2014-11-29 07:47:04 更新

概要

『上条「いちゃいちゃイマジンブレイカー?」前編』の続きです。

前編はこちら、
http://sstokosokuho.com/ss/read/350


前書き

・中編のテーマは『友情』と『王子様』です。
・ちなみに、中編からはアプリの存在感が薄れちゃってます…。
・男性キャラが大きくキャラ変していきます。方向性としては、『彼らが人殺しの過去を持たずに、上条さん達と一緒に普通の青春を送ってたら』というイメージです。キャラ変が引き起こった理由は、一応後編で説明してあります。
・全体的にHOネタが結構出てきます。途中からの男性陣のテンション自体もHOを参考にしたつもりですが、下ネタを極力抑えてしまったので、かなり中途半端感が…。どちらかと言うと、某海賊漫画風になっちゃってる気がします…。
・トールのキャラをHOのヘイヴィアに近づけてます。人によっては、いやそこはクウェンサーだろ、って思う人がいると思いますが、悪しからず。
・原作ではまだ詳しく説明されていないトールの霊装を、都合良く自己解釈しちゃってます。
・インちゃんがちょっとチートじみてる感があります…。
・上条さんが、主に超電磁砲で活躍する彼女らにフラグを立てちゃいます。
・番外通行のやり取りもありますが、色々とちょっと自信がないです…。


(上条サイド、1分前)


上条「!!見つけた、あそこだ!」


オティヌス「!!不味いぞ。トールのやつ『全能神』と『雷神』の組み合わせで第一位を殺そうとしてるようだ!!


上条「!!」


オティヌス「もう腕を振り上げてる!すぐにでも実行されるぞ!!」


禁書「…ごめん、とうま…。この距離からだと、私の対策も届かないかも!」


上条「(…クソっ…何か方法はねえのか!?……!…あれだ!!)…美琴!!!!!」


美琴「!!」


その時上条は一方通行達の元ではなく、近くのベンチへと向かった。それを見た美琴は一瞬で上条の意図を理解し、膨大な磁力を操って、上条が飛び乗ったベンチを一方通行達の元へと投げ飛ばした。そして上条は二人の間に割り込むようにベンチから飛び降りた。



美琴「(…私が投げ飛ばしといて言うのもなんだけど、着地をした時にそれなりに自分にもダメージがあるはずなのにね…。

…本当どうしようもない馬鹿なんだから…)」


(土御門サイド)


土御門「おうおうやってる、やってる。…さっきは素晴らしいプレゼントどうもありがとうカミやん。お礼はたっぷりとさせて貰うぜい」


土御門が用意したのは蜻蛉型の小型高性能カメラ。これを操車場へと飛ばし、その映像を学園都市中に放送させるためである。名目は、『イマジンブレイカーらしき人物の活躍』。


土御門「カミやんのおかげで青髮ピアスにいきなり背後から頭を殴られたからにゃー。…っていうか、あの馬鹿どういう神経してやがるんだ!?しかも舞夏といちゃいちゃしてる時にぜよ!!この恨みはたっぷりと晴らさせて貰うからにゃー!…この土御門さんてば、執念深いんだぜい?」


(食蜂サイド)


食蜂「(あのフィアンマって奴のおかげで私達はすることがなくなっちゃったわぁ。)……って…あれは…?」


食蜂の視線の先には大型モニターに映る上条達の姿があった


食蜂「(…イマジンブレイカーらしき人物の活躍…ねぇ。誰がこんなことしてくれたのかは知らないけどぉ、良い仕事してくれるじゃない☆)」



(上条サイド、現在)


トール「オイオイ、上条ちゃんよー。こいつは俺とそこの第一位とのケンカなんだぜ?そこに割り込むっていうのは随分と無粋じゃないかい?」


上条「俺は代打だよ、代打。そこにいる俺の『友人』は怪我してこれ以上は無理なんだ。だけど、野球でもサッカーでも、一人が怪我しただけで試合終了にはならない。誰かが代わりに入って試合は続行される。それと同じだよ。


一方通行「!」


トール「…なるほど。それで上条ちゃんはこれをあくまでスポーツの範疇で捉えてる訳か。…だけど、残念ながらもうこの戦いはその域を超えている。勝者である俺はこいつを殺さなきゃ気が済まねえんだよ」


上条「…なら勝手に殺せよ」


トール「…は?」


上条「…ただし、それはテメェが俺に勝ったらの話だ!!それまではこいつに一切手は出させねえ!!」


一方通行「!」


トール「…」


上条「さあどうする?そいつを殺さなきゃ気が済まねえんだろ?」


トール「ははは。あはははははははは。面白え、やっぱアンタすげえ面白えよ!!!俺の『全能』の力を理解した上で俺にケンカを売るなんてよ!!」


上条「…」


トール「だけど、こうして世界を何度も救ったヒーロー様にケンカ売ってもらえたんだ。戦闘マニアとしては買わねえ訳にはいかねえ。今回はアンタと戦うつもりはなかったけど、喜んで相手させて貰うぜ」


上条「…へっ、そうこなくちゃ!」


トール「だけど、そっちはまだ準備運動も終わらせてねえだろ?それなら『雷神』トールさんが付き合ってやるよ」


上条「悪りいな」


トール「そりゃ相手はVIP様だからな。それなりにお持て成しさせて貰うよ。

……『投擲の槌』! 接続の最終確認、終了次第供給開始!!」


直後トールの十指から、200メートルにも及ぶ溶断ブレードが伸びた。


トール「さっき折れた左手も、第一位をボコボコにしながら治させて貰った。今は十分アンタの準備運動に役に立つと思うぜ?」


上条「…そうか。なら心置きなくやりあえそうだな」


そう言うと、まるで覚悟を決めたのかのように、上条は思いっきり右拳を握り締めた。


トール「…だけど、まだ一つ気になる問題がある」


上条「!」


トール「…それはアンタの後ろにいる第一位だ。…確かに俺はどうしてもそいつを殺さなきゃ気が済まねえ。だが俺とアンタの戦いに巻き込んで、殺してしまうってのはお互いに後味が悪過ぎるだろう」


上条「…その点なら心配ねえよ」


トール「なんだと?」


その時一つの人影が一方通行の元へと近づいていた。




一方通行「…なンの真似だァ…?」


美琴「…ご褒美よ…」


一方通行「…あン?」


美琴「アンタが今まで私や当麻の代わりに妹達を守ってくれたご褒美に、今は私がアンタを守ってやるって言ってんの!!」


一方通行「!!…チッ。勝手にしやがれェ…」




トール「…なるほどねえ。だが、果たして第三位に俺のブレードから第一位を守り切れる実力があるのかね?」


上条「そいつは大丈夫だ。あいつはこういうことに関しては、俺が最も信頼してる存在だからな」


トール「よせやい。まさかこんな状況でリア充自慢されるとは思ってもみなかったぜ」





美琴「…えへへ、最も信頼してるだって///」


一方通行「…オイ」


トール「…まあいいや。それなら俺もミコっちゃんを信じてみようかねえ!!!」


上条「!!」


直後、雷神トールは左右の溶断ブレードを交互に振り下ろした。上条はまず先に来た右手のブレードを体を捻って回避し、続けてきた左手のブレードを、自身の右手で、アッパーカットの要領で受け流した。そこで、ギィンと甲高い音が操車場に響き渡った。

また、トールは常に外部からエネルギーを供給しているため、ブレードを幻想殺しで打ち消すことはできなかったものの、弾くことには成功していた。


上条「(…チッ!たった一発弾くだけで右手がミシミシ言いやがる!!)」


そして、上条が回避したブレードはそのまま美琴達に襲いかかったが、美琴も、10億ボルトにも及ぶ高圧電流を駆使してブレードを弾きつつ、辛うじて安全地帯を作ることに成功していた。


トール「ヒュー♪。やっぱその右手はすげえな。打ち消すのも掴むのも弾くのもお手の物ってか。…まあ右手の質よりもそれを最大限に使いこなすアンタの方を褒めるべきと言ったところか…」


上条「そっちも相変わらずすげえエネルギーのブレードを使ってやがる。弾く度に腕が悲鳴をあげているのを否めねえ…」


トール「そりゃまあ、あの馬鹿でけえ『ラジオゾンデ要塞』を、たった一撃で三分の一くれえ吹き飛ばすような火力を持つ『投擲の槌』と接続してるんだ。むしろ俺は、アンタの後ろのお嬢ちゃんが平然と受け流したことに驚きだよ」


美琴「(…痛ったぁ。何が『平然と』よ…。冗談じゃないわよ!こちとらかなり力を出して辛うじて受け流してる状態なんだってば!…っていうか、こいつどんだけのエネルギーを使ってんのよ…!?)」


トールはそこで、吹っ切れたような表情をした。


トール「…さてと、無事にミコっちゃんの実力が証明された訳だし、心置き無く続きと行こうじゃねえか!」


そこでトールは、両足から溶断ブレードを噴出して空気を膨張させ、その際に生じた爆発力を利用して大きく飛び上がり、今度は左右同時にブレードを振り下ろした。しかし、上条はまるでそれを先読みしたが如く、左側へと飛び込むような形で右手のブレード間の隙間へと回避し、左手のブレードは幻想殺しを用いて弾いた。


トール「(『前兆の感知』って奴か…。前から思ってたけど、なかなか厄介な能力だねえ。他の奴のそれに比べても、上条ちゃんのは精度が段違いだぜ。これについては詳しく推し量る必要があるかもしれねえな)」


トールは続け様に何度も溶断ブレードを振り下ろした。その度に振り下ろす方向やタイミングなどをアレンジしたものの、毎回まるで示し合わせたかのように、上条に対処されてしまった。

しかし、トールはその途中で、ある違和感に気づく。


トール「(!!…こいつ、まさか!?)」


トールは何かを試すようにブレードの振り下ろし方を変えた。それは、『左手側のブレードは避けられても、右手側のブレードは絶対に避けきれない』ように意図したものであった。


上条「!!くっ…!?」


それでも上条は、左手側のブレードを幻想殺しで弾きつつ、右手側は何とか回避しようとした。しかし、回避しきれずに上条の右頬と右肩を、ブレードが掠めてしまった。そこから赤い液体が、外へと勢い良く流れていくのがはっきりと確認できた。


美琴「!!大丈夫、当麻!!?」


上条「…心配ねえよ。こんなの擦り傷だ」


上条はそこで美琴へと軽く笑みを浮かべた。まるで、自分の心配はいらねえよ、と言うが如く…。


美琴「…馬鹿」


そして、それを試したトールは、とあることを確信していた。


トール「………やっぱ、そうか…」


上条「!」


美琴「?」


一方通行「…チッ」


トール「なあ、ミコっちゃん。上条ちゃんの受け流し方に関して一つ気づくことがない?

…もっともアンタは俺の攻撃を受け流すのに必死だったから、それどころじゃなかったかもしれねえが…」


美琴「…はあ?」


トール「…上条ちゃんは毎回俺の右手のブレードは回避し、左手のブレードは幻想殺しを使って受け流していた。全てそのパターンだった。…その意味は分かるよな?」


美琴「!!…もしかして、私がアンタのブレードに少しでも対応しやすくするため……?」


上条「…」


トール「そういうこと」


美琴「…だったら、私に遠慮しないで当麻!!私なら平気だから!!」


一方通行「…それは無理だなァ…」


美琴「!!な、なんでよ!?」


一方通行「恐らく今のあいつは『前兆の感知』能力を駆使してブレードに対応してる。だけど、それはあいつが無意識に活用してる能力なンだよ。つまり、無理にそれを意識しよォと思うと精度が落ちちまう筈なンだ」


トール「…つまり、上条ちゃんは『前兆の感知』を使って、無意識のうちにミコっちゃんを傷つけないですむ最適解の行動を導いていたのさ」


美琴「…な…」


トール「相手の異能力使用時の微細な前兆をキャッチして行動を先読みしつつ、無意識のうちにテメェの身の安全よりも仲間の命を優先させる…。上条当麻の『前兆の感知』能力ってのは、既にこのレベルまでに達しているんだよ。あまりにも神懸かり過ぎてて、思わず笑っちまうくれえになあ!」


美琴「…当麻…」


上条「…」


トール「…だけど、やっぱり上条ちゃんは、まだそいつらのことを心配して力を出し切れてねえ、ってのは素直に減点だよなあ。俺もそれに気づいちまったからにはこのまま続けるのに気が進まねえし…」


上条「!」




一方通行「…それについてはオマエらが心配する必要は、もォねェと思うぜェ?」


上条&美琴&トール「!?」


そう言って、ゆっくりと立ち上がった一方通行は、何かを訴えるかのように力強く上条へと視線を合わせた。その直後、彼の背中から巨大な純白の翼が現れた。


トール「…どういうことだ?アンタのチョーカーは、とっくに戦闘続行できる分のバッテリー残量は残ってなかった筈だが?」


一方通行「…何処かの馬鹿が、俺を守りつつチョーカーの充電もこなすとかいう、くだらねェ真似をしやがったからなァ」


美琴「…ふん」


トール「…ふーん。それじゃあ、これでお互いに本当の意味で、心置きなくやりあえるみてえだな」


しかし、上条はボロボロの一方通行を心配していた。


上条「お前、急に立ち上がったけど、怪我とかは大丈夫なのかよ!?」


一方通行「余計なお世話だ。なンも問題ねェよ」


上条「!!…そうか」


上条はひと安心した表情を一瞬浮かべた後、思いっきり右拳を握りしめた。


上条「…なら、美琴を頼めるか?」



一方通行「任せろ」


一方通行の短い言葉を聞いた直後、上条は凄まじい勢いでトールの元へと駆け出した。トールはそれに応えるように溶断ブレードを振り下ろした。だが、


トール「(!!…こいつ!!!?)」


上条は右手を使うことなくブレードとブレードの僅かな隙間を掻い潜るように、トールの元へと突っ込んでいった。そのあまりの精密さ故に、それは上条が回避したというよりも、トールが上条を傷つけないように溶断ブレードを振り下ろしたようにさえ見えた。

また、上条は両手のブレードを幻想殺しで弾くことなく避けたため、両方共、一方通行達を襲ったが、一方通行が白い翼を使って難なく対応した。


上条「…うォォおおおおおおおおお!!」


トールの眼前へと一気に辿り着いた上条は、そのまま右拳でトールの顔面を捉えようとした。


トール「!!…チィ!!」


トールはそれを体を無理やり捻って回避した。だが、


上条「甘えよ!!」


上条はそれを読んでたと言わんばかりに、続け様に右足でトールの腹を思いっきり蹴りあげた。それを受けたトールは一旦上条との距離を置くため、10メートル程後方へ退いた。


トール「…が…ぐああぁぁぁあ。(…こいつ!異能の関係ねえケンカのセンスもずば抜けてやがる!!!)」


上条「へっ。俺の攻撃手段が右ストレートだけだって思い込むのは大間違いなんだよ!!」


トール「…くそったれめ。しかもさっきは俺の攻撃を完璧に回避した訳じゃねえだろ?致命傷を回避しつつ多少のダメージは受けても、最短で俺の元に突っ込めるような最適解で来やがった。…どうやらまだ俺はアンタの『前兆の感知』を正確に推し量れていなかったみてえだな…」


上条「こちとら一応、魔神オティヌスの大爆発だって回避に成功してるんだ。今度の場合でも同じだよ。何度も同じ攻撃を食らい続ければ、最適解くらい思い付くさ」


トール「ハッ。何もかもが一ヶ月前のデータに比べて成長してるってことか!」


上条「それが良いことなのかそうでもないのかはさておき、そう成長させてくれたのはアンタらのおかげだよ」


トール「…膨大な圧を持った異能に対する幻想殺しの使い方。経験則に基づく『前兆の感知』能力。あるいはそれらを使いこなす本人の力量…。その全てが以前とは比べ物にならないほど洗練されてやがる。…もっとも、『奥に隠れすむモノ』ってのは今だに詳細が掴めてねえがな。…確かこの学園都市内においては、『八つの頭を持った竜』が観測されたんだっけか。まあ実際ははっきり言って良く分かんねえけど」


美琴「(あの時の…)」


トール「ただ一つ言えるのは、上条当麻ってのは、特に分かりやすい力を持ってる訳でもねえのに、『たった一人』でとんでもねえ戦果をあげ得る可能性を秘めてるってことだ。どんな形であれ『全能神』トールを一度退けるくらいにな。…どうだ、違うか?」


上条「…違うな」


トール「…!…なんだと…?」


上条「それが今の俺の本質だと思ってるのならとんでもねえ間違いだ。はっきり言ってデータが古過ぎる。野球のゲームで例えるなら、お前が持ってるデータってのは、とあるチームで先発ローテをずっと任されている投手が、まだ一軍の試合に登板したことすらない時代に査定されたデータみたいなモンだよ」


トール「…何が言いてえ?」


上条「…要は今の俺の本質は別のところにあるってことだ」


トール「!」


上条「…断言してやるよ。それが分からねえ限りテメェは俺には勝てねえ。例え、お前が『雷神』だろうと『全能神』であろうとな」


トール「…は…?はは、はははははははははは!!何を言い出すかと思ったら、『全能神』としての俺でもテメェには勝てねえって?」


上条「…その通りだよ」


トール「…おいおい、確かに俺はデンマークの時に『全能』を突破されちまったけど、その時は『雷神』としての力を一切使ってなかったんだぜ?要は俺は本気を出してなかった訳だ」


上条「…」


トール「それだけじゃねえ。その時の『全能』を突破した方法も再び通用すると思うんじゃねえよ。少なくともアンタと戦ってる時には、あの列車のようなイレギュラーな存在に必要以上に注意を払うつもりだ。前みたいに都合良くいくとは思わねえ方がいい。

…それでもまだ、俺はテメェに勝てねえ、とかほざくつもりか?」


上条「ああ、そうだ」


トール「…マジで言ってんのかよ…」


上条「…それに、さっきのやり取りで良く分かった筈だ。少なくとも『雷神』のままだと今の俺にはまともな攻撃を当てられねえって。『前兆の感知』だか何だか知らねえけど、今の俺なら『雷神』のお前との戦闘では、常に最適解を見出せる自信がある」


トール「まあそうだろうな。それについては、否定するつもりは全くねえよ」


上条「なら本気で来いよトール。『雷神』でなく、『全能神』としてな。そうしたら俺の本当の強さって奴を見せてやる!」


上条は自信ありげに、トールを挑発していた。だから、


トール「………面白え。やっぱアンタと戦うのは最高に面白えよ!!」


直後トールの両手から溶断ブレードが消え、普段の彼の様子へと戻った。


トール「両者の絡め技ってのもあるけど、まずは『全能神』だけで相手してやる。

…さーて上条当麻。お前は今度はどんな方法で俺の『全能』を突破するつもりなのか、この眼でしかと拝見させて貰うぜ!」


上条「いいぜ、見せてやるよ。…ところで、今度は俺から攻撃してもいいか?」


トール「いつでも来いよ。それなら『全能神』による、無慈悲なカウンターって奴をお見舞いしてやるぜ!」


上条「サンキュー。なら遠慮なく行かせて貰うぜ!!」


上条は再び右拳を握り締め、全力で全能神トールの元へと駆け出した。一方トールは特に防御の構えをすることなく、まるで相手を受け入れるかのように両手を広げていた。何故ならば、上条の拳がトールに当たる直前に、世界そのものを自動的にトールにとって都合の良いように変動させられるからだ。


トール「(…見たところ特に何の対策もしてねえ様に見えるが、果たして今回は俺にどんな経験値を与えてくれるのか楽しみだぜ!)」


しかし、トールが当たり前のように『全能』の力を振るおうとしたその時、



全く予想だにしてなかった展開が起きた。



トール「……は…?」


トールが我を取り戻すと、自身の鼻から血が垂れていたのに気がついた。戸惑いを隠せなかったトールであったが、その痛みから徐々に事態の把握ができるようになっていた。


上条当麻に殴られていた。


それを改めて認識すると、明確に現実に引き戻された感覚がした。


トール「…な、何だよこれ…?どういうことなんだよおおおおおおおおおお!!!!!」


上条「…待っていた。俺はずっとこの時を待っていた」


トール「…な……に…?」


上条「俺はお前が『全能神』の力を使うのをずっと待っていたのさ」


トール「な…ん…だと?」


驚愕の表情を浮かべていたトールとは対照的に、上条は獰猛な笑みを浮かべていた。


トール「て…め、一体何をしやがった!!?何故俺は『全能神』の力を使うことができねえんだよおおおお!!!」


上条「残念だけど、それだけじゃねえぜ?トールさんよ」


トール「…まさか…」


トールは右手から溶断ブレードを噴出ささようとした。しかし何も変化がおこらなかった。『当たり前の様にできていたこと』が、できなくなっていた。


トール「…『全能神』だけじゃねえ。『雷神』の力も使えなくなってやがる。どういうことなんだよ一体!?

………学園都市に幻想殺し…。まさかテメェ、幻想殺しの真の力とやらを既に見出していたってのか!?」


上条「…幻想殺しの真の力…?以前も『左方のテッラ』に言われたことあるけど、俺はそんなもん知らねえよ。恥ずかしながら俺が幻想殺しについて知ってるのは、この右手は『世界の基準点』としての役割を持つことくれえだよ。だけどそれに関してはアンタも調査済みだろ?」


トール「…なら何故俺は急に魔術を使えなくなったんだよ!?突然『あなたは魔術を使えなくなりましたよ』って言われて納得できる訳がねえだろうが!」


上条「…俺は何もしてねえよ。俺はな…」


トール「…は?…それは一体…?」











オティヌス「…『ヨルムンガンド』…」


トール「!!…この声は…まさか!?」


トールは声の発信源である、自身の後方へと目を向けた。そこには頭の上に人形サイズの『魔神』を載せ、何やら不気味な言葉をひたすら紡ぎ合わせていた、白い修道女がコンテナの影から現れた。その少女は何かを歌っているようにも思えた。


オティヌス「…北欧神話のNo.2を司るお前がこの単語を知らない訳がないよな?」


トール「…」


オティヌス「北欧神話における『最終戦争』ラグナロク。その戦争の際、戦神トールはミョルニルを振って、大蛇ヨルムンガンドに致命傷を与えることに成功した。しかし、話はそのままハッピーエンドとは行かなかった。何故ならばトールはヨルムンガンドの毒に犯されていたからな…。その毒によってトールは死を迎え、結果的には、トールとヨルムンガンドは相討ちという形になった」


トール「…」


オティヌス「そこまではお前にとって、『コインには表と裏がある』というレベルの常識でしかないだろう。つまり、お前にとっての問題はその先にあるのではないか?」


トール「…オイオイ、まさか…」


オティヌス「そう。言ってしまえばこの場…いや、私の下で今も歌っている、魔導図書館の『声』の有効範囲において、ヨルムンガンドの毒が蔓延しているといった状況なのだよ」


トール「…ありえねえよ…。仮にアンタの言ってる通りならば、俺達が今も五体満足でいられる訳がねえだろうが!!」


オティヌス「…確かにヨルムンガンドの毒は猛毒だ。当然、トール相手でなくとも、多くの民や神を死へと誘う程強力なものである。仮にその毒そのものを蔓延させていたら、お前だけでなく、幻想殺しなどにも致命的なダメージを与えてしまっていただろうな。

…だから今回は色々制限を加えてある」


トール「!」


オティヌス「…まず、この毒が及ぼす影響を他者の死ではなく、トールから神としての力を奪うことに限定している。トールの死とは言い換えれば、正にそいつから力を奪うことを指し示すからな」


トール「…」


オティヌス「また、お前から力を奪うためのトリガーとなるものは大凡神話通りだ。一つはトールが戦闘においてミョルニルを使用すること。もう一つは、毒に犯されたトールが9歩後退すること。これはお前がさっき、そこの人間に腹を蹴られた時に満たしている。そして、お前の全ての力を奪うためには、毒の範囲内において『雷神』と『全能神』の力両方を、最低一回は切り替えて貰う必要があった」


トール「…なるほど。だからさっき上条ちゃんは、俺が『全能神』の力を使うのを待っていた、って言っていたのか」


オティヌス「そういうことだ。…冷静になって考えてみたら、この戦いは最初から不自然な点が多く見られた筈だったろうに。何故普段は望まぬ戦いを極力避けようとする人間が、お前との戦いを自ら望んだのか?何故誰かの犠牲を強く嫌うそいつが、結果的に第一位や第三位を巻き込む形を狙ったのか?」


トール「…全ては俺に、自分ともう一つの方向へと意識を集中させて、禁書目録の存在を悟られないようにし、かつヨルムンガンドの毒の使用条件を満たすため…?」


オティヌス「ご明察。だが、この毒は一時的なものでしかない。お前が禁書目録の『声』の有効範囲から離れて、ある程度時間が経てばまた魔術を使えるようになる。どうだ、少しは安心したか?」


トール「…」


オティヌス「…ふむ。どうやらまだ納得して頂けないようだな。

…まあそれも当然だろう。恐らくお前にとって私の説明には、根本的な矛盾があるように思える筈だからな…」


トール「…禁書目録に魔力を用いた魔術を使用することはできない…。

…少なくとも俺の持ってるデータではそう記されていた筈なんだけど…?」


オティヌス「お前の言う通りだよ、トール。こいつは魔力を精製することが今もできない」


トール「…まさか、魔力を使わずにヨルムンガンドの毒を再現したとか言うんじゃねえだろうな?」


オティヌス「…そのまさかなんだよ」


トール「!!」


オティヌス「私もこいつの過去を洗いざらい調査し直すまで気づきもしなかったのだが、この禁書目録はこっち側、つまり科学サイドにてとある進化を遂げている。まさに、この学園都市でしかなしえない進化だったかもしれんな」


トール「とある進化?」


オティヌス「…それは『歌』だよ」


トール「!!歌、だと?」


オティヌス「こいつは自分の歌に、様々なパラメータを入力して、それを外部に出力できる力を所有していたようだ。今回もそれと同じこと。要はヨルムンガンドの毒に関する知識から、トールから力を奪うために必要なパラメータを取り出し、それを歌と言う形で表現しているだけに過ぎない。だけど、それは魔力抜きで行うのは非常に困難な筈だ…」


トール「…にも関わらず、それをこいつは実行していると…。…なるほどただ上条ちゃんに守られてただけじゃなく、こいつも上条ちゃんと同じくらいの特異性を獲得していたってことか」


オティヌス「結局『歌』ってのは魔術、あるいは科学のどちら側に分類されるのだろうな。儀式における神々に贈る神聖な歌というのもあれば、コンサートやライブで多くの聴衆を熱狂させる激しい歌もある。あるいは親が子を寝かしつける時の子守歌だって立派な歌だ。科学でも魔術でも明確に説明できないモノ。その用途によって、他者に与える影響は驚く程大きく変わってくる不思議な事象だ」


トール「…」


上条「…『奇蹟』って奴さ」


一同「!」


上条「きっと今のインデックスの歌には『奇蹟』に近い、何かの力が宿ってるんだよ。かつて、俺達の友達が成し遂げたように…」


白い修道女は歌いながら、まるで誰かに祈るようなポージングをとった。


禁書「(…ありさが教えてくれたんだよ。歌は誰かを救える『奇蹟』を引き起こすんだって。だから私の歌で、ここにいる人達や、あの巨大なカブトムシ達と戦ってくれている人達を、みんな救ってみせる!)」


それに応えたが如く、上条の制服のポケットに入ってたカブトムシ型のキーホルダーが、小刻みに振動した。


カブトムシ『ファイブオーバーのネットワークへのハッキングに無事成功しました。現状全ての個体が私の管理下に置かれています。だから黒幕に再び乗っ取られる心配はありません。こちらの問題に関しては、無事解決したと見て大丈夫です』


トール「…な…!?」


上条「…これで良く分かっただろトール。これが今の俺の本質なんだよ」


トール「!」


上条「確かに俺は、今まで人の身に余る戦果を生み出してきたかもしれない。基本的な身体能力は並程度しかねえんだし、あらゆる異能を打ち消す能力って言ったって、所詮有効範囲は右手首から先までしかねえもんな。だけど、自惚れかもしれねえが、そんな俺の力で救われた存在ってのは少なくねえはずだ。ならばお前の言う通り、俺には俺自身の力を、期待値以上に使いこなす素質があるのかもしれない…」


トール「…」


上条「だけどそれだけじゃないんだよ。はっきり言って、俺には活躍できる場ってのは限られてる。そこに辿り着く前には、俺の力が何の役にも立たない奴と対時しなきゃなんねえ時だって沢山あった。今回のファイブオーバーもそうだったしな」


トール「…」


上条「…でも俺はこんなところで立ち止まる訳にはいかない…。そう思った時いつも誰かが俺を助けに来てくれるんだよ。しかもそれは俺と親しい存在ばかりでもないんだ。それは知り合いの知り合いでしかない関係だったり、昨日まで敵だと思ってた奴だったり、何の前触れもなく知り合った奴だったり、俺のことをあまり良く思ってない奴だったり、俺が名前も顔も覚えてなかったような過去の知り合いもいる」


一同「…」


上条「そいつらは別に全員が、俺を助けに来てくれた訳でもないってことも良く分かってる。各々の目的のために、結果的に俺を助ける形になった奴がいることも重々承知してる。だけど、どんな理由であれ、そいつら全員が俺にやるべきことを導いてくれるんだよ。…ここは自分達がなんとかするから、お前は先に進んで自分のやるべきことをやれ…ってな」


トール「…」


上条「要は、俺が幻想殺しや『前兆の感知』やらなんやらを最大限に活用して戦果を生み出してるんじゃなくて、みんなが俺という存在を最大限活躍できるように、場を整えてくれるんだよ」


トール「!」


上条「…かつて俺は、お前達が知らない歴史上で、魔神オティヌス相手にたった一人で何度も挑戦した。だけど結果は散々だった。挑戦した回数なんてものは万単位なのか億単位なのかも覚えてねえ程だ。それでも俺一人の力では、たった一度でも勝つことはできなかった」


オティヌス「…ふん」


上条「そんな俺でも、魔神のくれたチャンスを活かしてこっちの世界に戻って来てからは、その魔神を救うことにさえ成功できた。かつて俺を絶命させた『弩』を突破する形でな」


トール「…」


上条「そう。俺は一人じゃ何にもできねえちっぽけな人間だけど、仲間がいれば何でもできる。今の俺はそう確信している。それが魔神との余りにも長過ぎる戦いで見出した、俺の本当の強さって奴さ」


トール「…」


上条「個としての強さを常に磨き続けてきたお前にとっては、皆の力を常に借りている俺の強さって奴は、卑怯だとか邪道に思えるかもしれない。俺は大して役に立ってないのに、偉そうにするな!って罵ってくれても構わない。だけど、そもそも俺とお前は、最終目標が根本的に違うんだよ。戦いに勝つことなんて、俺にとっては手段の一つでしかない。俺が勝てないと思った相手に対しては、戦闘じゃなくて交渉という形で俺の望みを叶えようとする。そんな俺にとっての最終目標は、徹頭徹尾『何ひとつ失う事なくみんな笑って帰る』ことなんだ。だから俺の勝利ってのは、誰一人死なせずに日常に帰ることなんだよ」


トール「…いや、とてもじゃねえが卑怯だなんて言えねえよ。アンタの強さって奴は寧ろどこか美しい」


その時トールは、素直に上条の『強さ』というものを認めていた。


美琴「…だからさっきアンタに言ったじゃない。この街で当麻の気に食わないことをすれば、当麻はそいつの幻想なんて一瞬でぶっ壊しに来るわよって」


トール「!」


美琴「アンタは当麻をあのバケモノ達で足止めするつもりだったんだろうけど、そんなことは無理に決まってんのよ!この学園都市、いや世界中には当麻によって命を救われた女の子ってのはいっぱいいるの。それこそあのアプリが多くの女の子に支持されてるんだもの。当然でしょ?」


トール「…」


美琴「そんな女の子達は当麻に救われて元の生活に戻ることができたけど、それだけでは終われないのよ。当麻が困ってたら力になりたい!…みんなそう思ってる筈なの。かつて当麻が私達を救ってくれたんだから、同じ様に私達が当麻を救っても何の問題もないでしょう?だから当麻一人を足止めしようとしても無駄。足止めしたかったら、当麻に救われた人間全てを足止めする覚悟でやりなさい!」


トール「…」


オティヌス「…ある意味でこの人間に挑戦することは、すなわちこの世界に挑戦することに等しいのかもしれんな」


トール「…かもな」


トールは思わず空を見上げていた。それを見たオティヌスは今がその時だと言わんばかりに、


オティヌス「…さて人間。これでお前が活躍するための条件は全て整った。あとはお前の好きにしろ。…何だったら別の誰かがお前の代わりをやってくれるかもしれんぞ?」


その発言はまるで、神が人間に試練を与えるかのようであった。さも答えを知っているのにも関わらず、あえて逃げ場を作らせないように口に出す。それは少年を鼓舞させる儀式のようでもあった。


上条「…いや必要ねえ。せっかくみんなが俺を信用してくれてこの場を譲ってくれたんだ。俺はこのケンカを誰かに譲るつもりなんか更々ねえよ!!こっからが俺の本当のケンカなんだ!!!」


トール「!!」


上条「…さて、トール。今のテメェは何なんだ?『雷神』でもねえし『全能神』でもねえ。さしづめ、『喧嘩屋』と言ったところか…」


トール「!」


上条「そして俺の幻想殺しも異能が関わらなければ、なんの変哲もねえただの右手に過ぎない。…だから…だからここから先は…」


そういうと上条は今までで一番力強く右拳を握りしめた。まるでここからが本番であるかと訴えるように。


上条「魔術だとか超能力とかそんな訳の分からねえモンなんか頼らずに、お互いが納得するまで拳と拳の勝負といこうじゃねえか!!」


上条は握りしめた拳を目の前に突き出した。


上条「…俺は…いや、『俺達』は絶対に負けねえぞ!!だから、テメェもマジになってかかって来い!!」


そして、目の前にいる『好敵手』を鋭い目つきで睨みつけた。トールもそれに応えるような形で一言告げた。


トール「…へっ。いいだろう、俺だって何度もテメェの魔術が役に立たねえ修羅場をくぐって来た身だ。だから単純な身体能力だってそこそこある筈。ならお望み通りこの『喧嘩屋』が相手してやるよ!!」


トールは自身も右手を握りしめ、それを突き出された上条の拳へと軽くくっつけた。それは正に信念と信念をぶつけ合うための儀式のようであった。


上条「…覚悟は」


トール「いいな…?」


直後、二つの原始的な鈍い音とともに、異能の力に何も頼らない二人の戦いが始まった。





(食蜂サイド)


白井「(どうやらあの化け物は完全に動作を停止した様ですわね…。これで一安心と言ったところでしょうか…)…それにしましても…」チラッ


食蜂「///」にへー


白井「(あのいけ好かない常盤台の女王が、幸せそうにモニターに食いついてますの。…もしかして彼女もあの類人猿に誑かされてますの!?まったく、あの類人猿の何処がいいんだか…)」


食蜂「相変わらず格好いいわぁ。当麻の必死に戦う姿を見てるだけで胸がキュンキュンしちゃう。…ただ、必死に御坂さんを庇ってるのとかぁ、金髪ロン毛のイケメンちゃんやお人形さん(?)が何を言っているのか良く分かんなかったのが、少し不快力が高いけどぉ…」


蜜蟻「結局彼は記憶喪失であろうとなかろうとあんな感じなのねえ」


食蜂「そうみたいねぇ。常に自分よりも他人を優先してしまう。口に出すのは簡単だけどそれを実行するのは非常に困難なこと。その積み重ねで多くの人間を救ってきたんだものぉ、当麻を慕う人が多いのも頷けるわぁ」


フィアンマ「…当たり前だ。俺様の体に今も宿ってる右手の本来の持ち主が、取るに足らん存在である筈がない。あいつはこの世界でも3本の指に入りかねん程の特殊性を秘めているのだからな」


食蜂「い、いきなり話かけないでよぉ!!びっくりしちゃったじゃないの!!

…っていうかぁ、何よぉさっきの話?もしかしてあなたの体に当麻の何かが宿ってるとか言うんじゃないでしょうねぇ?」


フィアンマ「…だとすれば何だと言うのだ?」


食蜂「はっきり言って気色力が悪過ぎるのよぉ。平たく言うと、マジでキモいわぁ。当麻をそっちの世界に興味を持たせようとするのは流石に私も黙ってないわよぉ?」


フィアンマ「(ほ、本当のことだと言えん。

…何故だろうか、『神の右席』として多くの魔術師に恐れられ続けた俺様の目から涙が出てきそうだ…)」ショボーン


白井「(…今の話は決して初春にしてはなりませんわね。…ところで、婚后一派はどうしたのやら?)」チラッ


婚后「///」ポー


湾内「こ、この殿方がかの名高いイマジンブレイカー様でございましょうか///」


泡浮「わ、わたくし達は普段殿方と接する機会がありませんから、殿方というものを良く存じませんけれど、それでもこの殿方の頼もしさというものがひしひしと伝わってきますわ///」


湾内「あの御坂様もかなり信頼を寄せてらっしゃるご様子でしたわね」


泡浮「あのアプリのデータが正しければ、あの殿方は淑女の危機に必ず駆けつけて、その御命を必ず救ってくださる様ですわ。恐らく御坂様も同じようにあの殿方に救って頂いたのでしょう」


湾内「それはまるで、白馬に乗って淑女の危機に駆けつけてくださる王子様のようですわね。素敵なお話ですわぁ。……あら?…婚后さん?どうなさいましたか?」


婚后「…あの…殿方が…王子様?……婚后光子の王子様……?」ブツブツ


泡浮「だ、大丈夫ですの?」


婚后「…今確かに決心致しました…。あの殿方は何がなんでもわたくしのか、彼氏にして差し上げますわ!!」


湾内&泡浮「ええ!?」


白井「(…まさか婚后光子まで類人猿の毒牙にやられてしまうとは…。どうやら『学舎の園』で例のアプリが流行っているという噂は本当だった様ですわね…。わたくし以外の常盤台生オールコンプリート☆…とかならないことを祈りますわ…)」


食蜂「(あらあら、いつの間にかライバルができてしまった様ねぇ。まあ最悪、私の力で当麻への想いを消しちゃってもいいんだけどぉ。うふふ、恋する乙女は何をしでかすか分からない恐怖力を持っているんだゾ☆

…それにしてもぉ…)」


食蜂はこれから何か雰囲気の違うケンカを始めようとする上条を見つめていた。


食蜂「…やっぱりあなたは第一位を救っただけでは終われないのねぇ。これからあのイケメン君も助けるつもりなのはお見通しなんだゾ。…まったく、怪我をして困るのはあなた自身だけじゃないのにねぇ。本当に心配ばかりかけさせてぇ、今度2人きりになれたら自己紹介なんかもうせずにいきなり抱きついてやるんだからぁ☆

……それまで絶対生きて帰ってきてよね…当麻ぁ…」



(上条サイド)


ゴンガンバキィッ!!と、何度も何度も肉を打つ鈍い音が響き渡った。


上条とトールはひたすら拳と拳による殴り合いを続けていた。両者共にケンカの方法を熟知していたため、殆ど拮抗していた。一発の威力に関してはトールの拳の方が上に思われた。ただ上条は持ち前の打たれ強さと抜群の回避力を用いて、自身へのダメージを抑えつつ、トールに少しずつダメージを与えていった。そのため両者は顔が少し腫れ、唇は切れて口の中で鉄の味が充満していた。


トール「…ガハッ!?…チッ、このクソ野郎が!!これでも喰らいやがれ!!!」


直後、トールの拳が上条の顔面へとクリーンヒットした。


上条「!!ご、がァァァ!?」


トール「…へっ。どうだ、俺のパンチは少しは響いたかよ、くそったれが…」


上条「…はっ、この程度のパンチじゃあ全然こたえてこねえんだよ、ヘッポコ野郎!!」


トール「…チッ。ならその減らず口を叩けねえようにしてやるよ!!」


トールは続けてパンチを加えようとした。しかし、


上条「…馬鹿が。くだらねえ挑発に乗って油断すんじゃねえよ!!」


トール「!!がァァあああ!?」


上条は、やや苛立っていたトールの思考パターンを読んで、トールの攻撃を回避しつつ、トールの顎へとアッパーをぶち当てることに成功していた。


上条「…へへへ。こういうケンカが俺の本来の専門なんだ。あまり舐めてると、痛い目に合うだけじゃ済まねえぜ?」


トール「…くそったれめ!!」


しかし、両者には一つ決定的に異なっているものがあった。それは互いの表情についてである。トールはやや苦痛の表情を浮かべていたものの、上条は大らかに笑っていた。まるでトールとケンカするのが楽しくて仕方がないと言っているように。だから、それを見たトールは…


トール「…なんで…なんでテメェはそんなに強えんだよ!!」


上条「…あん?」


トール「俺やそこの第一位とは違ってテメェの強さの陰には犠牲っていうモンがねえ。俺は誰かを守るために力をつけようと思ったのか、力があるから誰かを守ろうとしているのかなんてのはもう覚えてねえけど、俺は自分が強くなるために少なからず犠牲を出してきた。そうやって俺は、らしくもねえ我慢をしながら、『普通』の世界から少しずつ離れていった。…本当は俺も『普通』に友達とワイワイやってみたかったんだよ。だけどその代わり確かな強さを手に入れることができた」


上条「…」


上条は口元の血を左手で拭きながらトールの話を聞いていた。


トール「だけどテメェは俺と互角以上の強さを持ってやがる。人殺しをしたこともねえのにとんでもねえ強さを手に入れて、それでいて『普通』の範疇に収まってやがるんだ。正直、羨ましいよ…」


上条「…何?」


トール「…テメェの場合そんなのが罷り通っちまってるからよ、テメェによって俺の辿ってきた道が否定されてる気がするんだよ。

…『普通』でいられるくせに、それだけでなくとんでもなく強いってのはよ…クソずりいじゃねえか!!」


上条「!!…トール…」


それは正に、眼に涙を浮かべていたトールという一人の少年の本心だった。どうしようもないほど、あさましく、みっともなく、惨めで、とても一つの『神』を司る存在には思えなかった。だけどそれが紛れもなく彼の本心だった。


トール「テメェが今も笑っていられるのはこのケンカをあくまで『スポーツ』のように感じてるからだろ?だけど俺はそんな風に思うことができねえ。普段なら思えたかもしんねえが、さっきテメェの本当の強さって奴を見せられたからには、このままテメェに負けるのは俺のプライドって奴が許さねえ。何故なら、今まで培ってきた俺の強さを否定されちまったら、俺にはテメェと違って何も残らねえからな!!だからこのケンカは俺にとっていつも通り『戦争』って奴なんだよ!!」


上条「…そうか」


それを聞いた上条はそれまでと違う笑みを浮かべた。それはあたかも相手を慈しむような笑みであった。


トール「!!…何だよその顔は?何が可笑しいんだよ…」


上条「…さあな」




トール「…ふざけんな…」


上条「…あん?」


トール「ふざけてんじゃねえよ、この偽善者野郎!!!!!!!」


上条の微笑みに刺激されたトールは、再び上条を殴り始めた。しかし、


トール「…テメェ…何故『反撃』しねえ…?」


上条「…」


対照的に上条は反撃どころか防御の構えすら見せずにひたすら殴られていた。終いには、トールは倒れた上条に馬乗りになって殴っていた。それでも上条は、決して笑みを絶やさなかった。


トール「…テメェ、何で反撃しねえんだよ…。何でなんだよおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」


トールは渾身の力を込めて上条の顔面を殴った。上条はその時確かに一瞬意識が飛んでしまった。だから、その様子を黙って見ていられない者がいた。


禁書&美琴「「とうま(当麻)!!!」」


2人はなりふり構わず上条の元へと飛び出そうとしていた。しかし、


一方通行「悪りィがオマエらに、このケンカに手を出させる訳にはいかねェ」


2人の前に学園都市最強の超能力者が立ちはだかった。


美琴「!!何でアンタが私達を止めんのよ!!」


一方通行「…」


禁書「お願いだからそこをどいて!このままだととうまが殺されちゃうんだよ!!」


美琴「そこをどきなさい!もうこれ以上は我慢できない!!どうしてもって言うなら例えアンタを殺してでも先に行かせて貰う!!!」バチバチ


一方通行「…」


オティヌス「…第一位の言う通りだ。頭を冷やせ人間共!!」


禁書&美琴「!!」


オティヌス「この戦いは各々捉え方は違っても、2人にとって特別なことに変わりはない。両者ともに、そう簡単に第三者の介入を許したくないんだよ!それに、何故あいつが急に一方的に殴られ始めたのか理由を考えてみろ!!」


禁書&美琴「…」


オティヌス「…あいつにもあいつなりの考えがあるんだよ。それに、あいつの『理解者』である私が、本当にやばくなったら教えてやるから安心しろ。それまではあいつのことを信じてやれ」



(食蜂サイド)


それを目撃していた一人の少女は、人目を憚らずに涙を流しながら震えていた。


食蜂「…ど…どうして、当麻は反撃しないのよぉ?このままだと本当に殺されちゃうじゃないのよぉ!!!何であいつは当麻の助けに行かないの!?当麻を守ってくれるって言ったじゃないのよぉぉぉおおおおおおお!!!」


泣きながら喚く食蜂の姿を見ていた他の少女達は皆硬直していた。事態の把握が全くできていなかった。しかし、


フィアンマ「そんなものか…?」


食蜂「…あぁ?」


フィアンマ「お前のあいつに対する信頼というものはその程度かと聞いているんだ。それでは余りにも脆弱過ぎて話にならんな」


食蜂は無意識の内に思いっきりフィアンマの顔を引っ叩いていた。


食蜂「…あなたに…私と当麻の何が分かるって言うのよぉ!!!」


フィアンマ「そんなもの俺様が知る訳も無いし、知るつもりもない」


食蜂「…だったら…」


フィアンマ「だが、俺様は一つ確かなことを知っている」


食蜂「!」


フィアンマ「あいつはこれ位でくたばるタマではない。お前達は知らんだろうが、あいつは第三次世界大戦を終結させた人間なんだ。そんな英雄がたかが個人間のケンカで死ぬ訳がないだろう」


食蜂「…当麻が?」


フィアンマ「そうだ。今に見ておけ。あいつの『ターン』というものが必ずやって来る筈だからな」


食蜂「…」


その時食蜂は、モニター越しに大きな変化が現れたのを確かに目撃した。



(上条サイド)


それまでと明確な変化が起きた。トールの振り下ろした拳を、上条が右手で掴んでいた。渾身の力を込めて掴んでいた。


トール「…な……に?」


上条「…いや、そろそろテメェの八つ当たりも気が済んできたんじゃねえかと思ってよ」


トール「…テメェは今まで俺の八つ当たりを受け入れるために、無抵抗で殴られてたっていうのか?」


上条「ああ、その通りさ。何か文句でも?」


そう言うと上条は掴んでいたトールの拳をそのまま押し返した。その後のろのろと起き上がり。口に溜まった血の塊を吐き出した。


上条「たく…。良い様に殴ってくれやがって。お陰様であちこち悲鳴あげてやがる」


上条は軽く首や手首を振って自分がまだ戦えることを確認した後また少し笑みを浮かべた。


上条「…一つテメェはとんでもなく大きな勘違いをしてる」


トール「…何?」


上条「それは俺が『人殺し』をしたことがねえってことだよ」


トール「何だと?」


オティヌス「…」


上条「俺はお前達の知らない世界で、莫大な数の、何も罪もねえ人間を間接的に殺してんだよ。それこそ妹達に関して言えば、そこの第一位と全く同じ数の人間を殺してる」


一方通行「!!」


美琴「…何を言ってるの、当麻?」


上条「それだけじゃねえのさ。俺はとんでもねえ数の、名前も顔も知らねえような人間を俺の見てねえところで間接的に殺した。お前達が犯してきた殺人ていうのは大方直接的なものだったろう?だけど俺の場合は違う。何の前兆もなしに、突然多くの人間の命を一方的に奪ったんだ。だけど俺には、そいつがどんな顔をして、どんな思いで死んでいったのかについては全く想像できねえんだぜ?こんなこと言うのは絶対間違ってると思うけど、正直言って不気味だった」


トール「…まさかテメェ、オティヌスの手によって『上条当麻一人の命と引き換えに、本来死んでいる筈の人間を含めた全ての人間を幸せにする世界』みてえなのを経験したって言うのか?そしてそこから脱出するために、生き返った人間を犠牲にしたとか言うのか?」


上条「…その通りだよ」


禁書&美琴&一方通行「!!」


オティヌス「…」


トール「…道理で、やたらこっちの世界でオティヌスを救うのに躍起になってた訳だ。オティヌスの命と引き換えに世界を救うなんていう真似は、それに似た苦しみを経験したテメェにとっては絶対に許し難い話だろうしな…」


上条「…」


トール「それでもって、オティヌスの『理解者』になったテメェはその経験を心の闇に閉じ込めることも許さねえ。ましてや『自分が直接手を下した訳じゃないから』っていう理由で免罪符をつける訳には絶対いかねえってことか」


上条「…そういうことだ。だから俺はとてもじゃねえが、『自分は決して人殺しをしたことがありません』って言えるような立場じゃねえんだよ。寧ろ完全にテメェの我儘だけで多くの人間を殺したんだから、ある意味ではお前達よりも罪が重い」


禁書「…とうま…」


魔神に何ができるのかをある程度想像できる少女は、涙を浮かべながら上条の話を聞いていた。それと同時に何もしてやれなかった自分の無力さを嘆いていた。だから、


禁書「…そんなことは決してないんだよ、とうま!とうまは今までに多くの人達を守って来てくれたんだから何も悪くなんかない!!悪いのはそんなこと知らずにとうまに途轍もない重荷を背負わせてしまった私の方なんだよ!…だから、だから…とうまは…」


少女はめいいっぱい叫んでいた。その叫びは余りにも悲痛なものだった。だから上条は、


上条「…ありがとうインデックス。お前の気持ちは凄く嬉しいよ。正直言って今のお前の言葉でとんでもない程救われた気分になった。本当にありがとう」


禁書「…とうま…?」


上条「…だけどこの罪はこれからも俺に背負わせてくれ。この罪を他の誰かに背負わせる訳にもいかねえんだ。勿論、他人の命を弄んだオティヌスにも罪はあるけど、オティヌスに全ての罪を背負わせる訳にもいかねえ」


オティヌス「…人間…」


上条「そして今の俺に破滅願望もねえし、この罪を償うために戦うなんて安易な真似はしない。今まで通り俺は、俺の意思で困っている人に手を差し伸べていくつもりだ。そうでないと、俺を絶望から救ってくれた、同じ顔をした2人の少女に面目がたたねえ」


美琴「…当麻…」


上条「…それだけじゃねえ。こんな人殺しと揶揄されてもおかしくねえ俺だけど、それでも俺は『普通』であることに挑戦してやる!!」


一方通行&トール「!!」


上条「一度道を逸れてしまった人間が『普通』を目指すことは決して逃げることにはならねえ。何故なら、それはそのような人間にとって想像以上に困難なことだからだ。寧ろくだらねえ絶望に引き込まれて、そのまま『普通』から離れようとする方が逃げてるように思える」


トール「…何故テメェにそこまでの自信がある…?」


上条「…俺はそのために一生懸命頑張ってる女の子を知っているんだ。自分のミスで多くの命を奪ってしまった、と自分を責めつつもきちんと今まで通りの日常生活をこなそうとしてる女の子を」


美琴「!」


上条「はたから見れば、そいつはあれだけのことをしたのに、まだ元の生活に固執してるのかと思うかもしれねえ。だけど、その裏にはきっと凄まじい覚悟があると思うんだ。例えば、死なせてしまった人間よりも多くの人間を救いたい、っていう感じにな。彼女らに、その犠牲は間違ってなかった、って思って貰えるように、陰ながら必死に努力をして続けているそいつの姿を、俺はずっと見てきたんだよ。それがどれだけ辛くても泣き言一つ言わずに頑張ってきた一人の女の子をな」


その時美琴は思わず涙を流しながらその場に座りこんでしまった。自分の辿ってきた道が誰かに認められた。それだけでも嬉しかったのに、その誰かというものが自分が好意を寄せている少年だった。そして自分の努力がその少年に力を与えようとしてるのを知って、どうしようもない程救われた気分になった。


上条「でも、そいつだけじゃねえんだ。直接手を加えてしまっても、それでも生き残った人間を助けようと、もがき続けてる奴がいるのも知っている。例えそれがどんなに無様でも、どんなに綺麗事だと揶揄されても、それでも必死に戦い続ける強さを持った奴だよ」


一方通行「…!!……チッ」


…自分がひたすら背を追い続けた男に認められた…。一方通行はそれを確かに感じ取ることができた。そして、自分が辿ってきた道が間違ってなかったと実感することができた。勿論それは、一方通行とって救いの他にならなかった。


上条「だから俺もそいつらを見習って、『普通』っていうとてつもねえ相手に挑戦し続けてやるって決めたのさ」


トール「…」


上条「…お前はどうするトール?このまま『普通』から逃げるのか?それとも立ち向かうのか?どっちにするんだ?」


トール「…俺も…俺も『普通』を目指しても良いのか?俺みたいな戦闘狂にも『青春』を謳歌する権利があるっていうのか?」


上条「…勿論ただでとは言わせねえ。今までに犠牲にしてきた人達の分も精一杯生きる覚悟があるならな」


トールは上を向いて目を瞑った。自分が今まで辿ってきた道を思い出していた。そして、


トール「…覚悟はある!俺は今まで目標となる者が近くにいなかった。だから、日常に重きを置きつつ、過去に冒した罪による苦悩と戦う術も知らなかった。だけど今は違う。今目の前にいるアンタは、俺よりも多くの辛い犠牲を出しつつも、それでも『普通』に挑戦しようとしてるんだ。なら俺もアンタに負けねえように戦い続けてえ!!」


トールは今までと違って何処かすっきりした表情を浮かべていた。


上条「へっ。良いツラになったじゃねえか。…ところでまだ一つお前は勘違いしてたことがある」


トール「?」


上条「お前の見立てでは、俺はお前とのケンカを『スポーツ』として扱ってたことだよ」


トール「!!…じゃあなんだよ?」


上条「…はなから俺は単純に『友達』同士の取っ組み合いのつもりでやっていた」


トール「!!と、友達…?」


上条「そうさ。俺にもクラスに親友が少なくとも2人程いるんだ。じゃあ俺はそいつらと普段何しているかって言うと、些細なことというかクソくだらねえ話題で盛り上がって、それで意見がちょっとすれ違えば軽く殴り合う。そんなくだらねえやり取りが俺は大好きなんだ」


トール「…」


上条「今回俺がお前と殴りあってた時もそう言う風に捉えてた。だから思わず楽しくて笑っちまってたのさ」


トール「…俺とアンタが友達?」


上条「お前はどう思ってるか知らねえけど、少なくとも俺はそうだと思ってる」


トール「…」


上条「…そう言えば、お前は青春を謳歌したいとか言ってたよな?

…くだらないことがきっかけで友人同士で殴り合うってのは青春の一つの形だと思わねえか?」


トール「…ああ、そうかもしんねえ」


上条「…なら話は早え。もうテメェの『戦争』ってのは終わりだ」


そう言うと上条はボロボロになった体を無理矢理動かして改めて構えをとった。


上条「俺とテメェの『普通』への第一歩だ。もう主義主張なんか関係ねえ。科学だとか魔術だとか超能力者だとか無能力者だとか聖人だとか全能神だとか魔神だとか、そう言うのも一切関係ねえ。ここからは『普通』の高校生同士のくだらねえケンカってのをやろうぜ!!」


トール「…ああ!!」


上条「へへ。こっちはテメェのせいで明日もラブコメ一つ紛れ込めねえような男臭い補習が待ってんだ。そのお返しはたっぷりさせて貰うぜ!!」


トール「突然くだらねえこと言ってんじゃねえよ。テメェはもう十分ラブコメを堪能して来たじゃねえか!!」


その時上条とトールの右拳は同時に相手の頬へと突き刺さっていた。それは両者に決して少なくないダメージを与えていた筈だった。しかし、それでも両者は心から笑っていた。それは普段から世界の命運をかけた戦いに身を置く両者にとって、大切な友人との青春のひと時のように感じていたのかもしれない。



だから、



上条「何言ってやがる!ラブコメなんてモンは上条さんの担当なんだよ。テメェには10年早え!」


トール「馬鹿言うんじゃねえ!そういうのは色白の金髪美男子トールさんが華麗に女の子のハートを奪っていく方が自然だろうが。何故それが分からねえのか!?なら意地でも理解させてやる!!」


上条「!!!???こ、こらテメェ金的は卑怯じゃねえか!!!!」


トール「ばーか。隙を見せるそっちが悪りいんだよ!!」


上条「こんちくしょうが!!!!」


トール「ぐおおお!?てめ、浣腸なんて汚ねえ真似すんじゃねえよ!!」


上条「さっきのお返しだ!!」


それは余りにもくだらないケンカになっていた。先ほどと違って、もうそこには殺気というものが一切感じられなかった。


殴り合う度にどこか温かい気持ちになれる。


そのような不思議な現象を体験しながら、トールは自分の心に蟠っていた一つの幻想が崩れていくような気がしていた。


そして、


禁書「…うわあ」


美琴「ッ…!!最っ低!!」


一方通行「…」


オティヌス「(こんなのが私の『理解者』で本当にいいのか…?)」


美琴「……でもまあ、とりあえず一安心したわ。あの馬鹿はほんとぉぉぉおにどうしようもない馬鹿だってのも良ーく分かったけど」


禁書「今回はいつもよりキツくお説教しなきゃならないんだよ!

…でも大事にならなくて本当に良かったかも…」


少女達もいつの間にか笑っていた。いつもの上条が日常へと帰ってきた。それだけで少女達は笑顔になれるのであった。



オティヌス「…あの人間は一つ勘違いをしているな」


禁書「…え?」


オティヌス「…みんなが上条当麻という存在を最大限に活用してくれるから、あいつはどんな困難にも立ち向かえる…。それがあいつの強さの本質だとか言っていたな…?」


一方通行「…何が言いてェ?」


オティヌス「それは決して必ずしも間違っている訳ではない。ただ、一つ大きな見落としがある」


美琴「…何よそれ?」


オティヌス「簡単だよ。さっきファイブオーバーが襲ってきた時のことを思い出してみろ。確かに、助けに駆けつけてくれた連中の中には、今の我々にとって明確な敵と呼べる者はいなかった。だけど、そいつらは本当に最初から敵じゃなかったのか?そこにはあの人間とかつて敵対関係にあった者、あるいは禁書目録や第三位にとっての敵もいた筈だ。そもそも私だって最初はあいつの敵だったしな…」


美琴「…言われてみれば確かに…」


オティヌス「そうなんだよ。そいつらが今まで通り敵という立場であったのなら、奴に手を貸す筈がない。故に、あいつの本質とやらの前提条件として、みんなが上条当麻と敵対関係でない必要があるんじゃないか?」


一方通行「…」


オティヌス「…そしてあいつは、やたら自分の立場を低くして、毎回他人ではなく自分が犠牲となる方法を選んでしまう。しかし、自己犠牲精神旺盛なあいつだが、一つだけ、自他同様に扱える、とある特殊な力を持っている。それが多くの人間を変えていったのだろう…」


禁書「…特殊な力?」


オティヌス「それは『前を向かせる力』だよ。あいつはどんな絶望に直面しても、それでも歯を食いしばって前へと進もうとする。その場に立ち止まるでもなく、横に逸れるのでもなく、後ろに退くでもない。とにかく弱気な自分を押し殺して前へ前へと進もうとする力。その力は自分だけでなく他者にも働き掛ける。あいつの信念に感化された存在は、同じ様に絶望に立ち向かえる力を得ることができる。そしてそれは、まるで感染病のように他者から他者へと伝播していく」


一同「…」


オティヌス「結局のところみんなが上条当麻の支えになっている以前に、上条当麻がみんなの支えになっているという前提条件が必要なのさ。あいつの『前を向かせる力』ってのはそれを可能にする。それこそがあいつの本当の強さなんじゃないかな、と私は思う」


魔神は今も殴り合いを続ける上条を見つめながら結論づけた。


禁書「…そうだね。とうまはみんなに希望を与えてくれて、みんなを支えてくれる『お父さん』みたいな存在かも!」


そして上条の側にいつもいる少女は、オティヌスの話を聞いた直後に、はち切れんばかりの笑顔でそう答えた。



(食蜂サイド)


食蜂達もモニターで上条とトールの余りにも低レベルなケンカを見ていた。


白井「んまぁ、なんと品のないお猿さんですこと!!こんなのをこれ以上お姉様の側にいさせる訳には絶対いきませんわ!!!」


食蜂「……クスクス」


常盤台生A「…女王?どうなさいました?」


食蜂「あはは。いやぁ、ごめんねぇ。やっぱり相変わらずの『最低』っぷりに思わす笑ってしまったわぁ」


食蜂は先ほどまでとは対照的に笑っていた。結局どんなに離れていても、上条は食蜂を笑顔にする力を持っていることを再認識させられていた。


常盤台生A「はぁ…」


常盤台生B「た、確かに先ほどの、あの殿方のやりとりは些か品性に掛けてましたわね」


食蜂「ふふ。普段『学舎の園』に閉じこもっていては決して学べないことを、彼は教えてくれるのよぉ。さっきの彼のやりとりを楽しめないようじゃぁ、あなた達もまだまだ勉強不足なんだゾ☆」


常盤台生B「そうなのでしょうか…」


そして、食蜂は今暫くモニターを見つめていたが、ホッと安堵の息を吐いた後、モニターに背を向けた。


食蜂「さてと、私達はそろそろお暇させて頂くわぁ。あまり余計なことしていると縦ロールちゃんに怒られそうだしぃ」


白井「あら、類人猿の観察はもう満足されましたの?」


食蜂「…類人猿て…。流石にそこまで当麻のことを酷く言われるとムッと来ちゃうんだゾ」


白井「ケッ。あんなのは寧ろ本物の類人猿に失礼な存在ですの」


食蜂「私に言わせて貰うとぉ、あなたの大好きな御坂さんだって野蛮力の高いアマゾネスにしか見えないしぃ」


白井「な、なんですってぇ!!!」


常盤台生C「…それなら、実はお似合いのお二人方だったりして…」


食蜂&白井「「それだけはありえねえから!!!」」


常盤台生C「ひ、ひぃ〜!?」


食蜂「……おほん。とりあえずこのままあれを見ていたら、そのうち御坂さんとかが当麻の手当てをするだろうからねぇ。そんなの見せられたら嫉妬力で頭がおかしくなっちゃいそうだもの」


白井「そうですの…。…一応、お姉様をご支援して頂いたことに関しましては感謝致しますわ」


食蜂「あらぁ?まさかあなたに感謝されるとは思わなかったわぁ。それに私はあくまで当麻を助けに来ただけだから、あなたに感謝される理由力はないわよぉ」


白井「…」


食蜂「…まあいいわぁ。じゃあねぇ、白井さん。あなたは当麻に興味がないみたいだしぃ、何だったら私の派閥に入れてあげてもいいから、前向きに考えておいて頂戴ねぇ」


そう言うと食蜂は派閥の女の子達と共にその場を離れていった。


白井「誰が入りますかっての!!

…それで、わたくしはこれからどう致しましょうか…。フィアンマという殿方や蜜蟻さんという女性については突然姿を消されましたし…。そう言えば、彼女らは…」


そして白井は、何と無く婚后達の方へと目を向けた。


婚后「…はう。上条さんのなすこと全てがこの婚后光子にとって魅力的に見えてしまいますわ」


湾内「これが殿方の青春っていうものなのでしょうか。何というか非情に興味深いですわ」


泡浮「確かにわたくし達には理解出来ない部分が多いのですが、何故か魅力的に見えて来ますわね」


白井「…すっかりあの猿に騙されてますの…。……ん?…婚后光子とあの類人猿をくっつけてしまえば、お姉様はわたくしの物になるのでは…?……ふひひ」


湾内「あら、白井さん。どうなさいましたの?」


白井「おほほ。婚后さん?これからはわたくしが、あなたと上条さんのキューピッドになって差し上げてもよろしいですわよ?」


婚后「!!し、白井さん…。わたくしは今まであなたのことを勘違いしてましたわ。今までやや傲慢な淑女だと思っておりましたが、今は心優しくて非情に頼もしい淑女に見えますの」


白井「ぐっ…!?と、とにかくわたくし白井黒子は、名高い『風紀委員』の一員として、あなたをサポートして差し上げあげますわ!」


婚后「ありがたいですわよ、白井さん。それに湾内さん、泡浮さん!わたくしが上条さんと結ばれたあかつきには、あなた達も上条さんとで、でえとする機会をプレゼント致しますわ」


白井「」


湾内「本当ですの!?まあわたくし今からでえとが楽しみになって来ましたわ///」


泡浮「わたくしも上条様に助けて頂ける機会があるのでしょうか。想像しただけでなんだか胸が熱くなってきますわ///」


白井「(…『風紀委員』としてこれは取り締まるべきでは…?

…まあいいですの。もし本当にそんなことになったら、あの類人猿をしょっぴけばいい話ですもの。とりあえずこれでわたくしとお姉様のラブラブ同居生活は安泰ですわ!)」



(上条サイド)


ひたすら殴り合いを続けていた二人は共に、地面に仰向けになって大の字で倒れていた。


上条「…あぁ、殴った、殴った。こんな楽しいケンカをしたのは久しぶりだぜ」


トール「俺もこんなに殴られたのはすげえ久しぶりだ」


両者は共に傷の痛みなど忘れて笑っていた。


トール「…第一位の言った通りだわ」


上条「あん?」


トール「アンタに殴られるのはすげえ痛えけど、なんでか知らねえがすげえすっきりした気分になれる。

…もしかすると、俺はアンタに救われたのかもしんねえな」


上条「…そりゃ、良かった」


上条はゆっくり起き上がると、トールに向けて右手を差し出した。


上条「ほらっ、いつまでも汚ねえ地面の上で寝てねえで起き上がれよ。そしたら傷の手当てをしねえと。お互いとても無事とは言えねえんだからよ」


トール「…そうだな。サンキュー」


トールは差し出された上条の手を握り返して、起き上がるのを手伝って貰った。その些細なやりとりが今のトールにとって非情に心地よかった。


トール「…へへへ」


上条「あん?何だよ」


トール「いやあ、俺には回復魔術があるけど、上条ちゃんにはその右手があるからそういう回復手段が通用しねえんだよなあ。どうだ、羨ましいだろう?」


上条「ぐっ…!?」



オティヌス「その心配には及ばんさ…」


上条&トール「!?」


オティヌス「おい、禁書目録。あれを」


禁書「はいなんだよ!…さあスフィンクス出ておいでー」


スフィンクス「ニャー」


インデックスの胸元から、何かを背負った三毛猫が現れた。


上条「…それはなんだよ?」


オティヌス「…私が使う救急治療セットだ。神であるこの私がお前の治療をしてやるんだから、感謝しろよ?」


上条「…うう。流石オティちゃん。上条さんはあなた様の心遣いに深く感動してますことよ?」


オティヌス「だから、オティちゃんと呼ぶな!!」


美琴「ちょっと!!私もいるんだから忘れないでよね!!」


上条「おわっ!?」


そう言うと美琴は正座をしつつ、上条の頭が美琴の太ももの上に乗るように、彼を無理矢理倒してしまった。


美琴「さっき黒子に、コインと一緒にゲコ太先生直伝の治療セットを貸して貰ったの。アンタの顔の治療はこの美琴センセーがやってあげるんだから感謝しなさいよね!」


上条「ありがとな、美琴!」ナデナデ


美琴「……ん…///」


禁書「ちょ、ちょっとさっきから何で短髪の頭を一々撫でるんだよとうま!?」


上条「はて?よく分かんねえけど、何と無くこうしたら美琴が喜んでくれてる気がするから。ほれ」ナデナデ


美琴「…ふにゅ///」


禁書「た、短髪ばかりずるいんだよ!!私だって今回はとうまのために頑張ったんだから、私も撫でて欲しいかも!」


上条「そうだな。ほれ、今日は色々とありがとな、インデックス!」ナデナデ


禁書「むむっ!た、確かにこれはなかなか気持ちいいかも///」


美琴「ちょ、ちょっとそれは私だけの特権なんだから!!!」




トール「…オイ。そりゃねえだろ上条ちゃん。何でテメェばかりイチャイチャしながら治療して貰ってんだよ!?」


上条「これが正しい役割分担というものだよ、トール君。君にはこの世界はまだ早い」


トール「ち、ちくしょう。…なあ、ミコっちゃん?俺も後で治療してくれよな、頼むよ!」


美琴「…あぁ?当麻を酷い目に合わせたアンタなんかを、私が治療する訳がないでしょ!」


トール「…ですよねえ」


上条「ぷぷー。どうだトールちゃん、羨ましいだろう?」


トール「て、テメェ!ぶん殴ってやる!!」


上条「面白え!かかって…グハァッ!?」


オティヌス「お前は自分の身を弁えろ。今お前は、自分の身の安全を私達に委ねてる。つまり、私達次第ではその限りではないということだ」


上条「…ひ、ひ、ヒィ〜!?た、助けてトール!!」


トールは中指を立てて、笑顔で答えた。


トール「ざまあみやがれってんだ!!

…そう言えば第一位はどうなってんだ??」チラッ




打ち止め「よ、良かった!本当に良かった〜、ってミサカはミサカはあなたの無事の嬉しさに思わず抱きついてみたり!」


一方通行「…チッ。本当に鬱陶しいガキだぜェ」


番外個体「とかなんとか言っちゃって、本当は最終信号に抱きつかれて嬉しいんじゃないの、親御さん?」


一方通行「あァ!?」


番外個体「いやーん。ミサカこわ〜い。この人に変なことされちゃいそう」


一方通行「…オマエ、よっぽどスクラップになりてェようだなァ。……って、痛ェ!!?」


黄泉川「お前も向こうにいる悪ガキと一緒で、ただいま絶賛治療中じゃん?少しは大人しくして欲しいじゃんよー」


一方通行「…くそったれ…」


番外個体「www」


一方通行「…クソッ!!こいつ後で絶対痛ェ目に合わせてやる!!」


打ち止め「まあまあ、落ち着いてー、ってミサカはミサカはあなたをなだめてみたり!」


黄泉川「そういやあ、さっき番外個体も、やたら不安そうな顔で『あの人は本当に大丈夫なの?』って心配してたじゃん」


一方通行「!?」


番外個体「ちょ、ちょっと何言ってんのかな!?ミサカがこんな奴のことなんか心配する訳ないじゃん!!」


打ち止め「そう言えばさっき、あなたの無事が分かった時にやたら番外個体から喜びの感情らしきものが流れてきたー、ってミサカはミサカは事実を言ってみたり!」


番外個体「!!?こ、こいつ!もう許さねー!!」


打ち止め「わーい!悔しかったら捕まえてみろー、ってミサカはミサカは末妹の遊び相手になってあげてみたり!」


その様子を見ていた一方通行は思わず呟いていた。


一方通行「…とりあえず、オマエら…俺のことを心配してくれてありがとよォ」


打ち止め&番外個体「!?」


黄泉川「あははは。遂に一方通行も素直になることかできたみたいじゃん!私も何だか嬉しいじゃんよー」


一方通行「…うるせェ」




トール「…何これ?世の中ってのはここまで理不尽なのか?どいつもこいつもこのトールさんを差し置いてイチャイチャしやがって!!」


その時治療を終えた上条が一方通行の元へとやってきた。


上条「よう。さっきは美琴を庇ってくれてありがとうな!」


一方通行「…チッ。何言ってやがる。元はと言えば、助けて貰ったのは俺の方なンだ。オマエに礼を言われる筋合いはねェよ」


上条「それでも俺はお前に感謝したいんだ!ほらっ」


そう言うと上条は右手を一方通行の元へと差し出した。それは握手を要求する形だった。


一方通行「!!…いや、まァ、こちらこそ迷惑かけて済まなかったなァ」


一方通行も手を差し出して、二人はがっちりと握手をした。まるで互いの絆を確かめ合うように。


番外個体「うわぁ、第一位が照れてる」


一方通行「!?やっぱこいつはスクラップにしなきゃ気が済まねェ!!」


上条「あはは。お前ら本当に仲が良いみたいだな」


番外個体「はぁーー!?なんであなたまでそんなこと言うのかミサカには理解できないんだけど?」


美琴「アンタも素直になれば楽になれるわよ?」


番外個体「黙れ!妹に負けまくりの壁女!!」


美琴「こ、こいつ!!その無駄な脂肪を砂鉄の剣で切り落としてやる!!!」


その時上条は暴走しそうな美琴を羽交い締めにした。


上条「お、おい!美琴無茶すんなよ!!」


美琴「う、うるさい!あの馬鹿妹だけには一度お灸を据えてやら…な…い…と……?……」


上条「?」


美琴「(な、何これ。どういうコト!?何で私は当麻に抱きしめられてるの…?………やばいこれ……幸せ過ぎる…!!)///」


上条「お?落ち着いてくれたみてえだな……い、い、インデックスさん!?」


禁書「…とうま?覚悟はガブゥッ!!」


上条「うぎゃァァァああああああこ、こら!セリフを言い終わる前に噛むんじゃねえよおおおお」


そんな二人の元に、いつの間にか打ち止めがやって来ていた。


打ち止め「ねえ、ヒーローさん、ちょっとしゃがんでー、ってミサカはミサカはお願いしてみる!」


上条「うん?何だよ」


上条がしゃがみ込むと、打ち止めは上条の頬に軽く口付けをした。


上条「…へ?」


一同「!?」


打ち止め「へへへ、あの人を助けてくれたお礼だよー、ってミサカはミサカはヒーローさんに感謝してみたり!」


上条「…うう。何故だろう。上条さんの目から涙が出てきそうです…。

…とりあえずありがとな、打ち止め。俺も嬉しいよ」ナデナデ


打ち止め「うん!、ってミサカはミサカはヒーローさんに感謝されたことを誇らしく思ってみたり!」エッヘン


禁書「うっ、何だかこの状況だととうまに噛みつき辛いんだよ…」


一方通行「…」


番外個体「もしかしてヒーローさんが羨ましくて仕方ないんじゃないの、親御さん?……おーい…?」


一方通行「(い、言えねェ…。正直どっちも羨ましいと思ったことなンか、絶対言えねェ…)」


美琴「…ま、まさかあんな小さな妹に先をこされるなんて…。ちょっとショックかも…」


禁書「どうしたのかな、短髪?もし良かったら、シスターであるこの私が相談に乗ってあげるかも」


美琴「…アンタに同情されると、何だか余計虚しくなってくるわ…」


禁書「む〜!!それははっきり言って心外どころの騒ぎじゃないかも!!」


そのころトールはと言うと、


トール「…もうどうでも良いよーだ」


完全に不貞腐れていた。しかし、それを見た上条はスイッチを切り替えて、


上条「…さて。今回の事件の最後の後始末といこうじゃねえか。

…トール、こっちに来てくれ」


トール「あん?何だよ」


トールが近づいて来たのを確認すると、上条は右手を握りしめ、それを自分の前に突き出した。


トール「??何の真似だよ?」


上条「今回は過去に大きな罪を冒したことのある3人が、自分の信念を掛けて戦った」


一方通行&トール「!」


上条「その結果としては、俺達3人が各々の信念を認め合う形で終わった筈だ。だからこれから俺達はもう敵としてではなく、『親友』として助け合って生きていくべきなんだよ」


一方通行&トール「…」


上条「だからここで親友の誓いをしようじゃねえか!!」





一方通行「…そォだなァ」


トール「へへっ。『親友』ねえ…。面白えじゃねえか!!」


上条「よし!それならお前らも俺と同じようにしろ」


一方通行とトールは上条と同じ様に右手を自分の前へと突き出し、それを軽くお互いにくっつけ合った。


上条「いいか?これから俺達はもう親友なんだ。日常では馬鹿騒ぎしたって構わねえし、お互いのピンチの時には助け合う。そういう関係になることを誓おうじゃねえか!!!」


一方通行「…イイぜェ」


トール「依存はねえよ」


上条「よっしゃ。これで俺達は…」




フィアンマ「ま、待ってくれ!!!」


一同「!!!??」


上条「ふ、フィアンマ!?何でお前がこんなところにいるんだよ!?」


一方通行「…フィアンマだと?確かァ、バードウェイとかいうクソガキから聞いたことのある名だなァ」


トール「まさかアンタ、また戦争でも起こしに来たって訳じゃねえだろうな?」


フィアンマ「ま、待て!俺様は今回そんな物騒なことをしに来た訳ではない!これを見ろ!!」


一方通行「あン?…!…これは…?」


トール「ま、まさか…」


上条「何だよ?……へ?」


フィアンマが見せていたのはスマートフォンだった。そこには、




信頼度S

庇護欲A

居心地S 総合S-


総評:絶対失いたくない親友


フィアンマ「ど、どうだ?これで俺様がここに来た理由が分かっただろ?」


上条「」


トール「ま、まさか3人目のトップランカーがアンタだったとは…」


上条「…は?さ、3人目?…もしかして、それってえ…?」


一方通行「…ここにいる3人がそのトップランカーって奴さァ」


上条「(ゾクッ)」


その時上条は、先ほどとある公園で美琴に言われたことを思い出してしまった。


上条「(み、美琴?)」チラッ


美琴「…」ガクガクブルブル


上条「あっ…(察し)」


フィアンマ「で、どうなんだ、上条当麻?俺様もお前達の親友にしてくれるのか?」


上条「……………しゃあねえなあ」


フィアンマ「?」


上条「(きっと、こいつらが俺に対してそういう感情があるってのは幻想だろ!そうだよ、そうに違いない!こいつらを信じてやれよ!!)」


トール「どうしたんだよ、上条ちゃん?」


上条「いや、何でもねえよ。よし、フィアンマ!お前も右手を出せ!」


フィアンマ「…お、おう」


上条「まあとりあえず、これから俺達は親友だ!!みんなで助け合ってワイワイやっていこうじゃねえか!!!!」


一&ト&フ「「「おう!!!」」」


誓いの儀式が終わった後、トールは照れ臭そうに一方通行の前に右手を差し出した。


トール「…今日は色々とすまなかった。一応こんなんでも結構反省してるつもりなんだ。許して貰えるとありがてえ」


一方通行「…まァ、失った物もあるが手に入れた物の方が多いからな。ここはオマエを責めるよりも、感謝する方を選ばして貰うぜェ。あンがとよォ」


そう言って、一方通行とトールは握手をした。


トール「へへ、サンキュー。そういえば例のアプリなんだけど、実はクラウド機能もついているんだよ。つまり、機種変更してもデータは引き継げるんだ。まあ戦闘が終わった今だから言えるんだけどな…」


一方通行「!!ほ、本当か!?…良かった、本当に良かったァ!」


二人は笑顔になっていた。こうして2人の争いは全て終了したのであった。


禁書「まあ、何はともあれこれで一件落着なんだよ」


美琴「そ、ソウネ…」


オティヌス「どうした第三位?声が震えているぞ?」


美琴「…た、多分大丈夫…ヨ…?」


オティヌス「?」


上条「よし!それじゃあ、早速友好の証として、今日は上条さん家で鍋パーティーといこうじゃねえか!!!」


一同「!?」


美琴「ねえ!?わ、わ、わ、私も当麻の部屋に行ってもいいの!!!!?」


上条「??何だよ、そんなに興奮して…。…もしかして嫌なのか?それだったら別に…」


美琴「も、も、勿論行かさせて貰うわ!!!!」


上条「お、おう。ちなみに、打ち止めとかはどうする?俺は歓迎するぞ?」


打ち止め「多分先に帰ったヨミカワが晩ご飯作ってくれてるから今回は行けないかもー、ってミサカはミサカは残念そうにヒーローさんのお誘いを断ってみたり!」


上条「そうかそれは残念。なら一方通行はどうすんだ?」


一方通行「俺はせっかくだからお邪魔させて貰うぜェ」


上条「おし!トールとフィアンマも来るよな?」


トール「もち!どうせ今の俺は無職だし」


フィアンマ「俺様もだ」


上条「…お前ら誇らしげに無職であることを主張するなよ…。まあいいや、それならそろそろ行こうぜ」


禁書「早く帰ろ、とうま!今日は一生懸命歌ったからもうお腹ペコペコなんだよ!ねー、スフィンクス!」


スフィンクス「ニャーン」


上条「何言ってらっしゃる。あなたはいつでもお腹ペコペコじゃ…」


禁書「…とうま?…」


上条「な、なんでもございません!」


禁書「よろしいんだよ」


上条「ま、まあ。とりあえずインデックスさんの言う通り、もう帰りましょう!」




一方通行「ま、待ってくれェ」


上条「あん?何だよ…?」


一方通行「…なァ、俺とオマエはもう親友なンだよなァ?」


上条「お、おう。だから何だよ?」


一方通行「…なら、オマエのこと名前で呼んでもいいかァ?親友ってのはそォいうモンだろォ?」


上条「(ゾクッ)」


美琴「…」ガクガク


一方通行「どォなンだァ?」ドキドキ


上条「お、オウ!バッチコーイ!」


一方通行「イイねェ、当麻!」


上条「ハハハ…」


フィアンマ「お、俺様も名前で呼びたい!」


トール「俺は今まで通りでいいや」


上条「…モウ、スキニシテクレ?」


フィアンマ「ふむ、流石は当麻。器がでかいな」


上条「」


禁書「これでみんな仲良しなんだよ!何だか私も嬉しくなってきちゃったかも!ねー、とうま!……とうま……?」


上条「…そ、そうだな。アハハ…」チラッ


美琴「…」ブルブル


上条「(み、ミコっちゃんや?)」


美琴「(な、何よ!?)」


上条「(す、すまんがちょっと上条さん、ホモホモしい展開についていけんのですよ。純粋なインデックスさんに迷惑をかける訳にもいかんので、少しばかりいつもより上条さんの近めに歩いてくれませんかのう?)」


美琴「…へ?///」


上条「(あいつらを傷つけるわけにもいかんし、こうなったら美少女をそばに置いて毒されないようにしたい所存であります、はい)」


美琴「!?び、美少女…?…も、もう!しょうがないわね///」


そういうと美琴は上条のすぐ近くを歩き始めた。ちなみにいつものインデックスと上条の距離くらいである。


上条「サンキュー。助かったぜ!!」


美琴「う、うん///」


上条「よっしゃ!今度こそ帰ろう!!」


一同「おお!!」



一方通行「(こ、今度は当麻に『あーくん』って呼んで貰えるよォに頑張ろう)」




(浜面サイド)


浜面「…どうやら全ての問題が解決したみてえだし、俺も上条のところに行こうかな…」


麦野「はーまづらぁああああああ」


浜面「ひ、ヒッ!?な、何ですか麦野さん!?」


麦野「オイオイ、まさかテメェ、この私を散々こき使っといて何もお礼は用意してません、ってことはないよねえ?」


浜面「…わ、私目は何をすれば?」


麦野「…しゃーない。一緒に飯を食いに行くくらいで許してあげる」


浜面「は、はあ。それくらいなら…」


麦野「(せっかく浜面2人きりになれたんだから、このチャンスを活かさなきゃね♪)」




黒夜「オイオイ、そりゃァねェだろはァまァァちゃァァァン!」


浜面「!」


麦野「ああん?何よアンタ?」


黒夜「今日オマエはこれから私と水族館のナイトショーに付き添ってくれる約束だったよなァ?」


浜面「……………あ……」


麦野「…浜面?」




絹旗「ちょっと!何を超言ってやがるンですかァ!今日浜面は、私と映画を超観に行く約束をしてた筈でしょォ!!」


浜面「……………………あは」


麦野「……はーまづらぁ…」




フレメア「にゃあ!大体浜面は今日、半蔵とかと一緒に私をご飯に連れていってくれる約束をしてた!」


浜面「……………………にゃあ」


麦野「…はーまづらぁ!!!」




滝壺「はまづら?今日は私とデートしてくれるんじゃなかったの?」


浜面「…………………」


麦野「はーまづらぁァァァああああああああああ!!!!!!」


浜面「(あっ、これ俺死んだわ)」


麦野「とりあえず遺言は聞いてあげるわよ?」


浜面「イヤァァァああああああああああああああ!!!!

自業自得とはいえ、こんなところで死にたくないィィィいいいいいいい」


滝壺「約束も守れないはまづらは応援できない」


浜面「そ、そんな…。…!!…そ、そうだ。この世界には誰かのピンチにいつも駆けつけてくれるヒーローがいるじゃねえか!!!!!

…俺を助けてよ、ヒーロー。助けてェェェえええええええええええええええええええええええええッッッ!!!!!!!」


ゴンガンドンバンガンギンドンガングジャ!!!!!!!!



(上条サイド)


上条「(誰かが俺を呼んだ気がする…)」


禁書「どうしたの、とうま?」


上条「…いや、なんでもねえ」


禁書「?」


上条「きっと、誰かが俺のうわさでも…ごっ、があああああああ!?」


その時上条は背後から突如現れた少女によって、後頭部をドロップキックされていた。


美琴「く、黒子!?」


白井「お姉様!!ご無事でしたのね!!」


美琴「うん。何一つ問題ないわ」


白井「良かったですわ!…ちなみに、貞操の方はご無事ですの!?」


美琴「ち、ちょ、ちょっと何言ってんのよアンタ!?…まだ大丈夫よ」


白井「ま、まだってどういう意味ですの!?ムキーッ!!やっぱりこの類人猿はここで始末しておくべきです…わ…?お姉様…?」


美琴「…ふふふ。…アンタはぁぁ…当麻に何してくれてんだゴラァァァ!!!!」


白井「あばばばばばばば」


トール「ちょっ!?ミコっちゃん、いくらなんでもやり過ぎなんじゃねえの?」


美琴「…ふん。こいつはこれくらいしないと懲りないのよ!」


トール「…怖」


フィアンマ「だ、大丈夫か?当麻?」


上条「ううう。何で上条さんの『前兆の感知』ってのはこういう時に役立たねえんだよおおお」


オティヌス「大方何か考えごとでもしてたんじゃないのか?」


上条「(だ、誰だか知らねえが、恨むぞ!!)」




婚后「あ、あ、あの…。か、か、か、かみじょーさん?///」


美琴「!?婚后さん!?」


上条「…ええっと、どなたでせうか?」


婚后「わ、わ、わ、わたくしは。み、御坂さんのご学友の、こ、こん、婚后光子と申しますの!!!」


上条「はぁ…(良かった、記憶喪失前に会った子ではないんだな)」


婚后「こ、こちらにも、わ、わたくしの大切な、、ゆ,友人が、いま、してよ?」


上条「?」


湾内「わ、わたくしわ、御坂様の後輩でこ、婚后さんの友人の、湾内と申しますの///」モジモジ


泡浮「わ、わたくしも、わ、わんないさんと、おなじく、あわつきと、もうしますの///」モジモジ


上条「お、おう(こ、こいつら。何で顔を真っ赤にして震えてるんだ?)」


美琴「(ど、どうしてこの子達が当麻のことを知ってんのよ!?)」


上条「まあ、よく分かんねえけど、とりあえずよろしくな!婚后さん、湾内さん、泡浮さん!」


上条は右手を前に差し出した


婚后「!?な、なんですの!?」


上条「握手だ。友好の証だよ。…もしかして知らねえのか?」


婚后「も、勿論知ってますわ!!」


婚后はおずおずと手を差し出して、軽く上条と握手した。


婚后「はわわわ///」


上条「よし!次はお前達だ」


そういうと上条は湾内や泡浮とも握手をした。


湾内&泡浮「///」


婚后「(よ、よくよく考えてみましたら、わたくし、年頃の殿方とこのように握手をしたの始めてですわ)」


湾内「(す、凄く大きなお手でしたわ。凄く温かくて、手を離すのが凄く名残惜しかったですの…)」


その時泡浮は感極まってしまったのか、バランスを崩して倒れそうになってしまった。しかし、


上条「おっとっと。大丈夫か、お前?」


泡浮「!!!??」


泡浮は倒れそうになったところを上条に抱き締められる形で助けて貰った。


婚后&湾内「!?」


泡浮「(な、なんということでしょう。わたくしは上条様に抱き締められてますのね…)」


泡浮は視界がぼやけていた。しかし、上を少し向いたら、自分の顔の直ぐ近くに上条の顔があることを痛切に感られていた。


上条「?泡浮さん??」


泡浮「(ああ…。なんという逞しいお顔をしてらっしゃるのでしょう。所々にある傷は正に英雄の勲章に見えますわ。上条様のお顔を見てるだけで幸せな気持ちになれますの)」


湾内「ほ、本当に上条様は淑女の危機を救ってくださるのですね…。泡浮さんが凄く羨ましいですわあ」


婚后「…」


上条「とりあえずもう大丈夫だろ。ほれ、自分で立てるか?」


上条は優しく泡浮を両足で立たせて彼女から離れた。


泡浮「(…うう。上条様から離れるだけで、心にぽっかりと穴が空いてしまったような感じが致しますわ)」


上条は一安心した後に、その場を離れようとした。しかし、その時婚后に異変が起きた。


上条「わ、わ!?なんでお前は泣くんだよ!?」


婚后「…う…う。だ、だってえ…」グスッ


上条「と、とにかく上条さんが悪かったから、泣かないでおくれよ!」


そう言うと上条は婚后を優しく抱き締め、頭を軽く撫でてあげた。


婚后「…あ、あなたが悪いんですの!!…あなたが泡浮さんばかり!!!」グスッ


上条「…ごめん。本当に悪かった」


婚后は常盤台中学に入学してから誰かに甘えるという機会がなかった。だから、上条への想いや泡浮への嫉妬が起因となって、今回そのような中学生らしい感情が一気に爆発してしまった。上条はとりあえずそれを受け入れることにした。


上条「…お前が何故今泣いているのか俺には全く理解できねえけど、何と無くお前が今まで何かを心に溜めていたのは分かった。とりあえず今は俺に好きなだけ吐き出しちまえ」


婚后「ううう」


婚后は上条に想いをありったけぶつけていた。それは何処と無く心の荷が降りているようで、だけどそれを見た親友が自分を見損なっているんじゃないかと不安になったり、上条を傷つけているんじゃないかと少し後悔もしたりして、普段と余りにも異なった自分の感情のコントロールができずにいた。それは婚后にとって一種の恐怖であった。しかし上条はその恐怖ごと包み込むように、優しく婚后を抱きしめた。


上条「…大丈夫。大丈夫だから」


婚后「…なんで…」


上条「?」


婚后「…何であなたは見ず知らずの他人にそこまで優しくできるんですの?」


上条「…さあな」


婚后「え…?」


上条「俺は馬鹿だからあれこれよく考えて行動するのはあまり得意じゃねえんだよ。だから、いつも自分の心の中に湧いて来る感情に従ってるまでなんだ。馬鹿だからその感情がどんなものかも説明できねえし、これが正しい行動なのかもはっきり言って分からねえ」


婚后「…」


上条「…ただ、一つだけ確かに言えることはある」


婚后「!」


上条「俺は今にも泣き出しそうな女の子、あるいは現在進行形で泣いている女の子を見捨てておくことが絶対にできねえんだよ!!」


婚后「!!…女…の…子…?」


上条「そうだ。お前の通ってる常盤台ってのが超エリート主義だってのは俺も知っている。授業の内容が大学院クラスだって噂も聞いたことあるし、強度だとか派閥などに関する争いもあるってのも知ってる。そういうシビアな環境に身を置いて、ある程度の実績を残すと、どうしても自分は普通の中学生とは違って凄い存在だと思いこんじまうんだろうな」


婚后「…」


上条「そして知らず知らずのうちに大前提を忘れていってるんじゃないか?自分がどれだけ凄い存在であっても、元を辿れば結局のところ繊細な女の子でしかないってことを」


婚后「!!」


上条「恐らくお前くらいの年頃の女の子だと、他人にそう指摘されるとイラってくるだろうし、自分では絶対認めようとしない。だけど、それが逆に、自分は思春期の女の子だってことを証明しちまってんだよ」


婚后「…」


上条「…お前もそういうのを他人に知られるのが恥ずかしかったから、今まで色々溜め込んでいたんだろう。…いや、お前の周りには、それをぶちまけられる相手がいなかったのかもしれねえな。だったら、俺がそういうの全部ぶっ壊してやるから、今は俺に好きなだけさらけだしてくれ。…大丈夫。俺の右手にはありとあらゆる幻想を殺す力が宿っているのだから…」


婚后「…上条さん…」


婚后は上条の厚意に甘えていた。婚后にとって上条は、まるで妹を宥める兄の様であった。


婚后「(なんて器の大きい方なのでしょう。上条さんの信念に比べましたら、わたくしのそれは本当にちっぽけな物でしかありませんわね…)」


上条「…もうそろそろ大丈夫か?」


婚后「…ええ、感謝致しますの。大変お見苦しいところをお見せして申し訳ありませんでしたわ」


婚后は下を向いて軽く落ち込んでいる様子だった。上条は微笑みつつ、軽く右手の人差し指と中指で婚后のおでこを上に押し出した。


上条「…ばーか。お前が下を向く必要なんか何もねえよ。俺はお前の力になれたと思うと嬉しいんだ。だから前を向いて笑っていてくれよ」


婚后「…は、はい!」


婚后は笑顔で返事をした。そして、


婚后「…ごめんなさい。湾内さん、泡浮さん…。わたくし、お2人の前ではしたない姿をお見せしてしまいましたわ…」


湾内と泡浮はお互いに一度目を合わせ、そしてお互い軽く微笑んだ後、婚后に笑顔を向けて答えた。


湾内「…いえ、わたくし達は今非常に嬉しい気持ちですのよ?」


婚后「…え?」


泡浮「婚后さんの新しい一面が見ることができたんですもの。親友としてこれ以上に嬉しいことはありませんわ」


婚后「…湾内さん、泡浮さん…」


3人は笑顔でお互いを見つめ合っていた。


上条「よし、これで一件落着だな!それじゃあ、上条さんはこれで…」



湾内「!!……あの…上条…様…?」


上条「あん?」


湾内「も、もしよろしければ、わ、わたくしも軽く抱き締めて頂けないでしょうか…?」モジモジ


上条「なんだそんなことか。ほれ」


上条は優しく湾内を抱き締めた。


湾内「(はあぁ…。なんという温かさなのでしょうか。まるで上条様から生きる活力を頂いているようですわ…///)」


上条「…こんな感じで大丈夫か?」


湾内「…はい。ありがとうございました///」


上条「いえいえ。それでは…」


上条が振り返ると、そこには鬼の形相をした2人の少女がいた。


禁書「…とうま。初対面の女の子達を一人残らず抱き締めるなんて、とうまは相当罪深いことをしたかも。天にまします我らが父に代わって、私がとうまの罪を裁かさせて貰うんだよ!」


美琴「…今回は私の友達だからある程度は大目に見てあげてたけど、物事にはやり過ぎってモンがあるわよね…?分かってないようなら、私が無理矢理にも分からせてあげる!」バチバチ


上条「…………………………てへ☆」


禁書&美琴「「とうま(当麻)!!!」」


上条「…へっ!俺がいつ迄もお前らの攻撃を対処できねえと思ったら大間違いだぜ!!!」


そういうと上条は手始めに飛んできた美琴の『雷撃の槍』を右手を使わずに回避してしまった。


美琴「!!な、何ィッ!?」


オティヌス「!!」


上条「そして次はっと!」


次に上条は背後から襲ってきたインデックスも躱すことに成功していた。


禁書「う、うそ!?」


上条「へっへっへ。甘い、甘い!」


そこでインデックスと美琴は一度目を合わせた。彼女らは一度頷くとすぐさま行動に出た。


上条「おっ、来るか?まあ『今の』上条さんには、何度やっても無駄だと思うガァァァああああああッッッ!!!!!???」


インデックスと美琴は2人同時に制裁を行った。油断していた上条は回避行動をとれずにモロダメージを食らってしまった。明滅する意識の中で上条はとある光景を目撃していた。それは…、



一方通行「…っしゃァ!!俺の勝ちだぜェ、三下ァ!!!」


トール「はあ!?て、てめ最後イカサマしやがったな!」


暇を持て余していた一方通行達は、例のアプリに付随するミニゲームで遊んでいた。ゲーム内容は、イマジンブレイカーを操作して、敵の攻撃を回避しつつ敵を殴り倒し、そして囚われたヒロインを救うというもの。そのゲームのスコアで争っていた。


一方通行「それは言い掛かりですゥ。そンなくだらねェ真似一切してませェン。そもそも学園都市第一位の俺に科学モノで争うこと自体が間違ってンだよ!」


トール「ぐっ!?このクソモヤシ野郎調子に乗りやがって!!」


一方通行「ああン?なンだったらモヤシの底力を見せてやろォかイカレ脳筋野郎!」


トール「誰が脳筋野郎だと!?もう許さん!ボコボコにしてやる!!」


一方通行「面白ェ!!かかって来いよ………ごっ、がはァァッッッ!!?」


その時一方通行とトールは何者かによって頭を殴られていた。


トール「い、いってえ!何しやがる!!?」


彼らを殴った少女は、右腕の腕章を突き付け彼らを真っ直ぐ睨みつけた。


固法「『風紀委員』です!あまり暴れるようなら支部まで来て貰いますよ!」


白井「!!こ、固法先輩!?」


それまでダウンしていた白井は、その声を聞いて飛び跳ねるように目を覚ました。


固法「特にそちらの金髪のあなた!先程何らかの騒動を起こしていたようですが、とある『警備員』の進言がなければ、今頃あなたは連行されていた筈なんですよ!?どこの生徒かは知らないけど、謹んだ行動をしなさい!」


トール「うう。面目ねえ」


固法「…よろしい。それで何故、今あなた達はいがみ合いをしていたの?」


一方通行「こいつがひ弱そうな僕のことを一方的に殴ろォとしてきたンですゥ」


トール「!!テメェ、何勝手なこと抜かしてやがる!!」


トールがまた一方通行に掴み掛かろうとした時、2人は先程よりも強く頭を何者かによって殴られた。



美琴「アンタら…。先輩に迷惑かけてんじゃないわよ!!!」


固法「御坂さん?」


美琴「すみません、先輩。こいつらは私がきつーく言っておきますので、先輩は『風紀委員』の仕事を続けてください」ニコッ


固法「はあ…」


トール「おいおい、そりゃねえだろミコっちゃん!?今のはどう考えても女子中学生がやるようなパンチじゃなかったぜ!?」


美琴「…あぁ!?」


トール「…す、すみませんでしたぁ!!」


トールは甲斐性もなく土下座していた。一方、一方通行は心の中で確信していた。


一方通行「(やっぱ、打ち止めは最高だぜェ…。オリジナルみてェな凶暴な性格に育たねェよォに祈ろォ…)」


固法「あははは…。まあいいわ。…さて白井さん…?あなた覚悟はできてるわよね?」


白井「へ?何のことですの?」


固法「とぼけないで頂戴。あなた『風紀委員』の仕事放ったらかしにして、長時間何をやっていたのかしら?」


白井「…………………………あ、ですの」


固法「罰として、これからあなたには始末書をたっぷり書いて貰います!ふふ、安心なさい。あなたの寮監さんには既に連絡しといたから門限を気にする必要はないわよ?」ニッコリ


白井「ふ、不幸ですの…」


美琴「…ごめん黒子。今度ケーキ奢ってあげるから今日のことは許して!」


白井「!!黒子、頑張りますわ!…それでは皆さん御機嫌よう」


そういうと、白井と固法は『空間移動』で消えていった。


美琴「(よっしゃ、ラッキー♪これから当麻の部屋に行くのに黒子に文句言われずにすんだわ!)」


そのころフィアンマは一人でせっせと、ゲームをこなしていた。


フィアンマ「…ふむ。やはり右手がないとやりにくいな…。まあしかしそんな状態でも俺様の方があいつらよりスコアは上だがな。このゲームでも俺様がナンバーワン。つまり、当麻の一番の男はやはり俺様だと言うことだ」


彼らの行動を地面の上で横になって見つめていた上条は心の中でふと思った。


上条「(…ふふ。みんな仲良くなれたみたいで上条さんは大喜びですよ)」フッ




オティヌス「おら、いつまでも寝転んでいるな。みっともないぞ」


オティヌスは上条のズボンを少し捲り、上条の足に生えていた毛を数本一気に引き抜いた。


上条「うんぎゃあァァァ!!!!」


上条は涙目で飛び起きた。


上条「い、いくら何でもやり過ぎではないでせうか、オティヌスさん?」


オティヌス「…ふん」


婚后「だ、大丈夫ですの?上条さん?」


上条「ハハッ。マドモアゼル、上条さんにとってはこれくらい大したことありませんよ!」フッ


婚后「(ドキッ)そ、そうですの…。良かったですわ(今のお顔、物凄く魅力的でしたわ…///)」


その時、頭に大きなタンコブを作って不貞腐れていた一方通行とトールを、無理矢理引きずっていた美琴が上条達の元へとやって来た。


美琴「ねえ婚后さん、一つ質問してもいいかな?」


婚后「(ふ、不憫な殿方達ですの…)な、なんですの?」


美琴「どうしてあなた達は、当麻のことを知っていたの?アプリではイマジンブレイカー=当麻とはなってなかったと思うんだけど?」


湾内「あら、皆様方はご存知なかったのですね」


美琴「?」


泡浮「先程の皆様の諍いは学園都市中にライブ中継されてましたの」


上条&美琴「「は?」」


婚后「確か『噂のイマジンブレイカーらしき人物の活躍』という名目でしたわ」


美琴「(そ、それはまずいわ!!それじゃあこの子達みたいに当麻を狙う女の子が一気に増えちゃうじゃない!!)そ、そうだったの…」


上条「」


美琴「…当麻?」


上条「…………い……」


美琴「…い…?」


上条「イヤァァァあああああああああああああああああああああああああああッッッ!!!!!!」


美琴「ちょ、ちょっと!落ち着いてよ、当麻!!」


上条「じょ、冗談じゃねえ!そんなことされちまったら、これから色んな人に注目浴びちまうじゃねえか!!そんなことした奴一体誰だよ!?」




土御門「それは勿論この土御門さんだぜい」


上条&一方通行「「土御門!?」」


土御門「ふふ…。さっきは素敵なプレゼントをありがとう、カミやん。お陰様でオレは青ピの馬鹿に思いっきり後頭部を殴って貰えたにゃー。

…まさかそんなとんでもない贈り物をしてくれたのに忘れてたとは言わないよにゃー?」


上条「…………………あ」


土御門「だから、どこかの『聖人』と違って、借りは直ぐ返す主義のオレが、カミやんに素敵なお返しをしてやったまでぜよ。感謝して欲しいにゃー」


上条「(聖人…?)」


土御門「…ちなみにそのライブ中継によって幸か不幸か、イマジンブレイカー=カミやんてのがこの街全体に広がっちまったぜよ」


上条「な!?」


土御門「みんなカミやんに興味津々。きっと今日から色んな人に付きまとわれるんじゃないかにゃー?大変だにゃー」


上条「テメェ、他人事みてえに言うんじゃねえよ!!」


土御門「きっと女の子にもモテモテになってると思うぜい」


上条「!!そ、それは本当か土御門!?それだったらめちゃくちゃ嬉し…」


美琴「…と・う・ま・?」バチバチ


上条「……おほん。土御門君、上条さんがそんなにモテる訳がないだろう?デタラメを言っちゃあいけんよ」


一同「…」


婚后「(み、御坂さん。実際はどうなんですの!?)」


美琴「(今ですら世界中の女の子にモテモテよ…)」


婚后「(そ、そうですの…)」


土御門「どうだかにゃー?そういえばさっき、カミやんのタイプである、年上のお姉さんがカミやんのこと見て仲良くなりたいなって言ってたにゃー(結標のことだけど)」


上条「ま、マジか!?……ありゃ…?」


禁書「…とうま?」


美琴「…当麻?」


婚后「…上条さん?」


湾内&泡浮「「…上条様?」」


上条「…何故皆さん怒ってらっしゃるのでせうか?上条さんには到底理解できない!……ヘルプ、土御門!!」


土御門「へっ!一度お灸を据えて貰うといいにゃー!!」


上条「テメェ!やりたい放題やって、そりゃねえだろ変態シスコン詐欺師!」


土御門「…な、何を言ってるぜよカミやん。土御門さんがシスコンなどと…」チラッ


美琴「…ありえないんだけど(ドン引き)」


婚后「…なんて、汚らわしい!」


湾内&泡浮「「最低ですわ」」


禁書「しすこん?何それ、美味しいの、とうま?」


土御門「うう…」


一方通行「(ざまァ)」


上条「(むふふ)」


土御門「…ゆ…許すまじカミやん!!この前のリベンジをさせて貰う!!」


上条「上等だ、掛かって来いよ!!返り討ちにしてやらあ!!!」


上条の元へとダッシュした土御門は、手始めに上条の顔をめがけてパンチを繰り出すふりをして、上条の足を狙った。しかし、上条はそれを先読みし、足への攻撃を躱してカウンターを試みた。土御門もそれを読んで一旦後ろへ下がった。


土御門「(カミやんのケンカ殺法はお見通しですたい。あとはいかに、後の先を取れるかが勝負!!)」


そう意気込んだ土御門だったが、突如背後から殴られた。


土御門「な!?」


一方通行「…」


土御門を殴ったのは一方通行だった。


土御門「…何故お前がオレを殴る?これはオレとあいつの問題だと思うが?」


一方通行「…そンな大層な理由はねェよ。ただなンとなく、誰かに八つ当たりしたかった気分なンだ」


土御門「は?」


その時土御門の横に金髪の少年が仁王立ちしていた。


土御門「!!お前は『グレムリン』のNo.2か!何故お前もオレに敵意を向ける?」


トール「…こんなのは俺の性分じゃねえんだけどさ、俺も今無性に誰かを殴りてえんだよ」


土御門「な…に?」


一方通行とトールは、先程美琴に殴られた挙句、ガミガミ説教されたのでイライラしていたのである。そして、


フィアンマ「なんだか良く分からんが、俺様も混ぜて貰おう」


土御門「!!」


上条「…さて…クサレ陰陽師の土御門君。学園都市最強の超能力者、『世界を救う力』を所有する元神の右席、北欧のNo.2の『全能神』、そして『世界の基準点』をなす幻想殺しを相手に、テメェはどう出る?」


土御門「…いや、どう考えても一個人に向けていいような戦力じゃないぜよ!!なんでワールドクラスのエース共が、弱小チームを蹂躙するみたいな展開になるんだにゃー!?」


上条「…てめーは俺達を怒らせた」


土御門「いや、オレが怒らせたのはカミやんだけだろ!?何故一方通行達までオレを殴ろうとするんだよ!?」


一方通行「ごちゃごちゃうっせェ。いいから殴らせろ」


土御門「そ、そんな…。あ、あんまりだにゃー!!!!」


ガンゴンバギングジャ!!


土御門「グフゥ…」


婚后「あ、あの…、これはちょっとやり過ぎなのでは?」


一方通行「あン?こいつはこれくらいでくたばってくれるよォなタマじゃねェよ。余計な心配はするな」


婚后「で、ですが…」


その時とある少女が、清掃ロボットの上に乗って上条達の元へとやって来た。


舞夏「こんなところにいたのか兄貴ー。もうご飯作ってあるから、早く帰らないと冷めちゃうぞー?」


土御門「!!…さあ、帰ろうか舞夏」


婚后&湾内&泡浮「」


土御門は飛び起きて、そのまま二人で帰宅していった。


上条「まあ、あんなのはほっといて、俺達も帰ろうぜ。一旦小萌先生のところに行って買い物袋を取りにいかねえと」


禁書「わーい!今日は何を買って来てくれたの、とうま?」


上条「ふふ。帰ってからのお楽しみですよインデックスさん」


禁書「おお、それなら期待して待ってるんだよ。楽しみだねー、スフィンクス!」


スフィンクス「ニャー♪」


上条が帰路につこうとした時、婚后が上条を呼び止めた。


婚后「あ、あの…。上条さん!」


上条「何だ?」


婚后「…また、上条さんにお会いしてもよろしい…でしょうか?」


湾内&泡浮「「わたくしも!」」


上条「当たり前だろ?お前達の話だったらいつでも聞いてやるよ」


婚后「あ、ありがとうございます///」


婚后達の笑顔を見た美琴は、吹っ切れた表情をして、婚后達に近づいた。そして、上条に聞かれないように小さな声で、とある話を始めた。


美琴「…敵に塩を送るようでちょっと気が進まないけど、私の友達であるあなた達には、特別に一つアドバイスをしてあげる!」


婚后「アドバイス…ですの?」


美琴「うん。『げんそうごろし』と言う言葉を覚えて、例のアプリの特殊モードをやってごらんなさい」


婚后「幻想」


湾内「殺し」


泡浮「ですの?」


美琴「そうよ。そうすれば、あなた達のそばにも当麻がいつもいてくれるようになるわ」


婚后「!!ありがとう、御坂さん!」


美琴「えへへ。あなた達に喜んで貰えるなら私も嬉しいわ。それじゃ、またねみんな!」


そう言って上条一行はその場を離れていった。


湾内「…行ってしまわれましたわね」


泡浮「上条様との出会いはわたくしにとって一生忘れられないものになる気が致しますわ」


湾内「ふふ。わたくしもですわ」


婚后「(絶対にあなたをこの婚后光子に振り向かせて差し上げますわ。…だからそれまで覚悟しておきなさいな、と、当麻さん!)」


上条一行は上条の寮へと向かっていたが、オティヌスは深い考え事に耽っていた。彼女は先程の上条、インデックス、美琴のやり取りを思い出していた。


オティヌス「(…あの人間は先程第三位の『雷撃の槍』を躱していた。しかし、恐らくあれは『前兆の感知』によって、予め第三位の攻撃を予測できていたから躱すことができた訳ではないだろう。何故ならば、仮に前兆を感知していたとしても、そこから容易く回避行動が間に合う程『雷撃の槍』は遅くはない筈だ。普段は幻想殺しの宿った右手を突き出せば、それが避雷針となって勝手に右手で打ち消すことに成功していたまでのはず。つまり、回避するということまでは、前兆を感知してからでは不可能なことだろう。最も偶々なら避けられるかもしれんが…。しかし、私の見立てでは、あいつは間違いなく偶然避けたのではなかった。だとすれば既存の回避方法を使っていたのでは無いはず。

…ならば恐らくアレか…。奴は会話の流れから展開を先読みしていたのだろう。言わば『予測検索』能力と言ったところか…。例えば、ある子供が『もう3時だよ』と言ったとする。次に来るのは、『おやつの時間だね』のような台詞が来ることを予測するのは容易いだろう。それと似たようなことを、特定の人物との会話において成し遂げる力。『前兆の感知』と明確に異なるのは、それは異能を介してない場合でも効果を発揮する点。だから、先程第三位の攻撃を躱した直後に、背後からの禁書目録の攻撃も躱すことができたのだろう。現状は予測能力自体まだ完全に制御できてないようだが、後には全ての会話を先読みすることが可能になるかもしれん。

…そして一番の問題は、いつあの人間がそのような能力を獲得していたか?ということだ。昨日まではそんな能力を手にしていた様子はなかった。それに、どうも今日のあいつは、私が知っているあいつとは少し違う点が見受けられる。今日のあいつは、普段と違ってやたら女の我儘をすんなりと聞いている気がする。『理解者』である私が言うのだから間違いない。

だとすれば今日何かあったと考えるべきだ。しかし、幾ら学園都市の学生だとしても、急に変化が起こる物なのか?何者かによる介入があったと見るべきじゃないか?…一番可能性が考えられるのは、例のアプリに何らかのシステムが備わっていたということか…。

…しかし、幾ら神とは言え、私は所詮魔術側の存在だ。科学側のシステムについては理解が及ばない可能性も大いにありえる。現状、特に健康上の問題があると言う訳では無いってのが唯一の救いか…。とにかく、不吉なことにならなければ良いのだが…)」




(午後6時半、学舎の園内にある常盤台中学女子寮)


食蜂は騒動の後寮にある視聴覚ルームにて、派閥の少女に録画して貰った、先程の上条達のVTRを見直していた。


食蜂「♪」


『なあ、操祈?お前は今何を見ているんだ?』


食蜂「ふふ。当麻の活躍よぉ」


『俺の…?』


食蜂「そうよぉ。それにしてもぉ、やっぱり当麻は凄くかっこいいわぁ。惚れ惚れしちゃうんだゾ☆」


『ば、馬鹿。照れるじゃねえか///』


食蜂「やぁーん。照れてる当麻はカワイイわぁ」


『…うう。あまり上条さんに意地悪しないでえ…』


食蜂「ふふ☆」




縦ロール「女王。こんなところにいらっしゃったのですのね。わたくし達はずっと探しておりましたのに…」


その時部屋に食蜂の派閥に属する少女が入ってきた。


食蜂「あらぁ?それは悪いことをしたわぁ。ごめんねぇ」


縦ロール「いえ、女王がご無事でしたら何の問題もありませんわ。…ところで女王は今何をなさってますの?」


食蜂「ふふ。私の知り合いが戦っているビデオを見てるのよぉ。そうだ、せっかくだからあなたもごらんなさい」


縦ロール「はぁ…。…ってこれはイマジンブレイカー様ではございませんか!」


食蜂「はァーッ!?ち、ちょっとぉ、何で縦ロールちゃんがそれを知っているのよぉ!?」


縦ロール「何を仰ってますの、女王?今や『学舎の園』内では、この殿方は言わばアイドルのようなものとして扱われているではございませんか」


食蜂「(私が『学舎の園』から離れている間に何があったって言うのよぉ!?)…ごめんねぇ、縦ロールちゃん。ちょっとあなたの記憶を確認させて貰ってもいいかしらぁ?」


縦ロール「お好きなように」


食蜂「ありがとう☆」


『読心記憶/該当人物よりイマジンブレイカーに関する記憶情報を抽出』


食蜂「(…なるほどねぇ。『学舎の園』内の女の子はほぼ全員が例のアプリを入手している。そして例のライブ中継は『学舎の園』でも放送され、見事にみんな当麻に釘付けになっちゃった訳ねぇ…。ただ、私の派閥の女の子も例外ではない、というのは衝撃だったけどぉ。

また『学舎の園』専用のSNSでは、各々手にしていた情報を寄せ集めて、イマジンブレイカーなる殿方の特定を行っているらしいわぁ。そこでは以前に『学舎の園』に侵入した殿方が該当者ではないかという説が有力。そこまで突き止めたってのは流石力と言ったところかしらねぇ。侵入した理由ってのがとある淑女を救うため説が主流になっちゃっているのは、彼女達の乙女力がなせる技ということかしらぁ?

…気に入らないのは、以前ウチの学校の女子寮の前であいつに抱きつかれたり、『大覇星祭』であいつと間接キスをしたことがある殿方説って奴ねぇ。要はあいつの彼氏説。それだけは絶対許せないんだからぁ!!)」


縦ロール「…女王?」


食蜂「…あらぁ、ごめんねぇ。ちょっと考え事に夢中になっていたわぁ」


縦ロール「…はぁ。しかし女王もこの殿方に興味をお持ちでしたとは」


食蜂「…当たり前なんだゾ。だってこの殿方は、将来を約束された私の許嫁なんだしぃ☆(あいつの彼氏説を消し飛ばすためならこれくらい言ってやるわぁ!)」


縦ロール「な!?そ、それは本当ですの、女王…?」


食蜂「勿論よぉ。本当は今迄、あなた達に隠れて逢瀬を重ねてた訳なんだゾ☆」


縦ロール「そ、そうですの…」


食蜂「…そうだ、この騒動が終わってある程度落ち着いたら、派閥のみんなに彼を紹介してあげるわぁ☆」


縦ロール「まあ、それは素敵なお話ですわ。もうお気づきだと思いますが、わたくしも少なからずこの殿方に興味がありましたので、とても嬉しいですわ」


食蜂「勿論よぉ。この『上条操祈』ちゃんにお任せあれ。…なんちゃって☆」


縦ロール「まあ、すっかりお嫁さん気分ですのね。女王が羨ましいですわ。しかし、世界を救った英雄と常盤台の女王が結ばれるなんて、なんとも素敵なお話でございますわね」


食蜂「…そうねぇ」


縦ロール「…女王…?」


食蜂「…ねぇ、縦ロールちゃん。もし私と彼が結ばれるのが誰かに邪魔されていたらどうする?」


縦ロール「決まってますわ!女王の幸せを壊そうとする者がいるのであれば、わたくし達が懲らしめて差し上げます!」


食蜂「…例えそれが神様であってもぉ?」


縦ロール「神様?この街の住民がそういうモノを信じるのも可笑しな話ですけれど、とにかくわたくしはどんな相手であろうと、女王が幸せになるのを邪魔するような真似は絶対にさせませんわ!」


食蜂「…そう。やっぱりあなたに出会えて本当に良かったわぁ☆」


縦ロール「な、何を仰りますの女王。少々お恥ずかしいですわ///」


食蜂「あはは。それじゃせっかくだしぃ、みんなを集めてビデオの続きでも見ましょ?」


食蜂は自分の派閥の連中を集めてビデオを改めて視聴した。


縦ロール「しかし、上条さんはこれでいて無能力者であるというのがとても信じられませんわ」


食蜂「ふふ、これが噂の幻想殺しの力なんだゾ☆」


常盤台生A「…幻想殺し?」


食蜂「そう。あらゆる能力を打ち消すことのできる右手。それを彼は持っているのよぉ」


常盤台生B「では、右手一本で御坂様をあしらえる無能力者の殿方というのは…?」


食蜂「勿論彼よぉ。御坂さんや私の能力もあっさり打ち消しちゃうんだゾ」


常盤台生C「そ、それは凄まじいですわ…」


縦ロール「ちなみにこちらの白髪の殿方は?」


食蜂「あぁ、そいつねぇ。そいつは学園都市第一位の変態白モヤシ君よぉ」


常盤台生D「…変態白モヤシ様ですの?奇妙な名前ですわね。しかし、白髪に紅の瞳で整った顔立ち。線の細い身体。何故だかは分かりませんが、なんとなく守ってあげたくなりますわ」


縦ロール「あら、あなたは変態白モヤシさんに興味をお持ちになったようですわね」


常盤台生D「へ?…い、いやそんな///」


食蜂「(確かに見た目だけは悪くないけどぉ、女の子に『守って上げたい』って評価されるのってどうなのよぉ…)」


縦ロール「ではこちらの、金髪でやや女性的な顔立ちの殿方はどちら様なのでしょうか?」


食蜂「…うーん、彼の詳細力に関しては全くの不明なのよねぇ。そのブレードに関しては、能力なのかどうかも不明だしぃ…」


縦ロール「確かにこれだけの出力のブレードは、超能力者でも扱えるかどうか判断しかねますわね。ひょっとすると、あの御坂さんでも厳しいのではないでしょうか?」


食蜂「どうかしらねぇ」


常盤台生E「しかし、金髪碧眼で色白の外国出身の殿方。そして、やや好戦的な態度。まるで文学作品に登場する王子様のようですわ」


食蜂「あら、あなたはこっちのイケメン君に惚れちゃったのかしらぁ?」


常盤台生E「な、な、な!?わたくしは女王に仕えている身でございますので、このような殿方に現を抜かす訳にはいきませんわ!」


食蜂「我慢しなくてもいいのよぉ?何だったら、あなたに彼のことを紹介して貰える様に、私が当麻に相談してあげてもいいんだゾ☆」


常盤台生E「ほ、本当ですの!?…って、ち、違いますのよ!?わ、わたくしは、ええとその〜……あう///」


縦ロール「あらあら、みなさん殿方に夢中になってしまわれたようでございますわね。まあ、この諍いに参加なさっている殿方は皆容姿が優れておりますもの。当然なのかもしれませんわね」


食蜂「だけど、それでも当麻がぶっちぎりの容姿力を持っていると思うわぁ」


縦ロール「(即座にこの反応…。やはり女王は、上条さんに骨抜きにされてしまわれているご様子ですわ…)」


常盤台生F「…あの、一つ疑問に思ったのですけど、イマジンブレイカー様が最も評価されているのは、常に淑女の危機に駆けつけてくださる性質や、確固たる信念をお持ちの点ですわよね?」


縦ロール「それがどうかなさいましたか?」


常盤台生F「では、仮にそちらの白髪や金髪の殿方がイマジンブレイカー様のような言動をなさったらどうなるのでしようか?やはり、彼と同じく多くの淑女に好意を持たれるようになるのでしょうか?」


食蜂「…ありえなくはないわねぇ。まあ、そう簡単に真似できるほど、当麻の功績や歩んできた道のりというものはシンプルではないんだゾ☆」


しかし、この時食蜂達はまだ知らなかった。後にフィアンマを含む彼らは、上条当麻の生き方を真似ていき、その過程で多くの異性や同性に好意を持たれていくことを。


縦ロール「…ともかく、女王に仕えておれば後に彼らと関わりを持つことができるのです。みなさん、女王との出会いに感謝致しましょう!」


常盤台生達「はい!」


食蜂「ありがとう、みんな☆」


縦ロール「では、そろそろお夕食のお時間ですわ。食堂に向かいましょう」


食蜂は食堂に向かう途中で、恒例の『祈り』をしていた。


食蜂「(…この子達の期待にちゃんと応えられるように、早く私の側にいられるようになってよねぇ。当麻ぁ…)」



(同時刻、イギリス清教)


イギリス清教の面々は仕事をそっちのけで例のアプリを弄くりまわしていた。複雑な事情を経て魔術師となった彼らにとって、『上条当麻』は自身に欠けていたピースを埋める役割を担っていた。


『火織、今日は色々上条さんに良くしてくれて、本当にありがとな!火織には感謝してもしきれねえほど感謝してるんだ』


神裂「ふふ…。まさか貴方にこれ程まで感謝される時が来るなんて思いもしませんでした。しかし貴方に喜んで貰えるなら私は本望です。そんなに気にしなくても結構ですよ?と、と、当麻!」


『流石女教皇様、器が大きいですな。でも俺も火織になんかしてあげてえんだよ。だから、困った時は俺を読んでくれ。絶対火織の役に立って見せるから!!』


神裂「…!…ありがとう…当麻」



『…あ、あの、五和たん。アレをして欲しい…な…?』


五和「あらあら、あなたったら♪」


五和は画面越しに『上条』の唇へと、自分の唇を合わせた。


『あ、ありがとう///上条さんはこんな素敵な嫁さんを貰えて凄く幸せですことよ?』


五和「私もあなたの妻になることができて最高に嬉しいです///」


『五和たん…。俺がもっともっとお前を幸せにしてやるからな!!』


五和「は、はい♡」



『たっちゃんはすごい頼り甲斐があるな。だけど、いつも無理し過ぎじゃねえか?たまにはゆっくり過ごしても良いと思うぜ?』


建宮「うう…そんなに俺のこと心配してくれるのはお前さんだけなのよな…。ありがとよ。だけど、俺には大切な仲間がいる。そいつらを見捨てておけないのよ」


『…そっか。やっぱたっちゃんはかっけえなあ。俺もたっちゃんを見習って頼り甲斐のある漢になれるように頑張るわ!!』


建宮「おう!その粋なのよな!!」



『おい、アニェーゼ。お前最近部下のことで悩み過ぎじゃねえか?やつれてるように見えるぞ?』


アニェーゼ「!!…流石の観察力と言ったところですかね。全てはお見通しって訳ですか…」


『まあな。それに、悩みがあるなら俺に相談してくれよ。俺はお前が一人で抱え込んでるところなんか見たくねえんだよ』


アニェーゼ「…なら、遠慮なく全部ぶちまけちゃいますよ?…当麻?」


『…良いぜ!かかってこいよ!そんな幻想は俺がまとめてぶっ壊してやる!!』



『うん、美味しい。こうやってオルソラとゆったりお茶を飲むことができて、上条さんは最高に幸せな気分だぜ!』


オルソラ「あらあら、まあ///」



『確かに我らが主の御言葉は尊大なものかもしれねえ。だけど、お前だって一人の女の子なんだ!あまり我慢なんかして体を壊すんじゃねえぞ?』


ルチア「…は、はい!」



『おお、ここの「チョコラータ・コン・パンナ」は確かに美味い!こんなの初めてだぜ。食べさせてくれてありがとな、アンちゃん!』


アンジェレネ「え、えへへ///」



『シェリー、アンタは本当に友達思いなんだな…。こんなこと言うと少し照れくさいけどよ、俺、アンタの友達になれて本当に良かったよ』


シェリー「!!…ふん」



『いいか、コウ?男ってのは、今にも泣き出しそうな女の子を見つけたら、どんなに強い相手でも歯を食いしばって立ち向かわなきゃならねえんだ!』


香焼「お、押忍!兄貴!!」



『親父。もう親父も結構な年なんだから、あまり無理すんじゃねえぞ?』


諫早「ふん!まだまだ若い奴には負けてられんよ!」



『対馬ねーちゃん!俺もう疲れちゃったー。少し横になってもいい?』


対馬「(か、可愛い///)もう、しょうがないわね」



ローラ「(まったく…。こいつらときたら本来の仕事を忘れたりて、アプリに熱中し過ぎになりけるのよ。そこまであの少年は魅力的なのかしら?

…なら、部下のためにも貴様からあの少年を奪いたる必要があるのではなきに?…統括理事長アレイスター)」



(午後7時、上条の寮付近)


上条「(さっき小萌先生のアパートに寄ったら、何故か結標さんに変な薬を飲まされそうになった。一方通行曰く、それは結標さんが秘密裏に研究していた、高校生を小学生の体へと変化させる薬らしい。なんでも、以前実験体にされたとか…。とりあえず、一方通行がいてくれて本当助かったぜ…。)」


禁書「とうま?どうしたの?」


上条「いや、なんでもねえよ」


禁書「?」


しばらくすると、上条達は寮の目の前へと辿り着いた。しかし、一つ違和感があった。


上条「あ、あれ?」


トール「どうした上条ちゃん?」


上条「何で俺の部屋に明かりが点いてんの?」


禁書「へ?私達が部屋から出た時は点いてなかったんだよ。そもそも部屋を出た時はまだ明るかったし…」


美琴「アンタが消し忘れただけじゃないの?アンタってやたらそそっかしい感じがするし…」


禁書「さっきから短髪は私のこと馬鹿にし過ぎかも!それに、私が忘れることなんてあり得ないんだよ!だって、私には『完全記憶能力』があるんだもん!」


美琴「…本当にい?」


禁書「むうーッ!短髪は人を見た目で判断し過ぎなんだよ!それってお子ちゃまのすることかも!」


美琴「なんですってえぇぇえ!?アンタだけには言われたくないんだけど!!」


フィアンマ「まあ、待てお前ら。あまり騒いで当麻に迷惑をかけるのは良くないと思うぞ?」


禁書&美琴「「あぁ!?」」


フィアンマ「な、何でもない」


一方通行「(やっぱ、打ち止めは天使だわ)」


オティヌス「まあともかく、禁書目録の言う通りだ。私達が出発した時には確かに電気は点いてなかったはずだ」


上条「…だとすれば、現在何者かが俺の部屋に侵入していると言う訳か。狙いは何だ?俺の部屋に盗む物なんか何もないだろうに…」


トール「上条ちゃんの下着泥棒だったりして」


上条「アホか!そんな物盗んで喜ぶ奴がいる訳ねえだろ!!」


美琴「(…ちょっと欲しいかも…)」


オティヌス「まあ、何かが侵入しているのは間違いなさそうだ。とりあえず早目に部屋に戻った方がいいんじゃないか?」


上条「…ああ、そうだな!行こうみんな!」



(上条の部屋の前)


オティヌス「どうだ禁書目録?何らかの魔術的反応はあるか?」


禁書「…とりあえず結界のようなモノが敷かれているようではなさそうだね」


オティヌス「…ふむ。なら第一位、お前が最初に部屋に入れ。お前なら先制攻撃を受けても、余程のことがない限り何とかなるはずだ」


一方通行「…チッ。オマエに命令されるのは釈だけどよォ、それが一番みてェだなァ」


上条「すまねえ、一方通行」


一方通行がドアノブを掴み、ちょっと力を入れようとした瞬間、ドアそのものがドミノのように部屋の中へと倒れてしまった。


一方通行「………………………は?」


美琴「ちょっ!?」


一方通行「…」チラッ




上条「一方ァァァ通行くゥゥゥゥゥン!!」


一方通行「いや、ちょっと待てェ!!俺のせェじゃねェよ!?俺はそンなに力入れてねェし!!」


上条「…チッ」


一方通行「(こ、怖えェ…)」


これ以上拘泥しても仕方ないと感じた上条は、とりあえず部屋の中を覗いてみた。そこには…





バードウェイ「おう、ようやくお帰りか。やけに遅かったじゃないか」


レッサー「もう!あまりも遅いから待ちくたびれちゃいましたよ…」


マーク「やっと帰って来てくれましたか!…あっ、お邪魔してます」


バードウェイとレッサーはコタツに両足を突っ込み、冷凍庫に入ってたソフトキャンディを優雅に頬張りながら上条達を迎えいれた。マークは体中ボロボロになりながら、バードウェイの後ろに立っていた。


上条「ふざけんじゃねええええええええ!!!テメェら、ここは魔術師専用のホテルじゃねえんだよおおおおおお!!」


バードウェイ「ガタガタ抜かすなよ。みっともない」


上条「…なんたる言い草だよ…。

……って言うか、マァぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーク!!」


マーク「な、なんでしょう」


上条「アンタはこの上条さんが認める、上条さんの知り合いの中で5本指に入る位の常識人だったはずだろおおおおお!?なんでアンタがいるのに、こんな悲惨な有様になってんだよおおおおお」


マーク「こ、こっちだってあなたが部屋にいないから不貞腐れてしまったボスを宥めるのに大変だったんですよおおおおお!!寧ろ壊されたのがドアだけだってことに感謝してくださいよおおおおお」


上条「ぐ、ぐぬぬ…」


バードウェイ「そういうことだ。素直に諦めろ」


上条「…悲劇の元凶に言われると偉い腹が立つんですけど!?それにしてもなんでお前らが学園都市に来てんだよ?」


バードウェイ「そりゃあ、お前が出てるこのアプリを最大限に楽しむためには、学園都市内で遊ぶのが一番いいと話を聞いたものでな」


レッサー「右に同じく。私達は偶々一緒になったんで、せっかくだからあなたがいなくても部屋に上がらせて貰いました♪」


上条「いやどう考えてもおかしいだろ!?テメェらにはプライバシーの概念がないのかよ!?…っていうか、これコタツだけじゃなくて暖房もついてるよね?どっちか片方にしろよ!まだ冬になったばかりでそこまで寒くねえだろうが!!はっきり言って電気代が無駄なんだよ!!」


バードウェイ「オイオイ、まさかお前はか弱い女の子が風邪をひいてしまってもいいと言うのか?」


レッサー「鬼畜過ぎますね」


上条「…こ、こう言う時だけ女の子扱いをせがみやがる…。

…それで、お前らはいつからここにいたんだよ?」


バードウェイ「うーん、ざっと2時間くらい前か…?」


上条「…は?なら、この街で起こった事件も知っていたんじゃあ…?」


バードウェイ「うん?…あぁ、『グレムリン』のNo.2が第一位にケンカを売ったとか言うやつか。それでお前が止めに行ったとか言うやつだろ?」


上条「…知ってたんなら助けに来てくれても良かったんじゃあ?」


バードウェイ「阿呆か。私はあくまで休暇のつもりで来たんだ。なのに何故、予定にない仕事までせねばならんのだ。それに私がいなくても十分問題はなかっただろうに」


レッサー「私はこのコタツちゃんに魔力を奪われちゃってました。……テヘ☆」


上条「テヘ☆…じゃねえよ!…っていうか、レッサーはともかく、バードウェイが応援に来てくれてたらもっと楽になっていたはずなのにぃ!」


レッサー「ちょっと!?毎回なんなんですか、その『実はレッサーは決して強キャラでない』説は!」


上条「…違うの?」


レッサー「ムキーッ!!今度のレッサースペシャルカスタム『鋼の手袋』MarkⅡにかかれば、本家トールの『投擲の槌』とやらにだって引けはとらないんですからね!!」


上条「それじゃあ『雷神』とは互角に戦えたとしても、『全能神』には勝てそうもないじゃん」


レッサー「うっ…!?まあ、噂が本当なら、あなたの言う通りなんですけどね…」


上条「ほら、やっぱりあまり強くないじゃん」


レッサー「もう頭に来ましたよ!!あなたのアレを『鋼の手袋』で握り潰してやるー!!」


上条「こら、女の子がそんな破廉恥な台詞を吐くんじゃありません!!

それにレッサー。残念ながらお前は絶対に勝てない」


レッサー「ああん?何でですか?」


上条「ふっふっふ。実はそのトール君は既に上条さん勢力の一員になってんだよ!!」


レッサー「な、何ィッ!?」


上条「なあ、トール!!……トール?」


トール「…な…あ…に?かぁ…み…じょ…う…ちゃ…ん?」


いつの間にかトールとフィアンマもコタツの中に足を突っ込んでいた。


上条「お、お前らまで…。…何故魔術師とかいうクソ野郎共は、上条さんの許可を取らずに自由に行動するのか?」


フィアンマ「な、なるほど。これが噂のジャパニーズコタツという物か。確かに身体が暖まる代わりに、魔力を吸い取られているようだ」


トール「…こいつは想像以上に強力だな。もう何にもする気が起きねえや」


上条「こ、こいつら…」


美琴「(あ、憧れの当麻の部屋に入ることはできたものの、何この状況?

っていうか、コタツに入ってんのが全員外国人ってのは幾らなんでもシュール過ぎないかしら?)」


禁書「(流石に理不尽過ぎて、とうまに噛み付く気にもなれないんだよ…)」


オティヌス「(…これがあの人間にとっての幸せなのか?とてもそうは思えんのだが…)」



レッサー「!?ちょ、ちょっと!あなたは、足でどこ触ってやがるんですか!?」


トール「あん?トールさんはケンカしまくったせいで、足がパンパンになっちゃって、足を曲げるのがしんどいんだよ。俺に触られるのが嫌なら、お前がコタツから出て行けよ」


レッサー「はぁ!?それがレディーに対する態度なんですか!?」


トール「知らねえよんなモン」


レッサー「こ、こいつ!?…いいでしょう。ならもっと触ってくれて結構ですよ?」


トール「おーおー、ここにきて痴女宣言かよ…」


レッサー「…但し!その代わりあなたにはこれから『新たなる光』の一員として、イギリスのために働いて貰いますからね!!」


トール「無理」


レッサー「ちょ!?」


トール「俺は今無職の味をしめてるところなんだよ。今は働く気なんかありませぇーん」


レッサー「…うわぁ」


トール「へっ、ドン引きしてくれて結構。…何だったら上条ちゃん、俺をボディーガードとして雇ってくれよ。どうせアプリ関係で結構収入が見込めるんだろ?

とりあえず飯と寝床だけ提供してくれるのなら文句は言わねえからさ」


フィアンマ「俺様も頼む」


上条「…流石にもうこれ以上同居人を増やすのは勘弁してください」


トール「ちぇ、つまんねえの。まあ、この部屋気に入ったからちょくちょく遊びに来させてもらうけど」


フィアンマ「俺様も」


レッサー「何言ってるんですか!ここは『新たなる光』の日本支部なんですよ!?」


バードウェイ「いや、ここは『明け色の陽射し』の日本支部のはずだが?」


上条「…もう何でもいいです」


その時上条の制服の裾が何者かによっておずおずと引っ張られた。


上条「?」


美琴「わ、私もこの部屋気に入ったから、これからも遊びに来ても…いいかな?」


上条「…何故だろう。普段はやや面倒くさい女の子のはずなのに、美琴が今や聖女に見える…」


美琴「…せ、聖女?……えへへへ///」


一方通行「お、俺もここを気に入ってるからまた来てもイイかァ?」


上条「ああ、勿論だよ。何だったら打ち止めとかも連れて来てくれても構わねえし、今度浜面も誘って遊ぼうぜ!」


一方通行「と、当麻ァ!!」



レッサー「…何この扱いの差!?幾らなんでも酷くないですか!?」



風斬「わ、私もいいかな、上条君?」


上条「風斬!?」


禁書「ひょうか!?いつの間にいたの?」


風斬「うう…。じ、実はみんなが帰って来てた時には既にいたの。ただなんとなく顔を出し辛くって…」


上条「(…そらバードウェイもレッサーもやたら強烈な個性を持ってるからな。無理も無い…)…とりあえず、さっきの答えだけど、お前は俺だけじゃなくてインデックスの親友でもあるんだ。寧ろお前に関して言えば、いつでも好きな時に来てくれよ」


禁書「そうだね!私もひょうかには毎日遊びに来て欲しいんだよ!」


風斬「あ、ありがとう。上条君、インデックスちゃん」


禁書「うん!」


上条「ところで別に責める訳じゃないんだけどよ、なんで風斬も俺達が来る前に部屋に入ってたんだ?」


風斬「そ、それは…」


バードウェイ「そいつらなら、ここに来ようとしていたところを、私達が拾ってやったのさ。どうせ私達はお前がいなくても部屋に入るつもりだったんだからな」


上条「偉そうに言うんじゃねえ!!

…あれ?…そいつ『ら』…?」


風斬「そ、それなんだけど、実は上条君やインデックスちゃんに会わせたい人がいるの」


上条&禁書「?」


風斬「だ、大丈夫かな?」


上条「おう、任せるよ」


風斬「良かった…。では、台所の方を見てあげて」


上条達は風斬に言われた通りに、台所の方へと視線を向けた。そこには、





アリサ「やっほー。久しぶり!当麻くん、インデックスちゃん。そして、美琴ちゃん!」


上条「!!あ、」


禁書「ありさ…?」


美琴「さん…?」


アリサ「えへへ」


禁書「あ、ありさー!」


インデックスは思わず、台所の陰から現れたアリサに抱き付いていた。そして大粒の涙を流しながら、


禁書「…ば…馬鹿。…ありさのばかぁー!…ずっと…ずーっと、インデックスはありさに会いたかったんだよ?」グスッ


アリサ「…私も。私もずっとみんなに会いたかったの…」グスッ


禁書「うう…グスッ…ありさぁ…。うわぁぁぁん…グスッ」


アリサ「ちょっと、インデックスちゃん!?あなた泣き過ぎじゃない!?」


禁書「うう…だ、だってぇ…グスッ」


風斬「…良かったね、インデックスちゃん」グスッ


禁書「そうだ、ひょうかもこっちに来て!」


風斬「…え?」


風斬を呼んだインデックスは、風斬とアリサの手を握った。そして、漸く夢が叶ったと言わんばかりの笑顔で、


禁書「えへへ。こうやってひょうかとありさと一緒にいられるなんて夢みたいなんだよ。本当に、本当に、嬉しいんだよ!」


風斬&アリサ「「インデックスちゃん…」」


上条「…良かったな!インデックス!!」


オティヌス「!」


上条の目にも涙が溜まっていた。それは、今は何よりも大切な家族が、漸く待ち望んでいた幸せを手にすることが出来たためであった。上条はそのような光景を一度見たことはあった。しかし、その時は上条の存在そのものが彼女の幸せを奪いかねなかった。だから、このように彼女の幸せを共有できることに、心から喜びを感じていたのである。そして、


美琴「…ううっ。何だか良く分からないけど、やたら感動的過ぎて、私も貰い泣きしちゃったわ」グスッ


上条「…美琴?」


美琴「…なあに?」グスッ


上条「…それは良いんだけど、何故あなた様は上条さんに思いっきり抱き付いて泣いてらっしゃるのでせうか?わたくしの制服は既にあなたの涙や鼻水で凄いシミができちゃっているのですが…」


美琴「………………………あ///」


禁書「…とうま?」


上条「…えぇ!?もしかしてこれ上条さん、噛まれる展開なの?ウソでしょ?だって俺どちらかっていうと被害者よ?そりゃ女子中学生に抱き着かれたのは嬉しいけど、制服が汚れちゃったのよ?思いっきり顔を押し付けられてスリスリやられたのは嬉しいけど、その分シミが凄いのよ?…だから許してえ!」


禁書「やだ」


上条「ですよねえええええ痛いいいいいいいい!!!」


アリサ「あはは。インデックスちゃんたら相変わらずだね」


上条「…そ、そういえばアリサは何故急にこっちに来れるようになったんだ?」


アリサ「…私にも分からないんだ。ただ、当麻くんやインデックスちゃん達に会いたいって願いながら歌ってたら、いつの間にかこっちの世界に戻ってこれたの」


上条「そ、そうか…」


禁書「もがもがもがあ!」


上条「いてえええ!!人の頭を噛みながら喋るんじゃねえええええ。せめてどっちかにしてくれよおおおおお」


禁書「ぷはーっ。きっとそれはまたありさが『奇蹟』を起こしたんだよ!」


アリサ「そうかな…?まあ、こうやってみんなといられるならなんでもいい、かな!」


上条「あれ?でもお前は『エンデュミオン』の時、最後にシャットアウラと合体したんじゃなかったっけ?」


アリサ「ふふ。私達は今は二人で一つ。だから自由に切り替えることができるんだ!」


そういうとアリサの周りに眩い光が放たれ、その光の中から『別』の少女が現れた。


シャットアウラ「そう、こんな風にな」


上条「す、すげえ」


シャットアウラ「まあ、お前達と話している分には鳴護アリサをマトリックスとした方が良いだろう」


そう言うとシャットアウラの周りに眩い光が放たれ、その光の中から今度はアリサが現れた。


アリサ「じゃーん。どう?凄いでしょ!」


禁書「す、凄い。凄いんだよありさ!ありさは本当にカナミンみたいになっちゃったんだね!」


アリサ「…カナミン?」


トール「ふふ、インちゃんよ。変身くれえならこのトールさんにもできるんだぜ?」


完全に置いてけぼりにされて不満が溜まっていたトールが上条達の元へとやって来た。


禁書「い、インちゃん?あなたはちょっと馴れ馴れし過ぎるかも!」


トール「まあ、そう言うなって。それでよ、この前上条ちゃんに専用の霊装を一つぶっ壊されたからよ、学園都市の部品を使って改めて作り直したんだよ。そしたら今まで以上に便利になったんだぜ?」


禁書「…トールがフレイヤに化けた際の術式かな」


トール「そゆこと。まあ見てなって」


トールの周りから眩い光が放たれ、そこから一人の少女(?)が現れた


ミコトール「見つけたわよ、アンタ!」


美琴「!!…な、な…?ど、どういうことよこれ!?」


ミコトール「はぁ?アンタこそ何言ってんのよ。っていうか、私の真似しないで欲しいんだけど?」


美琴「(『肉体変化』のようなモノ!?…こいつどんだけ色々な異能力を使い分けることができるのよ!)」


ミコトール「ちょっと、当麻。アンタからも何か言ってあげてよ!」


美琴「(ど、どんだけ私にそっくりなのよ!?見た目は妹達で慣れてるからいいけど、口調までそっくりだと流石に不気味だわ…)」


上条「…?どこが今までと違うんだ?」


ミコトール「ふふん。まあ見てなさいって!」


そういうと、またトールの周りに眩い光が現れた。


オティトール「どうだ、人間?」


上条「…な!?一瞬で元のサイズのオティちゃんに切り替わった!?」


オティヌス「こら、さりげなくオティちゃんと呼ぶんじゃない!」


オティトール「そう。今の私はほぼノータイムで様々な女に変身できる」


上条「す、凄え」


イントール「ふふん。もっと褒めてよ、とうま!」


禁書「!!今度は私にそっくりなんだよ」


美琴「し、信じられない…」


イントール「そして、とっておきの変身があるんだよ、短髪!」


美琴「あ、アンタまで短髪って言うな!……って、それは!!?」


ミサキトール「ふふ☆どぉ?驚いてくれたかしらぁ、御坂さん?」


美琴「!?な、なんでアンタがあのクソ忌々しい女に変身できるのよ!?」


ミサキトール「そんなの簡単なんだゾ☆

…ねえ、インちゃん。この科学馬鹿にトールさんの『歯を研ぐものと歯ぎしりするもの』の不死力について教えてあげてぇ?」


禁書「…トールの戦車を牽く二匹の羊は戦車を牽くだけでなく、食物としての役割も担うんだよ」


美琴「食物?」


オティヌス「そう。骨と皮さえ残っていれば、トールがミョルニルを振った際に幾らでも復活させることができるのさ。だから、トールの羊は食物にもなり得るということなんだよ」


美琴「!」


ミサキトール「もぉ、相変わらずあなたはやたら説明したがりなんだからぁ☆」


オティヌス「…ふん」


ミサキトール「私の『羊』は第二位に破壊されちゃったんだけどぉ、さっき再び『雷神』としての力を取り戻した時に復活させてあげたのよぉ」


禁書「…でもだからなんなのかな?『羊』にはそれだけしか機能はないはずなんだよ!」


ミサキトール「ふふ☆実はぁ、私の『羊』はファイブオーバーのネットワークとリンクしてた訳なんだゾ。つまりファイブオーバーが見た情報力を、そのまま『羊』は記憶してたのよぉ。そして私は『羊』そのものを食べたんじゃなくて、『羊』が記憶した情報を食べたという訳。だから今の私はぁ、ファイブオーバーと戦闘を行っていた女の子全てに変身できる訳なんだゾ☆どう凄いでしょぉ、上条ちゃん?」


上条「へ?(え?誰こいつ?)あ、あぁ」


クロコトール「…どうなさいました、類人猿さん?」


美琴「げぇっ!?黒子まで!?」


上条「…あれ?なんで白井がこんなところにいるんだ?」


禁書「何言ってるんだよとうま?この女はトールなんだよ?」


ミツコトール「ほーほっほっほ。わたくしの変身能力にタジタジになられているようですわね!」


上条「!!あぁ、そういやこいつはトールだったな」


オティヌス「?」


トール「ふぅ。まあざっとこんなもんよ。とりあえず一応言っておくけど、この霊装は貴重なんだ。壊そうとしないでくれよ?」


上条「…それってもしかしてフリ?」


トール「馬鹿、フリじゃねえよ!!壊しやがったらマジでここに住み着くからな!?」


上条「うわぁぁ、絶対に壊さないから大丈夫、大丈夫。」


トール「…そこまで、強く否定されると流石に傷つきそう…」


アリサ「ま、負けた。インデックスちゃんに喜んで貰える自信があったのに、完敗しちゃった…」


風斬「ま、まあまあ元気を出してアリサちゃん!」


アリサ「…ありがとう氷華ちゃん!」


上条「そういや、他の奴らは馬鹿に静かだな…。何やってんだ?」チラッ



バードウェイ「うん?もう感動の再会は終わったのか?」


レッサー「よっしゃ、上がりです!」


一方通行「…チッ。ラストはオマエとかよ。まァイイ、こっちに決めたァ!」


フィアンマ「馬鹿め、そっちがババだよ。…どうやら今日の俺様はラッキーデイのようだな!わははは!!」


一方通行「くそったれェ!…っていうか一位でもねェのに喜ンでンじゃねェよ!!」


上条「…ババ抜きやってるし。っていうかいつの間にかこいつらも仲良くなってたのか…」


禁書「ねえ、とうま。良い加減にご飯にしようよ!もうお腹がペコペコなんだよ!」


上条「おお、そうだったな。よし、早速上条さんが鍋の準備をしてやるよ!」


禁書「わーい!」


アリサ「ねえ?もし良かったら私も何か手伝おうか、当麻くん?」


上条「…いや、大丈夫だ。今回は俺一人にやらせてくれねえか?」


アリサ「え?」


上条「…今日は久しぶりに、みんなとこうやってワイワイできて俺も凄く嬉しいんだ。アリサとまた会えたのもめちゃくちゃ嬉しいしな」


アリサ「…と、当麻くん…」


上条「そのお礼をさせて欲しいのさ。だから、今回は俺一人に料理させてくれよ!」


アリサ「うん!」


上条「…ああ、しまったぁ!!」


風斬「ど、どうしたの上条君?」


上条「は、白菜を買い忘れてしまった」


アリサ「それは、鍋をやるのなら致命的だね…」


上条「しかもまさかこんな大人数になるとは思ってなかったから、飲み物とかお菓子も少ねえし…」


美琴「…ねえ、当麻?私に良い考えがあるんだけど?」


上条「あん?何だよ」


トール「(あ、あかん)」


一方通行「(嫌な予感がする)」


美琴「ふふん♪そこで暇を持て余してる男子共に買いに行かせればいいのよ!」


レッサー「なるほど!それは名案ですね♪」


トール「(や、やっぱり…)」


美琴「ちょっと、男子達も当麻の役に立ちなさいよー」


トール「はあ?女子達も上条ちゃんの役に立ってねえだろうが!!」


バードウェイ「馬鹿か貴様!私達は揃いも揃って美少女なんだぞ?奴にとって目の保養になるに決まっているだろうが!!」


トール「…ど貧乳のくせに」


バードウェイ「…お前…よっぽど私の『召喚爆撃』を喰らいたいと見える!」


ミサキトール「やぁーん、こわぁい。ねぇ、上条ちゃん?この人達が虐めるのよぉ」


上条「(あれ?誰だっけこいつ?)」


ミサキトール「こんな残念な胸囲力の女達よりも、あなたは私のような豊満な女の子と一緒にいたいわよねぇ?」


トールは胸を押し付けながら、上条の左腕に抱きついた。


上条「な、何でいきなり抱き着くんだよお前!?」


ミサキトール「あらぁ?もしかして照れてるのかしらぁ?」


その光景を目にした美琴は流石に我慢できずに、


美琴「…一回でいいから、あの人形のように完璧に整った顔を思いっきり殴ってみたかったのよね…」


ミサキトール「ちょ、ちょっとぉ!あなたは今何考えているのかしらぁ!?」


美琴「黙れ!このぶりっ子ゲス野郎!!」


トール「ごっ、がぁぁぁ!?い、痛えじゃねえか!」


美琴「あら、ごめんなさーい。アンタじゃなくてあの女を殴ったつもりだったんだけど、人違いだったわ」


トール「と、とぼけやがって」


美琴「…何か文句がある訳?」


トール「な、無いです!」


レッサー「あれ?あの人、本当にトールなんですか?その気になれば、『雷神』にも『全能神』にもなれるんじゃないんですか?」


禁書「次に魔術を使って私達を攻撃しようとしたら、私の歌で2度と使えなくなるようにしてやる!って脅してあるんだよ。だから彼は暴れたくても暴れられないの」


レッサー「ひええ〜!流石は我が英国の最終兵器…。つくづく恐ろしい存在ですね…」


美琴「とにかく!そういう力仕事は男がやることでしょ?当麻は料理してくれるんだから、それ以外の男子は不足品を買いに行きなさいよ!!」


一方通行「何言ってやがる格下。オマエはとても女子中学生とは思えないほどの怪力を持ってンじゃねェか!!寧ろ腕力だけに関して言えば、俺よりオマエの方が遥かに上だろォが!!能力を活かす前にその怪力を活かしてみろよ!!」


レッサー「(なんて情けない敗北宣言なんですか…)」


美琴「ぐっ!?こいつ〜、当麻の前で好き放題言ってくれるじゃない!!私は怪力女じゃなくて、繊細な乙女なのよ!!」


一方通行「えェ〜?信じらンなァい!」


美琴「こ、殺してやる!!」


バードウェイ「まあ、待て第三位。私にとっておきの秘策がある」


美琴「…な、何よ!?」


バードウェイ「なあ、第一位?私は前にこの部屋で、お前達に私の専門について教えたことがあったよな?」


一方通行「あン?専門だとォ?」


バードウェイ「そうだ。私は様々な指導者やカリスマの研究をしているのさ。なら当然、偉人達が他人をどのように統制していたのか?という点に関しても深い知識を保有している訳だ」


一方通行「…」


バードウェイ「つまり私は、お前専用の制御方法ですら心得ているってことなんだよ」


一方通行「…面白ェ。やってみろよ!」


バードウェイ「なら、覚悟するがいい!」


一方通行「上等だ!腐っても俺は学園都市第一位なンだ!!そう簡単にお前にコントロールされるほど落ちぶれちゃいねェンだよ!!」








バードウェイ「……お兄ちゃんは、私達のために買い物に行ってくれるよね……?」







一方通行「!!!!!!?????



………さて、買い物に行こォじゃねェか、野郎共ォ!!!!!!!!」


トール「ちょ!?お前!さっきまでの態度はどこに行っちまったんだよ!?」


一方通行「うるせェ。あンないたいけな少女にせがまれたンだ。男だったら素直に従ってやるのが筋ってモンだろォ!」


トール「…ロリコン」


一方通行「蔑ンでくれて結構。幼女の素晴らしさが分からねェ奴に男の価値なンかありゃしねェンだよ!!」


美琴「…本っ当に、サイッテー!!あんな奴の側に打ち止めを預けておくのはまずい気がしてきたわ!

アンタもそう思うでしょ、当麻?

……当麻……?」


上条「……うおおおぉぉぉぉおおおお!!!」


美琴「ちょっと当麻!一体どうしちゃったのよ!?」


上条「…今までずっと巨乳のお姉さんが至高の存在だと思っていたけど、今ので心が改まったかもしれん…。妹キャラの幼女も悪くないかも…」


美琴「ええ!?」


バードウェイ「ふふん♪」


トール「な!?」


一方通行「!!…流石は当麻。話が良く分かりやがる」


美琴「…ねえ?じゃあ、あくまで仮にだけどさ…、もし私が妹キャラみたいなのになったらどうする?」


上条「…」


上条は『御使堕し』事件の時のことを思い出していた。


上条「…いやァ、ダメだァ」


美琴「…は?」


上条「オマエじゃ駄目なンだよ。何故だか分かるかい美琴センセー?」


美琴「(なんか、口調おかしくない!?)な、何よ!?」


上条「分からないよォなら教えてやる。いいか?中学生ってのはなァ?」


美琴「!!」


上条&一方通行「「ババァなンだよ!!!」」


美琴「…ガーン…」


その時上条と一方通行は肩を組んで軽く踊っていた。


上条「流石は第一位。幼女の素晴らしさをよォく理解してやがる!!」


一方通行「へっ…!!オマエなら俺のこと理解してくれると思ってたぜェ!!」


上条「まァな。やっぱ俺とオマエは親友だぜェ!」


一方通行「そォとも!!オマエと俺は親友さァ!!」


がっちり上条と握手して、満足した一方通行は、火事場の馬鹿力(?)のようなものを使って無理矢理トールとフィアンマを引きづり始めた。


一方通行「それじゃァ『お兄ちゃン達』が買い物に行ってくるぜェ!!わっはっはァ!!」


バードウェイ「…流石にここまでチョロイとは思わなんだが、おいマーク!!お前も奴らについていけよ!!」


マーク「わ、私もですか!?」


バードウェイ「当たり前だろうが。お前だって歴とした男なんだかな!!」


マーク「は、はぁ…(さっきから人使いが荒過ぎる!!)」


バードウェイ「いいからさっさと行け!!」


マーク「は、はいぃぃ!!」


上条「俺もついてこォかな…」


その時上条の顔の直ぐ横を包丁が猛烈なスピードで通過していった。


上条「…な…に…?」


美琴「…」


美琴は磁力を操って複数の刃物を上条へと向けていた。


上条「み、み、美琴さン!?あなたは一体どうしちゃったンでせうか!?」


美琴「…いいから、今から私の言う通りになさい。さもないと、私の手が滑っちゃって、次はアンタの顔に当たっちゃうかもしれないわよ?」


上条「…は、はいぃぃい!!」


美琴「…よろしい。では、今から私がいいと言うまで、『中学生は最高!』っていうのを繰り返しなさい」


上条「中学生は最高、中学生は最高、中学生は最高…」


上条はおよそ50回繰り返した。そして、


美琴「もう良いわよ。ではアンタに問題。最高なのは?」


上条「ち、中学生!!」


美琴「正解!!良く出来ました!」


上条「…ホッ…」


美琴「もう、当麻ったら!アンタの『好みの』中学生が近くにいてあげてるんだから、もっと喜んでよね///」


上条「あははは…」


禁書「(短髪が悪魔にしか見えないんだよ…)」


レッサー「(乙女を怒らせると碌なことにならないとは、良く言ったものですね…)」


風斬「(そ、そもそも、高校生が中学生に手を出す時点でマズイんじゃ…)」


上条「よし!美琴のおかげで目を覚ました上条さんは、早速調理に入るからお前らは適当にくつろいでくれ」


バードウェイ「お前に言われなくてもそうするつもりだったが?」


上条「…さ、さっきとギャップが激し過ぎないかお前?」


バードウェイ「なんだ、お前も私にお兄ちゃん呼びして貰いたいのか?」


上条「へ?…」チラッ


美琴「そんな訳ないよねー、と・う・ま?」


上条「…ははは、ミコっちゃんの言う通りだよバードウェイ君。上条さんにシスコン属性ありませんことよ?…さあ、早く準備しないと!!」


上条はその場から逃げるように台所の方へと向かった。


アリサ「(当麻くんたら、完全に美琴ちゃんに尻に敷かれてるみたい…)」


美琴「…でも当麻のお手伝いしなくてもいいってのは正直退屈よね…」


レッサー「だったら買い物に行った連中を追いかけたらどうです?」


美琴「冗談じゃないわよ!!私は当麻以外の男にホイホイついていくほど尻の軽い女じゃないのよ!!」


レッサー「そ、そうですか(そんな大袈裟な…)」


オティヌス「(こいつ、この部屋に来てからあの人間の彼女というよりも、妻にでもなった気分でいるんじゃないか…?)」


美琴「そういえばこの時間ならもうすぐ、『とあるゲコ太の日常生活』が始まるはずよね?それを見ましょ!」


禁書「何言ってるんだよ、短髪!これからこのてれびーで、私が『超機動少女カナミン』と『未踏召喚://ブラッドサイン』を続けて見るんだよ。他所者は我慢しなきゃ駄目なんだよ!」


美琴「ぐっ…!?そんなのよりもゲコ太の方が可愛いし、見てて楽しいもん!!」


禁書「そんなへなちょこ、カナミンと『白き女王』が一瞬で蹴散らしちゃうんだよ!『あにうえ』のようにされちゃえばいいかも!」


美琴「ゲコ太はケンカなんかしないもん!!」


アリサ「まあまあ、美琴ちゃん、落ち着いて。私達はあくまでお客さんだし、家主の当麻くんやインデックスちゃんの言うことを聞かないと!」


美琴「!!アリサさんに言われたら何も反論できない…。あの金髪馬鹿だったら思いっきりぶん殴ってやるのに…」


オティヌス「(哀れトールよ…)」


レッサー「あれ?あなたは何をしてるんですか?」


バードウェイ「あん?そりゃあ、上条当麻の観察だよ。こいつの研究価値はずば抜けているからな」


レッサー「…本当は愛しのお兄ちゃんの料理してる姿に釘付けなだけじゃないんですか?」


バードウェイ「ああん!?」


美琴「!!…そういえば、今当麻は料理してるんだった!今はゲコ太よりもこっちの方が大切よ!!」チラッ


上条「ふっふん、ふんふーふん♪」


美琴「(うわっ、シックなエプロン付けて料理してる姿はとてもセクシーだわ。しかも私のために料理してくれてると思うと胸がキュンキュンしちゃう///それに、料理に一生懸命になってる横顔格好よすぎ!これはヤバい!きちんと写真撮っとかないと!!)」パシャパシャ


上条「…美琴?」


美琴「!?な、何、当麻?」


上条「…お前は何故上条さんにやたら近寄って、俺の顔ばかり写真撮ってんだよ?はっきり言って、調理に集中できないんですが…」


美琴「へ?い、いや、その///」


禁書「そうだよ短髪。とうまが料理してる姿なんて何も珍しくなんかないんだよ?何で写真なんか撮る必要があるのかな?」


レッサー「(う、うわぁ)」


美琴「(ナチュラル自慢しやがった…)」


バードウェイ「…チッ…」


禁書「?」


オティヌス「それで、第三位。お前はこいつの写真を撮って何に使うつもりなんだ?」


美琴「え…?そ、それは…」


レッサー「そんなのナニに使うに決まってるじゃないですか!」


美琴「…は?」


バードウェイ「…だろうな。それ以外考えられない(…とりあえず同調したものの、ナニって何だ?)」


美琴「…アンタらねえ!」バチバチ


禁書「…なにに使うってどういうことなのかな?不思議な日本語の使い方で、私にはさっぱり分からないんだよ…」


レッサー「それはもう…」


上条「ごらあああああ!!!テメェらインデックスに何教えようとしてやがる!!!!!インデックスを穢すんじゃねええええええ」


レッサー「ひっ!?あぶな!!包丁を振り回さないでくださいよ!!」


上条「レッサー、お前は特に罪が重い!後でお尻叩きの刑決定だ!!」


レッサー「そ、そんなー!?(ま、また何十分も説教されるんでしょうか…?)」


美琴「(えっ?それ罰なの?ご褒美にしか思えないんだけど…?)」


アリサ「っていうか、みんな当麻くんの邪魔し過ぎじゃない!?せっかく当麻くんが一人でやってくれてるんだから、私達はせめて大人しくしてないと!」


風斬「そ、そうだよ。アリサちゃんの言う通り、上条君の邪魔はしないようにしよ?」


上条「…うう。さすが風斬やアリサ。大人らしさが備わった女性がここにいてくれて、上条さんはとても心強いことですよ?」


アリサ「あ、ありがとう当麻くん///」


風斬「か、上条君///」


禁書「むむう…!」


美琴「ぐぬぬ…!」


レッサー「…でも、実際彼に相手して貰えないなら暇で仕方ありませんね」


バードウェイ「いや、心配には及ばんよ」


レッサー「?」


バードウェイ「せっかくだからここにいる女子全員で勝負をしようじゃないか!勿論、アレを使ってな!!」



(午後7時半、とあるスーパー付近)


トール「さ、さみいィィィいいいい」


フィアンマ「直ぐにでもコタツに入りたい…」


マーク「うう、冷たい夜風がやたら傷に染みますね…」


トール「…これも全て第一位がバードウェイの芝居なんかに騙されやがったのが悪いんだ!!なあ、俺達はお前にキレてもいいか…?いいよな!?」


一方通行「まァ、そォいうな。お詫びになンか奢ってやるからよォ」


トール「っていうかまず、お前の着てるコートを寄越せ」


フィアンマ「確かにお前だけ厚着なのはズルい」


一方通行「あン?オマエらが日本の12月の寒さを勝手に舐めてたのが悪いンだよ。自分のせいなンだから、我儘言うンじゃねェ」


トール「くそっ!部屋から出てくる時に上条ちゃんの学ランでも借りてくりゃ良かったぜ!」


フィアンマ「…お前はそこまで寒そうではないな」


マーク「私は寒さ対策の術式を施してあるので、ある程度は大丈夫です」


トール「俺もそういうの用意しとけばよかったぜ…」


一方通行「そォいやァ、飲み物って言ったって何を買っていけばイインだ?」


トール「あん?適当にコーラとか買っていけばいいんじゃねえの」


一方通行「お菓子は?」


トール「俺は学園都市の住人じゃねえから良く分かんねえよ。っていうか、ここにはお前しか学園都市の人間がいねえじゃねえか!!」


一方通行「普段お菓子なンか食わねェし、あのガキがよく食ってる奴が連中の味覚に合うかどォかも分からねェ」


トール「マジかよ…。まあ何か適当に店員にオススメを聞いて買えばいいんじゃね?」


マーク「…あまり適当な物を選んでしまうと、ウチのボスや第三位さんが怒るのは必至ではないでしょうか?」


一同「…」


トール「…なあ、俺ら想像以上に厄介な仕事回されてねえか?奴らの機嫌を損なわないようにチョイスするのとか絶対無理だろ」


フィアンマ「ふむ…。奴らの怒りを最小限に抑えることを第一に考えた方がいいかもしれんな」


一方通行「自分で言うのもなンだけどよォ、そもそも俺らはマトモなモンを買えるほど普通に浸ってる訳じゃねェよなァ…」


一同「…」


トール「…これ、最初から詰んでるクソゲーみてえじゃねえか!」


マーク「とにかく、数を多く撃てば当たる作戦で行きましょう!きっと、どれかは彼女らの望みにそぐうはず!」


トール「…だあぁ、早くこんなクソ仕事終わらせて、コタツちゃんにトールさんの傷心を癒して貰おう…」


一方通行「なら、こっちの道使おゥぜェ!近道になるはずだ」







トール「で、このザマと…」


一方通行達が近道に利用しようとした道は、廃校となった校舎の校庭を突き抜けるルートだった。しかし、そこでは百人規模のとある『武装集団』が3人の少女を取り囲んでいるところだった。


武装者A「誰だよテメェらは!ここに何しに来やがった!?」


縦ロール「(!この殿方達は!!)」


そこにいた少女達は皆食蜂の派閥に属する者達であった。彼女らは、食蜂が突然外出してしまったため、彼女の安否を確認するために探し回っていたところ、このような事件に巻き込まれてしまったのである。


トール「…それはこっちが聞きてえよ。ただでさえクソ理不尽な買い物に無理矢理付き合わされているのに、なんでその途中でこんなのに出くわしちまうんだよ…。トールさん、もう泣いてもいいかな?」


一方通行「まァ、こォいう日もあるさァ」


トール「!!全部テメェのせいなんだから少しは反省しやがれ!!」


一方通行「俺だってこンなところにクズ共がのさばってたなンて知らなかったンだよ!!」


一方通行とトールは武装集団や少女達をそっちのけで取っ組み合いを始めてしまった。だから、


武装者A「ふ、ふざけんなあああ!!」


トール「あん?何だよ?今こっちは取り込み中なんだけど?」


武装者A「ここは!俺達の縄張りなの!!俺達はここでこれから常盤台のお嬢様達とイイコトしようとしてる訳。だから邪魔すんじゃねえよ!!」


一方通行「はァ?常盤台だとォ?そこの連中だったら能力を使って暴れられるはずだろォ?」


武装者B「ここの校庭には演算を阻害するチップが多数埋め込まれているんだ。俺達みてえに特殊なスーツを着てねえと能力なんか使えねえよ」


マーク「確か『スキルアウト』とやらは無能力者の集団ではなかったのですか?無能力者達にそのようなスーツなど必要ないのでは…?」


武装者C「我々は『スキルアウト』と『無能力者狩り集団』、あるいは暗部に属する小中組織が混合してできた一派だ。つまり無差別な破壊活動を生業としている、といったところか…」


フィアンマ「なるほど。どうしようもないクズ共の集まりだと」


武装者D「ふふ。そう言われても文句は言えないわね」


トール「…つまりここでは能力は使えねえってことだよな?」


常盤台生A「そうですの!能力が使えない以上、ここは非常に危険ですわ!皆様はわたくし達に構わず逃げてくださいまし!」


武装者B「そのお嬢ちゃんの言う通りだ。痛い目に合いたくなきゃとっとと消えな!!」


トール「…ごちゃごちゃうるせえよ!」


武装者B「は?」


常盤台生E「(!!ま、まさかわたくし達のために戦うおつもりですの!?)い、いけませ…」






トール「ここでなら思う存分第一位をボッコボコにぶん殴れる訳じゃねえか!!せっかくだから、利用させて貰うぜ!!」


一方通行「!!?」


常盤台生E「」


一方通行「ち、ちょっと待てェ!!オマエ、それはどォ考えても卑怯じゃねェか!!こンな能力も使えないモヤシをボコボコにして、オマエになンの経験値が手に入るって言うンだよ!?」


トール「経験値なんざ今はどうでもいいんだよ!!こっちはテメェのせいでさっきからやたら不幸な目にあってんだ!!お返しをたっぷりしてやらねえと気がすまねえんだよ!!」


武装者D「…じゃあ、アンタ達はこの女の子達を助けるつもりはないの?」


トール「あん?それについてなら何の問題もねえよ」


縦ロール「え?」


トール「俺がテメェらをぶちのめしても構わねえけどよ、基本的に俺は弱い者イジメは好きじゃねえんだよ。それに、例え俺がやらなくても、上条当麻の思い描く世界を守るためだけに生きてるような、そこの隻腕の男がお前らのヒーローをやってくれるはずさ」


フィアンマ「そう言うことだ。お前達がくだらん真似をしようと言うのなら、俺様はあの男に代わってその幻想を破壊させて貰うぞ?」


武装者A「!!」


トール「…てな訳で覚悟して貰おうか、一方通行クゥゥン!!」


一方通行「ま、待て!オマエ、買い物はどォすンだよ!?このままだとオマエ、また第三位にぶン殴られるぞ?」


トール「うっ…!?た、確かに…。じゃあ、俺の不満はどこにぶつければいいんだよ!?」


マーク「ではここの輩にぶつけてみてはいかがです?」


トール「何?」


マーク「確かにここの連中と戦闘を行っても、あなたが得られる経験値は微々たるものでしょう。しかし、それはこのまま能力が使えない第一位さんを一方的に攻撃しても同じことなのでは?」


トール「…まあ、そりゃそうだけどよ…」


マーク「ここには100人以上の人間があるではありませんか。一人を殴り続けるより、一度に複数を相手にして無双した方がストレスの発散になるのでは?」


トール「…なるほど。一対多数なら圧倒的な戦力差もある程度なら緩和されるかもしれねえしな。…よし!」チラッ


武装者A「な、何だよ?」


トール「…」チラッ


縦ロール「な、何ですの?」


トール「…よくよく考えてみたら、テメェらは大人数でたった3人の女の子達を傷つけようとしてるんだよな?」


武装者B「…だったら何だって言うんだ?」


トール「しかも能力使用を禁じて、抵抗できないようにするとかいう、クソ汚え真似もしてやがる」


武装者C「常套手段と言って欲しいものだ」


トール「…良いねえ、そのゲスっぷり。戦闘意欲を駆り立ててくれやがる」


武装者D「…戦闘意欲?」


トール「…結論を言わせて貰うと、テメェらは俺にぶっ潰されても文句言える立場じゃねえってことだよな?」


縦ロール「…まさか、あなたは…!?」


トール「…ふっふっふ。弱い者イジメってのは俺の性分に合わねえけど、今回は特別だ。このトールさんがテメェらの相手をしてやるよ!」


そう言うと、トールは準備運動の仕草を見せた。


常盤台生E「(!!やっぱりこの殿方は、か、かっこいいですわ///)」


武装者A「は?…はははははははは!!こいつはケッサクだ!能力も使えねえし、見たところ特別な武器も持ってねえ。それでこの大人数相手に何ができるんだよ?こっちは100人以上、そっちはたったの4人。しかもそのうち2人は見るからに障害を持ってやがる。とてもテメェらに勝ち目なんかねえと思うんだが?」


縦ロール「…た、確かにこの人数差では絶望的ですわ!!無理をせずにお逃げに…」


トール「あん?何テメェらは揃いも揃って勘違いしてんだよ?テメェらの相手はこの俺一人さ。こいつらの出る幕はねえよ」


縦ロール「!!」


武装者A「…テメェ、舐めるのもいい加減にしろよ。こっちはテメェらにやりたい放題やられてイライラしてるんだ。全員をぶちのめさなきゃ気が済まねんだよ。どうせ全員ボロ雑巾になるんだ。せめて無駄な協力をした方がいいと思うぜ?」


フィアンマ「…愉快な奴らだ。で、奴らは俺様達にも参加して貰いたいらしいがどうするんだ?手を貸して欲しければ貸すぞ?」


トール「冗談。これは俺のケンカなんだ。アンタらの力は借りるつもりはねえし、邪魔もさせねえ。ま、『投擲の槌』の力は使わさせて貰うけどな」


一方通行「(取り敢えず脳筋野郎の八つ当たりを受けずに済んで助かったぜェ)…まァ何でもイイけどよォ、さっさと終わらせねェと、俺達はとっとと買い物を済ませて先に帰っちまうぞ?」


トール「余計な心配すんじゃねえよ。俺もパパッと終わらせて、さっさとコタツちゃんの温もりを味わいてえんだ」


一方通行「そォかい。なら俺達は買い物に行かさせて貰うぜェ(後で第三位にこいつがサボってたっていうのをチクっちゃおゥ)」


トールは武装者達を完全に無視して、仲間達がその場を離れていくのを眺めていた。だから、


武装者B「…ふざけてんじゃねえぞ、このクソ野郎があああ!!!」


縦ロール「!!う、後ろですわ!!」


突如武装者Bは特殊スーツに備わったブースターのようなものを利用して、隙だらけのトールの背後へと突進した。しかし、


トール「遅えよ馬鹿」


トールは、両足から溶断ブレードを一気に噴出し、それによって周りの空気を膨張させ、その際に発生した爆発力を利用しての大ジャンプで攻撃を交わし、続け様に右手に出現させた数メートル規模のブレードを振って、敵のブースターを確実に破壊した。


武装者B「な、に?」


トール「驚いてる暇はねえぞ?」


トールは着地後、また両足からブレードを噴出させて電子ブースターとして利用し、猛烈なスピードで武装者Bへと襲いかかって、その胸部へと拳を撃ち込んだ。それをまともに受けた武装者Bは気絶してしまった。


常盤台生A「!?な、何が…?」


トール「あんだよ…。やたら威勢のいいクチを叩いてた割りには、たった一発のパンチで沈んじまうんかよ…」


武装者A「て、テメェ!!どういうことだ!!何故テメェはここで発電系統の能力が使えるんだよ!?そして、何故生身のパンチくらいでウチの特殊スーツの防御力を突破できるんだよ!?」


トール「せめて質問は一つずつにしてくれよ…。取り敢えず前者の答えは、俺が使ったのは能力じゃなくて魔術。後者の答えは、トールさんの『ヤールングレイプル』を舐めんな。以上」


縦ロール「ま、魔術???」


武装者A「…訳分かんねえ」


トール「どうせ魔術については口で細かく説明しても、アンタら科学主義者には理解できねえだろ」


常盤台生E「…で、では『ヤールングレイプル』と言うのは??」


トール「お?そこに興味を持つとはなかなか良いセンスしてるねえ、お嬢ちゃん」


常盤台生E「(!!う、嬉しい…。褒められちゃいましたわ///)」


トール「別名『鉄の手袋』。今上条ちゃん家にいる痴女が持っている(らしい)『鋼の手袋』とやらとは違って、正真正銘トールがミョルニルを振るうために所持していた奴さ」


常盤台生E「??」


トール「実は北欧神話において『ヤールングレイプル』は二種類登場するんだよ。一つはトールが元々所持していた物。もう一つは、ロキを脅して利用し、トールを一切の武器を持たせずに、自分のところへ呼び出させた、『とある巨人』を倒すために、女巨人『グリーズル』から借り受けた物」


武装者A「???」


トール「後者はグリダヴォルという杖を振り回すために使う物で、『新たなる光』の連中が基にしている方。そして前者は、雷神トールがご存知ミョルニルを振るうために使う物だ。つまり、俺が今はめている手袋は当然、『投擲の槌』のとんでもねえ火力のブレードを振り回すための耐久力を持っていなきゃおかしいんだよ。俺はそれを硬度という形に置き換えてたのさ。だから、俺が『雷神』としての力を振るっている時は、両手両足にはめてあるグローブを、神話通りに鉄以上の強度にすることだってできるんだ」


縦ロール「(何をおっしゃっているのかさっぱり理解できませんわ…)」


トール「まあさっきのは、平たく言っちまえば、鉄バットで思いっきり殴られたようなモンだろ、多分」


武装者C「…にわかには信じがたいが、つまり貴様は能力使用が禁じられてるこの場所で、アーク放電のような物を利用したブレードや電子ブースターを駆使しつつ、鉄と同じような硬度の拳や蹴りを繰り出せるということか」


トール「そうだよん。まあ、俺の本質はそこじゃねえんだけどな。わざわざ手加減してやるんだから、精々楽しませてくれよ?」


そしてトールは獰猛な笑みを浮かべて、戦闘態勢を整えた。逆に武装者達はひたすら警戒していた。


トール「…ただ一つだけ嬉しい誤算がある」


武装者D「…嬉しい誤算?」


トール「アンタらはそれなりのスピードで戦闘を行えるってことさ!」


武装者D「どういうこと?」


トール「俺は戦闘の際に経験値を得ることを理念に掲げている。昼間の第一位との戦闘でもそうだった」


武装者A「経験値だと…?」


トール「そう。第一位の戦闘で主に獲得した経験値は、『いかに高速戦闘を行うか』ということだ」


武装者A「!」


トール「俺は『聖人』みたいにとんでもねえ身体能力を持っている訳でもねえし、アンタらんとこの『駆動鎧』みてえなモノで補強してる訳でもねえ。体の強度に関して言えば、トールさんは並程度でしかない。つまり、幾ら電子ブースターでスピードを上げられるとしても、長時間それを維持してるとそのうち体にガタが来て戦闘不能になっちまうんだよ」


常盤台生A「え?(それは危険行為ではないのでしょうか?)」


トール「そんな雷神トールさんには常にとある課題が付き纏う。そう、『どのようにすれば、高速戦闘を行いつつ、身体への負担を抑えることができるのか?』ということがな。これに関してはまだまだ研究の余地が残ってると思う。だから、今回の戦闘でも色々試させて貰うぜ」


武装者C「この戦闘はあくまで貴様にとっては実験のようなものでしかないと言う訳か…。ふざけやがって!!」


トール「実験??いやあ、そんなご大層なモンじゃねえよ。俺から言わせてもらえば、やたら理不尽な要求をしてきた第三位や、やたらクソみてえな目に巻き込みやがった第一位に対する鬱憤て奴を、アンタらに八つ当たりして晴らさせて貰う程度でしかねえよ」


武装者C「な!?」


縦ロール「(第三位てことは、御坂さんですの?)」


トール「…そうだ、一つだけアンタらに忠告してやるよ」


武装者A「…忠告だと?」


トール「ああ。仮にこのお嬢ちゃん達を人質にとるとかいうクソみてえな真似しやがったら、俺が本気を出して一瞬でテメェらを潰してやるよ!!


縦ロール「!!」


トール「こっちはあくまで手加減してるんだから、みすみす勝機を逃すような真似はしねえ方がいいぜ?」


武装者A「…面白え。全力だ。こっちはテメェをぶちのめすために全力を尽くさせて貰う!!いくぜ、野郎共おおおお!!!!」


武装者Aの掛け声とともに、一斉に武装集団が戦闘態勢を取った。


常盤台生E「…ひっ!?」


トール「アンタらは三人まとめて校舎の陰に隠れてろ!大丈夫、俺が何が何でも守ってやるから安心しな!」


常盤台生A「!!」


常盤台生E「は、はい…(凄く頼りになりますの///)」


縦ロール「…ご迷惑をおかけして申し訳ございません。誠に恐縮ながら、わたくし達が助かる道は現状あなたに助けて頂く他にないようでございますの」


トール「気にすんな。俺はそもそもアンタらを助けるためだけに戦っているんじゃねえんだからな」


縦ロール「…それでもこのお詫びは必ずさせて頂きます。それではご武運を!!」


少女達が校舎の方へと向かって行ったのを確認したトールは、両手を合わせてポキポキと鳴らした。


トール「さてと、それじゃあ早速トールさんの『ヒーローごっこ』を始めさせて貰うぜ!!」


直後一対百の戦闘の火蓋が切って落とされた。



(上条サイド)


レッサー「アレを使った勝負?そもそもアレって何ですか?」


バードウェイ「決まっているだろう。例のアプリだよ」


レッサー「アプリ?」


バードウェイ「そう。アプリには好感度機能というものが付いていただろう。せっかくだから、それをみんなで比べて勝負しようじゃないか!」


美琴「な、なるほどねえ」


バードウェイ「ちなみに、優勝者には取っておきの賞品を考えてある」


アリサ「賞品?誰が優勝しても喜べるような物なの?」


バードウェイ「ああ。例えば、上条当麻からの口付けとかどうだ?」


一同「!!!??」


禁書「ちょ、ちょっと、何を言ってるんだよ!?シスターとしてそんな不埒なことを見過ごす訳にはいかないかも!」


バードウェイ「…常日頃から平気であいつに噛み付くようなお前が言えるセリフか?」


禁書「うっ…!?」


美琴「で、で、でも口と口でやるのは流石にまだ早いんじゃないかしら?やっぱり、ふぁ、ファーストキスにはムードっていうもんが必要だと思うし…」ブツブツ


バードウェイ「…お前が将来あいつとキスするつもりでいるのは良く分かったが、私は別に口同士でやるとは一言も言ってないぞ?だからそんな重々しいモノとして捉える必要はない。寧ろ欧米の人間にとっては、頬への口付けなら挨拶程度でしかないしな」


美琴「!!そ、そうよね。頬へのキスなら何も問題ないよね。私ったら何言ってんのかしらね。おほほほ!」


禁書「(短髪、見苦しいんだよ…)」


レッサー「(ふふ。これはいいチャンスですね…。これで彼が私にキスした時に、『穢されたー』とか言って大泣きしてやれば、彼は私の言うことを聞くようになるはずです。そうすれば私のここに来た本来の目的が成就される訳ですね。グフフ…)」


オティヌス「…おい人間。お前考えてることがバレバレだぞ…」


レッサー「な!?」


禁書「…あれ?ひょうかとありさもあぷりをやっているの?」


風斬「う、うん。私も一応やってるよ」


アリサ「私も氷華ちゃんが教えてくれたから始めたの」


バードウェイ「つまり、ここにいる女子全員が参加資格があると言う訳だ。では早速勝負といこうじゃないか!!」


美琴「いいけど、誰から発表していくのよ?」


レッサー「そりゃあ、こういうのは言い出しっぺからって、相場は決まってます!」


バードウェイ「な!?べ、別に私からではなくてもいいだろうが!!私はまだ一度も好感度を確認してないし…」


レッサー「…あれえ?もしかして最初に見せるのが怖いんですかあ?あの『明け色の陽射し』のボスとして多くの人々に恐れられたあなたが、予防接種直前の小学生みたいに『こわいよお…』って怯えてるんですかあ?」


バードウェイ「!!…いいだろう。お前達に絶望を与えてやるから覚悟しろ!!」


信頼度A

庇護欲E

居心地E 総合D+


総評:もっと人間のように扱って欲しい


『か、上条さんはあなた様の奴隷ではありませんことよ…』


バードウェイ「…」


美琴「うわぁ…(同情)」


レッサー「wwww」


風斬「ど、どんまい」


バードウェイ「!!…な、何故だ。何故こんなに低いんだ…?」


レッサー「そりゃあ、結社の部下みたいに扱っちゃったのがいけないんじゃないですか?そうじゃなくて、お兄ちゃんとして扱って、あなたが甘えてあげればもっと高かったと思いますよ?」


バードウェイ「…」


バードウェイは無言で立ち上がり、フラフラと台所の方へと向かった。


バードウェイ「…」


上条「あん?どうしたんだよ、バードウェイ?」


バードウェイ「…………………ばか」


上条「…は?…!!!!!!!???」


涙目になっていたバードウェイは上条の頬を思いっきりビンタした。


レッサー「い、今の見ました!?あれが本物の『お兄ちゃんのばかぁ!!』って奴じゃないですか!?うわ、良い物見ちゃった♪」


美琴「…アンタの小悪魔っぷりには賞賛するわ」


上条「…うう。何故上条さんが突然ぶたれたのか全く分からねえけど、なんだろう?とてつもなく胸が痛いです…」


禁書「(正直どっちも可哀想なんだよ…)」


バードウェイ「…」


バードウェイはその場で腕組みをしたまま、そっぽを向いてしまった。


上条「(…うう。き、気まずい。こういう時どうすれば…?)……そ、そうだ!!」


バードウェイ「?」


上条「ごめんな、バードウェイ。上条さんが悪かったから、許してくれ」ナデナデ


一同「!?」


バードウェイ「…な、に?」


上条「(何故かは分からんが、少なくともインデックスと美琴は頭を撫でてあげると喜んでくれるからな。きっとバードウェイも…)」


バードウェイ「…や、やめろ馬鹿!!私はそんなのされてもちっとも嬉しくない///」


バードウェイはしゃがみこんでいた上条の頭をポコポコ叩き始めた。


上条「い、痛い!!バードウェイさんには逆効果だったあ!?」


バードウェイ「…たく///」


レッサー「ふおぉぉお!?頭を撫でてくれたお兄ちゃんを照れ隠しで叩き始めただとおお!?こ、こいつは想像以上に面白い展開になってますよ!!」


美琴「(か、可愛い…)」


バードウェイ「と、とにかくゲームの続きをしようじゃないか!」


満足したバードウェイはコタツの方へと向かった。


上条「な、何だったんだ、あいつ?」


レッサー「じゃあ、次は私のを見せちゃいますよー?可愛いレッサーちゃんの魅力にタジタジな上条当麻をご覧あれ♪」


信頼度D

庇護欲B

居心地E 総合D+


総評:健全な男子高校生としてはちょっと…


『…痴女怖い…痴女怖い…』


レッサー「う、うそ!?」


バードウェイ「あん?偉そうにしておきながら私と変わらんじゃないか」


レッサー「ムキーッ!!あの馬鹿者はもう一度教育し直す必要がありますね!!」


そう言うと、今度はレッサーが台所へと向かった。しかし、襲いかかろうとしたところ上条によって軽く叩き落とされ、その場で正座させられ説教を始められていた。


バードウェイ「ハッ、いい気味だ!!」


美琴「(少し、羨ましい…)」


バードウェイ「次は第三位、お前が見せてみろ」


美琴「へ、私?いいけど…(そういや、午後に入ってからは一度も確認してなかったわね…)」


美琴はおずおずとアプリを起動した


美琴「(ま、まさかさっきより下がってないでしょうね!?……こ、怖い…)」


アリサ「み、美琴ちゃん大丈夫?手が震えているよ?」


美琴「!!だ、大丈夫。何の問題もないから!(ええい、ままよ!)」


信頼度A

庇護欲B

居心地A 総合 A-


総評:徐々に目が離せなくなってきた存在


『上条さんは美琴と一緒にいられて嬉しいぜ!』


美琴「」


禁書「!?」


バードウェイ「な、何ィ!?」


美琴「…と、当麻ァァァああああああ」


美琴は猛烈なスピードで台所へと向かい、上条に思いっきり抱きついた


上条「!?み、美琴さん!?何故あなた様は上条さんに突如抱きついたのでせうか!?」


美琴「あ、ありがと当麻!本当にありがとう!!」


上条「??は、はぁ…。どういたしまして」


美琴「えへへ///」


上条「(こ、このまま抱きつかれているのは色々とまずい!)み、美琴さん?か、上条さんは作業したいので少し離れて貰えると助かるのですが…」


禁書「そうだよ、短髪!とうまに迷惑をかけちゃ駄目なんだよ!!」


美琴「あ、アンタが言うな!!」


風斬「(み、みんなさっきから上条君の邪魔ばかりしてる気がする…)」


美琴「それでギンギラシスター?アンタのはどうなのよ?」


禁書「(うぅ、また酷い言われ様なんだよ…)見せたいのは山々なんだけど、操作方法が全く分からないんだよ…」


美琴「まったく、しょうがないわね。私が代わりにやってあげる」


禁書「あ、ありがとうなんだよ。短髪!」


美琴「別にいいわよこれ位。…って、これは!?」


信頼度E

庇護欲S

居心地C 総合C+


総評:自分が常に側にいてあげないと不安になる存在。


『か、上条さんはインデックスさんのおかげで、今日一日ヘトヘトなんです…』


バードウェイ「…」


美琴「…」


禁書「?…ねえ、これって短髪に比べるとどっちの方が勝ちなの?」


アリサ「一応美琴ちゃんの方が上みたい…」


禁書「!!…とうまァァァああああああああああああ!!」


インデックスは台所にいる上条の元へとお仕置きをしに行った。


バードウェイ「(だが、しかし…)」


美琴「(…総評に関して言えば私の負けだわ…)」


風斬「(さ、流石インデックスちゃん)」


禁書「まったく、とうまは私を怒らせるのが本当にお上手なんだよ!」


お仕置きを終えたインデックスはまた戻ってきた。


禁書「じゃあ、次はひょうかとありさの番だね!まずはひょうかのを見せて!」


風斬「う、うん…」


信頼度A

庇護欲A

居心地A 総合A


総評:信頼しつつもつい守ってあげたくなる存在


『風斬の笑顔はいつも上条さんを元気にしてくれるんだ!』


禁書「うわぁ、凄いんだよ、ひょうか!」


風斬「あ、ありがとう」


美琴「(ま、負けた…)」


禁書「じゃあ、次はありさの番なんだよ」


アリサ「…ちょっと怖いけど、どうかな?」


信頼度C

庇護欲S

居心地S 総合A


総評:側にいると嬉しくなれる存在


『アリサと一緒にいられるだけで上条さんはハッピーになれることよ?』


禁書「おお!?ありさも凄いんだよ!」


アリサ「えへへ、低くなくて良かったあ!」


美琴「(さ、流石アリサさん…。伊達に歌姫をやってた訳じゃないわね…)」


バードウェイ「…チッ。つまり、これで優勝者はそちらの二人に決定したと言うことか…」


禁書「待って!!」


バードウェイ「あん?どうした禁書目録?まだ何か不満でも?」


禁書「まだオティヌスのを見てないんだよ!」


オティヌス「!」


バードウェイ「何?魔神もアプリをやっていたのか?」


禁書「そうなんだよ。…さあ、オティヌス!あぷりをこっちに渡すんだよ!」


オティヌス「!!ま、待て!私のは別に見なくてもいい!!」


禁書「ふっふっふ。あなた一人だけ見なくてもいいってことにはならないんだよ!さあ、短髪、確認しちゃって!」


オティヌス「ま、待て!!」


美琴「あら残念。こういうのは抜け駆けできないモンなのよ〜。……………え………?」


バードウェイ「どうした第三位?……………こ、これは…………?」


オティヌス「…」


禁書「??どうしたのかな二人とも?どれどれ?」


信頼度S

庇護欲S

居心地S 総合S


総評:唯一無二の理解者


『俺とお前は最早表裏一体の存在なんだ。つまり、お前の幸せは俺の幸せでもある。だから、これからも二人で幸せを目指していこうな!!』


禁書「…す、凄いんだよ。凄すぎるかも…!」


風斬「す、凄い」


アリサ「信じられない…」


オティヌス「…」


禁書「じゃあ、優勝はオティヌスで決まりだね!……とうま!!ちょっとこっちに来て!!」


オティヌス「!!ば、馬鹿!!余計なことするな!!」


上条「うん?何だよインデックス」


オティヌス「!」


禁書「さっきみんなでげえむをやってたんだよ。それでオティヌスが見事優勝したからとうまにやって欲しいことがあるんだよ!」


上条「??俺にやって欲しいこと?」


バードウェイ「優勝賞品はお前が優勝者の頬にキスすることだったんだよ」


上条「!?優勝賞品?罰ゲームの間違いなんじゃないの?」


一同「…………」


上条「…み、みなさんの視線が物凄く痛いのは気のせい?」


オティヌス「と、とにかくこんな小さな体になった私の頬に、口付けなんかできる訳がないだろう!」


美琴「た、確かに…」


上条「…ふっふっふ。上条さんに良い考えがありますことよ?」


禁書「良い考え?」


上条「まあ見てなさいって」


オティヌス「?」


そう言うと上条は右手の人差し指を自分の唇に十数秒ほど押し当ててから直ぐに、その指でオティヌスの頬に優しくタッチしてあげた。


一同「!?」


オティヌス「な、な…///」


上条「ふふ。どうよ?」


美琴「(と、当麻…)」


風斬「(す、凄く)」


アリサ「(素敵かも…)」


禁書「良かったね!オティヌス!」


オティヌス「…チッ///」


バードウェイ「(まさか魔神がここまで日和るとはな…。上条当麻の人間関係構築能力に関してはとてつもない研究価値があるように思えてきた)」



(一方通行サイド)


マーク「あ、あの一つ質問があるのですが、よろしいでしょうか?」


一方通行「あン?何だよ?」


マーク「何故あなたは真っ先に缶コーヒー売り場に来たのですか?」


一方通行「そりゃァ、やっば飲みモンっていったらコーヒーだろォが」


マーク「」


一方通行「何だよ、文句でもあンのか?」


マーク「い、いえ、別に…」


一方通行「♪」


マーク「…ちなみにフィアンマさんは?」チラッ


フィアンマ「ふむ。やはりワインと言ったら赤ワインに限るな…」


マーク「ちょっと待てええええ!!」


フィアンマ「うん?どうしたんだ、そんなに血相を変えて?」


マーク「あなたはまさか、あの部屋にいるみんなでワインを飲むつもりですか…?」


フィアンマ「勿論だ。一度でいいから、学園都市の最先端技術を用いて熟成された一品を試してみたかったんだ。お前もどうだ?」


マーク「おっ、それは良いですね。私もよくワインを嗜むもので……って、そうじゃない!!!!」


フィアンマ「?」


マーク「あそこにいらっしゃる連中は未成年ばかりなんですよ?しかもこの国では20歳未満の飲酒は禁止されているはずです!お酒に関しては言語道断です!!」


フィアンマ「…お堅い奴だな。ちょっとくらいなら大丈夫だろう」


マーク「…あなたそれでも十字教の頂点に立つ存在だったんですか?」


フィアンマ「…今の俺様は無職だ」


マーク「…」


フィアンマ「…」


マーク「…と、とにかく、今回お酒は慎みましょう!!」


フィアンマ「…仕方ないな」


マーク「…ホッ…」


フィアンマ「ならば代わりにエスプレッソにしようか。それなら文句はあるまい」


マーク「」


フィアンマ「ついでにエスプレッソマシーンも買っておくか。俺様がこれからあの部屋に寄る時に使うためにな」


マーク「…」


フィアンマ「♪」


マーク「(最早普通以前の問題ですね…この人達我が強過ぎます!!これ、私が付いてこなかったら相当悲惨なことになってたんじゃないでしょうか…?)」


マークはただひたすら戦慄していた。



(トールサイド)


縦ロール「…し、信じられませんわ…」


戦闘の結果は火を見るより明らかであった。武装集団は高速移動に加え、様々な能力、兵器、武術などを駆使したものの、その全てがトールによって薙ぎ倒されていた。逆にトールにはそこまで大きな損傷はないように見えた。


常盤台生A「…これだけの戦力差を相手にたった一人で、しかも殆ど大した傷を負うことなく退けてしまうなんて…」


少女達は戦闘が終了したと判断してトールの元へと駆け寄った。


トール「…いやあ、そうでもねえさ」


常盤台生A「え?……!!…あなた、吐血されてますの…?」


縦ロール&常盤台生E「!!」


トールの口から結構な量の血が溢れ出していた。トールはそれを左手で拭った。


トール「…どうやら速度強化に無理し過ぎちまって、あっちこっちの筋肉や関節を痛めただけじゃなく、今回は内臓にもダメージがあったらしい」


縦ロール「な!?それでは早く病院に向かわなくては!!」


トール「心配すんな。この程度なら回復魔術を使えば直ぐ治るさ」


縦ロール「か、かいふくまじゅつ??」


トール「…それにしても、まさかこれ位でボロボロになっちまうとはな…。我ながら情けねえぜ!!」


そう言うとトールは自身の拳を太ももへと叩きつけた。


常盤台生E「そ、そんなことは決してありませんわ!!あなたはわたくし達のために、たった一人で、大人数相手に立ち向かってくれたんですもの。絶対に情けないなんてことはありませんわ!!寧ろとても高貴で素晴らしい心構えをお持ちだと思いますの!!だから自分を蔑む様なことはしないでください!!」


縦ロール「!!あ、あなた…」


常盤台生Eは吠えるようにトールに自分の主張を訴えた。しかし、その声は震えていた。


トール「…」


常盤台生E「…!!……わたくし、助けて頂いた立場ですのに、あなたの気に障る発言をしてしまいましたわね…。申し訳ござ…………え?」


トールは常盤台生Eが言い終わる前に、彼女の頭の上に優しく右手を置いていた。


トール「…いや、アンタの気持ちは凄く嬉しいよ。まさか、俺のことをそんな風に思ってくれてるとはな…。こっちはあくまでテメェの憂さ晴らしのために戦ってたんだから、お褒めに与るような立場じゃねえんだけどよ。でも、まあ、とりあえず……ありがとな!」


トールは照れ臭そうに少しはにかんでいた。それを間近で見つめていた常盤台生Eは顔を真っ赤にして、


常盤台生E「(!!はうう…。素敵過ぎる笑顔ですの///)い、いえ…///」モジモジ


縦ロール「うふふ。とりあえずこれで一件落着のようでございますわね」




武装者A「…いや、まだ終わりじゃねえぜ?」


一同「!!」


トール達は声のした後方へと目を向けた、そこには辛うじて意識を保っていた武装者Aの姿があった。


トール「あん?どういうことだよ?アンタらはどう見ても、もう戦闘不能だろ。それとも助っ人でも呼んだのか?」


武装者A「…いや、最終兵器を使わせて貰うぜ」


トール「最終兵器だぁ…?」


武装者A「…ウチの暗部出身の奴らが作った奴さ。さっき『対地レーザー砲』って奴を上空1500m地点に打ち上げさせて貰った」


縦ロール「!!」


トール「…レーザーだと?」


武装者A「そう。地上にいる対象を空からレーザーで狙撃するシステム。そういう砲台を乗せた戦闘機をさっき打ち上げたのさ。そして、既にテメェを標的としてロックオンした。学園都市にいる限りこいつから逃れることはできねえぜ?」


常盤台生A「そ、そんな…」


武装者A「こんなもの頻繁に飛ばしたら、確実に学園都市側に妨害されるだろうから一回きりしか使えねえけどよ、テメェを殺すためなら惜しむ理由はねえ」


トール「…」


武装者A「…ところで、レーザー兵器を相手にするために必要な戦闘センスって何だか知っているか?」


トール「…レーザーの発射を視認してから回避行動に移っても間に合わない。つまり、レーザー兵器相手にするのに必要なのは、照準用レンズなどの微細な動きから、発射前動作を読み取る能力だろ?言わば上条ちゃんが持っているような『前兆の感知』能力。もっとも、あっちは対異能に限定されるようだが…」


武装者A「…ご名答。それなら俺達のレーザー砲の厄介さも良く分かるはずだ」


縦ロール「…ま、まさか…?」


トール「その砲台が遥か彼方に浮かんでいる以上、地上から発射前動作を読み取ることはほぼ不可能だわな」


常盤台生A&E「!?」


武装者A「そういうことだ。…エネルギー補填完了まで後五分程度。それでテメェはもう絶対に助からねえ。…へっ、ざまあみやがれ!!」


トール「…」


縦ロール「そ、そんな…」


常盤台生A「な、何か方法はございませんの…?」


常盤台生E「…い、嫌ですわ!せっかくこうして出会えたのに、絶対に失いたくありませんの!!…だ、誰か。誰でもいいからあの殿方を助けて…!!」


武装者A「…もう無理だよお嬢ちゃん。精々神様にでもお祈りしてな」


常盤台生E「…い、いや…。イヤァァァああああああああああああああああ!!!!」





トール「…はぁーーぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…」


一同「!?」


トール「この街のクズ科学者もそうだけどよ、クソガキ共も同様にマジで小せえ野郎ばかりだな」


武装者A「な…に…?」


トール「テメェが今やってんのは、ガキが大人に向けて、パパに買って貰ったおもちゃを自慢してるようなモンだ」


武装者A「!!」


トール「サッカーで例えてやるよ。セリエAでもリーガエスパニョーラでも何でもいいけどよ、その中に強豪相手にハットトリックを決めた選手がいたとする。そいつは確かに多くの人間に称賛されるだろうよ。しかし、『年間最優秀選手賞』を何度も獲得した経験のあるような化け物選手を有するチームからみたらどうだ?きっと『奴よりもウチのエースの方が優れてる』って思うだろうな。要は自分が優れてると思っている存在も、はたから見ればそうでもないって思われることなんざ、幾らでもあるんだよ。今回もそういうことさ」


武装者A「…何だと?」


トール「…隠していたとっておきに戦力差があり過ぎる。たったそれだけだ」


武装者A「!!言ってくれるじゃねえか。なら精々無駄な足掻きをしや…が…れ」


そう言うと武装者Aは力尽きて気絶してしまった。


トール「まったくよ、余計なことを言わなければ本当に俺を殺せていたかもしれねえのにな。所詮戦争の『せ』の字も知らねえガキだという訳か…」


縦ロール「ど、どうするおつもりですの…?」


トール「どうしよっかねえ…?」


常盤台生A「…え!?先程何か策があるような雰囲気を出してませんでしたか?ま、まさか…実は…」


トール「んにゃあ、そうじゃねえ。…逆だよ。手札の数が複数あるから悩んだだけさ。…それより問題なのはアンタ達だ。俺の側にいたら巻き込まれちまうかもしれねえぞ?避難した方が良いと思うぜ?」


常盤台生E「…わたくしは、あなたの側にいさせてください!」


トール「…オイオイ、まさか自殺願望があるとかじゃねえだろうな?」


常盤台生E「…上手く今の気持ちを表現できないのですが、とにかく、あなた一人を危険な目に合わせて、この場を離れるなんてことはわたくしにはできませんの!!」


トール「!」


常盤台生A「わ、わたくしもここに残りますわ!元よりあなたに助けられた命ですもの。あなたに最後まで心中させてくださいまし!」


縦ロール「勿論わたくしも残ります。あなたの生き様をしかとこの目で見させて頂きますわ」


トール「…………面白え…面白えよ!!アンタらのおかけで最高に燃えて来たぜ!!」


トールは1度目を瞑り、大きく息を吐いた。そして、勢い良く目を開き、獰猛な笑みを浮かべて、


トール「ミョォォォォォォォォルニィィィィーーール!!!!!!」


トールは大きな声で叫んだ。そして瞬く間に、トールの目の色が変化し、髪や両手を中心に青白く光始めた。


縦ロール「(!!この変化は一体?)」


常盤台生E「な、何かわたくし達にもできることはありませんか!?」


トール「…そうだな。なら、さっきあの野郎が言っていた通り『神様』にお祈りでもしていてくれよ」


縦ロール「か、神様ですの?」


トール「ああ。もしくはアンタら自身で果たして『神様』って奴は本当にいるのか?ってことを見極めてくれたら良い」


縦ロール「??は、はぁ…」


トール「ここにいるのは、もうさっきまでの俺じゃねえってことさ。だから、こっから先は俺が『神』と称される理由って奴をとことん見せてやるぜ!!」



(一方通行サイド)


マーク「(結局彼らは飲み物に関してはコーヒーしか選ばなかったので、私がコーラや『シンデレラ』用のフルーツジュースなどをチョイスしたのですが、果たしてこれでボス達に許して貰えるんですかね?)」


一方通行「とりあえず追加の鍋の具材と飲み物はこれでオーケーだろォ。後はお菓子だな。いやァ、実にチョロいぜェ」


フィアンマ「まったくだ。流石は俺様達と言ったところだな」


マーク「…」


一方通行「お菓子ねェ…。とりあえずポテチとかは鉄板じゃねェかな、多分」


マーク「(!!おぉ、漸くマトモなチョイスを)」


フィアンマ「いや、何を言っているんだお前?」


マーク「!」


一方通行「あン?」


フィアンマ「そんなものがカフェに合う訳がないだろう」


一方通行「た、確かに言われてみれば…。なら何だったらイインだよ?」


フィアンマ「ふふ。本場ローマに長らく暮らしていた俺様が、カフェに合うお菓子を厳選してやるから安心しろ」


一方通行「おォ!!何て頼もしいンだよ、オマエはァ!!!」


一方通行とフィアンマは一目を憚らずにガッチリ握手をしていた。


マーク「(…い、今はっきりと確信しました。この人達のおつかい能力は小学生以下のようです…)」



(トールサイド)


縦ロール「と、ところで上空に浮かぶ戦闘機の位置はどうやって掴むおつもりなのでしょう?」


トール「あん?そんなのはレーダーを利用するに決まってんだろ」


縦ロール「レーダー?」


トール「こっちはこれでも、天候の神も司っているんだぜ?気象情報なんてモンは、ある程度把握できてなきゃ話にならねえ。だから俺は、それを気象レーダーと同じような理論を用いて補完しているんだ。今回はそれを応用するつもりだ」


常盤台生A「…あなたは、御坂様クラスの発電系能力者でないと実行不可能なことも容易にできるのですね…」


トール「レーダーだのなんだのってのが科学サイドの特権だと思っているのなら大間違いだ。寧ろ磁力関係を除けば、ミコっちゃんにできて俺にはできないことの方が限られてくるはずさ。なにせこっちは、ありとあらゆる全ての物理法則を強引に捻じ曲げることができるんだからな。それが魔術師ってモンなのよ」


縦ロール「み、ミコっちゃん、ですの?」


常盤台生E「(…み、御坂様とお知り合いなのですね…。ちょっと、ショックですわ…。いえ、わたくしはこれしきでは、へこたれませんの!)」


トール「とりあえず大体の位置はもう掴んでる。あとは細かな照準を合わせるだけさ」


そう言うと、トールは手刀の要領で右手の指同士をくっつけて上方へとかざし、左手で右手首を抑えた。


縦ロール「!!そ、その構えは?」


トール「決まってんだろ。溶断ブレードで戦闘機をぶっ壊すための構えだよ」


常盤台生A「(…地上から1500mも離れているのに、届くものなのでしょうか?)」


そしてトールは構えを取りながら細かな照準調整を行い始めた。


トール「(…九時方向に三十九…いや四十か…?)」


縦ロール「…ま、間も無くエネルギー補填完了予定時刻になりますわよ!?」


トール「うるせえ!!あと少しで照準完了するんだ、黙ってろ!!!」


縦ロール「!!」


トール「(!!捉えた!!!)…行くぜ、『投擲の槌』!!フルパワーだ!!!!!!!!!!」


轟!!!っと言う爆音と共に、トールの右手から莫大な青白い閃光が解き放たれた。


トール「いっけええええええええええ!!!!」


少女達が目を開け直すと、トールの右手から真っ直ぐに溶断ブレードが伸びていた。その長さは全長2000mにも及んだ。


縦ロール「(す、凄い…。とても信じられないレベルのエネルギーですわ。こんなものは、既存の科学でどうにかなるレベルでは決してありませんの。恐らくあの御坂さんですら不可能でしょう…)」


常盤台生E「…綺麗…凄く綺麗ですの…」


夜空へと一直線に続く青白い閃光は、まさに神話に出てくるような光景を思わせた。それを引き起こした本人は、楽しそうに笑顔を浮かべていた。


トール「ビンゴッ!へっ、見たかよお嬢ちゃん達。まさにピンポイントショットって奴さ。やべえ、トールさんマジ天才!」


常盤台生E「ほ、本当ですの!?…よ、良かったですわ…」


縦ロール「し、しかし戦闘機の残骸はどう致しましょう?このままでは民間人に被害が…」


常盤台生A「た、確かに…」


トール「…………はぁぁぁぁあああ」


常盤台生E「…と、トール様…?」


トール「…あのね、俺は決して脳筋野郎なんかじゃねえんだよ。当然こういう結果になることは折込済みさ」


縦ロール「!!で、では何か策がおありで?」


トール「当然!!」


トールはひどく凶暴な笑みを浮かべた。それと同時に再び全身が青白く光始めた。


トール「…確かに俺は地上戦のエキスパートであるのは間違いねえ。認めてやるよ。だけど俺は、本当は空中戦の方が好きかもしれねえんだ」


縦ロール「な、何故ですの??」


トール「ンなモン決まってんだろ!犠牲を出す恐れのない空中でなら」



一同「…」




トール「…思いっきりやれるからさ!!!!!」


一同「!!」


そう言うとトールの姿がいつの間にか少女達の元から消えていた。


縦ロール「(!!し、白井さんのような『空間移動』…ですの?)」


トールは世界そのものを動かして、残骸の一つの近くに自分の位置が来るようにしていた。


トール「(まずは全ての標的をロックオンしねえと…)」


上空へと移動したトールは手始めに目標を定めた。


トール「…良し!ロックオン完了!!そんじゃあ、最高の力でさっさと終わりにさせて貰うぜ、ベイビー!」


トールは両足からブレードを噴出させて、勢い良く空中で体を回転させた。そして回転を続けたまま轟音と共に、両手の十指から2キロにも及ぶ溶断ブレードを爆発的に噴出させた。


トール「おおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」


トールの雄叫びと共に、桁外れの破壊の嵐が巻き起こった。疎らに散っていた残骸はいつの間にか全て、トールの破壊範囲に収まっていた。故に、たった一回の攻撃で全ての残骸が焼き切られてしまった。


トール「(北欧神話において主神オーディンのグングニルと同様に、雷神トールのミョルニルにも、『投げたら必ず標的へと命中する』性能があるとされる。俺はこれを、『溶断ブレードの有効範囲へと、敵が入り込んでくるように世界を変動させる』ことで『必中』を実現させているのさ!!!)」


それはまさに『神』を名乗るのに相応しい破壊の嵐であった。


そして、神話級の破壊を終えたトールは、四肢からブレードを噴出させて落下速度を落としつつ、先程の校庭へと向かった。そして着地の直前にもブレードを勢い良く噴出させて、何事も無かったかのように着地した。


縦ロール「と、トール様!!」


常盤台生A「け、結果は…?」


トール「…………さ………」


常盤台生E「…さ?」


トール「さぶいいいィィィいいいいいいいいいいいいい」ガタガタ


常盤台生E「」


トールは鼻水を垂らしながら尋常じゃないほど震えていた。


トール「お、俺としたことが上空と地上の温度差を完全に失念していたぜ…。

…まあとにかく、やるべきことだけはきちんと片付けたから、そこんところは安心しなよ」ガタガタ


縦ロール「!!…それは一安心できましたわ。本当に良かった…」


トール「…よ、良くはないと思うんだけどね。トールさんこのままだと凍え死んじゃいそう…」ガタガタ


常盤台生A「あわわわ、何か温める手段は…?」


トール「何だったら、あなた達が抱きしめて、俺を温めてくれてもいいのよ?むふふ…」ガタガタ


常盤台生A「へ?…い、いや、でもぉ///」モジモジ


トール「…冗談で言ったんだけどな。そんなマジ反応されるとこっちが困っちゃうよ…」ガタガタ


常盤台生A「…はえ?…おほほ、冗談でしたか。いやぁ、お恥ずかしいですわ///」


トール「あはは。学園都市のお嬢様ってのは本当にからかい甲斐のある連中ばかりだな」ガタガタ


常盤台生A「うう///」


トール「まあ全て片付いたし、それじゃあトールさんは…………え?」


常盤台生E「…」


その時トールの胸元へと少女が勢い良く飛び込んで来た。


トール「!!…お、お前…泣いているのか…?」


常盤台生E「…良かった…。本当に…良かった…」


トールは、溢れんばかりの涙を流しながら身を寄せてきた少女を、無意識の内に優しく抱きしめていた。


トール「…心配かけて済まなかったな」


常盤台生E「……いいえ…あなたがご無事でしたら何も問題はありませんわ」ニコッ


少女は涙を流しながらも、トールに向けて本当に幸せそうに笑みをこぼしていた。


トール「(…きっとこれが、上条当麻が生きているような『世界』という奴なんだろうな…。なんというか、まあ、悪くはねえかもしれねえな!)」


その笑顔を見たトールも照れ臭そうに笑顔を浮かべた。


常盤台生A「(彼女がとても羨ましいですの…)」


縦ロール「あらあら。でもまあ、これで本当に一件落着でございますわね」


その時他の『食蜂派閥』の少女達が集まってきた。トールが上空へと向かっている間に呼び寄せていたのだった。


常盤台生B「良かった、皆さんご無事でしたのね。しかし、この状況は…?」チラッ


縦ロール「ふふふ。なあに、一人の少女が憧れの『王子様』に抱きしめられているだけですわ」


常盤台生B「??はぁ…」



一方通行「オウオウ、一体どうなってやがるンだ、こりゃァ?」


常盤台生D「(あ、あの殿方は!!)」


その時買い物を終えた一方通行達が戻ってきた。


一方通行「何でこンなにメルヘンチックな展開になってやがるンだよ?中学生を抱き締めるとか、結局あの野郎もロリコンだったンじゃねェか」


常盤台生E「そ、そんなんじゃありませんの!!」


一方通行「あン?」


少女はトールの元を離れ、一方通行を鋭く睨みつけていた。相手が学園都市最強の超能力者であることを理解しつつも、それでも一方通行と対峙することを厭わなかった。


常盤台生E「と、トール様は、わたくしにとっての…『ヒーロー』なんですの!!」


トール「!!」


一方通行「…へェ…ヒーローねェ?」


常盤台生E「で、ですから…」


少女が何かを言いかけた時、トールは軽く少女の肩を叩いた。


常盤台生E「…トール様?」


トール「ありがとな」ニコッ


常盤台生E「!」


トールは屈託の無い笑顔を少女に見せて、その場を離れた。そして、


トール「…一方通行ァァァあああ!!」


一方通行「あン?…!!?…お、オマエ…鼻水を人様のコートで拭くンじゃねェ!!汚ねェンだよ!!!」


トール「うるせえ!こっちはあまりの寒さでやってられねえんだよ!!テメェはコートがあるからいいけどよ!!」


一方通行「り、理不尽過ぎるだろオマエ…」


トール「おっ!?お前温かそうなコーヒー持ってんじゃん!一本くれ!」


一方通行「…しゃァねェなァ。ほらよ」


トール「サンキュー。…うっげえ、クソ苦え…」


トールは口に入れたコーヒーを吐き捨ててしまった。


一方通行「…そろそろ殴ってもイイか、オマエ?」


その時一人の少女が彼らの元へと近寄ってきた。


常盤台生D「あ、あのー、『変態白モヤシ』様?」モジモジ






一方通行「………………………………………は?」


常盤台生D「(へ、返事して貰えましたの///)ええっとぉ、そのぉ…」


一方通行「……なァ、俺の名前をもう一度聞かせてくれねェか?」


常盤台生D「??『変態白モヤシ』様ではありませんの??」


一方通行「」


その時一方通行の近くから複数の笑い声が聞こえてきた。


トール「はっ、はははは。ば、馬鹿。笑わせるんじゃねえよ!こっちはさっきの戦闘で内臓をやられてるんだぜ?笑い過ぎて血を吐き出しちまいそうだwwwww」


フィアンマ「変w態w白wモwヤwシw」


マーク「こ、これは辛抱できませんwwwwww」


一方通行「…お嬢ちゃン、一つイイかァ?」


常盤台生D「は、はいぃ!何でしょう?」


一方通行「俺の名前は誰に教わったンだァ?」


常盤台生D「勿論女王からですわ」


一方通行「…女王?」


縦ロール「名門常盤台中学において、最大規模の派閥を保有するために『女王』と称され、かつ学園都市第五位の『心理掌握』の力を持つ、食蜂操祈様でございますわ!」


一方通行「(…今朝会ったあンのクソ野郎か…。今度会ったら絶対死ぬ程後悔させてやる!!!)」


常盤台生D「…も、もしかして本当は違うお名前をお持ちですの?」


トール「いいやぁ、こいつは超変態白モヤシで合ってるぜ?」


一方通行「!!お、オマエ!トボけてンじゃねェよ!!って言うかァ、さりげなく『超』をつけ足してンじゃねェ!!」


一方通行はトールへと飛びかかった。


縦ロール「あらあら。あなた方は仲がとてもよろしいのですわね」


一方通行&トール「「いや、違うから!!」」


縦ロール「(そうでしょうか?喧嘩するほど仲が良い、と言うではありませんの…)」


常盤台生D「ち、ちなみに本当のお名前はどういったものですの?」


フィアンマ「…奴の名前というか、能力名と呼ぶべきものは一方通行だ」


常盤台生D「あ、一方通行様…」


その時、一方通行とトールの取っ組み合いを見ていたマークは、呆れた様に、


マーク「…あの…みなさん、早く帰らないとボス達に怒られますよ?」


トール「!!そ、そういやそうだった…。だけど、その前にハンバーガーショップにちょっとだけ寄ろうぜ!今無性に食いてえ気分なんだ。持ち帰りで良いからさ!な?」


一方通行「はァ?オマエの頭はイカレちまってンのかァ?そンなモンが、鍋に合う訳がねェだろォが!!」


トール「何言ってやがる!テメェこそ和食に合わなさそうなコーヒーを大量に買ってやがるじゃねえか!!」


マーク「まあまあ、喧嘩は後回しにしましょうよ。ボス達を怒らせてしまったら、それこそ家主の上条さんにも迷惑をかけてしまう恐れもありますし…」


トール「…チッ。アンタの言う通りだな。それじゃあ、そろそろ帰るか!」



常盤台生E「!!ま、待ってくださいませ、トール様!」


トール「あん?」


常盤台生E「…わたくしは…また…トール様にお会いさせて頂いても…よろしいでしょうか?」


トール「…とは言ってもなあ。実は俺、この街の人間じゃねえんだよ…。残念だけどそれは厳しいかもしれねえ…」


常盤台生E「そ、そんな…」


トール「!」


少女は絶望しきったような表情を浮かべてしまった。その目には涙が溜まっているのがトールにもはっきりと見えた。






だから、







トール「…なぁんてな!」


常盤台生E「え?」


一方通行「!」


トールは軽く少女のおでこをピンと叩いた。


トール「実は俺、これからは、この街に住む『とある英雄』のボディーガードとして働くつもりなんだ。だからこれからはきっと、この街にいられる期間も長くなるはずさ」


一方通行「…」


トール「…だから…ほれ!」


トールは少女に小さな紙切れを渡した。


常盤台生E「!!こ、これは?」


トール「勿論、俺の携帯番号だよ。何か用があったらそこに連絡してくれ」


常盤台生E「う、嬉しい…」


少女は大事そうに紙切れを両手で包みこみ、自分の胸元へと手繰り寄せて、安堵の笑顔を浮かべていた。


トール「…そっか」


トールもそれを見て一安心したようにホッと息を吐いた。


一方通行「(あの野郎、お嬢ちゃンの笑顔に見惚れていやがるな…)」


常盤台生D「…あ、あの。一方通行様!」


トール「!!」


一方通行「!!あン?」


常盤台生D「こ、これわたくしの番号ですの。もしよかったら、今度一緒にお茶でもお飲みになりませんか?」モジモジ


一方通行「…考えといてやるよォ」


常盤台生D「!!あ、ありがとうございます!」


トール「(おやおや、変態白モヤシ君も隅に置けないねえ…)…まあいいや…」


一方通行達の会話を見届けたトールは気持ちを入れ替えて、


トール「それじゃあ、時間もやばくなってきたし、俺達はそろそろ本当に帰るわ」


縦ロール「そうですか…。できましたら、もう少しお話していたかったのですが、仕方ありませんね。…今日は本当にお世話になりました」


一列に並んだ少女達は優雅に一礼をした。それを見た少年達は、少女達に背を向けて、手を軽く振った後、そのまま振り返らずに去って行った。


常盤台生E「(…これ以上にないような、最高に素敵な出会いをして頂いて、わたくしは感謝し切れないほど感謝しておりますのよ?トール様…。

…わたくしは、またあなたとお会いできる日を心よりお待ちしておりますわ)」


そしてその帰り道では、


一方通行「…まったく、オマエもスッゲェ、ナイト様だよなァ。あの状況であンな都合の良いセリフが吐けるなンてよォ」


トール「…これで晴れて、俺が上条ちゃん家に居候みてえなんをするための、正当な理由ができた訳だな!」






一方通行「…素直じゃないねェ」


トール「…うるせえ」


マーク「(な、なるほど。こいつが青春て奴ですか…。羨ましい限りです)」


トールは歩きながらも先程のことをずっと考えていた。


トール「(俺が『ヒーロー』ねえ…。結局俺にもこうして、第一位にとっての打ち止めのような『守りたい者』ができちまった訳だ。これも全て、さっき上条ちゃんに救われてしまったせい、なのかもしれねえな…。

…まったくよ…)」


一方通行「…何さっきから一人でニヤニヤしてやがるンだよ?はっきり言って気色悪ィぞ、オマエ?」


トール「!!テメェよりかはマシだよ、この変態白モヤシが!!」


一方通行「!!オーケー、オマエはスクラップ決定だぜェ、このクソ野郎がァ!!」


マーク「(…また始まってしまった)」


フィアンマ「わはは。やはり愉快な奴らだな」


その後トールの希望通り、ハンバーガーショップへ寄ってから帰宅した。



(上条サイド)


上条「おっ、みんな帰ってきたみたいだぞ!おかえり!みんな!」


一方通行「ふゥ、ただいまァ」


フィアンマ「ふむ。このアットホーム感はたまらんな」


マーク「もうクタクタですよ…」


上条「あれ?トールは?」


一方通行「…後ろだよ」


上条「?」


上条が後ろを振り向くと、トールは既に猛烈なスピードでコタツへと向かっていた。


トール「コタツちゃあああん♡会いたかったよおおお!!」


レッサー「キャッ!?」


トールは無理矢理レッサーをコタツから引き剥がし、そのまま全身を潜りこませた。


トール「あ、暖けえええ。生き返るわあああー」


美琴「ち、ちょっとアンタ!!一体何処に顔突っ込もうとしてんのよ!?

…こんのど変態がァァあああ!!」


美琴は一旦コタツから足を出し、トールの顔面へと思いっきり蹴りを入れた。


トール「うぎゃぁぁああ!!…べ、別に良いじゃねえかよ。アンタに手を出すつもりは全くねえし、しかもどうせアンタは短パン履いてんだからよぉ…」


美琴「黙れ、超ド級変態クソエロ野郎!!」


トール「…ひ、酷い…」


一方通行「(いいぞォ、もっと罵ってやれ)」


美琴「そう言えばちゃんと買い物はできたんでしょうね…?

……は?…何これ?……ヤシの実サイダーがないじゃない。どういうつもりなのかしら?」


バードウェイ「お菓子も、コーヒーとセットで楽しむようなものばかりじゃないか!!…おい、マーク!これは一体どう言うことだ!!」


マーク「…だ、だってえこの人達が全く役に立たなかったんですもん…」


バードウェイ「…お前がぶりっ子ぶってもただひたすらに気色が悪いだけだぞ?…というか、お前ともあろう者がいてこのザマなのか?」


マーク「…私は一応大人なんですよ?しかも魔術側の。今どきの学園都市の十代が、どんなお菓子を食べるのかなんて、さっぱりです…」


バードウェイ「…ごもっともだな。では第一位、どう責任とってくれるつもりだ?」


一方通行「(さ、さっきと態度が違い過ぎるゥ!)…俺だって同年代の女の友達なンて殆どいねェンだから、良く分かンなかったンだよ!」


バードウェイ「…チッ。使えんな」


一方通行「(い、今の発言でちょっとゾクゾクした俺は本当にやべェかもな…)」


オティヌス「(ジャムパンもないのか…。残念…)」


アリサ「で、でもこの人達は、私達のために寒い中わざわざ買い物に行ってくれたんだから、きちんとお礼を言わないと!」


トール「…うう。アリサちゃんは何て器の大きい女の子なんだ…」


一方通行「…まったくだァ。正直仏様みてェに見えるぜェ…」


アリサ「そうかな?そんなに褒められるようなことは言ってないと思うけどなあ…」


上条「いいや、上条さんもアリサは本当に気配りが良くできていて、素晴らしい女の子だと思うぜ?」


アリサ「…当麻くん…」


一方通行「…おォ、いつの間にかイイ雰囲気になってやがる」


トール「…いや、それは流石におかしくね?なんで毎回毎回美味しいところは全部、上条ちゃんが持ってっちゃうんだよ…?」


美琴「…ねえ?金髪馬鹿?ちょっと耳を貸してくれる?」


トール「…もしかして、それはトールさんのことかね?」


美琴「そうよ。いいからとっとと耳を貸しなさい!」


トール「何だよ、一体?……イテテテ!!み、耳を引っ張るんじゃねえよ!!」


美琴「うっさい!あの二人がいい雰囲気になっちゃってるから、ムカムカしてんのよ!!」


トール「そ、そんな理由かよ…。トールさんを嫉妬のはけ口にするんじゃねええ!!俺は何も悪いことしてねえだろうが!!」


一方通行「…イイやァ、オマエは確かに悪ィことをやったぜェ。俺はそォ言うのは見逃さねェ」


トール「…は?」


一方通行「…なァ、オリジナル先生?」


美琴「…アンタにその言い方で呼ばれると。物凄く気色悪いんだけど…。

…まあ、いいわ。で、何よ?」


一方通行「…こいつさっき買い物を手伝わずに、一人でサボってましたァ」


美琴「………………………………はあ?」


トール「ちょ!?テメェ何言ってやがる!!」


一方通行「俺達が一生懸命買い物してたのにこいつときたら、常盤台のお嬢様達相手にナンパしてやがったンですゥ!」


美琴「…へえ?ウチの生徒にナンパを…ねえ…?」バチバチ


トール「ま、待てよ、誤解だよ!!俺はミコっちゃんの知り合いを助けるために、たった一人でクソ野郎共と戦ってたんだぜ?寧ろ感謝して貰いたいくらいだ!!」


一方通行「お嬢様としっかりとフラグを立てて、しかも連絡先まで教えちゃってるのにねェ…?」


上条「な、何ィッ!?常盤台のお嬢様にナンパしてフラグを立てるとか、そんなのが許されると思ってんのかテメェは!!」


トール「それはこっちのセリフだ!!一体テメェは何人のお嬢様を落としてきやがったんだよ!?」


上条「平民である上条さんが、お嬢様に相手にされる訳がねえだろうが!!」


トール「寝言は寝てから言えよ、この鈍感女ったらし野郎が!!」


上条「黙れ!チャラ男野郎!!」


上条とトールはその場で殴り合いを始めてしまった。


マーク「(この人達は、結局こっちでもこうなってしまうんですね…)」


風斬「ど、どうしよう、インデックスちゃん…。ケンカは止めないと…」


禁書「大丈夫だよ、ひょうか。私に任せて!」


風斬「う、うん」


インデックスは上条の背後へと即座に回り込み、そのまま後頭部に思いっきり噛み付いた。


上条「!!!??い、インデックスさん!?」


禁書「…ねえ、とうま?ごはんはまだなのかな?ケンカなんかしてないでさっさと用意して欲しいんだよ。さもないと、代わりに私がとうまを食べちゃうかも!」


上条「ひぃいい!!わ、分かりました、この不肖上条当麻が用意をちゃっちゃと終わらせちゃいます!!だから、許してええ!!」


禁書「うん。それでいいんだよ」


アリサ「(どうやら、一番当麻くんの扱いが上手いのは、インデックスちゃんみたいだね…)」


上条「そうだ!白菜とかは買ってきてくれたのか?」


フィアンマ「当然だろう。そこに買い物袋があるから確認してくれ」


上条「おぉ、サンキュー。…へえ、鍋用にカットされてる白菜を買って来てくれたのか。これならすぐにできそうだな!……って、これは?」


一方通行「あン?」


上条「…追加用の肉や、電子レンジでチンするタイプのライスも買って来てくれたのか?」


一方通行「一応なァ。多分これだけの人数なら直ぐになくなっちまいそォだからなァ。あと、缶コーヒーも箱買いして来たけどよォ、そっちは餞別だ。好きなだけ飲んでくれて構わねェ」


上条「おぉ、流石あーくん!気が利くなあ」


一方通行「!!?お、オウ。まァな」


上条「よっしゃ、早速鍋を開始しようぜ!みんな、コタツの周りにに集まれ!!」


そういうと上条はカセットコンロに火をつけた。


禁書「やったあ♪やっとごはんが食べられるんだよ!」


レッサー「…ところでコタツには誰が入るんです?これだけの人数がいたらとても入りきらないですよね?」


トール「勿論、一枠は俺で確定だな!」


美琴「はあ?アンタはレディーファーストっていうものが理解できない訳?」


トール「…何がレディーだよ。デビルーの間違いなんじゃねえの?」


美琴「…えいっ!」


トール「!!痛え!!だ、だから耳を引っ張るんじゃねええ!!!」


上条「…こんな風にケンカになるから、コタツは全員使用禁止だな。とりあえず暖房だけで我慢してくれ」


トール「…ガーン…」


美琴「…でも確かにちょっと寒いかも…」


上条「なら俺の学ランでも羽織るか?幾らかマシにはなるだろ」


美琴「!!い、いいの!?」


上条「まあ、さっきのやりとりで、お前の涙とかが染み付いちゃってるけどな」


美琴「べ、別にそんなの私は気にしないわよ。それじゃあ、せっかくだから貸してくれる?」


上条「(俺は結構気にしてるんだけどね…)…おう、いいぜ。ほらよ」


美琴「ありがと!早速羽織らせて貰うね!!」


アリサ「(美琴ちゃんが羨ましい…)」


美琴「(こ、これが夢にもみた当麻の学ランの温もりなのね。当麻の匂いがしてとても刺激的だわ。やばい、何だかとても幸せな気分になっちゃった…)


上条「(…な、何故人の学ランを来てニヤニヤし出したんだ?もしかして男装にでも興味があったのかな…)…まあいいや。とりあえず俺はご飯でもよそうかな…」


風斬「あ、ごめん…上条君。それなら私が既にみんなの分をやっちゃった」


上条「なんですと!?」


風斬「これぐらいだったら手伝っても大丈夫かなって思ったんだけど、気に障ったらごめんね…」


上条「いや、鍋の面倒を見るのと、ご飯をよそうのを、同時にやるのはしんどいからな。助かったよ。サンキュー、風斬!」


風斬「うん。どういたしまして!」ニコッ


上条「良し!ご飯も揃ったし、そろそろいい感じに煮込み終わった具もあるから食べ始めようぜ!!」


禁書「言われなくも、もう食べ始めちゃってるかも!!…うーん、とても美味しいんだよ♪」


美琴「…アンタ本当に食い意地に関しては凄まじいのね」


上条「美琴も食べてみたらどうだ?まあ、上条さん特製のお出汁がお嬢様の口に合うかどうかは分かんねえけどな」


美琴「大丈夫よ。私だって良くファミレスのチェーン店を利用してる位だし。遠慮なく頂くわ。…………………こ、これは…!?」


上条「あん?」


美琴「め、めちゃくちゃ美味しいじゃない!…すごい…これなら毎日食べていても飽きないレベルかも…」


上条「そ、それなら良かった。お嬢様のお口に合われたようで何よりです」


美琴「うん!(やばい…こんな家庭的な面もあるなんて、ますます惚れ直しちゃうじゃないの!!)」


アリサ「本当に凄く美味しいね♪」


バードウェイ「ふむ。和食も悪くないな」


レッサー「(な、なるほど。彼をウチに引き入れるためには和食の勉強もしなくてはなりませんね…)」


フィアンマ「(確かに素晴らしい味だが、ワインも飲みたい…)」


アリサ「あ!あなたも食べます?」


マーク「へ?私もよろしいのでしょうか?」


上条「当然だろ?買い物を手伝ってくれたんだから、上条さん達はアンタに感謝してるんだぜ?」


マーク「…うう。何と言う心遣い。久々に心が癒された気分ですよ…」


アリサ「あはは。はい、どうぞ!」


マーク「ありがとうございます。…こ、これは…確かに物凄く美味ですね。しかも体全体があったまるようです」


上条「へへへ。ありがとよ!」


オティヌス「…なあ、人間?」


上条「うん?…あぁ、お前用によそってやらなきゃな。ちょっと待ってろ。…ほれできたぞ。小さいサイズの具を集めてやったから少しは食べやすいと思うぜ?」


オティヌス「悪いな」


美琴「(…凄い。一言だけの呼びかけで会話が続いちゃうんだ…。まるで熟年夫婦のやりとりみたい…)」


一方通行「肉、肉、肉ゥ〜♪」


トール「あっ、こらテメェ!!俺の食おうとした肉を取るんじゃねえよ!!」


一方通行「バーカ、こォいうモンは早い者勝ちなンだよ!」


トール「ぐっ…!?」


一方通行「…うンめェぞ、これェ!!!これは食べられなくて残念だったなァ…?」チラッ


トール「!!この野郎、もうぜってえ許さねえ!!!」


美琴「痛ッ!?」


トール「…あん?」


美琴「…アンタはぁ、勝手に暴れて人の足を踏ん図蹴るんじゃないわよクソ馬鹿!!」


トール「ぎゃふん!!!?」


上条「あははは。まあ、まだ肉も一杯残ってるし、そう焦んなよトール。ほれ、上条さんの取り分をくれてやるよ」


トール「!!…すまねえ。やっぱ上条ちゃんはいい奴だな!」


上条「よせよ。俺はただみんなの笑顔を見ていたいだけだ。そんなに褒められたものでもねえさ」


トール「…ははは、そっか。上条ちゃんらしい答えだな!」


上条「…へへ、まあな!とりあえず食ってみろよ。味は上条さんが保証してやる!!」


トール「サンキュー。だけど不味かったら承知しねえぞ?」


上条「ああ」


そしてトールは上条に差し出されたお肉を食べ始めた。


トール「…」


上条「どうだ?」


トール「…美味え。本当に美味えよ。今まで食ってきた何よりも美味えかもしれねえ」


上条「…そうか。きっと、それが『普通』の味って奴さ」


トール「!」


上条「お前は今まで、こうやって大人数でわいわい楽しみながら飯を食う機会なんて殆どなかったんじゃねえか?」


トール「…かもしれねえ」


上条「味覚っていうのは不思議なモノでよ、全く同じ食い物でも、食べる時の環境によって味は変わってくる。一人で食べてる時よりも誰かと食べてる時の方が美味しく感じるだろ?」


トール「…」


上条「…そして、誰かを傷付けた後に食う飯よりも、誰かを守った後に食う飯の方がより美味えはずだ」


トール「!!」


上条「…フラグを立てたってのは少し気に食わねえけど、お前はお嬢様を守るために必死で戦ったんだろ?」


トール「…ああ」


上条「だったら、自分を誇れよトール。お前はもう『普通』の世界に生きてていいのさ。今のお前にはその資格が十分ある。きっとこれからはこの『味』がお前にとって当たり前になるはずさ」


トール「…」


トールは今日一日のことを思い出していた。一方通行と激突した直後に、上条と『ケンカ』をしたこと。トールにとって掛け替えのない『親友』達ができたこと。常盤台のお嬢様のピンチに駆け付けて、『守りたい者』を見つけられたこと。そしてこうやってみんなと『家族』の様に鍋を食べられること。その全てがトールが昨日まで心から欲していたモノだった。


禁書「…どうやらあなたもとうまに救われちゃったみたいだね」


トール「!」


禁書「私には分かるんだよ。とうまに救われた人がどんな顔をするのかって」


トール「…」


禁書「とうまに救われた人はね、みーんな、優しい笑顔になれるんだよ!今のあなたもそう」


トール「…俺も?」


禁書「うん!あなたは今とても優しい笑顔をしてるんだよ!ねー、とうま!」


上条「ああ!」


トールは上条とインデックスの笑顔を見て、何だか嬉しくなっていた。


トール「(鏡がねえから今の俺がどんな顔をしてるのかは、はっきりとは分からねえ。ただ、なんとなく分かる気がする。きっと今の俺はこいつらみてえな顔をしているんだろうな…)」


トールの笑顔を見ていた一方通行は、


一方通行「(どォやら、こいつも本格的に俺と似たよォな立場になったよォだなァ。まァ、辛ェ道のりが待ってるけど、精々頑張れよォ)」


と、ライバルに心の中でエールを送っていた。


トール「…さてと、そんじゃあこれからも『同居人』としてよろしくな、上条ちゃん!」


上条「………………………………………………………な、んだと?」


トール「だってこの『味』が俺にとって当たり前になるんだろ?つまり、俺に毎日飯を食わせてくれるってことだよな!?」


上条「…い、いや、そういう意味で言った訳じゃないのよ?俺はあくまで『普通』って奴がどんなものなのかっていうのを、味に擬えた訳であって、これからお前は普通って奴に慣れていくんだぜ?って言いたかっただけなんです!」


トール「ええ?何?何か言った?」


上条「テメェ、聞こえてねえフリをするんじゃねえよ!!」


トール「まあ安心しろって。仕方ないから、寝床は何とかテメェで用意するからよ!だから、こうやってまた飯を食わせてくれるだけでいいからよ。な?頼むよ!」


上条「しかしだな…」


美琴「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!!」


トール「あん?」


美琴「アンタだけってのはズルいわ!!私もこうやってここでご飯食べたいし…」


上条「…まさか、美琴!?」


美琴「…ねえ、当麻?こいつにそういう許可を出すなら、私も毎日ここに来させてよ!」


上条「…だけど、お前は寮の規則とかどうすんだよ?」


美琴「平気よ、そんなの。基本的には門限とか守るつもりではいるもの。それに私はこいつとは違って、きちんと家事も手伝うし、何だったら今度は私がご飯作ってあげてもいいから!…ねえ、お願い…」


上条「…しゃあねえなあ。もういいです。あなた達の好きにしてください…」


美琴&トール「「よっしゃあ!!」」


禁書「ちょっと、とうま!?私やオティヌスの相談なしに何勝手に決めているんだよ!!」


美琴「アンタも居候の身でしょ?なら、アンタは私達に文句を言える立場では、ないじゃない」


禁書「…うう。確かにそうかも…」


その時一方通行は上条に聞こえないように、フィアンマに話しかけた


一方通行「…で、オマエはどォすンだァ?」


フィアンマ「俺様もトールの様にしたいのは山々なんだが、これ以上は当麻の迷惑になるだろう。基本的には今まで通り学園都市の『外』に住み、たまにこちらに遊びに来るという形にしようと思う」


一方通行「…そォかい」


トール「まあまあ、新しい『家族』の誕生祝いに鍋の続きといこうじゃねえか!」


上条「…なんて横暴な野郎だ…。しかもその表現の使い方を思いっきり間違えてるし…。まあいいや、上条さんも肉を食べて元気を出そっ……」


土御門「頂きだにゃーっ!!」


上条が肉を取ろうとした瞬間、土御門に横取りされてしまった。


上条「!!?つ、土御門!?テメェ、いつの間にこの部屋に侵入してやがった!?」


土御門「んまーい!!」


上条「テメェ、話を聞きやがれ!!」


土御門「そりゃあ、こんな美味そうな匂いが隣の部屋からしてくれば、覗きたくなるってのは当然ですたい」


上条「お前はさっき義妹に飯を食わさせて貰ったんじゃねえのかよ!?」


土御門「確かにそうなんだけどにゃー。オレは舞夏が帰った後トレーニングをしていたぜよ。そこで小腹が空いたところに鍋の匂いと来たにゃー。土御門さんが黙っていられる訳がないですたい」


上条「…うう。どいつもこいつもテメェの意思だけで勝手に行動しやがって…」


土御門「それに、美少女祭りになってるのに、土御門さんを呼ばない手はないと思うぜい?」


上条「ふざけんな!テメェが来たら、女の子が不安になるだけに決まってんだろうが!!」


そういって、上条と土御門は軽く取っ組み合いを始めてしまった。


一方通行「(な、なるほどォ。当麻と土御門は普段毎日学校でこンな感じにやりとりをしてンのか…。

…楽しそうでいいよなァ…。俺も当麻の高校に編入しよォかな…)」


アリサ「(当麻くんと同じ学校に通ったら毎日が楽しそうだなあ…。

…多分、当麻くんの様子からして、私の学力でも何とかなるよね?これからもこの世界にいられるなら、私も当麻くんと同じ学校に通おうかな。そして、当麻くんと一緒に屋上で、2人きりで楽しく会話を弾ませながらお昼ご飯を食べちゃったりして。やだ、私ったら変な妄想しちゃってる///)」


風斬「だ、大丈夫?アリサちゃん?顔が真っ赤だよ?」


禁書「ありさ?」


アリサ「へ?あ、いや、何でもないよ。ちょっと考え事してただけだから、大丈夫!」


風斬「そ、そう?なら良かった…」


アリサ「あはは…」


禁書「(…どうやらありさも、とうまの毒にかかっちゃっているんだよ…)」


上条「…ハァ…ハァ。い、今は土御門な相手にしてる時間じゃねえ!肉をさっさと食わねえと全部食われちまう!」


レッサー「残念ながら、もう殆ど残ってませんよ?」


上条「な!?」


バードウェイ「お前がくだらんやりとりをしている間に私達が美味しく頂いた」


上条「…そ、そんな」


バードウェイ「ふう。それにしても喉が渇いたな。おい、マーク。『シンデレラ』を頼む!」


レッサー「『シンデレラ』?何です、それ?」


マーク「いわゆる普通のミックスジュースですよ」


バードウェイ「だから、ノンアルコールカクテルだって言っているだろう!」


レッサー「じゃあ、私もそのミックスジュースをお願いします!」


マーク「かしこまりました」


バードウェイ「…お前ら、あまり私を侮辱するとここで『召喚爆撃』の犠牲となって貰うぞ?」


上条「それだけはやめてえ!!幻想殺しでも打ち消せないほどの魔術を、この部屋で使っちゃ駄目えええ!!!」


バードウェイ「…チッ」


上条「…うう。何故か鍋の主催者が肉を殆ど食えず終いになってるし、みんなやりたい放題やりやがるし…。ふ、不幸だ…」


トール「まあ元気出せって、上条ちゃん。最後の肉をくれてやるからよ。ほれ」


上条「おぉ、サンキュー!!」


トールは肉を一度は上条に渡すフリをした。しかし、


上条「!?テメェ、結局自分で食べるんじゃねえか!!」


トール「へへ、悪りいな、上条ちゃん。途中で気が変わっちまった♪」


上条「ぐわぁぁあああ!!もう許さん!!…今日の上条さんは超バイオレンスだぜ…?だから、覚悟しやがれクソ野郎!!!」


トール「面白え!かかってこいよ!!」


上条はヤケクソになってトールと殴り合いを始めてしまった。だけど、そこには殺気というものが一切無かった。誰の目にも、それはくだらない理由で馬鹿騒ぎしてる高校生にしか見えなかった。よって、みんなそれを見て笑っていた。




だから、



オティヌス「(…これがこいつらにとっての、本当の意味での『幸せ』って奴なんだろうな。こいつらにとって上条当麻抜きでは、決して本当の意味で幸せになることができない。だけど逆に、上条当麻の近くにいるだけで幸せになれる存在でもあるんだろう。つまり、この世界が幸せに満ち溢れるためには、上条当麻という存在は必要不可欠なのかもしれんな…)」



魔神は余りにも永い時間を経て、とある『世界』に関する、一つの答えを導き出していた。


後書き

・HO未読の方向けに説明させて頂くと、上条さんが一瞬獲得した『予測検索』、バードウェイのお兄ちゃん発言、レーザー兵器云々に関しては、HOで扱われたネタです。バードウェイがお好きな方は、是非HOの『死の祭典』に登場するマリーディちゃんをチェックして見てください。
・上条さんが獲得した『予測検索』能力については、特に深い意味はありません。単純に、『何故か、上条当麻が新しいヒーローとしての能力を手にしていた』くらいに捉えて貰えたらなと思います。また、この力を全くと言っていいほど使いこなすことができてません。
・インちゃんの歌に関しては、彼女の祈りが『奇蹟』を起こして、とんでもない力を発揮した、ってことでよろしくお願いします。
・トールに関しては、主人公が女の子関連で良い思いをしてるのに、自分はそれの恩恵を受けれなかったり、みんながパーティーに参加してる中、一人で仕事をこなすという、ちょっと不憫なキャラを目指しました。
・ちなみに、トールとじゃれあってる時の一方さんは、チョーカーを戦闘モードにしてません。ようは、じゃれ合いを思いっきり楽しんでます。
・美琴に関しては、上条さんに対して素直になった代わりに、トールが彼女のストレス発散役になっちゃいました。
・みさきちの派閥の女の子に関しては、書いてる時には特に外見をイメージしてませんでした。ただ個人的には、新約11巻の最初の、みさきちが大きく出てる見開きカラーのイラストに出てくる子達を、勝手に当てはめて考えちゃってます。(ちなみに、右の子から、B、C、縦ロール、A、D、Eてな感じです。Fはテキトーです。参考にして頂けたらと思います。)


このSSへの評価

7件評価されています


SS好きの名無しさんから
2024-04-25 01:10:03

SS好きの名無しさんから
2021-03-08 13:23:43

SS好きの名無しさんから
2018-10-02 23:18:26

SS好きの名無しさんから
2016-01-05 17:14:24

SS好きの名無しさんから
2015-04-21 06:17:55

SS好きの名無しさんから
2015-03-28 22:42:24

SS好きの名無しさんから
2015-03-14 13:26:51

このSSへの応援

5件応援されています


SS好きの名無しさんから
2019-08-18 17:33:47

SS好きの名無しさんから
2016-10-24 21:11:59

SS好きの名無しさんから
2015-06-23 20:21:26

SS好きの名無しさんから
2015-04-21 06:17:50

SS好きの名無しさんから
2015-03-09 17:18:41

このSSへのコメント


このSSへのオススメ


オススメ度を★で指定してください