2018-05-07 23:48:23 更新

概要

#君はもう少し勉強するべきだ
勉強でできた我の自信作


前書き

彼女はただ、あの日の日常を望んだ努力家だった。


あの日のことは嫌でも忘れない。いや、忘れられないのだろう。

私が彼女を殺したのだから………


目を覚ます。いつもとおんなじ何百何千と見た、木目の少し黒ずんだ天井。夏とはいえ、梅雨が明けたばかりの空気は、湿気を含み汗ばむ肌が煩わしい。

背中のベタつきに気色悪さを覚え、ベッドから起き上がる。

七月二日、午後の二時。歪んだ時計が、怠惰な私を律する唯一の計器だ。

汚れてしまったシャツを変え、開けた食堂で栄養を貪る。時間帯の為か、殆どヒトが居ない。

ランチAセット。彼女がよく食べていたなと思うのもつかの間、早々と胃袋に放り込む。

一緒に食べる人がいると美味しく感じるなら、一人で食べる飯はこれほど味のないものになるのかと。端的に不味い、無味無臭。人が食べるものじゃないみたいだ。最も、艦娘なんてみんな人ならざる存在だが。

気づけば私は、海に立っていた。漆喰よりも赤黒く染まりきり、彼女を殺した海が。

いや、殺したのは私だったか。

しかし今は、あの日と変わりない蒼い海だ。海面は穏やかで滑るには上出来なほどに。

微速前進。スクリューがゆっくりと回り始め、重い海水を徐々に押し出して行く。好調だ、まだ動く。

「あぁ、かったりぃなー」

独り言にも、まるで親しい彼女がそこにいるかのようにも聞こえるその一言は、水に溶ける。

哨戒の任務ともいえなくもない海上移動をひたすら、ただひたすらに続ける。

そうすればいつか、彼女が水平線の向こうからやってきてくれるのではないか。いつまでも終わらないこの戦争に、暁の勝利という淡い期待を持って………


夜が来た。霧が水面で交差し、立体が水面と同化する。敵がいつ、どの方角から牙を剥くかなんてわからない。それでも生きるために、平凡なあの日常に戻るために………

戻る……?どこに?鎮守府?

「…………いや、違うなこれ」

頰を伝う風がすべてを、流していってしまった。


そう、すべてを。流してしまったのだ。

今まで見ていた視界がグニャリと曲がり、暗転。そしてその先に現実を直視してしまう。この、痛ましくも儚い希望で動いている世界を。


それはすべて嘘だったのだ。では何処から?

夜が来たときから?

違う。

海に出た時からか?

いや違う!

食堂でもない!!!ベッドで起きた時よりももっとずっと前!!


そう、あの日彼女、弥生が私を庇って沈んだあの日あの時あの場所からだ。

嗚呼、私は今でも囚われているんだ。自分自身で作り出してしまった孤島に。

島を囲むのは無数の鬼たち。助かるのには骨がだいぶ折れるだろう。

「それでも、それでも私はここに留まる。そうすればいつかきっと!あの日々のようななんでもない時間が過ごせるんだ!!」

そんなことはできるはずがないのに、私ならできると。叶うはずないのに、このままだったらできるんじゃないかって。そう、純粋に思ってたんだ!

「だから………邪魔を……するなぁ!!!」



その海域は、8,774時間前から大本営によって放棄されていた。

しかし、その海域では毎晩夜戦が行われているとの噂があったが、それもじきに消えていった。


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