「ただいま」「おかえり」
勢いで書いたらまとまらないのはちかたないね
「亜美のプリン食べったっしょー!!大事に取っておいたのにー!!」
「真美のゼリー食べるからじゃん!!亜美が悪いんだからねー!!」
「「真美(亜美)なんか大っ嫌い!!」」
「亜美!!真美!!!!いい加減にしなさい!!明日もお仕事なんでしょ!!」
「「うあうあーおやすみなさーい」」
こんな感じに喧嘩してお母さんに怒られて、でも次の日には仲直りっていうのが私達双子にはよくあることなんだけども
この日はそうはならなかったんだよね
「むむー……お仕事とは言え一言も声をかけずに行ってしまうとは我が分身もいけずな娘よのー」
双海姉妹は二人で1人のアイドル『双海亜美』として活動してるからこういったすれ違いも出てくるのはちかたないねって思うけど
行ってくるねって言ってくれたら、昨日はごめんねって謝れたのに
なんだかちょっと不満だし
そんな気分で一人でゲームしたりご飯食べててもつまんないし胸のあたりがモヨモヨするから、事務所に行って兄ちゃんに悪戯でもしますかー!!
ってお家を飛び出したのがさっきの事
「んっふっふー、いい悪戯を考えついちゃった!!
んー、よしよしこれで準備完了…後はこれとこれと…」
きっとみんなビックリしちゃうぞー!って期待と……ちょっぴり不安な気持ちも抱えながら事務所のドアをゆっくり開ける
兄ちゃんは……いない
こんな時にいないなんて兄ちゃんは本当ダメダメっしょー!
ちかたないから事務所内をキョロキョロ見回し獲物を発見!!
ゆっくりと気づかれないように慎重に慎重に近づき
そして勢いよく飛びかかる
「だーーーれだーーー!!!」
「きゃっ!何っ!?」
「んっふっふー、このぷりちーでせくちーな亜美ちゃんに誰だされるなんて千早お姉ちゃんは幸せ者だなぁ」
「自分で名乗ったら意味が無いと思うわ」
「うあうあー!!この双海亜美一生の死角!!」
「不覚ね、いい加減に離しなさい」
「こんなせくちーであだるてぃーな亜美に抱きつかれて千早お姉ちゃんもうれちーくせにー!!」
両手を離すとすぐに千早お姉ちゃんはこっちを振り向くはず
作戦は大詰めの段階なのだ!!!
「はいはい、それはよかっ……ぶふっ!!」
千早お姉ちゃんは私の顔を見るなり吹き出した
第二作戦も無事成功のようだ
「ぷっ……くくくっ…鼻…鼻メガネ……くくく……」
「んっふっふー!千早お姉ちゃん破れたりー!!!!今日は真美が仕事でいないから気合い入れたんだYO!!」
「あぁ、真美が……ねぇ」
「一人で家に居ても暇なんだよー!!だから兄ちゃんに悪戯しにきたのに居ないからー!!」
「そう…なの…くくくっ…」
「思ってたよりツボに入ってくれて嬉しいかなーって」
「本当、亜美も真美も悪戯が上手ね」
「そんな風に一緒にされるのは心外かなーって」
「高槻さんはそんな事言わないわ」
「んっふっふー、やよいっちが言わない事シリーズは最近の亜美達の中では血判ネタなんだYO!
んでんでー今日は千早お姉ちゃんはお仕事無いのー?」
「ええ、今日は午前中にレッスンだけだったから。これから帰るとこだったけど音無さんが買い物に出てるから誰か来るまでお留守番してたの」
「ほほー!じゃあ次の獲物にも亜美の必殺鼻メガネをおみまいしてやるしかないっしょー!!」
勢いよく鼻メガネを装着すると千早お姉ちゃんがまたくくくって笑いだしちゃった。
千早お姉ちゃんの笑いのツボが低すぎるのも困ったもんだね!
「ただいま戻りました〜……あらあら〜律子さんはまだいないのね〜」
「お帰りなさいあずささん。
音無さんは買い物に、プロデューサーは撮影について行ってるみたいです」
「あずさお姉ちゃんやっほー!」
「あら〜可愛い鼻眼鏡ね〜」
「うあうあー!あずさお姉ちゃん大人の対応すぎるっしょー!!」
「あらあら〜今日も元気がいいのね〜」
「んっふっふー!双海亜美のぷりちーな悪戯は年中夢中で営業中なのだー!」
「うふふ、大忙しなのね〜。でもそんな悪戯はめっ!よ〜」
兄ちゃん隊員はいなかったけど、千早お姉ちゃんやあずさお姉ちゃんとわいわいやってたら、落ち込んでたのが嘘みたい
だけどお家には帰りたく無いな
顔合わせるの気まずいって思っちゃう
「じゃああずささん、私はそろそろ帰ります。もうそろそろ音無さんも戻ると思いますけど……」
「千早お姉ちゃん帰っちゃうの??」
「ええ、お昼ご飯もまだだし、ここに居てもやる事も無いし」
「じゃあ亜美も千早お姉ちゃん家に遊びにいっていいー?」
「私は別に構わないけど……楽しいところではないわよ?」
「やったー!!じゃー早く行こー!!」
あずさお姉ちゃんも誘ったけど事務所あけるわけにもいかないし、りっちゃん待ってるって言うから今回はちかたないね
「それじゃああずささん、お先に失礼します」
「じゃあねーあずさお姉ちゃーん!!」
「うふふ、明日はちゃんと仲良く二人でくるのよ〜」
「んっふっふー、千早お姉ちゃんとはいつでも仲良しこよしなんだYO!!いこー千早お姉ちゃん!!」
「あらあら〜」
手をひらひらと振るあずさお姉ちゃんに見送られながら
千早お姉ちゃんのお家にレッツゴー!!
「千早お姉ちゃんのお家に行くの初めてだね!」
「そうね、あまり人も呼ばないから……あっ、買い物もしていかなきゃ」
「んっふっふー!あそこのスーパーに寄ってこーYO!!」
千早お姉ちゃんの家に向かう途中にスーパーに寄って
お昼ご飯の材料選んだり
悪戯の材料になりそうなものを探したり
千早お姉ちゃんへのお土産にこっそりお菓子を買ってみたり
一つの袋を二人で持ってみたり
千早お姉ちゃんの料理を手伝ってみたり
それでもやっぱり頭に浮かぶのは仲直りできてないって事
「ねぇねぇ千早お姉ちゃん、今日泊まってってもいい?」
「喧嘩したから?」
「うげっ!?何でわかるのー!?」
「あずささんも気づいてたわよ?」
「えーそんなにわかりやすいかなー?」
「明日は二人仲良くって亜美真美揃っておいでって意味だと思うけど」
「うあうあー、あずさお姉ちゃんも千早お姉ちゃんもエスパー並みの高出力だよー!!」
「洞察力かしら?」
くすくす笑いながら食器を片付けてる千早お姉ちゃんはなんだかいつものクールさがなくて
とっても優しいお姉ちゃんって感じ
「だってさー今日だって何も言わずに仕事に行っちゃうし、メールもくれないし……何だかきまずくて、やっぱり怒ってるんだよー」
「ふふ、お互い同じ事思ってると思うけど」
「そうかなー」
「ええ、そんなものよ」
「んあー!でもやっぱりこういう時ってお姉ちゃんが折れるものでしょー?」
「どうしてそう思うの?」
「だってだってお母さんだってお姉ちゃんなんだから!って叱ったりするよー?」
「ふふ、そうね、私もよく言われたわ」
「千早お姉ちゃんも?」
「ええ、世の中のお兄さんお姉さんは皆言われてるんじゃないかしら」
「ほらほらーやっばりお姉ちゃんが謝るのが正しいんじゃん……」
千早お姉ちゃんはちょっと寂しそうに目を細めて
「でも私の弟……優って言うんだけどね、あの子は喧嘩しててもいつも私のところに来て『歌って』って泣いたり笑ったりしながら言ってくれたの」
「んー……」
「私もあの子も……自然と仲直りして歌ってたわ」
「そっかぁ……千早お姉ちゃん達は今でも喧嘩したりする?」
「……もうずっと会ってないから」
千早お姉ちゃんは俯いて、何だか震えてるみたいだった
「うあうあー……あっ!じゃあ今日は亜美が千早お姉ちゃんの妹になってあげるYO!!ほらほら!さっきのスーパーで千早お姉ちゃんにプレゼントも買ったんだよ!ほらこれ!!」
「これ……」
「千早お姉ちゃんがこのお菓子見てたからこっそり買ってみたんだー!」
なんてことないただのお菓子
歌うのが大好きな千早お姉ちゃんにぴったりのマイクのおもちゃ付きのガム
「一緒に歌お?千早お姉ちゃん!!」
「……そう……そうね、ありがとう」
目にちょっとだけ涙をためた千早お姉ちゃんは、にっこり笑っておもちゃといっしょに抱きしめてくれて
暖かくてとっても安心した
その後は一緒に歌ったり、お菓子を食べたり、本当のお姉ちゃんが出来たみたいで嬉しかった
気まずくなっても自然に仲直りするってこういう事なんだね!!
「今日はやっぱり帰ろうかな」
「そう、ちゃんと仲直り出来る?」
「んっふっふー!らくしょーだYO!!」
「それなら明日は二人揃って事務所に来れるわね」
「んもー!あずさお姉ちゃんと同じ事言ってー!!
……また遊びに来てもいい?」
「勿論、亜美も真美も私にとっては妹みたいなものだもの。
でも本当、今日みたいな悪戯は感心しないわね」
「鼻メガネ?」
「そっちじゃないわ」
「うあうあー!気づいてたの!?千早お姉ちゃんの意地悪ー!!!」
くすくすと笑みを浮かべた千早お姉ちゃんを思い出しながら見慣れたドアを開けると見慣れた顔が立ってて
「おかえり、何処行ってたのさー」
「千早お姉ちゃん家……」
「ふーん」
「うん……あのさ」
「「昨日はごめんね」」
「「……あははは!」」
「おかえりー!!!」
「うん、ただいま!亜美!!!」
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