2017-05-20 18:27:21 更新

概要

鎮守府で避けられている艦娘がいた。
名は春雨、なぜ皆は相手にしないのか?


前書き

メインでもサブでもない物語です。


最近皆から避けられている気がする、村雨姉さんにも・・・



遠征でしか役に立てないからかな・・・


出撃で戦果を挙げられないからかな・・・


春雨の頭で必死に考えたけど、わからない・・・


ただ、春雨を避けるのはやめてほしいな・・・


話しかけても・・・挨拶しても・・・


誰も振り向いてくれない・・・


誰でもいいから・・・誰か返事して・・・




・・・・・・


誰か・・・



パシャっ!!



えっ?



目の前にフラッシュが見え、顔を上げると、


そこには一人の男の人が立っていた。


「・・・・・・」


憲兵さんかな? と私は思った。


「何してるんですか?」 と聞くと、


「無防備だったから」と私の写真を撮っていた。


「暇なのか?」


憲兵さんの問いに、


「誰も相手にしてくれないんです。」


私はまたうつむいた。


「ならオレが構ってあげようか?」


「・・・・・・」


本来ならば断わるはずなのだが、寂しさを紛らわせたい気持ちがあったのだろう・・・


「はい・・・お願いします。」


春雨は憲兵さんについていった。



憲兵さんは優しい人だった。


お腹が空いたと言えば、売店でご飯を買ってくれたり、遊びたいとお願いすれば、


公園へ連れて行ってくれたり・・・むしろ私は楽しかった。



後は色々お話をして・・・


遠征で失敗して落ち込んだことや、村雨姉さんにこの前褒められたこと等、身の回りの事ばかり・・・


でも、憲兵さんは「そうか、そうか」と言いつつ私の頭を撫でてくれた。


懐かしい温もりを感じた・・・



「そろそろお姉さんのいるところへ帰りなさい。」


憲兵さんに言われるが、


「私、まだここにいたいです。」


と帰ることを拒んだ。


「どうして?」


憲兵さんに聞かれ、


「・・・・・・」



最近皆に、そして村雨姉さんに避けられていることを打ち明けた。


「それは違うよ。」


「えっ・・・」


一瞬憲兵さんの言葉に首を傾げた。


「・・・おいで。」


憲兵さんは私をある場所へ連れて行った。



私が見た光景、それは・・・


「えっ!?」


目の前に何故かもう一人の私がいました。


「どうして・・・なんで私がもう一人・・・」


戸惑っていると、


「実は・・・」


憲兵さんはポケットから、


「さっき撮った写真だよ。」



春雨に渡す・・・そこには・・・



「・・・・・・」


何も映っていない・・・


「・・・・・・」



あ・・・


ああ・・・


そうだったんだ・・・


私・・・沈んでいたんだ・・・


そう思ったとき、記憶が蘇った。




出撃で戦果を挙げられず提督から叱られ、遠征でもミスをして皆に怒られたりで、


気持ちのやり場がなかった私は単艦で海に飛び出し・・・そこで、敵の砲撃を受けて・・・沈んだ・・・




「そう。」


憲兵は口を開く。


「皆が避けていたのはただ春雨が見えていなかっただけ。」


「・・・・・・」


「皆が暗かったのは、春雨が倒れて悲しんでいたから。」


「・・・・・・」


「ほら、見てみろ。」


憲兵さんが指をさす。


そこには、ドッグで目を閉じている春雨に皆が涙している光景、その中には・・・村雨姉さんもいた。


「確かに皆から叱られてやけになった気持ちはわかる。」


「・・・・・・」


「でも、それは皆が春雨を心配していたから。見てみろ、皆泣いているだろう?


 本当に春雨が嫌いだったら涙なんか流さないだろう?」


「・・・・・・」


春雨の瞳から涙が溢れた。


「わかってほしい、春雨。お前は皆から頼りにされているんだ。失敗しても怒られてもいいじゃないか、


 皆のために頑張ればそれでいいじゃないか。」


「・・・はい。」


「わかったなら早く体に戻りな。」


「ふぇっ?」


「何だ? 死んだと思っていたのか?」


憲兵さんによると私は沈んだのではなく、砲撃を受け、意識不明で運ばれ幽体離脱した状態だという。


「私、まだ生きているんですか?」


春雨が震える。


「ああ、お前はまだ生きてる。」


「憲兵さん・・・じゃないですよね? あなたは誰?」


「オレは・・・」


後ろに隠し持っていた大鎌を出す。


「・・・死神だ。」


「死神・・・」


死神ってもっと怖いイメージがあったけど・・・


「それで・・・」


「?」


「お前はまだ、生きたいか?」


「・・・はい! まだ生きたいです!」


「・・・よし!」


死神は春雨に手をやる。


「生きていれば必ずいいことがある・・・決して諦めるな・・・頑張れよ。」




・・・・・・

・・・





「春雨!」


目が覚めると、目の前に村雨姉さんがいた。


「・・・村雨姉さん?」


「目が覚めた? よかった~!」


村雨は抱き寄せる。


「心配かけて・・・」


「・・・ごめんなさい。」


死神さんの時と同じように感じた温もり・・・私は改めて感じた・・・



私は・・・一人じゃない・・・と。





「提督と春雨」 終








後書き

春雨が村雨のいる鎮守府にやってくる話も考え中~。


このSSへの評価

10件評価されています


SS好きの名無しさんから
2020-04-23 16:38:20

ヨーさんから
2020-02-13 23:16:26

歩提督さんから
2019-08-06 21:04:17

トキヤですさんから
2019-01-25 21:30:41

SS好きの名無しさんから
2017-11-10 18:08:23

SS好きの名無しさんから
2017-09-20 07:52:35

SS好きの名無しさんから
2017-09-05 01:27:26

ひやしらいすさんから
2017-05-26 21:13:16

SS好きの名無しさんから
2017-05-11 20:28:59

SS好きの名無しさんから
2017-05-06 22:47:16

このSSへの応援

4件応援されています


ヨーさんから
2020-02-13 23:16:28

歩提督さんから
2019-08-06 21:04:17

トキヤですさんから
2019-01-25 21:30:42

SS好きの名無しさんから
2017-11-10 18:08:25

このSSへのコメント

1件コメントされています

1: SS好きの名無しさん 2017-09-20 07:54:38 ID: 2j2cQHDS

死神様は寿命が来た命を正しく天国に導いてくれる神様。皆が想像するような神様じゃないんだよね。


このSSへのオススメ


オススメ度を★で指定してください