穂乃果 「わたしの一番好きな味」
初投稿。穂乃果ちゃん(14)がお父さんと喧嘩して家出しちゃう話です。
穂乃果父「…」
私、高坂穂乃果、音ノ木坂中学校に通う2年生!私の家は神田にある「穂むら」っていう和菓子屋さんなんだ。お父さんが、新商品を出したいから相談に乗ってくれって、家族みんなで話し合うことになったの。今は夏休み。売れ時なんだって。
穂乃果「ねぇねぇ、今回の新商品こそイチゴ大福にしようよ!生クリームをたーーーっぷり入れたイチゴ大福ぅ!」
雪穂「お姉ちゃんそれいつも言ってるよね?夏なんだし季節外れだよ!」
穂乃果母「そうよ穂乃果。少しは季節を弁えなさい」
やっぱり却下された。
ああ、もうウルサイなぁ。最近、お母さんが私の意見を聞いてくれない気がする。勉強しなさいだの、家の仕事手伝ってだの、私にだってやりたいこといっぱいあるのに。妹の雪穂も、こういう場ではいつもお母さんの側につくから、私にはますます居場所がなくなってしまう。
穂乃果「え~っ、何で何で何で~!イチゴ大福作ろうよ~!」
私が頑なにイチゴ大福を推すのには理由がある。一つ目は、単純に私の好物がイチゴであること。二つ目は、これも単純なんだけど、餡子に飽きたこと。
流石に、14年も和菓子屋の娘をやっていると餡子やお饅頭にもだんだん飽きてくるものだ。幼馴染の海未ちゃんやことりちゃんは、うちのお饅頭を「絶品です(だよ)」と言って食べてくれるんだけど、私だって、ケーキとかマカロンとか、もっとおしゃれで、女の子っぽいお菓子が食べたい。和菓子って、なんだか響きがゴツいんだもん。まだ小学生の雪穂には、それがきっとまだわからないんだよ!
穂乃果父「…」
私たち女3人を集めたうちの大黒柱は、まさに柱のように、ずっと黙ったままだ。お父さんは無口だから、娘の私でも、この人が何を考えているのかイマイチ解らない。
穂乃果「じゃあ雪穂には何かいい案があるの?」
雪穂「う~ん…夏なんだし水羊羹とかどうかな~」
こいつめ。親が喜ぶ答えを確実に突いている。
穂乃果「うわぁん!また餡子~!」
穂乃果母「いい加減にしなさい!和菓子屋なんだから当たり前でしょう。お姉ちゃんなんだから、我儘言わないの!」
なんだか、今日の私はいつもより頑固だなぁ。
そう思っている時に飛んでくる、お母さんの「お姉ちゃんなんだから」攻撃。長女でも、子供は子供なんだから、ワガママ言うものだと思うんだけど。
穂乃果「やだやだやだ~!餡子もう飽きたー!」
言ってしまった。本音がついに口に出てしまった。しかもお父さんの目の前で。
穂乃果母「こっ、こら、穂乃果!」
その時、ダンッ!とテーブルを勢いよく叩く音が聞こえたかと思ったら、仏像だったお父さんが突然鬼の形相になって立ち上がり…
穂乃果父「餡子食いたくねえとか言い出す奴はもう俺の娘じゃねえ!お前なんか勘当だ!出て行きやがれッ!」
――出て行きやがれ。
――出て行きやがれ。
めったに聞けないお父さんの、めったに聞けない怒鳴り声が、居間全体に、そして、私の頭のなかに鈍く響き渡った。
気が付くと、私は『穂むら』の外に出ていた。
穂乃果「わかったよ。こんな家、もう出てってやる」
雪穂(お父さん…喋ったぁ…)ビクビク
海未「いよいよ明後日ですね」
夜の鍛錬を終え、私は縁側で一人、静かなひと時を過ごします。
今夜は久しぶりに涼しい。ここ数日は熱帯夜続きでしたからね。正座をして目を閉じ、耳を澄ませば、夜の静寂の中、庭中に響き渡る蛙の大合唱。
私は、この時間がたまらなく好きなのです。
その時でした。趣に耽っていた私が、いきなり現実に連れ戻されたのは。
「うぅ~~~~~みちゃ~~~ぁぁぁぁぁぁん!」
明るい茶色とも、橙色ともとれる、顔の横で結った髪をぶんぶん揺らしながら、一人の少女が走ってきたのです。
海未「穂乃果!?どうしてこんな時間に?」
私は少し驚きながら、その少女、高坂穂乃果の名前を呼ぶ。
彼女の澄んだ瑠璃色の瞳が、池の水を映したように潤んでいました。
海未「またお母さんと何か揉めたのですか?」
穂乃果は、幼い時から何かとお母さんと喧嘩をしては、園田家に逃げ込む習性があるのです。
テストでひどい点数をとった時、茶碗を割った時、パンと間違えて、寝ぼけて妹の雪穂の腕に噛みついた時…その理由は様々ですが、どれも穂乃果らしい。
穂乃果と私の両母も昔からの仲だからでしょうか、穂乃果のお母さんに電話をかければ「あ、はい」で済んでしまう。
勿論、私もたいていは、「あなたが悪いのですよ」と厳しく諭すのですが、時々そんな彼女が何故か愛おしく感じてしまうのです。
そんな穂乃果の「夜逃げ」も、5年生の時を最後に終わったと思っていたのですが…
聞けば、『穂むら』の夏の新商品について家族で考えている時に、「餡子飽きた!」と口走り、そのままお父さんの逆鱗に触れてしまったそう。
って、完全に自業自得ではありませんか!もっとTPOというものを弁えなさい。
穂乃果「お父さんったらひどいんだよ!珍しく喋ったかと思ったら『出て行きやがれ!』って言うんだもん!穂乃果、もう家に帰らない!バイク盗んでどっか行ってやる!」
海未「それは15の夜です」 一体何歳なんですか貴女は。
とはいえ、今回はお母さんではなくお父さんと喧嘩したということで、相当ショックだったのでしょうか。いつもより本気な気がして、私も段々心配になってきました。
海未「穂むらのおじさんも喋るのですね…じゃなかった、穂乃果はどんな提案をしたのですか?」
穂乃果「イチゴ大福」 夏にそれですか。まったく、穂乃果らしい。
海未「フフッ、やっぱり穂乃果は穂乃果ですね」
穂乃果「それでねそれでねっ、生クリーム使いたい!って言ったら、雪穂やお母さんまでダメの一点張りなんだよ!餡子飽きたのにー!」
まだ言うか小娘。
海未(困りましたね…明後日に日舞の大会があって明日から京都へ行くのに…)
私が戸惑っていると、部屋の奥から助け舟が出ました。
海未母「海未さん、まだ起きてたの?…あら穂乃果ちゃん!またきぃちゃんと喧嘩?」
母上でした。さすが母娘、考えることが同じです。
穂乃果「おとうさんが…うっ…っぐ…出てけって…」
嗚咽交じりに穂乃果が答えます。先ほどの威勢はどこへ行ったのやら。
2人がかりでなんとか穂乃果を落ち着かせ、改めて母上に事の顛末を説明しました。
海未母「そうだったの。大変だったわね。でも今日はもう遅いから、うちに泊まっていきなさい。きぃちゃんにも伝えておくわね」
海未「母上、明日から京都ですよ?朝も早いし、穂乃果が独りになってしまいます」
穂乃果「大丈夫だよ海未ちゃん。穂乃果も早く起きるからさ」
海未母「ごめんなさいねぇ、こっちもバタバタしちゃって。さ、お上がり」
こうして、久々のお泊まり会が始まりました。
…やはり、家が和菓子屋だと、流石に飽きてしまうものなのでしょうか。私としては、稽古終わりに穂乃果が持ってきてくれる穂むらのお饅頭が、昔からの楽しみなのですが…
海未「そういえば、穂乃果は小学校…あれは4年生頃でしたか。国語の時間に詩を作った時も似たようなことを言ってましたよね」
穂乃果「あははは…でもあの時は授業参観じゃなかったし」
海未「そうでしたね。それにしても驚きです」
穂乃果「何が?」
海未「貴女のことだから、『穂乃果も京都行きたいー!』なんて駄々をこね始めるものかと思いましたが…少し大人になったのですね」
穂乃果「…」
海未「穂乃果?」
もう寝てしまったのでしょうか?
穂乃果「…ふーんだ」
しまった、穂乃果が拗ねてしまいました。失礼ですが、そんな穂乃果も可愛いのです。
「ほのか、おとうさんのおまんじゅうだいすき!せかいいちのおまんじゅうだよっ!」
満面の笑顔で饅頭を頬張る幼い娘の頭を優しく撫でる俺。そんなシーンで目が醒めた。
なんだ、夢か。いや、そりゃそうだ。下の娘も今は小学校の最上級生だし、その夢で撫でていた上の娘は夕べ喧嘩して出て行ったばかりだ。
穂乃果は、まだ帰ってきていない。
きっと園田家だろうと妻は素っ気なく言うが、そこにどこか空しさを感じてしまう。
穂乃果父「…」
こんな性分で、昔からというもの、俺は女心とやらが全く理解できない。巷では、パンケーキやらマカロンやら、横文字で洒落た名前の洋菓子ばかり注目され、和菓子の影は薄まる一方だった。正直、穂乃果や雪穂には、友達と違うものを押し付けているようで申し訳ないと思うことはある。しかし、そんな背景の中で、長女から発せられた「餡子飽きた」には、流石の俺にも見逃すことができなかった。
穂乃果父「…」
俺は、穂乃果たちのことを、把握できていないのかもしれない。もしかしたら、帰ってきたとしても、俺になんか口を利いてくれないかもしれない。
穂乃果母「仕込み、お疲れ様。今、ご飯できましたよ」
穂乃果父「…」アリガトナ
そういえば、今朝は何故か指がうまく動かなかった。そのせいで、形の悪い饅頭がいくつか除けられていた。
穂乃果、お前がそうさせたのか…?
夕べ、奇妙な夢を見た。いつもの様にパンを齧っていた私の頭上に突然、巨大なお饅頭が降ってきたのだ。その上にはなんとお父さんが仁王立ちのまま乗っていて、私を鋭く睨み付けた。その瞬間に、目が醒めた。
お父さんは今頃仕込中だろう。まだ怒っているのかな。随分と久しぶりに、いや、もしかしたら生まれて初めて、お父さんの怒声を聞いた気がする。
隣で寝ていた海未ちゃんの姿はない。たぶんお稽古中だ。
今度日舞の大会があるからって、京都に行くんだってさ。おばさん曰く、私のために出発の時間を遅らせてくれたそうだけど…
自分でいうのもなんだけど、珍しくそういうお出かけについていく気がしなかった。それを伝えたら、海未ちゃんが、穂乃果のことだから「私も京都行く!」って駄々をこねると思っていた、みたいなこと言い出して。
みんなみんな、穂乃果のことを子ども扱いするんだ。
海未母「あら穂乃果ちゃん、おはよう」
おばさんが部屋にやってきた。おはようございます、と私も挨拶を返す。
海未「おはようございます穂乃果。無事に仲直りできるといいですね」
鍛錬を終えた海未ちゃんも一緒だ。うん、まあね、と、気でもない言葉を返す。
穂乃果「海未ちゃんも大会、頑張ってね。忙しい中お邪魔してごめんなさい」
朝ごはんを一緒に食べて、園田家をあとにした。
いつもだったら、この後海未ちゃんと喋ったり、遊んだりしてから家に帰っていたが、今回は前の2つしかできていない。
坂を下りて行けば、ゲームセンターとか、お店がいっぱいあるアキバのメインストリートにたどり着けるのだが…
穂乃果ポケット「150円やで」チャリーン
私ってホント馬鹿だ。
暇を持て余した私の足は、自然と坂を上り、神田明神に向かっていた。やっぱり家の前を通るのは気が引けて、遠回りをしてから、かつて幼馴染の2人とよく遊んでいた神社の階段を上る。
もう一人の幼馴染、ことりちゃんは今、アメリカ研修でホームステイをしている。ことりちゃんは頭がいいんだ。だから、英語を勉強して、将来はデザイナーになるんだって。
優秀な2人に挟まれて、肝心の穂乃果はというと…親と喧嘩して家出している。完全に置いてけぼりな自分に腹が立ってきて…
穂乃果「もう何なんだよーッ!」
近くに転がっていた石を勢いよく蹴り飛ばした。石はきれいに弧を描き、神社の柱に鈍い音を立ててぶつかった。
そこで、ハッと我に返る。
これ、絶対にバチ当たる。
そう思って、逃げるかのように来た道を引き返…そうとした瞬間、柔らかいものが私を弾き返した。
???「危ないなぁ~。怪我したらどうするん?」
白い小袖に緋袴。巫女さんだった。
巫女「今、石蹴りはったなぁ?そんな悪い子には、お仕置きが必要やねぇ~」ワシワシワシ
胸まで揉まれた。早速バチが当たったのだ。
巫女「装束、似合ってるで」
ぶつかったのと、神社を荒らした罰として、私は巫女さんのお手伝いをすることになった。
変な関西弁が、耳に障る。私、この人苦手かもしれない。私が90%悪いんだけども。
巫女「ん~?何か困ったことでもあった?」
いやアンタのせいだから。口には出さなかったけど。
巫女「笑顔でいなきゃ。神様だって心配しちゃうよ~?」
だからアンタのせいだってば。
穂乃果「…」
黙ったまま、境内を竹ぼうきで掃く。
穂乃果「っ!」
巫女「危ない!」ガシッ
石畳に蹴躓き、前のめりに倒れこみそうになる私を、巫女さんは受け止めてくれた。さっき感じた、彼女の柔らかな胸の感触が顔中に広がった。 もしも私が男の子だったら、どうなっていただろう。
巫女「大丈夫?」
頭から感じる巫女さんの体温、柔らかな感触、優しいオーラ―
穂乃果「意地悪だあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!神様は、意地悪なんだあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
お仕事を一通り終えて、私たちは石段に腰かけた。
巫女さんが、「ご褒美」として、オレンジジュースを奢ってくれた。
巫女「それで~…家出しちゃったん?」
何とか正気に戻った私は、巫女さんに家出したことを話した。
巫女さんは優しく話を聞いてくれた。
巫女「そういうお年頃なのかもしれんなぁ~」
ふと、横に目を遣る。短時間で2回ダイヴした時にもすでに気づいていたのだが、改めて見ると、やはりふくよかだ。
いつか私もこのくらい大きくなるのかな…なんて考えていたら、思わず見とれてしまっていたようで、
巫女「ん~?キミはウチの胸、ほんと好きやなぁ~」ニヤニヤ
慌てて目を逸らした。
巫女さんは不思議な人だ。一緒にいると、なんだか落ち着くし、雰囲気としてはまるでお母さんのそれを思い出させる。
そのくせ、子供っぽくてお茶目な素振りも見せてくる。 総じて「よくわからない人」というところだろうか。
穂乃果「巫女さんは、お父さんやお母さんと喧嘩した時、どんな感じだったんですか?」
突然、巫女さんの表情が曇る。
巫女「………どうだったんやろなぁ」
踏み込んではいけない空気を感じ、これ以上聞くのを止めた。
2人の間に沈黙の帳が下りる。真夏の太陽の視線が妙に痛い。
巫女「でも、いろいろ衝突があって苦しい思いはするけど、それでもお互いのことを認め合って…
どんなことも乗り越えられるくらい強くなる。それができるのって、やっぱり家族しかないと思うん」
穂乃果「…」
巫女「あはは、偉そうなこと言っちゃったかな。あんまり気にせんといて」
穂乃果「いえ、嬉しいです。なんだか勇気づけられましたから」
巫女「そう言うてくれると嬉しいな。ほら、カードもおんなじこと言うてる」
そう言って、一枚のタロットカードを差し出してきた。杖の絵が描かれている。
穂乃果「占いできるんですか!?」
巫女「まあ趣味程度やけどね。恋愛運も見てあげよか?」
穂乃果「はい!是非!」
自分の顔に、笑顔が戻っている。私自身でも気づけるほど、心が軽く感じた。
「東條さ~ん!ご注文の穂むら饅頭、お待たせしま…ってお姉ちゃん!?」
突然石段の下のほうから声がした。
穂乃果「あっ…」
軽くなりかけた心に緊張がほとばしる。妹だった。いや、それを認識しきれないうちに、
穂乃果「ゆ~~きほ~~~~っ!!」
階段を一気に飛び降り、雪穂に飛びついた。
雪穂「う、うわっ、人前で泣かないでよこっちだって恥ずかしくなっちゃうじゃん!」
巫女「くすくす」クッスン
気持ちが一気に雪崩れ込む。本当は、これをお父さんにぶつけるべきなんだけど…
雪穂「みんな心配してたんだよ。お姉ちゃんが家出するのなんて久しぶりだからさ、特にお父さんが…」
穂乃果「お゛ど゛う゛さ゛ん゛が゛?」
雪穂「いい加減離れろっ!とにかく、お父さんすごく心配してたから」
えっ、お父さんが私のことを…
雪穂「私だって、2人がいつまでも喧嘩してるの見ていたくないしさ。早く仲直りしてよ」
雪穂のセリフは終始サバサバしていた。なのに、なんだか優しい。
いつも喧嘩ばかりの姉妹だけど、こういう時に思ってくれる人がいることに、私はさらにいたたまれなくなった。
穂乃果「…ごめんね、雪穂。迷惑かけて」
雪穂「私に謝らないで」
穂乃果「うん、ごめん」
雪穂「…」
「バカお姉ちゃん」
こうして、私たち姉妹は家路についた。そろそろ空がオレンジ色に変わる頃だ。
~和菓子屋『穂むら』玄関~
穂乃果「いくよ、雪穂!あと10回深呼吸したら本当に行くから!」
雪穂「お姉ちゃん、それ何回目?」
ガチャ
穂乃果「あっ…」
穂乃果父「…」カエッテキタカ
雪穂「先、入ってるから」
穂乃果&穂乃果父「…」
穂乃果「うわあ~あああああああああああああ!」ダキッ
穂乃果父「…」
穂乃果「私、長女なのに…ぐすっ、お店継がなきゃなのに…無責任で、身勝手で…
っぐ…その…ご………うっ」
穂乃果「ご゛べ゛ん゛だ゛ざ゛い゛ぃっぃぃぃぃ~~~!」
穂乃果父「…」ワカレバヨイ
穂乃果父「…」オカエリナサイ
穂乃果「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
道行く人のことも、お客さんのことも無視して、私はお父さんの堅い胸で泣き叫び続けた。
穂乃果父「…」アツクルシイ
その夜お父さんが私の部屋に入ってきた。何か持っている。
穂乃果父「…」テダシテ
いつもの様子で、手に持ったそれを私の手のひらに乗せる。
穂乃果「イチゴ…大福」
穂乃果父「…」
置かれた大福を一口齧った。イチゴの酸味と、甘い生クリームが口に広がった。でも、何か違う。
穂乃果「やっぱり、餡子があってこその『穂むら』だね」
穂乃果父「…///」
もう一つイチゴ大福。餡子も入ったそれを一口で頬張る。
それはほんのり甘く、しょっぱかった。
~完~
こんにちは、作者のVioletです。
私の初作品「わたしの一番好きな味」読んでいただきありがとうございます。
今回は地の文を取り入れ、小説っぽい仕上げにしました。
だいぶ表現や一文一文が稚拙になりがちでしたが、書き終えたこの達成感、いやぁ素晴らしい!
今後また何かSSを書くことがあったら、その時はまたよろしくお願いしますね。
余談ですが、作中で希さんが最初に差し出したタロットは小アルカナの「ワンドの4」。
どうやら「ワンド」のカードは人間関係に関わるそうで、これには「前進」という意味があるそうです。
尤も、本家のほうで彼女が使っているのは大アルカナですが…
このSSへのコメント