2018-12-05 18:08:27 更新

概要

提督と艦娘たちが鎮守府でなんやかやしてるだけのお話です

注意書き
誤字脱字があったらごめんなさい
基本艦娘たちの好感度は高めです
アニメとかなんかのネタとかパロディとか
二次創作にありがちな色々
長い


前書き

41回目になりました
楽しんでいただければ幸いです お目汚しになったらごめんなさい
ネタかぶってたら目も当てられませんね

ーそれでは、本編をはじめましょうー


↑前 「提督とお花見」

↑後 「提督と海防艦」




提督とポーラ




潮時でしょうか…

のらりくらりと誤魔化してはいたものの、そろそろ苦しくなってきた


ポーラ「ふぅ…」


ビリ…


送られてきた手紙の封も切らずに破り捨てる

内容は分かっている。違いと言えば、やんわりと言われていた事が命令に変わっているだけだろう


纏めるべき荷物なんて特に無かった

精々が昨日残した お酒の瓶…は、置いておきましょう

美味しかったですけど…、美味しかったから…せめて

願掛けなのかもしれません

確率的にはゼロじゃない、戻ってきた時に飲めばいいと


扉にかけた手を止め振り返る


自分の部屋というわけでもないけれど、そこそこに寝泊まりしていれば愛着も湧いていた

あんまり物のないお部屋だと思う。彼女らしいと言えばそうだけど…


ポーラ「ciao …」


後ろ髪が引かれる

いっそ、扉に引っかかって動けなくなれば面白いのに

そんな冗談、起きるわけもなく…ゆっくりと扉は閉まっていった




ゆー「どこに行くの?」


間が悪いですねぇ

こう、ひっそりと、気づいたら居なくなってるくらいが理想だったのに

下手に顔を合わせると寂しくなるじゃないですか、ほんとにもう…


ポーラ「ふっふっふっ。飲みに行くに決まってるじゃないですかぁ~」


別に酔ってもいないけど

いつもそうしているように だらしない笑みを作ってみせる


ポーラ「ポーラですよ?他に何があるってんですかってなもんですよー。あはははは~」

ゆー「…」


じーっと、見上げてくる視線

何か言いたげな、見透かされているのだろうか?

やっぱり、お酒ないとダメでしょうか


ゆー 「午後から哨戒。暇なら来て」

ポーラ「はーい。ポーラにおまかせですってっ」

ゆー 「…真似しないでって」

ポーラ「にひひひ。あー、ゆーちゃんさん照れてますぅ?」


擦り寄り、抱きつき、撫で回すと

嫌がる猫みたいに、顔を背けられ、小さな両手で押し返された


ゆー「やめて、触らないで、お酒くさ…?」


ふと、ゆーの表情が曇る


ゆー「ポーラ…あなた…」


調子に乗りすぎましたね…勘の良い子は嫌いじゃありませんが

今は気づいて欲しくなかったし、その先を言わせる気もなかった


ポーラ「ではではっ。ポーラっ、行ってまいりますっ」


ビシっと大げさに敬礼をして、ゆーの言葉を遮ると、そのままクルッと回れ右

おもちゃの兵隊のような不自然さで立ち去るポーラだった


ゆー「…へんなの」


お酒臭い…のはそうだったけど。あれは、飲み明かした後の余韻だった…

それこそ、酔なんてもう醒めていてもおかしく無いほど

自分の部屋の扉を開く。ふわっと鼻先をくすぐるお酒の匂い

ポーラが入り浸るようになってから、随分と染み付いてしまった匂い


ゆー「ぽー、ら?」


分からない。だって、そう…

飲みに行くと言ってたのに、どうして机に飲みかけの瓶が放置されているのか



ー工廠ー


ポーラ「ちゃおちゃーおー♪」


千鳥足の真似事をしながら工廠に転がり込んでくるポーラ

鉄・錆・油な工廠内では、その姿は大分に浮いて見えた


夕張「お、ポーラじゃん。どしたー?」


ちらりと、その姿を確認すると手を止めずに返事を返す夕張


ポーラ「ぎぃそーは、どんな調子ですっととっ」

夕張 「真っすぐ歩きなさい、危ないでしょうよ」


傍らでバランスを崩したポーラを支える夕張さん


夕張 「午後から哨戒だっけ?」

ポーラ「はぃ。ポーラ頑張っちゃいますよ?」

夕張 「すっかり、馴染んだものね?」

ポーラ「でしょう?ポーラこうみえて愛され上手なのです」

夕張 「それは、まあ…」


分からない話でもないか

年がら年中飲みまくって、ちゃらんぽらんくせに

いや、だからこそ、なのかな…


睦月「はいっ、ポーラさんっ」


「睦月も手伝ったんだよっ」と、ポーラの妖精を手の平に乗せて運んでくる


ポーラ「お~。ぐらーちぇでぇす、もうバッチリですねぇ」

睦月 「えへへへへ」


わしゃわしゃと、頭を撫ぜられて嬉しそうにしている睦月


ポーラ「ほーら、たかいたかーい」

睦月 「あはははは」


子供みたいにあやされて、はしゃいでもいた


如月「すっかり、懐いちゃってるわね」

夕張「そうねぇ」


問題児かと思いきや、案外とそうでもなかった

もう酔っているのが常だと馴れてしまえば

意外と面倒見が良いもので、子供が多い家にはいい感じに収まっている


夕張「提督は?一番の問題は あの人でしょう?」


面と向かって問題は起こしてないようだけど

だからこそ余計に、嫌がって避け続けてるんじゃないかとの心配はある

顔を合わせなければ、喧嘩だってしようがないのだから


如月「うん。そっちも、もう大丈夫そうよ?」


大丈夫どころか、割りと執務室に出没してたり

一緒になって騒いでることもしばしばだ


夕張「そっか」


だったら言うことは特に無い。肩をすくめて頷いてみせる夕張

あるとすれば、球磨しか使ってなかった重巡系統の装備を

弄る機会が増えるのが少し楽しみなくらいか


「あ、睦月だけずるいぴょんっ。うーちゃんもっ、うーちゃんもっ」

「はいはーい。うーちゃんさんもたかいたかーい」

「やよいは、べつに…」

「もんどー↑ むよー↓たかいたかーい」

「あ、ちょっと…」


夕張「幼稚園かっての…」


甘やかす系の娘が増えたせいか、また一段と艦隊の精神年齢が下がった気がする夕張だった



ー海上ー


球磨「瑞鳳っ」

木曾「大鳳っ」


始まったのは制空戦

互いに艦載機を飛ばしあい、大空の覇者を決めるべく奔走する


唸るプロペラ、飛び交う銃声

けれど、それが収まるのを待ってはいられない

結果はどうあれ銃声が止めば爆撃の嵐だ、そこがタイムリミット

ではその間にどれだけ相手を削れるか、あるいは空母そのものを抑えるかだ


木曾「球磨っ、おまえっ、目的忘れてないだろうなっ」

球磨「目的だクマ?あぁ…」


にやりと、口の端を釣り上げていく球磨

そして、パンっと拳を手のひらに打ち付ける


球磨「見敵必殺だろう?」


艦載機が発艦すると同時に、いちにのさん で飛び出した球磨


木曾「くそっ、クマが鳥頭とか最悪だなっ」




最初はなんだっただろうか

艦隊戦ってのをしてみようかと、誰かが言い出した気がする


球磨「何を言う、連合艦隊旗艦(ナンバーワン)より一個艦隊旗艦(オンリーワン)だクマ」


そして、もっともっと特別な一娘艦隊旗艦(オールインワン)だクマ

胸を張れ、球磨達が球磨が艦隊であり旗艦なのだと


木曾「ワンマンアーミーが…、皆が皆出来るかって」


俺たちだってそこそこ数も増えたんだ

俺やお前はともかく、水無月やポーラはどうするんだって


球磨「ほぅ…。木曾が艦隊を名乗る?」

木曾「んだよ。いつまで自分が強いつもりでいるんだ?」

球磨「最後までだクマ」

木曾「じゃあ今日で看板だ」


胸ぐらをつかみ合ってないのが不思議なぐらいに

顔を寄せ睨み合う二人、ガラの悪いことこの上ない


「面白い冗談だ(クマ)海(おもて)にでろっ」


仲良く声を合わせる二人

持て余した暇と体力を爆発させ、暇そうだった娘達を引き連れて海に飛び出していた




結局、喧嘩の理由が欲しかっただけだった

最後の理性で「なるべく皆で戦おうね♪」と頷きあったのに

蓋を開けてみればこれだった


瑞鳳と大鳳。この辺は真面目に制空権争いをしてくれているので助かる


問題は球磨の方

開始と同時に派手な水飛沫を上げて飛び出していた


木曾「長月っ、水無月っ、射線をあのバカに合わせろ」


それで仕舞だ。T字不利も良いところじゃないか


水無月「これっ、後で噛みつかれたりしないよねっ」

木曾 「勝てば何も言われねーよっ」

長月 「勝てればな」

水無月「不安になること言わないでよっ」


「撃てっ!」と、木曾の合図で一斉に放たれる砲弾

反応は上々、即興にしては割りと息の合った砲撃だと思う


砲弾が球磨に直撃する

バルジを張ったり、打点をずらしたりと、何のかんので致命傷は避けているが

そのダメージは、傍から見ても軽いものでは無かった


球磨「文月っ、菊月っ!」

菊月「うむ。後は任せろ」

文月「うわぁ、球磨さんいったそー」


その背後

球磨を盾代わりに初弾をやり過ごした菊月と文月

着弾と同時に、球磨の背後から飛び出し木曾の両翼に広がっていく


木曾「だろうと思ったよっ」


わざとらしい突撃に姿の見えない僚艦

ほんとなら戦艦、最低でも重巡にやらせるような仕事だろうに


木曾「挟撃か…。だが、甘いなっ」


鞘に入ったままの軍刀を海面に叩きつける

球磨が俺を殴りにくるだろうとは思っていた

問題は残りの二人。練度的には文月辺りが抜けて行くだろうと

先手を打って設置していた甲標的。まぁ、ビンゴだ、これで決まれば早いが…


文月「菊ちゃんっ、良く分かんないなら全部ばら撒いてっ」

菊月「それはいい。実に分かりやすい」


おもちゃ箱をひっくり返したみたいだった

ボトボトボトと、海面に穴を開けるように落ちていく爆雷

狙う必要なんかない、分からんのなら全部捨てろ

強引にも程がある、程があるが、ゆーが潜ってるわけじゃない以上

甲標的くらいなら十二分に押さえ込めた


爆雷に煽れはしゃぐ海

小さな甲標的の船体を容赦なく揺さぶり魚雷の狙いが大きくずれ込む


木曾「ええいっ、長月っ、水無月っ、そっち行くぞ」


挟撃されると思いきや

二人はそのまま木曾を通り抜け、後ろの長月と水無月に張り付いた


球磨「甘いのはお前だったな、妹よ」

木曾「ちぃっ!!」


間一髪。飛び込んで来た砲を軍刀で受け止める

ただし、砲弾ではなく、砲身と砲塔が…トンファーかなにかと勘違いしているんじゃないかと


あれだけの砲弾を受けても足回りだけはきっちり守り抜いてたって事は

まだまだやる気か、そんで最低でも俺は持っていくつもりなんだろうなっ


木曾「また、夕張に怒られるぞっ」

球磨「勝てばよかろうなのだぁぁっ」

木曾「ただの演習でっ」

球磨「演習ですら勝てないでっ」


発砲

お互いに至近距離、爆風で自分もダメージを受けるだろうに、お構いなしだった




菊月「よし、全部持っていけっ」


分からないなら全部ばらまけと文月は言った

射線は適当でいいと望月が言っていた


では、姉妹二人に習うとしよう

どうせ此処以外で使いみちもないだろうし


そうして、魚雷を一斉に発射した

投棄するよりはマシと言った雑さ加減だった


長月「おいおい…」


偏差射撃をしろとまでは言わないが…

魚雷で飽和攻撃をするなら雷巡でも持って来いと

いっそ、発射時のスキを晒すぐらいなら投棄した方がマシなんじゃないのかとさえ思えてくる


長月「菊月…。撃てばいいってものでもないだろう」


動かなくても当たらない

かと言って、行動を制限するための射線ですらない

魚雷で動きを封じて砲撃…なんて器用な真似はまだ無理か


やれやれと首を振る。その間にも近づいてくる魚雷

そのうちの一つを、つま先で掬い上げる


水平から垂直へ、滝昇でもするみたいに飛び出してくる魚雷


長月「ほら、返すぞ」


それを逆手に掴み、落とし物を返却した


菊月「確かに、菊月に魚雷は分からん」

長月「おい、駆逐艦…」


長月が思っていた以上に速かった

菊月に届く前に機銃掃射で叩き落される魚雷

その爆煙を突っ切り、懐まで飛び込まれる


菊月「だが、菊月にはこれがある」


主砲を長月へ、持っていたのはいつもより少し大きめの14cm単装砲、ちなみに★MAX

威力のほどはまあ当然。古いとは言え軽巡用の主砲

駆逐艦の装甲を掠めた側から持っていく位はお手の物だった


長月「だったらっ。そいつで魚雷を落とすくらいしてみせろっ」

菊月「バカか?当たるわけがないだろう?」

長月「真顔で言うなっ。私が間違ってるみたいじゃないかっ」


一歩、距離を離す長月

本人の練度はとにもかく、その威力は厄介だ

出来るならもう少し距離を取りたいが、下がってる間に狙われるのも難だ

かといって下手な距離にいるのも至近弾が怖い

だったら、いつでも踏み込める位置にいるほうがまだ安全だ


長月「卯月だったら落としてたぞっ」


それはもういとも容易く、下手をすれば機銃の一発で


菊月「そうだな。しかし…」


しかしだ


菊月「残念ながら私は菊月なのだよ、姉さん」

長月「っ!?」


意外と速い…さっきもそうだったが、甘く見すぎたか

ふざけていると言えばそうだろう

主砲を両手に、クルクルと踊るみたいにして

あぁっ、アニメかなんかでたまに見るなこの動きっ

意外と様になってるのが余計に腹立たしい


菊月「どうだ?意外とイケるだろう?」

長月「また、妙なことを覚えてっ!」

菊月「名付けて、艦娘ガ◯カタだ」

長月「おまえっ、艦娘つければ何でも良いとか…ってぃ!」


腕が伸びる、同時に主砲が発射され、砲弾が頬をかすめていく

致命傷じゃないが、ジリジリと削られていく感覚が危機感を煽っていく

反撃に向けた主砲は、上げた足に弾かれて、裏拳のように伸びたきた主砲にまた削られる


長月「ええいっ」


マズい…距離を取ったつもりが、これ、コイツが一番好得意な距離か

相手の拳や足が一歩届かない位置で、自分の砲身や砲弾は当てやすい位置

直撃させる必要はない、無駄に改修された主砲の威力が攻撃範囲を広げている

削って削って、動きが止まった所に直撃させれば良いだけだ


根比べか…だったら、早い内に倒してしまうべきだろう


長月「そこっ」

菊月「むっ」


踏み込む。向けられた砲身を掴んで押さえつけ、踏み込んだ足から魚雷を発射した


菊月「まだっ」


回る発射管、投射される魚雷

それが、着水したのと同時に砲弾を叩き込んで破壊する


誘爆、誘爆、そして誘爆

魚雷と発射管に残るそれ、ついでに主砲の爆発


菊月「ひき、わけ、か…」


自嘲気味に笑う菊月


長月「いや、お前の勝ちだ…」


少なくてももう足が動かない

後の一発も耐える余裕も無くなった


菊月「いや、でもない…」


力を抜き、長月にもたれかかる菊月

その様子は、傷だらけの長月よりも幾分か消耗しているように見えた


菊月「威力は、あるんだがな…反動が…」


手が痛いし、肩が外れそうまである


長月「…だめじゃないか」


14cm単装砲、やっぱりというか駆逐艦の細腕で扱うのは荷が重い

発射時の反動で狙いがそれるし、重すぎて水平以上に腕を上げるのだって苦労する程

対空戦闘なんて望むべくもなく、次いでに艤装や艦娘自身にかかる負担も大概だった

金剛が無理やり46cm砲を振り回してるのだって そうだけど

駆逐艦はそんなに頑丈じゃありません




水無月「うぅ…あたらない…」


どうしてだろう?

方向、速度、風向き、あと重力の影響とか受けて直進しなさそうなもの全部

修正を掛けているはずなのに、そこにいるはずなのに、影踏みをさせられている気分だ


文月「あたしを見すぎだね」


あるいは普通に、あるいは防盾で、あるいはクルッと回って、ポニーテールに掠めてみせたり

視線も砲口もこっちを向けて、どうして当たるというのか

机の上で計算しすぎかな、勘って大事…。夕張さんみたいに制圧射撃するなら別だけど

当たらないなら、当たるまで当たるだけ撃つ

一発掠めたが最後、動きが止まった所に一気に砲弾で押しつぶされる…

アレは怖い、正直深海艦に同情する


水無月「今度こそっ」


主砲を構え直し、引き金をひくその瞬間


水無月「と見せかけて、魚雷発射っ」

文月 「50点」


ほいっと、鯉にエサでもやるような気安さで爆雷を投下すると

発射された魚雷を巻き込んで爆発した


水無月「だったらっ」


今度は機銃掃射を浴びせかける水無月

嫌がらせくらいの効果はあるだろうし

スキを見せた所に主砲を当てればいいかなという希望的観測も無くはなかった


文月 「文月っ、魚雷発射しまーす」

水無月「えぇっ!?ちょったんまたんまっ」


慌てて機銃を下げる水無月、自然と開く射線

水無月が魚雷の掃討にお熱になってる間に、さっさと接近する文月さん


水無月「ふぅっ…」


なんとかなったぁ…

なんだ、魚雷を撃ち落とすなんて無理とか思ってたけど

水無月も案外いけるらしい、これなら文ちゃん相手にだって


水無月「へっへーんだっ。水無月だってこれくら…」


「フリーズ」


水無月「うっ…」


恐る恐る両手を上げる水無月

その背中には、主砲の冷たい鉄の感触が押し付けられていた


文月「最後まで気を抜いたらだめだよー」


具体的に言うと「相手の息の根が止まるまで、ね?」


水無月「こわいこわいこわい…」


その言動もそうだけど

何が一番怖いって、ここまで文ちゃんが息一つ切らせてないのが一番怖い

吠え立ててくる球磨さんだって怖いっちゃ怖いけど…

これはまた別の怖さだ…得体の知れない何か不安を覚えるような


水無月「ねぇ、文ちゃんって実はお化けだったり?」

文月 「何を言っているの、みぃちゃんは?」


ー祟るよ?ー


水無月「ごめんなさいごめんなさいごめなさい」


笑顔で脅された




大鳳「調子いいわね、瑞鳳お姉ちゃん?」


くすくすと、妹をからかうみたいに笑う大鳳


瑞鳳「意地があるのよっ、女の子にはっ!」


勝つ必要はない。大切なのは制空権を保ちつづけること

無理に攻めなければ、引き過ぎもしない。球磨達がどうにかするまで耐えればいい

球磨達が勝てば私の勝ちなのだ。負けられない、負けるわけにはいかないのだ


だって、負けたらアイツに何を言われるか

きっとあれだ「99艦爆は爆戦じゃないよ?」とか言われるんだ

それとも「99艦爆満載とか…負けた言い訳にもならないぴょん」

あるいは「きゅーかんばー…うぷぷぷぷっ」


とか、とか、とか、とかとかとかとかとか…


瑞鳳「だーもーっ!!!キュウリみたいにいうなぁぁぁっ!!!」


私のことならまだ良い、しかし99艦爆はだめだ

人の趣味をとやかくいうのはいけないことだと思いますってーのっ


大鳳「仲のいい事…」


いっそ呆れるくらいに

どこか喧嘩腰ではあるけれど、それもまた愛情表現か…


喧嘩腰といえばそう…向こうも

演習とは名ばかりで、今は取っ組み合いの喧嘩をしていた

艤装とはなんなのか、哲学的な思想をしなければいけなくなりそうだ


とはいえ…


大鳳「そうね」


私だってそう、意地があるのだ

瑞鳳が卯月に意地を張るように、私にだって提督に張りたい見栄がある

涼しい顔をして「勝ったわよ?」と、言って見せたいのだ


大鳳「菊月、水無月は…」


菊月は…相打ちなら良い。水無月はまだ落ちてはないわね

球磨は木曾さんがどうにかするのを期待して…文月と瑞鳳か…


こっちが制空争いを放棄したら、瑞鳳が攻撃隊へ切り替えるのはどれほどか

気づいて、動いて、実行するまでの時間と…


大鳳「妖精さん。機関全開…いけるわね?」

妖精「60秒だな、姉さん」

大鳳「結構よ。あと、一部隊は私に、残りは時間稼ぎね…」


ボウガンを仕舞い、代わりに15・5cm砲に持ち替えた


「それじゃ、かっこいいとこ見せましょ」




文月「わっとっ、砲撃?」


まさか、球磨さんが抜かれたと思えばそうじゃない

かと言って駆逐艦のそれより明らかにデカイ


大鳳 「水無月っ、走って、瑞鳳をっ」

水無月「あ、うんっ」


文月が一瞬怯んだ隙。慌てて飛び出す水無月


文月「意外とおてんばさんだっ」


空母でそんな速度出して

文字通りの付け焼き刃、そんなんじゃ直ぐに機関が焼き付くだろうに


大鳳「あなたには負けるわっ」


文月の主砲を装甲甲板で受ける大鳳

そのまま甲板を盾代わりに応射する


文月「ぇぇぃっ、かったっいなぁっ…」

大鳳「そりゃ、自慢の装甲甲板だもの」


なんてこった、本当にそつがない

なんで空母がまともに砲撃戦をしてくるのだ

おまけに、硬いし、意外と速い…


そりゃ、瑞鳳さんだって卯月対策に砲戦スキル取ってたけど

あんな遊びレベルじゃない、ガチだ、ガチなやつだ

この娘、ここで文月さんを落として、水無月に瑞鳳を止めさせるつもりだ

マズいマズい…瑞鳳さんの艦載機は全部上がっちゃってるはずだし

戻したら戻したで、制空権のバランスが…

さっさと大鳳さんを抑えて、水無月止めないと…


文月「これなら、どうだっ」


発射される魚雷

しかし、直後にあらぬ方向から飛んできた機銃掃射に叩き落された


文月「ヤバイな…マジで」


風切り音を上げて上昇していく艦載機。返す刃の狙いが自分になるのは明白だ

どうする?対空戦闘をしながら大鳳さんを相手取る?

いやいや、所詮艦戦だ無視できないことも…ない、けど…


大鳳「決まりね…」

文月「大鳳さんってさ…」


「大人げないよね」なんて言いかかった言葉をぐっと飲み込む

口は災いの元、余計なことは言わないのが華なのだ


大鳳「なぁに?」

文月「なんでもなーい」


軽く首を振り、両手を上げて見せる

あるいは隙を見て、とは考えたけどキッチリトドメまで刺された

ちくしょう…




後は流れだった

艦戦隊を収容し、攻撃隊を発艦させると、木曾ごと球磨を爆撃する大鳳


「たいほぉぉっ!?」


上がる悲鳴と怨嗟に次いで、水無月に妨害されて動きの鈍った瑞鳳も爆撃した


「わーいっ、かったーっ」

「ふぅ、いい風ね」


勝者、木曾さんチームX

勝者、大鳳(水無月)◯



ー食堂ー


北上「どうしたんだいお嬢さん?」


変な光景だった

がさごそと、お酒が押し込まれている筈の棚を ゆーが漁っていた


ゆー「ないの…」


お酒の棚を漁りながら、無いという


大井「またポーラ?」


推理も何も合ったものじゃない

そりゃ瑞鳳だって木曾だって、飲むことには飲むが

ここ最近、水みたいな勢いで飲んでるのは1人くらいだった


北上「ま、良いんでない?無いならないで」


無いくらいで木曾達はどーにもならないし、ポーラにはいい薬だろうさ


ゆー「違う。減って、無いの…」


棚の中から顔を出す ゆー

軽く頭を振り、ごちゃっとした髪を後ろに流す


ゆー「きたかみ様、おおい。ポーラ、見なかった?」


見上げてくる視線は何処か焦っているように見えた


北上「大井っち?」


そうは言われても覚えはない。大方、何処かで飲みつぶれて寝ているのが大体だろうけど

大井の方も見覚えは無いらしく、北上の言葉に軽く首を振って返す


ポーラ「お酒飲むって言ってたのに…」


沈んだ声に引きずられるように、力なく視線を下げるゆー


北上「あれの事さ。どっかで酔いどれてるだろ?」


慰めるように、ゆーの頭に手を置いてグリグリと撫で回す北上様

事情は分からないが、ゆーが暗い顔をしてるのは あんまり気の良いものでもない


ゆー「ポーラのお酒。部屋にありました…まだ入ってたのに…」


そのまま立ち上がると

「ほか、見てきます」と言い残し、小走りに食堂を後にした


大井「どう思う?」

北上「どうって、あなた…」


ポーラがお酒を置いて何処かに行く?

しかも ゆーを誑かしてだ、後でお仕置きされる覚悟もあるのか

そうまでして飲みたい酒があるのか


あるいは、そうしなきゃいけない事態、か


北上「大井っち、ポーラって何時からこっち居たっけ?」

大井「そう、ね…年末少し前くらいだったかしら?」


正確な時期はともかく、もうそこそこ一緒にいる気がする

気がつけば、何処かで飲み明かしてたと、鎮守府の1光景(オブジェ)になるくらいには

最近は、ゆー とか、睦月たちと警備(散歩)でてることもちょくちょくだ


北上「バレたか…」

大井「それって…」

北上「いや、まぁ…ねぇ?」

大井「…」


顔を見合わせ、口を閉ざす二人

ゆーがポーラを連れてきて もう数カ月、ひと目に付かない うちはまだ良かったが

いい加減いつまでも、という訳にはいかないだろう


北上「提督が話を通してるとも思わんしなぁ…」

大井「…」


「そう、ね…」と、動きそうになった口は動かないまま、眉間を抑えて俯く大井

後で良いやと放っておいて、きっと今日まで放置しているのは想像に難くない


北上「捜して、見るか…」


予想通りなら鎮守府を立ってる頃だと思う

何も、黙っていくことは無いだろうと、若干の苛立ちを覚えなくもないが


大井「無駄、だと思うけど…」

北上「でもさ…」


ゆーの後を追うように食堂を出て行く北上様


大井「はぁ…」


仕方がない、本当に

このままだと ゆー1人で鎮守府中を彷徨き回ることにもなるだろうし

勘違いならそれでおしまい。その時は提督に 話を通させれば後の憂いも断てるはず


予想通りなら…まぁ、言っても始まらないか


大井「私は、あっち見てくるわ」

北上「無駄じゃないのかい?」

大井「でもよ…」


そっくりそのまま言葉を返す。きっと、思う所も一緒だろう


北上「ふふっ…あまいっち」

大井「やかましい」



ー工廠ー


卯月「ふっふっふっ…作ってしまった…ぴょん」


作業台の上には大きな重火器が一つ

一見してそれは、ガトリングガンとか言われる形式のものであった


腕を組み、得意げな表情を晒している卯月と

やりたいことだけをやらかして、万歳をしている妖精さん達


10cm4連装砲…というような何か

実際の所、砲身を一括りに纏めてクルクル回るようにしただけの代物だった


夕張「ふーん。面白いこと考えるのね…」


実用性のほどはお察しだろう。余った廃材のオモチャとしては十分か?


持ち上げてみる。やはり、重い…

単純に10cm連装砲を2つ分の重量…重巡、戦艦ならともかく

軽巡や駆逐艦で扱うには、いちいち取り回しが悪そうではある


引き金を引くと、クルクルと回り出す砲身

多少のハリボテ具合が、いい感じの無骨さを醸し出してはいるが

ブレるな…これ、軸が安定しない、ブルブルと震えている…

これだと集弾率は…お察しか。卯月が目方で撃ったほうが確実だろう


卯月「これで、うーちゃんもますます活躍…」

夕張「はい、返すわ」

卯月「へ?わっ、おもっ…」


どんっと、コンクリートの床が揺れた

やはり重い、思った以上に重い

掴み損ねた砲塔は、卯月の手の中から滑り落ち、硬い床に迎え入れられた


弥生「あーあ、勿体無い…」


弥生と一緒に「あちゃー」と、額を抑える妖精さん達

グシャッと曲がった砲身に、バラバラに散らばった部品

産廃から廃材へと姿を変えていた


睦月「ゆーばりさーん。魚雷の整備おわったよー」


たったかたったかと、軽い足音を響かせて走ってくる睦月


夕張「ストップ、ストップ。危ないから走らないで…」


そんな爆発物を持って転けられたら溜まったものじゃない

どころか、睦月ならやりそうでなお怖い


睦月「おととっ」


1歩2歩、足を止める睦月


夕張「ちゃんと出来た?」

睦月「ばっちりっ」


にぱっと、笑顔を見せた後。それとなく頭を差し出してくる


夕張「よしよし」

睦月「えへへ…」


その頭に手を置いて 撫で回すと、実に満足そうに体を揺らしている


如月「あら、如月の事は褒めてくれないのね?」


小首を傾げ、からかうように微笑む如月

その手元には、整備の終わった装備が2個も3個も積み上がっている


頼もしい、実に頼もしい


走り回られるくらいならと、卯月には廃材(オモチャ)を与えて

その気持は嬉しいが、いちいち危なっかしい睦月

それに比べて如月のソツのない事


とても優秀だ、提督が関わらなければ、提督が関わらなければ…


夕張「ほら、こっちいらっしゃい」

如月「はーい♪」


睦月の隣に並ぶ如月

そのまま二人、身を寄せ合って夕張に頭を撫でられていた




ゆー「睦月、如月…」


工廠の扉が開く

顔を覗かせた ゆーが二人の姿を見つけて駆け寄ってきた


睦月「およ?ゆーちゃん、どうしたの?」


「こっちおいで」腕を広げる睦月


睦月「そっちかっ」

如月「あらら…」


けれど小さな体は その隣へ、如月の胸の中へ吸い込まれていった


夕張「はい、残念」

睦月「にゃしぃ…」


残念賞の代わりに更に、睦月の頭を撫でる夕張さん


如月「どうしたの?」


抱きつく ゆーの顔を覗き込む如月

それはまた、酷く落ち着かない表情をしていた


ゆー「ポーラは?」

如月「ポーラさん?だったら…少し前に」

ゆー「どこ?」

如月「そこまでは…」


何か知らないかと、睦月の顔を見るが「さて?」と首を傾げられる


夕張「お酒でも取りに行ってるんじゃないの?」


午後から哨戒だって言ってたし

今頃、補強増設(ワインセラー)に瓶を詰め込んでるところだろう


ゆー「無かった…」

夕張「ほらね?」


やっぱりと、頷く夕張とは反対に、睦月は顔を曇らせる


睦月「…減ってない?」

ゆー「うん…」


呆れる夕張とは反対に、神妙に眉根を寄せる睦月


夕張「減ってって…お酒が?」

ゆー「ですって…」


食堂のお酒の棚も、お部屋のお酒も、何もかもそのままで…


如月「二日酔い…はなさそうね…」

睦月「うむうむ…」


二日酔いで頭が痛いから酒を飲む、そんなイメージがしっくり来る上

そもそも、今の今まで二日酔いをしている姿を見たことが無い


夕張「やよいー、うづきー、何か知らない?」


またまた廃材を掻き集めて、積み木を初めている二人に声を掛ける


弥生「ここ、もうちょっと乗りそう?」

卯月「ゆっくりぃ、ゆっくりぃ…」

妖精「おっ、行けましたな…」

卯月「やったぴょんっ」

妖精「しかし、これ、浮きますかな?」

弥生「なら、船体を拡張すれば良い…」

妖精「それだっ」


大発動艇がハリネズミ化されているのは気になるし

もうそこまでするなら新造すればとか思うけど、今は置いておいて


夕張「弥生ってば」

弥生「ん?なぁに?」

夕張「お二人さん、ポーラのこと何か知らない?」

卯月「ポーラ?お酒なくなったぴょん?」

夕張「あるから困ってるの」

弥生「夕張さん…頭大丈夫?」


心底 心配するように覗き込んでくる弥生


夕張「平気よ、バッチリです」

弥生「ふーん」


それ自体はどうでも良さそうに聞き流すと、睦月に声をかける弥生


睦月「なぁに?」


「お姉ちゃんにまっかせてっ」頼られたことを素直に喜ぶお姉さま


弥生「ほら、こないだの。探信儀のちょっとした応用で?」


どういう理屈か、卯月や提督の居場所だって探せるくらいだ

ポーラの1人や2人簡単でしょうと思ったんだけど…


睦月「もぅ、そんな事は出来るわけないし。弥生ちゃんは睦月の事なんだと思っているの?」

弥生「えぇぇ…」


あんなに自信満々に言ってたのに、応用範囲は案外と狭いらしい


如月「執務室は?」

ゆー「まだ」

如月「一緒に行く?」

ゆー「ううん、平気…」

如月「提督にせがめば捜してくれると思う、けど…」


思うんだけど…

素直に話を聞いてくれるか、そこが分からない、そこだけが分からない

せがまなければ いけない時点で、もう回りくどくなるのが目に見えていた


ゆー「はい、聞いてみますって…」


小さく頷くと工廠をでていく ゆー


如月「睦月ちゃん…」


見送る背中

多少の不安でも降り積もれば、落ち着いてもいられなくなる


睦月「うむ」


二人頷くと夕張の方へと向き直る


夕張「行ってらっしゃい」


言わずもがな「ちょっと捜してくる」と言いたげな顔見て、何も言わずに送り出す


弥生「じゃ、弥生も…」

夕張「待ちなさい…」


何食わぬ顔で、出ていこうとする弥生の首根っこを捕まえる

ネコの手が足りなくなった以上は、兎の足でも使いたい所だ


弥生「…ちぇっ」


相変わらずの無表情なのに対して、その態度は大げさで実に分かりやすい


夕張「舌打ちしないの…。卯月もよ」

卯月「ぶぅー」


妹の方は見たまんま

本能が服を着て歩いてるいった感じだ


夕張「あぁ、ツッコミが足りないわ…」


眉間を抑える夕張

どうせなら、長月と三日月を借りてきたい、大鳳さんだと尚素敵だ


弥生「弥生がいるじゃない」


えっへんと、ない胸に手を置く弥生


夕張「それはない」

弥生「ざんねん」



ー港ー


護岸の縁にだらりと寝そべっている多摩


凝りもしないし、飽きもしない

喧嘩するのに理由はないと、持て余した若さでもってドンパチやっているのを

潮騒の合間に見るでもなく、ただぼうっと眺めていた


多摩「どこへ行くにゃ?」


ふと、聞こえる足音にパタリと耳を動かす

いや、多摩はネコじゃないのだから耳があったらそうしていただろうと言うだけで

実際は、横着して視線だけを動かすだけに留めていた


ポーラ「風の向くまま…なんてのはどうでしょう?あはははは~♪」


顔を赤くして、いつもの様に おどけて見せるポーラ


多摩 「ネコ被って言われてもにゃぁ…」

ポーラ「…抜け目ないんですね、意外と。ネコに言われるとは思いませんでしたよ」


バレてる芝居を続ける気もなく素面に戻るポーラ

表情は固く、口調も一転して冷たくなる


多摩 「意外と、優秀な多摩ちゃんだにゃ?あとネコじゃないにゃ」

ポーラ「その語尾から治すのをおすすめします…」


それだけ言って海に上がる


多摩 「…まぁ、夕飯までには戻るにゃ」

ポーラ「そう、ですね…。少し、遅れるかもしれませんが」

多摩 「遅れた分だけ、酒が無くなると思うといい」

ポーラ「ふふっ、ひどい人」


微笑み、笑顔、形としてはそうだった

けれど、その横顔に映っていたのは全く反対のものにみえた


多摩「少し…ね」


どうするかな?

引き止めるか…。いやいや、それで解決するならポーラもまだ居座ってただろう

今までだって何度か あんな顔はしていたし…。いい加減誤魔化しが効かなくなったか


多摩「まぁ、良いか…」


ポーラを見送りながら、昼寝に固まった体をぐぐっと伸ばす


そう悪いようにはならないだろう、多分

というか、提督も少しは働くと良い。多摩を見習って…





北上「おーい、多摩っち。ポーラさん見なかったかい?」

多摩「ん、あー、そうにゃ。夕飯までには戻るだろう?」

北上「ん?どゆこと?」

多摩「そゆことだにゃ」


不思議そうな顔をしている北上を放っておいて、今日の夕飯を考える

ポーラが好きそうなものが良いか…、自動的に酒のツマミになるな…


多摩「行くぞ北上」

北上「行くって…。もぅ、多摩っちは言葉が足りないとおもうよん?」


なまじ、提督や球磨と視線で会話出来てしまうから余計にだ

その内に口を開くのも億劫になって、無電を打ち始めそうで怖い


多摩「いい女は背中で語るのにゃ」

北上「背中ねぇ…」


多摩の背中

白い制服、後ろ髪との間に覗く項、歩く度に覗く横腹と腰回り

猫背に丸めたままに、ゆらゆらと歩く後ろ姿…それが語る言葉とは


北上「ちくわ大明神?」

多摩「お前は何を言ってるにゃ?」



ー執務室ー


ゆー「Admiral…」


噛み合わない蝶番がきしみを上げながら、ゆっくりと扉が開く


提督「どうしたの?」


珍しい顔だった

ゆーが此処にくるのが、ではなく、その顔が何処か焦っているように見えたから


ゆー「お酒がぽーらなの…」


いや、本当に焦ってるんだろう。言ってることが滅茶苦茶だった


提督「…なんだ、あの娘。ついに酒になったのか…」


驚きはするが、まあ不思議でもないと言った感じ

ヨモツヘグイ、そんな現象もあるくらいだ

浴びるほど飲んでたし、そういう事もあるだろうと


提督「となると、そのうち金剛は紅茶になるな」


「ふっ…」と、執務室の空気が弛緩した


金剛「うふふ…。どういう意味かしら、提督?」


持っていたティーカップを隅を置き

何のことやらわからないと、笑顔を作る金剛さん


提督「金剛が風呂入った後は良い匂いがしそうだなって話だよ」


「ふふっ…」と、さらにだらけていく空気

アールグレイ辺りだろうか?ファーストだのセカンドだのきっとピカピカに輝いてるだろう


金剛「誰が出涸らしですかっ」

提督「そうは言ってないでしょ?、金剛は何時だって一番茶だよ?」

金剛「お茶っ葉扱いしないでって言ってるのっ!」

提督「あー言えばこー言う…」

金剛「どーしたらそーなるのっ」


口喧嘩じゃ埒が明かないと提督に詰め寄る金剛


「金剛っ」


突然の声。同時に引っ張られた袖が帆を張った


金剛「え、あ、はい…」


珍しい大きめの声。何事かと面食らっている内に、元いた席に引き戻される


提督「どうした、そんな大声出して」

ゆー「ポーラはどこ?」


要件だけを明確に、じっと見つめてくる ゆー


皐月「司令官…。真面目な話みたいだよ?」

提督「はぁ…」


窘めるような皐月の声に、一つ息を吐いて切り替える


提督「ポーラ、ね…」



ー大本営・執務室ー



ポーラ「重巡ポーラっ、ただいま出頭しましたですよー。あははは~」


重厚なチーク材で構築された部屋の中

ベニヤ板の様な気軽さで、ちゃらんぽらんと挨拶をするポーラ


ザラ「ポーラ…。ドゥーチェの前ですよ?」


自重なさいと、暗に告げるザラ


ポーラ「…失礼。重巡ポーラ招致に応じました…」


襟首を正し、伸ばした背筋のまま腰を折る

その軍人然とした行動は普段のポーラからはかけ離れていた


みつよ「別にいいわよ。話が出来る程度に頭が働いてるならね?」


それこそ、目の前で酒をかっ食らってくれてても良いくらいだ


ポーラ「いえ、流石に…」


じゃあ遠慮なく、と言えるほどポーラだって肝は太くなかった


みつよ「そう?じゃあ、何で呼ばれたかは分かっているわね?」

ポーラ「不本意ながら…」

ザラ 「ポーラっ」


つまらなさそうに視線を逸らすポーラに、慌ててザラが釘を刺す


不敬も不敬の良いところだ

ポーラの目の前。大げさな机の上にふんぞり返っている ちんちくりんの少女

長い髪を揺らし、不敵に笑ってさえもいる

そんな少女が、大日本帝国・大本営の大元帥、御代 みつよ。大の字が大好きな少女だった


みつよ「良いわっ、ザラ」

ザラ 「けどっ」

みつよ「いいのよっ」

ザラ 「あ、はい…」


言われてしまってはしょうが無い、此処で自分が騒いでは本末転倒だ


みつよ「一応、こっちにも建前ってのがあってね。誤魔化すにしろ色々必要なのよ」

ポーラ「分かる話です」

みつよ「書類が大好きなお姉さん(大淀)とかね。まったく艦娘の1人や2人何処にいても変わらないでしょうに」


そういう訳にもいかないのが軍隊だ

記録を改ざんして捏造するのにだって筋はいる。グレーな話に通す筋ってのもおかしな話だが

いっそ、沈没扱いにして幽霊船にした方が話は早いぐらいだが

それはそれ、見つかった時が更に面倒くさい


ポーラ「それで?ポーラは何処に行けば?」

みつよ「話が早いのね」


つまりはそういう話

拾った船だったとしても、上に報告もなしでは色々と

見ないふりもそろそろなので、強制的に呼び出したのだ


ポーラ「ええ。機嫌は良くないので、あまり…」

みつよ「ふふっ。素直ねっ、好きよっそういうのっ」

ザラ 「あわわわ…」


相も変わらず素面で不貞腐れているポーラと、それを楽しそうに眺めているみつよ様

隣に控えている 姉としては気が気ではない


みつよ「でも、今のところは下がりなさい。詳細は…まぁ、そう、後で決めるわ」

ポーラ「妙な。決まったから呼んだのでは?」

みつよ「いいえ。決め兼ねてるから呼んだのよ…」


怪訝な顔をするポーラ

けれど、その反応が見たかったとばかりに楽しそうに微笑む みつよ様


ポーラ「面妖な…。まぁ、良いです…」


失礼しますと、一言添えて執務室を後にするポーラだった


ザラ 「あのっ、あのっ」

みつよ「あははははっ。愉快な娘ねっ」

ザラ 「ごめんなさいっ、ごめんなさいっ」

みつよ「良いと言ったわっ」

ザラ 「あの娘…お酒がないと…」


いや、あってもアレなのだが

飲ませて人懐こいちゃらんぽらんにするか、素面で慇懃無礼な娘にするか


どっちをとっても両極端だ

TPOを考えなければまだ、まだまだ辛うじて飲ませている方が友達は出来るだろうけど

正式な場所でのそれは、自沈行為以外の何者でもなかった



ー◯◯鎮守府・執務室ー


結論から言えば、叩かれた


「ポーラはどこ?」見上げてくる ゆー

素直に答えても良かった。真面目な話らしい、それは分かる、分かるんだけど


そう、あれだ。人の生殺与奪を握ってるという愉悦にはなかなかに抗いがたい

そうして、思うままを口にする


提督「もうちょっと可愛く言ってくれたら教えたげる」


ソレはさも楽しそうだった。指先で隠した口元から喜悦が溢れるほどに


言うとおりに動いてくれるのも良い、それでどんな仕草を見せてくれるのかが楽しみだ

怒ってくれたって構わない、その感情の動きが大好きだ

普段は落ち着いている ゆーだからこそ、それは余計に愛おしい表情だ


ゆー「可愛くって…」


困惑する ゆー

言われるままに、けど、どんな顔をしていいのか分からずに


提督 「三日月。お手本」

三日月「へっ!?」


急に向いた矛先に、ぴっと背筋を伸ばす三日月

抱えていた書類の束が床に散らばりそうになる


提督 「いつも平気でやってることじゃん」

三日月「やってないっ。誤解を招くようなこと言わないで下さいっ」

提督 「思い出は創るもの」

三日月「捏造じゃないですかっ」


顔を真赤にして手を握り。必死になって抗議をする三日月

そんなだから「いつも平気でやってること」だと言うのに


提督「捏造じゃないよ。私はいつも三日月のこと…」


ふと、ソファに腰掛けていた提督の姿が消える

次に現れたのは三日月の隣。そうして、その耳元で、そっと囁く様に


「可愛いって、思ってるもの…」


三日月「っ…!!」


耳まで真っ赤だった

力が入らないのか安い机に手をついて、胸を手で抑えている


どきどき、どきどき…


胸が痛い。心臓が、嬉しさに悲鳴を上げている


馴れていたつもりだったのに

いわんや、最初の時点で「やらないから」とあしらっておけばよかったのだ

馴れていたつもりだったから

何となく返してしまっていた。司令官と戯れている金剛さんが羨ましかったのも多分ある

売り言葉に買い言葉。結局、買い叩かれてしまった…在庫切れも良い所

ほら、司令官ってば…あんなに楽しそう…意地の悪い人だ…本当に


皐月「司令官さぁ…」


呆れたように、見上げてくる皐月


提督「そういう皐月は?」

皐月「ん、ボクかい?いつも可愛いでしょ?ボ・ク・は?」


「にひっ」と、笑顔で返す皐月だった


提督「そうね。それはそう…」


実際可愛かった

からかうみたいに、照れ笑いして、はにかんで、ぎこちない感じが堪らない


ゆー「あどみらーる」

提督「ん?」


はいっと、手を挙げる ゆー

何かを思いついたのか、その表情は決意に満ちていた


ゆー「いつも可愛いでしょ?ぼ・く・は…?」


そうして、小首をかしげた

どうして良いか分からないと、不思議そうな顔をしていたが

とりあえずでも皐月の真似を採用したらしい


提督「指先をほっぺに持ってくるともっとかわいいよ?」

ゆー「ふーん。こう?」


言われるままに、両の人差し指の先をほっぺに当てる

柔らかく沈んだそこは、えくぼのように見えた


皐月「やめて…やめて…」


その仕草は、皐月の予防線を砕くには十分だった

自分と同じ仕草、オマケに変なポーズまで追加されて、それをしている自分が重なってしまう


恥ずかしい、流石に…

耐えきれず、赤くなった顔を隠すように机に突っ伏した


三日月「姉さん…」

皐月 「言わないで…」


顔を伏せた先で目が合う2人

交わす程の言葉もない。あったのはちょっとした安心感とか連帯感


提督「さて…望月は?」


「なんかなーい」するする移動を開始すると、ソファに寝っ転がっている望月の隣へと


望月「狭いって」

提督「じゃあ」


望月の頭を持ち上げて、膝の上へと招く


望月「どうしろってんだよ…」

提督「なしたいようになすがよい」


もぞもぞと、身動ぎをする望月

その髪の毛を何ともなしに撫ぜている提督


1回・2回…指先で梳くように…


それを、大人しく。何を言うでもするでもなく受け入れている望月


ーちゅっー


ふと、指先を髪がすり抜けていく

ほっぺに残ったのは、かすかな感触と温かさ


一瞬、空気が凍った

ティーカップが割れるような音さえ聞こえてきそうだった


誰も彼もが不意を打たれ

とうの本人だけは身体を丸くして、満足そうに寝息を立て始めている


金剛「提督っ!」


ガバッと立ち上がる金剛

次の行動なんて誰もが予想ができるほどに、提督に食いついていく


金剛「金剛もっ、可愛いとこっ、見せたいですっ」

ゆー「金剛っ、おすわりっ」

金剛「あ、はい…」


必要以上に身を乗り出す金剛

けれど、シットダウンと腕を引っ張られてソファの上に押し戻された


ゆー「あ、あどみらーる…。い、今の…」


顔が真っ赤だ。肌が白いだけに余計に目立つ

あわあわと、うろたえている姿も愛くるしい


提督「あ、うん…そう、ね…」


思考が漸くと回転を再開する

何ともなしに、頬にやっていた手はそのままに


提督「ゆーもしてくれたら、話す気になるかも?」


微笑むと、再び意地の悪い顔を取り戻す提督


ゆー「う、あ…ぁぅ…」


一歩、進みかけて、半歩で止まる

一歩、下がりかけて、半歩で止まる


そんな仕草を、しどろもどろに繰り返すと


ゆー「もう良いってっ、知りませんっ」


感情の向くままに手が上がると、小さな足音が扉の向こうに消えていった


皐月「良かったのかい?」

提督「可愛かったよね」


ニヤつきながらも、赤くなった頬をさする提督


皐月「そうじゃないだろ?」

提督「そうだけど…」


立ち上がると望月が不満そうに声を漏らすが、そこは勘弁して欲しい


提督「ちょっと出てくる…」

皐月「行ってらっしゃい。夕飯までには帰りなよ…」


返事の代わりに手を振ると、すっと溶けるように消えていった


金剛「珍しいわね」


居なくなった背中を追うように、そこへ視線を向ける金剛


皐月「そうかい?」

金剛「…金剛の事も迎えに来てくれるんでしょうか」


そういう意味では、追いかけられた彼女が少し…いや、かなり羨ましい


皐月「そりゃ…」


それはそうだ。そこは絶対だと言い切っていい


良いんだけど、なんだろう…例えばそう


それじゃあと、家出の真似事をする金剛

きっと夜が明けたくらいに我慢できずに執務室に飛び込んでくるだろう


「どうして迎えに来ないのっ」て、感じで


そうしてケタケタ笑うのだ

涙目になってる金剛さんを、さんざんからかい倒すのだろう

ああ、きっと家出先までついていって、隅の方から右往左往しているのを眺めるまであるはずだ


三日月「そうだけど…」 

望月 「どうだろうなぁ…」

金剛 「はい。止めておきますね…」


その想像は他の3人も同様だったらしい


「はぁ…」


諦めるような溜息の唱和が執務室に広がった



ー大本営・執務室ー



「こんばんは、お嬢さん」

「こんばんは、神様」


「良い夜ね」「良い夜だね」


開いていた窓から入り込む風

肌寒い夜風が、仕事で火照った頭には心地いい


大和「お帰りはあちらですわ」


にこり と笑顔、がしゃり と主砲

突きつけた51cm砲の先には、いつのまにやら人影が


提督「酷いな。まだ何もしていないじゃないか」

大和「あら、年頃の女の子のいる部屋に無断で入り込むなんて十分な事案では?」

提督「それは失礼。立派に淑女だと思っていたもので」

大和「なお悪い」


暗い砲口の奥、低く唸る駆動音の後、ピタリと何かが嵌まる音がする

あぁ、そうだ、きっとそう。次の瞬間には撃つつもりでいるのだろうと想像するに容易かった


みつよ「大和っ」

大和 「…」


少女の問いかけ

普段なら、名前を呼び終わる前には動いているはずの大和が、眉根を寄せるくらいで微動だにしなかった


みつよ「やーまーとっ」

大和 「なんて…失礼。冗談ですわ、大和ジョークです」


視線をそらす。渋々と言った風を体全体に滲ませて、小粋なジョークを口にする


提督「面白すぎて、心臓が止まりそうだ」

大和「それこそ冗談。そんな程度でどうにかなる方ですか、アナタは」

提督「試してみる?」

大和「不埒者にかける情けはもう無いですよ?」


交わる視線。春の夜風以上に冷える空気

ともすれば、冬の寒さを思い出させるほどに張り詰めていく


みつよ「おすわりよ…」

大和 「…」


良く訓練されていた

言うやいなや、さっとその場に正座を成し遂げる大和

さきの威圧感は何処へやら。小さくまとまった姿は大和撫子のようではないか


みつよ「アンタもっ。女の子をからかって遊ぶのやめなさいなっ、子供なの?」

提督 「大人に見える?」

みつよ「お婆ちゃんって言われたくないわよ、私は…」


呆れた様に首を振り、息を吐くみつよ様

コイツを大人の線引に使ったら、私はきっと仙人になれるだろう


みつよ「それで?」


何の様?と、話の先を促す みつよ様


提督 「君を浚いに来た。そう言えば君の気が済むのだろう?」

みつよ「神隠しなら間に合ってるわ」

提督 「それは残念だ。なら、代わりを貰っていこう」

みつよ「困るわねっ。でっち上げるのも理由がいるのよ」

提督 「最初からいなかったって?」

みつよ「幽霊船じゃ不都合でしょ?」


「私は困らない」「私が困るの」

重なる言葉に途切れる会話、値踏みするような余韻の後


みつよ「大淀っ」

大淀 「宜しいので?」


自分の主と、提督とを、交互に確認する様に視線を動かす大淀


みつよ「よろしくってよっ」

提督 「よしなに…」

大淀 「では…」


2人が頷いたのを確認すると

最初から用意していたのだろう、一枚の紙切れを提督に差し出してくる


提督「わざわざ…」

大淀「書類が大好きですので」


面倒くさそうな顔をする提督に、笑顔で返す大淀だった




扉が閉まり、提督が立ち去った後


みつよ「書類が大好きなお姉さん(大淀)って、気に入ったの?」

大淀 「逆ですわ おひい様」


言葉とは裏腹に、姉が妹に向けるような慈愛の笑みを浮かべる大淀さん

そして、ドサッと音が立つほどの紙の山を机に置いた


書類が大好き、そんな訳がない

毎度毎回の気まぐれと我が儘。辻褄合わせに増える書類

わざわざ…と、言いたくなる気持ちは確かにあるが

記録と証拠さえ確かなら、外野は黙るしか無いのもまた事実


大淀 「でっち上げるのでしょう?」

みつよ「やだ、怖い顔」

大淀 「笑顔でいたいものですね」

みつよ「お互いにね」


冗談交じりに笑ってみせたものの

いっそ、大和の主砲でドーンっといければどれほど楽なことかと思わずにいられなかった


「やりますか?」

「おすわりよっ」

「はい…」




ザラ「提督…」

提督「おや、君は…」


執務室から出ると

ふわりと金髪を揺らし「お久しぶりです」と呼び止められた


ザラ「あの子(ポーラ)の事、よろしくお願いします」


そうして、軽く頭を下げるザラ


ザラ「お酒ばっかり飲んでて、しょうが無い子だし…」


だらしない所も多いけど、あれで寂しがり屋な所もあるし…

それから、結構我慢しちゃうところもあるから…

あとは、お酒飲んでない時は冷たい感じがするかもしれませんが…


ザラ「それからそれから…」

提督「面倒くさい娘だけど、嫌いにならないであげて下さい?」

ザラ「それですっ」


提督の一言に飛びついて、大きく頷くザラ


提督「大丈夫。多分私が一番に面倒くさいから」


きっとそう。人のことを言えた義理でもないのだ


ザラ「…それはそれで、不安なんですけど…」




ポーラ「はぁ…飲まなきゃやってられねーのです」


一時の逗留に充てがわれた客室。そのベランダの柵に顎を乗せ、完全に不貞腐れていた

お酒で火照った頬を夜風で冷まし、冷えた身体をお酒で温める

無駄のない循環、いつまでだって酔っていられる。いやさ素面に戻ると余計なことまで口にしそうだ


ぐびぐびぐび…


喉が鳴る度、喉が焼ける気がする

熱くて熱くてしょうが無い、熱にうなされたみたいに頭がぼぅっとしてくる

それでいいし、これでいい。今はあんまり何にも考えたくなかった


ポーラ「ゆーさん、怒ってますかねぇ…」


それでも考えてしまう。午後から哨戒とか言ってましたっけ…

帰ったらドヤされること請け合いだ…


ポーラ「帰ったら…。そうですね…次のお家はどこでしょ~、あはははは…はぁ」


吐いた吐息が白く染まる

お酒臭い…。そう感じ取れるくらいには酔うに酔えていないらしい


ポーラ「いつもなら、すーぐ酔えるのに…。もう一本開けましょうかねぇ…」


空になった瓶を床に転がし、新たに一本

力任せにコルク栓を引き抜くと、赤黒い液体を喉の奥に流し込んだ


ポーラ「ふはぁ…、あー、うー…」


だんだんと、意識が遠のいてきた

あぁ、やけ酒の次は不貞寝ですか…それも良いかもしれない

寝て起きれば、少しは気も晴れるか…


ポーラ「あ…」


手の平から瓶がスッコ抜けた

落としたかと思えばそうでもない、無くなった瓶は下にではなく上に消えていったのだから


ポーラ「もぅ、ザラ姉様邪魔しないでくださいよー。ポーラ今オフなんですからぁ…」


取り返そうと振り返る


ポーラ「あぁ…」


不味いです

ザラ姉様が提督さんに見えます。どんだけ欲求不満なんですか…

瞬きした次の瞬間には ゆーさんに変わってたりするのでしょうか


提督 「帰るぞ」

ポーラ「帰る?」


意味もわからずに言葉を反芻する

2割増しに不味いですよ。姿どころか声まで提督さんだ


ポーラ「どこに帰るってんですか…。配属先でも決まりましたぁ?あははは、どこにでも行っちゃいますよ?」

提督 「どこって。とりあえず ゆーに叩かれる所からじゃないか?」

ポーラ「ふぇ?ゆーさん?」


どうして ゆーさん?

結果として、午後の任務は おさぼりですし、そりゃ怒られるだろうけど…

ドナドナされる寸前のポーラにはあまりに関係のない話


ポーラ「可愛いですよねぇ。小さい手でポカポカ叩いてくるんですよぉ…もぅもぅって」


ケタケタと笑っているポーラ

力の入ってない拳で太鼓を叩くみたいに何度も叩いてくる


提督「面倒くさいな…」


素直にそう思う

かと言って、酔いが醒めるのを待つのも余計に面倒くさい


仕方ない…


ポーラを抱き寄せて、そのまま抱え上げた


ポーラ「ふぁ?」


不思議そうに見上げてくる視線

瞳は潤み、お酒のせいか上気して赤くなっている頬

漂ってくる香りはお酒の匂いだと分かっていても、どこか甘くも感じてしまう


提督「いい加減帰るぞ-」


今なら何をしてもバレないんじゃなかろうか…

そんな甘い誘惑を振り切るように、飛んだ


「へ?」


風切り音の間に混じって、間の抜けたポーラの声が聞こえてくる


「うぉぉぉぉぉぉっ!?」

「ザラッねえっ、じゃなっ、提督さんっ、なしてっ、なんでっ、なんとっぉぉぉぉぅぉっ!!!」

「下ろしてっ、じゃなくてっ、離さないでっ、しぬしぬってマジでっ!?」


目を丸くして、ジタバタと暴れ始めたと思ったら、縋るように抱きついてくる

どうにも酔いは醒めたようだ、手間が省けて助かる


「ざぁぁらっねぇぇさまぁぁぁ、ポーラっいってきまぁぁぁすっ」


そんな残響だけが響く中

ベランダに残ったのはポーラが飲みちらかしたお酒の瓶と


ザラ「行ってらっしゃい、ポーラ…」


ほんとに大丈夫なのだろうかと…。多少の不安とワインの瓶を抱えつつ、見送る姉の姿だった



ー◯◯鎮守府ー


提督 「ふぅ、着いたっと」

ポーラ「あわわわ…い、いきて、いきてます…」


提督にしがみつきながら、そこにある地面と、自分の身体を交互に確かめるポーラ

恐る恐る足を伸ばし、つま先で地面を突っつきながら、ゆっくりと足を下ろした


提督 「ジェットコースターとか苦手な方か?」

ポーラ「い、いきなりベランダから飛び降りて、平気な訳がないでしょうっ!」


すっかり酔いも醒めたらしい

口調はすっかりとキツくなり、怒ってるようにも見える

いや、怒ってるんだろうけど…


提督 「あはははは。良い顔してたよ?」

ポーラ「バカなんですかアナタはっ」

提督 「何だいおまえ?」


そっと彼女の手を取ると、きゅっと握りしめた


ポーラ「夫婦かっ!」

提督 「ええー、さっきまで抱き合ってたじゃん?

ポーラ「あ、あれはアナタが急に飛び降りるからっ」

提督 「死ぬまで離さないでって言ってたのに?」

ポーラ「そこまでは言ってませんよっ!」

提督 「じゃあ、その指のは?」

ポーラ「へ?あ…」


振りほどいた手

何時の間にか、その指には銀色の指輪が添えられていた


ポーラ「いつの間に…」


下がる溜飲

入れ替わるように酔いが戻ってきたのか、ほんのりと染まる頬


ポーラ「あの、提督?」

提督 「なんだいおまえ?」

ポーラ「夫婦かって…。ああ、いえ、もう…じゃあ、アナタ…?」


口に引っ掛かった反論を頭を振って引っ込める

どうせこの人の事です、飽きるまで続けるのでしょう

で、あればの諦めが半分と…、積極的に否定するほどでもない乙女心が半分…いえ、4分の1程度


ポーラ「今度…。今度、ポーラと一緒にお酒飲みませんか?」


どうしてか気恥ずかしい。改めて言うのも照れくさい

真っ直ぐに提督を見れなくて、所在なさげに毛先を弄って誤魔化している


提督 「良いよ」

ポーラ「あ、はい。では、今度…」


意外とすんなりと返ってきた

金剛さんにそうするように、何かからかわれるものかとも覚悟はしていたが


提督「でも、その前に…」


なんて前置きの後。続いたのは「こわーい、お姉ちゃんの お説教かな」


忘れていた。いや、覚えてはいたけど、ポーラにはもう関係ないと諦めていた


「どこへ、行っていたの?」


平坦な声だった

幼さの残る声音、淡々と、透き通るような響き

嘆くでも、怒るでも、悲しむでもない。ただの事実確認を促す声


ポーラ「あ、あの…ゆーさん?」

ゆー 「ちゃんを付けて…」

ポーラ「ゆーちゃんさん?」

ゆー 「ん、良い娘。それで?」

ポーラ「いや、その…。ただ、いま?」

ゆー 「おかえりなさい」


挨拶は大事だと、いつもの調子で返す ゆー

けれどすぐに「で?」と良い訳を要求をしてくる


ポーラ「の、飲みにって、その…」

ゆ- 「午後から、哨戒があるって言ったよね?」

ポーラ「はい…」

ゆー 「ねぇ、ポーラ…」


じっと見上げてくる瞳

ポーラにだって事情はある。けれど、かけた心配と手間の分は口をつぐむしか無かった


ゆー 「ポーラは ゆーとお酒、どっちが大事なの?」

ポーラ「…はい?」


思わず聞き返していた

もはや、ラブコメを通り越して昼ドラの雑さ加減に片足を突っ込んでいる言葉


ポーラ「ゆーさんっ、何処で覚えちゃったんですかっ、そんな言葉」


彼女の肩に手を置いて視線を合わせる

けれど、見つめ返してくる瞳は不思議そうに首を傾げるばかりで

答え合わせとばかりに、視界の隅と耳の端から愉しそうな犯人像が浮かび上がってくる


ポーラ「アナタですかっ」

提督 「何だいお前?」


ニコニコと愉しそうに笑っている提督


ポーラ「それもう良いからっ」

提督 「あははははっ」


ケタケタと楽しそうに笑っている提督


ポーラ「ゆーさんに何てこと教えてるんですかっ」

提督 「良いじゃないか。単純な二択だよ、答えてあげなよ」


そして…、君は知るだろう

この手の感情論がどっちを答えても間違いだったと

たとえ「ゆー」と答えるのが正しそうに見えたとしても

その先に続くのは当て所もない質問攻めであると

求められているの謝罪と賠償で、正しさなど何処にもなかったと


ゆー 「答えて、ポーラ」

ポーラ「いや、その…ですね?提督さんの、口車に乗せられてはですね?」

ゆー 「どうして?」

ポーラ「はい?」


途端に細くなる ゆーの瞳に、思わず聞き返してしまう


ゆー 「どうしてAdmiralが出て来るの?」

ポーラ「いや、だって…」

ゆー 「…ゆーとの事は遊びだったの?」

ポーラ「ちょっとっ!?」


昼ドラからヤンデレ方面に転がりつつある会話

相変わらずケタケタ笑っている提督


ポーラ「そんな千々に乱れた関係だったみたいに言わないで下さいよっ」

ゆー 「思い出は作るもの。Admiralもそう言ってました」

ポーラ「捏造しないでっ。あとその人一番信用しちゃダメですっ」

ゆー 「ポーラ、良い訳ばかり。反抗期なの?」


呆れた…と言いたげに眉根を寄せる ゆー


ポーラ「違いますよっ!?ただの事実確認ですっ、相互誤認の解消ですっ」

ゆー 「誤解は招くもの…」

ポーラ「ああっ、わかりますっ。アンミラーリオ(提督)がそう言ってたんですねっ」

ゆー 「凄いね。大正解…」

ポーラ「ちくしょうっ、会話にならねぇっ」


地団駄を踏んだ

多分人生初だし、出来れば最後にしてもらいたい

なまじ意思疎通ができてる気がする分更に厄介だ


ゆー「ポーラ…いくよ?」


1人、駄々っ子のように頭を抱えているポーラ

そんな彼女の手を取って、先立って歩きだす ゆー


ポーラ「行くって…。ゆーちゃんさん?」


引かれる手につられるままに、その後を付いていく


ゆー 「夕飯。多摩が作ってる…」

ポーラ「多摩さん…」


遅れるって言ってたのに、あの面倒くさがりな娘が…

ちょっと、感動してもいいですか?


ゆー 「けど、お酒はない…」

ポーラ「…」


泣きたくなった

お酒がない、その一言だけで全ての感動をゼロに出来る自信があった




ゆー「Admiral?その、ありがと…」


振り返り、呟く

もうちょっと、素直に言えれば良いのに…

昼間叩いてしまった手前、なんともバツが悪い


でもでも、あれはAdmiralだって悪いのだ

今だってほら…


提督「ゆー。もっと可愛く言って?」


また意地の悪い顔をして笑っている


ゆー「ぁ、ぅ…」


その言葉に蘇る光景。昼間の、望月と、Admiralの…


嫌なの? 嫌じゃないけど…

出来ないの? 出来なくはないけど…


けど?


「べー…」


軽く舌を出して「知りませんっ」と踵を返した


ゆーと2人。手を引かれ、連れ立って歩くポーラ


「それで、お酒と ゆー とどっちが好きなの?」

「まだ続けるんですか…それ」

「今日の肴にする…」

「お酒もないのに…」



ーおしまいー





おまけ:ぱんぱかぱーん



ぱんぱかぱーん♪


質素な執務室に豪華な声が響いていた


いつき「はい。高雄型重巡の愛宕さんですね。これからよろしくお願いします」


そうして、XX鎮守府の提督。御影 いつき は書類に判子を押した


愛宕「あ、あら?」


予想外だった

ドン引きされるまでは まだ良い

若い、とは聞いていたが、思った以上に少年だ

なにせ、制服に着られている感じが微笑ましい程に

それだったら、少しくらい砕けた方が感じも良いだろうかと思ったのだけれど


いつき「どうかされました?」

愛宕 「あ、いえ…なんというか…」

いつき「あぁ。やっぱり、頼りないですか?」


「よく言われます」苦笑する いつき


愛宕「いえいえ、ごめんなさい。そうじゃなくてね…」


「可愛らしい、とは思ったけれど」なんて素直な感想には

「それもよく言われます」と、またまた苦笑いが返ってくる


愛宕 「なんというか、落ち着いてるのね?」

いつき「そうでしょうか?初めて言われましたね…」


あるいは、少しは様になってきたのかと若干嬉しくもあったが

ひとつ、思い当たる点も無くはなかった


いつき「あぁ…。もしかして…ぱんぱかぱーん、ですか?」

愛宕 「ええ、そうね…」


改めて言われると何か恥ずかしい


愛宕 「お嫌いでした?」

いつき「いえいえ。むしろ気を使って頂いたのに、申し訳なく…」

愛宕 「そんなそんな、私の方こそ1人ではしゃいじゃったみたいで…」


こっちが頭を下げれば、あっちも下げる

「いえいえ」「そんなそんな」と、しばらく続けている2人


いつき「あはは…。切りがありませんね…」

愛宕 「そ、そうね。まぁ、怒られなくてよかったわ…」

いつき「何ていうかその。馴れてまして…」

愛宕 「馴れ?」


部屋の隅

本来なら来客用のソファなのに、我が物顔で寝そべっている娘

バリ、バリと、歯切れのよいお煎餅の音と、ずずぅーとお茶を啜る音がBGMになっていた


愛宕 「あの娘は?」

いつき「はい、阿賀野さんです」


名前呼ばれると、広げていた雑誌から顔を上げる阿賀野


阿賀野「きらりーんっ★ミ。阿賀野だよっ」


お手てで銃の形を作り、バキューンっとしてウィンク

軽く星でも散ってそうな気軽さだった


愛宕「あぁ…」


なるほど。理解した、理解できた、そりゃ馴れるわ

あの気安さを前にしたら、ぱんぱか言ったくらいじゃ動じなくもなるはずだ


いつき「そういう訳でして…」


なんとも言えない顔をして、どうとも言えない息を吐いている

そんな愛宕に苦笑するしか無かった


とはいえ、笑ってばかりもいられない

流石にだらしがなさすぎるだろうし

何より、自分の監督責任を問われかねない光景だ

ここは少し、ピシッと言ってみせた方が今後の為にもなるだろうか


いつき「阿賀野さん。お客さんの前ですから少しは…」

愛宕 「つっこむのそこなのね…」


執務室。だと思ってたのだけど、まさかの休憩室だった点については触れないらしい


いつき「言いたい事はわかりますが。一応、アレでも今日の秘書艦さんなので…」


任務の無い時くらい休んでで欲しいと、伝えてはいるのだが

遠慮しないでと、暇をみては代わる代わるに皆に仕事を手伝って貰っていた

面白半分だったり、可愛がってもらってたり、総じて好かれているのは嬉しいが

どこか、頼りなさを指摘されているみたいで、もどかしさもまた…


愛宕「あぁ、休憩中…」


ならば仕方ないと、百歩譲って納得しかける愛宕


いつき「朝からあんな感じですね…」

愛宕 「もう昼下がりよ…」

いつき「なので、そろそろ お昼寝の時間じゃないかと…」

愛宕 「秘書艦さんっ!?」


思わず声を上げる愛宕


阿賀野「ん?愛宕ちゃんもたべる?」


さっと、差し出される煎餅


愛宕「ぇぇ…」


これはどうしたものだろうか?

受け取ってしまって良いものか?

いやいや、ここは 阿賀野に代わって私が秘書艦を代行するべきなのじゃないの?


いつき「良いですよ」


見かねたのか、笑顔で頷く いつき君


いつき「今日は任務もありませんし。良ければ阿賀野さんの話し相手でもしてあげて下さい」

愛宕 「でも…」


確かに、着任早々 何が手伝える訳でも無いけれど

流石に良心が咎めるというか、働け秘書艦、と言うべきか


いつき「じゃあ、こうしましょう。阿賀野さんから此処の事色々聞いて下さい」


「はい、阿賀野にお任せっ」なんて実に頼りない返事も聞こえてくる


愛宕 「ふーん。意外と、意地悪なのね」

いつき「そうでしょうか?」


そう言われては仕方がなかった

大人しく頷いて、阿賀野さんのご相伴に預かるとしましょう




阿賀野「いらっしゃい愛宕ちゃん」

愛宕 「お邪魔しますね」


寝そべった体勢のまま、器用にお茶とお煎餅を広げる阿賀野

その様は実に手馴れていて、日課の様に思える


阿賀野「さっ、阿賀野お姉ちゃんに何でも聞いてみて?」


ようやっと居住まいを正したかと思えば、無意味に胸を張ってみせる阿賀野


愛宕 「じゃあ、一つ良いかしら?」

阿賀野「なになに?」

愛宕 「あなた、秘書艦でしょう?」


「もう少し真面目に…」紡ぎかけた言葉は、次の阿賀野の言葉に遮られた


阿賀野「でたわね、能代二号っ」

愛宕 「何を言ってるのよ、あなたは…」


「きゃーききたくなーい」目と耳を塞いでソファに蹲る阿賀野

提督の苦労も偲ばれるというものだ




それから しばらく。阿賀野に話を聞きながら提督の事を眺めていた


忙しそうだなと、そう思う

頼りない。そんな印象もあったけど、そんなものが無くなるくらいには…




酒勾 「ぴゃ~…。演習負けちゃったよ…」


ボロっと、煤けた酒勾が執務室に飛び込んでくるのを皮切りに


いつき「お疲れ様です。反省を活かして、次頑張りましょうね」

酒勾 「うんっ。次は勝つからねっ」


なんて頷き合っていると


天津風「連装砲くんの調子が悪くて」


ぐったりと、具合が悪そうな連装砲くんを抱えている天津風


いつき「でしたら工廠へ。丁度改修の準備も出来てますので、一緒にやってしまいましょう」

天津風「わかったわ。ありがとう いつき」


そうして2人、入渠と整備に向かって少しの後


時津風「しれー。今日の任務ってなんだっけー?」

いつき「ええと今日は…その前に…その…」


ちょっとした違和感、否が応でも下がる視線

その眩しさに、目のやり場のなさに視線を彷徨わせる


ワンピースと言い張るのも難しい格好。ミニスカートなんて目じゃない丈の短さ

普段は厚手のストッキングに覆われているお陰で、言うほど意識もせずにすんではいたが…


時津風「ん、どったの しれー?」

いつき「いや、その…した…履きわすれて…」


しどろもどろに、なんとか指摘をする いつき


時津風「おおー、どうりで涼しいと思った」


ぽんっと手を合わせる時津風

けれどすぐに悪戯っぽく笑みを浮かべると


時津風「気になぁる?ほれほれ、ほれほれぇ~♪」


たださえ短い裾を捲くってみせると

その素肌より、なお白い布地が目に痛いほど焼き付いてくる


いつき「い、良いですから。見せなくて…」

時津風「あはははっ。しれーってば顔真っ赤、かっわいいー♪」

いつき「もうっ、からかわないでくださいっ」


一頻り いつき を からかう と笑いながら部屋を出て行く時津風

と思いきや、扉の隙間から顔だけを覗かせて


時津風「で、任務ってなんだっけ?」

いつき「…服は、ちゃんと着けてから行ってくださいね」

時津風「わかってる、わかってるって」




それから、また少し


雪風 「司令。アイスの棒「当たり」が出たんでおすそ分けですっ」

いつき「ありがとうございます。雪風は良く当てますね」

雪風 「はいっ。なんか得意なんです、こういうの。いま島風ちゃんが持ってきますね」

いつき「いま?」


当たりが出た、と言う割に、その手には何もなく

代わりに、そろそろかなと扉の方に目を向ける雪風


島風「おまったせーっ」


ぱっと開く扉

島風が遠慮もなく入ってくると、たたっと駆け寄ってくる


島風「提督、はいアイスっ。それ食べながら少しは休んでねっ、じゃっ!」


旋風のようだった。要件だけすませると、ぱぱっと扉の向こうへ駆けていった




雲龍 「あら、美味しそうなの食べてるわね?」

いつき「はい。さっき、雪風達に貰いまして…」


溶ける前にと、休憩がてらに食べていたアイス

そこへ向けられる物欲しそうな視線


雲龍「一口良いかしら?」

いつき「え、はい。…て、あ…ぅ」


答える前に顔を寄せる雲龍

頬と頬が触れ合いそうな距離。触れる髪がくすぐったく、思わず身を捩ってしまう


雲龍「うふふ。ごちそうさま…」


愉しそうに微笑む雲龍

机の上に両肘を付き、組んだ手の上に顎を乗せながら

観察するように、いつきを眺めている


いつき「あ、あの…なにか?」


食べづらい…

けど、食べないといい加減溶け始めた先端が指に向かって垂れてくる


雲龍 「別に?ただ、次に貴方は何処から口を付けるのかしら、て?」

いつき「うっ…」


言われてみればそうだった。いっそ気づきたくはなかった


間接キス…


何も言わなければ気にもしなかったのに、変に意識させられると どうにも気恥ずかしい


雲龍 「オススメは、こ、こ」


愉しそうに微笑みながら、自分の齧った所を指差す雲龍

溶け始め、零れていく甘い雫が何だか艶かしく思えてしまう


いつき「う…。あぁっ、もうっ」

雲龍 「あら、強引なのね。そういうのも好きだけれど…」


結局、残り全部一口で頬張った

そこだけを舐めとるなんて真似はとてもじゃなかった




陽も陰ってきた頃


長門 「提督。明日の任務だが」

いつき「はい。装備と編成の案は出来ています」

長門 「ありがとう…。うむ、行けそうだな」

いつき「ですが、何があるかわかりませんので…くれぐれも…」

長門 「分かっている。心配性だな、お前は…」

いつき「心配、するしか出来ませんからね…。恥ずかしながら」

長門 「そうか。なら、安心させるのが私たちの仕事だ」


「大船(ビッグ7)に乗った気でいろ」力強く肩に置かれる長門の手が頼もしい


いつき「ありがとう。長門さん…」

長門 「ではな。明日もあるんだ、ちゃんと休めよ?」




能代 「阿賀野姉っ、ちゃんと秘書艦(しごと)してる?」

阿賀野「zzzz…」

矢矧 「はぁ…。やっぱり…ごめんなさい提督。すぐ叩き起こすわ…」


任務も終わり、心配になったのだろう

顔を出した2人が案の定と肩を落とす


能代 「おきろーっ!この だらし姉っ」

阿賀野「ひゃぁぁ!?阿賀野っ、寝過ごしちゃったっ!?」

矢矧 「もう夕方よ、おバカ…」

天城 「だろうと思いましたので。葛城、愛宕さんをお願いね」

葛城 「はいはい。部屋まで連れてけば良いんでしょ?」


実に忙しのない一日だと思う




愛宕「忙しそうね、あの子」


廊下を歩く2人

その話題は、提督の話だった


葛城「そうそう。何時見たってそうなのに、少しは仕事回せってのも聞かないんだから」


「意外に頑固というかさ」

その愚痴は不満が半分と、そういう割には浮ついたように聞こえるのが半分


実に微笑ましい


愛宕「ふぅん。いつも見てるんだ」


あんまりにも微笑ましいものだから、思わずからかってしまいそうになる


葛城「へ?あ、ちがうちがうっ」


そう言いながらも、染まった頬を冷ますみたいに両手を振って否定する葛城


葛城「いつもっていうか。ほらっ、一日もあれば何処かで顔合わせるじゃん?、そういう意味だから」

愛宕「私は どういう意味でも良いんだけど…」

葛城「良くないわっ。誤解よ誤解なんだから」

愛宕「はいはい」


そうやって必死になるのがもう答えのようなものだった


葛城「分かってないでしょっアナタっ」

愛宕「分かってる分かってる。あの子のことが好きなのねぇ」


「ちっがーうっ!!」


事更に顔を赤くして、尚更に声を荒らげる葛城だった




いつき「あの…愛宕さん…なにを?」


気がついたときには、お風呂場で愛宕に背中を流されていた


愛宕 「何って?背中を流しているのよ?」

いつき「そうではなく…」

愛宕 「スキンシップよ、スキンシップ。ほら、艦娘だけに?」

いつき「シップ…ですか?」

愛宕 「うふふ、よく出来ました」


浴室には二人っきり

シャワーの前で座らされている いつき と、その背中を優しく流している愛宕


少し大胆がすぎるかしら?そうとも思う

けれど、何だかんだ構いたくなるのは、きっとこの子の才能だろう

あるいは、これが母性本能とか言うのものか、それとも葛城の抱いてるそれなのか

その線引は未だにつかないけれど、構いたくなったのだからしょうがない

ならば、その感情に流されてみるのも一興と、はしゃいでいるのだった


いつき「にしたって、その格好は…流石に…」

愛宕 「ん?あぁ、平気よ?下は水着だから」


胸の谷間に指を入れ、タオルの結びを緩める愛宕

白い肌、豊満な膨らみと、その縁を彩る様な赤い色


愛宕「なんなら脱ぐ?」


悪戯をする子供のように微笑んで見せる愛宕さん


いつき「いいですっ、いいですからっ、そのままで…」

愛宕 「そーう?ただの水着よ?そんな恥ずかしがらなくても」

いつき「そういう問題では…」


無いのだ、そういう問題では

これがプールや海ならまだ良い。けれど、お風呂場で男女二人きりというのはどうにもならない

更に言えば、下が水着だからと言われても、上から巻かれたタオルからは

まるでその下が…その、裸のように思えて…余計に、余計な考えが膨らんでしまう

だからといって、タオルを脱いでくれなんて言えるわけもなく、悶々とするしか無いのだけど


愛宕「ねぇ、提督さん…」


背中を流している彼女の手

時折、タオルから外れた指先が肌をなぞる

女性と、肌と肌を触れ合わせている…

そんな、気恥ずかしい中のもどかしさと、もかしさの中の心地よさ


愛宕 「きっと皆も、頼って欲しいじゃないかしら?」

いつき「え?」


それはまた、意外な一言だった


愛宕「ごめんなさい。来たばっかりで何をって思うかもしれないけど」


それが素直な感想だった。今日一日、この子を見ていての


いつき「それは…どうなのでしょう…。僕に至らない点が多いだけの気も…」

愛宕 「完璧なだけの人なんてつまらないわ。阿賀野ちゃんだって、ずぅっと部屋にいてくれてたでしょう?」

いつき「あははは。寝てましたけどね?」

愛宕 「ふふっ、そうね、そうだけど。構ってほしいから目に見える所にいるんでしょう?」


皆だってそう。何でもないことで顔出したりして


愛宕「頼って欲しいから頼るのよ?あなたを、あなたに…」


提督の仕事なんて、人1人には重すぎるもの…


愛宕 「だからね、私はじゃんじゃん頼るわよ?君に頼って欲しいから、ね?」

いつき「ありがとうございます…愛宕さん」


自然と、そんな言葉が出ていた

分かっていたのだろう。意地を張ってるのは自分だと

自分が背伸びしたいから、周りが勝手にやってるだけだって…

言うことを聞いてくれないのは自分が至らないからだと、思い込んでの悪循環…


カッコの悪いことだ…本当に


いつき「僕からもよろしくお願いしますね」




そんな時だった

ピチャっと、濡れた床を踏みしめるような そんな音が聞こえたのは


葛城 「な、ななな、何をよろしくするっていうのよ…アンタ達…」

いつき「へ?葛城、さん?」

愛宕 「あら~♪」


二歩三歩と葛城が後ずさる度

静まり返った室内に水音が反響していく


いつき「ち、違いますよっ。葛城さん、これは、その…」

葛城 「な、何が違うってのよっ。ふ、ふふふふふったりでお風呂とか、バカなのっ!?」


風呂場の熱気とは また違った意味で、どんどんと赤くなっていく葛城の体


愛宕 「それは良いんだけど、葛城ちゃん?」

葛城 「いいわけあるかーっ!!私の提督なのにっ…」

愛宕 「私の、ですって提督?」

いつき「え、えーっと…その、ありがとう?」

葛城 「へ?あ・・・」


指摘されて気づく、お礼を言われて思い至る

「私の提督」まるで告白のようなその言葉


葛城 「ちがっ今のナシったんまたんまっ!?」

愛宕 「分かったから葛城ちゃん。うふふふっ」

葛城 「アンタまた そんな顔してっ、分かってないでしょっ絶対」

愛宕 「良いから良いから。騒ぐ前に、隠したら?」

葛城 「え?あ・・・・・・・」

いつき「…」


何も言わずに顔を伏せる いつき

ひゅっと入り込む隙間風が素肌をくすぐっていく


健康的な肌の色。艶やかな黒髪と、スラリと伸びる肢体

豊満ではないものの、女性らしい確かな膨らみと丸みを帯びた体は

年頃の少年の頬を染めるには十分過ぎるものだった


葛城「…ひっく…ぅぇ…」


見られた、見られた、見られた

絶対見られた、隅から隅まで見られちゃった


驚きと恥ずかしさで、ごちゃまぜになる少女の心

手を上げられれば まだ良かった、声を出して罵倒できればスッキリもしたはず


なのに…


彼が頬を染めて俯いている

船じゃない、艦娘でもない、女の子として見られている

それだけ、たったそれだけの事に舞い上がりそうにもなっている


怒れば良いのか、喜べば良いのか

どっちにしろ、見られたことは恥ずかしい…

抜き差しならない、どっちにだって転べない…


分かんない分かんない、どうしたら良いのか分からない


喉元から何かが迫り上がってkる、目尻がだんだんと熱くもなってきた

心の中は ぐちゃぐちゃで、愛宕と2人でお風呂に入ってたなんてものはどうでも良くて


体を抱きしめ、力なく床にへたり込む頃には


「うわぁぁぁぁぁんっ」


訳も分からずに泣いていた




葛城「えぐ…ひっく…」

長門「いや、事故なのは分かったんだが…お前らもう少しだな…」


泣いている葛城をあやしながら、困った顔をする長門


これが愛宕の悪戯で、一緒にお風呂に入ろうとした葛城が被害者だってのは分かるんだが

いくら艦娘と提督だからって、もう少し節度があってもいいとは思う


愛宕 「あははは。ごめんなさいね、つい…。あんまり提督を責めないで上げてくださいね?」

いつき「はい。ごめんなさい…」

長門 「まあ、良い。分かってるならこれ以上言うことはないが…私からは…」


提督に非が無いのは分かっているし

そう素直に頭を下げられては、これ以上何も言う気にはなれなかった


少なくとも自分からは…だが…




島風 「提督…手、早いんですね。意外と…」


興味津々と言った具合に野次馬をやっている島風


天津風「不潔よ…バカ…」


なんとも言えない表情で口を尖らせる天津風


時津風「いやぁ…、しれーも男の子だしねぇ、分かる分かる。時津風さんは心が広いからね、うんうん」

雪風 「あの、時ちゃん?なんで、雪風の目を?どうして後ずさるの?」


何かを悟ったような時津風

雪風に目隠しをすると、するすると その場を後にする


雲龍 「やだわ、私の誘いは断っておいて。他の女とはよろしくするのね…」


およよよ…。わざとらしく泣き真似ををする雲龍


天城「姉さん。ややこしくなるからやめて…」

雲龍「あら、純粋なヤキモチなのに」

天城「動機が不純すぎるんです…」

雲龍「不純異性交遊は青春の華よ?」

天城「お願いだから黙って…」


面白がる姉に頭を抱える天城


酒勾「ぴゃんっと、酒勾も司令のお背中お流したいですっ」


そんな雲龍の言動は

純粋に一種にお風呂に入りたがる酒勾が可愛らしく見えるほどに曇って見える


矢矧「やめなさい」


そんな気がないにしろ

だからこそ余計に、認めるわけにもいかないお姉ちゃん

たとえ「愛宕ちゃんだけズルい」と言われてもだ

否と首を振るのが姉の役目だとおもう


酒勾「でもでも、阿賀野ちゃんだって この間…」

能代「阿賀野姉っ!?」


突然のカミングアウトに目を丸くする能代


阿賀野「能代っ、据え膳は食う女よっ私はっ」


教育に悪い長女だった


能代 「おバカっ!?」

阿賀野「いったーいっ!?提督っ、のしろんが また叩いたー」

矢矧 「ごめんなさい提督。少し話が…」


阿賀野と一緒に連行された いつき

誤解にしろそうじゃないにしろ、こってりと絞られる事になった




いつき「ふわぁぁ…」


朝。差し込む朝日とは裏腹に、大きなあくびが漏れていた


愛宕 「寝不足?」

いつき「ええ、まあ…昨夜は…いえ、その…」

愛宕 「うふふ。そうね、色々あったものね」

いつき「…」


誰のせいだと言いたくもあったが、そこは講義の視線に留めておく


愛宕 「ほら、拗ねてないで」

いつき「拗ねてなんて…」

愛宕 「それじゃ、シャッキとしてくださいな。私の提督さん?」


ぽんっと、彼の両肩に手を置くと愛宕の鎮守府生活が始まった



ーおしまいー






後書き

はい、というわけで最後まで読んでくれた方。本当にありがとうございました
貴重な時間が少しでも楽しい物になっていれば幸いです



卯月「うーちゃんのーっ」
弥生「やってみたかっただけのコーナー」
ゆー「ぱちぱちぱち…」

弥生「で、それはなに?」
卯月「99艦爆だぴょん。いや、あえて言おう、100式艦爆であるとっ」
弥生「百年も使うの?」
卯月「そんなの無理に決まってるぴょん」
弥生「…」
ゆー「これ…足がありませんって…」
卯月「足なんてただの飾りだぴょん、瑞鳳にはそれがわからないんだぴょん」

瑞鳳「うーづーきーちゃん♪」

ゆー「でた…」
弥生「お化けみたいに言わないの…」
ゆー「お化けの方がマシです」
弥生「やだこわい…」
ゆー「こわいこわい」

卯月「一体何が不満だって言うのっ」
瑞鳳「不満しか無いのよバカうさぎっ」
卯月「きゅーかんばーに足りなかったものだぴょんっ」
瑞鳳「足りないどころか減らしてんじゃないのっ」
卯月「増やせばいいってものじゃないでしょっ。瑞鳳のお胸と同じだぴょんっ」
瑞鳳「そっちは足りてないでしょうがっ」
卯月「見せる相手もいないくせにっ」
瑞鳳「提督がいるじゃないっ」

卯月「へ、見せたいの…」
瑞鳳「て、あっ!?そんなわけないじゃないっ!」
卯月「瑞鳳のえっちっ!!」
瑞鳳「違うって言ってるでしょうがっ!」

ゆー「終わりません…」
弥生「今日はお開きだね…」
ゆー「です」

2人「ばいばい…」



ー以下蛇足に付き


♪皐月ちゃんラジオ♪ 

提督「私は見たいけどな」
皐月「それ、ボクになんて言ってほしいのさ?」
提督「気にしない振りをしながらも、それとなく自分の胸を見ながら、ちょっと頬を染めて…」

「バカじゃないの…」

提督「って、言われたい」
皐月「変に生生しいのやめてくれないかな…」
提督「言わないの?」
皐月「言わないよ」



皐月「ほら、バカ言ってないでコメント返しするよ」
提督「はーい」



・卯月と瑞鳳

皐月「どうしてこうなったんだろう…」
提督「分からないけど。家の日常にはなったな」
皐月「良くも悪くもだけど」

・大鳳になだめすかされる提督

大鳳「だって、あの人。まるっきり子供なんだもの…」

瑞鳳 「…」(←1歩下がる
弥生 「…」(←2歩下がる
ゆー 「…」(←3歩下がる
水無月「?」

卯月「それを大鳳が言うの?」

水無月「へ!?ちょっと何でこっちくるのさっ」
卯月 「良いから逃げるぴょんっ!つかまったらきっと あられもない事されるぴょんっ」
水無月「巻き込まないでよっ!?」
卯月 「水無月だってそう思うでしょっ!」
水無月「聞かないでっ!何答えても負けじゃんかっ」
卯月 「お姉ちゃんを見捨てるっていうのっ」
水無月「自業自得でしょっ!」

弥生「行っちゃった…」
ゆー「瑞鳳は行かない?」
瑞鳳「なんでよ、子供じゃあるまいし」
ゆー「…」
瑞鳳「なによ…」
ゆー「別に…」
弥生「別に、ここぞとばかりに大人ぶる瑞鳳が微笑ましいとか思ってないよ?」
瑞鳳「…アンタ最近口悪いわね」
弥生「素直な娘って可愛いと思うの」
瑞鳳「…」
弥生「なに?」
瑞鳳「別に…」



・金剛さんの落ち

金剛「だが待って欲しい。どうして金剛がオチ担当だというのか」
提督「?」
金剛「不思議そうな顔をしないでっ!」
提督「うんうん」
金剛「納得するのもやめてっ」
提督「わがまま…」
金剛「わがままって言うなっ。こんな綺麗で・可愛い娘を捕まえておいて、他に言うことはないのっ」
提督「他にね…」
金剛「何でも良いよ。好きとか、大好きとかっ、あいらーびゅーとかっ。さぁっ、提督!」

提督「金剛、君の笑顔はいつも素敵だね…」
金剛「へ…?」
提督「毎朝、君の笑顔を見る度に、今日が始まったんだと、どうしてか嬉しくなってしまう
   たとえ曇り空でも、雨が降っていても、その笑顔一つで とても晴れやかになるんだ
   そうして、夜になったら君の笑顔を思い浮かべながら眠ると、とても幸せな気分になるんだよ」
金剛「ちょっ、ちょっと…提督?」

提督「あぁ、その声も素敵だね。小鳥のような囀りだ、耳にくすぐったくて心地いい
   楽しくなって、踊りだしそうになる。疲れた時は子守唄のように包み込んでくれる」
金剛「あの…あの…」

提督「金剛、いつもありがとう。金剛、大好きだよ。金剛…」
金剛「まってっ!!やめ…やめ…もう、わかった、わかりましたから…」
提督「どうして、まだ最後まで言ってないよ…。金剛、あぃ…っ」(←口ふさがれた
金剛「はぁっ、はぁっ、あ、あなた…金剛をどうするつもりなの」(←口塞いでる
提督「どうって、Kiss or sayって言ったの こう じゃないか」
金剛「そこまでは言ってない!」
提督「言わなきゃ拗ねるくせに」
金剛「拗ねませんよっ!」
提督「え、じゃあ ちゅーしろって事?金剛だいたん…」
金剛「あーもうっ!?さーつーきーっ、提督がーっ!」
皐月「知らないよ。そんなだから、オチ担当って言われるんだろ」
金剛「なんと…」



・スーパー戦隊シリーズ

怪人「一人を相手に11人で戦って、卑怯だと思わないのか」

文月「数の力の大切さを子どもたちに教えてるんだね、きっと」
球磨「クマっ。たかが11人に負けるコイツが弱いだけだクマ」
長月「戦力を小出しにするこいつらも大概だと思うけどな…」
菊月「怪人11体か?途端に弱くなるぞ…」

「お前の敵は11人じゃない。平和を願う全宇宙だ!」

ポーラ「あはははは。なんか派手なこと言ってますよー」
提督 「もう戦争だなこれ」

夕張「アンタ達。少しは黙ってみなさいよ…」



・次は文月?

文月「やっちゃう?」
提督「気が向いたら」
文月「えー」



・プロフィール…

提督「ごめんなさい。大事なことだけど、コピペミスってるだけです。こっそり直しときます」



最後までご覧いただきありがとうございました
コメント・評価・応援・オススメも合わせ、重ねてお礼申し上げます

E2終わったら、書き上げようと思っていたら
重巡姫が邪魔すぎて、結局GWも最後になってしまいました
イベントの合間にとも思いましたけど、そうはなりませんでしたね、ごめんなさい
とりあえず、ガングートを拾いに行こうと思います。堀は、余裕があったらで

皆様も、よいイベントを過ごせますように

提督 「ポーラ。あとよろしく」
ポーラ「はーい。ではでは~、ciao、ちゃ~お~」


ー以下プロフィール(長いー


提督
練度:神頼み 主兵装:刀
「触らぬ神に祟りなしって、言うだろう?」
長髪で黒髪、何時も気だるげな表情をしてる
一応、白い制服を着けてはいるが、上から羽織っている浴衣が全てを台無しにしている、不良軍人
そもそも、軍人どころか人ですら無い、元土地神様
覚えている人もいなくなり、ようやく開放されたと思えば、深海棲艦が湧いてきて…
3食昼寝付きの謳い文句も手伝って、提督業を始めだした
性格は、ほとんど子供。自分でやらないでいい事はまずやらない、明日できることはやらないで良い事
悪戯好きで、スカートめくりが好きなお年ごろ
また、結構な怖がりで、軽度は人見知りから始まり、敵は全て殲滅する主義

皐月ー愛称:さつきちゃん・さっちゃん・さっきー
練度:棲姫級 主兵装:12・7cm連装砲(後期型 好感度:★MAX
「え、司令官かい?そりゃ…好き、だよ?なんてな、えへへへ♪」
初期艦で秘書艦の提督LOVE勢。提督とは一番付き合いの長い娘
その戦闘力は、睦月型どころか一般的な駆逐艦の枠から外れている程…改2になってもっと強くなったよ
「ボクが一番司令官の事を分かってるんだから」とは思いつつも
まだまだ照れが抜けないせいか、ラブコメ時には割とヘタレである

睦月ー愛称:むつきちゃん・むっつー・むっつん
練度:褒めてっ 主兵装:12・7cm連装砲(後期型 好感度:★MAX
「提督っ、褒めてっ!」
わかりやすい提督LIKE勢、「ほめて、ほめて~」と、纏わりつく姿は子犬のそれである
たとえその結果、髪の毛をくしゃくしゃにされようとも、撫でて貰えるのならそれもよしっ
好感度は突っ切っているが、ラブコメをするにはまだ早いご様子

如月ー愛称:きさらぎちゃん・きさら
練度:おませさん 主兵装:12・7cm連装砲(後期型 好感度:★MAX
「司令官?ふふ…好きよ?」
提督LOVE勢。良い所も悪い所もあるけれど
むしろ、悪い所の方が目立つけど、それでも あなたが大好きです
だから、何度でも言いたいし、何度でも言われたいの、ね?司令官?

弥生ー愛称:やよいちゃん・やよやよ・やーよ
練度:無表情 主兵装:3式爆雷 好感度:★9
「司令官?好きだよ、普通に」
普通の提督LOVE勢。
いつからだろうか?姉妹たちが司令官にからかわれてるのを見て羨ましく思い始めたのは
弥生にもして欲しいって、弥生だって構って欲しいって、司令官にとっての弥生はどうなのかなって
どうすればいいんだろう?
笑えば良いの?拗ねればいいの?甘えて見せれば良いのかな?
ねぇ司令官…あんまり気づいてくれないと…怒るよ?

卯月ー愛称:うーちゃん・バカうさぎ
練度:ぴょんぴょん 主兵装:超10cm高角砲★MAX 好感度:★7
「司令官?そんなの大好きに決まってるぴょんっ」
ぴょんぴょんする提督LIKE勢。毎日ぴょんぴょんと、あちこちで悪戯しては怒られる毎日
主な対象は瑞鳳、「だって、からかうとおもしろいだもん」なんのかんので構ってくれる瑞鳳が好き
ラブコメというより、騒がしい妹

水無月ー愛称:みぃ
練度:うん、わかるよ 主兵装:12・7cm連装砲(後期型 好感度:★6
「司令官、呼んだかい?」
鎮守府の新人さん。遊び回ってる姉妹たちに安心したのも束の間
その練度の差には、内心もやっともしている。あと球磨ちゃん怖い
提督に対しても好意的で、可愛がってもらいたいお年頃

文月ー愛称:ふみ、ふーみん
練度:ほんわか 主兵装:12・7cm連装砲(後期型 好感度:★8
「しれいかん?えへへー…なーいしょっ♪」
ふんわりとした提督LOVE勢。空気を読んでいたつもりが空気に飲まれたここ最近
司令官を見てドキドキするのは、きっと姉や妹の影響だ、きっとそう
そうなってくると、いつものスキンシップでさえ気恥ずかしい上に
弥生お姉ちゃんが、変な道に突き進んでいるのを止めたりと最近は忙しい

長月ー愛称:なつき、なっつん、なっつ
練度:頼りになる 主兵装:5連装酸素魚雷 好感度:★8
「司令官…いや、まあ…いいだろ別にっ」
おでこの広い提督LOVE勢。司令官に ちゅーしてこの方
自分の感情を見ない振りも出来なくなり、最近は割りと素直に好意を見せてくれたりもする
自分の感情に振り回されるくらいにはラブコメ初心者。あと、シスコン(菊月)

菊月ー愛称:菊→菊ちゃん→お菊さん→きっくー→くっきー
練度:威張れるものじゃない 主兵装:12・7cm連装砲B型改2★MAX 好感度:★8
「ながなが?ながなが ながなが」
箱入り提督LIKE勢。おもに長月に過保護にされてるせいでラブコメ関連はさっぱり
しかし、偶に見せる仕草はヘタなラブコメより攻撃力は高い。やっぱり如月の妹である
大艦巨砲主義者、主兵装は夕張に駄々を捏ねて作らせた。それとシスコン(長月)
最近、司令官との共通言語が出来た。合言葉は「ながなが」

三日月ー愛称:みつき・みっきー
練度:負けず嫌い 主兵装:12・7cm連装砲(後期型 好感度:★9
「し、しれいかん…そ、その…好きですっ!」
おませな提督LOVE勢。どこで仕入れたのか変な知識は一杯持ってる
そして、変な妄想も結構してる。すぐ赤くなる、可愛い
提督と望月に、からかわれ続けたせいで、たくましくなってきたここ最近
ラブコメモードは基本に忠実

望月ー愛称:もっちー、もっち
練度:適当 主兵装:12・7cm連装砲(後期型  好感度:★MAX
「司令官?あー、好きだよ、好き好き」
適当な提督LOVE勢。とか言いつつ、好感度は振り切ってる
だいたい司令官と一緒に居られれば満足だし、司令官になんかあれば不言実行したりもする
ラブコメには耐性があるが、やるとなれば結構大胆

球磨ー愛称:ヒグマ・球磨ちゃん
練度:強靭・無敵・最強 主兵装:46cm…20.3cm(3号 好感度:★MAX
「提督?愚問だクマ」
突き抜けてる提督LOVE勢。気分は子グマの後ろに控えている母グマ
鎮守府と提督になんか有ろうものなら、のっそりと顔を出してくる、こわい
積極的にラブコメをすることもないが、昔は提督と唇を奪い合った事もある
大艦巨砲主義者。最近、私製46cm単装砲の命中率があがった、やったクマ

多摩ー愛称:たまちゃん・たまにゃん
練度:丸くなる 主兵装:15・2cm連装砲 好感度:★6
「提督?別にどーとも思わないにゃ?」
気分は同居ネコ。とか言いつつ、なんのかんの助けてくれる、要は気分次第
絡まれれば相手もするし、面倒くさそうにもするし、要は気分次第
特に嫌ってるわけでもないし、いっしょに昼寝もしたりする、要は気分次第
ラブコメ?何メルヘンなこと言ってるにゃ

北上ー愛称:北上様・北上さん
練度:Fat付き 主兵装:Fat付き酸素魚雷 好感度:★7
「提督?愛してるよん、なんちって」
奥手な提督LOVE勢。気分は幼なじみだろうか
このままゆるゆると、こんな関係が続くならそれで良いかなって思ってる
最近の趣味はFat付きをばら撒いて海域を制圧すること

大井ー愛称:大井さん・大井っち
練度:北上さん 主兵装:北上…53cm艦首(酸素)魚雷 好感度:★8
「提督?愛してますよ?」
分かりにくい提督LOVE勢。そうは思っていても口にはしない、絶対調子に乗るから
足と両手が埋まったなら、胸…艦首に付ければいいじゃない、おっぱいミサイルとか言わない

木曾ー愛称:きっそー、木曾さん
練度:悪くない 主兵装:甲標的 好感度:★7
「提督?まあ、アリなんじゃないか?」
カッコイイ提督LOVE勢。提督に赤くさせられたり、提督を赤くしたりと、まっとうなラブコメ組
そういうのも悪くはないが、本人はまだまだ強くなりたい模様
インファイター思考だけど、甲標的を使わせたほうが強いジレンマ

金剛ー愛称:こう・こうちゃん・こんご
練度:Burning Love 主兵装:Burning…46cm3連装砲 好感度:★MAX
「提督…Burning Loveです♪」
分かりやすい提督LOVE勢。提督の為ならたとえ火の中水の中
何時からだったのか、出会った時からか
ならそれはきっと運命で、この結果も必然だったのだろう
けれど、鎮守府ではオチ担当、艦隊の面白お姉さん
取り戻せ、お姉さん枠

瑞鳳ー愛称:ずいほー・づほ姉ちゃん
練度:卵焼き 主兵装:99艦爆(江草 好感度:★6
「だれがお姉ちゃんよっ」
気分は数ヶ月早生まれな幼なじみ。ラブコメルートもあった気がしたけど、何処行ったかな
卯月にからかわれて、追っかけまわすのが日課
だからって、別に卯月を嫌ってるわけでもなく実際はその逆である

夕張ー愛称:ゆうばりん
練度:メロン 主兵装:軽巡に扱えるものなら何でも 好感度:★6
「ゆうばりんって…気に入ったのそれ?」
気分は一個上のお姉さん。卯月や菊月の駄々に付き合ったり
球磨や提督の無茶振りで、アレな兵装を作ったりと、信頼と安心の夕張さんである
特に決まった装備は無く、戦況次第でなんでも持ち出すびっくり箱、安心と実績の夕張さんである

大鳳ー愛称:大鳳さん
練度:いい風 主兵装:流星改 好感度:★9
「提督、愛してるわ」
素直な提督LOVE勢。金剛見たいにテンションを上げるでもなく、息を吐くように好意を伝えてくる方
ラブコメに悪戯にと我慢強い方だが、許容量を超えると…
その落ち着いた物腰からは、艦隊の保護者っぽくなっているが、内心は見た目通り歳相応だったりもする

U-511ー愛称:ゆー、ゆーちゃん
練度:ですって 主兵装:WG42 好感度:★7
「Admiral…提督さん、次は何をすれば良い?」
好きとか甘いは良く分からないけれど
Admiralの お手伝いが出来ればいいなって思います
「敵は討たねば」球磨がそう言ってたので、そこから頑張りたいと思います
如月に貰った三日月型の髪飾りは宝物

ポーラ-愛称:ポーラさん
練度:赤ワイン 主兵装:白ワイン 好感度:★7
「提督さん?面白い人ですよねー」
ゆーの舎弟。あんまりな言い方をすれば、そういう立場
酒は飲んでも飲まれるな。口も態度も緩くなるが、意外と理性は残ってる
酔が醒めると口も態度も固くなるのを気にしてか、平時はもっぱら酔いどれている


このSSへの評価

2件評価されています


SS好きの名無しさんから
2017-05-14 14:44:59

SS好きの名無しさんから
2017-05-06 02:35:14

このSSへの応援

1件応援されています


SS好きの名無しさんから
2017-05-06 02:35:16

このSSへのコメント

4件コメントされています

1: SS好きの名無しさん 2017-05-06 02:38:51 ID: c6f2NBHv

ポーラ回面白かったです。
大鳳の大がことごとく太になってる件について一言。
このシリーズの雰囲気ホント好きです。
海防艦来たけど、登場予定は?

2: SS好きの名無しさん 2017-05-09 20:14:01 ID: _D-urVIc

待ってましたー!!
もう1から読みすぎて
ヤヴァい!
面白かったです!
でも愛宕があそこか…って。
ゆーさんも言ってましたって。
次の更新待ってます!
次回は如月と文月回がいいなー…
愛宕さんこっちに移動って…

3: SS好きの名無しさん 2017-05-14 14:44:07 ID: 9hJbCbGP

今回も楽しませて頂きました。

居候してたポーラが正式に加入。指輪を渡されて提督を意識しまくってるのが可愛かったです。
球磨以上金剛以下の火力を誇る重巡として、鎮守府唯一の飲んべえ(飲んで黒歴史はちらほら)として、これからの彼女の活躍に期待してます。

・やはり腹の中は黒かった文月。祟るよ可愛い。ちくしょうには笑った。
・瑞鳳の胸を意識する下りで思う、「これもう好感度7に届いてない?」と。

登場の要望が出てた愛宕はながもんの所に行きましたね。(球磨に弄られる彼女のイメージが強すぎて『いつきの所』と思えない…)
ポーラが入って重巡枠も埋まりましたし、所属艦娘の数も考えると妥当な流れかなと思います。
そして、葛城が乙女可愛過ぎて最後に全部持っていかれました(笑)

次回も楽しみにしています。

4: フラン 2017-05-17 01:14:45 ID: gEX6Xcp2

最近見れてなかったのですがやっぱりいつ読んでも面白いです!!!40回の感想になってしまうのですが37回の時に自分がコメントした瑞鳳、卯月、水無月の修羅場?みたいな話が見れて良かったです!(関係ないかも知れませんがw)やっぱり元鞘に戻るんですねぇ...仲良しさんの証拠だね!

今回はポーラ回だった訳ですがポーラにそこまで好感度があったのが驚きですw正直あんま絡みなかったよーな??

北上様の察しの良さ流石です...そういう所が本当に好きです。

大鳳さんの意地、提督にクールに大人っぽく見られたいのでしょうか...大人っぽく見られたいって思う時点で子供っぽいと言う矛盾、そんなギャップ大鳳さんが可愛すぎて...

これからも応援しています。ずっと追いかけてくつもりです!!頑張って下さい!!長文失礼しました!!!


このSSへのオススメ

3件オススメされています

1: SS好きの名無しさん 2017-05-06 02:44:21 ID: c6f2NBHv

睦月型メインのシリーズ

2: SS好きの名無しさん 2017-05-14 14:46:49 ID: 9hJbCbGP

ポーラが鎮守府に正式加入。これからますます賑やかになりそうです。

3: フラン 2017-05-17 01:15:37 ID: gEX6Xcp2

めちゃくちゃ良い。オススメ、マジで。


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