横須賀鎮守府店物語
横須賀鎮守府店。深海棲艦との戦いの基地の一つである横須賀鎮守府の福利厚生棟に入っている店舗だ。この手の店舗にしては珍しく24時間営業の店舗だ。
これは俺が社員として赴任していた1年間の回想録である。
俺が勤めている青いコンビニチェーンに限らず他の家族市場や朝の7時の所でも特定のものを大量に購入したいから取っておいて欲しいという客からのリクエストを受け付ける事がある。
「すみません。大量購入の予約をしたいデチが...」
「畏まりました。お幾つお取りしましょうか?」
「三箱お願いするデチ。予約名は潜水艦隊でお願いするデチ。」
この特徴的なしゃべり方をする方だけがリポビタンDを大量購入なさるかた思っていたが、意外と多くの方が予約している。
主計課、整備課、通信処理係、司令官秘書課などなど様々な部署から予約を受け取る。バックルームには常にリポビタンDの在庫が山になっている。オリコンを常時四つ以上使って保管していた。だがすぐその日のうちにはけてしまう。
リポビタンDとレッドブルだけで什器の棚一つ常時作っていたのは後にも先にもこの店舗にだけだった。
立地上、当店は客が限られている。ほとんどが自衛隊関係者である。そして人によってだが来店時間というのもだいだい決まっている。
「これとあとハイライトを。」
そう言ったのは北上さんだ。缶ビールにおつまみ、そしてハイライト。だいたい18時30分~19時の間にいらっしゃる。
「畏まりました。画面の年齢確認ボタンにタッチしてください。四点で1083円です。」
本来であればポイントカードの所持確認をするのだが彼女の場合不要だ。持つ気がないのである。以前ポイントカードいかがですかとお尋ねしたら
「いやー。職業柄、いつ死ぬかわからないし面倒くさいからいいよー。」
と言われてしまった。緩い感じでお断りされてしまったが、今でも私はあの笑顔でお断りされたのを妙に印象深く記憶に残っている。
他にも記憶に残るお客様はいる。
例えばたまに来るガングートさんだ。彼女は大抵、ポテチとコーラFF(ファストフードの事。レジ横の揚げ物等)をいくつかとアップルカードを購入なさる。あとで知ったのだが彼女のモデルとなった船、ガングートは旧ソ連の軍艦だそうだ。社会主義なのにあんな贅沢してよいのだろうか。
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