ネナシグサと空白〜着任前編〜
拙い文で、誤字脱字もするかもしれません
妄想垂れ流しで見てられないって感じる場合もあります。
それでも閲覧してくださる方は生暖かく見守て頂けると幸いです。
ちなみに提督はペイ
北「」
で表現します。
コメントもお待ちしております。
2017年の寒さが残る季節に北は夢挫折した。
6割、たった6割の壁を乗り越えることが出来ず諦めた。
なにもかも嫌になり逃げ出した。
結局、たどり着いたのは生き死にの二律背反。
死に場所を探す逃避行の果てに北は鎮守府にたどり着いた。
〜北〜
日振「あのぅ…大丈夫ですか…?」
北「…ここは…。」
そうか、あれから数ヶ月 食うや食わずの生活、貯金も底尽き僕は海岸からの投身自殺を選んだ。
全身を強い衝撃が駆けた。波で岸壁に叩きつけられ全身がバラバラになったかのような感覚。
いつの間にか浜辺に打ち上げられた。
日振「ちょっと待ってて下さい。直ぐに明石さんを呼んできますから!」
"僕を助けないでくれ" と言う言葉は少し遠くに見える施設に走っていく幼女には届かなかった。
生命が保証された安堵感とは裏腹に絶命を完遂出来なかった罪悪感に苛まれながら逃げるように意識は消息不明。
不思議な夢を見た。まだ頑張っている同期や友人、慕ってくれた後輩、家族や恋人。
もう戻ることは出来ないし、あそこには居られない。
北「…っ!?」
嫌な目覚めだ。全身が鉛のように重く絶えず鋭い痛みが襲ってくる。
鳳翔「あら、目が覚めましたか?まだ動いてはいけませんよ。」
声のする方向に目を向ける。そこには浜辺で見た幼女に雰囲気の似た女性が座っていた。
北「僕は…ここに、居ていいんですか?」
ここが何処なのかも分からないまま、そんなバカげた質問をした時ちょうど部屋の戸が叩かれた。
明石「お、本当に目を覚ましたみたいですねぇ!」
日振「失礼します。」
戸を開けたのは煤けた白衣を纏った桃色の髪をした女性とその後を浜辺で見かけた幼女が次いで居た。
〜日振〜
総員起こしが掛かる前に浜辺を散歩するのが日課になっていた。
地平線から顔出す太陽を背景に夜間哨戒班が帰投するのを眺めていた。
穏やかな波と次第に明るくなっていく世界を感じると、今日も一日暑くなりそう、そんな風に思った。
ふと空を見上げると哨戒機がやけに低空飛行している。
気になって無線に耳を傾けてみると、どうやら浜辺で感ありとのこと。
艤装展開して浜辺ギリギリの所を航行していると深海棲艦でもあらず人でもない半端な者が堕ちていた。
直ぐに駆け寄って命を確かめる。
日振「あのぅ…大丈夫ですか…?」
北「…ここは…。」
息もあるし意思疎通が出来るのを確認。
どうやら、まだ人間を辞めてはいない様だった。
日振「ちょっと待ってて下さい。直ぐに明石さんを呼んできますから!」
海から上がる以上、艤装を解除しなければならない。そんな状態で深海棲艦に成り果てて攻撃されたら、艦娘である私でも一溜りもない。
横たわる異体に目を問うしつつ鎮守府に無線を飛ばしながら明石さんを呼びに行った。
朝礼が終わり、今日は非番なので浜辺で助けた方の所へ様子を見に行こうとした所を大和さんに呼び止められた。
日振「急なお仕事ですか?」
大和「いえ、今朝 日振ちゃんが救助した人の所へ挨拶をしに行こうと思いまして、日振ちゃんも一緒にいかがかしら?」
日振「はい、日振 喜んで」
元々その気だったので快諾した。
〜明石〜
日が昇り初めて、夕張が工廠内で寝落ちて ようやく 静まり返った室内に私宛の無線が鳴り響いた。
日振『こちら日振、鎮守府北方浜辺から明石さんどうぞ』
明石「こちら、明石。どうかしましたか?」
日振『浜辺に傷を負った…ヒト? を発見しました。人命保護を具申致します。』
明石「わぁ…かりました。一応妖精さんを救助に遅らせます。」
数十分もしない内に運び込まれて来た。
血の気のない皮膚に、全身が傷だらけ、数箇所の開放性骨折、異常な方向に向いた四肢。
ただ、一番危惧すべきなのは深海棲艦に生る前のこの独特の臭気。
一刻も許されない状況なのは一目瞭然だ。
夕張「うわぁ…これは、酷いですね…。」
一連の騒動でいつの間にか夕張が起きていた。
妖精さんと一緒にこの青年を運び込んだ日振ちゃんの真っ白な服には海水と血と砂で汚れていた。
明石「日振ちゃん、この人は 私と夕張で責任もって治すから着替えて朝礼に出て来なね。」
夕張「うんうん、行ってきなよ。ここは明石さんと私に任せてって。えぇ!私もですか?」
夕張のおかげで緊張気味だった日振ちゃんの表情は若干和らいだ。
日振ちゃんには、大和さんと大淀 主力メンバーに報告は入れるがその他の娘には内密にと伝え朝礼へ向かわせた。
治療は物の見事に終わらせて報告書を書き始めた。
持ち物を調べてみた所、地元の人間でもないのに関わらず所持品はスマホ、音楽プレイヤー、財布、ライター、煙草しか持っていなかった。
夕張「明石さん凄いよね、あの人どう見ても大破くらいの損傷だったのに治しちゃうなんて。」
明石「いやいや、艦娘と生身の人間一緒にしないでよ。」
夕張「でも、不思議よね。近くで客船も漁船も襲撃されてないのに一般人が漂着なんてさ。それに深海棲艦に襲われた形跡もないし。」
明石「えぇ、まぁ…そうね。」
夕張は手持ち無沙汰なのか水没した彼のスマホを修理している。
夕張「所持金も168円しかないし、もしかして死のうと思ってたりしてね…?」
明石「えぇ、まぁ…そうかもね。」
夕張「え!そうなの?」
明石「かもしれないってだけで断定は今の段階じゃ難しいんだよね。でもEEG診てみたけど若干、深海棲艦に侵食されてるくさいのよね。」
夕張「治療した見た目どこにも侵食されてる部位は無かったじゃない?」
水難事故に遭った人間の肉体に海や川で亡くなっり彷徨う魂魄が宿って深海棲艦になるのは良くあること。今回はまだ生きてる分、精神面を侵食されてるのかも知れない。
明石「まぁ、経過観察が必要だし。しばらくあの青年は鎮守府に居てもらう事になるわね。」
夕張「ふ〜ん、よし、スマホは治ったし。彼の検索履歴を見てみようかしっ〈
明石「やめなさい。暇ならその銘柄の煙草買ってきてあげなよ。うちの店には置いてない奴だから。」
夕張「艦娘使いが荒いなー。ま、朝礼も終わったし行ってきますよー。」
朝礼終了のベルの少し後に医務室から彼の目覚めをブザーが知らせた。
報告書を書き終え工廠から出たところで大和と日振ちゃんに会った。
明石「お、日振ちゃん それに臨時鎮守府代表まで居るじゃないですかー」
大和「もぉー、その呼び方やめてくださいよ」
日振「あの人の様子はどうですか?」
明石「そうそう、目が覚めたらしいから話でも聞きに行こうかと思って出てきたの 日振ちゃんも一緒に行くでしょ。大和は工廠に報告書があるからそれに目通してから来てね。」
工廠から医務室は船渠を挟んで隣にあるが、工廠と船渠がやたら大きいため学校の廊下ほどの距離がある。
そのため無線でやり取りをしている。決して怠けてるわけではない事を念押ししておく。
医務室に着き部屋の戸を叩く。
鳳翔さんが「どうぞ」と返事をしたので入室した。
明石「お、本当に目を覚ましたみたいですねぇ!」
日振「失礼します。」
〜北〜
鳳翔「明石さんがいらしたので私は通常任務に戻りますね。お身体、直ぐに良くなりますよ。」
鳳翔は明石と呼ばれる女性と入れ違いで部屋を出て行った。
明石「いや、青年。気分はどう?」
起きた時に感じだ痛みは驚くほど早く和らいでいた。身体は動くが起き上がることは出来ない固定具のようなもので止められている。さながら標本の虫けらのようだ。
北「さっきまで、痛かったのに今は多少の違和感しか…」
明石「そりゃそうでしょ〜。明石謹製の修復剤の染みた包帯なんだから艦娘ならまだしも生身の人間なら数分、いや数時間で完治よ!」
そう言って明石は布団を捲った。
唯一自由に動かせる首で身体に目をやる。
身体の至る所に無造作に巻かれた包帯はどうやら特別なものらしい。
そんな事を考えると、ふと心に罪悪感が過ぎった。
北「こんな僕を助けてくれて有難うございます。」
そう言うと明石は少し表情を曇らせた。
明石「感謝の言葉は頂戴するけど「こんな僕って」助けた本人の前でそれはどうなのかな?ね、日振ちゃん」
日振「えっと、その…ごめんなさい…。」
北「違うんだ、まだ少し心の整理が出来てなくて謝らないで欲しい。」
自分は何をしてるんだろう。
心の中が、感情が渦巻いて気待ちが悪い。
日振「顔色が悪いですが大丈夫ですか?」
明石「あ、そうだ。ごめんね、今 拘束具 外すね。」
ダメだ、どうにかなりそうだ。もう、心が生きようとしている。数十時間前には消えてしまおうと覚悟を決めていたのに、なんて意志薄弱なのだろう。情けない。心さえ、心さえ無かったら…。
明石「どう、体動かせる?ベット起こすよ?」
機械音と共に体幹が起き上がるとベットのそばの洗面台にある鏡が見えた。
そこには、無気力なまるで生きてる死体と死んだ目をした青年が映されていた。
日振と言う幼女は心配そうに僕を見ている。
北「酷い顔だ。」
明石「そりゃ、生きるか死ぬかの境からギリギリ戻ってきたんですから。それにしっかり食べてますか?栄養状態も酷い有様ですよ。」
日振「それなら、間宮さんの所に行ってご飯食べたらいいと思います。」
やめてくれ、優しくしないでくれ。惨めな思いをさせないでくれ。
明石「ほら、青年そんな陰気な顔してないでご飯食べにい〈
北「やめてくれ、やめてくれ。」
感情が溢れかえった。もう止められない。
北「僕は人を殺めてしまったんだ。」
そうだ。僕は僕を殺した。自分殺し。
北「岩礁に身体を打ち付けた血塗れのそいつは心に住み着いている。そいつは再び生きようとする僕を許さない。そんな僕を許せない。」
生きたい心は風船の様に膨らみ自分殺しの棘で破裂した。
日振「そんなに辛そうに泣かないで下さい。」
気が付けばとめどなく降る雨のような涙が頬を伝う。
日振は頬に触れ涙を拭った。
今後の展開に期待
まるで、本当に体感したかの様な絶望の表現が心に響きました。
北さんが絶望から脱却していくのか、もう戻れないところにいるのか、今後の展開が気になります。
中2臭くて嫌いじゃない