2019-04-01 14:22:14 更新

概要

用心棒はたまに思い出す。
幼き日の思い出。
かつて愛し、愛された人。
彼をこの道へと押し進ませた人。
今回はそんなお話。
に、しようと思ったんですが、構想の途中で予定が変わり、ただ用心棒の過去を振り返るだけになりました。ごめんなさい。許してください、何でも島風。


前書き

大したことじゃあないが、一つ話をしてみよう。悲しくもないし、面白くもない、ただのどこにでもあるお話だ。まあ、聞きたい奴は聞いて行けよ。


※r-18的な表現があります。グロ的なのもあります。極力控えるようにしますが、嫌いな方は見ないようにお願いします。








かつてのいつか





少女「お~い、早くおいでってば!」


少年「待て、俺とて体力は無限ではないのだ。少しは加減せよ。」


少女「やーだもん、トンくんってば、おじいちゃん見たーいw。クスクス。」


少年「小娘・・・、貴様、俺を老体と嘲ったな。よかろう、この俺の本気を見よっ。」


少女「え、ちょっと、はや、ちょ、いきなりなんてずるーい!」


少年「この東郷、もはや手加減せん!」


少女「まってーーーー!」







少女「ぜい・・・ぜい・・・・。トンくん、早すぎるよお。」


東郷「当然であろう。貴様と俺では、そも、基礎的な能力に爆発的な差があるのだ。」


少女「ふん!別にいいもん。私だって博士に頼んでもっと強くしてもらうもん!」


東郷「ハハハ!あの小男がそんなばかばかしい頼み、聞くものか。ハハハハ!」


博士「ほう、君にとって私はそんなに狭量な男に見えたかね。」


少女「あ、博士ー!」


東郷「いやいや、そんなことは言っていない。ただ、その生まれた理由からして、これ以上の強化は許されないことは明白であるからそういっただけのこと。」


博士「やはり、君は逸材だね。」


少女「えー、博士。私はトン君みたいに強くなれないのー?」


東郷「・・・なあ、最前から気にしていたのだが、その、トン君とはどういうことだ?」


少女「東郷だとー、一番初めの文字がヒガシでしょー?だから、東を中国語にすると、トンだから、トンくん!いいでしょ?」


東郷「いや、別に悪くはないが・・・、どうにもトンという響きは、豚畜生ともとれるから、あまり好かん。いや!別に、貴様がそれを気に入っているなら別にかまいはせんのだが。」


博士「良いじゃないか。トン君。いい響きだよ。」


少女「ほら!」


東郷「む、むう・・・。」


博士「それで、西郷君はこれ以上強くなれないのか、という事だったね。」


西郷「うん。」


博士「それはムリだね。残念だけど。」


西郷「えー、なんでー?」


博士「君はPSY(サイ)の才能を持って生まれてきたからね、その才能を伸ばすことにしているんだ。」


東郷「・・・。」


西郷「むうー、わかった・・・。」


東郷「博士、ちょっと話が。」


博士「なんだね。」


東郷「奴の実験は・・・もう少しどうにかならんのか?」ヒソヒソ


博士「どうにか、とは?」ヒソヒソ


東郷「その・・・あの機械が、結構うるさくてだな・・・。」ヒソヒソ


博士「ああ・・・。」


東郷「どうにか、頼むぞ!」


博士「わかったよ。」









数年後


キィィイイイイーーーーン・・・・・


東郷「・・・。」


東郷「(またこれだ。)」


東郷「(この耳鳴り、うっとうしいことこの上ない。)」


東郷「一体何が原因なのやら。」


西郷「ただいま~・・・。」


東郷「おう。」


西郷「あー、疲れたー。」ボフ


西郷「何を難しい顔をしてるの?」ムク


東郷「最近、耳鳴りがひどくてな。」


西郷「ふうん。」


東郷「ドクに相談してみようか。」


西郷「そうしてみたら。」


東郷「お、直ったぞ。」


西郷「あたしもう寝るわ。」







博士「さあ、今日も身体能力のテストをしてみようか。」


東郷「またか。いい加減一㌧強の牛を屠るのも飽きたぞ。」


博士「まあ、そういわずに。」


東郷「・・・。」


博士「・・・。」


東郷「始めよ。」


博士「テスト開始。」


「ほら、出番だぞ。」


「しっかり働け。」


猛牛「ブルルルルゥゥゥ・・・・。」


東郷「いつもと比べて強そうだな。」


博士「特に気性の荒いやつを選んだからね。」


猛牛「ブォォオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」


東郷「・・・。」


青年は肩幅より少し大きい程度に足を開き、腰を深く落とす。

二百メートル先から爆走する猛牛に対して真正面に構え、その眼は牛の眉間をまっすぐとらえている。

青年も突進し、猛牛との相対速度がぐんと上がる。

激突。

金属同士を打ち合わせたような硬い音が周囲に響く。

その叩音の中心には互いにかみ合って一歩さえも引く様子はない青年と雄牛。


東郷「(軽い。)」


青年は雄牛を強くつかみ、そのまま天頂まで持ち上げる。はたから見る者には、太陽の中に雄牛の猛々しい姿が影となって見えている事だろう。

瞬間、雄牛は地面にあおむけで叩き付けられた。大地を驚愕させ大気を震え上がらせるほどの剛衝。


東郷「こんなものか。」


博士「Wunderbar!(素晴らしい)Wunderbar!(素晴らしい)」


博士「予想外の成長性だよ!いやあいいデータが取れた。」


東郷「俺も自分自身で己の成長に驚いているところだ。まさかこれほどとはな。」


博士「ところで、角の傷は何ともないのかい?」


東郷「ああ、とうとう奴の角さえ刺さらなくなった。俺の皮膚が固くなりすぎたらしい。」


博士「ふむ、そんな段階まで進化していたのか。」


東郷「そのようだな。」


博士「ところで、西郷君から聞いたのだが、耳鳴りに悩んでいるとか。」


東郷「うむ、このところずっとなのだ。」


博士「ふむ、少し検査してみようか。」


東郷「ああ、また今度で頼む。」


博士「わかったよ。」


東郷「頼むぞ。」







用心棒「(そのあと、とうとう耳鳴りの正体はわからなかった。)」

用心棒「(というのも・・・。)」







翌日



東郷「出頭命令?」


博士「東郷君と西郷君にもみたいだね。」


東郷「唐突だな。」


博士「教えてなかったけど、今の日本には徴兵制があるんだよ。出頭命令が来るのは基本的に男子だけなんだけど、例外的に何らかの強力なまたは特     殊な能力を持っている女子に限り出頭命令が来るんだ。」


東郷「なるほど。しかしまて。その特殊な能力とかはどうやって見分けるのだ。」


博士「これも教えて無い事なんだけど、この施設はそのためにあるんだ。」


東郷「ほう。」


博士「日本に生まれた新生児は漏らさずこの施設にいったん預けられ、特筆すべき能力なしと認められた子供は両親の下へ返される。」


博士「何かしらの能力があると認められた子供はそのまま施設で預かり、その能力を成長させ、十分に成熟させたのち、徴兵される。」


東郷「横暴だな。」


博士「まあ、そんなものだよ。」


東郷「ならば拒否する。」


博士「無理だよ。」


東郷「だろうな。言ってみただけだ。」


博士「・・・。」


東郷「いつまでに来いとある。」


博士「明日。」


東郷「そうか、ならば今日の内に準備してしまおう。」


博士「・・・。そういえば、君に一つ言っていなかったことがある。」


東郷「艦娘とやらの司令官の適正か。」


博士「・・・。やはり、何から何まで御見通しか。」


東郷「俺の情報網をなめるな。」


博士「・・・ふふ。」


東郷「・・・。」


東郷「そういえば、俺も貴様に一つ言っておらんかったことがあるな。」


博士「なんだい、それは。」


東郷「俺には二つ三つ特殊な能力が備わっているようだ。」


博士「ほう。」


東郷「まあ、そんなに大きな声で語ることでもないし、一つだけ教えておいてやる。」


博士「・・・。」


東郷「俺は前世の能力をそのまま次の生に受け継ぐ、所謂゙強くてニューゲーム゙ができるらしい。」


博士「なんとなく、そんな気はしていたよ。」


博士「確証が、なかったからね。はっきりは言わなかったけど。」


それ以上何も言わずに立ち去った。何も言うことはなかったし、これ以上うだうだ会話する必要もない。

その夜、俺はやつにこのことを伝えた。やつも驚きはしたようだが、兵役に服することに概ね反対はしなかった。ただ、俺の特殊な力に関してだけは、


西郷「なにそれ、ずるい。」


といっていた。


次の日、俺たちは軍学校へ出頭し、そのまま軍学校で一年過ごすことになった。

軍学校で叩き込まれる知識は、奴は初めて知る知識に目を輝かせていたが、俺としては別段大したことは言っていないので、まあ、こんなものかと思っていた。

軍学校で過ごす間、奴が告白されたり、俺が告白されたり、それを巡って修羅場になったりいろいろあったが、めんどくさいので語らん。

軍学校を卒業する際、奴は懸命に勉学に励んでいたこともあって、首席で卒業していた。卒業式の日、奴はぼろぼろ泣いていたらしいが、俺は知らん。

俺は当初の予定通り、艦娘の司令官として就任することになった。奴は、PSYの能力をかわれて特殊部隊に入ることになったと言っていた。

これからは、俺が提督となってからのことを語ることにしよう。










用心棒:提督期







※ここからは、東郷→提督という風に表記が変わりますが、中身は変わりません



提督「まったく、上層部の連中も頭が固くて器の小さい奴らばかりよな。いくら俺は軍学校生時代に元帥の孫とその取り巻きをギッタンギッタンのメタンコの[ピーーーーーー]にしたからいって、何もこんな辺境に飛ばすことない。というか、される方が悪い。」


俺が配属された島は、沖縄本島と宮古島のちょうど中間あたりに位置する、地図に載らないような周囲一キロ程度の小さな小さな島だった。

樹木は一本もなく、バスケットボール大のでかい岩がごろごろしている。いくらなんでも無茶だと思うのは俺だけではあるまい。


提督「司令塔なし、艦娘寮なし、港湾施設なんぞあるはずもない。」


提督「横暴が過ぎる。あの[自主規制]ども、今度あったら頭がもげるまで普通の人間位の力でひっぱたいてやる。」


提督「さて・・・。」


提督「おい、そこの。」


??「!?」ビクッ


提督「さっきからこそこそと怪しいぞ。用があるならば姿を現せ。」


??「・・・。」ソーッ


提督「・・・。」


??「・・・エ、エット・・・。」


提督「・・・俺は三代目東郷平八郎。貴様の名はなんという。」


??「ム、ムラクモ・・・デス・・・。」


提督「なあにい!?声が小さすぎて聞こえんなあ!もっとでかい声で言え!」


叢雲「ぴっ!・・・・む、叢雲です!吹雪型5番艦!叢雲です!」


提督「よろしい。やればできるのだろうが、最初からそうすればよいのだ。自信を付けよ。」


叢雲「は、はい・・・。」


提督「声が小さい!」


叢雲「は、はい!」


提督「どもるな、はっきり喋れよ、できるな!間違っていたら正してやる!」


叢雲「は、はい!!」


提督「直っていないッ!もう一度、いいな!」


叢雲「はい!」


提督「よろしい。これから俺とともにこの島を発展させていくのだ、もっとしゃんとせよ。」

叢雲「あの・・・聞いてもよろしいでしょうか。」


提督「許可する。」


叢雲「なぜ、こんな草の一本もない島が我々の拠点なのでしょうか。」


提督「さあ?」


叢雲「へ?」


提督「俺にもわからん。期待されているのか試されているのか、それとももとよりここに捨て置くつもりだったのか。真偽は定かでないがな。」


叢雲「ですが、この島ではあまりにもハンディキャップが大きすぎるのではないでしょうか。」


提督「普遍的な思考しかできんものにとってはな。」


叢雲「どういうことでしょうか。」


提督「少しばかりこの島を調べてみた。すると、海岸線の土は痩せ衰えて、もはや砂と同じほどで復活させるのに時間を要するが、島の中央あたりの土は海岸線と比べて幾分かましだった。」


叢雲「どういうことでしょうか・・・。」


提督「育てようと思えばいくらでも育つ、樹木はな。」


叢雲「ですが、それでは足りないのでは・・・。」


提督「無論だ。なので、洞窟を掘る。」


叢雲「洞窟を・・・。人力ででしょうか。」


提督「無論だ。」


叢雲「つるはしはおろかシャベルすら見当たりませんが。」


提督「素手でやる。」


叢雲「・・・。」


提督「おい、俺は普遍的な思考しかできないものでは、と言ったはずだぞ。俺にとってはこの程度造作もない。」


叢雲「・・・。」


提督「俺は断じて異常ではない。しいて言うならば、素手で洞穴さえ掘りぬけぬ貴様らの方が弱すぎるのだ。」


叢雲「はあ、まあかまいません。ですが。ほら穴を掘りぬいて何に使うのでしょう。ついでにどこから掘りぬくのでしょう。」


提督「島の中央から直下彫りする。ある程度掘ったら横に少し広げる、また少し掘ったら広げるということを繰り返していけば、いずれドーム状になるはずだ。」


叢雲「何に使うのですか。」


提督「無論、執務棟だ。」


叢雲「・・・。」


提督「おい、そんな、ここに来たのは間違いだったか、みたいな顔をするんじゃない。いや、確かにそうではあるが。」


叢雲「まあ、いいです。この際、私もお手伝いしますよ。」


提督「おまえ、なんだかこの短時間にずいぶん神経太くなったんじゃないのか・・・。」





数日後・・・


提督「完成だ。」


叢雲「まさかほら穴を掘りぬくだけで五日かかるとは思ってもみませんでした・・・。」


提督「ま、ひたすら岩を砕いてそれを地上へはこぶを繰り返しただけだがな。」


叢雲「ところで、あまりに必死なので気にしていませんでしたが、この縄梯子はどこから入手されたのでしょう。」


提督「沖縄本島へ行って買ってきた。」


叢雲「いつの間に・・・。」


提督「お前が眠っている間にだ。」


叢雲「そういえば、出撃はしないのでしょうか。」


提督「無理だ。」


叢雲「なぜでしょうか。」


提督「出撃するための施設がないのだ。」


叢雲「は。」


提督「港湾施設は一切なし。倉庫もないし、執務棟だって今掘りぬいたほら穴がそうだ。」


叢雲「」クラ


提督「おい、大丈夫か。」


叢雲「いえ・・・、お先真っ暗すぎて、少し先行きが不安になっただけです。」


提督「フフフ。」


叢雲「何がおかしいのですか。」ジト


提督「いや、なんでもない。」


叢雲「はあ・・・。「ただ、」」


提督「不安がったところで結局何も変わらない、結果はなるようになるだけだ。我らは、それをどうするかの舵を取るだけよ。」

叢雲「・・・。」


提督「どうした。」


叢雲「いえ、ただ、少し・・・。」


提督「まあいい。詳しくは訊かん。」


叢雲「・・・。」


提督「さて、執務棟ができたは良いのだが、いかんせん腹が減ったな。」


叢雲「私たち艦娘に空腹のあまり餓死と言ったことはありませんが、確かにそうですね。」


提督「先ずは何よりも食糧問題を解消すべきか。」


叢雲「そうですね。」


提督「さてどうする。」


叢雲「・・・。」


叢雲「・・・。」


叢雲「あ。」


叢雲「育てればいいのか。」


提督「ほう。では、どうしてそういう考えに至ったのか説明してもらおうか。」


叢雲「そうですね、まず、食糧問題は、沖縄本島から持ち運べばいい話ですが、それでは長く持ちません。」


提督「そうだな。」


叢雲「そこで、さきほどの提督のおっしゃったことを思い出しました。」


〘提督「島の中央の土は比較的肥えている。」〙


叢雲「多少の違いはあれ、概ねこのようなことを言っていたように思います。」


提督「そうだな。」


叢雲「なので、その土をここに持ってきて、他の土や肥料も買ってきて混ぜて、野菜などは育てればよいという発想に至りました。」


提督「うむ、そうだな。しかし、野菜だけか?」


叢雲「贅沢をいえば米や肉類も欲しいところですが、今のところは・・・。」


提督「・・・。」


叢雲「どうでしょう・・・。」


提督「合格だ。俺もおおむね同じことを考えていた。」


叢雲「そうでしたか。」ホッ


提督「ただ、それには二つ問題があってだな。」


叢雲「なんでしょうか。」


提督「第一に、地下は日当たりが悪い。」


叢雲「あ・・・。」


提督「第二、この島はそんなに広くない。」


叢雲「もっともです・・・。」


提督「うむ、ここまで思い至れば、満点であったな。」


叢雲「力不足でした・・・。」


提督「もっと精進したまえ。」


叢雲「はい。」


提督「さて、叢雲。」


叢雲「なんでしょうか。」


提督「先ほどあげた大きな二つの問題、どうやれば解消できるね。」


叢雲「・・・。」


提督「・・・。」


叢雲「島自体の面積を広げる、でしょうか。」


提督「百点だ。」


叢雲「ホッ・・・。」


提督「それをこれからやる。」


叢雲「いえ、その前にお昼にしましょう。」


提督「む、そうだな・・・。」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・








少女から見た場合





三代目東郷平八郎。

これは正式な名前ではなく、いわば芸名のようなもので、本名は不明。私の幼馴染。

地球の歴史を全て把握していて、超宇宙的身体能力を持ち、この地球上に存在するすべての事象を理解する。

その理由は、何度も何度も生まれ変わり、歴史の移ろいとともに歩んできたかららしい。

博士にも知らせていないことらしいけど、彼がもっとも初めに生まれたのはもっとも最初の人間が生まれるさらにさらに遠い頃らしい。

その時彼はただの人間だった、と言っていた。何のとりえもない、ただの人間だと。






記者「本日は、三代目東郷平八郎海軍特将の幼馴染であり、陸軍超常大隊大隊指揮官である、四代目西郷隆盛陸軍特佐に取材したいと思います。本日は、どうぞよろしくお願いします。」


西郷「はい、よろしくお願いします。」


記者「まず、単刀直入にお聞きしたいのですが、最近失踪した東郷提督は、ずばりどのようなお方でしょうか。」


西郷「そうですね・・・。彼を一言で言い表すのは、いかなる人間でも無理でしょう。」


記者「ほう、というと。」


西郷「だって、すごいんですよ、彼。頭がいいなんてもんじゃない、天才の域です。それに体力もほぼ無尽蔵ですし。これは非公式で非公開なんで、あんまりペラペラしゃべっちゃいけないんですけど、アメリカの[-----]から、日本の[-----]までトライアスロンして息一つ切らさないんですよ、」


記者「それはまた・・・。すごいですね。(汗)」


西郷「そうでしょう。でも、そんな彼ですけど、私がただ一言で表すとするなら・・・。」


記者「するなら・・・。」


西郷「・・・。」


記者「・・・。」


西郷「ごめんなさい、やっぱり何でもないです。(笑)」


記者「そうですか。(笑)」


西郷「代わりと言ってはなんですが、彼と私にあったことを振り返りながら、彼について話していきましょうか。」


記者「お。お願いします。」


西郷「そうですね、では初めに・・・。」













私が彼と出会ったのは、たぶん生まれて間もないころだったと思います。ただ、私が覚えている限りでは、幼稚園に入るくらいからはすでに一緒だった気がします。

私の彼の第一印象は、頼りがいがありそうな人、でした。


記者「幼稚園に入るころというと、3,4歳くらいですか。そんな年齢で、頼りがいがあるだとか、本当にわかるんですか。」


ええ、自分でも信じられませんけど、でも、確かにそう思ったんです。

実際、彼は頼りがいがありました。

クラスや彼の近くで喧嘩が起こると、真っ先に飛び込んで行って、あっという間に治めてしまう。周りの大人が口をはさむ暇もないくらい迅速で、学校中から頼りにされてましたよ。


記者「やはり、幼少のころから貫禄がたっぷりだったんですね。」


そうですね。

実は、私、一度いじめられたことがあるんですよ。


記者「え、言っていいんでしょうか、それは。」


かまいませんよ。

中学校はそれぞれ別だったんですけど、彼ったらわざわざ私の学校に怒鳴り込んできてまでいじめを止めてくれたんです。


記者「ほう、それはどういう風に。」


その時は馬鹿なんじゃないかと思いましたけど。私のクラスまで来て、クラス全員を睨み付けてから、私をいじめていた連中を全員呼び出したんです。決闘だって。


記者「え、ちょっと待って下さい。名前や見た目は事前に伝えていたんですか。」


いいえ、まったく。


記者「では、東郷提督は、事前に知ってもいない名前をいいあてたんですか。しかも、西郷特佐をいじめていた人たちをピンポイントで。」


はい。すごいと思いましたよ、私も。でも、今考えればそんなに不自然なことじゃないと思いますよ。


記者「どういう事でしょう。」


私、何度か彼に叱られたことがあるんですけど、一目見ただけで何をしたか言い当てたんです。


記者「ほう、たとえば。」


彼のお気に入りの茶器を割ってしまって、それを隠したり。


記者「幼いころから茶道をたしなんでおられたのですか。」


え、そっち聞きますか。


記者「ああいえ、なんでもありません。」


そういう時に、彼の目はすごく怖くなるんです。まるで心の中を見透かされてるみたいで、悪意のある人ならまず間違いなく直視できないような眼光でした。それを見た瞬間、謝らなくちゃってわかってるんですけど、どうしても言い出せなくなってうつむいちゃうんです。たぶんそれを見てるんでしょうね。というか、悪意や罪悪感とか言ったそういう感情を読み取れるんじゃないですかね。


記者「なるほど。」


それで、話を戻しますね。


記者「はい。」


そうやって、一時間か二時間くらいそこで待っていると、彼は無言で戻ってきたんです。両手に気絶したいじめっ子を数人抱えて。それを無造作に放り投げて冷淡に告げました。

『所詮貴様らはその程度だ。』って。もちろん、聞こえてるわけないんですけどね。


記者「強さにも驚きですが、その言葉は、一体どういう意味でしょうか。」


大望を抱けばこそ、強くなれもする。彼はいつもそう言っていました。分不相応な望みを抱き、それを目指すからこそ強くなるのだと、そういうことだと思います。なので、この場合だと、『大した夢も望みもなく、人を見下し踏みつけなければ己を見つけられない。だから所詮貴様らはその程度なのだ。』ってことだと思います。


記者「圧縮言語ですか?」


確かに言葉足らずな感じはしますね。彼、自分と同じレベルの理解を他人に求める癖があって、場合によっては会話が成り立たないんですよ。


記者「高慢というかなんというか。」


彼らしいと言えばそうなんじゃないですか?

でも、高慢すぎてついていけないように思えて、実は結構気配りがされていて、いつの間にか抜け出せないようになってるんです。そうなった人たちを何人も見てますから。


記者「特佐もですか?」ニヤニヤ


いいえ、私は違います。でも、異性としては慕ってますよ。


記者「ほう。」ニヤニヤ


ま、私の叶うはずのない願いは置いておいてですね、今度は高校時代のことを振り返ってみましょうか。


記者「お願いします。」


高校は一緒だったんですよ。都内の某所にある私立高校なんですけどね。そこでも彼はすごかったですよ。


記者「ほう、どんなふうに。」


相変わらず落ち着いたリーダーシップなのは変わらないんですけど、彼、すごくもてるんですね。三年間で高校の女子生徒全員から告白されたんじゃないですかね。


記者「ほう、それはすごい。」


それでまた、律儀に一人一人断りに行ってるんですよ。


記者「東郷提督、顔写真が公開されてますが、確かにかなり美形ですね。」


そうですね。さっぱり爽やか系じゃない、頼れるいぶし銀て感じですかね。


記者「それに、一人一人断りに行くというのも、誠実さの表れでしょうか。」


それもあるんでしょうけど、昔惚れた女に、告白されたらできるだけ会ってから断れって言われたらしいです。それをずっと守り続けているそうです。


記者「なるほど、その女性のことが心底好きなんですね。」


なんでしょうね。私も一度アタックしたことがあるんですけど、あえなく断られましたよ。


記者「私人の恋路には興味ありますけど、失恋にはてんで興味ないんですよね。」


あなたいい性格してるってよく言われません?


記者「はてどうだったか、覚えてませんね。」


で、なんの話でしたっけ。


記者「高校時代の東郷提督の武勇伝です。」


そうでしたそうでした。で、高校時代の事件はまだまだあって、全部語りだすと止まらなくなっちゃうんで話しませんけど、一つ語るとするなら、やっぱり三年の時のあの事件ですね。


記者「ほう、どんな事件で?」


三年の中ごろ、集団リンチにあったんですよ。


記者「ほう。」


理由は、彼があまりにももててなんでもできるものだから、嫉妬に狂ったんだと思います。


記者「まあ、しょうがないと言えばしょうがないのかも・・・。」


相手は四十人ぐらいいたんですけど。


記者「ほう、それで。」


全然、相手にもなりません。


記者「ほう。」


さっきからリピートしかしてないですけど、大丈夫ですか。


記者「大丈夫です。」


あれじゃリンチというより四十人組手と一緒ですね。そう思うくらい容易く叩きのめしてました。


記者「まるで見たように言いますね。」


ええ。だって見てましたから。


記者「え、その場にいたんですか。」


はい。もう、すごかったですよ。


記者「詳しく聞かせてください。」


じゃあ、その当時の様子をちょっと書いてみますね。


記者「え、書く?書くって、どうやって―――」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


記者「え?回想いく?行っちゃうの?」


・・・・・・・・・・・・・・・・・


記者「有無を言わさぬ構えだ。」


・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・

・・・・・

・・




東郷「なんだ、貴様らは。」


男子生徒1「もううんざりなんだよ。あんたがちやほやされてるのを見るのはよ。」


東郷「・・・質問に答えろよ。貴様はなんだと聞いとるのだ。」


男子生徒2「へ、自分の立場が分かってねえな。てめえに質問する権利があると思ってんのか?ァア!?」


東郷「立場が分からんのは貴様らだろうて、猿でも彼我の実力差は頭で覚るわ。」


男子生徒3「おいおいおいおいおい。東郷センパイよお、そりゃあ俺らが猿以下だっていいてえのか?」


東郷「当然だとも。精神が三歳児と同じ貴様らが猿よりも賢いと?それと、権利云々は貴様らが決めることではないぞ。」


ボス生徒「はあ、わかってねえのはテメエだろうが。この数相手に勝てるつもりでいやがる。」


東郷「まさかたった四十人程度で群がって粋がっているのか?俺を跪かせたくば、アメリカを落とせる戦力を持て。」


男子生徒4「ギャハハハハ!!おいおい、聞いたかよ!?このお方はアメリカにだって勝てるんだとよ!」


男子生徒5「ハハハハハ!こりゃあ傑作だ!」


生徒達「「「「「「ギャハハハハハ!!!」」」」」」


東郷「・・・。」ユラア


ボス生徒「!」


東郷「・・・どうやらよほど死にたいと見える。」


西郷「!」


西郷「ちょっと、本気?やるの?」


東郷「・・・この東郷、ここまで馬鹿にされて黙っていられるほど間抜けにできておらん。」


ボス生徒「おい、テメエら。どうやら東郷センパイは俺らと戦うつもりらしいぜ。」


男子生徒1「げえ!マジかよwセンパーイ、頭だいじょ―ビュッ   ドグッッ!!―うぶッ!?」


東郷「・・・。」シュー・・・


西郷「(腹に一発。もう駄目ね。)」


ボス生徒「あ?」


東郷「どうした、もう始まったぞ。」


ボス生徒「チ・・・。おい、テメエら。やるぞ。」


生徒達「「「「「「「「「「「「へへ・・・・・。」」」」」」」」」」」」


東郷「・・・。」


西郷「(ポケットに手を突っ込んだまま動かない・・・。どうして?)」


男子生徒2「うしろとったーッ!」


パンッ!


男子生徒2「ホゲェッ!?」ガンメンカンボツ


生徒達「「「「「「「「「「「「!」」」」」」」」」」」ザワザワ


西郷「(抜く手が見えなかった・・・。ほんの少し体が動いたのは見えたけど、どうやったのかは全く分からない・・・。)」


居合(立合)という技がある。

腰につけた剣に手をかけ、手の位置をそのままに腰を切ることで抜刀し、相手を切り伏せんとする技。

それを格闘に応用したのが、この居合拳である。

ポケットに手を入れたまま、手の位置をそのままに腰を切ることで抜拳を完成させる技。故に相手からは抜く動作が見えない。

一見すると無造作で無防備に手をポケットに突っこんでるだけなように見えるが、その実この姿勢こそがすでに構えなのだ。

拳の加速はすでにポケットで終了しているため、どんな状況だろうと即座に対応できる。


男子生徒3「でやあッ!」


ビシィッ!


男子生徒3「!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?」


痛みに襲われるたった一瞬前。それは人間に与えられた猶予である。痛みに対する覚悟を決めるための猶予である。

箪笥などの角張ったところに小指をぶつけたと知覚する瞬間、足を攣ったと知覚する瞬間など、激痛が走る直前、人間は一瞬、「あ、来るな。」ということを考える。

その瞬間、覚悟を決める。

そして、来る。

痛み。激痛。悶絶し、暴れるほどの痛み。あるいは、痛みが神経を焼き切り、気絶、もしくは死。


西郷「!」


西郷「(今、殴りかかった男子の背中の肉が削れている・・・。なぜ?)」


鞭打。

全身を滑らかにしならせることによってムチのような特殊な打撃を実現する。通常の打撃とは異なり相手の皮膚に対してダメージを与えるのでガードのしようがなく、この技を回避するためには避けるしかない。加えて皮膚を狙って攻撃するため相手の体全体が急所となり、どこに攻撃しても大きなダメージを与えることが出来る。

また、実際の鞭が叩かれると赤くなったり痕が残ったりするように、この技で打たれた場合も赤くなったり痕が残ったりする。

ただし、それは人間の常識の範疇にとどまる人間の場合である。

東郷の人外の力で打たれた場合、その破壊は皮が剥がれ、肉が削れるほどになる。


生徒達「「「「「「「「「「「オオ・・・。」」」」」」」」」」ドドッ


東郷「どうした。もう終わりか。」


ボス生徒「クソ!おい、テメエら!ひるむんじゃねえ!」


男子生徒4「で、でもよ。」


ボス生徒「一斉にかかりゃあいいだろうが!そんぐらい考えやがれ!」


東郷「(この距離でしゃべっちゃあまる聞こえなんだがな。)」


ボス生徒「オラァッ!」


東郷「・・・。」


西郷「(もう何も言うことないわね・・・。)」


三十秒後


死屍累々


男子生徒z「く、クソォ!」


西郷「っあ!」


東郷「・・・。」


チャキッ!


男子生徒z「おい、動くんじゃねえぞ。動いたらこいつの命はねえからな・・・。」


東郷「ナイフか・・・。」


男子生徒z「そ、そうだ!コイツで突き刺すからな!動くんじゃねえぞ!」


東郷「・・・ハア。」


堪忍袋の緒が切れるという言葉があるが、この時ほどそれを痛感したことはありません。

はっきり聞こえました、ブチッ、って。響いたんです、空間に。音が。

その瞬間でした。私を捕まえていた腕が、ちぎれていたんです。それと同時に、背後で破裂したような音がしました。

私を捕まえていた生徒の頭が消え失せてました。たぶん、殴られたんだと思います。彼に。

血がいっぱい出ました。噴水みたいに。


東郷「帰るぞ。」


西郷「うん。」


殆どいつものことです。

彼は敵を作りやすいんです。優秀すぎるがゆえに。

そのたびに死人が出てましたけど、彼は大して気にしないみたいでした。

必要な犠牲だそうです。





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これが三年の中ごろにあった事件です。


記者「えっと・・・、何故、逮捕されないんでしょう。」


親が権力者なんです。かなり上の方の。


記者「な、なるほど。」


じゃあ、次は軍学校時代ですね。


記者「いやな予感がしますが、お願いします。」



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教官「おい、貴様。なんだ、そのやる気のない態度は。」


東郷「なんだ、貴様。」


教官「貴様・・・、教官に向かってのその口ぶり、覚悟はできているのであろうな。」


東郷「さっぱりだな。大体、一体何を覚悟するというのだ。」


教官「貴様には海軍式精神注入棒を味わってもらおう!」


東郷「よかろう。だが、それは俺を捕らえられればの話よ!」ダッ


教官「今日こそひっとらえる!」ダッ



<マアテエエエエエエエエエエエエイ!!


<ワハハハハ!オソイオソイ!!



西郷「・・・。」



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軍学校にいた時分は、いつもこんな感じでした。

態度は悪い癖に頭がよくて、テストではいつも学年一位をとっていて、学年中から煙たがられてましたよ。


記者「ずいぶん破天荒というか、自由というか。今までの落ち着いた様子がかけらも見えませんが・・・。」


そうですね。でも、私からすれば、今までがよく抑えていたなってぐらいなんです。


記者「というと?」


私と彼は幼少のころからの知り合いなんですけど、中学校に入るまでは、彼いつもこんな感じなんですよ。これでもずいぶん抑えてますけど。


記者「それがなぜ、抑えるようなことに?」


周りが弱すぎるからですね。彼が本気で遊べば、周りの人は絶対止められませんし、ある程度皆が成長するまで待っていたんだと思います。


記者「なるほど。」


そうやって周りの大人をからかって存分に遊んだあと、しっかり授業も受けてるし、何だったらほかの人にも教えてたりするんです。正直言うと、教官や周りの大人たちも、多少楽しんでたんじゃないですかね。


記者「そうやって考えると多少可愛げがありますね。」


多少、ねw


記者「ええw」


でも、上っ面は大きく変わったように見えますけど、芯の部分は全然変わってないんですよ。


記者「というと?」


あるとき、艦娘どうしの六対六艦隊演習をしてみようってことになったんです。もちろん、提督候補の人同士で。


記者「ほう。」


その時、彼の相手になったのが今の海軍元帥の御子息で。


記者「おや。」


正直、相手が悪いと思いましたね。


記者「それはそうでしょうね。」


ええ。その時ちょうど元帥閣下が視察に来てたんですよ。


記者「あら。」


まあ、当然というと聞こえが悪いですけど、彼に何かしら渡そうとしているように見えました。


記者「それは・・・。」


まあ、確定ではありませんけど、たぶんそうでしょうね。


記者「そして東郷提督は・・・。」


まあ、当然受け取りませんね。


記者「そうでしょうね。」


その時、彼がなんていったのかはわかりませんけど、閣下はずいぶん憤慨されたようでした。


記者「まあ、そうなりますね。」


それで、いざ演習が始まってみると、彼の方の艦娘がまったく動かなくて。


記者「おや。」


たぶん、閣下が強権を発動したんでしょうね。それで、まったく指示に従ってくれない艦娘とそれにショックを受けているように見える彼を見て、みんなが嘲笑ってました。


記者「中々ですね。」


でも、そうじゃなかったんです。


記者「ほう、どういうことでしょうか。」


笑ってたんです。


記者「笑っていた・・・?」


少し、戦闘狂のきらいがあって、歯向かってくる相手が大好物なんですね。


記者「はあ。」


その時の様子ときたら、もう・・・。凄惨を極めてましたね。


記者「どういう風にでしょう。」


そりゃあもう・・・。


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東郷「シャアッ!」


ザンッ!


艦娘「うっ・・・。」


オオ・・・。


東郷「どうしたッ!向かってこんかァッ!」


元帥「や、止めいッ。」


東郷「やかましいッ!黙れッ、ジジィッ!」


元帥「」ビク


東郷「来いよ、全員。」メラメラ


息子「ヒ・・・。」


艦娘「「「「「「「「「「「・・・。」」」」」」」」」」」ブルブル


東郷「どうした、来ないのか・・・?ならば・・・。」


ピシャ・・・


息子「ヒ、ヒィッ!な、なんで水面に立てるんだよ!?」


艦娘「「「「「「「「「「「ゴク」」」」」」」」」」」」ジリ


息子「お、お前ら、僕を護れよ!逃げたら許さないからな!」


ピシャ・・・ピシャ・・・ピシャ・・・


東郷「フフフフフフ・・・・。」王者の風格


艦娘「・・・。」ガクガクブルブル


東郷「喝ァッッッッ!!!!」ビリビリビリ


ビク


艦娘「イヤーーーーッ!」ダッ


ザンッ!ズシャッ!グシャッ!・・・・



―逃げた艦娘の証言―


「逃げるでしょ。そりゃあ逃げます。」


「私のほかに参加された方々は、それこそ鎮守府の中でも古参と言ってもいいほどの人たちですから。」


「怯えこそすれ、逃げはしないでしょうね。」


「それが意地なのか、それとも十人いれば勝てるという自信なのかは分かりませんけど。」


「でも、相手が悪い。」


「というより、我々艦娘は対人間を想定して創られていませんから。」


「生身の人間が艦娘に対して向かってきたところで、勝てるわけありません。」


「地力が違いますから。」


「でも、あれは・・・あの人は違う。」


「人間の域を脱してます。」


「水面に小波一つ起てずに立つ。」


「鉄のように固い我々艦娘の皮膚を切り裂き、その奥にある肉や骨をえぐる。」


「片手で砲弾を止める。」


「こんなことができる人間がいてたまるもんですか。」


「なんていいますか。気配から違うんですね。」


「その人の周囲が燃えているようなんです。燃えているというか、陽炎みたいに揺らいで見えるんです。」


「歪んでるみたいに。」


「その途端わかってしまう。」


「どんな存在だろうと、この境地にまで到達することは不可能だと。」


「考えてもみてください。」


「一体誰が、どんな動物が、どんな兵器が。」


「周りの景色を歪ませるほどの力を持っているっていうんです。」


「逃げたことを正当化するつもりじゃありません。」


「でも、逃げるしかなかったんです。」




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記者「艦娘を破壊する膂力?それはもう人間ではないのでは?」


まあ、そうとも思えますね。でも、確かに人間ですよ。


記者「本当ですか?」


生物学的にはヒト科の特徴とまったく合致しますし、性格的に人外みたいに残虐非道というわけでも―


記者「あ、もういいです。」


そうですか。


記者「それで、そのあとはどうなったんでしょう。」


演習に協力した艦娘は、十一人が大破して轟沈寸前。一人は敵前逃亡として確保、ただし特例中の特例として僻地に左遷。

元帥閣下の御子息は全身の骨が粉砕骨折して全身ふにゃにゃ、打撲もまた全身に亘ってあるため、青痣になって全身真っ青に。

それに傍から見たら自らの実力不足に激昂しての蹂躙劇ですから、当然逮捕ですね。


記者「それ、捕まえられるんです・・・?」


むりですね。


記者「捕まえられたんです・・・?」


わざとです。


記者「は?」


わざと捕まったんです。


記者「なぜ?」


さあ。


記者「西郷特佐にもわからないなら、もう誰にもわからないのでは?」


ただ、憶測でいいのなら。


記者「もうそれでもいいです。」


油断させたかったんじゃないですか?


記者「油断?」


元帥閣下・・・、いえ、元・元帥閣下ですね。今は。


記者「ああ、そういえば。数年前捕まった方がいましたね。」


あの人が油断することを期待してたんではないでしょうか。


記者「そうでしょうか。」


きっとそうです。そうでないと、たった一人でも掃討できる、そんな軍勢に捕まるはず有りませんから。


記者「まあ、それはそうですが。」


それに、ここだけの話ですけど。


記者「はい。」


元・元帥が失脚・逮捕されたのって、実は彼がいろいろやったからなんですよ。


記者「そんなことできるんです?」


できるできないじゃない、やれ。って、よく言ってました。そのおかげで彼の部下はバケモノ揃いですよ。


記者「はあ、やってやれないことはないですか。」


でも、本当に本気でやってできないなら別の方法を考えてくれますから。


記者「どうしてわかるんでしょう。」


悪意が見通せる。って、言いました。


記者「そうでしたね。」


でもって、その情報を使って元帥を操作して、提督になったってわけですね。


記者「ほう、では提督時代の方を・・・。」


知りません。


記者「へ?」


知らないんです。なぜかあの人、全然連絡を取ってくれませんでしたから。


記者「はあ、そうなんですか。」


なので、私が話せるのはここまでですね。すいません。


記者「いえいえ、実に有意義な時間でした。」


どうもありがとうございました。


記者「ありがとうございました。」














提督時代:2




執務室―


叢雲「司令官。」


提督「なんだね。」


叢雲「新人の鎮守府から演習の要請が届いております。」


提督「どれ、見せてみよ。」


叢雲「これです。」ペラ


提督「・・・。」ジー


提督「ふむ。戦艦空母ばかりで、バランスをまったく考えておらんな。まだまだ新人と行った所か。水雷戦隊の二軍を出動させろ。」


叢雲「かしこまりました。」ペコ


「あ、提督ー!」


提督「比叡。どうした。」


比叡「お姉さまのお部屋でお茶会をするんです。一緒にどうですか?」


提督「ふむ、そうだな。」チラ


叢雲「執務はすでに完了しておりますので、別に問題ないかと。」


提督「非常時には館内放送で呼び出したまえ。」


叢雲「委細承知しました。」


提督「では行こうか。」


比叡「はい!失礼します、叢雲秘書官。」


叢雲「ごゆっくりどうぞ。」


スタスタ・・・


叢雲「館内放送・・・。」


ポチ


<チャイム


叢雲『阿武隈・暁・響・電・雷は執務室に集合してください。繰り返します、阿武隈・暁・響・電・雷は執務室に集合してください。』


<チャイム


ブツ


比叡「それでですね、提督。」


比叡「お姉さまったら、その時なんていったと思います?」


提督「・・・。」


比叡「『提督のハートを掴むのは私ネー!』って。」


比叡「図太いというか執着するというか。」


提督「・・・。」


比叡「でも、一途ですよねー。」


比叡「だからですね、提督。あなたは諦めてお姉さまの事を―、って、提督?聞いてましたか?」


提督「む?ああ、すまん。少し考え事をしていた。」


比叡「もー。私の舌の疲労が無駄になっちゃいました。お姉さまの紅茶で回復を図らなければ。」


提督「ああ、そうだな。」


比叡「あ、着きましたよ。」


提督「うむ。」


比叡「お姉さまー!提督をお連れしましたー!」ドンドン


金剛「比叡!?聞いてないデスヨ!?」


比叡「サプライズ成功ですねー。」クスクス


提督「邪魔するぞ。」


金剛「あ、あ、テイトク!ちょ、ちょっと待ってクダサイ!」グイグイ


提督「む、どうしたというのだ。」


金剛「い、イヤ~、その。は、榛名と霧島が↑?まだ↑?来てないというか↑?」メソラシ


提督「ほう、そうか。では邪魔するぞ。」ニヤ


金剛「ちょ、ちょっとテイトク!?話聞いてましたカ!?」グググ


提督「ああ、聞いていたとも。」グググ


金剛「だったら止まってクダサイ!?あ、ちょっと、力強・・・!」グググ


提督「よいでわないか。」グググ


金剛「良くナイ!良くないデスカラ!」グググ


バーン!


金剛「イヤーーーー!」


提督「・・・。」


金剛「ああ・・・。終わった・・・。」ガックリ


提督「ううむ。」


金剛「ああ、テイトク・・・。見ないで・・・、私の部屋見ないで・・・。」


提督「これは・・・。」

 

  人人人人人人人人人人人人人

<腐った趣味に埋め尽くされた部屋>

  YYYYYYYYYYYYYYYYYYYY


金剛「コロシテ・・・、コロシテ・・・。」


提督「俺もな、人の趣味にケチをつける気はないがな。」


提督「さすがにこれはいかがなものかと思うぞ。」


金剛「仕方なかったんです・・・。一度はまったら抜け出せない、BLってそういうものなんです・・・。」


提督「ううむ・・・。」


金剛「よし!」


提督「うん?」


金剛「テイトク、私を殺してクダサイ!」ハイライトオフ


提督「は?」


金剛「だって、テイトクにこんな部屋見られて、もう生きていけないデス・・・。」


提督「まあ落ち着け。」


金剛「これが落ち着いていられるカァッ!」





ギャーギャーワーワー



後書き

少女視点、もとい西郷視点、完了です。
次は再び用心棒視点、そのあと叢雲視点で終了です。博士視点?知らんな。


R-18はまだ出ない。




またしても激遅更新ペース。ゆっくり待っててください。


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