島風「自分で撃った方が早え!!」みほ『戻ってください!!!!!』
大洗学園にクロスオーバーしちゃった島風の話。(連装砲ちゃんは居ない)
基本的に島風の視点で、アニメに沿って行く感じで。
ガルパンが面白かったのですが、先に艦これに毒されていたため、学園艦のスペックが気になりながらも、ハイフリに手を出そうとしたら、ビデオ店に存在しなかったので、魔女化してこんな作品が出来ました。(ばなな)
島風は我慢の限界だった。
海上を航行中に突如意識を失い、目が覚めると建物が建てられた船の上で。
痴女として通報されかけたところを、大洗女子学園の生徒会長なる者に救出され。
自分の身の上をでっちあげると、あれよあれよと生徒の一人となり。
戦車道を受講することになった。
これが電辺りであれば、最初に目を覚ました時に泣き崩れて戦車道の道には行かなかっただろう。
これが時雨辺りであれば、原因究明や元の世界に戻るために動き始め、戦車道の道には行かなかっただろう。
しかし、島風は気にしなかった。
目を覚ました時、連装砲ちゃんが居なかったり
手に持つタイプの主砲を持っていたり
魚雷発射管及び、機関部が消失していたことも
全く気にしなかったのだ。
元の鎮守府の居心地も悪かったので心機一転、この大洗女子学園の一生徒として頑張ろうと変な方向のポジティブさを持ち合わせている。
ここで、もう一度言おう。
島風は我慢の限界だったと。
艦これの島風を知っている者であれば分かるだろう。
彼女はスピード狂とも言えるほど、<はやさ>にこだわる。
そんな彼女は今日まで我慢し続けていた。
身分を示す書類が一切存在しない彼女の為に、生徒会長がどんな手を使ってか知らないが入学させてくれたから。
金銭を全く持っていない彼女の為に、空いている女子寮を用意してくれた生徒会広報がいたから。
一食じゃあ足りない彼女の為に、袖の下を握らせるように食券を束でくれた生徒会副会長の人が居たから!!
束でくれた事実を胸に、遅い戦車に我慢し
グダグダな砲手にも我慢し
通信手という立場にも我慢していた。
しかし、島風はスピード狂だ。
カメさんチームの戦車(38(t)軽戦車)の履帯が外れたその瞬間に、彼女の心のタガも外れた。
『Eチーム!』
「……」
「ダメっぽいね!」
生徒会長が彼女の代わりに返答する。
生徒会広報が喚きながら砲撃するが、彼女の耳には届かない。
「……島風ちゃん?」
「……そい」
生徒会副会長が俯き震える彼女の姿を見て、声をかけた。
反応が無いようで、もう一度声をかけようとした時その声が響いた。
『「おっそーーーーーーーい!!!」』
島風の乗っている戦車は勿論のこと、無線を繋げていたあんこうさんチームにもその声は響いた。
砲撃のような声はカメさんチームの人間を動けなくさせた。
島風は制服を脱ぎ捨て、中に着ていた何時もの服装になり、唯一持っていた主砲を出現させて戦車のハッチを開け放った。
「自分で撃った方が早え!!」
構えた主砲を最後尾に居た戦車に定めながら、島風は走り出した――!!
『――えっ、ええ!? も、戻ってください!!!!!』
後ろから響いた無線は、島風には届かなかった。
青い空に白い雲、煌めくように輝く太陽。
強い潮風をその身に浴びながら、島風は航行していた。
「はぁ……」
無機質な表情を返す連装砲ちゃんを持ち上げながら、小さくため息を吐いた。
資材確保のための航行。
毎日のように続けるこれは鎮守府の資源を守る一端になっていたが、始めた切っ掛けはそんな真面目なものでは無かった。
『アンタね、艦隊行動なんだから速度を合わせなさいよ!』
そこから始めった些細な言い合い。
しかし、島風の積み上げてきた実績は悪い意味で鎮守府に蔓延していた。
気が付けば不利な現状に慄きながら、逃げるように一人でこれを始めた。
朝起きて、補給して、遠征して、補給して、眠りにつく。
これの繰り返し。
始めてから一月ほどは有った潮風を切って進む爽快感も、現在では速度を上げる分燃料の無駄としか思えなくなっていた。
勿論、月に一回最高速を出す日は有るが、その程度だ。
虚しい。
会話は無く、生きてる心地がしない。
有るのは潮の香り、油の香り、鉄の香り、連装砲ちゃんたちが動く時に出る些細な金属音。
それと、ため息。
「……はぁ」
そう思って、連装砲ちゃんを手放しながら先に進む。
後ろから盛大な着水音が聞こえたが、すぐに戻ってくるだろう。
目を逸らしたくなるほどに輝く太陽を見上げながら、島風は僅かに思った。
――どうして
その時、島風の視界がぐらりと歪んだ。
驚き目を見開くと、太陽が目を焼くように刺す。
視線を逸らす為、ではなく、島風は体勢を崩していた。
最後に島風が見たのは、死んだような表情をした自分の顔だった。
島風の思考は、最後まで続かなかった。
―――
青い空に白い雲、そして、私を見下ろすように爛然と輝く太陽が視界の中央を支配していた。
強い潮風の香りが鼻につくが、私は海の上ではなく固いコンクリートの上で寝ころんでいた。
「……は?」
背中に付いていた機関部が無い。
私に乗っかるように主砲がお腹の上にある。
代わりに連装砲ちゃんたちの気配がない。
取り合えず体を上げて周囲を見回して思った。
「……ドコ、ココ?」
溢れんばかりの情報に私は思ったことを呟いていた。
ここからまさか、長い付き合いが始まるとは思ってもみなかった。
現状を確認するために、沿岸に走ったが私にとってまさかの事実が明かされた。
「船……!?」
海に向かって駆け出し、たどり着いたのは鉄柵だった。
眼下に広がる青い海は何時も立っている場所とは思えないほどに、遠い気がした。
海に背を向けて、陸――否、艦上を見渡す。
船の上が完全に街と化している光景に、最近まで働いていなかった脳がある一つの答えを導き出す。
「もしかして、深海棲艦が居ない……?」
上空に艦載機は飛んでおらず、外周部なのに艦娘の気配がしない。
そして何よりも――
(嫌な気配がしない……)
海の上で感じる、底知れぬ敵意。
普段であれば感じる気配は、海の上なのに全く感じなかった。
最近吐き出していた溜息とは違う別の溜息を、空を仰ぎながら吐き出す。
「何が起きてるんだろ……」
正直、頭が追いつかない。
深海棲艦が存在しないのであれば、ここは何処なのだろうか?
私達艦娘はどうなっているのだろうか?
そもそも、目覚めた場所から推測してみると。
「……私は」
「痴女っ!」
大きな声が上がった方に目を向けると、ビニール袋が足元にある女性が此方を指さして叫んでいた。
そう、大声で。
「痴女! 痴女よ! ここに痴女が居るわ! 誰か! 警察に!」
「ゑ?」
一体全体、何故錯乱しているのか分からないが、痴女と叫び散らしながら指を差している女性を落ち着かせるつもりで一歩近づいた。
すると、何を勘違いしたのか女性の叫び声は悲鳴に変わった。
「きゃあああああぁぁぁ!? 助けて!! 痴女に! 痴女に!! 犯される!!」
「ちょっとお!?」
僅か一歩足を動かしただけでこれである。
もう一歩足を踏み出す勇気はなかった。
ともかく、この場を離脱するために後方に目を向けた。
「っ!」
だが、後方にはツインテールの少女が何かを食べながら私と女性を見ていた。
その時、言いも知れない感情が胸を締め付けた。
「ふぃふぉなん?」
「……え」
「だーかーら、痴女なん?」
「え、いや……違い、ます」
私より背の低い少女は謎の威圧感を出しながら、聞いてきた。
威圧感に屈しながら、何とか返事を返すと少女は錯乱する女性の元に近づいて行った。
「ああぁぁぁ!!!」
「あの~」
「あぁ……ぁ……?」
「大洗学園の――」
少女と目がった女性は、次の瞬間には倒れていた、
完全に気を失っているらしく、先程まで煩かった叫び声が消え去り僅かな波の音だけが響く。
「ちょ、どうするの!?」
女性が気絶したのをいいことに、少女に近づいて問う。
少女は街の方を見つめ頬をかいた。
「……まあ、警察来るけど、正直に話せば何とかなるよ」
「……私不味くない?」
少女が向く方角からサイレンの音が響いて来る。
痴女ではないつもりだが、私の服装は肌色の面積が広すぎた。
少女は袋から取り出した物を口に運ぶ途中で、私を見た。
何処か気の抜けた表情をしていた彼女だったが、下から上に嘗め回すようにじっくりと私の服装を見て苦笑した。
「……ほんとに、痴女じゃない?」
「痴女じゃない!」
先程の女性とは違う声が、再び木霊した。
近づいてくるサイレンが異様にうるさく聞こえた。
「はぁー、やれやれだよ」
警察の事情聴取に干し芋を貪りながら答えていた少女は、愚痴を溢すように呟いた。
彼女はこの学園艦と呼ばれる場所で高い地位に居るようで、手錠を取り出していた警官を丸め込んでいた。
「……ありがとう」
何にせよ、助けてくれたのは事実だ。
私は俯き加減に、少女に礼を述べた。
「いいっていいって、お礼なんか」
少女はふざけたように答えるが、干し芋を食べるペースは先程よりも上がっている。
「ところで」と、少女は干し芋を飲み込むと此方に向き直る。
「なんて名前なの? あ、私は角谷杏」
「えっと……島風……」
「島風?」
角谷さんは唸りながら私の名前を繰り返していたが、やがて自己完結したのか一回頷くと私に手を差し出した。
「よろしくね、島風ちゃん」
「あ、はい。よろしくお願いします……」
差し出された手に思わず反応し、握りながら答えてしまう。
すると、強く手を握り返され、にんまりとした笑みを向けられる。
「島風ちゃんってさ、何者なの?」
「へっ?」
唐突な話題転換。
しかし、彼女の表情から見るにこれが目的に思えた。
「……」
だが困った。
私はなんて答えれば良いのだろうか?
気が付いたらあそこに居たなんて、誰が信じるのだろうか。
陸であれば別の言い訳も立つが、ここは船の上だ。
「……へ」
「へ?」
「辺境の転校生です」
呆れたような表情を見せる角谷さんだが、言ってしまったのであれば、言い切るしかない。
角谷さんの方向を見れずに、遠くで煌めく海洋に視線を向けていると、彼女は握っていた手を離してため息を溢していた。
「……ま、いいけどね」
(許された……!)
半眼を向けられているような気もするが、私は震えあがる心を静めるように海に強い視線を向けた。
しかし、その視界を遮るように角谷さんが手を振り腰に手を当てて、自慢げに言った。
「ようこそ、大洗女子学園へ」
心の底から笑うような彼女に、言いも知れない感情が心のから沸き上がった。
作者「……生徒会長の地位高いかな? 文句はコメント欄に下さい。修正しますので!」
みほは鎮守府に居たら霞や曙辺りにツンツンされつつ甘やかされてそうなイメージ