2016-12-28 00:04:05 更新

概要

(12/28誤字修正←12/26 短編完結) 艦娘と深海棲艦の隠された謎に迫るため、自ら権力の中枢に近づいていった提督に下された命は、鹿児島鎮守府への配属と、薩南諸島に巣くう深海棲艦の殲滅。権力と死の影が蠢く中、僅かな希望を胸に戦いを続ける提督と艦娘たちが、それぞれの思いを胸に過ごすティータイム。 今回は金剛がメインです


前書き

・設定にオリジナルの解釈、要素があります。
・艦娘の建造方法は政府の中心部のごく限られた者しか知らないという設定です
・舞台は現実世界でのおおよそ1950~60年をイメージしていますが、同一世界ではないため、いびつな発展をしています
・文は基本的にセリフのみです

(簡単な設定紹介)
(提督)艦娘と深海棲艦の秘密に迫ろうと秘密裏に動いている。元帥の派閥に入り、権力を利用している。

シリーズ初回 : それぞれのティータイム 「提督」



(鎮守府周辺 庭園)



赤城「すっかり空が秋らしくなりましたね。」


翔鶴「本当ですね。案外この編み物も早く出番がやってくるかもしれませんね。」


瑞鶴「ええっ、私の手袋全然終わりそうにないんだけど……。」


加賀「鍛錬あるのみよ。集中しなさい。」


瑞鶴「加賀さんだって進んでないじゃない。」


加賀「……。」


翔鶴「まあお二人はまだ慣れてませんから、焦らずに。」


赤城「でも最初に比べれば随分と上手くなった気がしますね。」


加賀「……慰めはいらないわ。」


赤城「ふふ。まあ、苦労して作ったものほど愛着も湧くものですから。」


加賀「交換するものだから、あんまり愛着が湧いても困るのだけれど。」


瑞鶴「加賀さん。ちゃんと頂戴よね。」


加賀「あなたの方こそ出来上がりはいつになるのかしら?」


翔鶴「瑞鶴。先輩に失礼よ。」


瑞鶴「むう。」


赤城「そろそろ少し休憩して、ここら辺でお茶でも飲みましょうか。」


加賀「そうね。それがいいわ。」


翔鶴「金剛さんからお借りしたティーセットですね。とても素敵です。」


加賀「……昔は金剛さんたちが時々お茶会を開いてくれたわ。」


赤城「ええ、ええ。そうでしたね。懐かしいですね。」


翔鶴「そうなんですか?」


赤城「はい。手作りのお菓子なんかを持ち寄って、皆でおしゃべりして。」


加賀「賑やかだったわね。」


赤城「誰も監督する人がいない時を選んでらしたから……。ふふふ。」


加賀「好きなように愚痴をこぼしたりしていたわね。誰がとは言わないけれど。」


瑞鶴「えー、いいなあ。私参加したことない。」


赤城「そう言えば、案外翔鶴さんたちは金剛さんたちとは所属がすれ違ってますね。」


加賀「それに最近はあまり見なくなったから、仕方ないわ。」


翔鶴「残念ですね。」


赤城「そう思うと、戦いが激しくなって、私たちもいつの間にか余裕をなくしているのかもしれませんね……。」




(鎮守府宿舎金剛自室)


榛名「そういえば、この前お庭に赤城さんたちがいらっしゃって、みんなで編み物をしているのを見ましたよ。」


霧島「みんなでですか?」


榛名「はい。翔鶴さんに瑞鶴さん、それに加賀さんもいたんです。」


比叡「ひえー、嵐を呼びそうな組み合わせですねえ。」


金剛「……。」


榛名「でも皆さん和やかにされてて。加賀さんも瑞鶴さんに何か声をかけてましたし。」


比叡「意外ですねえ。」


霧島「実はもともと仲良しだった、ということはないかしら?」


榛名「それは……。」


霧島「ありませんね。はい。」


比叡「私、加賀さんが瑞鶴に話しかけてるのって、何かご指導とか、そういうところしか見たことがありませんでした。」


榛名「喜ばしいことですけど、何だか不思議な感じですね。」


金剛「……。」


比叡「お姉様?どうかされましたか?」


金剛「……no。ちょっとこの前のことを思い出していただけデース。」


比叡「この前、ですか?」


金剛「夜に提督に紅茶とクッキーを差し入れした時のことネー。」



霧島「提督は毎日根を詰めておられるみたいですね。」


金剛「私、今度の作戦で気になってるところがあったネー。だから提督に聞いてみたデース。」


榛名「気になっているところ?」


金剛「そうデース。」


霧島「どんなところですか?」


金剛「……もっと戦力が必要なのではと言いまシタ。」


比叡「ああ、そういえばお姉様は前からそんなお話をされてましたね。」


金剛「……でも提督は、与えられた戦力を使って最少の犠牲で最大の成果を得るのが自分の役目だ、と話されていたネー。」


比叡「犠牲ですかあ。はあ。さすが司令、シビアですねえ。」


霧島「すると、司令は今回の作戦で犠牲が出ることも想定している、と。」


金剛「そうかもしれないデース。」


榛名「提督は戦力に不満を感じてはおられないわけですね。」


金剛「nothing。そんな様子はなかったヨ。……大本営は機敏に対応したとjudgeしてたネー。」


霧島「なるほど。司令は大本営を評価してらっしゃるんですね。……そう言えば、司令のボヤいてる姿をお見かけしたことがないですね。」


比叡「あ、私ありますよ。」


金剛「really ?」


榛名「提督がですか?」


比叡「ええ。珍しく厨房の中におられたんで、どうしました、って声をかけたんですけど。そうしたら、比叡、うちの鎮守府は酒がなくなるのが早すぎて補充する言い訳が思いつかなくなってきた、ってボヤいてました。」


金剛「oh……。」


榛名「ああそういう……。」


霧島「主に軽空母が原因と思われますね。ええ。」


金剛「フフ……細かいところまでよく見ている方ネ。」


霧島「先ほどのお話ですが……こう言っては何ですが、司令の本音なのでしょうか?」


金剛「……少なくともおくびにも見せなかったネー。」


榛名「秘書艦の機会でもあれば、もう少しお気持ちが分かるのですが。」


金剛「提督は私たちに気を使ってマース。私たちにお鉢は回ってこないデース。」


霧島「まあ、仕方ありませんね。」


比叡「今更何を言っても始まらないですし、私たちが頑張れば、きっと大丈夫です!」


金剛「フフ、そのとおりデース。……でも気の毒なのはブッキーたちネー。」


榛名「……。」


霧島「……。」


比叡「金剛お姉様のご心配はもっともですが、ブッキーたちも一生懸命訓練していますから、何とかなります!」


金剛「そう、とても健気な子たちデース。才能もありマース。ここで終わっていい子たちではありまセーン。」


霧島「お姉様……。」


金剛「……替わりはあっても、取り戻すことはできないのデス……。」


榛名「……。」


比叡「え?替わり?……あれえ?」




(金剛の回想)


金剛「次の作戦のことですが、私から一つ提案がありマース。」


男「何だ?言ってみろ。」


金剛「夜戦時の探照灯の搭載艦をもう少し増やしてはどうでショウカ?」


男「照射する艦を増やせ、と?」


金剛「そうデース。今回は私たちの方が戦力的にかなり有利ネー。ですから、その火力を最大限発揮できるようにした方が損害が少なくなると思いマース。」


男「敵の砲撃を分散させ、より短期で決戦を挑んだ方がよいということだな。」


金剛「yes。」


男「……よかろう。採用しよう。よい案だ、金剛。」


金剛「youの作戦を任う者として当然ネー。」


男「……金剛。」


金剛「ハーイ?」


男「私を気安くyouと呼ぶな。」


金剛「……sorry。ただワタシは。」


男「艦娘としての貴様の本分を弁えろ。」


金剛「了解デース……。」




(鎮守府大会議室)


提督「これまでの調査の結果、敵中枢は諏訪之瀬島、護衛隊群は中之島に駐留していることが判明しているところだが。」


隼鷹「よくまあこれだけ集まったよなあ。」


提督「全くだ。人恋しくなったんだろう。……その攻略に当たって、我々は臥蛇島を中継地点及び観測地点に使う。理由は不明だが、トカラ列島のうち、臥蛇島は敵の防衛ラインには含まれていないようだ。」


あきつ丸「いよいよ自分の出番でありますなあ。」


提督「そのとおりだ。まずは臥蛇島上陸が前哨戦となる見込みだが、あきつ丸には臥蛇島での物見役となってもらう。」


加賀「危険な役目ね。」


あきつ丸「これが自分の本分でありますから。」


提督「我々の部隊は一旦西から大きく迂回して臥蛇島に集結し、そこから諏訪之瀬島及び中之島にそれぞれの艦隊が向かうことになるが、突入にはどうしても条件が揃う必要がある。そこで、あきつ丸には天候の観測所としても働いてもらう。」


金剛「もし万一臥蛇島が敵の防衛ラインに含まれていた場合はどうしマース?」


提督「その場合は口之島から、つまり北から順次攻略をせざるを得ないことになる。……できれば避けたい展開だ。その場合、敵の戦力の把握と分断は難しくなる。分断できなければ、港湾棲姫の力がいかんなく発揮される展開になる。」


赤城「水上艦の厚い壁に阻まれ、港湾棲姫への攻撃は届かない……。」


提督「それが我々にとって最も回避すべき展開だ。一応、その場合も踏まえて、臥蛇島攻略はできる限り隠密裏に進めようとは思う。」


伊19「私たちがお掃除してあげるのね。」


提督「頼む。潜水艦を先行させ、臥蛇島周辺にいる敵勢力は、それが少数ならばイクたちに排除させる。敵潜水艦の排除は対潜部隊のベテランにお願いしよう。」


由良「了解です。」


提督「この作戦は囮となる艦隊がどれだけ敵艦隊を引き付け、踏ん張れるかにかかっている。……派手にやってくれ。」


扶桑「心得ています。」


提督「今回の作戦の勝利は、敵艦隊を殲滅することだけでは足りない。お前たちが全員帰ってきてこそ本当の勝利だと考えている。そのためには、突入艦隊ができるだけ早く大将首を仕留める必要がある。」


金剛「金剛型四姉妹の力、見せてあげマース。」


加賀「迅速果断が一航戦の信条よ。心配はいらないわ。」


提督「頼もしいかぎりだよ。さて、概要は以上だ。次に各艦隊の個別の作戦行動を説明する……。」




提督「……以上だ。他に意見がなければこれで終わりにしよう。」


金剛「テイトーク。私から一ついいデスカ?」


提督「ん?何だ?」


金剛「もしものことデース。全員が帰ってこそ本当の勝利だ、と提督はお話されたネー。……では、どの程度までなら本当のではなくとも勝利と考えマスカ?」


球磨「クマ……!?」


提督「……そうだな。あらためて言うまでもないが、この作戦は我が国の南シナ海から東シナ海のシーレーンと、九州以南の住民の安全の確保を目的としている。その意味ではどのような結果であれ、それが達成できれば国としては責任を果たしたと言える。」


榛名「……。」


提督「……だが正直に言って一指揮官としてはその程度では不満だな。おれが求めているのは最高の結果だ。失うものが出てくればおれ自身としては我慢ならん。」


霧島「……。」


提督「そういうことだ。」


金剛「yes。よく分かったネー。」


提督「では解散だ。」




(提督執務室)


球磨「……まさかあの場で続きが始まるとは思わなかったクマー。」


提督「おれも油断していたが、あそこで元帥張りの腹の探り合いが始まるとはね。どうやら金剛の試験は終わってなかったらしいな。やられたよ。」


球磨「本音か建て前か確かめようとしたクマ?」


提督「どうなんだろうな。確かに、この前金剛に話したことと違うことを話せば、おれは金剛に他の艦娘には言えないことを話した、ということにはなる……。かと言って、堂々と同じ言葉を並べてしまっては、冷たい上官だと受け取る艦娘もいるだろう。腹の内は読めたと思われるのも癪だ。玉虫色の表現ってやつだな。」


球磨「提督を野心家と捉えるか、艦娘思いと捉えるかで意味が違ってくるクマ。さすが五十鈴が呆れる口先を持つ男だけあるクマ。」


提督「そこは素直に褒めろよ。」


球磨「クマー、あそこまでやるからには、やっぱり金剛には後ろ盾があるクマ?」


提督「何かはあるんだろう……だが、何だろう、違和感がある。上手く言えないが単純に探りに来てるっていうのとも違う気がするな。ただの勘だが。」


球磨「正体が分からないのは不気味だクマ。」


提督「まあ、乗り切ったからよしとしよう。……しかしやっぱり気になるな。」


球磨「回答としては良かったと思うクマ。」


提督「いや、金剛の態度のことさ。何か引っかかる。」




(鎮守府周辺埠頭)


金剛「テイトーク。戦果はどうデース?」


提督「ああ、なかなか釣れなかったんだけどな。何とかやっと大物が釣れたよ。」


金剛「それは良かったデース。何が釣れたネー?」


提督「そこ覗いてみてくれ。」


金剛「……何もないネー。」


提督「そうか?おかしいな……超弩級だからすぐに見えると思ったんだけどな。」


金剛「フフ……餌は何デシタか?」


提督「おれが一人でいることだよ。……なあ、おれから一ついいかい?」


金剛「何デス?」


提督「おれを測ってどうしようってんだ?」


金剛「提督は何でもお見通しネー。」


提督「皮肉にしか聞こえないよ。何でもどころか、目の前の美人が何を考えているかすら分からん。」


金剛「女心は複雑ネー。」


提督「川内あたりなら大体分かるんだけどな。」


金剛「……私、あの後色々と考えマシタ。」


提督「あの後?」


金剛「比叡のクッキーネー。」


提督「ああ、あれは驚いたな。今度はケーキでも頼んでみるか。」


金剛「フフ。それはgood ideaデース。きっと気合いを入れて作ってくれマース。」


提督「……まあ、怖いもの見たさだが、一度そっちのも試してみたいとは思うよ。」


金剛「あの時は驚かせてしまったネー。」


提督「いや。思っていることを率直に話してもらって良かったよ。」


金剛「あれは私の偽りない本心デース。」


提督「ああ。分かってるさ。」


金剛「……テイトーク。私たちが大本営の意を受けて派遣されたことは事実デース。youならすぐに分かったでショウ?youの要望と全く違う艦隊が増派された時点で。」


提督「よくご存じで。」


金剛「でもはっきりと伝えておきマース。私は大本営や元帥の手先ではないネー。」


提督「……金剛。」


金剛「この戦いはvery hardデス。でも誰にも死んでほしくはないネー。」


提督「……死なせるつもりはないよ。誰もな。前も言ったとおり、最少の犠牲で最大の果実を得るのがおれの信条だ。おれの麾下にスケープゴートなどいない。」


金剛「提督は頼りになる指揮官デース。私の質問への答えもperfectだったネー。」


提督「お気に召したなら何よりだ。」


金剛「youと話していると元帥を思い出しマース。」


提督「おれが?それは買い被りに過ぎるというものだ。」


金剛「……元帥は戦略家で策謀家、野心家でもありマース。そして目的のためなら手段を選ばない人デース。」


提督「それって褒めてるのか?」


金剛「提督……私は元帥のことをよく知っていマース。」


提督「元帥と二人三脚で今の鎮守府を作り上げたことはよく知っているよ。君たち金剛型四姉妹の歩みこそ、この国の艦娘の歴史そのものだ。」


金剛「歴史ですか……そうネ。そのとおりネー……。実は私、少し前までyouは元帥によく似ている人だとずっと思っていたネー。でも今は違いマース。」


提督「何だ、違うのか。」


金剛「元帥にとって私たちは手段でしかないネー。でも提督はそうは思ってないデース。」


提督「……おれには元帥ほどの能力はないからな。部下の機嫌も取っておかないと、いざという時に困るんだ。」


金剛「提督……私は元帥と共に幾多の作戦を遂行してきマシタ。長い時を共に過ごしたのデス……but、ついに元帥はyouと呼ばれることを一度も許さなかったネー。」


提督「……元帥らしいな。」


金剛「元帥にとって艦娘が対等の存在になることはあり得まセーン。……私、提督と球磨を見ていて気付いたネー。提督と元帥は大事にしているものが全く違いマース。本来は水と油のはずデース。」


提督「金剛は何でもお見通しデース。」


金剛「フフ……提督、youが何を目指しているのか私は知らないデース。でもyouが大切にしようとしているものは、きっと私が大切にしたかったものネー。……それを伝えたかったデース。」


提督「……。」


金剛「戦いの中で、忘れてしまっていたネ……。テイトーク。私はいつかまた、妹たちとティータイムを過ごすことを夢見ていマース。誰のことを気遣うでもなく、本音を全て笑って話すティータイムデース。」


提督「いい夢だな。夢であることが悔やまれるが。……その時はおれも一度くらいは一緒にさせてくれ。……ん?おれがいると本音で話せなくなるかもしれないのか。」


金剛「フフ、no problemネ。……maybe。」


提督「ダメじゃないか。まあ、いいさ。疎まれるのが上司の役目だからな。」


金剛「……少し気分がすっきりした気がするネー。」


提督「それは重畳。」


金剛「yes、私は戻らせてもらいマース。いいのが釣れるといいネー。」


提督「ああ、じゃあな。」





提督「……私は大本営や元帥の手先ではない、か。命を受けたのは榛名と霧島かな?奴らどこまで網を張っているのやら。……ありがとうな、金剛。お前の願い、確かに預かったよ。……歴史が君たち姉妹を引き離したのなら、新しい歴史を作ろう。どうやらおれの中の忌々しい存在もそれを望んでいるらしい。」





それぞれのティータイム 第10話 「金剛」

FIN


後書き

(簡単な設定紹介)
(提督)艦娘と深海棲艦の秘密に迫ろうと秘密裏に動いている。元帥の派閥に入っている。
(元帥)軍内部の有力者。大本営にも影響力がある。
(大本営)軍事に関する最重要事項の決定機関。合議体であるため、大本営の意思と元帥の意思はイコールではない。軍の方針、という意味でも使う言葉。

過去の作品

それぞれのティータイム 9  「叢雲」




それぞれのティータイム 6  「木曾」



それぞれのティータイム 5  「五十鈴」



それぞれのティータイム 4  「熊野」



それぞれのティータイム 3 「明石」



それぞれのティータイム 2 「吹雪」



それぞれのティータイム 「提督」


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