2017-07-04 16:15:29 更新

概要

歪んだ提督と、傷ついた艦娘って感じで。

ちゃんと修正。次は新しい部分投下


前書き

文章ひどいですはい


鈴谷編


鎮守府内――病院 個室


コンコンッ


ノックとともに提督が入ってくる。もはや、お決まりにもなってる毎夕の提督との面会


「いらっしゃーい」


「お邪魔するよ。今日の土産はこれだ。もう、なんでも食べていいんだろう?」


提督は毎日お土産と称してお菓子を持ってきてくれる。今日は栗しぐれみたい


「うーん...栗しぐれかぁ...及第点、かな?」


お土産に評価を付けるのもいつものお決まり。及第点しかあげたことはないけど


「そりゃあよかった。これでも結構苦労したんだ。なかなかなくてね」


「そりゃあどーも。感謝してますよー。それとさ、ちょっと、いい?」


ひとまずお礼を言う


「あ、すまんな。気が付かなくて」


そういうと、提督は身体を起こすのを助けてくれる。


「これくらいで大丈夫か?」


提督は慣れた手つきで私を起こしてくれる。もう、何度もさせちゃったもんね


「...うん。...いつもありがとね」


感謝を伝えてみる。なんとも恥ずかしい


「ん、どうした?急にお礼なんて。お前らしくもない」


「わ、私だってありがとういくらい...」


「鈴谷がお礼だなんて、こりゃあ、明日は雪だなぁ」


「私のイメージひどくない!?」


椅子を引っ張り出し、提督も座ったところで今日のお土産を食べる


「甘いってだけでうまいなぁ」


「それ昨日も言ってた。ほかに感想ないの?」


「そうだったか?でも、うまいだろ。口に合わなかったか?」


「ううん。とってもおいしいよ。...ありがとうね」


お菓子を肴に、話に花が咲いた


......


「なんでこんなにお見舞いなんか来てくれるの?」


ふっと浮かんだ疑問を聞いてみた


「うーん...」


「私のこと好きだから?」


「んー...お前のことは好きだぞ。でも、それだけじゃあないかな」


流された...軽くショック。提督が既婚者なのは知っている。この好き、も娘やペットを好きっていう感覚と同じことも


「じゃあさ、ほかにどんな理由があるの?」


「...そうさなぁ。やっぱりお前のことが好きなのかもな」


冗談を言ってはいるが、提督の顔は笑っていない。真顔だ


「...冗談きついなぁ。提督には奥さんもいるし、私だって、その....」


提督の顔を見て、動揺してしまった


「...フッ。冗談だよ冗談。ちょっとからかってやっただけさ」


「質の悪い冗談はやめてよー。びっくりしちゃった」


「今度からはもっとわかりやすい冗談にしないとな...なんて」


「なんか提督らしくないなぁ....ナニする?」


「....いいのか?」


「ちょ...ちょっと!この流れは断る流れでしょうが!」


「そ、そうだよな! ハハハ...」


なんだか、本当に提督の様子が変だ。いつもとまったく違う


「疲れてるんじゃないの?早く帰って寝たら?」


「...そうかもな。すまないね。お見舞いした側が心配されちゃって。じゃあ、また」


一言そういうと、提督は足早に病室から去っていった


提督とは特別仲が良いわけじゃなかった。たまには会話もした。でも、その程度。それが、入院した途端、毎日お見舞いに来てくれる。うれしくないことはない。けど、なにかあるのかな


ーーーーーー

ーー

鎮守府内病院--出口付近


...いかんいかん


足早に病院を去り、努めて冷静になろうとするが、心はかなり動揺している


なんということはなく発された鈴谷の俺を心配する言葉。その言葉をかけられた瞬間、俺は鈴谷に内心を見透かされたような錯覚に陥った


あの言葉の裏に何の計算もないことくらい分かっている。ただ、俺に後ろめたい感情があるからーー動揺してしまう


しかし、もし、彼女が本心を知ったらどうするだろうか


罵ってくる?泣く?いや、逆上してくる?...どれも非常に魅力的だ


あぁ…!想像するだけでゾクゾクする


...抑えろ、あと少しだ


あと少し、怪我した娘を気遣う良い提督でいるんだ


あと少し、あと少し、あと少しでーー


想像するだけで昂ぶってくる。内側からどず黒い感情が湧き出てくるのがわかる


おっと...いかんな


視界にはいるかんむすめたちの姿が徐々に増えてきた


邪念を排出し、普段の提督へ戻らなければ


スー...ハー...スー....ハー...スー


2、3回深く深呼吸する


よし…これでいい。落ち着きを取り戻した。いつも通りの提督になりきる


「提督こんにちはー」


「おぉ、今日も元気いっぱいだなぁ。こんにちは」


幼げな駆逐艦たちの元気な挨拶には元気よく


「提督!私またMVPで――」


「またとったのかぁ!次も期待しているよ」


何度聞いた自慢話にも、嫌な顔せず


「また今度呑みましょうねー!」


「ええ。楽しみにしてます」


ほどほどのコミュニケーションをとる


「提督!また鈴谷さんのところですか?勝手にいなくならないでください」


「すまんすまん。そう怒るな。シワが増えるぞ」


時には軽口もはさむ


彼女たちからの、声かけにも、うまく対応する。彼女たちの楽しそうな顔が見えると、いつも通りの提督でいられている、ということを実感する


さーて、仕事だ仕事だ。


溜まりに溜まった仕事でも、こなしますか、ね

ーーーーーー

ーー

「太陽から敵機!突っ込んでくる!」


その叫び声に思わず太陽の方向を向いた


極度にまぶしい光のなかに、ポツ、ポツと浮かぶ、異質な鈍い光がだんだんと大きくなっている


「迎撃いそげ!」


旗艦の声に促され、皆が対空戦闘を始め


ポンッポンッポンッ


と対空砲の炸裂する音を響かせている間も、私はなぜか、反応できないでいた


敵は、迎撃をものともせず、急降下で私たちに突っ込んでくる


「鈴谷!避けろ!」


また、誰かの声が響く


迎撃のない私を狙うのは当然だ――


来る...!


敵機から放たれた爆弾が、明確な殺意をもって私に襲い掛かってくる。なぜか私はただ、見つめることしかできなかった


ーーーーーーーーーーーー

ーーーーーー

ーー

「っ…はっ…!」


夢を――いや、フラッシュバック?走馬燈というものかしら。ともかく、先の戦闘を見ていた


これを見るのは何度目だろう


私は、戦闘でヘマをした。まるで、初の実戦を前にした新兵のように。戦争の恐怖に飲み込まれてしまったから


もちろん、何度も戦闘は経験した。遠距離での戦いはもちろん。白兵戦の様相を呈した時もあった


たくさんの敵を殺した。たくさんの仲間も殺された


戦争というものに慣れていると自負していた。自信を持ちすぎてしまったからなのか。私は足を掬われた


なんでだろう。何度この自問自答を繰り返しただろうか。答えなどわからないことは分かっていた


今までも、これからもずっと


だって――もう、海には出られないから


ーーーーーー

ーー

気が付くと、また寝ていた。特に何をするわけでもないのに、よく寝てしまう


「...ん」


軽く伸びをして時計を見る。そろそろ提督が来る時間だ


代わり映えのしない退屈な入院生活。そんな生活の唯一といってもいい楽しみの時間


今日はどんなことを話そうか。いや、たまには提督の愚痴を聞いてあげるのもいいかも――


コンコンッ


そんなことを考えていると、扉をノックする音が聞こえた。提督だ


「どーぞー」


「ん...おはよう」


提督は、入ってくるなり私の顔を一瞥し、まぬけな挨拶をした


「提督、もう夕方だよ?」


ちょっと馬鹿にしたように言ってみた


「そんな耄碌してないさ...さっきまで寝てただろ?」


「...!?なんでわかったの?」


鋭い観察眼に感服――する間もなく、恥ずかしさが込み上げてきた


「...顔、むくんでるぞ」


「ちょ...言うなー!まったく...提督はデリカシーがないんだから。フーンだ」


拗ねたふりをしてみせる


「悪かった。悪かったよ」


まったく気持ちのこもってない返事が返ってくる


「反省してないのバレバレなんだからね!」


「ハハ...ばれたか。まあ、それよりな...良い知らせ、聞きたくないか?」


「いい知らせ...?」


「体のほうはもう大丈夫らしい。お医者様がそう言っていた。本当に良かったよ」


「...そっか。ありがと」


自分のことだ。十分回復していることは分かっていた。ただ、もう入院する口実がなくなる。あの、提督との楽しい時間がなくなる。そう思うと少し寂しい


「..まあ、足は相変わらずなんだけどね」


「...そのうち回復するさ」


提督は元気づけるためにわざと言っているんだろうか。でも、私にはわかる。治らないことが。左足は太ももの途中から切除された。右足だって感覚がない


「...そうだよね!病院なんかで鬱々としてたら治るものも治らないよね」


あくまで治ると信じているかのように返事をする


「...それでだがな。明日からまた仕事に就いてもらおうと思ってな」


「...うん」


「なにせ人手が足りなくてな。猫の手でも借りたいほどだ。まあ、そうは言っても病み上がりだし、大層なことを求めてるわけじゃ――」


仕事、か...いつだったか負傷した後に、浴びせられた言葉。仲間、だと思っていた娘たちから浴びせられた正直な気持ち


『お姉さま、見てくださいあの娘』


『とーっても無様ネ』


『生き恥晒しってやつだねー』


『自分だけが被害者ですーって顔しちゃってさ』


『気にくわないなぁ』


『まあ、醜い』


その場面がフラッシュバックする


「...嫌だな」


私はおもわず、そう、つぶやいてしまった。提督は困った表情をうかべる


「...わがまま、かな」


「...そんなことないさ。あんなことがあったんだしな。無理はさせないさ」


私が感じている不安を感じたのか、提督はおもむろにベッドのそばにしゃがみ込み、私の頭を撫でた


「...っ」


思わず声が漏れる


「...大丈夫。また前線に戻すようなことはしない。ちょっとした後方支援だよ。頑張れるか?」


前線に出るわけではない、と聞いてホッとした。それなら...


「...うん」


「よし。それでこそ鈴谷だ。応援しているよ」


私の返事を聞くと、提督はおもむろに立ち上がる


「もうこんな時間だ。そろそろお暇させてもらおうかな」


そう言って、ドアへと向かおうとする提督の腕をつかんで、制止する


「ん、どうした?」


「今日くらいはさ、...夜までずっといてよ」


「...そうだな。今日で、最後だしな」


そういうと、提督はまた椅子に腰かける


そして、いつものようにたわいもない話を続ける


どれくらい話しただろうか。気が付くと、いつの間にか眠ってしまっていた


提督といるだけで、安心感がある。明日から始まる新しい日々も、がんばれる気がした


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2017-06-29 07:41:09

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2017-06-27 17:40:42

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2018-03-01 18:41:33

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