2019-01-10 23:39:35 更新

概要

島村卯月「プロデューサーの家の家宅捜査を行います!!」


――P宅、玄関


卯月「……おはよーございまーす」カチャリ、キィィィ……パタン


普段の元気さは為りを潜め、ゆっくりと慎重にPの家の扉を開く。

本来であれば声を出すべきではないのだろうが、卯月の性格上無理な事であった。

玄関でゆっくりと靴を脱ぎ、揃える。

ひんやりとした廊下を音が鳴らないよう、細心の注意を払って歩を進めた。


卯月(……何でこうなったんでしょうか?)



――数週間前、凛の部屋



卯月「プロデューサーさんの私物が欲しい?」


凛「うん」


卯月「えっと……何で?」


凛「何でって言われても欲しいから?」キョトン


卯月(そっかぁ、欲しいのかぁ。じゃあ仕方ないのかなぁ?)

卯月「凛ちゃんがプロデューサーさんの私物が欲しいのはわかったけど、何で私に相談したのかな?」


凛「卯月ならどうにかしてくれるかなって」


卯月「その根拠のない信頼はどこから来てるのかは、この際おいておくね。プロデューサーさんには言ったの?」


凛「言ってないよ」


卯月「たぶん、私に言うよりは確実だと思うんだけどなぁ」


凛「……前に頼んだら断られたんだ」


卯月「もう実践済みだったんですね。それでも欲しいと――」


凛「欲しい」キリッ


卯月「即答なんだね。諦めるって選択肢は」


凛「ない」キリッ


卯月「ですよねぇ」アハハ

卯月(凛ちゃんがそんなに聞き分けが良い訳ないんですよね。ええ、知っていましたよ)

卯月「凛ちゃんが私に相談してくれるのは嬉しいんだけど、わたしにはどうにも……」デキナイカナッテ


凛「卯月」


卯月「うん」


凛「もう私には……、卯月しか頼れないの……」ウルウル


卯月(凛ちゃんが瞳に涙を浮かべて上目使いで私を見てる!!)カワイイデス!!

卯月「り、凛ちゃん!! 泣かないでください、私に出来る事なら手伝いますからっ!!」


凛「……ほんと?」ウルウル


卯月「もちろんです!! 凛ちゃんの為なら島村卯月、頑張ります!!」ペカー


凛「うん、ありがと。……卯月に相談して良かったよ」クシクシ


卯月(あぁ、凛ちゃんが子犬みたいに目元を拭っています)カワイイデス

卯月「お手伝いするのは良いんですが、どうすれば良いのかな?」


凛「それは考えてるよ」


卯月「そうなんですか?」


凛「ただ私はプロデューサーに目を付けられてるから、あんまり積極的な行動が出来なくて」


卯月(確かに今以上に凛ちゃんが積極的になったら、プロデューサーさんの家に押しかけちゃいそうです)

卯月「んー、でも私が手伝っても不自然じゃありませんか?」


凛「卯月なら大丈夫。もし何かあってもプロデューサーは卯月に強く出れないから」


卯月「……それって私が怒られるような事をするって事じゃ」


凛「卯月、だめ?」ポス ウルウル


卯月(ああっ!! 凛ちゃんが私の膝に縋りながら上目使いで見つめてくるぅ!!)カワイイデス!!

卯月「駄目じゃないよ!! プロデューサーさんには怒られたくないけど……、私に出来る事なら手伝うよ!!」


凛「ありがと、卯月。それでどうやるかなんだけど……」クシクシ


涙を拭いながら凛ちゃんは携帯をポチポチと操作した後、私の携帯の音が鳴った。


凛「見て」


卯月「はい、ちょっと待ってくださいね」

卯月(口頭では説明しにくいのかな。えっと、これは……住所? 私の家に近いですね)

卯月「凛ちゃん、これは?」


凛「プロデューサーの家の住所だけど」


卯月「教えてもらったの? この前引っ越したって言ってたよね」


凛「私が直接聞いたわけじゃないけど、他の子から」


卯月「この先の事は聞きたきなくなってきたけど、それでどうするの?」


凛「ちょっと散歩がてら、どんな家か見てもらいたいなって」


卯月「それだけですか?」


凛「うん、それだけ」


卯月(家から歩いて20分程度でしょうか。思っていたよりも普通のお願いでしたね)

卯月「この位ならお安いご用です、任せてください!!」


凛「ありがと、そのうち一緒に遊びに行こう。何回か行ってくれたら卯月に案内してもらえそうだし」


卯月「そうですね、みんなで遊びに行きましょう!!」




凛「……」ニヤリ









――P宅、廊下


卯月(ええと、メモメモ。まずは……)カサカサ


携帯のライトを絞り、光が漏れないように注意してメモを取り出す。薄明かりの中、メモ用紙には簡易な間取りと数行の文字が書かれていた。


卯月(一つ目は歯ブラシ……、ですね。洗面所でしょうか)


洗面所は廊下脇。間取り的には目の前の扉の先が目的地だ。

携帯の明かりを頼りに扉を開き、音の鳴らないように閉じる。

ふぅ、と一息吐いて呼吸を整えた。携帯で周囲を確認すると容易に目的物を見つける事が出来た。


卯月(歯ブラシ、ゲットです!!)ウヅキーン

卯月(おっと、代わりを忘れないように……)


小さなポシェットから新品の歯ブラシを取り出し、元の位置に差し込む。


卯月(あれ、同じ歯ブラシだ。ありすちゃん、どうやって調べたんでしょう?)


はて? 小首を傾げた後に残りを確認する。目標物は後3つ――。



――1週間前、凛の部屋



卯月「お邪魔しまーす。あれ、珍しいですね。今日はありすちゃんもいるなんて」


ありす「こんにちわ、卯月さん。それと橘です」


卯月「こんにちわ、ありすちゃん」


凛「いらっしゃい、卯月。待ってたよ。どう? 散歩の調子は」


卯月「天気が良い日だけだから何回かだけど、家からならほとんど迷わずに行けますよ」


凛「流石だね。私たちが遊びに行くまでには覚えそうだね」


卯月「テスト勉強よりは簡単ですからね、お任せください!!」


ありす「心強いですね」


卯月「ありすちゃんもいるって事は、遊びに行くときは一緒に?」


凛「そのつもりだよ」


ありす「凛さんに誘われまして。お邪魔でしたか?」


卯月「そんな事ありませんよ、みんなで遊びに行きましょう!!」ペカー


ありす「ありがとうございます」


凛「それで卯月、聞きたい事があるんだけど」


卯月「なんですか?」


凛「今ってプロデューサーの家近いよね。外で会うことないの?」


卯月「んー、私はありませんね。私が外出してるのって基本的にはプロデューサーさんが仕事中だろうし」


凛「休みが一緒の時に遊ぼうって誘わないの?」


卯月「誘うなんてそんな……。プロデューサーさんも仕事が大変でしょうし、休みの日にまで……」


ありす「卯月さん、それは違います」ソレハチガウヨ!!


卯月「え?」


ありす「良く考えてください。アイドルの為に生きているプロデューサーですよ。偶然自分の担当するアイドルに出会ったとして邪険に扱うと思いますか?」


卯月「……それはないと思います」


ありす「そうでしょう? 確かに毎日私たちとは会っていますが、それは仕事中の話です。私たちと何かをするよりも優先する必要がある仕事が多い状態です。本来なら過労で倒れてもおかしくない仕事量をこなせるのは、どんなに忙しくても私たちがいるからなのです」


凛「うんうん」コクコク


ありす「つまり普段仕事中に私たちと関わる事で癒されているから、プロデューサーは仕事が出来るのです。それは、プラマイゼロの状態です。過労と癒しが均等に保たれているだけなのです」


凛「そうそう」コクコク


ありす「プロデューサーは少ない休日でも体力は回復しているのでしょう。ですが気力・やる気はどうでしょうか。私たちに会えない日のプロデューサーはきっと寂しい思いをしているはずなのです!!」ロンパァ


凛「……っ!! そんなっ、プロデューサー今行くよ!!」ガタッ


卯月「凛ちゃんステイ!! 今日はプロデューサーさん仕事だよ」ガシッ


ありす「こほん。えー、それでですね。休日にもアイドルに会えればプロデューサーは体力だけじゃなく、精神的にも癒してあげる事が出来るのではないかと言う話を昨日、凛さんとしまして」


卯月「そっかぁ、確かにプロデューサーさんはアイドルが好きだもんね。みんなの為に頑張ってくれてるプロデューサーさんに寂しい思いはさせたくないね」ヨシヨシ


凛「そうでしょ。だから何人か都合つく子たちで遊びに行ってあげようと思ってね」クゥーン、スリスリ


卯月(あれ、目的が健全化してる? 凛ちゃんも純粋に良い子なんだけどなぁ、欲求に忠実すぎるけど)

卯月「そうだね、みんなでプロデューサーさんを癒してあげよう!!」


ありす「ちなみにプロデューサーの家はどんな家なんですか?」


卯月「結構大きいマンションだったよ」


凛「そうなんだ。今度写メ送ってよ」


ありす「私にもお願いします」


卯月「わかりました。今度お散歩に行った時に送りますね!!」





凛「……」ニヤリ

ありす「……」ニヤリ











――P宅、洗面所


卯月(次はバスタオルですか。……ここには無さそうですね、メモを見ましょう。……お隣が脱衣室なんですね)


そろそろと廊下へ出て聞き耳をたてる。物音はしない。薄明るい携帯を頼りに脱衣室へ入った。

洗面所よりわずかに広い脱衣室は、廊下よりも柔らかい感触を足裏に伝える。

ふと視界に入った浴室が気になり、携帯で照らし覗き込んだ。


卯月(おお、広いですね。これなら何人か入れそうです。プロデューサーさんはお風呂が好きなんでしょうか)


目的を忘れないように脱衣室を照らすと壁際に簡易な棚があり、そこに几帳面に折りたたまれたタオル類を見つけた。


卯月(確か何か指定が……。あれば白、無ければ色の薄いバスタオルっと)ガタン!!


卯月(ん~~~~~~っ!! 足の!! 小指!! 音!!)ビクッビクッ

卯月(……プロデューサーさんに気付かれていないでしょうか? 大丈夫そうですね)ウルウル


バスタオルを確認し、白いものを抜き取って新しい白いタオルを戻しておく。


卯月(バスタオル、ゲットです!!)ウヅキーン

卯月(これは……、志希ちゃんですね)コユビイタイデス


目標物は残り2つ――



――数日前、凛の部屋


凛「卯月、新しい協力者だよ」


志希「にゃはは~、卯月ちゃんやっほ~」フリフリ


卯月「こんにちわ、志希ちゃん。協力者っていうのは」


凛「もちろんプロデューサーの私物を手に入れるためのだよ」


志希「手伝う代わりに私の分もお願いするんだけどね~」ニャハハ


卯月(あぁ、凛ちゃんしっかり覚えていました……)


凛「それで散歩の方は?」


卯月「うん、もう大丈夫。家からなら迷わずにプロデューサーの家に行けますよ!!」


志希「うんうん、順調だねぇ~。私も前日までに準備しとくよ~」


凛「うん、お願い」


卯月「それにしても志希ちゃんが凛ちゃんの部屋に居るのって不思議な気分ですね」


凛「そうかな?」


志希「初めて来たからねぇ~。流石、お花屋さん!! いい匂いだね~」クンクン


凛「ありがとう」


卯月(……二人が並ぶと綺麗だなぁ)ポケー


志希「卯月ちゃん、どうかした?」ジー


卯月「へ?」


凛「ぼーっとしてるよ?」ジー


卯月「あ、いえ……。なんでもありませんよ?」アセアセ

卯月(あうぅ、二人に見つめられると何か恥ずかしいです)テレテレ


凛「顔も赤いし」ジー


志希「もしかして体調悪いの?」ジー


卯月「いえ、元気ですよ!! ただ、その……」テレテレ


凛「うん?」ジー


卯月「二人に見つめられて、ちょっと恥ずかしくなっちゃって……」


志希「恥ずかしい?」ジー ジリジリ


凛「どういう事?」ジー ジリジリ


卯月「あ、あの。二人とも……」アセアセ


志希「何かにゃ?」ジー サワサワ


凛「どうしたの?」ジー スリスリ


卯月「ちょ、ちょっと……//// 二人ともどこ触ってるんですかっ//// いい加減見つめないで下さい!!」カオマッカ


凛「人と話す時は目を見ないとね」ジー ギュー


志希「そうそう、しっかり見つめないと」ジー ギュー


卯月(あうぅ//// なんなのぉ……? 何で凛ちゃんと志希ちゃんに両側から見つめられながら抱きつかれてるのぉ?////)ミミマッカ


志希「ねぇ、卯月ちゃん」ヒソヒソ


凛「ねぇ、卯月」ヒソヒソ


卯月(二人とも耳元で囁かないでぇ///)ボンッ!!


凛「あ、ショートした」アタマクルクルシテルカワイイ


志希「にゃはは、卯月ちゃん面白いね」カワイイ


凛「それで準備はできそう?」


志希「心配無用~。この志希ちゃんにお任せあれ」


凛「まぁ、志希なら問題ないとは思ってるよ」




卯月「」クルクル

凛「……」スリスリ

志希「……」サワサワ









――P宅、脱衣室


カタン。


卯月(っ!! 向こうの部屋で音が!! 隠れないと)ビクッ


おろおろと周囲を見渡し、隠れ場所を探す。


卯月(そうだ!! 浴槽、浴槽に入って蓋を閉めて隠れましょう!!)


物音をたてないように浴槽に隠れると蓋をしめ、携帯の明かりを消して息を殺す。


卯月(見つかりませんように、見つかりませんように……!!)ビクビク


ギシ、ギシ、ガチャ、パタン、パチッ


P「……ねむ」


蛇口をひねり、水が出る音が聞こえる。

パシャパシャと顔を洗う音が聞こえ、Pの息を吐く音が卯月の耳に届いた。


P「……風呂入るか」


卯月(嘘でしょ!! こんな所見つかったら言い訳なんて出来ないよ……)ビクビク


スルスル、パサッ


卯月(嫌ぁ……、プロデューサーさんが服脱いでる生々しい音が聞こえるぅ。イメージしたくないのに勝手に想像がぁ)


P「……さむ」カタッ


卯月の隠れる浴槽内に光が差し込んだ。

音をたてずに卯月は可能な限り、反対の壁面に体を押し付ける。


卯月(ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさいぃぃ!!)ビクビク、ウルウル


半分ほど蓋が開き、卯月の足先が照らされた。


P「いや、もう脱いじゃったし今更お湯貯めるとか……、寝ぼけてるな」


バタンと音をたて、浴槽に差し込む光が遮られた。

キュッキュッと金属音を響かせると、勢いよくお湯の出る音がした。

室内をお湯が跳ねる。


卯月(ああぁぁあぁ、何なのこれ、なんなの……。すぐそこで裸のプロデューサーさんが体を……って待って!! 私は何考えてるの!? だめだめ、頭が混乱して冷静な事が考えらんない!! あぁ、でもここでプロデューサーさんが蓋を開けてたら不可抗力で裸のプロデューサーさんを……って違う!! 違うの!! これじゃあ凛ちゃんと同じです!! ああああぁぁぁああ!! プルデューサーさん、早くあがってくださいっ!!)


鼻歌を歌う上機嫌なプロデューサーは30分程度で浴室を後にした。


卯月(あぁ、湿度が……。暑いです)


脱衣室の方で音が聞こえる。

緊張と暑さにうなされて卯月の思考力は限りなく低下していた。


卯月(もうプロデューサーさん起きてしまいましたし、今日はもう退散しないと無理ですね。……そもそも無事に退散出来るのでしょうか。もし見つかったら……)ポワワ


P『卯月、何でこんな事を……』ガクゼン

卯月『ごめんなさい!! えっと、これには理由が……!!』アワアワ

P『卯月。どうやったかはわからないが、それは俺の部屋に勝手に上がる理由に足るものなのか?』

卯月『えっと、それは……』

P『はぁ、ショックだよ。失望した。筆舌に尽くしがたいってのは、こういう感覚なんだな。言葉だけじゃ言い表せないよ』

卯月『……ごめんなさい、ごめ……、なさい』ウルウル

P『あやまってばかりじゃわからないよ。なんでこんな事を?』

卯月『それは……。プロデューサーさんの、私物が、欲しくて……』

P『俺の私物?』

卯月『……はい。でも凛ちゃん達に聞いたら直接言っても貰えないって言ってたから……』

P『凛たちに言われてやった訳じゃないのか』

卯月『……違います』

P『……そうか。まぁ、普段の卯月からは考えられない行為だし、今回は許すよ』

卯月『うぅ、ごめんなさい』ウルウル

P『それで俺の私物が欲しいんだっけ』

卯月『は、はい!!』

P『何か欲しいものはある?』

卯月『あ、いえ……。何かって訳じゃなくて』

P『じゃあ、何でもいいの?』

卯月『はい!! プロデューサーさんの物であれば何でも!!』

P『ん、そっか……、わかったよ。でもさ』

卯月『はい?』

P『卯月が俺の物だけを貰うなんて不公平だよな?』

卯月『ふぇ?』

P『俺の物が欲しいなら、代わりに俺は卯月の物を貰おうかな』

卯月『わ、私の物……ですか?』

P『何貰おうか』カベドン、アゴクイー

卯月『ひ……っ// あの、プロデューサーさんっ////』カオマッカ

P『俺の私物は好きにやるよ。代わりに俺は卯月を貰う』

卯月『わ……私、ですか……////』

P『勝手に部屋に入ってくる犯罪まで見逃してるんだ。文句はないな?』

卯月『は、はい////』

P『仕事までまだ時間もある。こっちに来い』オヒメサマダッコ


卯月(何て事が……!?)ポワワ クラクラ


気が付くと脱衣室からの音も聞こえなくなっていた。

蓋をあけ、新鮮な冷たい空気で頭を冷やす。


卯月(……何を考えていたんでしょう。忘れましょう)スーハースーハー

卯月(うあー、汗でしょうか。蒸気でしょうか? 服が体に張り付いてます)ヨイショ


慎重に浴槽から出て、脱衣室へ出る。

洗濯機の上には湿ったタオルが放り出されていた。

卯月は無意識に回収した綺麗なバスタオルで体を簡単に拭くと、体を拭いたタオルと交換で使用済みのバスタオルを回収した。


卯月(はっ!! 私は何を……? いえ、それよりも早く脱出しないと)


部屋の扉を開け、廊下を確認する。

奥の部屋からはテレビの音が聞こえてきた。


卯月(多少の音は大丈夫そうですね。早く出ましょう)


思い切った卯月は廊下に出て部屋の扉を閉めると、靴を履いて急いで外へ出た。

涼しい外気が肌を撫でる。

慎重に玄関の扉を閉め、駆け足でPの部屋から離れた。


卯月「……おじゃましましたー」


誰に言うわけでもなく、卯月は口を動かしていた。

家の近くまで戻り、落ち着いてきた頃、一つの不安が脳裏をよぎった。


卯月「あぁ、怖かったぁ。やっと落ち着いてきた。うぅ、あんな近くでプロデューサーさんが体を洗うなんて……//// まだ頭の中が混乱して……って、あれ? そういえば玄関の靴出しっぱなしだったような……?」ダラダラ


卯月(いえ、大丈夫です。プロデューサーさんはきっと玄関へ来ていません。そう思いましょう)ダラダラ

卯月(でも、もし事務所で何か聞かれたら……)ポワワ


P『卯月、ちょっといいか?』

卯月『はい、何でしょう?』

P『これを見てくれ』ケイタイミセー

卯月『靴で、すか』ダラダラ

P『見覚えがあると思ってな。卯月、靴を見せてくれないか』

卯月『いえ、靴は履き忘れまして……』メソレシー、ダラダラ

P『そうか、じゃあ動かないでくれ。確認するから』

P『なぁ、同じ靴に見えるんだが』

卯月『プロデューサーさんの気のせいじゃないでしょうか……?』

P『はぁ、わかったよ。卯月がこんな悪い子だとは思わなかった』

卯月『わ、悪い子ですか……?』ビクビク

P『あぁ、悪い子だ。悪い子にはお仕置きしてあげないと駄目だよな』ウヅキダキヨセ

卯月『あっ……!! プロデューサーさん、駄目です。事務所ですよ!!』

P『それは事務所じゃなければ良いって事か?』

卯月『あの、えっと……、それは////』カオマッカ

P『わかったよ。じゃあ、今日の仕事が終わったら俺の部屋に来い。そこでお仕置きをしてやるから』

卯月『プロデューサーさんのお部屋で……////』

P『先に上がっててくれ。鍵はあるんだろう。その理由も後で体に直接聞いてやるからな』ミミモトデササヤキー

卯月『ひゃ、ひゃい……。わかり、ましたぁ……////』


卯月「なんて事に……」ポワワ

卯月「いやいや、まずは戦利品を持って凛ちゃんの部屋に行かないと。連絡して、っと」スマホポチー

卯月「とりあえず、返ってシャワー浴びよ」



――凛の部屋



凛「卯月、お疲れ様」


卯月「もう、本当に疲れたんですよ? 怖かったなぁ」ガックシ


凛「そっか、ありがとね」クスクス


ありす「お疲れ様です、卯月さん」


志希「卯月ちゃん、お疲れ~」フリフリ


卯月「はい、二人ともお仕事お疲れ様でした」


凛「報告は見たよ。だから今回は二人を呼んでおいたんだ」


卯月「わかりました。では、まずは戦利品を渡しておきますね」カバンガサゴソ


凛「わくわく」

ありす「わくわく」

志希「わくわく」


卯月「てってれ~、歯ブラシ~。これはありすちゃんですね!!」ペカー、ドウゾー


ありす「ありがとうございます。流石卯月さんですね」パクッ


卯月(あれ、躊躇わず咥えた? 真顔で? いえ、きっと気のせいでしょう。初めから自分の歯ブラシを咥えていたんですね)

卯月「次は~」


凛「わくわく」

志希「わくわく」

ありす「」シャコシャコ


卯月「てってれ~、バスタオル~。これは志希ちゃんですね!!」ペカー、ドウゾー


志希「わ~い、卯月ちゃん、ありが……!?」ピクッ


卯月「あれ、どうかしましたか?」


志希「……めってる」オソルオソル、ハナチカヅケー


卯月「はい?」


志希「……湿ってる」スー


凛「!!」

ありす「!!」シャコシャコ!!


凛「卯月、どういう事!! 聞いてないよ!?」


卯月「はい、色々ありまして」


――卯月説明中――  スースースービクッ!! ビクビクッ!!


凛「そんな羨ましい事が……」


ありす「写メは送られてませんが?」シャコシャコ?


卯月「あの……、それより志希ちゃんが視界の端で痙攣しているんですが」ビクビクッ!! ビ……


凛「大丈夫、止まったよ」


ありす「動画でしたか?」シャコシャコ?


凛「ありす、口を濯いでおいで」


ありす「そうさせてもらいますね、洗面所を借ります」シャーコシャーコ


卯月「あの……、志希ちゃんが動かないんですが。……息吐いてました?」


凛「卯月、安心しなよ。いくら志希でも人の家で……」シキニャンノミャクトリー


凛「……っ!! 死んでるっ!!」





スニーキングミッションクリア(1日目)

ランクB

完遂率:40%


ありす→歯ブラシ

志希 →バスタオル

凛  →???

???→???


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