2017-05-05 17:09:31 更新

概要

提督と艦娘たちが鎮守府でなんやかやしてるだけのお話です

注意書き
誤字脱字があったらごめんなさい
基本艦娘たちの好感度は高めです
アニメとかなんかのネタとかパロディとか
二次創作にありがちな色々
長い


前書き

40回目になりました
楽しんでいただければ幸いです お目汚しになったらごめんなさい
ネタかぶってたら目も当てられませんね

ーそれでは、本編をはじめましょうー


↑前「提督とバレンタイン3」

↑後「提督とポーラ」




提督とお花見



ー厨房ー


厨房に大きな鍋一つ

その中へ、どんだかどんだかと切られた食材が次々に放り込まれていく


バレンタインが明けての3月、なにかオマケの様な気もするイベントだが

もはや毎年のことだし、どうしてカレーなのかという疑問もあるが

偶には良いかとさえも思えてくる


提督「それで?」


切り終わった食材が鍋の中へと消え去った頃

そこを見るでも無く提督が口を開く


卯月「…なにが?」


その隣には卯月

作業台の上に、ちょんっと腰を引っ掛けて

何をするでもなく、床から離れた足を ぶらぶら と持て余していた


提督「暇なら手伝ってよ…」


鍋の中に杓子を突っ込み、ぐーるぐーるとかき混ぜる


卯月「暇じゃないぴょん…。うーちゃんはこれでも忙しいの…」


何がそんなに忙しいものか

あるいは、ぶらつかせている足にも何か規則性でも求めているのか


提督「ま、うーちゃん姉さんは へたっぴだしな」


それは、いつか包丁で指を切った時に、ゆー が卯月に下した評価だった


卯月「ぶー。下手っぴじゃないぴょん。お鍋かき回すくらい出来るし」

提督「?」


どうぞ?と杓子を傾けてみせる提督

ぴょんっと、床に足を付けると提督と入れ替わり、それに手を伸ばした


肩より上に上がる小さな両手

鍋の底を見ようと必死に背伸びをしている


そんな無理な態勢が長く続くはずもなく

次第に、卯月の体が小刻みに震えだした


かくかくと、ぎこちなく回る杓子

ふるふると、揺れ始まるつま先


元より、大人が使うために設計された厨房に、輪をかけてデカイ鍋

その前に立つ卯月の小柄な体は、アンバランスさに拍車をかけていた


提督「ほら」


見かねた提督が、卯月の両脇に手を差し込んだ


卯月「おぉっ」


声を漏らすと同時に、卯月の目線が上がっていく

覗き込むばかりだった視線が楽になり

震えていたつま先が苦行から開放されて垂れ下がる

楕円を描いていた杓子の動きもスムーズに円を描き出した


「あのね…」


そのまましばらく

二人で鍋をかき回していると、ふいに口を開く卯月


視線は鍋に落ちたまま、というよりも

力なく下がっている感じで、動いている手も何処か機械的だった


卯月「ずいほーと水無月が仲良くしてたの…」


ぽつりぽつりと話し始める卯月

その声に普段の張りは無く、彼女を支えている両手からも、力が抜けているのが伝わってくる


卯月「それでね、弥生と ゆーも仲良しさんだったの…」


それだけ聞くと「良かったじゃん」としか返しようが無かった

水無月もそうだし、ゆーだって 後輩が出来たばっかりだ

上手く馴染んでるようで何よりではある


それでも、その思う所を察するのなら


提督「欲張りさんめ…」


誰だって、大なり小なり考えたことはあるだろう


ー友達の友達は友達か?ー


「当たり前だろ」と言える人もいれば、遠慮する人だっている

そんでもって、こうやって 餅を焼く人だって少なくない案件だ


卯月「司令官に言われるなんて…」

提督「いっそ、この泥棒猫っとか言えば?」

卯月「言えるわけ…」


そりゃ、相手が全く知らない他所の娘だったり

嫌いな娘だったりすれば良いのだろうけど


卯月「ゆーも、水無月だって、好きなんだもん…」


だから余計に拗れる

ここで自分が突っかかっていっても

喧嘩にもならないってのは良くわかってるから


提督「カレーに餅いれても美味しいって言うよね?」

卯月「うーちゃんはお餅じゃないぴょん…」


そう、ヤキモチの末の八つ当たりなんて…


卯月「司令官は…平気なの?」


例えばそう、皐月と金剛だったり、望月だったり如月だったり

あるいは球磨…球磨?こっちはなんか想像できないけど


もっと言うなら


卯月「卯月と、皐月が仲良くしてたりしても…」

提督「いや、仲は良いだろう?」

卯月「そうだけど、そうじゃないぴょんっ」


小さなあんよを ぱたぱたと動かして抗議された


仲良くしてる、言い換えればイチャ付いている

卯月と皐月が?それを想像するより

追いかけっこしている想像の方が容易くはあるけれど


提督「はいはい…」


それじゃあと

抱えていた手を脇の下からお腹に回して、卯月を抱き寄せる


卯月「へ?」

提督「私なら…卯月ともっと仲良くする」


そうして、落とさない様に、離さない様に力を込めた


卯月「で、でも…皐月、は?」

提督「それは、あれよ?」


卯月ともっと仲良くする→今度は皐月がヤキモチをやく→

皐月を可愛がる→卯月がヤキモチをやく→無限ループ完成


提督「な?」

卯月「しれーかーん…趣味悪いって言われたことなーい?」

提督「今言われた」

卯月「以外で」

提督「そうだな…」


数えたって切りはないが

なんとなく、両の指を折りたたみながら

あの時と、この時と、その時だとか と考え込む


卯月「ちょっ、司令官…くすぐった…」

提督「…」


抱きかかえていた卯月のお腹

ちょうど指が横腹を覆っていたせいか

無作為に動かしただけで、悪戯に撫で回してしまっていた


提督「♪」

卯月「ひゃっ!?あはっ、やめっ、ほんとっ、あはははははっ」


止まらなかった

指を もぞもぞさせるだけで、面白いように身悶える卯月

消沈していた表情も くしゃくしゃに歪み

落ち込んだ声音も、どんどんと高く高く上がっていく


ガンッ!!


大きな音だった

何か、固いものを蹴っ飛ばしたようなそんな音だった


それに驚いた二人が、ビクッと動きを止める

同時に「あ」と漏れた声は、最初の音に比べると随分と気が抜けていた


鍋が傾いていた

手を伸ばそうにも、両手は塞がっているし

そもそも、こんなでかい上に重くて熱い鍋とか

そんな、どうしようもない物体を掴み取れるはずもなく


卯月「ぴょーん…」

提督「あーあ…」


次の衝撃は、鎮守府全体に鳴り響いていた




その後「何事っ!?」と、駆けつけてきた大鳳に

「火の前で遊んでるじゃありませんっ」とか、滅茶苦茶怒られた



ー執務室ー



ソファの上で提督と戯れついている卯月


皐月「なーにやってるのさ?」


それを、じとーっと目を細めた皐月が、机の上から見下ろしていた


提督「ん?皐月が何処までやったら、ヤキモチやくかなーって?」


そうして最後に、「ねー」と提督と二人声を合わせていた


皐月「やかないって。そんな子供じゃないんだから」


やれやれと、呆れた風に息を吐き

手元の書類へと目を落とす皐月だった


「あはっ、しれいかーん。そんな所さわっちゃくすぐったいぴょん」

「ふふっ、それじゃあこっちは?」

「やぁ、もー」

「お、可愛い声出たな」

「そんな司令官にはこうだぴょんっ」

「ちょっ、くっつきすぎだって、動けない」

「逃がさないぴょーん」

「卯月…」

「しれーかーん…にひひひ…」


皐月「…」


視界の端っこ

チラつく蜜時、耳の中に寄せては返す睦言の数々


反応したら負け、からかわれているだけ

それは分かる…分かるけど、分かるだけに鬱陶しい


「ちゅー…」


皐月「っ!?」


そこは、そこだけは許容できなかった

散々からかわれた後に、それを許せるほど大人にはなれないし

それを大人だと言うなら、いっそ子供のままでも全然良いくらい


すっと腰を浮かせる

椅子の上に敷いていたクッションを抜き取ると、問答無用で投げつけた


「あふっ」「ぴょんっ!?」


身を寄せ合っていた二人の間に割り込むように飛来するクッション

そのまま、横っ面を叩くように直撃すると

二人を巻き込んでソファの上に転がった


皐月「ばーかっ」


そう言って「べー」と、舌を出した後、そっぽを向く様に書類に向き直る皐月


皐月「…」


クッションが抜けたせいで下がる視線


やりづらい…


元々が司令官用の机だ

合わないサイズをアレで調整してはいたけれど…今は机の向こう側


三日月「もう、やりすぎ…」


呆れつつも窘めるような三日月の声

その隅っこでは、一人でくつくつ と笑っている望月


皐月「…」


やりづらい…


視線が下がったこともそうだけど

なんか仕事をする空気でもないし…

というか、また視界の端でイチャイチャされたらたまんない


皐月「ああっ、もうっ」


くしゃっと、乱暴に書類を掴むと

足の届かない椅子の上から飛び降りる皐月


そうして、向かう先は三日月に助け起こされた司令官の元


提督「なに?」

皐月「くっしょん…」

提督「自分で投げたんだろ?」

皐月「しらないっ」


許可を取るでもなく提督の膝の上に転がり込む皐月


提督「ふふっ…」

皐月「なに笑ってるのさ…」

提督「いや…」

皐月「?」


何でもないと首を振ると

疑問符を浮かべる皐月はそのままに、卯月の方へ視線を投げる提督


提督「な?」

卯月「なんという…」


あの悪趣味な無限ループが成立しそうになっていた


後は うーちゃん次第だぴょん…面白そう、だとは思う

きっと、ムキになった皐月が見られるだろう

それは甘美な誘惑(甘くてクリーミィー)で…そんな誘いを受けたうーちゃんは…


卯月「この泥棒猫っ」

皐月「へっ!?何言ってんのさ行き成りっ。ていうかこっちの台詞だしっ」

卯月「今はうーちゃんが遊んでたのっ」

皐月「遊んでって、仕事中だってこっちはっ」

卯月「そんなのうーちゃんには関係ないぴょーん、ぷっぷくぷー♪」

皐月「卯月っ、そろそろ怒るよっ」

卯月「関係がないと言ったっ」


「なにさっ」「やるぴょんっ」


口喧嘩から睨み合いに

あと一歩踏み込めば手が出るだろうと、一触即発な空気が漂う


提督 「三日月…いたい」

三日月「知りません。何笑ってるんですか」


そんな様子を、悪い顔をしながら眺めていると

ほっぺたを三日月に摘まれた



ー食堂ー



水無月「ふわぁぁ…」


眠そうに垂れ下がった目尻、所々好き勝手に跳ねている毛先

大きなあくびを隠しもせずに、よたよたと食堂に入ってくる水無月


瑞鳳 「おはよ、水無月」

水無月「うぅん…おはよう、瑞鳳お姉ちゃん、ぇへへへ…」


眠い目を擦りながらも、先に来ていた瑞鳳に挨拶を返すと

眠気に溶けた顔のままに口元を緩ませた


瑞鳳 「もぅ…。顔ぐらい洗ってきなさいよ」

水無月「んー、あとであとでぇ~」

瑞鳳 「まったく。こっち来なさい…」


知れたことを

後で、なんて言った奴がそれをやった試しなんてないものだ


ふっと息を漏らすと、水無月の手を取る瑞鳳

そのまま奥まで ぐいぐいと引っ張っていく

流しの前、真っ白な布巾をギュッと絞り、水無月の顔に押し付けた


水無月「わぷっ…」

瑞鳳 「動かない」

水無月「むぅ…」


逃げ出そうとする水無月を押さえ込み

揉みくちゃに顔を拭き上げる瑞鳳


水無月「乱暴だなぁ…もぅ」

瑞鳳 「嫌ならちゃんとする」

水無月「はーい」


間延びした返事だったが

それでも、何処か嬉しそうに笑顔を見せる水無月


瑞鳳 「何笑ってるの?」

水無月「なんでかな?」


そうしてまた、嬉しそうに微笑んで見せる


瑞鳳 「変な娘ね…。ほら、後ろ向いて、髪もぐちゃぐちゃじゃない」

水無月「良いってそんなの…」

瑞鳳 「良くないっての」


水無月の肩に両手を置いて、強引に回転させる

懐から櫛を取り出してみれば、好き勝手に飛び出たアホ毛を撫で付けていった




窓から差し込む朝日と小鳥の鳴き声

机には、優しい香りを運ぶコーヒーカップ

焼けたトーストにはバターと、卵焼き


北上「オムレツかスクランブルエッグにするべきだと思うんよ」


絵面としては何か浮いているそれ

瑞鳳に焼いてもらっている以上、間違いはないのだけど

いわんや、歓迎するまではあるのだが…


大井「味噌汁が欲しいわね」

北上「和食派め」


このモーニングセットに味噌汁なんて置いてしまったら

それこそ、なんと言って良いのやら

ホテルバイキングでやんちゃした子供のようではないか

なんて考えていると、ソーセージが食べたくなってくる


大井「静か、ね…」


そうして、しばらく食べ進めていると ふと思う

いやいや、向こう側ではお姉さん風を吹かせている瑞鳳がいるにはいる

吹かせすぎて ちょっと肌寒いぐらいだが、そんなもの騒ぎの内に入りはしない


一体何時ぶりだろうか、こんな静かな朝食は

なんて言えば少し大げさではあるけれど

そろそろ、桜色したちんまいのが「ずーいーほー」とか騒ぎ出しても良い頃だろうに


北上「寝坊でもしてんじゃないかい?」


何ともなしに天井を見上げる北上様


大井「そう、ね」


まぁ、そうだ

そう言われてしまえばそれまでだ

珍しいことでも何でもない

それで、寝坊した分だけ午後がやかましくなるのだって


北上「じゃ、なければ」

大井「?」


北上の声に、つられるままに意識をそちらに向ける


北上「あれ、とかね?」

大井「ああ…」


二人してそちらを見ると


「ほら、もっとゆっくり食べなさいって」

「たべてるって」

「ご飯粒ついちゃってるじゃない」

「えへっ、ごめんごめん」


そこには、やたら水無月を可愛がっている瑞鳳と

それはそれで、嬉しそうにしている水無月の姿


北上「入りづらいわなぁ、あれは…」

大井「そんなの。気にするような娘だった?」

北上「大井っち、悪戯っ娘にも種類があってね」

大井「?」

北上「構いたがる娘と構って欲しい娘ってさ?」


首を傾げる大井に、1本2本と指を立てながら話を続ける北上様


北上「構いたがる娘は、人の目なんか気にはしないけど…」


「おっはよーっ水無月ちゃんっ、瑞鳳さんっ」

「あ、むっつん、おはよー」


あんな風にね、と北上が視線を向ける先

食堂に飛び込んできた睦月が、妹に抱きついて頬擦りを始めていた


大井「構ってほしい娘は?」

北上「そうねん…」


構って欲しい娘は、意外とひと目を気にするものだ

それがこっちに向いてないのが堪らなく不安だからね


可愛く言えばヤキモチだ、言い換えるなら独占欲

何時でもどこでも自分を見てて欲しいって


大井「子供かっての…」

北上「でしょうよ…」


一息つくように、コーヒーカップに口を付ける北上様


北上「自己申告だってしてるんじゃん?」

大井「ガラスのハート?…冗談でしょ?」


その聞き覚えは確かにあるが

だとしても、その実、防弾爆仕様の特注品だって印象の方が強かった


北上「ありゃ、信じない?」

大井「まぁ…」

北上「あははははっ」


疑心暗鬼に頷く大井に、そりゃそうだと笑う北上様だった



ー港ー


ゆー「ふぅ…」


桟橋に手をかけて、海から上がるゆー

水を払うように首を振ると

揺れる銀色の髪が、朝日を照り返す波間の様に輝いていた


弥生「おかえり」

ゆー「ただいまです」


一息ついている ゆーにそっとタオルを差し出す弥生


弥生「怪我は?」

ゆー「へーき。ゆーは無敵です」

弥生「ふふっ。そっか」

ゆー「うん、そう」


そうやって、小さく笑い合うと

二人並んで桟橋を歩きだす


ゆー「うーちゃん姉さんは?」

弥生「さぁ?起きたらもう居なかったし…」

ゆー「それは…」


首を傾げる弥生に、目を丸くする ゆー


ゆー「雨は…」


うーちゃん姉さんが 弥生よりも早起きしてるなんて

日本語で言うところの、雨でも降るんじゃないかって


弥生「降りそうにないね…」


二人空を見上げても、本日は晴天なりといった感じだった


おかしなこともあるものだ




それから数日

特になんでもない日が続いていたように思う


大鳳「最近、静かね?」


ボウガンを構え、沖合に設置した◎に狙いを定める大鳳


瑞鳳「何がよ?」


その隣では、同じように狙いすまし、弓を引き絞る瑞鳳の姿


話しながらも、引き絞られている弦の様に どんどんと張り詰めていく空気

やがて、あと一秒、あと一刻、あとは瞬き一つ分の合間に

互いの指が動くだろうと、その僅かな間合いの中


大鳳「卯月と…最近遊んでる?」


押し込まれる指

GOサインを受けて、弾丸の様に飛び立っていく艦載機達


瑞鳳「へっ…」


離れる指

引き絞られた弦が、行って来いと背中を押して艦載機たちを叩き出す


はずだった…


ヒュンッと鋭い風切り音

みょんみょんみょんみょん…と、しなる弓

そうして、ぽちゃんと、指の支えを失った弓が海に落ちた


大鳳「はい、私の勝ちね」


勝負とは程遠い結果、争いなんて事も起こらない

オウンゴールで負けた方が まだ見られる光景

スタートラインにすら立てない者に勝負の機会なんてなく


大鳳の艦載機達は、ただただ真っ直ぐに飛んでいき

主がそうしたように、トリガー一回分だけの動作で◎を蹴散らしていた


瑞鳳「あ、ちょっ…」


水没した妖精さんを引き上げている内に終わった勝負

海水を啜った袖の重さを引き上げていると


大鳳「動揺は、するのね?」


意外、ではあった

もしかしたら、気づいてないんじゃ?

とさえも思っていたから


まさか、弓を射損じる程に心揺れるとは本当に


瑞鳳「動揺…私が?どうしてよ?」


その言葉に振り返る瑞鳳

そんな訳無いじゃないとは言う顔は、若干と言わずに引きつっている


大鳳「鏡、見る?」


手鏡を開いてみせる大鳳

なんだったら、回れ右をして海面を覗き込んでもらっても構わないと


瑞鳳「別に、普通でしょ…」


今の今までが、ちょっと過剰過ぎただけだって

今だって卯月と会話がない訳じゃない

ただ意味もなく、執拗に、からかってこなくなったってだけで


大鳳「最初からそうならね」


もう その普通は普通ではなくなっていた

少なくとも、私に、私たちにとっての普通は

ただ訳もなく、無軌道に、絡み合ってる二人の姿


大鳳「喧嘩でもしたの?」

瑞鳳「そんなの…」


首を傾げる大鳳に、返す言葉はなかった

自分にだって思い当たる節はないのだから


ただ、この数日何も言われてないなって、何もされてないなって

そう思うと、そう思った時には、自分で言う所の「普通」になっていた


大鳳「泣くくらいなら…」

瑞鳳「泣いてなんて…」


雫が落ちる

瞳からでも、頬から零れたわけでもない

ただ、水を吸った着物の袖が、堪えきれずに零しただけ

似てると言えば、少ししょっぱいってくらいなのに


ぽたぽた ぽたぽた ぽたぽた


ただただ雫が溢れて零れていく


大鳳「罰ゲームって、言い訳は?」

瑞鳳「いらない。そのくらい自分で出来るし…」


「そ」とだけ、簡素な声に背中を押されながら鎮守府のへ向かっていく瑞鳳だった




大鳳「反抗期、かしら」


そっけなく去っていく後ろ姿に

お姉さん悲しい、とかわざとらしく ゴチてみる大鳳


球磨「だれだって背伸びしたい時期はあるもんだクマ」

大鳳「あなたにも?」


何時から?とか何処から?とかもひっくるめて

ただ思い浮かんだ疑問を返す


球磨「球磨だって、プールで生まれたわけじゃないクマ」

大鳳「でしょうけど」


ただ、想像は付かなかった

最初に合った時から、こうも鷹揚だったせいだろうけど

あるいは皐月なら、そんな球磨の姿も知ってるのかも


大鳳「…大丈夫、かしら?」


既に見えなくなった背中を思う


とは言ったものの、喧嘩をしているわけじゃないのだ

仲直りも何も合ったものじゃないのがまた…

どうなって欲しいのか?

あるいは、今の状態が健全と言われればそうなのだけど


球磨「子供じゃねークマ。袖の振り方くらい自分で決めるだろうよ」


言うだけ言って、去っていく球磨


大鳳「…わからないわね」


それは、信頼なのか、無関心なのか



ー工廠ー



ゆー「ねぇ…」

夕張「?」


何かと思えば、作業台の向こうから ゆーが首を伸ばしていた


夕張「なーに?」


「あんまり近づくと危ないわよー」なんて、注意を促しつつ目下の作業を続ける

忙しいとまでは言わないが、あまり手を止めてる余裕もない感じ


焼け付いた砲身、ひしゃげた砲塔、回らない魚雷発射管

トンファーじゃないんだから打撃武器扱いするのはやめて欲しい、ほんと


何より厄介なのは

その全部が、ワンオフ や カスタムメイドの一品物だってこと

愚痴を言うなら「アンタらもう少し装備を大事に使いなさい」になるか


とは言え、戦果が出てる分あまり文句も言いたくないけれど


夕張「ふぅ…」


まずは一つと、完成した装備に自画自賛しつつ次の作業へと


ゆー「…」


伸ばした手が止まる

その視線が気になりすぎて、どうにも先に進めない

いつからこの娘は視線で人を縛る術を見つけたのか


夕張「どうしたの?さっきから」


観念して手を止めると、ゆーの方へと顔を向ける


ゆー「はい。うーちゃん姉さん、見ませんでした?」

夕張「?」


待ってましたと、ゆーの口から出た疑問は何とも珍妙なものだった


卯月の居場所、そんな事を聞かれても

「その辺?」としか言いようのないし、そうじゃなければ…

「弥生とか、瑞鳳のとこ?」と、なる


ゆー「んーん」


しかし、それは既に確認したと小さく首を振られてしまった


夕張「何かようなの?」

ゆー「何もは…」


その問いかけにも小さく首を振った後「ただ…」と、付け加えて


ゆー「やーよが捜してました、だから…」

夕張「弥生が、ね…」


なるほど、それはお手上げだ

弥生が見つけられないものを私が分かる訳もなし




どうしよっか?と、二人でにらめっこしていると


ゆー「あ、きそ…」

夕張「あぁ、丁度良かった」

木曾「ん、どうした?」


二人の視線を一身に受けながら、工廠へ入ってくる木曾さん


そうして


木曾「卯月の居場所だ?」


話を聞いてみれば、何とも珍妙な謎掛けだった


木曾「んなもん、その辺に…」


口を閉じ、そっと耳を澄ましてみる

年がら年中とも言わないが、その辺で騒いでるのが聞こえてくるだろうと


木曾「ん?」

夕張「でしょ?」


木曾が浮かべる疑問符に、頷く夕張


「静かだな…」それが、疑問符の答えだった


いやさ、それが今日だけならば そんな日もあるだろうとも思えた

しかし、そうではないと

思い返してみれば見るほどに、ここ最近は大人しい


木曾「まっ、良いんじゃねぇか?」


それが木曾の出した結論だった

急ぎの用も特にはないというのなら尚の事


だいたいがして普段が騒ぎ過ぎなんだ

むしろ、これぐらいで丁度いいんじゃないのかとさえ

どうせ騒ぐときは騒ぐんだから、静かな日くらい放っておけばいい


ゆー「…」

木曾「?」


じっと、見上げられていた

小さな目が、つぶらな瞳が、真っ直ぐな視線で見つめてくる

何も言わない以上、何を返せばいいか分からず、しばし二人で見つめう


ふと


その目が、すっと細まったように思った時だった


コンッ


脛に衝撃を感じた

痛いって程でもないが、たまたまでもない

動いた拍子にではなく、明確な意思を感じる刺激だった


木曾「…おい、蹴られたぞ?」


そう、理解したときには

小さな背中が、とったかとったか、工廠から出ていく所だった


夕張「心配なんでしょ?」

木曾「なんだ…喧嘩でもしたのか?」

夕張「だったら、もう少し楽だったんじゃない?」


思い出す限りで、卯月が誰かと喧嘩をしたなんて事はなさそうだった

その辺で見かけても、誰かにじゃれついているしで、おかしな所も見当たらない


違和感、それがあったとすれば

瑞鳳と弥生と、二人に構ってる時間が減った風に思う程度


夕張「そうやって、人は大人になっていくんでしょうね」


なんて、そんな風にも考えてしまう


木曾「なんだそれ?年寄りくせーな」


染み染みとしている夕張を鼻で笑う木曾さん


夕張「おっけ。木曾さんの装備は後回しね」

木曾「いやまて」

夕張「~♪」


動揺する木曾の呼びかけを、鼻歌でかき消す夕張さん


木曾「…待って、下さい」


言葉を正す

俺が悪かったと、口が悪かったと、だから話を聞いて下さい


夕張「なぁに?」


よろしい、とばかりに鷹揚に受け取る夕張さん


木曾「くぅぅ…」


そうやって、木曾は大人になっていく



ー食堂ー



アルプス一万尺~♪


食堂から漏れ聞こえる声

随分と楽しそうな歌声に合わせて、手を叩くような音が混ざっていた


瑞鳳「随分と、可愛いことしてるのね?」


その歌声に誘われるように中へ入ってみると

菊月と長月が向かい合い、互いの手の平を合わせたり離したりと


長月「え、あ、いや…何となく…」


見られていたことに気づき、バツが悪そうに頬を染める長月


菊月「ん?瑞鳳もやるか?」


それに対して

相方の方はしれっとしたままで、瑞鳳を誘ってくるくらいには余裕だった


瑞鳳「いい…。ていうか、なんでアルプス?」

菊月「いやな、子ヤギの上じゃ踊れないだろうって話を…」

瑞鳳「小槍、ね…」


ヤギさんは踏まないであげて欲しい


菊月「ああ、そうらしいな。長月にも言われたよ」

長月「あとはまあ、なんだ…。こんな遊びもあったな、と」

瑞鳳「ふーん」


それはそれは仲のよろしいことでと


長月「おい、なんだその笑いは…」

瑞鳳「べっつにー…」


その笑いとは、どんな笑いのことを言ってるのか

たぶんきっと、提督みたいな笑い方してるんだろうとは思う


菊月「一人か?」

瑞鳳「え、あぁ…」


が、そのニヤつきもそれまでで

菊月の問いかけに、思わず表情が固くなってしまった


瑞鳳「その…なに?」


普通に聞けばいいのに「卯月はどこ?」って

そうは思っても、どうしてか口が固くなる


照れているのとはまた違う

何か適当な用事でもあれば簡単なのに今はそれもない

それでも探しているだなんて

まるで、自分が寂しいからみたいだった


寂しい、なんて…


ただ、これはそう、手持ち無沙汰なだけなんだと自分に言い聞かせてみる

煩いだの、馬鹿ウサギだの、いつもいつも常日頃からじゃれ合って

かと言って、なくなってみると、余った力の矛先が分からないっていう


本当に、可愛げのない


居ても居なくても、人の邪魔ばっかりして…

もう少し素直になればいいのに…


それは、たぶん私だってそうなんだろうけど…


長月「卯月か?」

瑞鳳「へ?」


どれくらい考え込んでいたのか

長月の声に、ピタリと思考が止まった


瑞鳳「いや、いやいやいやいやいやっ、だれも卯月に会いたいなんてっ」

菊月「合いたいんだな」

瑞鳳「うっ…」


素直に、そう、素直になっていれば

大人しく頷いて「ちょっと用事が」で済んだ話なのに


菊月「嫌だ嫌だと言っても体は正直なんだな?」


ふふっと、悪戯っぽく笑ってみせる笑う菊月

それに「ちょっ!?」と、二人の声が重なった


長月「何処でそんな言葉を…」

菊月「司令官だが?相手が困っている時に使うといいって」


迷いなく、隠すものなど何もないと言い切る菊月


長月「あいつはぁぁぁぁっ!!」


だっと、駆け出すと

勢い良く食堂から飛び出していく長月だった


菊月「好きだな、長月も」

瑞鳳「いや、そういうんじゃないと思うけど、コレは」

菊月「そうか?」

瑞鳳「そうよ…」




食堂を出た後、一人当て度もなく歩く瑞鳳


意外、だった


「卯月を見つけたら菊月が捜していたと…」


遠回しに背中を押されていた、のかな?

これで私は菊月が捜してるって大義名分が出来たわけ、なんだけど


瑞鳳「なーにやってんだろ…」


喧嘩ですらないのに、菊月にまで気を使わせて

いっそ、喧嘩のほうがマシだったくらい、仲直りってゴールがあるんだもの

おかげさまで落とし所が分からずに、鎮守府をフラフラしてるだけ


瑞鳳「卯月…」


モヤモヤした…そわそわもした…


瑞鳳「あーっもうっ!?」


だんだんとイラついても来ていた



ー執務室ー



長月「司令官っ!お前っ、また菊月に変なことっ!」


乱暴に執務室の扉を開く長月

開き切るのも待てないと、我慢できなかった足が伸び、執務室に押し入った


長月「とっ!?」


そして、踏み出した一歩が、そのままブレーキに変わる


鼻先を掠めていく一陣の風

誘われるように、流れていく桜色


ただそれだけだったのなら、綺麗だな、なんて感想も生まれたかもしれないが

続く「ぷっぷくぷーっ♪」の鳴き声に、そんな気も失せていた


皐月「返せって言ってるだろっ、もうっ!」


さらに遅れて、皐月がその後を追いかけ回していく


ぐるぐる、ぐるぐる、ぐるぐると…


角から角へ、右へ左へ前後ろに、まるで、自分の尻尾を追いかけ回す犬のよう


三日月「姉さん…そんな追いかけ回したら余計に…卯月も、その辺で…」


止めようとする三日月の声が弱々しく聞こえて来る


三日月「あぁもうっ、司令官っ、笑ってないで止めて下さいって」

提督 「え?」


けれど、どうして?と不思議そうに首を傾げてみせる提督


三日月「不思議そうな顔しないでっ、私が間違ってるみたいじゃないですかっ」

望月 「落ち着けって。いつもの事じゃん?」


その当人は、言うだけあってソファの上で完全に伸びていた

部屋を廻る喧騒も、ただのBGM程度にしか思っていないようだった


三日月「でも、お仕事が…」

望月 「その分は司令官がやんだろ?」


「なぁ?」と、首を動かすのも億劫なのか

寝返りついでに、体ごと司令官の方へ転がる望月


提督「へ?」


けれど、なんで?と、不思議そうに首を傾げてみせる提督


望月「不思議そうな顔するんでないよ…。あたしが間違ってるみたいじゃんか…」


それもいつもの事かと 諦める望月

まぁ、いざともなればどうにかするだろうし

逆を言えば、それまでは絶対やらないだろうという確信もある


長月「なんだ、この騒ぎは…」

提督「やぁ、長月」


出鼻をくじかれ、完全に勢いを殺された長月が

追いかけっこの合間を縫って、提督が転がっているソファの方までやってくる


提督「卯月も鳴かずば撃たれまい?」

長月「それはそうだが…」


そう言って、周囲を見渡す長月

相も変わらず「ぷっぷくぷー♪」と、皐月をからかいながら走り回る卯月の姿


長月「此処にいたんだな…」

提督「?」


転がってる司令官を押しのけて、空いた隙間に腰を下ろす長月


長月「瑞鳳が捜してるみたいだったからな」

提督「あぁ…」


そういえば、そんな事にもなっていたかと頷く提督


望月「言われりゃ、最近はちょくちょくこっち来てるな」

長月「そうなのか?」

望月「昨日だって、三日月のスカートめくってたし…」


その視線を三日月の方へ向ける望月


二人の追いかけっこの前に 気が気でないようだったが

その実、片手ではしっかりと、スカートの裾を抑えていた


長月「…」


言葉が出ない

いや「何をやって…」とか言おうとも思ったが、それも面倒くさくなってくる


提督「白だった」

長月「言わんでいい」

望月「今日は…」

長月「やめてやれ」


「ちぇっ」と、小さく舌打ちをする二人

仕草こそ同じようなものだったが、その内情は


言えなかったことへの不満と

聞けなかったことへの不満で、別々のものだった




三日月「むぅ…」


ご立腹だった

追いかけっこを続ける姉二人に、だんだんと頬を膨らませる三日月


姉が言うことを聞いてくれない

そりゃだって、妹だし、一々言うことを聞く理由なんてないだろうけども、けども?

私、間違ったこと言ってないもん、少しくらいならっても思うけど

流石にそろそろやり過ぎだと思うし、その内コケて怪我でもしないかと心配にもなる


三日月「皐月、卯月ってばっ」


もう一度、もう一度だけでもと、声をかけてみる


卯月「べーっだ」


舌を出された


皐月「もうっ、三日月も見てないで手伝ってさっ」


逆に怒られた

私が悪いわけじゃないのに…


遠ざかっていく足音、角と角を巡って、再び近づいてくる


三日月「やめてって、言ったのに…」


そっと手を伸ばした

何て事もない、簡単だった

お互いがお互いしかみていないから、横槍を入れるなんて


皐月「ちょっ!?」

卯月「へ?」


さすが旗艦殿、いい反応をする…けど遅い

卯月に至っては、何が起こったのか分からないって顔をしていた


二人の手をつかむ三日月

その勢いのまま、卯月を抱き込むように体を回し

皐月の手を引っ張って、司令官の方へ引き倒す


皐月 「いってててっ…もぅ、何すんのさ、いきなり」

三日月「司令官、ソレあげます」


提督に抱きとめられながらも愚痴を零す皐月


皐月「あ、ごめんね司令官。どこか、ぶつけなかったかい?」

提督「んーん」


ゆっくりと首を振りながら

両手を、皐月の背中に回して少し、力を込めた


皐月「ぁ…。しれい、かん?」


苦しいのか身を捩る皐月

けれど、出来た隙間もすぐになくなって、提督に抱きすくめられてしまう


提督「飛び込んできたのは皐月でしょ?」

皐月「それは、三日月が…」

提督「うん、好きにしていいって」

皐月「そこまでは言ってなかったじゃん…」


身を捩る

後ろは行き止まり、下からくぐる隙間もないとなれば

自然と体は上へ上へと逃げていき、近づいた提督の顔に思わず目を逸らしてしまった


提督「嫌なの?」

皐月「いや、とかじゃなくて…ちょっとくるしいって…」

提督「逃げない?」

皐月「…うん」

提督「そう」


ほっと、息を吐くように皐月の体からも力が抜けていくと

そのまま提督にしなだれかかり、その肩に頭をのせていた




三日月「さて…」


皐月はこれでよしっと、後は司令官が好きにするだろう

ここ最近は、卯月に司令官を取られ気味だったし、皐月にとっても丁度よかったはず


後はと、残った問題に目を落とす


卯月「はーなーすーぴょーんっ」


ジタバタと、腕の中でもがいている卯月

放した所で また暴れるだろうし、どうにか口を封じをしたい所だった


三日月「ごめん、なさいは?」

卯月 「言うわけがない」


一応、反省を促しては見たけれど

何処からその自信が湧いてくるのか、きっかりと否定されてしまった


卯月「ひゃっ」


意外と可愛い声が返ってきた

卯月を抱えた腕、捲れた制服から覗く可愛い横腹

指を伸ばして、すぅっとなぞって見ると面白いほどに卯月の体が揺らめいた


三日月「…」

卯月 「うひゃっ、やっ、やめっ」


「あはははは」と、さっきとは別の意味で体を暴れさせる卯月

その体を逃げないように、抱え直すと本格的にくすぐり始める三日月だった


卯月「ひっ、ひぅっ、み、みかづ、やっ、やぁぁぁ…」


悶える体、上がっていく吐息、うっすらと上気し始める肌


三日月「ゴメンは?」


淡々と、反省を促す三日月


卯月「だ、だんこ、きょひするぅっ、ひゃぁっ!?」


となれば、さらに体を弄っていく三日月


卯月 「ま、待ってっ、もぅ、ダメ、言うから、ねぇっ」

三日月「そう?」


一時、三日月の指の動きが止まる


卯月「ご、ごめんな、ひゃぁぁっ」


かと思えば、卯月が言い切る前に再び指が蠢き始めた


卯月 「あははははっ、ず、ずるいぴょんっ」

三日月「うそぴょーん、なんてね?」

卯月 「ぶーっ、それうーちゃんのぉぉぉ、あはははははっ」

三日月「ほら、頑張って、ごめんなさいって」

卯月 「ご、ごめ…」

三日月「いわせませーん」

卯月 「ひゃっ、ふひひひひひっ」


それからしばらく

ゴメンと言えなかった卯月がついに、三日月の腕の中で力尽きる


卯月 「ふぅ…ふぅ…いじめっ子だぴょんっ…」

三日月「え?」


そっと、三日月の指が卯月の横腹に添えられる

まだそんな事言う元気があるんだと、それは単純に脅しであった


「ごめんなさいっ、ごめんなさいっ、ごめんなさいっ」


その後数日間、三日月には逆らわなくなった卯月でした




望月「んで、長月はどうしたのさ?」


イチャ付き出した皐月達は横に置いておいて

なんで、飛び込んできたんだと?最初の最初の話しを思い出す


長月「ん?あぁ、そういえば…」


なんだったか?

執務室に入った途端の騒ぎだ

何処かで落とした自分の話を探すように首を傾げると

一つ、思いあたりを拾い上げる


長月「あっ、そうだっ。司令官っ、また菊月に変な言葉教えただろっ」


提督の肩を掴んで、抱きしめられている皐月ごとガタガタと揺さぶり始めた


揺れる提督の体

抱きしめられている皐月も一緒に揺れているが

上手いこと振動が逃げているのか、心地よさそうに目を細めていた


提督「変なって…?」


はて、と首を傾げる提督


長月「誤魔化そうたってっ」

提督「ではなく」


長月の言葉を遮ると、あっけらかんと続きを口にした


提督「どれの事?」


ピタリ。長月の動きが止まる

揺れが収まったのが不満だったのか、皐月もそっと目を開いていた


長月「…」


どれ?どれと言ったか

きっと一つや二つじゃないんだろうな

ああ、最近「ながなが」だけで会話が成立しているし、きっとそのせいだ

私の知らないところで、私の目の前でいらん事を吹き込んでいたんだな


なんかもう、なんだこれ…

妹が、菊月が、ちょっと遠くへ行ったような

そんな寂しさと、二人の世界に感じる疎外感

そして、姉としての責任感に、その他諸々全てを十把一からげにすると


「全部だろぉぉぉっ!!」


声を大して不満を叫んでいた



ー中庭ー



春爛漫、にはまだ少し

けれども、それを感じさせる陽気の中、多摩が芝生の上で丸くなっていた


「たーま…たーま…」


ゆさゆさと体を揺すられていた

こんな日和に起きろ、なんて酷な事を言われている


猫らしく、うすくうすく、気付かれない程度に目を開き、何事かと耳をそばだてる


ゆー「ねぇ…おきてって…」

多摩「…(ゆー か」


そうして、目をつむり直して雑音を意識の外へ追いやった

相変わらず、体を揺さぶられているけれど

波間に揺られているようで、それはそれで心地よかった


寝ぼけ眼に考える

さて、なにゆえ ゆーに起こされているのか?

仕事かにゃ?いやいや、やることはやったはずだし

急ぎなら、こんな ゆっくりは起こさないだろう


で、なくても提督が呼んでるとか?

だとしても、日が暮れてから顔出せばいいだろうし?

急ぎなら、それこそ自分が来てるだろう


なら、ゆーの個人的な…ゆーの…


卯月、か…


思いつくのはそんな所だった


だとしても多摩は寝る

自分が口を出しても しようがないが故に

取り上げられた こたつの喪失感を埋めるがために




ゆー「むぅ…」


ご立腹だった


多摩が起きてくれません

まさか、ほんとに寝ている?


ないです

猫が狸の皮をかぶってるだけです

Admiralとおんなじ匂いがします、ほんとそういうのだけは得意な匂い…


叩き起こしても良いけれど

口を割らせる前に封じては…せめて出すものは出させないといけません


ゆー「3つ、待ちます…」


聞こえている、気づいている

そんな確信の元、指折り数を唱え始める


ゆー「eins…zwei…drei…」


時間切れ…。日本語で言うと、賽は投げられました、出目は…


ゆー「…」


そっと、小さな手が伸びる。目指すは眠りこけている多摩の頬

指先が触れると、柔らかく沈み込むほっぺ

僅かながらに返ってくる弾力は、マシュマロのようでもあった


それを、摘む


人差し指と、親指で


摘んで摘んで、持ち上げた





瑞鳳「外、でもないか…」


ぐるりと鎮守府の周りを回ってみたものの、卯月らしい影はなかった

中じゃないなら外、かとも思ったけど…


瑞鳳「はぁ…」


落胆、なんだろうか。あるいは安堵?

合ったところで何を話せば良いのかわからないのに、合えないのはもどかしいって


そもそもなんで自分は意地を張ってるのか、そこが分からない

最近 構って上げられなかったからって、それで良いじゃない

「卯月はどうしたの?」なんて言われるけれど、今までが今までだ、少しくらいは仕方がない


瑞鳳「だって、アイツ、調子乗るじゃない…」


それもまた本音だった

それはそれでなんかムカつくし


瑞鳳「そもそも、私のほうがお姉さんなんだから…」


艦齢(実艦)とか、数え(艦娘歴)とかじゃなくて、もっとこう精神的に?

無い胸を張って、きりっと表情を締めてみる

鏡が無いのが残念だけれど、きっと私はお姉さん、いやさ絶対にだ


文月「それはどうかなぁ…」

瑞鳳「へ?」


不意の声に、空気の抜けたような声を出す瑞鳳


瑞鳳「ふ、文月?」


見られてた?聞かれてた?


文月「なぁに?瑞鳳お姉ちゃん?」

瑞鳳「うぐ…」


やっぱり、聞かれてたし、見られてたようだった

それに、どうにも慣れない。水無月の時は先輩よりはって言い訳もあったけど

卯月の場合はからかってるのが10割なのが分かる分

他の娘に、今更ながらに お姉ちゃん呼びされるのは、くすぐったいものがある


文月「自分で言いだしたのに?」


ポニーテールを揺らして、愛らしく首を傾げてみせる文月


瑞鳳「いや、あれは水無月に…」

文月「みぃちゃん は良くて文月はダメって言うんだ…」


「ちょっとショック」とかなんとか

とてもそうは聞こえない声音、およよ と泣き崩れる文月


瑞鳳「嘘泣きやめい」

文月「嘘でも涙は涙だよっ」


ぐっと、拳をにぎってみせる文月


瑞鳳「あざといとか言われるわよ、そのうち」

文月「それは困る…」


「けど…」と、続いた言葉は少し真面目に


文月「うーちゃんはあれで寂しん坊さんだよ?」

瑞鳳「別に、忘れてたわけじゃ…」


ただ、ちょっと、ていうか

ほっといても、いつも自分から突っ込んでくるから

なんていうか、べつに良いかなって、少し…


文月「あははは。まぁ、水無月お姉ちゃんも可愛いもんね」


わかるわかる と頷きながら

2歩3歩と、瑞鳳の前を歩いて行く文月


文月「けどね?」


足が止まる。ポニーテールが揺れている

その陰から覗く横顔。見られているわけじゃない

文月の視線はどこか、遠くを見つめたまんまで

それでも何故か、指先を突きつけられたように感じてしまう


文月「あんまり言い訳ばっかりしていると…」


「怒るよ、文月は…」と、ありもしない指先が額を小突いてくる


少しの間


何か言おうと、そんな事ないと

言葉を探している内に、伸し掛かってくる沈黙がどんどんと重くなっていく


文月「なんてねっ」


明るい声音で振り返り、ぽんっと沈黙を吹き消すと

「じょうだんじょうだん」といつもの柔からかい笑顔を浮かべてさえもいる


けれど…


瑞鳳「本気にしか聞こえなかったんだけど…」

文月「まっさかー」


あくまでも、おちゃらけたままの文月さん


文月「鎮守府のポニーテール枠は文月さんだけで十分とか、考えたこともないから」


あくまでも、おちゃらけたままの文月さん


瑞鳳「こわいこわいこわい…」

文月「ひどいなぁ、こんなに笑顔なのに」

瑞鳳「余計じゃないの…」

文月「あははは」

瑞鳳「あはは…」


笑顔&笑顔

そうして一つの結論

あ、この娘怒らせたらダメな奴だ


文月「って、あれ…なんだろ…?」


ひとしきり笑いあった後、何かを見つける文月

その興味深そうな視線を追いかけてみると


「がるる~…」「にゃぁぁぁぁ…」


瑞鳳「何アレ?」

文月「さぁ?」


猫(多摩)と 犬(ゆー)が睨み合っていた



ー睦月のお部屋ー


4畳半程度の畳間に ちゃぶ台が一つ

その上に、銘々に湯気を立てている湯呑みと


如月「ん-…」

睦月「にゃしぃ…」

弥生「…」


三者三様、難しい顔を浮かべて座っていた


その問題を持ち込んだのは弥生で


如月「卯月がかまってくれない、と…」

弥生「うん…」


頷いて


睦月「喧嘩かにゃ?」

弥生「ううん…」


首を振る


そうして最初に戻る


確かに、傍目でみても喧嘩してる風でもない

ただ、一緒にいる時間が減ったかなぁってそれは思うけど

深刻な程なのかっていうと、そうでもないような

例えばそう、抱きついていた距離が手をつなぐ程度になったとか


如月「構ってくれないなら、構いに行っちゃえば?」


それは至極まっとうな意見で

如月の隣で睦月も「うんうん」と頷いている


弥生「でも、こっちから探すといつも見つからなくて…」

睦月「物欲せんさ?」

如月「変な言葉覚えないの」

睦月「さよか…」


きっとまた提督の影響だろうけど、それは置いといて


如月「睦月ちゃん、卯月ちゃんの居場所分かる?」

睦月「んー?卯月ちゃんはねぇ…」


きょろきょろと、その後姿を求めるように視線を彷徨わせる睦月

その後、すぅっと息を吸い込むと


「うーづーきーちゃーんっ」


部屋中に響き渡る大きな声で名前を呼んだ


それに合わせて、きっちり耳を塞いでる如月と

いきなりのことに、その大声が直撃して煩そうに目を細めている弥生


しばしの静寂

ここが山頂なら山彦が返ってくるのを待っているかのような間の後


睦月「あっち」


睦月が指差した先は部屋の天井斜め上


弥生「壁?」

如月「と言うより…」


鎮守府の地図を思い浮かべる如月

睦月が指差した先には何があったろうか

この部屋の位置と、方角…導き出される結論は


如月「執務室ね…」

睦月「うん。提督と一緒かにゃ」


それが当然のように位置を特定する睦月と、当たり前の様に受け入れている如月


弥生「なに、その、なに?」


置いて行かれた弥生は、姉の特技に困惑していた


睦月「ん?どしたの?」


動揺する弥生に、不思議そうに首を傾げる睦月


弥生「どうって…今のって?」

睦月「探信儀のちょっとした応用だよ?」

弥生「えー…」


それが当然のように返ってくる答えは、変わらず不可解なものだった


如月「いずれ貴女もできるようになるわ」


やさしく、妹の成長を願うように弥生の肩に手を置く如月


弥生「ならないと思う…」


その期待には答えられないと、小さく首を振る弥生だった


如月「ふふっ。それはそれとして、行かないの?」

弥生「どう、かな…」


曖昧な答えだった


捜してたんだ、見つかったなら行けばいいのにとはその通り

けれど卯月が一人で寂しくしてないなら、そんな気にするほどでもないのかな

特に用事があるわけでもないし

同じ部屋なのだ、帰ってから存分に構えばいいかなって


如月「今頃は提督と二人っきりかしら?」


ふと、呟く如月

その表情を読み取ろうにも、冷めた湯呑みで顔を隠されてしまった


睦月「なんと羨ましい」


とは言いつつも、落ち着いた様子で席についている睦月


弥生「何が、言いたいの?」


あからさまに、あからさまだ

遠回しに、さっさと行ってこいとでも言いたいのだろうか


如月「そうね。たとえばそう、いま提督と卯月ちゃんが二人っきりなのを想像してみて?」

弥生「そんなの…」


この時間の執務室って、皐月も三日月も望月もいるのに


「全部だろぉぉぉっ!!」


オマケに、睦月が指差した方から聞こえてきた声は


弥生「長月だっているのに…」

睦月「にゃははは。今日は賑やかだし、全部って何かな何かな?」

如月「んー…菊月のことじゃない?」


長月が声を荒げそうな事なんて、そんなには多くないもの


弥生「また、変な言葉でも教えてたんじゃ…」

如月「あるわね」


弥生の答えに納得して頷く如月


如月「放って置くと、卯月ちゃんも変な言葉覚えてくるんじゃない?」

弥生「それは…」


それで、面白そうだから良いんだけど

それでも、胸の隅っこがチクリとする


なんでだろう?司令官に卯月を取られる?卯月を司令官に取られる?

どっちでもいいけど、どっちも嫌だ、どうせなら弥生も混ぜて欲しい、見たいな?


弥生「違うな…」

睦月「およ?」


一人呟いた後、席を立つ弥生

確かにどっちでもいいし、どうだって良いが、一つハッキリと言えることがある


如月「行くの?」

弥生「うん」


如月の問いかけに、今度はしっかりと頷いていた


姉と妹、そうあれと言われて、そう括られた

たまたま、同じ時期に同じように作られただけって理由で

管理する方としてはそれが楽だったろうし、そういうものだって思ってた


それでも、過ごす時間が長ければ、その分の愛着は湧いてくる

それが姉が妹に抱く感情なのか置いといても


艦娘になってからは、余計に

人と同じに、心なんてものを明確にした分だけ


卯月は最初から ああだった

私はと言えば、心の置き場所が、感情の扱い方が分からなかったのに

まるで私の分の心まで持ってったみたいに、遊んで、はしゃいで、騒いでいた


同期として、姉妹艦として、自然と、一緒に居る時間が多かった


悪戯をする卯月、大なり小なり、その火消しは弥生の仕事

それなのに、卯月はさっさと皆と馴染んで、怒られてるのに可愛がられて

どこか、自分が置いて行かれた様に感じてしまった


鬱陶しい、構わないで、勝手にして、何て思ったことも一回や二回では効かない

「いい加減してっ」と、怒ったこともあった

その時は、しゅんと「ごめんなさい」って言ってたのに

終わってみれば もう笑顔。明るく、朗らかで、馬鹿みたいな、そんな笑顔


呆れるしか無かった、諦めるしか無かった

そして、少し、羨ましいとさえも思った


卯月の笑顔、まるで弥生の分まで持ってたみたいに

そう考えると年中の馬鹿騒ぎにも納得が行くかもしれない

姉と妹、二人で一人、弥生にないものは卯月に、卯月ないものは弥生に


弥生は卯月で、卯月は弥生…



ー執務室ー



金剛「今日も、お疲れ様ね?」


そっと、湯気と香気を立てたティーカップが差し出される


提督「ほんと、やっと終わった」


気づけば夜も夜、深夜と言っても差し支えない時間だった


机の上に散らばった書類を纏め

握ったペンと一緒にその辺に放り投げる

差し出されたカップに手を伸ばし一息つくと、体をソファの上に投げ捨てた


金剛「やっと解決、ですか?」

提督「喧嘩してたわけでもないけどな」

金剛「そうだけど」


夕方、弥生が来たと思ったら

「弥生の、だから…」とか言って、卯月を引き取っていった

それはもう、一直線にやってきて、一直線に戻っていく

脇目も振らないの良い見本、教科書に載せても良いほどだった

「え、なに?弥生?」なんて、訳の分からないままの卯月なんて気にもしてなかった


それはいい

どこか、ズレていた空気が戻ったんだ

慣れるのと どっちが早いかの話だったが、結局は元鞘に収まっただけの話


問題があったとすれば

朝から卯月の相手をし続けた結果の仕事の山

最後まで手伝ってくれた三日月と長月には感謝だけど


金剛「ふふ…」


ふと、金剛が笑みをこぼす


提督「何?」

金剛「んーん。ただ、あなたが仕事をしているのが珍しいなって」

提督「たまには、な」


隣で寝(落ち)ている皐月の頭を撫でると、くすぐったそうにみじろぎをする

起こしたか?とも思ったが、静かな寝息と可愛い寝顔は続いたままだった


金剛「何事かと思ったよ」


楽しそうに話を続ける金剛

私が仕事をしてたのがそんなに愉快だったのだろうか


提督「自業自得だろうね」


面白がって卯月と遊んでたのはそうなんだし

結果としてのコレなら受け入れるしかないっていう


金剛「得はあったのね?」

提督「うん」


満足気に頷いて見せる

こと、こういう場合は7:3ぐらいで損のほうが大きいが

今回に限れば、その逆と思えるくらいには楽しかったかなと


提督「後の問題は…」

金剛「瑞鳳?」

提督「卯月離れ、瑞鳳離れ、これも成長か」

金剛「あるけどね。今までが今までって事も…」

提督「まぁな」


毎日毎日良くも喧嘩できていたものだと、今更ながらに感心するほどではあった


提督「今更、距離のとり方なんて覚えても小賢しいものよな」

金剛「あなたが言う?」

提督「なんでさ?私に距離を取らせたら右に出るものはいないよ?」

金剛「それ、逃げてるって言うのよ?全力で後退するじゃないの あなたは」


「追いかける身にもなって欲しいわ」と、肩をすくめる金剛さん


提督「袖を振り合うから引っかかるのさ、振らなければ最初からって思うじゃない?」

金剛「人見知りの発想だね」

提督「あはははは」


首を横に振り、呆れてみせる金剛に

「違いないと」楽しそうに笑う提督


ポーラ「たのしくなってきましたねぇ~、あははははっ」


そして、何故か混ざっているポーラと漂ってくるお酒の匂い


提督 「また飲んでるのかお前は…」

ポーラ「えへへへへ~。だって美味しんですもの~」


「てーとくっものみまーすー?」とか何とか言いながら

漂っている お酒の匂いの様に、ゆらゆらと提督に擦り寄っていく


提督 「いらん、酒臭い、少し離れろ」

ポーラ「あーん。そんなこと言わないでぇ、ポーラとも仲良くしましょーよー」


提督の手にほっぺをつぶされながらも、構わずに迫ってくるポーラ

人懐っこい、といえば可愛いものかもしれないが、これは何か違う気がする


金剛「少し、ねぇ…。金剛の時は全力で避けてたのに…」

提督「いちいち拗ねてんじゃねぇ」

金剛「拗ねてないもん。そうやってイチャイチャしてれば良いよ…」


ベーっと、舌を出してそっぽを向く金剛さん


ポーラ「あははははっ。金剛さんのお顔が真っ赤~ポーラとお揃いですね~、えへへへへ」


何がそんなに可笑しいのか

自分の手をパチパチと叩いて、それが可笑しいのか更に笑っているような

本当に、酒さえあれば幸せそうなご様子だ


提督「ま、お揃いって言えばそうかもな」

金剛「何処がっ、金剛とこんな酔っぱらいをっ」


そっぽ向いたと思いきや、今度は体を乗り出してくる金剛


提督「でも金剛、最初の方こんなだったろ?」

金剛「…」


しゅんっと大人しくなった

かと思えば乗り出していた体を引っ込め席に戻ると、こほんっと、わざとらしく咳払いをして見せた


金剛「いったい、いつの話をしているの?提督は…」


嫋やかに微笑む金剛

そこだけを切る取るならば、落ち着きのあるお姉さんで通りそうではあった


金剛「あんまり、金剛をからかっては…」


あくまで、あくまでシラを切るつもりらしい

最初から、大人のお姉さんでしたよ?と、思い出を創るつもりらしい


提督「…そうか。それじゃ、ポーラと遊ぶかな」

金剛「へ?」


割れたカップの様に、柔らかだった表情にヒビが入る


ポーラ「あはは、良いですねぇ。何します?じゃんけんですか?野球拳もいいですよ、ポーラ強いんですから」

提督 「なに、すっぱになりたいと?」

ポーラ「むふふふ。それはこっちの台詞ですよ~、身ぐるみ剥いでやるのです」

提督 「誰も喜ばないと思うけど…。それじゃあ…」

ポーラ「かーんむす、じゃーんけん」

提督 「じゃんけん…」


「まってっ」


ぽんっと、手を出すその前に、二人の間に割って入る金剛


金剛 「金剛がっ、金剛が悪かったからっ、もっと構ってっ無視しないでっ」

提督 「それじゃ、3人で」

ポーラ「ですねぇ~」

金剛 「な、なにを?」


状況を飲み込めない金剛を置いといて、再び宣言を


ーかーんむす、じゃんけん、じゃんけんー




「まってっ」


「金剛よわい」

「のーかんですっ、不意打ちじゃないですかっ、もういっかい、もういっかいっ」

「あはははは、いいですよー。ぬぎぬぎしてからですけど~」

「ちょっ、ポーラっまちなさいっ、提督も見てないでっ、じゃなくて見ないでっ」


「…何やってんのさ、金剛さん…」

「ちがっ、皐月はこれはねっ…」

「金剛うるさい…何時だと思って…」

「そう思うなら助けてよっ」

「zzz…」

「もーちーづーきーっ」


「いーやー!!」


ー翌朝ー


金剛「しくしく…しくしく…」


見事なまでのすすり泣き

乱れた衣服を慌てて直したような、継ぎ接ぎだらけのその格好

まごうこと無き敗者の姿、たった一度の勝利もなく、涙の海で咽び泣いていた


金剛「もう…もう、お嫁に行けません」


さめざめと、体を抱えて俯く金剛


提督「なにそれ、どこか行く気だったの?」

金剛「…」


ピタリ、金剛の動きが止まる

涙とともに震えていた体が落ち着きを取り戻し

だれがどう見ても耳をそばだてていた


提督「はぁ…」


わかりやすい

あと一言加えれば、ぱっと笑顔になるのが容易に想像出来る

けれど、いやだからこそ…


提督「式には呼ん…むっ」


疾かった

ぬっと、伸びた金剛の手が提督の口を抑えていた


金剛「そんな事言うのはこの口ですか?どうしてそういう事ばかり言うのっ、金剛をからかって楽しいのっ!?」

提督「うん」


ニヤつくでも何もなく、ただただ素直に頷く提督だった


金剛「あーんっもうっ、そんな素直に頷かないでっ」

提督「放ったらかしたら拗ねるくせに面倒くさいな、お前は」

金剛「面倒くさいとか言うなっ」


などと騒ぎながらも、体よく提督の懐に潜り込むことに成功する金剛

これからどうやって提督に「私の嫁だと思ってたのに」とか言わせようかと思案していると


「いえ、実際面倒くさいですよ、金剛」


水を差された

その平坦な声に金剛の熱が下がっていく

聞き覚えのない声。誰?という疑問はすぐに金剛を日常に引き戻す


侵入者?それなら敵?だというなら…


空気が冷える、殺気の一歩手前の警告

下手に動けば艤装を展開してでも排除すると


「あ、遅れました。提督、お早うございます」


相変わらず平坦な声音は、ふわふわと揺れる銀色の髪と同じ色に聞こえる


金剛 「…?ぽー…ら?」

ポーラ「ですが、なにか?」


常温に戻る空気

だとしても、誰(ポーラ)?という疑念がモザイクがかって残っていた


ポーラ「それより金剛。皐月達もまだ寝ています。少し、静かに」

金剛 「あ、はい。ごめんなさい…です」


淡々と窘められて、それ以上に言葉を返せず素直に謝る金剛さん


提督 「おはよう、ポーラ」

ポーラ「はい。それと、ごめんなさい。昨日は騒ぎすぎました…すこし」


平坦な声の次は、平坦な顔だった

昨晩、つい数刻前まで、へにゃへにゃ笑ってた娘とは思えないほど

例えるならそう、弥生はいつもこんな顔…と言う感じで


提督 「いいよ。それより、ポーラ…」

ポーラ「はい?」


窓の外には桜の花

ぽつりぽつりと付いていた蕾が一晩を経て、いい感じに開き始めている

満開、までまだ少しあるけれど…


提督 「酒が飲めるぞ?」

ポーラ「…ぁ」


僅かに漏れる吐息の様な声、柳眉が動き、平坦だった表情に僅かばかりの起伏が出来る

「着替えてきます」と、言うが早いか、その背中は扉の向こうに消えていた


金剛「あ、ポーラですね」

提督「判断基準そこ?」

金剛「だって…」


まぁ、気持ちは分かるけど



ー中庭ー



ポーラ「一番ポーラっ、木曾さんの物真似しますっ」

木曾 「眼帯付けただけじゃねーか。雑すぎるだろ」

ポーラ「え、眼帯が本体って多摩さんがっ」

木曾 「たぁぁまぁぁぁぁっ!」


桜の木の下

広げたレジャーシートに持ち寄った酒とお菓子

豪華なお弁当、なんてものを用意する暇もなかったけれど

元より騒ぐ理由が欲しいだけ、気軽なくらいで丁度良いとも思う


金剛「oh…変われば変わるものね…」


騒いでるポーラを見ながら、染み染みと感想を漏らす金剛

今朝の…そう、弥生の様な静けさから、今となっては卯月のような騒ぎよう

まるで別人、もしくは2重人格?なんて安い小説のような言葉も浮かんでくる


提督「私も、初め見た時は何事かとは思ったけど」

金剛「初めって…」

提督「なに?」


声音を下げる金剛

目を細め、見るからにご不満そうだ


金剛「二人っきりで?」

提督「別に、廊下ですれ違っただけだよ」

金剛「ふーん…」


見たまんまを口にしたというのに、あいも変わらずの様だった

しとねで…とか言えば満足だったのか茵

いやいや、きっと騒ぐだろう。それが冗談とわかった上でもきっと

結局、すねてみせてるだけなのだろうから


金剛「それで?どうして急に宴会を?」


いつもなら面倒くさいという方なのにと、提督の顔を覗き込む金剛


提督「実験…かな?」


その言葉を飲み込めず、頭に疑問符を浮かべる金剛


金剛「なんの?」

提督「あれ、の」


疑問に答えるように、指を指し示すと「あぁ…」と、納得した金剛の声が帰ってきた




卯月「ね、ねぇ?弥生?」

弥生「なに?」


困ったような卯月の声に、返ってきたのは淡々したものだった


卯月「ちょっと、引っ付きすぎじゃなぁい?」

弥生「普通だと思う…」

卯月「ぴょん…」


普通…普通ってなんだろう?

姉と妹の仲が良い、それなら確かに普通だろうけど

お早うからお休みまで、べったり引っ付いてくるのは普通の範疇に収めて良いものかどうか


弥生「卯月が悪いの。目を離すすぐどこか行くから」

卯月「うーちゃんそんな子供じゃないぴょん…」

弥生「子供はいつもそういう」

卯月「じゃあ、大人だぴょん。一人前のれでぃーだぴょん」

弥生「背伸びしない…」

卯月「どうすればいいの…」


八方塞がりだった。ああ言えばこう言うんだもの

分からない、うーちゃんが一体何をしたというのか

分からないけど、分からないなりに ただ一つ

当面離れる気はないんだろうと理解するのに、そんなに時間はかからなかった




水無月「んー…」


どうしたものかと、一人悩む水無月

あの様子を見るに、姉二人は丸く収まったようだ

そこは予想通りというか、やーよ は分かり辛いだけで素直だから

心配というほどのことは無かったけれど…

問題はこっち、素直じゃない方のお姉ちゃん


ここ最近の瑞鳳お姉ちゃんは、どうにもそわそわしていた

もっと言えば、うーちゃんの事を気にしてる風にしか見えなのに

「そうなの?」と、問いかけてみれば「別に…」と返される


別にって、何が別になんだろう?

うーちゃんと最近遊んでないのが寂しいって、そんなにおかしな事なのかな?

でも、うーちゃんと遊んでいた時間がどこに消えたかと考えると


水無月「…(水無月なんだよねぇ…きっと」


悪いと思うのは違う気がするけど

そうだね、たぶん水無月は好きだったんだろう

うーちゃんと、瑞鳳おねえちゃんが騒いでるのを見るのは

皆だってそう…。最近感じている収まりの悪さはそういう事だと思う


時間が解決してくれるかな?

そうも思った、けど違う、これは違う

このままだと慣れてしまう、お互いに

言い出しづらくて距離を取ってる内に、それが普通になってしまうから


水無月「よしっ」


ちょっと気合を入れてみよう、それでダメならその時だ


瑞鳳「水無月?」


急に声を出したからだろう

気になったのか、水無月の方を見る瑞鳳


水無月「瑞鳳お姉ちゃん?」

瑞鳳 「ん?」

水無月「水無月の事好きかい?」

瑞鳳 「うん?…そりゃ?」


不思議そうな顔をするものの、二つ返事で頷く瑞鳳

それならと、皆の名前を呼んでいっても、うんうんと頷いてくれる

司令官だけ三つ返事だったけど、そこは今は置いといて


水無月「じゃあ、うーちゃんは?」

瑞鳳 「…別に」


ぶっきら棒だった

雑に返されると、そのまま視線を外される

あんまり突かれたくないんだろうけど、今の水無月は鉢の巣を突く覚悟は出来ているってね


水無月「別に何?」

瑞鳳 「良いでしょ…。ていうか、流れで言うと思ったの?」

水無月「にひひひっ。少し、ね?」

瑞鳳 「ばーか。変なこと言ってないの」


ダメらしい。じゃあ、アプローチを変えて


水無月「良いよ?水無月の事なら…もう大丈夫だから」

瑞鳳 「何の話を?」

水無月「だって、水無月の面倒見てるから うーちゃんと遊ぶ時間減ってるんでしょ?それだったら…」

瑞鳳 「へ?あ、そ、そう…ね、それもなくは、ない、けど」


耳の痛い話だった

まぁ、そう、大義名分としては水無月の言うとおり…何だけど

単純、もっと単純、お姉ちゃん扱いされるのが、懐いてもらえるのが嬉しかっただけ


言えない、そんな真っ直ぐな瞳で見られたら、そんな事言えない

「今までありがとう」見たいな「ちゃんと うーちゃんとも遊んであげてよ」見たいな

気遣いと優しさと感謝を込めた瞳を裏切れない


だからだろう、そういうことにしておこう


瑞鳳 「…なによ、みんな卯月卯月って、いっつも「うるさーい」とか言ってたのに」

水無月「にひひひっ。そうだけど、けど みんな好きなんだよ、そのうるさいのがさ」


水無月だってそう、なんて言われてしまった


これは何だろう、針の筵?

チクチクチクチクチクチクと、良心が責め立ててくる


瑞鳳「ああっもうっ、分かった分かった」


手の中の紙コップ

残っていたお酒をぐっと煽ると、空いたカップを水無月に渡す


瑞鳳 「行ってこれば良いんでしょ?」

水無月「あははっ。さっすが瑞鳳お姉ちゃん」

瑞鳳 「はいはい…」


体よく煽てられている気もするけれど、今はそれに乗っておく

というか、これ以上突かれたら、本音を口走りかねないというのも あったりなかったり


「卯月が好きで好きで仕方がない」なんて、言えるわけがない…

それが、周知の事実だとしても、知らぬは本人ばかりなりと言われていたとしても




弥生「瑞鳳…」

瑞鳳「なによ…」


じりっと、卯月を間に挟んで見つめ合う二人

手に手に卯月の手を取って、暗に自分のものだと主張していた


弥生「一つだけ、ね。卯月のお姉ちゃんは弥生だよ?」

瑞鳳「睦月と如月は?」

弥生「足を上げるだけなら、フラミンゴでもできる」

瑞鳳「あはははっ。面白い冗談じゃない?」

弥生「でしょう?」


笑顔なのに笑ってない瑞鳳と、得意げに小さな胸を張る弥生


じり、じり、じり…


視線で牽制し合う二人

挟まれた方はと言えば堪ったものではない


うーちゃんにどうしろと?

なんでこんな急なのだ、最近まで放ったらかされてたのに


とりあえず…

逃げるぴょん、逃げるが勝ちだぴょん

触らぬ神に祟りはない、ときおり悪戯はされるかもだけど、それはそれ


そろり、そろりと、その場から離脱を試みる卯月


弥生「待って」

瑞鳳「待ちなさい」

卯月「ぁぅ…」


二人に手をひかれると、浮きかけた腰がその場に落ちた




ゆー 「やりましたって」

水無月「だね。にひひっ」


卯月の取り合いを初めた二人を見ながら、軽く手を合わせる


水無月「ゆーは混ざらなくて良いのかい?」

ゆー 「?」


どうして?と、首を傾げる ゆー


水無月「やーよが取られちゃう、とか?」

ゆー 「んー…」


冗談めかした水無月の言葉

それを反芻するかのように少しの間が開く


ゆー「ゆーは良い子ですから、えっへん」


得意げな表情を浮かべる ゆー


水無月「おおっ。ゆーってば、おっとな~」

ゆー 「でしょう?」


鼻を鳴らして調子にさえ乗り始めた


水無月「ほら、水無月お姉ちゃんが良い娘良い娘してあげるよっ」

ゆー 「や」

水無月「え…」


振られた、一言で、速攻で振られた


ゆー 「だって、ゆーの方が先輩ですって。むしろ水無月が甘えるべき」

水無月「え、えぇ…そう、かな?」

ゆー 「はい」


自信満々に頷くと、小さく手を広げる ゆー

そうして「おいで?」と、首を傾げてみせた


水無月「な、なにこれ?」

ゆー 「うん、良い娘良い娘」


ゆーの小さな胸の中、抱きしめられた水無月が

ふんわり、ゆったり、頭を撫でられていた



ー翌朝ー


ー厨房ー


「うぅぅぅづぅぅぅきぃぃぃぃっ!!!」


大鳳「うふふ…」


総員起こしとばかりに聞こえてきた声

いつも通りのはずなのに、随分久しぶりに聞こえた


球磨「ほらみろ、またやかましくなったクマ」

大鳳「良いじゃない、私は好きよ?」


やれやれと、首を振る球磨に微笑んで見せる大鳳


球磨「だったら、面倒は大鳳が見るクマ」

大鳳「そうね」


近づいて来る足音

もう数分もしない内に食堂に飛び込んでくるのは容易に想像出来る


大鳳「って、こらっ」

球磨「クマクマクマクマ♪」


一瞬の隙だった

何ともなしに天井を見上げていると

朝食用に焼いてあった鮭を、球磨が掠め取っていく


大鳳「まったく…」


そうして、大鳳が嘆息している内に


「たーいーほー、ずいほーがーっ」


食堂の扉が勢い良く開き、飛び込んでくる卯月


大鳳「はいはい…」


まずは、まずはそうね

息を切らせてくる瑞鳳を宥める所からか




大鳳「ふふっ…何?その顔?」


卯月が背中に隠れ後、遅れて飛び込んでくる瑞鳳

その顔、ほっぺたには「ふら、みんご」右に「ふら」で左に「みんご」


瑞鳳「わらうなぁぁっ!卯月がっ!だってっ!もうっ!バカじゃないのっ!」


言葉にすらなっていない、怒りたいのか嘆きたいのか、それさえも曖昧だ


卯月「うーちゃんじゃないって言ってるのにっ」

瑞鳳「こんなのっアンタ意外誰がするってのよっ」

卯月「しらんぴょんっ、そんな…滑稽な…ぷふっ」

瑞鳳「わーらーうーなぁぁぁっ!!」


ーおしまいー


「そして犯人は弥生」



後書き

はい、というわけで最後まで読んでくれた方。本当にありがとうございました
貴重な時間が少しでも楽しい物になっていれば幸いです



提督「おはよ、ずほ姉」
瑞鳳「誰がお姉ちゃんだって…」
提督「それ…、全員に言って返すき?」
瑞鳳「?」

睦月「おはよっ、瑞鳳お姉ちゃんっ」
如月「お早うございます、瑞鳳お姉さま。うふふ…」

瑞鳳「…」

皐月「おはよっ、瑞鳳姉さん」
文月「瑞鳳お姉ちゃん、おっはよー」

瑞鳳「なに…」

長月「おはよう、瑞鳳姉さん」
菊月「ずほ姉、おはよう」

瑞鳳「何なの…急に皆して」

三日月「お早うございます、瑞鳳姉さん」
望月 「ふわぁぁ…。おはよ、ずほ姉」

瑞鳳「だーっもうっ、普通に呼びなさいよっ、普通にっ」
弥生「良かったね。妹が一杯できて…瑞鳳お姉ちゃん」
瑞鳳「なによ…その顔…」
弥生「別に?弥生はいつもこんな顔」

卯月 「うぷぷっ。ずいほー、赤くなってるぴょん」
水無月「あははっ。お姉ちゃん照れてるねぇ」
瑞鳳 「やっかましいわよっ、あんた達もっ」
二人 「きゃー、お姉ちゃんが怒ったー(ぴょんっ」

ゆー「お早うございますって、ずいほーねーさん」
瑞鳳「しつこーいっ」
ゆー「ひぅっ…。ご、ごめんなさ…」
瑞鳳「へ?あ…ゆー、ちがっ、ちがうのよ?今のは…」

球磨「何も泣かすこたぁねぇクマ…」
ゆー「たいほー…」
大鳳「ひどいお姉ちゃんね~」

瑞鳳「もぅっ、なんなのよぉぉっ!!」


ー諸々のメンバーでお送りましたー


ー以下蛇足に付き


♪皐月ちゃんラジオ♪ 

皐月「結局、元通りって感じだね」
提督「そうか?卯月と瑞鳳はともかく、弥生は…」
皐月「まぁ…弥生は、ね。そのうち落ち着くでしょ?」
提督「落ち着くまで、ずっとベッタリだけどな…」
皐月「あははは…。司令官の時もそうだったね…」
提督「皐月がヤキモチ焼くくらいにはな」
皐月「焼いてなんか無かったし…」
提督「だったけ?」
皐月「だったよ?」



皐月「ほら、コメント返しよ?」
提督「誤魔化した」
皐月「くどい」



・ゆーとラブコメ

提督「言われれば初めてか?」
皐月「膝の上には結構乗ってる方だけど」
提督「サイズがね、丁度いいからね」

皐月「でも、ゆーの変化って」
提督「最終的に、弥生と卯月に引っ張られて ろーに近づいていく未来しか…」
皐月「そして、球磨の影響で手も早いと…」
提督「…」
皐月「…もうちょっと、気にかけとこうかな、ゆーの事」
提督「お願いします」

・如月の好感度

如月「ふふーん、開き直った如月に怖いものなんてありませーん。ね?提督?」
提督「◯月X日…「提督好きよ」なんて、書いちゃった
   でも、もう一回書いておこう「大好き(はーと」…」(←如月の日記
如月「やめて…やめて…」(←顔真っ赤
皐月「変なこと言うから…」

・文月回と如月回

提督「文月回っていつだったけか、大昔に一回だけやった気がするけど」
文月「ひどい司令官。文月とは遊びだったのっ」
提督「変な言い方をするんでないよ。あんまり主役ってやってないよなってだけだ」
文月「うん。そいえばそうだねぇ。まぁ、文月さんは梅干しだから」
提督「名脇役って?」
文月「甘酸っぱい、みたいな?」

「卯月さんは迷惑役ですよねっ」
「大和っ!」

文月「なに、今の…」
提督「さぁ…」



提督「如月回といえば…」
文月「ラブコメだねっ」
提督「こっちはちょくちょくやってるね」
文月「★10になったお姉ちゃんの これからの活躍に期待しよう」
提督「如月の日記帳が厚くなるな」



文月「もしかして…時折しおりが増えてるのは…」
提督「私より詳しそうだよな…なんか」

・甘さ

提督「きっと皆落ち着いてきてるんだろうね」
皐月「なんのかんので、もう長いから」
提督「次の展開は、今の関係が壊れるのが…になる?」
皐月「なるかなぁ…」
提督「なるかなぁ…」

・長月が体中に…

提督「あれでしょ?長月の両手をリボンで縛って
   最初は散々抵抗するんだけど、その内大人しくなっていって…」
長月「やめんかっ」

・太

卯月「きっとパッドだぴょん」
大鳳「卯月ちゃーん、こっちおいでー」
卯月「?」

「あ、いたっいたっ、やめっ」

弥生 「どうして余計な事言うんだろう…」
水無月「うーちゃんだからね…」

ゆー「…じー」
瑞鳳「なによ?」
ゆー「んーん…。じー…」
瑞鳳「だからっ」
ゆー「ん?」
瑞鳳「不思議そうな顔をするなーっ」



「ご指摘ありがとうございました、こっそり直しときますね」



最後までご覧いただきありがとうございました
コメント・評価・応援・オススメも合わせ、重ねてお礼申し上げます
書き終わってなんだけど、あんまりお花見関係ないな…

ついに40回になりました
そろそろアニメ放送一年分と考えると感慨深いものが有ります
ここまで続けてこれたのも皆様方の応援のお陰です、本当にありがとうございました
引き続き、おつきあい頂ければ嬉しく思います

卯月「ぅぅ…ひどい目にあったぴょん…」
提督「どうだった?」
卯月「パットじゃありません、卯月が間違ってました…」
提督「じゃ、寄せてあげてたんだな」
卯月「それだぴょんっ!え、あ、ちょっ、今のは司令官が、あっ、あっ…」

弥生「(抱き)寄せて(締め)上げてるね」
ゆー「骨の軋む音が聞こえますって…」

大鳳「はい、それじゃあ次回もよろしくね」

「あと提督、ちょっと話があるわ…」


ー以下プロフィール(長いー

提督
練度:神頼み 主兵装:刀
「触らぬ神に祟りなしって、言うだろう?」
長髪で黒髪、何時も気だるげな表情をしてる
一応、白い制服を着けてはいるが、上から羽織っている浴衣が全てを台無しにしている、不良軍人
そもそも、軍人どころか人ですら無い、元土地神様
覚えている人もいなくなり、ようやく開放されたと思えば、深海棲艦が湧いてきて…
3食昼寝付きの謳い文句も手伝って、提督業を始めだした
性格は、ほとんど子供。自分でやらないでいい事はまずやらない、明日できることはやらないで良い事
悪戯好きで、スカートめくりが好きなお年ごろ
また、結構な怖がりで、軽度は人見知りから始まり、敵は全て殲滅する主義

皐月ー愛称:さつきちゃん・さっちゃん・さっきー
練度:棲姫級 主兵装:12・7cm連装砲(後期型 好感度:★MAX
「え、司令官かい?そりゃ…好き、だよ?なんてな、えへへへ♪」
初期艦で秘書艦の提督LOVE勢。提督とは一番付き合いの長い娘
その戦闘力は、睦月型どころか一般的な駆逐艦の枠から外れている程…改2になってもっと強くなったよ
「ボクが一番司令官の事を分かってるんだから」とは思いつつも
まだまだ照れが抜けないせいか、ラブコメ時には割とヘタレである

睦月ー愛称:むつきちゃん・むっつー・むっつん
練度:褒めてっ 主兵装:12・7cm連装砲(後期型 好感度:★MAX
「提督っ、褒めてっ!」
わかりやすい提督LIKE勢、「ほめて、ほめて~」と、纏わりつく姿は子犬のそれである
たとえその結果、髪の毛をくしゃくしゃにされようとも、撫でて貰えるのならそれもよしっ
好感度は突っ切っているが、ラブコメをするにはまだ早いご様子

如月ー愛称:きさらぎちゃん・きさら
練度:おませさん 主兵装:12・7cm連装砲(後期型 好感度:★MAX
「司令官?ふふ…好きよ?」
提督LOVE勢。良い所も悪い所もあるけれど
むしろ、悪い所の方が目立つけど、それでも あなたが大好きです
だから、何度でも言いたいし、何度でも言われたいの、ね?司令官?

弥生ー愛称:やよいちゃん・やよやよ・やーよ
練度:無表情 主兵装:3式爆雷 好感度:★9
「司令官?好きだよ、普通に」
普通の提督LOVE勢。
いつからだろうか?姉妹たちが司令官にからかわれてるのを見て羨ましく思い始めたのは
弥生にもして欲しいって、弥生だって構って欲しいって、司令官にとっての弥生はどうなのかなって
どうすればいいんだろう?
笑えば良いの?拗ねればいいの?甘えて見せれば良いのかな?
ねぇ司令官…あんまり気づいてくれないと…怒るよ?

卯月ー愛称:うーちゃん・バカうさぎ
練度:ぴょんぴょん 主兵装:超10cm高角砲★MAX 好感度:★7
「司令官?そんなの大好きに決まってるぴょんっ」
ぴょんぴょんする提督LIKE勢。毎日ぴょんぴょんと、あちこちで悪戯しては怒られる毎日
主な対象は瑞鳳、「だって、からかうとおもしろいだもん」なんのかんので構ってくれる瑞鳳が好き
ラブコメというより、騒がしい妹

水無月ー愛称:みぃ
練度:うん、わかるよ 主兵装:12・7cm連装砲(後期型 好感度:★6
「司令官、呼んだかい?」
鎮守府の新人さん。遊び回ってる姉妹たちに安心したのも束の間
その練度の差には、内心もやっともしている。あと球磨ちゃん怖い
提督に対しても好意的で、可愛がってもらいたいお年頃

文月ー愛称:ふみ、ふーみん
練度:ほんわか 主兵装:12・7cm連装砲(後期型 好感度:★8
「しれいかん?えへへー…なーいしょっ♪」
ふんわりとした提督LOVE勢。空気を読んでいたつもりが空気に飲まれたここ最近
司令官を見てドキドキするのは、きっと姉や妹の影響だ、きっとそう
そうなってくると、いつものスキンシップでさえ気恥ずかしい上に
弥生お姉ちゃんが、変な道に突き進んでいるのを止めたりと最近は忙しい

長月ー愛称:なつき、なっつん、なっつ
練度:頼りになる 主兵装:5連装酸素魚雷 好感度:★8
「司令官…いや、まあ…いいだろ別にっ」
おでこの広い提督LOVE勢。司令官に ちゅーしてこの方
自分の感情を見ない振りも出来なくなり、最近は割りと素直に好意を見せてくれたりもする
自分の感情に振り回されるくらいにはラブコメ初心者。あと、シスコン(菊月)

菊月ー愛称:菊→菊ちゃん→お菊さん→きっくー→くっきー
練度:威張れるものじゃない 主兵装:12・7cm連装砲B型改2★MAX 好感度:★8
「ながなが?ながなが ながなが」
箱入り提督LIKE勢。おもに長月に過保護にされてるせいでラブコメ関連はさっぱり
しかし、偶に見せる仕草はヘタなラブコメより攻撃力は高い。やっぱり如月の妹である
大艦巨砲主義者、主兵装は夕張に駄々を捏ねて作らせた。それとシスコン(長月)
最近、司令官との共通言語が出来た。合言葉は「ながなが」

三日月ー愛称:みつき・みっきー
練度:負けず嫌い 主兵装:12・7cm連装砲(後期型 好感度:★9
「し、しれいかん…そ、その…好きですっ!」
おませな提督LOVE勢。どこで仕入れたのか変な知識は一杯持ってる
そして、変な妄想も結構してる。すぐ赤くなる、可愛い
提督と望月に、からかわれ続けたせいで、たくましくなってきたここ最近
ラブコメモードは基本に忠実

望月ー愛称:もっちー、もっち
練度:適当 主兵装:12・7cm連装砲(後期型  好感度:★MAX
「司令官?あー、好きだよ、好き好き」
適当な提督LOVE勢。とか言いつつ、好感度は振り切ってる
だいたい司令官と一緒に居られれば満足だし、司令官になんかあれば不言実行したりもする
ラブコメには耐性があるが、やるとなれば結構大胆

球磨ー愛称:ヒグマ・球磨ちゃん
練度:強靭・無敵・最強 主兵装:46cm…20.3cm(3号 好感度:★MAX
「提督?愚問だクマ」
突き抜けてる提督LOVE勢。気分は子グマの後ろに控えている母グマ
鎮守府と提督になんか有ろうものなら、のっそりと顔を出してくる、こわい
積極的にラブコメをすることもないが、昔は提督と唇を奪い合った事もある
大艦巨砲主義者。最近、私製46cm単装砲の命中率があがった、やったクマ

多摩ー愛称:たまちゃん・たまにゃん
練度:丸くなる 主兵装:15・2cm連装砲 好感度:★6
「提督?別にどーとも思わないにゃ?」
気分は同居ネコ。とか言いつつ、なんのかんの助けてくれる、要は気分次第
絡まれれば相手もするし、面倒くさそうにもするし、要は気分次第
特に嫌ってるわけでもないし、いっしょに昼寝もしたりする、要は気分次第
ラブコメ?何メルヘンなこと言ってるにゃ

北上ー愛称:北上様・北上さん
練度:Fat付き 主兵装:Fat付き酸素魚雷 好感度:★7
「提督?愛してるよん、なんちって」
奥手な提督LOVE勢。気分は幼なじみだろうか
このままゆるゆると、こんな関係が続くならそれで良いかなって思ってる
最近の趣味はFat付きをばら撒いて海域を制圧すること

大井ー愛称:大井さん・大井っち
練度:北上さん 主兵装:北上…53cm艦首(酸素)魚雷 好感度:★8
「提督?愛してますよ?」
分かりにくい提督LOVE勢。そうは思っていても口にはしない、絶対調子に乗るから
足と両手が埋まったなら、胸…艦首に付ければいいじゃない、おっぱいミサイルとか言わない

木曾ー愛称:きっそー、木曾さん
練度:悪くない 主兵装:甲標的 好感度:★7
「提督?まあ、アリなんじゃないか?」
カッコイイ提督LOVE勢。提督に赤くさせられたり、提督を赤くしたりと、まっとうなラブコメ組
そういうのも悪くはないが、本人はまだまだ強くなりたい模様
インファイター思考だけど、甲標的を使わせたほうが強いジレンマ

金剛ー愛称:こう・こうちゃん・こんご
練度:Burning Love 主兵装:Burning…46cm3連装砲 好感度:★MAX
「提督…Burning Loveです♪」
分かりやすい提督LOVE勢。提督の為ならたとえ火の中水の中
何時からだったのか、出会った時からか
ならそれはきっと運命で、この結果も必然だったのだろう
けれど、鎮守府ではオチ担当、艦隊の面白お姉さん
取り戻せ、お姉さん枠

瑞鳳ー愛称:ずいほー・づほ姉ちゃん
練度:卵焼き 主兵装:99艦爆(江草 好感度:★6
「だれがお姉ちゃんよっ」
気分は数ヶ月早生まれな幼なじみ。ラブコメルートもあった気がしたけど、何処行ったかな
卯月にからかわれて、追っかけまわすのが日課
だからって、別に卯月を嫌ってるわけでもなく実際はその逆である

夕張ー愛称:ゆうばりん
練度:メロン 主兵装:軽巡に扱えるものなら何でも 好感度:★6
「ゆうばりんって…気に入ったのそれ?」
気分は一個上のお姉さん。卯月や菊月の駄々に付き合ったり
球磨や提督の無茶振りで、アレな兵装を作ったりと、信頼と安心の夕張さんである
特に決まった装備は無く、戦況次第でなんでも持ち出すびっくり箱、安心と実績の夕張さんである

大鳳ー愛称:大鳳さん
練度:いい風 主兵装:流星改 好感度:★9
「提督、愛してるわ」
素直な提督LOVE勢。金剛見たいにテンションを上げるでもなく、息を吐くように好意を伝えてくる方
ラブコメに悪戯にと我慢強い方だが、許容量を超えると…
その落ち着いた物腰からは、艦隊の保護者っぽくなっているが、内心は見た目通り歳相応だったりもする

U-511ー愛称;ゆー、ゆーちゃん
練度:ですって 主兵装:WG42 好感度:★7
「Admiral…提督さん、次は何をすれば良い?」
好きとか甘いは良く分からないけれど
Admiralの お手伝いが出来ればいいなって思います
「敵は討たねば」球磨がそう言ってたので、そこから頑張りたいと思います
如月に貰った三日月型の髪飾りは宝物


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SS好きの名無しさんから
2017-04-03 15:17:00

このSSへのコメント

3件コメントされています

1: SS好きの名無しさん 2017-04-03 15:18:24 ID: jnuqYgDp

更新待ってました!
更新待ってる間は
やっぱり1から何度も読み直してます♪
やっぱりおもしろいです♪
次の更新待ってます♪
文月がいいなー!って!

2: SS好きの名無しさん 2017-04-08 02:42:17 ID: Me8Juayf

もう40回か・・・、次話で、スーパー戦隊シリーズに追いつくんだな。
不定期でも、好きなシリーズだから、いつも楽しみに待ってます。
読み進めて何か違和感を感じたと思ったら、いつもの追いかけっこがないってわかって納得した。意外と気付かないけど、いつもあるものが無くなると、淋しく感じる。でも、それの大切さを改めて認識できるから、たまにはこういうのもいいね。

3: SS好きの名無しさん 2017-04-15 09:28:59 ID: 9H3l1hBI

うん。このずほと卯月の掛け合いは……よいものだ!いつからかこれがないとこの作品を読んだ気がしなくなってきて大鳳になだめすかされる提督をみるまでワンセットで金剛が弄られて落ちが着く。うん。大好きです。もう一周してきますね。

プロフィールは大事なことなので二回記述した。そういうことですな?


このSSへのオススメ

1件オススメされています

1: SS好きの名無しさん 2017-04-08 02:44:00 ID: Me8Juayf

1話1話は長めだけど、その長さに見合うの面白さがあるからオススメ


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