2018-07-08 23:02:15 更新

概要

七夕の1年後に交際を始め、更に2年が経過したさよひなです。

pixivの方でも投稿させて頂いてるので良ければこちらもお願いします。
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=9832278‬


「練習は本番のように。本番は練習のように」


その言葉の本番、つまりフューチャーワールドフェスでの優勝という結果を収めてからというものの、仕事のオファーやイベントといったバンドとしての活動、それらと比例して練習量も増えた。大学生の身としては時間が足りないばかりである。


そういった事情も重なり日菜との会うことは疎か、連絡すらとれない日までできてしまうほどであった。私としても寂しく感じるし、以前の冷たい私を知っている以上、あの子にも不安にさせてしまっているのではないかと考えてしまう。

そんな中、日菜から1件のメッセージが届いた。


「おねーちゃん、七夕の日に会えないかな?」


当然送られてきたメッセージに対して頭を過ぎったのは、別れ話だとかいった少々悲観的な物だった。私と日菜の現状を鑑みればその考えに至る理由は明白とも言えた。しかしあまりにも唐突なメッセージに慌てて既読を付けてしまったがなんと返すべきかなど考えておらず


「時間は?」


すかさず返信が来る。


「7時にあの公園で」


SNS等の良くない点として、相手の表情が分からない。といったものがよく挙げられるのだが、実際にこうした場面に遭遇すると嫌でも分からされる。あまりにも淡々とした文面で送られてくる日菜からのメッセージは私の恐怖心を更に煽っていく。


「分かったわ」


最後に日菜から送られてきたおやすみと書かれた可愛らしいキャラクターのスタンプを会話の終尾とした。


—————————————


七夕当日


湊さんに頼みバンド練習をいつもより早く切り上げさせてもらい、ギターを背負い小走りで公園に向かう。

気が付くと日も沈み、淡い残照のなかで青が濃度を増していた。ぽつりぽつりと街頭に明かりが灯る。その光は夜空の青を、より一層幻想的な物へと仕上げた。

息を整え公園を見渡すと、日菜は既に到着しておりブランコに乗り空を見つめていた。すると私の視線に気付いてか、こちらに手を振って近付いてくる。


「おねーちゃん!」


「あっ……」


飛び出していた石に躓いてしまい、私の胸にぶつかる。日菜は目を丸くしながら私を見上げる。日菜のやわらかさと息遣いとが私の肌に触れてくる。

理性じゃ制御の出来ない胸の奥で、とくん、と鼓動が大きくなる。

いくら日菜と話したり会う機会が無くとも、日菜の事を好きだと思う気持ちが揺らぐことはない。

しかし、それでもイヤになってしまう。感情というものは。


「日菜?大丈夫?」


「う、うん」


日菜は真っ赤になりながら私から少しだけ距離をとる。

その反応を見て、私は安堵の息を漏らす。


「それで話って、何かしら」


しかしそれでも緊張は解けず、強ばった声を肺腑の隙間からなんとか押し出した。

心臓の音が少しずつ速く、重くなり頭に響く。その原因は先程の出来事からなのか、緊張からなのかなど分かるわけもなかった。


「おねーちゃん、来てくれたんだね」


僅かな沈黙に、日菜はぽつりと言葉を零した。その後、日菜は私に対する死刑宣告の為か大きく深呼吸をし、改めてその大きな瞳で私の眼を捉える。


「おねーちゃん」


日菜の声に反応するように固唾を飲む。


「あたしと、結婚してください」


私の想定していた切り出し方と全く異なった言葉と、何故か手に握られた指輪。ケッコン……?まるで理解が追い付かず、しばらく固まってしまう。


ようやく落ち着きを取り戻したと思った時には既に遅く、堰を切ってあふれたように、私の目から涙が溢れた。3年前のあの日と同じだったが今度は役回りが違い、私が宥められる側になってしまった。


「よろしく、お願い、します……」


ゆっくりと声を出した。しかしまだ気持ちの切り替えは追い付かず、涙が止まることは無かった。

緊張の糸なんてものは簡単に切れてしまい、頭の中は様々な感情に埋め尽くされてしまう。


「そんなに泣かれるなんて思ってなかったんだけど……」


日菜は私の少し過剰とも言える反応に狼狽える。


「だって、私、日菜に振られると思って……ずっと連絡も取れてなくて」


「そういうことか〜」


日菜も納得したように、こくりこくりとゆっくり縦に首を振る。


「でも……私が、日菜を幸せに出来るのかしら……」


溢れた涙と一緒に何気ない言葉が私の口から零れた


「うーん」


その何気ない呟きに、日菜は少し考えるように顎を持ち上げた。


「おねーちゃんは今、幸せ?」


「幸せに決まってるじゃない」


「そっか、それなら大丈夫だよ」


「どうして?」


「それは教えないよ〜」


そう言って日菜は少し笑いながらくるりと回って空を見上げた。


「あたしが、おねーちゃんを幸せにするよ。おねーちゃんも、あたしをきっと幸せにしてくれる」


「……そうね」


日菜はもう一度その鸚緑色の綺麗な目で私を見つめ


「だから、一緒に幸せになろう?」



いつか、また2人が離れたとしても。

大きく暗い雲に隠れて見えなくなったとしても。

私たちは変わらずに側に居るのだろう。

この物語が終わろうとも、それから、今も。私はずっと貴女の側に居る。そんな想いを空一面に広がる星へ……


これが、私達の星逢い。


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