあ」


 

秋月「海で肩を並べるということは、風の悪戯による皆さんのスカートの中をアッシーに目撃されるということです」

 

 

江風「確かに」

 

 

北上「さてはそのために軍に入ったなー?」

 

 

大井「うわ最低、死んでください」

 

 

明石「つうかさ……」

 

 

明石「スカートはいてるほうがおかしいってのが世論だよ?」

 

 

一同「……」

 

 

江風「慣れすぎていて違和感とかなかったよ……」

 

 

木曾「まあ、カッコなんざ飾りだろ。とにかくよろしくな」


 

大井「……よろしくお願いします」

 

 

北上「北上さんを狙っては、大井なる力に呪われてしまうことでしょう」

 

 

大井「……」ギロ

 

 

明石「殺気込めるなよ……」


 

12

 


丙少将「事前通りで問題なしです。全員、出撃できますよ」


 

丙少将「日向、伊勢、雪風、漣、加賀、大鳳、うちのメンバーにはもう伝えるべきことは伝えています」

 

 

甲大将「こちらの木曾、江風、北上、大井、グラーフ、サラトガにも同じく」


 

甲大将「それで連合艦隊といっても、私の艦隊と丙少将の艦隊で、向こうを潰すわけだが、離脱意向信号の使用と、損傷具合、向こうの動き、この3つの連絡を重視してくれ」


 

丙少将「了解です。しかし、この演習場……いくつかポツンと陸地がありますよね」

 

 

丙少将「……通常とは異なるのは、電や春雨がいるせいでしょうか。というか、あれは最近、埋め立てたものとしか」


 

丙少将「でないと、波で崩れてますよね。明石が突貫でやったんですかね」


 

甲大将「陸上型の深海棲艦艤装のため、じゃねーの」

 

 

甲大将「海の中も気を付けないとな。ルールは災害でも中断しないと、むちゃくちゃな上、演習場に細工をしてはいけないというルールもない」

 

 

甲大将「本当になんでもしてくるやつらなのは、もう語るまでもないな」

 

 

丙少将「敵は深海棲艦だと思え、といってあります」

 

 

甲大将「まあ」

 

 

甲大将「こちらが勝ちを狙いに行くなら、向こうを沈める気概がいる。乙のやつにマジでなにしてくるか分からないっていわせるような奴等だし」

 

 

丙少将「俺は本音をいえば深海棲艦ならまだしも、うちの兵士らにそういうことさせたくないんですがね……」