2017-12-24 19:52:23 更新

概要

【●ワ●:最終決戦『起』】


前書き

最終章まで一気に投下しました。


ここまで読んでくれてる人にもはや注意書など。




オリキャラ、勢い、やりたい放題。海のように深く広いお心でお読みください。


【1ワ●:E-1】

 

1

 

乙中将「計24隻、6隻編成の4艦隊」

 


乙中将「青ちゃんの艦隊にたどり着かせる前にその周りの深海棲艦、全て沈めるからね」

 

 

飛龍「はい、駆逐水鬼と軽巡棲姫の艦隊、海の傷痕は索的範囲にいません。甲大将のほうです。計36隻、6隻編成6艦隊ですが、取り巻きは偵察機をスルーしてますね」

 

 

乙中将「中途半端に思考機能付与能力使っているんだと思うとにかく、海の傷痕にアクション起こさせればいいから。伝えた通り、壊れた装備の再生速度、海色の想と妖精工作施設の深海棲艦建造速度、今の段階はえぐればえぐるほど」

 

 

乙中将「ボロが出てくる」


 

飛龍・蒼龍「艦載機、発艦!」


 

ガガガガガガガガガガ!

 

ドオオオン!


 

扶桑「さて海の傷痕残しで、手足は私達」

 

 

山城「潰します」


 

扶桑・山城「砲撃開始!」

 

 

ドオンドオン!


 

蒼龍「さすがだね。姫や鬼なら同等以上にやりあえてる」

 

 

飛龍「48隻全て、だ」


 

飛龍「電の解体のために、海の傷痕は後回しなのが残念だけど」

 

 

飛龍「海色の想は壊しておきたい」

 

 

飛龍「艦載機、発艦!」

 

 

蒼龍「飛龍さすが! 軽巡棲姫に直撃した!」

 

 

飛龍「……いや、ちょっとあれ」

 

 

軽巡棲姫「応答供給完了」

 

 

軽巡棲姫「Re;boot」

 


蒼龍「ちょっと待ちなさいよ……」

 


飛龍「再生にしても通常の深海棲艦どころかトランスタイプよりも速い……?」


 

飛龍「女神、の修復と似てる……」


 

軽巡棲姫「L2警告」

 

 

軽巡棲姫「ステルス解除、予備殲滅戦力投入します」


 

軽巡棲姫「トラ、ンス」

 

 

飛龍「……え」


 

2


 

飛龍「乙さん。倒した軽巡棲姫が復活。そして敵艦隊新たに出現です」

 

 

飛龍「軽巡棲姫に通常を越える知能能力を確認しました。中枢棲姫勢力と同じ、つまり私達と同じ動きをしてきます。被弾が……」

 

 

乙中将「全軍一事撤退。最初の僕らの役割はここまで」

 


飛龍「了解、目的地点へ移動始めます」



乙中将「……、……」

 

 

元帥「乙中将」


 

乙中将「はい」


 

乙中将「元帥の予測通りー。取り巻きの深海棲艦勢力は妖精の力を宿しているとこちらの艦隊との交戦で確認」


 

乙中将「情報からして女神といわれる死の淵からの完全回復現象と同じ」


 

乙中将「加えて夕立、神通からの報告です。捉えた戦艦棲姫を撃沈、軽巡棲姫の女神現象と同じく、2度の完全再生をした模様です」


 

元帥「やっぱり、だよなあ……」

 

 

元帥「女神の力、想経由で流し込めるよな」


 

元帥「まあ、了解した。それで深海棲艦の勢力は」


 

乙中将「沈めた23隻、その中に本体、戦艦棲姫、駆逐水鬼、装甲空母鬼、軽巡棲姫は」

 

 

乙中将「いません……」


 

乙中将「こちらの撃沈者も0です」

 


元帥「御苦労。作戦は予定通りに。混乱を招くものはともかく、なにか分かれば通信してくれ」


 

乙中将「はい、了解」


 

3


 

乙中将「深海棲艦の姫と鬼に永続女神……」

 

 

乙中将「けど、考えなきゃ……」

 

 

乙中将「この今の戦いまでで得た全ての情報で」


 

乙中将「なにかギミック、がある」

 

 

乙中将(キスカでの由良さん達、たったの4隻であいつらを撤退までさせたんだから、なにかギミックがある)

 

 

乙中将(ならば、(壊)でもない軽巡1隻、睦月型3隻で、突破も可能なギミックが、なにか)


 

乙中将(その絶望的な戦力差に勝つために……由良さん達を僕なら……)


 

乙中将「どう、指揮を執る……」


 

乙中将「……、……」

 

 

乙中将「……………、……………」

 

 

乙中将「この、敵の配置陣形」


 

乙中将「なんか……臭うな」


 

乙中将「……」


 

乙中将「さっきの今で申し訳ないのですが」

 

 

大淀「大淀です。今、元帥は潜水艦隊の指揮をお執りになっていますので、代わまして私が」

 

 

乙中将「大淀さん」


 

乙中将「この相手の配置陣形。一糸の乱れもなく、一定距離を保ちながら、中央の本体に繋がる大きな輪形陣」


 

乙中将「ですが、こちらが交戦した時、敵の陣形に乱れが生じて、軽巡棲姫はこちらと交戦することにより、大きく海の傷痕から離れたわけで」

 

 

乙中将「そして軽巡棲姫を中破させた時から、ぽつりと不自然に穴が開いた箇所がある」


 

乙中将「そして、現場の報告をまとめてみたところ、その穴を作った1隻は仕留めていません。軽巡棲姫艦隊の12隻ですが、第1艦隊の敵撃沈報告は10隻です」

 

 

乙中将「加えて女神現象は撃沈後から、1分ほど」


 

乙中将「そして夕立から、軽巡棲姫の女神現場の少し前、電探が深海棲艦反応をキャッチしたと」


 

乙中将「補給完了、の言葉」


 

乙中将「元帥直々に調査なされたという先日の史実の想を使うの深海棲艦勢力、」


 

乙中将「女神といった想の力を本体から届けているとか。例えば、例のステルスタイプの補給艦、とパイプ役のナニカが……」

 

 

乙中将「なら、海の傷痕から一定距離を離れると、そのナニカを介さないと、想の力を流せない。電波外になったから、直接ケーブルを繋ぐ、ような」


 

乙中将「攻撃手段のダウンロード、修復作業は、こちら側でいう、速水さんの洋上補給と、明石君の海上修理技能」


 

乙中将「海の傷痕の想の力には有効範囲があると、考えてもいいよね」

 


大淀「あ、元帥もお聞きになってます」


 

元帥「……、……」

 

 

乙中将「准将の説が、正しい気がする。『なぜ艦娘は電ちゃんやわるさめさんの艦娘反応と深海棲艦反応を電探でキャッチ出来て、海の傷痕は至近距離でないと探知できないのか』」



乙中将「装備を介さないとダメ、なんだ。ロスト空間からのこちらの壊:バグの探知は、こちら側から装備で探知するよりも不安定」



乙中将「または『壊:バグは探知が出来ても正確な場所までは分からないのか、繋ぐことが出来ないのか』」



乙中将「今いった仮説だと、海の傷痕がわざわざ深海棲艦の艦隊を引き連れて、あの鎮守府に進軍しているのも、一応の説明はできる」


 

元帥「……いい勘だ」


 

元帥「撤退しながら器用に確かめてみてくれ。作戦に変更はないが、確信が持てたのなら効率が段違いだ」

 

 

乙中将「了解。それでは」


 

乙中将「飛龍、蒼龍、神通、聞いて」


 

乙中将「撤退しながらでもいいから、試して見て欲しいことがある」

 

 

4

 

 

海の傷痕:当局(む、乙の旗に向かわせた駆逐水鬼と戦艦棲姫、軽巡棲姫が押されているか……)

 

 

海の傷痕:当局【やれやれ、雑魚を用意したつもりではないのだが……】

 

 

海の傷痕:当局【……】

 


海の傷痕:当局(現海界した当局の想の届ける範囲のほどに気付かれたか……?)

 

 

海の傷痕:当局【嬉しいではないか】

 

 

海の傷痕:当局【全員に見せ場なぞ用意してやる気はなかったが……】


 

海の傷痕:当局【火遊びしてやるか。その熱量で火傷したのなら、脂も興も乗るというもの】

 

 

海の傷痕:当局【●∀●】

 

 

5

 

 

乙中将「……ビンゴ、か?」

 


乙中将「海の傷痕が、釣れた」


 

乙中将「……あ、青ちゃんから」

 

 

提督「乙中将、ほぼ誤差はなく。ロスト空間にいる海の傷痕:此方に予定通り応戦していただきたい」

 

 

乙中将「了解、海の傷痕の進路がずれて僕達のほうに来てる。交戦は避けられないね。青ちゃん、ちょっと待っていて」

 

 

乙中将「欠陥だらけの史実砲、突破してきてやら」

 

 

提督「了解です」

 

 

乙中将「扶桑、山城、それに時雨」

 

 

乙中将「狙いはそっちだ。恐らく使ってくるのは」

 

 

乙中将「レイテの史実砲かなー」

 

 

扶桑「……お任せを」

 

 

山城「必ず帰還しますんで」

 

 

時雨「任せて。時雨である僕には思うところがある。必ず」


 

時雨「全員で生きて戻ってくるよ」

 

 

 

 

 

 

海の傷痕:当局【よう】

 

 

海の傷痕:当局【欠陥戦艦と、負け犬に告げようか】

 


海の傷痕:当局【誰も殺さないといったな。あれは本当だ】

 

 

海の傷痕:当局【最も生きている、の定義は新基準ではある】

 

 

海の傷痕:当局【さあ、還るといい】

 

 

山城「ンなことだろうと思ったわよ。普通にルール違反してくるやつが、約束守るだなんて信じてないし」

 

 

時雨「そもそも最大限精一杯生きているとかの座右の銘の通りに行動してるとは思えないね」



扶桑「遊んでいるようにしか」



海の傷痕:当局【性格の問題よな。遊びに全力である。最大限に精一杯、遊びのなかに仕事を包容しているのである。子供の心は忘れたか?】



海の傷痕:当局【欠陥戦艦と、負け犬め】

 

 

海の傷痕:当局【嘲嘲:ケラケラ……止まない雨と明けない夜の存在を知ってこい】

 


海の傷痕:当局【Trance!】

 

 

【2ワ●:E-1:ロスト空間】

 

1

 

海の傷痕【ようこそっ!】

 

 

海の傷痕【海の傷痕:此方ちゃんで――――す!】

 

 

イエーイバンザーイヒャッハー

 

 

山城「想像してたやつと違うわね……日本式の上質な女性とかいうから、大和撫子を想像してたわ」

 

 

海の傷痕:此方【大和撫子は絶滅危惧種だよー。だから間宮さんは貴重だねー……扶桑さんも近いけど、妹のほうは】

 

 

海の傷痕:此方【うん、ヤンキーだね】

 

 

扶桑「なんて趣味の悪い力……」

 

 

ドオオオン!

 

 

海の傷痕:此方【ヘイヘイヘイ!】

 

 

扶桑「艤装そのものを弄ってきてるのね……砲撃する度に、損傷。この……砲塔配置……」

 

 

扶桑「再現、されています……!」

 

 

山城「おまけに通信が妨害されているのかしら。飛龍さんから聞いたのとまるで同じ状態……」

 

 

「6隻、4隻、4隻、21隻、39隻」

 


山城「何度も、見たわね」


 

山城「ああ、扶桑お姉様」

 

 

山城「艤装が恐怖しているのが伝わります……」

 

 

山城「魂に刻み付けられている」

 

 

山城「夢の終わり」

 

 

山城「勝てない、という結末」

 

 

扶桑「だから、何ですか、と」ジャキン

 

ドオオオン!

 

ドンドンドンドン!


 

ドオオオン!

 

 

扶桑「こんな風にコテンパン、にされて……」

 

 

扶桑「死ぬとしても」

 

 

扶桑「構えなさい山城」

 

ドオオオン!

 

 

扶桑「っ……!」

 

 

山城「あ、扶桑お姉様……!」

 

 

山城「っ!」ジャキン


 

扶桑「あの時と結果は変わります」ジャキン

 

 

扶桑「乗り越える、といったでしょう」

 

 

扶桑「そもそも恐れるに足りず、です」

 


時雨「その通りだよ。これ艦娘verのせいで再現は適当だ。これ、乙さんがいっていた通り、欠陥砲だね」

 

 

時雨「僕はここで沈まないし、その僕に撤退命令は下されていない」

 

 

時雨「未来は変わるに値する不確定要素だよね?」

 

 

海の傷痕:此方【そうだねー。再現できるのは1つの景色だけだから、これ、非効率で非機械的。それに西村艦隊の艤装適性者、色々足りないしー……】

 

 

海の傷痕:此方【でも、まあ】

 

 

海の傷痕:此方【時雨が増えたとしても、敗走するのがオチかもね】

 

 

海の傷痕:此方【収束するし、必ず勝敗の結果は出るよ。敵の数が数だし、無意味になるかもね】

 

 

海の傷痕:此方【6隻、4隻、4隻、21隻、39隻】

 

 

海の傷痕:此方【さあ、見せてごらん】

 

 

海の傷痕:此方【あなた達の艤装と今を生きる人間の力で、過去を足蹴にする可能性をね】

 

 

海の傷痕:此方【最も、それをさせないために此方がいるんだけども】

 

 

海の傷痕:此方【単純に力で潰されるだなんて退屈なオチは止めてよね。さあ】

 

 

海の傷痕:此方【試練の時間です】

 

 

海の傷痕:此方【Trance!】

 

 

2

 

 

海の傷痕:当局(……飛龍蒼龍、と護衛に白露と神通をつけて撤退か?)

 

 

海の傷痕:当局【……、……】


 

海の傷痕:当局(む……なるほど、想が読めないと思いきや、『撤退』としか指示を出していないのだな)


 

海の傷痕:当局【嘲嘲、まあ、そうだな。それは効果的だ】

 

 

海の傷痕:当局【装備と想の『全員生還』と大雑把な策を探知し、その底を読み誤った挙げ句が当局の……】

 

 

海の傷痕:当局【キスカでの失態なので】

 

 

海の傷痕:当局(……長の射程に夕立が独り)

 

 

海の傷痕:当局【重課金者か】

 

 

海の傷痕:当局【……、……】

 

 

海の傷痕:当局【なるほど】

 

 

海の傷痕:当局【全滅覚悟か】

 

 

3

 

 

海の傷痕:此方(すごいな)

 

 

海の傷痕:此方(……75隻相手に3隻で、15分以上も持つんだ)

 

 

海の傷痕:此方(死を恐れずに果敢に応戦する姿、かっこういいね)

 


海の傷痕:此方【なるべく殺したくはないけど、それも失礼と判断】

 

 

海の傷痕:此方【此方も使えるんだ】

 

 

海の傷痕:此方【経過程想砲】

 

 

ドンドンドン

 


4



山城「っ! 見えない砲撃、ね。被弾、中破判定だけど、まだ戦える……」ジャキン

 

ドオン!

 

山城(残り30隻くらいまで減ったかしら……時雨の存在一人いるだけでこうも違うもんなのね)

 

ドオオン!


山城「え、なに!?」

 

 

山城「炎上、あれは、引火……?」

 

 

山城「あの方向は」


 

山城「扶桑お姉様……!」

 

 

山城「私より、時雨のほうが、救援に駆けつけるの、速いわね……」

 

 

海の傷痕:此方【ごめんね。でも、これ戦争だから、容赦はしないよ】

 

 

山城「……!」

 

 

海の傷痕:此方【経過程想砲っ!】

 

 

ドオオン!


 

山城(……大破)

 

 

山城(次で、艤装、壊れる)

 

 

山城「構わないわよ……別に」

 

 

山城「帰るのよ、この腐った海から、扶桑お姉様と一緒に……」

 

 

山城「そこをどいて……!」

 

 

山城「どきなさいよ、お前!」

 



【3ワ●:想題:山城】

 


前代未聞の欠陥志望。



建造効果で身体能力が超人になるから。もちろん馬鹿正直にいってはならない。そこらにあるようなお決まりの定例句を書類に書いた。

 

 

見抜かれたけどね。興味を持って面接試験を担当したのが、当時20歳、才能に満ち溢れた最年少の期待の星、乙中将だった。

 

 

――――正直に答えたら、通してあげる。嘘じゃない、と答えてもいいよ。

 

 

この時に間を空けたのが、嘘、と答えているようなもので、正直にいうしかなかった。

 

 

――――建造効果で身体能力を強化したいからです。ビルの10階から落ちても怪我で済む強靭な身体で、

 

 


 

 

 

 

 

 

 

――――殺したい暴走族がいる。

 

 

 

すぐに通ったのは、山城とその姉にあたる扶桑の艤装適性者は比較的、発見されるものの、なかなか軍に引き込めずにいたらしい。

 


山城と扶桑艤装、ともに過去に対深海棲艦海軍に在籍したのは歴代で19人。その全てが、戦死を遂げている。

 

 

曰く付きの死神艤装。

加えて艤装効果による夢見も最悪をいうならと、候補に名を挙げられるものだとか。適性者を勧誘しても、その艤装を身に付けるのを断られてばっかりらしい。それはそうでしょーよ。



――――おっけ合格。詳しく話して。

 

 

――――山城艤装の適性者は僕が唾をつけときたいんだよね。飛龍蒼龍、夕立時雨、神通、山城に共通しているものが、ほら、あるだろー?

 

 

知らないわよ。飛龍蒼龍。夕立時雨神通。なにそれ、美味しいの、というレベルで門を叩いたんだし。


 

事情は話した。

街で絡まれて、しつこかったから強く突き放したら、逆恨みされた。私も手が早いのよね。ケンカした。その時に隣にいた扶桑お姉様が怪我した。

 

 

それだけで済めば良かったのだけど、性質が悪いやつらだったみたいで、粘着してくんのよ。ガッコに待ち伏せとかされて、大人の男連れてきて、脅してきて、本当に情けない連中。


 

ああ、不幸だわ。

これは艤装を身に付ける前からの私の口癖と化していた。

 


――――警察にいわないの?


 

馬鹿じゃないの。事後に動く連中になにが期待できるのよ。世の中、自分の身は自分で守るべし。戦場にいるあんたらと同じよ。私も戦場にいるの。

 

 

――――おっけ。

 

 

ということで20人目の山城誕生。

さっそく行動に出たわ。

人気のない山の山頂近くにある自然公園で待ち合わせした。話をつけに行った。お互いに金輪際関わらない。痛み分けで終わらせましょう。


まあ、物分かりがいいなら、ここまでこじれてないわよね。

 

 

 

夜戦、だ。

 

 

戦艦の建造効果だ。腕に覚えがなくても、殴る蹴る、のテクニックの欠片もない打撃で積み上げられる人間の山。

卑怯だぞ、と誰かがいった。男複数で一人の女を囲んでくるやつらがなにを。せめてその手に持ったバットやナイフ捨ててからいいなさいよ。

 

 

死ね、とその場の奴らを叩きのめす。

いつの間にか、人が増えている。公園周りにたくさんのバイクが留まっている。仲間を読んだらしい。それでも構わずに殴り続けた。50人までは数えていたけど、途中で数えるのは止めた。灯りにたかる羽虫のように寄ってくる。

 

 

大人が来た。いかにも、その道の人、という感じの首筋に少し刺青が見えた。空気が凍りついた空気と、周りの有象無象がやけにヘコヘコしている。

親玉だと分かった。

この時の私は凶器で殴打され続けて、損傷は大破に等しかった。

 


敗ける気がしなかったけれど、追加で虫が沸くように30人が増援で来た時は死を意識した。ぐっちゃぐちゃに凌辱されてその辺の山に死体を捨てられるくらいの未来は予想した。

 

 

――――下品ね。



と、乱闘のなかに涼む透き通る撫子の声とともに、5人の男がごろごろと地面を転がった。

 

 

お姉様。

 


――――乙さん、聞こえる? 私達も加勢するから、事後処理はよろしく。

 

 

鉢巻きに刺繍されているのは、飛龍と蒼龍の文字。

 

 

――――山城さんだよね。初めまして、僕は時雨です。大丈夫、かい?

 

 

と、声をかけてきたのは、可愛い男の子だ。後でこいつ女だと知った時は驚いたわね。この時、雰囲気もあって、こいつに惚れかけたからね。

 

 

――――乙中将、いいですよね。私、ああいう連中、吐き気がするほど嫌いなんです。

 

 

――――夕立も戦うっぽい!

 

 


こいつらが、ヤバさ1位と2位だ。

 

夕立とかいうやつは、加減を知らないのか、強い力をただありのままに振るう。相手が泣こうが喚こうが、問答無用だ。

 

 

そして、神通。

ネジが外れている。こいつ、人が苦しむところを狙って、しかもわざと加減して余力をなくしてなぶるような攻撃だ。一撃ではないが、その趣味の悪い暴力の嗜好性に躊躇なかった。「分かります、そこ痛いですよね」とニコニコ笑う顔はもう悪魔よ。

 

 

とまあ、あらかた片付いた頃には空が白んでいた。


 

扶桑お姉様はいった。あなたが建造したって乙中将から連絡来てすぐに目的を悟ったわ。私も、扶桑として建造したからね、と苦笑い。たげど、包容力のある笑みだった。

 

 

その場で自己紹介して、その後はまとめて警察のお世話になるというね。私達はすぐに釈放されたのは、乙中将と元帥のお陰らしい。死傷者こそいなかったものの、重傷者が大量だ。

 

 

私だけは留置所に長く勾留された。軍学校が始まるまでに頭を冷やしておきなさい、とかなんとかいわれたっけ。

 


なんかあの大ゲンカは街を越えて全国区に轟く伝説になってたし。山城は武装した男100人を一人で薙ぎ倒したとかなんとか。



檻から出た時に、ケンカの原因である男3人、とあのヤクザっぽいやつと、50人くらいの暴走族メンバーが、私を迎えた。

 

 

――――すみませんでした!

 

 

綺麗なお辞儀で、全員が頭を下げてそう叫びやがるの。しつこいやつらだったけど、1度終わればスッキリはできる連中らしい。まあ、ガキのいいところなのかもねって今は思うわね。

 

 

信じられないことに、今では電話一本で足にでもなんでもなってくれるのよ。ケンカの後に芽生えたまさかの生涯の友情。ま、今ではみんな中年だけど落ち着いて静かな話も出来るわ。

 

 

檻の中では思ってたのよ。

乙中将の野郎、私をダシにして、悲惨はあの場を越えるであろう戦争にお姉様を巻き込みやがった、と。


 

違うわよね。

 

 

建造して叩きのめすって選択をした、

私が巻き込んだのよ。

 

 

あれが起点なんだから、乙中将には借りがある。


 

鬼ごっこでは勝ったけど、結局海の傷痕は捕まえられなかった。


勝たせてあげますよ、とか大見得切っておいて恥ずかしいったらありゃしない。


だけど、今まだチャンスがある。

 

最後だろう。

山城の戦いは終わる。

 

全員生還だっけ。

あなたの策に従って、

成し遂げてやるわよ。

 

 

――――邪魔。

 


ぽかんとした顔でこっちを見ている海の傷痕の腕を取って投げ飛ばした。

 

 

ズタボロの満身創痍ね。

扶桑お姉様は、まだ戦ってるわね。

最後の言葉は時雨にも伝えないわよ。

必要ないもの、みんなで帰るから。

 

 

だから、

 

不幸だわ、とか。

ちっとも思わない。

 

 

笑っちゃうわね。

蒼龍みたいなこと思うわ。



 

 

 

は?

 

 

 

 

 

 

レイテとかなにそれ美味しいの?

 

 

ふふっ。


 

【4ワ●:E-1:ロスト空間 2】

 

 

難しいことはよく分かんないよ。

今やれることを全力でやるだけ。立ち向かうだけ。周りの景色を見失わないように、それだけに全神経を。

  


そうして生き残ってきたから。

 

 

みんな好き。失いたくない。

だから、負けない。

 

 

それだけ。

特に語る過去なんかもない。

 

 

あ、時雨が雷撃を喰らってる。

 

 

捉えたよ、潜水艦。乙中将の鼻は本当によく利く。西村艦隊を想定された史実砲は、最後の終わりを再現しようとする。その史実砲は撤退しない時雨をも歯車に入れようとしている。時雨は、潜水艦の攻撃で死んだんだよね。

 

 

――――いいね、史実砲は軍艦ではなく、艤装の最後を、深海棲艦と艦娘で再現しようとするから、不安定の欠陥攻撃だ。

 

 

――――作戦は伝えてある。恐らく誰が混じっても終戦ラインまでに沈んだ軍艦を基にされている艤装適性者は終わりに引っ張られる。

 

 

――――かの海戦を再現しているかのように苛烈みたい。周りの艤装にも影響を促す効果があると僕は判断。

 

 

――――ビビッと来たよ。

 

 

本当だ。私は真正面にいるのに、なぜか敵が気付いてない。何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も、夢で見た。

 

 

――――その艤装のモチーフである軍艦の最後は語るまでもないね。

 

 

――――最後を再現するのなら、

 

 

――――君は、苛烈だ。

 

 

――――悪夢。

 


――――全力で、

 

 

――――食い散らかしてきなさい。

 

 

 

 


 

夕立。

 


2

 

 

ドンドンドンドン!

 

 

夕立「5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15隻!」


 

夕立「あはっ」


 

夕立「面白いほどに、敵が倒せるっぽい!」

 

ドンドンドンドン!

 

 

夕立「扶桑さんに時雨! 助けに来たよ! 本官さんとね!」

 

 

扶桑「助かりました……まだ私は撃てます」

 

 

時雨「僕も中破だけど、大分片付いたね……夕立、すごいよ。軍艦夕立を越えた戦果じゃないかな」

 

 

夕立「山城さんが海の傷痕:此方を押さえてくれているっぽい! そろそろザコは片付いたし、次はあいつを沈めればいい?」

 

 

時雨「そうだね……よっと」ガチャン

 

 

扶桑「そういえばその艤装、2つに分けて持てたわね」

 

 

扶桑「勇敢な山城を助けましょうか」

 

 

時雨「気付かれた。経過程想砲で潰しにくるよ。早くしないと」

 

 

扶桑「さあ、砲撃」

 

 

扶桑・時雨・夕立「開始!」ッポイ

 

 

3

 

 

海の傷痕:此方【エラー、です、やめてやめて。ちょっと、実は私の練度はまだ飛龍と戦っただけでまだ2なの……】

 

 

海の傷痕:此方【エラー、です】

 

 

山城「あんたの存在そのものが、ね!!」

 

 

ドオオオン!

 

 

山城「へっ!」

 

 

扶桑「山城、中指を突き立てるのやめなさい。下品、です」


 

海の傷痕:此方【く、う……修復に入らなきゃ……当局にも影響が出ちゃう】


 

ドオオオン!


 

扶桑「そして山城、詰めが甘いです」

 

 

山城「ああ、ごめんなさい。でもさすがは扶桑お姉様、トドメの一撃お見事でした」

 

 

海の傷痕:此方【まだ、まだ……!】

 

 

海の傷痕:此方【とおおおお↑う↓】

 

 

ドンドンドンドン!

 

 

扶桑・山城「あ、艤装が……」

 

 

時雨「壊れた……!」

 


夕立「……これじゃ戦えないっぽい」

 

 

仕官妖精「本官にお任せを。ロスト空間なら艤装を直す資材はほぼ無限であります!」

 

 

山城「夕立の服の中から……」

 


仕官妖精「その目、誤解であります! 振り落とされないように、中にいただけであります! それに本官にはロスト空間内で仕事があるのであります!」


 

海の傷痕:此方(……仕事? 本官さんへの探知システム作動……)

 

 

海の傷痕:此方(……此方のサーバー破壊と、その隙に乗じての……管理者権限の乗っ取り)

 

 

海の傷痕:此方(……やば、この段階でそれはれたらさすがに当局に怒られちゃう!)

 

 

海の傷痕:此方【帰れっ!】

 

 

仕官妖精「あ、管理者権限の、強制退去……」

 

 

【5ワ●:E-1-2】

 

1


海の傷痕:此方(当局、聞こえますかあ……扶桑山城時雨夕立に一杯喰わされちゃった……)



海の傷痕:当局(此方が楽しめているなら何よりといいたいが、此方の経過程想砲は当局よりも遥かに高性能だというのにやられるとは情けない……)

 

 

海の傷痕:此方(ごめん……)

 

 

海の傷痕:当局(どうも風向きが悪いのである。修復はまだかかるのか?)

 

 

海の傷痕:此方(此方がやられたせいで、色々と現海界した当局のこと、ばれているよね……)

 


海の傷痕:当局(……まあ、此方をすでに艤装に宿していて、妖精工作施設でロスト空間と、こちらに顔を出せることは直にバレるであろうよ)

 

 

海の傷痕:当局(それと、史実砲も全艦に必殺の意味合いを持たないことも看破されて、なにより……)


 

海の傷痕:当局(ロスト空間で与えた此方の艤装のダメージが、こちらの当局にそのまま反映されることも、一目で分からんほど馬鹿ではないよ)

 

 

海の傷痕:此方(ごめーん……)

 

 

海の傷痕:此方(想の力で本官さんの想を読んだけど、此方をボコしてロスト空間の支配件を乗っ取りたいみたい)

 

 

海の傷痕:当局(設定したメンテナンス工程を変える気はないのか。優先している壊:バグの設定よりあの仕官妖精のパスポートのほうが脅威である)

 

 

海の傷痕:此方(設定は変えるといっても、現海界した当局の設定は、1度ロスト空間に戻って来ないと、かなーり不具合が出ちゃうし……つまり、当局が死なないと無理。その建造時間は此方一人で戦い切れないかなー)

 

 

海の傷痕:此方(当局、無理そうかな?)

 

 

海の傷痕:当局(まさか。当局の提督は此方であるからな、望む通りに動くよ。なに、此方が使えないほど弱いのは知っている)


 

海の傷痕:此方(修復に専念するよ。乙中将は絶対に妖精工作施設を破壊してこないと思う。電のメンテナンスは全員生還に必要不可欠な行程だからね)



海の傷痕:此方(壊:バグの探知は本当にめんどいね。バグがあるってのは分かるんだけど、正確な位置が全く)

 

 

海の傷痕:当局(加えて、だ。向こうは気づいているであろうよ)



海の傷痕:当局(当局が仕官妖精を完全に探知できないということ)



海の傷痕:此方(だって当局が探知できるようにすると、経過程想砲で倒しちゃうもの)



海の傷痕:此方(仕官妖精は今を生きる人間と同じ。まあ、ロスト空間にいる此方からは本官さんを探知できちゃうけど……)



海の傷痕:此方(この戦いは本官さんと此方の戦いでもあるから。そして当局と本官さんが選別した人達との戦いでもある)



海の傷痕:此方(……だから始末する時はこの戦いに海の傷痕が勝利した後だよ)



海の傷痕:当局(……ま、当局は余裕である。準備はこちらのほうがしているのだから。情報量はこちらのほうが、遥かに多い)

 

 

海の傷痕:当局(予定通りに壊:バグの方向に進路を取っている。恐らく乙中将の情報収集の後、向こうから来るはずだ)

 

 

海の傷痕:当局(……艤装破壊が主だが、間接的に殺すことになっても構わないかな。なに、直接手にはかけんよ)

 

 

海の傷痕:此方(許可します。なめぷはダメだね。みんな、とっても強い!)

 

 

海の傷痕:当局【修復を早くしてくれ】


 

海の傷痕:此方(了解! がんばってね! 武運長久を祈ってるよ!)

 

 

海の傷痕:当局【やれやれ、全く……手がかかるほど可愛いというのも本当であるな】

 

 

海の傷痕:当局【おっと、撤退しないのか?】

 

 

神通「後ろには艤装のない、扶桑さんと山城さん、そして夕立時雨がいます。あなたの不殺は信じてはおりません」

 

 

海の傷痕:当局【後ろには艤装のない、扶桑山城夕立時雨がいるしな。まあ、正解だ。不殺の誓いなぞ、徹底は出来ん】

 

 

海の傷痕:当局【本気と書いてメンテナンス。文字通り最終決戦なのでな。気持ちよく退職したいものである】

 

 

神通「史実砲も経過程想砲も使ってこない。その艤装、海の傷痕:此方のダメージもトレースするんですね」

 

 

神通「乙中将の指揮通り」

 


海の傷痕:当局【狙いはSrot4か?】

 

 

神通「……鉢巻き、締めよう」

 

 

神通「痛いのも、苦しいのも、慣れてます。3000発は、耐えて」

 

 

神通「その倍は、当てます」ギュッ

 

 

海の傷痕:当局【悲しいかな……それは読み違いであるな】

 

 

海の傷痕:当局【警告である。乙中将の艦隊は進路妨害だ】

 


海の傷痕:当局【妖精工作施設+海色の想。30体の深海棲艦登場まで10分である。艦隊を護衛し、全員生還してみせるがよい】

 

 

海の傷痕:当局【嘲嘲:ケラケラ!】

 

 

海の傷痕:当局【可能性を支払いたまえ!】

 

 

【6ワ●:想題:神通】

 

1

 

街のどこかから、歌が聞こえる。

あなたがいたから、機械から発される無機質なラヴソングが歌う愛や平和が街を飛び交う。


 

黙れ。

 

 

希望電波による選択の背中押し、洗脳染みている。無責任に不特定多数に向けて発されるその宗教のシナジー効果に洗脳されないように、耳を塞いだ。


 

被害妄想がすごい。まるで目に映る全てが敵のようにさえ見える。

 


虐げられ続けた日々は、いつしか努力を放棄した。神様に甘えるようになった。いつか悪いことをしたやつには罰が下る。

 

 

そう神様に願い、他力本願を常にして耐えてきた。

 

 

自分でなんとか出来ないことが、この世界には多すぎるよ。

 

 

いつか必ず。

 

光を信じるために、毎日を諦め、弱さを受け入れ、生きてきた。

 

 

私は、

 

雨にも負け続けて、

 

風にも負け続けて、


雪にも夏の暑さにも負けていたら、


丈夫な身体は自然と出来上がり、

 

慾もなくなり、決して怒らず、

 

いつも静かに笑っている、

 


出来損なった人間だ。

 


いつだって死ぬ準備は出来ている。毎日を運が良かったから、命として息をしていると思っている。

 

 

歩いているとふと奇声を発したり、壁があれば意味もなく背中を預けて力を抜いたりした。

 

 

ある日、そんな頭のおかしい人間は、人混みを眺めて唐突に全速力で駆け抜けた。どこか見たこともない場所へ行きたい。だけど、この世界はどこもかしこも線が引かれている。新しい土地なんてないのが悔しい。そんなこと考えてたら、自然と走ってた。今思えばあれが神通へのスタートなのだ。

 

 

真っ直ぐに駆け抜けた。交差点の車道を抜けて、正面の自動扉を潜って、受付にゴール。軍の適性検査施設だ。

 

 

そこの受付の人とお話ししてそのままの勢いで神通に。別に覚悟もなにもよかった。行き当たりばったりのままに、だった。大した理由はない。

 

 

母親はいつもどこかに行っている。家に帰って出迎えてくれるのはテーブルの上にある福沢諭吉だ。親に連絡を入れて、即OKをもらった。そういう家庭だった。


 

適性率10%の挑戦。その適性率で配属まで漕ぎ着けた兵士はいないらしい。構わなかった。やってみたかったのではなく、逃げ出したかったのだ。

 

 

家も学校も街も嫌いだから。

 

 

海とか、街より人が少なそうだし、いつ死んでもいいし、どうせなら国のために死んだほうが生産性がある。

 


建造して艤装適性率10%の不具合を体感した。艤装は身体の一部のように感じるが、手足が思うように動かない。まるで立つことのできない赤ん坊のように上手く行かない。

 

 

でも



手足は痛めていた日のほうが多かった私にとってその不具合は、自分の手足と同じ感覚だった。最初は上手くいかなかったけど、段々とコツは掴めてきた。教官は驚嘆していた。

才能だ、と。

 

 

街では感情を叫ぶだけで迷惑だけど、この戦争の舞台ではどれだけ叫ぼうが、なにをしようが、要は深海棲艦を沈めればいいだけの話だ。



だから、いつ死んでも構わない命で、いつ殺しても構わない深海棲艦を沈めるのは楽しくて仕方がなかった。我が身の傷をいとわず、傷ついた分は倍返しだ。意識がある限り、戦い続ける。


全員生還というのは苦手だ。


今も、それは変わらない。

海の傷痕が相手でも、変わらない。強い深海棲艦という認識しか持ってない。そんな風に戦っていたら、

 


――――もちろん。僕の嗅覚がびびっときた。



――――君は、もっと強くなる。



乙中将に声をかけられた。

この人レベルなら、作戦も緻密で被害も並以上に気にするだろう。エリートは効率かつ完璧を求めてくる。嫌だな、と思った。私の特攻気質的に合わない。死にもの狂いで戦果をもぎ取りにゆくような、そんな提督のもとへ行こうと考えていた。


 

――――でも、私は、



――――クラスのイジメから逃げ出すために艤装をまとって海に抜錨したような、



――――臆病者で、


 

と、断ろうとした。

 

 

――――この戦争で出撃したことあるよね。大したもんだ。学校のイジメに合うより、殺し合いのほうが気楽だなんて。



――――それに臆病者が弱いだなんて誰が決めたんだよ。溜め込むタイプみたいだけど、そういうやつは



――――それを吐き出した時、狂っているくらいに強いし。



――――深海棲艦に対してそんな戦い方をしてる。そしてその集中力と、素質の馬鹿げた根性値は目を見張る。



――――あの大和とだってやりあえる素質だと僕は思うんだよね。


 

なんとなく、だ。この人は私をよく見ている。それが分かった上ならば、問題はないように思えた。ならば、苛烈な戦闘が予期される中将の御旗も悪くないかもしれない、と。

 

 

――――本当に、いいのですね?


 

――――うん。まあ、誰かとは思ったよ。だって姿が全然違うもん。



――――だから、面白い。



――――現行艦娘の中で最低値の



――――艤装適性率10%の適性者。



――――その数値だとかなり不具合が出るから普通は1週間程度で諦めて解体申請するものなんだけどね。


 

――――君みたいなやつは見たことない。君はきっとその艤装を見にまとい、歴史にはない兵士としての機能を発現するだろう。


 

――――そうですか。私は、本当に心で溜め込むので、もしかしたら、


 

――――気が触れてあなたを殺してしまうかもしれません。


 

――――あっはっは、君のそういうところも割と好きだなー。



この人を選んだのは間違いではなかった。今立っているこの戦場が証明している。海の傷痕と10を越える深海棲艦。

 

 

神通「……」ジャキン

 


海の傷痕:当局【もらったのである】



ドン!

 


被弾した。なるほど。史実砲、経過程想砲は使用できずとも、通常の艦娘と同じく砲弾を装填し、撃てる。

 

 

この仕組みは通常の艦娘にも備わっている。装備がないスロット空の状態でも弾さえあれば撃てるのだ。

 

 

海の傷痕の砲撃精度、砲弾タイミング、次弾装填から発射まで、海の傷痕と交戦すればするほど情報が刈り取れる。そのための決死が任務でもある。この取り巻きだけは潰し、海の傷痕の生態を暴く。

 

 

艦載機は後方の2航戦からの援護だ。

 

 

海の傷痕:当局【……む】

 

 

海の傷痕:当局【さすがにしぶといな。そのG君のごとき生命力、見習いたいモノではある……が】

 

 

海の傷痕:当局【タイムアップである】

 

 

艤装が弾け飛ぶ。どうやら経過程想砲が復活したようだ。弾けた鉄屑が身体に突き刺さる。

 

 

「……」



艤装が壊れて、平衡感覚が崩れ始める。重心がブレ始めるこの状態は、砲雷撃の精度を下げる中破判定だ。



なんだか、この状態のほうが攻撃は当てられる気がしてたまらない。


 

「……探知」



私が軍艦神通と適応する10%の部分は、ここだろうか。沈みかけてからも苛烈に。


 

「捉えまし、た……!」

 

 

海の傷痕:当局【狙いは、当局では……】

 

 

海の傷痕:当局【ない……?】

 

 

海の傷痕の取り巻きの姫と鬼の女神現象。その女神現象は撃沈後から、30秒ほど後だ。そして夕立から、軽巡棲姫の女神現場の少し前、電探が深海棲艦反応をキャッチしたと。


 

補給完了、の言葉。


 

女神といった想の力を本体から直に届けていない可能性はある。現海界した当局は、想の探知は決して広くない。この海域にいる戦力図からして深海棲艦は必然的にバラけてゆく。

 

 

例えば、例のステルスタイプの補給艦、とパイプ役のナニカ。

 

 

なら、海の傷痕から一定距離を離れると、そのナニカを介さないと、想の力を流せない。電波外になったから、直接ケーブルを繋ぐ、ような。


 

神通「ステルス、ですね。確かに反応、しました」

 

 

神通「そこ、です」

 

ドオン!


補給艦「…………」

 


海の傷痕:当局【あー……2航戦の、艦載機の狙いは……】

 

 

海の傷痕:当局【後方の軽巡棲姫か】

 

 

ドオオオン

 


軽巡棲姫「……、……」

 

バチャン

 

神通「女神現象、なし、です」

 


飛龍・蒼龍「よっしゃあ!」

 

 

その修復作業の秒数的に、女神現象ですらなかったのかもしれない。こちら側でいう、速水さんの洋上補給と、明石君の海上修理技能の重ね技の可能性も出てきた。

 

 

いずれにしろ、あのステルスタイプの艦を介さないと、あの中距離の軽巡棲姫に直接的に想の力を流し込めない。

 

 

海の傷痕:当局【……E-1突破されたか。よくがんばったな。乙に留まらず、甲の素質もある艦隊である】

 

 

あやすような声音の意味はすぐに理解した。周囲に深海棲艦反応をキャッチした。30体。妖精工作施設と海色の想の組み合わせ技の反転建造が完了したようだ。

 

 

海の傷痕:当局【相手は姫と鬼、eliteの群れである。ただの深海棲艦なので】

 


海の傷痕:当局【もっとガンバらないと全滅するぞ】


 

「……」

 


――――これあげるから鉢巻き絞めなよ。うちの流儀だ。


 

――――これから終わりの海まで。



――――いつかみんなで暁の水平線をともに眺めようね。


 

――――よろしく、



――――神通。



終わりの海が、今ここだ。

 

 

海の傷痕:当局【ま、2航戦も貴女もその艤装は破壊しておこうか】

 

 

海の傷痕:当局【がんばりたまえ】

 

 

神通の、

 

 

 

終わりの海は、


 

 

今、

 

 

 

 

ここだ。

 

 

神通「……」ギュッ



ドンドンドン!



海の傷痕:当局【フハッ、頑なに当局を無視して、そこらの姫を沈めにかかるか】




渡された任務は、


苦手な全員生還を成し遂げること。

 

 

報いましょう。

 

命に代えても。

 

 

 

今日はあの終わりの夢と違って、

 

太陽が、眩しい。

 


2

 


蒼龍「く、経過程想艤装も破壊されて」


 

扶桑「く、艤装もなくて、海にぷかぷか浮いている状態で、あの深海棲艦の群れは」

 

 

山城「さすがにヤバいわね……」

 

 

飛龍「蒼龍、扶桑さん達をお願い、救助艦が来るから早く待避して……!」

 

 

時雨「飛龍さん、艦載機飛ばせないのに、突っ込むのかい……?」


 

夕立「なにか策があるっぽい!」

 

 

乙中将「おいって! ボサッとしてるんじゃない!」

 


乙中将「蒼龍、まだ海上を進めるのなら、飛龍に続いて!」

 

 

乙中将「見えるだろ! 神通、艤装もないのに、深海棲艦の身体をつかんで、不格好に戦ってる!」

 

 

乙中将「決死で、時間を稼いでくれてるんだよ!」

 

 

乙中将「扶桑山城夕立時雨は予定通りの地点に1秒でも早く辿り着くために泳いで! 僕も船でそっちに向かってる! 乗員総出で救援するから!」

 

 

時雨「了解!」

 

 

扶桑「ねえ、山城」



山城「神通のあの戦い方は、私達にも出来ますねけど、その必要はなさそうです」

 

 

夕立「あ、救援来たっぽい!」

 

 

白露「間に合った! 良かった!」


 

山城「遅いわよ」

 

 

白露「前進全速だよ! 海の傷痕と交戦して艤装を破壊されるのは不味いからタイミングが遅れたの! 名前を挙げられていない私は見逃してくれるみたいだね。戻ってくる気配はないって判断してからの出撃だし!」

 

 

白露「それじゃ前の3人を助けてくるからそのまま泳いで艦のほうに!」

 

 

時雨「……白露、お願い」

 

 

夕立「飛龍さんと蒼龍さんと神通さんを生還させて欲しいっぽい」

 

 

夕立「いや、欲しい!」

 

 

白露「あいあいさ! 白露型のネームシップの名に誓うよ!」


 

白露「必ず生還させるから!」

 

 

3

 

 

飛龍「神通が軽くて、助かった……」

 

 

神通「色々欠損してますからね」

 

 

飛龍「なのに普通にしゃべってる上、欠損した顔面で笑わないでよ! めちゃホラーだからさ!」

 

 

白露「蒼龍さん、飛龍さんの手を離さないでねー!そのまま早く撤退して!」

 

 

蒼龍「白露、姫と鬼混じりの深海棲艦30体、しかも昼戦だよ。無茶はしないでね?」

 

 

ドオオン!

 

 

白露「あれ、深海棲艦が勝手に沈んだ?」

 

 

飛龍「違う、ね。瑞雲が、飛んでる」

 

 

日向「聞こえるかー。元気一番娘。瑞雲は見えただろ? すまん、駆けつけるのちと遅くなった。お前と同じ理由でタイミングを待ってたからな」

 

 

日向「偵察機飛ばして長射程から撃ち込んだんだ。全く、偵察に攻撃、やることが色々ある時の瑞雲の頼もしさと来たら……」

 

 

白露「それは分かったから!」


 

日向「状況は把握している。お前はその3人の護衛に回ってくれ」

 

 

日向「深海棲艦30体だろ。私と1航戦で片付ける」

 

 

白露「日向さんっ! 了解したよ!」

 

 

4

 


赤城「はいはーい。救助艦まで艦載機で護衛させるので、そのまま泳いあの艦までがんばってくださいね」

 

 

時雨「助かります……白露のほうには加賀さんと日向さんも駆けつけてくれたし、希望は繋がりました」ホッ


 

赤城「油断は出来ません。姫と鬼含め30の数はいまだ絶望よりなので安堵感は乙中将と再会するまでしまっておいてくださいね」

 

 

扶桑「その通りですね、山城、少し遅いわ。あなた泳ぐの下手なままなのね」

 

 

山城「すみません……」

 

 

夕立「でも赤城さんがいると、安心してしまうっぽい」

 

 

時雨「そのいつもの笑顔で安心するよね」

 

 

赤城「あらあら……頼りにされているみたいですね。ならば期待に応えないと」

 

 

赤城「1航戦の誇り、ですー」

 

 

赤城「艦載機、発艦」

 

 

【7ワ●:殲滅:メンテナンス】

 


乙中将「元帥、僕らからは以上です。情報の更新で作戦変更があるのなら今の内ですね。丙さんところは支援してもらっていますし、甲さんを切ればいよいよ、戦力が限られてきますよね」


 

元帥「いや、甲はまだ切らん。どうも、嫌な予感がする。1/5作戦の例もある。ロスト空間に深海棲艦建造して待機させていた等々で出来るだけ」

 

 

元帥「潰しにかかるか。妖精工作施設とロスト空間で、闇の戦力で海の傷痕当局此方と交戦だ」

 

 

元帥「わしは武蔵達と潜水艦の第1艦隊で現存取り巻きを殲滅に入るわ。通商破壊作戦だなこれ」

 

 

元帥「准将、予定よりちと早いが、戦場が分かれるな。海の傷痕との決戦地は鎮守府(闇)正面海域か。ここから対海の傷痕指揮を移す。任せるなー」

 

 

提督「了解しました」

 

 

元帥「おう。それじゃわしはさっさと取り巻きは沈めるわ」

 

 

乙中将「……青ちゃん、どう?」

 

 

提督「偵察機の映像も見せてもらいましたし、乙中将の艦隊からの証言もまとめまして、少し自分の艦隊と交戦させます」

 

 

提督「危惧していた経過程想砲の攻撃範囲は想像以上に短距離です。現海界した当局の制限、でしょうね」

 

 

提督「お任せを。乙中将の活躍で少し早い段階でのメンテナンスとなりますが」

 

 

乙中将「もぎ取った情報からしてロスト空間の此方から潰したほうがいいというのが結論だけど」

 

 

提督「ロスト空間への立ち入りがシャットアウトされているみたいで。こちらに来る当局と交戦せざるを得ませんね。艤装を破壊したら此方のほうも、ですかね。すみません、まだ此方を潰しにかかるのは当たって砕けろ、の策放棄の特攻となるレベルです」



乙中将「Srot4も謎だしね」



提督「経過程想砲は乙中将の情報から『有効範囲内でも距離が遠ければ遠いほど、届くまでの時間が長い』そして『神通さんの証言からして至近距離でも想の着弾までに2秒はかかる』と」

 

 

提督「当局と交戦します」

 

 

提督「1つ、ここをもう少し探って想定にズレがなければ、交戦予定の当局の妖精工作施設は必ず1度は潰します」

 


提督「その2、当局の艤装も此方のほうとリンクしている可能性があります。それを当局の言動から確かめるため」

 

 

提督「それと大きな不安要素である未知のSrot4も引きずり出せれば、と」

 

 

乙中将「うん、了解。それじゃ僕は現場の指揮に戻るから」

 

 

提督「ええ、それでは」

 

 

提督「はっつんさん、聞こえますか? 第2艦隊は待機です。本官さんが戻ってくるまでもう少しお待ちを」

 

 

初霜「了解です!」

 

 

提督「瑞鳳さん、空母護衛は不知火さん」

 

 

提督「榛名さん、その護衛は陽炎さん」

 

 

提督「わるさめさんとぷらずまさんは二人で隊列を」

 

 

提督「以上の6名で海の傷痕:当局との交戦に入ります。予定交戦海域は鎮守府(闇)の通常哨戒範囲よりも先です。進路も指定し、海の傷痕:当局の進路も制限、予定通りの配置で囲みます」

 

 

提督「作戦は」

 

 

提督「――――、――――」

 


提督「です」

 

 

瑞鳳・陽炎「了解!」

 

 

榛名・不知火「了解しました!」

 

 

ぷらずま「……了解なのです」

 

 

わるさめ「ぷらずまー、私のためにしっかりとやるんだゾ☆」

 

 

ぷらずま「お前こそしっかりやるのです。しくじった挙げ句にこの戦い終わってまだ生きてたら私が制裁するのです」

 

 

わるさめ「あいあい」

 

 

提督「わるさめさん、聞こえますね?」

 

 

わるさめ「うん? これわるさめちゃんだけの通信?」

 

 

提督「はい。――――、――――」

 

 

わるさめ「ほうほうほーう」

 

 

わるさめ「任せろ。おねんねしている響の穴は私が埋めてやんよー!」

 

 

わるさめ「わるさめちゃんは水筒に入れてきた綾鷹飲みながらゆっくり進軍していまーす!」

 

 

提督「了解です。狙いは当局の妖精工作施設を潰すことです。その結果の情報が揃えば、ロスト空間にも出撃します」

 

 

提督「偵察機からこちらでも確認はしますが、異常事態、指定海域、指定配置場所到着の際は一報をくださいね」

 

 

瑞鳳・榛名・ぷらずま「了解!」ナノデス

 


………………


………………


………………


 

提督「ふう。もう夕方ですか。明石さん、響さんの容態はどうです?」

 

 

明石さん「まだ起きませんね。改造によるものだかららこの子に後遺症残したくないなら無理に起こすな、とお医者様から。隣の部屋で、鹿島ちゃん暁ちゃん雷ちゃんがまだ看病しています」

 

 

提督「そうですか。まあ、その大きな穴は埋められそうです」

 

 

明石「おろ? 聞いてもいいですか?」

 

 

提督「ええ。その鹿島さんが作成してくれた個々の技術資料です。わるさめさんの項目、『Trance』の上から45行目の辺りに目を通していただければ」

 


明石さん「……、……」

 

 

明石さん「ええと……うん?」

 


提督「あ、先程の火蓋を切ってくれた乙中将からなのですが、『有効範囲内でも距離が遠ければ遠いほど、届くまでの時間が長い』そして『神通さんの証言からして至近距離でも想の着弾までに2秒程度はかかる』みたいで」

 

 

提督「海の傷痕は大本営にてぷらずまさんと交戦し、『壊:バグ』 の探知は至近距離かつ艤装をアライズさせた瞬間ならば、可能だと」

 

 

提督「ほら、甲丙連合軍との演習の時に鹿島さんが、わるさめさんのトランス速度について、才能がある、と」

 

 

明石さん「あー、確かにそんなことをいっていましたね。背びれとか形成できるのもセンスゆえで、電ちゃんには出来ない芸当と」

 

 

提督「そこらの詳細です。わるさめさんの『トランスはアライズ&ロストともに1秒もかからない』のです」

 

 

提督「砲撃精度は並ですが、これトランスタイプのマイナスも踏まえると、わるさめさんの素質はかなりのもんですね。砲撃行動の速度の面では阿武隈さんよりも速く、狙いを定めて撃つまでは卯月さんと同じく1秒程度」

 

 

明石さん「あの子はノリとテンションで生きているから躊躇いとか迷いがないんですかね……」

 

 

提督「春雨さん時代のデータと比較した感じ、関係してそうですね……」

 

 

提督「ともかく『有効範囲内でも距離が遠ければ遠いほど、届くまでの時間が長い』そして『神通さんの証言からして至近距離でも想の着弾までに2秒程度はかかる』の経過程想砲は当たりません。春雨艤装を出さなければ史実砲も無効化」

 

 

提督「海の傷痕に対して響さんは艤装による特攻艦説が濃厚ですが、わるさめさんは素質的に特攻艦となり得るってことです」

 

 

明石さん「……そうですか」

 

 

提督「みんなのこと心配ですか?」

 

 

明石さん「まさか。信じてます。それと提督さんのお手伝いくらいしか出来ることはありませんから、そこに決死です。明石さん、前日に睡眠は取りまして体調も万全です」

 

 

提督「明石さんって、なんか思うところがある時って困ったように笑いますよね。卯月艤装のメンテナンスに来た時もそんな顔して、明石君と秋月さんのこといっていましたし」

 

 

明石さん「む、そうなのですか。まさか女遊びしてなにか成長を」

 

 

提督「そんなんで成長したら苦労しませんよ……女性というか、いまだに人間の嗜好性は謎が多いです」

 

 

提督「ですけど」

 

 

提督「この鎮守府のみんなのことなら、少しくらいは分かったつもりです」

 

 

明石さん「あはは、なるほどです」

 

 

提督「あ、それと明石さん、機を見計らって抜錨させますので、待機しといてください」

 

 

明石さん「へ? 艤装は弟子が……」

 

 

提督「ご安心を。協力していただいている研究部のほうから艤装の仕組みを解明してくれて情報を頂戴しています。妖精さんが新しい艤装を作るシステムも、です」

 

 

提督「艤装を還せばいいんですよ。海の傷痕:此方に想が還ればまた建造可能。要はロストさせとけばいいみたいです。宿る想自体はデータ的なもので、本体と繋がる妖精さんのコピー&ペーストみたいなもんです」

 

 

提督「……決戦が始まってからは無理になってるみたいですが」

 

 

提督「まあ、本官さんの性能でも1日かかりましたね。気付いてからの大量生産は不可能でした」

 

 

提督「まあ、新品の明石艤装はなんとかこさえてあります」

 

 

明石さん「!」

 

 

提督「艦艇修理施設、いえ、明石君の海上修理施設装備があります。妖精可視の才、意思疏通のレベルも高く明石さんにも出来るはずです」

 

 

明石さん「出来ることは出来ますが、弟子みたいに速くないですからね!」

 


提督「そこをなんとかがんばってください。よろしくお願いいたします」


 

明石さん「こちらこそよろしくお願いします!」ビシッ

 


2

 


瑞鳳「提督には連絡を入れましたっと。それじゃっ」

 

 

瑞鳳「第1攻撃隊、発艦!」

 

 

陽炎「それにしても、上手く飛ばすわね。妖精可視の才なくても、あんな上手に飛ばせるのかあ」

 

 

瑞鳳「確かに妖精可視の才は飛躍的に技の幅が増えるかな。でも、ないものねだりしても仕方ないから」

 

 

瑞鳳「やれることを、やるために、ずっと訓練してきたんだよ」

 

 

陽炎「そういえば瑞鳳さんって、瑞鶴さんの訓練とか私達もそうだけど、演習場でよく見かけたわね」

 

 

瑞鳳「まあ、龍驤さんも瑞鶴さんも、才能あふれてるから。陰に隠れるのはいいけど、提督の期待には応えなきゃね。訓練は割と……」

 

 

陽炎「そういえば瑞鳳さんが卵焼き、作ってるところあまり見かけない」

 

 

瑞鳳「普通に作れるけど……なんか私の代名詞みたいな感じでそれよくいわれるよ……」

 

 

陽炎「!」

 

 

陽炎「とうっ」

 

 

ドン!

 


陽炎「あれは野良のホ級とはぐれかな。あの程度は私が片付けてくるから、瑞鳳さんはなにも気にせずに集中してくれて構わないわ」

 

 

瑞鳳「うん、ありがとう」

 

 

瑞鳳「第2、攻撃隊発艦!」

 

 

………………

 

………………

 

………………

 

 

提督「目的は達成しました。遂行中の作戦に変更はありません」

 

 

提督「瑞鳳さん陽炎さん、次は周囲に気を付け、引き続き長の射程を保ちながら、つかず離れず海の傷痕に攻撃を」

 

 

提督「陽炎さんはそのまま火の粉払いをお願いします。万が一、海の傷痕に狙いをつけられたら全力で撤退です」

 

 

瑞鳳・陽炎「了解!」





 

 


 

 


榛名「榛名は主に背中の辺りから、力を感じます!」

 

 

不知火「榛名さん、不知火もです」

 

 

榛名「背中に入れてもらったおそろいの鎮守府(闇)の刺繍のお陰で! この広大な海でも皆さんと繋がっている気がして、力を感じます!」

 

 

不知火「ええ、これで」

 

 

不知火「最後にしましょう」

 

 

榛名「あっ、水上偵察機が海の傷痕を発見しました! 電さんが視界に入る位置でトランス現象を使っているお陰ですね! 提督の読み通りにそちらを最優先している模様です!」

 

 

榛名「主砲、砲撃開始です!」

 

 

3

 

 

海の傷痕:当局【長射程からの砲撃、やれやれ経過程想砲のギミックは看破されたか。霧をかけようとしたものの】


 

ぷらずま「●ワ●」

 

 

海の傷痕:当局【あなたのせいで行動が制限されてしまう。全く……メンテナンスverはこれだから】

 

 

ぷらずま「『殲滅:メンテナンス』を最優先ですか。キスカからもう5年にもなりますが、無能なままなのです?」

 

 

海の傷痕:当局【そうなのだろうよ。自分で有能というほど自信家ではない。この戦争ゲームの運営はよくやれているとは思っていたが……やれやれ】

 

 

海の傷痕:当局【嘲嘲:ケラケラ】

 

 

海の傷痕:当局【この戦争ゲームの廃課金がいっても、ツンデレとしか思えないのである】

 

 

ぷらずま「元の身体よりも、お前を沈めるほうを優先しているので……」

 

 

ぷらずま「やりたければ、やってみろなのです。バグからウィルスまで消化してシステム破壊してやります」

 

 

海の傷痕:当局【腹が立つ物言いである】

 

 

ぷらずま「お互い様なのです……」

 


海の傷痕:当局【貴女のせいでどれだけの面倒があったことか。功績も計り知れないがな。フレデリカとまるで同じだ。廃課金のなかではフレデリカの次に嫌いである】

 

 

ぷらずま「よくも、ぬけぬけと」

 

 

ぷらずま「お前のせいで、この海は」

 

 

ぷらずま「どれだけの血と涙が混ざったと思っているのですか」

 

 

ぷらずま「お前のその血肉を海に捧げて、散ったお友達の魂を清め鎮めます」

 

 

海の傷痕:当局【戯けが、今更論議する価値もないわ】 

 

 

海の傷痕:当局【申し訳ないが、貴女では当局に逆立ちしても勝てんよ】

 


海の傷痕:当局【『殲滅:メンテナンス』の後、貴女の廃課金になった思い遣りの想を根こそぎ回収させてもらう】

 

 

海の傷痕:当局【そして思い知れ】

 

 

海の傷痕:当局【その殺戮の輪廻の痛みこそが、当局と貴女を繋ぐ想……】

 

 

海の傷痕:当局【すなわち】

 

 

海の傷痕:当局【海の傷痕である!】

 

 

ぷらずま・海の傷痕「トランス:Trance!」



4

 

ドオン!

 

 

海の傷痕:当局【嘲嘲、馬鹿の1つ覚えみたいに突撃であるな】


 

ぷらずま「トランス……!」

 

 

海の傷痕:当局【経過程想砲】

 

 

ドオン!

 

 

ぷらずま「トランス、解除……」

 

 

海の傷痕:当局【啖呵を切っておきながら情けない。艤装をロストさせて再生のために、逃げ回るのか?】

 

 

ぷらずま「く、う……」

 

 

海の傷痕:当局【おっと、戦艦の砲撃か】

 

 

ドオン!

 


ぷらずま「司令官さん」

 

 

ぷらずま「空砲対処、どいつもこいつも砲撃に砲撃当てるだなんて神業を普通にしやがるのです……おまけに」

 

 

ぷらずま「右手の砲撃、空砲ですけ。艦載機も撃ち落とし、左手の経過程想砲も使って、しかもあれは砲口を向けてはいますが、狙いを定める必要がないみたいです」

 

 

提督「了解。多少の溜飲は下がりましたか?」

 

 

ぷらずま「一撃も当てられません。ですが、それでも私は……」

 

 

提督「ぷらずまさん、任務はお分かりですね? 力にすがらないでください。あなたは一人ではないです。どうにかなる策を組みました」

 

 

ぷらずま(……なにがあっても)

 

 

ぷらずま(信じて進め)

 

 

海の傷痕:当局【骨がないな。捕まえた】

 

 

ぷらずま「了解、なのです」

 


海の傷痕:当局【のである】

 

 

海の傷痕:当局【Trance:Srot3:妖精工作施設!】

 

 

海の傷痕:当局【壊:バグのためにプログラムした『殲滅:メンテナンス』、実行である!】

 

 

ぷらずま(艤装から、工具を持った大きな黒い手……?)

 


ぷらずま「っ痛――――!」

 

 

ぷらずま(……あの手に触れた途端、強制オール、トラ、ンス……)



海の傷痕:当局【なに、すぐに済む。通常の解体は『カーンカーンカーンカーン』だが、この解体は『カーンカーンカーンカーンカーンカーンカーン』程度である。優秀であろう?】

 

 

ぷらずま「……、……」

 

 

カーンカーンカーンカーン……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――ナイス、ぷらずま。

 

 


――――ザッ!

 

海の傷痕:当局【想探知……この反応、】

 

 

 

 

 

 

 

わるさめ「パ――――ン!」

 

 

 

【8ワ●:わるさめちゃん、参る!】

 

 

ガ!!

 

ブ!

 

リ!!

 

と噛み付いた。

 

 

一跳ね、一噛みで、海の傷痕の右腕の肘から前を、噛み千切った。

 


それでもなお、海の傷痕は『殲滅:メンテナンス』を重視して、そちらを優先している。そこらは融通が利かないのか、それとも思考故なのかは知らない。司令官の読み通りだ。

 

 

妖精工作施設によって、解体される危険性、というリスクはある。どのように解体されるのか、伝達のやり取りをしている暇はなく、その時は現場の判断に任せる、だ。

 

 

なんとなく、行ける気がした。

あの中二臭い黒腕が2本あれば止めておいたけど、私の読み通り1度に解体出来るのは一人までのようだ。

 

 

カーン、カーン、カーン。

 

音が途切れた。



電「……う、」

 

 

「ボサっとしてんじゃねっス……」

 

 

「電に戻ったのなら、とりあえずぶち殺されるだけの対象だから逃げなよ」

 

 

電「……!」クルッ

 

 

海の傷痕【Tra、】

 

ドオン!

 

「史実砲はさせない。厄介な経過程想砲は潰したから、今は弱体化のジャックポットタイムだろー?」

 

 

海の傷痕【……】

 

 

海の傷痕【●ε●】


 

底が知れないのは承知の上だ。乙中将艦隊にもしてやられ、受け身ばかりで情報も解析され続けてなお、

 

 

 

こいつは、

 


表情から、余裕の笑みを消さない。


 

「●ω●」

 

 

「ねえ、お前も死んだらあの世に行くのかな?」

 

 

海の傷痕【海の傷痕の存在で死の定義は塗り変わったが、どうなのであろうな。死んでからも楽しみがあるとは、本当に世界は面白いのである】


 

――――死んだらさ、

 

 

 

 

 

 

 

 

――――お母さんに伝えて。

 

 

 

 

――――あなたの娘は、平和な海を世界に届けたよって。

 

 

海の傷痕【春雨艤装から、貴女の母親のことは間接的に知っている。貴女は素晴らしい母親の愛を受けたな】

 

 

海の傷痕【だが、優しいのか馬鹿なのか】

 

 

海の傷痕【嘲嘲!】

 


 

海の傷痕【当局が天国に行けると?】

 

 

 

そういえばそうだな。馬鹿のほうだ。

 

 

 

終わりは近い。明日じゃない。今日この時だ。こいつを倒して深海棲艦のいない海が手に入る。

 

 

終わらないと謳われた戦争が、

 

もはや世界の一部として、自然だと、

受け入れられつつあった海の戦いが、

ようやく終わる。

 

 

終わる。

 

 

お母さんと一緒に見たかったな。

 

スイキちゃんの気持ちも分かるよ。

 

これが罰なんだろうな。


 

「遥か永久の時を生きてきた気がするほど、色々あったけど、ここまで」

 

 

「来た」


 

 

 

――――Answerである。


 

――――世界に平和な海を届けたよって、

 

 

――――間に合わなくてごめんなさい、と、

 

 

――――貴女が死んだ時に、

 

 

――――自分で伝えろ。

 

 

 

ああ、なるほどね。

 

 

生きろ、と言われているのと同じだ。


 

海の傷痕:当局【そして、平手をもらった後に大泣きして抱き締めてもらえ】


 

海の傷痕:当局【この親不孝者が!】

 

 

海の傷痕:当局【嘲嘲!】

 

 

思ったよりかは人間っぽいな。


 

 

でも、

 

 

 

 

 

 

牙は鈍らないよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

トランス。

 

 

2

 


海の傷痕:当局【近付けん……】

 


海の傷痕:当局(……それに思わぬ性能だな。トランス現象のコントロールが、上手い。バグの才能など、よくもまあ)

 

 

海の傷痕:当局(さきほどの艦載機はなるほど、経過程想砲のギミック確認……として)

 

 

海の傷痕:当局(……あの動き)

 

 

海の傷痕:当局(完全に解析されたか)

 

 

海の傷痕:当局(史実砲、経過程想砲ともに、春雨には通用しない。まさか別府以外の特攻艦を用意するとは)

 

 

海の傷痕:当局【オープンザドア君め、楽しませてくれるな、嘲嘲!】


 

海の傷痕:当局【砲雷撃戦だ。正々堂々とこの試練、乗り越えてみせよう】

 


ドンドン!

 

 

わるさめ「痛っつ、その空砲でも威力はネッちゃん並の精度は卯月か……」

 

 

ガガガガ、

 

 

ドオオン!

 

 

わるさめ「うし、ハルハルにづほ、ナイス援護!」ジャキン

 


わるさめ「くたばれ」

 

ドン!

 

海の傷痕:当局【痛いのである】

 

 

海の傷痕:当局【●ε●】

 

 

わるさめ(痛いって顔はしてねっス……痩せ我慢にも見えねー……)

 

 

わるさめ(耐久値と装甲はいくつだ?)

 

 

わるさめ(確かガチのチューキちゃんが……設定的にはMax999はあるか……?)

 

 

わるさめ(神通とかにも多少はやられてんだから、削れてはいるはずだけど)

 

 

わるさめ(全ての基本性能を最大値と見て、トランスタイプの再生含め倒しても、妖精工作施設の女神効果発動は洒落にならないよね)

 

 

わるさめ(潰した装備もいつ復活するか分かったもんじゃねっス……)

 

 

わるさめ(砲雷撃戦じゃ再生時間を与えてるようなもんか。泣き所、妖精工作施設と肉体の急所を噛み千切る)

 

 

わるさめ(これが安牌かな)

 

 

わるさめ(潜ろ。トランス)

 

 

3

 

 

海の傷痕:当局【……、……】

 


海の傷痕:当局【……?】

 

 

海の傷痕:当局(待て待て。潜り続けるために深海棲艦艤装を展開していれば、この距離ならざっぱな探知は可能であるはずなのだが……)

 

 

海の傷痕:当局(探知できない一部分のトランスか……?)

 

 

海の傷痕:当局(……、……探知)

 

 

海の傷痕:当局【そこか】

 

ドン!

 

海の傷痕:当局(外れ。そして背びれか)

 

 

海の傷痕:当局【なるほど……】

 

 

海の傷痕:当局【艤装が肉体に侵食する壊-現象ギミックの……】

 

 

海の傷痕:当局【コントロールが上手いのか。肉体と艤装の形をある程度、操作できると。全く……本来ならば、コントロールできるものではないのだぞ】

 

 

海の傷痕:当局(しかし、少し驚いたな。トランス速度も踏まえると、史実砲と経過程想砲、両方が効果的とはいえん)

 

 

海の傷痕:当局(……相性が悪い)

 

 

わるさめ「ザッ! パアアアアン!」

 

 

海の傷痕:当局【後ろか!】クルッ

 

 

ドオオン!

 

 

わるさめ「効かねっス……!」

 

 

海の傷痕:当局【……】



海の傷痕:当局【先程の倍は体躯があるな】

 

 

わるさめ「頭から艤装まで丸ごと食い千切ってやら!」

 

 

わるさめ「ガブリ!」

 

 

海の傷痕:当局【●∀●】

 

 

海の傷痕:当局【Trance】

 

 

わるさめ「その妖精工作施設の黒腕……!」

 

 

海の傷痕:当局【本来7種メンテナンス用だが、当局の3本目の腕としても。大和型のパワーなので捕まれば終わり】

 

 

わるさめ「ロスト、できない……」

 

 

海の傷痕:当局【当たり前だ。電を見ていただろう。解体工程としてまずは艤装をロスト空間から持ち出してもらう。つまり、強制Tranceの効果がある】

 

 

海の傷痕:当局【5種の春雨は深海妖精で十分であるが……】

 


海の傷痕:当局【貴女さえ解体すれば当局の縛りはほぼ解ける。お互いのためにじっとしているといい】

 

 

わるさめ「なら、これでどうだ!」

 

 

わるさめ「全、接、射!」

 


海の傷痕:当局【っ!】

 

 

海の傷痕:当局【……】

 

 

わるさめ「なるほど、その黒腕の装甲耐久は、これで破壊できるんだねー」

 

 

わるさめ「死、ね」

 


わるさめ「ガブ、リ」

 


海の傷痕:当局【……はあ】

 

 

海の傷痕:当局【しっかし……】

 

 

わるさめ「よっしゃ、妖精工作施設、破壊した!」ヒャッハー

 

 

海の傷痕:当局【……最初期に比べると、ずいぶんと兵士の想の質が落ちたな】

 

 

わるさめ「……あ?」

 

 

海の傷痕:当局【尻尾を巻くのである】クルッ

 

 

3

 

 

わるさめ「以上、追わなくていいの?」

 

 

提督「瑞鳳さん不知火さんと榛名さん陽炎さんが偵察機で追ってますし、深追いはしなくていいです」

 

 

提督「恐らく罠かと。元帥艦隊ががんばってくれます。そちらからの報告で自分達は攻勢に出ます。潰しにかかるのでここからが本番です」

 

 

電「……すみません、気になったのですが、『最初期に比べると、ずいぶんと兵士の想の質が落ちたな』という発言にはどんな意味があるのでしょう?」

 

 

提督「気にする必要はないですが、今は対深海棲艦海軍もまともになったということでしょう。電さんの身体の件は世間で騒がれていましたが、最初期はそれを遥かに越える闇の歴史ですから……」

 

 

電「……」

 

 

わるさめ「わるさめちゃん、よく知らないんだけど、どんな感じだったの?」

 

 

提督「始まりの艤装は五種類です。そこから艤装の数はすぐに増えまして、海外国にも、です。ですが深海棲艦の数もそれ以上に増加しました。そして深海棲艦は人間に攻撃的、しかも情報が今より遥かに少なく、戦時後間もない」

 

 

提督「適性者は駆逐艦、小学生の女の子ですね。今とは違う適性の調査で適性者は集められまして」

 

 

提督「強制です。形振り構っていられない状況なので、子供を本人やご家族の意思とは関係なく、集められたようです」

 

 

電「……教科書では確か成功した深海棲艦の鹵獲に成功して、適性者の協力を経て、艤装の調査が進められたんですよね?」



提督「そう、ですね。でも真に受けちゃダメです。我々は我々のために真実すらも歪められていくものです。練度1の状態、しかもろくな訓練も積んでいなく。中には砲の撃ち方を口頭で伝えられて即海に、というケースもあったみたいです」



提督「……まあ、過去と比較して、の海の傷痕の生温いでしょう」

 

 

電「……なのに、海の傷痕はこれを戦争ゲーム、というのですね」

 

 

提督「そこに関しては自分も恥じ入ります。子供とはいえ、自分もこの戦争を初めて知った時、良くできたゲームみたいっていう感想でしたからね……」

 

 

わるさめ「そこは置いといても、そんな終わらない戦争は、終わりがすぐそこ。司令官はもっと自分に自信を持っていいよ。司令官の功績は確かにあるしさ」

 

 

提督「英雄がいるのならば、本官さんでしょう。彼が海の傷痕:此方を産んだのですから、戦争は終わらずとも、死の運命の輪を狭めたのです。最初期から抜け出したのは彼の功績によるところが大きいです」

 

 

提督「最近まで、彼の功績に誰も気づけなかったわけですが」

 

 

提督「……海の傷痕はその頃の戦時の人間を母として産まれたのですから、本官さんのいう通り、あの頃の戦争は終わってないのでしょうね」

 

 

わるさめ「これで終わるだろー。司令官、待機でいいの?」

 

 

提督「そう、ですね」


 

翔鶴「提督、報告です。白露さんが本官さんを届けてくれました」

 

 

提督「了解です。では電さん、電艤装で本官さんに建造して電艤装を身にまとってください」

 

 

電「……了解なのです」

 

 

電「響お姉ちゃんは?」

 

 

提督「まだ目覚めません」

 

 

電「起きないと、後悔すごそうなのです……」

 

 

提督「妖精工作施設、史実砲、経過程想砲は潰しました。再生はまだですね。なので、直の攻勢で海の傷痕はなにか切ってくるでしょう」

 

 

提督「恐らく……血みどろなので」

 

 

提督「終わりよければ全てよし、です。目覚めた時にそう思わせてあげる気概を持って臨んでください」

 

 

電「……はい、なのです」

 


【9ワ●:偉大なる寄り道】

 

 

1


 

提督「明石君、秋月さん」

 

 

明石「おう」

 

 

秋月「……はい」

 

 

提督「秋月さん、元気ないですね」

 

 

明石「さっきの話を聞いて少しへこんでるみたいだけど、命令くれりゃすぐにいつもみたいに立ち直るよ」

 

 

秋月「大丈夫です。ただその頃と自分の不幸を比べてしまって。私の不幸は大したことないのに、いちいち悩んでしまっていたんだな、って」


 

提督「……そんなことありませんよ」

 

 

提督「あなたが受ける心の痛みは彼らよりマシだとか、はかれることではないですし、誰かと比べるもんでもないです」

 

 

秋月「……はい」

 

 

提督「ただ過去には感謝はしないとですね。今ある全て、自由も権利も、過去に生きた皆さんが当たり前にしてくれたものです」

 

 

提督「もちろんこの海での戦いもそうです。自分もまあ、幸福とは言えない人生を歩んできたと思っていますが、今はこう思います」

 

 

提督「ラッキーな時代に産まれてきた、と。それはあなた達もきっと」

 

 

提督「自分達が海の傷痕を倒せるんですよ。美味しいところ取っちゃって申し訳ないな、って思います」

 

 

秋月「あはは……」

 

 

秋月「はい、そうですね!」

 

 

提督「あなた達と出会った時、正直、妙なガキになつかれたな、程度にしか思っていませんでしたけど」

 

 

明石・秋月「……」

 

 

提督「今度はお二人が助けてあげてください」



提督「海で命が散らないよう」


 

提督「自分は戦場に兵士として立てませんから。負けず挫けず、それぞれの使命をやり遂げてください」



提督「これは本心ではありました」

 

 

提督「あなた達は最初、思い立ったが吉日の無理やりな理屈で来たも同然ですから」

 


提督「それと」


 

提督「あなた達のあのお父さん、今は陸軍にいるって知ってました?」

 

 

明石「……マジ?」

 


秋月「え……な、なぜ」

 


提督「1度アカデミーに来たらしく、元帥にほぼ無理やり放り込まれたみたいです。そして先日、自分宛に手紙が」

 

 

提督「『どうかしてた。もう1度、やり直せねえかって、嵐士と秋と会う場を設けてくれねえか』と」

 

 

提督「この海でも艦に乗り込んでサポートしてくれているそうです。かなり、変わったみたいですよ」

 

 

明石・秋月「!」

 

 

提督「また家族でちゃぶ台囲めます。だから、絶対に負けず挫けず、それぞれの使命をやり遂げてください」

 

 

提督「ここはきっとあなた達にとって」

 

 

提督「偉大な寄り道だったのです」

 


提督「置いてきたもの全て、暁の水平線にあります」

 

 

提督「生き抜いてください」

 

 

明石・秋月「了解!」

 

 

【10ワ●:響とВерный:три】

 

1


提督「暁さん雷さん、そろそろ頃合いなので抜錨準備に入ってください」

 

 

暁「ずっと呼びかけていたけど、響、起きなかった……」

 

 

雷「仕方ないわ。行きましょう」

 

 

鹿島「私はまだ抜錨命令出ていないので、お二人の代わりに側についています。大丈夫です」

 

 

暁「うん。よろしくお願いします」


 

雷「司令官、響、このまま目を覚まさないってことはないわよね……?」

 

 

提督「必ず目覚め、そしてこの戦いに参戦します」

 

 

提督「お約束します」

 

 

暁「……、……」

 

 

暁「いったわね。嘘だったら許さないから!」

 

 

雷「司令官、フレデリカさんもなにか分からないの? 壊:バグを調べていたくらいだから、建造の精神影響はそこらの専門家よりも詳しいんじゃないかしら……」

 

 

提督「ロスト空間から帰還しません。海の傷痕:此方に還ったようです」

 

 

暁・響・鹿島「!?」

 

 

鹿島「生身の人間がロスト空間、しかも、海の傷痕に接触したのですか……?」

 

 

提督「はい。海の傷痕の情報獲得のために自分が強制したも同然です」

 

 

暁「……言い訳する気はないのはいいけど、それだと誤解しちゃうじゃない。フレデリカさんは、嫌々行ったの?」

 

 

提督「……いえ」

 

 

提督「本官さんから遺言を預かってます」

 

 

「『私は、役に立ったんだ、と出来れば向こうで広めて欲しい。少しでも、私が許容されるように、壮大に語って欲しい』」

 

 

「『厚かましいお願いです』」

 

 

「『せめて、ですか。私も命を吹き返し、未来をこの目に見て思いました。せめて、と』」

 

 

「『ああ、私のあやまちは取り返しがつかなくとも、いつの日か、許し合うことが出来る未来だって、可能性は皆無ではないと』」

 

 

「『生きてこそ、願わくば』」

 

 

「『ああ、もっと早く気付いてさえいれば』」

 

 

「『死にたく、ない』」

 

 

提督「だそうです」

 

 

雷「っ!」

 

 

雷「今さらなによ、それ……」

 

 

雷「気付ける人なんじゃない……」

 

 

雷「私はその未来を拒んでしまったのね。私が、あの人にいつも通り接していたら、皆の傷も少しは塞げたのかもしれない」

 

 

雷「そんな風に思ったじゃない……」

 

 

雷「……私は、私の感情でその未来を閉ざしてしまったのね」

 

 

雷「悔しいわ、司令官……」

 

 

暁「雷……」

 

 

提督「フレデリカさんは海の傷痕:此方と対話をし、有力な情報を引き出してくれました。善や悪、罪や罰はこの際、置いておいて」

 

 

提督「自分達はその情報に助けられている事実があります。雷さんは後悔しているようですが……」

 

 

提督「ここでも引きこもると、後悔だけじゃ済まなくなると思います」

 

 

提督「亡くした宝物を飾って眺めるにはあなた達はまだまだ若いです。取り戻しに行くことで、その後悔がまた新しい宝物を与えてくれるでしょう」



提督「暁さんにも合同演習時にいいましたが」

 

 

提督「涙は人の資材です」

 

 

提督「空っぽの人間は、涙すら流さない。雷さん、海に出てください。その涙も後悔も、そこに全ての報いがあります。全てがあります」

 

 

雷「……うん」

 

 

雷「響のことは任せたからね!」

 

 

提督「お任せを。約束は守ります」

 

 

雷「それじゃ暁、抜錨するわよ!」

 

 

雷「戦場のことはまっかせなさい!」

 

 

提督「よろしく。暁さんも、です」

 

 

提督「ぷらずまさんは解体を受けて駆逐艦電として再建造中です。あの強さはもうありません」

 

 

提督「予定通り、第6駆に電さんも合流させるつもりですから、その際の旗艦はあなたです。よろしく」

 

 

暁「……!」

 

 

暁「司令官、本当にありがとう」

 

 

暁「必ず、みんなを守ってくるから!」

 

 

………………


………………

 

………………

 


提督「ところで鹿島さん」



提督「この海で生きているとか、死んでいるとか、なんなんでしょうね。自分にはよく分かりません」



鹿島「?」



提督「なにがあろうとも折れないでください。軍の意向がありましたから、この戦い、生きて帰投する意味の全員生還としましたが、ほぼ必ず」



提督「誰か死にます。最悪、全員です。海の傷痕はそれほどの敵です。皆が思い知るのはこれからでしょう。どれだけ危険だと言葉で伝えても、心で理解しきれていなさそうな人達が見受けられました」



鹿島「……そうですね。あなたは『勝利という結果を出しすぎてきて、鎮守府としての敗北がいまだない』ですから」



鹿島「あなたなら、この鎮守府の皆なら必ずなんとかしてくれるだろう、という甘えは心のどこかであってもおかしくないです、ね」



提督「ええ、ですから自分が失敗して敗北した時、崩れ落ちるのも早いです。一応、皆の作戦書にこのこと書きましたけど、不安ではあります」



提督「勝ちに行く策なので、あなた達が折れたらそこから一気に瓦解します」



提督「その時、周りの兵士の支えになってあげてください。この鎮守府だけでは今、あなただけなんです。本当の意味での悲劇の体験者は」



提督「誰かが死んだことで、泣いて喚く絶望的状況、例え死ぬと分かっていても敵と交戦しなければならない時は恐らく到来します。周りに折れた方がいたら、背中を押してあげてください。自分の言葉として、吹いても構いません」



提督「最後には必ず自分が応えますから」



提督「出来ればこの話は内密にお願いします」



鹿島「……、……いわれなくともそのつもりでしたけど、はい」



鹿島「分かり、ました」



明石「提督、戻ってきてください! 始まりますよー!」

 

 

提督「戻りますので、響さんのことよろしくお願いします」

 


鹿島「はい」

 

 

提督「……」

 

 

響「……」

 

 

提督「早く、戻ってきてくださいね」



【11ワ●:E-2】

 

 

陸奥「わるさめちゃんの手柄を奪うようで申し訳ないけど、容赦はなし」

 

 

長門「……」

 

 

陸奥「姉さん、なにをムスッとしているのよ。なにか気に食わないの?」

 


長門「当局だったか?」

 

 

海の傷痕:当局【役不足だ、引っ込みたまえ】

 

 

海の傷痕:当局【●∀●】

 

 

長門「貴様からは勝つという意思も、護ろうとする気概も感じない」

 

 

長門「倒す意味は多大にあっても、個人としては勝つ意味は薄いな」

 

 

海の傷痕:当局【ならば下がりたまえよ。当局はこの通り、ほとんどの装備を潰されて、修復を待っている】

 

 

海の傷痕:当局【史実砲は直に】

 

 

長門「構え」

 

 

ドオン!

 

 

海の傷痕:当局【……む、あちらのほう】

 

 

海の傷痕:当局【長の射程に武蔵でもいるのかな、嘲嘲!】

 

 

長門「出せよ」

 

 

長門「こういう窮地の時のために、ギミックあるんだろ。それを真正面から潰しに来たんだ」

 

 

海の傷痕:当局【●∀●】

 

 

海の傷痕:当局【この位置は臭うか。まあ、鎮守府(闇)の連中は追ってこないしな。罠だとは承知の上のようである】

 

 

海の傷痕:当局【ま、これを乗り越えたら、少しは中盤に差し掛かるといったところであるな。では遠慮なく」

 

 

海の傷痕:当局【血生臭くいこうか】

 

 

海の傷痕:当局【此方、用意していたモノを出すぞ】

 

 

海の傷痕:此方(そこだね、分かったー!)

 

 

海の傷痕:当局【E-2のギミック展開である!】

 

イエーイバンザーイヒャッハー

 

 

2

 

 

武蔵「元帥、聞こえるか?」

 

 

元帥「おう。ようやく分離した取り巻きの補給艦は片付け終わったところ」

 

 

武蔵「海の傷痕と交戦に入った直後」

 

 

武蔵「唐突に深海棲艦が現れた」

 

 

武蔵「ざっと100体くらいだ」

 

 

元帥「甲を切る。おい甲ちゃ、」

 

 

甲大将「もう向かわせてる。 第1艦隊は3分くらいで到着するら、比叡と霧島とクマネコは残存した取り巻きの相手を終わらせたら、向かわせるつもりだ」

 

 

元帥「さっすが。そちらの指揮はわしが取る。潜水艦も分けて向かわせるから思う存分やってくれ」

 


甲大将「了解。任せとけ」

 

 

提督「こちらからも向かわせました」

 

 

元帥「了解。しっかし、これは……恐らく100体だろ。唐突に出現。これは明らかに狙ってやってるに違いないわ。腹が立つな」

 

 

提督「ええ、1/5作戦の再現ですね」

 

 

丁准将「……ふむ、あの時は大和を犠牲にして逃げたようだが、実に合理的でお見事な策であるな。惚れ惚れしたよ、青山君」

 

 

丁准将「今回その役は大和の妹でどうかね。重課金の武蔵が適役である」

 

 

提督「……自分はストレートにそんなこというあなたが好きで、それ以上に冗談でそんなことをいうあなたを軽蔑してましたね」

 

 

丁准将「お互い様だ。理屈で生きていた君は理屈で翻るから信用出来ん。そこさえどうにかすれば信頼も出来たのだがな、いやはや我輩の躾不足か」

 

 

元帥「お前らストップな……」

 

 

丁准将「いつものコミュニケーションである」



提督「懐かしいですねえ」



元帥「!?」



3

 


提督「ここでの深海棲艦増援のパターンは頭に入ってますよね。では」

 

 

提督「第1艦隊旗艦阿武隈さん、卯月さんわるさめさん榛名さん金剛さん瑞鳳さん」



提督「第2艦隊は龍驤さん、翔鶴さん瑞鶴さん陽炎さん不知火さん」

 

 

提督「支援艦隊は明石君、秋月さん」

 

 

提督「電さんの建造が直に終わります。第3艦隊はそれまで電さんの護衛を。建造終了したら、旗艦暁さん、雷さん電さんです」

 

 

阿武隈「旗艦阿武隈! 了解です!」

 


龍驤「第2艦隊旗艦龍驤、了解やで!」

 

 

明石「うっす。支援艦隊旗艦明石、りょーかい」

 

 

暁「第3艦隊旗艦暁、了解っ!」

 

 

暁「それと明石君! もうちょっと気合い入れた返事しなさいよっ!」

 

 

明石「入ってるよ。戦果は多大にあげる。暁さんがヘマしても助けてやるから大船乗ったつもりでいい」

 


暁「ヘマなんかしないわよっ、失礼ね!」プンスカ

 


4

 


ドオンドンドン!

 

長門「っち、逃がした……! 探知できない。ステルスかこれ。猪口才な」

 


陸奥「入り乱れてるわね……」

 


ヌ級「……」

 

 

長門「艦載機か、邪魔だ!」

 

ドン!

 

 

陸奥(阿武隈、卯月、わるさめ、榛名、金剛、瑞鳳、龍驤、秋津洲、陽炎、不知火、瑞鶴、翔鶴、明石、秋月、木曾、大井、北上、江風、グラーフ、サラトガ)

 

 

陸奥(姉さんに武蔵さんに私、それと大淀さんと秋雲ちゃんも来る、と、後は第6駆は途中参戦かしら……)

 


陸奥(現実的に太刀打ちできるけど)

 

 

陸奥(ステルスの海の傷痕が怖すぎるわね……恐らく重以上の課金者とやらのほうに行くんだろうけど)

 

 

駆逐水鬼「……」

 

 

ドン!

 

 

長門「陸奥!」

 


長門「っ、さすがに鬼の砲弾は拳で叩き落とすには威力が殺し切れん」

 

 

陸奥「ごめんなさいね、考え事していたわ」ジャキン

 

ドンドンドン!

 

長門「悪い癖だぞ。とりあえずこの深海棲艦の霧、数を減らして晴らすほうがいいか。出来れば夜になる前に」

 

 

駆逐水鬼「……逃げないの?」

 

 

駆逐水鬼「1/5作戦の時みたいに」

 

 

陸奥「思考機能付与能力……ということは、力の程は中枢棲姫勢力クラスかしら」

 

 

長門「この混戦状態だと……」

 

 

乙中将「はいはーい! 長門さんに陸奥さん! 乙中将だよー!」

 


長門「乙中将殿……戦いながら聞くが、出来るだけ声は大きめで頼む。いかんせん砲撃音がうるさくなる」

 

 

乙中将「指揮官のほうで各艦隊の連携は取れているから、安心して。手透きの僕が長門さん達の指揮を執るよ」

 

 

長門「ありがたい。先の火蓋役はお見事だった。あなたの指揮なら命を預けられる」

 

 

陸奥「そうねえ。場が敵味方入り交じって騒がしいからありがたいわね」

 

 

ドンドン!

 

 

乙中将「秋津洲ちゃんの二式大艇と大淀さんの艦隊司令部施設で状況も把握。その駆逐水鬼は潰して、丙さんところと合流する」

 

 

乙中将「やられたら、とか、他の艦隊とか、なにも気にしなくていいから、ただ今は数を削るだけでいいよ」

 

 

乙中将「対空と潜水、駆逐水鬼のギミックの要であるPT小鬼群は直にそちらに合流する白露さんに任せればよし。そこの姫や鬼系統は駆逐水鬼1匹だから、潜水艦の魚雷に気を付けながら、周りの空母から撃破で」

 

 

長門・陸奥「了解」

 


5

 

 

武蔵「……ちっ!」

 

 

武蔵「邪魔だア!」

 

 

ドンドンドン!

 

 

武蔵「人の嫌な過去ほじくり返す真似しやがって」

 

 

武蔵「どこに隠れた、海の傷痕……」

 

 

大淀「武蔵さん! 砲撃来てます!」


 

武蔵「このくらい拳で十分だろ」

 


ガゴッ!

 

 

大淀「武蔵さん、落ち着いてください。私は戦場を把握して報告しないとですので、あまり無茶されても、支援し切れません」

 

 

大淀「駆逐棲姫艦隊と空母棲姫艦隊が来てます!」

 

 

駆逐棲姫「キャハハ」ドンドン!

 

 

武蔵「あ? どこを狙って……」

 

 

武蔵「私達を無視して、向こうの、軍艦……?」

 

 

武蔵「マジかよ、これは」

 

 

大淀「鎮守府施設を備えた艦を優先的に狙うこの行動……は」



大淀「最初期の深海棲艦行動、です……!」

 

 

大淀「武蔵さん、艦載機のある空母棲姫から潰したほうが」

 

 

武蔵「ああ、しかし私の対空は」

 

 

秋雲「はいさー」ドンドン

 

 

武蔵「秋雲か」

 

 

秋雲「うん。途中で丙少将のところの黒潮ちゃんと合流したー」

 

 

黒潮「ほんま疲れるなあ。うち、陽炎不知火暁響抜けたせいで、遠征三昧の毎日、最近は1航戦に可愛がられるわで大変なんやで」

 

 

武蔵「うん、泣き言か?」

 

ガガガガ!

 

黒潮「まさか。見ての通りお陰様で対空めっちゃ得意になったんや」

 

 

武蔵「前言撤回。よろしく頼む」

 

 

武蔵「大淀、元帥は」

 

 

大淀「潜水艦隊の指揮で手を離せません。沈んだあなた達を回収する重要な艦隊なので……」

 

 

秋雲「大淀さんは艦隊司令部施設で忙しそうだし、指揮執れる人いない?」

 

 

黒潮「……おるやん、あの人、復活したんやろ?」

 

 

丁准将「ふむ、司令官をお探しかね?」

 

 

武蔵「お前も1/5作戦の時を思い出す要因だな。そもそも信頼できねえ」

 

 

丁准将「武蔵君は頭に血が昇りやすい性格は直ったのかな」

 

 

大淀「先代丁の准将、この場はお願いします」

 

 

武蔵「大丈夫かよ……瑞穂の一件でこいつの性根は腐ってるのが分かっただろうに」

 

 

大淀「しかし、指揮に関しての才はあなたも大和さんも認めていたはずです。この人は丙乙甲のなかで最も作戦成功率が高い方です。青山さんもそこを認めていたのはご存じでしょう?」


 

丁准将「まさかとは思うが、立ち話はしていまいな。非効率的な真似は慎みたまえよ?」

 

 

武蔵「そこまで馬鹿ではない……」

 


丁准将「ならば空母棲姫ではなく、まず優先して駆逐棲姫を沈めろ。最初期の空母棲姫は基本的に対象に艦載機を放つだけだ。そして艦載機は、直線的な軌道かつ、この場合は軍艦のほうに向かうため、対空で処理しやすい。そちらは秋雲君と黒潮君でがんばりたまえよ」

 

 

丁准将「最初期のデータからも空母棲姫と駆逐棲姫の組み合わせでは駆逐棲姫を抜かせた場合、ほぼ確実に艦は危険に晒されている。厄介なのは抜かれた場合の駆逐棲姫であるよ。こいつの速度と装備は近距離を許した場合、死を強く意識させる。近くで見る姫級の深海棲艦は乗員のメンタルにもよろしくないしな。知識がいるぞ?」

 

 

丁准将「大和型を名乗るのならば、駆逐艦が空をがんばっている間にスピーディーに駆逐棲姫を処理したまえ」

 

 

武蔵「……」

 

 

丁准将「書類では大和を失った戦いで拾ったような命と見たが」

 

 

丁准将「かつての我輩の第2艦隊旗艦の武蔵君」

 

 

丁准将「この場でその命を、海に投げ捨ててみるといい」

 

 

丁准将「さすれば我輩が」

 

 

丁准将「海ごと救って差し上げよう」

 

 

武蔵「了解だ、クソッタレ」

 

 

丁准将「感謝する」

 

 

武蔵「にやついてんじゃねえ」

 

 

丁准将「フハハ、よく分かったな」

 

 

6

 

 

阿武隈「せいっ!」

 

ドンドンドン!

 

卯月「っと!」

 

ドドドドドン!


 

わるさめ「さっすがー。この二人いりゃザコはおそるるに足らずだね」

 

 

阿武隈「金剛さん榛名さん、中距離から先はお任せします!」

 

 

金剛「近距離の相手が溶けるので、とても気持ちよく戦えマース!」

 


榛名「はい、艦載機も気にしなくていいので狙いもつけやすいです!」

 

 

金剛「全砲門、ファイヤー!」

 

 

提督「阿武隈さん、全体の1/4ほど片付けた模様です。ですが、じり貧ですね。明石君達も動かせるので、ある程度の無茶はしてもいいですが、全員生還を軸に動かしてください」

 

 

阿武隈「了解です。しかし、提督の読みならば、ステルスまでは当たっていましたが、艦載機、目視ともにわるさめさんを保有するこの艦隊に接近の気配はありません」

 

 

提督「装備の再生を待っているのか、もしくは水中にお気をつけください。わるさめさんに限らずこちらに出来ることは海の傷痕にも不可能ではないことを念頭において、艦隊の指揮を」

 

 

阿武隈「了解です。しかし、切り抜けると被害は予想されます。出来るだけ抑えますが」

 

 

提督「了解です。突発的に発生した100体以上の深海棲艦相手に無傷で勝てるわけがないので、予定通りに出来るだけ抑える方向で結構です」

 

 

提督「海の傷痕は必ずどこかの艦隊にちょっかいかけに来ますから。深海棲艦はその間に少しでも減らしておきたいです」

 

 

阿武隈「……交戦に入ります。潜水棲姫艦隊、軽巡棲姫の水雷戦隊、ヲ級改機動部隊に目をつけられたみたいです」

 

 

提督「了解です」

 

 

7

 


瑞鶴「敵が減ってる気がしないわね。目の前の敵を倒せ。やり方は任せるって、投げっぱな指示出しやがってー」

 

 

翔鶴「瑞鶴、それは仕方ありません。鎮守府(闇)の役割を考えれば、詳細な情報を海の傷痕に与えるのは致命的になり得ますから。そらに提督がいったはずでしょう?」

 

 

翔鶴「途中で誰かが欠けても、最後には誰も欠けずに帰投する。それを信じて、提督の負担を減らす仕事をすればいいんですから」


 

翔鶴「あなたの性には合っているでしょう」

 

 

瑞鶴「そうなんだけどさー……龍驤、あんた『どうするのが正解』だと思う?」

 

 

龍驤「……うちも頭で考えるタイプやけど、やっぱりあの提督が頭の中でなに考えとるか分からん」

 

 

龍驤「不知火はどー思う?」

 

 

不知火「不知火が司令だったらどう考えてもこの場で中枢棲姫勢力切ります、かね。深海棲艦の群れに混じれて背中から撃てます。彼女達がここに来たらこの戦場、早く片付くのは間違いないと思うのですが」

 

 

翔鶴「確かにそうですが……それは無理でしょうね。だから甲大将を切ったのだと思います」

 

 

龍驤「せやな。深海棲艦100体程度が上限やったら不知火の考えでええんやけど、問題は『無限湧きしたら?』やねん」

 

 

陽炎「確かにロスト空間のほうに後何体用意してあるか分かったもんじゃないわね。ただでさえ頭数で負けてるからきっついわ」

 

 

龍驤「こういうとあれやけど、中枢棲姫勢力は確定した死を踏まえて戦う最強のカードやからな、切り札切るの躊躇うのは分かる。無駄死にはさせられへんし、させたくないやろ」

 

 

龍驤「無駄死に繋がる最大の不安要素があるからな」

 

 

龍驤「『Srot4が怖い』」

 

 

瑞鶴・不知火「なるほど」

 

 

翔鶴「では機会があれば、海の傷痕にそれを使わせるよう動くべき、ですかね」