2014-12-16 09:19:46 更新

概要

目が覚めたら謎の施設。目の前には謎の人形の小さな生物達

※ハーメルンでも同一の作品を投稿しています


顔合わせ

顔をペタペタと小さな何かに叩かれる感触がした。


「ん、ん……」


目を開けると顔の前には得体の知れない生物(なまもの)がいた。驚きのあまり変な声を出しながら起き上がると、生物は顔の上から転がり落ちた。うつ伏せたまま動かない。

距離をとって観察。その生物はソフトボール程の大きさで頭部が大きい2、3頭身の人形のような形をしていた。一丁前にチョコブラウンのブレザーを着ている。

一目見たところエイリアンのような危険生物らしさはないな。ひと安心したところで生物はむくりと起き上がってこちらから離れようとした。


「おっと、確保」


すかさず両手で取り押さえる。生物は逃げようとじたばたと暴れる。焦れったいので高い高いをするように上にあげると黙り込んだ。

高いところが苦手なのか自分が怖いのかその顔には青ざめた恐怖が浮かぶ。可哀想なのでゆらゆらと揺らしてその場でくるくる周りあやしてみる。しばらく続けていると生物は楽しんでくれたのか明るい表情をした。


「て、ここはどこ?」


そのまま続け過ぎて疲れた。だがそのお陰で周りが見えた。どうやら此処は何かの工場みたいだ。

埃っぽさは無いが電球がひとつあるだけで辺りはよく見えない。

ちょいと調べようと生物は頭の上に置き片手で支えて探索することにした。


がしゃん――ぽてぽて。


物陰からバケツが転がるような音に続いて何かが落ちるような音がした。

近寄ってみると大きめの段ボールに隠れるように頭に置いた生物に似た生物が4、5体転がっていた。バケツを足場に段ボールからこちらを観察してたのか。

大丈夫かと近づくとその中の一体がこちらに気づき、周りの生物を叩き起こし、引き連れるように暗闇に消える。あまりの手際のよさに反応が遅れた。

その後を追うか悩む。暗い中を歩くのは危ない。そうしていると頭の上の生物が手を抜けて、自分の体を滑るように降りて、さっき生物達が行った方に向かう。これは自分は無害だと説得しに行ってくれたのではと考える。期待は当たった。

少しして頭の上に置いた生物を先頭に生物達が戻ってきた。その中にはまだ怯えている生物がいたが、ゆっくりと手を伸ばして、頭の上にいた生物と同じ洗礼をすれば警戒を緩めてくれた。


「えっと喋れる?」


訪ねてみれば生物は頭を横に降った。少し残念だがこちらの言葉は分かるみたいだ。カルタでもあれば会話も出来そうだがそれといったものは手元になかった。とりあえずはハイとイイエだけで済むような質問を続けた。


プレゼント


こちらの一方的な質問会は、途中に生物達とのじゃれあいを挟みながら進んだおかげで長く掛かった。その間ずっと最初の生物は頭の上に居座り続けた。どうやら俺の頭の上はこいつの定位置になったらしい。

話を戻すが、質問会は生物達が言葉を発せなかったが、その分生物は小さい体を存分に活用し、身振り素振りや絵を使ってくれたので大体のことは分かった。


どうやら此処は日本からそう離れていない太平洋の海域に位置し、石油を汲み出すための海上施設らしい。目の前の生物達はその作業員として働いていたらしいが、最近この辺りに怪物が徘徊するようになって施設に取り残されてしまったらしい。


「で、これがそいつらの姿?」


ふんふんと頷く生物の掲げるA3サイズの白の用紙には、砲弾に魚を足して割ったような何かや両腕に砲塔をつけた色白すぎるビキニのねーちゃん等が色鉛筆描かれていた。

肌色足し忘れてるぞ、とビキニのねーちゃんの肌を健康的にしようとしたら邪魔される。どうやら白人も真っ青な白の肌がデフォルトらしい。

大きさを訪ねれば後者はこちらを指差してきたので自分と同じくらいだが、前者は腕を目一杯広げて表現している辺りかなり小柄のようだ。


そして自分は気が付いたらさっきいた場所で倒れていたとのこと。記憶は朧気だがあの場所で眼が覚める前に自分は家で寝たはずだ。夢かと思ったが、現実感ありすぎるからそうではなかった。話し疲れたので水を分けてもらった。もう蓄えも少ないらしくちびちび大切に飲む。


「えっと、ここから本土に帰る手立てって無いの?」


あればとっくに試しているだろうが聞いてみる。首を横に振られると思ったが生物は円を組んでしばらく話し合って、また何処かに行ってしまった。


生物達は小さな小包を担いで帰ってきて、目の前で開封して中身を差し出す。それは二つに別れた一対の腕輪だった。それといった装飾もない青い腕輪。

生物に眼を向ければ、腕につけろと催促している。もう一度腕輪を見る。取り敢えず仕込み刃など怪しいギミックは見当たらない。マイクロウェーブが照射されるなんてオチだったら着ける前に壊さないといけないが、貰ったものをすぐ壊すのは失礼なのでやらない。

そろそろ生物達からの催促が焦れったかったこともあってか覚悟を決めて自分は左腕に恐る恐る着けてみる。


――カチリ


腕輪のパーツが組合わさり気持ちの良い音がなった途端、腕輪をつけた左腕から体に熱が内側から雪崩れ込んだ。急な体温の上昇に動転して倒れこむ。

藻掻く、藻掻く。そうすることで熱逃がせると思っているかのように自分はひたすら床を転がり回る。

当然、そんなことに意味はなく熱さが静まることはない。次第に熱は体の表面に移り、焼き付くすかのように体をいたぶる。心臓は跳ね上がりを繰り返し、胸はそれを押さえようと張り裂けそうであった。


そして自分はその苦しみに耐えられず意識を手放した


体に起きた異変


目を覚ませばまたあの最初に見た生物が顔の前にいて、こちらに心配そうな視線を投げていた。このままでは呼びにくいのでこいつの名前は東城(とうじょう)とでもしておく。目を覚ましたことに気付いた東城は泣きながら自分の顔にすり寄ってきた。遠巻きに他の生物達もいた。

起きたときはフルスイングで投げ飛ばしてやろうかと考えてなくもなかったが、こんな様子ではあんな目に遭った後でも怒るに怒れなかった。まったく弱者という立場は卑怯である。


それでも少しは怒らなければ気がすまない。取り敢えず片っ端から捕まえて一言申してやろう。そんな小さな野望を胸にうつ伏せから起き上がる。

そこで股座に違和感を感じた。恐る恐る股間に手を伸ばす。嫌な予感がした。勘違いを願う反面、もしかしたらと胸踊らせ、なぞるようにその場所を触る。


無い。男が男足らしめる陰茎と陰囊が無くなっていたのだ。そしてその代わりにそれらがあった辺りを触れる度に奇妙なくすぐったさが脳に送られてくる。

信じられない状況に困惑するなか、触覚ではなく視覚による最後の確認をしようとする自分の中によくわからない希望が湧いていた。

無かった、いやあったというべきか。自分の股には男の象徴は消え去り、女性にしかないそれが存在していた。

釣られて胸に手を当てる。こちらも女性にしかない柔らかさを持つ膨らみがあった。


しかしそれは儚かった。強く押し込めば胸筋という現実によって消えてしまうのではないかと儚げな男の夢の塊。実際押し込んだら夢は消えた。悲しい気持ちに包まれる。せめて巨乳になりたかった。それほど胸にある二つの夢の塊が貧相だったことへのショックか、元々そう言った願望が強かったのか、女になったことよりもなった女の体に不満を抱く。

落ち着いたところでこんな目にあわせてくれた生物の一員である東城に眼を向ければ、他の生物達と胴上げをしているではないか。

心配していたと思えば喜んではしゃいでいるとはコインのように極端な生物である。だが今それはとても癪に触った。

こちらをよそにまだ胴上げを楽しんでいる生物達。それで持ち上げられている個体を浮き上がったところで掴みとる。名前は道城(みちしろ)としよう。


そんなに持ち上げられたければ代わりにやってやろう。急に掴まれておどおどしている道城を自分の腰の辺りから頭辺りまで高く投げる。落ちてきたらもう片方の手で捕まえて、反対の手に投げて渡しては、また上に投げる。

十回ほどお手玉擬きを続けて止めてやれば、道城は目を回してぐったりしていた。小さな自尊心を回復したので仲間のところに下ろしてやる。


床に手が着いたところで他の生物がやって来たので介抱してやるかと思えば、道城を引きずり下ろして自分が代わりにと自分の手の上に乗る。それに続いて他の生物達も我も我もと乗ろうとするが女になったせいで少しばかり小さくなった手の上には一体しか乗るスペースがない。先に乗ったこいつはその座を渡すまいと自分の指に腕をしがみ付けて堪えていた。名前は兼鳴(かねなり)にする。

やがてその強情っぷりに周りの生物達は諦めたのか座り込んでいた。それを見た兼鳴はやっと楽しめるかと膝を抱えて投げやすい姿勢をして、こちらにキラキラとした羨望の視線を送る。


合図をしてからまたお手玉擬きを始める。仕返ししたせいか、先程のやり取りに毒気を抜かれたか、今度は道城の時よりゆったりと丁寧にやってみた。

段々テンポを上げていき目を回した辺りで頃合いを見て止める。道城と同じく目を回して疲れ果てているが口が笑って満足してそうな兼鳴を床に下ろすと、待ってましたとばかりにまた違う生物が乗ってくる。また自分の手の上を奪い合う争いが起きるかと思ったが、東城を含めた生物達は仲良く列を組んでいた。兼鳴が楽しんでいる間に話し合いでもしていたのだろう。

このあと残っている奴等を一体一体お手玉していくのにはかなりだれた。途中、回復した奴等が二週目をしようとしていたが止める。ブーイングなのかじたばたとしていたがこれ以上落とさないように気を付けて続けていくには気力が持たないのだ。


他の奴等が俺と遊ぶのに夢中している中で、荒っぽくしたせいでトラウマを植え付けてしまった道城だけは隅で一人いたが、目の前の生物達で忙しかったので見過ごした。流石にかわいそうなので落ち着いたら構うことにしよう。


帰るための脚


「それでこれからなにするの?」


全員の番が一通り終わり、落ち着いたところで尋ねる。それを聞いた生達はすっかり忘れてたとばかりに慌てて着いてくるようにジェスチャーを送り走り出す。置いていかれないように着いていき扉から廊下に出る。行く先々で生物達は道に迷ったのかいくつもの扉を開けては締めを繰り返して先に進む。ようやく目的の部屋に着く頃には東城と道城がへとへとに疲れていた。他の奴等がまだまだ元気な様子から、この二体はかなり体力が無いのだろう。苦にもならないから道城は手に持っていく。東城も手に持って連れていこうとしたが頑なに頭の上がいいと愚図ったのでそうした。


その部屋は様々な工具が備え付けられ、いくつかのクレーンが吊るされたガレージだった。奥半分弱から奥にかけての床は下りの斜面になっている。何のためのものだろうと疑問に思っていれば奥の壁がゆっくりと開いていく。空いた隙間から水が流れ込んで行き斜面の中間を越えるまで水位を上げる。扉は水面から人一人分くらいの高さまで上がり続けて止まる。それにより眩しい日差しが差し込む。外は海に繋がっていた。

どうやらここは停泊所のような部屋らしい。しかし何処を見渡してもゴムボートひとつとしてこの部屋には無かった。

そう不思議がる私を生物達は部屋の済みに引っ張り混む。連れられた先には塗装のされていないカラーボックスのような棚がいくつか立ち並ぶ。左から五つ目までは一番上の段の板には「あかつき」「ひびき」「いかずち」「たつた」と人なのか物なのか名前が書かれたシールが貼り付けられている。今は使われてないのかどれも空だ。余所見をしていると頭の上に乗せていた東城に髪を引っ張られた。なんなんだと手に持って伺えば、東城は右端の棚を指差す。見てみればその棚には何やら奇妙な形をした機械の箱と船底のようなデザインの機械のブーツが分けられて入っていた。


「これをつければ良いの?」


生物達は頷く。助けも借りて身につける。機械の箱は背負うものだったらしく、リュックサックのように背中に掛けた。

作業が終われば二体の生物が姿見を持ってきてくれた。そこに写ったのは見覚えのまったく無い綺麗な女。顔から足にかけるまでの穏やかな流線のプロモーションは今まで見たことがないほど素晴らしい。先程の乳房が乏しいと馬鹿にしたが、むしろそんなものはこの体にとっては下品なものにしかならないだろう。

到底信じられないがこれが自分の今の姿のようだ。顔の線のひとつとして見覚えが無く、似ているところなんて髪と目の黒めの紫色ぐらいしかない。


「次には何をするの?」


生物は海を指し示す。このまま入れというのだろうか。目の前にいる生物の存在といいと女にさせられたことといい、もう摩訶不思議に脳をやられて驚かなくなっているかと思っていたがまだ自分の頭は正常らしく、水面一歩手前まで行きそれ以上進むことに躊躇いを覚えた。流石にこんなモードファッションのブーツ一つ着けただけで人が浮けるわけがない。

水に手を差し込む。冷たくはない。それならと覚悟を決める。

ゆっくりと片足から水に浮かせてから押し込む。ぐらりと揺らつくもその足はブーツからの浮力で底まで沈まない。小さな感動をしながら続いてもう片方の足も前に出す。しっかりとした支えがなくなりバランスを崩しかけるがすぐ立て直した。


水の上に立つ。小さなことだがそれは自分を船の上に立つなんてものでは無い感動で包む。子供のようにはしゃぎ次はどうすれば良いか生物の方を見るとそちらもおおはしゃぎで騒ぎ、東城は帰ってきてと腕を降っている。

次第にその小さな姿がより小さくなっていくことで自分が沖に流されていることに気づく。どうすればと困ったが体重を掛ければ自由に動くことができた。

しかし慣れない重心を使っての移動に慎重になりながら、横の壁を伝うなどして無事戻った時には外から差し込む陽光は赤みを帯びており。箱と靴を外した自分は興奮からの疲れで倒れこみ、生物達に介抱されて眠りに着いた。


本土への出航


目が覚めた。時間はそれほど経っておらず、まだ日は沈んでいない。腹が空いたので食堂に行き、レトルトカレーをかけた餅米を食べながら生物達から帰るためのルートの説明を受ける。


今いるここから本土へは直線距離で約400㎞、単純に波やら風やらを無視して考えてあの靴と箱を使えば一週間程あればたどり着けるらしい。もちろんそんなことは不可能なので海流を利用し、途中の島で休憩をとったりして一旦関西に行くとのこと。航海は夜中に行い、闇に紛れて進んでいこうという算段のようだ。

例の箱は生物達の船のようなものだったようで、生物達は次々と密封された食料や生活必需品などの積み荷を運ぶ。自分用の荷物はドラム缶に入れてくれている。その時間が長く暇だったので仮眠室を見つけて夜に備えてまた寝ることにした。

仕事が終わったのか生物が一体やって来て起こしてくれる。名前をつけてない奴だったので綾菜(あやな)と呼ぶことにした。連れられるように停泊所の部屋にたどり着く。箱を背負って靴を履き準備を終えて、生物に欠員がいないかチェックをとる。三体いなかった。


今いる奴らに尋ねれば心当たりがないのか仲間がいないことにあたふたしている。気づかなかったのか。何度も思ったがこいつらは目の前のことに専念すると何も見えなくなるようだ。仕方ないので分担して探しにいこうとしたところでそいつらは扉を蹴破るように開けて戻ってきた。


「なにそれ?」


長さにして1.5メートルの、口径の大きい狙撃銃。三体はそれを担いで運び込み、こちらに差し出す。それは脇に抱えるように使うものだった。

どういうものかは説明するより使ってみろと言わんばかりに撃て撃てと三体は指示してくる。かなり本格的な見た目からどんな玩具かと自分でも試しに使いたくなったので、砲塔を海に向けて躊躇わずに引き金を引く。


部屋全体に轟音が鳴り響く。


思わず尻餅をついてしまう。その威力に恐れすら抱いて前を向けば砲弾は上に反れたのか天井には粗雑な通気孔が増やされていた。その後三体に遅れたことと下手をしていたらとんでもないことにもなるかもしれなかったのにも係わらず説明もなく渡してきたことについて叱りつけた。それと渡してくれた物についてはなかなか気に入ったので罰として三体はしばらく頭の上に乗せられる刑に課す。


そして自分達は本土にむけて出航した。しばらくしてから仲間達と同じく箱に乗らせてやれば三体は罰が効いたのか目をキラキラとさせご機嫌のご様子だった。


後書き

評価さんくす
それとつまらない感想でもさんくす


このSSへの評価

2件評価されています


まめもちさんから
2014-12-17 14:49:28

卯月さんから
2014-12-17 02:59:58

このSSへの応援

4件応援されています


白風さんから
2014-12-28 18:56:24

まめもちさんから
2014-12-17 14:49:31

卯月さんから
2014-12-17 03:00:01

SS好きの名無しさんから
2014-12-16 09:52:40

このSSへのコメント

2件コメントされています

1: SS好きの名無しさん 2014-12-07 22:27:38 ID: Mi6GD5A4

つまらん

2: SS好きの名無しさん 2015-02-06 13:12:31 ID: HnW_WcYB

他人様の作品に上から目線でボロクソ言ってた割に
ハーメルンでの無様はなんだったのか


このSSへのオススメ

1件オススメされています

1: SS好きの名無しさん 2014-12-10 11:36:14 ID: hzBX66EU

妖精メインなら嬉しいところ


オススメ度を★で指定してください