2020-01-15 11:20:09 更新

概要

からかい上手の高木さん小説。
高木さんと西片がカラオケデートするほのぼのストーリー。
是非ご覧ください!!


前書き

これの続編をYouTube限定で公開します
全て読み終わってからどうぞ

動画リンク↓
https://youtu.be/B4Zow6rTHrk


「あははは! 西片ってホントに面白いね!!」



「う、うるさいな…」





帰り道の静かな通りに楽しそうな笑い声が鳴り響く。

高木さんと呼ばれる少女は、屈託のない笑顔でケラケラと

隣の西片に話しかける。





「脇腹ちょっとつついただけで、そんなびっくりするなんて弱すぎるよ~

本当にからかい甲斐があるなー」





高木さんと並んで歩く西片は、先ほど不意に突かれた脇腹を抑えながら顔を赤くして答える。





「誰だって脇腹急に突かれたら驚くから!

ていうか、今日もう5度目だよね! いい加減やめてよ!」



「え~ 学校の時は勝負に負けた罰としてつついたんだからノーカウントだよ」



「じゃあ、今のは?」



「んー 急にやりたくなったから」



「そんな時こないでよ!」





弱点である脇腹を責められて悶えている西片を、楽しそうにからかい続けるその光景はもはや日常と化している。


入学式以来、席が隣同士である高木さんは事あるごとに西片をからかっている。


中学生活初日に高木さんのハンカチを拾ったことがきっかけで、二人は話すようになった。


そこから西片の素直で可愛い反応を前にすっかり高木さんのツボにはまってしまった。





「こんなに触られてるんだし、少しは慣れたりしそうなのにねー」



「そんな簡単に強くならにから」



「私はこそばゆくならないよ。 ほらっ 確かめてみなよ」



「っっ!  いや、いいよ…」




一瞬だけ脇腹に視線を落とした後に、再度顔を赤らめて少し俯く西片。





誰が見てもわかる。



恥ずかしがっているのだ。





もちろん、恥ずかしがって実際に自分の脇腹を触ったりなどできないとわかった上で発言する高木さん。


こんな可愛い反応をするもんだからやっぱり西片をからかうのはやめられない。





(まあ…  ちょっとくらい触ってきてくれてもいいんだけどな)





心の中でそんなことをボソッと思いつつ満足そうな顔を浮かべる高木さんと


悔しそうに脇腹を抑えながら歩く西片。



真逆の表情を浮かべつつ、夕方のオレンジ色が段々と濃くなっていくあぜ道を歩きながら二人はゆっくり帰宅する。













【西片邸】



「ふう~ 今日の腕立て終わったーー」



日課であるからかわれた回数によって数を増やしていく腕立てを終え、


床に寝そべりながら天井を見つめる。




(全く高木さんめ  今日もいっぱいからかわれてしまった)



(どうにか、あの高木さんにギャフンと言わせてやりたい!)




以前、高木さんに『私のこと考えてた?』と授業中に言われて焦った経験を持つ西片であるが


家に帰ってまで高木さんのことに頭を悩ませている今の状況を高木さんが知れば、


まさしく格好のからかわれるネタになるであろう。




「そうだ!! あの手なら……」




ある意味、高木さんのことで頭がいっぱいになっている状況であるが


もちろん当の本人にそんな意識はない。



ああだこうだと日頃の仕返しをする方法を試行錯誤している。






「見てろよ高木さん!!! 明日こそ俺が勝ってやる!」





まだ恋のなんたるかを知らない少年は高らかに勝利宣言をしながら、天井に向けてガッツポーズをとる。







彼が心の奥底に抱く感情を自覚するのは、まだ先になりそうだ。













【翌日:学校】



「じゃ! 私の勝ちだね」



「くうぅぅぅ!」



そこには、昨日と同じく対比の表情を浮かべる二人がいた。



勝った直後で機嫌が良いのか、昨日以上に満足そうに笑いながら高木さんが話している。





「そんなんじゃ私には勝てないよ~  弱いなー西片」




昨夜に練った作戦で勝負を挑んだ西片であるが、


結果はご覧の通り。


完全敗北である。




「ううぅ… 高木さんって心が読めるの?」



「あはっ! そんなわけないじゃん 西片がわかりやすすぎるんだよ」




にこにこしながら否定している彼女であるが、

西片は時々、彼女が本気で心が読めるんじゃないかと疑っている。



それくらい彼女には自分の考えが見通されているのだ。






「さてと、罰ゲームは何がいいかな」




昨日の作戦に絶対の自信を持っていたため、

【負けた方が勝った方の言うことを何でもきく】という条件をあっさりとのんでしまった西片。




自分が勝って【からかうのをやめる】と命令する未来しか想像していなかったため、

急に西片に緊張が走る。






(高木さん 何を命令するつもりなんだ…

まさか! 昨日みたいに脇腹をつつかれても我慢するみたいなのがきたら)




昨日のことを思い出して少し脇腹が疼いたのを我慢しながら

高木さんが何を言い出すか固唾を飲んで見守っている西片。





ドキドキしている西片をみて、その表情をさらに楽しみながら高木さんが口を開く。




「んー そうだなーー」




西片はまるで判決を言い渡される直前の被告人のような表情を浮かべている。




(もう少しこの顔見てたいけど、かわいそうだからこの辺にしてあげよっかな)




必要以上に焦らしながら、既に何をしてもらうか前もって心に決めていた高木さんが

目を輝かせながら言った。














「放課後 一緒にカラオケ行こう!」














【放課後】



「駅前に新しくできたやつがあってさ、女子の間で話題になってたんだー

この辺ってカラオケないから行きたいってずっと思ってたんだよね!

いやー 西片のおかげで助かったよ」



普段より饒舌になっている高木さんの横で、西片は落ち着かない様子だ。







カラオケなんてほとんど行ったことがない。







ちゃんと歌えるんだろうか。


下手だって思われないだろうか。


そもそも誰かに見つかったら絶対デートだと勘違いされる。





様々な思いが逡巡してパンク寸前なのである。


放課後にカラオケに行くと決まってから、それからの授業はずっと上の空であった。









~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


『ちょ ちょっと待ってよ! カラオケなんて俺全然行ったことないし、

歌えないよ!』



『だーめ。 勝った方が何でも言っていいんでしょ

それとも放課後は都合悪い?』



『い いや… そんなことはないけど』



『じゃあ決まり!! 放課後楽しみにしてるね』


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~





半ば強引に押し切られた形で駅の方へと足を向かわせる。



今まで二人で出かけたことは何度かあった。

ただ、そのどれもが神社や図書館、駄菓子屋など近所にある寄り道程度の場所だった。



カラオケとなると家とは違う方向だし、歩いたら15分くらいかかる。

行ける距離ではあるが、これはれっきとした遊びだ。




カラオケというデートの定番スポットは西片にとって十分な非日常だ。

そんな場所に初めて女子と二人で行くのである。

緊張しないわけがない。







「た、高木さんはカラオケってよく行くの?」



「んー よくってほどじゃないかな。

家族で何度か行ったことはあるけど、結構遠くだったからさ。

そんなに頻繁には行かないよ」




二人の住む場所はど田舎というわけではないが、都会でもない。

適度な店はあるもののカラオケに行こうとすれば車か電車が必須であった。






「だから、近所にできて嬉しいんだー!

いつか行きたいってずっと思ってたの」





鼻歌交じりに語る彼女は、自転車を押していなければスキップしそうな勢いであった。


幸いにもカラオケは住宅地より少し距離があるので知り合いに見つかる可能性が低いだろう。




「しかも、せっかく早帰りなんだしさ!

絶好のカラオケ日和だよね。 あー楽しみだな!」




そう。 今日は学校の記念日か何かで昼で授業は終わりなのだ。

いつもだったら遅くなったらいけないから無理だと断れるのだが今日ばかりはそうもいかない。




「西片 はやく行こうよ!」





西片の苦悩などおかまいなしに高木さんは歩みを速める。



本当に上機嫌だ。

心から楽しみなのが伝わってくる。




「高木さん! ちょっと待ってよ」




高木さんの楽しそうな様子を見ていたら、

色々考えてるのが少しどうでもよくなった。




(とりあえず行くしかないか)




高木さんに置いて行かれないように、西片は小走りで追いかけてゆく。














【カラオケ店内】



「いらっしゃいませ! 2名様ですね。 お時間はどうなさいますか?」



「時間どうしよっか 西片」




そのカラオケは先月オープンしたばかりの新店舗だ。

内装はとてもこだわっており、まるでホテルのロビーかのような華やかさを誇る。



そんな空間に当然のごとく慣れていない西片は完全に圧倒されていた。




「西片?」



「…… え? どうしたの高木さん」



「だから時間だよ。 どうしよっか」



「あ… 時間ね  え、えっと2時間とか?」



「かしこまりました2時間ですね。 1ドリンクとドリンクバーはどちらに致しますか」



「あー えっと」



「ドリンクバーでお願いします」




高木さんが答える。



(こんなキラキラした場所なのに普段と変わらないなんて、

高木さんすごいな。



……高木さんもカラオケには行き慣れていないはずなのにあんな堂々としている。


俺も負けてられない)






「それでは107号室になります。 ごゆっくりどうぞ」



店員からコップとマイクが入ったカゴを渡され、

二人で部屋へと向かっていく。






「あっ ドリンクバー寄ってから部屋行こうよ

西片は何飲む?」



「あーじゃあコーラで」



「はーい」



高木さんがコップをもってドリンクバーに駆け寄っていく。


ほどなくして、二人分の飲み物を入れ終わった高木さんが戻ってきた。




「お待たせ! じゃあ行こっか」



「うん、ありがと」




西方もここまで来たからには覚悟は決めた。


ようやく若干の落ち着きを取り戻した西片は107号室のドアノブに手をかけて

その扉を開けた。













【107号室】



「わー!!! こんなに広くてキレイなんだ! すごいね西片」



「そうだね。 二人なのにこんな広い部屋がくるなんて」




その部屋は10人くらいで来ても余裕がありそうなほど広々とした部屋だった。



天井にはミラーボールが設置されており、赤・青・黄などの鮮やかな光を発してゆっくりと回転している。

画面も壁一面に映されており、最近の流行曲の紹介をしている。

両サイドの白い壁と、ミラーボールの光がいい感じにマッチしており、

さながら一つのライブ会場のようである。

少し抑えられた照明も空間に合った良い味を出している。




「こんなに広いとどこに座ろうか迷っちゃうね」



「そうだね、画面が見やすい正面がいいかな」



「んーでも両サイドのイスの方が長くてゆったり座れそうだからそっちにしない?」




部屋は長方形で奥に長い作りをしていた。

そのため、画面正面はやや狭かったのである。




「あぁ じゃあそうしよっか」




そう言いながら手前の右側のイスに腰をかけた西片。


すると、すぐその横に高木さんがちょこんと座った。



「た、高木さん」



「ん?」



「広々と使いたいっていってたのにこんなに近くじゃ意味ないんじゃない…

ほら、向かい側だって空いてるしさ」



「いやー ドリンクバー行くのにドアが近い方がいいしさ、

それに曲入れる機械とかもこうやって二人で見れるじゃん」




そう言いながらさらに高木さんが体を寄せてきた。




「わ、わかったから!」



「あれ? もしかして照れてる?」



「照れてないよ!!!」



「ほんとかな~~ 顔赤いけど」



「あーー 暑いからだよ! ちょっとエアコン下げよっか」





西片がエアコンのリモコンを操作している横で、高木さんがクスクスと笑っている。





(くそーー カラオケに来てもからかうつもりだな高木さん

そうはいくもんか!!)





「じゃあ、最初西片が歌ってよ」



「えっ!」




カラオケに来るまでの間、同級生に見つからないかどうかなどを考えていて何を歌うか決められていない。

しかも、カラオケで一番初めに歌うのは謎の緊張感がある。




「高木さん先に歌いなよ」



「だーめ、西片が勝負に負けたんだから。

私 西片の歌はやく聴きたいな~~」




少し挑発をしているかのような笑顔で見つめてくる。

こうなったら抵抗しても無駄だろう。



「わ、わかったよ。

でも下手でも笑わないでよね」



「笑わないよー」




そう言いながら西片が操作する曲を入れる機械を覗き込んでくる。

顔を近づけられて肩と肩が触れる。




「ちょ ちょっと!  見えないから」



「あはは ごめんごめん」



そう言いながらも距離は近いままだ。



(なんかいい匂いがする…)




高木さんから漂ってくる何とも言えない優しい香りと、

触れるか触れないか微妙な距離にある肩に意識を集中させられながら

西片が入れたのは、流行しているバンドの曲だ。


とても盛り上がり、歌詞も良いため老若男女に愛されている曲だ。





「おー!これ良い曲だよね。 私もよく聴くんだ!

西片がこれを選ぶなんて少し意外だよ」




「そうかな?」




「そうだよ。 てっきり100%片思いのアニメソングを入れるのと思ったのに」



「なっっ!! 入れるわけないだろ!」



「あはははは!  ほらほら喋ってたら曲始まっちゃうよ」





高木さんのからかいにより歌い出しでややつまずいた西片であったが、

その後は安定感のある歌声で歌いきった。

決して上手いわけではないものの、丁寧に音を外さないように一生懸命歌う姿は

まさしく西片らしい歌い方だった。






「ふーー」



「お疲れ様。

いやー良かったよ!」



「そ そう?」



「うん。私好きだよ。  西片の歌」



「えっ!……」



「あははは! また顔赤くなった!」



「っっ! 歌ったから暑いんだよ」



「えーあんなに室温下げたのに??」



「別にいいでしょ! ほら高木さんも曲入れなよ」



「ふふ はーい」




嬉しそうにタッチパネルを操作している高木さんを横目に

西片はとりあえず一曲無事に歌い終わったことに安堵していた。





(なんとか歌えてよかった。

それにしても今日は高木さんのテンションが高いな…


本当にカラオケ行きたかったんだろうな





そういえば高木さんって何歌うんだろう?



あんまり好きな曲とか知らないしな) 






「何歌うか決まった?」



「うん。 これにするよ」




そう言いながら彼女が入れたのはラブソングだった。



片思いをしている女子が、好きな人になかなか気づいてもらえない女心を歌ったものである。





「へー高木さんラブソング好きなんだ」




「んん~ まあ好きなんだけどさ、

それ以上に西片に聴いてほしいなーって」



「え???」



「あ、始まるね。 ちゃんと歌えるかな」 







(どういうことだ… 俺に聴いてほしいって

この歌は好きな人を想っている歌詞だったはずだ。


それを俺に聴いてほしいって つまり高木さんは俺のこと………)




ほっぺだけでなく耳まで赤くなっている西片を横目で確認して

クスッと微笑みながら高木さんは歌い出した。




「♪勘違いされちゃったっていいよ 君とならなんて 思ってったって言わないけどね♬」




初めて聴いた高木さんの歌は、

まるで透き通るような歌声であった。

ビブラートなどはかけないで、真っすぐに伸びていく声。

優しく包み込んでくれるような感覚は聴く者全てを癒す力を持っていると言える。


西片はすっかりその歌声に心を奪われてしまった。













「はーー緊張したよ~

どうだった西片?」



「えっ あっ うん… うまかったよ」



「本当? よかった!

これ歌うの初めてだから下手だと思われないか心配だったんだよね」





(初めての曲を一発目で入れたのか! さすが高木さんだな…

いや、今はそんなことより)




「ねえ 高木さん」



「ん?」




「あのさ…」


(いや待て 聞いてもいいのか?

さっきの言葉って俺のこと好きってことなの?なんて



冷静に考えれば聞けるわけないじゃないか!


もし違ったらすごい恥ずかしいやつだろ!!)





「どうかしたの西片?」



「い、いや 何でもないよ

うん 全然何でもない!」



「ふーん

私はてっきり、何でこの歌を西片に聴かせたかったのか

理由を聞きたいのかと思ったよ」



(バレてるーーー!!)



「あはは! 顔に出すぎだよ!

本当にわかりやすいな西片は」



「うぅぅ」



「いいよ 教えてあげる!

それはね」




ごくりと西片の緊張感が増した。

高木さんの次の言葉を待っている一瞬の間がひどく長く感じる。












「…『君のことを一番に見つけて今日は なんて話しかけようか ちょっと考えるの楽しくて』って部分があるでしょ。

あれがすごく共感できるなーって」








「…………え?」



「私も、西片を今日はどうやってからかおうか考えてるの楽しくて仕方ないからさ

この歌詞ぴったりだなって」










(ハーーーーーーーー)


心の中で全身が脱力していくようなため息を吐く西片。





(なんだ そういうことか)






「西片は何だと思ってたの?」


「え? あ いや…  何でもいいでしょ」


「えー気になるな~

西片がどんな想像してたのか」


「べ 別に…  何も想像してないよ」


「ふーん」






(まあ… ありえないよな

高木さんが俺のこと好きだなんて)





「・・・・・・・・」




(いつものようにからかっただけだろ

気にしない気にしない)




















「………これじゃ『言わない』んじゃなくて『言えない』だよな(ボソ)」






「ん? 高木さん なんか言った?」


「ううん なんでもないよ!

さあほら! 次は西片の番だよ

早く歌わないと時間がもったいないよ」


「????  そうだね じゃあ次は…」


「ねえ! 次はデュエットしようよ!」


「え! 二人で歌うの!?」


「そう! あのドラマソングとか男女で歌うやつだからちょうどいいじゃん」


「で でも…」


「なんなら一つのマイクで一緒に歌おっか」


「え… えーーー!!!!!!」


「あは! 冗談だよー」


「も、もう… やめてよ」


「ごめんごめん じゃあ入れるね~」


「えっ まだ心の準備が…」


「もう始まっちゃうよ ほら、最初は西片のパートだよ」



(えーい! こうなりゃどうとでもなれ!!)























 














【帰り道】



「はーーー!!

すっごく楽しかったね 西片!」



「そうだね 

思ったより盛り上がったね」



あれから2時間の予定で入った二人であったが

結局延長して3時間も歌ってしまった。




「ふふ それにしても西片が女性歌手も歌えるなんてなー

頑張って裏声出そうとしてたけど全部声がひっくり返ってたよね  ふふふ」



「あれは高木さんが勝手に入れたんだろ!

俺は歌えないって言ったのに」



「あはは ごめんごめん

でも西片だって私に男の人の歌を入れたんだからおあいこでしょ」



「…まあ そうだけどさ」





飲み物に席を立っている隙に高木さんから歌ってほしいと入れられた曲は

キュートな高い声が特徴のアイドルソングだった。


抵抗虚しく歌ってみたものの、キーを合わせようとして声が全然出なかった。

隣の高木さんは楽しそうに聴いていたが、恥ずかしいなんてものじゃない。




その仕返しとして重低音が渋い味を出している有名俳優の曲を入れてやった。


(こんなダンディーな曲を高木さんが歌えるわけがない。

困っている顔を見せろ高木さん!)





だが、その予想は完全に覆された。

男性用の曲であるはずなのに、高木さんの美しい歌声は見事に曲と調和している。

本家とはまた違った魅力を奏でており、

まるで完成度の高いカバーソングを聴いているようだった。











「西片の歌声かわいかったよ!

またカラオケ行ったら聴かせてね!」



「もう歌わないから!」







あれからカラオケを出て、自販機で休憩などしながら帰っていたら

すっかり辺りは夕方になっていた。





「たまにはこういう場所に行くのもいいもんだね

次の勝負に負けた時もどこかに連れて行ってもらおうかな~」



「もう次は負けないからな!」



「ふふ どうだろうね~」







いつもの二人の日常。

勝ち誇った表情で笑いかける少女

悔しそうに言い返す少年


対極の表情を浮かべる二人の顔を夕陽が優しく照らしている。






「次の勝負は勝ってやるからな高木さん!」





「ふーん いいよ  何で勝負するつもりなの?」






毎日のように繰り広げられる様々な勝負。

これは二人の関係性にとってなくてはならないものである。



ただ…それが全てではない。

勝負をして勝ちたいだけの相手ではない

それ以上の存在だと自覚するのはまだ先の話。









「♪~《不思議なままの関係 変われる時は来るのかなぁ》」








「え? なに高木さん?」















…………少女の方は随分前から気づいていたかな?
















ーーーーーー TO BE CONTINUED ーーーーーーー











後書き

読んでくれてありがとうございます!
よければ感想など書き込んでいってください
後日談もありますのでこちらもどうぞ!!

↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
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