2020-11-19 02:57:03 更新

概要

艦これのSSです。自分はこれが初めての創作なので至らない点があるでしょうがよろしくお願いします!
概要は話の進み具合で追記していきます。


いつか迎えに来てね



光の刺さない部屋。

そこには窓はなく、まるで檻を連想してしまう程質素な部屋にある一人の少年は閉じ込められていた。

無機質な機械音が、まるでこの現状を知らせる警告のように耳に響いていた。


「.........ぃ..........ぁ.......」


喋ろうにも身体中の痛みからか、声を出すこともままならない。

視界は白くぼやけ立つことも出来ないまでに彼は憔悴しきっていた。

死にたい、そう思う程に辛い。

無気力に全身は包まれ、捕らわれ、ただ時間が経てば経つほど死へと一歩ずつ進んでいく感覚に襲われる。


「.......っ、ぁっ.......!!」


けれど彼には死ねない理由があった。

【その理由】の元へ彼は這いずりながら寄っていき、痩せ細った頼りない腕で抱きとめる。




『それ』はもう喋らない。

『それ』はもう動かない。




こちらに対して笑ってくれる事もなく、誰かの為に怒ってくれる事も無い。

悲しむことも、喜ぶことも、普通の女の子として生きる事すら許されなかった彼女の最期を見送ることが出来なかった。


「.......っあぁぁあぁぁぁぁッ.......!!!」


彼は、涙を流すことしか出来ない。

彼女に対してまともな弔いができない自身の不甲斐なさに辟易する。

彼女の手を握る力が強くなるのと同時に、どす黒い感情が内側から湧き出るのが分かった。



これは、きっと怒りなのだろう。



そしてきっと、自分に対する呆れなのだ。



どんなに後悔しようが、どんなに嘆いて喚こうが、現実は変わらない。

分かっている、解っている、判っている。

そんなこと、理解しているのだ。

それでも、とめどなく溢れる感情の塊を抑えつける術を知らなかった。


いや、止めようとはしなかった。


「.............」


彼の瞳から流れる涙は枯れ、次第に彼女の手を握る力すら無くなっていきもうきっと、終わりが近いのだと悟る。

腕も脚も口も瞳もそして意識や感覚も徐々に無くなっていく。

今までここにある、あった全てが消えていく喪失感。

何でこんな現実を叩きつけられても尚、自分は生きているのだろうという虚無感。

それでもどんなに絶望しようが、心の奥に、脳内から消えない彼女の笑顔。


彼はもう正気では無かった。

泣き叫び、苦しむその様は、到底まともとは言える状態では無かった。

だがしかし、正気では無かったが故に、彼は最期に自身の本当の気持ちを知ったのだ。


「.......もう.......ぃいや.......ははっ.......」.


彼は力を振り絞り、立ち上がる。

その瞳に光は、無い。


「消えた、もう何もかも全て」


おぼつかない足取りで彼はどこかへと歩き出す。


その行動に目的等はなく、ただ何も考えずに。

脚を止めることはなく、部屋を抜け、長い廊下を歩く。

甲高いサイレンに似た音を聞きながら彼は無我夢中に歩いた。

目の前には先の見えない闇が続いていた。

***********




















.......何分、何十分?いや、何時間?どれくらい彼は歩いただろう。

霧がかったようにハッキリとしない頭は、もう普通に思考することすらままらならない。

それと同時に彼の心身は悲鳴をあげていた。


「.......ぁ?」


まだ前に進もうとする意識とは裏腹に力の限界は突然来る。

脚の感覚はなくなり、急に全身の力が抜けてしまう。

彼は壁に寄りかかりながら、ゆっくりと地面に座り込む形になる。

元々から残りカスみたいな力しか無かったのだから、立って歩けていただけ奇跡だったのだ。


「.......もうすぐ.......終わるな.......ははは.......は.......」


ゆっくりと、下を向き彼は呟く。


「良いんだァ.......結局、俺はこんな終わり方が相応しいんだろう.......」


「でもさぁ.......だけどなぁ.......!」


「受け入れれると思うなよ.......!畜生.......!」


彼は薄れゆく意識の中で上へと手を伸ばす。

瞳は赤く腫れ、その表情はありとあらゆる感情を混ぜたようにぐしゃぐしゃに歪んでいた。

きっと彼は後悔している。

後悔しながら、彼は自分を責め続ける。


その罰はずっと、続くのだろう。


**************







「......."かな".......?」


「んー?何だよ"○○"?.......あ、まさか楽しくないか?ゲームするの。変えるか、ジャンケンでもする?いやそれこそ楽しくはないか」


「.......ううん、楽しくないとかそういうのじゃないんだ。かなと一緒にいるなら何でも楽しいよ」


「あっはは!一緒に居たら何でもとか!.......ん?じゃあ何だよ?」


「.............僕がさ、もし遠くに行っちゃったらさ.......」













【いつか、迎えに来てね?】


【いつまでも、何時までも。】


【私は待ってるから】

ーーーー

ーーー

ーー







??「.......う.......ん?」



青年は目を開ける。

温かな日差しを感じながら彼ーー提督ーーはとぼけた顔をしながら左右を見渡す。


提督「.......ああ、寝てたのか」


現状を理解した後ポケットに入れていたスマホの画面を見て、時間を確認する。


午後四時。


涼しい微風が頬を撫でる。

少し寝起きの倦怠感が残る身体を起こし、彼は隣に寝ている少女を起こす。


提督「......."時雨"、時雨起きろ.......」


時雨「.......ん.......うぅ.......ん.......?」


時雨と呼ばれる少女は、勢いよく全身を引き伸ばす。

所々漏れ出す吐息と小声は、一般男性にはあまりに毒だった。


提督「.......今日は気持ちがいい日だったからついつい寝てしまった.......!」


時雨「本当に.......ん、 ふわぁ.......ぁ.......あ.......。僕も釣られて寝ちゃったや.......」


毒ではある、毒ではあるが男性というのは見栄を張るもの。

いや?自分女知ってますけど感を醸し出す為に、提督は真顔で空を見上げていた。

少しの沈黙の後そんな一般男性の陰の努力には気付かず、時雨は不意に「あっ!!」と大声を出す。


時雨「提督!時間!!」


提督「.......ん?時間?.......今午後四時よ。三時のおやつにはもう一時間も遅いよ.......」


時雨「ち、が、う!!!そんな事気にしてない!別に三時におやつは食べなくても良いよ!!」


時雨「早く帰らなきゃ上司の人にしばかれるんじゃなかった!!?」


提督「えあ?.............あっ」


寝惚けていたからだろう、提督はようやく事の重大さに気付く。

時雨が珍しく凄い表情と声量で諭してくるな、可愛いぐらいに考えていたがとてつもなく馬鹿な考えをしていたんだと認識する。


提督「んんんん.......!行くぞ!!辺りのもの持って!

「はい!」スマホをポケットにしまって!「はい!」走る!「提督!!そっちは逆だよ!!」すみません!!!」


**********


午後四時二十分ーー執務室の前廊下ーー


提督「.......結局遅刻したな.......」ハァハァ.......


時雨「.......いや、喘息なのに提督が無理し過ぎるからでしょ.......ちゃんとしたペースだったら間に合ってたよ.....」


提督「仕方ないだろ!?あの人すごい怖いんだよ!いくら"義理の姉"とは言え家族であっても.......いや家族だから怖いんだよ!!」


時雨「.......え?それってどうi」


??「いくら小声とはいえ、扉の前で話していては丸聞こえだが?」


二人「「ひぃ!??」」


??「まぁ、そもそも私はお前達の後ろにずっと居たがな」


くすくすと口に手の甲を当てながら笑う女性ーー義姉ーーだ。

その容姿は艶のある長い黒髪に、燃える炎のように赤い神秘的な瞳が特徴だ。

前述した様に義姉は女性ではあるが、女性である前に彼女は軍人である。

その為出ているところは出ているし、全体的に引き締まっているバランスの良い体つきでとても魅力的と言えるだろう。

しかし、着目すべき所は中身だ。


提督の義理の姉である彼女は、人にも自分にも厳しいスパルタを具現化したような人物で、しかも自分に出来る事は他人にも出来るという前時代のような思想の持ち主.......ではない。

別に自分が出来る=他人が出来るとは思っていない。

出来ないのなら出来ることをすればいい、したくないのならしたいことをすればいい。

規則を重んじ、伝統を尊びながらも、目新しい事を好む。

彼女はそんな人間だ。

その為か、彼女は周りからはとても好かれており上からの評価も高い。

.......まるで理想の人間のようだろう、まさに人格者だ、非の打ち所がない。

実際提督はそう思っている。

しかし、それはある事を分かりやすく指していた。


義姉「.......とにかく中に入れ、立って話すのもあれだからさ」


二人「「アッハイ.......」」


**********




義姉「.......そこに座っていいぞ、別にどこに座ろうが私は構わないんだがな」


執務室の扉を開くと、まず目に入るのは前方にある鎮守府最高責任者である彼女の机だ。

その机は長年使われているはずなのに、まるでなにかの意思が宿っている様に厳かな雰囲気が滲み出ていた。


提督「.......失礼します」


義姉「そんな畏まらなくても良いんだぞ?お姉ちゃんとの数少ない会話出来る時間なんだ。気楽にいかないとこっちの気が滅入るから」


義姉「時雨の方も、そんな緊張をせずに。初対面じゃないんだから一緒に世間話でもしよう?」


時雨「...あ....は、はい」


少し前に言った様に彼女は人格者であり、周りから好かれる人間である。

人によって接し方を変えることはなく、態度も変えない。

平等に叱り、褒め、教え、習う。

しかしそれは言い方を変えれば『人に興味がない』という事だ。


彼女は決して感情を持たないわけじゃない。

怒りはするし、泣きもする。

廃人のように喜怒哀楽を忘れてしまった人間ではないのだ。

分かりやすく例えよう。

人は心の底からそこらにいる蟻に対して感情を抱けるだろうか。

勿論、抱ける者もいるだろう。

しかしほとんどの人間はこういう筈だ。


【どうでもいい】と。


そう、彼女にとってこれは極論だが他人などどうでもいいのだ。

友人しかり、家族しかり、同僚しかり、彼女には【自分と他人】という二分類でしか人を判別していない。

だからこそ彼女は人の自由意志を第一としている。


『出来ないならできる事をすればいい、したくないならしたい事をすればいい。』


【やれない事をしても効率が悪い、したい事をさせておけば人は勝手に結果を産み、利益を生み出す。】


『規則を重んじ、伝統を尊び、目新しい事を好む。』


【循環に重きを置きながらも、自身が成長する事を忘れず】


彼女は昔からなまじ何でも理解し、出来た天才だった。

だからこそ人に好かれる生き方を知り、それをまるで本来の自身の性格であるかのように振る舞えてしまった。

それによって小さな頃に体験する好きや嫌いという人の物事の興味を判断する感情が欠落しているのだ。


博愛主義者、と言えば聞こえはいいのだろう。

しかしそれは特別は無く、唯一も無く、ただ全てが同一に見えている。

それは純真とも、純粋とも言えない。

紛れもなく異常だ。


されどだからこそ、彼女はなれたのかもしれない。

人の上に立てる人間に。





閑話休題。。。。。





義姉「さて.......と、まずはこの話からだね.......。弟君?何故君は遅刻をしたのかな?」


ビクッと彼の肩が大きく揺れる。


提督「.......その.......あの.......」


義姉「私は遅刻を許さない訳では無いけど、これは規則だ。時間を守れないのなら簡単な約束すら守れない人だと思われても仕方ないよね?」


提督「.......はい」


義姉「時間は有限、だから一日なんて時間の区分がある。一秒、一分、一時間、この話をしてる時も時間は経ってる」


義姉「無駄な時間なんてものは滅多に無いけど、こういう当たり前いわゆる常識的な事を教えるのは.......無駄な時間だよね?」


義姉「遅刻した理由までは聞かないよ、初犯だし。でも次からはちゃんと聞かせてもらうからね?.......まぁ、次なんてない方がいいに決まってるんだけどさ」


義姉「.......後、時雨君も同様だよ。君は真面目だしちゃんと弟の事を見てくれてる、でも規則は規則、しては行けない事ぐらいは分かるはずだ」


時雨「.......はい、すみません」


















































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たぴおさんさんから
2020-11-10 02:30:34

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たぴおさんさんから
2020-11-10 02:26:58

このSSへのコメント

3件コメントされています

1: たぴおさん 2020-11-10 02:30:22 ID: S:EM1UzU

これはこれは…才能の原石ですね…初投稿とは思えないクオリティ…自分作品とは才能の違いを感じざる終えません…才能少し分けてください…
まず最初の導入から物語に引き込まれます。丁寧な心理描写、深くは分からないのに伝わってくる悲しさ。そこから提督パートへ一気にここがどう繋がって行くのか…今後の展開が気になる作品でした!
何度も言いますが初投稿でこれはやばいです神です。期待してますぜひ完走してください

2: 黒すぎる猫 2020-11-12 19:27:19 ID: S:QuXlCE

( 'ω')コメントはこんな感じになるんですね.......返信遅れてすみません!もう何かこんな新参者の作品も見てもらってとても光栄です!自分が少し時間を作りにくい環境にいるので不定期ですが、作品は完走させるつもりですので.......末永くよろしくお願いします(?)

3: たぴおさん 2020-11-28 19:50:13 ID: S:Yqas4v

義姉さんのキャラクターがとても面白いくて興味を惹かれます。
凄くいいキャラ作りだと思います。


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