2018-12-30 17:54:58 更新

概要

幌筵鎮守府より第2談。

かなり御都合主義です、あしからず。


前書き

年越しを前に幌筵鎮守府では、その年の最後の訓練となる【訓練納め】が行われます。

今年最後の訓練、はたして・・?


ドキドキ!の説明会


提督「よーし、それでは明日の演習内容を発表するぞー!」


場所は大宴会室。つい数日前、長テーブルの上には豪華な食事が彩っていたが、今は各艦娘ごとに配られた書類が散らばっている。


【訓練納め】とは今年1年の訓練の最後を飾る大演習のこと。幌筵鎮守府では年末付近は訓練、演習を取り止め、年越し・宴会の準備に全艦娘で当たる。


その年最後の訓練になるので、いつも以上に大規模に行う日が【訓練納め】なのだ。


その日は演習、出撃はもちろん、遠征班も出さず、鎮守府の全艦娘で行うことになっている。


文字通り「大演習」だ。


提督「午前、艦種ごとにローテーションを組んで演習を回す!


駆逐艦から軽巡、重巡までは航行・魚雷・砲戦・対空演習を行う!最初に駆逐が航行、軽巡が魚雷、重巡は砲戦。

時間になり次第、交代する!

   

駆逐の対空演習には鳳翔、軽巡は飛鷹、重巡は加賀についてもらう!


今年の班隊長は・・・」


提督「駆逐艦は朝潮と初春!軽巡は球磨!重巡は高雄!」


他の鎮守府には練習巡洋艦なる子がいるらしいがウチにはいない。したがって変わりにそれぞれ隊長格の艦娘を決め、その子が全体を見て叱咤する役割をもつ。駆逐艦は数が多いので2人だ。


ちなみにほとんどをネームシップ、つまり長女に任せている。


去年は吹雪と睦月、長良、そして古鷹だった。


提督「午前中は4つの演習を周ってもらう!いつもの数倍は撃って、走ってもらうからな!」


鈴谷「げぇ~、加賀さんかぁ・・・せめて赤城さんが良かったなぁ‥」


愛宕(この演習で少しでも痩せて貯金しないと・・・)


高雄(年末は美味しいモノがありすぎる…!)


阿賀野「どどどーしよー、矢矧ぃ!今年も自信ないよぉ~…」


阿賀野は初めて参加した去年の大演習、途中でぶっ倒れた。


矢矧「大丈夫よ、少なくとも去年よりは経験も練度も上がってるわ。今年はきっと大丈夫よ」


球磨「クマ―」フンス!


木曾「球磨姉か・・」


大井「球磨姉さん・・」


天龍(ヤバいな・・)


朝潮「初春ちゃん、よろしくお願いね!」


初春「うむ!こちらこそよろしく頼もうぞ!」


提督「続いて軽空母と空母いくぞー」


提督がチラッと紙を一瞥する。


提督「航行、砲戦、対空、航空演習の4つ!当然、航空演習に重点を置いてもらうが他3つもしっかりやってもらう。


最初の航行は死ぬほど走ってもらう!」


提督「班隊長は軽空母が千歳。空母は飛龍!」


赤城「これは腕がなりますね、加賀さん」モグモグ


加賀「気合が入ります、赤城さん」モグモグ


飛龍(あの2人も私が叱咤するの…?)ソンナァ…


千歳「初めての隊長...ちょっと緊張するわね‥」


龍驤(昨年班隊長)「大丈夫や、千歳なら」肩をポン


千歳「龍驤さん…!」


龍驤(鳳翔がいる空母組は絶対さぼれへん・・)


鳳翔「?」ニコニコ


提督「あ、あきつ丸は軽空母班と一緒に周れよー!」


あきつ丸「了解!であります」


提督「戦艦!やったな、明日は嫌というほど撃てるぞ!航行、対空、砲戦の3つ!」


提督「班隊長は扶桑!」


ビスマルク「そうなの??気前がいいじゃない!」


喜ぶ今年初参加のビスマルクの肩に金剛がそっと手をおいた。


金剛「残念ながら喜べるのは今だけデース。今まで長門と霧島、大和が『弾薬アレルギー』になりかけてるネー」


同じく初参加となるリシュリューはそっと他の戦艦たちの顔を盗み見た。


大和は顔が青ざめ、霧島の眼鏡が白く曇り、長門はゲンドウポーズのままうつむいている。


他の面子も似たような状態だった。


提督「戦艦と空母は俺も見るからなー」


提督「潜水部隊!航行と魚雷! 班隊長は8っちゃん!」


提督「航行に特に重点を置いてもらう。対潜弾の回避運動、および潜水浮上もこれに含まれるからな!」


提督「明日の総員起こしは朝5時!5時30分から朝食!6時40分には全員グラウンドに集合。7時に演習開始する!」


提督「グラウンドに集合した時点で遅れた者は、連帯責任として、その者の部屋の全員にグラウンドを走らせるからな!」


提督「明日に備えて、今日は早めに布団に入るように!解散!」


大宴会室からぞろぞろと艦娘が出ていく。


提督「間宮さん、伊良子ちゃん、すまないけど明日は2人だけで200人分に近い調理を任せることになる。よろしく頼むよ」


間宮「任せてください!私たちにとっても大演習ですから!」


伊良子「その通りです!私たちの本領を発揮するときです!」


頼もしい、と提督は笑った。次に、


提督「妖精さん、海上監視の方、頼んだよ。報酬はしっかり間宮さんたちと決めているからね」


妖精ズ「シャーーマカセロ! キアイ、イレテ、イキマス!」


うんうん、と満足そうに提督は頷いた。


間宮「提督も今日は早めにお休みください。明日は提督も長丁場でしょう?」


提督「ありがとう、間宮さん。そうさせてもらいます」


宴会室を出て廊下を歩く。流石に今日は夜戦を叫ぶ声は響かない。


その日は明石の酒保も鳳翔の居酒屋も暖簾を上げることはない。


鎮守府の全ての部屋は夜10時に消灯を完了した。


いつもと違う朝はわくわくするよね


ジリリリリリリリリリリッッ‼!


けたたましいサイレンが廊下のスピーカーから流れた。


嫌でも艦娘が寝ていた部屋まで響く。サイレンは1分間鳴り続けた。


大和「んぅ…」


戦艦や(軽)空母、重巡組には1部を除いて2人一部屋が当てられている。


しかし現在大和型は大和1隻だけなので、部屋は大和1人だけだった。


いつもなら島風や雪風など、だれかしら駆逐艦が大和の布団に潜り込んでいるが流石に今日は違った。


少し寂しさを覚えつつ、大和は急いで支度をする。朝は特に強いわけではない。


いつもより早く起きた今日はなおさら眠い。しかし…


連合艦隊旗艦としての『誇り』が、大和の脳を起こさせた。


冷たい水道水で何度も顔を洗い、急いで準備をする。


服装の身なりを整えた後、部屋をでて食堂へと向かった。


阿賀野「あ~大和さんだ~。おはよ~ございま~す」ネムー..


矢矧「おはよう、大和。いい朝ね!」


食堂に向かう途中の廊下で阿賀野型の2人と会った。


あきらかに眠そうな阿賀野はスカートがめくれあがっており、あと少しでパンツが見えそう。


矢矧は流石だ。すでに目がキリっとしており、阿賀野の髪をすいてあげていた。


できれば阿賀野のスカートにも気づいてあげてほしい。もしかして実は矢矧も寝ぼけてるのかしら…?


そんなことを考えていた大和は矢矧がじっとこちらを見ていることに気づく。


大和「どうしたの?矢矧」


矢矧はフフッと笑って、


矢矧「『立派な』寝ぐせがついてるわよ、お姫様?後であなたも梳いてあげるわ」


その一言で大和は完全に起きた。舞い散る桜は真っ赤に染まっていた。


食堂にて


川内「う…ん、や、せん…」コックリコックリ


頭は上下に揺れていたが、なんとか箸を持ってご飯を食べている川内。


いつものこの時間なら神通か那珂が食べさせているが、今日は流石に違うらしい。


既に神通は食べ終わろうとしていた。


一方、


雷「暁は?」


暁「れぇでぃぃ~…」フニャァ


電「暁ちゃんは?」


暁「お子様じゃぁにゃぁいー…」コックリ


響「ハラショー」指パッチン


暁「…はっ⁉寝てない!寝てないんだから⁉」


雪風「はむはむ」スピー…


天津風「ちょっと⁉雪風それあたしの服よ⁉」キャー


島風「みんな、おそー…い…」ムニャムニャ


長門「早起きできたのは偉いが、スカートは履いてこような?島風」


小さい子たちにはまだ早かったようで。


ちなみに、いつもの朝食は各自で好きな定食や料理を選ぶことができる。


しかし、今日は時間的余裕がないので白ご飯とみそ汁を間宮と伊良子がお椀に注ぐようになっている。


初雪(ヤバイヤバイヤバイ…)


初雪が小走りで食堂に入ってきた。


白雪「トイレ長かったね、お腹痛いの?初雪ちゃん」


初雪「いや…大丈夫…」


初雪(トイレで寝そうになっていた、なんて言えない…)


今年3回目の初雪は初参加時に盛大に遅刻。罰則のランニングで朝から足がやられ、午後の演習時に沈没した。


準備はいい?


伊勢「班ごとに点呼をとって報告!」


6時30分、グラウンドにはほとんどの艦娘たちが集まっている。


今宿舎をでた艦娘も走ってグラウンドに向かう。


伊勢「提督、全艦揃いました!」


提督「よし、ありがとう、伊勢」


提督が正面の台の上に立つ。


伊勢「敬礼!」


提督「・・・よし、ありがとう。みんな、昨日も行ったけれど今日が今年最後の演習だ!全力で取り組むように!


それでは訓練納め、最終演習を開始する。かかれ!」


提督の号令と共に艦娘たちはドックに向かって走り出す。ドックは全部で1~4番まであり、いつもなら2番までしか稼働しないが今日は4つとも稼働。


数の多い駆逐艦が4つに分かれ、最初に海に出た。


夕立「いくっぽい!」バッシャーンッ!


時雨「夕立、待ってよ!」シャーー


朝潮「あらかじめ決められた班ごとに隊列を組んで!5km先で一度確認します!」


初春「初霜、子日を連れていけ。こやつ、班発表の時に寝ておって聞いておらん!」


初霜「了解よ!‥‥全くもう、子日ちゃん、今日は何の日?」


子日「子日だよ!」


初春「若葉、貴様はこっちじゃ!」ネクタイ、グイッーー!


若葉(む・・・悪くない)



五十鈴「さて、そろそろ五十鈴たちも行きますか」


鬼怒「ドキドキするなぁっ!」


阿武隈(前髪、前髪‥‥っと)イジイジ


北上 マエガミ ヲ グシャァ! 「大井っちー!行くよー」バッシャーン


大井「マッテェェェ北上さぁぁんっ!」ハァハァ  


阿武隈「・・・・」


もぉぉぉっ北上さぁぁぁんっ!!!


阿武隈の怒りの咆哮がドッグ内に響いた。



最上「重巡は最初は砲撃訓練だね」


鈴谷「やったじゃん!鈴谷、砲撃だぁい好きー!」


摩耶「初っ端からとばしてやろーぜー!」


高雄「そろそろ行くわよ!」


古鷹「出発だって!加古、起きてってば!」



龍驤「あきつ丸ー、頑張って付いて来ぃやー」


あきつ丸「もちろん!なのであります」


千歳「私たち軽空母は駆逐艦より先、10km先で合流しましょう!」


飛龍「空母はドックを出てから南側近海に移動します!人数が少ないので、複縦陣でお願いします!」


蒼龍「雲龍は加賀さんの後ろにぴったり付いて行くんだよー」


雲龍 コクコク


雲龍は頷いてから、加賀の袖をちょこん、とつかむ。


瑞鶴(まるで大きい親子…w)


瑞鶴は笑いそうになったが、なんとか飲み込んだ。


翔鶴「まるで大きい親子ですね、先輩」


純粋な微笑みと共に翔鶴が言い放った。


飛龍「ッフ.....w」


蒼龍「ック.....w」


二航戦の2人は口を抑えてなんとか笑うのをこらえた。


瑞鶴「翔鶴姉ぇ、言っちゃうんかいw」爆笑


瑞鶴は耐えられず、腹筋が崩壊した。


加賀 イラッ


この後、加賀の『優秀な子たち』が瑞鶴を追いかけまわし、最初の航行訓練で瑞鶴は沈没寸前になった。



比叡「ついにこの日が…」ヒエー…


金剛「頑張るネー、比叡。今日が終わったら、あとは楽しいイベントだけだヨ!」


霧島「金剛お姉さま、明日もあります」


長門「扶桑、私たちは?」


扶桑「北に向かって移動します…。開始地点に到着次第、単縦陣、第四戦速回避運動から始めましょう」


大和「よし・・・行くわ!」




潜水艦を含め、鎮守府の全艦娘が海に出る。200近い艦船が海を走るその光景は、まさに「大海原狭し」。


そしてこちらでも。


伊良子「これで全部…っと。間宮さん、全ての炊飯器のタイマーセット完了しました!」


間宮「ありがとう、伊良子ちゃん。私はみそ汁の具材調理に入るから、伊良子ちゃんは卵焼き用の卵をお願い!」


伊良子「分かりました!」


調理器具や機械がフル稼働するキッチンも戦場と化していた。


間宮は島風もビックリ!な速さで具材に包丁を落としていく。


伊良子は片手に2個ずつ卵をもち、一度で4つ割るという『流石』な芸当を見せた。



工廠では明石が妖精たちを指揮。


明石「妖精さんAチームは、重巡班のところに弾薬を運搬!Bチームは軽巡班のところへ魚雷を!CからFチームは各班に燃料ドラム缶を運搬してください!残ったGチームは私と一緒に弾薬の製造します!」


明石「これが終わったら間宮さん特性パフェが待ってますよ!」


妖精ズ「イヤッホォォイーーー‼!」


提督は?


「夕立と時雨はあっち…。龍驤はこっち…。五十鈴は摩耶と、かな…」カキカキ


午後の演習に向けて何やら作戦考案中。



撃って走って撃ちまくり


初春「浜風!遅れとるぞ!隊列を乱すでない!」


浜風「…ッ、了解!」ハァハァ‥


朝潮「速度を第三戦速に落とし、単縦陣から輪形陣に移行します!」


黒潮「雪風!左に流れすぎや!戻っといで!」


数の多い駆逐艦は6人ごとに隊を組んで航行。


初春「磯波隊!前に出すぎぞ!他の隊に頭を合わせよ!」


磯波「ご、ごめんなさい!」


航行訓練では速度を頻繁に変えながら陣形の変更、維持。


海上に設置されたブイとブイの間を交互に素早く移動。および、自爆式機雷で水柱をつくり、その横を速度を落とさず通過する。


もちろん陣形の維持は厳守だ。


自爆式機雷が作る水柱は砲弾が着弾した時にできる水柱に見立てている。爆発すれば大きな水しぶきが視界をさえぎり、大きな波を作り航行を妨害する。


ドオォォンッ!


飛龍「雲龍!頑張って加賀さんについて!翔鶴は横を気にしすぎ!」


雲龍 はぁはぁ…


赤城(やっぱり雲龍はまだ練度的に厳しい…?)


飛龍「赤城さん、前見て!蒼龍とぶつかっちゃいます!」


赤城「!ごめんなさい」


慢心ダメ、ゼッタイ。



球磨「木曾は何やってるクマ!これくらいの距離なら魚雷全部当てろクマ!」


木曾「すまない!もう一本頼む!」


球磨「矢矧!発射するとき航行速度が落ちてるクマよ!」


矢矧「…っ、気を付けるわ!」


那珂「球磨ちゃん、ちょっと速度落とそう⁉最初から飛ばしすぎだよ!」


球磨「何言ってるクマ?これくらい出来ないと水雷戦隊旗艦の名折れクマ」


神通「その通りです。球磨さん、もう1段階上げましょう」


五十鈴(ヤバイ、球磨と神通が組んだら....)


龍田(何人沈没するかしらぁ~?)


魚雷発射訓練では停止中・航行中に分けて目標ブイを狙って魚雷を撃つ。目標ブイも止まっているものと自立移動する2種類がある。


速度停止中はもちろん、最大戦速で取り舵・面舵一杯の回避行動中の魚雷発射も行う。


武闘派球磨型の長女・球磨が指揮する今回の軽巡班は当然、魚雷命中確率100%が目標。


球磨「鬼怒、天龍!次弾装填までのスピードをもっと上げろクマ!」



加古(軽巡じゃなくてよかったかも…)


古鷹「加古、装填急いで!第3水平射撃、いくよ!」


高雄「砲雷撃戦、用意!撃てっ!」


ドドオォーンッ‼


熊野「弾着・・・・今ですわ!」


鳥海「標的確認!…今の攻撃で目標全滅しました!」


高雄「‥‥1回の戦闘で3回も撃てる時間なんて無いわ。もう一周行きます!各艦、弾薬補給を急いで!」


砲戦訓練も魚雷の時と同様に標的ブイを使って行う。


軽巡や駆逐と違い、重巡は零式艦上戦闘機を使って弾着観測射撃の訓練も行う。


青葉「戦闘狂妙高型、最新鋭高雄型、そして航空巡洋艦の最上方…そんな数ある重巡の中で最も命中率が高いのは??」


古鷹「えへへ‥‥これが重巡洋艦なんですよ!」


改二になるまで火力が重巡最低クラスだった古鷹は、とにかく訓練で射撃精度を高めた。改二改装してからは火力も上昇し、今では大規模作戦の最終海域に旗艦として出撃することもある。


古鷹「夜戦だってバッチリです!」


衣笠「提督との?」ニヤ


古鷹「もう!衣笠!」プンプン


おっと?



19「じゃ・・・行くのね!」


401「どぼーん!」


バッシャー―ン!


潜航中、洋上艦のように『声』で互いに連絡を取ることが出来ない潜水艦は、ハンドサインで会話のやり取りを行う。


旗艦の『ゴー』のサインで目標へと魚雷を発射。


58「…どうやら8ちゃんが一番でち」


まるゆ「8さん、どうやったら本から魚雷を撃てるんですか…?」クビカシゲ


168「鎮守府7不思議の1つね…」


8「ウフフ…Danke♪」


ヘンに探ってはいけないこともある。イイネ?




一定の時間に達すると、次の演習へと移っていく。昼休憩の始まる12時まで、連続して訓練を行う。


ーー重巡対空演習ーー


加賀「では‥‥始めます」


加賀が弓を構えて、一気に矢を放つ。矢は上空で艦載機へと姿を変えた。


那智「距離30km! もうすぐ防空射程圏内に入る、構えろ!」


妙高型の4人が、真ん中を空白にして輪形陣をつくる。


妙高「対空砲斉射、始めます。撃てーっ!」


ダダダダダッ!ダダダダダッ!


足柄「ちぃっ!流石に数が多いわねっ」


那智「艦爆にばかり気を取られるな!艦攻の放った魚雷も来るぞ!」


羽黒「電探に反応アリ!第二派攻撃、来ます!」


足柄「え!?もう??早すぎよ!」


加賀「鎧袖一触よ・・・次!」



最上「ーーーっ来た!2人とも用意はいい?」


熊野「いつでも大丈夫ですわ!」


鈴谷「・・・ちょっと待って⁉なんでうちら3人だけなの??」


熊野「文句は提督の運に言いなさないな!」


鈴谷「4人の妙高たちでさえ大破寸前なんだよ⁉‥‥って、もう来たしぃ~~っ!」


すでに鈴谷たちの頭上に、加賀から放たれた大量の艦載機が近づいてきていた。


鈴谷「~~もう、提督のばかぁぁー‼」ウワーン


最上「行くよ! 対空戦闘用意!いっけぇー!」ダダダダッ


最上、熊野、鈴谷 「「「オリャー!」」」


彗星(江草隊)搭乗妖精「爆弾投下!」


最上、熊野、鈴谷「「「ワーー」」」タイヒー!


天山(友永隊)搭乗妖精「魚雷投下!」


最上、熊野、鈴谷「「「・・・」」」タイハ!



加賀 チラッ


青葉、衣笠、古鷹、加古 『チーン…』タイハ!



加賀「さて・・・」


摩耶「・・・」


防空巡洋艦である摩耶は特別に加賀との1対1が認められており、


当然、対空に特化した兵装で挑んでいる。


摩耶「よう、加賀さん。補給はもう済んだかよ?」


加賀「ええ・・・あなたこそ準備は済んだのかしら?」


摩耶「おう!」


加賀「そう‥‥では」


加賀が弓を引き、摩耶が高角砲の仰角を上げていく。


摩耶「全機、撃ち落としてやらぁっ!」


加賀「鎧袖一触よ」


対空最強 vs 空母最強の試合がココに始まった。



高雄「なんていうか・・・」


愛宕「自信無くなるわね~・・」


鳥海「計算外です・・」


この後、加賀と摩耶の1対1訓練は時間一杯行われた。



ーーー戦艦砲戦演習ーーー


金剛「イッツ、ショーータァーーイムッ‼!」


ドーンッ!ドーンッドォーン!


鎮守府の全戦艦が一堂に揃って主砲を撃つ光景は圧巻である。


山城「観測器より報告。修正、右に2度!」


扶桑「次で決めます。砲戦用意‥‥撃てっ!」


ドーンッ!ドドーンッ!


霧島「着弾. . . . .今ッ!」


榛名「‥‥全目標、撃沈確認です」


扶桑「1班は下がって弾薬の補給をします。2班、前に出て照準入力を始めてください」


長門「よし、この長門に続け!」


ビスマルク「・・・・」


陸奥「あら、どうしたの?ビスマルク?」


ビスマルク「どうもこうもないわよ!もう30週目よ??リシュリューを見なさい!」


日向「ん?」


リシュリューはガックリと膝をつき、燃え尽きたかのように真っ白になっていた。


陸奥「あらあら」


ビスマルク「あらあら、じゃないわよ!私だって撃ちすぎて砲身がそろそろヤバいのよ!?」


長門「それなら大丈夫だ」ユビ パッチン


ビスマルク「え?」


大勢の妖精さん「ワー」


どこからともなく妖精たちがやってきた。ミニ四駆のような小さな消防車に乗って。


5,6台のミニ消防車がビスマルクを囲む。そして車両とホースを連結し…


妖精隊長「ふぉいやー!」


大勢の妖精さん『フォイヤー!!』


燃え盛る炎を消化するかのごとく、ビスマルクに向かって緑色の液体、すなわち『高速修復材』がホースから発射された。


流石妖精さん。ミニ消防車といえど、水圧は抜群。発射される水の勢いと量は、普通の消防車と変わらなかった。


大勢の妖精さん『テッシュー!』


妖精たちとミニ消防車が撤収していくころには、ビスマルクの砲塔と砲身は見事に元通りになっていた。


ビスマルクはびしょ濡れのままだったが。


日向「良かったな。これでまたいくらでも撃てるぞ」


日向がビスマルクの肩にポン、と手を置きながら言った。


ビスマルクは生まれて初めて戦艦に生まれたことを後悔した。


妖精さんたちは帰り際に、リシュリューにもぶっかけて行った。


妖精ズ『フォイヤー!』




束の間の


皐月(僕は皆より少し遅れて食堂にやってきた。昼休みの時間も短いから急がないといけないけど、数が多い駆逐艦はどうしても燃料の補給が遅れる)


皐月(僕はこの演習に参加するのは2度目。去年も参加した、けど・・・)


皐月(この光景には慣れない)


大食堂のドアを開けた皐月の目に入ったのは、机に突っ伏し、ピクリとも動かない多くの仲間たちの姿だった。


皐月(いつもならお酒を飲んでいる隼鷹さんが『アク〇リ』を握りしめている)


皐月(あきつ丸さんがあんなに大事にしていた『カ号』が赤城さんの口から半分飛び出している)


皐月(榛名さんが大丈夫じゃない)


大食堂に1歩踏み出してみると、机までたどり着けなかった他の仲間たちが、足元にゴロゴロ転がっていた。


皐月(水着のまま倒れている58は傍からみれば犯罪現場のよう)


皐月(倒れた朧の背中の上をカニさんが動き回っている)


皐月(連装砲ちゃんが島風を机まで引きずっていた)


キッチンから出てきた伊良子が、この光景を見て「ヒッ…!」と悲鳴を上げた。


伊良子「み、みなさん~・・ご飯ですよー・・?」


赤城と加賀がふらふらと伊良子のところへ向かう。皐月からだと見えないが、自分の方へと向かってくる赤城たちの顔を見て、伊良子は再び悲鳴を上げて、1歩2歩と後ずさりする。


赤城と加賀が動くのを見て、他の空母や軽空母たちも、のそりのそりと動き出す。ふらふらの千鳥足で赤城たちの後ろに並び列を作る。


『亡者の行進のようでした』(by 間宮)


空母が列をつくるのを見て、戦艦勢も動き出す。重巡、軽巡、駆逐と続き、全員がやっと動き出した。


提督「こりゃあ1時間じゃ無理だな・・・」


遅れて食堂に入ってきた提督が、目の前の惨状を見てつぶやく。


金剛「へ、へー‥イ、テイト…クー…」ヨボヨボ


金剛が提督の姿を見つけるなり、駆け寄ろうとするが震える小鹿のような足の状態では無理だった。


目の前でよろけそうになる金剛を、慌てて提督が抱いて支える。


提督「だ、大丈夫か?金剛…」


金剛「大丈夫じゃないネー。だからもう少しこのままネ」ガシッ、スーハースーハー


提督「良かった、元気そうだな」


提督が金剛を引きはがそうとするも、離れないのでそのまま食堂中央まで抱えて移動する。


その様子を見た他の艦娘たちが一斉に騒ぎ出した。


五十鈴「ちょっと提督?金剛だけズルいんじゃない?五十鈴も頑張ったのよ?」


プクーッ、と膨れる五十鈴の頭をよしよし、と撫でる。


鈴谷「もう~~っ、ズルいし!鈴谷も褒めてね!」


反対側に抱き着いてきた鈴谷の頭もよしよしする。


電「い、電も頑張ったのです…」


やめてくれ。背の小さい女の子+涙目+上目遣い+震えるか細い声=間違いなくクリティカルだ。


榛名「は、榛名は…大丈夫です…」シューン


待って。それ絶対大丈夫じゃない。提督の精神に訴えるのやめて。


時雨「そっか、提督。僕とは遊びだったんだね…」


ハイライト消すのが上手になったね、時雨。遊びってあれだよね?前にやったマリカーよね?


川内「提督、私はいつでも夜戦OKだから…//」


顔を赤くする川内。夜戦って昼戦の次にする夜戦のことだよね。


大和「提督ぅ‥?大和は昼戦からでもOkですよ‥?//」


何故か話が全く別の方向に流れ始めていた。




――これはやっぱりいけませんね。


黙々とご飯をかきこんでいた赤城が、箸を止めて立ち上がった。


加賀(赤城さん…)


赤城(私にまかせてください、加賀さん)


親指をピッ!と立て、赤城がもみくちゃにされている提督の方に向かっていく。


加賀(流石です、赤城さん。素晴らしい一航戦の誇りね)


加賀が誇らしげに赤城の背中を見つめる。きっとこの収拾がつかなくなった事態を見事に治めてくれるはず――


そして赤城が胸をはって言い放った。


赤城「提督!ご飯が足りません!」


うるせぇぇぇ助けろやぁぁぁ…ぁぁ…ぁぁ…


提督の叫びが鎮守府にこだました。


加賀は顔を両手で覆った。



ここからはBGM『吹雪』で


食堂での騒動の後、提督が1時間の休憩では無理!と判断して1時間30分に伸びた。


そしてその昼休憩のあと、午後からは第二次演習が開始される。


第二次演習は『艦隊戦』


午前演習で疲れ切った状態のまま艦隊戦を行うことで、連戦が常の大規模作戦にも耐えられるようにするのが狙い。


海上演習区画は3つ。


第1と第2は一艦隊につき6隻で構成した艦隊戦を行い、第3は2艦隊12隻の連合艦隊を組んで演習を行う。


数が多い駆逐艦は1戦の後、休む時間はあるが大型艦になるとそうもいかない。


提督「比叡と長門は次に第2に。蒼龍、瑞鶴、瑞鳳は第1。扶桑と山城は、待機中の大和と高雄型の4人を呼んで第3に行って!」


1度演習を終えた両艦隊の旗艦は提督のところに行って、艦隊戦の経過と結果を報告。すると提督から次の艦隊メンバーが知らされる。


この日は普段の出撃であまり旗艦を経験しない艦が、優先的に旗艦を務めることになっている。


響「天龍、次の艦隊戦は旗艦だそうだよ」


天龍「よっしゃぁぁぁ!どこだ?第1?第2?相手は誰だ?」


響「第3の連合艦隊だよ。相手は妙高さん旗艦の水上打撃艦隊だよ」


え…、と固まる天龍は、連合艦隊での出撃経験は第2艦隊での1度しかなかった。


表情は全く笑っていない響だが、声はとても楽しそうだった。


雷「響ーー!次、第1で艦隊戦よ!相手は龍田さんだからね!」


はらしょー、と響。


響「さて、死にたい船はどこだい?」




浜風「えっと、まず…」


神通「浜風ちゃん、落ち着いて。戦の前に教えたことを思い出してください。最初にすべきことは?」


浜風「・・・! 空母の皆さんは索敵機の発艦を始めてください!」


龍驤「了解、っと!やるで、翔鶴!」


翔鶴「はい!艦載機、発艦始め!」


神通「敵を発見したら次はどうしますか?」


浜風「…陣形を整えて砲雷戦に備えます!」


その通りです、と神通は静かにほほ笑んだ。


対して。


川内「さぁて!復習の時間だよ、時雨!問題なくいけるよね?」


高い練度と経験をもつ時雨。もちろん改二だ。


夕立「時雨なら大丈夫っぽい!」


足柄「頼りにしてるわよ!」


蒼龍「なんてたって『佐世保の時雨』だからね!」


時雨「・・・みんな少し過度に期待しすぎじゃないかい?」


時雨は頬を赤く染めて言った。


時雨「さぁ‥‥時雨、行くよ!」




加賀「最上さん、先ほどの演習はもっと慎重にいくべきよ」


最上「ちょっと不味かったかな?加賀さん」


加賀「相手旗艦、摩耶なら確かに突っ込んでくることは容易に想像できますし、それに対応した作戦を行ったことは間違ってはいないわ」


加賀「けれど、本当の戦場なら、今のように始まる前から敵について詳しく知っている‥‥なんてことはありえない」


加賀「常に、先ず相手の行動を確かめて、それから次を予測し、判断すべきよ」


最上「‥‥なるほど。ありがとう、加賀さん。勉強になったよ」


瑞鶴「あの加賀さんが優しい‥‥だと⁉」


加賀「五航戦はもっと周りをみなさい。たった1隻に集中しすぎです」メリメリメリ


瑞鶴「分かった!分かったから!アイアンクローはやめて!」アダダダダ


秋雲(もしかして最上×加賀ってアリ‥‥⁉)


加賀(ないわ)


秋雲(ひっ…!脳内に直接!)




漣「ご主人様ー!聞いてくださいよ、第2でさっきやった演習で漣、MVPをとっちゃんたんですよ!」フンス!


提督「おぉ、凄いじゃないか!なら、次のコレもいけるな」


提督から漣に次の演習メンバーが書かれたプリントが渡される。


漣「・・・ちょっと待ってください、ご主人様。漣の名前が連合艦隊、第1艦隊のトコに書かれてるんですが」


提督「いけるだろ?」


漣「いや、せめて第2艦隊にしてくださいよ⁉第1の駆逐艦が漣だけじゃないですか!」


提督「大丈夫、だいじょーぶ」


漣「それに旗艦が大和さんって!ガチじゃないですか⁉」


提督「相手の方は長門を指定している。不足はないだろ?」


漣「イヤだーーー、変えてください、ご主人様ーー」シクシク


提督「島風ー、漣を第3演習場に引っ張って行ってー」


島風「おっそーーい!ほら漣、早くいくよー!」ビューン!


漣 ウワーン! ズルズル‥‥


曙(流石にちょっと憐れみを感じるわ・・・)


提督「ほら、曙は第1で神通たちとな。頑張れよ」


曙「」



試験


日が傾き始めるころ、艦隊演習は終了。ここから、特別演習へと移っていく。


艦隊戦のように6vs6ではなく、1vs1、もしくは2vs2の個人戦である。


この個人戦は師弟関係の艦同士や同型艦でやり合うので、艦娘たちにとっても楽しみな演習。


見てる方は確かに楽しいが、やる方はそうもいかない。



鳳翔「お二人とも。まだ飛んでますよ」


涼月「・・・お初さん。参りましょう」


初月「来い!僕らならまだできる!」


幌筵鎮守府にはまだ秋月と照月は着任していない。改二になって対空が強化された駆逐艦は何人かいるが、純粋な防空駆逐艦は涼月と初月の2人だけ。


2人が着任した時、艦隊運動は五十鈴が教え、対空演習の相手は鳳翔と瑞鶴が務めた。


そして今、鳳翔が涼月と初月を相手する。


鳳翔「旧式の艦載機は全て落としてみせなさい。でなければ鎮守府の空を守る‥‥など認められません」


初月と涼月が見事な連携を見せながら、鳳翔の艦載機を落としていく。


初月「電探と機銃を連動!及び高射装置も使用する!」


涼月「撃ちます!」


そして、ついに旧式ではあるが全艦載機を撃ち落とした。


鳳翔「よく頑張りました。ですが…」


弓を引く。


鳳翔「敵はそんなに甘くはありません」


放たれた矢が上空で姿を変える。


涼月「爆戦の岩井隊に601航空隊…!う・・・」


初月「…っ、まだだ!秋月姉さんたちが来るまで、僕らが空を守る!」


鳳翔によって鍛えられた熟練艦載機たちは涼月たちの対空砲火を次々にかわし、爆弾を当てていく。


初月「ぅああっ!‥‥くそっ、まだだ‥‥!」


涼月「あきらめません・・・・!」


鳳翔「その意気です」




ドーン、ドー―ンッ!


ダダダダッ!ダダダダッ!!


球磨「ちぃ!さっきからちょこまかと‥‥さっさと当たれクマァァッ!」ドーンッ!


長良「いや、当たったら模擬弾でも痛いんだからね⁉球磨ちゃん!」バッシャーン!


長良の特徴は毎日の走り込みで鍛えた俊敏な機動性。戦艦による長距離砲撃はもちろん、巡洋艦の砲撃も直撃されることは滅多にない。


対して、まるで『野生のような』直感と反射神経を持つのが球磨。球磨がクリティカルを受けることはまず無い。


軽巡きっての火力を誇る2人は、その『相手』が理由で充分に火力を発揮できなかった。


それでもじわりじわり、と耐久値は減っていく。


先に仕掛けたのはしびれを切らした球磨だった。


球磨「くらえクマァァッ!」


主砲を長良に向かって撃つ。同時に撃った砲弾を追って、長良に突撃した。


長良「負けるかぁっ!」


長良も向かってくる球磨に向かって主砲を撃つ。


ドオーンッッ‼


長良の放った一発が偶然にも球磨の砲弾に当たり、爆発した。


球磨はひるまずに爆炎に突っ込む。


長良「・・・・」


長良(いつでてくる?)


長良は主砲を構える。その次の瞬間、その爆炎の中から砲弾が突如現れ、長良に向かって飛んで来た。


球磨自身が煙の中から飛び出してくる、と予想していた長良は反応がわずかに遅れた。


ッバーン!


長良「ぅひゃぁ!」


長良(主砲1、2番砲塔やられた!…っでも!)


当然のごとく、球磨も煙の中から飛び出してきた。第2主砲を長良に向け、とどめを刺そうとした。


球磨「クマッ!?」


煙から飛び出してきたクマの目に何かが飛び込んでくる。それは――


球磨「魚雷は投げるもんじゃないクマ!?」


長良は、飛んで来た砲弾の位置から球磨の出てくる場所を予想し、魚雷を投げていた。


そして副砲を構える。球磨が主砲2つ積んだのに対し、長良は主砲と副砲1つずつ積んでいた。


長良(普通に下に放った魚雷なら、球磨ちゃんの反射神経なら避けられる可能性がある!)


球磨が必死に減速するも――


長良「遅い!」


長良の副砲から砲弾が撃たれる。そして当然、長良は自分が投げた魚雷に命中させた。


今度は球磨の至近距離で魚雷が爆発した。


・・・・・

・・・

・・


艦娘「終わった・・・かな」


固唾をのんで見守っていた他の艦娘たちが、やっと息を吐いて呼吸をすることができた。


爆発で生じた煙が、徐々に空気に消えていく。


長良「‥‥っ、嘘でしょ⁉」


球磨「ハー…ハー…」


間一髪のところで球磨は致命傷をさけていた。長良はもちろん、周りで見ていた他の艦娘たちも唖然とするしかなかった。


球磨(第1主砲はもう使いモンにならねーなクマ・・・)


球磨「・・・流石に今のはヤバかったクマ。神通とならんで優等生だった長良が魚雷を『手で投げる』なんてな」


長良「それくらいしないと球磨ちゃんには勝てないからね」


球磨「・・・」


長良「・・・」


2人が残った砲塔を互いに向ける。


球磨「球磨型軽巡一番艦、球磨」


長良「長良型軽巡洋艦一番艦、長良・・・」


「「いざ」」


最後の勝負が始まった。




神通「立ちなさい、二人とも」


時雨と夕立が神通の前に膝をついて倒れていた。


華の二水戦旗艦を務める神通は、経験・練度ともに鎮守府最強と謳われる歴戦の艦。


普段は物静かでおろおろしており、個性が強い同型の姉と妹の陰に隠れがちだが、神通は戦場では全く違った。


しかし時雨と夕立も幾度の大規模作戦に参加し、経験と練度は高い。


当然、二人とも改二に改装されている。


それでも


時雨(強すぎる‥‥)


たとえ2対1でも、神通の前になす術がなかった。


時雨にはどうすれば勝てるのか、全く思いつかなかった。


夕立「・・・時雨、立つっぽい」


時雨「夕立・・・」


夕立がなんとか立ち上がり、猟犬のごとく神通を睨む。


時雨「ごめん、夕立・・・。神通さんに勝つための策が思い浮かばない・・・」


夕立「そんなのいらないっぽい」


え・・・、と思わずポカンとしてしまう時雨。


しかし、夕立は毅然としたまま言い放つ。


夕立「夕立の火力と、時雨の幸運があれば、他は何も必要ないっぽい!」


そう言って夕立はニッと笑う。


時雨は思わず笑みが出てしまった。


僕が、一番敵わないのはこの子だったね・・・。


そして時雨も立ち上がる。


時雨「ごめんね、夕立。ちょっと弱気になってたよ」


夕立「いける…?時雨」


もう大丈夫、と夕立の横に並ぶ。


時雨「必ず勝とう、神通さんに。行くよ…夕立!」


夕立「ゼッタイ、負けないっ・・・ぽい!」


二人が砲を構えた。


そんな夕立と時雨を見つめていた神通はほほ笑んだ。しかし、


神通「手加減はしません…。お二人とも、かかってきなさい!」


鎮守府屈指の師弟対決。提督をふくめ、多くの艦娘がその経過を見守った。




初月「…ありがとう…」ハァハァ…


涼月「…ございました」ゲホッ


息絶えだえになりながら、2人が頭を下げ礼をする。そして海上に崩れ落ちた。


鳳翔「初月さんと涼月さん、よく頑張りました。お二人なら鎮守府の空は安心して任せられます」


目線を合わせるためにしゃがんだ鳳翔がにっこり笑う。


その言葉に2人は泣きそうになったがなんとかこらえて、もう一度お礼を言った。


初月、涼月「ありがとうございました…っ」


鳳翔「はい、お疲れさまでした」


瑞鶴「2人とも!よく頑張ったじゃない!」


五十鈴「本当によく耐えたわ!流石、六十一駆逐隊ね!」


2人のところに駆け寄ってきた瑞鶴と五十鈴が、初月と涼月を抱きしめた。


初月は目を真っ赤にし、涼月はこらえられなかった。


鳳翔は笑顔のまま、その場を立ち去った。





鳳翔「さて、お二人とも。お待たせしました」


今日、鎮守府最後の演習となる個人戦。


鳳翔の前に立つのは赤城と加賀だった。


鳳翔「お二人なら、手加減は必要ありませんね」


赤城「ぅ・・・」


加賀「・・・」


鳳翔は601航空隊や岩井隊の艦載機を降ろし、訓練機「赤とんぼ」に変えた。


九九式艦爆よりもさらに古い世代の飛行機だが、


『赤城と加賀は一度も勝てたことはなかった』


鳳翔「お二人が訓練を終え、鎮守府でも先陣を走るようになってから随分経ちました…」


鳳翔からいつもの穏やかな笑顔が消え、的を射抜くかのような、静かな闘志をもった視線へと変わる。


鳳翔「弓を構えなさい、赤城、加賀。あなた方がどこまでやれるようになったのか、私自ら試します。鎮守府最強と言われるようになった一航戦のその『誇り』、私に示しなさい」


まず鳳翔の弓から矢が空に向かって放たれた。


上空で「赤とんぼ」へと姿を変え、加賀たちに襲いかかろうとする。


赤城「・・・加賀さん、私たちははたして強くなれたんでしょうか?」


加賀「わかりません、赤城さん。


しかし本当の『強さ』とは何なのか…。それについて学んだ、という点において、昔の愚かだった私よりも成長している、と思います」


赤城「ふふっ…。もう単艦で敵に突入することもなくなりましたからね、加賀さん」


加賀「‥‥やめてください、恥ずかしいんですから」


赤城「・・・正直、技術も経験もまだまだ鳳翔さんには勝てない、と思います」


加賀「・・・ええ」


赤城「でも、今の私たちは『強さ』とは何のかを知っています。それだけ、


それだけですが、それでも鳳翔さんに立ち向かうという勇気になれる気がするんです。


そして加賀さん、あなたがいれば鳳翔さんにも勝てる、という自信がわいてくる」


加賀「私も、同じです。赤城さん。


飛行甲板が大破し、何度破れようとも、あなたと一緒なら何度でも立ち上がることができる」


二人が弓を構え、矢を引いていく。


赤城「一航戦、赤城」


加賀「一航戦、加賀」


「「参ります」」


鳳翔の艦載機に向かって、矢が放たれた。






お疲れさまでした



川内先生による夜戦訓練が行われ・・・


「訓練納め」冬の大演習、および年内の全訓練が終了。


艦娘たちは疲れでおもりのように重くなった身体を引きずって、鎮守府へと帰った。


全員がお風呂に入ったあと、夕食の時間となる。


朝と昼は、訓練時間内なので質素なものしか出せなかったが、夜はその制限からも解放されるので


間宮と伊良子はいつもより豪華な食事を準備した。


朝、昼と質素な食事のあとだった艦娘たちの目には、さらに料理が豪華に映ったという。


隼鷹「え…お酒飲んじゃダメなの⁉」


大淀「ダメです。クリスマスと忘年会、および新年会に出す分がなくなってしまいます」


隼鷹「そ、そんなァ・・・」パタリ


飛鷹「じゅ、隼鷹ーーーっ!!」



次はクリスマスのお話。



後書き

戦闘シーンをもっと盛り上げられるような書き方をしたい…ですが、目下練習中です。

読んでいて「足りないなー」と感じた人は、すいません。

最後は必ず加筆・肉付けをします。艦娘たちの会話をくわえたい・・

読んでくれてありがとうございました!


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