2015-06-09 01:52:16 更新

概要

熊野による一人前のお嬢様を目指す苦しい修行の旅が今、始まる(嘘
ところで鈴谷ってかわいいですよね




熊野「どうしてそう思うんですの?」



鈴谷「お嬢様ってのはなろうとしてなれるもんじゃないじゃん? 何をせずとも育ちの良さが体中から現れてるもんなんだよ」



熊野「あらまあ、それなら第一条件はクリアですわ」



鈴谷「いやクリアしてないから無理だって言ってんの」



熊野「どうしてですか、少なくともあなたよりはお嬢様然としていますわ」



鈴谷「そりゃあ私と比べたらそうかもしんないけどさ」



熊野「けど、なんですの?」



鈴谷「モノホンのお嬢様っていうのはあんな感じだよ」ユビサシ



熊野「あんな感じ?」チラッ






大和「それでは大和がお手伝い致しますね」ニコニコ



提督「ああ、助かるよ。ありがとう。それにしても大和は気遣いができるし、将来はいい奥さんになりそうだな」



大和「そ、そうでしょうか。提督の奥さんになれるでしょうか?///」






熊野「あれのどこがお嬢様ですの?」



鈴谷「熊野、お嬢様と言っても気高く振舞ってるだけじゃダメなんだよ。お嬢様ってのは財力はもちろん精神的にも余裕がなきゃ」



熊野「つまり何が言いたいの?」



鈴谷「人助けだよ、人助け。恩徳がなきゃ立派なお嬢様とは言えないね」



熊野「なるほど、善行を積めというわけですね」



鈴谷「そゆこと」



熊野「それなら早速人助けの旅にれっつごーですわ。鈴谷、お供としてついていらっしゃいな」



鈴谷(もうれっつごーとか言ってる時点でお嬢様っぽくないんだよなぁ)






~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~






熊野「とは言ったものの、具体的にどなたをどう助ければいいのかしら?」



鈴谷「そんなこと聞かれても困るんだけど」



熊野「言いだしっぺはあなたなのよ?」



鈴谷「えぇ……」



鈴谷「うん? あれ…」チラッ






暁「もうっ! どうしてくれるのよ! 暁のアイスクリームが落ちちゃったじゃないのよ」



響「もたもたして溶けて落ちたんだ。自分のせいだろう」



暁「なんですって!!」



雷「大丈夫よ暁。アイスクリームなんてなくても私がいるじゃない」



電「さすがに意味が分からないのです」






鈴谷「あの子たちの揉め事解消してあげたらどう?」



熊野「どうして子どもの喧嘩に首を突っ込まなければならないんですの」



鈴谷「喧嘩してるってことは困ってるってことでしょ。このまま放置して口を聞かない関係になったらどうするのさ」



熊野「な、なるほど確かに。鈴谷にしてはわかってますわね」



鈴谷「まあね」



熊野「わかりました。あの喧嘩、この熊野が収めて見せますわ」グッ






暁「もとはと言えば響、あなたが猫とじゃれあっているのに付き合ったせいで時間が経ったんじゃない」



響「それは言いがかりだ。暁だってアイスそっちのけで猫に夢中だったよ」



暁「響が構わなかったら暁だって構わなかったの!!」



熊野「ちょっと、そこの淑女諸氏。何を喧嘩なさっているの?」



暁「淑女? それってレディーのこと?」



熊野「そうですわよ?」



暁「さ、さすが熊野さんね。わかってるわ」ウンウン



熊野「そんなことより喧嘩だなんて関心いたしませんわ。姉妹ならもっと仲良くするべきです」



響「暁が因縁をつけてくるのが悪い」



暁「事実よ!」



熊野「お二人とも、もう少し落ち着いてくださらない? 一人前のレディーなら何事にも冷静でなくてはならなくてよ?」



暁「一人前のレディー!?」



暁「そ、そうね。暁が間違っていたわ。少し熱くなりすぎたわね」



響「私はお子様なので冷静になる必要はないね」



熊野「なっ」



暁「ちょっと響! いつまで意地張ってるのよ!」



響「暁が土下座するまでかな」



暁「なんですってぇ!!」カチン



熊野(そんなバカな。このくらいの年の子は大人扱いすれば機嫌がよくなるはずなのでは……?)






鈴谷「ちょっと君たち」



暁「鈴谷さん?」



響「何か用?」



鈴谷「ほら、この子見てごらん」



猫「ニャー」



暁「わぁ、可愛い!!」キラキラ



響「さっきとは別の子。可愛いね」キラキラ



鈴谷「でしょー? ここらへんには何匹か猫がいるんだよね。どの子も可愛いんだ。だからさ」



鈴谷「可愛い猫さんに足を止めた響も、目を奪われた暁も、二人とも悪くないと思うんだ」



暁「え、でもそれじゃ暁のアイスは……」



鈴谷「はいこれ」ピラッ



響「そ、それは!」



鈴谷「ふふん、間宮さんのところの甘味無料券なのだ。四枚あげるから姉妹仲良く食べておいで」ニコッ



暁「あ、ありがとう鈴谷さん!!」



響「ハラショー」



雷「私たちまで、いい人ね鈴谷さん」



電「なんか知らないけど、ありがとうなのです」



鈴谷「いいってことよ」



暁「響、さっきは暁が間違ってたわ。ごめんね」



響「いいや、私のほうこそ意地っ張りになってたよ。ごめん」



鈴谷「うんうん。じゃあ仲直りしたみたいだし、お姉さんはバイバイするね」



暁「うん、ありがとう鈴谷さん!」バイバイ



鈴谷「仲良くするんだよー」フリフリ






熊野「おかしいですわっ!!」



鈴谷「なにが?」



熊野「なにがじゃないですわ! どうしてあなたが喧嘩を収めてるんですの? だいたい間宮無料券なんて反則ですわ!」



鈴谷「え? お嬢様が財力にケチつけてどうするのさ」



熊野「それはそうですが……。しかし喧嘩は私が収めるはずだったのですが?」



鈴谷「あれ、そうだったの?」



熊野「あなたが提案したんじゃありませんか!!」



鈴谷「そうだったっけ? まあ、細かいことは気にしちゃ駄目だよ」アハハ



熊野「全然細かくないですわ。まったく」



熊野「ですが、これで徳を積んだ私は一人前のお嬢様にまた一歩近づきましたわ」



鈴谷「え?」



熊野「なんですか? まだ何か足りないとでも?」



鈴谷「足りないって言うか、お嬢様のおの字もなくない?」



熊野「なんですって?」



鈴谷「だってほら、お嬢様ってのはあんな感じだよ」ユビサシ



熊野「あんな感じ?」チラッ






榛名「提督、お疲れ様です。昼食の準備ができてます」



提督「お、ありがとう。ご飯作れるなんて、榛名はいい嫁さんになりそうだな」



榛名「そ、そんな、提督のお嫁さんだなんて/// でも榛名は大丈夫です」






熊野「あれのどこがお嬢様ですの?」



鈴谷「熊野、お嬢様なら何でも人任せにしちゃ駄目だよ。料理くらい自分で作れるようにならなくちゃ」



熊野「料理……。そういえば自分で作ったことありませんわね」



鈴谷「ほらね。料理もできないのにお嬢様なんて言ったら笑われちゃうよ?」



熊野「む、それなら仕方ありませんわね。料理の腕を高めるために鳳翔さんを雇いましょう」



鈴谷(雇うってなにさ。こっちから弟子入りすればいいんじゃないの?)






~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~






熊野「というわけでよろしくお願いいたしますわ」



鳳翔「私でよろしければ」



鈴谷「どうして私まで参加しなきゃならないのさ」ムスッ



熊野「何言ってるんですの? これを機会にあなたも修練を積むべきですわ」



鈴谷「えー、面倒くさいんだけどなぁ」



熊野「ぐちぐち言わないでくださいまし。それでもこの熊野の姉ですか」



鈴谷「へーい」



鳳翔「ではまず最初に、お二人の実力を見たいので何か簡単に作っていただけますか?」



熊野「了解ですわ」



鈴谷「ふぁーい」






……………………

…………

……






熊野「できましたわ。熊野特製おにぎりです!!」




<おにぎり? グチャァ……




鈴谷「おにぎりっていうか形の崩れたご飯なんだけど。つーかおにぎりって料理じゃなくない?」



熊野「何言ってるんですの? 『こんびに』でも販売されている歴とした料理ですわ。あの三角形のおにぎりは名品です」



鳳翔「それにしても形が歪すぎます。さては適当に両手で押し固めようしたのではありませんか?」



熊野「そ、そんなことありませんわ」アセアセ



鳳翔「おにぎりを三角形に握るときは、一方の手のひらともう一方の手の親指の付け根あたりで挟むようにして一辺ずつ作ってください」



鳳翔「間違っても三つの辺を一度に作ろうだなんて思わないでください。その結果がこれです」



熊野「うぅ」



鈴谷「熊野もまだまだだね」ハァ



熊野「そ、そういう鈴谷は何を作ったんですの?」



鈴谷「ん? 私? まあ私は無難に」




<チャーハン ☆キラキラ☆




鈴谷「チャーハンだけど?」



熊野「」



鳳翔「ふむ、この香ばしさ、パラパラしたお米に卵の風味、程よい大きさにカットされたチャーシュー。……完璧です」モグモグ



鈴谷「どもっす!」



熊野「」






熊野「おかしいでしょうっ!?」



鈴谷「なにが?」



熊野「なにがじゃないんですよ、どうしてあなたがあんなに立派なチャーハンを作れるんですか?」



鈴谷「えー、だって夜食のために自分で作ること多いからさ」



鈴谷「ふ、不健康な生活がかえって功を奏したと?」ガーン



鈴谷「そんな感じかな」アハハ



熊野「ま、まあいいですわ」



熊野「とにかく、これでおにぎりの作り方もマスターした私は一人前のお嬢様にまた近づきましたわ」



鈴谷「え?」



熊野「……今度はなんですの?」



鈴谷「いやだって熊野はまだまだお嬢様じゃないもん」



熊野「なんですって?」



鈴谷「ほらほら、お嬢様っていうのはあんな感じの人だよ」ユビサシ



熊野「あんな感じ?」チラッ






翔鶴「提督、出撃していた艦隊の報告書です」



提督「お、ありがとう。ところで翔鶴みたいな仕事できる人ってモテそうだよな」



翔鶴「ほ、本当ですか!? 提督が私のことを好いていてくださったなんて、感激です///」






熊野「あれのどこがお嬢様ですの?」



鈴谷「熊野、お嬢様ならなんでもテキパキこなせなきゃ駄目だよ。何もできないんじゃグータラニートと一緒だよ」



熊野「むう、それもそうですわね」



鈴谷「やっぱり何でもそつなくこなす女性っていいよねぇ」



熊野「そうと決まればすぐに実行ですわ! 間宮さんのところに行って仕事を手伝ってきましょう」



鈴谷(あれ? そこは提督の仕事を手伝う流れになるんじゃないの?)






~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~






熊野「よろしくお願いしますわ」



間宮「ええ、こちらとしても人手が増えてくれて助かるわ」



鈴谷「だからなんで鈴谷まで……」



熊野「職業体験です。いい経験になると思いますわよ?」



鈴谷「そりゃあそうかもしれないけどさ」



熊野「さ、間宮さん。最初は何をすればよろしいですか?」



間宮「そうですね。お料理や甘味の用意は私がします」



間宮「なので一人はみなさんの注文を聞いて私に教える係、もう一人はお食事をみなさんにお届けする係にしましょうか」



熊野「なるほど、それなら私が注文を聞いて回りますわ」



鈴谷「じゃあ鈴谷がお届け係だね」



間宮「お二人ともよろしくお願いしますね」



熊野「お任せくださいな」



鈴谷「おっまかせー!」






……………………

…………

……






熊野「えーっと、もう一度おっしゃってくださいますか?」



加賀「ですから、この『超特大三段重ねサインドイッチ』と『超特盛大人二人前うどんスペシャルバージョン』の二つです」



赤城「私は『慢心、ダメ、絶対! 慢心にカツカレー』と『腹ペコ一蹴大食いご用達ミラクルデラックスハンバーグ』でお願いします」



熊野「うぇっと……特大三段重ね……、すぺしゃるばーじょん……」カキカキ



熊野「って長すぎますわ!! なんなんですのこの名前? 大人二人前とか名前に入れる必要あるんですか?」



加賀「いいから早くしてください。腹ペコでさすがに気分が落ち込みます」



熊野「もういいですわ! メニューを見せてくださいまし。見ながら書きます」



鈴谷「ちょっとちょっと熊野! なにやってるのさ」



熊野「なにって、注文をメモしているんですけれど」



鈴谷「駄目だよ熊野。お客様をお待たせするのはマナー違反だって。鈴谷が代わるから、熊野はお届け係やって」



熊野「え? ですが」



鈴谷「いいからいいから」



鈴谷「お客様、申し訳ありません。再度ご注文をお伺いしてもよろしいでしょうか?」ニコニコ



加賀「『超弩級盛・改二実装で強化された不幸姉妹のチャーシュー麺』で」



熊野「どんなチャーシュー麺ですの!? それよりさっきと注文変わってるのですが?」



赤城「なら私は『空母ご用達・ずいずい幸運空母のまっ平らだけど分厚い特大ステーキ』でお願いします」



熊野「これ本人たちに許可は取ってあるんですか?」



鈴谷「ほむほむ」



鈴谷「それではご注文を確認いたします。『超弩級盛・改二実装で強化された不幸姉妹のチャーシュー麺』一つ」



鈴谷「『空母ご用達・ずいずい幸運空母のまっ平らだけど分厚い特大ステーキ』が一つ。以上の二品でよろしいですね?」



加賀「オーケーです」



赤城「問題ありませんね」



鈴谷「かしこまりましたー。ではメニューはお下げしますねー」クイッ



熊野「なん……ですって……」






……………………

…………

……





間宮「熊野さん、お料理できたので運んでくださいますか?」



熊野「もちろんですわ。ようやく私の真骨頂を見せる時が来たようですわね」



間宮「それじゃあお願いしますね。『超弩級盛・改二実装で強化された不幸姉妹のチャーシュー麺』です」




<超弩級盛・(以下略 ドスン!




熊野「……あのすみません。大きすぎませんか?」



間宮「え?」



熊野「いや、え、じゃないですわ! なんなんですかこれは! 両腕で抱きかかえなければ運べないじゃないですか」



間宮「はい、抱きかかえてください」



熊野「なん!? ……いえ、これも一人前のお嬢様になるためですわ。気張るんですわ、私!!」グッ



熊野「とは言うものの、重いっ!! これを本当に、食べる人、なんてっ、いるのですかぁ!?」ゼェゼェ



加賀「ここにいます」



熊野「ひぃ、もう無理ですわ」ゼェゼェ



熊野「『超弩級盛……ええい面倒くさい! チャーシュー麺ですわ!!」ドン!



赤城「「あの、頼んだのは私じゃなくて加賀さんですが」



熊野「へ?」



鈴谷「熊野なにやってんのさ。早く移して移して」



熊野「移す?」



鈴谷「そうだよ、加賀さんの前に持ってこないと、お客様に失礼でしょ」



熊野「ま、またこのどデカいものを持ち上げろと?」ゾッ



鈴谷「もう、仕方ないなぁ」



鈴谷「よいしょっと!」グイ



熊野「な!?」



鈴谷「お待たせしました、『超弩級盛・改二実装で強化された不幸姉妹のチャーシュー麺』でっす!」ニコッ



加賀「ありがとうございます。この大きさ、香り、さすがに気分が高揚します」



間宮「熊野さん! もう一つのほうもお願い!!」



熊野「ヒッ!?」



鈴谷「あー、私が代わりにやるから」スタスタ



鈴谷「ういしょっと」グイ



鈴谷「よっこらせ」



鈴谷「はいっ! お待たせしました、『空母ご用達・ずいずい幸運空母のまっ平らだけど分厚い特大ステーキ』です」



赤城「やはり一日一度はこれを食べないと落ち着きませんね。いただきます」



鈴谷「ふぅ、さてと。……あれ、どうしたの熊野?」



熊野「・・・・・・もうなんか疲れましたわ」ズーン






熊野「おかしいですわよ……」



鈴谷「なにが?」



熊野「なにがじゃありませんの。もうすべてがおかしいですわ」



鈴谷「えーっと……大丈夫?」



熊野「ええ、大丈夫です。これくらいで挫けていては一人前のお嬢様にはなれませんもの」



熊野「もっとも、先ほどの苦行で一歩、私は一人前のお嬢様にまた近づきましたわ」



鈴谷「え?」



熊野「まだ不満があるの?」



鈴谷「不満って言うか、決定的に足りないものがあるよね」



熊野「なんですって?」



鈴谷「んー、なんて言うか、あの人のあんな感じが足りてないよね」ユビサシ



熊野「あんな感じ?」チラッ






隼鷹「ヒャッハー! 提督、お酒飲もうぜー!」フラフラ



提督「さすがだな隼鷹。真昼間から酒を飲むその勇気、そして酒への耐性と愛着心。とりあえず執務室まで来てもらおうか」



隼鷹「なんだよー、一人で飲むのが寂しいなら素直にそういえばいいのに、このこのぉー」






熊野「あ、あれのどこがお嬢様ですの?」ヒキッ



鈴谷「いんや熊野、お嬢様っていうのはおしとやかにしてればいいってもんじゃないよ」



鈴谷「あんな感じで時には豪快に、勇敢になることも必要だよ」



熊野「あれは勇敢と言ってよろしいんですの?」



鈴谷「見方によったら十分勇敢じゃない?」



熊野「まあですが、勇気が大切なのは認めますわ」



鈴谷「うんうん」



熊野「それなら早速、肝試しですわっ!」



鈴谷(……もうその発想がお子様なんだよなぁ)






~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~






熊野「というわけで夜ですわ」



鈴谷「うぃっす」



熊野「さあ、森の中を駆け巡って肝を試すときですわ。鎮守府の近くに森があってよかったと思ったのは今日が初めてです」



鈴谷「そんなことより熊野、美容のほうはいいの? エステとかは?」



熊野「美容なんて後でできますわ。今は肝試しのほうが重要です!!」



鈴谷「ええぇ……」



熊野「さ、鈴谷。行きますわよ」



鈴谷「ちょっと待ってよ。普通肝試しっていったら何か目標があるでしょ。お札を取ってくるとか」



熊野「そうですわね。それじゃあ木の枝一本拾ってくることにしましょうか」



鈴谷「そんなもん森に入口に落ちてるんだけど」



熊野「じゃあどうすればいいんですの?」



鈴谷「うーん、じゃあ心霊写真を撮ってくるとかどう?」



熊野「撮れるかどうかわからないですわよ?」



鈴谷「ん、じゃあ……確かこの森の中には祠があったから、そこで二人一緒に写真を撮ろうよ。それができたら戻るってことで」



熊野「名案ですわね。それじゃあカメラを持ってきますわ」



鈴谷「だいじょぶ。鈴谷が持ってるから」



熊野「準備がよろしいのね」



鈴谷「だってこの森、よく真夜中に誰かの叫び声がするって有名だもん。写真撮ったら映ると思ってさ」アハハ



熊野「……そ、そうなんですか。それは可愛いですわね」ブルブル



鈴谷「可愛い? 何の話してるの?」



熊野「う、うるさい!! とにかくれっつごーですわ!!」






……………………

…………

……






鈴谷「あちゃー、あっさり祠まで来ちゃったね」



熊野「と、当然ですわ。森の中を歩くだけなんですから」ブルブル



鈴谷「なんで足震えてるの?」



熊野「べ、別に震えてなんていませんわ。なにも起きないので残念さに身を震わせているだけです」



鈴谷「震えてんじゃん」



熊野「いいいから早く写真を撮ってくださいな!!」



鈴谷「そんなに怒んなくてもいいのに」ガサゴソ



鈴谷「じゃあ撮るよ」



鈴谷「はい、チーズ」カシャ



熊野「ふぅ、他愛もないですわ。あとは来た道を戻るだけ。この熊野の勇敢さに怨霊も恐れをなしたわね」



鈴谷「まあそういうことにしておくよ」



熊野「さ、戻りますわよ。早く戻らないと大河ドラマが始まってしまいますわ」



鈴谷「渋いよ、お嬢様渋いよ」



鈴谷「……ん?」



熊野「どうしたんですの?」



鈴谷「いや、なんか聞こえない?」



熊野「なんか?」



鈴谷「うん。ほら、だんだん大きくなってきた」




ァァァァァァァァ!!




熊野「ビクッ」



熊野「そ、空耳ですわ」



鈴谷「いや違うって。絶対何かの声だよ」



熊野「そんなことあるわけが」




ダァァァァァァァァァ!!!




熊野「あ、ありえません」ガクブル



鈴谷「これってもしかして噂の?」



熊野「ひゃぁぁぁぉぉぅぅぅぅぅ!!!!」



鈴谷「!?!?!?!?」ビクッ



鈴谷「熊野が壊れた!?」



熊野「目には目を、叫び声には叫び声ですわ!」ブルブル



鈴谷「小学生か!!」



熊野「す、鈴谷。私の美声に相手が聞き惚れている今のうちに戻りますわよ」ダッ



鈴谷「仮に足止めできたとしても、それはあまりの奇声に耳を塞いでるからだと思うけどね」ダダッ






……………………

…………

……






熊野「ハァハァ」



熊野「この道、どちらでしたっけ」



鈴谷「右じゃなかったっけ」



熊野「左だった気がするのだけど?」



熊野・鈴谷「「……」」



鈴谷「右だよ右!! 鈴谷の勘がそう言ってるもん」



熊野「勘なんて不確かなものより私の記憶のほうが確かですわ」



鈴谷「どうだか、熊野は方向音痴だから」



熊野「むぐぅ」



鈴谷「じゃあこうしようよ。鈴谷は右を行って、熊野は左を行く」



熊野「迷子になったらどうするんですの!!」



鈴谷「あれ、でも左の道で自信あるんでしょ? だったら一人でも大丈夫じゃないの?」ニヤニヤ



熊野「イラッ」



熊野「そこまで言うならわかりました。熊野は右を行きます」



鈴谷「いや右は鈴谷の道なんだけど」



熊野「熊野はみ・ぎを行きます」



鈴谷「はいはい、わかったわかった。じゃあ鈴谷が左に行けばいいんでしょ」



熊野「それでは鈴谷、怨霊の正体がわかったらあとで教えてくださいな」スタスタ



鈴谷「うぇっ!? 本当に一人で行くの? ……あちゃあ、挑発しなけりゃよかったなぁ。大丈夫かな、熊野」






熊野「もしこの道を行って出口に到達できなければあとで鈴谷をとっちめて差し上げますわ」スタスタ



熊野「……それにしても」



熊野「やっぱり一人は心細いですわね」



熊野「い、いいえ。お嬢様としてこんなところで音を上げるわけにはいきませんわ」



熊野「……?」スタスタ



熊野「祠から随分歩いたことですし、そろそろ出口が見えてもいいはずなのですが……」




ヨルダァァァァァァァァァァァァァァ!!!!




熊野「ビクッ」



熊野「ま、また叫び声ですの? それもさっきよりも大きくなってる?」



熊野「まさかこの近くに……」ゾッ



熊野「きぃぃぃぃぃぃぁぁぁぁぁぁうっぅぅぅぅぅ!!!!」



熊野「ゼェゼェ」



熊野「ふぅ、これで怨霊もおとなしくなってくれ――」




ソコニイルノハダレ?




熊野「!?!?」ビクッ



熊野(女性の声? い、いったいどこから)ガクブル




ダレカソコニイルノ?




ガサッ




ガサッ




熊野(ヒィィィ!! こっちに来ている!? ど、どうして……。ハッ!! まさかさっきの私のあまりの美声に嫉妬して?)



熊野(ああ、幽霊の嫉妬を買ってしまうなんて、私ったら罪な女)ハァ



熊野(などと言っている場合じゃなかったですわ)ブルブル




ガサガサ




熊野「ヒィィィィィ!!!」(頭抱え



川内「ひぃぃって失礼だな。こんなところで何やってるのさ、熊野さん」



熊野「ふぇ?」グスッ






……………………

…………

……





鈴谷「じゃあなに? 叫んでたのは川内だったの?」



川内「ふぁい」ボロボロ



鈴谷「なんでボロボロなの?」



熊野「夜に大声を出して迷惑をかけた罰ですわ」イライラ



鈴谷「ちなみになんて叫んでたの?」



川内「やっと夜が来たから、その嬉しさを叫んでたのよ。『夜だぁー』って」



鈴谷「はぁ、じゃあこの森で夜になると叫び声がするっていう噂は川内のせいだったってわけ?」



川内「え? そんな噂あったの?」



鈴谷「知らなかったの?」



川内「だって、私この場所で叫んだの今日が初めてだもん。さっきだって一回叫んだだけだよ?」



熊野「一回ですって? 何回も大きな声で叫んでたではありませんか!!」



川内「ホントだってばー。だってさっきまで夕食食べてたんだもん。嘘だと思うなら神通と那珂に聞いてみてよ」



熊野「……え、じゃあ途中何回か聞いたアレは?」



川内「え? 他の人が叫んだんじゃないの?」



鈴谷「……あ、あはは」






……………………

…………

……






鈴谷「熊野、この前森の祠で撮った写真、現像できたよー」ピラッ



熊野「あの時の写真ですか。まあ一応見て差し上げます」



鈴谷「ほら見て見て、綺麗に撮れてるでしょ」



熊野「本当ですわね。……でも鈴谷」



鈴谷「どかした?」



熊野「鈴谷、あなた頭の後ろに手がありますわよ? いったいどんなポーズで撮ったんですの?」



鈴谷「え? 鈴谷は片方の手でカメラ持ってて、もう片方はこっちでピースしてるからこの手は鈴谷のじゃないよ。熊野のじゃないの?」



熊野「私は両手をこの通り、体の前で結んでいます」



鈴谷「じゃあこの手誰の?」



熊野「……」



鈴谷「……」



熊野「コホン。……というように勇気もあることが証明されましたわ」



鈴谷「スルーした!?」



熊野「これで今度こそ、私は一人前のお嬢様にまた一歩近づきましたわ」



鈴谷「え?」



熊野「……なんなんですの?」



鈴谷「いやさ、熊野を見てるとどうしてお嬢様とは言えないんだよね」



熊野「なんですって?」



鈴谷「うーん、なんていうか……あ、そう! あんな感じあんな感じ!!」ユビサシ



熊野「あんな感じ?」チラッ






三隈「提督、今日も朝からお疲れ様です。そんな頑張り屋なところ、尊敬します」



提督「おう、ありがとうな。でもお前だって毎日演習とか頑張ってるだろ。お互い様さ」



三隈「お互い様……。提督もくまりんこのことを?///」






熊野「あれはお嬢様ですの?」



鈴谷「熊野、お嬢様っていうのは人のいいところを褒められる人じゃなくちゃ」



熊野「なるほど。自分にばかり目をむけず、他人のいいところを探して褒めるのも大事ですわね」



鈴谷「そうそう」



熊野「それならいいところが無い人たちを探し出して徹底的にいいところを褒めて差し上げますわ!」



鈴谷(……うん? 矛盾してね?)


























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1: SK 2015-06-08 21:11:39 ID: tJBZCGWp

おもしろーい! 熊野のちょっと抜けてる感じがすっごくいいです!

2: yamame_2K22 2015-08-11 18:10:52 ID: MwQyIA6n

流石嫁候補一位

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