魔法科高校の一般生徒1 入学編
司波達也にもう一人兄弟(オリ主)がいたらがいたら・・・という設定で物語を再構成します。
題名の通りオリ主の設定は一般生徒(建前)です。
どこか異常ながらも、一般生徒感をだすオリ主に「どこが一般生徒やねん」こつっこみをしながら読んでいただけると幸いです。
またパロネタがあったり、オリジナルキャラが他の作品のキャラに似ていたりします。
原作キャラの言動も原作から変わっていたりするのでご注意ください。
初投稿で至らないところも多々あると思いますがよろしくお願します。
「納得できません!」
「まだいっているのか・・・・?」
兄と姉の口論を、ベンチで携帯端末をいじりながら聞いていた。
「なぜお兄様が補欠なのですか!入試の成績はトップだったではありませんか!
本来であれば私ではなく、お兄様が生徒総代を務めるべきですのに!」
「お前がどこから入試の結果を入手したのかは横においておくとして・・・。
魔法科高校なんだからペーパーテストより魔法実技の方が優先されるのは当然じゃないか。」
司波家に合格通知が届いた時から何度も聞いた内容だ。
国立魔法大学付属第一高校。
今日から兄弟3人で入学する高校の名前だ。
この高校では成績によって一科生と二科生に分けられる。
二科生である達也の肩には第一高校のエンブレムがない。
姉である司波深雪にとって、兄である司波達也が二科生であることは相当に不満らしい。
「・・・・・・・・・はぁ。」
ため息をつきながら呆れて顔を横へむける。
見えた自分のブレザーの肩には、八枚の花弁をかたどった第一高校のエンブレムがあった。
*********
達也と自分は、深雪にあわせ2時間早く登校していた。
ベンチで時間をつぶし入学式まであと1時間となったとき、携帯端末内の漫画を読みほしてしまった。
そのため、時間まで一人校内の散策し、一人で会場に入った。
こういう時はできるだけ後ろに座りたかったのだが・・・
最後列に行き難いじゃないか!
前半分に一科生、後ろ半分に二科生ときれいに分かれて座っていた。
さすがに大衆に逆らってまで後ろを取る気にはなれず、一科生と二科生の境目あたりに座ることにした。
思っていた以上にこの高校の差別意識は強いらしい。
兄さんが窮屈しないといいけど。
・・・・・・・・姉さんが暴走しないといいなぁ。
入学式の間ずっとそのことを考えていた。
余談ではあるが姉さんはしっかりと生徒総代のあいさつで、二科生を差別するな的内容を織り交ぜた挨拶をしていた。
建前でうまく覆い隠していたため、姉の真意に気づいた者はいないだろうが実にきわどい内容だった。
・・・・・司波深雪は今日も平常運転だった。
*********
入学式が終わると、IDカードの交付がある。
そこで、自分のクラスも分かるようになっている。
B組か・・・。姉さんと違うクラスだといいな。
姉さんのことは好きだし尊敬もしている。
しかし、主に兄さんのことが火薬となり、いつ爆発するかわからない不発弾のような姉さんと一日過ごすのは苦労しそうだ。
是非ご免被りたい。
不自然に出来上がっていた人込みを避け、ホームルームに行くか帰るか検討していると、兄さんの後ろ姿を見つけた。
「やっほー。おつかれー。」
「ああ、お疲れ様。」
兄の傍らには二人の女子がいた。
なんだかんだで兄さんは女子と仲良くなる。
うらやましい。
「ん?誰?司波君の知り合いか何か?」
茶髪で気の強そうな女子が訪ねてくる。
「こいつは弟だ。」
「弟の司波亮です。よろしく。」
「どうも、私千葉エリカ。エリカでいいよ。今から君ら兄弟のことは下の名前で呼ぶから。こっちは柴田美月。」
「柴田美月です。よろしくお願いします。」
もう一人のメガネで黒髪のおとなしそうな女子が頭を下げた。
「いまから深雪と合流するつもりだがどうする?一緒に待っていくか?」
「いやいい。やっぱりホームルームにいってみようと思うから。」
ホームルームにでようとおもったのは、別に自分も異性の友達が欲しくなったとかそういう理由ではない。
断じてない。
「そうか、じゃあまたあとでな。」
「うん、またー。柴田さんとエリカさんもまたね。」
「バイバーイ。」
「さようなら。」
兄さん達と別れ1年B組の教室へ向かう。
ホームルームでは、各々で自己紹介が始まっていた。
少し出遅れたかもしれない。
どうやって会話に混ざろうかと思案していると、自分同様少し出遅れた生徒が入ってきた。
赤い髪げロングのややハーフっぽい女子と頭に茶髪のセミロングで大きなリボンが特徴的な女子の二人組だ。
「あれ~?紅葉、すっこし出遅れたっぽい。」
「エイミィが人込みを突っ切ろうとするからだよ!普通に周っていけばよかったのに!」
「だってそっちが早いかなーと思ったんだよ。それにほらここに一人行き遅れた残念な人がいるよ!」
残念な人いうな。
失礼な奴だ。
「行き遅れたもの同士仲良くしようよ。私アメリア=英美=明智=ゴールディ。エイミィって呼んでね。こっちはサクラ。」
「桜小路紅葉です。残念なもの同士よろしく。」
あっ、こっちは少し腹黒っぽい。
二人ともすごい笑顔である。
「し、司波亮です。よろしく。」
一応クラスに異性の友達ができた。よかった・・・・・・・・のか?
その後エイミィは出遅れた分を取り戻すがごとくいろんなグループに話しかけていった。
・・・・・自分と桜小路さんを巻き込んで。
その結果、十三束鋼君と仲良くなった。
**********
自分が帰宅してリビングのソファーで横になってゲームをしていると、兄さんと姉さんも帰ってきた。
2人が2階に上がる音がする。
着替えるのだろう。
先に降りてきたのは兄さんだった。
「ただいま、どうだった?」
「一応3人くらい仲いい人ができたよ。いつか機会があれば紹介する。」
「そうか。」
間もなく姉さんも降りてきた。
姉さんは家の中だと露出が増える。
本当にやめてほしい。
ので言ってみる。
「姉さんなぜ家の中で露出が増えるのか、大体想像はつくけどあまり効果はなさそうだからやめた方が・・・・・・なんでもありません!」
気温が5℃下がった。雰囲気もだけど、物理的にも。
姉さんのように魔法によって事象に干渉する力の強い人には、無意識で魔法がもれててしまうことがあるらしい。
余談ではあるがかつてこれについて姉さんに「おもらしみたいだね。」といったら、殴られた。
後にも先にも姉さんがこぶしを振り上げたのはその一回であった。
その時も今のように恐ろしい氷の微笑を浮かべていた。
「お兄様、何か飲み物をご用意しましょうか?」
ちなみにこれは、自分と兄さんに対する「詮索するな」という警告でもある。
「そうだね、コーヒーを頼む。」
「かしこまりました。」
姉さんはキッチンへと向かっていった。
「おい。」
「ごめん兄さん、反省してる。」
姉さんが豆を挽くガリガリという音が普段より1割増しで響いて聞こえた。
それでも姉さんの入れたコーヒーはうまかったらしい。
********
高校生活二日目の朝は、一味違っていた。
具体的には、おいて行かれていた。
兄さんと九重八雲先生のところに向かうのが日課であった。
先生は兄さんと自分の師匠である。
”自称”「忍び」である。
それが今日はどうやらそれに姉さんが同伴して、自分はおいて行かれたらしい。
枕元に姉さんからの
(後から一人でさみしく来なさい)
というメッセージが残されていた。
どうやら昨日のこと、よほど根に持っているらしい。
もしくはこれ幸いと兄さんと二人きりになりたかったのかもしれない。
まあいい早く準備をして先生のもとへ向かおう。
**********
九重先生の住まいはありていに言えば寺である。
実際には寺として機能していないのだが、その外見を見れば10人が10人寺だと答えるだろう。
今日はその敷地内に倒れ伏した先生の弟子たちがいた。
「どもっすー。はでにやられましたねー。」
「ああ、亮君おはよう。達也君と師範ならあっちだよ。そろそろ決着がつくころじゃないかな?」
弟子の1人橋田さんは大山さんを介抱しながら、奥を指さしながら教えてくれた。
橋田さんと大山さんは警備員の職に就いている。
テーマパークの警備員らしい。
詳しくは知らない。
「わかりました。ありがとうございます、行ってみます。」
兄さんと先生を見つけた時、ちょうど兄さんが倒れ伏したところだった。
自分はそんな先生の後姿に・・・・・・
ドロップキックを放った。
しかし、分かっていたかのように躱されてしまう。
「やあ、おはよう今日は遅かったねぇ。」
「ええ、誰かさんに目覚ましをを止められてまして!」
先生の対して攻撃を加えていく。
先生はそれを躱し、逸らし、反撃を加えてくる。
自分は、先生の反撃を躱しさらに攻撃を加える。
登校時間までに決着はつかなかった。
**********
この日は総称すると嫌な一日であった。
登校して鋼に話しかけられたのは、教室に入ってすぐだった。
サクラ、エイミィも会話に加わり、しばらくとりとめのない話をしているとオリエンテーションが始まった。
カウンセリングの紹介、施設・受講のガイダンス、受講手続きを消化した後、昼まで紅葉、エイミィ、鋼と四人で駄弁り、購買で買ったパンを屋上で食べる。
午後からは、専門課程の見学をした。
平凡な一日だった。
だからこそ・・・・・・
対立する一科生と二科生の図の中心に我が兄さんと姉さんがいるのを見た時、テンションが急降下していくのを感じた。
「あれ亮君の三つ子の兄弟たちだよね。助けに行かないの?」
サクラがにやにやしながら問いかけてくる。
面白がってんじゃねーよ。
正確には三つ子ではないが訂正する気も起きない。
「実際、仲裁がないと悪化しそうな雰囲気だよ?どうするの?」
鋼はまじめに尋ねてくる。
まじめに聞かれたからには、まじめに考えなくてはならない。
実にめんどくさい。
だが確かにこのまま放置しておくと、兄さんに対する一科生の印象は悪くなるだろう。
それはあまり好ましくない状況だ。
自分にとばっちりが来ることもあるだろうし、兄さんや姉さんの学校生活は窮屈なものになるだろう。
「もし行くなら僕も手伝うよ。」
何より、鋼は真剣にそう言ってくれている。
だからこそ、俺は・・・・・・
「帰ろう。」
ゲームの世界へ逃げ込みたくなった。
余談ではあるがこの対立は生徒会がおさめたらしい。
さすがです!
だがこの時治めに行かなかったことを思いっきり後悔するのだ。
**********
それは、一科生と二科生の対立から2日経った朝だった。
「おい!」
登校しいつもの四人で話していたとき、急にけんか腰で話しかけられた。
先頭にいるのはB組の十九本(とくもと)であった。
ちなみにほとんど話したことがない。
その後ろに2人男子がいた。
見覚えがない。
他のクラスの男子なのだろう。
「お前、司波達也の弟なんだってな?」
要件は一瞬で分かった。
昨日姉さんが嬉しそうに
「ねぇ亮!お兄様は風紀委員になられたのよ!さすがでしょう?」
と興奮気味にはなしていたからだ。
「は?達也?・・・・・・・・・誰?」
とりあえず白を切る。
「何言ってんの?亮君のお兄さんじゃん。」
エイミィがすべてを台無しにする。
ついつい睨んでしまった。
視線をずらすと、そこでは紅葉が笑いを必死に堪えている。
とりあえず、今度からエイミィの名を出すときは、枕詞に「アホの子」を付けるとしよう。
「何の用かな?」
視線を十九本に向ける。
「お前の兄は二科生のくせに調子に乗ってんじゃないのか?」
「分を弁えさせろよ!」
「二科生が風紀委員とかありえねぇだろ!」
十九本達は次々にまくしたてる。
なんだこいつらマジか!
暇すぎるだろ!
やることないなら家帰って、飯食って、歯磨いて、寝ろ!
どうしたもんか、と頭をひねっていると・・・・
「それはないんじゃないのか?」
鋼が少しドスをきかせた声で、助け舟を出してくれた。
場の空気が凍る。
十九本達もどうやら今の一言で少し萎縮したようだった。
しかし、童顔と相まって、少しアンバランスな印象を受けた。
「童顔だから凄んでも微妙だね。」
正直者な自分が憎い。
「空気読んでよ!!」
自分も凄まれた。
「大体亮君はいろいろいい加減すぎるよ!一昨日だって・・・・・・・・」
しまった!地雷を踏んだ!
これは長くなりそうだ。
十九本達はいつの間にかいなくなっていた。
後で聞いた話だが、アホの子のエイミィ曰く鋼はマーシャル・マジック・アーツを得意とし、ありていに言えば超強いらしい。
意外だとか、だから十九本達は怯んだのかとか、いろいろ頭に浮かんだ。
一番印象的だったのはそれを説明したときのエイミィの「知らなかったの?」と言わんばかりのドヤ顔がムカつくことだった。
くそぅ!アホの子のくせに!!
こうして次から、こういうやっかみが来たときは鋼を盾にすることと、エイミィを「アホの子」と呼称することを、静かに決意するのであった。
パーンパパパンパンパンパーン♪
勇者は 1926 逆恨みを手に入れた!
勇者は アホの子のエイミィ から 真・アホの子へとクラスチェンジした!
**********
鋼は盾として優秀すぎた。
あれからやっかみが一切なくなったのだ。
違う!盾にするために鋼と仲良くしてるんじゃない。
えっへっへ。正直になれよあいつの隣は都合がよかったんだろうが!
違う!違う違う!自分は・・・・自分はただ・・・・鋼と仲良くできればいいだけだったんだぁ!!
変なひとり芝居を心の中で繰り広げ、罪悪感をごまかす。
「ごめん。」
「は?何が?」
鋼が訝しげな眼で俺を見ている。
「春だからね。おかしくなってるんだよ。」
エイミィが呆れた様にいう。
「うるさいぞアホの子!」
「だっ!だれがアホの子よっ!」
しまった心の声と実際の声でエイミィの呼称が入れ替わってしまった!
修正。
「で?何の話?」
「話をそらすな!私はアホじゃない!」
「部活はどうするのかっていう話よ。」
サクラが答えてくれる。
そういえば今日から部活の勧誘期間であった。
鋼はすでにマーシャル・マジック・アーツ部と心に決めているらしい。
自分は・・・・・・・・・
「まだ決めてないなぁ・・・・」
「よかった!亮君まで決まってたら誰と周ろうかと思ってた!」
「あれ?エイミィは?」
「おーい聞いてる?私はアホの子じゃないよー。」
「それが、狩猟部に入る気満々らしいのよ。」
「じゃあ一緒に周ろうか。」
「よろしく、きちんとエスコートしてね。」
「了解!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・鋼くぅ~ん。」
自分とサクラが一緒に部活を周る約束をしている傍らで、エイミィは鋼に泣き付いていた。
**********
エイミィ、鋼と別れてから、サクラと二人でいろんな部を周る・・・・・
はずだった。
「・・・・・・・・・・・・・・。」
サクラは机に突っ伏して動かない。
2人でホームルームまで戻ってきていた。
理由は簡単だ。
先輩方の勧誘が激しすぎたからだ。
歩いていれば囲まれる。
逃げ出せば、全力で追ってくる。
中には攫われた新入生もいたようだ。
戦場のような勧誘から命からがら逃げだし、ホームルームへと戻ってきた。
「サクラさ~ん、大丈夫ですか~?」
返事がないまるで屍のようだ。
死体から~、死体なら~、死体とき~、死体でしょ~、いっしょに(はい!)
先輩方に襲われないようにいっそホームルームでくらそっかな!
「鋼やエイミィみたいに先に部を決めとべきやったね。」
後悔が口に出るが、後の祭りというやつである。
「・・・・・・・・・・・・・文化部から周ろうか。」
突っ伏したままサクラが提案してきた。
少し回復してきたようだ。
「そういやあったね」
そういってパンフレットの文化部の欄を見る。
==========
〈文化部〉
・古典部
・CAD部
・アニメ研究会(*)
*は愛好会です。
==========
3種類しかない。
いや、正確にはアニメ研究会は部ではないため、2種類ということになる。
愛好会には部費が出ない。
「アニメ研究会はなぁ。あたしアニメそんなに興味ないし・・・・・」
「まあ、自分は興味なくはないけど研究するほどじゃないかな。」
「じゃ、とりあえず古典部から行こうよ。その後CAD部で。」
********
頭上には「古典部」と書かれたプレートがある。
ドアには
==========
新入生歓迎
気軽に見学してください。
==========
と書かれた紙が貼られていた。
サクラと顔を合わせてからノックした。
「はいどうぞ。空いてる。」
返事は男性の声だった。
心なしかやる気のなさそうな声だ。
「「失礼します。」」
2人で中に入ると、いたのは男子生徒が一人と女子生徒が一人だけであった。
「何か用か?」
男子生徒は少し不機嫌そうに尋ねてきた。
女子生徒は何やら驚いたような表情をした。
運動部とはえらい違いだ。
「部活の見学に来たんですが・・・・・。」
そう告げると、男子生徒は明らかに狼狽した。
「お、おぉ!そうか悪い。来ると思ってなかったから驚いちまった。えーと、どうしよう。こんなときどうすんだ?風祭?」
女生徒は風祭というらしい。
「とりあえず活動内容の説明とかすればいいんじゃないですかねぇ?先輩。」
風祭先輩の驚きは一過性のものだったらしく今は落ち着いて話している。
男子生徒も少し落ち着いてきたようだ。
「そうだな・・・・・・。この部は・・・・・・・過去のことを調べ上げて分析して悦に入る、そんな部だ。」
この人は勧誘する気がないのだろうか?
「先輩活動内容に間違いはありませんけどぉ、もうチョイ言い方ってあるじゃないですかぁ?」
「じゃあお前が紹介しろよ。」
「そうですねぇ。部費で買ったお菓子やコーヒーに舌鼓を打ちつつ、たまに思い出したように過去の文献とかを調べる、そんな部ですね♪」
大差ない気がする。
しかしどうやらサクラは気に入ったらしい。
「亮君!なんか楽そう!」
とのことらしい。
じゃあ帰宅部がいいんじゃね?
その後もなんやかんやあって、なあなあで古典部に入ることになった。
いや、CAD部は?
**********
「正式に入部ということで、もう一度きちんと説明していくね。
私は2年C組の風祭瑞希、こっちは3年H組の大山一先輩です。
さて、部の活動についてだけど・・・先輩と私は放課後、大抵ここでのんびりしています。
活動は基本自由参加、ということで♪
後、お菓子はその棚にあります。
コーヒーメーカーはここ。
好きに使っちゃって♪」
肝心の古典部としての活動が語られないのはどうなのだろう?
しかし、完全にサクラ共々のんびりモードになってしまった。
ちゃうねん!部の勧誘から逃げた時の疲労のせいやねん!
「とりあえず部活の勧誘期間の間は、落ち着くまでのんびりしていけばいいんじゃないかなぁ?」
風祭先輩からありがたい言葉を頂いたので是非、是非! そうしよう。
こうして落ち着けると、外の喧騒がまた違って聞こえる。
ふははははー!人がゴミのようだ!
外の景色を見ていると、女子と手と手を取り合って逃避行する兄の姿が見えた。
あれは確か千葉エリカといっただろうか?
うらやm・・・・けしからん!
後で姉さんに報告だな!
**********
「お帰り、兄さん。」
「ああ、ただいま。」
ソファーに寝転がってゲームをしていると、兄が着替え終えて降りてきた。
「今日は活躍だったみたいだね。」
これは、兄が風紀委員として、不適切な魔法使用をした数人を取り締まったことに対する言葉だ。
おててつないでたことではない。
「うらやましいなら変わるが?」
「冗談じゃないよ。」
千葉さんのことなら喜んで変わるけど。
兄と他愛もない話をしていると、姉さんが降りてきた。
「もう、亮?はしたないからソファに横になるのはやめなさいと言っているでしょう?
そんな体勢でゲームをすると目を悪くしますよ?」
姉さんのお決まりの小言だ。
「へぇーい。」
「お兄様、何かお飲み物をご用意いたしましょうか?」
「ああ、コーヒーを頼む。」
「かしこまりました、少々お待ちください。」
姉さんはキッチンへ引っ込んでいった。
間もなくガリガリという豆を挽く位置が聞こえてくる。
「どうでもいいけどさ、こっちに被害が来ないようにして欲しい件。」
「お前なら何があっても大抵は平気だろう?」
「対処できる出来ないの前にしたくないんだよ?常考。」
「能ある鷹は爪を隠す・・・・・か?」
「今日のお前が言うなスレはここですか?」
「・・・・・どうしたんだ?そのしゃべり方?」
兄さんはめいっぱい困惑していた。
「今やってるゲームの影響かな?シュタイ・・」
「題名は言わなくていい。」
「とにかく、これからやっかみが増えるよと言いたかったわけで。」
「ああ、分かっているさ。」
「お待たせしました。どうぞ。」
ちょうど姉さんがコーヒーを入れて帰ってきた。姉さんは机の上にコーヒーを置く。
「では夕食の用意をしますね。」
自分の懸念が杞憂で終わることを祈らずにはいられなかった。
それに気になることもあった。
**********
次の日の放課後・・・・
昨日の兄さんことを思い出す。
剣術部との一件。
その後の明確な兄さんに対する魔法攻撃。
そしてなにより・・・・・・・
「何してんの?エイミィ。」
エイミィ含め女子3名によるストーカーだった。
「うわっ!なんだ亮君か。驚かせないでよ!」
「こっちのセリフじゃボケ!見つけた時吹いたわ!」
「しょうがないよエイミィだもんね。」
何故かついてきた、サクラが毒づく。
「で?なんで兄さんをストーカーしてんの?」
「「ストーカーじゃない!!!」」
エイミィとツインテールの女子が小声なのに力強い否定をした。
「一応探偵活動ということになっているから。」
ショートカットの女子がぼそりと訂正してくる。
「エイミィどゆこと?てかこの人たち誰?」
「えっと、こっちのショートカットの方が北山雫ちゃん、ツインテールの方が光井ほのかちゃん2人とも1年A組だよ。」
「で?なんで兄さんをスト・・・・・探ってるわけ?」
「だって彼攻撃されてるよ?いつか大変なことになるかもよ?」
エイミィはあわてたように言ってくる。
対照的にサクラは興味を無くしたのか携帯端末をいじり始めた。
マジ何しに来たのこいつ?
「だから3人で犯人を捕まえようってことになったの!」
・・・・・・・正直、見なかったことにしたくなってきた。
しかし、見て見ぬふりをすると大抵めんどくさいことになる。
ソースは入学してからの出来事。
「分かった。俺も付き合うよ。」
面倒事を起こされるよりよっぽどいい。
「え~!いやいいよ~。」
エイミィは露骨に嫌そうな顔をした。
このやろう。
こうして5人での少女探偵団(笑)が始動したのだった。
ちなみに名前は3人のときに決められていたらしく、変更はなされなかった。
**********
少女探偵団の仕事はひたすら兄さんを監視することだった。
活動2日目は屋上から双眼鏡での監視を続けていた・・・・・・・
「ほい、フルハウス~」
「なんでそんなカード強いのよ。ツーペア。」
「・・・・・・・スリーカード。」
・・・・・・エイミィと光井さんが。
「ちょっと!なんで露骨にやる気なくしてるの!」
エイミィがついにキレた。
「ごめん、飽きた。」
「いやだって、私あの人知らないし。」
「兄弟を遠くからずっと見るとか誰得?ただでさえ見飽きとるのに。」
「はあ、もういいよ。」
エイミィは監視に戻った。
・・・・それからどれくらい経っただろうか。
トランプがポーカーから大富豪(大貧民)に変わり、神経衰弱になったころだった。
「あっ!あれ?えっ?」
光井さんが素っ頓狂な声をあげた。
「あれキャストジャミングだ!」
「どうしたの?」
雫さんが光井さんに問いかけながら双眼鏡を覗きはじめた。
「達也さんの周りにサイオンはの兆候があったの。でもすぐに消えた・・・・。
間違いないあれはキャストジャミングだった!」
キャストジャミングとは、ありていに言えば魔法を無効化する魔法である。
また、副次的な効果として魔法師に頭痛を起こすらしい。
しかし、一般的にこれを使用するためには、アンティナイトという鉱石が必要である。
「雫の家で見たのと同じだよ!」
「あっ!逃げた!襲撃者だよ!右の木陰の方!」
雫さんがCADに触れる。しかし、襲撃者の対する魔法は発動はしなかった。間に合わなかったのだろう。
「顔見た?」
光井さんが問いかける。
雫さんは首を横に振った。
自分とサクラは見ているはずがない。
双眼鏡を持ってすらいないのだから。
そんな中エイミィだけが元気に答えた。
「見たよ!ばっちり!あれは男子剣道部のキャプテンだったと思う。」
「えっ、ほんと!?」
「写真か何かで確かめてみなきゃだけど多分間違いないよ。」
少女探偵団創立メンバーで話が進んでいく。
自分とサクラは綾の外だ。
「写真かー。」
「生徒会にならありそうだね。」
「いや、あっても見せてくんないでしょプライバシー的な問題で。」
言葉を割って追及する。
この追求は無駄足を踏まないためのものである。
同時に、生徒会になんて絶対行きたくないという意思の表れでもある。
だって絶対後で姉さんに根ほり葉ほり聞かれるもん!
「でも他に方法があるの?意外と見せてくれるかもしれないじゃん。」
エイミィが食い下がる。
おのれ!
そんな議論を根本から覆したのはサクラの一言だった。
「写真なら学内ネットで見れるよ。」
**********
「間違いない!あの時逃げて行ったのはこの人だよ!
3年F組司甲か・・・・・」
「動機はなんだろう?やっぱ嫉妬?」
「それはおかしいと思う。」
自分とサクラは3人の会話に入れないでいた。
いや、入らないでいたというのが正しい。
「熱心だね。」
「まったくだ。」
自分とサクラは3人との温度差を如実に感じ取っていた。
しかしほっといて面倒を起こされたくもない。
どうやら話は襲撃現場の写真を撮るということで決まったらしい。
・・・・・・もう少し付き合うか。
それは、少し覚悟のいる決断であった。
余談ではあるが兄さんが使ったキャストジャミングもどきについての質問を、根ほり葉ほり聞かれたのが面倒だった。
頑張ってごまかした自分をほめてやりたい。
**********
「なあ。亮。」
兄さんは夕食後、部屋に押しかけ問いかけてきた。
「お前達は何をしてるんだ?」
もちろんストーカーのことであろう。
「兄さんが見たことがすべてだよ。深いことは考えてない。」
兄さんはすでに気づいていたはずだ。
自分たちが兄さんを監視していること。
兄さんにちょっかいをかけている相手を写真に撮ろうとしていること。
そして、探偵団のメンバーまですでに知っているだろう。
兄さんは、俺たちがまだ企んでいると思ったのだろう。
しかし、うちに大それたことを考え付く、まともな頭のやつはいない!(自分のイメージでは)
「そうか・・・・・・・。有益な情報は得られたか?」
「今日の襲撃者、司甲っていうらしいよ。」
「今日というだけでは絞り込めんな。
今日は3回襲撃された。」
あれから2回も襲撃されたのか・・・・・・。
おつかれさま。
「じゃ、一番最初かな?」
「そいつか。
・・・・正直そいつに関しては気になっていた。
そいつのしていたリストバンドは、エガリテのものだったからな。」
「は?なにそれ?」
「反魔法国際政治団体ブランシュの下部組織だ。」
「ふーん、そっか・・・・・・。
それで?兄さんはどうするの?
放っておくわけにはいかないと思うけど?」
「ああ、いずれおばさんたちが動くだろうからな。
その前にどうにかするさ・・・・・・・。
とりあえず部活の勧誘期間が終わってからな。」
「・・・・・・・大丈夫なの?
・・・・・・・・まあ、一応こっちも動いてみるよ。
それに少し頭がお花畑なストーカー達が、放っておくと取り返しのつかないことをしそうだし。」
「別に隠れなくても、横を歩いてくれていいんだがな。」
「ほう!兄さん的にはハーレムが御所望かい?
ならそう手配するけど?」
「前言撤回だ。目の届く範囲に現れないでくれ。」
兄さんとの会話はいつも締まらなかった。(主に自分のせい。)
*********
その翌日も少女探偵団は司甲が魔法攻撃を仕掛けていることを証明する写真を取ろうと躍起になっていた。
いや正確に言おう。
光井さんが写真を撮ろうと躍起になっていた。
ついにエイミィまでもがそのテンションにおいて行かれていた。
エイミィは自分たちの行動がストーカーっぽいと悟ってしまった!
それでも付き合ってカメラを掲げるエイミィは付き合いがいいのだろう。
いや、今一緒に人生ゲームをしている、雫さんが付き合いが悪いと言ってるわけではない。(ちなみにサクラも一緒だ。)
しかし、光井さんの写真を撮ろうという提案にいち早く賛成しておきながらこのありさまなのだから、少し快楽主義なところがあるのかもしれない。
「来ないね。司甲。」
ついにエイミィが弱音を吐いた。
さすがに疲れたのかもしれない。
「エイミィ、一応先輩だよ?」
サクラがルーレットを回しながら訂正をする。
ちなみにサクラは人生ゲーム内において圧倒的な富豪であり、一番ゴールに近い。
ルーレット運良すぎだろ!
「不意打ちで見えないところから攻撃するなんて、尊敬に値する人には思えない!」
見張り疲れもあるのだろう、少しご機嫌斜めだった。
そろそろ潮時かもしれない。
「そろそろ方針を変えた方がいいんじゃね?」
そう、提案してみた。
「ほかにどんな手があるっていうの?」
返事をしたのは光井さんだった。
「場当たり的な行動じゃなくて、もっと熟考した上での行動が必要だよ。
つまり、一度会議をして頭をひねってみた方がいいんじゃない?
そしたらもっといい方法が見つかるよ?」
その心は、そろそろ室内に戻りたい。
「会議!いいね!探偵団っぽい!ねえほのか、そうしようよ!
・・・・それなら、会議室が欲しいね!」
エイミィには好評だったようだ。
テンションが鰻登りだ。
「それならいい場所を知ってる。一応ホワイトボードもあった。
さらにお菓子とコーヒーもそろってる。」
**********
「それでこの部室か。」
大山先輩は少し迷惑そうだ。
「いいじゃないですか先輩!
先輩のせいで淀みきったこの部室の雰囲気が明るくなりますよ♪」
「だがなぁ、・・・・・・・・部外者にうろうろされると困んだよ。」
大山先輩は人間不信に陥るようなことがあったのだろうか?
少し不安だ。
「なら私、入部しますよ。」
「私も構わない。ほのかは?」
「雫が入部するなら。」
「・・・・・・・・・・亮。よくやった。」
今までにないほどうれしそうだ。
変わりようがすごい。
先輩の思考回路はどうなっているのだろう?
テラカオス~。
「早速会議を始めるのか?」
しかもノリノリだ。
「・・・・・いえ、折角なのでもう一人巻きこもっかなって思ってます。」
大半の人が頭に?を浮かべている。
サクラはこちらに分かったようなしたり顔を向けてきた。
サクラとはこういう時、気が合うらしい。
**********
「ええ?何?どういう事?」
鋼は状況を呑み込めていないようだ。
「とにかくこの入部届にサインしろって。」
入部届を鋼の眼前に差し出す。
「書いちまえよぉ。楽になるぜぇ。」
サクラもノリノリだ。
「ね!一回だけ!騙されたと思って!」
エイミィの誘い方はまるで幸せの白い粉を勧められているみたいだ。(ハッピーターンではない。)
ダメ、絶対!
鋼は助けを求めて視線をそらす。
先輩方二人は笑顔で無言の圧力をかけるだけであった。
雫さん、光井さん共に鋼を見ない。
鋼は助けがないことを悟ると、少し逡巡したような素振りを見せたてから絞り出すように言った。
「サインしてもいいから説明してくれないかな?」
て~て~て~、ててててててて~てん! 十三束鋼が仲間になった!
・・・・・・その後、会議をしていたはずがいつの間にか世間話に変わり、最後には人生ゲーム大会になった。
ちなみに優勝者はぶっちぎりでサクラだった。
**********
それからも、会議をしたり、もう一度兄さんをストーカーしてみたり、剣道部に探りを入れてみたりしたが、特に進展がないまま部活勧誘期間は終わりを告げた。
勧誘期間が終わった次の日、エイミィは落胆を隠せないようだった。
「くそうっ。結局迷宮入りかぁ。」
魔法の授業中、課題を早々に片づけて4人で固まっていた。
入学して間もないためであろうか、課題は簡単なものばかりであった。
大抵の人が課題を終了し、数人がCADを自由にいじっている。
さらに上の成績を目指す人もいるようだ。
そんな中、駄弁っている自分たちは不真面目な生徒なのだろう。
「わかったのは司甲って人がきな臭いってことだけだもんね。」
残念そうに言っているが、サクラは何もしていなかった。
自分は見ていた。
「よくよく考えれば、達也君を襲撃したの司甲先輩だけじゃないよね?」
「鋼君、元も子もないこと言わないでよ~。」
エイミィは項垂れる。
このまま捜査を止めるのなら面倒事が減っていいだろう。
「兄さんも襲われなくなったし、魔が差したいたずらってことでいいんじゃない?
実害も出てないし。」
「そうだね。僕にはMMAC(マーシャル・マジック・アーツ・クラブ)がある。エイミィも狩猟部があるしね。」
「じゃあこれでこの事件は終わり、ということで。」
少し強引だがシメてしまおう。
面倒事はさっさと終わらせた方がいい。
「そう・・・・だね。」
それでも納得のいっていなさそうなエイミィの顔に、嫌な予感を感じずにはいられなかった。
**********
「というわけです。」
自分は放課後、古典部にて捜査終了の旨を先輩方に告げた。
ちなみにサクラは今日、家の用事で帰ってしまった。
さらにエイミィ、鋼、雫、ほのかは、もう1つの部の方に行ってしまったため部室には3人のみである。
「そうか、捜査は終了か。」
大山先輩は、納得したようにうなずいていた。
「久しぶりの活動が中途半端に終わったのは残念ですねぇ。
結局、あの先輩は何がしたかったんでしょうか。」
風祭先輩はいまいち納得がいっていない様子だ。
「嫉妬心からくるやっかみじゃないのか?」
「でもでもぉ、相手は桐原先輩をノックアウトさせて、迫りくる剣術部員と大立ち回りを演じたんですよぉ。
そんなの相手に1人でしかけますかねぇ?
無謀すぎじゃないですかぁ?」
「そこまで頭が回らなかったとか、不意打ちならいけると思ったとかそんなとこじゃないのか?」
「それでもぉ、非魔法競技系の部活はみんな仲良いじゃないですかぁ?
だから、仲間を引き連れていくと思うんですよねぇ?」
非魔法競技系の部活は大変仲がいい。
おそらく差別されるもの同士仲良くしよう的な、傷を舐めあう仲である。
特に司甲の所属する剣道部は、その意識が高い。
魔法の使用できるかできないかの違いしかない剣術があるため、より劣等感を感じずにはいられないのだろう。
「じゃあ他に目的があったのか?」
「ん~・・・・・・。お前の力を試してやろう!的な?」
実は自分も同じことを考えていた。
・・・・・・ほんとだよ?
司甲が本当にエガリテの一員だとすれば、アンティナイトの要らない兄さんのキャストジャミングもどきはさぞ魅力的に映っただろう。
安易にできる魔法無効化、魔法を否定する立場にとってこれほど都合のいいものはない。
力の真相を知りたいと考えても不思議はない。
そう、考えていた。
「なんでもっと早く言わなかったんだよ?」
「昨日思ったんですよぅ!
仕方ないじゃないですかぁ!」
「でもまあ、もう考えても仕方のないことだ。忘れろ。」
「そうですねぇ。そうします。」
こうして、司甲の一件は古典部から忘れ去られた。
・・・・・・・・・・はずだった。
**********
月曜日、その日は大抵の部活が休みとなる。
MMAC、古典部、狩猟部はもれなく休みであった。
そのためエイミィ、サクラ、鋼とともに帰ることになった。
「帰りに4946に寄っていこうよ!
新発売の荒御霊バーガーが気になってね!」
『4946』は店主、68歳が定年後趣味で始めたハンバーガーショップである。
奇天烈なネーミングセンスと、名前とは関係なく普通においしいハンバーガーが売りだ。
値段は普通。
「でも、この前行ったときお金がピンチだって言ってなかった?」
「・・・・・・・・・・亮君1000円貸して!」
「返す当ては?」
「・・・・・・・・・てへっ♪」
なにそれ超かわいい。
その可愛さに免じて・・・・・・・
「荒御霊バーガーはお預けだな。」
優しく断った。
「サクラぁ。」
「無理。」
それはさすがに人選ミスだった。
「・・・・・・・・鋼君?」
ついに、頼まれると断りにくい鋼が標的となった。
よっぽど食べたいらしい。
目をそらして精いっぱいの抵抗をしている鋼に対して、エイミィは無言のの圧力をかけ続ける。
そろそろ鋼が陥落するかと思ったとき、エイミィの視線は鋼の後ろにくぎ付けとなった。
「どうかした?」
「司甲だ。確か今日、剣道部は休みじゃないはず・・・・・・・。」
鋼の問いかけに、エイミィは不吉な答えを返した。
あ・・・・・、これアカン奴や。
「エイミィ、今日は奢るから早く4946に行こう。」
何とか気をそらそうとしてみた。
しかし、エイミィは司甲から目を離さない。
「ねぇ、つけてみようよ。」
ついに聞きたくなかったセリフが出てしまった。
**********
4人での司甲尾行大作戦が始まった。
やる気満々なエイミィ、それに付き合う鋼、その後ろを自分とサクラがやる気なさげについていくという布陣だ。
しっかし尾行が下手くそだなぁ。
気づいてくださいと言わんばかりだ。
「ねえ、多分尾行してるの、ばれてると思うな。」
一応言ってみる。
「もしそうなら話しかけてくるか、撒こうとするでしょ?
そうならないってことは、ばれてないってことだよ!」
その自信はどこから来るのだろう?
鋼も苦笑している。
サクラは聞いてすらいない。
サクラさん?エイミィに対する扱いが酷過ぎませんか?
エイミィはエイミィで気にせず、どんどん先へ進んでいく。
・・・・しかし、司甲の目的はなんだろうか?
ここにきて考える。
自分たちに気づいてないはずがない。
確かになぜ、何事ともなかったかのように歩いているのだろう?
・・・・・・撒く必要がない?
ここにきてようやく司甲が人気のない場所へ向かっているころに気づいた。
待ち伏せか!
そう考えるとしっくりくる。
しかしこのまま説明しても信じてはくれまい。
どうしたものか・・・・・?
考える間もなく司甲は路地裏に入ってしまった。
エイミィと鋼もそれを追う。
「サクラ、悪いけどCADの起動と、周囲の警戒をしながら近くのコンビニに行ってて。
後で説明するから。」
「え?うん?・・・・・・・・・・何か分かんないけど分かった。」
「ありがとう。後で連絡する。」
路地に入ると、すぐに司甲は走り出した。
「追うよ!!」
エイミィと鋼も、逃がすまいと走り出す。
自分は後を追いながら、CADを起動した。
**********
Another side ~十三束鋼
失態だ!
司先輩に気を取られ過ぎた!
もっと考えて行動するべきだった!
今は、前に4人のライダー達、後ろには行き止まり、左右は高い壁、味方はエイミィだけという状況だ。
しかも、司先輩を見失っている。
待ち伏せに可能性に気づかないとかどうかしてる!
司先輩はどこへ消えたのか?
亮君とサクラはどうなったのか?
気になることも多いが、まずはライダーたちの対処が先決だろう。
「・・・・エイミィ、合図をしたら逃げて。」
小声で話しかけるとエイミィも小声で返してきた。
「どこに?」
「僕が飛び掛かって包囲に穴を開けるから。」
「そんなこと言われて私が逃げると思う?」
どうやら逃げてくれないようだ。
逃げるよう説得したいところだけど、ライダー達がそれを許すはずがない。
ライダーの内2人がナイフを構えて近づいてくる。
となれば、後ろの2人は銃を持っているのだろう。
「じゃあ、合図したら飛び出すから後ろの二人を攻撃してほしい。」
「OK!まかせなさい!」
エイミィの得意分野は砲撃魔法だ。
この距離を打ち抜くのはたやすいだろう。
僕が前の2人に飛び掛かり注意を引く。
その隙に銃を持ってそうな2人をエイミィが倒す。
ナイフを持った2人位ならギリギリ・・・・・・
少し希望的観測の入った作戦だが仕方ない。
「いくよ。」
「うん。」
タイミングを見計らって・・・・
「GO!!」
合図と同時に駆け出す。
そしてライダー達は合図と同時に・・・・・・・、気絶したように倒れた。
「「あれっ??」」
出た声は殊更間抜けな声だった。
Another side end
**********
「「あれっ??」」
エイミィと鋼の声を聞いて魔法を解いた。
「えっ?あれっ!?亮君!?いつのまに!?」
エイミィのセリフは悲鳴に近かった。
「おつかれ。」
言いながら、気絶させ拘束した司甲をライダーたちの近くに引きずって行く。
さらに、ライダーたちの武装解除と拘束を進める。
「やっぱり男を縛っても面白くないね。」
少し冗談を交えてみるが2人はまだ混乱から逃げ出せないようだ。
「ねえ、呆けてないで手伝ってくんない?
ロープあるからしばって。
後、隠し持ってる武器を奪っといて。」
そう話しかけると2人はようやく正気に戻ったようだ。
「説明!してくれるんでしょうね!?」
「それは後でね。
とりあえず身の周りの安全確認と、応援を呼ぶのが先。
そいや、サクラにも連絡しなきゃ。」
携帯端末を取り出し、サクラにメールする。
==========
司甲、他4名を捕縛。
安全を確認次第、捕虜を連れて帰投する。
報告終了
==========
送信
「サクラさんは無事なの!?」
鋼はまだ少し混乱しているようだ。
「そもそも路地裏に入ってきてないよ?」
「「はあっ!?」」
今日の二人は息ピッタリだ。
**********
しばらくして、ライダー達の拘束が終了した。
どうやら、他に仲間もいないようだ。
後は応援を呼ぶだけ・・・・・。
気は進まないが姉さんに報告して生徒会に引き渡してしまおう。
きっと、七草と十文字の権力でどうとでもしてくれるだろう。
・・・・・・本当に気が進まないなぁ。
どうにか姉さんに知られずに生徒会の助力だけ得られないだろうか?
兄さんに連絡してもどうせすぐ姉さんに知らせるしなぁ・・・・・・。
報告を躊躇していると・・・・・・・・・・、姉さんの方からのコールが来た。
アレ~? オカシイゾ~?
嫌な予感しかしないがコールに応じる他ない。
無視でもしようものなら・・・・・・・・・・・・。
「もしもし?お姉さまでしょうか?」
「もしもし。亮?話は桜小路さんから聞きましたよ。」
情報源はサクラか!
おのれ!
「今から七草会長達とそちらに向かいます。
きちんとその場にいてくださいね?
それでは。」
ブチッ
電話が切れた・・・・・・・。
やばい!やばい!!怒られる!
姉さんは自分が危険なことをするとスゴイ怒る。
母親か!!
自分も危険に突っ込んででいくくせに!!
危険に突っ込んでいったのはエイミィで自分は巻き込まれただけ・・・・なんて言い訳が通用する相手ではない。
頭の中で姉さんへの言い訳がぐるぐる回っているとサクラからの返信が来た。
==========
了解した( ̄^ ̄ゞ
任務完了!!
お疲れ様
ゆっくり休んでくれ!
PS
どうせ二の足を踏むだろうから深雪さんに報告しといたよ d(゚∀゚)
深雪さん、スゲー怒ってた(=v=)
が( ̄□ ̄)ん( ̄ー ̄)ば( ̄△ ̄)れ(。 ̄O ̄)♪
==========
絶対いつか泣かす。
**********
しばらく待つと、姉さん達がやってきた。
やってきたのは、姉さん、兄さん、七草会長、十文字会頭の4人だった。
司甲、他4名を引き渡すとエイミィ、鋼、サクラは強制的に帰宅させられた。
状況の説明をするため、自分だけが残されたはずなのだが・・・・・
「亮!分かっている?一歩間違えれば命を落とすところだったのよ!」
姉さんは着いてそうそう自分を正座させ、説教を始めた。
いやいい。いいんだけどね。
けど、ホンマはあかんねんで!
「まあ、深雪さん話も聞きたいし、ね?
説教はそこらへんにして頂戴?」
「ですが、会長!」
七草会長が姉さんを宥めてくれる。
さすがです生徒会長!そこに痺れる憧れる~!
「また後で続きをすればいいじゃない!」
「・・・・・分かりました。」
おいこらDIO!なにいってんだふざけんな!
あっ!今こっち向いてにやけた!
クソーッ!殴りたい!時を止めて殴りたい!
「じゃあ、状況を説明して頂戴?ざっくりでいいから♪」
会長が少しにやけながら訊ねてくる。
「訳あって司先輩のあとをつけていたら、こいつらに待ち伏せされて襲われました。」
「・・・・・素性に心当たりは?」
「すみません。分かりません。」
大方、ブランシュなりエガリテなりの構成員だろうが、そんなことは会長たちも推測しているはずなので黙っておく。
「そう・・・・・。他に変わったことは?」
そういえば・・・・・・。
「会長、これを見てくれませんか?」
そう言って1つの指輪を会長に差し出した。
「それは!」
会長は驚きの声を隠せなかった。
一目でこれが何であるのか察したようだ。
姉さんも驚いた顔をしている。
兄さんと十文字会頭は表情こそ変わらないものの、先ほどより緊張しているのが伝わる。
「そうです・・・・・・・・・。これは推察通りの代物です会長。」
それを会長に差し出したまま、大きく息を吸った。
「結婚してください!!!!!!」
「・・・駄目よ亮君!私には婚約者がいるのよ!」
「そんなこと関係ありません!一緒に逃げましょう!
地の果てまでも!」
「亮君!」
「会長、亮、悪ふざけはその辺にしておいてください。」
兄さんが冷たい声で会長とのやり取りをさえぎった。
「ごめんなさいね。」
「会長はノリがよさそうだったからつい出来心で。」
会長とは初対面のはずなのに思ったより息ピッタリ!
「それよりそれはアンティナイトだな。」
兄さんは強引に話題を元に戻す。
「うん。ライダーの1人が持ってた。そうとう大物がバックにいるようだね・・・・・。」
ここで初めて十文字会頭が口を開いた。
「アンティナイトのことを知っているのはお前だけか?」
「・・・・はい、その通りです。」
「では口外するな。そして忘れろ。
この件は、十師族として俺と七草で事に当たる。
悪いが司波兄弟も今日は帰ってくれ。」
仕方ないだろう。
もうすでに学生の領分を超えている。
兄さん、姉さんも特に異論はないようだ。
「では亮?夕食後に先ほどの話の続きをしましょう。」
忘れてなかったー!!!!!
なあなあにしないところが姉さんらしいね!
そして何故夕食後なんですかね?
長くなるからですかね?
夜通しになるからですかね?
・・・・今夜は君を寝かさないゼェッ!(やけくそ)
**********
翌日、昼休みになるとすぐさまエイミィは自分を問い詰めに来た。
「さあ!昨日のこと!説明してもらうから!」
ちなみにエイミィの追及が昼休みにまで伸びたのは、授業以外の時間に自分が熟睡していたからだろう。
原因は姉さんが昨日寝かせてくれなかったからだ。
・・・・・・夜通し説教された。
「あー・・・・あれね。
特に難しいことはしてないよ?
魔法を使って隠れた。
隠れて司甲を気絶させた。
隠れてライダー達を気絶させた。
そんだけ。」
「幻影魔法を使ったってこと?
司先輩を捕まえたってことは僕たちを抜いて行ったってことだよね?
さすがにすぐ前にいれば違和感に気づくと思うけど?」
「そうだよ!どうやったのよ?」
鋼の問いにエイミィが便乗する。
「便宜上隠れたって言ったけど実際は物理的に隠れたわけじゃなくて・・・・。
魔法で気づかれにくくしたって感じかな?
実際にはそんなに便利な術式じゃないけど。」
「精神干渉系の魔法か・・・・・・。
・・・・・・・うん?
そんなのがあるなら私ら全員を気付かれにくくしてくれればよかったじゃない?」
「あーそれがねーこの術式の不便なとこでねぇ。
この術式の正確な効果は意識の集中なんだよね。
それで魔法効果内の人の意識は効果発動時に一番意識していたものに集中する。
だから、自分を意識してたり、意識が散漫だと失敗する。
それは避けたかったんだよ。」
わざと少しわかりにくく説明した。
狙い通りエイミィは、頭に?を浮かべている。
鋼は意味をしっかり理解したようだ。
半眼でにらんでいる。
エイミィは考え込んだ。
少しの間があり・・・・・・・
「あっ。つまり・・・・私たちを囮にしたってこと!?」
「まあ、悪かったとは思ってるよ。」
「・・・・・ほんとに?」
「・・・・・・半分くらい?」
「それならば罰を与えます!」
強引だなぁ。
しかも、エイミィの罰は公平ではなさそうだ。
「汝、司波亮は明智英美を囮にした罰として、明智詠美に荒御霊バーガーを奢るべし!後、ポテトも。」
めちゃくちゃ私情だった。
何気に鋼を囮にしたことはお咎めなしだし!
ヤダナー、ヤダナー
その時、携帯端末に図ったような電話がかかってきた。
好都合だ!
「ちょっと電話かかってきたから外すよ。」
「・・・・・話、うやむやにしようとしてなぁい?」
エイミィが半眼でにらんでくる。
「滅相もない!」
当たり前だ。
「・・・・わかった!でもこれだけは言っとく。放課後、少女探偵団は会議室に集合だから。」
・・・・・・・・・・・あっちょんぶりけ。
**********
今日は珍しく古典部部員全員がそろっていた。
エイミィが招集をかけたからだろう。
そんな中、
「司甲は悪の組織とつながっていたのよ!」
エイミィは興奮気味に言い放った。
自分は今、きっと苦虫をかみつぶしたような顔をしているだろう。
鋼とサクラは少々いたたまれないというような表情をしている。
事情を知っているだけにエイミィと同じ感想を抱いていたが、言葉にしてみるとスゲー恥ずかしい!的な感じだろう。
概ね自分もそんな感じだ。
大山先輩は、何こいつ?頭のねじゆるんでんの?と言いたげな視線をこちらに向けくる。
残念だったな!もうすでに外れて紛失してるよ!
風祭先輩はこんな時でも笑顔だ。
でも知ってるぞ。これは愛想笑いっていうんだ。
ほのかは、目を点にしてエイミィを見ている。
やめて!そげな見らんとってやって!
雫なんて・・・・・・
いや、雫はいつもと変わらない。
「えーと・・・・、一応話を全部聞いてくれませんか?」
ついに堪えきれなかったのだろう。
鋼が昨日に事について説明していく。
「そうか・・・。
しかし、七草会長に十文字会頭まで出張ってきたってんなら全面的に任ちまった方がいいんじゃねーの?
十師族としての権力も期待できるし。」
さすが大山先輩。無難な発想、無難な発言だ。
十師族とは、ありていに言えば日本の魔法師たちの頂点に立つ家柄だ。
直接、政治に関わる訳ではないが、強い影響力は持っている。
ちなみに苗字に1から10の数字が入っている。
七草や十文字のように。
「でも!気になりませんか!」
それでもエイミィは食い下がる。
しかし、みんなの反応は芳しくない。
それもそのはず、十文字会頭は十文字家の当主代理としての経験がある。
誰もが十文字先輩に任せておけば大丈夫だと考えているのだろう。
しかし、その時・・・・・・。
予兆はなかった。
ドオォォォン!!
いきなりの爆発音が鳴り響いた。
「きゃっ!!・・・・・・なっ、何?今の音?」
ほのかがおびえた声を出した。
ほかのみんなもこわばった顔をしている。
「とりあえず状況を確認しよう。
どっかの馬鹿が悪ふざけで魔法ぶっ放しただけかもしんねぇしな。」
大山先輩は冷静言った。
風祭先輩はすでに携帯で他の人と情報を交換している。
雫もそれに倣った。
きっと誰もが大山先輩の言ったような理由であることを願っていただろう。
しかし、風祭先輩からもたらされた情報は、自分たちの期待を簡単に裏切った。
「どうやら・・・・・・・・・、正体不明の武装勢力と一部生徒が破壊工作を行っているよう・・・・ですね。」
「まさか司甲の報復に来たんじゃ・・・・!」
エイミィの声は強張っている。
「・・・・・救いなのは放課後でCADが手元にあることだね。」
鋼の言うとおりだ。
これがもし授業中だったら・・・・・。
より厳しい状況だっただろう。
「私たちの学校だもん!私たちで守ろう!!」
勇ましい声をあげたのはエイミィだった。
「だめ。すでに生徒会、部活連、風紀委員が動き出してるもん。
私たちじゃ足手まといになるよ。」
風祭先輩の口調はいつになく引き締まっている。
よほど切迫した状況なのだろう。
「・・・・深雪が奴らの狙いは学校の重要資料や機材じゃないかって。
でも、みんな侵入者と暴れる生徒の鎮圧に手いっぱいみたい。」
姉さん、余計なことを。
「つまり、重要資料と機材を私たちが守り抜けばいいんだね!!」
エイミィはすっかりやる気のようだ。
先輩方は渋い顔をしている。
じぶんたちには避難していてほしいのだろう。
しかしエイミィは止まりそうにない。
大山先輩は1年の面々を見回す。
みんな行く気満々といった顔つきをして知る。
「あ~~~!!分かった!行ってやろうじゃねえか!
だが、戦力の分散はしねぇぞ!
機材を守るなら実験棟、資料を守るなら図書室だ。」
「それなら深雪たちが図書室に行くって言ってたから実験棟に行けばいいと思う。」
**********
結果だけ言えば、はずれであった。
実験棟へ行く途中で武装勢力と少し交戦したものの風祭先輩の魔法でほとんど片が付いた。
敵の主力は図書室に向かっており、兄さん、姉さん、兄さんのクラスメイトで取り押さえたらしい。
兄さんと姉さんは、まだ用事があるみたいだったが、ほとんどの生徒は下校する運びとなった。
自分も多分に漏れず、下校する。
しかし目的地は我が家ではなかった。
目的地に着くと、使用人が自分を呼び出した張本人のもとへと案内してくれた。
「お久しぶりですね。伯母上」
自分はその相手に恭しく挨拶をした。
「久しぶりですね、亮さん。
そんなにかしこまらなくてもいいのよ?
それで・・・・・
電話で頼んだものは持ってきたくれたかしら?」
「一応持ってきましたが・・・・
説明は頂けるんですかね?」
そういって引きずってきたものを自分の前においた。
・・・・人だった。
手足を拘束され、口を塞がれている。
どちらも自分が施したものだ。
目は伯母上を睨みつけている。
正確に言えば、こいつは第一高校に襲撃をかけた武装勢力の内の1人だ。
服装こそ襲撃をかけてきたときのつなぎのような服装だが、首から上は見るからに不良といういでたちだ。
「ごくろうさま。
もちろん、説明はさせてもらうわ。
そうね、・・・・・・・・・大泉大治郎、という方をご存じかしら?」
「確か政治家の名前だったかと。
詳しいことは知りませんが。」
「大泉は親魔法派の政治家の1人、私が個人的に仲良くして頂いている方よ。
この男はそのご子息なのよ。」
「だから、捕まってもらっては困るし、放置も出来ない、ということですか。」
「まあ、そのとおりね。」
「ではなぜ自分に頼んだんですか?」
「先ほど告げた通りです。
深雪さんと達也さんに悟られたくなかった。
達也さんの目をごまかせる人材はあなただけだった。」
「なぜ悟られたくなかったんですか?」
「それはまぁ、不用意に2人を刺激したくなかった、という感じかしらね。」
「・・・・・・・分かりました。深くは追及しません。」
「助かるわ。
後は・・・・・・、ご子息の今後について、力を借りたかったの。
・・・・・記憶と感情を消してほしいの。」
伯母上の言葉を聞き、男の顔が恐怖に染まる。
「・・・・・・・いいんですか?」
「ええ、お願いするわ。」
「・・・・・・・分かりました。」
右手をCADを持ち、左手で男の頭に触れる。
男の顔に絶望が浮かんだ。
「安心していい。
その恐怖も、絶望も、すぐに消えるから。」
・・・・・・・・こうして、自分にとっての入学における一連の事件は終結した。
**********
事件後の一幕
1年B組教室にて
「結局、私たち何にもしてない!」
「何を言っているのエイミィ、司甲を捕まえたじゃない?」
「だってあれは亮君がほとんど一人でやったことじゃない!
もっとこう・・・・・・・、探偵団として事件を解決したぁっていう実感が欲しかったの!」
「ソラサーセンシター」
「誠意が感じられないよ!
も~~~っ!
・・・・・・・・・・まあいいや、まだ入学したばかりだし。
探偵を続けて入れば、また事件も起こるよね?」
「いやぁ、どうかな?」
「事件に愛される探偵は見た目は子供頭脳は大人!な人だけだよ。」
「確かにエイミィは見た目は大人頭脳は子供って感じだし、あれれ~あたまがおかしいぞ~って感じだけどね。」
「あんたたちには人情ってもんがないの?」
その後のエイミィ宥めるのは苦労し、結局荒御霊(ハンバーガー)に針山地獄(ポテト)、マグマだまり(コーラ)を奢る羽目になるのだった。
**********
どうにかこうにか書き終わることができました。
果たして何人が読み、何人があとがきまでたどり着くのか・・・・
話は変わりますが、意見感想、誹謗中傷、お待ちして押します。
続編は、評判を見て書くか決めます。
最後まで読んで下さった方々、ありがとうございます。
・・・・・・・・・・誰かいるよね?
続編へはもりもりぐみな作品一覧へどうぞ。
面白かった!!