2021-02-07 00:34:40 更新

概要

大学生になった八幡と雪乃のお話。続の続


前書き

ほのぼの重視の短編台本形式。各話500字~3000字程度。
設定:八幡と雪乃は恋人同士。お互い千葉を出て一人暮らし中。大学では三回生。


前→雪乃「ねぇ、比企谷くん。かまって」八幡「また?」





ねぇ



雪乃「………」


八幡「………」


雪乃「………」


八幡「………」ペラッ


雪乃「ねぇ、比企谷くん」


八幡「ん?」ペラッ


雪乃「かまって」


八幡「………」


雪乃「かまって」


八幡「はいはい……。急にまたなんだよ」


雪乃「暇すぎるわ」


八幡「と言われてもなぁ。今は変なウイルスのせいで外出自粛だし、出掛けても店閉まってるぞ?」


雪乃「だからといってこうして何日もずっと家で本を読むだけだなんて、さすがの私でも体にカビが生えてしまいそうだわ」


八幡「気のせいか俺にはカビが生えてるようかのに聞こえるんだが……」


雪乃「あら、違うの?」


八幡「ちげぇよ……。ってか、暇って言っても何するんだ? うちはゲームか本しかないぞ」


雪乃「そんなことだろうと思ってこんなものを持ってきたわ」スッ


八幡「?」


雪乃「この前100円均一で買い物する時に見つけたの。こういったボードゲームなんてしたことなかったから」


八幡「人生ゲームか。100均はそんなのも売ってるんだな」


雪乃「珍しいの? このご時世だし、おもちゃとか置いている棚はほとんど売り切れていたわ」


八幡「だろうな。ニュースとか見てても今家族でやるボードゲームとかが流行ってるみたいだしな」


雪乃「そうなのね。なら、早速やってみましょう?」


八幡「2人で人生ゲームか……。まあいいけどよ」





人生ゲーム



八幡「じゃ、やりますかね」


雪乃「ちなみにこのゲーム、あなたは遊んだことあるの?」


八幡「ああ。小町が好きで子どもの頃よく母と3人でやってたな」


雪乃「そうなのね。すごろくとは違うの?」


八幡「ああ。って、お前人生ゲーム知らないの?」


雪乃「い、いえ。知ってはいるけど遊んだことないからルールとかあまり……」


八幡「へぇ、やったことないのは珍しいな。ルールはそうだな……すごろくと似てるんだが、ルーレットを回して出た数に応じてマスを進んで、最終的に一番金持ちになった奴が勝ちだ」


雪乃「お金持ち?」


八幡「その辺はやりながら教える。やりながらした方が手っ取り早いしな」


雪乃「それもそうね。私は赤いコマにしようかしら」


八幡「なら俺は青にするか。って、これルーレットじゃなくてサイコロタイプか。まずはサイコロ振って順番決めようぜ」


雪乃「ええ」コロコロ


八幡「4か。俺は……」コロコロ


雪乃「2ってことは、私が先攻ね」


八幡「ああ。どーぞ」


雪乃「………」コロコロ


雪乃「3……。医者になる?」


八幡「お、医者か。悪いくないな。ほれ、医者カード」


雪乃「ありがとう。このカードは何に使うの?」


八幡「これはマス全体を見たら所々給料日って書かれた赤いマスがあるだろ? そこに止まったり通過したりしたらそのカードに書いた額がもらえるんだよ」


雪乃「なるほど……。他にも色々と職業があるの?」


八幡「ああ。確か政治家が一番高かったはずだ。で、俺の番だな」コロコロ


雪乃「2、サラリーマンで8千ドル。妥当ね」


八幡「どういう意味だよ……」


雪乃「ふふっ。いえ、別に? 私の番ね」コロコロ


八幡「石を蹴って子どもに当たり慰謝料5万払う」


雪乃「………」


八幡「ほい、約束手形。よかったな、いきなり借金生活だぜ!」


雪乃「これは……?」


八幡「要は借用書だ。まだ給料マス行ってないし2枚だな。1枚2万で無かったことにできる。早く返さないと後々響くから早めに返した方がいいぞ」


雪乃「……とんでもないゲームね」


八幡「それが人生ってやつだ。次は俺だな」コロコロ


八幡「ブレイクダンス大会で優勝、3万もらう。お、ラッキー」


雪乃「っ!? ま、待ちなさい!」


八幡「んだよ」


雪乃「あなたがブレイクダンスで優勝なんておかしいわ。無効よ……!」


八幡「なんでだよ……。これはゲームだぞ? ゲームの指示は絶対だ」


雪乃「くっ……」コロコロ


八幡「……ギャンブルで負ける、2万5千払う」


雪乃「………」


八幡「よ、よかったな! 給料日マス通過したからプラマイ0だぞ! 8千で生命保険入れるが入るか?」


雪乃「…………わ」


八幡「え?」


雪乃「お金……ないわ」


八幡「なんかすまん」





誰と



雪乃「どうして……」


八幡「………」


八幡 73,000ドル

雪乃 4,000ドル+約束手形3枚


雪乃「ねぇ、比企谷くん」


八幡「……なんだ?」


雪乃「このゲームは本当に子ども向けなのかしら。負債まみれなのだけれど……」


八幡「いや、序盤でこんな負債抱えるのは珍しいと思うんだが……」


雪乃「私、なんだが辛くなってきたわ……」コロコロ


八幡「ま、まだ半分も行ってないから大丈夫だ。まだ舞える」


雪乃「仕事に対する誠実さが認められる、現在の職業をグレードアップする?」


八幡「お、よかったな。カード裏返してみ」


雪乃「……エリート医師?」


八幡「昇進マスがあってそこに止まると給料上がるんだよ。次から2万5千から4万になるぞ」


雪乃「そう……。少し安心したわ」ホッ


八幡「俺はできれば転職がしたいんだが……」コロコロ


雪乃「結婚する。相手を車に乗せて全員から3千ドルずつ祝儀を貰う……? ちょっと比企谷くん、相手は誰?」


八幡「えっ、い、いや。と言われても……」


雪乃「相手が……わ、私ならともかく、祝儀を渡すということは他の人と結婚するのよね? 誰?」


八幡「ゆ、雪ノ下さん目が怖いんですけど……」


雪乃「誰? 結婚相手を教えてくれれば祝儀を渡すわ」


八幡「……ゆ」


雪乃「?」


八幡「いや、やっぱ結婚しないので祝儀なしでいいです……」


雪乃「あら、いいの? ただマス進んだだけになるわよ?」


八幡「いいです……」


雪乃「それと、何か言いかけてなかった?」


八幡「あー、気のせいだ」フイッ


雪乃「そう」コロコロ


雪乃(……意気地なし)


八幡「結婚する。相手を車に乗せて全員から3千ドルずつ祝儀を貰う。ほう、誰とだ?」


雪乃「比企谷くんとよ」


八幡「えっ」


雪乃「あなたのコマもらうわね」


八幡「お、おい。俺の車無人になったぞ……」


雪乃「あなたは今から別人として再度ゲームスタートね」


八幡「どんなルールだよ……」


雪乃「仕方ないでしょう? 比企谷くんがいいのだからそうするしかないじゃない」


八幡「それなら――っ!」


雪乃「……っ。誓いのキスよ。あなたと結婚するから、祝儀はいらないわ」ニコッ


八幡「……むしろ、払いたいくらいだな」


雪乃「そう? じゃああなたと結婚したから財産も同じになるのだし、あなたの全財産は私が預かるわね」


八幡「ファッ!?」





女の子



八幡 0ドル

雪乃 7000ドル


雪乃「返済もしたし、ここからが勝負ね」


八幡「俺何もしてないのに一文無しになったんだけど……」


雪乃「あなたが結婚しないからじゃない。素直にすれば良かったのに」


八幡「そんな特別ルールあるなんて知らなかったんだよ……」


雪乃「それが人生ってやつよ。次、どうぞ」


八幡「………」コロコロ


雪乃「出会い系サイトで騙されて2万失う。はい、約束手形。浮気しようとした報いね」コロコロ


八幡「理不尽すぎる……」


雪乃「女の子が生まれる。全員から3千ドル貰う。……だそうよ」


八幡「ふえぇ、もうやめてよぉ……」


雪乃「はい、約束手形と差額。ちなみに比企谷くんは子どもができるとしたら男の子と女の子どっちがいいの?」


八幡「どっちでもいいが、強いて言うなら女の子だな」


雪乃「意外ね。どうして?」


八幡「意外か? まあ、女の子ならお前みたいに美人になるだろ」


雪乃「び、美人に? ど、どうかしら……。男の子ならあなたみたいに捻くれた子になりそうで怖いわね」カアア


八幡「お、おう。てっきり格好良いとか言ってくれるかと思ったぜ……」


雪乃「もちろん、捻くれても優しくて格好良いって意味よ」クスッ


八幡「……さいですか」フイッ


雪乃「子どもの名前ってどういう風に決めるのかしらね」


八幡「さあな。男の子なら九幡とかどうだ」


雪乃「1足しただけじゃない……。絶対に嫌」


八幡「ですよね……」


雪乃「女の子ならどう?」


八幡「え、そうだな。乃は入れたいな」


雪乃「私の字の?」


八幡「ああ。お前の名前綺麗だし、乃だと和風な感じもしていいだろ」


雪乃「き、綺麗と思ったことはないけれど、綺麗というなら絢乃とか良いかもね」


八幡「ああ。絶対モテるぞ」


雪乃「………」


八幡「って、話脱線したな」コロコロ


雪乃「比企谷くん」


八幡「あん? ――っ」


雪乃「………」


八幡「き、急にどうした」


雪乃「別に? あなたに触れたくなっただけ」ギュッ


八幡「そんなこと言われるときゅんとしちゃうだろ……」


雪乃「悪いことじゃないのだから別に構わな……んっ」


八幡「…………っ」


雪乃「ひきが……ん、ちょっと……」


八幡「ああ、悪い……」


雪乃「い、いえ。もっとしてくれていいのだけれど……先にこれを」


八幡「……?」


雪乃「株価暴落で3万失う。はい、約束手形」


八幡「えぇー……」





変態



雪乃「いよいよゴールも近いわね」


八幡「だな。なんだかんだ所持金同じくらいになったな」


八幡 94,000ドル 

雪乃 131,000ドル


雪乃「約束手形も持っていたのによくここまで増やせたわね」


八幡「途中で月の石拾ったのがでかかったわ」コロコロ


雪乃「ユニセフ募金をする、1万5千ドル支払う」


八幡「まじかる……」


雪乃「あら、募金するなんてとても素敵なことじゃない。あなたのそういうところ、好きよ」


八幡「なぜか今は嫌味に聞こえるな……」


雪乃「ところで比企谷くん。勝負しない? ゴールして最終的な金額が多い方が勝ちよ。負けた方は罰ゲーム」


八幡「おい待て。絶対俺の所持金見て勝ちを確信したから持ち掛けてきただろ」


雪乃「?」


八幡「こいつ……」


雪乃「罰ゲームはそうね……。何かお願いでも聞いてもらおうかしら」コロコロ


八幡「もう勝つ前提じゃねぇか……。しかも3以上でゴールか」


雪乃「なっ……!?」


八幡「? あっ……」


雪乃「………」


八幡「……世界一周旅行に行く。12万ドル支払うってよ。良かったな、滅多にできない経験だ」コロコロ


雪乃「」


八幡「はい、12万回収な。俺は6でそのままゴールか」


雪乃「そ、そんな……」


八幡「さて、金額多い方が勝ちだったよな」


雪乃「ま、待ちなさい。まだ旅行に行くとは言っていないわ……!」


八幡「いや行けよ……。それともあれか? 雪ノ下さんはずるしてでも勝ちたいのか?」


雪乃「くっ……」


八幡「ってわけで、一目瞭然で俺の勝ちだな。罰ゲームは何にするかね」


雪乃「この変態」


八幡「まだ何も言ってねぇよ」





ヒキタニくん



戸部「うぇーい! 俺の勝ち! ヒキタニくん! 次はこれでもやるべ!」


八幡「ああ。それにしても珍しいな。連絡してくるなんて」


八幡(緊急事態宣言が解除と同時に連絡来たと思えば、まさか戸部とは……。)


戸部「まー、いきなり外で遊びに行くのも危なくね? 家で遊ぶならヒキタニくんちが一番ゲームとか揃ってるしな。なっ!」


八幡「お、おう。まあ、ちょうどお前に借りてたゲーム返そうと思ってたからいいけどよ」


戸部「あれ、そいえば雪ノ下さんは?」


八幡「あー、たぶん。家にいるんじゃないか? バイトもまだ無いはずだし」


戸部「そっかー。また急に来たり……?」


八幡「今のとこ連絡ないから来ないと思うぞ」


戸部「ほーん。ところでヒキタニくんは自粛中は何してたん?」


八幡「何してたと言われてもな……。ゲームかテレビか読書だな」


戸部「え、セックスしてないんですか?」


八幡「キャラ変わってんぞ……。仮にしてたとしても言うわけないだろ……」


戸部「っかー! 羨ましい。マジで羨ましいわー! ヒキタニくん自粛中でもリア充だわー」


八幡「お前みたいなパリピに言われたくねぇよ。ちなみにお前は何してたんだ?」


戸部「俺はyoutube見たりしてたわ。あ、海老名さんのラインのアイコンがマッチョになってたから筋トレもしてたわ!」


八幡「あの人は色々自粛してほしいな……」


戸部「あ、そうそう! 俺自粛中にハマったことあったから持ってきたんだわ!」


八幡「ほう?」


戸部「じゃーん! どうよ! うまそうじゃね!?」


八幡「これは……梅酒か?」


戸部「そっ、梅酒。いやー、スーパーでめっちゃプッシュしてたからチャレンジしてみたわー」


八幡「なるほどな。これは完成品か?」


戸部「もちのろん! 逆にできてないの持ってくるとかやばいでしょー」


八幡「いや、知らねぇけど」


戸部「家にもまだまだあるんだけどさー。作るの簡単だしめっちゃうまいわけよ! だからヒキタニくんにもおすそ分け! まあ、飲んでみ!」


八幡「おい、勝手にコップに注ぐなよ」


戸部「いーからいーから! 飲んでみ☆」ゴクッ


八幡「………」ゴクリ


戸部「ぺゃー! っべーわ、俺マジ梅酒作り天才だわ。マジべーわ」


八幡「確かにうめぇ……。梅酒だけに。ちょっとドロッとしてるからか味が濃厚だな」


戸部「濃いめに作った方がうまいのよ。名付けてとべ汁! もう商品化待ったなしでしょーよこれ!」ゴクッ


八幡「絶対売れないから名前変えた方がいいぞ……」





なっ☆



戸部「いやー、ほんとヒキタニくん羨ましいわー……」


八幡「いきなり何だよ。それは、雪ノ下がか?」


戸部「いーや、彼女がいることっつーか、好きな人と結ばれてることっつーか。幸せそうじゃん?」


八幡「んだよ。らしくないな」


戸部「いやさー、前に遊びに来た時に彼女と別れたって言ったじゃん? あれからいいなーって子いなくてさー」


八幡「へぇ。でも結構大学では女子と無駄に騒いでないか?」


戸部「あれはただの友達ってやつ? いやー、ずっと一緒にいるだけっていうかさー。やっぱ海老名さんと比べるっていうか」


八幡「ちなみに、お前の初恋って海老名さんなのか?」


戸部「初恋ってわけじゃないけど今までで一番好きなったって言う感じ?」


八幡「なるほどな」


戸部「ヒキタニくーん、俺どうしたらいいと思う?」


八幡「どうとは?」


戸部「俺もヒキタニくんみたいに彼女作ってイチャイチャしたいわけよ! その秘訣を教えてほしいわけよ!」


八幡「まずはその下心をどうにかしろよ……。それに、秘訣も何もただ一緒に過ごしているだけだぞ」


戸部「いーや、絶対嘘でしょ! そもそもヒキタニくんと雪ノ下さんはなんで付き合うことなったん?」


八幡「何でって言われてもな……」


戸部「だってヒキタニくんが雪ノ下さんにコクられたっしょ? 何をしたらヒキタニくんなんかが雪ノ下さんみたいな可愛い子にコクられるんよ!」


八幡「今しれっと俺なんかがって言わなかった? まあ、確かに雪ノ下から告白されたが、俺も雪ノ下のことは……す、好きだったからな」


戸部「そっかー。俺、ちょっと本気で頑張ってみようかな」


八幡「海老名さんに対して、か」


戸部「もち! いやさ、俺は確かに海老名さんを高校の時から一緒だったし、楽しかったけどそれ以上はなかったかなって思ってさ」


戸部「今思えばヒキタニ君ってば雪ノ下さんや結衣と一緒にいて、俺たちと違って何かいい感じだったじゃん? わかんねぇけど」


八幡「わかんねぇのかよ」


戸部「だから俺ももう大学3年だけどヒキタニ君みたいにホンモノってやつ? 手に入れていくわ!」


八幡「おい待て。お前それどこで……」


戸部「よっしゃ! そうと決まれば早速海老名さんをデートに誘うべ!」プルルルル


八幡「は? いや、お前……」


戸部「あ、もしもし海老名さん? 俺俺!」


海老名『とべっち? はろはろ~。電話してくるなんて珍しいね』


戸部「いや、なんていうかさ、緊急事態宣言解除されたじゃん? もしよかったら週末……」


海老名『あ、ごめんねー。週末は結衣と自粛中に大学から課題大量に出されたの一緒にするんだよねー』


戸部「え、あっ、じゃあ俺も手伝うよ! 3人でやればすぐ終わるでしょ!」


海老名『ううん、結衣の他にも友達いるから大丈夫。話はそれだけ?』


戸部「え、あ、おう……」


海老名『今はまだ解除されたばっかで遊びに行きにくいかもだけど、夏にはまた皆で遊びに行けたらいいね~。それじゃあ私は、この後バイトだから』


戸部「だ、だな! バイト頑張って!」


戸部「………」


八幡「……どうだった?」


戸部「なんていうか、自粛が解除されたばっかだから……なっ☆」


八幡「お、おう」





とべ汁



雪乃「飽きれた……。遊びに来てみれば昼間からお酒を飲んでいるの?」


戸部「お、雪ノ下さん。うぇーい!」


八幡「おお、来たか。戸部が手作り梅酒持ってきてくれてな。なんだ、緊急事態宣言の解除祝いだ」


雪乃「緊急事態宣言が解除されて最初にすることが飲酒というのはどうかと思うのだけれど」


八幡「まあ、戸部が作って持ってきてくれたわけだし飲まないわけにもいかないだろ」


戸部「いやー、マジヒキタニくん空気読めるわー。雪ノ下さん、これマジでうまいから! 雪ノ下さんも飲んでみ!」


八幡「言ってなかったか。こいつ酒弱いんだ」


戸部「あ、マジかー」


雪乃「………」


八幡「まあ、とべ汁うまいし晩酌の時にでも飲まさせてもらうわ」


戸部「ヒキタニくんマジ良い人だわー。家にまだあるから無くなったらいつでもとべ汁持ってくわ!」


八幡「ああ、頼む」


雪乃「………」


戸部「うし、じゃあゲーム続きするべ!」


八幡「おう。雪ノ下もやるか?」


雪乃「いえ、そのゲームはよくわからないから見ているだけでいいわ。それよりも、私もその、戸部くんが持ってきたお酒飲んでみてもいいかしら?」


戸部「え、雪ノ下さんいけるん?」


八幡「飲むのか? まあ、止めはしないが、お前も昼間から酒飲むのか?」


雪乃「緊急事態宣言の解除祝い、よ……。それに、戸部くんが折角作ったものを持ってきてくれたのだし。あと、実は最近少しずつではあるけれど、お酒には強くなっているのよ?」


八幡(え、どこが? ……っていうのは黙っておこう)


戸部「あー、わかるわー。俺も初めはすぐ顔赤くなって寝てたけど、自分で作った梅酒飲んでる内に慣れてきたわー」


雪乃「私も弱いままというのもどうかと思って強くなろうと思っているところよ」


八幡「ま、まあ、体質もあるとは思うが、戸部の言う通り慣れていくっていうのも良いかもな」


雪乃「ええ。それと、梅酒は少し飲んでみたいと思っていたのよね。由比ヶ浜さんが好きって言っていたから」


戸部「いやー、雪ノ下さんマジ意識高いわー。マジリスペクトだわー。じゃ、とべ汁召し上がれ!」トクトク


雪乃「何だかお酒が汚らわしく聞こえたのは気のせいかしら……」


八幡「気のせいじゃないから大丈夫だ。味はおいしいから飲んでみるといい」


雪乃「ええ。では、いただきます……」ゴクッ





比企谷くん



『GAME SET』


八幡「………」


戸部「………」


雪乃「ちょっと? あなたたち本当に本気でやってるの?」


八幡「はい……」


戸部「うぇい……」


八幡(雪ノ下がとべ汁を飲んで数分後、俺が戸部としていたスマブラに自分も混ぜてほしいと言い出した)


八幡(嫌な予感はしたが、雪ノ下の言った通りこれまでと違って酔った様子はなかったから3人で対戦してみたが……)


戸部「ゆ、雪ノ下さん強すぎね? ほんとにはじめて?」


雪乃「ええ。テレビゲームはこれまで比企谷くんと一緒にやったマリカー? ってゲームくらいしかしたことがないわ」


八幡「それなのになんでゲームウォッチ完璧に使いこなしてるんだよこいつ……」


戸部「ひ、ヒキタニ君。ここは二人で協力して雪ノ下さん倒すべ!」ボソッ


八幡「それある」ボソッ


雪乃「何二人でこそこそ話しているの? 次行くわよ」グビッ


戸部「の、望む所っしょ!」


八幡「雪ノ下。飲むのはその辺にしとけ……」


『GAME SET』


戸部「うぇー……い」


雪乃「さりげなく二人がかりで向かってきたようだけれど、その程度?」ゴクッ


八幡「何で横Bのジャッジが毎回良いタイミングで9が出るんだよ……」


戸部「ひ、ヒキタニくーん。雪ノ下さんマジ……」


雪乃「ちょっと戸部くん?」


戸部「うぇっ」


雪乃「前々からすごく気になっていたのだけれど、彼はヒキタニではなく、比企谷よ」


戸部「え、やっ。それは大学入ってからヒキタニくんに言われ……」


雪乃「比企谷、よ」ニッコリ


戸部「ひ、比企谷くんに言われたけど今更だからヒキタニのままでいいって……」


雪乃「ふぅん。別に本人がそういっているならいいのかもしれないのだけれど、私が気に食わないの。どうしてかわかる?」ニコッ


戸部「うぇっ」


戸部「ひ、ヒキタニくん! 雪ノ下さんちょー怖いんですけど!」ボソッ


八幡「すまん、言ってなかったかもしれないが、雪ノ下は酒に弱くて酔うと軽く性格変わるんだ……。俺がいるから大丈夫だと思ったんだが、梅酒をストレートで飲むのはさすがにアレだったか……。何ならまだ飲んでるし」ボソッ


雪乃「戸部くんだって嫌でしょう? 自分の名前をわざと読み間違えられるなんて」


戸部「い、いやー友達以外なら確かに嫌だけど、仲間内でのあだ名的な?」


雪乃「知ってる? 近年全国的に教育現場でいじめ件数が増えているのだけれど、そのいじめの一つがあだ名による口撃なのよ? あだ名って意味わかる? よくニックネームとか言われているけれど、その言葉の本質は親しみを込めて対象を呼ぶために用いられる本名以外の名前を指しているの。悪口に捉えられるようなものはともかくとして、意図的に相手の名前をわざと間違えて呼ぶようなあだ名を私はあだ名と呼ぶのはどうかと思うのだけれど。現に、過去には友達や周りから呼ばれるあだ名が嫌で苦しみ、最悪の場合命を絶つ人さえいるの。あなたが軽はずみで発した言葉がどれほどの切れ味をもっているか改めて自分自身と向き合って顧みなさい。本人が良いといったから大丈夫? そんな軽い気持ちと認識でいるから、世に蔓延るいじめは後を絶たないのよ」


戸部「」


八幡「お、落ち着け雪ノ下。論点ズレてるし戸部が涙目だ! 俺は本当に気にしてないからいいんだ、今更戸部に比企谷くんとか呼ばれてもなんか気持ち悪いしな」


雪乃「あら、あなたにも言っているのよ。八幡」


八幡「えっ」


雪乃「私はいつもいつもあなたのことを想っているし、最近覚えたラインだってあなたの名前を八幡で登録しているわ。それなのにあなたは私は名前で呼んでくれないじゃない」


八幡「い、いや、ラインは知らんがお前だって普段俺のことを……」


雪乃「こっちだって恥ずかしいのだから、男性の方からリードしてほしいの!」


八幡「」ビクッ


戸部「」ビクッ


雪乃「あなたの性格は重々理解しているつもりだけれど、それでも少しはリードしてほしいの! 初めてキスした時だって、ずっと頬染めておどおどとしていたから私からしたのよ! 初めて一緒に寝た時だって、あなたがいつまであったもそっぽを向いてるから私が勇気を振り絞って先陣を切ったの! クリスマスの時はあなたがリードしてくれて凄く嬉しかったけれど、その、とにかくリードして!」ゴクッゴクッ


八幡「やめて……! 初めてのことを戸部の前で暴露しないで……! 雪ノ下さんエンジンかかってきてるじゃねぇか……」


戸部「ヒキタニくん。なんか引くわー」


雪乃「ヒキタニではないと何度言えばわかるのかしら。いくら鳥頭でももう少し理解できるはずなのだけれど」


戸部「ひ、比企谷くん」


雪乃「あと、私の彼氏を貶すのはやめてもらえるかしら」ゴクッ


戸部「す、すみませんした」


雪乃「……あら。もう無くなったわね。梅酒を初めて飲んだのだけれど、すっきりした甘めの中にコクがあっておいしいわね」


八幡「えっ。待て、結構な量持ってきてくれてたよな? もう飲んだの?」


雪乃「ごめんなさい、戸部さん。折角持ってきてくれたのにすぐ飲むような真似をしてしまって……」


戸部「い、いいっていいって! それだけおいしかったってことで俺も作った甲斐あったわ! 家にまだあるしまた持ってくるわ!」


八幡「その時は雪ノ下いない時で頼む。あと何か色々すまん」ボソッ


戸部「雪ノ下さんの意外な一面見れたからむしろラッキーだわ! 雪ノ下さんって飲むと毎回こんな感じなん?」


八幡「いや、最近はすぐ寝たりニコニコする程度だったんだが、久しぶりに酒飲んだのが濃いめの梅酒だったからネジが緩んだのかもしれん……」


戸部「っかー! やっぱヒキタニくん、羨ましいわ! こんな彼女がいるとか!」


雪乃「比企谷くん、よ。戸部くん。あなたは理解力がないようね。少しそこへ座りなさい」


戸部「」


八幡(……その後、永遠と人権と道徳心について何故か説教される戸部の姿がそこにはあった)





いつもより



戸部「じゃあ比企谷くん! 今日は楽しかった。また来るわ!」


八幡「お、おう。梅酒サンキューな」


戸部「おう! また持ってくるわ! 雪ノ下さんもまた!」バタン


八幡「……なぜあいつは清々しい顔で帰っていったんだ。雪ノ下、戸部に何を言ったんだ?」


雪乃「………」


八幡「雪ノし――」


雪乃「んっ……ちゅ……」


八幡「ちょ、雪ノ下……っ」


雪乃「……はぁ。やっと、二人きりになれた……っ」ギュッ


八幡「……っ。ゆ、雪ノ下」


雪乃「雪乃って、呼んで……」


八幡「雪乃……」


雪乃「んふふ、なあに? 八幡……っ」


八幡「んむ……ちょ、ちょっとタンマ。大丈夫か? 顔、めっちゃ赤いぞ」


雪乃「あら、八幡も赤いわよ?」


八幡「いや、俺は…………っ!?」


雪乃「ん、八幡……はぁ……好き……」


八幡「……普段の雪乃さんとは別人だが、本当に酒強くなったのか?」


雪乃「ええ、もちろん。だからこうして二人になるまで我慢して、あなたを愛でているの…………っちゅ」


雪乃「それに、お酒を飲むとふわふわするからかしら。いつもより、積極的になれる気がするわ……っ」


八幡「だ、だからって、積極的すぎませんか……」


雪乃「あら、積極的な女の子は嫌……?」


八幡「いや、そんなことは……うぉっ」


雪乃「んふふ……はむっ」


八幡「待っ、首筋……吸わないでくれ」


雪乃「んむ、ろうひて? んちゅっ」


八幡「く、くすぐったいしその……」


雪乃「勃っちゃう?」


八幡「」


雪乃「ふふっ。ねぇ、八幡からはちゅーしてくれないの……?」


八幡「……っ」


雪乃「んん……んふ……」


八幡「……っ。梅酒どんだけ飲んだんだ?」


雪乃「さあ、覚えてないわ。お酒臭い……?」


八幡「臭いというか、梅酒の甘酸っぱい匂いがするな。体も熱いし」


雪乃「熱いのはあなただった同じじゃない。男の人って首筋少し吸われただけでこんなに硬くなるの?」


八幡「」ピクッ


雪乃「ピクッてなったわね」クスッ


八幡「お前にキスされて首筋吸われたらそりゃこうなるだろ。おまけに、雪乃からこんなことされたの初めてだし……」


雪乃「そう、だったかしら? きっと、気分がふわふわしているから、いつもより踏み込めるのかも……」


八幡「そうか。……相変わらず、酔ったゆきのんは可愛いな」


雪乃「か、可愛い? 別に酔ってないのだけれど」カアア


八幡「さっきからずっと顔真っ赤の奴に言われてもな。それに……」


雪乃「んっ……」


八幡「好きな奴に首筋とか色々吸われたり舐められたら、そりゃそういう気持ちになるだろ……っ」


雪乃「あっ、はち、まん……」


八幡「雪乃……」


雪乃「ねぇ。……お布団行かない?」


八幡「俺も同じことを言おうと思ったわ」


雪乃「スケベ」


八幡「モノ触りながら言われてもな……」





積極的



雪乃「……ん、んん」


八幡「お、目ぇ覚めたか」


雪乃「私……」


八幡「覚えてないのか? ほれ、水」


雪乃「ありがとう。もしかして私、あの後すぐに寝たの?」


八幡「ああ。余韻に浸っているうちに爆睡してたぞ」


雪乃「そう……」カアア


八幡「とりあえず風邪引くから着とけ。それかシャワー浴びるか?」


雪乃「え、ええ。ならシャワー、浴びてくるわね」


八幡「おう。バスタオルは洗面所のとこに置いてある」


雪乃「ありがとう。ところで比企谷くん」


八幡「?」


雪乃「その、どうだった?」


八幡「はい?」


雪乃「だ、だから、さっきまでの私はどうだったかと聞いているのよ」


八幡「さっきまでって……覚えてないのか?」


雪乃「お酒を飲むとあまりはっきり覚えていないのよ。戸部くんが帰るまでのことなら覚えているのだけれど」


八幡「逆になんで直前のことは覚えてないんだよ……」


雪乃「と、とにかく。どうだった? 正直に答えて」


八幡「ど、どうと言われてもな。覚えてないかもしれんが、その……」


雪乃「?」


八幡「あー、なんだ。…………エロかわいかったな」


雪乃「……そ、そう。迷惑かけた、かしら」


八幡「いや、むしろ嬉しかったな。普段と違った感じもしたし」


雪乃「それってスケベな女だと思わないの……?」


八幡「……まあ、彼氏からしたらやっぱスケベというよりか積極的な方が嬉しいんじゃないか?」フイッ


雪乃「………」


八幡「あー。シャワー、浴びないのか?」


雪乃「えっ、そ、そうね。浴びてくるわ」


八幡「お、おう」


八幡「………」


八幡(……あいつからあんなこと聞いてくるなんて珍しいな)


雪乃「………」バタン


雪乃「………」


雪乃(クリスマスの時もそうだったけれど、最近何だかお酒に強くなってきたわね。クラクラはするけれど)


雪乃(それに恥ずかしくて素面ではまだ無理だけれど、彼も喜んでくれるのなら頑張って積極的に……)


雪乃「……できるかしら」カアア





相談



いろは「あ、雪乃せんぱーい!」


雪乃「こんにちは。ごめんなさい、待たせたかしら」


いろは「いえいえ全然! すみません、急に呼んでしまって」


雪乃「今日は別に予定もなかったから気にしないで」


いろは「あれ、今日は先輩とデートとかしないんですかー?」


雪乃「今日は戸部くんが彼の家に遊びに来るみたいなの」


いろは「え、戸部先輩まだ先輩ち行ったりしてるんですね」


雪乃「そうなの。一昨日も遊びに来ていたしなぜか仲が良いのよね……」


いろは「あの二人S極とN極くらい性格真逆なのに……」


雪乃「ゲームの趣味は合うそうよ。ところで、私に何か用があったのではなくて?」


いろは「あ、そうなんです! 用というか相談がありまして……」


雪乃「相談?」


いろは「はい。あ、とりあえずお店入っちゃいましょう! 私奢りますよ!」


雪乃「ふふ、大丈夫よ。後輩から奢ってもらうほどできてはいないわ」


いろは「いえいえ、呼びだしたのは私なので奢らせてください!」


雪乃「頭まで下げなくても……。な、ならコーヒー、もらってもいいかしら」


いろは「はい!」




ナニ



雪乃「……はい?」


いろは「だ、だからですね! 最近友達に初めての彼氏ができまして、休日とかどんな感じで過ごせばいいかわからないみたいで度々相談されるんですよ」


いろは「ほら、私ってよく周りから恋愛経験豊富そうって言われるじゃないですかー?」


雪乃「いえ、知らないのだけれど」


いろは「私としては大学入って初めて仲良くなった子ですし、初めてのカップルライフを素敵なものにしてあげたいわけですよ!」


雪乃「……そ、そう」


いろは「そこで雪乃先輩の力が……いえ、経験が必要なんです!」


雪乃「なぜそこで私が必要となるのかしら……。一色さんの経験をもとに相談に乗ってあげるべきではなくて?」


いろは「そうしてあげたいのは山々なんですけど、私ってほら、こうみえて恋愛経験ないじゃないですかー?」


雪乃「いえ、知らないのだけれど……。男性とお付き合いしたことはないの?」


いろは「お恥ずかしながら……。私には先輩がいますので」カアア


雪乃「いないわよ?」


いろは「友達は私が恋愛経験豊富だと思って相談してくれるんですけど、この通り私はサッパリですのでどうか雪乃先輩の力をいただけないかと!」


雪乃「聞いてる? ……そもそも、私にどうしろというのかしら。見ず知らずの相手に私の私生活を提供する気はないのだけれど」


いろは「別に根掘り葉掘り聞くつもりはありませんよ! 普段家にいる時とデートの時どんなことしてるか教えてほしいんです!」


いろは「あ、もちろん雪乃先輩たちのことは伏せますし、なんか私の願望も織り交ぜて相談にこたえていくので!」


雪乃「……と、言われてもね。どんなことといっても普通よ?」


いろは「普通が欲しいんです! その普通が本物なんですから!」


雪乃「そ、その言い方やめてもらえるかしら……。そうね、家だと大体お互い読書するか、彼がゲームしてるかのどちらかね。一緒にテレビを見る時もあるわ。外出するときは大体買い物するくらいかしら」


いろは「えっ」


雪乃「えっ?」


いろは「え、は、え? マジですか?」


雪乃「え、ええ」


いろは「………………え、世のカップルって大体そうなの? 確かに先輩たちらしいっちゃらしいけどあまりに地味だしつまらなすぎるし、なんかもういつ離婚してもおかしくない会話も連絡だけの熟年夫婦みたいな感じなんだけど」


雪乃「……一色さん? 丸聞こえなのだけれど。あと会話ならたくさんしてるわ」


いろは「い、いやいやいやいや。さすがに嘘ですよね? 他にも色々ありますよね? 私をからかってますよね?」


雪乃「逆にどんなことを想像しているのかしら……。連休はお出掛けしたりはするけれど、本当に普段はこんな感じよ?」


いろは「だ、だって私たちもう大学生ですよ!? 大学生カップルなんて隙あらば×××したり***したりするんじゃないんですか!?」


雪乃「……お洒落な喫茶店に似つかわしくない言葉を大声で発するのはやめてもらえないかしら」カアア


いろは「そもそも雪乃先輩たちってしてるんですか?」


雪乃「……何のことかしら」


いろは「ナニのことです」


雪乃「」


いろは「コーヒー奢りました」


雪乃「それはあなたが言ったからでしょう……。言っておくけれど、私は彼と違って甘くないわよ」


いろは「教えてくれたらこの前バイトの時に先輩が言ってた雪乃先輩には内緒のこと、バラしてあげます」


雪乃「………」


いろは「初めては付き合ってどれくらいですか? 今では週どれくらいです? やっぱり友達も参考に聞いておきたいと思いますし」


雪乃「あなたが聞きたいだけでしょう? そもそも論点が完全にすり替わってしまっているわ」


いろは「教えてくれたら話戻して真面目になります。それに私も今後彼氏ができたときの心の準備しておきたいですし」


雪乃「卒業生を送る演説の時よりはるかにあなたの今の顔真面目じゃない……。言わないわよ? 絶対に」


いろは「ぶぅ。じゃあ先輩に聞いちゃうかもですよ?」


雪乃「別に構わないわ。でも、程々にね」


いろは「?」


雪乃「私たち過去に一度だけ大喧嘩したのだけれど、私って本気で怒ると1時間以上ひたすら相手の悪いところを謝ろうと理詰めで追い詰め続けるらしいの。以降比企谷くんはそれが怖いみたいで小喧嘩はあるけれど、喧嘩という喧嘩はしなくなったわ」


いろは「へ、へぇ~。すみませんでした」




ガチ



雪乃「それで、結局その相談というのは具体的にどんな相談をされたの?」


いろは「はい。まだ付き合って一週間くらいみたいで、距離の詰め方? がよくわからないみたいなんですよねー。なんかお互い硬くなっちゃうといいますか」


雪乃「初めはそういうものではなくて? 私と彼も初めはギクシャクしたもの」


いろは「雪乃先輩と先輩ならでしょうねー」


雪乃「………」


いろは「ちなみに告白は友達の方からしたみたいで、年下らしんですよ。だからデートもこちらから誘った方がいいのか、年上だしリードしていくべきなのかとか色々悩んでるみたいで」


雪乃「なんだか話を聞けば聞くほどなぜ私を頼ったのかわからないのだけれど……」


いろは「そうですか? 私が知ってる中で一番お似合いで仲のいいカップルってやっぱり雪乃先輩たちだから、ですかね」


雪乃「そう……。なら、少しでも期待に応えられるようにしないとね」


いろは「あ、雪乃先輩たちは初デートどちらから誘ったんですか?」


雪乃「比企谷くんからよ。奉仕部の依頼も兼ねてだったけどね」


いろは「へぇー。先輩からデートに誘うってなんか変ですね」


雪乃「ふふっ、今は大分マシにはなったけれど、当時の腐りきった彼から想像すると、確かに変かもしれないわね」


雪乃「本題に戻るけれど、好きな人からデートに誘われて嬉しくない人なんていないと思うし、そのお友達も変に気なんか使わないで誘ったりすればいいのではないかしら。年下の彼がどんな方なのかわからないけれど、迷うくらいなら初めはお誘いして頑張ってリードしてみるといいと思うわ」


雪乃「そうすれば彼もすぐに隣に追いついて、同じ歩幅で歩んでいけると思うわ」


いろは「………」


雪乃「な、何かしら」


いろは「……いえ、思いの外ガチなことを言ってくださったのでびっくりしました」


雪乃「そ、そう? 単に思ったことを言っただけなのだけれど」カァァ


雪乃「でも、あまり人様の恋路にとやかく言うつもりもないし、責任も持てないからこれ以上のことを言うことはできないわよ?」


いろは「はい。もちろん私だって責任持つなんて真っ平ごめんですので、今の言葉だけでもう充分だと思います!」


いろは「後でラインで送っとこうと思います。ありがとうございました!」


雪乃「大した事何もしていないけどね」


いろは「いえいえそんな。あっ、あと、もう一つありまして」


雪乃「?」


いろは「私も隣に追いつきたい人がいるんです。高校の時から追うようになって、すぐそこにいるのに未だ追いつけないんです。どうすればいいと思いますか?」


雪乃「諦めるといいと思うわ」




お、おう



~雪乃宅~


雪乃(今日は久しぶりに比企谷くんが泊まりに来るし、掃除でもしようかしら)


雪乃(最近は私が比企谷くんの家にほとんど泊まってばかりだったから、掃除もあまりできてしなかったしね……)ゴソゴソ


雪乃(そういえば比企谷くんの歯ブラシしばらく使ってなくて捨てたから持ってくるよう連絡しておかないと)


雪乃(……あら? こんな袋、押し入れに入れていたかしら)ガサッ


『集まれ巨乳っ娘! 驚異のおっぱい100連発』

『爆乳大陸~大地を揺らせ~』

『ハレルヤ・ユレルヤ~幸せを運ぶHカップ~』


雪乃(これって……。確か比企谷くんが材木座くんからもらったと言っていたDVD、よね)


雪乃(預かって破棄すると言っておきながら、人の物を勝手に捨てるのも悪いと思って何だかんだしまっていたのよね)


雪乃(改めて見ると、どれもこれも巨乳の女性ばかりね……)


雪乃(あの時比企谷くんは私の方がエロ……魅力があると言ってくれたけれど、一応これを彼は見たのよね)


雪乃(アダルトビデオなんて興味も持ったことがないけれど、やっぱり男の人はこういうの興味があるのね)


雪乃(………)


『集まれ巨乳っ娘! 驚異のおっぱい100連発』


雪乃(………)


『爆乳大陸~大地を揺らせ~』


雪乃(………)ゴクリ


『ハレルヤ・ユレルヤ~幸せを運ぶHカップ~』


雪乃(まだ比企谷くんが来る予定時刻より余裕があるし、少しだけ……)


雪乃(別に興味があるわけではなくて、あくまで男の人が、比企谷くんが興味を持ったものを調べるだけ……)


雪乃(結局男の人は胸が大きい方がいいのか確かめるだけ……!)


AV「—————」ジュポッ


雪乃「!?」


AV「—————」アンッ


雪乃「……っ!?」


AV「—————」アッアッ


雪乃「」


~1時間半後~


八幡「お邪魔します。雪ノ下?」ガチャッ


八幡「連絡しても返事がなかったからそのまま来たが、靴はあるし寝てるのか……?」


八幡「おーい、雪ノし」


AV「—————」


雪乃「………」


八幡「」


八幡(……なんか雪ノ下が正座してAV見てる)


八幡「あー……」


雪乃「っ!?!?!? ひ、ひひひきっ」ガバッ


八幡「よ、よう。連絡しても返事なかったから来たんだが、邪魔したな」


雪乃「ま、待って! 今行かれてしまうと私はもう、二度とあなたと顔を合わせられないわ……!」


八幡「お、おう。なら見てたこれ、何かしら」


雪乃「………」


八幡「これ、何かしら?」


雪乃「…………殺して」カァァ

----------------------------------------------

続く。


後書き

ひっそり書いて、ひっそり投稿できたらと思います。



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1: SS好きの名無しさん 2020-04-29 19:13:10 ID: S:FEihjL

新作!!!待ってました!!

因みに人生ゲームの通貨は円じゃ無くてUSドルです

2: SS好きの名無しさん 2020-04-29 23:01:17 ID: S:Uji2OL

新作だぁ!嬉しいです。

3: SS好きの名無しさん 2020-05-14 03:32:07 ID: S:1Sn1jT

かまってシリーズ読み返してたらまさかの新作で歓喜しました!!!!最高です!!!

4: SS好きの名無しさん 2020-05-18 07:06:07 ID: S:bsz3jo

またあなたの新作が読めて嬉しい…!!!

5: SS好きの名無しさん 2020-05-23 15:12:24 ID: S:kwxhnl

新作キター!
どんどんイチャついていけ

6: SS好きの名無しさん 2020-05-23 19:59:02 ID: S:WjULiV

あ~^自粛疲れが吹っ飛ぶ~^
海老名さん対応が塩過ぎて(´・ω・)カワイソス

7: SS好きの名無しさん 2020-06-27 16:51:43 ID: S:7HupKU

それでも俺は……続きが欲しい……!

8: SS好きの名無しさん 2020-10-06 09:33:25 ID: S:6rGg-c

まじっべーわ
かまってシリーズっべーわ

9: SS好きの名無しさん 2020-12-07 03:15:09 ID: S:_rRANc

このシリーズだいすき

10: SS好きの名無しさん 2021-01-17 04:32:36 ID: S:gyMnjy

このシリーズ大好きです!

11: SS好きの名無しさん 2021-10-01 15:49:32 ID: S:1JrLjb

期待

12: SS好きの名無しさん 2023-09-18 10:47:56 ID: S:O8Xu7c

今更俺ガイルにハマった新参で、あなたのssがちゃんと読むssで初めての作品ですが、この世にはとてもいいものがあるんだなと思いました(小並感)ありがとうございます


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1: SS好きの名無しさん 2021-01-23 18:43:11 ID: S:-zmbE_

サイコー

2: SS好きの名無しさん 2021-09-27 20:59:56 ID: S:boND00

マジ見てよかった


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