2020-09-09 02:42:21 更新

概要

「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。」のSSです。
いろは、八幡主体の短編複合型の長編です。ぼんやり、話の本筋もありますが、日常の繰り返しです。


前書き

「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。」のSSです。
一色いろはが大好きすぎるので、SS書きます。SS慣れはしていませんが、とにかく書きます。
原作は一応全巻読破していますが、キャラ崩壊はごめんなさい先に謝っておきます申し訳ございません。
あと、原作の設定を一部無視してしまうこともあるかもですが、二次創作だし勘弁してくださいね!

不定期にだらだら更新していきますので、変なところで途切れるかも、です。
なお、その場で書いて更新してるため、書き溜めありません。

2020/08/18追記
現在、加筆修正を開始しました。
しつこくなるかもしれませんが、軽く続編なんかも書けたらと再度考えています。
ぶっちゃけコメントや応援の言葉が励みとモチベになります(ボソッ)

【更新状況】
2020/08/18 先輩を射抜きます~やはり比企谷八幡の予感は的中する。2  加筆修正

2020/09/02 ~いつもなら、比企谷八幡は一人飯を食う 加筆修正

続編↓
いろは「先輩を射抜きます」 八幡「なに? 俺、狙われてんの?」 いろは「はい。今までと、これからも」



先輩を射抜きます


~奉仕部部室~


いろは「先輩を射抜きます!」


八幡「なに? 俺、死んじゃうの?」


いろは「もう死んじゃってるようなものじゃないですかぁ。ほら、全体的に? 雰囲気とか?」


八幡「ナチュラルにトラウマほじくり返すのやめてくんない? 比企谷くんって目が死にすぎててウケルー(笑)なんて陰口叩かれてるのを聞いちゃった俺の気持ちがわかるか?」


いろは「あちゃー、それはタイミングが悪かったですねぇ」


八幡「俺、普通に教室で寝てたんだけどな。その状況で平気な顔して俺の陰口とか、もはや完全に気づかれてないまである」


いろは「なんでちょっと誇らしげなんですか……」


八幡「で、射抜くってなんだよ」


いろは「いや、深い意味はないです。あえて言うならほら、わたしって弓道部ですし」


八幡「え、お前って弓道部だったの? 掛け持ち?」


いろは「もちろん嘘です♪」


八幡「用がないなら自分の教室に帰れ、生徒会長」


いろは「えぇー!? 今日は雪ノ下先輩も結衣先輩もお休みだって聞いたんで、わざわざ会いに来てあげたのにー」


八幡「上目遣い、萌え袖にそのセリフ。あざといな、流石いろはすあざとい」


いろは「ちょちょ、先輩もっかい! もっかい言ってください」


八幡「あざといな」


いろは「そこじゃない! もう少し後です、後。ほら、わたしのことなんて言いました?」


八幡「あざとい」


いろは「はぁ。もういいです、絶対言ってくれないパターンですし」


八幡「いろはす」


いろは「……っ! そ、そんな不意をついたってまだ狙ってもダメです早いですごめんなさい」


八幡「言えつったから言ったのによ……つーかなんでいろはす呼びで喜んでんの? 水なの?」


いろは「そもそも、二人共いないのに先輩だけで部活に出るなんて、天変地異の前触れか何かですか? やめてくださいよ、明日布団干そうと思ってるのに」


八幡「当然、帰ろうとした。平塚先生に捕まった」


いろは「あー、サボりは許してくれそうにありませんもんねー」


八幡「どうせ依頼者なんてこないのにな」


いろは「わたしが来たじゃないですか♪」


八幡「死ぬ気で逃げればよかったと、心底思ったよ」


いろは「先輩ひどいです! 目もあれですけど、心もあれです!」


八幡「なんだよあれって。アレリーマンなの? 語彙の貧困さにお困りの場合は本読め、本」


いろは「そんなことより先輩、今日はまだ残ってますか?」


八幡「平塚先生に見張られてるからな……下校時間までは読書でもして時間を潰す」


いろは「なら、わたし生徒会の仕事持ってきますねー」


八幡「なんでだよ」


いろは「先輩一人じゃ寂しいと思いましてぇ。あ、今のポイント高い!」


八幡「お前、いつから俺の妹と繋がり築いたの? なに、怖い。え、怖い」


いろは「まぁいいからいいから! ではではー、一旦失礼しますねー」ガラガラピシャッ


八幡「俺に対しての強引さが日に日に増してきてないかあいつ……あと戸部とか戸部とか。え、戸部と同列とかちょーショックなんですけどぉー?」


【先輩を射抜きます】 終



やはり比企谷八幡の予感は的中する。


 キーンコーンカーンコーン


八幡「……よし、来訪者1名。某生徒会長のみ。取るに足らないものだった」


八幡「仕事持ってくるなんて言いながら、結局来なかったな。期待させて放置する荒手のプレイか? ときめいたりなんてしないんだからねっ! ドキッ!」


八幡(……いい傾向だ。俺や雪ノ下も、いつまでも助けてはやれない。あと、由比ヶ浜も)


八幡「しかしだな、嫌な予感しかしないが……しかし帰ろう。帰ればまた、来られるから。いや、ただ帰宅したいのが本音であるが」


 ~下駄箱~


八幡「ん? 手紙が入ってる……ペロッ、これは、いじめの匂い!?」


八幡(だとしても俺は慣れてるが……見て見ぬ振りの出来ない存在がいるからな。今の俺には)


八幡「どれどれ……? ……ふむ。やはり俺の嫌な予感は的中している」


いろは「せーんぱいっ♪」


八幡「面倒事になる前に、手を打たないとな……」


いろは「ナチュラルに無視はおかしくありません!? ほら、先輩待望の可愛い後輩のお出ましですよ!」


八幡「八幡は、逃げ出した!」


いろは「しかし腕を掴まれ、振りほどけない!」ガシッ


八幡「嫌なエンカウントだな! 俺レベル1なのにこんなモンスター、勝てるわけねぇじゃん」


いろは「なら素直に負けを認めてください。そうすれば命くらい見逃してやります」


八幡「どんな立ち位置だよ」ハァ……


いろは「露骨なため息、NG! ポイント低いですよ、先輩!」


八幡「お前それ、気に入ったのか?」


いろは「少し」


八幡「ふふふ……しかしどれだけあざとかろうと、我が愛しの妹には遠く及ばないな。出直して来い。俺は帰るから、明日までの宿題だ」


いろは「ちょちょちょ、ストーップ! 何気に自然な逃げ方しないでもらえます!?」ガシッ


八幡「なに、なんなの? なんであざと系女子ってスキンシップが大好きなの? 傷口にしっかり貼り付く医療品! バンドエイドかな?」


いろは「何言ってるんですか先輩……キモいです。わりと上位レベルで」


八幡「がちなやつじゃん。やめて、心が傷だらけだから。傷口癒やすどころか増やしてから。っべー、まじっべー」


いろは「それ、戸部先輩の真似です? 無駄に似てて腹立たしいのでやめてください」


八幡「お前、戸部に当たりきつくない?」


いろは「そんなことないですよぉー。ダイジナセンパイデス♪」


八幡「いや露骨な棒読み。もうちょい労わってやれ、な? あれでも生きてるんだぞ。息もしてるし、心臓も動いてる」


いろは「生きてることしか誇れる部分がないってことじゃないですか。……ま、戸部先輩の話はどうでもいいんです。一緒に帰りましょ、先輩」


八幡「やだ」


いろは「即答!? なんでですかー!」


八幡「俺は帰りたいんだ。小町が俺の帰りを待っているから、生きて帰って、俺は……」


いろは「だから帰ろうって言ってるじゃないですか」


八幡「いや、お前らリア充の『帰ろう』は『スタバでうぇーい』って意味だと理解してるから。俺にとってはアウェイだからあんなシャレオツな場所」


いろは「そんなこと言って、結衣先輩とたまに行ってるの、知ってますよ?」


八幡「うぐっ、なぜそれを」


いろは「結衣先輩が嬉しそうに話してくれるので」


八幡「あいつ……そんなに俺を追い詰めるのが楽しいのか。リア充空間に連行することで、自分の嗜虐心を満たしてるんですね!」


いろは「そういう意味で嬉しいんじゃないと思いますけど……ってか絶対。相変わらず、大事なとこは変わらないんですねー、先輩は」


八幡「俺の成長は中学生の頃に止まった。いや、むしろ生まれた時のままとまで言える」


いろは「またわけのわからないことを……いいから、行きますよ!」グイッ


八幡「まて、引っ張るな」


いろは「煮え切らない先輩が悪いんです! わたし、結衣先輩の話聞いてスタバ行きたくなったので、今日は付き合ってもらいますよ!」グイグイッ


八幡「なんでお前が行きたくなったのに俺が同伴する必要があんの? 俺、足手まといになる自信あるよ?」


 ハナシマセンー ナンデダヨ!!

 ハナシタラニゲルデショー ニゲナイ、ニゲナイカラ!!


平塚「…………リア充、爆発しろ」ギリッ


【やはり比企谷八幡の予感は的中する。】 終


やはり比企谷八幡の予感は的中する。2


八幡「ほら……やっぱりこうなんじゃん」


いろは「えー? なんですって? 聞こえませんー」


八幡「いや、いくらゲーセンでもこの距離なら聞こえるだろ。なに、お前って難聴系主人公なの? どこの羽瀬川さんだよ」


いろは「ちょっと意味わかりませんけど。文句は多いくせに、なんだかんだで付き合い良いですよねー、先輩」


八幡「無理やり付きあわせといてよく言うな、後輩」


いろは「でも、わたしは先輩とデートできて嬉しいですよっ♪」


八幡「はいはい、あざといあざとい」


八幡「で、何すんの? 下校? 俺、おすすめの場所知ってるんだよね。小町って女の子とカマクラって猫が待ってる、マイホームって場所なんだけど」


いろは「まだ来て128秒ですよ!?」


八幡「え、数えてたの? なにそれ凄い無駄」


いろは「そんなわけないじゃないですかぁ。常識的に考えて?」


八幡「なんなの? そのいじり方、某ノ下を連想させるんだけど?」


いろは「わたし、雪ノ下先輩尊敬してますので」


八幡「嘘だ!」


いろは「まぁそれは半分嘘なんですけど、先輩と遊べるのは楽しいですよ?」


八幡「なっ……」


いろは「あ、今ときめきました? ちょっぴり真面目なトーンにときめいちゃったりしました? ごめんなさいまだちょっと早いです勘違いしないでください」


八幡「通算何度目だよ、お前に振られんの……」


いろは「先輩は今まで食べたパンの数を覚えていますか? つまりそういうことです」


いろは「あ、先輩先輩。あれやりましょう、あれ」


八幡「なんだ?」


いろは「マ◯オカートです」


八幡「俺、レーシングゲー苦手なんだけど」


いろは「まぁいいじゃないですか! やりましょうよぉー」


八幡「ちっ、しゃあねぇな……二人で200円か」チャリンチャリン


いろは(あっ、意外。さらっとわたしの分まで払ってる)


八幡「しまった、一色の分まで出しちまった。返せ」


いろは「なんでそういうこと言いますかねー。それさえなければポイント高いのに」


いろは(やっぱり先輩は先輩だった)


~マリ◯カートプレイ中~


いろは「うわ、ワルイージおそっ!」


八幡「だから言ったじゃねぇかよ……苦手なんだって、レーシング。人付き合いの次くらいに苦手なんだよ」


いろは「てか、なんでワルイージなんですか?」


八幡「いいじゃんワルイージ。悪ぶって見せても、多分心は綺麗だぜあいつ」


いろは「どことなく先輩みたいですよね」


八幡「はぁ? どこがだよ。俺の方が心が腐ってるまであるぞ」


いろは「マイナス方面にマウント取るって、むしろ取り柄だと思う時がたまにありますよ、先輩見てると。錯覚でしょうけど」


~◯リオカート終了~


いろは「やったー、1位ですよ1位! さっすが私!」


八幡「おーおー、流石流石。流石リア充。リア充スゲー」


いろは「すっごい投げやり……さて先輩。定番ですが、プリクラでも撮りましょうか?」


八幡「やだよ」


いろは「また即答!?」


八幡「あれだよ。プリクラって、写ったら魂抜かれるんだよ?」


いろは「まーた馬鹿なこと言ってるし」


八幡「ほら、書いてるじゃん。男禁制だって」


いろは「男一人なら、です。わたしがいるじゃないですか」


八幡「なぁ、どうしてもダメか?」


いろは「本当に嫌ならやめますけど……でも先輩は、なんだかんだ行ってくれるんですよね」チラッ


八幡「……妹属性ってズルいんだよなぁ。ちくしょう」


いろは「そういうとこは結構、ポイント高いですよ」


八幡「あざといろはす……」


いろは「案外、素なんですよこれでも」


八幡「……ほれ、行くぞ」


いろは「はーい♪」


いろは「あっ、これにしましょ、先輩!」


八幡「どれがいいかわからん。任せる」


いろは「じゃあ撮りますよ、先輩。案外すぐシャッター押されますから、さくっとポーズ決めてくださいね!」


八幡「えっ?」


いろは「はい、1枚目!」


 パシャー


八幡「はや! はやくね!?」


 パシャー


いろは「もう! ドン臭いんですから! はい、出来る限りの笑顔で!」グイーッ


八幡「おい、一色!?」


 パシャー


――


――――


――――――


いろは「はーっ。楽しかったですねー、先輩!」


八幡「もぐらたたき的な子供向けから、某太鼓を叩くゲーム、ガンシューティングにクレーンゲーム……よくもまぁこんだけ遊べるんだ。リア充の活動力ってなんなの? オロナミンCのCMでも出ればいいと思う」


いろは「先輩とですからかね、新鮮ですし! あ、今の私的にポイント高い!」


八幡「んで、こっからどうするよ。帰る?」


いろは「事あるごとに帰宅を提案してきますね。まぁいい時間ですし、今日は解散にしましょうか」


八幡「ああ、そうだな。それがいい。それを強く推奨する」


いろは「どんだけ帰りたかったんですか……そんなに、わたしと遊ぶのは嫌でしたか?」ジーッ


八幡「ん……いや、まぁ、悪くなかったわ」


いろは「……そ、そうですか/// 素直でしゅね」


いろは「(か、噛んだ……)」


八幡「(噛んだな……)」


いろは「あ、そ、そうだこれ! これ渡すの忘れてました!」


八幡「ん? ああ、プリクラか。別にいらねぇぞ?」


いろは「ダメです! 記念なんですから!」


八幡「わ、わかったわかった。なんの記念だよ、ったく」


 ~分かれ道~


いろは「じゃあ先輩。わたしはこれで!」


八幡「おう、またな」


八幡「……」


八幡「ちょー恥ずっかしいんですけどぉー、このプリクラ。俺じゃなかったら勘違いして惚れてるレベル」


 八幡がそっと財布に入れたプリクラには、決めポーズを取れぬまま間抜けに写った姿が数枚と。

 いろはが無理やり八幡の腕を引き、抱きつくような形で取った写真が1枚だけ、一緒に写っていた。


【やはり比企谷八幡の予感は的中する。2 】 終


やはり一色いろはは顔を覗かせる


八幡「うーっす」


 ガラガラピシャッ


雪乃「だから入る時はノックをしなさいと、何度言わせるつもりなのエボラ谷君」


八幡「なに? 俺が原因で熱でも出てんの? マジ俺って害悪。知ってる知ってる」


雪乃「そんなところで腐ってないで、然るべき場所で腐るべきではないかしら?」


八幡「然るべきと腐るべきをかけたのか。はっはっは、上手いな」


結衣「もー、ヒッキーもゆきのんも、その辺でやめときなって。ほら、仲直りのやっはろー!」


八幡「なんだよ仲直りのやっはろーって……」


八幡「ところで、俺の席がないんだが? 妖怪スマホ弄りに占拠されてるんだが? なんだこれいじめかな。懐かしい感じ」


いろは「あ、先輩いたんですか」ポチポチ


八幡「嘘だ。絶対気づいてただろ、妖怪スマホ弄りが」


雪乃「一色さんにはすでに言及したわ。生徒会の仕事はないのか、と」


八幡「ほう……それで?」


結衣「今日も休みなんだってさー」


雪乃「ええ、今日も休みだそうよ」


八幡「誰ひとりとして”も”に突っ込まなかったのか? なぁ?」


いろは「いいじゃないですかー。人間たるもの、休息は必要なんです。先輩も、ブラック企業は嫌いでしょう?」


八幡「ブラック企業どころかホワイト企業も嫌いだ。むしろ社会が嫌いまである」


いろは「うわ、流石に引く……先輩に好きなものなんてあるんですかね?」


結衣「さいちゃん?」


雪乃「妹さんじゃないかしら」


いろは「あと、千葉とマッカン」


八幡「お前ら八幡博士か? やめて照れるじゃないの」


いろは「よく飲めますよね、マッカンなんて甘い飲料」


八幡「ばっかお前、あの甘さがいいんだろうが。あの甘さがないマッカンなんてマッカンじゃない。カンだ」


結衣「なにその謎理論!?」


結衣「そんなことより、ヒッキー。またクッキー焼いてきたんだけど、食べない?」


八幡「食べない」


結衣「即答!?」


雪乃「私、急用を思い出したから帰るわ」


結衣「ゆきのんまで!? もー、あれからいっぱい練習したんだから!」


いろは「あ、じゃあわたしいただきます!」


結衣「いろはちゃーん」ダキッ


八幡「やめとけ、一色。命に関わるぞ」


雪乃「そうね。後輩の葬式になんか、出来れば出たくないものね」


結衣「二人共言い過ぎだからぁ! ほら見てよ、美味しそうでしょ?」


雪乃「あら、本当……見た目はクッキーね」


八幡「ちゃんと毒味はしたのか?」


結衣「味見ね、あ・じ・み!!」


いろは「ではではー、私が一番手を……」パクリ


いろは「……」モシャモシャ


八幡「大丈夫か? 意識はあるか? 記憶はあるか? 俺が誰だかわかるか?」


いろは「うわっ、貴方誰ですか気持ち悪い。目が腐りすぎてます」


八幡「よーしよくわかった、戦争だ。表出ろ」


いろは「あ、でもクッキーは普通に美味しいですよ。先輩方が脅すからちょっと身構えちゃいましたよー」


雪乃「そうね……では私も」


雪乃「奇跡って起こるのね…….」


八幡「わかった……俺も男だ。覚悟を決めた」


結衣「私の料理って、死地に赴くレベルのことなの!?」


雪乃「あら、よく赴くなんて難しい言葉知ってたわね」


結衣「バカにしすぎだからぁ!」


八幡「……モグモグ」


八幡「あ、美味い」


結衣「でしょでしょ!? よかったー」


いろは「これだけ作れるなら、好きな人の胃袋も掴めそうですよねー」


結衣「えっ、ええええ!? な、何言ってるのいろはちゃん! ……でもまだ、クッキーしか作れないんだぁ」


いろは「最初はみんな、初心者なんですよ? これからじゃないですか、結衣先輩!」


結衣「いろはちゃーん!」ダキッ


八幡(よーやるわ、あいつ……)


雪乃「由比ヶ浜さん。私と一つ、約束してくれないかしら」


結衣「なーに、ゆきのん?」


雪乃「新しい料理を作る時は、必ず私に相談して頂戴。決して、一人で勝手に始めないこと」


結衣「ゆきのん。遠回しにバカにしてない?」


八幡「待て。まさか、毒死役は俺じゃないだろうな?」


雪乃「当然あなたよ。もう半分死んでいるようなものなのだから、いいじゃないの」


結衣「毒死!? 酷くなってない!!? 味見だからぁ!!」


いろは「まぁまぁ。また、わたしが顔を覗かせますので! その時に作りましょうよ」


結衣「い、いろはちゃーん!」ダキッ


いろは「毒味役、引き受けますので!」


結衣「いろはちゃん!?」


八幡(なんだかんだで……一色のやつ、入り浸ってやがるな)


【やはり一色いろはは顔を覗かせる 】 終


やたら一色いろははメールする


 トラワレーター クーツジョクーハー

 ハンゲキーノー コーウシーダー


八幡「俺のケータイにメール……だと?」


八幡「などと、数年前の俺なら言っていただろう。なぜならメール相手なんて、メーラーダエモンさんか、欲求不満の人妻さんくらいだったからな」


八幡「しかもどちらも、一方的に送りつけてくるだけ。返信はしたことがない」


八幡「今は違う」


八幡「別に欲していないが、由比ヶ浜がしょっちゅうメールしてくるからな。別に欲してなんかないんだからね!」


八幡「後は平塚先生と、戸塚と、大天使小町と、稀に雪ノ下。っべー、俺ってマジリア充っべー」


八幡「だがこの着信音は誰に設定したっけか? 忘れたぞ」ケータイポチー


差出人:一色

件名:やばいです先輩、やばいんですー


八幡「一色かよ! いつアドレス交換したのか覚えてねぇぞ。駆逐してやろうか?」


 トラワレーター クーツジョクーハー

 ハンゲキーノー コーウシーダー


八幡「!!?」


差出人:一色

件名:ちょっと! 既読スルーしてますよね!?


八幡「なんで分かるんだよこいつ、エスパーかよ。今流行のリア充御用達ツールでもねぇのに」


八幡「まぁいい、無視したら何言われるかわかったもんじゃねぇ」


本文:ともかく、最初に送ったメール見て下さいよー。

    PS.わたし専用の着メロ、何にしてます(*^^)?


八幡「でもなぁ、件名からして不穏な空気なんだが……仕方ねぇ」


本文:この前の放課後デートでスタバ、連れて行くの忘れてましたー(。-人-。) ゴメンナサーイ


八幡「しょーもねぇ……これはスルーだな」ゾクゥ


八幡「何だ今の悪寒!? 返しとこう」


――


――――


――――――


 ピロリロリロ


いろは「あっ、先輩から返信きた♪」


差出人:比企谷先輩

件名:なし

本文:しょーもねぇ内容だな。後、お前の着メロは進撃◯巨人のオープニングだ。


いろは「うわっ、短っ! あと色々酷い!」


――


――――


――――――


  トラワレーター クーツジョクーハー

  ハンゲキーノー コーウシーダー


八幡「返信はえぇな……どれどれ?」


本文:しょーもないってなんですかーヽ(`Д´)ノプンプン

    ま、忘れてたものはしかたないです。今度また、一緒に行きましょうー。

    あとあと、本当にわたし専用の着メロ設定してくれてるんですね♪

    チョイスはちょっとあれですけど……(;・∀・)


――


――――


――――――


 コンナレプリカハ イラナイ

 ホンモノトヨベルモノダケデイイ

 サガシニイクンダ ソコヘー


いろは「わたしも先輩専用の着メロにしてみたけど、我ながらぴったりなチョイス。本物……かぁ」


いろは「それで、肝心の本文は?」


本文:今度な、今度。後、着信音に深い意味はねぇ。


いろは「また短っ!?」


――


――――


――――――


 トラワレーター クーツジョクーハー


八幡「なにこの返信の早さ? 俺じゃなかったら勘違いして悶えてるレベルだよ。ハートとか付いてたら役満だ」


本文:先輩、返事短いですよーo(`ω´*)oプンスカプンスカ!!

    しかも絵文字も顔文字もないから、怒ってるみたいだし……

    可愛い女の子とメールしてるんですから、もっと気を配ってくださいよ(ハート)


八幡「役満じゃん。マジでいろはすあざとい」


――


――――


――――――


 コンナレプリカハ イラナイ


いろは「おっ、珍しく早めの返信。もう夜の11時なのに、先輩元気だなー」ドレドレ……?


本文:あざといな(((( ´,,_ゝ`)))) ププッ プルプルッ


いろは「なにこの顔文字のチョイス!?」


 コンナレプリカハ イラナイ

 ホンモノトヨベルモノダケデイイ


いろは「あれ、追撃? 珍しいなぁ」


いろは「そんなにわたしとメールしたいのかな? なーんて」


本文:寝ろよ、そろそろ。夜更かしは美容の大敵ってばっちゃが言ってた(#゚Д゚)ゴルァ!!


いろは「顔文字使ってもキレてるよこの人!?」


――


――――


――――――


 トラワレーター


八幡「そろそろ終わりたい、とか言ったら怒られるかな? いや、そこまで気を遣う必要ないだろ、一色だぞ」


本文:ちょ、顔文字が基本煽り系じゃないですかー!

    追撃来て、一瞬トキメキかけたのに……(´・ω・`)

    あ、でも勘違いしないでください。本気じゃないのでごめんなさい、今は諦めて寝てください。


八幡「こいつ……」


――


――――


――――――


 コンナレプリカハ イラナイ

 ホンモノトヨベルモノダケデイイ

 サガシニイクンダ ソコヘー


いろは「寝るって言いながらも、律儀に返信してくる先輩かわいい」


本文:寝ます。


いろは「……もう、何も期待しないほうがいいんだろうなー。って、いやいや、元から何も期待なんてしてないから!」


――


――――


――――――


 トラワレーター クーツジョクーハー


八幡「あの短さのメールにも返信するのか……リア充ってスゲェ。感心を通り越して返信しそうだ。……なに言ってんだ俺」


本文:まぁ、もういい時間ですもんねー(*´ω`*)

    私もそろそろ寝る準備にします。おやすみなさい、先輩っ♪

    あ、またメールしますねー(^^)/~~~


八幡「これは返さなくてもいいだろう……いいよな?」


八幡「メールってやめどきがわからん。クエスチョンマークで返せば返信が貰えるコツなんだろ? なら何もなかったら普通返信しねぇんじゃないの?」


八幡「ま、俺なんてクエスチョンマークつけても返ってこねぇけどな」


八幡「でも大丈夫。翌朝ちゃんと、「ごめん、ずっと寝てた!」って謝ってくれるから」


八幡「そして俺は決まって、こう返すんだ」


八幡「午後6時に寝てるとか、早寝だな」


八幡「……と」


八幡「なのに一色は律儀にも返してきた。それが素なのか計算なのかは知らんが……」


八幡「……寝よ」


【やたら一色いろははメールする】 終


いつもなら、比企谷八幡は一人飯を食う


戸部「っべー昼飯食うべ!」


大岡「おう」


葉山「俺、パン買ってくるよ。先に食べててくれ」


八幡(なんだよっべー昼飯って。そんなにお前の昼飯はやばいのか。爆発でもしろ。つまりリア充爆発しろ)


三浦「ゆいー。今日はこっちで食うん?」


結衣「うん、ゆきのんとは今日は約束してないし」チラッ


八幡(なに? なんで一瞬こっち見たの? 目と目が合う瞬間、好きだと気づいたの?)


八幡「トイレ行こ」


八幡(などと呟きつつ立ち上がる俺。これでみんな、俺が一人で飯を食うなんて思わない)


八幡(と、信じていないとやっていられない。八幡泣いてない)


 ~八幡ベストプレイス~


八幡「やはりここが落ち着く」


八幡「心地良い風が時折、俺の心をも乾かしてくれる」


八幡「そりゃあ乾いた笑いしか出てこなくなるってもんだハハハハハ」


いろは「独り言でまで気持ち悪いとか、先輩の存在意義って何なんですか?」


八幡「うおっ、誰だ俺のベストプレイスに足を踏み入れる一色は!」


いろは「一色言ってるじゃないですか……やっはろーです、先輩♪」


八幡「はいはいやっはろーやっはろー」


いろは「おざなり過ぎません? そんなだから友達いないんですよー」


八幡「ふっ、甘いな一色。俺は友達がいないんじゃない。作らないんだ」


いろは「は?」


八幡「やめて。素のリアクションやめて。トラウマが呼び起こされすぎてタイムスリップするレベル」


いろは「まぁどーでもいいんですけど」


八幡「そもそも、友達ってなんだ。知り合いと友人の線引ってなんだ。そんな曖昧な定義に拘らなければならないのが友人ならば、俺は友人なんていらない!」


いろは「正確な定義なんて知りませんけどー。わたしの場合、プライベートなメールや電話のやり取りが出来るかどうか、ですかねー」


八幡「その理論だと俺、一色の友達になっちゃうけど?」


いろは「うわ、撤回します。最悪です」


八幡「わー清々しいこの子。涙出てきちゃう」


いろは「あ、ちょっとがっかりしちゃいました? うそうそ、冗談ですよー。嫌いな相手にメールなんてするわけないじゃないですかー」


八幡「狙った上目遣いやめれ。俺じゃなければ平塚先生が嫉妬で爆発してるところだ」


いろは「ちょっと、勘違いとかやめてください。そんなんじゃないんでまだ踏み込んじゃダメですごめんなさい」


八幡「お前に振られる回数の増加ペースが、今まで食べたパンの数を追い抜くんじゃねぇかとたまに思う」


いろは「平塚先生はさておき、先輩。お弁当食べましょう。お昼が終わってしまいます、ので」


八幡「食べればいいじゃん」


いろは「先輩と! 一緒に食べるんです」キャハ


八幡「俺の好感度稼ぎに来てどうするんだよ……葉山にやれ、葉山に」


いろは「やだなぁ先輩の前では8割以上が素ですよ、素。葉山先輩に対しては今、あえて距離を取ることで嫉妬心を刺激しよう作戦の実行中です」


八幡「計算深いしあざといし、この悪女が。純粋無垢で天使な小町の爪の垢を煎じて飲め」


いろは「天使お手製のお弁当ですか? それ」


八幡「そうだ。小町が俺のために拵えた真心こもった弁当だ」


いろは「うわっ、シスコンキモいマジキモイ……」


八幡「ばっかお前、千葉の兄はみな妹好きだぞ」


いろは「千葉県民全員を勝手に巻き込まないでください。それはさておき、先輩。早くお弁当開いたらどうです?」


八幡「お前がいると開きにくいんだけど」


いろは「あ、ならわたしも開きますし。それなら大丈夫でしょう?」


八幡「だから持ち場に戻……もういいわ。どうせ聞く耳持ってねぇんだろ」


いろは「ふふふ、よーくお分かりじゃないですか」


八幡「弁当食お……」パカリ


 白米《こんにちは!!》


八幡「白米オンリー!? 小町いいいいぃぃぃぃぃ! おかずうぅぅうぅぅぅぅ!」


いろは「やだ先輩、昼から下ネタですか? 小町ちゃんの名前の後におかずとか叫んでたら、補導されてしまいますよ。というか、むしろされてくださいお願いします」


八幡「いや、マジで白米しか入ってねぇんだけど!? どうすんの、どうすんの俺!?」


いろは「ふっふっふー、そんなこともあろうかと!」パカーッ


いろは「わたし、多めにおかずを作ってきました!」


八幡「なんだ、魅せつけて自慢してんのか? 畜生の所業だな」


いろは「ちっ、違いますって! 先輩に分けてあげようと思ってたんです!」


八幡「は?」


いろは「キャハ♪」


 ブー ブー

 ブー ブー


八幡「お、小町からメールだ」


差出人:LOVE小町

件名:そろそろお昼ごはんだよね

本文:気を利かせて、今日は白米だけにしといたから!

    一色さんによろしくね、お兄ちゃん!

    あ、この気遣い小町的にポイント高い!


八幡「小町いいいぃぃぃぃいいっぃいぃ!」


いろは「ま、そういうことです。最初から、私がおかずを多めに作ってくることは決定事項だったんですよー」


八幡「一体何が目的だ……金か、金が欲しいのか!」


いろは「先輩、取り乱しすぎですって」


いろは「わたしが先輩と食べるためにお弁当作ってきたのなんて、理由は一つに決まってるじゃないですか」



いろは「先輩と、一緒に食べたかったんですよ。食べて欲しかったんですよ、わたしの料理」



八幡「…………」


いろは「…………」


八幡「…………」


いろは「……………ちょ、な、なんか言ってくださいよ!///」


八幡「それは素か? それとも演技か?」


いろは「言うに事欠いて……そんなの、決まってるじゃないですか♪」


八幡「やっぱり演技か、このやろう。 ま、わかってたけどよ。……いただきます」


いろは「あ、はい。どうぞ召し上がってください」


八幡「…………モグモグ」


いろは「ど、どうですか?」


八幡「小町の方が美味い」


いろは「そんなばっさりと!?」


八幡「小町からの愛情の分だけ、小町の勝ちだ」


いろは「先輩、それって……」


八幡「いいから、早く食おうぜ。昼休み終わっちまう」


いろは「あ、そうですね! いっただきまーす♪」


 ア、ソノウインナーハワタシノ!

 ソレハシラン メニツケタモノノショウリダ

 ウウ……コノセンパイ、キチクダ。ヒトデナシダ。


平塚「ふんっ、あんなイチャコライチャコラしてたら、どのおかずも甘ったるしくて食えたもんではなかろう!」


平塚「つまり私の昼食である、コンビニの冷やし中華こそ至高」


平塚「冷たい……冷たい、なぁ…………」ズルズル


【いつもなら、比企谷八幡は一人飯を食う】 終


先輩を射抜きます 2


~奉仕部部室~


いろは「先輩を射抜きます!」


八幡「またか。だからなんなんだよそれは。いくら目が死んでるからってトドメ刺す必要なくない?」


いろは「ふっふっふー、意味なんて瑣末な問題ですよ先輩」


八幡「瑣末な問題に付き合うほど暇じゃねぇんだよ。剣豪将軍からのメール返信の役目を押し付けられてんだ」カタカタカタ


 ガラガラッピシャッ


結衣「い、いろはちゃん、今なんて……」ワナワナ


八幡・いろは「「え?」」


結衣「ヒッキーの命が危ない! ゆきのーん!!」


八幡「やべぇ、由比ヶ浜のやつ、アホだから真に受けてる」


いろは「え、真に受けてるって、わたしが先輩を射抜いて殺害するとかですか? いくら結衣先輩がアホでもそれは……」


八幡「あるんだよなぁ。いいから追いかけて誤解を解いてこい!」


いろは「えー。わたしが行くんですかー?」


八幡「元凶お前じゃん……」


いろは「仕方ないですねぇ」


八幡「雪ノ下の耳に入ったら、どれだけお説教されるかわからんぞ。放課後潰したいのか?」


いろは「あ、それは嫌ですごめんなさい。行ってきますー」


 ガラガラッピシャッ


八幡「まったく、タイミングの悪い……」


八幡「さて、これで誰もいなくなった」


八幡「由比ヶ浜は雪ノ下を探しに、一色は雪ノ下を探しに行った由比ヶ浜を探しに行き、雪ノ下は購買に行った由比ヶ浜の帰りが遅いのを心配して由比ヶ浜を探しに行ったからな」


八幡「やべ、我ながら自分のセリフの中で雪ノ下と由比ヶ浜がゲシュタルト崩壊を起こしそうだ……」


八幡「気を取り直して、材木座……剣豪将軍のお悩みメールでも返すか」


 カタカタ

 カタカタカタ


八幡「…………ふぅっ。こんなもんか」ノビー


いろは「だから、深い意味は無いんですよ」


結衣「冷静に考えたらそうだよねー。いろはちゃんがヒッキーを……なんて」


いろは「そうですそうです。大体、結衣先輩こそどうなんですか? 先輩のこと……」


結衣「えっ、いやいやいや、いやいやいやいや! そんなことないからぁ!///」


八幡(でっけぇ声で話しながら、帰ってきたぞ姦しい娘共が)


 ガラガラッ


いろは「えー? だって誰が見てもそう思いますよー?」


結衣「そ、そうかなぁ……」


雪乃「……廊下でくらい、静かに歩けないものかしらね」


いろは「ごめんなさーい」


結衣「ごめんね、ゆきのん。あ、ヒッキーおつかれ!」


八幡「つーか何の話してたんだよ。深い意味は無いとか、由比ヶ浜の方こそどうとか……」


結衣「なっ、なんでもないからぁ!」


いろは「うわっ、盗み聞きとか先輩キモいです」


八幡「盗んだわけじゃねぇから。これはいわば、突然俺の手を掴んだ女が、自らのケツに俺の手を当て「痴漢よー!」って叫んでるようなもんだから。濡れ衣もいいとこだぞ、逆痴漢共が」


雪乃「例えが長いわ」


八幡「お前らの方が問題だろうよ。学校の廊下で、俺を射抜いて殺害する計画立ててたんだろ? そんなことしなくても、すでに目は死んでいる。心も死にかけているから、気付かないうちに森の肥料に変わるって」


いろは「自虐はやり過ぎもNGだと思うんですけど」


結衣「はは、でもヒッキーだから……」


いろは「結衣先輩は、先輩に甘いですねー」


結衣「そっ、そんなことないから! そう見えるにしても気のせいだから!」


八幡(ナチュラルに俺の存在を忘れて、俺の話をしてやがる)


八幡(やだ、俺ってマジで幻のシックスメン)


雪乃「それで、ゴミ谷くん」


八幡「罵倒が直接的すぎんだろ」


雪乃「剣豪将軍のメールは片付いたのかしら?」


雪乃「彼、無駄に添付ファイルを送ってくるものだから、容量をたくさん使ってPC効率が悪くなるのよ」


八幡「心配すんな、1,2通返して後は全部削除した」


結衣「あっ、ヒッキー仕事終わったんだー。結構な量だったでしょ?」


八幡「まぁな。だが俺のぼっちスキルを遺憾なく発揮すれば、どうということのない量だ。ぼっちで仕事をすることに関して、俺の右に出るものはいない」


いろは「なんでそこに誇りを持ってるんですかこの人」


結衣「ねぇ、ゆきのん」


雪乃「何かしら」


結衣「今日はもう依頼者もこなさそうだし、お開きにしない? いろはちゃんもいることだし、せっかくだからみんなでカラオケでも行こうよ」


雪乃「依頼主が来なくとも、部活の時間なのだけれど……」


結衣「そこをなんとか! お願い、ゆきのん!」


雪乃「しかしね、由比ヶ浜さん……」


八幡「ま、いいじゃねぇか。行ってこいよ、雪ノ下」


雪乃「比企谷くん、貴方まで」


八幡「お前だって、ろくにストレス発散してねぇだろ?」


雪乃「いえ、それに関しては比企谷くんで間に合っているわ」


八幡「どういう意味ですかね? あたかも俺でストレス発散してるみたいに聞こえるんだけど? ……ま、俺1人いれば十分だろ。行ってこいよ」


いろは「え、先輩は行かないんですか?」


八幡「俺が行く理由がどこにあんだよ。俺が残ることにより、奉仕部の活動も切り上げる必要がなくて、一石二鳥じゃん」


いろは「別に二つも鳥を落としている感じではないですが……」


八幡(そりゃ、俺にとって行かなくてすむ&好きなタイミングで切り上げられるの一石二鳥だからな)


 イージャンユキノーン

 ハァ……シカタナイワネ

 ヤッター!


いろは「これが先輩の、“本物”ですか?」ボソッ


八幡「おまえ、それやめろっての!」


いろは「先輩がいつまでも素っ気ないと、こうやって無理やり攻撃しちゃいますからね」


八幡(防御力上げなきゃ……矢も弾けるくらいに)


結衣「というわけで! カラオケ大会、けってーい!!」


いろは「いいですねー! 楽しみです♪」


雪ノ下「じゃあ、行くとしましょう。……ね、比企谷くん?」


八幡「え、なんで? なんで俺まで?」


八幡(行かねぇって意思表示だったが……もう無駄か)


【先輩を射抜きます 2】 終


そして一色いろはは赤面する


いろは「もうすぐ卒業のシーズンが来るんですよ、先輩」


八幡「そうだな」


いろは「感慨深くないんですか? この人でなし」


八幡「お前、わかって言ってんだろ? 友達どころか知り合いすらいない人間が、赤の他人の卒業で泣くか? 否、泣かない」


いろは「昔は知らないですけどー。今は先輩、明らかにリア充じゃないですかー」


八幡「俺のどこがリア充だ」


いろは「美人の同級生、可愛いクラスメイトに囲まれた部活動を謳歌してて。後、愛しい後輩に慕われてるじゃないですか♪」


八幡「誰の事を指してるのかわかんね。で、お前がわざわざ俺のとこに来たってことは、どうせまた面倒事を持参したんだろ? 正直に言ってみろ、お兄さん怒らないから」


いろは「わー頼れるぅー。この調子でお願いしますね!」


八幡「受けないと帰らねぇだろお前……で、なんだ?」


いろは「いやー、というのもですね。そろそろ送辞の文章を考えたり、卒業式の段取りを組んだりしないといけないわけですよ」


八幡「ま、生徒会長の役目だな。特に送辞」


いろは「それで、わたしって国語苦手じゃないですか?」


八幡「いや、知らんし。嫌な予感はするけど知らんし」


いろは「先輩、おっねがいしまーす!」


八幡「知らん。書かん。そもそも、テンプレートとか用意されてるだろ、そんなもん」


いろは「えー、でも、せっかく1年生生徒会長って箔が付いてるんですよ? 変わったことをして、少しでも印象よくしたいじゃないですかー」


八幡「あ、そう。また葉山か。好きだねぇお前も」


いろは「別に、葉山先輩だけってわけじゃないですけどー。ま、そゆことです♪」


いろは「ってことなんで、先輩に文章の制作を依頼したいわけです」


八幡「ならなおさら、俺じゃないほうがいいと思うんだが。雪ノ下の方が文法や語彙に関しては一枚上手だぞ」


いろは「でも、雪ノ下先輩だとどうしても堅いだけの文章に鳴りません?」


八幡「うむ、一理ある……」


いろは「そこで! 普段から考えが捻くれてて……いや、アイデアマンの先輩に頼もうと思い立ったわけですよ!」


八幡「今、捻くれてるって言いかけたよね? うん、正解だけどね」


いろは「だからおねがいしますよー、せんぱーい」


八幡「そんな甘えた声を出したところで俺がなびくと思うか?」


いろは「小町ちゃんに聞いたら、先輩は妹属性で落とすのが効果的って言ってました」


八幡「小町め……兄の性癖をよくわかっている」


いろは「あ、性癖とか言っちゃうんだ……」


八幡「世の中の兄はみんなシスコンだからな。もはや性癖と言っていい次元にある」


いろは「うわっ」


八幡「ガチの引くのやめない? 慣れてても心に突き刺さるんだよ?」


いろは「大丈夫です、親しみを込めた引きですから」


八幡「引いてるのには変わりないってことだな、それ。了解、理解した」


いろは「で、手伝ってくれるんですか? くれないんですか?」グイッ


八幡「なんでちょっとキレ気味なんだよ……わかったわかった、手伝ってやるから顔を近づけんな」


いろは「なんなら、このままキスしますか? 報酬です」


八幡「なっ……」


いろは「冗談ですよ、先輩♪ あはは、なんで本気で顔真っ赤にしてるんですかー?」


八幡「俺の108あるトラウマの1つをほじくり返すのやめてくんない?」


いろは「ふふ……あー、楽しい」


八幡「え?」


いろは「あ……い、いえ、なんでもないです! 忘れてください!」///


いろは(わ~~~~~/// しまったしまったしまった! 今の、本当に素だった! 先輩とのこんないつものやり取りが楽しいって! 油断したぁ///)


八幡「俺のトラウマほじくるのが楽しいとか、とんだドS後輩だな。…………まぁ、あれだ。手伝うわ」


いろは「は、はい、ありがとうございます……///」


いろは(恥ずかしいなぁ……もう!)


【そして一色いろはは赤面する】 終


同時に少女たちも卒業する


~卒業式前日・夜~


 prrrrrrr

 prrrrrrr


八幡(電話?)


八幡(うわっ、一色だ)


 prrrrrrr

 prrrrrrr


八幡(はぁ……出るしかねぇよな)


いろは『やばいです先輩』


八幡「開口一番に何だ。いつものあざとさはどうした、いろはす。むしろあざはす」


いろは『は? ちょっと意味わかりませんが……とにかく、今はガチやばいって感じですね』


八幡「まさかとは思うんだが、お前……送辞、出来てないのか?」


いろは『ギクッ』


八幡「いや、卒業式前日にわざわざ電話してくるなんて、悟ってくれって言ってるようなもんだろ」


いろは『あはは~……まぁ、そうですね』


八幡「ちっ……元気ねぇな。どうした」


いろは『舌打ちが無ければなぁ~、少しはトキメキポイントなのにこれじゃダメですごめんなさい。……送辞、もう8割は完成しているんです。けどどうしても、最後だけ納得できなくて』


八幡「と、言うと?」


いろは『ほら、先輩にかなり手伝ってもらって、大筋は出来てたじゃないですか?』


八幡「ああ……結局、雪ノ下にも手伝ってもらったがな」


いろは『雪ノ下先輩にも、また改めてお礼しなくちゃですね~。で、肝心の送辞なんですけど、平塚先生にも現時点でオーケーを貰ってるんです』


八幡「ん? ならもう完成じゃないのか」


いろは『ただあえて言うなら、オリジナリティがない。ってバッサリ言われちゃいましてー……」


八幡「それで凹んでんだな、珍しく」


いろは『はい、そうなんです凹んでるんです~。慰めてくれます?』


八幡「それは断る」


いろは『なんでですかー!』


いろは『ともかくですねぇ……そのオリジナリティの部分をなんとか修正したいんですよ』


八幡「だが、前日になっていきなり変えるのはまずいだろう。私物化していいものじゃない」


いろは『そう、ですよね……』


八幡「ああ、そうだ。ま、卒業式なんてただの儀礼だ。こういう儀式を介して感情を揺らし、意図的な感動を生み出すための作り物だ。作り物に踊らされて、いい想い出にだったなんて安っぽい涙を流すんだ。本物に酷似した涙をな」


八幡「だからそこに、あくまで脇役である在校生の存在感なんて不要だ。主役たちが勝手に雰囲気で泣いてくれる」


いろは『先輩…………さすがにそこまで言っちゃうとドン引きです』


八幡「マジトーンのまま言及はやめてくんない? 本物の涙、流しちゃうぞ?」


いろは『でも、わかりました! このまま、ほぼテンプレートな送辞でいきます!』


八幡「ああ、そうしろ。じゃあもういいな、切るぞ」


いろは『え、せっかくですしこのままおしゃべりの流れじゃないですか?』


八幡「このままおしゃべりの流れじゃないですね」


いろは『えー、先輩もったいないなぁ。可愛い後輩がこんな時間に電話してきて、何もないなんて』


八幡「よし、切ろうか」


いろは『あー、待って待って! 待って下さいって!』


八幡「なんだよ……まだなんかあんのか?」


いろは『その、ありがとうございました』


八幡「お、おう……まぁなんだ、明日、がんばれよ」


いろは『はい! では、おやすみなさい♪』


~翌日・卒業式当日~


――――――どうか、皆さんにとって、本物と呼べる場所を探してください。


――――――卒業生の皆さんにとっても、在校生のわたしたちにとっても。


――――――今日は、卒業式なんです。


――――


――





《自販機》


結衣「いろはちゃん、おつかれさま!」


いろは「ありがとうございます。緊張しましたー」


結衣「ジュース? 奢ってあげるよ!」


いろは「え、いいんですかー?」


結衣「お姉さんに任せなさい! なんて。いろはちゃんがんばったから、ね」


結衣「ね、いろはちゃん」


いろは「はい?」


結衣「今、時間あるかな?」


いろは「大丈夫ですよ。諸々の雑務は片付きましたし、わたしも帰り支度をしようかってところでしたから」


いろは「結衣先輩は? 奉仕部の方はいいんですか?」


結衣「ゆきのんもヒッキーも、相変わらず本読んでるからさ。暇で暇で」タハハ


いろは「あの2人らしいですねぇ……」


結衣「2人共、先輩の知り合いなんて城廻先輩くらいしかいないからねー。さっき、挨拶にきてくれてたよ」


いろは「あ、そうなんですか」


結衣「じゃあ、ちょっと座れるとこに行かない?」


いろは「もち、オッケーですよ!」


――――――


――――


――


結衣「ね、いろはちゃん」


いろは「?」


結衣「送辞……いろはちゃんが考えたの?」


いろは「いえ……本当のところ、8割はテンプレと先輩方の助力のおかげです」


結衣「後の2割って?」


いろは「そこは……お恥ずかしながら、わたし、です。ちょっと参考にしたフレーズもありますけど。独断で、加えました」


結衣「本物……ってとこ?」


いろは「あはは、さすがは結衣先輩……察しの良さは折り紙つきですねー」


結衣「わかるよ……きっと、ゆきのんも。ヒッキーも。だから今日、みんな奉仕部に集まったんじゃないかな」


いろは「え?」


結衣「だって、卒業式だよ? 部活は、休みなんだもん」


いろは「あ……」


結衣「きっと2人共、思うところがあったんじゃないかな」


いろは「結衣先輩も、ですか?」


結衣「うん」


いろは「いやー、なんか照れますねー」


結衣「私もさ……ちゃんと本物を、手に入れたいなって思ったんだ。遠慮しないのも、本物の証だと思うからさ」


いろは「…………」


結衣「もう、壊れないよ。きっと、何があっても。そんな本物は、手に入ったからさ。もう1つ、ほしいと思ってる本物をね、手に入れたいんだ」


結衣「いろはちゃんの演説が……そう、思わせてくれたんだよ」


結衣「私達在校生にとっても、卒業なんだよね?」


いろは「……結衣先輩は、好き、ですよね? 彼のこと」


結衣「目が腐ってて。性根が腐ってて。いつもいつもわけのわからないことを言って。そうやって、周りから距離を取ってきた」


結衣「けど、本当は違う」


結衣「彼は……ヒッキーは、ヒッキーだって、ちゃんと人間なんだ。辛いと思うし、悲しいと思うし、苦しいとも思うはずなんだ」


結衣「だから出来るなら」


結衣「私が、ヒッキーの居場所になりたい」


結衣「本物の、居場所に」


いろは「隠さないんですね」


結衣「隠さないよ。私だって、ちゃんと人間だから」


結衣「周りの空気を読むだけが取り柄なのに、それを投げ捨ててまですることなのかなって、思ってたこともあったけど」


結衣「うん、好きなんだよ。やっぱり。だから、負けたくないんだ」


結衣「ゆきのんにも…………いろはちゃんにも、ね」


いろは「……っ!?」


結衣「好きなんでしょ、ヒッキーのこと」


いろは「え、は、いや!? いやいやいや、そんな、わたしにはまだ早いですそんな勘違いを広めないでください今は無理ですので」


結衣「ふふ……いろはちゃんとヒッキーて、何気に似てるよね」


いろは「えー……それって、わたしが目が腐ってて、性根が腐ってて、いつもわけのわからいことを言ってるってことですかー?」


結衣「そうじゃないけど。……うーんなんて言うのかなー?」


いろは(うんうん唸る結衣先輩は、素で可愛い)


いろは(わたしと違って、計算とかされてなくて、自然で)


結衣「いろはちゃん、なんで笑ってるの?」


いろは「いえ、なんでも」


結衣「うーん……」


いろは(ただ、うん)


いろは(わたしも、わたしがわたし自身でいられる場所を)


いろは(本物のわたしでいられる居場所を、見つけたい、なんて)


いろは(思ってしまったから)


いろは「行きましょう、結衣先輩」


結衣「え?」


いろは「奉仕部の部室、です。お菓子とジュース、買い足して」


結衣「何するの?」


いろは「二次会、ですよ。読書中の2人も強制参加で」


結衣「あ、いいねそれ! やろうやろう!」


いろは「ええ、いいですよね! なんせ――――」



いろは「――――今日は、卒業式なんですから」


【同時に少女たちも卒業する】 終


そして奉仕部に、春一番が吹き込んでくる


~4月~


ガラガラピシャッ


八幡「うーっす」


結衣「あっ、ヒッキーやっときた! もー、今日はお祝い事が2つ重なったから、早く来てってメールしといたのに!」


八幡「ん? ああ、ホントだ……」ケータイパカー


結衣「えっ、見てなかったの!?」


八幡「俺にメールを送ってくる人間がいないのが悪い。メーラーダエモンさんが一番の親友まである」


結衣「あたし、結構送ってると思うんだけどなー?」グイッ


八幡「近い近い近い良い匂い」


結衣「ヤダ、ヒッキーのエ、エッチ!」


八幡「近づいたのお前じゃん? なんで責められるの俺なの?」


雪乃「その卑猥な目が元凶よエロ谷くん」


八幡「なんでお前、俺の中学生の頃のアダ名知ってんの? 実は雪ノ下は同級生だった……?」


雪乃「あなたと同級生だなんてやめて頂戴。虫唾が走るわ」


八幡「現在進行形で同級生なんですがそれは……」


結衣「ヒッキー、ちゃんとプレゼント持ってきた? 持ってきたよね!?」


八幡「プレゼント? ……なんだっけか」


結衣「え、ほんとに忘れてたの……?」


八幡「…………」(汗)


雪乃「肝心なところで愚かねこの男は……」ハァ


八幡「い、いや、わざとだ。物じゃないプレゼントをちゃんと用意するつもりなんだ」


結衣「ま、とりえあず主役を呼んでくるよ……ヒッキー、ほんとなんとかしなよ?」


八幡「だ、だからちゃんと考えてるって」


雪乃「バカね……」


~数分後~


結衣「じゃ、お待ちかねの主役だよ! 2人共、入って入ってー!」


小町「こんにちはー、雪ノ下先輩! あと、ごみぃちゃん」


八幡「おかしいな。妹からの愛を感じられない」


いろは「シスコン?」


八幡「お前はお前で、ナチュラルに入ってきてないで、なんか言えよ……」


いろは「あはっ、そうですね♪ 今日はわたしと小町ちゃんのために、わざわざパーティーを開いてくれてありがとうございます!」


雪乃「大したことは出来ないけれど……こ、後輩のためだし」


結衣「ゆきのん……」ウルウル


八幡「おいおい、珍しいな。氷の女王、雪ノ下がそんなこと言うなんて。なんだ、明日は吹雪か?」


雪乃「春に吹雪なんてあるわけないじゃない」


八幡「そんなマジレスすんなよ……あれだよ、花吹雪的なやつだから。おっしゃれー」


小町「は?」


いろは「は?」


雪乃「はぁ?」


八幡「なにその連携。何シールド21? ハァハァ三兄弟とか誰が知ってんの今」


結衣「や、やっはろー!」


八幡「困ったらやっはろー言うのやめない?」


結衣「ま、まぁとにかく。今日は小町ちゃんの入学&奉仕部入部の歓迎会と、いろはちゃんの誕生日パーティを兼ねてのお祝いの席だから!」


結衣「はい、お祝いに三三七やっはろー!」


八幡「早口言葉かよ!」


小町「やっはやっはやっはろー!」


いろは「やっはやっはやっはろー!」


結衣「やっはやっはやっはやっはやっはやっはやっはろー!」


雪乃「やるのね……やってて恥ずかしくないのかしら」


いろは「す、少し……先輩、恥ずかしいので背中貸してください隠れます」カクレ


小町「いろは先輩に同じく!」カクレカクレ


八幡「一色はやめろあざとい。小町は許可する可愛い」


いろは「先輩ー。それ、わたし的にポイント低いですよー?」


小町「小町的にも低い! お兄ちゃんの晩御飯から肉だけ抜いとくね」


八幡「やめろぉ! やめてくださいお願いします」


雪乃「……こほん。仕切り直すわね。改めて小町さん、一色さん。おめでとう」


小町・いろは「「ありがとうございます!」」


結衣「うんうん、2人共おめでとう! 後、小町ちゃんはようこそ、だね」


雪乃「あまり良いものではないけれど、プレゼントを用意したわ」


結衣「あ、私もー。2人はいっぱい持ってると思うけど、ブレスレットだよ!」


いろは「どれどれ……わぁ、さすが結衣先輩! いいセンスしてますね♪」


小町「あっ、可愛いー! 小町的にポイント高いです!」


雪乃「私からは参考書……は流石にやめておいたわ。マグカップを用意したの」


いろは「あ、もしかして……」


雪乃「ええ。よかったら、奉仕部で使ってもらえたら、と。一色さんもよく訪れるのだから、いつまでも紙コップじゃ悪いもの」


いろは「嬉しいです。凄く、嬉しいです」


小町「小町も大切にしますね!」


いろは「で……この流れだと、先輩も用意してくれてるんですかー? してくれてるんですよねー?」


八幡「当然だ。俺くらいになると、1年前から翌年の小町の誕生日を心待ちにしてるまである。というわけで、小町はまた次の休み、何か買いに行くぞ」


結衣「用意してないじゃん!?」


小町「ごみぃちゃんはいつもこうなので……ま、好きなもの買えるので都合はいいのです」


結衣「小町ちゃんがいいならいいけどさ……」


いろは「ね、先輩。先輩、わたしのは?」クイックイッ


八幡「やめろ上目遣いで袖を引っ張るな。可愛いから勘違いしそうになる」


いろは「勘違いとかガチでやめてください困ります」


八幡「してねぇから……」


八幡「で、お前にはこれだ」カキカキ


雪乃「何を書いてるのかしら……」


結衣「なーんか嫌な予感しかしないんだけど……」


八幡「ほい」


いろは「なんですかこれ……”1つだけ言うことを聞いてやる券”?」


いろは「あ、下の方に小さく注釈で”ただしできることに限る”ってある……」


いろは「先輩、これは……ゴミですか?」


八幡「いくら俺が作ったものとはいえ、全てゴミになるわけではないぞ。一つ勉強になっただろう」


いろは「いや、そういうのいいです。これ、どういうことです?」


八幡「あー、なんだ。ぶっちゃけ、用意するのを忘れていてな……昔よく小町にやってたんだが、こう、な。肩たたき券的なやつ」


いろは「……まさかそれを、誕生日のプレゼントにしよう、と?」


小町「うわぁ……」


結衣「ヒッキー、これはさすがに……」


雪乃「ない、わね」


八幡「まぁ待て。よく考えてみろ。確かに、これは見てくれはただの紙切れだが、重要なのは内容だ。人間、中身が重要だろ? だからいくら目が腐ってようと、それだけでその人物を否定してはならない」


結衣「途中からヒッキーの話になってるし……」


八幡「つまり俺は、これを一色に握られている以上、いつこいつの言いなりにさせられるかわからない恐怖と戦わなければならないのだ。あ、それダメだ返してくれない?」


いろは「確かに、考えようによってはこれ、結構な価値を持ってますよねー。ダメです返しませんもうもらいましたもん」


八幡「くそ……無理のない程度にしてくれよ」


――


――――


――――――


雪乃「宴もたけなわ、ね」


八幡「お、帰るか。帰る方がいいぞ」


いろは「この先輩には、二次会とかの考えはないんですかねー。ないんでしょうねー」


小町「こんなお兄ちゃんですいません……」


結衣「でもなんかいいね、こういうの。新しくて、楽しくて」


雪乃「由比ヶ浜さん……?」


結衣「小町ちゃんも新しく部員になってくれて、なんて言うか、新しい空気になったっていうか」


結衣「でも、決して居心地の悪いものじゃなくて、いい方向に」


小町「えへへ……小町、がんばりますね」


八幡「奉仕部に吹いた春一番、か」


雪乃「何か言ったかしら、比企谷くん」


八幡「いや、なんも」


結衣「さーて、じゃあ帰ろっか」


いろは「…………」


八幡「一色……」


いろは「…………はっ。なんですかぁー? 先輩♪」


八幡「ま、なんだ。お前も奉仕部の新しい風っつーか、もう、あって当然のものみたいになってんだ」


八幡「だから、そんな沈んだ顔すんな。あざとくねぇぞ」


いろは「なんですかぁー、それ。口説いてるんですか? ちょっと落ちかけましたけどそんなの認めませんムリですごめんなさい」


八幡「なんで俺が傷ついてんですかね。誰か慰めてくれんの?」


いろは「わたしが慰めてあげますよ♪」


八幡「お前が原因なんだよなぁ」


いろは「あはは♪」


八幡「ったく。帰るぞ」


いろは「はーい♪」


いろは(ちょっと、先輩方と小町ちゃん……奉仕部が羨ましくなった)


いろは(わたしも、奉仕部に入ってたら……なんて、考えちゃうようになってきてる自分がいて)


いろは(正直、少し疎外感だったけど。雪ノ下先輩もマグカップくれたし……)


いろは(非公式ながら、奉仕部の一員みたいになれてたら、嬉しいかも)


いろは(なんて、ね)


結衣「いろはちゃーん! 早く帰るよー!」


いろは「あっ、はい! すぐ支度しますね!」



平塚「また1つ、成長している。子供たちの成長を見守るのは、良いものだな」


平塚「ま、私にとっては1年の経過とは、1つ老けるという意味だがな!」


平塚「……くそぅ」


【そして奉仕部に、春一番が吹き込んでくる】 終


再び、由比ヶ浜結衣は挑戦する


~比企谷家~


いろは「こんにちはーっ!」


結衣「あっ、いろはちゃん! やっはろー!」


いろは「やっはろーです!」


八幡「おい。なんで俺んちなのにお前が勝手に招き入れてんの? 家内なの?」


結衣「か、家内とか……/// ひっ、ヒッキー、何言ってんの! マジキモイ!」


いろは「マジキモイ」


八幡「やめろ! 由比ヶ浜はいつものトーンだからまだしも、一色はガチで引いてるやつじゃん。今、ここの家人は俺だけだよ? 俺の天下なのに虐げられるってなんなの? つまり俺がナンバーワンであり、オンリーワンだよ? あ、オンリーワンは外でもそうだったわ」


いろは「え、今、先輩一人何ですか? 小町ちゃんは?」


八幡「小町なら友達ん家に行くとか言ってたぞ。こほん……修羅場空間にはいたくないし! 小町的にポイント下がっちゃうからね、お兄ちゃん任せた!」


いろは「今の、小町ちゃんの真似ですか? 似てないですね」


八幡「腐り目谷くんと同じ空間にいると、私も目が腐りそうだからそろそろ帰りましょうか」


結衣「なんでゆきのんの真似なら似てるのかなぁ」


八幡「ともかく、俺1人が不服なら、図書館にでも行って時間つぶしてくるぞ。むしろそれを推奨したいまである」


いろは「や、結衣先輩とわたし2人って、もう意味の分からない状況じゃないですかー。……ん? ってことは、さっきまで先輩と結衣先輩、2人っきりだったってこと……?」


八幡「不本意ながら」


結衣「た、確かにそうだけど……違うから! 30分位しか経ってないから!」


八幡「何に対してのフォローだよ。いいから、勝手におっ始めてくれ」


いろは「そうですねー。結衣先輩、クッキーよりちょっとむずかしいお菓子を作りたいって、漠然としたお願いでしたけど……」


結衣「うん、それなんだけどね。ケーキ! って思ったものの、焼き加減とかむずかしそうだから。レアチーズケーキとかどうかなーって」


八幡「はい、というわけで、ここに冷やし固めた後のレアチーズケーキを用意した」


結衣「どういう意味!? まだ作ってないんだけど!?」


八幡「嘘だ。用意したのはこれだ、これ」


いろは「レアチーズケーキミックス……なるほど」


結衣「ほらぁ、いろはちゃんが何かを察しちゃったからぁ! もー、ちゃんと材料なら私が買ってきてるって!」


いろは「でも結衣先輩。焼くのがダメだから冷やそうって、安直すぎやしません?」


結衣「うっ……でもでも、ゼリーとか上手にできるし……」


いろは「ま、まぁいいんじゃないです? わたし、作ったことありますし」


八幡「お菓子作りが得意ってだけはあるな」


いろは「とはいえ、雪ノ下先輩の方が絶対上手だと思うんですけどー。なんでわたしなんですか?」


結衣「ゆきのんは……なんか、パンさんのイベントがあるらしくて」


八幡「本人は否定してたけどな」


いろは「とりあえず、始めましょっか。じゃあ先輩は各種器具の用意を、わたしがミックスを使って材料を冷やすので、結衣先輩が盛りつけしてください」


結衣「それ、私いらなくない!?」


八幡「まて、盛り付けなら小町にやらせよう。いいセンスしてる」


結衣「それ、私いらなくない!?」


いろは「実際、器具の用意は調理場の勝手知ったる先輩が適任でしょう」


八幡「俺の役目はそれだけな。それ以上はノータッチで」


いろは「まぁ、今日は結衣先輩の練習ってことですしね。後はわたしが見ます」


結衣「はい、先生!」


――――――


――――


――


いろは「ああ、結衣先輩! 生地にするビスケット砕いてとは言いましたけど、そんなに振りかぶらなくても!」


いろは「チーズ溶けるの待つのがめんどうだから、レンジに入れたとこまではわかりました。でも、選択が700ワットでおまかせってとこがわかりません。どろどろじゃないですかー」



結衣「で、泡立てればいいの?」


いろは「チーズと砂糖はなじませるように! メレンゲじゃないんですよ!?」



八幡「ここに、あらかじめ水でふやかしたゼラチンがある」


いろは「はい、先輩にお願いしときましたからね」


八幡「だが残念なことに、由比ヶ浜の魔の手により、冷蔵庫に入れられていた」


いろは「なんで!?」



いろは「そうです、型に敷いておいたビスケット生地の上に、ここまで混ぜあわせた物を流し入れて……」


結衣「こぼすよ?」


いろは「なんの宣言です!? あ、でも料理に苦戦する女の子って可愛いっていうかー」


八幡「汚したら小町に怒られるから勘弁して……」



いろは「で、そんなこんなで出来ました」


八幡「俺の目には、一色が作ってるのを由比ヶ浜が邪魔しているようにしか映らなかった件」


いろは「そ、そんなことは……」


結衣「じゃあ、切り分けるねー」


八幡「あいつ、ポジティブだな」


いろは「それが結衣先輩のいいところじゃないですかねー? あ、わたしもポジティブですよ先輩!」


八幡「なんのアピール? あ、もしかして俺に惚れてんの? 口説くとかちょっとまだ早いです場数踏んでからにしてくださいごめんなさい」


いろは「は?」


八幡「ごめんなさい」


結衣「ねぇ、食べよ?」


いろは「そうですね。とりあえず、毒味……一番乗りは、やっぱり作り手の結衣先輩で!」


結衣「今、口滑らせなかった? ねぇ?」


結衣「もー、いいよ、食べるから! …………あ、美味しい」モグモグ


八幡「本当に大丈夫なのか……?」ゴクリ


いろは「ま、一人で作ったわけじゃないですし、今回は。いっただっきまーす♪」


八幡「……まぁまぁだな」モグモグ


いろは「先輩はツンデレですねぇ」


結衣「今日はありがとね、いろはちゃん!」


いろは「いえいえー。わたし程度でよければ、またお付き合いしますよ!」


八幡「……口元にビスケット付けてるいろはす、マジあざとい」


いろは「え!? ……ほら、先輩? 先輩こういうの好きじゃないですかぁ。可愛い後輩の口元から拭って、自分で食べちゃうみたいなシチュエーション? やります?」


八幡「やらない。想像して揺れたけど絶対やらない」


結衣「揺れたんだ……ヒッキーマジキモイ」


いろは「ドン引きです」


八幡「はいはい、いつものいつもの」


結衣「なんか今日のヒッキー強気だ!?」


いろは「いつも通り目は腐ってますけどねー。ほんと、先輩ってメガネして黙ってればかっこよさげなのに」


八幡「俺のアイデンティティを消すつもりか?」


いろは「なんでそんな自信満々なんですか……」


結衣「あ、ヒッキー。ケーキ、まだ冷蔵庫にあるから、小町ちゃんにも分けてあげてね」


八幡「おう……ま、なんつーか。予想以上には美味かったわ。ごっそさん」


結衣「う、うん……」


いろは(ラブコメですねぇ……結衣先輩、嬉しそう)


結衣「じゃあ、そろそろ帰ろっか」


いろは「そうですね。あんまり長居しすぎても迷惑でしょうし」


八幡「おお、迷惑だ。帰れ」


いろは「なんで素直に言っちゃいますかねー。そこは「そんなことないよ! 結衣といろはが帰ると寂しいな!」とかあるでしょう」


八幡「そういうのは葉山に頼れ」


結衣「ま、それでこそヒッキーだよね」


いろは「そうですね。……じゃ、また明日、学校で」


結衣「ばいばーい!」


八幡「おう…………またな」


【再び、由比ヶ浜結衣は挑戦する】 終


唐突に、一色いろはは提案する


~夏休み目前~


いろは「ヤバいです、先輩。もうなんか、ヤバすぎてつまり、チョベヤバって感じです」


八幡「なに、なんなの? 2年になってからお前、ほぼ毎日俺と顔合わせてない? 俺が常人なら、勘違いして告白してフラれてるとこだぞ」


いろは「えー? フラれるかどうかはやってみないとわからないと思いません?」


八幡「好きだ」


いろは「えっ!? …………ちょ、ちょっと心がキュンとしそうになりますけど勘違いなのでごめんなさい付き合えません」


八幡「ほら、フラれただろ?」


いろは「いやー、うーん、そうですねぇ……」


いろは「って、そんなことはどうでもいいんです! 早くももうすぐ夏休みが来るじゃないですかー?」


八幡「ああ、そうだな。後数日乗り切ったら、俺、家で堕落するんだ……」


いろは「すでに死んだような目をして、死亡フラグ立てるとか効果がカンスト振りきって上限突破するまでありますね」


八幡「なに、それ俺の真似?」


いろは「そんなつもりないですけどー。移っちゃいました。責任とってください」


八幡「やだよ。俺悪くねぇじゃん」


いろは「世の中って理不尽じゃないですかー?」


八幡「それには概ね同意するがな……」


いろは「ともかくですね、夏休みですよ。なんとわたし、予定がなくてヒマなんです!」


八幡「は?」


いろは「わたしくらいになると、例年は予定でびっしりなんですけどー。今年は生徒会とサッカー部のマネージャーの兼任が想定以上に忙しくてですねー。あまり、そっちの話題についていけてなかったんですよ」


八幡「結果、めでたくぼっちになった、と」


いろは「先輩と一緒にしないでください心外です」


八幡「その言葉、俺が心外だってことにはならないんですかねぇ」


いろは「ま、てなわけなんで。ヒマなわたしに予定をください。チョベヤバなんで」


八幡「それは依頼か?」


いろは「可愛い後輩からのお願い、です♪」


八幡「だからそういうのは葉山にだな……」


いろは「また心底嫌そうな顔するー」


八幡「心底嫌だからな。いいか、よく聞け? 夏はな、暑い」


いろは「はぁ……まぁ、当たり前ですね。てか今も暑いですし」


八幡「暑さはな、危険なんだ。熱中症で倒れたってニュースは毎年流れるし、脱水症や幼児の車内置き去りとかもチョベヤバだ」


いろは「最後はなんか違いません? いや、合ってますかね……」


八幡「だから俺は、エアコンの効いた部屋を所望している。もう、所望して所望して震えるレベルだ」


いろは「何がキモいって、先輩が西野カナ知ってるってとこですね」


八幡「おお、伝わった。同時に、お前が俺のことどう思ってるかも伝わった」


八幡「とにかくだな、夏は出かける季節じゃない。以上」


いろは「いいから、予定立てますよ。どうせ夏じゃなくても、先輩はなんだかんだ理由つけて出かけないんですから」


八幡「ばっかお前。俺くらいぼっちになれば、1人で出かけることに何の躊躇いもないんだぞ? むしろ店員さんに話しかけて欲しくなくて、やたら人の多い場所を選ぶレベルで、ぼっちを謳歌してるまである」


いろは「まーたマイナス方面にプラス思考……わたしが考えた予定は、ズバリ旅行です!」


八幡「……お前と2人で、か?」


いろは「なっ……にゃにを言ってるんです!? 奉仕部のみんな一緒に、ですよ! 先輩と2人きりで旅行とかまだ早いです普通のデートを重ねてからにしてください」


八幡「事あるごとに俺をフルのは、もはやお前の趣味なの?」


いろは「実はすでに、雪ノ下先輩と結衣先輩には声をかけてあるんです。小町ちゃんも乗り気でしたよ」


八幡「小町が行くなら、俺も行くしか無いな。小町に何かあったら大変だからな」


いろは「出たよシスコン……」


八幡「千葉県民の兄はみなシスコンだ。で、場所は決まってんのか?」


いろは「それなんですけどー。たまたま雪ノ下先輩のお姉さん……春乃さん? がその場に居合わせてまして。ご本人は所用でいないけど、雪ノ下家の別荘を使えばいいと言ってくださったんです」


八幡「やだ、雪ノ下家ってブルジョア。専業主夫として雇ってもらおうかしら」


いろは「雪ノ下先輩は最初嫌がってたんですけどー。結衣先輩が甘えたら、あっさり陥落してまして」


八幡「あいつ、由比ヶ浜に甘いからなぁ」


いろは「期間としては、3泊4日を予定しています。その間、何かイベントでも出来たらなと思いまして。その部分、先輩にもアイディアを絞り出してもらおうかと」


八幡「帰宅競争とかどうだ? 目的地から自宅まで戻る時間を競うんだ。結果報告は2学期に」


いろは「は?」


八幡「ガチの威圧やめろ……」


いろは「先輩が水を指すようなこと言うからじゃないですかー」


八幡「わかった、わかったよ。雪ノ下と由比ヶ浜も巻き込んで、なんか考えてみる」


いろは(ほんと、先輩って変わりましたねー)


いろは(こんなこと、些細ではあるけど。ちゃんと、2人を頼るようになりました)


いろは(そんな先輩だからこそ……わたしも、頼られる存在になりたいな、なんて。思ってしまうのかもしれない)


八幡「一色?」


いろは「あっ、すみません、ちょっと考え事してましたー。じゃあ、よろしくお願いしますね♪」


八幡「不本意だが、わかった。その、なんだ……お前も、したいこととか、考えとけ。参考にする」


いろは「はーい♪」


【唐突に、一色いろはは提案する】 終


ついに、由比ヶ浜結衣が動き出す


~奉仕部~


結衣「やっはろー!」


いろは「結衣先輩。やっはろー、です」


雪乃「こんにちは、由比ヶ浜さん。……それで、話って何かしら?」


いろは「先輩も小町ちゃんも来ないうちに……ってことですけどー。あまり時間はないんじゃないですか?」


結衣「そ、そうだね……」


いろは「2人に聞かれたらまずい話なら、生徒会室を開けましょうか。今日は生徒会休みなんで、誰もいませんし」


雪乃「それだと、2人が私達を探す可能性が……まぁ、正直なところあまりないけれど、危険性は捨てきれないわ」


雪乃「2人に連絡を入れておきましょう。今日は奉仕部を休みということにするわ」


結衣「い、いいの?」


雪乃「ええ。元々、あまり依頼も来ないし、構わないわ」


結衣「じゃあ、私から連絡入れとくね!」


――――――


――――


――


結衣「じゃ、じゃあ、改めて……」


結衣「こほん。ちょっと真面目な空気になっちゃうけど、いいかな?」


雪乃「私は別に……一色さんは?」


いろは「わたしも……ぶっちゃけ、奉仕部メンバーである雪ノ下先輩だけじゃなく、わたしが呼ばれている時点でなんとなくは察してますからー。先輩とこまちゃんを外してるってとこで、確定ですね」


結衣「うん……そだね。結論から言っちゃうとね、私、本気でヒッキーに伝えようと思うの。私の……正直な、気持ちを」


雪乃「そう…………決めたのね」


結衣「私、この部活が本当に好き。大好き。絶対に失いたくなかったんだ、自分の気持ちを押し殺してでも」


いろは「わかりますよー」


結衣「気持ちを言葉にすることは、危ういこと。周囲の空気や関係を、一言で変えてしまうこともあるから。だから私は、このままでいいと思ってた」


結衣「でも、言葉にしないとわからないこともあるんだって。そのとおりだなって、思った」


雪乃「…………」


結衣「だから、私は伝える。ちゃんと伝えないと、ヒッキーはいつまでも、逃げ続けるから。自分の勘違いだって言い聞かせて、逃げちゃうから」


いろは「…………結衣先輩」


結衣「ん?」


いろは「本当に、後悔はしませんか?」


結衣「……」


いろは「先輩の気持ち、わからないわけじゃないですよね? 本物がほしいって、心から叫んだ先輩は。なりふり構わず自分を曝け出した先輩は、本当は弱っちい、わたしたちと同じ人間なんだって、わかってますよね?」


雪乃「一色さん」


いろは「部活が大好き? 壊したくない? なら今までどおりでいいじゃないですか! なんで、いまさら告白なんてしようとするんですか!? そんなの……そんなの、どうしたって壊れるに決まってるじゃないですか! 強くない先輩にが、必至に直し、求めた”今”を……また失ったら、もう取り返せません!!」


結衣「…………」


いろは「結衣先輩、前、わたしに言いましたよね? 先輩のこと、諦めないって。わたしや雪ノ下先輩に負けたくないって! なら……なら、ちゃんと勝てるってわかってから、それから動いたって遅くないじゃないですか……今、動いたって……結果は……!」


雪乃「一色さん!」


いろは「っ!!」


雪乃「そこまでにしておきなさい、一色さん。そして、ちゃんと考えてあげなさい」


いろは「何を……ですか」


雪乃「これが、由比ヶ浜さんの、気持ちなんだってことを。比企谷くんの気持ちを案じ、私の気持ちをも案じ、今を守ろうとしているのは理解しているわ。けれどね……この程度で壊れてしまうほど、もう、この居場所はやわじゃないのよ」


いろは「…………」


雪乃「そして、由比ヶ浜さん。一色さんの言うことも、間違っているわけではないわ。確かにそれは無情で、悲惨な現実なのかもしれないけれど……あえてそれを、自身を悪者にしてまで言葉にした彼女と敵対してでも、彼に気持ちを伝える覚悟は出来ているのね?」


結衣「…………うん。…………うん。そうだよ、私は……」


いろは「結衣先輩……ごめんなさい。ちょっと、混乱してしまって……」


結衣「ううん。そりゃそうだよね、いきなりこんな話されたら、誰だってそうなるよ」


結衣「今すぐに伝えるわけじゃない。けど、もう私達に残されている、高校生でいられる時間は1年もないんだよ。だから……だから今年中に、私は」


雪乃「ええ。由比ヶ浜さん、あなたの気持ちは、ちゃんと伝わっている。そうね、こういう時、なんて言えばいいのか……」


いろは「……だったら、こんな言葉がありますよ」


”どっちが勝っても恨みっこなし”


いろは「わたしも、もしかしたら本物が欲しいって、切に願うことがあるかもしれません。わたしにとっても、1年しかないから」


結衣「うん。恨みっこなし、だね」


雪乃「……私は」


いろは「雪ノ下先輩。雪ノ下先輩も、たまに、自分の声を聞いてあげてください。きっと、なにか伝えたいことがあるはずですから」


雪乃「……一色さん」


いろは「あはは、なーんて。わたしらしくないですよねー? あー、恥ずかしい」


結衣「……さて、これからどうしよっか?」


いろは「そうですねぇー。積もる話もあるでしょうし、スタバにでも行きませんか?」


結衣「おお、いいねー名案だ!」


雪乃「わ、私は、その、あそこの雰囲気は苦手で……」


結衣「えー? いつも一緒に行ってるじゃん! 大丈夫だから、行こっ。ねっ?」


雪乃「わ、わかったわ。だから離して頂戴……」


いろは「ほんと仲いいなー、この2人……」


日が落ち、補導されるすれすれの時間まで。

とある店舗の一角で、少女三人の姦しい談笑は続いていたという。


【ついに、由比ヶ浜結衣が動き出す】 終


そして、長期休暇に突入する


~短期旅行前夜~


いろは「うーん、本当に旅行が実現するとは……」


いろは「先輩がその気になったってのが主な理由だよね、うん。雪ノ下先輩も結衣先輩も、先輩に甘いから」


いろは「先輩、今なにしてるんだろ……電話しても大丈夫かな? 出るかな?」


いろは「…………しちゃおう」


prrrrrr


prrrrrr


いろは「……」


prrrrrr


prrrrrr


いろは「…………」


prrrrrr


prrrrrr


いろは「………………出ない」


いろは「いいや、切ろう」


いろは「うーーーーーん……忙しいのかな? いやでも、先輩だもんなぁ」


ブーッ ブーッ


いろは「っ!」


いろは「せ、先輩!?」


八幡『なんだ』


いろは「なんだはないじゃないですかー。可愛い後輩がわざわざ電話してるのに、無視するなんて酷いです。チョベヤバです」


八幡『なに? チョベヤバブームでも来てんの? 俺知らないんだけど? ……そりゃそうか。俺が知ってるわけねぇわ』


いろは「また自虐して……」


八幡『で? なんか用があったんだろ?』


いろは「あー、そのー……」


八幡『いやに勿体振るな……切るぞ』


いろは「いやいや! 切らないでくださいって!」


八幡『だって電話代もったいないし……』


いろは「まさかとは思いますけどぉー。先輩、もしかして電話代の事考えて、わざわざかけ直してたり……?」


八幡『…………そんなわけねぇだろ。勘違いとかやめてくださいごめんなさい』


いろは(もうっ……なんでそうやってたまに、素でいい人なんですかねぇ)


いろは「ま、用件なんてないです。明日から旅行ですけど、なにしてるのかなーって」


八幡『別に、特別なことなんてしちゃいねぇよ。めんどくせぇ宿題を片付けてたとこだ』


いろは「あ、先輩って、先に宿題やっちゃうタイプです? なんかイメージ通りすぎて意外性皆無ですね!」


八幡『褒めてんの、それ? ねぇ?』


いろは「意外といえば……先輩、本当に旅行を計画しちゃうなんて思ってなかったですよー」


八幡『お前がしろっつったんじゃん……ま、俺ほとんどなんもしてないけど』


いろは「?」


八幡『ほら、いるじゃんイベント大好きな奴が。由比ヶ浜に話したら、もう勝手に計画してたわ。俺の出る幕なんてなかった』


八幡『それに、元々お前が計画自体は立案していただろ? なら俺たちはそれに巻き込まれるだけだ』


いろは「あー……まぁ、してたっちゃしてましたけど、あれ、ほとんど嘘ですよ?」


八幡『は?』


いろは「雪ノ下先輩のお姉さんが、別荘を貸してくれるって言ってたのは本当ですけど。予定とか諸々のことは、全然まったくです」


八幡『だ、騙された……』ガクッ


いろは「うわっ、先輩、ガチで落ち込んだ声やめてください。ちょっと凹みます」


八幡『……寝るわ』


いろは「わー! ちょ、ちょっと待って下さいよ! も、もう少しお話、したいです……」


八幡『くっ、流石いろはす、あざとい。悔しいが可愛いと思ってしまうほどにはあざとい。あざはすー』


いろは「は?」


八幡『お前って、ほんとに俺のこと嫌いだよなぁ……ま、俺のこと嫌いじゃない奴なんていないけどな』


いろは「なんですかそれ、遠回しに口説いてるんですかそうはいきませんよごめんなさい」


八幡『だが一色、大丈夫なのか?』


いろは「はい?」


八幡『ほら……生徒会とかサッカー部とか、忙しいだろ』


いろは「先輩のくせに、気を遣ってるんですか? 大丈夫ですよー、生徒会の方はある程度落ち着けてますし。サッカー部は元々、あまり顔出せてませんから」


八幡『そうか……けど、葉山にいい印象にはなんねぇだろ。サッカー部より、奉仕部の旅行に同行するなんざ』


いろは「わたしだって、たまには素直にやりたいことをやりたいんです」


八幡『……ま、これ以上はなにも言わねぇ。せっかくの旅行前日だし……な』


いろは「なんかそのセリフ、先輩らしくないですねー。狙いすぎててあざといです」


八幡『狙ってねぇ……むしろ狙ってなさすぎてて、たまたま当たっちまうくらいには狙ってねぇ』


いろは「あはは、なんですかそれー。意味わかりません」


八幡『笑ってんのに辛辣って、器用なことするなぁ君は』


いろは「先輩、寝なくて大丈夫なんです?」


八幡『おっと、自分からかけておいて会話のキャッチボールがめんどくさくなった気配を感じる。まともに投げ返さず、わざと暴投放るくらいには倦怠感全開の空気だ』


いろは「そんなことないですー」


八幡『なら棒読みやめたらどうだ』


いろは「やだなぁ、素ですよ、素」


八幡『たまには素直にやりたいことをやりたい、ってことか?』


いろは「そうそう、それですそれ」


八幡『うわー、本格的におざなりだなこいつ。……じゃあ切るぞ』


いろは「はいはーい。また明日です、先輩♪」


八幡『ああ……ま、また明日』


 ピッ


いろは「また明日、って。言えるんじゃないですか、先輩」


いろは「それが言えるならもう、ぼっちなんかじゃない気がするんですけどねー、わたし的には」


いろは「あ……てか、明日の準備まったくしてない」


いろは「どうしよう、服とか所持品とか……3日分だよね?」


いろは「今日は徹夜かなぁ」


【そして、長期休暇に突入する】 終


そして、雪ノ下別荘に到着する


~電車内~


八幡「っべーわ。まじっべーわ。集合時間早すぎてマジねみーっつーか」


いろは「先輩、それって戸部先輩の真似ですかー? ヒッキーまじキモい」


八幡「お前こそ、それ由比ヶ浜だろ。地味に似てんじゃん」


結衣「え、私っていつもこんな感じなの?」


八幡「どうだ、自分を客観的に見つめなおした感想は。悔い改める気になっただろ?」


結衣「別に悪いことしてなくない!?」


雪乃「朝から騒々しいわね……少しはその汚い口を閉じたらどうかしら、谷なんとかくん」


八幡「逆だ逆。正確に言えばなんとか谷くんなんだけど? そこんとこ間違えないでくんない? 間違えるのなんて俺の青春だけで間に合ってんだけど」


結衣「ゆきのん、眠そうだねー」


雪乃「いえ、そんなことはないわ」キリッ


いろは「そんなことよりー、先輩。両手に花ですよー? 嬉しいです? 嬉しいですよね?」


八幡「いやー、でかすぎて両手で持ちきれねぇわ。どこがとは言わねぇけど」


いろは「うわ……先輩、ドン引きです」


結衣「ヒッキーまじキモい! キモい!」


雪乃「…………」ギリィッ


八幡「あのー、雪ノ下さん? 無言でガチの睨みつけは勘弁してくれません?」


ガタンゴトン……

ガタンゴトン……


八幡「わかった、俺の目が悪かった。無言はやめろ」


いろは「先輩がバカみたいな冗談言うからですよー」


八幡「いや、元はといえばお前がだな……」


結衣「はいはい、ヒッキーがキモいのはいつものことだから。そこまでにしといてあげよ、いろはちゃん?」


いろは「結衣先輩がそこまで言うならー」


八幡「雪ノ下といい一色といい、由比ヶ浜にどんだけ甘いの? 由比ヶ浜がマッカンだとしたら、俺なんて正露丸レベルに対応が苦いんだけど。なんだよ、正露丸って心の痛みには効かないのか……」


雪乃「あなた、薬なんて飲んだら逆効果じゃないの比企谷菌」


八幡「いつも饒舌な雪ノ下が噛んだぞ、珍しい」


雪乃「比企谷菌」


八幡「噛んだね、2度も噛んだ! ……え、わざとじゃないよね?」


いろは「結衣先輩、結衣先輩。雪ノ下先輩と先輩って、こんなに仲良しだったんです?」


結衣「あはは……去年はこんなじゃなかったけどね。あの一件以来、奉仕部は変わったねー」


いろは「奉仕部と言えば……小町ちゃんが不参加なのは残念ですねー」


八幡「小町は夏風邪で寝込んでる。当日になって突然風邪引くとか、お兄ちゃん心配! 心配すぎて今すぐ帰るまである」


いろは「どんだけシスコンなんですか……でも本当、残念です」


結衣「てかヒッキー、小町ちゃんが行くから参加するとか、捻くれたこと言ってたわりには普通に来たよね」


雪乃「私としては、この男がいなくても何一つ異論はなかったのだけれど。むしろ不参加を推奨するわ」


結衣「いやいや、ヒッキーもいてこそだからね!? 確かにいつも、いてもいなくても変わらないけど……」


八幡「ありがとう由比ヶ浜。必死なフォローが心を抉るようだ」


いろは「でも実際、付きっきりで看病しそうなくらいシスコンですけど。聞いてる分には」


八幡「いや、そうしようと思ったしむしろそれを強く推したんだがな。小町に全力で拒否られて怒られて追い出された」


ガタンゴトン……

ガタンゴトン……


八幡「あれれー、おかしいぞー? このタイミングで無言とか、むしろ意味ありげすぎて言葉にするより伝わってくるんだけど? 以心伝心かな?」


いろは「あっ、わたしの気持ち、伝わりましたー? せんぱぁい……わたしの想い、受け止めてくれたんですかぁ?」


八幡「うっわー、朝一からあざはすされても心に響かねぇわ。むしろ甘え声が頭のなかで響き渡って頭痛い。二日酔いみたい」


結衣「え、ヒッキーお酒飲んだことあるの!?」


八幡「いや、ねーけど……」


雪乃「いつもの周りくどい例えでしょう、由比ヶ浜さん。触れないであげるのが彼のためよ」ニコッ


八幡「このタイミングで今日一番の笑顔とか、マジっべー」


いろは「ところでー。どのくらいかかるんですかね、目的地まで」


雪乃「私も行くのは初めてだから……とはいえ、お昼までには着くと思うわ」


八幡「雪ノ下家の別荘なのに、家人が場所を知らないってなに? お前だけ分家の家系とかないよね?」


雪乃「バカみたいな冗談はよしなさい。頭の作りの脆弱性が露呈するわよ」


結衣「じゃあじゃあ、トランプとかしようよトランプ!」


八幡「とかって言うわりにトランプしか選択肢ねぇじゃん……」


雪乃「トランプとか雑談とか、と言った用法が正しいわね」


結衣「し、知ってるし! とにかく、ポーカーやろ、ポーカー」


いろは「ポーカー……ですか」


結衣「いろはちゃん、役とか知らない?」


いろは「いえ、簡単には知っていますが……」


八幡「由比ヶ浜。一色が言いたいのはそういうことじゃない。感情の権化みたいなお前が、ポーカーフェイスを会得しているとは思えないって話だ」


結衣「ポーカーフェイス……?」


八幡「ほら、ポーカー提案した人間がポーカーフェイス知らねぇんだもんよ。まずこっからとかお笑いかよ。あ、あの人達はいつもここからか」


雪乃「感情を表に出さない、無表情な様子のことよ。その語源がまさしくトランプゲームのポーカーから来ていて、自分の手札を相手に悟られまいと無表情になることが由来となっているわ」


八幡「さすがユキペディアさん。理解できたか、由比ヶ浜?」


結衣「わ、わかるし! いいからやるよ、もう!」


いろは「結衣先輩には……負ける気がしません」


結衣「何気にいろはちゃんが一番酷くない!?」


結衣「じゃあ、チェンジは1回まで。賭けは……なしでいいかな?」


雪乃「そうね。その方が気楽でしょうし」


八幡「いまのは雪ノ下の優しさだぞ、由比ヶ浜。お前がむしり取られないような気遣いだ」


結衣「バカにし過ぎだからぁ!」


いろは「ここはあえて、賭け要素ありにしません? 金銭を賭けようってわけじゃなく……ほら、結衣先輩が飴玉を袋で買ってきてましたよね?」


結衣「うん、あるよー」


いろは「1人10個の飴玉を持ちます。これを賭けて勝負して、10回戦くらいした後、一番飴玉の所持数が多い人が、この旅行中に1回だけ、任意の相手に頼み事を聞いてもらうって賞品で」


八幡「いや、曲がりなりにも賭け要素があると雪ノ下がいい顔をしないんじゃないか?」


雪乃「いえ、せっかくなのでやりましょう。細かいルールの設定が必要ね」


いろは「そうですねー、では、みなさんの知恵を貸してください」


《ルール》

・その回の親から順に、時計回りでカードの交換を行う。

・親は毎回、時計回りに変わる。1人3回、親になる(12回戦に変更)。

・親が飴玉の数と相手を指定し、より強い手役の勝ち。飴玉の総取りとなる。

・親が勝負をしかけた相手が降りた場合、相手は飴玉1つをペナルティとして失う。また、親は残りの人間から再指名を行う。3人共が降りた場合、この回のゲームは終了となり、親は合計3個の飴玉を確保することになる。

・そのゲーム中、親に勝負を仕掛けられなかった場合、飴玉1つを貰うことが出来る。

・手役は、一般的なポーカーに従う。


いろは「以上ですかね」


結衣「うわ、意外と細かい……」


雪乃「後は、順次やってみて問題がありそうなら潰していきましょう」


八幡「めんどくせ……どうせ由比ヶ浜の一人負けだ」


結衣「うぐっ……そ、そんなことないし」


雪乃「では始めましょう。僭越ながら、最初の親は私が務めるわ――――」


――――――


――――


――


八幡:飴玉21個


雪乃:飴玉18個


結衣:飴玉2個


いろは:飴玉14個


八幡「ほら見たことか。やっぱり由比ヶ浜が最下位じゃないか」


結衣「ま、まだ最後の1ゲームがあるし……ここで逆転すればいいんでしょ!」


八幡「お前は計算すらできないのか。2個しか持ち飴玉がないのに、勝てるわけねぇだろ」


結衣「うっ……」


いろは「申し訳ないですが、その通りですよ結衣先輩」


いろは「そして最後の親はわたしです。2枚交換で」


八幡「じゃあ俺は3枚」


雪乃「1枚よ」


結衣「5枚!」


八幡「なんでお前、ほぼ毎回全換えなの? バカなの? ああ、バカだったわ。バカでビッチ」


結衣「ちょっと酷くない!?」


八幡「略してバカッチ。ほら、愛嬌ある」


結衣「そういう問題じゃないからー!」


いろは「ふふ……わたしはここで、飴玉10個賭けで、先輩に勝負を挑みます!」


八幡「は?」


いろは「んー? どうしたんです、先輩? 勝負に出るのが怖いんですかー? なら降りてもいいんですよー?」


八幡「ばっかお前、怖いわけねぇし。俺にとって怖いもんとか、三浦くらいだし。後はあれだ、川なんとかさんとか」


結衣「優美子……」


いろは「で、どうするんです? 受けるんですか、受けないんですか?」


結衣「でも、いろはちゃん。もし負けたら、10個も飴玉失っちゃうんだよ!?」


雪乃「何気に、どう転んでも最下位にはならない個数なのが計算高いわね……」


八幡「いいだろう……お前の挑発に乗ってやる! 俺の手札は、これだ!」バシィッ


 フォーカード


八幡「ふふふ、エースのフォーカードだ……勝てる手役があるなら見せてみろ!」


結衣「うわー、ヒッキー小物っぽい」


雪乃「明らかな負けフラグね」


八幡「んなわけが……」


 ストレートフラッシュ


いろは「はい、わたしの勝ちです!」


八幡「はぁ!? このタイミングでストレートフラッシュ!?」


雪乃「凄い引きの強さね……恐れいったわ」


いろは「ふふん、先輩の負けですね♪ これでラストゲームを終えて、わたしの飴玉が24個。先輩が11個に減少したので、わたしの勝ちです」


八幡「不幸だ……」


いろは「それじゃ、先輩。またこの旅行中にお願い、伝えますね♪」


八幡「え、なに、罰ゲーム俺に決定してんの? すでに? 由比ヶ浜がぶっちぎりの最下位なのに?」


いろは「最初から、ビリの人にいうことを聞いてもらうなんて一言も言ってないじゃないですかー。任意の人に、って言いました。つまり先輩も対象なわけです」


雪乃「まさか気づいてのなかったの……?」


八幡「し、知ってたし」


結衣「し、知らなかった……」


いろは「とーにーかーく! 約束は絶対、ですからね!」


 程なくして。

 一同を乗せた電車は、目的地の最寄り駅へと到着した。

 そこからタクシーで20分。徒歩で10分。雪ノ下別荘へと、足を踏み入れた。


【そして、雪ノ下別荘に到着する】 終


いつの間にか、2人は軽く遭難する


八幡「……で?」


いろは「はい?」


八幡「何か申し開きは?」


いろは「あー……ごめんなさい、キャハ☆」


八幡「よーしわかった、表出ろ」


いろは「んー、でもわざとじゃないわけですし?」


八幡「ケータイ置いてきちまったし……コンビニは近いからって言ったの誰だ?」


いろは「結衣先輩ですよ」


八幡「よく考えたら、あいつがこの辺の地理に詳しいわけがないのにな……」


八幡「下手に街中まで出てしまったのがまずい。駅までの道しかわからない。あ、そうだ家に帰ろう」


いろは「いいですねー、わたしと2人で帰ります?」


八幡「おお……まさか肯定的な切り返しが来るとは思わなかったわ」


いろは「でも実際、どうしましょー。わたしも当然、土地勘なんてありませんしね」


いろは「本当に2人で逃避行とか、しちゃいます? 北の方とか」


八幡「ヤダよ。マッカンがあるかどうかわかんねぇもん」


いろは「先輩の居住条件はマッカンの有無ですか……」


八幡「後は戸塚とか戸塚とか……ああ、戸塚がいるかどうかも大事だな」


いろは「……それはそうと。早く夕飯の買い出しして戻らないと、怒られますよ」


八幡「とはいってもなぁ……帰り道もわからん状態で、下手に荷物も増やしたくないし……」


いろは「う~、先輩が意外と本気で困っている……」


八幡「お前、俺を何だと思ってるの? いくら腐った目でも、魚じゃないんけど?」


いろは「そりゃそうでしょう。魚に失礼ですよ」


八幡「お前は俺に失礼だけどな」


いろは「でも、迷子とか遭難とか、ちょっとそそられません? 愛しのあの人と二人きりで、誰にも邪魔されない空間……みたいな?」


八幡「葉山とやれよ……」


いろは「葉山先輩はこういう事態に陥ることすらありませんし。だからこそ葉山先輩は葉山先輩なのですから、不可能ですよ」


八幡「あっそう……」


いろは「さて、冗談はさておき。買い物して帰りましょうか」


八幡「は?」


いろは「や、帰り道くらいわかりますし。というか、スマホ持ってますしわたし」


八幡「……」


いろは「いやー、先輩と少しでも長く一緒にいたくて? みたいな? あ、これポイント高くないですかー?」


八幡「あー……もういいわ。帰るぞ」


いろは「怒ってます?」


八幡「怒ってねぇ」


いろは「もうー、じゃあ何か甘いもの買ってあげますから、それで手を打ちましょう♪」


八幡「甘い蜜を垂らせば俺が機嫌直すと思ってんの? その考えこそが甘いよ? 暑いし、アイスを所望する」


いろは「あっさり陥落してるじゃないですか……」


八幡「ばっかお前、これはあれだよ。大人げない意地を張るより、目先の利益を追い求めた結果だよ。うわ、俺って超敏腕社員。主夫希望だけど」


いろは「ま、いいです。この近くにスーパーありますから、行きましょう♪」


【いつの間にか、2人は軽く遭難する】 終


急に、 夕食前の勝負が始まる


八幡「で、なんでお前らも買い物行ってんの? 帰ったら誰もいないとか、まるでぼっちになったみたいだったじゃん」


いろは「先輩、ぼっちじゃないんです?」


八幡「あ、俺ぼっちだったわ……」


雪乃「ぼち谷くんに説明すると、由比ヶ浜さんの思いつきだったのよ」


結衣「全員で1品ずつご飯作って、勝負しようよ!」


八幡「雪ノ下……なぜ、止めなかった。あと、なんだよぼち谷って。一見すると犬の名前みたいだぞ。ポチか」


雪乃「……これでも、手は尽くしたのよ。けれど由比ヶ浜さんの意思は固かった。私とて、全力でなかったことにしようとは思ったのよ……」


結衣「ゆきのん!?」


いろは「あ、でもー、料理上手な女子ってポイント高いですよねー」


結衣「そう! そうなの!」


いろは「もしかしてぇ……胃袋捕まえたい相手とかいるんですかぁー?」


結衣「うん、いるよ」


八幡「おい、なんでそのタイミングで俺を見た。勘違いするぞ、こら?」


雪乃「それはなんの脅しなのかしら……」


八幡「だが残念だったな、由比ヶ浜。俺と一色はんなこと知らずに材料を買ってきた。つまり、個人戦で料理を作る事はできない。ならば料理対決などなしにして、雪ノ下に全て任せるべきだ。むしろそれが推奨だ」


結衣「えー……でも、あたしとゆきのんはもうそのつもりで買ってきちゃったしー」


八幡「なぁ、由比ヶ浜。一応聞くが、晩飯の料理対決って名目だよな? 体裁上、晩飯ってオチじゃないよな?」


いろは「やけに凝った調味料は雪ノ下先輩のチョイスだとして……なんか、色とりどりのフルーツがたくさんあるんですけど」


八幡「わぁー、ココロオドルね。おいしいパスタ作ったお前。家庭的な女がタイプな俺、一目惚れ。あ、これ純恋歌だわ。フルーツは置いといて、パスタにしようぜパスタ」


いろは「こんな先輩は置いといて。わたし達が買ってきた材料はわたしが使って、先輩は料理自体は不参加。審査員ってことでどうですかー?」


八幡「ナンデ!? ナンデ実現ノ方向ニ話ヲ進メルノ一色=サン」


雪乃「そうね、やはり不毛だと思うのだけれど……」


いろは「あれ? 負けるのが怖いんですか、雪ノ下先輩♪」


八幡(やめろ、やめるんだいろはす! その鬼に挑発はいけない! ほらぁ、もう眼の色変わってるもん。負けず嫌いの色だよあれ)


雪乃「……比企谷くんにジャッジを任せるのは些か不安要素ではあるけれど。いいわ、受けて立ちましょう」


結衣「あ、あたしも! ま、負けないし」


雪乃「少なくとも、由比ヶ浜さんには負けないと思うわ」


結衣「ゆきのん!?」


雪乃「まぁでも、毒味は比企谷くんだから。思う存分、腕によりをかけるといいわよ、由比ヶ浜さん」


結衣「うわぁ、ゆきのんが何気に本気の目だ……」


八幡「俺の意向は? 俺の意向は無視なの?」


いろは「先輩って、発言権あるんです?」


八幡「やめろ、あざとく首を傾げながら辛辣な言葉を吐くな」


いろは「でもー、普通に勝負するだけじゃ面白くないですねぇ。何か罰ゲームとかないと」


八幡「また、何でも言うこと聞いてもらう券でも発券するつもりじゃないだろうな?」


いろは「いやいや、それはもう2枚入手してますしー」


八幡「ん? いつ2枚になったんだよ、おい」


いろは「じゃあ、選ばれなかった人は、今日の分のお皿洗いってことで♪」


八幡「おまえ、それ由比ヶ浜に押し付けたいだけだろ」


いろは「あ、バレましたー?」


結衣「待って、なんかあたしが最下位って前提で話が進んでるし!」


雪乃「由比ヶ浜さん……仮に負け戦でも、負けられない戦いってものはあるのよ」


結衣「……う、うわーん! ヒッキー、ゆきのんまであたしをいじめる!」ダキッ


いろは・雪乃「「!!」」


八幡「や、やめろるち、近いいい匂い近い柔らかいHANASE!」


結衣「むー……絶対、美味しいって言わせて見せるんだから」ジーッ


八幡「お……おう。く、食えるもんで頼む」


結衣「当たり前だし!」


いろは(結衣先輩……まさか、この旅行中に?)


いろは(雪ノ下先輩も呆気にとられているところをみると、ここまでは予想外だったみたい)


いろは(これは確かに、負けられない戦い、なのかもしれないなぁ)


いろは「じゃあ、ちょっとわたし、足りない食材があるのでそれだけ買い足して来ますねー!」


八幡「おい、1人で大丈夫か?」


いろは「えっ……な、なんですか先輩? 口説いてるんですかごめんなさい、そろそろクドいです」


八幡「ばっかちげーよ。ただのお兄ちゃんスキルがオートで発動しただけだ。深い意味なんてないんだ、勘違いすんな」


いろは「お兄ちゃんスキル、何気にポイント高いですよ♪ ではでは、後ほど!」


【急に、 夕食前の勝負が始まる】 終


そして、調理が始まる


八幡(で、手持ち無沙汰になった俺だが。文庫本は持参しているし、ゆっくりしたいと申し出たところ、あっさりばっさり切り捨てられた)


八幡(みんなの対応があっさりしてるんだ、夕飯くらいこってりでいい)


八幡(そうだ、ラーメン。ラーメンを食べに行こう。よーし、このさい平塚先生も誘っちゃうぞー)


雪乃「気色の悪い顔をして後ろに立たないで貰えるかしら。料理に影響が出てしまうわ」


八幡「なに? 俺の視線から出汁でも出てんの? マジ俺、一家に一台」


雪乃「あなたみたいなのが一家に一台もあったら、処分に困るじゃないの」


八幡「で、雪ノ下は何作ってんだよ。お前のことだから、味の心配はないだろうが」


雪乃「なんとか、メインディッシュの担当は由比ヶ浜さんから奪取したわ」


八幡「あっ……そうね、うん、今なら俺、お前に心から素直な感謝の言葉が述べられそうだ」


雪乃「やめなさい、鳥肌が立つわ。……私はあまり食べる方ではないけれど、それでもメインなしの夕飯はつらいもの」


八幡「ああ……」


結衣「ちょっと! なんかそこで、すっごい失礼な話してない!?」


八幡「で、メニューは」


結衣「ナチュラルに無視すんなし!」


雪乃「どうせあなたのことだから、こってりしたものがいいとか考えていることでしょうし。ただ、あまり凝ったものを作るような場でもないから、今日はシンプルにハンバーグにするわ」


八幡「なんで心読めてるの? サイコメトリー?」


雪乃「……バカなこと言ってないで、そこに立っていられると邪魔なのだけれど。貴重な陸地面積を分け与えているだけでも勿体ないというのに、邪魔までしてると救いようがないわね」フッ


八幡「言い過ぎだからぁ!」


結衣「それ、あたしの真似!?」


八幡「ちっ……反省してまーす。で、お前は何作ってんの?」


結衣「あたし? あたしはスープ担当!」


八幡「そうか……水を鍋に入れて、沸騰したらコンソメ入れて、終わりな」


結衣「具材なし!?」


八幡「余計な手を加えると、あれじゃん? ほら……素材の味そのものを活かす的な」


結衣「素材の味もなにも、コンソメの味しかしないと思うんだけど……」


八幡「……っく。ぐすっ……死に……たくないよぉ……!!」


結衣「そんな悲痛な叫びしなくてもしなないからぁ! バカにしすぎだからぁ!」


八幡「だがな、由比ヶ浜。俺は覚えているぞ」


結衣「ん? なにを?」


八幡「あの大量のフルーツだよ! っつーか、今まさにお前の柔らかそうな両手で握られてるそれだよ! スープ作ってるんだよね? ミックスジュースとかじゃないよね?」


結衣「ほら、カレーにもりんご入れたりするじゃん? 酢豚にパイナップルもあるし、おかずに果物って合うはずなんだよ、うん」


八幡「酢豚のパイナップルは、プロメリンって酵素で肉を柔らかくするためにあんだよ。諸説あるが、見た目を高級にするためってのもあるな。つまり縁の下の力持ち的な存在であってだな、決して味重視のものじゃないんだ」


結衣「なんか難しいこと言ってる……とにかく、入れることもあるってことじゃん?」


八幡「くっ、一理ある」


雪乃「なぜ押し負けてるのかしら……ちなみにプロメリンは60度以上で加熱されてしまうと、お肉を柔らかくする効果はなくなるわ。使うなら加工されていない生のパイナップルで、調理前や調理後に使用しなければ意味がないわ」


八幡「マジかよ知らなかった……じゃあ給食のがっつり一緒に調理された感があるパイナップルは? みんなからの不評を買うだけの存在? やだ、まるで俺そのものじゃん」


結衣「もう! いいから任せてって! ちゃんと美味しく作れるんだからね!」


八幡「……俺も男だ、覚悟を決めた」


雪乃「……そうね。女としての誇りを賭けるわ」


結衣「大袈裟すぎだからぁ!」


いろは「今戻りましたよー……って、すでにお二方は作り始めてるんですね」


八幡「一色、その手に持ってるのは……」


いろは「あ、これですか? お菓子作り用の材料ですー。調理器具は完備されてるし、果物はなんか結衣先輩がたくさん買ってましたし、ならわたしはお菓子でも担当しようかなって」


八幡「お前は、救世主だ。最高。マジ最高。いろはす最高」


いろは「ちょ、先輩どうしたんです? 普段の数割増しでキモいです」


八幡「なんとでも言え。今の俺はどんな罵詈雑言でも受けられる仏の如き存在だ」


いろは「なんかよくわかりませんけどー。……あ、先輩。わたしのエプロン姿、早く見たいんじゃありません?」


八幡「興味ねぇな」


いろは「ちょっと、その反応はポイント低いですよ!? あとで小町ちゃんに密告します」


八幡「いろはす超かわいい! もうあざと可愛くてたまらないね!」


いろは「もっと褒めてくれていいですよー。後、わたしはサラダも担当しますね。見たところ雪ノ下先輩がメインで、結衣先輩がスープ……スープですよね? を作ってますし」


結衣「スープだよ!?」


いろは「だって果物が脇においてあったもので……ミックスジュースでも作ってるのかと」


結衣「それ、ヒッキーも言ってた」


いろは「うわ、先輩と同じ思考回路とか一生の不覚です」


八幡「俺も同感だわ、うん。ま、俺の場合は一生の不覚というより、一生涯不覚って感じだがな。それってチョベヤバー」


雪乃「自信を持って言うことじゃないでしょうに……」


いろは「ま、わたしもちゃっちゃか作ってしまいますね♪ サラダは簡単なものでいいし……お菓子の下ごしらえ先にしておこう」カチャカチャ


八幡「得意だと言うだけあって、確かにいい手際してんな。お菓子作りなら雪ノ下ともいい勝負すんじゃねぇの?」


いろは「いえいえー、雪ノ下先輩は別格です。けど、わたしにとっても負けられない戦いってあるわけでしてー」


いろは「この料理勝負、勝ちに行きます」


八幡「雪ノ下と一色の一騎打ちか……ま、どっちも味には期待できるし。俺はのんびり待たせてもらおう」


結衣「ヒッキー、今あたしの存在なかったことにしてない?」


八幡「ばっかお前、存在感で言えば俺のほうがないだろ。俺に存在感のなさで勝とうなんざ100年はえぇんだよ出直して来い」


結衣「なんで怒ってんの!?」


八幡「怒ってねーよ。俺怒らせたら大したもんだよ」


いろは「あ、先輩先輩。これ、ちょっと味見してみてください。はい、あーん♪」


八幡「なに、なんのつもり? 俺、殺されるの?」


いろは「なにって、味見ですって言ってるじゃないですかー。妙なところで照れてないで、手が疲れるので早く食べてください」


八幡「いや、だがなに、これはさすがに……な?」


いろは「えいっ!」


八幡「んぐっ!?」


八幡「無理やりねじ込むんじゃねぇよ……ったく」


いろは「どうでした、お味は?」


八幡「甘い」


いろは「そりゃ、お菓子ですからねー。まぁ正確には、お菓子になりかけのものですけど」


八幡「で、なんなのこれ?」


いろは「これですか? フルー◯ェの素を利用して、わたし流にアレンジを加えた……まぁあえて言うなら、パフェみたいなものですかね。その材料の1つです」


八幡「なるほど……」


いろは「あ、わたしも味見を」パクッ


八幡「ちょ、おま、それ今、俺が使ったやつ……」


いろは「あー、確かに……確かに、甘いですね。ちょー甘い///」


八幡「お前なぁ……ちょっとは気にしろよ」


いろは「なにがですかー? あ、間接キスのことです?」


いろは「おこちゃまですねー、先輩は♪」


八幡「ばっかお前。おこちゃまはコーヒーなんて飲まない。あ、マッカンの甘さならいけるか……」


結衣「……ジーッ」


雪乃「……ジーッ」


いろは「……フッ」


結衣・雪乃「!!」


八幡「なんでお前ら、目で会話できてんの? サイコメトリー?」


いろは(先輩は気づいていないのか、気づいていて気づかないふりをしているのか)


いろは(なんとなく、答えはわかってるけど、言及はしないでおこう)


いろは(でも、一歩だけ、優位を取れたかな、なんて)


いろは(思ってみたり)


いろは「はいはい、ここにいられると料理が腐るので、早めにどっか行っててくださいねー」


八幡「それ、雪ノ下にも言われたんだけど!?」


【そして、調理が始まる】 終


ついに、命をかけた食事が始まる


結衣「完成ーっ! みんなも出来た出来た?」


雪乃「ええ、準備は万端よ」


八幡「つーか雪ノ下と一色は、30分は前に済ませてたぞ……なんでスープ担当が一番遅いんだよ」


結衣「しょ、しょーがないじゃん! ヒッキー細かいことにうるさい!」


八幡「えぇ……」(困惑)


いろは「結衣先輩が作ったスープ、凄く美味しそうに見えますね!」


結衣「でしょでしょ!? 夏野菜をふんだんに使ったコンソメスープなんだー」


八幡(由比ヶ浜……ナチュラルにバカにされてるぞそれ)


いろは「色合いも綺麗ですね♪」


雪乃「ええ、確かに……見た目は素晴らしいわ」


八幡(自分を誇示せず、他人ばかり褒め称える。差は歴然じゃねぇか。ス○ブラで最高レベルのCPUに勝って喜んで、褒められてまた喜んで。そんで褒めた奴は最高レベル3体を相手に片手で勝ってるくらいのレベル差がある)


いろは「先輩、先輩。どうですかわたしのデザート! やばくないです?」


八幡「はいはいやばいやばい。で、なんでお前らリア充ってやばいって言葉が好きなの? 使いすぎててマジやばいわー」


いろは「えー? だって使いやすいじゃないですかー?」


八幡「ま、俺にリア充の心境なんてわかるはずがない。俺はマイノリティだからな。マイノリティ極めすぎててマジっべーわー」


いろは「先輩、何気に戸部先輩のこと好きですか?」


八幡「ない。やめろ。気色悪い」


いろは「全力の拒否ですね……まぁ、戸部先輩ですしねー」


八幡「お前、戸部にも辺りキツイよな。俺にもだけど。そんなに嫌いか」


いろは「戸部先輩はともかく、先輩のことは嫌いなんかじゃないですよ」


いろは「むしろ……///」


八幡「やめろ、上目遣いで頬を染めるな。あざとすぎてころっといっちまうぞ」


いろは「先輩はちょろいですねぇ」


八幡「ばっかお前、ガードが固いぼっちとか、一生ぼっちじゃん? 俺は柔軟なぼっちでいたいんだ。あ、ガード固めなきゃ」


八幡「そんなことより、早速晩飯にしようぜ。スープ待ちでやたらと時間が経った」


結衣「あたしのせい!?」


雪乃「料理対決はどこへいったのかしら……」


八幡「せっかくどっかのアホが忘れてたのに、なんでお前は掘り返しちゃうの? この負けず嫌いさんめ」


結衣「あっ、そうだった! じゃあヒッキー、ごはんの後に、どれが一番美味しかったかジャッジね!」


八幡「飯くらい落ち着いて食わせろよ……」


いろは「当然、私が1番に決まってます! 下でも2番です!」

ううう

雪乃「そうね……私が1番で、一色さんが2番。これで決まりよ」


結衣「あたしは!?」


八幡「圏外」


結衣「勝負にすら加われてない!? もういいから、食べようよー」


雪乃「そうね……ではいただくとしましょう」


一同《いただきます》


結衣「でねでね、戸部っちがまた姫菜に冷たくあしらわれたって嘆いててー」


雪乃「由比ヶ浜さん。その話、一色さんの前でしてもよかったのかしら?」


結衣「あっ!」


いろは「あー、戸部変態の好きな人の話ですー? ならとっくに気づいてますし、問題無いですよー」モグモグ


八幡(今この後輩、変態って言った? 粗食中だからいい間違えただけだよね? 戸部が変態なわけがある)


いろは「ちなみに、わたしの好きな人はー……秘密、です♪」


雪乃「……」


いろは「……先輩方が好きですよ、私は。こうして奉仕部でもないのに、迎え入れてくれてて嬉しいです」


雪乃「あなた、言っても帰らないじゃないの……」


雪乃「ところでさっきから、一言も発さないぼっちがいるんだけれど?」


八幡「お食事中は静かにしなさいってばっちゃが言ってた」


結衣「ヒッキーの言うことって、正論だから困る。けどネガティブ」


 ガヤガヤ


 ガヤガヤガヤ


 楽しい食事の時間は、気づくと終了し。


いろは「さてさて、注目の採点タイムです♪」


八幡「くそめんどくせぇ……」


雪乃「嘘をついたらただじゃおかないよ」


八幡「雪ノ下さん、目が本気すぎます。ほんと勝負事には目がねぇな……」


八幡「あー、由比ヶ浜のスープだが」


結衣「う、うん……あたしの評価からかぁ」


八幡「夏野菜の一部が煮えていない。コンソメが薄くてコンソメの味がしっかり感じられないが、夏野菜の旨味が助けている。美味いかどうかで言われたら、誠に如何ではありますが美味でした」


結衣「言い回し難しくしても、バカにされてるのくらいわかるんだからね!?」


八幡「雪ノ下のハンバーグ。これは文句なしの一品だった。溢れ出る肉汁はじゅわっと鉄板で跳ねて踊り、肉を噛んだ時に口内をこれでもかと覆い尽くす。肉自体も非常に柔らかく、しかし食べているという実感と快感を十分に与えてくるため、食事をすることそのものの満足感までもしっかり演出されている。なにより絶品なのはこのソースだ。肉汁を使っていることでハンバーグそのものと非常に合い、肉の旨味を邪魔しない程度に、でも確実な味付けとして確立されている」


いろは「うわ……なんか先輩、キモい」


八幡「ガチの引きはやめろ。最後に一色、お前のデザートだが」


いろは「……ゴクリ」


八幡「主力はフ○ーチェという、どの家庭でも手軽に用意できるものだ。そこにクリームや様々なお菓子を絶妙なセンスで飾り、アイスを乗せ、夏らしくかつ食事で疲れた口をさっぱりリフレッシュまでさせてくる。甘くて美味い上に後味も最高となると、文句のつけようがない」


結衣「なんかあたしだけコメント短くなかった? ねぇ?」


八幡「今回の勝負、2人共持てる力を出し切ったんだと思う。だからこそ俺は、その覚悟を尊重し……あえて、引き分けを言い渡す!」


いろは「……はぁ」


雪乃「優柔不断ね」


いろは「そういうの、女の子に嫌われますよー?」


いろは「あ、でも考えようによっては、そのオチでいいかも♪」


結衣「やっぱり2人には勝てないかぁ……」


雪乃「また、一緒にいろいろ作りましょう」


いろは「では、2人勝利ということで。由比ヶ浜先輩が、お皿洗いですね!」


結衣「あああぁぁぁぁぁぁぁ………ま、仕方ないかぁ」


雪乃「いいわ、由比ヶ浜さん。私も手伝うから」


結衣「ゆきのーん!」ダキッ


八幡「ったく、仲のよろしいこって」


いろは「せんぱーい!」ダキッ


八幡「!!?」


いろは「先輩、可愛い反応しますねー。ま、離してあげます」パッ


八幡「おおお、お前はホント……何がしたいんだ、いつもいつも」


いろは「それがわかれば、苦労しませんよ」


八幡「一色?」


いろは「あ、いえいえー! 可愛い後輩に抱きつかれて嬉しくない男子の先輩っていないと思ったんですけどねー。先輩みたいなのがいるって知れただけで、大きな収穫ですよ」


結衣「ゆきのん! 今度また、料理教えてよ!」


雪乃「ええ、構わないわ。なんなら、明日の料理はそうしましょうか……3日目に外食に行きましょう」


全員《イエス・マム!》


八幡「全員生き残れたことに……感謝!」


結衣「バカにし過ぎだからぁ!」


【ついに、命をかけた食事が始まる】 終


一日目の夜、やはり定番を遵守する


八幡「はぁ? 肝試し?」


いろは「うわー、あからさまにめんどくさそう……いいじゃないですかー、肝試し」


八幡「いやなに、あれだよ? 肝試しとか試さなくても、ぼっちは肝座ってるからね? 常に教室の住みに座ってられるもん」


いろは「やっぱり怖いんでしょー、先輩? だいじょーぶです、わたしが手を握ってあげますから!」


八幡「いらねぇから……」


結衣「で、でも、肝試しって誰が用意してるの?」


雪乃「姉さんよ」


八幡「あの人、暇なの?」


いとは「いいじゃないですかー。やっぱなにかイベントがないと!」


八幡「暑い。暗い。ここでのんびり読書してるのが志向。マッカンがあるとなおよし」


いろは「でもー、陽乃さん? でしたっけ? あの人の意向に背くのってまずくないです?」


八幡「ぐっ……」


いろは「学園祭の時も思いましたけど、あの人、下手に刺激すると怖そうですけどー」


雪乃「あら、姉さんの裏の顔、見抜いたのかしら?」


いろは「まぁ、わたしも似たようなもんですし……あはは」


八幡「いや、雪ノ下姉……要するに姉の下はお前の比じゃないぞ」


雪乃「そうね。同意せざるを得ないわ」


結衣「たはは……でも行こうよ! 想い出になるもん……ヒッキー、ダメ、かな?」


いろは「ここで断ったら先輩、最低ですよ?」ジーッ


雪乃「そうね。目だけじゃなく根性まで腐ったらもう、生ごみのほうがよほど存在価値があるわ」


八幡「はぁ……わかったよ。んで、行くなら行こうぜ。さっさと行こうぜ」


いろは「やる気出したらやたらと積極的ですよね、先輩」


雪乃「この男のそれは違うわ。早く終わらせたいだけよ」


八幡「よくわかってんな、お前。さすがはユキペディア先生」


結衣「えーっと、開始地点はこの別荘でいいみたい。近くの神社まで行って、証拠としてあらかじめ設置している缶バッチを取ってくるようにってさ」


いろは「加えて、必ずペアで行くこと……ということですけどぉ」


いろは「当然、わたしは先輩とペアですよね?」


結衣「えっ、い、いやー、ここはあたしが受け持つよ! ほ、ほら、ヒッキーが途中で帰らないように監視しないとだし!」


雪乃「そういうことであれば、私が適任ではないかしら。この男があなたたちに危害を加えないとは限らないもの」


いろは「わたしぃ、先輩と組みたいですぅ」


八幡「なにこの後輩、あざとい。可愛い仕草はやめろ、勘違いするぞ? いいのか? ああん?」


雪乃「斬新な脅しね……」


結衣「埒が明かないよこれ……」


八幡「おお、すげぇ。由比ヶ浜が難しい言葉使ってる」


結衣「バカにしすぎだからぁ!」


いろは「で、どうします? 先輩が誰と行きたいかを決めれば話が早いんじゃないです?」


八幡「やめろ。全ての責任を俺に負わせるんじゃない」


結衣「ひ、ヒッキーは誰を選ぶのかなぁ……」


八幡「なに? なんでマジで俺が選ぶ立場みたいになってんの?」


雪乃「そうね……早くしないとどんどん夜が更けるし、早めにしてちょうだい」


八幡「くそっ……待ってろ、鉛筆買ってくる」


いろは「受験のやつやる気ですね?」


八幡「なんでバレるの? 経験者?」


いろは「ま、なんでもいいですけどー。鉛筆ならそこにありますし、使えばいいじゃないですか」


八幡「あ、そうね……」


八幡「数字書いて転がして……っと」


1,2→いろは

3,4→結衣

5,6→雪乃


コロコロコロコロ……


コロコロコロコロ…


…………


八幡「2、だな」


いろは「ほら、やっぱりわたしじゃないですか♪」


八幡「誠に遺憾ではあるが、鉛筆が決めたんじゃ仕方がない」


いろは「そんなにわたしは嫌ですかぁ……そうですか……」


八幡「……ちっ、なんだ、その……あれだ。あんまり可愛い子と一緒にいると、緊張すんだよ」


八幡(まぁ、見てくれのこと言っちゃうと、ここの3人全員、美少女なんだけどね! 加えて俺もメガネかけてたらイケメンだから、なにこのリア充集団)


いろは「……っ! な、なんですかそれ口説いてるんですか。あわよくば暗闇にかこつけてラッキースケベ狙ってるとか甘いですからごめんなさい」


八幡「お前、妄想癖でもあんの?」


結衣「ゆきのん! この2人ほっといて、先に行こ!」


雪乃「ええ、そうね由比ヶ浜さん」


【一日目の夜、やはり定番を遵守する】 終


そして彼女は肝を試す


いろは「ねぇ、先輩?」


八幡「なんだよ」


いろは「結衣先輩たち、遅くありません?」


八幡「道程は距離にして2kmほど。決して短い距離じゃない。5分やそこらで戻ってくるわけねーだろ」


いろは「えー? まだ5分しか経ってないんですかぁー?」


八幡「時計見ろよ時計。お前らお得意のケータイがあるだろうが、ケータイが」


いろは「ケータイは、充電中です♪」


八幡「ねぇ、携帯って言葉知ってる? 必要な時に持ってこないでどうするわけ? 必要な時にそこにないとか、なにそれテレビのリモコンみたいじゃん」


いろは「あー、確かに。で、結局手でスイッチ入れたら出てくるんですよねー」


八幡「それアグリー」


いろは「でも別に、2人が戻ってくるの待つ必要なくないです? ほら、往復してると結構な時間じゃないですかー」


八幡「いや……仮に俺らが出発して、戻ってくるあいつらに出くわしてみろ。俺の顔であいつらの恐怖値が振りきれるぞ」


いろは「どんだけ自分の顔にマイナスの自信持ってるんですか……だいじょーぶですよぉー、先輩はカッコイイです♪」ダキッ


八幡「ちょ、暗闇ではやめろ」


いろは「暗闇じゃなかったらいいんですかぁー?」


八幡「そういうことじゃねーよ」


いろは「わたしー、怖いですぅ。チョベコワですぅー」


八幡「要するに超ベリー怖いってか? お前のその造語はなんなんだよ」


いろは「ともかく……実際のとこ、早く行って早く終わらしちゃったほうがいいんじゃありません? 先輩的にも」


八幡「あー、もうわかったよ。わかったからとりあえず離せ」


いろは「ちぇー。わかりましたよー」


八幡「ほら、行くぞ」


――――――


――――


――


八幡「しっかし、なんの意味があるんだ……進んでも進んでも、それらしい仕掛けが一切ねぇ」


いろは「そうですねー。せいぜい、お墓があったくらい?」


八幡「え、墓なんかあったの? なにそれ八幡怖い」


いろは「気づいてなかったんですか……ところでなんですかそのキャラ。八幡キモい」


八幡「言い過ぎだからぁ!」


いろは「あっはは、それ結衣先輩の真似です?」


八幡「はぁ……バカやってないでとっとと缶バッチ取ってくるか」


八幡「しかしほんと、意味がわからん……まぁ陽乃さんの考えが読めないのはいつものことだが」


八幡「わざわざ仕掛けもない肝試しをさせるとか……不毛だ。いや、不幸だー!」


いろは(なんとなく、わたしにはわかる)


いろは(これは、陽乃さんが用意した肝試しなんだ)


いろは「肝試し、ですよ」ボソッ


八幡「ん? なんか言った?」


いろは「難聴系主人公乙」


八幡「よく知ってたな……」


いろは「自分の興味ないことでも、場合によってはちゃんと知識を蓄える必要があるんですよー」


いろは(話題を広げたい人の得意分野とか……知ってないと、ね)


八幡「ま、それは概ね同意だな。コミュニケーションにおいて、相手の土俵に立ってやるのは話を円滑に進める一番の方法だ」


いろは「でも先輩、ぼっちじゃないですかー」


八幡「オチを取るんじゃねぇ」


いろは「あ、先輩先輩。見えてきましたよ、あれじゃないですー?」


八幡「結局、雪ノ下と由比ヶ浜にはエンカウントしなかったか……どれどれ、缶バッチは……と。あった、これか」


いろは「……? なんでしょう、このキャラ……」


八幡「…………わからん。だが言いようのない不安が襲ってくるような、恐怖を具現化したようなキャラクターだな」


八幡「おそらく、あの人の嫌がらせだ」


いろは「なるほどー……ね、先輩」クイッ


八幡「なんだよ、袖引っ張んな。霊的な何かに連れて行かれそうになったのかと錯覚しちまったじゃねーか」


いろは「先輩は、本物って何かわかります?」


八幡「は……?」


いろは「陽乃さんって、凄く美人でスタイルもよくて。しかも頭脳明晰で、人望も厚かったんですよね?」


八幡「ああ……そうらしいな」


いろは「でも、それって全部、陽乃さん自身が作り上げた偽物の仮面ですよね。自分しか作り方を知らず、自分しか着け方を知らず、自分すら脱ぎ方を知らないような、精巧な仮面。雪ノ下陽乃という、完璧に見える人間の模型」


八幡「……」


いろは「先輩は、その外面を知ってなお、他者を遠ざけようとしませんよね」


八幡「……なに、言ってんだか。俺は孤独と小町とマッカンをこよなく愛してるんだぞ」


いろは「それは、先輩が作り上げた先輩自身の仮面、ですよね」


八幡「……」


いろは「感情が本当でも……いえ、本当であればあるだけ、先輩は表に出しません。小町ちゃんやマッカンに対する気持ちは本当であっても、隠したい本物を隠す仮面に成り得るんです」


八幡「さっきからお前、何が言いたい」


いろは「怒らないでください、先輩。わたしは先輩を怒らせたいんじゃないんです」


八幡「だったら……早く、戻るぞ」


いろは「いえ、戻りません。もう少しだけ、話をしましょう」


いろは(そう。これは、作り上げられた機会だから)


いろは「わたしは今、肝試しをしているんです」


八幡「…………そうか。俺はもう、怖いのは懲り懲りだ。とっとと帰らせてくれ」


いろは「そうやって、逃げないでくださいよ。本当に本物が欲しいなら、逃げずにぶつかってください」


いろは「先輩、言ってましたっけ。一番怖いのは人間だ、とか」


八幡「……ああ、その通りだと思うぞ」


いろは「わたしも同意です。だからわたしは肝を試すことにしました」


いろは「先輩。わたしは、先輩を射抜きます」


八幡「なに? 俺、死んじゃうの?」


八幡「怖いのは……お前だよ、ほんと」


いろは「怖いのは懲り懲り、なんて言わず。先輩も、肝試ししてくださいよ。ね?」


八幡「…………はぁ。考えとく」


いろは「今はまだ、それでいいと思いますよー♪」ダキッ


いろは(だって、まだ)


八幡「あー、もう、だからくっつくな! 暑い歩きにくい! 小町だったらポイント振りきってるけど、お前からはあざとさしか伝わってこん!」


いろは「えー、いいじゃないですか。可愛い後輩に慕われてて♪ ……あ、慕ってると言っても、それは生徒会の手伝いとかの恩義があるって意味で、そっちの意味じゃないのでごめんなさい」


八幡「ついに俺が何も言わずとも振られるようになっちまったか……」


いろは「あははー♪」


いろは(わたしも、本物かどうか、わかっていないのだから――――)


【そして彼女は肝を試す】 終


Ex:彼らも例に漏れず、1枚の短冊に願いを込める


~時は7月7日~


いろは「っべーですよ、先輩! っべー♪」


八幡「うわ、うざい、帰れ」


いろは「可愛い後輩がわざわざ会いに来たというのに!?」