2025-03-09 23:48:24 更新

放課後 ごらく部 部室


京子「おーすっ!みんな来てる~?」ガラッ


結衣「遅かったな。京子」


京子「いや~、昨日までが〆切のプリント出すの忘れてたもんで」テヘペロ


結衣「あんまり綾乃に迷惑かけるなよ…」


京子「わ~かってるって!あっ、ちなつちゃん!私にもお茶いれて~」スリスリ


ちなつ「ちょっ!いれてあげますから、あんまりひっつかないでください!」


あかり「京子ちゃんはいつも元気だねぇ」


京子「あれ?あかりいたんだ」


あかり「最初からいたよっ!?」ガーン


――

京子「ごめんごめん。あかりの存在感が薄かったからつい…」ポリポリ


あかり「えぇ~!?あかりそんなに存在感ないの~?」


結衣「おい京子。あんまりあかりをからかうなよ」


京子「そんなこと言っても、あかりの存在感が薄いのは今に始まったことじゃないしな~」


あかり「ふえ~ん!気にしてるのに~!」


京子「しょうがないな~。それなら私が何とかしてやるか!」


――

京子「というわけで!第1回!あかりの存在感どうにかしよう会議~!」ドンドンパフパフ


結衣「いや、勝手に始めるなよ。それに、似たようなことは前にもやっただろ」


ちなつ「あの時に出たアイディアは効果音がアッカリーンで透明人間でしたっけ?」


あかり「でも、それじゃますます存在感がなくなっちゃうよぉ~」


京子「そうなると…やはり目立つにはお団子バズーカか!」


結衣「それもとっくに使い古したネタだろ」


――

京子「まぁまぁ、ものは試しって言うからね。あかり、ちょっとお団子とばしてみてよ!」


あかり「む、無茶言わないでよぉ」


京子「おいおい。ここでノらなきゃいつまでたっても存在感はないままだぞ!」ムンズ


あかり「ちょっと京子ちゃん!お団子をつかまないで~」


京子「それっ!お団子バズーカ発射!」グイッ


スポンッ


――

京子「あ、あれ?」


ちなつ「ちょ、京子先輩!あかりちゃんのお団子がとれちゃってますよ!」


あかり「えぇーっ!?お団子がなくなったら、ただでさえ薄いあかりの存在感がほんとになくなっちゃうよぉ~!」ビエーン


結衣「と、とにかく早くお団子をあかりに戻せって」


京子「わ、わかったよ」カポッ


ちなつ「京子先輩、もう1個のお団子はどこですか?」


京子「引っ張ったときに勢いがよすぎてどこかに転がってっちゃった」


あかり「そんなぁっ!?」ガーン


――

あかり「ううっ…あかりの存在感がぁ~」シクシク


結衣「大丈夫だよ、あかり。ちゃんとみんなで探すから。ほら、京子も探せよ」


京子「そうは言ってもな~。存在感の薄いあかりのお団子となると、見つけるのも骨が折れそうだし」


ちなつ「いや、そもそも京子先輩のせいじゃないですか…」


――

30分後


結衣「おかしいな。これだけ探しても見つからないなんて…」


ちなつ「転がってどこかの隙間にでも入っちゃったんでしょうか?」


京子「ん~。もう遅いし続きは明日にしない?」グデー


結衣「こうなった原因が何をのんきにくつろいでるんだ…」


あかり「で、でも確かに少し暗くなってきたね。あかりのせいでみんなの帰りが遅くなるのは悪いよぉ」


――

結衣「ごめん、あかり。明日もちゃんと探すから」


あかり「ありがとう、結衣ちゃん」


ちなつ「あかりちゃん、私も手伝うよ」


あかり「ちなつちゃんもありがとう!」


京子「よかったなぁ、あかり。やっぱり持つべきものは友達だな!」


結衣「いい話風にまとめようとしても、おまえのせいだからな…」


――

翌日 放課後 部室


京子「京子ちゃん参上~っと!」ガラッ


京子「あれ、まだ誰も来てないのか」


京子「結衣とちなつちゃん、早く来ないかな~」


京子「そういえば...あかりのお団子が1個なくなったままだっけか」


京子「結衣たちが来るまで暇だし探してみるか~」ヨイセット


――

京子「昨日は部室をあれこれ探したけど、全然見つからなかったんだよな~」


京子「まぁ、私はほとんど眺めてるだけだったけど」


京子「まったく、存在感のないところまであかりに似なくてもいいのにさ」キョロキョロ


京子「おっ…?」


京子「押し入れのところにあるやつ、もしかして…」


京子「見つけた!あかりのお団子だ!」


――

京子「な~んだ、こんなところにあったのか」ヒョイッ


京子「けど、おかしいな。昨日は押し入れのところも散々探してたはずなんだけど」


京子「そんなに大きくないから見落としてたのかな~?」


京子「ま、いっか。これで一件落着ってわけだね!」


ちなつ「こんにちは~」ガラッ


――

京子「おっ、ちなつちゃん!待ってたよ~ん」


ちなつ「あれ?結衣先輩、まだ来てないんだ」


京子「ちなつちゃ~ん。愛しの京子先輩ならここにいるよ~!」


ちなつ「それじゃ、結衣先輩が来る前にお茶の準備でもしておこうかな」クルッ


京子「無視!?」ガビーン


――

ちなつ「あかりちゃんのお団子、早く見つかるといいなぁ」


京子「ちなつちゃん!それなら私がさっき見つけたよ!ほらほらっ」


ちなつ「早く見つけてあげないと、あかりちゃんがかわいそうだし」


京子「おーい!ちなつちゃん、聞いてる~?」


結衣「あ、ちなつちゃん。もう来てたんだね」ガラッ


――

ちなつ「結衣先輩、お疲れ様です!私もちょうどいま来たところですよ!待っててください、いまお茶いれますね」


結衣「ありがとう、ちなつちゃん」


京子「ちなつちゃん、私にもお茶ちょーだい!」


ちなつ「はいどうぞ、結衣先輩!今日は新しい茶葉を使ってみたんですよ。お味はどうですか?」


結衣「ありがとう。ほんとだ、すごくいい香りがするね。ちなつちゃん、お茶選びのセンスあるなぁ」


ちなつ「や~ん!結衣先輩に褒められるなんてチーナ感激ですぅ~!」


京子「あ、あの~。ちなつちゃん、私の分は?」


――

結衣「そういえばちなつちゃん。今日はあかりと一緒じゃないの?」


ちなつ「はい。あかりちゃん、今日は家族でお出かけみたいで、部活は休むって言ってました」


結衣「そうだったんだ。それなら私たちで早くあかりのお団子を見つけてあげないとね」


ちなつ「そうですね。私も頑張って探します!」


京子「いやいや、だからあかりのお団子ならこの京子ちゃんが見つけたってば!ほらっ!」


――

結衣「まだ調べてなかったところってどこかあったかなぁ」


ちなつ「もしかして、外に転がっていったりしてませんかね?」


結衣「確かに昨日は部室の中だけ調べてたね。今日は軒下の辺りも探してみようか」


ちなつ「はいっ!」


京子「ちょ、ちょっと結衣ってば!何でさっきから無視するの!?」


――

京子「もしかして…昨日あかりをからかったこと怒ってるの?」


結衣「…」


京子「わ、私もちょっとやりすぎたって思ってるよ!でもほら、ちゃんとあかりのお団子見つけたよ!」


ちなつ「…」


京子「ちなつちゃんも何とか言ってよ!どうして私のことを無視するの!?」


――

京子「ねぇ、どうしてなの?こんなのひどいよ!」


京子「何でさっきから黙ってるの?言ってくれなきゃわかんないよ!」


京子「うぅ…」グスッ


京子「何で…どうして…」


京子「結衣ぃ…ちなつちゃん…」ヒクッ


結衣「軒下にもないかぁ。ちなつちゃん、そっちはどう?」


ちなつ「床の間も調べてるんですけど、見つからないです…」


結衣「まいったな。本当にどこにいったんだろう」


京子「…」プツンッ


――

京子「あのさぁ…いい加減にしてよ!」


京子「確かに昨日のことは私が悪かったよ!あかりにはちゃんと謝る!でも、いくら何でもこんなのってないよ!」


京子「みんなして私のこと無視して…まるで私がいないみたいに…」


京子「もういいっ!結衣なんてだいっきらい!ちなつちゃんもきらい!私もう帰るからね!」


京子「どいてよ、結衣!そんなところに立ってられたら部室から出られないってば!」


スウッ


京子「えっ…?」


――

京子「な、なんで…?結衣の肩を掴んだはずなのに、すり抜けた…?」


京子「も、もう一回…」スウッ


京子「や、やっぱり!何で?何で結衣の身体に触れないの!?」


京子「結衣だけじゃない。ちなつちゃんにも触れないよ…」スウッ


京子「な、何がどうなってるの?夢?これは夢なの…?」ヘナヘナ


コロッ


――

ちなつ「なかなか見つかりませんね。結衣先輩、ちょっと休憩しませんか…って!ひゃあぁっ!」


結衣「どうしたの、ちなつちゃん!うわっ!?」


ちなつ「きょ、京子先輩…。いつ来てたんですか?脅かさないでくださいよ、心臓止まるかと思いました…」


京子「えっ!?いや、その…」


結衣「ほんとだよ…。押し入れの中にでも隠れてたのか?」


京子「ま、まぁそんなとこかな」ハハハ…


ちなつ「いるならいるって言ってくださいよ…。京子先輩の分のお茶もいれてあげますから」


京子「あ、ありがとう。ちなつちゃん…」


――

京子「(ど、どうなってるんだろう。私が泣きそうになったから、二人とも無視するのをやめてくれたのかな?)」


京子「(でも…結衣もちなつちゃんも、私をわざと無視してたんだとしたら何か変だ)」


京子「(さっきの二人の反応…まるで私の声も聴こえないし姿も見えないみたいだった)」


京子「(そ、それに結衣やちなつちゃんの身体に触れようとしたら、すり抜けて触れなかったし)」


京子「(あの感覚は絶対に勘違いなんかじゃない。本当にすり抜けてた)」


京子「(けど、今は結衣たちに私の声は聴こえてるみたいだし、身体もすり抜けたりしない…)」


京子「(いったい何がどうなってるんだ…?)」


――

京子「(何か原因は…あっ!)」


コロンッ


京子「(そうだ、お団子だ!さっきはあかりのお団子を手に持ってた!)」


京子「(今はお団子に触ってない。もしかしてこれが原因!?)」


結衣「それしても、本当に見つからないね」


ちなつ「そうですね。部室もそんなに広くないからすぐにでも見つかると思ったんですが…」


京子「(もしかして…結衣たちにはお団子そのものが見えてない?)」


――

京子「(きっとそうだ。いくら何でも、こんな目立つところに落ちてるお団子に気づかないわけないよ)」


京子「(昨日いくら探しても見つからなかったのも、多分そう…)」


京子「(もしかして…お団子を取った私にだけ見えてるのかな?)」


京子「(持っているだけで姿が見えなくなって声も聴こえなくなる。それどころか触れることもできなくなるなんて…)」


京子「(冗談抜きに本当の透明人間じゃん…)」


京子「(まさかあかりのお団子にこんな秘密があったなんて…)」


――

夜 京子の部屋


京子「あかりのお団子、部室から持って帰ってきちゃった…」


京子「どうも透明になるのは手に持ってるときだけみたいだね。鞄に入れてるときは何も変わらなかったし」


京子「さっきはびっくりしたけど…でも、こんな面白いもの使わない理由がないよね!」


京子「透明人間になればあんなことやこんなことも…」


京子「いや~明日が楽しみだなぁ!」ニシシ


――

翌朝 通学路


ちなつ「あかりちゃん、おはよ~」


あかり「おはよう、ちなつちゃん!昨日はごらく部に寄れなくてごめんね」


ちなつ「そんな気にしないで。むしろ私の方こそごめんね。昨日も結衣先輩と部室を探してみたんだけど、やっぱり見つからなくて…」


あかり「そうだったんだ…。けど、ちなつちゃんと結衣ちゃんがあかりのために探してくれただけでうれしいよ!」


結衣「おはよう、二人とも」


ちなつ「おはようございます、結衣先輩!」


あかり「おはよう、結衣ちゃん」


結衣「あかり、お団子のことなんだけどさ。昨日もちなつちゃんと部室を探してみたんだけど、どうしても見つからなくて…」


あかり「結衣ちゃん、そのことなんだけど…」


――

結衣「えっ、探すのを諦める?」


ちなつ「あかりちゃん、お団子が片方なくて大丈夫なの?」


あかり「うん。最初はびっくりしたけど、髪が長くなったらまたお団子は作れるから…。それに、結衣ちゃんにもちなつちゃんにもこれ以上迷惑はかけられないよ」


結衣「迷惑だなんてそんな…。けど、あかりがそれでいいなら私も合わせるよ」


ちなつ「そうですね。もし見つかったら、その時にあかりちゃんに教えてあげればよさそうですし」


京子「何なに!?何の話してるの~?」ヒョコッ


――

結衣「おまえがやらかしたことの後始末だよ」


京子「そんな人聞きの悪い…。これだからツンデレ結衣にゃんは」ピエン


ちなつ「京子先輩、ちゃんと反省してくださいね」


京子「わ、わかってるよ。ごめんごめん」


結衣「謝るなら私たちにじゃなくてあかりにだろ」


あかり「京子ちゃん、あかりなら大丈夫だよ。だから気にしないでね」


京子「りょうか~い!そんじゃ、一件落着ってことで!」


結衣「まったくおまえってやつは…。ほんと調子いいんだからな」ハァ


――

放課後 七森中 2-5教室


京子「は~やれやれ。やっと授業終わった~!」ノビー


結衣「居眠りばっかしてて疲れるも何もないだろ」


京子「ノンノン!充実した放課後のためにエネルギーを溜め込む必要があったわけで!」


結衣「はいはい。あかりたちを待たせてもあれだし、早く部室に行くぞ」


京子「あっ、ごめ~ん。今日はちょっと野暮用あるから京子ちゃんはお休みです!そんじゃまた明日ー!」バビューン


結衣「はぁ?ほんと自由すぎるだろ…」


――

廊下


京子「へへへ~、ようやく待ちに待った放課後だ!」


京子「あかりの透明お団子(仮称)で遊んじゃお~っと!」


京子「最初のターゲットは誰にしようかな~?」ムフフ


グゥー


京子「ありゃっ、もうお腹ペコくなってきた」


京子「そうだ!せっかくだからお団子を使って…」アッカリーン


――

生徒会室


京子「お邪魔しま~す!」


京子「って、透明化してるから聴こえないんだけどね」


京子「さてさて、ターゲットは…」


京子「おっ、いたいた」ニシシ


――

綾乃「体育祭も近いし…今週は生徒会で忙しくなりそうね」


綾乃「けど、そこは生徒会副会長として頑張らなきゃ!ファイトファイトファイファイビーチよ!」


京子「綾乃、一人でいる時もあのギャグ言ってるんだ…」プクク


綾乃「それに、頑張ったご褒美に特製のプリンも用意してるんだから!」


京子「おっ、それそれ!そういうのが聞きたかったの!」


綾乃「雑誌で紹介されてた有名店のプリン、奮発して通販で取り寄せたのよね~」ニコニコ


京子「ほうほう!」


――

綾乃「隠し場所だってちゃーんと選んでるんだから!」


綾乃「ここなら歳納京子にも大室さんにも見つからない!完璧だわ!」


京子「全部丸わかりカリマンタン島なんだけどね~」


綾乃「はぁ~、今からもう待ち遠しいわ」ルンルン


――

千歳「綾乃ちゃ~ん、ちょっとえぇ?」ガラッ


綾乃「あら、千歳。どうかしたの?」


千歳「体育祭のことで先生から話があるみたいでな~。綾乃ちゃんも一緒に職員室まで来てくれへん?」


綾乃「わかったわ、一緒に行きましょう」


京子「チャーンス!」


――

京子「うへへっ。それでは綾乃の特製プリン、ありがたくちょうだいいたす!」パクッ


京子「んん~、美味しい!これは絶品星3つ!」


京子「濃厚な生クリームにほろ苦いカラメル!そして贅沢に添えられたメロン!」


京子「これはスプーンが止まらないや!」パクッモグッ


京子「もう1個いってみよー!」ムシャッハムッ


京子「は~、あっという間に食べちゃった。満足満足♪」


京子「それじゃ、元に戻しておこうっと。もう中身はないけどね~」


――

10分後


千歳「綾乃ちゃん、付き合ってもらってありがとな~」


綾乃「いいのよ。二人で行ったおかげで話も早く済んだみたいだし」ガラッ


京子「おっ、綾乃たち帰ってきたか。どんな反応するかな~」ニヤニヤ


綾乃「あらっ、大室さんたちはまだみたいね」


千歳「そういえば、1年生は今週ホームルームがあるって話やったなぁ。それで長引いてるんやない?」


綾乃「そうだったのね。それなら、ちょうどいいタイミングかも。千歳、よかったら一緒にプリン食べない?」


――

千歳「ええの?確か綾乃ちゃんがお取り寄せした有名店のプリンやろ?」


綾乃「2人分あるから大丈夫よ。いつもお世話になってる千歳へ日頃の恩返しってところ」


千歳「そうなん?ありがとうな、綾乃ちゃん。それなら、一緒にいただくわぁ」


綾乃「ちゃーんと隠してあるから安心アンコールワットよ!あ、あら?」


千歳「綾乃ちゃん、どうしたん?」


綾乃「わ、私の秘蔵のプリンが…。な、何よこれ?どうして全部食べられちゃってるのっ!?」ワナワナ


――

綾乃「絶対バレないように隠してたのに…。こんな、こんなことって…」フラフラ


千歳「あ、綾乃ちゃん。しっかり!」


綾乃「お小遣い奮発して買ったのに…。まだ一口も味見してないのに…」ドヨーン


京子「あははっ!綾乃ってばショック受けすぎだって!」


櫻子「遅くなりましたーっ!」ガタンッ


向日葵「ちょっと、櫻子!ドアを乱暴に開けすぎですわ」


――

櫻子「あれっ?杉浦先輩、どうしたんですかー?」


綾乃「プリン…私のプリンが…」ドンヨリ


櫻子「あーっ!さては私に黙ってプリンを独り占めしてたんですか!?」


向日葵「そんなわけないでしょう、あなたじゃあるまいし…。いったい何があったんですか?」


千歳「いや、それがなぁ。綾乃ちゃんが大事にとってたプリンが誰かに食べられてもうたんや」


櫻子「えぇーっ!?そんなの許せません!犯人めーっ!よくもこの櫻子さまのプリンを!」


向日葵「だからあなたのじゃないですわよ、このおバカ」


――

廊下


京子「いや~面白かった!」


京子「それにしてもさっきの綾乃の顔!結衣たちにも見せてやりたかったな~」アハハ


京子「プリンも美味しかったし、あかりのお団子さまさまだな!」


京子「さ~てと、次は何をしよっかな~」


京子「透明になってやりたいことがたくさんありすぎて悩んじゃうよ!」


――

通学路


京子「せっかく透明になれるんだから、誰かの家にこっそりお邪魔しちゃおうかな~?」


京子「ここからだと…あかりの家がすぐ目の前だな」


京子「そうだ!前から気になってたあかりのお姉さんの部屋にでも入ってみるか!」


京子「透明になってれば絶対バレないもんね!」


京子「よ~し!京子隊員、いざ決死の突入作戦実行だ!」


あかね「あら、京子ちゃん」


京子「ぴえっ!?」ビクッ


――

あかね「ごめんなさいね、驚かしちゃって。今日はあかりと一緒じゃないのね」


京子「は、はひっ!き、今日はその色々ありましてっ…」シドロモドロ


あかね「もしかして、あかりに会いに来たのかしら?まだ帰ってはきてないけど…」


京子「い、いえ。たまたま近くに寄っただけで…。そ、それじゃあ失礼しまっす!」バビューン


あかね「ふふふっ、相変わらず面白い娘ねぇ」


――

京子「はぁ~っ、心臓止まるかと思ったぁ…」ゼイゼイ


京子「完全に後ろとられてたって!結衣がよくやってるゲームだったら確実にスニークキルされてたよ!」


京子「あかりのお姉さん、ほんとハンパないな…」ゴクリ


京子「何だろう、あかりのお姉さん相手だと透明化してたとしてもバレそうな気がする…」


京子「赤座家突入作戦は延期しよう…」


京子「気を取り直して…次は何をしようかな」


京子「おっ、あれは…」


――

ちなつ「それじゃ、あかりちゃん。また明日ね!」


あかり「ばいばい、ちなつちゃん。明日もよろしくね~」


京子「ちなつちゃんにあかりか。今日は思ったより部活は早く終わったのかな?」コソッ


京子「そうだ!このままちなつちゃんについて行ってお邪魔しちゃお~っと」


京子「そうと決まれば即行動!京子隊員の決死の突入作戦パート2!」


京子「えへへっ、楽しみだなぁ~」アッカリーン


――

吉川家


ちなつ「ただいま~」


京子「お邪魔しま~すっ!」


ともこ「おかえり、ちなつ。今日は少し早かったわね」


京子「ちなつちゃんのお姉さん、ほんと美人さんだなぁ~」


ちなつ「あれっ。お姉ちゃん、今日は友達と予定あって帰り遅いんじゃなかったっけ?」


ともこ「そ、そのはずだったんだけどね。いざ当日になったら誘う勇気がでなくて…」


ちなつ「も~、お姉ちゃんってば。恋愛はガツガツいかないと大切な人もとられちゃうよ?」


ともこ「そ、そんな…。確かにあかねちゃんは大切で素敵な友達だけど、恋愛なんてそんな…//」アタフタ


――

ともこ「そ、それよりちなつ。もうお風呂わいてるわよ。ご飯の前に入る?」


ちなつ「ん~、そうしようかな。今日は午後に体育もあったから、早くさっぱりしたいし」


京子「おおっとぉ!?」ガタッ


京子「さ、さすがにこれはマズいかなぁ~?」


京子「でもでもっ!ちなつちゃんとは前にも一緒にお風呂入ったこともあるしっ!」


京子「ちょっとくらいはいいよね?ちょっと見るだけ!減るものじゃないし!」


京子「と、突入作戦開始~!」


――

浴室


ちなつ「はぁ~、やっぱりお風呂は気持ちいいなぁ」


京子「むほほっ!ちなつちゃんの生入浴シーン!」


京子「一緒にお風呂に入ったことはあるけど…。何だろう、この背徳感//」ドキドキ


京子「こっそり覗き見てると思うと…何だかイケナイ気分になってくるなぁ//」


京子「こ、これ以上はさすがにっ!お、お邪魔しましたーっ!//」バビューン


――

通学路


京子「はぁはぁ…。さっきはちょっとやりすぎちゃったかな~?」


京子「まぁ、透明人間になったらやることの定番だし!これも経験ということで!」


京子「まだまだ遊び足りないなぁ。さてさて次は何をしようかなっと…」


京子「お?噂をすれば…結衣みーっけ!」


――

京子「さっきのちなつちゃんたちの様子だと部活は早めに終わったんだろうし…さてはどこか寄り道してたな?」


京子「ん?よく見ると何か手に持ってるな」


京子「袋…かな?買い物でもしてきたのか。私がいないときだと、どんなところに寄ってるんだろ?」


京子「くぅ~、気になる!」


京子「よし!ついて行って確かめるか」アッカリーン


――

結衣宅


京子「たっだいま~!って、聴こえないけどね」


京子「結衣のやつ、何を買ってきたんだろう?」


京子「おっ、袋から開けるみたいだ」


京子「けっこう大きい袋だけど何だろう?もしかして、他人には見せられないようなものだったりして!」


結衣「…ふふっ。やっぱり買ってよかったなぁ」


京子「あれは…ぬいぐるみ?」


――

京子「何だよ~。期待してたのに、ただの動物のぬいぐるみじゃん」


結衣「これでキミもうちの子だよ。よろしくね、キョッピー」


京子「きょ、キョッピーww結衣さん、ぬいぐるみに名前つけるにしてもキョッピーってwww」ブハッ


結衣「キョッピーはふわふわであったかいね。ずっとこうしてたいな」ムギュー


京子「だ、だめだ。笑いすぎてお腹いたいwww」ヒーヒー


――

結衣「ねぇキョッピー。相談したいことがあるんだけど…いいかな?」


京子「ちょ、何が始まるんですwww」


結衣「京子のやつ、部室にも寄らないで帰っちゃったんだ。泊まりに来ると思ってラムレーズンも買っておいたのに…」


京子「ぬいぐるみと話し出したwww」


結衣「京子は私の気持ちも知らないで…。キョッピーもひどいと思うよね?」


京子「ぬいぐるみに同意求めるのやめてもろてwww」


結衣「そうだよね!キョッピーもそう思うよね。キョッピーは優しいなぁ」


京子「って、自作自演やないかーい!www」


――

夜 京子の部屋


京子「いや~、今日は本当に楽しかったな」


京子「透明になるとこんなに面白いことができるなんて!いい拾い物をしたもんだよ」


京子「明日は何をしようかな?ひまっちゃんあたりにイタズラしてみようか?それとも千鶴に…」


京子「いやいや、それより結衣にキョッピーネタで爆弾投下してみようかな~?」


京子「くぅ~、やりたいことがありすぎる!明日になるのが待ちきれないよ!」


――

翌朝 京子の部屋


京子「うぅ~。さ、寒気がする…」ガタガタ


京子「風邪でもひいたのかな?昨日あっちこっちほっつき歩いてたのがよくなかったのかも…」


京子「けど、寝る前は何ともなかったのになぁ…。手うがもしてるのに」


京子「お母さんからは念のため休むように言われたけど…お団子で遊べないのはもどかしすぎる!」


――

午後 京子の部屋


京子「えぇーいっ!このまま寝てるなんてもったいない!」ガバッ


京子「熱はだいぶ下がってきたし、もう大丈夫だよね!」


京子「そうと決まれば学校にレッツゴー!」


――

七森中 廊下


京子「もう放課後になっちゃったか…。出遅れた分はしっかり楽しまないとね!」


京子「さてと、どうしよう。部室に行って昨日の件で結衣をいじり倒してやろうかな~?」


京子「生徒会室に行くのもいいな。もしかしたら、また新しいプリンがあるかもしれないし!」


京子「おっ?あそこに見えるは…」


――

千鶴「…」


京子「千鶴じゃ~ん!どしたの、どこ行くの~?」


千鶴「…」


京子「あれっ、反応ないな?それならこれはどうだ!ちゅっちゅ~」


スウッ


京子「へっ?」


――

京子「あれ?すり抜けた…」


京子「そっか!透明化してたの忘れてた」


京子「いや~、私としたことがうっかりうっかり…」ポリポリ


京子「…」


京子「いや、ちょっと待ってよ。まだお団子は手に持ってないよ?」


京子「なのに何ですり抜けて…」


京子「…」


――

京子「か、勘違いだよね!すり抜けた気がしただけで!」


スウッ


京子「…」


京子「もしかして…お団子の力が強くなってる?」


京子「鞄に入れて手には持ってないのに…」


――

京子「と、とりあえず鞄を置いてっ…と」


京子「気を取り直して…お~い!千鶴~」


スウッ


京子「えっ…?」


京子「な…何で!?お団子の入ってる鞄にすら触れてないのに!」


京子「こ、これってまさか透明になったまま戻れなくなったんじゃ…」ゾクッ


京子「急に熱が出たのも、私の身体がおかしくなったから…?」


――

京子「ど、どうしたらいいんだろう?とにかく誰かに気づいてもらわないと…」キョロキョロ


京子「あっ、綾乃に千歳だ!ちょうどいいところに!おーいっ!」


綾乃「あらっ?」


京子「やった!綾乃は気づいてくれた!よ、よかったぁ…」ホッ


綾乃「こんにちは、千鶴さん。今から帰りかしら?」


千鶴「杉浦さん、それに姉さんも。どうかしましたか?」


――

千歳「今日は生徒会が休みでなぁ。うちら、これから駅前までショッピングなんやけど、千鶴も一緒に来うへん?」


千鶴「私は別に予定もないけど、せっかく姉さんと杉浦さんの二人の時間なのに邪魔したら悪いし…」


千歳「たまにはみんなで楽しむのも悪くない思うよ?綾乃ちゃんもえぇよね?」


綾乃「もちろんよ。千鶴さんさえよければ、一緒に行きましょう」


千鶴「(こ、これは姉さんと杉浦さんの関係が深まるのを間近で見れるチャンス…)」ダバー


綾乃「ちょ、ちょっと大丈夫!?」


千歳「あらあら~」


京子「…」


――

京子「あ、綾乃にも千歳にも気づかれなかった…」


京子「このまま誰にも気づかれなかったらどうしよう…」


京子「うぅ…そんなの嫌だよ…」グスッ


アナタッテヒトハ… ナンダトコノー!


京子「あの声は…」


――

櫻子「だーかーらーっ!ほんとに消えてなくなっちゃったんだってばー!」


向日葵「そんなわけないでしょう。どうせ寝坊して慌てて家を飛び出したから忘れてきたにきまってますわ」


櫻子「ちげーし!確かに鞄に入れたんだよ!絶対に宇宙人の仕業だって!」


向日葵「どこの世界に宿題のプリントを消し去る宇宙人がいますの…」ハァ


ちなつ「二人とも何の話してるの?」


櫻子「聞いてよ、ちなつちゃん!宇宙人が私のプリントを消しちゃったんだよ!」


――

京子「さくっちゃんにひまっちゃん。それにちなつちゃんも…。おーい、みんな~!」


スウッ


京子「ううっ、やっぱりダメか…」ガクッ


ちなつ「宇宙人?いったい何の話?」


向日葵「櫻子がまた宿題のプリントを忘れてきたのですわ。それをこの娘ったら、宇宙人に消されたなんて荒唐無稽な言い訳をして…」


櫻子「だって、昨日テレビでやってたのとまるっきり同じなんだもん!鞄に入れてたプリントがなくなるなんて宇宙人の仕業に決まってるよ!」


――

ちなつ「そういえば昨日やってたアニメがそんな感じの話だったね。宇宙人の光線銃で撃たれると消えちゃうんだっけ?」


櫻子「そうそう、それそれ!」


向日葵「アニメって…それなら作り話じゃないの。まったく櫻子は…」


櫻子「いーや、あれは本当にあった話に決まってるよ!もしプリントが消えたのが宇宙人の仕業じゃなかったら向日葵にプリン10人前おごってやる!」


キライジャナイモン~♪


櫻子「何だなんだ、この忙しい時に電話なんて!」


――

櫻子「もしも~し?」


櫻子「なんだ、花子か。櫻子さまはいま忙しいんだよ!」


櫻子「へっ、プリント?」


櫻子「玄関に落ちてたって…。そ、それたぶん私のだ」


櫻子「よ、よく見つけたな!帰ったら櫻子さまが褒めてやるぞ!」


向日葵「…」ジトー


櫻子「そ、そういえば今日は早く帰らなきゃだった~」アハハ…


向日葵「どこのどなただったかしら?プリン10人前なんて大見得を切ったのは…」ガシッ


櫻子「ご、ごめんなさい~っ!」ヒーン


ちなつ「やれやれ、とんだ宇宙人騒ぎだったね…」


――

京子「さくっちゃんたちにも気づいてもらえなかった…」


京子「このまま誰にも気づかれなかったら、この先もずっと一人ぼっちになっちゃうのかな…?」


京子「さっきの話じゃないけど、そのうちみんな私のことを忘れたら、本当に消えてなくなっちゃう…」


京子「い、嫌だ…そんなの嫌だよ!」


京子「そ、そうだ。結衣ならきっと気づいてくれる!」


京子「小さい頃からずっと私を守ってきてくれた、結衣ならきっと…」


――

夕方 結衣宅前


京子「いたっ!やっと見つけた!」ハァハァ


京子「部室にも教室にもいなかったから焦ったけど…まっすぐ帰ってたのか」


京子「結衣!ねぇ結衣!」


結衣「…」


京子「き、聴こえてるよね?ま、待ってよ!行かないで!」


――

結衣の部屋


結衣「はぁ...。京子ってば急に学校休むんだから。心配させるなよな…」


京子「ご、ごめんね結衣。私、ちょっとはしゃぎすぎてたよ…」


結衣「どうせ遅くまで起きてたとかラムレーズン食べ過ぎたとかだろ」


京子「今回はそうじゃないけど…。でも、すごく反省してるよ!」


結衣「私が心配してることもどうせ気づかないんだろうな…」


京子「そ、そんなことないって!結衣が私のことを一番心配してくれてるのは分かってるよ!」


結衣「本当に自分勝手だよ、京子は。そうだよね、キョッピー」


京子「えっ…?」


――

京子「じょ、冗談だよね?そうだよね、結衣?」


結衣「こんなことキョッピーにしか話せないよ」


京子「わ、私を驚かせようとしてるんだよね?昨日のお返しかな?そうだよね?」


結衣「京子のやつ、メールの一つくらいよこせばいいのに…」


京子「聴こえてるよね?見えてるよね?ねえっ、結衣!返事してよ!」


結衣「京子、早く元気になって学校に来てくれないかな。キョッピーも心配してるよね」


京子「私ならここにいるよ結衣!ぬいぐるみなんかと話してないで私を見てよ!私の声に気づいてよ!」


結衣「京子がいないだけでこんなに静かなものなんだね…。そろそろ夕飯の準備をしようか。待っててね、キョッピー」


京子「ゆ、結衣…。何で?どうして気づいてくれないの?結衣ぃ…」グスッ


――

公園


京子「結衣にも…。結衣にすら気づいてもらえなかった…」


京子「もうダメだ…。結衣に気づいてもらえないなら、私はずっと透明で一人ぼっちだよ…」


京子「怖いよ…不安だよ…寂しいよ…」


京子「うぅっ…」


京子「き、きっと罰が当たったんだ…」


京子「みんなにイタズラして迷惑かけたし…」


京子「そ、それにあかりをからかったのも私だ…」


京子「あはは…私って最低だなぁ」


京子「姿も見えないし声も聴こえない。触れあうこともできない…でもそれでよかったんだ」


京子「どうせ私はみんなと関わっても嫌な思いをさせちゃうんだ。だったら最初からいない方がよかったんだ…」


京子「さよなら、みんな…」











あかり「あれっ、京子ちゃん?」


――

京子「あ、あかり…。不思議だな、最後に会えたのがあかりだなんて…」


京子「いつもからかってごめん…。ひどいやつだよね、私って…」


京子「大切な友達にいないように扱われる怖さや寂しさ、私にもようやく分かったよ…」


京子「だからせめて言わせて。あかり、今までごめんね…」


京子「もう…私の声は届かないだろうけど…」


あかり「京子ちゃん、風邪はもう大丈夫なの?」


京子「えっ…?」


――

京子「あかり、もしかして私の姿が見えるの?声も聴こえるの…?」


あかり「えっ?それはもちろん見えるし聴こえるけど…」


京子「ほ、本当にっ!?」ダキッ


あかり「わっ!ちょっと、京子ちゃん!?」


京子「本当だ…すり抜けない!」ギュウッ


あかり「もうっ、いくらあかりの存在感が薄くてもすり抜けたりなんかしないよぉ~」


京子「よかった…よかったぁ…」グスッ


あかり「京子ちゃん、どうしちゃったの?」


京子「もう少しだけこのままでいさせて…」


あかり「そ、それはいいけど…」


――

翌日 放課後 部室


京子「京子ちゃん奇跡のふっか~つ!」


結衣「一日休んだくらいで大げさだな」


京子「もっと素直に喜んでいいんだよ結衣?愛しのキョッピーが戻って来たんだから!」


結衣「なっ…。おまっ、どこでそれを…//」


あかり「京子ちゃんが元気になってよかったよ~」


ちなつ「まぁ、京子先輩がいないとそれはそれで落ち着かないですしね」


――

京子「(あかりに気づいてもらえてからは、いつもどおりの日常が私を待っていた)」


京子「(もう私の姿が見えなくなることも、声が聴こえなくなることもなかった)」


京子「(もちろん、大切な友達に触れられないなんてこともない)」


京子「(鞄に入れていたあかりのお団子は、いつの間にか消えてなくなっていた)」


京子「(消えてなくなるはずだった、私の身代わりにでもなったみたいに)」


京子「(不思議な数日間が過ぎ去って、代わり映えのない、それでいて何よりも愛おしい日々が戻ってきた)」


京子「(それでも一つだけ変わったことがある。私はもう、あかりの存在感をからかったりはしなくなった)」


京子「(誰にも気づかれないことの怖さや悲しさを知った今では、たとえ冗談でもそんなことはできなくなったからだ)」


京子「(それにしても、どうしてあかりだけは最後まで私に気づいてくれたんだろう)」


京子「(いや、そんなことは考えるまでもない。あかりはいつだって私のことを、私たちのことを考えてくれているから)」


京子「(小さい頃に押入れの中に隠れたあの時から何も変わってない。あかりが一緒にいてくれるだけで、不安な思いや怖い思いをすることはなかった)」


京子「(あかりの髪が長くなったその時には…今度は私がお団子を結ってあげよう)」


おわり


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