2016-06-09 02:24:07 更新

概要

初投稿です。のん誕2016おめでとう!
真姫ちゃんがもやもやしてるようなしてないような、そんなお話です。

pixivにも同じのあります。


「真姫ちゃんはいいね。」

突然、そんな風に言いだした希になんと返せばいいのかわからなかった。

「何が?」

「いつも皆から愛されてて、いいなって。」

「はあ?どこ見てそんなこと言ってるのよ。」

「ふふ」

悪戯めいた微笑み。

いつもそうだ。希は素直なようで素直じゃない。

ものを伝えるのにやけに遠回しな表現をするし、問い詰めてもこんな調子ではぐらかされてしまう。

「…私より、希の方がよっぽど愛されてると思うけど」

「どうして?」

「その…希は、優しいし、あたたかいし、話してて楽しくて、それにかわいいし…」


はっと、自分がとんでもないことを言ったような気がして口をつむぐ。希を見ると、相変わらず優しい笑顔を浮かべていた。


「ウチ、真姫ちゃんにそんな風に思われてたんやね。」

「あ、違う、私だけじゃなくて!みんながそう思ってるってことよ!」

なんで焦っているのか自分でもわからなかった。

しかも、なんだか顔も熱くなってきたような…


「みんなって?」

「μ'sのみんなに決まってるでしょ」

「具体的に聞きたいなあ」

「今日の希、やけに意地悪な気がするんだけど。」

「それはどうしようもないなあ」

「…まあいいわよ。えっとだから例えばね、穂乃果は希がいつも的確なアドバイスをしてくれて嬉しいって言ってたし、海未や凛はユニットを盛り上げてくれて嬉しいみたいだし…他のみんなも似たようなもんでしょ。」

私は7人全員が希にどんな印象を抱いているのか知っている。もちろん好意的なものばかりだけど…それをひとつずつ思いだすのが何故か腹立たしかった。

「そんな褒めてもなんもでんのに、みんな上手やなあ。」

「事実でしょ。」

少し恥ずかしくなったのか、希は目をそらしてはにかんだ。

その様子がとても可愛らしくて堪らない。

「それで、真姫ちゃんは?」

「え?」

「真姫ちゃんはウチのことどう思ってるん?」

「…みんなと、同じよ。」

「それだけ?」

「それだけよ。」

「残念やなあ。真姫ちゃんはすこーしみんなとは違う目でウチのこと見てくれてるのかなあ、なんて思ってたんやけど。」

「…」

どういう意味だろう。またいつものように茶化しているだけかもしれないけれど、なんだか本当に「違う意味」が含まれている気がしてならなかった。

って、「違う意味」って何よ。まるで私が希にそう思われていてほしいって言ってるみたいじゃない…


「と、とにかく!私なんかより、希の方がみんなに愛されているってこと!それだけ!」


なんだか恥ずかしくて堪らなくて、話題をそらした。


「そうかあ。でも、それでもやっぱり、真姫ちゃんは愛されてるなあって思うんよ。」

「どういうこと。」

「たくさん曲を作ってくれるとことか尊敬するし、頭もいいやろ?」

「ああ…」


いつもみんなに言われていることだ。驕っているわけじゃないけれど、

作曲のことも、勉強ができることも、言われすぎて正直飽き飽きしている。

結局希も、みんなと同じなんだな、って思うと、少し悲しかった。

ちょっと特別な印象を抱いてくれているんじゃないかなって…


「なーんていうのはみんな当然思ってることだろうけど」


しかし、希はあとを続けてきた。


「素直じゃないところとか、意外と純粋なところとか、そういう可愛いところがいっぱいあるから、真姫ちゃんはみんなに愛されてるなあって。」

「…意味わかんない。」

「ほんと素直じゃないなあ。」

「素直じゃなくて結構よ。」

「真姫ちゃんは可愛いなあ。」

「だからやめてって!」


思わず立ち上がる。相変わらず希は笑ったままだ。

…本当に調子が狂う。希といると、全て見透かされているとしか思えない。なんだか怖い。けれど、それ以上に心地よくて安心してしまう。


「まあ落ち着いて真姫ちゃん。」

「…」


促されるままに座ってしまう。


「あんな、真姫ちゃん。」

「何よ」

「ウチな、真姫ちゃんのこと、もっと知りたいんよ。」

「え…?」

全く予想していなかったセリフに動揺してしまった。

希が、私のことをもっと知りたいって?

「変かな?」

少しだけ困ったように笑って見せた。

「全然変じゃないわ。それに、その…」


一瞬躊躇ったが、もう先に言われている。どう思われたって構わない。


「私も、希のこと、もっと知りたいの。たくさん話して、みんなも知らないような希のいいところ、たくさん見つけたい。」

「真姫ちゃん…」


心なしか嬉しそうな顔をされた気がした。


「そんな言うたら、ウチら両想いやね。」

「うぇっ!?」

「赤くなってるで?」

「だって、急にそんなこと言うから…」


多分今の私は、びっくりするくらい茹っているだろう。

そんな私を尻目に、希はやっぱり悪戯めいた、可愛らしい微笑みを浮かべていた。


「まあ、そう急ぐことないんやない?ゆっくり時間をかけて、お互いを知っていけばいい。真姫ちゃんもそうやろ?」

「…そうね。急がなくても、いいかもね。」


すると、なぜか希が隣の席に移動してきた。


「どうしたの?」

「んー、ちょっと隣に来たくて。」


そう言って私の肩に寄りかかってきた。…いい香り。


「そっかあ、真姫ちゃんと両想いかあ」

「もう、だからなんなのよそれ。」

「嫌なん?」

「嫌じゃないけど…」


「そうなる意味」をわかっているのだろうか。本気なのか、ふざけているのかもわからない。


「じゃあいつか、本当の意味で両想いになろ?」

「どういうことよ」

「お互いのことたくさん知れたら、いずれそうなるんやない?」

「呑気なのね。」


わざと呆れ気味の調子で言うと、不意に耳元で囁かれた


「お互いに、一番愛してくれる人になれたら幸せやん?」


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