神聖μ’sic国家連合群 創世記
主にGATEがもし別の並行世界で発見された場合のIF小説を描いて見ました。
異世界にありがちな中世と魔法の世界を現代的な軍事国家に変える独裁者の物語を描きます。
この小説では実際のμ’sをつかった過激なイデオロギーの権力闘争と現代兵器の戦闘も描きます。
厨二病かもしれませんがぜひ読んでください。
勝手に書きます。ちなみにgateに出て来た主人公はどっか行きました。二度とでてきません。
議会とか大統領とかテキトーに書くけどどうせ崩壊するから間違えてもいいだろ?
[chapter1: 共和国の建国と崩壊 ]
2017年、突如銀座に「門」(ゲート)が開き、 モンスターを引き連れた軍勢が現れた。彼らは民間人を無差別に殺害し屍の山を築くが、自衛隊や警察の応戦により敵軍勢は壊滅、兵の1割を捕虜とすることで事態は収束を迎えた(銀座事件)。
特地(特別地域)と名付けられた門の向こうに膨大な資源が存在する可能性を知った日本政府は、自衛隊を特地に派遣。特地派遣部隊は門を確保し、そこに大規模な陣を築きあげた。特地の軍勢は門(聖地アルヌス)奪回のため進軍してくるが、一方的な殺戮に近い状態で軍勢は撃退される。
軍勢を撃退した自衛隊は、特地調査のため1部隊12名から成る偵察隊6個、深部偵察部隊を臨時に創設する。主人公の伊丹耀司率いる第三偵察隊(3Rec)は、植生や動物・地質等よりも人々との交流に重点を置くことで、自衛隊にとくに警戒心や敵意を抱いていない現地の住人と良好な関係を築いていく。wikiから
ゲートの発見から3年後の2020年、長らく続くアメリカやEUとの貿易戦争で疲弊した中国経済に少子高齢化、新疆ウイグル問題から発生したイスラムテロなどが原因で中国の不動産業および製造業は壊滅な打撃を被り、リーマンショックやブラックマンデー以来の世界的株価同時大暴落が発生した。
この人類史上最悪とも言える不況の津波に対抗するためEU諸国や北米、英連邦、そしてロシアは新貿易協定を結び、第二次世界大戦前にイギリスやフランスが行ってきたようなブロック経済政策を徹底させ、貿易協定の枠組みだけで取引をして被害を食いとどめようとした。こうして世界の物流が止まり、移民排斥運動も高まって来たヨーロッパでは右翼政党が台頭し、オーストリア、フランス、イタリアやスペインではすでに独裁政権が誕生、ドイツもそれに追従する形でファシズムの人気も高まるばかりだ。
東南アジア諸国やアフリカでは送り返された移民達と現地人同士の紛争が激化し、底をつきかけている援助物資や水資源を求めて熾烈な殺戮が繰り広げられていた。日本も例外ではない、貿易協定の枠組みに入れなかった日本は輸出品の取引先を失い極東の経済大国の威信は地に落ちた、雇用は大きく減少し若者が特地に川のように流れ日本の人口減少に歯止めが効かなくなって来た。中国や北朝鮮では暴動を期に内戦に突入、五ヶ月後には暴走した人民解放軍第二砲兵隊によって核爆弾が10発国内に落とされ人口の4割を文字通り”蒸発”させた。
世界が混沌と絶望に陥る中、特地は日系移民や現地人の懸命な働き、そして特地に派遣された自衛隊の武力により既存の帝国を崩壊させ開発地区として植民地にしたがカドレア自由軍の反乱により総督府が占領され異世界初の共和制国家カドレア国を建国を宣言、独立宣言書も出した。日本政府としては武力を使ってでもカドレア国を再占領させようと防衛出動を理由に自衛隊にカドレア国へ侵攻しようとしたが半数以上の部隊が出動拒否、出動した少数の部隊もカドレア軍との戦闘で大損害を被り、敵をを恐れた自衛官の敵前逃亡も多発した。この自衛隊の大失態を理由に、内閣総理大臣竹田十蔵は自衛隊がもはや侵攻軍として機能しないことを悟ったのか自衛隊に出動命令を取り消し、カドレア国と国交を樹立した。この期間に起きた陸上自衛隊と元自衛官の小規模戦闘をカドレア独立戦争または特地紛争とメディアは呼び自衛隊の練度の低さ、侵攻の愚かさを指摘した。
あれから10年後、国交も回復し、日系企業の働きかけと新貿易協定参加国、およびイギリスと旧英連邦諸国の多額の投資と移民によりカドレアは未曾有の経済発展をとげ、以前は何もなかった平野には上海のビル街の如く大量の高層ビルと、空港、高速道路、そして環境に配慮された上下水道が完備され、カドレア自身も巨大な産業基盤もでた。また、魔術と科学の融合による物質の等価交換法則の法則を利用した完全リサイクル術も完成した。旧文明では考えつくわけもないが、特定の座標にいかなる廃棄物質を置き転生術のスペルを唱えると物質が原子レベルで破壊され、望むものに物質が再構築されるという夢のような機構が作り出されたのだ。カドレア政府は新興国であった、カドレア国内に経済特区を制定。ある地域は経済特区にし、減税措置や支援金などで一気に産業を加速化させた。
そのほかにも、産業特区や観光特区など様々な特区を政府は儲けたが中でも飛び抜けて特徴的なのは魔術特区である。これらは魔術のさらなる発展と科学の融合を促進させるために作られた学園都市だ。この地区内ではありとあらゆる魔術学校や逆に科学的教育のための大学や教育機関を優先的に設置させ将来的なカドレアの魔術および科学界のエリートを育成させる重要な足がかりにするために作られた一種の実験都市でもある。これを機会に医者、弁護士、衛生士、魔術医療士、警察官や危険魔法士など様々な職業も細かく分類され資格制になった。
行政政府自身も随時その機能を更新させた、初期は二十名ほどの日本人と現地人で運営された暫定政府、というよりもはや村の寄り合いのような小規模な組織ではあったがついに大統領制を導入、主に議会への法案の提案や条約の締結、上院議員10名の直接指名権や大臣の指名も行える。大統領は国民の直接選挙で任命させられる。議会制は上院議員100名、下院議員500名を導入し法案は下院の賛成過半数を得たあと上院の過半数賛成で法案は可決させる。上院議員は国民の直接選挙で選ばれ、下院は州の選挙区から人口に基づいて議員が選択される。司法機関は議会からの指名で制定される。司法制度が発足されてから魔術法や通常法も多数制定された。主に先進国で見られるような殺人罪や強姦罪はもちろんのこと、危険魔法や危険キメラの制限および人体錬成の厳罰化や飛行魔法の免許制度などが制定された。
こうしてカドレア国は豊富な資源、科学技術と多様な人種および移民によって混乱はあったが大発展した、異世界でも類稀なる成長を遂げ世界最強の帝国、ベルスロア大帝国などの軍事国家すら手が出せない先進国となったのである。しかし、王政からの急激な民主化に反対する者王党派の抵抗や格差の拡大、また異人種同士による対立や組織的犯罪の拡大などで新政府の統率力を失い始める。そしてその機会を刻々とゆっくり待っている男がいた、いや男というよりもはや怪物であるソレはカドレア都市部の小さなカフェで政府に対する暴動を特集した記事を見ながらコヒーを飲み、Happymakerをイアホン越しで聞きながら不気味な笑顔を浮かべたのだ。
[chapter2: 第二部 怪物の目覚め ]
まだカドレアができる数年前の出来事である。
その男は歴史が何よりも好きだった、特に第二次世界大戦の歴史は彼にとっては読めば読むほどその深く恐ろしい暴力と殺戮の壮大かつ濃密なストーリーに心を奪われ食い入るように戦争に関する書物を読み漁っていた。高校に入ってからも親や友人の目を盗んで第二次世界大戦の歴史書、名将の自伝や兵士の日記に兵器の図鑑まで自分の大事な貯金を食いつぶしながら読んでいた。戦車師団が大地を揺らし、航空機が鳥のように空を舞い、機動艦隊が大海原を威風堂々と航行している姿を見てその勇ましさに感動した。轟音に包まれる戦場や、手足が人形のように簡単に捥げ、人々が機械的かつ統計的に死んでいく現実に恐怖もした。それに砂漠の狐と恐れられたロンメルやドイツ軍を打ち破ったジューコフの優れた戦術や戦略そして人望には脱帽してばかりいた。自分もこんな風になりたい、英雄になって後世に名を残したい。そんな強すぎる野心だけを胸に抱きながら彼は父の進めで家業の小さな町工場をついだ。
男の仕事はそれなりにうまくいってた、建築機械の部品を作っていた千葉の町工場は特地の建築ラッシュのおかげでそれなりに商売を軌道に載せることができた。以前は不況で倒産の憂き目にあった時期もあったがそこは両親が必死で働いて食いつないでいた。その頃男は不況と紛争だらけの世界に絶望を感じながらも中国の内戦の状況を調べては戦術や兵器の妄想をしながらぼんやりとした学生生活を送っていた。
もちろん彼の友人は彼が戦争好きなのを知らない、当時は戦争の話題は避けられていたし政府も過激思想の活動家を手当たり次第逮捕していた時期だ、そもそも最初から世間にミリタリーマニアの居場所はないことはわかっていた。彼には優しい家族も、友人も、それに恋人もいたこともあったが彼自身は何かがかけてるなと思いながら何がかけてるのかするらわからぬまま高校を卒業し、何がしたいかもわからぬままその仕事についたという。
そんな彼にも、一つ夢ができたのだ。
μ’s、ギリシャ神話の文芸の女神ムーサからつけられた架空の女子高生のアイドルグループだ。
名前は希という子がつけたらしい
9人の女子高生が、廃校の危機から学校を救うためにアイドルになって生徒を集めるといったストーリーのアニメが少し前に流行った。
最初の頃は特に大した感情を抱いていなかったが、特にやりたいこともなかった彼はそのアニメを見ることにした。ネットでラブライブと調べればすぐに出てくる。最初はありふれたストーリーだな、明日の宿題終わったけ?とかあまり集中せずに見ていたが、彼は彼女たちを、絵に書かれた女子高生がただ踊って、だらだら女子高生をやっているその姿を見るうちに心の中の何かが動いている感覚に襲われた。数十年動いていない錆びれた車のエンジンが勢いよく動き出したかのような。そのうち彼は危険薬物を打ったかのように幸せになりながら満面の笑みを浮かべそのストーリーの虜になった。こんな気持ちになったのは初めての歴史の授業で世界大戦の授業を習ったとき以来だ。廃校の危機から、9人組の結成、初めてのライブに新たなドラマ、そして出会いと別れ。
彼女たちは伝説のアイドルになったのだ、血が滲むような努力を続けとうとう勝ち取ったラブライブの優勝旗
彼女達はまるで硫黄島を攻略した米海兵隊が星条旗を立てかけるようにその旗を、誇らしくそして美しく掲げ勝利を宣言した。
勝利とは、こういうことだったのだ。
そして彼は終わりを見た。
三年生が卒業してしまうとスクールアイドルではなくなる、そしたらもう活動できないから終わりにしようと。
それはあまりにも突然、そしてあまりにも残酷な運命のいたずらであった。
彼は画面の存在しないはずの女子高生を見ながら、μ’sの終わりを告げられたときに果てしない絶望を感じだ。なぜ、創作上のアイドルが解散しただけでこの世の終わりのような絶望を感じているかわからないまま狂ったように泣き続けた。あまりにもうるさい声で泣き出したため、母親が心配して男の部屋をノックするまでになったが理由を言わずじまいだった。劇場版を見た後、彼はしばらく仕事にもどれず食事も睡眠も取らずにひたすら彼女が消え去るこの世を呪った。
憎しみ、無力感、絶望 言葉にできぬ負の感情が涙腺を使って頰を濡らした。
さあ!
愛してるばんざーい!
ここでよかった
私たちの今がここにある
愛してるばんざーい!
始まったばかり
明日もよろしくね
まだゴールじゃない
彼女達が卒業式で歌ったこの歌、優しい別れの歌
彼は今でも脳裏に焼きつき離れることができない。これからどうすれば良いのかすらわからない。
生きる希望を見つけたと思ったら神はそれをなんの造作もなく奪っていった
いや神など存在するのか?
もし神が存在するとしたら、そいつはこの情けない男を上から嘲笑しているのだろうか?
愚かな男だ、存在せぬものに心を奪われたのかとそう思いながら俺の希望を奪ったのか?
俺の希望を、俺の生きる教えを、俺の神を
神と自称する傲慢な何かが奪ったのではないのか?
俺は認めない、認めるものか”自称神よ”
彼は信じていなかった神を恨み始め、消え去ったμ’sを、あの栄光を取り戻すと心に誓ったのだ。
そして銀座にあるあのゲートをふと思い出した、今までμ’sに気を取られていたが魔術の存在するあの世界に”神”は存在するのであろうか?
いや、もしやμ’sでさえも。
男は答えを探しに、特地へ旅だった。
簡素な置き手紙を残し、なんとかやりくりしながら貯めてきた貯金とパスポート。そして少量の衣類をリュックに持ち出して真夜中に家をでた。
外を歩きながら、少しづつ遠ざかる家を見ながらもう二度と戻ることはないだろうとさとったが不思議と寂しさを感じなかった。今まで育ててもらった両親や友人ももはやどうでもよかった、というよりも最初から気にしていなかったのかもしれない。
こうして一人の狂気に取り憑かれた男はまだカドレア共和国が存在していない特地特別開発地区を目指して歩き出した
本当の神を、ただ求めて
[chapter3: 第三部 特地での暮らし]
『それでは移住申請書の必要事項を記入してください』
若干やる気のない受付の青年に言われるがままにその男は移民申請書に名前、元の住所や旅券番号を書き出した。
彼は満18歳であったがために親の承諾無しで自由に開発地区に移り住むことができた。
当時の日本政府は開発のための移民を承認し、新規移民のための職業や住居、最低限の生活を保証して特地に移そうと政府主導の支援を大々的に行なっていた。特地ではすでに技術者や警備の自衛官はすでに足りていたが熟練労働者の数が圧倒的に不足していた。男は労働者の行列に紛れながら静かにその時を待っていた。
申請書の発行には二十分もかからず彼はすぐに職場の紹介と宿の案内図を手渡され地図の場所通りの場所まで歩き出した。
特地では人工衛星は飛んでおらずGPSも使えない、そのため既存の携帯マップ機能は役に立たなかった。
幸い現在日本政府の指定する特別開発地区では上下水道と電気、ガスにWIFIケーブルが日本から接続されるため生活水準は日本とあまり変わらないそうだ。
そしてゲートに入り、暗く長いトンネルをしばらく歩くと舗装された道路と巨大な建設現場が見えてきた。以前はこのアルヌスの丘を原住民達が聖地として崇めていたので数十万の軍団でこれを日本から奪還しようしていたが、攻めたものは全員射殺されたか、榴弾で吹き飛ばされたという。今はそんな血なまぐさい雰囲気はなく、ただの再開発区にしか見えないが。
男はしばらくの間空港建設員として働き日銭を稼ぎながら公営アパートに住み、休日は特地で政治活動をしていた。
特地の旧帝国は解体され、旧帝国領土は現在、日本が建てた傀儡政権主導のもと開発が推し進められていた。表向きは日本政府のおかげで衛生環境も良くなり、人々に文化的な生活と仕事が与えられたと政府の公営テレビやメディアは伝えるが実態は悲惨なものであった。現地人は奴隷のごとく働かされ、非常に狭苦しい牢獄のような部屋に無理やり住まわされていた。それでも貧しい農村部からの移民が後を絶えず人口は増加の一途をたどり、都市部だけでも初期は200万程度だった人口が数年で450万を突破したが多すぎる人口は異人種同士の争いに発展した。この異世界の開発地域では、日本からの技術であまりにも突然な産業革命を迎え経済的には信じられないスピードで成長したがその成長に多くの人々がついていけず労働者は日本の巨大企業の奴隷となったのである。
男もまたその奴隷の一人に成り下がった、以前は小さいながらも町工場の長であった彼でさえも今は奴隷同然の生活を送っている。
しかし彼はそんなことはとっくに予想通りであった、ここまで酷いとは予見していなかったが彼からすばむしろ好都合であった。
日本政府は歴史から何も学んでなかったようだ、かつての大英帝国のインド支配やロシアのチェチェン占領の歴史を。
金に汚い企業達は民衆を力と金で抑え込めると高を括るっているようだが果たしてそれがいつまで続くだろうか?
都市部ではすでに現地人によるハンガーストライキや一部は暴徒と化して街を暴れまわってだんだん警察の手には追えなくなっているそうだ。
もうすぐでチャンスが来るであろう。そう悟った男はこの騒ぎにあえて火に油を注いでやろうとある計画を目論んだのだ。
[chapter4:レジスタンス]
男は特地の反植民運動 Sons of Liberty (自由の子供達)通称SOLという地下政治組織に入っていた。この運動に参加しているメンバーは主にやエルフ、亜人など現地民ではあったが意外なことにヨーロッパの圧政に耐えかねたドイツやフランス系移民、それにロシア移民もこの運動に参加していた。若干30名ほどの組織のリーダーはヒト属のトマシュという男であった、温厚な性格で人望もあったが詰めの甘い人間で優柔不断なところがあった。
トマシュ『そういえば、君はニホンからきたんだな?なぜ外の、しかもニホン人がこの運動に参加しようとするんだ?』
疑いの目で俺を見つめるトマシュは普段の彼とは違い、いつになく真剣な顔をして男に問いかけた。
男がなぜ薄暗い地下室で尋問を受けているのかは訳があった
数日前に男は特地で警備業務についていた自衛官を襲い、気絶させた後に64式小銃と9mm拳銃を奪い去って姿を消した。
しばらくして騒ぎが収まった後に、男は開発地区外のスラム街の情報屋に特地ではまだ珍しい拳銃と引き換えにSOLに自分を紹介してくれと頼み込んだ。情報屋の紹介で彼は表の顔は酒場になっているSOLの本部に単身で訪ねた。情報屋がいうには閉店直後に鍵の空いてる店の裏口に入れば組織の人間に会えるというのだ。半信半疑ではあったが仮に会えるのであれば土産物の分解された64式も無駄にはならない、彼はそう思いながら店の裏口の木戸を開けた。
店の中は暗く、まさに一寸先は闇であった。なんとか壁に手を当てながら前に進んだ瞬間に男は突然数人に腕を掴まれ頭を床に抑えつけられた。
『ニホン人だ!やっぱりスパイが来やがったんだ』
男はやや興奮気味に叫びながらなおも男を押さえつけた。
『クルド?捕まえたの?!』
今度は女の声だ、どうやらここでSOLに間違い無いらしい
『いや、待て!まだこいつの話を聞いてない、こいつをどうするからは話してからにしよう!』
どうやらリーダーらしい人物が現れ、他の3人を説得して男を地下に連れて行った。
男は特地の自衛官を襲った話や、情報屋からSOLのことを聞いたこと、そして自分もレジスタンスに入りたいことを伝えると一気に態度が変わった
フリン『じゃあアナタは本当にスパイじゃ無いのにゃ?』
華奢な赤毛の猫耳を生やした亜人は驚いたように男に問いかける
クルド『こいつのバッグに自衛隊の宝具があったぜ』
180cmを超えるだろうその大男は男のバッグをひっくり返して分解された64式を見ながら言った
男『それは銃だ、火薬の力で鋼鉄の弾丸を飛ばして相手を殺すただの武器だ』
クルド『これも奴らから?』
男『そうだ、一人でいる時を狙っていただいたものだ』
トマシュ『なぜこんな大それたことを?』
男『ちょっとした手土産にと思ってな、俺の理由があってここに来たんだし』
そして今に至る
男『自分も独立して自由に暮らしたいという夢があったが自衛隊に奪われてしまった。俺はこんな間違った世の中を変えたくてここに来た』
とさぞ説得力のあるような嘘の身の上話をしてトマシュにSOLに入りたいという意思をはっきりと伝え、入れてくれるならなんでもするとすら言い放った。
トマシュ『そうか...君もさぞかし辛かっただろう、だけど安心してくれ。ここは君の新しい家となり家族となるだろう』
とトマシュは敵意はない思ったのか突然態度を変えて男を歓迎しだした。
こうして男はトマシュの説得もあり正式にSOLに入隊し他のレジスタンスと一緒に反日本運動に身を投じることになる。表向きは労働者だが彼には裏でレジスタンスの生活に必要な物資の買い出しなどの雑用の買い出しと日本の情報収集、そしてできれば可能であれば武器調達も計画せよとの指示が降った。最初こそ彼はレジスタンスにしては地味な雑用ばかりこなしてはいたが、彼は豊富な銃器や自衛隊の戦術の知識を存分に活用してレジスタンスの武器調達長にまで昇進した。
そして彼がレジスタンスに参加して三ヶ月たった頃、組織でもかなり影響力のある人物にまで成長した彼は、月一のレジスタンス定例会議である提案を下す。
男『我々も武器を製造しよう』
トマシュ『どうしてだ?俺たちは武器ではなく話し合いで日本政府に出ていってもらうために政治活動をしているのにか?』
男『日本政府だってそんな甘くはない、俺たちも本格的に武装しないといずれ潰される。それに時には暴力的に出ないと市民に自分たちがどれだけ本気かアピールもできないぞ』
トマシュ『だけど、暴力で訴えたら奴らと変わらないじゃないか...俺はそんなのあまり好きじゃないな』
クルド『俺も反対だ、いくら俺たちが非合法組織だったとしても俺たちが武器を使うのは自分の身を守るときだけと決めたんだ!』
他の幹部たちもいささか武器製造には消極的だった、自分の保身のためか、または暴力的な手段が単純に嫌いなのか、理由はそれぞれのようだが多少の揺さぶりをかければどちらにも転がりそうだ。あともう一押し必要だ
フリン『私は....武器製造に賛成よ』
男とフリン以外の幹部全員が彼女を見つめる
トマシュ『え?』
クルド『おい!』
フリン『私たちだって武装しないと自分たちの身が危ないし、もうこれからは綺麗事だけではこの活動は続けられないと言っているの!』
流れが変わった、幹部たちは組織のナンバー2であるフリンが賛成だということが衝撃だったらしく自分の意見を変える奴もまで出て来た
予定通りだ、みんなは知らないだろうが男はフリンとかなり親しい関係であった。彼がレジスタンスで雑用をしている頃から二人は距離を縮め、今では二人はほぼ恋人同然であった。というよりも相手を愛しているのは少なくとも男ではなく愚かなフリンだけなようだが。トマシュがフリンのことが好きなのは彼が組織に入ってからすぐにわかった、だからこそフリンを抱きかかえとけばトマシュも裏で操ることができる。完璧だ、この会議の主導権を握ることができた。
トマシュ『うーん、でもどうやって武器を調達するんだ?、作りにも機械がなきゃ作れんし』
男『特別な機会はいらない、工具は俺が調達するが銃自体は鍛冶屋でも作ろうと思えば作れるものだ』
トマシュ『うーん、でも』
フリン『でもじゃないの!やるなら警察の目が届かない今しかないわ!私たちも武力で対抗するには武力しかないの!』
トマシュの心は揺れていた、あと一押し
クルド『ふざけるな!結局お前らも自衛隊と変わらないじゃないか!人を殺す革命なんてただの殺人だ!』
トマシュ『うーん』
フリン『もしうちで武器を作れないなら、私一人でやるわ!、こんな生ぬるい組織もやめてやる!』
トマシュ『おい!、わかったそうしよう!』
他の幹部も流れに任せるかのように続々と賛成しクルドと少数を除く幹部以外全員賛成して武器を製造することに決まった
トマシュ『ただし、武器は命令がある時にしか使わないこと!そして管理は彼に任せること!』
とトマシュはみんなに男を指差しながら念を押した。
[chapter5: 武器の密造 ]
SOLのリーダーであるトマシュが武器製造に賛成したことで、レジスタンスの武器事情は大きく改善した、以前はそれこそナイフ一本か、あっても弓矢や吹き矢といった原始的な武器しか存在していなかったが、男の仕入れた工具と町工場で養った金属加工の技術がレジスタンスの武器事情を大きく変えた。ゲートの検閲は非常に甘く、工事用車両やトラックであればあとは移民証明書さえあれば検査もされずに通された。まだ日本政府は異世界人に銃器や危険物を作るのは無理だろうと思い込んでるのだろうか。レジスタンスの武器製作チームは合法的に買った軽トラを使って銃器製作に必要な工具や必要なら中古の工作機械すら購入してトラックで搬入していた。
一旦トラックが特地に入ってしまえばあとは簡単だ。特地の開発区を出た先は日本政府ですら把握していない未開の地であり、レジスタンスたちは特地の外れの古城に小規模な武器製作所を構えた。幸い男には機械のノウハウと銃器の知識が豊富なため時間はかかったものの質は悪いが引き金を打てば弾丸は出るライフルらしき代物はできた。しかし武器の質は劣悪で狙っても弾丸がそれてしまったり、暴発するなど初期の銃はあまりにも危険すぎた。しかも連中は素人なので銃の危険性を理解せず銃口を自分の頭に向けて脳みそを吹き飛ばすやつまで出て来た。これにはトマシュもショックだったらしく、銃器製造に反対しようと考えたが男はフリンに説得させて黙らせた。
しかし工作場のみんなもだんだん作業に慣れて来て、サイトやライフリングの改善をしてみたり、射撃精度を上げるためにストックを作り始めたりして日々武器の質は上がって来ておりついに彼らはak47の製造を完了した。
ak47とはソビエト連邦時代にミハイルカラシニコフが発明した自動小銃である。自動小銃のコンセプト自体はドイツのSTGシリーズやフェドロフなどがすでに存在はしていたのだがakの利点は部品の少なさと信頼性の高さにあるのだ。砂を入れようが水につけようが撃つことができ、かつ精密機械などを使わなくとも作れるところに利点があった。
レジスタンスの記念すべき1丁はトマシュに手渡され、彼は自分の銃が五十メートル先の空き瓶に弾が命中したことで、命中精度もそれなりにあることを理解し、akが効果的な武器だと納得した。だが、クルドはこの銃のことを快く思っていなかった。クルドは三年前に親友をアルヌスの会戦で亡くしたらしい、彼からすれば親友の命を奪った銃という存在が許せず、何よりもその力を使って暴力的に革命を起こそうとしている男を許せなかった、クルドはこの男はいずれ目的のためなら自衛隊みたいに多数の命を奪うことすら厭わない冷酷な人間だと薄々気づいていた。しかし男自身も平和主義で何かと自分に逆らおうとするクルドやそれに賛成する奴らを警戒し、排除する方法を模索していた・
[chapter5: 最初の抵抗 ]
特地監督官平沢幸雄の指導により、現地人のデモ活動に対し放水や機動隊での本格的な鎮圧が開始された。政府はこれを秩序ある社会を取り戻すためと説明するが要は邪魔者を排除しているだけにすぎない、これらの政府の行動に特地に派遣された自衛官たちですらこの鎮圧活動を快く思っていなかった。自分は圧政からの解放者ではなく、ただ国の富を奪っているよそ者にすぎないとすら感じ自分を責める者まで出て来た。しかしこれらの鎮圧活動では効果は得られず住民の暴動は激しさを増すばかりであった。中には市庁舎や警察署に火炎瓶や投石を行う者や馬で機動隊に突っ込むものまで出て来て収拾がつかなくなっていた。政府の鎮圧作戦から二週間後にはアルヌスの丘に百万以上の群衆がゲートを囲い込み異世界と日本の経済活動を妨害した。レジスタンスに入隊する者も増加し初期は30人あまりだったのが今や数千人以上にものぼるという。古城の武器工場も増産体制に入り、一週間で200丁余りのak、1000個あまりの火炎瓶の製造に成功し今やレジスタンスは駐屯している自衛官よりも数的優位を確立した。途中で日本警察の妨害もあったが都市部の大規模なデモがあまりにも激しく、自衛隊や警察を出そうにもアルヌスの丘前の都市の治安維持にあまりにも多くの人員がそこに割かれた。
SOLも改名して"Free Rebel forces of Cadrea" カドレア自由軍となり、今では世界でも有数の武装組織となった。カドレアは現地の伝説上の神の国の名前で、自由の女神の元に人々が豊かで平等に暮らしていたとされている、現地人も自分自身をカドレア人と名乗り日本に対抗することで団結力を深めていた。この運動に参加したのは現地だけの人間だけではなくヨーロッパからの移民や日本人も大量に含まれていた、彼らは自由を求めてカドレアの地にやって来たのに日本の大企業や腐った政治家に全てをコントロールされているのが非常に気に入らなかった。何よりも特地監督官平沢幸雄の鎮圧作戦では警察により死者も出ており恨みを抱えている人間がどんどんレジスタンスに流れ込んだ。
これらの自由軍を統括する司令官になった彼には5000人あまりの反乱軍の前でスピーチをすることになった、異世界人初の銃による実戦に不安を覚える者も少なくなかったが、自由軍総司令はカドレア人民の自由と平和を勝ち取るチャンスだと美麗字句を並べ立て大げさなジェスチャーとハリのある声で兵士たちを鼓舞した。そして総司令はカドレアは神によって作られた神聖なる土地であり、この土地のためには命を捨てでも戦わなければならないと強調し、彼は握り締められた拳を高らかに挙げ、カドレア共和国の建国と独立戦争を叫びこれに群衆は熱狂した。
はっきり言って世界観が細かすぎるからついていくのは大変だけど雰囲気はあるしとてもいいと思う。
中国滅んだんか...