2018-07-16 23:07:36 更新

概要

「お嬢様、お話とは何でしょうか?」
「あなた、鎮守府の提督をしなさい。」
「・・・・・・・・・・・・・・・はい?」


前書き

週末にぐらいに書いていく予定ですが、気分が乗ればどんどん書いていきます。
食事シーン書いていますが、料理の話は得意ではないので雑です。ご容赦ください。
自分で何回か読み返すので、何度か訂正しています。


1  着任



提督「え、え~今日から、この鎮守府の提督になります・・・不束者ですが宜しくお願いします。」


艦娘たち「「「・・・・・・」」」


提督「あ、はい。以上です。解散してください」


うん、この鎮守府は問題ものですね。

このピリピリとしたような雰囲気、冷たい視線・・・。

ちょっとしたことがあった、と元帥様は申しておりましたが・・・ちょっとしたことではないようですね。


・・・・・・しかし、お嬢様は何故この鎮守府の提督に私を推薦したのでしょうか?

嗚呼、お嬢様が心配です。

朝は自分で起きられているでしょうか。

衣服の洗濯はできているのでしょうか。

お食事は用意できているのでしょうか。

あの新しい執事は、大丈夫なのでしょうか。


不肖この私、お嬢様に何かあれば駆けつける所存・・・。

嗚呼、お嬢様お嬢様お嬢様お嬢様お嬢様お嬢様お嬢様お嬢様お嬢様お嬢様お嬢様お嬢様お嬢様お嬢様お嬢様お嬢様お嬢様お嬢様お嬢様お嬢様お嬢様お嬢様お嬢様お嬢様お嬢様お嬢様お嬢様お嬢様お嬢様お嬢様お嬢様ァ!


・・・失礼、紳士としてお恥ずかしい。

これでも、紳士の端くれ。

プライベートと仕事は区別しなくては。


提督「今日の秘書艦は・・・。」


艦隊において、一日提督の秘書をする秘書艦がいるらしい。

うん、鎮守府の運営の仕方は元帥様から借りた書籍に書いてありましたし・・・そろそろ来る頃ですが―


―コンコン


来たようですね。

提督「どうぞ、お入りください。」


春雨「失礼します、本日の秘書官をさせていただきます春雨と申します。」


おぉ・・・なんというか、物凄く・・・とても硬い挨拶ですね・・・。

これも、ちょっとしたこと、の所為なのでしょうか・・・。


ん?なんか、どこかで見たような顔ですね。


提督「あの、「はい!」」


Oh、返事がとても速い・・・。


提督「・・・そんなに硬くなさらないで下さい。その、女性の方に敬語を使わせるのはどうにも・・・。」


春雨「あぁ、すみませんでした!すみません!」ペコペコ


・・・お辞儀の角度がとても綺麗ですね。

分度器をあてたら何度でしょうか。

90度ぴったりという感じでしょか。

見習いたいです。


提督「あー、春雨さん?」


春雨「は、はい!」


提督「まずは、座って下さい。」


春雨「し、司令官さん!いけません、このソファーは来客用の特別なソファーですよね?」


提督「? 別にいいじゃないですか、どうせ男に座られるよりも女性の方が座られた方がこのソファーも喜びます。」


春雨「で、でも・・・」


提督「うーん、あ、そうでした。こういう時に使うんでしたね、はい上官命令。上官命令というのはいささか気に入らないですが、今回ばかりは致し方が無いです。」


春雨「・・・分かりました。」スッ


やっと座りました。なんか、春雨さんの顔が曇ってますね・・・。

ここの子たちは、少し面倒くさそうです。

まぁ、でも面倒くささならお嬢様の方が強いですが。でも、面倒の見甲斐はそれなりにありましたね。


提督「では、これをお飲みください。」


春雨「これは・・・! ダメです、これは司令官さんのですよね?」


提督「いえ、春雨さんの分ですよ。」


春雨「え?」


提督「え?」


私、何か変でしたでしょうか。

お嬢様のときは「アフタヌーンティーは常識よ?」なんて言われて、毎日お出ししていたのですが・・・。


提督「・・・上官命令。」


春雨「はい・・・。・・・ゴク・・・。」


提督「・・・あ、あのお口に合いましたか?」


春雨「はい! とてもおいしかったです!」


提督「それは良かったです。」


春雨「あ、あの私さっきから司令官さんにされてばかりで・・・私にできることはないですか?」


提督「あ、じゃあ敬語やめてください。それとさん付けも。」


春雨「・・・はい」シュン


あれ、なんか落ち込みましたね・・・。困った。

何か、すること・・・。


ザァァ・・・


春雨「雨、降ってきましたね」


提督「そうですね。あ、そうだ。春雨さん、一つお願いできますか?」


春雨「はい!」パァ


―――――


春雨「妖精さん、開発資材を持ってきました。開発、宜しくお願いします。」


妖精 コク


春雨「・・・こんなのでいいのかなぁ、資料とかの整理とかお部屋の掃除とか・・・あの司令官は、優しいです。」


前の司令官とは多分違う。

きっと、もしかしたらあの司令官なら・・・。


妖精 ホイ


春雨「あ、出来ましたか。ありがとうございます。これは、こっちに置いて・・・」


ザァァ・・・


雨、強くなってきましたね・・・。

あ、そろそろ戻ってお手伝いしないと。


―――――


コンコン

春雨「失礼します。春雨戻りまし・・・た?」


シーン


春雨「あれ、司令官がいない・・・」


提督「先を越されましたか。」


春雨「うわっ!」


提督「あぁ、すいません。驚かせてしまいましたか。」


春雨「い、いえそんな。足音が全然していなかったので・・・すいません。」


提督「全く、醜い癖ですよね」ボソッ


春雨「?」


提督「いえ、何でもありません。」


春雨「そう言えば、どこに行ってたんですか?」


提督「・・・少し、少しばかり鎮守府を見回っていました。」


2 雨降る執務室



提督「春雨さん。」


春雨「はい。何でしょうか?」


提督「鎮守府を見回ってきてくれませんか?」


春雨「え、でも先ほど見回れたんですよね?」


提督「はい、ですが流石に春雨さんたち・・・艦娘たちの部屋は流石に厳しいのでね・・・。」


春雨「あっ(察し)・・・分かりました、春雨にお任せください。」


提督「頼みましたよ。」


春雨「失礼しました。」ガチャ



提督「・・・・・・・・・」


女性の方に嘘を付いてしまいましたね。


本当は、鎮守府なんか見回ってない。

私はただ、外に出ただけ。

雨降る、外に出ただけ。

言い訳をしてしまった。


提督「・・・仕方が、ない。」


その言葉で片付いてしまえばいいと思った。


―――――


春雨「・・・司令官は、なぜ嘘を付いたのかな。」


鎮守府を見回っていた、と司令官は言ってたけど。

じゃあ、どうして肩が濡れていたんだろう。

多分、鎮守府を見回ってたんじゃなくて外に出たんだと思う。

肩が濡れるのって、雨くらいしかないし・・・。


ますます、よくわからなくなってきました・・・。


*****


春雨「これで、一通り見回ったはず。」


春雨「・・・時間は・・・ヒトハチヒトヒト・・・もう、こんな時間!?司令官さんの夕食準備しなくちゃ!」バタバタ


―――――


春雨「司令官、すいません遅くなりました!あ、あのお夕食の用意を・・・」


春雨「また、いない・・・」


提督「あ、ちょうど今できました。」


春雨「きゃぁっ!」


提督「すいません、また驚かせてしまいましたね。」


春雨「あ、いえこちらこそ・・・」


提督「すいません、休憩室のキッチンを使って夕食を作ってみました。持ってきた食材の中にたまたま春雨があったので麻婆春雨作ってみました。」


春雨「え?」


提督「初めてチャレンジしてみたんですが、食べてくれませんか?嫌なら、いいですけど・・・。」


春雨(美味しそう・・・もしかしたら私のよりも)


提督「名前で遊ばれるのは嫌ですよね。すいません、別の物を用意するので少々お待ちください。」


春雨「あ、いえ!食べます!と、というかその・・・私が用意すべきなのに司令官が用意されるとは・・・その・・・。」


提督「いえいえ、一日も使って秘書をしてもらっているんですしこれくらいの労いは当たり前です。」


春雨「で、でも・・・。」


提督「いいんです。これくらいさせてください。」


春雨「で、ではお言葉に甘えさせてもらうことにします・・・いただきます。」


提督「どうぞ。」


春雨「・・・・・・」パクパク


提督「・・・どうですか?」


春雨「・・・おいひれふ(美味しいです)!」


提督「ふふ、そうですかありがとうございます。」


この、麻婆春雨・・・私が作るのと同じくらい・・・それよりおいしいかも!

ごはんが進む!


パクパクパクパク


提督「ふふ、可愛らしいですね。」


春雨「~ッ!」 


ゲフッゲフッ


提督「あぁ、これ水です。」


春雨「・・・ンク・・・ンク」


提督「大丈夫ですか?」


春雨「大丈夫じゃないです!い、いいいいきなり何ですか!?か、かかかかかかかわいらしい!?私がですか!?麻婆春雨にがっつく春雨がですか!?」


提督「そ、そんな怒らないで下さい!可愛いですよ!いっぱい食べる女の子だって可愛いですよ!」


春雨「~ッ!」ボンッ


あ、春雨さんからものすごい量の湯気が出てきました。

どうしましょう、麻婆春雨片手に固まってしまいましたね・・・。


*****


提督「あ、そういえばここの食事は間宮さんというお方がお作りになられるんですか?」


どこの鎮守府にも間宮さんという方がいて食事を作ってくれる、と書籍にありましたが・・・。

あと、伊良湖さん?


春雨「・・・ここには、いません。前司令官が『給料艦など戦力にならん、資源にした方がマシだ。それに保有艦数も浮く』と言って即解体だったそうです。」


提督「・・・そうですか、失礼なことを聞きましたね。すいません。」


春雨「いえ、司令官が気にすることではありませんから。」


どうやら、本当にちょっとしたことがあったわけではなさそうですね。


提督「食事はどうなさっていたんですか?」


春雨「自炊です。ある程度なら、料理できる子もいましたから。」


提督「成程・・・」スッ


春雨「あ、あの司令官。どこに?」


提督「決まっているじゃないですか。料理するんです。」


春雨「りょ、料理?」


提督「はい、皆さんの分を作るんです。」


春雨「で、でも皆の分を作るのは・・・。」


提督「皆さんが料理を始める時間は?」


春雨「ヒトキューマルマルからですけど・・・あと20分ですよ?」


提督「大丈夫です。20分ならいけます。春雨さんは皆さんを座らさせてください。」


春雨「え、本当にやるんですか?」


提督「みんなと、食事をとればきっと仲良くなるはずです。よろしく頼みました!」ガチャ


春雨「えぇ・・・。」


―――――

20分後

―――――


長門「春雨よ、食事を作らなくてはいけないのだが?」


春雨「あはは、すいません長門さん。しばらくお待ちを・・・司令官の支持なので・・・あはは・・・。」


き、気まずすぎる!

司令官、早く!

春雨、視線が集まっています・・・。

ものすごく、怖いです。


提督「ふー、何とか間に合いましたね。」


春雨「司令官!」


提督「すいません、春雨さん。無茶言って・・・。」


春雨「い、いいですけど・・・それよりお夕食の方を・・・。」


提督「そうでしたね。」


流石に、全員分だと台車が重くなりますね。


提督「はい、どうぞ!」


3 降る雨やむことを知らず



提督「・・・・・・うーん・・・。」


春雨「どうしたんです?」


提督「いえ、先ほどの食事の時に試しに話しかけたのですが・・・ね・・・。」


春雨「・・・仕方がありません。この鎮守府ではこれが普通ですから・・・今日が休みだったことがこの艦隊にとっておかしな話でしたから。」


提督「春雨さん。」


春雨「はい?」


提督「お願いがあります。この鎮守府・・・前提督がいた頃の話を聞かせてください。私はたまたま声がかかり着任しました。ですので、この鎮守府がどうであったか知りません。心が痛むような話かもしれませんがどうか、お願いします。」


春雨「・・・・・・・・・分かりました。」


提督「ありがとうございます。」


春雨「ここの鎮守府のことは私はあまり知りません。私はここに着任して間もなく前司令官が、消えましたから・・・。」


提督「・・・そうでしたか。」


春雨「でも、少しなら知っています。ここの鎮守府は、所謂ブラック鎮守府でした。」


提督「ブラック鎮守府・・・・・・。」


春雨「休みはありません。ひたすら出撃でした。私たち艦娘は、前司令官の出世のための道具でした。毎日毎日、深海棲艦と戦い傷つき、修理され、また出撃・・・そんな日々だったそうです。」


提督「だった?」


春雨「駆逐艦は戦艦を始めとする艦娘に火力でかなり劣ります。ですので、私たちはほとんど使われませんでした。ですが、戦艦たちは火力が出るためひたすら出撃させられてました。ひたすら良い戦果を残さなければなりませんでした。負けてしまうと、前司令官からの暴力を受けます。ここに来て、私は何回も悲鳴を聞きました・・・。」


提督「・・・。」


春雨「ですから、彼女たちは提督、司令官と言う人間を警戒しているんだと思います。」


提督「・・・逆らおうと思わなかったのですか?」


春雨「逆らえば、国家反逆罪と同じです。上官に手を挙げてしまったら即処分でしょう。それになにより、手を挙げてしまえばあの司令官と同じことをしています。あの司令官と同じことはしたくないという意思の子たちが多かったんです。」


提督「・・・ありがとうございます。」


春雨「いえ・・・。」


提督「では、春雨さん。」


春雨「はい・・・?」


提督「春雨さんは、何故このような大事な話を私にしてくれたんですか? 提督と言う人間の、私に。」


春雨「・・・今日一日、秘書官をして思ったんです。司令官は優しいです。なんというか・・・馬鹿が付くぐらいに、ふふ。」


提督「ふふ、馬鹿、ですか。」


春雨「ほら、そういうところです。普通、馬鹿って言われたら怒りますよ?」


提督「そうなのですか・・・。」


春雨「あ、でも気を付けた方がいい子もいます。」


提督「?」


春雨「極一部ですが、司令官嫌いというか・・・多分人間嫌いの子もいます。」


提督「成程、これはなかなか苦労しそうです。」


―――――


提督「おや、もうこんな時間ですか。春雨さん、そろそろお休みになって下さい。」


春雨「はい、分かりました。おやすみなさい、司令官。」


提督「はい、お休みです。」


ガチャ


提督「・・・どうやら、本当にこの鎮守府はただの鎮守府じゃなかったようです。しかし、何故お嬢様が・・・。」


何故、お嬢様が私をここに?

軍人の知識、高学歴など全くない私に・・・。

ましてや、まっとうな生き方を自分で見つけられなかった私に・・・。


ザァァ・・・


雨・・・止みませんね。

そう言えば、あの日もこんな雨の日でしたっけ・・・?


―――――

翌日

―――――


提督「さて今日も、頑張りますか。」


さてと、昨日は比較的接しやすい春雨さんでしたが今日はどんな子でしょうか・・・。


???「失礼するよ。」コンコン


提督「はい、どうぞ。」


皐月「皐月だよ、今日一日秘書官をさせてもらうよ。宜しく。」


おぉ・・・かなり、言い方が尖っていますね。

・・・昨日、春雨さんが仰っていた「人間嫌い」の子でしょうか。

なかなか難しそうです。


提督「はい、宜しくお願いします。」


皐月(はぁ、嫌だなぁ。なんでこんなヤツと同じ空間にいないといけないんだ。きっとコイツも、前のアイツと同じなんだ。)


皐月「で、今日は何をするんだい?」


提督「今日は雨の所為で出撃ができないから・・・開発の方をお願いします。」


皐月「分かった。」ガチャ


提督「・・・うーん・・・。」


なんか、かなり距離をとられていますね。

全然近づきませんでしたしたし・・・。

やはり、仲良くなるのは難しそうです。


―――――


皐月「戻ったよ。」


提督「ありがとうございます。」


皐月「次は?」


提督「特にありませんね。自由にしてていいですよ。」


皐月「は? 書類は?」


提督「昨晩のうちに終わらせましたけど?」


皐月「え?」


提督「あ、すみません。飲み物用意していませんでしたね。緑茶、麦茶、烏龍茶、紅茶のどれがいいですか?」


皐月「そんなものは・・・要らない・・・。」


提督「遠慮しないで言ってください。飲み物じゃなくてお菓子なんかもありますよ?」


皐月「・・・要らない・・・。」


提督「では、本日の秘書任務は終わりですね。ここにいても構いませんが・・・。」


皐月「・・・なんで・・・。」


提督「はい?」


皐月「なんで、なんでそんなに優しいのさ?」


提督「私、そんなに優しいことしましたか?」


皐月「書類とか自分で片づけてたり、飲み物だそうとか言うあたり。」


提督「ただの気配りです。」


油断を誘っているのか?


提督「まあまあ、そんな難しい顔をしないで下さい。可愛らしい顔が台無しですから。」


皐月「・・・・・・・・・」


皐月「!」


提督「どうかしましたか?」


皐月「なんでもない。」


提督「皐月さん、座って下さいさっきから立ちっぱなしですよね。」


皐月「いい・・・。」


提督「ふーむ、困った。しかし、ここの子たちは固いですね。二度目を使う羽目になるとは。」


皐月(二度目を使う?やっぱり何かしたんだな。昨日、春雨がいつもとは違う顔をしてた・・・昨日何かさせたんだな。)


提督「はい、上官命令。座って下さい。」


皐月「え?」


提督「座って下さい。」


皐月「・・・・・・上官命令、なんだよね?」


提督「はい、そうです。」


皐月「・・・分かった。」


やっと、座ってくれますね。


皐月 テクテク

    フラッ

    バタッ


提督「皐月さん!?」


皐月「・・・う、ぅ・・・。」


提督「これは・・・すごい熱ですね・・・。」


近くで見ると案外小さいですね。

こんな小さな体で・・・。

この子は一体、どんな風に前提督に扱われてきたのか・・・。


やはり、許せない。


4 五月晴れ


皐月「皐月だよっ。よろしくな!」


??「ああ、よろしく頼む。」


この人が、この鎮守府の司令官。

今日から僕が艦娘として、生きる日々が始まる。


そう、あの日からすべてが始まった。

あれが、「他人嫌い」のすべての元凶だった。


***


皐月「やったよ、司令官。どう? 僕のこと見直してくれた?」


前提督「ああ、この調子で明日も頑張ってくれ。」


皐月「うん・・・。」


司令官は、いつもこうだった。


話しかけても、興味がなさそうに話す。

眼鏡の奥に潜む瞳は暗く、見るだけで怖い。

まるで自分のことしか考えていないような、そんな人だった。


皐月「ごめん・・・。 負けちゃった・・・。」ボロ


前提督「負け記録、1か・・・。 次は負けるなよ。」


皐月「うん・・・。」


前提督「俺はまだ、ここに来て間もない。強力な火力を持つ、戦艦や空母がまともにいない。だから、こうしてお前たち駆逐艦を使っている。俺は早く出世して上の奴らに俺という存在を認めさせたい。だから、もっと頑張ってくれ。」


やはり、この人は自分のことしか考えてなかった。

当然、修理された私はすぐに出撃させられる。

休む暇などない。

それでも、あの人に僕という存在をあの瞳に映させたかった。

だから、必死に頑張った。

どんな、強い敵でも恐れずに必死に戦った。


でも、駆逐艦ごときの体力ではそれは不可能だった。


皐月「・・・ごめん、負けちゃった。次は―」


―パンッ!


皐月「・・・ッ! う、う・・・痛い・・・。」ポロポロ


前提督「泣くなよ、めんどくせぇ・・・これだからガキは嫌いなんだ。もう、疲れた猫を被るのはやめにしよう。負け記録2回目、いいか? 負けたら勝率に反映されるんだぞ? 勝率は成績、これからの出世に響くんだよ!」


皐月「で、でも・・・。」ポロポロ


前提督「泣くな!!」


皐月「ひっ・・・!」


それは何よりも、何よりも怖かった。

今まで経験した戦いよりも。

精神を攻撃される。

肉体的ダメージよりも、ひどいものだった。


この日から、司令官の言動は今までになく荒れた。

鎮守府内の艦娘たちは恐れた。

けど、何もすることはできなかった。

そして、出撃回数もかなりのものとなった。


休む暇もない。

甘える暇もない。

姉妹と談笑する暇すらない。

悪夢のような日々。


次第に、この鎮守府の艦娘は心を閉ざすようになった。


結局信頼できるのは自分だけ。


何も信じてはいけない。


期待して頑張る必要もない。


僕たち艦娘は、ただの道具。


人間が利用する道具。


それからはもう、何もかもどうでもよくなった。


これが、僕の人生。

僕が生きた日々。


暗く、ドロドロして光も何もない。

結局、僕は人形に過ぎなかった。


それだけの話。


だから、今の司令官も信じちゃいけない。

期待しちゃいけない。


だって、いつかあの日のように裏切られるのだから。


――――


あーあ、嫌な夢を見ちゃった。

あの司令官は今頃どうしてるんだろう。

法的処理を受けて、死んだかな。

死んでなかったら、僕がアイツの頭をぶち抜いてやる。


皐月「・・・・・・ここは・・・?」


見慣れない天井だ。

確か、司令官と話をしててそれで・・・。


提督「目が覚めましたか。気分はどうですか?」


皐月「良くない。」


提督「そうですか。・・・すみません、急に倒れたので私の部屋に運んでしまいました。」


皐月「・・・。」


今、コイツと二人きり・・・。

何かする気か、それとももう何かしたか・・・。


皐月「もう、いい。執務に戻る。」


提督「え、あのもうすることないですよ?」


皐月「じゃ、看病はもういいから。」よろよろ


提督「ダメです。もう少し、大人しくしていてください。」


皐月「そんなこと言って、どうせ何かするつもりなんでしょ?」


提督「何もしませんよ。第一、するとしても皐月さんが寝ているときにしますよ。」


皐月「・・・。」


特に何かされたわけでもない、か。


提督「・・・そんなに、提督という人間が嫌いですか?」


皐月「!」ビクッ


提督「私は、前の提督が酷い人間だったということしか知りません。」


皐月「だよね。」


提督「あなたの痛みも、あなたの悩みも、あなたの想いも知りません。」


皐月「・・・。」


提督「あなたが、皐月さんが思っているほど私はひどい人間ではないと思います。自分で言うのも、おかしいですけどね。」


皐月「嘘、だね。」


提督「・・・生き物というのは、すべて経験から予測し動きます。皐月さんの過去に何かあるならば、その過去の経験から皐月さんは動いているのでしょう。」


皐月「・・・。」


提督「それで、いいのです。無理に私の傍にいなくても大丈夫です。皐月さんが『嫌い』というならば、どうぞ嫌ってください。」


皐月「・・・嫌い。」


提督「・・・少し、傷つきますね。・・・でも、私の言うことはちゃんと聞いてくださいね。」


皐月「・・・。」スー


提督「大人しくしていてください。」


皐月「・・・ちっ・・・。」


提督「しばらく、待っていてください。お粥、作ってきますから。飲み物はお茶でいいですよね。」


皐月「・・・。」


提督「では。」


皐月「・・・なんで」


提督「・・・なんでしょうか?」


皐月「なんで、そんなに優しいの?」


提督「だから、ただの気配りですよ。艦娘のあなたたちには海の上で戦ってもらっています。これくらいの労いは当たり前です。」


皐月「なんで? 僕らはただの道具なんだよ? 労う必要なんて・・・。」


提督「道具じゃないです。あなたたちは立派な、人間です。立派な生き物です。成程、皐月さんは自分のことを道具だと思っていたんですね。」


皐月「・・・前の、司令官が・・・。」


提督「やはり、クソ野郎でしたか・・・。」


皐月「・・・。」


提督「すいません、口が荒れてしまいましたね。とにかく、皐月さん。」


皐月「!」ビクッ


提督の手が、皐月の手首を捕まえる。


提督「あなたは、自分を道具と思わないで下さい。自分を、もっと大切にしてください。そして私と『目』を合わせて話してください。」


皐月「!」


ああ、この人の瞳に私が映っている。

この人は、僕をちゃんと見ている。


皐月「・・・負けても、怒らない?」


提督「あなたたちが無事に帰ってくればそれでいいです。」


皐月「・・・甘えても、怒らない。」


提督「甘えたければ、どうぞ甘えてください。」


皐月「長話しても、怒らない?」


提督「いつまででも、聞きましょう。」


皐月「泣いても、怒らない?」


提督「怒りませんよ。存分に、泣いてください。」


皐月「じゃぁ、最後・・・絶対に『裏切らない』?」


提督「神に誓って・・・この首にかけて、裏切りません。」


皐月・・・う、うわぁぁぁあぁぁん」ポロポロ


提督「今まで、よく頑張りました。心ゆくまで泣いてください。」


本当に、本当にこの子は強い子だ。

さっきの質問から考えるに、きっとこの子は泣くことも許されず、甘えることもできず、頑張った挙句裏切られた。

心の傷は、かなり深いものでしょう。


・・・外、晴れてきましたね。


―――――

後日

―――――


コンコン


春雨「失礼します。司令官、あの―」


皐月「司令官、もっと撫でてよ!」


提督「はい、分かりました。」


春雨「!!??」


提督「あ、春雨さんどうかしましたか?」


春雨「すいません、御取込み中でしたよね!?ひ、人様の好きな人がたとえ小さな子でもその人の好きな人ですからね?春雨、そういうのには理解がありますので?し、失礼しました!?」アタフタ


提督「盛大に勘違いされてる!?」


5 朝時に雨ありて


お嬢様、お体の方は大丈夫でしょうか?

私は元気に、提督業をしています。

この鎮守府に来てから、一週間が経ちました。

ここの艦娘の子たちは、少し癖が強い子が多いですが何とかやってます。

まだ、仲良くなれていない子がいますが・・・・・・。

ここの子たちは、本当にいい子たちが多いです。ですが、それを封じ込めてしまっています。

「自分は道具だ」と、思い込んでいる子がいました。前提督の所為で、深く傷ついている子もいました。

まるで、過去の自分を見ているようです。


以前お嬢様が、「何故、あなたが鎮守府に行くのか。その理由は自分で考えなさい。」と私に言いましたが、全くわかりません。

答えください。

海軍学校を卒業していないどころか、まともな学歴が無い私がなぜ選ばれたのか本当に分からないです(-_-;)

・・・絵文字使ってみたかっただけです。気にしないで下さい。


今、笑いましたね?

今度お会いしたら、お嬢様の嫌いな椎茸くわせます。


                                                         ――より




??「あの子はあの子で、元気でやってるみたいね。ふふ。」


?「左様ですか。お嬢様、そろそろお時間でございますよ。」


お嬢「あら、爺やもうそんな時間?分かったわ、すぐ準備するわ。」


爺「あの若造も元気そうで・・・。」


お嬢「あら、爺や・・・一番弟子がいなくて寂しいの?」


爺「そんなわけありますまい。」


???「お嬢様、お洋服の準備できました。」


お嬢「新人メイドさんのお呼び出しだわ。爺や、この手紙はいつもの場所に。」


爺「分かりました。」


メイド「その手紙は?」


爺「なに、しがない子供のしがない手紙じゃよ。」


メイド「?」


―――――――


??「またいる・・・。」


僕は、時雨。

この鎮守府に所属する艦娘。

ちょうど一週間前に、ここに新しい提督が来た。

それが、あいつ。

波止場にいる、あれ。


僕の日課は、毎朝の散歩。

理由は、単純。

朝の潮風が気持ちいいからだ。

特に、波止場に吹き抜ける潮風が一段と気持ちいい。


が、最近は波止場に行けてない。

あいつがいるからだ。

六日ぐらい前からずっと、朝僕より先に来ている。


僕は、関わりたくないからこうして木陰から観察するしかない。


・・・朝早く行ったって、あいつはいる。

この間なんて四時に、行ったのにいたからね。

何時におきてんだよ。


まあ、そんな感じで今日に至る。

別に観察が楽しいというわけではないが、何となく観察してみた

今まで、特に目立ったことはしていない。

ただ、ずーっと海を眺めているだけ。

もしかして、僕と同じで潮風でも浴びているのかな?


時雨「と、そろそろ時間かな。」


そろそろ鎮守府に戻って、朝ごはんにしないとね。

提督も・・・


時雨「・・・いないね。」


というか、姿が消えた。

いつもだったら、歩いて帰るところを見るんだけど・・・。


時雨「まあ、いい。帰ろう。」


提督「おはようございます。時雨さん。」


時雨「!?」


提督「隠れるなら、もう少し息を殺した方がいいですよ。あれでは、バレバレです。」


時雨「・・・あれでも、結構殺してたんだけどな。」


提督「それはそうと、こんな朝早くから何をしていたんですか?」


時雨「提督こそ、何をしていたんだい?」


提督「海を眺めていただけですよ。」


ふむ、時雨さんはなかなか接しやすいですね。

少し、安心しました。


時雨「僕はただ、散歩をしていただけだよ。」


提督「そうですか。・・・・・・良かったです。」


時雨「どうしたんだい?」


提督「時雨さんは、話しやすかったので。他の子は、話すだけで一苦労ですから・・・。特に、電さんは大変でしたね。」


時雨「そう・・・そう見えるんだね。」


提督「?」


時雨「あまり知らない人のことをすぐ信用するのは、あまり感心しないな。」


――シュッ!


提督「おっと・・・。危ないですね。」


時雨「へぇ、今の、片手で止めるんだ。」


提督「あって間もない人に、刃物を向けるとはあまり感心しませんね。」


時雨「・・・・・・さあ、上官に刃物を向け、殺そうとしたんだ。解体するなり、拷問するなり好きにしなよ。」


提督「・・・。」


なるほど、時雨さんも提督嫌いですか。

手を焼かずに済むかと思っていましたが・・・これは、手を焼きそうです。


提督「さ、早く鎮守府に戻って下さい。皆が起きてしまいますよ。」


時雨「・・・?」


提督「別に何もしませんよ。それに、あれぐらいでは私は死にませんし。」


時雨「・・・そう、じゃあお先に戻るよ。」テクテク


提督「・・・ふぅ、厄介ですね。」


あれは・・・根に持ったら、地獄の果てまで追ってくるタイプですね・・・。

あのレベルだと、人殺しは余裕。

そのために、自分が死んでも構わない。


時雨さんも、やはり前提督に・・・。

かなーり、めんどくさそうです。


まさか、こんなところであの護身術が役に立つは思いませんでした。

さて、今日も提督業頑張りますか。


―――――


提督「・・・はぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁ。」


名簿:今日の秘書艦

   ・時雨


・・・はぁぁぁあぁぁぁぁぁぁ。

なんで?

さっき、会ってちょうど殺されかけたのに・・・。

なんでこんな日によって時雨さん!?


提督「紅茶でも飲んで、落ち着きましょう。」


トポトポ


うん、やはり紅茶の香りは落ち着きます。

そうだ、今度金剛さんとお茶会でもしましょうか。


提督「あぁ、時雨さん。部屋にはノックしてから入って下さい。それと、刃物突き刺すのやめてもらえませんか?今、大事なティーカップ使っているんで。」


時雨「あ、気づいてたんだね。」


提督「殺る気満々じゃないですか・・・。」


時雨「今日は僕が秘書艦をするよ。よろしくね。」


提督「はい、宜しくお願いします。」


提督「ところで、時雨さん。」


時雨「なんだい?」ニコ


提督「カッター握りしめるのもやめてくれませんか?」


時雨「分かったよ。」ニコ


提督「・・・さて、時雨さん。」


時雨「なんだい?」ニコ


提督「・・・・・・天龍さんの刀、堂々と持つのやめませんか?」


時雨「分かったよ。後で、外に捨てておくよ。」ニコ


提督「天龍さんに返してあげて・・・。」


こうして、時雨さんとの戦い(?)が始まった。

時雨さんが、何か持っているのを感じるたびに聞き・・・取り上げる。


それを繰り返した。


日が暮れるまで。


―――――


提督「今日は・・・お疲れ様でした・・・。」


時雨「提督もお疲れ様。」ニコ


時雨さん、笑顔が絶えませんね。

少し、固そうに見えますが。


時雨「今日は、楽しかったよ。」


提督「・・・え?」


時雨「でも、忘れないで。僕は提督という人間は嫌いだからね。」


提督「・・・。」


時雨「ふふ。」ニコ


提督「あははは・・・。」


時雨「じゃあ、お休み。」


提督「お休みです。」


***


時雨「・・・。」


今日は、楽しかった。

この鎮守府、『3代目』のあの提督はすごく優秀だ。

前の2匹の猿とは違う。


あの猿たちは、刃を向けたら・・・なんて言ったっけ?


『や、やめてくれ!な、なんだ!何が欲しいんだ!?』


『お、おい・・・上官に刃を向けるのか?や、やめとけよそんなの自殺行為だぞ?』


あの時は、本当に壊れそうなくらい笑いそうになったな。狂いそうなくらい殺したくなったなぁ。

あいつらは、本当に臆病者だ。

本当に、弱い。


それなのに、立場を利用して上に立とうとする・・・正真正銘のゴミだ。

元帥たちに連れ出された時のあの顔、もう一度見たいな。


時雨「・・・。」ガチャ


姉さんたちは・・・寝てるね。


にしても、提督は前のあいつらとはちがうなぁ・・・。

刃を向けても、動じずに


『刃の向け方が甘いですね、もう少し上に向けた方がいいですよ。と言っても、もう刃を向けるのはやめてくださいね。』


なんて、言い出すんだからね。

楽しすぎるよ。

どうやって、提督を牢屋に引きずり落とすか・・・。

まあ、確かな証拠がないと動けないか。


しかし、このカメラは取り上げられなかったことはラッキーだね。

これで、どれだけの証拠写真を撮ってきたことか・・・。

使い始めて3年、明石さんに頼んで作ってもらったけどそろそろ修理しないとね。


ガチャガチャ


特にこれといった、破損はないね。

さすが、明石さんといったところかな。

あ、あとメロンちゃんも。


マルヒト マルハチ


もうこんな時間か、そろそろお風呂に行こう。

今日は、少し遅くなったようだ。


***


一人お風呂は好きだ。

僕は、一人の方が好き。

自分だけの空間で、自分だけの自由・・・これが好きなんだ。


時雨「・・・?」


女子用の浴場に明かりがついてる。

おかしい、この時間はもうみんな寝静まっている時間。

ましてや、こんな深夜にお風呂に人が・・・?


・・・・・・・・・・・・!!


まさか、提督とか?

カメラは、ポケット。

あの提督を、引きずり落とすチャンスだね。


ふふ、引きずり落とし日数最速かもね。


やっぱり、浴場に明かりが付いている。

・・・人影、あり。


時雨「突入あるのみだね。」


あの提督に、こんな趣味がね・・・。

ちょっと、残念だけど確実な証拠にはなる。


時雨、行くよ!


バーン


時雨は勢いよく、浴場のドアを開け、


カシャッ


勢いよく、シャッターをきる。


提督「~♪・・・・・・・・・・・・?」E全裸


時雨「・・・・・・・・・・・・・・・・・・と、とんでもないものを撮ってしまった。」


提督「・・・・・・?」


時雨「ごめん、提督。悪気はないんだ。」


提督「・・・。」


時雨「提督って、女の子だったんだね。」


提督「・・・!」


時雨「髪、おろした方が可愛いね。」


提督「ち、ちちちちちちちちちちちちち違いますよ!!??わ、わわわ私はお、おおおおお男ですからね。か、かかか勘違いですよ?そ、そうですこれは幻覚ですよ!幻であって―」


時雨「写真、撮っちゃった。」


提督「―――」


時雨「あ、やばい。鼻血が・・・。」ぽとぽと


提督「―――」


時雨「あ、ホントにヤバ―」バタッ


***


時雨「・・・ここは?」


提督「あ、お、起きましたね。し、執務室ですよ。」


時雨「・・・なんで僕がここに?」


提督「さっき、廊下で倒れてたしg―」


時雨「あ、思い出した。」


提督「思い出さなくていいです。」


時雨「た~し~か~」


提督「延ばさなくていいです。」


時雨「て・い・と・く、がぁ」


提督「湿っぽい声で言わないで下さい。あと、お口縫いましょうか?」


時雨「女の子だったんだ。」


提督「忘れてください。あ、紅茶飲みます?数時間前までの記憶が飛ぶやつですけど、美味しいですよ?」


時雨「カメラ・・・ない。」


提督「これのことですか?」


時雨「あ、それそれ。返して?」


提督「はい、なんて言うと思います?」


時雨「返して?」ニコ


提督「そんな闇を纏った、笑顔の子には返せませんね。」


時雨「じゃあ、みんなにバラすよ?」


提督「私が女であると証明できるものでも?」


時雨「直で触ればいいじゃん。」


提督「セクハラで法廷に出してあげましょうか?」


時雨「女ってバレるよ?」ニコ


提督「ぐぬ・・・・・・。」


時雨「返してくれたら、僕と提督の秘密にしてあげるよ?」


提督「本当ですか?」


時雨「自分が言った言葉には責任を持つよ。」


提督「分かりました。返します。」


時雨「ありがとう。」ニコ


提督「・・・・・・。」


時雨「・・・なんで、自分が男って言ってるの?」


提督「・・・・・・かつて、私は女であることに後悔をしました。だから、捨てたんですよ。生きるために。」


時雨「・・・。」


提督「頑張って、生きようとしたんですけどね。全て水の泡、空の塵となって消えました。私という存在は、認められなかったんです。」


提督「どうでもいい話、でしたね。さあ、時雨さんもう遅いですから寝てください。明日に響きますよ?」


時雨「・・・分かった、寝るよ。」


提督「お休みです。」


時雨「うん、お休み。」


提督「・・・・・・・・・部屋に帰って下さい。」


時雨「誰が自分の部屋で、寝るといったんだい?」


提督「え?」


時雨「提督と一緒に寝るよ。」


提督「・・・帰って下さい。」


時雨「あー、写真をコピーして持っていたら手が滑って館内にばらまきそうだなー(棒)」


提督「よし、寝ましょう。いつでも、ウェルカムです。」


時雨「ふふ、ありがとう。」ニコ


やっぱり、この人は好きだ。

ちゃんと、弱みを握れたし。


この人は、生きることに必死なんだ。

あいつらとは、違う必死さを持っている。

僕らと同じ、暗く悲しい過去を持っているんだ。

この人は、多分いつかその必死さに追われて壊れてしまう。


僕が、守ってあげないと・・・。


***


提督「時雨さん?」


時雨「なに?」


提督「抱き着くのやめません?」


時雨「バラすよ。」


提督「ごめんなさい。」



6 海の青、空の蒼


鈴谷「ちーっす、提督ぅ!このソファーに座らせてもらうねー。」


提督「おはようございます、鈴谷さん。どうぞ、お使い下さい」


鈴谷「おっはよう!ところでさ、何かおやつとかないわけ?」


提督「朝からおやつは、よくないですね。」


鈴谷「いいじゃーん。おいしいんだもん。」


提督「健康のこと考えてください。」


鈴谷「ぶぅー!」


提督「サンドイッチなら作りますけど?」


鈴谷「マジィ?!作って作ってー!」


提督「分かりました。でも、ちゃんと秘書艦として働いてくださいね?」


鈴谷「ゆーて、することあんまりないんだけどねー。ねぇ、なんでそんなに自分だけで書類片付けてんの~?」


提督「自分の仕事は、自分でしたいだけです。」


鈴谷「真面目だね~・・・。皆今頃、戦ってんのかなぁー。」


提督「・・・鈴谷さんも、戦いたいんですか?」


鈴谷「そりゃそうじゃん。戦うために生まれてきたのが艦娘なんだしー?提督は争い事嫌いなの?」


提督「そうですね。争いは、好きではありません。話が通じるなら、交渉もありだと思います。」


鈴谷「平和的だねー。」


提督「・・・鈴谷さんは、提督が嫌いとかはないんですか?」


鈴谷「おう、唐突だね~。」


提督「すいません。ここの艦娘たちは、どうも提督が嫌いな人が多いようで・・・。」


鈴谷「嫌いかどうかは、その人で決めるかな~。前の提督が悪かったから、次の提督も悪い人だー! みたいな感じで決めつけるのは、自分勝手じゃん。自分勝手を、押し付けるのは嫌いかなー鈴谷は。」


提督「性格の割には、意外と大人ですね・・・。」


鈴谷「聞こえてるぞーてーとくー! それに、ほら私の傍にいる提督さんは優しいじゃん?優し過ぎて騙されないか心配だけどなー。」


提督「最後のは、聞こえなかったとして褒め言葉として受けっとっておきましょう。」


鈴谷「どう、ここの子たちは?」


提督「曲者が多いですね。」


鈴谷「だよねー。」


提督「特に、時雨さんは・・・ね。」


鈴谷「あーそうだねー。この鎮守府の古株だからねー。」


提督「そうなんですか?」


鈴谷「そうだよー。なんでも、提督を二人この鎮守府から引きずり落としたとか―。」


提督「どういうことですか?」


鈴谷「んーとねー、ここの鎮守府は創設3年目なんだけど、一年ごとに提督が捕まって3年目の3人目が提督みたいな?で、時雨がカメラもってたでしょ?」


提督「あーはい、そうですね。」


鈴谷「あのカメラで撮った写真を証拠として、大本営に流して提督を2人やっつけたみたいだね。2人とも、ブラック鎮守府やってたからね~。」


提督「そうなんですか。あ、はいできました。」


鈴谷「わー、おいしそう!」


時雨さんは、古株でしたか。

あれほどの、身のこなしは2年間生き抜いた証なんでしょうか。


***


鈴谷「見事に大勝利だったねぇ。」


提督「ええ、皆さんよく頑張ってくれています。」


鈴谷「・・・うーー、こりゃ敵が多いねぇ・・・。」


提督「?」


鈴谷「なんでもないよ。」


提督「?」


鈴谷「そういえば、提督なんでずっと帽子被ってんの?」


提督「・・・!」ギクッ


鈴谷「怪しぃ。」


提督「何も怪しくないです。帽子が好きなだけです。」


鈴谷「そうかなー?」


提督「そうですよ。は、早く開発してきてください!」


鈴谷「じゃじゃーん、デイリー分の開発建造は朝一にしました~イェイ!鈴谷ってばゆーしゅーでしょ?」ニコ


提督「・・・そうですね、ははは・・・。」


鈴谷「その帽子、鈴谷にちょーだい!」ガシッ


提督「や、やめてください!」


鈴谷「やめろと言われたら、やりたくなっちゃう!鈴谷でーすっ!」ガシッ


提督「うわっ!」


鈴谷「あり?」


ドッテーン(転げる音)


仰向けの提督。

またがる鈴谷。


提督「・・・。」


鈴谷「・・・うわ~、髪長いね~。」


提督「・・・もう、切り落とそう・・・。」


鈴谷「ダメッ!綺麗な髪してんだから、鈴谷が髪を切ることを禁ずる!」


提督「・・・。」


鈴谷「う~ん、まさか女の子だったとはねぇ。」


提督「女は捨てました。男として生きます。」


鈴谷「えー、なにそれー。可愛いんだから、もったいないよー。」


提督「可愛くないです。」


鈴谷「うはー、頑固だねぇ。」


提督「それは、どうも。」


提督「それはそうと、鈴谷さんどいてくれませんか?」


鈴谷「提督って、背低いよねー。」


提督「自分勝手を押し付けるのは嫌いなんじゃないんですか?」


鈴谷「やらないとは言ってないじゃん?」


提督「矛盾してます。」


鈴谷「自分勝手がないと、生きられないからねー。まあでも、自分勝手はほどほどに。」


提督「やっと、どいてくれましたか。」


***


鈴谷「ていとくぅー。」


提督「なんですか?」


鈴谷「眠くなってきたー。」


提督「寝ないでください。秘書艦の仕事中ですよ。」


鈴谷「てーとくが、書類全部片づけちゃうから仕事ないよー・・・。」


提督「・・・お昼寝程度ですよ?」


鈴谷「あざーっす。」


提督「そこ、私の部屋ですよ。」


鈴谷「てーとくのベッド寝るー。」


提督「自分の部屋にしてください。」


鈴谷「ケチー。ダメなの?」


提督「・・・私のベッドなんかでいいんですか?」


鈴谷「てーとくは、女の子だから大丈夫。」


提督「男です。」


鈴谷「うはー、精神論~。お休み~。」ガチャ


提督「夕方には、起きてくださいね~。」


***


提督「はぁ、またバレた・・・。不幸だ。」


後で、鈴谷さんに口止めしておこう・・・。


***


鈴谷「・・・う~ん。」


はぁ~、良く寝ました~。

このベッド、提督の甘いにおいがする・・・。

可愛い顔してるのにねぇ、もったいない。


鈴谷「って、時計多!」


鈴谷「棚の上に、・・・・・・13個、壁に2個・・・。」


古いものから、新しいものまであるねぇ。

提督、時計好きそうだもんなー。

ザ・真面目ちゃんって感じだね。


あれ、案外かわいい時計あるじゃん!

男男言っても、女の子の部分はあるねー。


余計に可愛くなってきたかも。


―――――


鈴谷「おはよーてーとくぅ。」ガチャ


提督「(・・・げっ)」


時雨「・・・?」ニコ


鈴谷「あ、時雨じゃん。おはー。よーく寝た寝た。」


時雨「おはよう。」ニコ


ゴゴゴゴゴゴゴゴッ!


時雨「提督、なんで鈴谷が提督の部屋から出てくるんだい?」ニコ(闇のオーラ)


提督「あ、あははは・・・いろいろとあって・・・。」


ひいいぃ!

時雨さんの形相がとんでもないことに!?

この顔だけで、ヲ級5体くらい余裕で吹き飛ばしそうなんですけど!?


鈴谷「あー、時雨そんなにてーとくさんを責めないで。眠いって鈴谷が言ったら貸してくれただけだから。」


時雨「そうなんだ。」


提督「そういうわけでして・・・。」


鈴谷「よし、じゃあゲームしよう!」


時雨「どうして?」


鈴谷「気分転換?」


提督「理由になってないですね・・・。」


鈴谷「ゲームに負たら罰ゲームありで~。」


時雨「面白そうだね。」


提督「まあ、二人とも頑張って下さい。わたs―」


鈴谷&時雨「「どこいくの?」」ガシッ


提督「へ?」


***


提督「・・・負けると、思ったから・・・。降りたのに・・・。」


時雨「提督の負けだね。」


鈴谷「ダウトは昔っから、得意なんだよねー。えっへん!」


提督「さて、明日の準備でもし―」


鈴谷&時雨「「だから、どこいくの?」」ガシッ


提督「ひっ!」


***


時雨「・・・思った通りだよ。可愛すぎる。」ボタボタ(鼻血)


鈴谷「あー、これモデル雑誌越えたわ。うん。」


提督「な、なな納得しないで下さい!時雨さんは、鼻血拭いてください!」


時雨「そういえば、提督。」


提督「なんですか!?」


時雨「提督の、名前って?」


提督「っ・・・! 今じゃなきゃだめですか!?」


鈴谷「あ、そういうことか。そうだねー、今がいいなー。」


提督「・・・日乃雨、です・・・。」


鈴谷「ひのさめ?」


時雨「僕たち、白露型と同じ雨の名前とはね・・・。よし、白露型駆逐艦日乃雨の誕生だね。」カシャッ


提督「シャッターきらないで下さい!」


鈴谷「まさか、背が低いのがここで役立つとは・・・。」


時雨「白露型の制服、いい感じだろ?」


鈴谷「うん、すごくいい!なんか、こうムラムラしてくるね。」


提督「おじさんか!」


罰ゲームとして、白露型の制服を着させられました。

不可抗力なのですよ・・・。

スカート滅茶苦茶、スースーします。恥ずかしい・・・。


ガチャ!


春雨「てーとく!夜食作ってきました!鈴谷さんm―」


鈴谷「あ、あざーっす!」


時雨「・・・。」カシャパシャ!


提督「・・・あ。」


春雨「・・・あ、あわわわわ・・・!」そわそわ


提督「もういや!」


――――


提督「鈴谷さん?」


鈴谷「なーにー?」


提督「あまり、夜風に当たっていると風邪ひきますよ?」


鈴谷「いいのいいのー。」


提督「鈴谷さんには、何が見えているんですか?」


鈴谷「青い海に、藍い月、蒼い空かな?」


提督「真っ暗ですけど。」


鈴谷「もう、ロマンチストじゃないなー。」


提督「すいません。」


鈴谷「鈴谷はね、この広い海を、広い空を自由に眺めていたいの。」


提督「どうして?」


鈴谷「好きだから、それくらいしか理由はないかなー。」


提督「そうですか・・・。」


鈴谷「好きなものを好きでいられる、自由を自由に使える世界が本当の世界の在り方だと思うよ?でも、その自由には限度ってものがある。それを守るからこそ、自由が生まれるんだよ。」


提督「自由ですか・・・。」


鈴谷「てーとくはお堅いから、もうちーっとばかしワガママ言ってもいいんじゃない?あんまり堅過ぎると、印象悪いからね?」


提督「そうですか・・・。」


鈴谷「はい、暗い顔しなーい笑って笑って!鈴谷大先生からのありがたい助言だよ?」


提督「はい、ありがとうございます。」


鈴谷「そんじゃ、お休み~。」


提督「はい、お休みです。」


やはり、鈴谷さんは私より大人ですね。

自由を自由に使う、なんとも哲学的ではありますが・・・。

今思えば、お嬢様がくれた自由をろくに使っていませんでしたね。


ワガママですか・・・私が望んでいるもの・・・。



7 期待の星と黒い海


鈴谷「提督がいないと暇だねー。」


時雨「そうだね。」


鈴谷「時雨、何見てんの?」


時雨「提督の写真だよ。」


鈴谷「へぇ~、どれどれ~。」


時雨「どうせ、いつか皆に女の子ってバレるだろうからそのときは写真集にして売ろうかな。」


鈴谷「金儲けしてどうするの?」


時雨「提督用の衣装を買う。」


鈴谷「おう、提督も大変だね。」


でも、提督の裸写真は僕だけのものだ。

ふふ、いい感じに取れている。


・・・あれ、提督の体・・・あざのような・・・。


・・・・・・・・・まさか、暴行を受けたことが?

いや、ない。

あの提督に限って、そいうことは・・・ない、はず・・・。


______


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2018-07-09 23:39:31

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このSSへのコメント

3件コメントされています

1: 74門戦列艦ホリュンデス 2018-06-24 12:45:07 ID: EyGv_I7R

章タイトルを

[chapter: 章タイトル ]着任

と書かれていらっしゃるようですが、正しく表示なさりたいなら

[chapter:着任]

にするべきかと思います。
細かいことですみません

2: 3P's 2018-06-24 16:17:42 ID: SCcF2FAO

お嬢様ァ!

3: SS好きの名無しさん 2018-07-13 19:17:04 ID: dwOXaOFR

よいぞよいぞ 次回に期待しているよ>^_^<


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