2017-07-30 13:32:02 更新

概要

10年前…
当時、中将であった女提督は、参加したある大きな作戦で
大事な艦娘達を沈ませてしまう。後悔と失望の中、彼女が逃げたのは快楽と酒だった。
しかし、そんなある日、彼女の目の前に驚きの人物たちが現れる。
果たして、その人物とは………


前書き

はじめまして。yanmiです。

はじめに
この作品には、作者の身勝手かつ色々な解釈・世界観があります。
ですので、そういうのが苦手・嫌いという方は、どうかブラウザバックを。
そうではなく、作者の勝手な妄想に付き合っていただける方は、駄作ですが、お読みください。

遅筆や見苦しい表現・作品など、至らぬ点が多々、ありますがどうかご容赦願います。
作者もまだまだの身の上に、文章力も皆さんの求めるレベルまで、至らぬ点も多くあります。
それでも、この場に投稿させて頂けるうちは、精一杯の精進を重ねていきたいと思っておりますので、
どうかご容赦ください。

また、加筆する部分などが御座います。その点もご了承ください。

それでは、お楽しみください!












ーーー10年前(作戦海域にて……








その日はいつもより暗い曇り空で、今にして思うとこれから起こる事を予想していたかのようだった。

かく言う私も、この時は妙な胸騒ぎが治らなかったのを、他の艦娘の子達に無線で励まして貰いながら作戦に臨んだくらい。

嫌な予感ほどよく当たるって、昔からだれかがよく言う様にこの時もそうだった……

いや、本当は避けられたかもしれなかった。でも、出来なかった……。








女提督「・・・・・・・」




作戦の終わった戦場で1人、船の上で海に浮かぶ肉片を見ながら立ち尽くしている者がいた。彼女の目の前に広がるのは、かつて艦娘だった肉の塊………海の上でそれをただ見つめている。





ー自分の所為だ………ー





ある日、突然現れ、侵攻してきた未知なる敵「深海棲艦」。正直に言えば、現代の人類に戦闘指揮能力および戦闘での判断力は無いに等しい状態だ。その所為か、人類の生息領域は瞬く間に大陸の半分を失った。

そんなある日、人類に一筋の希望が見えた。それはかつて軍艦、艦艇として昭和の大戦を戦った艦の記憶を持ち、「艤装」と呼ばれる武器を用いて奴らを倒すことのできる存在。

それが「艦娘」だ。人類はすぐさま彼女達を引き入れ、海軍の重要「物」として人類の平和の為と大義名分を掲げ、世間の見えないところで彼女達をこき使った。






提督「……あぁ、加賀、みんな、ごめん……ごめんね」





大将「中将、引き上げるぞ。現場の確認も終わった」





提督「………大将。私は間違っていたんでしょうか」





提督「私のあの時とった指揮は、正しかったのでしょうか」





大将「………さぁな。正しいかどうか。など、誰にもわからん」





大将は、目の前に広がる惨状を一通り見回しながらそう言う。提督の姿を目に捉える事なく、しかし、言葉は提督に向けて。提督は、俯き痛いぐらいに握りしめた拳に更に力を入れ、拳を握る。

彼女の手から握力で押し出された血液が滴り落ちる。その血は足元に広がる暗い海へと沈んでいった。





提督「………分からない、ですか」





大将「……あぁ、分からん」





大将「…だが、これだけは言えるだろう」





そういうと、大将は彼女の頭に手を置き、少し撫でるような仕草をする。その仕草に、彼女からの反応はない。しかし、彼は続ける。





大将「お前は良くやった。人類の生活圏を取り返したのだからな」





大将なりの気遣いの言葉だった。今まで、危なっかしくも立派に中将まで登りつめた彼女を、彼なりの優しさで称えたつもりだった。 しかし、今の彼女にはそれが逆効果だった。



大将のその言葉を聞くや否や、大将の胸倉を掴み、涙を溜めた黒い瞳で睨みつけ怒鳴ってきた。




提督「その犠牲に彼女達はなったのですか!!? これからも、まだ、彼女達を犠牲にするんですか!!?」





大将「 ………それが、戦争だ 」





大将「良いか中将。よく聞け 」





大将「犠牲のない戦争などただの夢物語だ 」





提督「 そんな事ない!! 犠牲のでない作戦だって、指揮だって出来たはず!!」





提督「 いつまでもこの様な戦い方を続けていたら……」





提督「 ここで死んでいった彼女達の死が、無意味に終わってしまう……」





大将「………………」





言いたいことを言い終えて、少し落ち着いたのか、掴まれていた胸倉から提督の手が離れ、彼女はその場にヘタリ込む。






少しの間、沈黙が続いた。





大将「 中将よ……立て 」





先に沈黙を破ったのは大将だった。

大将の言葉通り、提督はよろけながらも立ち上がった。しかし、その顔は帽子に隠れていて表情を伺うことはできなかったが、大将は御構い無しに話を続ける。





大将「彼女達の死を、無意味なものにしようとしているのは中将。お前自身ではないのか?」





提督「………私が、彼女達の死を無意味に?」





大将「 左様。 彼女たちは、ここで何の意味もなく戦っていた訳ではない 」





提督「 それはっ!! ………それは、分かっていますが」





大将「 本当に分かっているのか? 」





大将「 なら、何故、彼女たちの死が無意味だと思った?」





大将「死んでいった仲間たちの死に、意味を見出すのはいつでも我々……生き残ったものだ」





大将「 お前の部下の死を、無意味に終わらせるな」





提督「………………」








大将の言葉が彼女に響くことはなかった。彼女の中に響いたのは、仲間達の楽しそうな声、かつての思い出の聲。逃げるしかなかった。逃げるしか思いつかなかった。彼女は深い深い闇の底に逃げ込み、そして、








ーーーー現実からも逃げたーーーー























「ねぇ? そこの坊や? 私とイイコト。し・な・い? 」




時は戻り10年後。以前中将であった提督は、功績を称えられ今や大将になった。しかし、そんな彼女はあれから酒と快楽に溺れ、かつて前線で勇ましく指揮をし、戦場の女神と称せれていた面影はどこを探しても見当たらない。





提督「んぐ、んぐ……はぁ〜。ご馳走様♡」





提督「間宮さぁ〜ん! お酒ちょーだーい」





間宮「大将殿? もうお酒はありません! 早く、お仕事に………」





提督「んじゃぁ、間宮さんのお・さ・け。いっただっきまーす!」





間宮「んやぁ! ダメぇぇ〜!」





相手が倒れれば酒を煽り、酒が尽きれば男も女も構わず抱く。今の彼女はもはや軍人ですらなくなり、権力と地位に胡座をかき、好き勝手に振る舞う屑になっていた。





提督「………はぁ、間宮さんったら倒れちゃって〜、風邪ひいちゃうぞ〜?」





提督「お!お酒ゲットー!」





「 ここにおったのか、いつまでそのような事をしておるんじゃ! 」





提督「 あで!? 」





ダメ人間な提督に拳骨を喰らわせたのは、以前の大将の娘だ。

彼女は大将が総帥になった事で、元帥の座についた。その腕前は見た目からは想像出来ないほどに優れたもので、周りの大人を凌駕するするほどのものだ。

彼女がそこまでの実力になったのは、今、目の前で頭を抑えて蹲っている飲んだくれのお蔭である。





娘元帥「全く、お主のお蔭でまたわちきの仕事が増えたのじゃぞ? 」





提督「 あぁ〜! 天使ちゃんだ〜! 」





元帥「誰が天使じゃ! それと、その呼び方をするな! 」





提督「 ほらほらぁ、抵抗してもむ・だ・よ? お姉さんの方が強いんだからぁ」





元帥「 えぇい! そんな事でお主の所に来たのではござりゃんせん! 」





元帥「 お主に会わせてやりたい者がおる。真面目な話じゃ。素直に言う事を聞け」





提督「 ・・・・・・。分かったわよ 」





元帥「 ふむ。では、その乱れた服装を整えてから、ワシの部屋に来るが良い」





元帥「 案内はそれからじゃ 」





提督「えぇ〜! 天使ちゃんが着せてくれないのぉ? 」





元帥「 わちきは忙しいのじゃ! そのような暇などありゃんせんわ! 」





提督「 ぶー・・・。 着せてくれもいいじゃない 」





元帥「 そうやって、わちきを騙すつもりんしょ? だまさりゃせん! 」





提督「 そんな事しないよぉ? うふふ〜 」





元帥「 わちきには、その笑いが不気味に聞こえるわ 」





提督「 もお、疑い深いんだからぁ」





元帥「 とにかく! 服を整えたらわちきの所においでなんし! 話はそれからじゃ! 」





提督「 ………はぁ〜い 」





この時、彼女は知る由もなかった。かつて、死んだと思っていた仲間が生きて帰って来た事など。そして、己の心が揺れ動く事を………











ーーーー横須賀鎮守府in待合室









「あの大将さんが、まさか総帥になってるだなんて・・・」





「それだけあの戦いから時が流れていると言うことよ 」





「デモ、とんだsurpriseですネ〜 」





「私達的にもそうだが…… 」





「提督的にも驚きだよね〜。 あたし達、幽霊と間違えられちゃったりして? 」





「北上姉変なこと言うなよ。あいつならマジでやりかねんから 」





「・・・でも、あの子の事、聞いたでしょ 」





「あの子の今の様子では、私達がかつての私達と言う事を受け入れないでしょう 」





「「「「「・・・・・・」」」」」





「だ、大丈夫よ! きっと、提督さんなら受け入れてくれるって! 」





「しかし、受け入れなかった時はどうする 」





「そんな時は、Don't speak Don't listen で行きまショ〜! 」





「何も言うな。ね〜? それでもさぁ、キツイんじゃないの? 」





「そうだな。あいつの事だ、そんな事したら最悪、自殺だな 」





一行がある人物のことで話し合っていると、部屋の扉がノックされ、何者かが入って来た。

見れば、身長は低く、しかし、その胸に光る勲章は数多く、階級章もかなり上のものをつけている。





元帥「 昔の話に華を咲かせている中、許してくなんし。」





「あれ? その喋り方・・・。もしかして、あの大将の横にいたおチビちゃん? 」





「あら、本当。ずいぶん偉くなったのね 」





「 まぁ、妥当。と言ったところだろう」





「すごいデース! 昔はよく私と一緒にtea timeしたの覚えてますカ? 」





元帥「 お主ら、仮にも上官じゃぞ? 少しは敬いなどは・・・ 」





「相変わらず、ちっこいねぇ。 その割には胸があるから、大変なんじゃないの〜? 」





「ん? あの時よりも少し背が伸びたんじゃないか? 」





元帥「 ほ、本当か! それは嬉しいぞ! 」





「そんな事まだ気にしていたのね。だから、いつまで経っても『天使』なのよ 」





元帥「 相変わらず、わちきには辛辣よな。加賀は」





加賀「そんな事ないわ。誰に対しても同じよ」





「そんな事言って、提督さんの前では全然態度違うくせに」





加賀「 黙りなさい。それにそんな事を言う瑞鶴も私の事、言えないんじゃないのかしら? 」





瑞鶴「 ちょ! 私の事引き合いに出すのは違くない? 」





北上「 まぁまぁ 」





「それで? 相棒はどうだったんだ? 」





元帥「日も高いうちから、肉欲と酒に溺れておったわ 」





「なるほどな。 私たちの事は伝えたのか? 」





元帥「 いや、明確にはまだ伝えておらん。ただ、『会わせたい奴らがおる』としか言っておらん」





北上「 天使ちゃんも回りくどいねぇ〜。ストレートに伝えちゃえばいいのに」





「それであいつが元に戻る見込みがあるなら、誰でもそうしてるだろ 」





「なら、そうはできない何かが相棒にあるのか? 」





元帥「 ・・・・あやつは、おんしらを沈めた事を、沈めてしまった自分を未だに許せてはおらんのじゃ 」





元帥「 わちきも父も当時の仲間も、皆が励ましたがあやつの心には届かなんだ」





元帥「 そうこうしてるうちに、父が昇格しあやつの元を離れた」





元帥「 それからじゃ。あやつが肉欲と酒に溺れ始めたのは」





「ふ・・・・。なら、私達が救ってやらねばな 」





「Oh! なら、私のBarning loooveで癒してあげなきゃネ! 」





加賀「いいえ。ここは私がおはようからおやすみまで、付きっ切りで面倒を」





瑞鶴「なんでそうなるのよ! というか、そんな話してないじゃない! 」





北上「 ずいずいは苦労人だね〜 」





「いや、北上姉が気楽なだけだろ 」





「そういう木曽も相棒の事で思う所はあるんじゃないのか?」





木曽「と、兎に角だ。あいつを今後どうやって支えていくかだ」





元帥「 うむ。そういう事じゃ 」





元帥「しかし、お主らはなぜ無事だったのじゃ? あの惨状では誰1人として生存は絶望的だったと思うのじゃが 」





加賀「それが、私達にも分からないのよ」





加賀「 気が付けば、武蔵と金剛に引き上げられていたのは覚えているわ 」





武蔵「斯く言う私も、自分がどうして生きているのか。不思議でならん」





金剛「 でも、一つだけ。全員同じ様に覚えていることがあるんです 」





元帥「 それはどんな事じゃ? 」





木曽「 俺たちは’’海の底を見た’’んだ 」





元帥「 う、海の底を? それはどう言う事なのじゃ? 」





加賀「 言っても分からないでしょうし、そもそも、あそこが海だったのかも分からないわ」





瑞鶴「 変な話。私たちは何処かの底にいて、そこで何かに会ったのよ」





元帥「 何か? それが何だったか覚えている者は? 」





武蔵「 いや、だれもいない。ただ、私たちは同じ場所に浮いていた」





武蔵「 もしかしたら、他の奴らも同じ様に生きているかもしれない」





武蔵「 しかし、それを確かめる術がなかった。だから、私達はここを目指して彷徨っていたんだ」





木曽「 それをあんたのとこの艦娘が見つけてくれたって訳だ」





元帥「 ふむ・・・・。分かった。こちらでも捜索をしておこう」





武蔵「ありがたい。そうしてもらえると嬉しいな」





加賀「それで、あの娘はいつになったら来るの? 」





元帥「 もうじきくると思うのじゃが・・・・」





提督「 お待たせしましたぁ〜!! 海軍舞鶴鎮守府司令官! ここに到着です!! 」





扉が勢いよく開かれ現れたのは、一行が待っていた人物で会った。 その人物は顔を赤らめ、服も乱れており片手には酒瓶を持っていた。





提督「 本日は、本官の為にお集まりいただき感謝です! 」





元帥「 お主、また飲んだ挙句に抱いたのかぁ!!!! 」





提督「だぁってぇ〜。終わるまでって我慢できないんだもぉん 」





元帥「 この・・・・・ 」





加賀「 まぁ、落ち着きなさい。それだからいつまで経っても子供なのよ 」





提督「 え?・・・・・」





加賀「久し振りね。元気そうで何よりだわ 」





提督「 加・・・・賀? 」





瑞鶴「 私もいるよ! 提督さん! 」





武蔵「随分と、私を誘っているな。 抱かれたいのか? 」





金剛「 No! 最初は私デース! ネ? テートク! 」





北上「 あんまり、分かってなさそうだね〜」





木曽「 少しは息くらいつかせてやれよ」





元帥「どうじゃ? 少しは酔いも覚めたか? 」





提督「・・・・・・・・」






加賀「 ふふ。さ、こっちにいらっしゃい 」






加賀が一切隠す気の無い好意を投げる。以前ならここで抱きついてくるのだが、今、この時によっては違った。加賀が待っていた温もりはやってこず、代わりに予想もしない言葉が返ってきた。






提督「な、なんだぁ。天使ちゃんも意地悪だな〜 」





提督「 新人ちゃんの紹介に、こんなドッキリ仕掛けなくてもいいじゃん! 」




彼女はおちゃらけてそう言う。しかし、その顔から表情は読めなかった。それは彼女が少し帽子を深めにかぶったからと言うだけではないかもしれない。

彼女の言葉がその場の空気を凍らせ、それに気づいた元帥は慌てるように訂正をかける。





元帥「い、 いや、これはドッキリではなくてじゃな……」






提督「 新人ちゃん達も、お疲れ〜! 」






元帥の言葉半ばで提督は皆を労わる。

しかし、その言葉からはあるはずの温もりが僅かしか伝わらなかった。







加賀「 ・・・・・・・・・」







武蔵「まぁ、そうなるか 」







提督「 んじゃ、私はこれで! じゃね! 」






この言葉に、ある者は固まり、ある者は納得し、ある者は悲しそうな瞳で彼女を見送った。それが誰とは言わないが、この場にいる元帥以外の人間の心に、少なからずダメージを与えたのは言うまでもないだろう。










ーー波止場








提督「 んぐ・・・んぐ・・・」






提督「 ん、はぁ…… あ〜ぁ、なんで逃げちゃうかな〜 」






彼女は1人静かに、自分のお気に入りの場所で自棄酒を煽る。酒が喉を通った後の焼けた感じが、今はとても苦しく感じられた。

本当は分かっている。あの場にいた彼女達は、自分のことを悪く思っていない事を。確認できたのだ。ああして直接会ってその目を見たから。






提督「 ………今更、どうしろってのよ」






提督「 あの時からも逃げて、さっきも逃げちゃったのに……」






提督「 私にはもう・・・あの子達の前に立つことなんてできないよ 」






提督「 もう、あの子達と一緒にいることなんて・・・・ 」









ーーー私には無理だよーーー
















ーかくして2時間後の待合室…






ショックで気を立ったまま失っていた加賀の意識を戻すのに、瑞鶴が提督との思い出の写真を与え、武蔵が提督の真似をし加賀に抱きつく。その光景を北上は腹を抱えながら笑い、木曽は提督の反応に静かに傷付いていた。金剛はと言うと、初めから分かっていたかのように、堂々と他の誰よりも落ち着いていた。







加賀「 申し訳ありません。少し取り乱しました」






木曽「 少しってもんでもなかったがな 」






瑞鶴「 受け入れられなくてショックで気絶とか、加賀さんあり得ないし」






加賀「 仕方がないわよ……えぇ、仕方がないことなのよ」






加賀は瑞鶴より受け取った写真を、胸元に入れながら瑞鶴に反論する。そして、提督のコスプレをしていた武蔵が、着替え終わったのか、いつの間にか少し離れた椅子に座って落ち着いている。

どうやら、彼女も金剛と同じく、提督がどう言う反応を見せるのか予想はついていたらしい。






武蔵「 だが、予想はついた反応だったろう 」






金剛「 ちょっぴり寂しいですガ、その通りデス 」






寂しいものは寂しい。皆、そういった顔である。

そんな中1人だけゲラゲラと笑っていた北上が、気になる事を言う。






北上「 ……で、結局、あたしらどうなるわけぇ? 」






武蔵「 相棒の鎮守府に移籍らしい 」






木曽「 そんな事していいのか? ただでさえ、受け入れられてないんだぞ? 」






武蔵「 そこは私たちで何とかするしかなかろう 」





武蔵「 それに、そこには私たち以外の艦娘はいないと言っていたしな」





加賀「 もはや、艦娘さえも拒絶しているとは・・・ 」





加賀は、そう言ってまた落ち込み、胸元から彼女とのツーショット写真その他諸々を取り出し感傷に浸り始めた。

それを見た瑞鶴が一喝加賀を励ます。






瑞鶴「 はいはい。これからでしょ? 落ち込まない落ち込まない! 」






金剛「 でも、それって鎮守府がキチンと機能してないって事デスヨネ? 」






ふと、金剛が誰も出さなかった話題について触れた。その瞬間、他の者は動きを止め、その惨状を想像して身震いした。






武蔵「 まぁ、現場の惨状は今は考えないでおこう 」






木曽「 あいつ、片付けが極端に苦手なやつだからな…… 」






そうこうしているうちに、またも、扉がノックされた。






加賀「 はい。どなたですか? 提督ですか? 」






入ってきたのは求めていた人物とは違う事を確認するや否や、加賀はまた胸元の写真を取り出す。その場にいた全員がため息を吐いたのは言うまでもない。






元帥「 わちきで悪かったの 」






加賀「 本当ね。空気を読んで欲しいものだわ 」






元帥「 おんし、本当にわちきを上官と思っておるか? わちきは心配じゃ」






加賀「 安心なさい。あなたの事はこれでも"一応"、認めているから」






元帥「 一応を強調するでない! 」





元帥と加賀が漫才とも取れるやり取りをしていると、奥の方から武蔵不機嫌な声が聞こえた。どうやら、彼女もまた提督を待っていたらしい。






武蔵「 漫才をしに来たのなら、今すぐご退出願おうか。元帥閣下殿」






元帥「 用ならある……じゃから、怒らんでくなんし 」






元帥がそう言うと、武蔵は鼻をふんっとならしそっぽを向いた。タダでさえ体の小さく愛らしささえ感じる体をしているのだ。武蔵の中に湧いた怒りのぶつけようがどこにもないのは言うまでもない。それでも気に入らないのか、武蔵は手元にあった金剛の淹れた紅茶をグッと飲み干し、割れない程度の勢いでカップをテーブルに置く。しかし、キチンと冷めているかを確認してからではあるが…






元帥「 ……武蔵よ。些か、不機嫌過ぎではないか? 」





武蔵「 ……ほぉ? そう見えるのにも関わらず、貴様は火に油を注ぐと言うのか? 」





武蔵の鋭い眼差しに殺気を感じたのか、それ以上元帥が詮索することをやめた。代わりに、先ほどの顔を改め皆に向かってこう言い放った。





元帥「 おんしらの迎えの車が用意できた 」





木曽「 あいつに言わずに決めて良かったのか? 」





元帥「 今のあやつに言って、許可が下りると思うか? 」





木曽「 それは……… 」





元帥「 今のあやつに事前報告など、優しい事はせん! 」





元帥「 あやつの事をよく知るが故の事じゃ。友として……弟子として…な 」





そう言った元帥の顔は下を向き、手も固く握り締められていた。加賀たちの見るそこには、後悔と情けなさを纏った一軍人の姿であった。そして、それを見た武蔵は少し反省するのであった……





瑞鶴「 ……ま、まったく、頼りない提督さんね! 」





場の空気を吹き払うように、瑞鶴がそう言うと今まで写真を眺めていた加賀は顔を上げた。





加賀「 あら、そこが彼女のいい所じゃない 」





元帥「……そうじゃ、 おんしらの荷物は既に向こうに運んでおる 」





武蔵「 あとは私たちだけと言うことか 」





元帥「 そうじゃ。 道中気をつけてな 」





金剛「 No probrem ! 心配ないデース! 」





こうして、6人は提督よりも一足早く鎮守府へと向かったのであった。そして、鎮守府の惨状に大きなため息をついた後、死に物狂いで片付けに追われたと言う。












ーーその頃、提督は・・・?








〜@拠り所『鳳翔』









提督「 ね〜ぇ〜。わらすぃの〜。ひゃにゃしぃ〜。 きいれるの〜?」





お気に入りの場所へ行ってから、横須賀鎮守府中の男を食い散らかした後、急に虚しさと悲しみが襲ってきた彼女は、この場へと逃げ込んだ。

先に来ていた先客達も絡まれてはマズイと思ったのか、お勘定を済ませ店を出て行った。中には、自分の座っていた席のテーブルに勘定を置いていく者までいた。嫌な客がきたとしても、誰1人として店の中で問題を起こそうと思う者はいない所を見ると、彼らの鳳翔に対する気遣いが目に見えてわかる。





「はい。大丈夫ですよ。 聞いております 」





提督 「 うにゃぁ〜……へ? えへへぇ〜 」





拠り所『鳳翔』 。和風な小さい店だが、その要所要所に店に来た客への心遣いが伝わる温かい店。

海軍のあらゆる人間の中でも有名なお堅い軍人様が唯一、素直になれる場所、心の内を打ち明けられる場所として有名で、そこを切り盛りしているのが、軽空母鳳翔である。彼女は、その若さからは想像できない抱擁力と母のような温かさで、悩める人々を癒すまさに『母』そのものの様な存在だ。

そして、今はそこに落ちぶれた大将が癒しを求めに来ているのであった。





鳳翔「 ちゃぁんと、お話は聞いていますよ。さ、お飲みください 」





提督「 あは! やっっっっっぱぁぁ〜、ほぉしょぉさんはぁ、癒しだぁぁ 」





酔っ払いの……もとい、提督の戯言だが、何を隠そうこの鳳翔。陰ながらこの提督の事を想い慕っている。だから、例え酔っ払いの言葉であっても、ただの酔っ払いと違い彼女から発せられたものであれば、それは彼女にとって、録音して毎日聞いていたいくらいの嬉しい事なのである。





鳳翔「 ふふ、そう言ってもらえると、なんだか、嬉しいわ 」





すると、先程まで笑っていたその顔が急に泣き顔に変わる。





提督「 グス・・・ヒッグ・・・・」





鳳翔「 ・・・・・何か、あったのですか? 」





鳳翔の優しく温かいその声に、提督は嗚咽交じり今日のことを話し始めた。






ーーーー少女説明中ーーーー






提督「ーーーーってころがぁ、あってぇ、もお、どおしたらいいのか、わからなっくて 」






提督「 それれぇ、きづいたら、そのばをぉ、にげちゃっっったの」





鳳翔 「それは、辛かったですね 」





その場で彼女に同調する鳳翔。しかし、彼女は知らなかった。鳳翔の中で黒い欲望が湧き始めた事を・・・





鳳翔「…………………」





鳳翔「 提督?よく聞いてください 」





提督「 んぅ? らにぃ? 」





鳳翔「 まずは私の胸の中で、落ち着きましょう 」





提督「 んにゅ・・・・ 」





鳳翔「 ……聞こえますか? 私の鼓動……それから、貴女の鼓動 」





提督「 ………うん、きこ…えりゅ… 」





鳳翔「 では、その音を聞きながら深呼吸をしましょう 」





鳳翔「 私の合図で吸って、私の合図で吐いてください」





提督「 ・・・・・・うん 」





鳳翔(これで、提督さんは私の……ふふふ、もう少しです)





邪な感情とは反対に、鳳翔の胸の中で気持ちよさそうな顔を浮かべている提督。側からみれば、大いなる母にあやされているようにしか見えないが、事実はそうではない。もっとも、提督は知る由もないが……






鳳翔「 では、目を閉じて・・・ 」





提督「 ・・・・・ん 」





鳳翔「 では、吸って〜? 」





提督「 スゥ〜・・・・・ 」





鳳翔「 吐いて〜? 」





提督「 ハァ〜・・・・・ 」





鳳翔「 もう一度……吸って〜? 」





提督「 スゥ〜・・・・」





鳳翔「 息を吸うと、体中が満たされ安心する 」





鳳翔「 息を吐いて〜? 」





提督「 ハァ〜・・・・」





鳳翔「 息を吐けば、不安やストレスが解れて、体の力が抜けていく 」





鳳翔「 どうですか? だいぶん落ち着いて来ましたか? 」





提督「 ・・・・・うん、なん、らか・・・良い、気分 」





鳳翔「 ふふっ、それは良かったです 」





鳳翔「 では、そのままご自分のペースで深呼吸を続けてください 」





提督「 ・・・・・わ、かった 」





鳳翔「 はい。それでは次に、まだ、残っている体の力を抜いていきましょうか 」






ーーーーーー




ーーーー




ーー











1時間後・・・・






提督「 んにゅ・・・・ハッ! ここは私! 私はどこ!? 」





今までにとった事ない気持ちの良い睡眠から目覚めた彼女は、慌てて訳のわからない事を言う。 辺りを見回すとそこは見覚えのない綺麗な和室だった。そして、自分が寝ている布団の横に、自分の軍服が綺麗に畳まれた状態で置かれていた。





提督「 ………私、何やってんだろ 」





酔いから覚めた頭が回り始め、先程までの自分の行いを思い出す。

思えば、あの彼女達を失った作戦から、自分は何一つ前へ進んでいない。始めは大将から逃げた。そして、次は天使ちゃん。そして、同僚や仲間達、さらには軍そのものから……気付けば現実からも逃げていた。






提督「 ………艦娘は『兵器』。か…… 」






大将に昇格したあの日、周りの他の大将達はみんな私を褒め称えた。自分こそが人類を救った救世主だと、天皇様から表彰までされた。けど、提督の心は晴れなかった……






そして、それから何日か経ったある日、私はある大将に艦娘に対する自分の思いを主張しに行った……









ーー回想開始!撃て〜!





勲章の授与式が終わり、午後からの活動が自由という事で、横須賀鎮守府内の人口はいつもより少ない。そのせいか、今の自分の暗い気持ちが更に重みを増して行く感じがして、心なしか体が重い。

それでも私は、目的地へと歩く足を止めはしない。重い体を引きずるように足だけを動かす。



どれほど長い廊下を歩いたんだろう……と、思ったが実際、そんなに歩いてなどいない。むしろ、数分ほどで着いた。しかし、体感的には1時間ほど歩いたように思う。





提督『…………よし』





意を決して扉をノックする。中からは、軍人気質な堅苦しい返事が返ってきた。それを聞いて私は部屋の中に入る。

部屋の中は、もう4月だというのにまだ暖房がついている。いわく、この大将もなかなかの高齢で、最近、体感温度が若手との間に差があるのをよく耳にする。そんな話を聞いていたお蔭で、大将に「暑くありませんか?」などと、失礼な台詞を吐かずにすんだ。





大将『おぉ! これはこれは! 紅羽くんではないかぁ! 』





大将『 大将に昇格したんだってね? 私も鼻が高いよ 』





大将『 それで、何か用かね? 』





提督『大将……私事ではありますが、相談したい事が』





私が少し遠慮気味にそういうと、大将は高らかに笑った後、私の方を見て軽く謝罪する。そして、畏まることはないと世辞を並べる。





大将『そんなに畏まらずとも、もう、君と我々は対等ではないか』





大将『なんなりと気軽に言いたまえ』





「対等」、その言葉は今の私にまるで、鋭く尖らせた刃物のように心の深い、深い所に突き刺さった。その痛みをグッと押し殺して私は話を続ける。






提督『………艦娘のことですが』






提督『私はさきの作戦で、多くの艦娘を死なせてしまいました』






提督『私は正直とても胸が痛くて、死んでしまった彼女達に申し訳なくて』






私が言い終わり大将の方を見る。しかし、大将の姿は丁度日光と重なり見えづらく、その表情すらも伺うことはできなかった。

そんな状況でも御構い無しに、大将は続けた。






大将『………ふむ、それで? 何が言いたい?』






そう言った大将の言葉には、先ほどまでの温かさはなく。代わりに、どこか冷たい感じがして、一瞬ではあるが背筋に悪寒が走り、脳内からはこれ以上ここにいるのはよくないという信号が出た。私はこれをなんとか抑え、次の言葉を絞り出す。






提督『……私は、現在の艦娘たちの扱いの改善を提案します 』






大将『 ………ふむ。そうか 』






そう言うと、大将は立ち上がり私の方へと歩いてくる。一歩ずつ、ゆっくりと確実に距離を狭めてくる。大将が近づいてくるたびに、私の脳から警戒警報が絶えず鳴り響き、足も僅かに震えてくる。



ふと、大将が足を止めた。丁度、私と机の中間あたりで立ち止まり、私に背を向けながら話をする。






大将『 紅羽大将、君は今幾つかね? 」







提督『………25、です 』







大将『 そうか……なら、仕方があるまい 』






大将は見上げていた顔を下に向けながらそう呟く。そして、私の方をジッと見つめて、ニッと笑った。私は自分の提案を受け入れてくれたと思い、つい明るい声音で話してしまう。







提督『 そ、それでは! 』






大将『 君はまだ若い。故に、過ちも多いだろう 』






しかし、返ってきた言葉は欲しかった言葉とは違った。

大将は、間違った人間を優しく注意するような口調でそう言ってきた。






提督『 ………は、はぁ 』






大将『 故に、艦娘を『人』と勘違いするというのも、仕方がないことじゃな』






提督『 そ、そういうわけでは……… 』






大将『 いいかね。紅羽くん、アレら艦娘は『兵器』なのだ 』






提督『………んなっ! 』






大将『ひとつただの道具と違うのは、アレらは女体であり人の形をしているということだ 』






大将『 故に、『戦闘』以外の事にも使える……大変、便利で有益な物よ 』






大将『 私が言いたいことは……分かるな? 』






提督『………いいえ。私には、理解できません 』






大将『 ……そうだろう。しかし、それも若さ故というものじゃ 』






大将『 じきに君も分かる。アレらは、ただの道具でしかない事を 』






提督『 ………………… 』






大将『 相談事は、以上かね? 』






提督『 ………はい、貴重なお時間を割いて頂き感謝致します 』






大将『 うむ、君のさらなる成長を心から祈っているよ 』






提督『…………ありがとう、ございます 』











ーー回想終了。お疲れ様!











提督「………あの後から、随分経っちゃったな 」





提督「 ……でも、いつまでもこのままじゃダメだよね 」





鳳翔「 ふふっ、よくお眠りになられてましたね? だいぶん疲れが溜まっていたんですね 」





不意にかけられた声に、僅かだが体をビクッと震わせると、近づいてくる彼女はクスリと笑う。

その声が聞こえたわけではないが、提督の顔は少し赤くなった。





提督「 鳳翔さん? という事は、私は鳳翔さんの所に来た後、そのままここで? 」





ない記憶を辿って、うっすらと覚えている事実と現状を照らし合わせながら頭の中を整理する。





鳳翔「 はい。お話の途中で眠ってしまわれたので、起こすのも悪いかと思ったのでそのまま」






提督「 ご、ごめんね? 私、迷惑かけちゃって 」





鳳翔「 いえ。提督さんならむしろ、いつでもお待ちしていますよ 」





提督「 な、なんだかそう言われると嬉しいなぁ 」





鳳翔「 それはそうと、提督? いえ、紅羽さん? 」





提督「 な、なに? 」





この時、提督の中である疑問が生まれた。知るはずも教えたはずもない名前を、鳳翔が知っていた事である。 しかし、そんな疑問はすぐに消え去った。なぜかと言うと、自分が酔いつぶれた時にでも、口を滑らせてしまったのでだろうと自分の中で、納得のいく理由づけができたからだ。





鳳翔「 ’’あの言葉’’ 忘れないでくださいね? 」





提督「 あの言葉? あの言葉って・・・ 」





鳳翔「 ’’眠ってください ’’ 」





その瞬間、提督の意識は深い暗闇の中に落ちていった。しかし、その感覚が怖いわけでもなく、むしろ、心地いいとさえ思えた。しかし、外で何か聞こえたと思った次の瞬間、提督の意識は光の輝く方へと引っ張り上げられた。





鳳翔「 はい。紅羽さん。これで覚えましたね? 」





提督「 うん・・・・大丈夫だよ 」





ぼやける頭で、鳳翔の言う事に相槌を打つ提督。





鳳翔「 それなら大丈夫です。 もう心配に思う事は何もありません 」





提督の言葉を聞いて、安心したかのように、そう言葉を投げかける鳳翔。彼女は、優しく提督に触れ、自分の愛する者の肌の感触を確かめる。





鳳翔「 貴方の思うよう、考えているようになさってください」





鳳翔「 きっと、上手くいきます 」





鳳翔が、提督からすっと手を離すと、提督の意識も同じようにスッと元に戻った。






提督「ん…………」






提督「 なんだか、鳳翔さんにそう言われると、すっごく安心するよ 」





提督「 ありがとうね 。 お話を聞いてもらっちゃって 」





鳳翔「 いえいえ。私は自分のできる事をしたまでです 」





鳳翔「 進んだのは、提督ご自身のお力です 」





提督「 またまた、謙遜しちゃって〜 」





そんな会話を交わしながら、2人は玄関へと向かう。相変わらず、彼女は軍服をきちんと着ようとはしないが、今目の前にいる彼女は、軍服をしっかり着ている。その姿からは、前までの彼女の面影は見当たらない。




外に出た時、彼女の顔が急に真剣になり、先程までのふざけた雰囲気がなくなった。

そして、彼女は鳳翔に向き直り、今までにないくらいに、綺麗な敬礼をしてみせた。






提督「 今まで、大変お見苦しい姿を見せてしまい、本当に申し訳ありませんでした! 」





提督「 本官は、これから今までの分を取り戻すべく、より一層の精進を続けていきたいと思います!! 」





提督「 そして、これからもご指導ご鞭撻のほど、宜しくお願い致します! 」





鳳翔「・・・・・・・・ 」





鳳翔「 ふふっ! 」





提督「 あ、あれぇ? これでも精一杯真面目にやったつもりなんだけどなぁ 」





鳳翔「 いえ。何もおかしくはありませんよ? ただ・・・ 」





提督「 ただ? 」





優しげで温かな笑みは消さず、鳳翔は提督に向き直り提督の顔を見つめ直す。





鳳翔「 ………いえ、なんでもありません 」





提督「 えぇ〜! 本当にぃ? 」






何かを言いかけて諦めた様子の鳳翔に、提督はふざけながらもそれを聞こうとする。






鳳翔「 ・・・・・では一つ、私の方からも。良いですか? 」






何故か申し訳なさそうにしながらこちらを伺う鳳翔に、提督は今まで感じたこともない愛おしさを感じ、思わずその顔を見つめたままボーッとしてしまった。






提督 (あれ? 鳳翔さんと話す時って、こんなにドキドキしたっけ? )






鳳翔「 あ、あの、提督さん? 私の顔に何か付いていますか? 」






提督「 あ、え! うぅん! 何にもないよ 」






提督「 そうだ! そろそろ呉に戻らないと、あの子達、待ってるかもしれない! 」






鳳翔「 どうして、そう思うのですか? 」






提督「ん〜・・・・なんとなく、かな? 」






提督「 大した根拠は無いんだけど、なんでかあの子達があそこで、待ってくれてる気がするんだ 」






鳳翔「 ・・・・・そうですか 」






提督「 だから、もう行くね! 」






鳳翔「 はい。また、いつでもいらしてくださいね 」






提督「 うん! その時は目一杯オマケしてね! 」






鳳翔「 ふふ、考えておきます 」






去りゆく提督の背中を見つめる鳳翔。それは、彼女の姿が見えなくなるまで続いた。そして、フッとため息をつき胸に手を当てる。

空はもう既に柿色に染まり、吹いてくる風はどこか別れの寂しさを助長するように冷たかった。鳳翔は空を見上げた。どこまでも遠く、どこまでも続く空を見る。






鳳翔「 これからも、なんて付けなくても私は、いつまでも貴女のお側にいます 」






鳳翔「 だから、安心していつでもここに来てくださいね? 」






鳳翔「 私の・・・・ 」






ーーー可愛いお嫁さん♡












ーーー場所は変わり、ここは呉鎮守府





執務室





鎮守府内の片付けが終わった加賀達が、次に直面した問題。それは、提督が今までにやらなかった提出期限ぎりぎりの書類の山であった。中には期限を過ぎているものもあり、謝罪の電話や期限延長のお願いの電話。さらには、演習のお断り……などなど、挙げればきりのない程である。

そんな中、真面目に取り組んでいるのは金剛、比較的真面目にやっているのが武蔵、木曽、そして、瑞鶴。やる事はやっているのが北上で、戦力外が加賀だ。






武蔵「 やれやれ、やっと片付けが終わったかと思えば・・・ 」





木曽「 次は書類の山と格闘か・・・ 」





金剛「 Hey !! 武蔵ぃ! キソー! 口よりも手を動かしなサーイ! 」





加賀「 ここにどんな家具を置けばいいかしら ・・・・ 」





瑞鶴「 加賀さんも、部屋のコーディネートなんてしてないで、手伝ってよ〜 」





加賀「 ここは譲れないわ。 だって、これからあの子と私の愛の巣になるんだもの 」





瑞鶴「 なら、邪魔な書類の山を先に片付けるべきだと思うわ……… 」





書類の山に埋もれながらも、武蔵と木曽の会話を聞いていた金剛が、手を動かすようゲキを飛ばす。2人はやれやれと言った感じで、書類に手をつける。





北上「 加賀っち〜。この書類のコピーお願〜い! 」





加賀「 了解したわ 」





瑞鶴「 北上さんの言う事を素直に聞くのはなぜなの・・・ 」





北上「 さぁ? 」





武蔵「 む? 横須賀より通信だな 」





加賀「 今すぐに繋げなさい 」





元帥『おぅ。流石に反応がはやーーーー 」





元帥の声が聞こえた途端、加賀はその通信の電波をすぐさま遮断し、部屋のコーディネートへと戻る。





木曽「 ホント、あいつ以外に興味がないね〜 」





金剛「 加賀は、テートクlove !! ですからネ〜 」





瑞鶴「 ちょっと! 何考えてんのよ! 」





加賀「 私は今、この家具の配置を考えていますが 」





瑞鶴「 そう言う意味じゃないわよ! 通信のことよ! 」





加賀「 不毛な事に、電気代を使うのは勿体無いわ 」





瑞鶴「 不毛じゃないわよ! 必要経費よ! 大事な指令とか提督さんの事とかだったらどうすんのよ! 」





加賀「 なっ! ・・・・・ 私としたことが」





加賀「 一生の不覚! 盲点だったわ・・・・ 」





瑞鶴「 普通に考えれば分かるでしょうが! 」





武蔵「 ふむ、瑞鶴。 貴様も中々苦労人だな 」





瑞鶴「 眺めてないで、あんたもなんとかしなさいよ!!! 」





すると、またもや通信が入った。今度の加賀の速さはもはや、島風も驚きの速さで通信を繋いだ。





加賀「 要件を手短に言いなさい。 それ以外の会話は不要よ 」





元帥『 先ほどの通信を切った犯人がすぐに分かったぞ 』





加賀「 要件はそれだけ? あの娘はどうなったの? 答えなさい 」





元帥『 そ、そんなに慌てるでない。 あやつはすでにそちらに向かっておる 』





元帥『 先程、清々しい顔でわちきの所にーーーー 』





加賀「 あの子がもうすぐここに来るわ。 急いで出迎えの準備をしましょう 」





またも、元帥からの通信を話し半ばで切った加賀は、すぐさま出迎えの準備に取り掛かった。 まずは、余っていた山のような書類を、島風もビックリの速さで片付け、部屋のコーディネートも、これまた島風もビックリの速さで済まし、更には料理からお風呂、そして、何故かダブルのベットのベットメイクまでもを、島風もry(以下省略・・・の速さで済ました彼女は、身なりを整え外へと出て行った。






金剛「 Oh ! これがよく言う、火事場のクソ力ってやつネ! 」





瑞鶴「 ・・・・始めからこうして欲しかったわ 」





北上「 ほほぉ〜。あの山が綺麗サッパリだね〜。良いね〜、侘び寂びだね〜 」





木曽「 姉さん。使い方間違ってるぞ 」





武蔵「 さて、仕事も終わった事だ、相棒を迎えに出るとするか 」






ーーー鎮守府〜門前〜






加賀「 ・・・・・少し、早すぎたかしら 」





なんの運命か愛する者ともう一度会う事の出来るという喜びからか、彼女の胸の高鳴りは最高潮である。その所為か、ジッと待っているだけにしてもソワソワと、体が落ち着かない。





加賀「 ・・・・ 本当、不思議な事もあるものね 」





加賀「 あの時、あの戦場であの娘の事を想いながら暗い海の底へと沈んでから 」





加賀「 私の不甲斐なさを呪わなかった日はなかった・・・・ 」





加賀「 あの時、私がああしていれば・・・ 」





加賀「 一航戦の誇り・・・とは、よく言ったものね 」





加賀「 その一航戦は、仲間1人も救えないのだから・・・・ 」





「そんな事ないよ! 加賀は、いつだってみんなの事を考えていたじゃない! 」





加賀「 ・・・・・・っ!? 」





驚いて後ろを振り向けば、そこには心から愛する者・・・提督の姿があった。 さっき到着したばかりなのか、その両手は、重そうなトランクが塞いでいる。そんな彼女の顔は笑っていた。





提督「 加賀が・・・加賀がいなかったら、私は、今の私はなかったのよ? 」





加賀「 ・・・・・あ、あぁ、紅羽・・・」





熱い抱擁だった。その抱擁から感じられる物は、喜び、愛、寂しさ・・・・

様々な想いの感じられる熱い抱擁に、提督は驚いたようで、両手に持っているトランクを落としてしまった。





提督「 か、加賀? もう、どうしt・・・!?」





加賀の唇が提督の言葉を遮った。

熱く、どこまでも熱い接吻だった。情熱的で煽情的で、それでまた愛のこもった濃厚な接吻。

いつまでそうしていただろう。初めは戸惑っていた提督だが、次第に乗り気になりいつの間にか、加賀と同じ様相手を貪っていた。





加賀「んはぁ・・・、随分と乗り気ね 」





提督「 か、加賀が、あんなのするからじゃない! 」





加賀「 私とは嫌だったの? 」





提督「 そ、そうじゃないけど・・・ 」





加賀「 なら、無問題ということね 」





提督「 だ、だから、時間と場所をーーー 」





加賀「 あら、金剛の真似かしら? ふふ、私はどんな貴女でも大丈夫よ 」





提督「 にゃあぁぁぁ!! 」





<にゃあぁぁぁぁ!!!






ー物陰







瑞鶴「 私達、いつまでここにいなきゃなの? 」





武蔵「 む? さぁな 」





木曽「 あ、あんな、激しいのを・・・・ 」





北上「 木曽っちは、乙女だねぇ〜 」





瑞鶴「 あれ? 金剛は? 」





武蔵「 先程まではそこにいたのだが・・・・ 」





北上「 金剛ちゃんなら、あそこだよ〜 」





<ヘーイ! テートクー! 私の事も忘れちゃNo !! なんだからネ!





<みゃあぁぁぁぁ!!! 今はらめぇぇ!!






瑞鶴「 ハァ、ホント、うちの主力はなんでロクなのいないのよ 」






武蔵「 そんなこと言っている場合か? 私たちも行くぞ 」






木曽「 お、俺はいつでも大丈夫だ 」






北上「 なに想像してんの〜? 」





木曽「 変な妄想なんてしてねぇ! 」






瑞鶴「 もう! ちょっとは言う事を聞きなさいよー! 」






こうして、落ちこぼれた提督と帰ってきた艦娘たちの、奇妙で不思議な物語が始まるのであった。










ーーー横須賀鎮守府










元帥「うむむ・・・・本当にどうしても、ダメか?」






その体の小ささに似合わない椅子に、浅く腰掛けながら唸る。

長年横須賀に滞在し、軍のために働いてくれていた目の前の女性は、考えを変える気は毛頭ないように見える。

正直言って、行って欲しくないのが本音である。



返事を待って間も無く。目の前の彼女から返答が返ってくる。

明るく、微笑みながら答える。






「はい。私も、もう一度だけ戦場に立って、みなさんのお役に立ちたいと思っています」






元帥「 ぬ〜・・・、少し、寂しゅうなりんすが、致し方ありゃんせん 」





元帥「………よし! おんしの異動願い、確かに受け取りんした 」





「 無理を聞いてもらってありがとうございます 」





元帥「 いやいや、おんしには返しても返しきれん恩があるかの 」





元帥「 多少の苦言はあろうが、おんしは気にするでない 」





元帥「 では、異動先でも精進しなんし! 」





「はい。ありがとうございます 」





「 では、失礼します 」





元帥「 おんしも罪な人間よの〜 」






ーーのう? 師匠よ・・・












ーー呉鎮守府








「加賀のバカぁぁーー!!!! 」






鎮守府中に響き渡ったその声は、まだ目をこすっているであろう太陽を、叩き起こすほどと思うくらいの大声だった。





加賀「 罵声?・・・ そう言うプレイなのね? 」





提督「 なんで私の下着を加賀が履いてるの!! 」





加賀「 ・・・・? 」





いたってそれが当たり前で、こちらが間違っているかの様に錯覚させる様な加賀の表情からは、微塵の悪意も感じない。むしろ、無邪気ささえ感じるほどである。





提督「 そんな不思議そうな顔しないでよ! 」





加賀「 鎧袖一触ね・・・ 」





提督「 全然使い方違うし、そもそも、そんな事で私は誤魔化されないわ! 」





加賀「 それはそうと、貴女服は着なくて良いのかしら? 」





提督「 そんな事より! 私の下着を返して!!今すぐ! 」





加賀「 横暴ね・・・・ 」





提督と加賀がそんなやりとりをしていると、1人の来訪者が現れた。

無論、提督は裸のままで身に纏う衣服など一枚もない。

来訪者は、それを知らずに目をこすりながらドアを開ける。






瑞鶴「 もう〜、朝から何の騒ぎなのよ。休日なんだから寝かせて・・・ 」





提督「 あ・・・・・ 」





瑞鶴「 へ? ・・・・オゥ、見事なボディーnゲフッ?! 」




見事な身体つきだった。脚から腰にかけてのラインは、見事な曲線美を描き女性である瑞鶴でさえも見惚れるほどの美しさだ。

そして、腰から上は、キュッと程よくしまったくびれに、たわわに実った魅惑のj………






提督「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」





瑞鶴の視界が暗くなると同時に、頭部に脳を揺さぶる激しい衝撃が走る。

帰って二度寝でもしようかと思っていた瑞鶴は、すぐにその考えを捨てる。

今、彼女の頭に巡っているのは………





瑞鶴(ドック、開いてたっけ?)





いくら大戦を戦い抜いてきた幸運艦も、流石に間が悪ければ不運にも会う・・・。瑞鶴は、早朝から自分の姉の事を思い出す羽目になった。





瑞鶴( そういやぁ、翔鶴姉っていっつもこんな役回りだったなぁ・・・ )





加賀「 あら、瑞鶴じゃない。そんな所で寝ていたら風邪をひくわよ? 」





瑞鶴「 原因は・・・・あん、たか・・・ガクっ 」





提督「 フーっ! フーッ! 」





加賀「 ほら、紅羽。ココアを用意したから、これを飲んで少し落ち着きなさい 」





提督「 う〜っ、誤魔化されないからね〜 」





そう言いながらも、ココアを飲んで表情を緩ませている辺り、既に誤魔化されている感じが否めず、加賀は少し微笑む。それに気づいた彼女は、慌てて表情を元に戻し頬を膨らませる。その頬を見て何故か、つつきたいと言う衝動に駆られた加賀は、いつの間にか彼女の膨らんだ頬へと手を伸ばしていた。





提督「ひょっほ! ちゅっちゅかにゃいでよ〜 」





加賀「 ふふっ、ごめんさない。無性につつきたくなったものだから。つい 」





提督「 そうやって、また私を誤魔化そうとしてるの知ってるんだからね! 」





加賀「 誰も誤魔化そうだなんて思ってないわ 」





提督「 本当? 」





加賀「 えぇ、本当よ 」





提督「 んじゃぁ・・・・ 」





加賀「 え?・・・・・ 」






ー私の下着を返して





ーそれは無理な提案ね・・・





ー(私は放置? まだ、動けないから誰か助けて! )










ーーいつから朝だと錯覚していた? もう昼だ!!!








ー廊下(食堂行き〜







提督「 ここって、間宮さんいるの? 」





加賀「 分からないわ。 私もここはあまり見ていないから……。一緒に見回りましょうか 」





提督「 そうだね〜。 私もあんまり見てないから分かんなくなっちゃった 」





加賀「 しっかりしなさい。仮にも、貴女は大将なんだから 」





提督「 そ、そうだね〜 」





加賀「 それに、私のお嫁さんでもあるんだから 」





提督「 そうだn・・・って! 何、言わせようとしてんのよ! 」





加賀「 あら、違ったのかしら? 」





提督「 そ、それはぁ・・・うにゅにゅ 」





見る見るうちに顔が真っ赤になっていくのを見た加賀は、どこか嬉しそうに鼻歌を歌う。かつて、大事な仲間が好んで歌っていた歌を・・・





加賀「 〜♪ 〜〜〜♪ 」





提督「 ・・・その歌、知ってる 」





加賀「 そう。赤城さんが好きな曲なのよ? 」





提督「 そう、だったね ・・・ 赤城 」





加賀「 ・・・・ ・・ 」





「バーニングーーーーーー!!!! 」






提督「 ・・・・ほえ? 」





どこからか、勢いのある足音共に声が聞こえた。 その声の主を探すのに30秒。そして、そこへ視線を合わせるのに30秒。この僅か1分の間なのに、提督は避けきれなかった。






金剛「 ラァァァーーーヴ!!!!! 」






提督「 グッッハァァ!!!! 」





加賀「 ・・・・・・見事ね 」





見事に決まる金剛のコンボ。見事に決められる提督。それを眺めている加賀と武蔵・・・





加賀「 ・・・・ 貴女、いつからそこに? 」





武蔵「 ん? あぁ、金剛と一緒にな 」





加賀「 その割には彼女と一緒にいなかったようだけれど 」





武蔵「 あいつが先走って行っただけだ。 私はその後ろで歩いていた 」





加賀「 そう 」





武蔵「 そんな事より、助けなくて良いのか? 」





金剛「 テートクぅ! おっはよーございマース! 今日もcuteでpretyですネ! 」





金剛「 私、今までとっても寂しかったデース! だから、テートク分を補給デース!! 」





提督「 ちょ……金剛、ギブ……ギブだから 」





精一杯の力を込めて抱きしめる金剛に、提督は自分の意識の限界が近いことを伝える。しかし、その言葉は金剛に届くはずはなく。金剛の抱きしめる力は更に増す一方である。






武蔵「 ……なぁ、加賀よ 」





加賀「 何かしら。今、丁度いいアングルなんだけど…… 」





武蔵「 ………………… 」





そろそろ提督を助けたほうがという提案をしようと思ったが、苦しそうにしている彼女の顔を、青葉もビックリな速さとアングルで撮影している加賀を見た武蔵は、呆れながら仕方なく1人で救出に行くのであった。





武蔵「 おい、金剛。 相棒が死にかけているぞ 」





金剛「 ハッ! テートク! 死んじゃダメです!! 」





提督「 は、ははっ……だい、じょうぶ 」





提督「 お花畑は見えたけど…… 」





武蔵「相棒よ。 人はそれを大丈夫とは言わんぞ 」





提督から金剛を剥がし、提督の腕を掴み立たせた所で、自分の元に引き寄せる。

金剛は加賀が撮った写真を見ながら、交換取引をしている。

加賀はその写真を見ながら恍惚としているが、金剛の見えないところでお気に入りの写真を胸元に入れ、お気に入りをしっかりとキープしている。





加賀「 いいわ………とても良いモノが撮れたわ 」





金剛「どれどれぇ? 私にも見せてくだサーイ! 」





武蔵「 相棒、調子はどうだ? 」





提督「 え、えっと、まだちょっと苦しいかな……」





武蔵「そういうことではない。私たちの事と、鎮守府の運営についてだ」





武蔵の真剣な声音に、提督は押し黙り俯く。

自分達がこうして来るまで、提督がずっと逃げていた事だ。

辛くない筈がないのは、誰でも安易に想像できる。





提督「 ………大丈、夫かな? 」





言葉を詰まらせながらも、元気のない声音で返答する。





武蔵「 ………相棒。私の目を見ろ 」





提督「 ん……………」





側から見れば映画に良くあるキスシーンの一部に見えるだろう。

武蔵が提督の顎を持ち上げ、顎を固定された提督は武蔵の方を見上げる。

戸惑う提督に、更に追い討ちをかけるように武蔵が聞く。





武蔵「 …………本当に、大丈夫なのか? 」





武蔵「 私には、相棒の笑顔がただの作り笑いにしか見えん 」





提督「 ………やっぱ、武蔵には分かっちゃんだね 」





諦めたように提督は笑う。

しかし、その笑顔にすらも武蔵は、彼女の心を見出すことはできなかった。





武蔵「 何が相棒をそこまで追い詰める? 私たちは貴様を悪くもなんとも思っていない 」





提督「そう、だよね………うん、分かってるよ 」





武蔵「 ………他の仲間のことか? 」





その一言は図星だったようで、彼女の肩がピクリと震えた。

それを誤魔化そうと、提督は武蔵の胸に顔を埋める。それを優しく抱きしめる武蔵。





武蔵「貴様とは違うかもしれんが、他の仲間の事を気に掛けているのは、私も加賀も皆同じだ」





武蔵「何故、自分達だけ生きているのか………何故、他の仲間ではないのか……とな 」





段々と武蔵の声のトーンが下がっていく。

彼女もまた、提督と同じように悩み、そして、同じように辛いのだ。





武蔵「 ………情けないかもしれんが、その事で毎日夢でうなされる 」





提督「 ………どんな夢なの? 」





好奇心などでは決して違う。

普段、あんなにも勇ましく男よりも男らしい彼女が、実は毎晩悪夢にうなされ悩んでいる。

それも、ただの悪夢ではない。自分と同じ理由でそれを見るのだ。

共感を感じずにはいられなかった。だから、聞いてしまった。

武蔵は、少し辛そうな顔をした後、提督をさっきよりも少し強く抱きしめながら続けた。





武蔵「 ……大和が、かつての仲間が。私に砲を向けるんだ 」





武蔵「『何故、お前だけ……』と、底の見えない暗い瞳で見られながら…… 」





武蔵「 体は重くまるで、何かに取り憑かれているように動かない……… 」





武蔵「 滑稽だろう? 日本が誇る戦艦武蔵が、悪夢にうなされるなど 」





提督「 …………そんな事ないよ 」





自虐的に自分の話をする武蔵……

それは、まるで、今こうして生きている自分を自身で憎み呪っているように聞こえた。

だが、提督はそれを否定した。





提督「 私も、ね? 夢を見るんだ………みんなの夢を 」





提督「 始めは昔の……楽しい思い出、なんだけど………」





提督「 急に世界が歪んで、それで、真っ暗な世界になって…… 」





提督「 そして、みんなが1人ずつ出てきてこう言うんだ 」





提督「『お前の所為だ……お前の所為で 』って………」





提督「 武蔵の夢みたいに体が動かなくって、気付けばみんなに首を絞められていて……」





提督「 それから……それから………」





提督の体が武蔵に強く抱き締められる。

訳が分からず困惑する提督の頭が、はっきりとしてきた頃。

提督は、自分の目に涙が溢れているのに気づく。





武蔵「………もう良い 」





緊張の糸が音を立てて千切れる。

その瞬間、武蔵の腕の中にいる彼女は声を上げて泣いた。

武蔵は抱きしめた。持てる限りの力と優しさで抱きしめた。





その間にも提督は泣き続けた……




気が付けば泣きつく人を変えて泣いた……




今までの分の涙を……




流せなかった分の涙を……




心に溜まった悲しみを洗い流すように涙は溢れる……





気がつけば、正午から2時間が経過していた。

提督は泣き疲れたのか、今は加賀の胸で寝息を立てている。





金剛「テートクも、収まるトコロをちゃんと覚えてますネ! 」





加賀「 当たり前よ。紅羽は私の嫁なのだから 」





武蔵「 ふっ、だが、相棒の悩みを初めに聞いたのは、この武蔵だぞ? 」





張り合うように自慢をする武蔵に、悔しそうな目線を送る加賀。

しかし、自分の胸の中に彼女の存在を感じると、加賀は柔らかな笑みを浮かべる。

それを見た武蔵は、少し複雑な気持ちになったが、彼女の選んだ事だと割り切る。





加賀「………………… 」





金剛「 それより、テートクどうしますカ? 」





加賀「 そうね、取り敢えずこの娘の部屋に寝かせてくるわ 」





武蔵「 では、私たちは遅めの昼を食べてくるか 」





金剛「 Yes !! 早くしないと、間宮が食堂を閉めちゃいマース! 」





加賀「 ………っ!そうだわ。金剛、聞きたいことがあるのだけど 」





金剛「 ン? なんですカ? 」









ーーここには、間宮さんはいるのかしら?





ーーいますヨ? チョット、変わってますケド………








ーー食堂







間宮「 ………今日も、あの人は来ないのね 」





間宮「 ………来るって、聞いたのになぁ 」





間宮「 もしかして、変な虫が邪魔してるのかしら……」





間宮「 だとしたら、許せない……いいエ……ユルさナい…… 」





間宮「 …………………… 」





間宮「 ふフフフふふフっ! アハハははハははは!! 」





間宮「 紅羽さァん? ワタシ、いつマでも……いツマでも、マッテまスよ? 」








ーーーイツマデモ、永遠ニ………ネ?











5月(暗いです……











談話室











提督「 へぇ〜、こんな所あったんだぁ〜 」






赤い絨毯にお洒落なテーブルセット、壁際には雰囲気を醸し出している暖炉があるそこは、まさに『談話室』と呼ぶに相応しい場所だ。






金剛「 私がここに来た時は、故郷のイギリスを思い出しマシタ! 」






提督「 あ〜……ここでお茶とかしたら良いだろうなぁ…… 」






金剛「 Hey !! テートク! お茶の事なら、この金剛にお任せデース! 」






待ってましたと言わんばかりに、金剛は慣れた手つきでティーセットを準備する。

どうやら、この部屋の存在を知らなかったのは自分だけだったらしく、

部屋には既に、艦娘達の私物が運び込まれていた。

金剛のティーセットが、これまたお洒落な棚から出て来たのを見ると一目瞭然である。






金剛「 さあ! テートク! 準備万端! いつでもwelcome!!デス! 」






提督「 じゃあ、お言葉に甘えて……… 」






見ると、机の上には、金剛らしい気遣いが施されていた。

紅茶の温度は、カップが熱くて持てなくならなように調整されており、可愛らしいお花の絵が装飾されてあるお皿には、スコーンとその横にクリームがちょこんと盛ってある。さらにその横には、いつでも味が変えられるように、金剛オリジナルの物からデフォルトの物まで、様々な種類のジャムとクリームがあった。

他にも、数え出せばキリがないくらいの気遣いがあり、それだけで、お腹が一杯になった気になる。






提督「 うわぁ! 金剛! これ、全部自分で? 」






金剛「 Yes ! テートクとのこの日の為に! 一生懸命、作りまシタ! 」