2020-03-10 23:26:07 更新

概要

中学の引きこもり期間中から高校出るまでにかけて書いていたSSを発掘したので所々修正をしながら投稿していきます


国王「勇者よ……」


国王「かの災厄、魔王が現れた」


国王「お前には、民を、この国を代表して、魔王を討伐しに行ってもらおうと思うのだ」


国王「私の願いを……聞いてはくれぬかね……」


勇者「はい、国王様。必ずや、この勇者が、魔王を討伐して、世界に平穏をもたらして参りましょう」


国王「おぉ!では、魔王討伐の暁には、そなたの望むものを何でもひとつ、くれてやろうぞ」


勇者「ありがき幸せ。では、国王様の娘である姫様を、我が伴侶と致したく存じます」


国王「…………分かった。必ずや、魔王を倒し生きて帰ってくるのだぞ」


勇者「はっ!」



・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・


男「何が勇者だ……」


友「どうしたお前」


男「何が勇者だ!勇者だからなんだ!ハーレムなんぞ作りおって!」


友「いや、そりゃ世界中の人類の命を背負って国王から任命されたからなあ、近づく女は多いだろう」


男「決めた」


友「あん?」


男「俺、魔王ぶっ殺してくる」


友「はぁ?」


男「魔王ぶっ殺して勇者のハーレムを超えるハーレムを作る」


友「……それは冗談か?本気か?マジで言ってるのだとしたら俺は引くぞ」


男「マジもマジだ、とりあえず冒険にたつための装備を作る」


友「はぁ……なんでコイツの友達やってるんだろ」


男「って訳で手持ちのもの全部売って金にしてきた」ジャラッ


友「……何を売ったらそんな大金になるんだよ」


男「医学書や昔からうちに伝わる魔導書を売ってきた」


友「先祖代々譲り受けた品を売るなよ!」


男「大丈夫だ、内容は全て頭に入っている上にあれは今の人類では俺以外で解読出来るやつはいない」


友「ほんとかよ……」


男「ちなみに魔導書には悪魔や天使を召喚する魔法陣も書いてある」


友「は?」


男「ま、召喚呪文や聖詠を間違えたら即死ぬけどね」


友「なんてものを売ったんだこいつは」


男「とりあえず装備を買いに行こう」


友「俺も行くのか?」


男「当たり前だろ着いてこい」


友「はぁ……」




【武具屋】



男「武具屋に来た訳だが」


友「これなんていいんじゃないか?初心者冒険者用だってよ」


男「んなしょぼいのはいらん!…………ん?これなんていいんじゃないか?」


友「なんだそれ……蛮族の鎧ぃ…………??趣味悪ぃ、やめろやめろ」


男「いや!これにする!」


友「なんでだよ……」


男「フルプレートとは違って急所となる所には鋼鉄を使い関節部分には獣皮を使い全体的に軽量化を測り着やすそうな鎧…………素晴らしいじゃないか!」


友「まあ、もっともらしい理由だな」


男「それに」


友「ん?」


男「かっこいい」キリッ


友「お前……」


男「おっちゃんこれくれ!」


おっちゃん「蛮族の鎧か?」


男「おう」


おっちゃん「誰も買おうなんて言わなかった売れ残りだからなあ……」


友「でしょうね」


おっちゃん「金貨5枚でいいぞ」


友「やっす!?」


男「買った!!!」


おっちゃん「……冒険者にでもなんのか?」


男「勇者を超える……冒険者になろうかと」


おっちゃん「勇者を超えるだァ??面白いこと言うなァあんちゃん」


友「コイツ、馬鹿でして」


おっちゃん「あんちゃんも苦労してんだな……」


男「おっちゃん!この店で1番いい剣をくれ!」


おっちゃん「1番いい剣ってェと……これになるが……おめェさんに使えんのか?」ドンッ


男「ん?なんだこれ」


おっちゃん「素材に炎魔石を使って削り出しで仕上げた特別製のククリだ」


男「ククリぃ?俺は片手剣よりも両手剣の方がかっこいいし好きなんだけどな」


友「バカヤロウ、お前が1番いい剣をくれって言ったんだろ文句を言うな!」


おっちゃん「がッはははは!!!面白ェあんちゃんだな!でも俺はロングソードよりもショートソードを得意としてッかんなぁ……」


おっちゃん「両手剣が欲しいなら両手剣に特化した武器屋の鍛冶師を紹介してもいいが……どうするかい?」


男「いや、このかっこいい鎧をおまけしてもらったお礼にここの売上に貢献するぜ!」


おっちゃん「うれしい事言ッてくれんじャあねェか」


友「…………」


男「でもククリは好きじゃないからマチェットかなんか無い?」


おっちゃん「あるぞ」


おっちゃん「素材は魔石ではなく魔鉱石からだが鍛造仕上げのマチェットが1本ある」


友「うわっ、すげえ綺麗……」


男「買った。幾らだおっちゃん」


おっちゃん「うーん……金貨25枚……と言いたい所だが……蛮族の鎧と合わせて金貨25枚でいいぞ」


男「……25……………………よし、これでいいな」ジャラ


おっちゃん「よッしゃ!じゃあ特別に本革のシースと護身用のダガーナイフも付けてやる!」


友「めっちゃいい人だ」


男「そんなにいいのか?!」


おっちゃん「おゥよ!だっておめェさん、勇者を超える男になんだろ?だッたら、その夢、叶えねェとな!」


男「ありがとう、おっちゃん!!」




・・・・・・・・・・・・・・


【村】


男「よし、武器も防具も手に入った」


友「あとは仲間だな。…………で、仲間はどうすんだ?」


男「考えてない」


友「はぁ?!何を……っ!!…………はぁ、そういう奴だったなお前」


男「とりあえず野郎はダメだ、目指すはハーレムだからな」


友「……残ったゼニは幾らよ」


男「…………金貨7枚と銀貨8枚」


友「……傭兵でも金貨10枚はするぞ、足りなくねえか?」


男「…………詰んだ……」


友「あーあ、持ち物全部売った割には目標達成出来ないとか、可哀想な奴」


男「……いや待てよ」


友「……あん?どうした?」


男「…………使い魔を召喚する」


友「は?」


男「魔族を召喚する。とりあえず女ならなんでもいい」ザリ……


友「召喚って……」


男「魔法陣や召喚呪文は全て頭の中に入ってる、あとは必要となる生贄が……」ザリザリ


友「生贄ってなぁお前」


男「…………あ!」


友「なんだよ急に大声出すなバカ」


男「なんか適当な封印されてるようなやつの封印解いてこっちに呼び出せばいいじゃん!俺って天才!」


友「いやバカだろ」


男「えーっと、…………強くて女で美人な封印されてるのは…………いたっけな…………」


男「……………………まあいいや、適当に召喚しよー」


友「考え無しにやるな!!!」


男「〜〜〜〜〜〜」ムニャムニャ


友「…………」


男「〜〜〜。……はっ!!いでよ!!かわいい女の子!!!」


友「うわめっちゃ適当」


カッ

ドォォォオオオオオオンッッッ!!


友「」


男「」


友「……」


男「……いててて……やっぱり失敗したか……」


友「げほっ……げほ……いっ……てぇ……」


男「悪ぃ、失敗しちまった……」


友「考え無しにやるから……」


「なにが……失敗したのですか?」


男「……??」


友「っ!?」


「どうかされました?男様」


男「何だこの美人」


友「すっげえ美人」


「…………///」カァ


友「(照れてる可愛い)」


男「照れてる可愛い」


友「あ、で、お姉さん、お名前は……」


「名前…………。……私は、シトリーと、呼ばれています」


男「シトリー?」


シトリー「はい、シトリーでございます」


友「シトリーって……ソロモン王に仕えた、72人の悪魔のうちの1人……だよな」


シトリー「はい!よくご存知で」


男「シトリーって、対象の人間を男女問わず欲情させられんだっけか」


友「言い方は酷いが、まあ愛させる、惚れさせることができる……と言い伝えられてるな」


シトリー「……確かにそのような能力はありますが、召喚されて日が浅い上に贄も何もなしに召喚されたので、本来の力を発揮するのにいくらか時間はかかると思います……」


男「どうすればいいんだ?」


シトリー「1番は人間の魂を捧げる事、ですがそうも行かないでしょうし……生き物の血と魂を吸収する事ですかね」


友「要は普段の俺らと変わらない、飯食って寝るってことだな」


男「人間の魂ならいつその能力を使えるようになるんだ?」


友「……おまえ……」


シトリー「すぐにでも」


男「なるほど……」


友「お前、さすがに人の魂は……」


男「やらねえよ、ちなみに飯食って寝るってなると?」


シトリー「10日ほど……」


男「なるほどな……ま、旅しながら女は見付けるとして、シトリー、もう出掛けられるか?」


シトリー「……はい、私は大丈夫ですが……そこの方は……」


友「俺は行かねえぞ」


男「コイツは連れてかねえ、俺はあくまでもハーレムを作るための旅に出るんだからな」


シトリー「なるほど。では使役するのが私でちょうどいいではありませんか!」


男「だな!よし、行くぞシトリー!」タタタタッ


シトリー「はい!行きましょう男様!」タタタッ


友「……えぇぇ……」



・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・


【旅路】


男「で、村を出てきたはいいがまずはどこに向かうか……だな」


シトリー「ですね、私が昔人間界にいた頃はここを北に進むと大きな湖がありそこの近くに小さな村があったはずですが……」


男「うーん、とりあえずはそこを目指すかぁ……」


シトリー「……もしかして、何も考え無しに冒険を?」 


男「まあね。」


シトリー「……(大丈夫かなこのマスター)」


男「といっても」


シトリー「……?」


男「正直言うと、今のあの国?……を抜け出したかっただけで、勇者を超えるハーレムを作る気なんてそうそうないんだよね」


シトリー「じゃあなんで私を召喚したんですかぁ……」


男「んー?いやさ、1人の旅は心細いから。」


シトリー「ふーん…………でも、ハーレムを作るっていうのは、本気なんですよね?」


男「……俺が面倒見切れるだけのハーレムをね」


シトリー「女の子囲い込みすぎて面倒みきれなくなって喧嘩なんて起きたら大変ですもんねー」


男「まさにそのとおり」


シトリー「…………で、魔王は討伐するんですか?」


男「それは迷ってる」


シトリー「……今の魔王は、気を付けた方がいいですよ。正直、勇者でも倒せるかどうか……」


男「……………………なんで?」


シトリー「魔王は、魔王になるには、幾つか方法があるのです」


シトリー「まずは、魔王の血を継承して魔王となる方法」


シトリー「もう一つは、今までの魔王がいなくなり、今までの魔王の次に強い、魔王の意志を継ぐ者」


シトリー「……あと、同族や、魔族、人間を、殺したり、力で支配し、王となる。実力のみで魔王となる。三つの方法があります」


男「……じゃあ、今の新しい魔王っていうのは」


シトリー「はい、お察しの通り。……実力のみで魔王に成り上がった、実力派です」


男「勇者は、勝てるのか?」


シトリー「新勇者の実力を見た事ないから分かりませんけど……多分、無理かと……」


男「じゃあ、俺が倒せる可能性は?」


シトリー「……もっとないかと」


男「デスヨネー」


シトリー「……といっても、新勇者が魔王を倒せる可能性はゼロに近いというだけで、ゼロでは無いのですよ!」


男「勇者が倒せない魔王を俺が倒してあいつを超えるハーレムを作るのが夢なの!」


シトリー「それは……無理かと……」


男「断言しないでくれる?!絶対やってみせるから!!」


シトリー「えぇ……」


男「……っと……魔物か」


シトリー「……え?魔物なんてどこにも……」


男「……いや、いる。右側、2時の方向。数は……5~10、群れで動いてる」


シトリー「…………だめ、全くわかんない」


男「無理もない、向こうも気配を消してる。……散開した、回り込まれるぞ。……知性がある」


シトリー「…………っ!!でっかいのが一体、遠くにいますよ」


男「分かってる、今はこの雑魚を、何とかすることが先だ」


シトリー「男様、武器は?」


男「武器屋のおっちゃんからもらったマチェットなら」


シトリー「気配からして、魔犬ですよ、遠くにいるのはヘルハウンド。…………あれ?ここ、ナワバリですかね?」


男「厄介だな」


シトリー「男様、来ます」


男「分かってる、やるぞシトリー」


シトリー「はいっ!」


グルルルルル…


ガウウッ!


男「……ッ!」ザンッ!


キャウンッ!


シトリー「さすが男様!」


男「やれては……ないみたいだけどな」


シトリー「しぶといですね……」


男「……っらぁ!」ブンッ!


ザシュッッ!


シトリー「死なない……?!」


男「冒険に出て一番最初に遭遇した敵にしては、難易度高いなあ……」


シトリー「そんなこと言ってる場合じゃないですよ!逃げましょう男様!」


男「しかないっぽい?」


シトリー「っぽいじゃなくてしかないですー!!!」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


【町】


男「はぁ…………はぁ…………」


シトリー「追いかけては……来ないみたい……ですね……」


男「アイツら足はえぇ……」


シトリー「余計な体力使っちゃいましたよ……」


男「すまないな……」


シトリー「いえ、大丈夫です、でも、そのおかげで……目的の村にたどり着けましたね……」


男「……にしては人の臭気が薄いが……」


「……あなた達は、冒険者ですか……?」


男「……あ、いや、冒険者ではなく、ただの旅の人間ですが……」

 

「旅の者……この村は、凶悪な犬により壊滅状態にあります。悪いことは言いませんあまりここら辺には近づかない方が」


シトリー「もしかして、すごい大きな傷のたくさんある犬では無いですか?」


「……!!なぜそれを……」


男「…………自分達も、旅をする最中に襲われたのです」


シトリー「走って逃げている間に、この村に……」


「…………そうですか、大変でしたね……もてなせるものは何もありませんが、もしよろしければお茶でもしながらお話をさせていただけないでしょうか……」


男「…………」


男(どうする?)


シトリー(……お話ぐらいならいいのでは)


男(冒険者や旅の人間を襲って金をとってるとも限らんぞ)


シトリー(そしたら殺せばいいのでは、それならその方が私も都合がいいので)


男(…………わかった)


男「はい、では。お話をさせてください」




「改めまして、私はここの村の村長でございます」


男「どうもご丁寧に、男と申します」


シトリー「シトリーです、よろしくお願いします」


村長「どうもご丁寧な挨拶を…………」


男「で、あの犬、ヘルハウンドはなぜこんな所に」


村長「……少し複雑な事情がありまして……」


シトリー「ヘルハウンドは本来人間界ではなく魔界や冥界にいるはずの犬、本当に、なぜこんな所に」


村長「……この村の近くの湖、これを東に向かうと山々が連なる山脈があるのはご存知ですな」


男「ああ、魔剣レーヴァティンが眠るっていう伝説のある山ですよね、それがどうか?」


村長「そこの山に、ヴァンパイアクイーンが封印されているという文献が見つかりまして」


シトリー「ヴァンパイアクイーン…………。……ヴェロニカ……さま……?」


村長「はい、吸血女王……ヴァンパイアクイーン、ヴェロニカの封印を解こうとする不届き者の手により、かの魔犬は召喚されました」


男「それのせいでこの村は襲われ、近づく商人や冒険者も襲われ村は孤立、壊滅状態って訳か」


村長「はい……」


男「で、そのヴァンパイアクイーンとやらの封印を解こうとする奴の心当たりは?」


村長「えぇっと……エキドナと呼ばれる女とその他複数の鎧を纏った男が……」


男「……エキドナ、だってよ」


シトリー「……エキドナは、現魔王であるティフォンの妻です、双頭の魔犬オルトロスの親でもあるので、ヘルハウンドを召喚できても不思議ではないかと」


男「で、一つ質問なんだけどいいですかね」


村長「ええ、私がお答えできることならば……」


男「ヴェロニカって…………何者なんですか?」


村長「……ヴェロニカとは……」


シトリー「ヴェロニカ様………………いえ、ヴェロニカとは、数百年前に、この地の、大陸の生物を全て滅ぼし自分の糧にした、吸血鬼の中で最も強く、最も賢く、最も美しい、まさに女王と呼ばれるに相応しいお方でした。」


シトリー「……大陸の離れ、小島に住んでいた人間は無事でした。その小島から勇者が派遣され、ヴェロニカは、勇者と、その仲間である祓魔師により封印された。…………というのが、ここのすぐ近くの山でございます」


男「なるほど。……魔王は、そのヴェロニカとやらの封印を解いて、世界を牛耳ろうってわけか」


シトリー「その可能性が」


男「となると、魔王の手に渡る前にヴェロニカを始末してしまえばいいんだな」


村長「それができれば良いのですが、出来るのですか?そんな事……」


男「やってみるしかない。じゃないと、俺らが死ぬかもしれん」


シトリー「ですね」


男「…………シトリー、ヴェロニカの始末は俺が行く。シトリーはこの村の人間をヘルハウンドから守ってくれないか」


シトリー「……男様は大丈夫なのですか?」


男「ああ、俺は大丈夫だ。…………もし、ひと月待って俺が帰ってこなかったら、逃げてくれ」


シトリー「……………………わかりました」


村長「お、男様!それならば私の村で1番早い馬を用意させます!そちらをお使いくださいませ……!!」


男「残っているのか?」


村長「……5頭しかいませんが……駿馬を……」


男「分かった、お言葉に甘え借りるとしましょう」


村長「……お気をつけて」


シトリー「男様…………」


男「……生きて帰ってくる」






【東の山】


男「……ここが、東の山脈ってか。霊峰って言葉のが似合うな、何かを祀ってある訳では無いが」


男「…………にしても、魔素が濃い。ここら周辺に魔物がいない訳だ。」


男「……魔素が濃い方に……ヴェロニカが居るのか。…………一般人じゃわかんないだろうな……こんな魔素なんてのは」




「ーーーナ様、奴が動きました」


「追いなさい、奴は黒魔術師の血を継ぐもの。私たちにもわからない魔素を辿って、ヴェロニカの元へと案内してくれるハズだから」


「はっ、かしこまりました」




男「……ここの洞穴か」


男「…………松明に火をつけて……っと……」ボウッ


男「……うっ……とんでもない魔素の量に……酔いそうだ……」


男「……魔石や魔鉱石が豊富にある……いや、結晶化したのかこれは……高値で売れるだろうなあ……」


男「……や、そんなことよりヴェロニカだ……」




男「……………………。」





男「………………………………。」






男「…………これが、ヴェロニカか」


男「………………なんて美人なんだ……」


「…………。」


男「殺すのが勿体ないほどに……」サス…


男「……暖かい、生きてる…………」


男「……………………………………………………。」


男「しかし、凄い量の結界と封印だ。この封印、解くのに時間がかかるぞ……」


男「…………………………。」


男「上から1枚1枚封印を解いて行くとするか……」


・・・・・・・


男「意識の封印…………よし、とりあえず今日はこんなもんでいいか」


男「っても、まだ10分の1程度、すごいな……ここまでしなきゃ封印出来なかったのか……」


「………………。」


男「……食料確保と同時に、魔石を採取しておくか」





男「さて、今日は封印じゃなく結界を解いてくか。情報量が多すぎて時間がかかるが……結界さえ解いてしまえば封印を解くのも時間の問題だな」


男「……といっても、パズルみたいに封印やら結界やら複雑に入り乱れてるが…………」


男「なんとかするしかねぇな……」




男「あ"ー!!!!疲れたー!!!」


「………………。」


男「……ん?」


「…………」


男「…………ああ、意識の封印を解いたから、目が覚めたんだな。どうだ?気分は」


「………………」


男「……ま、封印を解いてそんな時間も経ってないから喋れないのも無理ないか」


「…………」


男「まあまあ、そんな睨むなって、俺はお前を殺したりはしないよ」


「…………」


男「お前みたいな美人、殺すのがもったいないからな」


「…………」


男「ちょ……睨まないでよ……」





男「やあ、おはよう。元気?」


「………………」パクパク


男「ん?なに?お腹すいた?」


「……にんげ…………ころ……」


男「うーん、そんな……俺を殺したって意味ないと思うんだけどなあ……」


「……るさ……い」


男「まあいいや、今日も解析と解除、やってくよ」


・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・


「んで……たしを」


男「なんでって、美人だから」


「…………ざけ……るな」


男「ふざけてない、本気だよ。キミを俺のハーレムに加える、だからキミの封印を解く、以上!」


「…………う……しろ」


男「………………?………………っ!!!!」バッ


ガギィンッ!!


男「…………不意打ちは卑怯だぜぇ……」


「戦いに卑怯もなにも」


「ないっ!」


男「……ちっ、3対1か……アンフェアだな」


「ーードナ様の命令だ。」


「お前を殺す」


「そして、この女をいただく」


男「……いいや、この女は、俺のもんだ。誰にも、渡さねえよ」


「……………………。」


「……死ね」ブンッ


男「うぉっ!?」バッ


男「不意打ちは卑怯だって!!」


男「くっ……んのぉっ!!」ズッ!!!


ガァンッ!


男「……はっ?!死なない!?喉元切りつけたのに?!」


「………………。」


「……そう、簡単には死なない」


「死んでいられない」


男「くっそぉ……人間じゃないなお前ら……」


「エキーー様の為に」


「ーーフォン様の為に」


「出直す、またいつか。待っていろ男」


フッ…


男「……消えた…………」


男「…………にしても、ありがとうな、注意してくれて」ナデ


「……な…………るな」


男「んー?お礼のちゅーのほうが良かった?!ちゅー!」


「ちょうしに…………の……るな!!」


男「えぇー…………」


「……………………つかれた。…………ねる……」


男「……そっか、おやすみ」


「……………………」



・・・・・・・・・・・・・・


男「や」


「…………またきたのか」


男「言ったでしょ、俺の女にするって」


「……はぁ……もう、すきにして」


男「ん?!すきにして?!これは公認!?」


「そういう、いみでは、ない」


男「……っと、冗談は程々に。……今日1日もあれば封印は解けるはずだから、そしたらキミには俺のハーレムに加わってもらうよ」


「……いやだといったら」


男「むりやりにでも」


「…………」


男「黙んないでよぅ……」




男「よし。これでおっけ」


「ほんとに……ふういんをといた……」


男「キミの体力が回復するには時間がかかると思うけど、その間はここにいるよ」


「………………つれてかえらないの」


男「連れて帰ってもいいけど、嫌でしょ?」


「…………まあ」


男「んじゃ、ここで体力が回復するのを待つ。んで、キミが俺に着いてくるかどうかは、その時次第」


「………………。」


男「着いてこないなら来ないでよし、着いてくるならハーレムに加わってもらう」


「…………へんなひと」


男「よく言われるよ」


「………………また来た」


男「ーーこの前の……とは、違うみたいだな」


「へっへっへ……封印の解除、出来たみたいだな」


男「ま、お前らと違って俺は優秀だからな」


「自惚れたことを……」


男「自分に自信がある証拠だよ」


「…………まあいい、貴様はもう用済みだ。死ね」


男「死ぬのはお前だよ!俺は死なねえ!」


「腑抜けたことを!」ブンッ


男「……っ!!!」


「この……ッ!」


男「俺は……コイツを連れ帰ってハーレムを作るんだ。だから死なねえ!」


「頭おかしいんじゃねえのこいつ」


男「冷静に正論を言うな!殺す!!!」


「頭おかしいって自覚はあるのか……」


男「誰が頭おかしいだって!!?!?死ね!!!!」ザシュッ!


「ぐわああああっっっ!!!!!」


男「はっ、失礼なやつだ」


「…………」


男「……ごめん、怪我は?」


「……ない、それよりも。」


男「……ん?」


「……すりきず、ほおのところ」


男「……ああ、これぐらい……」


「…………ち…………のみたい……」


男「……ああ、吸血鬼だったな、お前」


「ち………………ち……」


男「…………舐めるか?」


「……………………」コクリ


男「じゃあ…………。…………ッ!」ビッ!


男「ほら、人差し指の腹切ったから、それでも舐めてろ」


「…………ん……あむ…………ちゅ……」


男「…………(ジンジンするな)」


「じゅる…………ん……む…………」


「……れろ……ちゅぱ…………んむっ……」


男「…………(……えろい!……たってきた、やばい)」


「ちゅる…………れ………………」


男「……も、もうだめ、おしまい」


「あっ…………」


男「そんな悲しそうな声しない」


「………………むう……」


男「……(可愛いなあ)」


「……でも、ありがとう」


男「……ん」


「……おかげで、幾らか、体が楽になった」


男「そうか、ならいい」


「…………まだ、体を動かすには少し体力が足りないけど」


「でも、さっきよりはいい」


男「そっか」


「…………ありがとう」


男「いいえ、どういたしまして。そろそろ寝ようか。」


「……私は、これからが活動時間……」


男「ほら寝るよ、夜だし」


「ちょっ………………。……もう……」


男「………………zzZ」


「………………ふふふ……」




男「……ふぁぁ……おはよう」


「…………ん、おはよう」


男「……おお、もう立てるようになったんだ」


「昨夜、少し、野生動物の血を飲んでね。……食べるかと思って、肉を持ってきたから、もし良かったら食べて」


男「ん、ありがとう」


「いいえ」


男「大陸を一つ滅ぼしたヴァンパイアクイーンなんて言うから、気性が荒いのかと思ったら、そんな事ないんだね」


「…………それは、血と愛に狂ったが故の行動だから。……昔のこと」


男「どんな過去があるのかは知らないけど、俺は君に一目惚れした。俺のハーレムに加わってくれないか」


「…………凄い私に好意を向けてくるね」


男「惚れたからね」


「……そっ…………そう……、真っ直ぐな愛を向けられると、て、照れる……///」


男「可愛い」


「か、かわっ…………。」


男「………………。」


「…………また」


男「今度はお前らか」


「エキドナ様と」


「ティフォン様の」


「そして我々のため」


「「「その女を寄越せ」」」


男「嫌だね。コイツは俺の女だ。お前らなんかにくれてやるか」


「…………。」


「はあ」


「はあ」


「はあ」


「すなおに言うことを聞けば」


「命は助けてやろうと思ったのに」


「そうでないなら」


「「「殺してでも奪い取る」」」


男「だから……3対1は卑怯だって……!!」





男「ぐっ…………どうみたって明らか不利……」


男「回復薬も無いし……もう体力も…………」


男「…………でも、コイツを手渡すわけには……」


「…………アナタ……」


男「お前は下がってろ!こいつらの狙いはお前だ……お前は、俺の女になるんだから……手渡すわけには……っ!!!」


「うるさい」ガッ


男「ぐはっ!!」


「っ!!!!」


男「………………くっ……そぉ……」


「どうして…………どうしてそこまでして」


男「だから…………言ってんだろ…………」


男「惚れたからだよ」


「…………………………そう……なの……」


「エキドナ様と」


「ティフォン様の為」


「お二人の、世界のため」


「あなた達が、エキドナとティフォンの為に戦うのなら」


「私は……………………」


「…………この人の為に、戦う」


男「……………………な……」


「私は…………ヴェロニカ」


ヴェロニカ「ヴァンパイアクイーン、ヴェロニカ」



・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・



男「……ヴェロニカ…………」


ヴェロニカ「……大丈夫ですか、男様」


男「……なんで、俺のために、戦うだなんて」


ヴェロニカ「男様が、惚れた私の為に戦って下さったのですから。私も、惚れた、男様のために戦った迄でございます」


男「俺に……惚れるだなんて……」


ヴェロニカ「……初めてでした。美しいと言われ、可愛いと言われ、こんなにも熱く求愛されたのは」


男「それほどに、美しいんだ」


ヴェロニカ「真っ直ぐな、貴方様の瞳に惚れました。……どうか、お傍にいさせてください」


男「……でも、どうして、俺を男様だなんて」


ヴェロニカ「男様により、封印を解いていただき、命を助けていただいた身。私の全身全霊を持って、この御恩を返すと同時に、忠義を尽くさせていただきます」


男「…………そんな、恩だなんて」


ヴェロニカ「私が、したいのでございます。」


ヴェロニカ「……初めて、愛というものを知りました。…………こんなにも、暖かいのですね」ギュッ


男「……ああ、でもなヴェロニカ」


ヴェロニカ「……??どうかなさいましたでしょうか……」


男「……その、胸が……当たってる。下半身に来るから、やめて欲しいというか……」


ヴェロニカ「……この、乳房に、興奮なさったのですか?」ムギュッ


男「ちょ」


ヴェロニカ「この身体……男様のものですので……お好きになさって、良いのですよ?」ムニ…


男「〜〜っ!!」ムラムラッ



・・・・・・・・・・・・・・



ヴェロニカ「……ふふ、千幾年と散らすことのなかった処女を、男様に捧げてしまいました」


男「……あぁ……すごいなヴェロニカは……サキュバスの様に搾り取って来るじゃないか……」


ヴェロニカ「でも、それでもまだ出続ける男様も中々の絶倫でございますね」


男「まあな……うちの家系はみんなこうだよ。……で、俺の傷が治ってるのと、ヴェロニカの魔素が濃くなってるのは、処女を散らした事が原因?」


ヴェロニカ「……いえ、違います。これは、性を搾取したからでございます」


男「性を搾取って、サキュバスみたいなこと言うな」


ヴェロニカ「えぇ、精液や愛液といった体液を糧とするサキュバスと、血液といった体液を糧とする吸血鬼は遠からず近いものでして。個体によっては私のように、精液や愛液を糧に出来る個体もいるのですよ」


男「その逆も居るってことか」


ヴェロニカ「はい。そして、男様の体力が回復していることについてですが。男様の性を私の糧として、私の唾液に魔素を込め、男様の体力を回復なさるように、私がしたのです」


男「なるほどね、だからセックスしたわけだ」


ヴェロニカ「はい。…………まあ、普通に……したかったのもあるのですが……///」モジ


男「エロ可愛いな」


ヴェロニカ「えっ、エロだなんて言わないでください……///」


男「ごめんごめん。…………ありがとうな」ナデナデ


ヴェロニカ「い、いえ…………いいのです……///」


男「…………ここの近くの村に、仲間を待たせてる。お前のことを知っている様だった。……戻ろうか」


ヴェロニカ「…………はい。」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


【町】


男「シトリー、戻った」


シトリー「おかえりなさい男様!……………………お久しぶりでございます、ヴェロニカ様」


ヴェロニカ「……シトリー…………!!……男様、もしかして、私を知っている人物というのは……!」


男「ああ、シトリーだ。俺が召喚した」


ヴェロニカ「そう……ですか……。」


シトリー「……ヴェロニカ様……申し訳ございません、ヴェロニカ様亡き後、勇者相手に奮戦しましたが……やはり適わず……敗北を…………」


ヴェロニカ「……良いのです、シトリー。……また、貴方の元気そうな顔が見れて……私は嬉しい」


男「…………。」


シトリー「ヴェロニカ様…………申し訳ございませんでした!」


ヴェロニカ「……あれは、致し方のないこと。貴方は悪くない。……寧ろ、あんなことになってしまう原因を作った、私を許して欲しい」


シトリー「ヴェロニカ様は悪くなど……!!…………ゆ、許して欲しいと仰るのであれば、また……忠義を尽くす……機会を下さいませ」


ヴェロニカ「……ダメなんて、言うわけが無い。」


シトリー「……!!!ありがとう……ございます……!」


ヴェロニカ「貴方は昔から……そういう子だったわね、シトリー……」


シトリー「ヴェロニカ様……!!」ギュッ


男「感動の再会の最中、悪いんだけど。シトリー、ヘルハウンドはどうなった」


シトリー「あ…………ヘルハウンドは……何故か突然消え去りました……」


男「消え去った……?」


シトリー「はい、広域魔法の生体探知を使って感知出来なかったので、消えたと言う方が正しいかと……」


ヴェロニカ「……アイツらを、殺したからかも知れませんね」


男「…………ヴェロニカ奪還に失敗した事を知ったエキドナが、撤収をさせた。だろうな」


ヴェロニカ「……なるほど……」


シトリー「…………な、何でおふたりはそんなに距離が近いのですか……」


男「…………いやあ……だって……」


ヴェロニカ「…………///」カァ


シトリー「ヴェ……ヴェロニカ様?!何故そこで頬を赤らめるのですか!!男様!説明してください!」


男「いやあ……かくかくしかじかというわけで……」


シトリー「なっ……」


ヴェロニカ「男様……とても逞しく……激しい……」ぽっ


シトリー「…………っ!」


シトリー「男様……本当にハーレムを作るつもりなのですね!!?」


男「……まあ。でも、正妻はヴェロニカだけどな」


シトリー「私は?!」


ヴェロニカ「わ、私が男様の伴侶で宜しいのでしょうか……?」


男「……俺は、ヴェロニカに、妻になってもらいたい」ギュッ


ヴェロニカ「…………はい……男様……」トロン


シトリー「…………」シュン


男「まあそう落ち込むなって、ほら背中押してやるから」ポン


シトリー「……そっちは胸!!平らで悪かったですね!!」プンプン


男「(からかうの楽しいなあ)」


ヴェロニカ「(いい玩具になってるなあシトリー)」


村長「あ、あのぅ……その……男様……」


男「ん?ああ、村長」


村長「ヘルハウンドを、追い払っていただき、ありがとうございました。」


村長「私共に出来ることは限られますが……なにかお礼を差し上げたいのですが……」


男「んー…………じゃあ、あの馬と、あと馬車をくれ、屋根のついてるやつ」


村長「…………そ、そんなものでよろしいのですか?」


男「そんなものって言っても、現状それ以上のものは期待出来なさそうだし」


村長「う……確かにそうですが…………」


村長「で、では……これから男様が旅をする上で、ここを補給の基地とするのはどうでしょう?宿や食料を、無償で提供させていただきます」


男「無償?それじゃあ村長だけじゃなく他の住民も金が回らなくて困るだろ。せめて原価ぐらいは払う」


村長「い、いえ!それでは示しが付きませんので……」


男「あー、じゃああれだ、チップって事にすればいいんだな。そうすれば俺の気持ちだから断ることは出来ない」


村長「……………………。…………貴方様が心優しいお方で本当に良かった……!」


男「別に優しくするつもりなんてない、ただ、俺が得を出来ればそれでいいだけだ」


男「じゃあ馬と馬車を貰って行くぞ」


村長「はいっ!男様……」


男「ん?」


村長「旅は大変だと思われますが、どうかお気を付けて……」


男「……ああ」


村長「それと、これを……。我が村に代々伝わる幸運のお守りでございます。気休め程度にしかならないと思いますがぜひお持ちを……」


男「……なにから何まですまない、ありがとう。」


村長「い、いえ!」


男「よし、じゃあ行くぞ、ヴェロニカ、シトリー」


シトリー「はい!」


ヴェロニカ「はい」


シトリー「村長さん、ありがとうございました」ペコリ


村長「いいえ、こちらこそありがとうございました」ペコ



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


【旅路】


男「んー、次はどこに行くか……」


ヴェロニカ「見た感じ、武器や防具等は整っていますが薬草や非常食等の消耗品が足りていないように感じます。どこか大きな村、もしくは交易が盛んな国で補給をなされては如何かと」


シトリー「そうですね、男様がヴェロニカ様の元へ行っている間の村でのヘルハウンド攻防戦で結構薬草を消耗してしまいましたし……」


男「ここから1番近い国は……ドルナ王国か」


ヴェロニカ「ではそちらへ参りましょう。ここからだとどのぐらいかかるのですか?」


男「んー、まあさっき日が昇ったばかりだからな。無休憩で行けば日が変わる迄には着くだろうが、たとえ馬と言えどそう長時間は走れまい。途中休憩を挟んで、明日の夕方ぐらいか」


シトリー「なるほど……ではヴェロニカ様は荷台でお休みくださいませ!」


ヴェロニカ「で、でも男様が馬を操っている中私一人だけ休む訳には」


男「吸血鬼は日光に弱いんだろ?基本夜行性なんだから、無理して日中に活動する必要は無いぞ」


ヴェロニカ「でも……」


男「俺もシトリーも、お前のことを考えて言ってるんだ。俺に気をつかってのその発言なら、間違ってるぞ」


ヴェロニカ「………………わかりました。ではお言葉に甘えてお休みさせていただきます。」


シトリー「はい、ゆっくりお休みください」


ヴェロニカ「男様」


男「んー?」


ヴェロニカ「……何かありましたら、すぐにお呼びください。貴方様のヴェロニカ、お呼びであらば即座に」


男「……分かった。それまで休め」


ヴェロニカ「……はい」


男「……ヴェロニカはいつもあんな感じなのか?」


シトリー「……心優しいと言う意味ではあんな感じではありますが、異性に対してのヴェロニカ様は……初めて見ました」


男「というか、昔のヴェロニカは異性との交友はあったのか?」


シトリー「無いわけではありませんが、どうも……」


男「なんだその言葉を濁すような」


シトリー「……男の人を見下していたというか……」


男「なんでだよ」


シトリー「…………どうにもヴェロニカ様曰く、体目当ての性欲のままに動く猿。らしく……」


シトリー「正直、男様に惚れ込んでいたヴェロニカ様を見て驚きました」


男「……(あぁ、真っ直ぐな瞳…………か)」


シトリー「どうかなされたのですか?」


男「……いや、なんでも。それよりシトリー、お前も少し休憩しておけ」


シトリー「えっ?ですが……」


男「ヘルハウンド相手に気を張っててろくに休憩してないだろう。顔に元気がないぞ?」


シトリー「…………はい」


男「何かあったらすぐに呼ぶし、ちょっとしたことなら俺一人で何とかなる……と、思う……」


シトリー「そこは嘘でも言い切ってくださいよぉ……」


男「とりあえず!俺は大丈夫だから休憩しておけ。…………な?」


シトリー「…………はい。では、休憩いただきます……」


男「……ん、よし」


・・・・・・・・・・・・・・


男「……………………。」



・・・・・・・・・・・・・・



男「………………。」



・・・・・・・



男「…………ん?どうした。」


男「………………ああ、疲れたか、大丈夫か?」


男「じゃあ少し、休憩するか」


男「腹は減ったか?」


男「……ん、そうか、じゃあどこか、お前の食えるものがありそうな所で休憩しよう」


男「……あそこらならいいんじゃないか?といっても、馬の食える草なんて知らないんだけど……」


男「あそこでいい?ん、わかった。」


男「…………よし、じゃあここで少し休むか。ここらの草がお前が食えるならそれはそれでいいんだけど水が……」


男「……喉は乾いてないって言っても、次はいつ休めるかわかんないからな。ちょっと水場探してくるよ、待っててな」





男「(……あれ?なんで普通に会話してるんだ俺)」





・・・・・・・・・・・・・・



男「……なんだ、意外と近くに沢があるじゃないか」


タタッタッタッ


男「ん?ああ、追い掛けて来たのか。待ってろって言ったに……」ナデナデ


男「もう食事はいいのか?……そうか、満足したなら良かった。車を外してやろう、少し休め」シュルシュル


ヒヒン…


男「どうしたそんなに甘えてきて、遊んできていいんだぞ?」


男「……一緒に居たい?可愛いやつだなお前も」


男「……こんなの、シトリーやヴェロニカに見られたら嫉妬されるぞ?」


男「シトリーには負けるけどヴェロニカよりは一緒に居る時間が長いって?……まあそうだけどさ」


男「…………よくもまあ俺に惚れたなお前も」


男「……優しいから?俺が?……嘘だぁ、こんなハーレムを作るだ何だ言ってるのが……」


男「いたっ、頭突きをするな……。……ここまで私に気遣ってくれた人は初めて?……ふーん、そんなものかねぇ……」


男「まあ動物には割と好かれる方だとは思ってるけども……」


男「いてっ!なんだそんなむくれて……嫉妬か?」


男「……まあまあ、今は2人きりなんだから。好きなだけ甘えてきていいんだよ」


男「……馬の殆どがツンデレって言うけど、お前は本当にお手本みたいなツンデレだな」


男「お、怒るなって、悪かったよ」ドウドウ




シトリー「……ヴェロニカ様……男様が何やら独り言を……」


ヴェロニカ「……男様……疲れていらっしゃるのでしょうか……」




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・


【ドルナ王国】


男「着いたぞ、ドルナ王国だ」


シトリー「ここは入国審査等は要らないのですね」


男「ドルナ王国は旅人や冒険者、商人が多く行き来することとそれが理由での入国審査の緩さが有名だな」


男「でも他の国はこうも行かないから、とりあえずこの国で冒険者登録をしておく」


ヴェロニカ「冒険者登録……?」


男「ああ、そうすれば他の国に入る際に入国審査を軽くパス出来るからな」


シトリー「なるほど……」


男「それに、冒険者登録をすればちょっとした依頼を受けるだけで金が貰えたりするからな」


ヴェロニカ「旅費を貯めるのにも丁度いいと言うことですね」


男「ああ、倒したモンスターや魔物の素材を売って金にするのも悪くは無いが確実に金になる保証は無いしまず遭遇しなければ元も子もないからな」


ヴェロニカ「であらば依頼をこなして金を貯めるのが得策、と」


男「そういう事だ」


シトリー「なるほど!では早速!」


男「いや。」


シトリー「……??」


男「まずは宿を探す事が先だ。馬小屋がついてる宿をな」


ヴェロニカ「……はい」





男「1泊で一人一部屋銅貨5枚か、安いな」


シトリー「そうなのですか?」


男「あぁ、一人一部屋、1泊だとまあ銅貨7~10枚、銀貨1枚前後って所だな」


シトリー「ではここは当たりですかね?」


男「……まあ都心から離れてはいるけどな。それさえ気にしなければ当たりだ」


ヴェロニカ「男様、戻りました」


男「ああ、ありがとうヴェロニカ」


シトリー「……??ヴェロニカ様は何をしていらしたのですか?」


男「ヴェロニカにはあの子を馬小屋に連れて行ってもらってたんだ。」


男「……そういえば、あの子に名前付けないとな」


シトリー「あの子って、村長さんから貰った馬ですか?」


男「ああ、呼び名がないのは可哀想だろ?」


ヴェロニカ「…………そう……ですね。」


男「うーん、あの子美人さんだからな……何かいい名前…………」


シトリー「…………あの馬って、美人なのですかね……?」ヒソヒソ


ヴェロニカ「……私にはわからないけど、男様が美人というのであればそうなのかしらね……」ヒソヒソ


男「んー…………」


シトリー「…………マリーとかいいんじゃないですか?」


男「マリーか、東の方に多い名前だな……」


ヴェロニカ「クリスタとかは如何でしょうか?」


男「クリスタ……西の方か……」


男「うーん…………」


シトリー「男様は何か案がお有りですか?」


男「ジャンヌ…………とか」


ヴェロニカ「ジャンヌ・ダルク、ですか?」


シトリー「戦乙女…………あまり戦って感じはしませんけどねぇ」


男「よし、じゃあ本人に決めてもらおう」




ヴェロニカ「クリスタ」


「……」


シトリー「マリー」


「…………」


男「ジャンヌ」


「…………。」


男「ジャンヌがいいってさ」


シトリー「……そりゃ気に入ってる人から貰う名前が1番いいに決まってるじゃないですかぁ」


ヴェロニカ「……気に入ってる…………??」


シトリー「はい、この馬…………ジャンヌは男様に恋をしているのですよ」


男「…………ほんとかよ」


ヴェロニカ「……む……」


シトリー「なんと言っても、私がそうさせたのですから」ドヤ


男「……………………。」


ヴェロニカ「………………。」


シトリー「な、なんでお二人共黙るんですかぁ!」


シトリー「……ちょっと私の力が使えるかどうか試しただけなのに……」ムスッ


男「なるほどね、動物に恋されるなんて変だとは思ったけれども」


ヴェロニカ「危うく馬に嫉妬する変な女になる所でした」


男「でもシトリーのせいだとはいえ俺の事を好いてくれるなら、俺はできる限りそれに応えないとな」ナデ


「……」


ヴェロニカ「……貴方、いい主人を持ったわね」





「……シトリー様のお力なんてなくてもワタシはご主人様を……」




男「…………」


ヴェロニカ「……?どうかされましたか?」


男「……いや、なんでもない。とりあえず冒険者組合に行こうか」


シトリー「……はい!行きましょ行きましょ!!」





【その日の夜】


「………………。」


「ねえ」


「…………??」


「アナタ、好きな人がいるんでしょう?」


「……………………。」


「アナタの寿命、半分貰う代わりに、アナタを人の姿にしてあげる。と言ったら、どうする?」


「もちろん、人の姿と馬の姿、どちらでも自由に使い分けられるけれども」


「………………………………。」


「………………。そう、それがアナタの答えなんだ、ジャンヌ」


「……分かったよ。じゃあね……」





ヴェロニカ「(今夜は静かね)」


ヴェロニカ「(……下弦の月…………)」


ヴェロニカ「(大陸中の人間の魂を食らったものの……封印されてる間に、食らったぶんの魂を消化していったから、もう後残り少ないな……)」


ヴェロニカ「どこかで人の魂を食べれればいいんだけど………………」


ヴェロニカ「…………………………」


ヴェロニカ「………………………………血の匂い……」


ガタッ





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・


兵士A「おい!応戦しろ!姫様を逃がせ!」


兵士B「くっ!数が多すぎます!敵いません!」


兵士A 「城内でいい!命に変えてでも姫様を守るぞ!」


兵士C「ですが……四方を囲まれているので……」


兵士A「……くっ。……ここまでか……」



「…………血の匂い……いい匂いです」



兵士A,B,C「…………っ?!」


ヴェロニカ「…………」


「きっ……貴様!何者!!」


ヴェロニカ「……私は……。……ヴァンパイア」


ヴェロニカ「血と魂を喰らいに来た」


「なんだコイツ……!!たかだか女ひとり!俺が殺る!」ダッ!


ヴェロニカ「……ふふふ、所詮は雑魚。」スッ


「……ぉろ……っ?」ドサッ


「な、なんだ……なにが起こった!!」


「し、知らん!ただ……いきなり……首が……」


「う……うわああ……化け物だ!!」


ヴェロニカ「……あなた達、逃げるなら逃げなさい、その姫様とやらを連れて。」


兵士A「っ……!!……恩に着る」


兵士A「姫様を避難させろ!あのヴァンパイアが味方してくれている間に!」


ヴェロニカ「さて……味方をするつもりなどは無かったのですが……。まあいいでしょう、あなた方、私の食事に、付き合ってくださいね……??」




兵士A「……何だったんだあのヴァンパイアは……」


ヴェロニカ「どうもこんばんは」バサッ


兵士C「うっ、うわああっ!?」


ヴェロニカ「……そんなに驚かなくても……」


兵士A「き、貴様いったい……!」


ヴェロニカ「私はヴェロニカ、ヴァンパイアクイーンヴェロニカでございます。」


兵士C「……ヴァンパイアクイーン…………」


変だB「そ、そんな……伝説や伝承の類いだと思っていたのに…………」


兵士A「ま、待て!ヴェロニカの名前を語るただのヴァンパイアの可能性もある!」 


ヴェロニカ「……私は、今の主によって数百年の封印を解いていただきました。」


兵士B「なっ…………」


ヴェロニカ「数百年と封印されてる間に、今まで捕食した分の魂を消化しきってしまいまして。どうにか人の魂を喰らおうと思っていたところで血の匂いがしましたので、お食事をさせていただきました」


兵士A「お、俺らも喰うつもりか!」


ヴェロニカ「いえいえ、姫様を……と聞こえたので、何やら大事になりそうな予感がいたしまして」


兵士C「………………この方になら、話しても宜しいのでは……。」


兵士A「姫様に、聞いてみないことにはなんとも……」


「中から、聞こえております」


「どうぞ、吸血女王ヴェロニカ様、馬車の中へお入りください」


ヴェロニカ「……では、失礼します」




「お初にお目にかかります。ドルナ王国の時期王女、ルナでございます」


ヴェロニカ「ご丁寧なご挨拶をありがとうございます、ルナ王女様。ご存知の通り私、ヴァンパイアクイーン、ヴェロニカでございます」


ルナ「……先程のお話でございますが」


ヴェロニカ「ええ、ルナ王女様を逃がす……とかどうとか。込み入った事情がおありのようで」


ルナ「……ええ、まあ…………。少し長くなりますが、お話してもよろしいでしょうか」


ヴェロニカ「……夜が開けないうちに」


ルナ「…………事の始まりは、私の国の商人でした」


ルナ「商いのために移動中、山賊に襲われたのです。護衛で着いていた冒険者様がその山賊を追い払ってくださったおかげでその場はどうにかなったのですが……」


ルナ「その山賊が、どうやらダナル王国の者だったのです」


ヴェロニカ「……ダナル?といいますと……」


ルナ「……ダナル王国は、周辺の国々では1番と言っていいほどの軍事力を持つ国でございます」


ヴェロニカ「………………なるほど、つまりはその報復というわけでございますね」


ルナ「察しが良くて助かります。そうなのです、その山賊がどうやらダナルの者だったそうで。私達ドルナに「剣を抜いたならこちらも剣を抜かせていただこう。」と……」


ヴェロニカ「で、なぜ王女自ら馬車にて?」


ルナ「……ドルナは、国土はあるものの軍事力はあまりありません。戦になったら勝てる可能性はゼロと言っても過言では無いのです」


ルナ「なので他の国にご助力を願おうと、私自ら参ろうとした次第でございます」


ヴェロニカ「なるほど。事情は把握致しました。……そろそろ夜が開けそうなので私はこれにて、また今日の晩にでも、お会いしましょう」


ルナ「あ、あの。ヴェロニカ様」


ヴェロニカ「…………??」


ルナ「ヴェロニカ様のご主人様に、貴方様の従者を私の国の問題に関わらせてしまって申し訳ございませんと、お伝えください……」


ヴェロニカ「…………わかりました、伝えておきましょう。それでは、また逢う日まで」





「はっ……!はっ……!はっ……!王に報告せねば……!」


「(ドルナには……化け物がいると……報告せねば!)」


ヴェロニカ「こんばんは、仲間を見捨てて逃げ出した腰抜けさん。」


「っ…………!!?な、な、な……!!来るなバケモノぉ!!」


ヴェロニカ「……あら、化け物だなんて……失礼な人ですね」


「うわ……わっ!!く、来るな!頼む!来ないでくれ!!」


ヴェロニカ「大丈夫ですよ。私は何もしません。」


ヴェロニカ「ただ、条件があります」


「何でもする!どんな言うことも聞くから命だけは!」


ヴェロニカ「……私の存在を隠して、奇襲に成功したが手練の兵がいて苦戦して、撤退してきた。と、報告なさい」


「…………そ、そんな事をすれば戦争になるんだぞ!!」


ヴェロニカ「…………えぇ、構いませんよ。むしろ、私は戦争を望んでいるのですから……」


「…………?!」


ヴェロニカ「誰にも咎められることがなく人を殺すことの出来る戦争は、大好きなんですよ……」ニタァ


ヴェロニカ「……もし戦争になったら、私は貴方を殺さないと。そう誓いましょう。」


ヴェロニカ「ですので、報告、よろしくお願いしますね」ニコッ


「……………………はっ…………っはははははは……」










男「…………ん…………朝か」モゾ


ヴェロニカ「おはようございます男様」


男「………………おはよ……って、なんでここに居るんだよ」


ヴェロニカ「……先程まで少し夜風を浴びに行っていたもので……宿に戻ったら部屋を間違えてしまいまして」


男「…………そういうことにしておいてやろう。ヴェロニカはこれから寝るんだろ?」


ヴェロニカ「……そうですね、少しお休みをいただこうかと」


男「そうか。ま、少し休んでるといい俺はその間にシトリーと装備や消耗品を整えに買い物に行ってくるよ」


ヴェロニカ「……かしこまりました。お気を付けて」


男「………………。」


ヴェロニカ「……??どうかなさいましたか?」


男「……や、なんでもない。とりあえず行ってくるよ」


ヴェロニカ「はい、行ってらっしゃいませ」




シトリー「いやあ、2人きりでお買い物なんてまるでデートですね男様!」


男「厳密に言えば2人と1頭だけどな」


「…………??」


男「今日は天気が良くて良かったなージャンヌ」ナデ


シトリー「…………」ムスッ


男「なーに拗ねてんだよ」


シトリー「だって男様ジャンヌばっか構って私に構ってくれないから……」


男「……悪かったよ買い出し終わったら遊んでやるから、機嫌直せって」


シトリー「…………ホントですか??」


男「おう」


シトリー「ふっふーん」


シトリー「……じゃあ後でご飯食べに行きましょう!」


男「……ほどほどにな」


男「…………な、ジャンヌ」ナデナデ


シトリー「…………」ムスッ




「……やっぱり。ご主人様と一緒にお出かけしたい……」



シトリー「………………………………。」 






男「で、飯って、何を食うんだ?」


シトリー「んー?それはですねー……」


シトリー「じゃじゃーん!これでーす!!」


男「…………菓子……?……飯じゃねえじゃん……」   

シトリー「ふふん!女の子は甘いものが大好きなのですよ!」


男「はあ……。」


シトリー「……といっても、私の場合女の子という歳ではありませんけどもね……」


男「自分で言って自分で悲しんでるよこいつ……」


シトリー「こんなことでクヨクヨしていられません!行きますよ男様!」


男「……はぁ……」



・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・



男「……で、なんだよ」


シトリー「……なにがですか?」


男「話があるんだろ?」


シトリー「話?なんの事ですか?」


男「俺に話したいことがあるから、こうして2人きりになったんだろ」


シトリー「……なん……」


男「言いたい事があるなら言っておけ。ヴェロニカやジャンヌに黙ってて欲しいなら黙っててやるから」


シトリー「……………………。」


シトリー「………………」


シトリー「………………私の、召喚された際の契約についてです」


男「……契約?……ああ、そういや、ろくに契約結ばずに今まで旅してきたな」


シトリー「……はい。今の私は、自ら魔界から出てきた身ではなく、召喚された身なので。この人間界に居られる期間が決まっているのです」


男「…………もうその期間が満了ってか」


シトリー「…………はい。」


男「……そうか」


シトリー「……ヴェロニカ様が復活なさった今、魔界から出てきたい所ではありますが、ソロモン王が許してくれるか分からないのです」


男「…………で?それだけじゃないだろ」


シトリー「……誰か、生贄を下さい」


男「……自分がここに居続けるためには生贄でも必要か?」


シトリー「違います。…………身近な人の恋を、成就させるためです」


男「ヴェロニカか?」


シトリー「…………違いますよ!ヴェロニカ様はちゃんと男様に惚れているではありませんか!」


男「……じゃあ、誰だ」


シトリー「……言えません。こればかりは、たとえ男様であろうと、ヴェロニカ様であろうとも。……口が裂けても言えない、女同士の秘密なのです」


男「………………………………分かった。じゃあ、誰か一人、狩るといい」


シトリー「……ありがとうございます」


男「話って、この事か?」


シトリー「…………はい。……そろそろ魔界に帰らなければならないこと。人を狩る許可を貰うこと。このふたつです」


男「……………………そうか。」


男「……また、なんかあったら言えよ」


シトリー「……はい。」





【帰路】


シトリー「…………男様」


男「……どうした?」


シトリー「あの…………実は、お話しなければならない事が、まだひとつ、あるのです」


男「………………だろうな。言ってみろ」


シトリー「…………えっと……その…………」


男「……無理しなくていい、お前のペースで話してくれればいいよ」


シトリー「……実は。……私は、ティフォンの、手下なのです」


男「……………………そうか」


シトリー「……元々は、男様のご友人が仰っていた通り、ソロモン王に仕えていたのですが。魔界で、争いがありまして」


男「…………うん」


シトリー「その際に、ティフォンと、エキドナが、ソロモン王を倒し、ソロモン王に仕えていたものを、武力によって支配しました」


男「………………」


シトリー「……魔界は今や、ティフォンとエキドナの、2人のものです。その2人が、魔界を出て、人間界にて、その勢力を拡大しつつあります」


男「……………………。」


シトリー「……ですので。私は……。……男様と、……ヴェロニカ、様に…………刃を向けねばならぬ時が……来るのです」


男「………………」


シトリー「……私は…………わたしは!!…………大好きなふたりに、刃を向けるようなことを……したくないのです……」ポロポロ


シトリー「それをずっと…………言いたかった……」ポロポロ


男「……俺を」


男「…………俺を、ヴェロニカの元へ行かせたのはあれは……」


シトリー「…………ヘルハウンドの件は、自演でした」


シトリー「……男様が黒魔術師の血を引いていること、エキドナはそれに気が付き、「男ならヴェロニカを見付けられる」……と」


シトリー「それで、ヴェロニカ様が封印されていると言われていたあの山に、男様を連れ出すために、ヘルハウンドを召喚したのです」


男「………………。」


男「…………俺を利用したのか」


シトリー「……ちが、ちっ、…………違います……!」


シトリー「私は…………。…………ヴェロニカ様なら、あの二人を倒せるだろうと思いました。……元々仕えていた事もあり、ヴェロニカ様の実力は十二分に把握しています」


シトリー「もし、もし……!男様が、ヴェロニカ様を殺さずに、連れて帰ってきたのだとしたら。」


シトリー「…………男様と、ヴェロニカ様が……ティフォンとエキドナを、殺ってくれるだろうと。………………淡い期待を抱きました」


男「……お前は。」


シトリー「…………はい」


男「人間と、魔界、どっちの肩を持つんだ」


シトリー「…………あの二人に支配されている以上、魔界側でなくてはなりません。」


シトリー「……でも。………………私は、あの二人を殺したい!あの二人の支配から抜け出したい!あの二人の…………!!……思うような世界に、なって欲しくない…………!」


シトリー「……助けてください、男様………………何でもします、…………私はどうなったって構いません!!無理やりに支配されている魔界の者を!望まぬ服従を捧げている我々悪魔を!!助けていただけないでしょうか!!!」


男「シトリー」


シトリー「……………………はい。」


男「…………できる限りの事はやる。」


男「報酬は……」


シトリー「…………。」


男「お前だ」


シトリー「…………そう言うと思いました。先払いで、よろしいですか……?」


男「……それはどうでもいい、俺は、お前が俺の物になるなら、俺のできることは何だってやってやる」


シトリー「………………短い間ではありましたが貴方にお仕え出来て本当に良かった。」


男「俺も、お前を使い魔として召喚できて良かった。……いつ頃戻るんだ?」


シトリー「……明日の昼過ぎには」


男「……そうか、ヴェロニカとジャンヌに伝えないとな」


シトリー「……いえ、お2人には内緒で……」


男「ヴェロニカにも内緒にするのか??」


シトリー「……はい、別れが辛くなるだけですので」


男「……そうか」


シトリー「…………最後に、嘘でもいいので、好きだ。と、言ってはくれないでしょうか……」


男「…………言わんぞ」


シトリー「……………………そうですか」


男「最後だなんて、認めないからな。俺は、ティフォンとエキドナを殺し、お前を俺のハーレムに加える」


シトリー「…………!!」


男「だから、この別れを、俺は最後だなんて認めない。」


シトリー「…………さすが、さすが男様です!!やっぱり私を召喚して、ヴェロニカ様を認めさせるだけはありますね!!」


男「…………だろ?だって、勇者超えるつもりだからな、俺は」


シトリー「男様なら、出来ますよ。絶対に」


男「…………ああ、やるさ」


男「今まで俺をバカにしてきたやつ全員、見返してやる」








【宿】


ヴェロニカ「………………男様、お話が」


男「……ん?どうした」


ヴェロニカ「……昨夜の事なのですが……夜風を浴びに街中に出たら……」


ヴェロニカ「血の匂いがしたのでふらふらと匂いのする方へ向かったのです。そしたら、この国の王女が襲われていまして」


男「……お、おぉ……」


ヴェロニカ「詳しい話をしようと思えば出来ますが話が長くなってしまいますので所々割愛させていただきますが。お話の続きを、よろしいでしょうか」


男「…………どうぞ?」


ヴェロニカ「ありがとうございます。……このドルナ王国の商人が商いのために出掛けていたら山賊に襲われたらしく、護衛の冒険者が追い払ったらそれがダナル王国の者だったらしいのです」


男「あーーーー…………何となくわかるぞ、それで、ダナルの国王がうちの国のものに何してくれとんじゃー、戦もやぶさかではないぞー!って言ってるとかそういうやつだろ?」


ヴェロニカ「まあ、大雑把に言えばそういうことです。ドルナ王国のお姫様から、貴方様の従者を私の国の問題に関わらせてしまって申し訳ございません。との言伝をいただきました。」


男「で、お前がそういった話を俺に持ち込むと言う事は、お前はやる気なのか?戦争を」


ヴェロニカ「……はい、私は、戦いたいです。」


男「何のために」


ヴェロニカ「人の魂を、喰らうためでございます」


男「それをする事で俺へのメリットは」


ヴェロニカ「人の魂を食らうた私は、魔王に匹敵する力を得られます。その、魂の量が多ければ多いほど……」


ヴェロニカ「なので、私が魔王になり、男様がその夫となり、私とふたりで、この世界を支配できるのです」


男「……封印される前の、野望を捨て切れていないのか」


ヴェロニカ「違います、あくまでも私がその様な力を手に入れられると言うお話でございます。その力をどう使うかは男様次第……」


男「なるほどな」


男「…………………………。」


男「…………じゃあ、ヴェロニカ。行ってこい」


ヴェロニカ「……ありがとうございます。」


男「ドルナの王女に手紙を書こう、どうせ今夜も行くのだろう?」


ヴェロニカ「はい」


男「じゃあ。………………」


男「…………これを持っていくといい」


ヴェロニカ「ありがとうございます。では、行ってまいります」


男「気を付けて行ってこいよ」


ヴェロニカ「はい、お気遣いありがとうございます。」







コンコンコン


ルナ「……?(窓……から?)」


ルナ「………………ど、どなた……ですか?」


「ルナ王女様、私でございます、ヴェロニカです」


ルナ「……ぁ……」ホッ


カチャ、キィィ……


ルナ「……どうぞ、お入りください」


ヴェロニカ「どうも、窓から失礼します」スタッ


ルナ「……昨晩は、兵士達を助けていただき、ありがとうございました」


ヴェロニカ「いえ、私も丁度お腹がすいていた所でしたので、お気になさらず」


ルナ「…………あ、あの」


ヴェロニカ「私の主人、男様よりこちらの書状を預かってまいりました」


ルナ「……中を拝見してもよろしいでしょうか」


ヴェロニカ「……ええ、どうぞ」


ルナ「ええと……」


『親愛なるドルナの王女様へ


  昨夜は私のヴェロニカがお邪魔をしてしまい申し訳ございませんでした。

 ヴェロニカから話は伺いました、どうやら戦力が必要なご様子で。

 もし宜しければうちのヴェロニカをお使いくださいませ

 これでも大陸の人類生物を全て消し去った実力を持つ吸血鬼

 必ずやお力になるでしょう。必要であらば私も戦に参戦させていただきます。

                男』



ルナ「……こちらを、ヴェロニカ様のご主人様が?」


ヴェロニカ「はい、ルナ王女様の元へ行くと言ったらこれを持っていけ、と」


ルナ「…………男様には直々に挨拶をせねばなりませんね。」


ヴェロニカ「男様は礼儀作法といったものを面倒くさがるお方ですがよろしいのでしょうか……」


ルナ「構いません。直接、お礼と、挨拶を致したいのです」


ヴェロニカ「……承知致しました。」


ルナ「ヴェロニカ様が来られることを予想し、昼間のうちに文を書いておきました。」


ヴェロニカ「……これが?」


ルナ「はい、私の直筆で男様とヴェロニカ様を私の部屋に招待する旨を書いた書になります。もし城に来られる場合はこちらをお持ちくだされば中に入れるよう近衛兵に言っておきます」


ヴェロニカ「畏まりました。ではありがたく頂戴いたします」


ルナ「……そういえば、ヴェロニカ様はお茶等は飲まれるのですか?」


ヴェロニカ「……昔はよく、今はそれほど……」


ルナ「では、夜明けまでお時間がある事ですし、もし宜しければお茶にしませんか?最近輸入した、香りの良い紅茶があるのです」


ヴェロニカ「紅茶は好きですよ、いただきます」


ルナ「では、従者をお呼びしますね」チリンチリン


ヴェロニカ「こんな夜更けに、迷惑では無いのですか?」


ルナ「彼女は、夜型の人間なので大丈夫ですよ」


コンコン


ルナ「入りなさい」


「はい、失礼致します。お呼びでしょうか姫様」


ルナ「アンリ、この方は私の友人です。自己紹介を」


「はい。」


アンリ「私。時期王女であるルナ姫様の従者をしております、アンリと申します。よろしくお願いいたします」


ヴェロニカ「ご丁寧な挨拶をありがとう。私の名前はヴェロニカ、以後お見知りおきを」


アンリ「はい、よろしくお願いします」


ルナ「アンリ、お茶を」


アンリ「畏まりました。ご用意致します、お待ちください」


ヴェロニカ「…………正直、彼女はあまり従者には向いていないですね、従者にしては覇気がありません」


ルナ「えぇ……ですが、彼女は元々孤児でした、幼い頃に親を亡くし…………城の前に捨てられていたのを乳母が広い、幼い私と共に育ててくださったのです」


ヴェロニカ「それがあの子ですか」


ルナ「ええ、幼き頃から私と共に私と同じく教育を受けました、……私の分身と言っても過言ではありません」


ヴェロニカ「なるほど。しかしあの子には自己協調性がないですね、もう少し自分に自信を持たせても良いのでは」


ルナ「それではあの子を私の従者にしている意味がないのですよ」


ヴェロニカ「……それはなぜ?」


ルナ「あの子が自信を持つようになり私が政権を握るようになったとしたら、あの子が私を暗殺しないとも限りません」


ヴェロニカ「それはないと思いますよ」


ルナ「……何故そう言いきれるのですか?」


ヴェロニカ「千と数百年生きてきた中で培った勘です」


ルナ「…………勘で何とかなれば暗殺に怯えはしませんよ」


ヴェロニカ「暗殺に怯えてるうちは狙われませんよ、やるとすれば油断した時に必ずしかけてきます」


ルナ「…………………………。」


ルナ「……実を言うと、怖いのです」


ヴェロニカ「何がですか?」


ルナ「あの子は……私より優れているのです。剣術も、勉学も、政策も、戦の際の作戦指揮を執るのも。」


ルナ「……今でも、国王…………父上の臣下の中には「次期王女よりも、その従者の方が優れている」などと囁く者も少なくは無いのです」


ヴェロニカ「そしたら言ってやればいいのですよ」


ルナ「……なんと?」


ヴェロニカ「「もし私が殺されても1人で国を管理できる様に育てた」と」


ルナ「そんな事がまかり通るはずが……!!」


ヴェロニカ「出来ますよ。…………問題は、王女様を支持する者の数にもよりますが。王女様を支持する者の数が少なければその言葉は無かったことになるでしょう」


ルナ「………………それは……」


コンコン


「失礼致します、アンリでございます。お茶の用意が出来ました」


ルナ「……………………。このお話は止めましょう」


ヴェロニカ「そうですね、今はお茶を楽しみましょう」


ルナ「入りなさいアンリ。……カップをもうひとつ持ってきなさい、……ええ、貴方も一緒に、お茶を楽しみましょう?」




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・



ヴェロニカ「王女、今夜はお招きいただきありがとうございました。」


ルナ「……いいえ、こちらこそお茶にお付き合い頂きありがとうございました」


ヴェロニカ「こちらの書状は男様に渡しておきます。」


ルナ「はい、お願いします」


ヴェロニカ「また………………今日か明日か明後日か、会う機会があれば。その時に」


ルナ「ええ、楽しみにお待ちしております」


ヴェロニカ「それでは」


ルナ「またお会い出来ることを楽しみにしております」


アンリ「…………」ペコリ


ヴェロニカ「………………」クスッ



バサッ

バサバサバサバサ…




アンリ「……本当に、吸血鬼なのですね」


ルナ「ええ、この国をお救いくださるかもしれない、重要な方です」


アンリ「……………………ヴェロニカ……」


アンリ「…………………………。」









【宿】


男「…………ん」


「………………」


男「………………………………」


「……………………」


男「………………誰だ」


「……………………私」


男「…………だから誰だって」


「…………私だよ、ご主人様、ジャンヌ」


男「…………んん……?ジャンヌ……?」


ジャンヌ「……うん、ジャンヌ。……シトリー様がこの姿にしてくれたの。好きな人と愛し合えないのは辛いでしょう?って」


男「……シトリー……(……そうか、これをするために人間の魂が欲しいって言ったのか)」


男「…………そうか、おいで、ジャンヌ」


ジャンヌ「ん」タタタッ


男「お前は、人の姿になっても綺麗だな」ナデ


ジャンヌ「ありがとう、ご主人様に撫でられるの、好きだよ」


男「可愛い系というより美人系?足の筋肉、すごいね」


ジャンヌ「元が馬だもん」


男「綺麗な足だ。」


ジャンヌ「手つきいやらしいよ」


男「……嫌なら抵抗すればいい」


ジャンヌ「嫌じゃないから抵抗しない」


男「えっちなことしても?」


ジャンヌ「してくれるの?」ギュウッ


男「ここ最近溜まってるし」


ジャンヌ「じゃあ一緒に気持ちよくなろ」


男「愛し合おうと言ってくれ」


ジャンヌ「愛してる」


男「俺もだ」


ジャンヌ「んっ…………」




・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・



ジャンヌ「シトリー様との約束、朝日が昇ったら元の姿に戻ってしまう」


男「じゃあ馬小屋に戻らなきゃだな」


ジャンヌ「……うん。日が昇っていなければまたこの姿になれる」


ジャンヌ「この姿になったら、またいっぱいえっちしようね」


男「愛し合うと言ってくれ」


ジャンヌ「ふふふ。」


ジャンヌ「じゃあ私は馬小屋に戻る。じゃあね、また」


男「ああ、待ってるよ」


男「………………(あぁ……)」


男「……(シトリー……)」









ヴェロニカ「男様」


男「…………ん、なんだ……」


ヴェロニカ「おはようございます」


男「……おぉ、おはよう…………。……どうした、朝早いな」


ヴェロニカ「……ルナ王女よりこちらの書状を頂いて参りました」


男「……これは?」


ヴェロニカ「直接お話をしたい。と……。こちらを門番へ渡せば城の中へ入れるように話を付けておくとルナ王女が仰っていましたが……どうされますか」


男「ま、行くだけ行ってみるかな。お前はどうする?」


ヴェロニカ「お供します。…………と、シトリーが見えませんが……」


男「あー……アイツは、契約期限切れとかなんとかで1度魔界に戻った、ソロモン王に許可を貰って出直すらしい」


ヴェロニカ「……なるほど、あの子も忙しい身なのですね。」


男「まあ、俺がいきなり召喚したからな。色々都合があるんだろ」


ヴェロニカ「……では、行きますか」


男「あぁ、行こうか。ジャンヌを連れて」




・・・・・・・・・・・・・・



「止まれ」


男「……これを」スッ


「…………書状……少しお待ちを」


「」ヒソヒソ


「」ヒソヒソ


「今案内人を呼んでくる、もう少々お待ちを」


男「ああ」


男「……大丈夫か、ヴェロニカ」


ヴェロニカ「……ええ、なぜジャンヌを連れてくるのかと思ったのですが……荷車の幌に助けられました、日光を浴びずに済みますね」


男「それもあって連れてきたんだ、あとは、ジャンヌの散歩だ」ナデ


「男様、ヴェロニカ様、お待たせ致しました」


男「……あぁ」


ヴェロニカ「アンリ。」


アンリ「ヴェロニカ様、昨夜ぶりでございます。」ペコリ


ヴェロニカ「ええ、そうね。」


アンリ「男様、この子は馬小屋にてお預かりさせていただきます」ナデナデ


男「ああ、よろしく頼む」


アンリ「メイド、この子を馬小屋に。……馬だからと雑に扱ってはなりませんよ」


メイド「かしこまりました」


男「…………ありがとうな」


アンリ「……いえ、私も、動物と意思疎通が出来ますので」


男「…………そうか」


アンリ「ヴェロニカ様、日傘をお持ち致しました。城内までの短い間ですがお入り下さいませ」


ヴェロニカ「ありがとうアンリ」



アンリ「では、姫様の元へ案内致します」







アンリ「姫様、アンリです。男様とヴェロニカ様をお連れ致しました」


「………………どうぞ」


男「…………(声に元気がないな)」


ヴェロニカ「(どうかなさったのでしょうか)」


アンリ「失礼致します」ガチャ、キィ


ルナ「……お初にお目にかかります男様。ドルナ王国の次期王女、ルナと申します」


男「ヴェロニカから話は聞いている。ヴェロニカの主の男だ」


ルナ「……よろしくお願いいたします。アンリ、お茶とお茶菓子を」


アンリ「畏まりました。ご用意致します」


ヴェロニカ「……ルナ王女様、気分が優れないようですが、如何なされましたか」


ルナ「…………つい先程、ダナル王国から、宣戦布告の文が届きました」


男「国王は何を」


ルナ「現在、我が国の貴族や諸侯、軍の指揮官等を集めて会議をしております」


ヴェロニカ「やはり、戦になりますか」


ルナ「……はい」


男「戦をするならヴェロニカを使うといい、こいつは強い」


ルナ「ありがとうございます」ペコリ


男「……だが、それなりの見返りがないと貸す気にはならない」


ヴェロニカ「男様、それはさすがに失礼かと」


男「ヴェロニカ、取引の場では自分の要求を相手より先に示す事が重要だ。俺は、見返りなしでは動くつもりは無いという要求をしているのだ、何も失礼ではない」


ルナ「……はい。こちらと致しましては幾つか御礼となりそうなものをご用意させていただきます。」


男「ほう?それは」


ルナ「国王や貴族と協議をした結果ですが。まずは報奨金、こちらを金貨1000枚、そして、国内への男様の御屋敷の建築、それと爵位の授与。以上となりますが他になにかご要望はありますでしょうか」


ヴェロニカ「屋敷というのはどの程度の規模の屋敷でしょうか」


ルナ「……お望みの大きさで造らせていただきます」


男「や、俺は金も屋敷も爵位も要らない」


ルナ「…………と、なると」


男「俺は富も地位も名声もいらん、代わりにお前が欲しい」


ルナ「私、でございますか」


男「ああ」


ルナ「それは、配偶者としてでしょうか?…………それとも、奴隷としてでしょうか」


男「側室だ」


ルナ「……ふふふ……ふふふふふふ。……そうですか、次期王女である私が、正妻でなく側室……」


ルナ「……となると、正室はヴェロニカ様でございますでしょうか?」


男「…………の、予定だ」


ヴェロニカ「…………………………///」


ルナ「ふふふ、英雄色を好むと言いますものね。…………分かりました、褒賞が私如きで宜しければこの身を捧げましょう」


ルナ「……ただ、貴族や国王がどういった意見をなさるかは分かりませんが…………私は構いませんとだけ」


男「じゃあ契約成立だ。俺はヴェロニカと共に戦に立つ、生きて帰って来たらお前を側室として迎える」


ルナ「承知致しました。」


コンコン


「アンリでございます、お茶のご用意が出来ましたのでお持ち致しました」


ルナ「ありがとうアンリ、入りなさい」


アンリ「失礼致します」キイ


アンリ「オズカシ産の紅茶でございます」コトッ


ヴェロニカ「……ありがとう。……いい香りね」


ルナ「オズカシの紅茶は香りが強くエグ味が少なく飲みやすいのです」


アンリ「お茶菓子にはエクレールとミルフーユをご用意致しました。」


男「ありがとう」


アンリ「…………では、時間の許す限りご歓談下さいませ」ペコリ、スタスタ


男「…………彼女は人見知り?」


ルナ「……ええ、あまり他人と話す事を得意としていないのです」


男「の、割にはヴェロニカとは結構話しているように思うが」


ヴェロニカ「それは、昨夜、お茶の席を共にしたからではないでしょうか?」


男「なるほどな」


ルナ「……しかし、あの子は、男様には少し心を開いているように思いますが」


男「…………そうか……(重度の人見知りだったとしたら向こうから話しかけて来たりはしないか)」


コンコン


ルナ「……あら?誰かしら、あまり近づかないように言ってあるのですが……」


「ルナ、ルナよ、私だ」


ルナ「……お父様、お入り下さいませ」


国王「うむ、失礼する」


ルナ「お父様、こちらが男様とヴェロニカ様です」


国王「おお、おふた方が……!男様と言いましたか、我が娘がヴェロニカ様に命をお救い頂いたそうで、おふた方には感謝してもしきれませぬ」ペコリ


男「俺に頭を下げる必要は無い、下げるとすればヴェロニカ相手に頭を下げるのが相応しいだろう」


「おい貴様!国王様に向かって失礼だぞ!」チャキ


男「…………やるか?買うぞその喧嘩」チャキッ


国王「よせ!!良いのだ!!!男様、我が兵が失礼を致しました、お許しくださいませ」


男「俺は別に気にしない。無礼なのは承知だしな」


国王「……ありがとうございます。」


「…………っ……」


男「で?話があって来たんだろう?」


国王「そうです、男様にお話があってこちらへ参りました。ルナ、少し席を外してくれぬかね?」


ルナ「はい、畏まりました。」


男「俺に話か、ヴェロニカはどうする?」


国王「ヴェロニカ様は大丈夫でございます、男様への、見返りについてのお話のために参りました」


男「見返りか、その話は姫様から聞いたな」


国王「なんと……ではお話が早い、手を貸してはいただけないでしょうか」


男「さっき姫様に言ったが、俺は富や地位、名声なんて物に興味はないんだ」


国王「……な、ならば何を……こちらも無報奨と言う訳には行きません!」


男「あんたの娘が、欲しいんだ」


国王「ルナを……でございますか」


男「ああ」


国王「……あの子は、まだ世間を知りませぬ、一端の女でもありません、まだまだ未熟な半人前の女です」


男「歳は?」


国王「……今年で18になります」


男「充分だ俺は構わない。姫様も私は大丈夫と言っていたぞ」


国王「……なんと!……既に、その話を?」


男「ああ、金もなんも要らないからお前が欲しいと言ったら、国王、あんたや貴族様方次第だそうだ。な、ヴェロニカ」


ヴェロニカ「左様にございます」


国王「そうか……。…………そうか……」


国王「……それは、男様の妻になるということでよろしいでしょうか」


男「妻……側室として、だな」


国王「…………。」


国王「………………。」


国王「………………。」


国王「…………分かりました、それでこの国がお救いいただけるのであれば、ルナも同意しているのであれば。是非ともよろしくお願い致します」ドゲザ


男「頭を上げなされ」


国王「……はっ……」


男「ひとつ聞くが、あなた達はなぜ、戦うんだ」


国王「……それは……国民の為でございます」


国王「戦に負けることにより我々はどうなっても構いませんが、国民が被害を被り、苦しい辛い思いをするのはゴメンなのです」


国王「それこそ、私は首を撥ねられ、ルナが性奴に堕とされようと、国民が無事なら構わないのですが、ダナルの奴らにいいように扱われるのはどうしても避けたいのでございます」


国王「それが…………理由です」


男「わかった。この剣をあなた達の為に抜く事を誓おう」


男「構わないな、ヴェロニカ」


ヴェロニカ「はい。やりましょう」


国王「ありがとう………………ございます」


男「すぐに仕掛けるぞ、攻撃は今夜だ」


男「一晩でケリをつける」


ヴェロニカ「幸いにもーーーーーーーーー。」


男「………………。」


男「そういえば国王、貴方様、お名前はなんと言う、俺は知っての通り男だ」


国王「あ、あぁ、自己紹介が遅れましたな、私はテインといいます。テイン、とお呼びくださいませ」


男「そうか、テイン国王、よろしくお願いします。」スッ


テイン「………………こちらこそ、よろしくお願いします。男様」ギュッ




・・・・・・・・・・・・・・



ルナ「お話は終わりましたか、お父様」


テイン「ああ、ルナ。…………悪いな、大変な思いをさせてしまって」


ルナ「良いのです、私のこの身ひとつでお父様の首や国民の命がお救いいただけるのであれば、安いものです」


テイン「人身売買のような事をさせてしまって……申し訳ない……本当に……申し訳ない……!!」


ルナ「お父様…………良いのですよ、離れ離れになるわけではありません。それに私が男様の側室になるということは、私が本妻でないにしろ、男様は次期国王ということになります」


テイン「それは……男様次第ではあるが……そうだな……」


ルナ「権力や財力に塗れ、私欲に溺れた貴族のボンボンと結婚するよりは、男様のような自分を貫き通し強く持っている男性の方が、国王としても相応しいでしょうし、私もそちらの方が好みですので」


テイン「お前が良いのなら、それで良いのだ」


ルナ「……お父様、お願いがあるのですが……」


テイン「ん?どうした?」


ルナ「男様は、お金も屋敷も要らないと仰りましたが…………、男様は旅をしている身、旅に必要な資金と、男様の帰る家を、欲しいのですが……」


テイン「金はもう用意してある。屋敷も、城からは少し離れてしまうが広い敷地にもう建築を始めさせている。……押し付ける様なことになってしまってでもスジは通したいからな」


ルナ「…………考える事は同じなのですね」


テイン「男様がこの国を救ってくれると信じて、貴族の方々が出資してくれた。お礼をせんとな」


ルナ「そうですね、皆、男様に期待しているのですね」


テイン「……ああ、そうだな……」

  





・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・



男「ヴェロニカ、敵の数は」


ヴェロニカ「およそ15万です」


男「おい、兵長、こちらの軍勢は」


兵長「は、はっ、こちらは出来る限り兵を集め、更に傭兵を雇ったのですが……5万と少し……といったところです……」


男「約3倍か。やれるか」


ヴェロニカ「15万の軍勢如き、束になって掛かってきても負けませんよ。」


ヴェロニカ「なんと言っても、私の血肉と化すのですから」ニヤ


兵長「っ……我々は、何をすればよろしいのでしょうか」


男「ヴェロニカと俺が先陣を切って突っ込む、取りこぼした兵を始末していって最終的に皆殺しにすればいい」


兵長「みなごろっ……!?そ、それはさすがにやり過ぎなのでは……」


男「1人でも多く生き残りが居れば報復が報復を産み永遠の戦争となるぞテルニヤがいい例だ、毎年ダナルと戦争をしているだろう」


兵長「………………はっ、畏まりました……」


ヴェロニカ「男様、時が来ました」


男「……そうか。よし、行くぞヴェロニカ、1人残らず食らってやれ」


ヴェロニカ「うふふふふふふふふ。……………………いただきます……」






「ふっ、向こうの軍勢はたかだか5万!こちらは15万!3人がかりで1人の計算だ!人1人殺るごとに銀貨1枚の褒賞らしいぞ!」


「じゃあ誰が1番殺れるか勝負しようぜ!1番殺ったやつは俺がイッパイの酒を奢ろう!」


「乗った!じゃあ俺は1番だったやつに子豚の丸焼きを奢ろう!」


「よし!んなら俺は国内1の泡姫を奢ろうとも!!」


「「「おぉー!!!!!」」」


「負ける気がしねぇー!!」


「俺が1番になってやる!」


「いいや!俺が1番だね!」


「「「アハハハハハハハッ!!!!!」」」


「…………随分と、楽しそうなご様子で」


「「「っ!!?!?」」」


ヴェロニカ「その賭け、私も混ぜていただけるでしょうか?」


「いっ、いつ来た女ァ!」


ヴェロニカ「いつ……?あなた達が賭けの話を始めた時から居ましたが???」


「なっ、んだと……?」


「なぜ侵入を許した!ひっ捕らえろ!!」


ヴェロニカ「…………では男様。……お先に失礼します」ジャッ!


「…………へ?」


「…………おっ、おいお前…………腕……」


「……え?……ぁ……う、うぅ……うわああああああああああっっっっっっ!!!!!!!!!」


「腕っ!!腕がァっっっ!!!!おれのうでがああああ!!!!!」


「こっころせ!こいつをこの女を殺せぇ!!!!」


「う、うわあああああ!!!!!」




・・・・・・・・・・・・・・



男「始まったか……」


男「俺らも行くぞジャンヌ」


男「敵が混乱しているうちにな」



・・・・・・・・・・・・・・



ヴェロニカ「うふふ」


ヴェロニカ「うふふふ」


ヴェロニカ「うふふふふふふ」


「うわあああああ!!!!」


「いてぇ!!いでぇよおおおおお!!!!!」


「誰か!!だれかあああ!!!」


「お、おれのうでを…………だれか…………」


「はっ、はらわたが……腸が見えてる……はははははははははははははははははははははは」


「生殺しだぁ!!!ころしてくれぇ!!!ころせええええええ!!!!!!!!!!」


ヴェロニカ「この悲鳴が……心地好い……」


ヴェロニカ「でも、男様が心配なので、そろそろ終わりにしますね?」


ヴェロニカ「ああ、なんと綺麗な満月なのでしょう……」


ヴェロニカ「…………全ての……全てのダナルの者を…………」


ヴェロニカ「…………………………"鮮血の嵐"」


ゴォッ







・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・



男「終わったぞ」


兵長「は、はっ?!もう終わったのですか!?」


男「ああ、これが敵の大将首だ」ドサッ


男「残りはヴェロニカが全てやってくれた」


兵長「……は…………はははっ……」




兵長「…………バケモノか……こいつら……!!!!」








ヴェロニカ「ただいま戻りました」


男「御苦労、ヴェロニカ」


ヴェロニカ「ありがとうございます」


男「どうだ?気分は」


ヴェロニカ「とても高揚しております、気分が高まりすぎて、下着を変えたい程に」


男「……それは後だ。……で、どうだ?」


ヴェロニカ「15万の血と魂を捕食して気が付いたことがあるのですが……」


ヴェロニカ「封印される前の私よりも現在の私の方が生命力が強い気がするのです」


男「つまり?」


ヴェロニカ「…………昔の私よりも今の私の方が強い、といえば分かりやすいかと」


男「実にわかりやすい説明をありがとう。」


男「血を喰らうという事は魔力も喰らうんだろ?」


ヴェロニカ「えぇ、大体の人間の魔素は血液に溶け込んでいますし、血液を喰らう事はイコールして魔力の補給にもなります」


男「年が経つにつれ魔法というのは進化していくからな、もしかしたら魔法が進化したその分強くなったのかもな」


ヴェロニカ「なるほど、それならば納得が行きます」


ヴェロニカ「しかし、たかだか15万どころの兵でここまで強くなれるとは思えません。私が昔吸収した魂の数は5000万を少し欠けるぐらいでしたので……」


男「それだけ質が上がっているか…………または5000万の魂に適うほどの実力者が居たか。だな」


ヴェロニカ「……いくら考えても答えは出なさそうです、ルナ王女様と国王様の元へ行きましょうか」


男「だな。行くぞジャンヌ。」






男「戻ったぞ」


テイン「おお!お帰りなさいませ男様!……如何でしたか?」


男「無傷な兵と俺らを見て、どう思うんだ?」


テイン「……男様ならやってくれると信じておりました。明日、祝勝会を開きます。是非ご参加くださいませ」


男「…………検討しておくよ、ルナ王女は何処に?」


テイン「あぁ、ルナでしたら……自分の部屋に」


男「わかった」


ヴェロニカ「では男様、私はジャンヌと共に待機しております。行ってらっしゃいませ」


男「ヴェロニカも来ないのか?」


ヴェロニカ「……おふたりで、ごゆっくりと」


男「…………………………。」


男「……わかった、行ってくる」


ヴェロニカ「……行ってらっしゃいませ」




男「……ルナ王女」コンコン


「…………男様……でございましょうか?」


男「ああ、そうだ」


ガチャ


ルナ「……お入りくださいませ」


男「失礼する」


ルナ「…………戦は、どうでございましたか」


男「我々の圧勝だ。こちらの兵士は傷一つ無い」


ルナ「……左様でございますか」


男「どうした、元気がないな」


ルナ「…………いえ、ダナルの兵達にも家庭があることを思うと、心が苦しくなってしまって」


男「戦なんてそんなものだろう。……旅をする中で、魔物が襲ってきたりなんてしょっちゅうだ。だがその魔物にも仲間や家族がいる、自分や、自分の妻、子の為に戦うヤツらが殆どだ。お互い命懸け。負けた者は死に勝ったものは生きる」


男「それが戦いだよ」


ルナ「それは重々承知しております。」


男「…………それなのに戦か」


ルナ「自分の国の国民の方が、大切ですので」


男「私利私欲の為に戦を仕掛けないところが流石だな。どうだ、俺の側室にならないか」


ルナ「……そういう、約束ではありませんか」


男「お前はそれでいいのか?俺の側室となるんだぞ?」


ルナ「私が男様の側室入りをなさる。それが約束でお力を貸していただいたはずです」


男「約束云々無しにして、本当にいいのかどうか。それを聞いてるんだ」


ルナ「…………良いわけ、ないじゃないですか……。」


ルナ「私だって、ちゃんと恋愛をしてお付き合いをして、結婚したいのです。ですがこの身分ゆえ普通のおなごのような恋愛は出来ないのです」


ルナ「大体が、有力貴族や富豪の方々とのお見合いですし。そのうち嫌でも婚約を結ばれるでしょう」


ルナ「男様は、その、貴族や富豪とは違い金にものを言わせるようなボンボンではないので、側室入りを良しとした訳です。」


ルナ「私個人といたしましては、普通の恋愛をしたいので、お断りしたい所でございますが。この身分ゆえ仕方が無いのでございます……」


男「なるほどね。」


ルナ「……………………。」


男「んじゃ、これからよろしくな、王女様」


ルナ「…………はい。」


男「…………嫌なら嫌でいいんだぞ」


ルナ「……構いません。もし本当に嫌なのであれば、初めからお断りしていました」


ルナ「…………不束者ですが、どうぞよろしくお願いします」


男「……おう」





ヴェロニカ「……男様、いかがでしたか?」


男「……んー、なんか……あいつも大変なんだな」


ヴェロニカ「…………男様」


男「…………あぁ、頼む。俺は荷台で休んでるよ」





ヴェロニカ「……ルナ王女様、ヴェロニカでございます」コンコン


「はい、お入りください」


ヴェロニカ「失礼致します」


ルナ「ヴェロニカ様、此度はお力添え、ありがとうございました。」


ヴェロニカ「いいえ、こちらこそ満足のいく食事が出来ましたので感謝致します」


ルナ「……あの晩、ヴェロニカ様がいらっしゃらなければこのような事は……」


ヴェロニカ「たまたまですよ。所でルナ王女様、男様の側室になるとの事ですが」


ルナ「……っ。…………はい、ヴェロニカ様という本妻がいるにも関わらず私のような不束な女が側室になるだなどと、誠に申し訳ございません……」


ヴェロニカ「……あ、い、いえ、そういうお話ではないのです」


ルナ「…………では、どういった……」


ヴェロニカ「……男様は現在、勇者を超えるオトコになるという目的で旅をしているのです。」


ルナ「……はい」


ヴェロニカ「勇者は、富も地位も名声もありますが、男様にそれはございません。」


ヴェロニカ「私を本妻として迎え、ルナ王女様を側室へ迎えるといった行為は勇者へ対抗意識を持ってのことだと思われます」


ルナ「それはどういった……」


ヴェロニカ「勇者は、大国オズカシより国王に任命され成り上がった者です。国王直々に勇者という役職に任命された事や、整った顔立ち、国王からの金銭的な支援を受けている事。これらが合わさって女性からの人気はとても厚いものです」


ヴェロニカ「そんな成り上がった奴に負けていられるか。と男様が勇者を超えるオトコになると旅に出たわけでございます」


ヴェロニカ「ルナ王女様を側室として迎えるのはその勇者への対抗意識でしょうね。まあ、男様が満足してしまえばそれで終わりなので、お断りしても良かったのですよ」


ルナ「……初めてでした」


ヴェロニカ「……何がでしょうか」


ルナ「私の瞳を見つめて、私自身を見て。私が欲しいと、真剣な眼差しで言われたのは」


ヴェロニカ「…………。」


ルナ「私は、沢山の殿方に求婚をされます。しかし、国王の娘、次期王女というだけあって、財産や身分目的で近付く殿方が多いのです」


ルナ「ですがあの人は、男様は違いました。……私を、ありのままの私を、欲しいと言ってくださったのです」


ルナ「…………ですので、私は男様についていこうと思いました。」


ヴェロニカ「であらば、なぜああも落ち込んでいたのですか?」


ルナ「そ、それは……。……ヴェロニカ様がいらっしゃるのに、と、申し訳ない気持ちでいっぱいで……」


ヴェロニカ「……なるほど。でもそう気に病むこともしなくて良いのですよ。」


ヴェロニカ「……実は私、男様の真剣な眼差しに惚れたのです。」


ルナ「…………そうなのですか?」


ヴェロニカ「はい、それに命を助けていただいた御恩もあり、あの人について行こうと誓ったのでございます」


ルナ「…………じゃあ、お仲間……ですね」


ヴェロニカ「はい、同じ惚れたもの同士、仲良くやりましょう。気に病むことは無いですよ」


ルナ「……ルナと」


ヴェロニカ「…………?」


ルナ「ルナと、お呼びください。王女様などと敬称を付けずに、気軽にお呼びください」


ヴェロニカ「王女様…………。…………ええ、ルナ。よろしくお願いしますね」


ルナ「敬語でなくともいいのですよ」


ヴェロニカ「…………仮にも王女様です。それは流石に」


ルナ「私からすればヴェロニカ様は男様の本妻、私はあくまでも側室で、ヴェロニカ様の方が立場が上ですので」


ヴェロニカ「う……ん…………じゃあ……お互い様と言うことに、しましょうか……」


ルナ「……そう、ですね」


ヴェロニカ「……これから、よろしくね、ルナ」


ルナ「……ぅ……うん……!」



・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・



ヴェロニカ「男様」


男「ん?どうした」


ヴェロニカ「男様は、今夜の祝勝会にご参加はされますでしょうか?」


男「いや、行く気は無い」


ヴェロニカ「……ルナが、男様がいらっしゃるのをお待ちしております」


男「でもなぁ、俺はああいう宴会だとか、大人数が集まるところは好きじゃないんだよ……」


ヴェロニカ「ですが、王女を側室として娶る以上、貴族の集まりや国の会議、裁判と言ったものには参加せざるを得なくなります。」


男「………………はぁぁぁ……」


男「わかったよ、行くよ」


ヴェロニカ「……ありがとうございます」


男「もちろん、お前も来るんだろう?」


ヴェロニカ「私は……男様が来いと言うのであれば」


男「来い。お前は俺の女なんだから」


ヴェロニカ「……はい」ニコ


男「それに、お前が行けばアイツも喜ぶだろう」


ヴェロニカ「……もしかすれば、2人きりの方が良かったと、妬まれるかもしれませんよ?」


男「それは無いだろう」


ヴェロニカ「いえ、少なくともあの子は、ルナは、男様に惚れています」


男「なんかの間違いだ」


ヴェロニカ「いえ、私に申し訳ないと直接謝罪に来たのでそれはないかと」


男「……ふぅ、まあいい、とりあえずお前もこい」


男「俺は行くだけは行く。顔を出すだけだがな」


ヴェロニカ「かしこまりました」


男「それとー、1つ提案があるんだが」


ヴェロニカ「……?如何なされましたか」


男「オーテム法国に行こうと思う」


ヴェロニカ「……左様でございますか」


男「ヴェロニカ、お前にはここで待機していてもらいたい」


ヴェロニカ「……何故でしょうか、私は貴方の従者!主人の元より離れるなどと……!」


男「お前、ヴァンパイアだろう」


ヴェロニカ「……はい。」


男「オーテム法国は水の神、金の神、地の神、火の神、木の神の五大神を信仰する宗教国家だ、もちろん聖職者もいる」


男「そんな所にアンデッド族のお前が行ってみろ……浄化されるぞ」


ヴェロニカ「う……そ、それは……」


男「俺も、少しでもお前と一緒に居たい、でもお前が居なくなっちゃ元も子もないんだよ……」


ヴェロニカ「…………承知致しました……」


ヴェロニカ「……行く前に、ひとつ、お願いがあります」


男「……どうした?」


ヴェロニカ「男様の精を……私にお注ぎくださいませ」ギュウッ


男「っ……誘ってるのか?」


ヴェロニカ「でも無ければ、こんなこと言いませんよ……」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



ヴェロニカ「……相変わらず男様は私を熱く求めてくださいますね」


男「お前が愛らしいのが悪い」


ヴェロニカ「……ふふ、吸血鬼の私が首筋に噛みつかれるなど、どちらが吸血鬼か分かりませんね」クスクス


男「性交の際に首筋に噛み付くのは吸血鬼の中では愛しているという意味があると聞いたんだが、違ったか……?」


ヴェロニカ「………………いえ、違いませんよ……(本当の意味は、他の誰にも渡したくないほどに深く愛しているという意味なのですが…………。……まあ、言わないでおこうかな)」ニコニコ


男「……どうした?」


ヴェロニカ「いえ、男様は可愛いなあと思いまして」


男「……せめてカッコイイと言ってくれ」


ヴェロニカ「いえ、可愛らしいです」


男「……っ……」


ヴェロニカ「……また、したくなってきちゃいました」


男「ほんっっと、そこいらのサキュバスより性欲強いな」


ヴェロニカ「愛情が深いと言ってくださいませ」


男「まあいいや、しばしの別れだ。わがままに付き合うとするよ」


ヴェロニカ「……やった」









・・・・・・・・・・・・・・


テイン「本日は忙しい中お集まりいただき感謝する」


テイン「皆も知っての通り、我が国は戦争に勝った。しかもあの強国と言われているダナル王国にだ!」


テイン「それも、かのヴァンパイアクイーンと呼ばれたヴェロニカ様と、それを仕える男様のおかげである!」


テイン「このおふた方のおかげで我々は戦に勝利したのだ!諸君、この勝利の喜びを肴にこの宴を楽しんでいただきたい。」


テイン「ここで、御活躍いただいたヴェロニカ様と男様よりお話をいただきたいと思う。男様、いかがですかな」


男「…………いや、まあ。元々旅をするにあたって食料や物資の補給で寄っただけだが、俺の力を貸しただけでここに立ち、貴族の諸兄らや国王、次期王女様に感謝される事となった。この戦の勝利は歴史に名を残すことになるであろう。これからの諸君らの健闘を祈る」


テイン「男様、お言葉をありがとうございます。ではヴェロニカ様」


ヴェロニカ「……私からは得意これといって、ですが、この国に来て、人間の温かみというものを知りました。前は人間なんて言うものは下等な生物としか思っていませんでしたが、今では私の中では大きなものになっています。それもこの国の人々のおかげです、ありがとうございました」


テイン「……では諸君、手元のグラスを手に取って頂きたい」


テイン「この国の勝利と、更なる発展を祈り、乾杯!」


「「「「乾杯!!!」」」」



テイン「男様、ヴェロニカ様、ありがとうございました」


男「いや、別にいい」


ヴェロニカ「お手本のようなスピーチでしたね」


男「お前もな」


ルナ「男様っ」


テイン「おお!ルナ!」


男「……おう」


ヴェロニカ「あら……ルナ、とても似合っているわね、素敵なドレスだわ」


テイン「美しい、我が娘ながらとても綺麗だ」


男「…………」


ルナ「ありがとうございます、お父様、ヴェロニカさん」


ヴェロニカ「…………男様!」ドンッ


男「った!!……なんだよ……」


ヴェロニカ「何か無いんですか……感想とか……」


男「……ぃや…………まあ……綺麗だと、思うよ。素直に……」


ルナ「…………あ……ありがとう、ございます……///」


ヴェロニカ「……(あらあら……)」


男「にしてもヴェロニカ、お前も綺麗だな」


ヴェロニカ「……はぁ……」


男「なんだよそのため息」


ヴェロニカ「ルナにもこれぐらい素直に言えればいいのに……」


男「だって、仮にも相手は次期王女だぞ。まあ確かに綺麗だし、美しいとは思う」


ルナ「……っ///」


男「でも、そう簡単に綺麗だなどと声を掛けてしまえば世辞っぽくなるし安っぽくもなるだろう」


ヴェロニカ「私には言えるのに……」


男「それはお前だからだ」


テイン「……男様」


男「……ん?」


テイン「貴方になら、娘を任してもいいと確信致しました」


男「何を持ってそう確信したんだよ」


テイン「軽々しく女性を褒めない所でございます」


男「……それは判断の基準にならないとは思うけど」


テイン「私はこれでも、人を見る目はあると自負しているのですよ」


男「ま、アンタがそういうならそういう事にしておくよ」


男「王国、アンタはこれから貴族の方々らに挨拶回りに行くんだろう?気張りすぎんなよ」


テイン「ご忠告を感謝します、男様も、色々な方々に声をかけられると思いますが、どうかお気を付けて」


男「お互いにな」


テイン「ええ」



「おお、これは男殿」


男「おお、兵長。先の戦では世話になった」


兵長「いえいえ、世話になったのはこちらの方で……」


男「私一人ではあそこまで出来ませんでしたよ、せいぜい首を取られて負け戦になる所でした」


兵長「そんなことは……!」


男「ない、とでも言いたいんだろ?実際、敵より数が少ないとはいえ、兵が動かなければ先に攻められて終わりだからな」


兵長「……ですが、男様とヴェロニカ様の御活躍はとても大きなもので」


男「分かってる。でも、俺たち二人じゃあそこまで出来なかったって話だよ。真に感謝すべきはアンタら兵士だ」


兵長「……男様……」


男「一悶着あったとはいえ、この国を守り命を掛けて戦う。俺らなんかよりあんたらが賞賛されるべきだろうよ」


ルナ「……男様」


男「ん?どうした」


兵長「!!!……ルナ王女様!」


ルナ「男様の事を紹介したいのです、是非壇上へ」


兵長「紹介……とは」


男「前もって話をしてあったんだ。力を貸すからお前の身体が欲しいと」


ルナ「はい、男様の力をお貸しいただく代わりに私の身体を差し出す、そういう契約でお力をお貸しいただいたのです」


男「その話を改めて、俺が次の国王になると」


ルナ「その紹介でございます」


兵長「……なんと……」


兵長「…………ふふ、男様程の御方であらば、ルナ王女の旦那にふさわしい」


男「そんなこと言っていいのか?俺が国王となった暁にはお前は俺に仕えなきゃならんのだぞ」


兵長「男様に仕えるのであらば、喜んでお受け致しましょう」


男「……この国には変わったやつしかいないな」


男「……ルナ、ヴェロニカは?」


ルナ「……ヴェロニカさんなら、ジャンヌ……?のところに行くとかで、会場を出ていかれましたが……」


男「……そうか、分かった」


ルナ「では男様、こちらへ」


男「あぁ」







男「っ……はぁーっ!やっぱり硬っ苦しいのはダメだな」


ルナ「お疲れ様でございます、お水を」


男「……ありがと」


ルナ「……隣、よろしいですか?」


男「……ぁあ、いいよ」


ルナ「…………男様」


男「ん?どした」


ルナ「……私は、男様の妻になれるでしょうか」


男「……なれるかどうかじゃない。なるんだよ」


ルナ「ですが、私は……。まだ人生経験も浅く、男性経験も男様が初めてで、こんな不束なっ」


男「誰だって、最初は初めてだろう」


ルナ「そう…………ですけれど……」


男「俺だって、お前みたいな次期王女とか言われてる女を娶るのは初めてだし、爵位を与えられるのも初めてだ。誰も彼も最初から完璧なんてことは無いんだよ」


男「ちょっとずつ覚えて行けばいい」


ルナ「……男様の好きな食べ物を、教えてください」


男「なんでも好きだよ」


ルナ「…………男様の、好きな場所を教えてください」


男「静かなところなら、どこでも好きだよ」


ルナ「それじゃあ、抽象的すぎて分かりません……」


男「ちょっとずつ、一緒の時間を増やして、知っていけばいいじゃん」


ルナ「……っ」


男「俺は勇者を超えるハーレムを作るのが夢なんだ」


ルナ「……ヴェロニカさんから聞きました」


男「……そっか」


ルナ「そのために旅に出たことも。ヴェロニカさんを口説き落としたことも」


男「口説き落としたって人聞き悪いな……」


ルナ「魔王討伐には、行かれるのですか」


男「……もちろん」


ルナ「…………ならば私は、魔王を討伐した元冒険者で、ドルナの、次期国王の妻となるのですね?」


男「……気が早いぞ」


ルナ「ふふ、とても楽しみです」


男「気が早いって」


ルナ「男様」


男「ん?」


ルナ「……お慕いしております」


男「……どうした急に」


ルナ「初めは、なぜ男様にこの身を捧げねば、と思いました。」


ルナ「貴方様とお話をして。……私の身体や、権力、地位などといったものに興味を示さず。純粋に私自身を欲しいと言ってくださったのは、男様が初めてでございました」


ルナ「……身体目当てや権力目当てで近付く男性が多い中、次期王女としての私ではなく、一人の女性としての私を欲しいと言ってくださったのは男様が初めてで、その真剣な瞳に、私は今まで感じたことの無いものを感じました」


ルナ「そして、男様にはヴェロニカさんという美しく素晴らしい女性が妻としてそばに居ること。それを知った私の胸の中は、とてももやもやしたのです」


男「……嫉妬か」


ルナ「……はい、それが嫉妬だと気がついた頃には、私の男様に抱く感情が恋だと気が付いたのです」


ルナ「出会ってからの時間は短くはありますが、貴方という存在は私にとってはとても魅力的で、今までにないとても新鮮なものでした。貴方の事を考える事に、近くに居たい、貴方の事をもっと知りたいと思うようになりました」


ルナ「…………男様」


男「……ん」


ルナ「……私を……どうか、不束者ですが、よろしくお願いします」


男「……ああ。でも、俺にはヴェロニカがいるし、ヴェロニカが正妻なのは、譲るつもりは無い。それでもいいのか?」


ルナ「私は、男様の側室で構いません、貴方のそばに居ることが出来て、愛し、愛していただけるのであれば、何も文句はございません」


ルナ「あ、ただ。男様が国王になる以上、形だけでも私が正妻という事にしてくださいね?でないと暴動が起きかねませんから」


男「……ふっ、ははははっ。分かったよ。ま、ヴェロニカ次第だけどな」


ルナ「ヴェロニカさんにはもうその話はしてありますし許可もいただいてあります」


男「……手が早いな」


ルナ「愛ゆえに。ですよ」


男「……ルナ」


ルナ「……はい、どうされました?」


男「俺、明日の昼頃にはここを出ようと思うんだ」


ルナ「…………急ですね」


男「ああ、でも数週間ほどで戻ってくる予定だが」


ルナ「どこに行かれるんですか?」


男「オーテム法国だ」


ルナ「……オーテム……魔法国家ですね」


男「ああ、これから魔王討伐をする上で魔法は必要不可欠。俺は魔力はあっても魔法は全く使えないから、それの習得でね」


ルナ「男様であれば、習得できるとおもいます!」


男「……血反吐吐いてでも覚えなきゃ」


ルナ「……でも、しばらくの間お別れなんですね」


男「一生の別れって訳じゃ無いんだからそんな落ち込むなよ」


ルナ「で、でもっ……。……会えないのは寂しいと言いますか……」


ルナ「せめて、寂しいと思わせないような、あなたのモノである証拠を、何か一つ、くださいませんか」


男「…………このナイフとか」


ルナ「そっ、そ、そういうものではなくてですね!///」


男「…………」


ルナ「……せ…………とか」ゴニョゴニョ


男「……ん?なに?」


ルナ「で、ですから!その……せっ…………す……ぅうぅぅ……///」カァァ


男「ふふふ、可愛いな」ギュ


ルナ「もうっ……。……だめ……ですか」


男「いいよ、しようか」


ルナ「もう、この身は清めてあるから……」


男「元からするつもりだった?」


ルナ「………………何もいわないからっ」フイッ


男「……そっか」ギュウッ


ルナ「んっ…………男……」





・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・


チュン、チュン


ルナ「……ん…………はっ」


ルナ「あれ、男は……」


ルナ「…………置き手紙……」


『親愛なるルナ王女様へ

 

 昨夜は明日の昼頃出る予定と言ったが

 朝、日が昇る頃に出る事にした

 ヴェロニカへは残る様に言ってあるのでよろしく頼む

              男』


ルナ「…………っ」


ルナ「……見送り、ぐらい……!!」ダッ







男「……行くか、ジャンヌ」


男「……ああ、いい朝だ」


「……!」


男「……ん?」


「…………こ!…………とこ!!」


男「………………。」


「……男!」ギュッ


男「……起きたんだ」


ルナ「……ぅん。……バカ!何も言わずに置き手紙だけ置いて行っちゃうだなんて!」


男「いや、後々別れが辛くなるだけだからさ」


ルナ「……これ、持って行って」


男「……通行手形?」


ルナ「本当なら、冒険者組合とか、商業組合とかの名前が入ってるんだけど、私の名前で作ったから、余計な入国審査とか、無いはずだから……」


男「……おう、ありがとう」


ルナ「あとこれ!」


男「……御守?」


ルナ「魔石で作ってある御守、効果も何も無いと思うけど、気休め程度に……」


男「……おう」


ルナ「あとこれも!!」


男「……地図か!」


ルナ「オーテム法国への道のりだけじゃなく、他に物資が補給出来そうな小さい町や村も載ってるから……もし良かったら使って」


男「おう」


ルナ「あとは……」


男「まだ何かあるのか?」


ルナ「男!!」


男「……ん」


ルナ「気を付けて」


男「……おう」


ルナ「……帰ってくるの、待ってる」


男「……おう」


ルナ「ちゃんと、帰ってきてね」


男「……おう」


ルナ「……気をつけて、行ってきてね」


男「……おう」


ルナ「……もし、帰ってくるの遅くなるようなら、手紙寄こしてね」


男「……おう」


ルナ「………………。」


男「…………。」


ルナ「……じゃあ、気を付けて行ってきてね!」


男「……おう。行ってくる」


ルナ「……ん」


男「……じゃあ」


タカッタッタカラッタカッタカラッ


ルナ「………………。」


ルナ「……………………はぁ……」


アンリ「……姫様、朝食の用意が出来ました」


ルナ「……アンリ」


アンリ「は、はい。どうされましたか」


ルナ「私に、料理を教えてちょうだい」


アンリ「……かしこまりました。では、男様が喜ぶ様なものを作れるように、頑張りましょう」


ルナ「……っ///!」


アンリ「花嫁修業、ですよね」ニコ


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