千反田える「折木さん。来週は何もないですよ折木さん」
える「悪しからずですよ折木さん」
奉太郎「そうだな」
える「私個人としての意思ではなく家のしきたりなのです」
える「わかってくださいますね?」
える「それはそれとして来月の準備はいかがですか折木さん」
奉太郎「もはや期待してないし何も用意してないぞ」
える「え?何も用意をして…いない…?なぜ…???」
える「贈り物にはお返しが!お返しが必要なんですよ折木さん!!用意は絶対にしなければなりません!!!」
える「基本は三倍返しですよ折木さん!」
奉太郎「そうだな。バレンタインにチョコをくれたらホワイトデーにお返しをしないといけないな」
える「ですから!私は!家の!しきたりなんです!!
奉太郎「しきたりじゃ仕方ないな」
える「…そういえばいつぞやのチョコレートボンボンはとても美味しかったです。また食べたいですね」
奉太郎「そうか。どこかで売ってるといいな」
える「わかりますね折木さん?3月までまだ時間はあります」
える「それに、昨今は殿方の方からチョコを送るという文化もあるそうですよ?」
える「察しのいい折木さんならもうお分かりですね?」
える「私、期待しています」
奉太郎「生憎とそんな文化は知らん。それに、何もないのなら俺からも何もないぞ」
える「ですから、何もないがあるんです」
奉太郎「いいか千反田。何もないのなら何もないんだ」
える「いいえあります。気持ちという、とても大切なものです」
奉太郎「じゃあこっちも気持ちだけ返せば良いよな?」
える「ダメです」
える「そのお気持ちをもとに贈り物をする。こんな簡単なことがどうして折木さんにはわからないんですか???」
奉太郎「親しい方への気持ちは十分にこっちも込めて返すからこれで一緒だな。気持ちを元に同等の気持ちを返すんだ」
える「それは屁理屈です。カタストロフです!」
える「折木さんはどうしてそんなに意固地なのでしょうか」
える「いいですか。私の家は特に親しい人には送れませんが折木さんの家にはそんなルールはありません」
奉太郎「いいか千反田。気持ちを物に変換するのは重さも基準も違うから難しいだろう」
奉太郎「でも気持ちを気持ちとして返せば同じ価値かそれ以上のものとして返すことができる。幸せなことじゃないか」
える「ちょっとよくわからないですね」
える「もっとシンプルですよ折木さん。贈り物にはお返しをする。これだけです」
える「それに私、もう折木さんに贈り物をしています」
奉太郎「いいか千反田」
奉太郎「バレンタインデー以外でチョコを貰ってもそれはバレンタインデーのチョコじゃないんだ」
奉太郎「それはもうただのチョコなんだ」
奉太郎「だから俺もホワイトデーのお返しでも何でもない、ただのお返しをするしかなくなってしまうんだ」
える「折木さん…。どうして分かっていただけないのですか…」
える「この際ですからただのお返しもいただきましたけど、バレンタインのお返しをいただきたいんです」
奉太郎「そうだな千反田。なぜ分かり合えないんだろうな」
える「それは折木さんが頑固者だからです」
える「私はこんなに分かりやすく何度も何度も説明しています」
える「折木さんもしかして怒ってます?」
奉太郎「困ったな。俺も何度も何度も分かりやすく説明してるはずなんだが」
える「いいえ折木さんはご自身がしたくないことを正当化するために屁理屈を言っているだけです」
える「それは他人には決して通用しないものですよ」
える「そういう子供じみたことはもうやめましょう折木さん」
奉太郎「そうだな。俺もそろそろ普通にバレンタインデーの贈り物としてのチョコを貰いたいよ」
える「ですから!私は千反田家のしきたりで!」
奉太郎「しきたりじゃ仕方ないな」
里志「…またやってるねホータロー。夫婦喧嘩は犬も喰わないよ」
摩耶花「…要するにアレ、凄く親しい枠入りしてるって事なんでしょ?」
える「今の聞きましたか折木さん?どうなんですか折木さん?」
奉太郎「…そうだな」
奉太郎「バレンタインデーにチョコを貰う事が出来ない程度の関係性だな」
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